JP2014049650A - 光起電力装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】信頼性の高い光起電力装置を提供する。
【解決手段】光起電力装置100は、複数の光起電力素子70と、複数の光起電力素子70のそれぞれが間隔をおいて接合される複数の接合部18bが設けられる支持基板18とを備える。光起電力素子70は、接合部18bにおいて支持基板18と共有結合される。支持基板18は、複数の接合部18bの間に凹部18cが設けられる。支持基板18は、アルカリ金属元素を含むものであり、接合部18bは、支持基板18に含まれるアルカリ金属元素の濃度が、接合部18b以外の領域と比較して低い。接合部18bは、光起電力素子70と陽極接合される。光起電力素子70は、結晶質シリコンを含むベース層14と、前記ベース層と共有結合するパッシベーション層16とを備え、接合部18bは、パッシベーション層16と接合される。
【選択図】図1
【解決手段】光起電力装置100は、複数の光起電力素子70と、複数の光起電力素子70のそれぞれが間隔をおいて接合される複数の接合部18bが設けられる支持基板18とを備える。光起電力素子70は、接合部18bにおいて支持基板18と共有結合される。支持基板18は、複数の接合部18bの間に凹部18cが設けられる。支持基板18は、アルカリ金属元素を含むものであり、接合部18bは、支持基板18に含まれるアルカリ金属元素の濃度が、接合部18b以外の領域と比較して低い。接合部18bは、光起電力素子70と陽極接合される。光起電力素子70は、結晶質シリコンを含むベース層14と、前記ベース層と共有結合するパッシベーション層16とを備え、接合部18bは、パッシベーション層16と接合される。
【選択図】図1
Description
本発明は、光起電力装置に関し、特に支持基板上に複数の光起電力素子を形成した光起電力装置に関する。
光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子の開発が各方面で精力的に行われている。例えば、単結晶シリコンや多結晶シリコン等の結晶質系シリコンを用いた光起電力素子または光起電力装置の研究および実用化が盛んに行われている。
近年、光入射面である受光面に対向する裏面にPN接合と集電極を形成したバックコンタクト型(裏面接合型)の光起電力素子の開発も進んでいる。このタイプの光起電力素子では、受光面側にはテクスチャ構造や反射防止、及びキャリアの再結合防止のためのパッシベーション層が形成されるのみで、素子の構造に起因する損失を極力除き、高い変換効率が得られることから、注目を集めている。
さらに、このようなタイプの光起電力素子を複数形成した光起電力装置として、例えば、ガラス基板である支持基板上に絶縁層を介して複数のバックコンタクト型光起電力素子を取り付ける構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
光起電力装置は、長期的な信頼性確保の観点から、光起電力素子と支持基板とが強固に接合されることが望ましい。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、信頼性の高い光起電力装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光起電力装置は、複数の光起電力素子と、複数の光起電力素子のそれぞれが間隔をおいて接合される複数の接合部が設けられる支持基板と、を備える。光起電力素子は、接合部において支持基板と共有結合されており、支持基板は、複数の接合部の間に凹部が設けられる。
本発明によれば、信頼性が高い光起電力装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図1は、本実施の形態における光起電力装置100の構造を示す断面図である。本実施の形態に係る光起電力装置100は、裏面接合型光起電力素子であり、光起電力素子70で発電された電力を外部へ取り出す電極である金属層28が、太陽光が入射する受光面18aに対向する裏面側に設けられる。
光起電力装置100は、支持基板18と、複数の光起電力素子70とを備える。支持基板18は、受光面18aを有し、受光面18aに対向する裏面には光起電力素子70と接合される接合部18bと、裏面から受光面18a側に凹むように形成される凹部18cが設けられる。
支持基板18は、複数の光起電力素子70を機械的に支持し、光起電力素子70を外部環境から保護するとともに、光起電力素子70が発電のために吸収する波長帯域の光を透過する。支持基板18は、アルカリ金属元素を含有するガラス基板であり、例えば、アルカリ金属元素としてナトリウム(Na)を2×1018atoms/cm3以上、1×1020atoms/cm3以下(3.5重量%以上15.0重量%以下)含む。なお、カリウム(K)などその他のアルカリ金属元素を含むガラス基板としてもよく、この場合にはその含有量を0.1重量%以上1.0重量%以下の範囲とすることが好ましい。また、支持基板18は、熱膨張係数が2×10−6/K以上1×10−5/K以下であることが好ましい。
図2は、裏面から見た支持基板18を示す概念図である。接合部18bは、それぞれが互いに間隔をあけて設けられており、図2では、矩形の接合部18bが縦4個、横6個、計24個並んでいる様子を示す。接合部18bのそれぞれの間には、凹部18cが設けられる。凹部18cは、支持基板18の裏面に設けられる接合部18bと比べて、受光面18a側に凹むように形成される。なお、接合部18bは、接合される光起電力素子70の形状に合わせて矩形としている。
図1に戻り、光起電力素子70について述べる。光起電力素子70は、第1導電型層12、ベース層14、パッシベーション層16、絶縁層20、i型層22、第2導電型層24、透明電極層26、第1電極28n、第2電極28pを有する。
ベース層14は、結晶質の半導体層であり、例えば、単結晶の半導体層や、多数の結晶粒が集合した多結晶の半導体層である。ここでは、ベース層14として、n型のドーパントが添加されたn型結晶質シリコン層を用い、ドーピング濃度は1016/cm3程度とする。ベース層14は、光起電力素子70の発電層となるため、発電層として十分にキャリアを発生できる膜厚とすることが好ましく、その膜厚は、例えば、1μm以上100μm以下である。
パッシベーション層16は、一方の面がベース層14の表面に共有結合し、ベース層14の未結合手(ダングリングボンド)を終端させる役割を果す。これにより、光起電力素子70の受光面側におけるキャリアの再結合による損失を抑制することができる。パッシベーション層16は、キャリアの再結合を抑制させるため窒化シリコン層(SiN)を含むことが好ましく、酸化シリコン層(SiOx)と窒化シリコンとの積層構造とすることがより好ましい。例えば、酸化シリコン層及び窒化シリコン層をそれぞれ30nm及び40nmの膜厚で順に積層した構造とする。
また、パッシベーション層16は、他方の面が支持基板18の接合部18bと接合される。したがって、支持基板18と光起電力素子70とはパッシベーション層16を介して接合される。なお、パッシベーション層16は必須ではなく、ベース層14と支持基板18とが直接接合されてもよい。
第1導電型層12は、結晶質の半導体層である。ここでは、第1導電型層12として、n型のドーパントが添加されたn型結晶質シリコン層を用い、ベース層14よりも高いドーピング濃度とする。例えば、第1導電型層12のドーピング濃度は1019/cm3程度とする。第1導電型層12は、金属層である第1電極28nと接合される層であり、金属との接触抵抗を十分に低くできる範囲で薄くすることが好ましい。例えば、その膜厚は、0.1μm以上2μm以下とする。
ベース層14と第1導電型層12とは結晶質同士がホモ接合された第1導電型コンタクト領域C1を形成する。第1導電型コンタクト領域C1は、例えば、光起電力装置100の面上内においてフィンガー及びバスバーを含む櫛形に形成される。第1導電型コンタクト領域C1の面積は、ベース層14の主面上において第1導電型層12とホモ接合されている領域の面積を意味する。
絶縁層20は、第1導電型層12と後述するi型層22及び第2導電型層24とを電気的に絶縁する。絶縁層20は、電気的に絶縁性を有する材料により構成され、例えば、窒化シリコン(SiN)とすればよい。絶縁層20の膜厚は、例えば100nm程度とする。なお、絶縁層20は、第1導電型層12をエッチングするためのマスクとしても利用される。
i型層22及び第2導電型層24は、非晶質系の半導体層であり、アモルファス相又はアモルファス相内に微少な結晶粒が析出している微結晶相を含む半導体層である。ここでは、水素を含有するアモルファスシリコンとする。i型層22は、実質的に真性のアモルファスシリコン層であり、第2導電型層24は、p型のドーパントが添加されたアモルファスシリコン層である。第2導電型層24は、i型層22よりもドーピング濃度が高い半導体層であり、例えば、i型層22には意図的にドーピングを行わず、第2導電型層24のドーピング濃度を1018/cm3程度とする。
i型層22の膜厚は、光の吸収が抑えられる程度に薄く、ベース層14の表面が十分にパッシベーションされる程度に厚くすることが好ましい。i型層22の膜厚は、1nm以上50nm以下とすればよく、例えば10nmとする。また、第2導電型層24の膜厚は、光の吸収が抑えられる程度に薄く、光起電力素子の開放電圧が十分に高くなる程度に厚くすることが好ましい。第2導電型層24の膜厚は、1nm以上50nm以下とすればよく、例えば10nmとする。
透明電極層26は、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム錫酸化物(ITO)等に錫(Sn)、アンチモン(Sb)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)等をドープした透明導電性酸化物(TCO)のうち少なくとも一種類又は複数種を組み合わせて用いることが好適である。特に、酸化亜鉛(ZnO)は、透光性が高く、抵抗率が低い等の利点を有している。透明電極層26の膜厚は、10nm以上500nm以下とすればよく、例えば100nmとする。
ベース層14とi型層22及び第2導電型層24とは結晶質と非晶質とがヘテロ接合された第2導電型コンタクト領域C2を形成する。第2導電型コンタクト領域C2は、例えば、光起電力装置100の面上内においてフィンガー及びバスバーを含み、第1導電型コンタクト領域C1と組み合わされた櫛形に形成される。第2導電型コンタクト領域C2の面積は、ベース層14の主面上においてi型層22及び第2導電型層24とヘテロ接合されている領域の面積を意味する。ここで、第1導電型コンタクト領域C1の面積を第2導電型コンタクト領域C2の面積より小さくするようにパターンを形成することが好適である。
金属層28は、光起電力素子70の裏面側に設けられる電極層であり、第1導電型層12に接続される第1電極28nと、第2導電型層24に接続される第2電極28pとを含む。金属層28は、例えば、銅(Cu)やアルミニウム(Al)を含む導電性の材料である。なお、銅(Cu)や錫(Sn)等の電解メッキ層を含んでもよい。ただし、これに限定されるものでなく、金、銀等の他の金属、他の導電性材料、又はそれらの組み合わせとしてもよい。
並置された複数の光起電力素子70は、第1電極28n及び第2電極28pを図示しない導電性のタブでそれぞれ接続することで、直列又は並列に接続される。
また、光起電力装置100は、充填材60と封止材62を備え、これらは光起電力素子70の裏面側に設けられる。充填材60及び封止材62は、EVA、ポリイミド等の樹脂材料である。これにより、光起電力装置100の発電層への水分の浸入等を防ぐことができ、光起電力素子全体の強度を向上させることができる。なお、封止材62は、支持基板18と同じガラスや、プラスチック等の透明基板としてもよい。また、受光面から入射した光がベース層14により多く吸収されるよう、充填材60と封止材62との間に反射層を設けることで、光起電力素子70を透過した光を受光面側へ反射させてもよい。
次に、光起電力装置100の製造方法について説明する。
図3は、光起電力素子70の製造に用いる材料基板10を示す図である。材料基板10は、結晶質の半導体材料であり、例えば、シリコン、多結晶シリコン、砒化ガリウム(GaAs)、インジウム燐(InP)等の半導体基板である。
図3は、光起電力素子70の製造に用いる材料基板10を示す図である。材料基板10は、結晶質の半導体材料であり、例えば、シリコン、多結晶シリコン、砒化ガリウム(GaAs)、インジウム燐(InP)等の半導体基板である。
なお、本実施の形態では、材料基板10として単結晶シリコン基板を用いた例を示す。したがって、後述する第1導電型層12、ベース層14、i型層22及び第2導電型層24もシリコン層とする。ただし、材料基板10をシリコン以外の材料としてもよく、これらの層もシリコン層以外の材料としてもよい。
ポーラス層(脆化層)10aは、材料基板10を陽極酸化処理等することにより形成される。陽極酸化に用いる電解質は、例えば、フッ化水素酸及びエタノールの混合液又はフッ化水素酸及び過酸化水素水の混合液とすることができる。陽極酸化の電流密度は、5mA/cm2以上600mA/cm2以下とすればよく、例えば10mA/cm2程度とする。
ポーラス層10aの厚さは、0.01μm以上30μm以下とすればよく、例えば10μm程度とする。ポーラス層10aの空孔径は、0.002μm以上5μm以下とすればよく、例えば0.01μm程度とする。ポーラス層10aの空孔率は、10%以上70%以下とすればよく、例えば20%程度とする。
図4は、第1導電型層12及びベース層14を形成した材料基板10を示す図である。材料基板10のポーラス層10a上に第1導電型層12、ベース層14が形成される。第1導電型層12及びベース層14は、化学気相成長法(CVD)で形成することができる。第1導電型層12及びベース層14は、ポーラス層10aをシード層としたエピタキシャル成長により形成され、結晶質の半導体層同士が接合されたホモ接合領域を形成する。例えば、材料基板10を950℃に加熱し、水素(H2)で希釈されたジクロロシラン(SiH2Cl2)を原料ガスとして供給することにより成膜することができる。水素(H2)とジクロロシラン(SiH2Cl2)の流量は、例えばそれぞれ0.5(l/min)及び180(l/min)とする。また、必要に応じてホスフィン(PH3)をドーピングガスとして添加する。
図5は、パッシベーション層16を形成した材料基板10を示す図である。パッシベーション層16は、ベース層14上に形成される。パッシベーション層16は、シラン(SiH4)に酸素(O2)又は窒素(N2)を混合した原料ガスをプラズマ化して供給するプラズマ化学気相成長法(PECVD)により形成することができる。
図6は、図5に示す材料基板10を支持基板18上に配置した状態を示す図である。図6に示す材料基板10は、図5に示す材料基板10と上下を逆さまにして描かれており、下を向いたパッシベーション層16の表面が支持基板18の接合部18bに接している。なお、この時点では、パッシベーション層16と支持基板18とは共有結合をしておらず、その表面が互いに接している状態である。
図7は、図6に示す材料基板10と支持基板18を陽極接合する様子を示す図である。陽極接合は、材料基板10と支持基板18とを電極50、52により挟み込み、真空に排気した状態で200℃以上600℃以下の温度範囲で加熱し、電極50、52間に300Vから1kV程度の電圧を印加して行う。例えば、材料基板10と支持基板18とを400℃に加熱し、支持基板18側の電極52が負電圧となるように600Vの電圧を20分間印加することにより、パッシベーション層16と支持基板18とを陽極接合する。
支持基板18側の電極52が負電圧となるように電圧を印加すると、支持基板18に印加される電界により、支持基板18中に含まれるアルカリ金属元素であるナトリウムが接合部18bから電極52の方向に移動する。これにより、接合部18bのナトリウム濃度が、接合部18b以外の領域と比較して低くなる。具体的には、陽極接合前の支持基板18のナトリウム濃度が、3×1018atoms/cm3程度であるのに対し、接合部18bのナトリウム濃度は、1×1018atoms/cm3以下となる。そして、ナトリウム濃度が減少した接合部18bには、SiO−イオンが残される。このSiO−イオンがパッシベーション層16の主材料であるSiとSi−O−Si共有結合を形成することで、より強固な接合が形成される。
また、陽極接合することにより、パッシベーション層16である窒化シリコン層(SiN)から窒素(N)が抜け、パッシベーション層16と支持基板18との間にはSi−O共有結合が形成される。これにより、パッシベーション層16と支持基板18とが強固に接合される。なお、陽極接合を行う前に、パッシベーション層16と支持基板18との間に酸素プラズマを発生させて接合面を予め表面処理してもよい。
図8は、陽極接合後に第1導電型層12から材料基板10を分離した状態を示す図である。陽極接合の際に加熱された材料基板10が冷却されることによって、第1導電型層12とポーラス層10aの接合面から材料基板10が自然分離される。自然分離は、支持基板18と材料基板10との熱膨張係数の違いによる内部応力の発生により生じる。陽極接合による200℃以上600℃以下の加熱状態から室温程度の冷却状態へ移行することによって、支持基板18と材料基板10との熱膨張係数の違いによる内部応力が発生する。ガラスの熱膨張係数は9×10−6/K程度であり、シリコンの熱膨張係数は2.55×10−6/K程度であることから、支持基板18がベース層14より大きく収縮することによって内部応力が発生する。この内部応力がポーラス層10aに掛かり、脆弱であるポーラス層10aと第1導電型層12との間で剥離が生ずる。
なお、材料基板10の分離処理では、機械的な処理を適用してもよい。例えば、材料基板10及び支持基板18を真空チャックで吸着し、双方を引き離すように引っ張ることによって、ポーラス層10a部分から材料基板10を切り離すことができる。また、材料基板10の側面からポーラス層10aにウォータージェットを吹き付けることによって、ポーラス層10a部分から材料基板10を切り離すことができる。
以上のように、ポーラス層10aと第1導電型層12との間で材料基板10を分離することによって、支持基板18上に第1導電型層12、ベース層14、パッシベーション層16を含む分離層30を転写形成することができる。
図9は、材料基板10を分離した支持基板18をエッチング洗浄した後の状態を示す図である。第1導電型層12上に残留しているポーラス層10aの一部を除去するため、フッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)とを混合したフッ硝酸を用いて、支持基板18をエッチング洗浄する。この処理により、ポーラス層10aの一部がエッチング除去されるとともに、支持基板18の裏面であって分離層30が接合されていない領域がエッチング除去され凹部18cが形成される。したがって、支持基板18の裏面は、分離層30が接合されている領域が接合部18bとなり、それ以外の領域が凹部18cとなる。なお、処理条件を制御することで、支持基板18とパッシベーション層16との間にアンダーカット状に形成される周端部18dを設けることができる。
また、凹部18cを形成するために、フッ化水素酸(HF)のみを用いて、支持基板18をエッチング洗浄を行ってもよい。フッ化水素酸によるエッチング洗浄を行うことで、ガラス基板である支持基板18を選択的にエッチング除去することができ、支持基板18の裏面である接合部18bからの深さを大きくとった凹部18cを形成できる。なお、フッ化水素酸によるエッチング洗浄と、フッ硝酸によるエッチング洗浄のどちらか一方のみとしてもよく、これら両方のエッチング洗浄を組み合わせてもよい。
図10は、図9の絶縁層20及び第1導電型層12がパターニングされた状態を示す図である。まず、第1導電型層12上に絶縁層20を形成する。絶縁層20は、シラン(SiH4)に窒素(N2)を混合した原料ガスをプラズマ化して供給するプラズマ化学気相成長法(PECVD)により形成することができる。その後、エッチングペーストを用いてパターニングを行う。例えば、燐酸を含むエッチングペーストをスクリーン印刷法等により所望のパターンに塗布することによって、絶縁層20と共に第1導電型層12を除去することができる。
また、所望のパターンとなるように絶縁層20をドライエッチングで除去し、絶縁層20をマスクとして第1導電型層12をドライエッチング又はウエットエッチングにより除去してもよい。絶縁層20のドライエッチングには、四フッ化炭素(CF4)を用いた気相反応を適用すればよい。また、第1導電型層12のドライエッチングには、六フッ化硫黄(SF6)を用いた反応イオンエッチング(RIE)を適用すればよい。第1導電型層12のウエットエッチングには、フッ化水素酸を含むエッチャントを用いればよい。
なお、第1導電型層12のパターニングの際には、凹部18cが設けられる領域を同時にエッチング除去し、凹部18cをさらに拡張するようにしてもよい。また、凹部18cの領域に膜が形成されないようにマスクを施しておいたり、膜が形成された後にエッチング等で選択的に除去したりしてもよい。後述する各膜の成膜時においても、同様である。
第1導電型層12及び絶縁層20は、光起電力素子の裏面からできるだけ均等に電力を集電できるようにパターニングすることが好ましい。例えば、光起電力素子に一般的に適用されているフィンガー及びバスバーを含む櫛形のパターンとすることが好ましい。ここで、図1に示した第1導電型コンタクト領域C1の面積を第2導電型コンタクト領域C2の面積より小さくするようにパターンを形成することが好適である。
図11は、図10のパターニングによって露出されたベース層14及び絶縁層20上にi型層22、第2導電型層24及び透明電極層26を形成した状態を示す。i型層22及び第2導電型層24は、シラン(SiH4)等のケイ素含有ガスのPECVDにより形成することができる。シラン(SiH4)等のケイ素含有ガスを供給しつつ、高周波電源から高周波電極へ高周波電力を供給することによって原料ガスのプラズマが生成され、プラズマからベース層14及び絶縁層20上に原料が供給されてシリコン薄膜が形成される。原料ガスには、必要に応じてジボラン(B2H6)等のドーパント含有ガスを混合する。透明電極層26は、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
図12は、図11で形成されたi型層22、第2導電型層24、透明電極層26及び絶縁層20をパターニングした状態を示す。パターニングは、エッチングペーストを用いて行うことができる。燐酸を含むエッチングペーストをスクリーン印刷法等により所望のパターンに塗布することによって、i型層22、第2導電型層24、透明電極層26及び絶縁層20の一部領域を除去する。
ここでは、絶縁層20及び第1導電型層12が残されている第1導電型コンタクト領域C1上のi型層22、第2導電型層24、透明電極層26及び絶縁層20を除去してパターニングする。パターンは、光起電力素子70の裏面からできるだけ均等に電力を集電できるように設定する。例えば、第1導電型層12の櫛形のパターンと交互に組み合わされる櫛形のパターンとすることが好ましい。
図13は、図12でパターニングされた表面上に金属層28を形成した状態を示す。金属層28は、スパッタリング法又はプラズマ化学気相成長法(PECVD)等の薄膜形成方法で形成することができる。
図14は、図13で形成した金属層28を含む層の一部領域をパターニングした状態を示す。第1導電型コンタクト領域C1上の中心32に位置するi型層22、第2導電型層24、透明電極層26及び金属層28を残したまま、その両端34に位置するi型層22、第2導電型層24、透明電極層26及び金属層28を除去する。これにより、金属層28が両端34の位置に形成された溝部により分断され、第1導電型層12に接続される第1電極28nと、透明電極層26に接続される第2電極28pと、が形成される。
なお、i型層22、第2導電型層24、透明電極層26及び金属層28は、レーザーエッチングにより除去することができる。また、スクリーン印刷法等でレジストを塗布してパターニングされたマスクを形成し、マスクを利用してi型層22、第2導電型層24、透明電極層26及び金属層28をそれぞれ別々にエッチングしてもよい。金属層28が銅(Cu)であれば塩化第二鉄をエッチャントとし、金属層28がアルミニウム(Al)であれば燐酸をエッチャントとすればよい。また、透明電極層26のエッチングには、塩酸(HCl)を含むエッチャントを用いればよい。また、i型層22及び第2導電型層24のエッチングには、フッ化水素酸(HF)を含むエッチャントを用いればよい。
また、第1電極28n及び第2電極28pにさらに電解メッキ等で金属層を積層してもよい。例えば、銅(Cu)や錫(Sn)を電解メッキにより形成する。第1電極28n及び第2電極28pに電位を印加した電解メッキ法を適用することにより、第1電極28n及び第2電極28pが残された領域上に金属層が積層される。
その後、並置された複数の光起電力素子70の第1電極28n及び第2電極28pを導電性のタブで接続し、光起電力素子の裏面側に充填材60を塗布し、封止材62で封止する。
このようにして、図1に示す光起電力装置100が形成される。以上の製造方法により、光起電力装置100は、支持基板18が受光面側となり、第1電極28n及び第2電極28pの両方が裏面側に設けられた裏面接合型となる。
本実施の形態における光起電力装置100では、パッシベーション層16と支持基板18の接合部18bとを陽極接合し、パッシベーション層16と接合部18bとの間に共有結合を形成している。このため、支持基板18と光起電力素子70との間をファン・デル・ワールス力や水素結合により接合する場合に比べて、強固に接合することができ、長期に亘って優れた信頼性を保つことができる。
また、陽極接合を行うことで、接合部18bに含まれるアルカリ金属元素であるナトリウムの濃度が、接合部18b以外の領域と比較して低くなるため、陽極接合を行わない場合と比較して、接合部18bから光起電力素子70へのナトリウムの拡散を抑制することができる。これにより、ナトリウムが光起電力素子70に拡散することによる出力特性への影響を抑えることができる。
図15は、光起電力素子70と支持基板18との接合部18b付近の元素濃度プロファイルを示す。図15の元素濃度プロファイルの測定は、接合された光起電力素子70を、厚さ100nm程度の極薄となるまで研磨し、光起電力素子70の側から二次イオン質量分析法(SIMS)により分析したものである。なお、簡易評価のために、パッシベーション層16を介して光起電力素子70と支持基板18とを接合した試料ではなく、ベース層14と支持基板18とを陽極接合した試料にて元素濃度プロファイルを測定した。
図15において、ガラスである支持基板18中のナトリウム濃度が、3×1018atoms/cm3であるのに対し、接合部18bから深さ150nm程度の深さまでナトリウム濃度が低下しており、その最小値は、8×1017atoms/cm3となっている。このように、アルカリ金属元素としてのナトリウムが低濃度となる領域が存在することで、同領域中にナトリウムが抜け出た負電荷が生じ、これらと光起電力素子70中のシリコン元素とが共有結合などの原子レベルの結合を形成する。これにより、支持基板18と光起電力素子70とは極めて強固に接合され、光起電力装置100の機械的強度が向上する。また、大気中のガスまたは水分の浸入に対する耐性も高くなる。
また、前述のナトリウムの低濃度領域は、ガラス基板中に含まれるナトリウムを光起電力素子70から遠ざけることとなり、光起電力素子70の出力特性に影響を与えるナトリウムのガラス基板から光起電力素子70への拡散を抑制することができる。
さらに、隣接する光起電力素子70の間に凹部18cが設けられることにより、アルカリ金属元素であるナトリウムを含有する領域が物理的に削減されている。このため、光起電力素子70へのアルカリ金属元素の拡散が低減され、光起電力素子70の劣化の進行を遅らせることができる。特に、図9に示すように、アンダーカット状に周端部18dを設けることで、光起電力素子70と支持基板18とが接合する面積を低減させることができる。また、図9に示す工程だけでなく、図10〜図14に示す工程において光起電力素子70の間の領域に形成される絶縁層20や金属層28等を積極的に除去することによって、凹部18cをさらに拡張して形成し、アルカリ金属元素であるナトリウムが含有する領域をさらに削減することができる。
一方で、陽極接合によって支持基板18と光起電力素子70とを接合した場合、加熱された状態で両者が共有結合されるため、支持基板18と光起電力素子70との熱膨張係数の違いから、支持基板18の接合部18bと光起電力素子70との間に大きな内部応力が生じる。接合部18bと光起電力素子70の間に生じる応力は、隣接する光起電力素子70やその接合部18bにもその応力が伝播し、支持基板18全体が大きく歪むこととなるため、支持基板18に接合される光起電力素子70はその影響を受ける。
しかし、本実施の形態における光起電力装置100は、隣接する光起電力素子70の間に凹部18cが設けられているため、支持基板18と光起電力素子70と間に作用する応力を凹部18cに逃がすことができ、隣接する光起電力素子70に応力が伝播することを防ぐことができる。したがって、陽極接合により支持基板18と光起電力素子70とをより強固に接合しつつ、凹部18cにより接合部18bと光起電力素子70との間に生じる応力が支持基板18全体に及ぶことを抑えることができる。その結果、支持基板18及び複数の光起電力素子70全体に及ぶ歪みの発生を抑え、長期に亘って優れた信頼性を保つことができる。
また、ベース層14の膜厚を1μm以上100μm以下としたことにより、支持基板18とベース層14との間に生ずる応力を緩和することができ、支持基板18の割れ等の破損を抑制することができる。
以上、本発明を実施形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について述べる。
本実施の形態では、矩形の光起電力素子70に対応させて、接合部18bの形状を矩形としているが、例えば、円形の光起電力素子70を用いる場合には、接合部18bの形状を円形としてもよい。なお、接合部18bの形状はこれらに限られず、光起電力素子70の形状に合わせて適宜形状を変更することができる。
また、本実施の形態では、光起電力装置100として、裏面接合型光起電力素子の光起電力素子70を用いた場合を紹介したが、光起電力素子70として表面接合型光起電力素子を用いた構成としてもよく、支持基板18上に光起電力素子70が複数配置されている光起電力装置であればよい。
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の光起電力装置は、複数の光起電力素子と、複数の光起電力素子のそれぞれが間隔をおいて接合される複数の接合部が設けられる支持基板と、を備え、前記光起電力素子は、前記接合部において前記支持基板と共有結合されており、前記支持基板は、前記複数の接合部の間に凹部が設けられる。
この態様によれば、支持基板と光起電力素子とを共有結合させることにより、支持基板と光起電力素子とをより強固に接合することができる。また、複数の接合部の間に凹部が設けられているため、共有結合により支持基板と光電力素子との間に発生する大きな内部応力を凹部に逃がすことができ、隣接する光起電力素子に応力が伝播することを防ぐことができる。したがって、支持基板と光起電力素子とをより強固に接合しつつ、支持基板と光起電力素子との間の応力により光起電力装置全体に及ぶ歪みの発生を抑えることができる。その結果、長期に亘って優れた信頼性を保つことができる。
前記支持基板は、アルカリ金属元素を含むものであってもよい。前記接合部は、前記支持基板に含まれるアルカリ金属元素の濃度が、前記接合部以外の領域と比較して低い。
この態様によれば、アルカリ金属元素としてのナトリウムが低濃度となる接合部が存在することで、接合部においてナトリウムが抜け出た負電荷が生じ、これらと光起電力素子のシリコン元素とが共有結合することにより、極めて強固に接合され、光起電力装置の機械的強度が向上する。
また、前述のナトリウムの低濃度領域は、ガラス基板中に含まれるナトリウムを光起電力素子から遠ざけることとなり、光起電力素子の出力特性に影響を与えるナトリウムがガラス基板から光起電力素子へ拡散することを抑制できる。
前記接合部は、前記光起電力素子と陽極接合されていてもよい。
この態様によれば、光起電力素子と支持基板とは、簡素な方法である陽極接合で強固な接合を形成できる。また、EVA等の樹脂の充填材を用いた場合に比べて、耐熱性が高く、後工程における高温での処理が可能となる。
前記光起電力素子は、結晶質シリコンを含むベース層と、前記ベース層と共有結合するパッシベーション層と、を備えていてもよい。前記接合部は、前記パッシベーション層と接合される。
この態様によれば、パッシベーション層は、ベース層の表面に共有結合し、ベース層の未結合手(ダングリングボンド)を終端させる役割を果す。これにより、光起電力素子の受光面側におけるキャリアの再結合による損失を抑制することができる。
10…材料基板、10a…ポーラス層、12…第1導電型層、14…ベース層、16…パッシベーション層、18…支持基板、18a…受光面、18b…接合部、18c…凹部、18d…周端部、20…絶縁層、22…i型層、24…第2導電型層、26…透明電極層、28…金属層、28n…第1電極、28p…第2電極、50、52…電極、60…充填材、62…封止材、70…光起電力素子、100…光起電力装置。
Claims (4)
- 複数の光起電力素子と、
前記複数の光起電力素子のそれぞれが間隔をおいて接合される複数の接合部が設けられる支持基板と、
を備え、
前記光起電力素子は、前記接合部において前記支持基板と共有結合されており、
前記支持基板は、前記複数の接合部の間に凹部が設けられることを特徴とする光起電力装置。 - 前記支持基板は、アルカリ金属元素を含むものであり、
前記接合部は、前記支持基板に含まれる前記アルカリ金属元素の濃度が、前記接合部以外の領域と比較して低いことを特徴とする請求項1に記載の光起電力装置。 - 前記接合部は、前記光起電力素子と陽極接合されることを特徴とする請求項1または2に記載の光起電力装置。
- 前記光起電力素子は、結晶質シリコンを含むベース層と、前記ベース層と共有結合するパッシベーション層と、を備え、
前記接合部は、前記パッシベーション層と接合されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光起電力装置。
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2012
- 2012-08-31 JP JP2012192384A patent/JP2014049650A/ja active Pending
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