JP2014047414A - 外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた降伏強度900MPa以上の高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%でC:0.04%以上、0.15%以下、Si:0.01%以上、0.25%以下、Mn:0.1%以上、2.5%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.005%以上、0.05%以下、N:0.01%以下、Ti:0.01%以上、0.12%以下、B:0.0003%以上,0.0050%以下の化学成分組成を有し、組織の90%以上がマルテンサイトであり、TiC析出量が0.05%以下であり、JISG0202に規定するA系介在物の清浄度が0.010%以下の高強度熱延鋼板である。連続熱間圧延装置の仕上圧延機列の初段入側温度を1000℃以上1100℃以下、最終段出側温度をAr3点以上とし、15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、200℃以下で巻き取る。
【選択図】なし

Description

本発明は、外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた降伏強度900MPa以上の高強度熱延鋼板及びその製造方法に関するものである。
建設機械用クレーンのブームは長尺化される傾向にある。そのため、ブーム自体の軽量化と、吊り上げ運搬容量の拡大を図るため、その素材となる鋼板に対しては、より高い降伏点を有するとともに、曲げ加工性及び靭性に優れた鋼板に対する要求が高い。さらに、部材性能を高いレベルで確保するために、曲げ加工性と靭性と降伏強度の異方性を小さくすることが要望されている。また、クレーンのブームは熱延のスケールを残存させたままの状態で用いるため、寸法精度向上のための表面性状や車両外観の観点から、鋼板外観に優れていることが望まれている。
特許文献1においては、Ti添加によりフェライト中のTiC析出による高強度化と、A系介在物のMnSからC系介在物のTiSに変化させてC曲げ加工性能を向上させる技術が開示されている。
特許文献2においては、Tiを適量添加することにより、曲げ加工性及び靭性の等方性に優れた鋼板の製造方法と、鋼板内での材質変動を小さくした技術が開示されている。
特公平3−65425号公報 特開2010−156016号公報
特許文献1に記載の発明は、Ti添加によりフェライト中のTiC析出による高強度化を狙っている。粗圧延機、複数基の仕上圧延機を直列配置してなる仕上圧延機列、ランアウトテーブルに設けられた冷却装置(以下、ROT冷却装置という)、巻取機等を備えてなる連続熱間圧延装置において900℃以下の圧延率が高い連続仕上圧延を開示している。この場合、組織の結晶粒が細粒化し、高靭性は得られるが、フェライトやベイナイトが強い方位集積を示し、降伏強度や靭性の異方性が非常に強い。
特許文献2に記載の発明は、鋼板の曲げ加工性と靭性の等方性を改善することを可能にしたものの、Si添加により吸収エネルギーの絶対値が低下してしまい、吸収エネルギーの絶対値が劣位なことがわかった。また、特許文献1にあるように、900℃以下の圧下率が高い連続仕上圧延とすることで組織の細粒化と高靭性化を狙っている。低温で連続仕上圧延することにより、Ti系析出物が多量に析出し、MnSの延伸化を防ぎ、マルテンサイト組織で異方性を軽減している。しかしながら、低温で連続仕上圧延するためには生産性の観点から連続熱間圧延装置の仕上圧延機列の初段の仕上圧延機の入側温度も1000℃未満で極力低くする必要があるが、TiCが多量に析出するため鋼中のC添加量に対してマルテンサイトの強度が低いことや、TiNを起点とした脆性割れによる靭性劣化が生じていることが新たにわかった。また、Siが添加されているためSiがスケールとなり模様となって、外観を劣化させる原因となっている。
本発明は、外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた降伏強度900MPa以上の高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、熱延鋼板の外観を改善させるためにはSi量を低減させることが有効であり、高い降伏強度と靭性を両立し、降伏強度と靭性の異方性を小さくするためには鋼板組織をマルテンサイトとすると共に、TiC析出量の上限を0.05%以下にすることが有効であることがわかった。また、特許文献1と2に示されているA系介在物は靭性や曲げ加工性だけでなく、降伏強度の異方性にも関与しており、A系介在物が0.010%の清浄度以下であれば等方性に優れた鋼板が製造できることが分かった。その手段として、特許文献1,2にあるように、Ti添加によるA系介在物の抑制が有効であるが、特許文献1にあるようにTiは仕上圧延中にTiCとして析出するため、オーステナイトの固溶Cを減少させ、鋼板組織のマルテンサイトの強度を低下させる。本発明者らは熱延条件とTi析出物の関係を詳細に解析し、連続熱間圧延装置の仕上圧延機列の初段の仕上圧延機の入側温度がTiC析出量と鋼板強度に与える影響が大きく、TiCの量を適正範囲に制御することで、A系介在物の抑制と鋼板強度を両立することを見出した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた降伏強度900MPa以上の高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供するものである。
即ち、本発明の要旨するところは以下の通りである。
(1)質量%で
C :0.04%以上、0.15%以下,
Si:0.01%以上、0.25%以下,
Mn:0.1%以上、2.5%以下,
P :0.1%以下,
S :0.01%以下,
Al:0.005%以上、0.05%以下,
N :0.01%以下,
Ti:0.01%以上、0.12%以下
B :0.0003%以上,0.0050%以下,
残部:Feおよび不可避的不純物
からなる化学成分組成を有し、組織の90%以上がマルテンサイトであり、TiC析出量が0.05%以下であり、JISG0202に規定するA系介在物の清浄度が0.010%以下であることを特徴とする外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた高強度熱延鋼板。
(2)さらに、質量%で
Nb:0.01%以上,0.10%以下,
Ca:0.0005%以上、0.0030%以下
Ni:0.02%以上,3.0%以下,
Mo:0.02%以上,0.5%以下,
Cr:0.02%以上,1.0%以下,
の1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた高強度熱延鋼板。
(3)上記(1)または(2)に記載の化学成分組成の連続鋳造スラブを再加熱し、粗圧延、複数基の仕上圧延機を直列配置してなる仕上圧延機列で連続的に仕上圧延後、冷却し、巻き取りを行うに際し、再加熱温度を1200℃以上とし、仕上圧延機列の初段の仕上圧延機の入側温度を1000℃以上1100℃以下とし、仕上圧延機列の最終段の仕上圧延機の出側温度をAr3点以上とし、15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、200℃以下で巻き取ることを特徴とする外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明は、降伏強度900MPa以上の高強度熱延鋼板において、所定の成分を含有し、組織の90%以上がマルテンサイトであり、TiCの析出量が適正範囲であり、MnSを起因としたA系介在物の清浄度が0.010%以下に抑制されることにより、表面外観に優れ、鋼板組織の均一性が高く、靭性と降伏強度の等方性に優れた降伏強度900MPa以上の高強度熱延鋼板を提供することが可能となる。具体的には、JISZ 2242に規定するシャルピー試験における吸収エネルギーが圧延方向と幅方向の比が0.6以上、1.2以下であり、降伏強度が圧延方向と幅方向の比が0.8以上、1.2以下を満足することができる。
また、SiとTiの添加量を適正化し、仕上圧延機列の初段の仕上圧延機の入側温度を1000℃以上1100℃以下とし、仕上圧延機列の最終段の仕上圧延機の出側温度をAr3点以上とし、15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、200℃以下の低温で巻き取ることにより、鋼板組織の均一性が高く、TiCの析出量が適正範囲となり、MnSを起因としたA系介在物が抑制され、上記所定の金属組織を得ることが可能となる。
本発明は、降伏強度900MPa以上の高強度熱延鋼板において、所定の成分を含有し、組織の90%以上がマルテンサイトであり、TiCの析出量が適正範囲であり、MnSを起因としたA系介在物の清浄度が0.010%以下に抑制されることにより、表面外観に優れ、鋼板組織の均一性が高く、靭性と降伏強度の等方性を飛躍的に向上させた鋼板とするものである。
また、SiとTiの添加量を適正化し、仕上圧延機列の初段の仕上圧延機の入側温度を1000℃以上1100℃以下とし、仕上圧延機列の最終段の仕上圧延機の出側温度をAr3点以上とし、15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、200℃以下の低温で巻き取ることにより、鋼板組織の均一性が高く、TiCの析出量が適正範囲となり、MnSを起因としたA系介在物が抑制され、上記所定の金属組織を得ることが可能となる。
以下に本発明の個々の構成要件について詳細に説明する。
まず、本発明の成分の限定理由について述べる。
Cは本発明の強度を決める重要な元素である。目的の強度を得るためには0.04%以上含有する必要がある。好ましくは0.06%以上とする。しかし、0.15%超含有していると靭性を劣化させるため、上限を0.15%とする。
Siは予備脱酸に必要な元素であるとともに、固溶強化元素として強度上昇に有効である。予備脱酸に必要な添加量は0.01%以上である。しかし、過度に添加すると表面外観が損なわれるため、その上限は0.25%とする。
Mnは焼入れ性及び固溶強化元素として強度上昇に有効である。目的の強度を得るためには0.1%以上必要である。過度に添加すると靭性の等方性に有害なMnSを生成するため、その上限を2.5%以下とする。
Pは低いほど望ましく、0.1%超含有すると加工性や溶接性に悪影響を及ぼすとともに、疲労特性も低下させるので、0.1%以下とする。
Sは低いほど望ましく、多すぎると靭性の等方性に有害なMnS等の介在物を生成させるため、0.01%以下とする必要がある。厳しい低温靭性が要求される場合には、0.006%以下とすることが好ましい。
Alは溶綱の脱酸に必要な元素であるので、その効果を得るには0.005%以上含有させる必要がある。しかし、過剰に添加すると、クラスタ状に析出したアルミナを生成し、靭性を劣化させるため、その上限は0.05%とする。
NはSよりも高温にてTiと析出物を形成し、Sを固定するのに有効なTiを減少させるばかりでなく、粗大なTi窒化物を形成し、靭性を劣化させる。したがって極力低減させるべきであるが、0.01%以下ならば許容できる。
TiはSと同様に、本発明における靭性の等方性に影響を与える元素である。TiSの析出によりMnSなどの延伸介在物を無害化し、低温靭性を向上させ、等方性を改善することができる。そのため、0.01%以上添加することが必要であるが、0.12%超含有してもその効果が飽和するだけでなく合金コストの上昇を招く。したがって、Tiの含有量は0.01%以上、0.12%以下とする。
Bは添加することにより粒界強度を増加させ、靭性を向上させることができる。Bの含有量が0.0003%以上で靭性向上効果が得られる。一方、0.0050%より多く添加してもその効果は飽和するので、その上限を0.0050%以下とする。
要求特性を満たすために必須ではないが、製造ばらつきを低減させたり、靭性をより向上させるために下記の元素を添加することが好ましい。
Nbは熱延鋼板の結晶粒径を小さくし、靭性をより高めることができる。Nbの含有量が0.01%以上でその効果が得られる。一方、0.10%超ではその効果は飽和するため、その上限を0.10%とする。
Caは溶鋼脱酸に微細な酸化物を多数分散させ、組織微細化のために好適な元素であるとともに、溶鋼の脱硫のために鋼中Sを球形のCaSとして固定し、MnSなどの延伸介在物の生成を抑制して穴拡げ性を向上させる元素である。これらの効果は添加量が0.0005%から得られるが、0.0030%で飽和するため、Caの含有量は0.0005%以上、0.0030%以下とする。
Niは低温靭性を向上させるために有効な元素である。この効果を得るためには0.02%以上添加することが望ましい。ただし、多量の添加はフェライト変態が遅れるため上限を3.0%とする。
Moは焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには0.02%以上の添加が望ましい。ただし、多量の添加はスラブの割れ感受性が高まりスラブの取り扱いが困難になるため、その上限を0.5%とする。
Crは焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには0.02%以上の添加が必要である。ただし、多量の添加は延性が低下するため上限を1.0%とする。
次に、本発明の鋼板の結晶組織について説明する。
本発明の鋼板は、組織が90%以上マルテンサイトであり、TiC析出量が0.05%以下であり、JISG0202に規定するA系介在物の清浄度が0.010%以下であることが必要である。
組織の90%以上がマルテンサイトであることで、結晶方位がランダム化し、引張試験やシャルピー試験の組織起因の材質異方性を無害化することができる。
鋼板中のA系介在物とは、MnSなどの軟質な介在物が熱間圧延によって圧延方向に引き延ばされ、延伸状になったものである。これらの介在物はシャルピー試験片のノッチ方向を圧延方向にとって試験した場合や、圧延方向で引張試験した場合に亀裂の起点となり、試験を圧延方向と直角方向にとった場合に材質に差が生じる。
A系介在物の清浄度が0.010%以下であれば延伸介在物起因の材質異方性を抑制し、シャルピー試験における吸収エネルギーが圧延方向と幅方向の比が0.6以上、1.2以下で、さらに引張試験の降伏強度で圧延方向と幅方向の比が0.8以上、1.2以下になり、材質等方性の向上を実現することができる。
A系介在物の清浄度はTiCの析出量と相関があることを新たに見出した。TiCの効果は2つあり、1つはMnSがTiCを核にして析出するため、鋼中に微細なTiCを分散させることで、MnSを細かく分散させる効果がある。したがって、材質の異方性に有害な粗大延伸介在物を減らす効果がある。2つめは、硬質なTiCとMnSは複合析出するため、圧延中に引き伸ばされにくくする効果もある。本発明は、TiCを析出させることによって、A系介在物の清浄度を0.010%以下とすることができる。
しかしながら、TiCを過剰に析出させるとマルテンサイトの強度に有効なC量が低下するため強度が低下する。したがって、延伸介在物を抑制し、降伏強度を900MPa確保するためのTiC析出量は0.02%以上、0.05%以下となる。
次に製造方法について説明する。
上記本発明の化学成分組成を有する連続鋳造スラブ(以下、スラブという)を熱間圧延するに際し、まずスラブを1200℃以上に加熱する。1200℃未満でスラブを加熱した場合にはTiCがスラブ中に十分に溶解せず、マルテンサイトの強度に必要なCが不足する。
加熱したスラブは粗圧延を行い、さらに複数基の仕上圧延機を直列配置してなる仕上圧延機列で連続的に仕上圧延を行う。本発明においては降伏強度を900MPa確保するために、仕上圧延機列の初段の仕上圧延機の入側温度を1000℃以上1100℃以下とし、仕上圧延機列の最終段の仕上圧延機の出側温度をAr3点以上として仕上圧延を行う。
初段の仕上圧延機の入側温度が1000℃未満であるとTiCが歪誘起析出を起こし、TiCが過剰に析出するため降伏強度900MPaを満足しなくなる。一方、初段の仕上圧延機の入側温度が1100℃超であると、TiCの析出量が不十分となり、MnSとの複合析出による延伸化抑制効果を十分に得られない。スラブ中のC量に対してマルテンサイトの強度を有効的に活用するためにはTiCは少ない方が好ましいが、A系介在物の清浄度を0.010%以下にするためには0.02%以上析出させることが必要となる。TiCの析出によるマルテンサイトの強度低下を最小限に押させるためには上限を0.05%とする必要がある。初段の仕上圧延機の入側温度を1000℃以上1100℃以下とすればTiC析出量を0.02%以上0.05%以下とすることができる。
仕上圧延機列の最終段の仕上圧延機の出側温度をAr3点以上として仕上圧延を行う理由は、Ar3点以下の二相域で熱間圧延すると圧延中にフェライトが生成し、鋼板組織のマルテンサイト分率が低下するためである。一方、仕上圧延機列の最終段の仕上圧延機の出側温度の上限は、本発明の効果を得るためには特に定める必要はないが、靭性の絶対値の大幅な劣化を防ぐため、1000℃以下とすることが望ましい。
本発明では鋼板組織の90%以上をマルテンサイトとする必要があるため、仕上圧延後は15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、200℃以下の温度で巻取る。平均冷却速度が15℃/秒未満では焼入れが不十分となり、マルテンサイト組織を形成することができない。また、200℃超の温度で巻き取ると、ベイナイトが生成したり、マルテンサイトの自己焼きなましが起こるため、降伏強度が不足する。
表1に示す成分を含有する鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造にて厚み230mmのスラブとした。その後、スラブを1200℃〜1250℃の温度に再加熱し、粗圧延機、6基の仕上圧延機を直列配置してなる仕上圧延機列、ROT冷却装置、巻取機等を備えた連続熱間圧延装置によって粗圧延、仕上圧延を行い、ROT冷却後に巻取りを行い、熱延鋼板を製造した。表2には、用いた鋼種記号と熱間圧延条件、鋼板の板厚を示す。表2において、「FT0」は仕上圧延機列の初段の仕上圧延機の入側温度、「FT6」は仕上圧延機列の最終段の仕上圧延機の出側温度、「冷却速度」は仕上圧延を終了してから巻き取るまでの平均冷却速度、「巻取温度」は冷却終了後に巻き取った温度である。
このようにして得られた鋼板について光学顕微鏡を用いてマルテンサイト分率とA系介在物の測定を行い、さらにTiC析出量の測定と、引張試験、シャルピー試験、曲げ加工性評価試験、外観観察を行った。
鋼板のマルテンサイト分率については、光学顕微鏡を用いて500×500μmの視野で面積率を求め、A系介在物の清浄度についてはJISG0202に規定する方法で求めた。
TiC析出量は、鋼材を電解液にて溶解し、0.1μmメッシュで抽出残渣分析を行い、TiCの質量を求めた。これを上記抽出残渣分析で溶解したマトリックスの質量で割ることにより質量%を算出した。
鋼板の引張試験については、鋼板の圧延方向(L方向)と幅方向(C方向)にJIS5号試験片を採取し、降伏強度:YP(MPa)、引張強度:TS(MPa)、伸び:EL(%)を評価した。
吸収エネルギーの測定はJISZ2242で規定する5.0mmサブサイズのVノッチ試験片で、ノッチを鋼板の圧延方向(L方向)と幅方向(C方向)に入れたシャルピー衝撃試験を−20℃で行った。
曲げ加工性はJIS1号試験片で、試験片を圧延方向(L方向)と幅方向(C方向)から採取し、曲げ半径が板厚×4倍で割れが発生しなかったものを「○」、割れたものを「×」とした。
鋼板外観の評価は、熱延コイルをある長手位置で鋼板を長手方向に500mm切断し、スケール模様の面積率を測定した。スケール模様が全体の10%以下だったものを「○」とした。一方、スケール模様が10%超だったものを「×」とした。
表3に組織分率、TiC析出量、A系介在物の清浄度と材質、外観の評価結果を示す。
表3に示すように、本発明例はいずれもマルテンサイト分率が90%以上で、TiC析出量が0.05%以下で、A系介在物の清浄度が0.010%以下である。その結果として、圧延方向と幅方向の吸収エネルギー比が0.6以上、1.2以下であり、降伏強度ではその比が0.8以上、1.2以下を満たし、曲げ加工性も「○」である。外観も「○」である。
比較例4、22は冷却速度が15℃/秒未満であるためマルテンサイト分率が90%未満となっており、L方向降伏強度が900MPaを満たしていない。また、吸収エネルギー及び降伏強度の等方性、C方向曲げ加工性も劣位である。比較例9、25ではFT0が1000℃未満のためTiC析出量が0.05%超となり、マルテンサイト中の有効C量が低く、降伏強度900MPaを満たしていない。比較例12は巻取温度が200℃超となっているため、マルテンサイト分率が90%未満となっており、降伏強度900MPaを満たしていない。また、吸収エネルギーと降伏強度の等方性、C方向曲げ加工性も劣位である。比較例16はFT0が1100℃超のため、TiC析出量が0.02%未満となり、A系介在物の清浄度が0.010%超となり吸収エネルギーの等方性、C方向曲げ加工性が劣位である。比較例29はS量の成分上限を超えており、A系介在物の清浄度が0.010%を超えているため、熱延条件が発明範囲内であっても吸収エネルギーの等方性、C方向曲げ加工性が劣位となっている。比較例30はSi量の成分上限を超えており、外観評価でスケール模様が多く、「×」となっている。
Figure 2014047414
Figure 2014047414
Figure 2014047414

Claims (3)

  1. 質量%で
    C :0.04%以上、0.15%以下,
    Si:0.01%以上、0.25%以下,
    Mn:0.1%以上、2.5%以下,
    P :0.1%以下,
    S :0.01%以下,
    Al:0.005%以上、0.05%以下,
    N :0.01%以下,
    Ti:0.01%以上、0.12%以下
    B:0.0003%以上,0.0050%以下,
    残部:Feおよび不可避的不純物
    からなる化学成分組成を有し、組織の90%以上がマルテンサイトであり、TiC析出量が0.05%以下であり、JISG0202に規定するA系介在物の清浄度が0.010%以下であることを特徴とする外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 更に,質量%で
    Nb:0.01%以上,0.10%以下,
    Ca:0.0005%以上、0.0030%以下
    Ni:0.02%以上,3.0%以下,
    Mo:0.02%以上,0.5%以下,
    Cr:0.02%以上,1.0%以下,
    の1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載の化学成分組成の連続鋳造スラブを再加熱し、粗圧延、複数基の圧延機を直列配置してなる仕上圧延機列で連続的に仕上圧延後、冷却し、巻き取りを行うに際し、再加熱温度を1200℃以上とし、仕上圧延機列の初段の仕上圧延機の入側温度を1000℃以上1100℃以下とし、最終段の仕上圧延機の出側温度をAr3点以上とし、15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、200℃以下で巻き取ることを特徴とする外観に優れ、靭性と降伏強度の等方性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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