JP2014047418A - 真空蒸着装置内への適正な反応性ガス量の導入方法。 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蒸着材料容器から蒸発する金属の量に応じて適正量の反応性ガスを導入し、金属化合物薄膜をフィルム基体上に蒸着する真空蒸着装置において、前記装置内の絶対圧力を検出し、基準量の20〜70%の一定量の反応性ガスを前記装置内へ導入しながら、前記絶対圧力の検出値が設定値と等しくなるように前記装置内への反応性ガスの導入量を制御する。
【選択図】図2
Description
この場合、蒸着材料自身の変動、或いは、真空容器内の各所での吸着または離脱する反応性ガス量に起因し、蒸着中の反応性ガス量が変動して真空容器内の反応性ガス分圧が変動することが多々あり、注意していないと、安定した金属化合物蒸着膜を得ることが難しくなる。また、真空容器内への反応性ガスの導入の方法や分散に留意し、蒸着材料蒸気の流れの乱れを抑制しないと、安定した高品質の金属化合物蒸着膜が得難くなる。
特許文献2では、被蒸着物質の幅方向において反応物質吹出し量をより高度に均一にする真空蒸着装置として、第1ないし第4酸素吹出し管に合成樹脂フィルムの幅方向に分割して設け、これらの第1ないし第4酸素吹出し管を通して酸素をアルミの蒸気中に吹き出すようにし、各酸素吹出し管の各酸素吹出し孔からの酸素吹出し量が均一となり、合成樹脂フィルムの幅方向におけるアルミと酸素との反応のばらつきが解消され、また、第1および第4マノメータでそれぞれ第1および第4酸素給送管の流量を測定し、その測定結果に基づいて、第1ないし第4酸素吹出し管からの吹出し量が均一となるように、第1ないし第4流量調整バルブを制御することが開示されている。
特許文献3では、被蒸着フィルムの幅方向における反応物質の吹出し量を均一にすると共に蒸着材料蒸気の流れの乱れを抑制して、高品質の蒸着を可能にする真空蒸着装置として、蒸着材料蒸気の流れの中に酸素を吹き込むための吹出し孔を多数備えた酸素吹出し管の内部を複数の仕切りによって複数の吹出し領域に分割し、各吹出し領域の長さを短くすることで、各吹出し孔からの酸素吹出し量の均一化を図り、しかも各吹出し領域には、管端に配置した酸素給送具及び管内に挿入した酸素給送用内管を介して酸素を給送する構成とすることで、酸素給送用の配管を有効蒸着領域の外に配置し、蒸発した蒸着材料の流れを乱さないようにすることが開示されている。
例えば、特許文献1では、反応性ガスとして適正量の酸素を自動導入する方法では、質量分析計により装置内の絶対圧力(酸素ガス分圧)を常時計測して、その酸素ガス分圧信号を酸素ガス流量演算器に送り、酸素ガス流量演算器では、それに予め設定されている目標酸素ガス分圧指令と質量分析計からの酸素ガス分圧信号との差を演算して、酸素ガス供給量を算出し、それを酸素ガス供給量信号としてマスフローコントローラに出力し、マスフローコントローラでは、これに基づく量の酸素を装置内に導入しノズルから噴出すことにより、適正な酸素量の供給が安定してなされる。
酸素の導入が一時的にせよ停止すると、蒸着材料容器の金属蒸発界面の安定性に悪影響を及ぼし、更に、その後のマスフローコントローラによる自動復帰にても、導入酸素量の制御のハンチングがどうしても大きくなり、安定した蒸着運転に復帰するのに時間を費やし、その間の不安定な蒸着運転での金属化合物蒸着膜は不良品となり、製造効率を大きく低下させる要因となる。
また、蒸着材料容器から蒸発する金属量が大幅に変動した場合にのみ、自動操作でなく、手動操作に切替えて適正量の酸素を導入することも実施されているが、操作員が必要であり、安定した蒸着運転に復帰する迄の時間は若干短縮できるが、確実に製造効率の低下を防ぐまでには至っていないのが現状である。
本発明での基準量の反応性ガスとは、目的とする厚み、平均粒径、薄膜性能を有する金属化合物薄膜を得るために必要となる基準の反応性ガスの量であり、適正量の反応性ガスとは、基準の反応性ガスの量をもとに、装置の絶対圧力の検出値が設定値と等しくなるように制御されて装置内へ導入される反応性ガスの量を意味する。
本発明では、好ましくは、反応性ガス導入管を本管とそれから分岐するバイパス管とに別け、通常の安定した蒸着時には、基準量の20〜70%である一定量の反応性ガスを本管で装置内に導入し、バイパス管で変動量の反応性ガスを絶対圧力の検出値が設定値と等しくなるようにマスフローコントローラなどで制御して装置内へ導入することにより、適正な反応性ガス量を問題なく導入することができる。
この場合、装置内或いは外で本管とバイパス管が合流して装置内に反応性ガスが導入されても良いが、本管とバイパス管が合流せずに、それぞれ別個に反応性ガスを装置内に導入することが好ましい。
そして、蒸発する金属量が大幅に変動した場合は、特に、蒸発する金属量が大幅に低下した場合でも、反応性ガスの導入を停止せずに一定量の反応性ガスを本管にて導入し続けることにより、蒸着材料容器の金属蒸発界面の安定性が良くなり、更に、変動する反応性ガス量の自動制御のハンチングが小さくなり、安定した蒸着運転に復帰する迄の時間が短縮され、製造効率を低下させないですむ。
また、蒸着の立上げ時の蒸発する金属量が大幅に変動する場合も、手動調整と本発明の方法を併用することにより、早期の安定運転が可能となる。
本発明での蒸発する金属量の大幅な変動とは、目的とする厚み、平均粒径、薄膜性能を有する金属化合物薄膜を得るために必要な通常の安定した蒸着時に蒸発する金属量を基準値として、蒸発する金属量が基準値の75%以上増加或いは減少した状態を意味する。
一定量の反応性ガスが基準量の20%未満では、効果が乏しくなり、70%を超えると、効果が乏しくなると共に、通常の安定した蒸着時の蒸発する金属量の小さな変動に対応出来難くなる。
本管にて一定量の反応性ガスを装置内の蒸着材料容器の近傍に導入し続けることにより、蒸着材料容器の金属蒸発界面の安定性が更に良くなり、得られる金属酸化物蒸着膜の膜厚及び平均粒径の公差も小さくなる。
本発明にて、蒸着材料容器の近傍とは、図2に示すように、装置内の蒸着材料容器とフィルム基体との空間部の直線距離をLとした場合、蒸着材料容器からL/10以内の距離で、蒸着材料容器のほぼ直上の位置を意味する。
また、本発明の真空蒸着装置内への適正な反応性ガス量の導入方法は、前記反応性ガスは、酸素、窒素、フッ素からなるグループから選択された1種であることを特徴とする。
本実施形態では、金属(蒸着材料)としてチタン、反応性ガスとして酸素を使用する。
図1に示す透明フィルム10は、透明基材11の少なくとも一方の面に形成された透明な酸化チタン層12を有する。
透明基材11の材料としては、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、又はポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セロファン、セルローストリアセテートなどのセルロース系フィルム、ポリカーボネート系樹脂、などがある。また、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体、若しくは複数層からなる積層体であっても良く、延伸フィルムでも未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、機械的強度やコスト面から好ましく、ポリエチレンテレフタレートが最適である。
透明基材11の厚さは、2.5〜800μm程度であるが、15〜40μmの範囲内にて設定することが好ましい。
酸化チタン層12は、透明基材11の少なくとも一方の表面に、図2の電子ビーム加熱式真空蒸着装置50にて得られた酸化チタン薄膜であり、例えば、層厚が80〜120nmであり、平均粒径が10〜17nmであり、輝度が42〜56cd/m2であり、反射率が17〜27%である。
冷却ドラム52と蒸着材料保持部56との間には、蒸着範囲を規制するための隔壁66が設けられていることが好ましい。この隔壁66は、冷却ドラム52を収容する半円筒状部分66Aを有し、この半円筒状部分66Aの内周面と、冷却ドラム52のフィルム巻回部の外周面との間には一定の間隙が形成されている。半円筒状部分66Aには、蒸着材料保持部56と対向する位置に、長方形状の蒸気通過口68が冷却ドラム52の軸線方向に沿って形成されている。この蒸気通過口68は透明フィルム10の蒸着幅と同じ全長を有する。
そして、真空容器51への適正な反応酸素量の導入は、絶対ガス圧センサー72にて真空容器51の絶対ガス圧(酸素分圧)を測定し、ガス導入本管Mにて、基準量の20〜70%の一定量の酸素を装置50の蒸着材料保持部56の近傍に導入しながら、マスフローコントローラRにて調節された量の酸素をガス導入バイパス管Nにて装置50へ導入することによりなされる。
マスフローコントローラRでの変動する酸素量の調整は、酸素ガス量演算器Qにて、測定絶対ガス圧信号と目標絶対ガス圧指令信号との差と、基準ガス流量指令信号(一定導入の酸素量)との関係から必要な酸素ガス供給量を算出し、それを供給量信号としてマスフローコントローラRに出力することによりなされる。
この適正な酸素量導入方法により、蒸発するチタン蒸気Eの量が大幅に変化した場合、特に、蒸発するチタン蒸気Eの量が大幅に低下した場合でも、酸素導入を停止せずに一定量の酸素を導入し続けるので、蒸着材料保持部56のチタン蒸発界面59の安定性が良くなり、更に、変動する酸素量の自動制御のハンチングが小さくなって安定した蒸着運転に復帰する迄の時間が短くなり、製造効率を低下させず、得られる酸化チタン層12の膜厚及び平均粒径の公差も小さくなる。
一定量の酸素が基準量の20%未満では、効果が乏しくなり、70%を超えると、効果が乏しくなると共に、通常の安定した蒸着時の蒸発するチタン蒸気Eの量の小さな変動に対応出来に難くなる。
本発明での蒸発する金属量の大幅な変動とは、目的とする厚み、平均粒径、薄膜性能を有する金属化合物薄膜を得るために必要な通常の安定した蒸着時に蒸発する金属量を基準値として、蒸発する金属量が基準値の75%以上増加或いは減少した状態を意味する。
本発明にて、蒸着材料容器の近傍とは、図2に示すように、装置内の蒸着材料容器とフィルム基体との空間部の直線距離をLとした場合、蒸着材料容器からL/10以内の距離で、蒸着材料容器のほぼ直上の位置を意味する。
本発明での基準量の反応性ガスとは、目的とする厚み、平均粒径、薄膜性能を有する金属化合物薄膜を得るために必要となる基準の反応性ガスの量であり、適正量の反応性ガスとは、基準の反応性ガスの量をもとに、装置の絶対圧力の検出値が設定値と等しくなるように制御されて装置内へ導入される反応性ガスの量を意味する。
フィルム:厚さ25μm、幅500mm、PET製
蒸着材料:チタン
蒸着膜厚:100nm
蒸着膜平均粒径:15nm
真空度:700mPa
水分分圧:20mPa
酸素導入圧力:1× 10−1mPa
電子ビーム発生機構:電子衝撃陰極式自己加速型電子銃(90゜偏向)
加速電圧:30kV
エミッション電流:2A
電子銃のスキャン幅:500mm
蒸着材料保持部とフィルム間の距離:250mm
冷却ドラムの外径:400mm
フィルムの走行速度:10m/分
ここで、装置の絶対圧力を1×10−1mPaに設定し、基準となる酸素流量を0.7slm(1気圧、0℃における1分間当たりの流量をリットルで表示)として、絶対圧力の測定値が設定値と一致する様に、導入酸素量を自動的に調整し、60分間装置を稼働した。
基準となる酸素流量の40%を絶対圧力に拘わらず一定量として、本管より蒸着材料容器の近傍に導入し、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき、バイパス管に取付けた調整バルブにて、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき自動的に変動する酸素量を装置空間部に導入した。
この運転時に、蒸着材料のチタン塊中の巣に起因して、一時的にチタン蒸発量が激減し、絶対圧力の測定値が急激に上昇する現象が3回見られたが、自動的に正常運転に復帰するまでの時間は平均で5秒であった。
得られた酸化チタン蒸着膜の膜厚は100nm±8nmであり、平均粒径は15nm±1nmであった。
[実施例2]
基準となる酸素流量の20%を絶対圧力に拘わらず一定量として、本管より蒸着材料容器の近傍に導入し、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき、バイパス管に取付けた調整バルブにて、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき自動的に変動する酸素量を装置空間部に導入した。
この運転時に、蒸着材料のチタン塊中の巣に起因して、一時的にチタン蒸発量が激減し、絶対圧力の測定値が急激に上昇する現象が4回見られたが、本供給方法では、正常運転に復帰するまでの時間は平均で6秒であった。
得られた酸化チタン蒸着膜の膜厚は100nm±6nmであり、平均粒径は15nm±1nmであった。
[実施例3]
基準となる酸素流量の70%を絶対圧力に拘わらず一定量として、本管より蒸着材料容器の近傍に導入し、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき、バイパス管に取付けた調整バルブにて、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき自動的に変動する酸素量を装置空間部に導入した。
この運転時に、蒸着材料のチタン塊中の巣に起因して、一時的にチタン蒸発量が激減し、絶対圧力の測定値が急激に上昇する現象が5回見られたが、本供給方法では、正常運転に復帰するまでの時間は平均で3秒であった。
得られた酸化チタン蒸着膜の膜厚は100nm±7nmであり、平均粒径は15nm±1nmであった。
[実施例4]
基準となる酸素流量の40%を絶対圧力に拘わらず一定量として、本管より装置空間部に導入し、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき、バイパス管に取付けた調整バルブにて、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき自動的に変動する酸素量を装置空間部に導入した。
この運転時に、蒸着材料のチタン塊中の巣に起因して、一時的にチタン蒸発量が激減し、絶対圧力の測定値が急激に上昇する現象が6回見られたが、自動的に正常運転に復帰するまでの時間は平均で5秒であった。
得られた酸化チタン蒸着膜の膜厚は100nm±15nmであり、平均粒径は15nm±3nmであった。
本管より酸素を供給せずに、バイパス管に取付けた調整バルブにて、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき変動する装置空間部に供給する全酸素量を自動的に調整した。
この運転時に、蒸着材料のチタン塊中の巣に基づき、一時的にチタン蒸発量が激減し、
絶対圧力の測定値が急激に上昇する現象が3回見られたが、本供給方法では、正常運転に復帰するまでの時間は平均で40秒であった。
得られた酸化チタン蒸着膜の膜厚は100nm±30nmであり、平均粒径は15nm±10nmであった。
[比較例2]
基準となる酸素流量の90%を絶対圧力に拘わらず一定量として、本管より蒸着材料容器の近傍に導入し、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき、バイパス管に取付けた調整バルブにて、絶対圧力の測定値と設定値との差の電気信号に基づき自動的に変動する酸素量を装置空間部に導入した。
この運転時に、蒸着材料のチタン塊中の巣に起因して、一時的にチタン蒸発量が激減し、絶対圧力の測定値が急激に上昇する現象が4回見られたが、本供給方法では、正常運転に復帰するまでの時間は平均で10秒であった。
得られた酸化チタン蒸着膜の膜厚は100nm±20nmであり、平均粒径は15nm±8nmであった。
これらの結果をまとめると表1のようになる。
11 透明基材
12 酸化チタン層
50 電子ビーム加熱式真空蒸着装置
51 真空容器
56 蒸着材料保持部
58 チタン蒸着材料
70、71 ノズル
72 絶対ガス圧センサー
M ガス導入本管
N ガス導入バイパス管
R マスフローコントローラ
Q 演算器
Claims (4)
- 蒸着材料容器から蒸発する金属の量に応じて適正量の反応性ガスを導入し、金属化合物薄膜をフィルム基体上に蒸着する真空蒸着装置において、前記装置内の絶対圧力を検出し、基準量の20〜70%の一定量の反応性ガスを前記装置内へ導入しながら、前記絶対圧力の検出値が設定値と等しくなるように前記装置内への反応性ガスの導入量を制御することを特徴とする真空蒸着装置内への適正な反応性ガス量の導入方法。
- 前記装置内への適正な反応性ガス量の導入をガス導入本管とそのバイパス管とで実施し、前記本管にて一定量の反応性ガスを前記装置内の蒸着材料容器の近傍部に導入し、前記バイパス管にて変動する量の反応性ガスを、前記近傍部を除く前記蒸着材料容器と前記フィルム基体との空間部に導入することを特徴とする真空蒸着装置内への適正な反応性ガス量の導入方法。
- 前記金属は、Ti、Si、Al、Zr、In、Y、Zn、Cu、Ag、Au 、Sn、Niからなるグループから選択された1種であることを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の真空蒸着装置内への適正な反応性ガス量の導入方法。
- 前記反応性ガスは、酸素、窒素、フッ素からなるグループから選択された1種であることを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の真空蒸着装置内への適正な反応性ガス量の導入方法。
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