JP7077802B2 - 低降伏比耐火鋼板 - Google Patents
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Description
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+([Cu%]+[Ni%])/15+([Cr%]+[Mo%]+[V%])/5…(式1)
(式1)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
C:0.06~0.15%、
Si:0.05~0.80%、
Mn:0.8~1.6%、
P:0.015%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.01~0.05%、
Mo:0.21~0.80%、
Nb:0.010~0.045%、
Ti:0.005~0.030%、
N:0.0020~0.0080%、
O:0.0040%以下、
Cu:0~0.40%、
Ni:0~0.30%、
Cr:0~0.20%、
V:0~0.08%、
B:0~0.002%、
Ca:0~0.005%、
残部はFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
下記式1で定義されるCeqが0.34~0.45であり、
下記式2で定義されるNTが0.018~0.050であり、
板厚1/4の位置の金属組織において、
フェライト面積率が50~80%であり、
前記フェライトの粒径分布において、
10μm未満のフェライトの個数割合が40~70%であり、
10~24μmのフェライトの個数割合が28~60%であり、かつ、
24μmを超えるフェライトの個数割合が2%以下である、
低降伏比耐火鋼板。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+([Cu%]+[Ni%])/15+([Cr%]+[Mo%]+[V%])/5…(式1)
NT=[Nb%]+[Ti%]…(式2)
(式1)、(式2)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
まず、本発明にかかる厚鋼板の組成を上述したように限定する理由を詳細に説明する。
Cは強度を決定する最も重要な元素であり、硬質相の硬さにも大きく影響する。Cの含有量が0.06%未満の場合は、硬質相の硬さが低くなり、軟質相との硬さの差が十分にならずに低YRを得るのが困難となる。一方で0.15%を超えると硬質相が過剰に硬化して靭性を劣化させるため、これを上限とする。硬質相による劣化を抑制して、安定的に低温靱性を確保するには、Cを0.06~0.12%とするのが好ましく、より好ましくは0.06~0.10%である。
Siは溶鋼の予備脱酸に有効な元素であり、かつ靭性を悪くすることなく強度を向上させる効果がある。Siの含有量が0.05%未満の場合は、これらの効果が得られない。一方で、0.80%を超えて含有すると鋼板の表面性状が劣化するため、これを上限とする。
Mnは焼入れ性を高めることで強度を向上させ、MnSを形成することでSの悪影響を低減するため、引張試験の靭性を向上させる。これら効果を得るには、Mnは0.8%以上含有する必要がある。一方で、1.6%を超えて含有すると凝固による偏析が強くなり、パーライトのバンド組織が生成しやすくなるため、低温靭性が劣化するためこれを上限とする。低温靭性を安定的に確保するにはMnを0.8~1.3%とすることが好ましい。
Pは不純物元素であり靱性を劣化させるため、P含有量はできるだけ低いことが望ましい。Pの含有量が0.015%を超えると劣化が著しくなるため、Pの含有量は0.015%以下に限定する。
Sは鋼板の靭性を劣化させる不純物元素であり、その含有量はできるだけ低いことが望ましい。含有量が0.005%を超えると悪影響が顕著になることから、S含有量は0.005%以下に限定する。
Alは溶鋼を清浄にするために添加される元素である。その効果を得るにはAlを0.01%以上含有させる必要がある。一方で、Al含有量が0.05%を超えると粗大なアルミナが生成することで靭性が劣化するためこれを上限とする。
Moは焼入れ性向上や炭化物を形成することにより強度を向上させるのに有効な元素であり、さらに高温で炭化物を析出することで降伏耐力を向上させるのに極めて有効である。Mo含有量が0.21%未満では、高温の降伏耐力を得るのが困難となるため、これを下限とする。一方でMo含有量が0.80%を超えると粗大な炭化物を生成して靭性が劣化するため、これを上限とする。
Nbはオーステナイトの未再結晶領域を拡大させるのに有効な元素であり、圧延による組織微細化に寄与するため、靭性を向上させることができる。この効果を得るには0.010%以上含有させる必要がある。一方で0.045%を超えて含有すると組織微細化によるYP向上が顕著になることで、低YR化が難しくなるためこれを上限とする。
Tiは窒化物を形成し、鋳片加熱時にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する効果があるため、靭性の向上に寄与する。その効果を得るにはTiを0.005%以上含有させる必要がある。一方で、0.030%を超えて含有すると、Ti炭化物が過剰に析出することで靭性が劣化するため、これを上限とする。
NはTiNを形成することで加熱時の組織粗大化を抑制して靭性向上に寄与する。Ti窒化物を適量に分散析出させるためはNを0.0020%以上含有させる必要がある。一方で、0.0080%を超えて含有させると固溶N量が過剰となることで靭性が劣化するため、これを上限とする。
Oは不純物として存在し、鋼中で酸化物を形成する。Oが多量に存在すると酸化物の数が増加し、靭性が劣化するため、Oの含有量は0.0040%以下とする。
Cuは焼入れ性向上により強度を向上させることができるので必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るために0.05%以上含有させるのが好ましい。一方で0.40%を超えると靭性が劣化するので、これを上限とする。
Niは焼入れ性を向上させて強度を得るだけでなく、同時に低温靭性も向上できる有用な元素であることから必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るには0.05%以上含有させるのが好ましい。一方で、0.30%を超えると鋳造性が悪くなることやNiは高価な合金元素でもあることから製造コストが増大するため、これを上限とする。
Crは焼入れ性向上により強度を向上させることができるので必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るには0.05%以上の含有が好ましい。一方で、0.20%を超えると低YRを得るのが難しくなるため、これを上限とする。
Vは焼入れ性を向上させて強度を向上させることができ、また、高温で炭化物を析出することにより高温での降伏耐力を向上させることができるので必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るには0.02%以上の含有が好ましい。一方で、0.08%を超えると靭性が劣化するため、これを上限とする。
Bは少量で焼入れ性を向上させ、強度の向上に有効であるため、必要に応じて含有させてもよいが、0.002%を超えると靭性が劣化するため、これを上限とする。上記の効果を得るには 0.0004%以上の含有が好ましい。
Caは硫化物を形成することでSの悪影響を低減し、靭性の向上に有効であるため、必要に応じて含有させてもよい。一方で、0.005%を超えると粗大な酸化物を形成するようになり、靭性に悪影響を及ぼすようになるため、これを上限とする。上記の効果を得るには 0.0008%以上の含有が好ましい。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+([Cu%]+[Ni%])/15+([Cr%]+[Mo%]+[V%])/5…(式1)
(式1)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
NT=[Nb%]+[Ti%]…(式2)
(式2)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
フェライトはC固溶量が少なく、変態中に周囲のオーステナイトにCが拡散して軟質相となる。フェライトの面積率が大きいほど降伏強度及び引張強度は低くなるため、所定の強度、低YRを得るにはフェライトの面積率は80%以下とする必要がある。一方でフェライト面積率が50%未満になると、軟質相の役割が不十分となり、降伏強度が高くなるため低YR化が困難となるため、フェライト面積率は50~80%とする。
粒径が小さいフェライト個数割合が大きいほど低温靱性が向上する。所要の低温靭性を確保するには粒径10μm未満のフェライト個数割合が40%以上必要である。一方で10μm未満のフェライト個数割合が70%を超えると粒径10μmを超える粗大なフェライト粒が少なくなり、引張荷重下において早期に降伏するフェライト個数が不十分となるため、降伏強度が高くなり低YR化が困難となる。そのため、フェライト粒径10μm未満のフェライト個数割合は40~70%とする。
粒径10μm以上の粗大なフェライト個数割合が増加すると、引張荷重下において早期に降伏するようになるため、低YRを確保するのに有効である。一方で、粗大なフェライトは低温靭性を劣化させる問題がある。粒径が10~24μmのフェライトは低YRと低温靱性を両立でき、そのフェライト個数割合が28%未満では降伏強度が高くなり、一方で60%を超えると低温靭性の劣化があるため、フェライト粒径10~24μmのフェライト個数割合は28~60%とする。
粒径が24μmを超えるフェライトは著しく低温靭性を劣化させるため、最小限にする必要があるが、個数割合を2%以下に制御できれば、所要の低温靭性を得ることができるため、フェライト粒径24μmを超えるフェライト個数割合は2%以下とする。
Ar3(℃)=910-310×[C%]-80×[Mn%]-20×[Cu%]-15×[Cr%]-55×[Ni%]-80×[Mo%]+0.35×([板厚(mm)]-8)…(式3)
(式3)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
(a)第1冷却を、鋼板表面温度がTFR~TFR-30℃、かつ、Ar3点以上の範囲で冷却を開始し、600~700℃の範囲で停止する。
(b)第1冷却の平均冷却速度を5℃/sec以上とする。
(c)第1冷却から第2冷却までの時間を10~50secとする。
(d)第2冷却を350℃~480℃の範囲で停止する。
(e)第2冷却での平均冷却速度を5℃/sec以上とする。
以上、第1冷却及び第2冷却は、一台の冷却装置を用い冷却してもよいし、二台の冷却装置を用いて鋼板を連続的に移動させて行ってもよい。
加熱温度が1050℃未満である場合、鋳片の温度が低いため、圧下抵抗が大きくなる。そのため所定の板厚にするまでの圧延パス数が増えすぎるため製造効率が悪化する。一方、加熱温度が1200℃を超えるとオーステナイトの結晶粒が粗大化するため低温靭性が低下するおそれがある。
950℃以下の温度範囲における累積圧下率とは、950℃における板厚を基準として、仕上げ圧延後の板厚までに圧延した板厚の減少率である。この累積圧下率が30%未満では、変態後に微細な結晶粒が得られないため、低温靭性が低下するおそれがある。
圧延終了温度TFRがAr3点未満となると、冷却前に初析フェライトが生成することがある。このため、圧延終了温度TFRは鋼板表面温度でAr3点以上とする。なお、Ar3点は上記(式3)で示すとおりであり、以下で示す冷却工程におけるAr3点も同じである。
(a)第1冷却を、鋼板表面温度がTFR~TFR-30℃、かつ、Ar3点以上の範囲で冷却を開始し、600~700℃の範囲で停止する。
第1冷却の開始温度は、圧延終了温度がTFRであることから、圧延終了温度TFR以下となる。第1冷却での冷却開始までに温度がTFR-30℃未満まで低下すると圧延で導入した転位が回復するため、変態の駆動力が低下する。そのため、フェライト面積率が十分に得られないことや粗大な粒径のフェライト個数割合が増加するおそれがある。一方で、冷却開始温度がAr3点未満になると、冷却前に初析フェライトが生成することがある。このため、第1冷却を鋼板表面温度がTFR~TFR-30℃、かつ、Ar3点以上の範囲で冷却を開始する。
第1冷却での平均冷却速度が5℃/sec未満となると、冷却途中でのフェライト変態が開始することで粗大な粒径のフェライト個数割合が増加し、靭性が低下するおそれがある。このため、第1冷却の平均冷却速度を5℃/sec以上とする。
1次冷却から2次冷却までの時間は1次冷却停止からの放冷時間となるが、これが10sec未満となると、1次冷却停止後からのフェライト変態が不十分となり、フェライト面積率が不足する。一方で、50secを超えると、フェライトの結晶粒が粗大化するため、靭性が劣化するおそれがある。このため、第1冷却から第2冷却までの時間を10~50secとする。このとき、第2冷却の開始時の鋼板表面温度は鋼板の復熱により600℃以上となる。
冷却停止温度が480℃よりも高いと未変態のオーステナイトが靭性の低い上部ベイナイトに変態することで靭性が劣化するおそれがある。一方で冷却停止温度が350℃未満に過剰に急冷されると鋼板が反るようになり平坦度が悪くなるおそれがある。このため、第2冷却における冷却停止温度は350~480℃の範囲とする。
第2冷却の平均冷却速度が遅い場合、冷却途中で靭性の低い上部ベイナイト変態が生じて靭性が劣化するおそれがある。このため、第2冷却の平均冷却速度を5℃/sec以上とする。第2冷却の平均冷却速度の上限速度は規定しないが、通常水冷装置の性能から考えれば、第2冷却の平均冷却速度は30℃/sec以下となる。
得られた各鋼板の板厚1/4位置から圧延と直角の方向にJIS Z2241-2016に準拠した4号引張試験片(丸棒)(径=14mm)を採取し、丸棒引張試験片を用いて、常温、大気圧で引張試験を実施して、降伏強度YS(MPa)、引張強度TS(MPa)、降伏比YR(=YS/TS×100、単位は%)を求めた。また、同じ要領で採取した丸棒引張試験片を600℃、大気圧で引張試験を実施して、降伏耐力を求めた。
低温靭性の評価はJIS Z2242-2016に準拠したシャルピー試験片(2mmVノッチ試験片)を板厚の1/4位置から板厚1/4位置から採取した。ノッチ位置は板厚方向とした。-20℃の条件で3本試験し、その最低値を吸収エネルギー(vE-20)とした。
さらにミクロ組織は、試験に供したシャルピー試験片の中央部から切出した断面を研磨した後、表面をナイタールで腐食して光学顕微鏡にて中心部から±2mmの領域を観察し、フェライト組織を同定して粒径ごとに各分率(個数割合)を求めた。
Claims (1)
- 鋼板の組成が質量%で、
C:0.06~0.15%、
Si:0.05~0.80%、
Mn:0.8~1.6%、
P:0.015%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.01~0.05%、
Mo:0.21~0.80%、
Nb:0.010~0.045%、
Ti:0.005~0.030%、
N:0.0020~0.0080%、
O:0.0040%以下、
Cu:0~0.40%、
Ni:0~0.30%、
Cr:0~0.20%、
V:0~0.08%、
B:0~0.002%、
Ca:0~0.005%、
残部はFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
下記式1で定義されるCeqが0.34~0.45であり、
下記式2で定義されるNTが0.018~0.050であり、
板厚1/4の位置の金属組織において、
フェライト面積率が50~80%であり、
円相当径で2μm以上のフェライト個数を数えてフェライト個数割合を算出したときに、
前記フェライトの粒径分布において、
10μm未満のフェライトの個数割合が40~70%であり、
10~24μmのフェライトの個数割合が28~60%であり、かつ、
24μmを超えるフェライトの個数割合が2%以下である、
低降伏比耐火鋼板。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+([Cu%]+[Ni%])/15+([Cr%]+[Mo%]+[V%])/5…(式1)
NT=[Nb%]+[Ti%]…(式2)
(式1)、(式2)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
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