JP2014046312A - 連続鋳造用鋳型銅板の温度測定方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る温度測定装置100は、溶融金属Mとの近接面C1に対向する面C2で開口し内部に延びる孔が超音波の反射源Rとして設けられた鋳型銅板Cの温度を測定する装置である。温度測定装置100は、近接面C1に対して略平行な方向に超音波Uを伝搬させる超音波送受信子1と、反射源で反射し超音波送受信子によって検出した超音波エコーを用いて鋳型銅板の温度を算出する演算手段3とを備える。演算手段は、算出した鋳型銅板の温度と、鋳型銅板の冷却条件によって定まる鋳型銅板と鋳型銅板用の冷却水との熱伝達率等に基づき、鋳型銅板の溶融金属との対向方向の温度分布を推定し、前記算出した鋳型銅板の温度を推定した温度分布を用いて補正する。
【選択図】図3
Description
しかしながら、上記のような小径で深い挿入孔を開ける事は難しい。少なくとも市販の超硬ドリル等の仕様から推し量ると、φ3mm程度の挿入孔を鋳型銅板に開ける場合には、せいぜい50mm〜60mm程度の深さが限界と思われる。特許文献1の図1に示すように、熱電対よりも少し大きめの挿入孔を鋳型銅板の上面から開ける場合でも、あまり大きな挿入孔を開けると鋳型銅板の熱伝導を阻害し望ましくない。このため、例えばφ6mmの挿入孔を開けるとすると、深さ90mm程度が限界と思われる。換言すれば、この挿入孔に挿入される熱電対の測温点は、鋳型銅板の上面から下方に90mm程度離れた位置よりも高い位置に限定される。
一般的に、溶鋼の湯面位置においては湯面の波立ちにより安定した値が得られないため、湯面から数cm〜10cm程度下がった位置及びその下方の位置が測温領域とされる。このため、例えば、鋳型銅板の上面から90mmの位置に測温点を設けると、溶鋼の湯面はその位置より少なくとも数cm高くなるため、わずかな湯面変動が生じたときや非定常時において、溶鋼が鋳型からオーバーフローする危険性が高くなる。また、測温点は、鋳型銅板の上面から下方に90mm程度離れた位置よりも高い位置に限定される。このため、鋳型銅板の上面から90mm離れた位置よりもさらに下方の位置での温度を測定することができず、鋳型内での溶鋼のブレークアウトの検知には不十分な場合がある。
以上に述べたように、特許文献1に記載の方法には、次のような問題がある。
(a)適切な深さの挿入孔を開けるのが困難で実現性に乏しい。
(b)測温点が、鋳型銅板の上面から下方に90mm程度までの範囲に限られる。このため、溶鋼のオーバフローの危険性が生じることや、測温点より下方の位置での溶鋼のブレークアウトを検知できないことが問題である。
図1は、超音波送受信子から反射源までの距離と、超音波伝搬方向から見た反射源の投影面積と、超音波エコーの検出可否との関係を実際に調査した結果の一例を示す図である。図1に示す「●」でプロットしたデータは反射源からの超音波エコーの強度がノイズ強度よりも十分に大きかった場合を、「×」でプロットしたデータは反射源からの超音波エコーの強度がノイズ強度と識別できなかった場合を示す。図1に示すように、反射源からの超音波エコーが十分な強度を得るには、超音波送受信子からの距離に応じて反射源の投影面積を大きくする必要があることがわかる。
特に、1つの超音波送受信子から複数の反射源に超音波を送受信する場合には、超音波送受信子からの距離に応じて反射源としての孔の深さ(鋳型銅板の厚み方向の寸法)を深くする必要が生じ、反射源の中心の位置(鋳型銅板の厚み方向の位置)が超音波送受信子からの距離に応じて変わることになる。
仮に、超音波振動子と対向する反射源の面全体から超音波エコーが反射し、この反射した超音波エコー全体を使って鋳型銅板の温度を測定するとすれば、特許文献2に記載の方法では、反射源の中心位置が変わると、測温している鋳型銅板の厚み方向の位置が変わることになる。従って、図2に示すように、仮に鋳型銅板の厚み方向の温度分布が鋳型銅板の高さ方向に一様であるとしても、超音波送受信子からの反射源の位置(鋳型銅板の高さ方向の位置)に応じて測温値が異なることになってしまう。図2に示す例では、反射源R1からの超音波エコーで算出した温度と、これよりも遠方に設けられた反射源R2からの超音波エコーで算出した温度とが異なることになる。より具体的には、反射源R1の中心位置に比べて反射源R2の中心位置の方が溶融金属との近接面に近づくため、反射源R2からの超音波エコーで算出した温度の方が反射源R1からの超音波エコーで算出した温度よりも高くなる。
すなわち、本発明は、溶融金属の連続鋳造用鋳型を構成する鋳型銅板の温度を測定する方法であって、超音波の反射源として、前記鋳型銅板の溶融金属との近接面に対向する面で開口し、前記鋳型銅板の内部に延びる孔を設ける第1の手順と、前記反射源に向けて、超音波送受信子から前記鋳型銅板の溶融金属との近接面に対して略平行な方向に超音波を伝搬させる第2の手順と、前記反射源で反射し前記超音波送受信子によって検出した超音波エコーの伝搬時間と、超音波の伝搬速度の温度依存性とに基づき、前記鋳型銅板の温度を算出する第3の手順と、前記第3の手順で算出した前記鋳型銅板の温度と、前記鋳型銅板の冷却条件によって定まる前記鋳型銅板と前記鋳型銅板用の冷却水との熱伝達率、前記鋳型銅板による鋳片の鋳造幅、前記鋳型銅板入側の前記冷却水の温度及び前記鋳型銅板出側の前記冷却水の温度とに基づき、前記鋳型銅板の前記溶融金属との対向方向の温度分布を推定し、前記第3の手順で算出した前記鋳型銅板の温度を前記推定した温度分布を用いて補正する第4の手順と、を含むことを特徴とする連続鋳造用鋳型銅板の温度測定方法を提供する。
図3に示すように、本実施形態に係る温度測定装置100は、溶鋼Mとの近接面C1に対向する面C2で開口し内部に延びる孔が超音波の反射源Rとして設けられた鋳型銅板Cの温度を測定する装置である。対向面C2には、鋳型銅板Cを冷却するための冷却水路WCが所定のピッチで設けられている。本実施形態に係る温度測定装置100は、反射源Rに向けて、鋳型銅板Cの溶鋼Mとの近接面C1に対して略平行な方向に超音波Uを伝搬させる超音波送受信子1と、反射源Rで反射し超音波送受信子1によって検出した超音波エコーの伝搬時間と、超音波の伝搬速度の温度依存性とに基づき、鋳型銅板Cの温度を算出する演算手段とを備えている。
以下、演算制御装置3の演算部(演算手段)における演算内容について、順次説明する。
演算部は、送受信制御装置2から出力されたエコー信号に基づき、反射源Rで反射し超音波送受信子1によって検出した超音波エコーの伝搬時間Tを算出する。
次に、演算部は、算出した伝搬時間Tと、超音波送受信子1から反射源Rまでの距離Lとに基づいて、以下の式(1)により超音波の伝搬速度を求める。
超音波の伝搬速度=(反射源Rまでの距離L)×2/伝搬時間T ・・・(1)
最後に、演算部は、この伝搬速度と、予め記憶された超音波の伝搬速度の温度依存性とに基づき、鋳型銅板Cの温度を算出する。この算出した温度は、超音波入射点(鋳型銅板Cの上面)から反射源Rまでの間の平均温度に相当する。
なお、鋳型銅板Cにおける超音波の伝搬速度の温度依存性の求め方としては、前述した特許文献2に記載の方法と同様の方法を用いることができる。
鋳型銅板Cは、溶鋼Mから鋳型銅板C用の冷却水に熱を伝える役目を奏する。このため、鋳型銅板Cの厚み方向の温度分布Tmpを推定するに際し、鋳型銅板C内での熱量を推定する必要がある。溶鋼Mから鋳型銅板Cへの単位時間当たりの入熱量は、溶鋼Mの温度と鋳造速度とによって変化する。一方、鋳型銅板Cからの単位時間当たりの抜熱量は、鋳型銅板C用の冷却水の水量、鋳型銅板C入側の冷却水の温度Ti及び鋳型銅板C出側の冷却水の温度Toによって変化する。また、抜熱量は、鋳片の鋳造幅Wによっても変化する。仮に、鋳型で鋳造され得る鋳片の最大鋳造幅Wmaxが2000mmであり、これに対応するため鋳型銅板Cを冷却するための冷却水路WCを鋳型銅板Cの幅方向に2000mmに亘って設けられているとする。この場合、実際の鋳片の鋳造幅Wが2000mmの場合と1000mmの場合とでは、実際に抜熱に寄与する冷却水路WCが変化するため、鋳型銅板Cからの抜熱量も変化することになる。このため、例えば、鋳型銅板C入側の冷却水の温度Tiと鋳型銅板C出側の冷却水の温度Toとの差が5℃であっても、鋳型銅板Cの厚み方向の温度分布Tmpは大きく異なることになる。
従って、鋳型銅板Cの厚み方向の温度分布Tmpを推定するには、鋳型銅板C用の冷却水の水量(換言すれば、鋳型銅板Cと鋳型銅板C用の冷却水との熱伝達率α)、鋳型銅板Cによる鋳片(溶鋼M)の鋳造幅W、鋳型銅板C入側の冷却水の温度Ti及び鋳型銅板C出側の冷却水の温度Toが必要である。
Tmp=aa×Z+bb ・・・(2)
aa=G1(Tw−Tu)/(Zb−Zu)+G2 ・・・(3)
Tw=(Ti−To)×Wmax/W ・・・(4)
Zb=f(α)+G3 ・・・(5)
bb=Tw−aa×Zb ・・・(6)
ここで、Zuは反射源Rの中心の位置(鋳型銅板Cの厚み方向の位置)、Tuは前述のようにして算出した鋳型銅板Cの温度Tuを意味する。また、Zbは温度Twが得られると考えられる鋳型銅板Cの厚み方向の位置を意味し、鋳型銅板Cの冷却条件(冷却水の水量や、冷却水路WCの深さ、ピッチ、溶鋼Mとの近接面C1からの距離など)によって定まる熱伝達率αの関数f(α)で表わされる。さらに、G1、G2、G3は定数(後述する実施例では、G1=1、G2=G3=0)である。
α=Nu×λ/L ・・・(7)
ここで、Nuはヌセルト数、λは水の熱伝導率、Lは冷却水路WCの代表長さを意味する。具体的には、Lは以下の式(8)で表わされる。
L=4×(冷却水路WCの横断面積)/(冷却水路WCの濡れ縁長さ) ・・・(8)
Nu=0.023×Re4/5×Prn(冷却するときはn=0.3) ・・・(9)
ここで、Reはレイノルズ数であり、冷却水路WC内の冷却水の流速をU、水の動粘性係数をν、前述のように冷却水路WCの代表長さをLとしたとき、以下の式(10)で表わされる。また、Prはプラントル数を意味する。
Re=U×L/ν ・・・(10)
図3に示すように、鋳型銅板Cの上面に計7つの超音波送受信子1を設置し、各超音波送受信子1から送信される超音波Uの伝搬経路中に反射源R(R1〜R7)を1つずつ設けた。反射源R1、R2は、鋳型銅板Cの幅方向についての互いの離間距離を20mmに近接させると共に、鋳型銅板Cの上面からの距離を200mmとした。また、反射源R3〜R5は、鋳型銅板Cの幅方向についての互いの離間距離を20mmに近接させると共に、鋳型銅板Cの上面からの距離を300mmとした。さらに、反射源R6、R7は、鋳型銅板Cの幅方向についての互いの離間距離を20mmに近接させると共に、鋳型銅板Cの上面からの距離を500mmとした。反射源R5、R7の中心位置(鋳型銅板Cの厚み方向の位置)は溶鋼Mとの近接面C1から13mmとした。また、反射源R1、R4、R6の中心位置(鋳型銅板Cの厚み方向の位置)は溶鋼Mとの近接面C1から18mmとした。さらに、反射源R2、R3の中心位置(鋳型銅板Cの厚み方向の位置)は溶鋼Mとの近接面C1から23mmとした。
また、温度測定装置100による測温結果を比較検証するために、各反射源Rの近傍に熱電対TCを設置した。熱電対TCの測温点(熱電対TCの先端)は、溶鋼Mとの近接面C1から18mmに配置した。
条件8での補正の手順は、具体的には以下のとおりである。
まず、鋳型銅板Cの冷却条件を種々変更して行ったオフライン試験に基づき、前述した式(5)を求めたところ(G3=0とした)、以下の式(5)’が得られた。
Zb=2.62×10−5×α×14.38 ・・・(5)’
そして、条件2での鋳型銅板Cの冷却条件(条件8も同じ冷却条件)から前述した式(7)〜(10)を用いて導出した熱伝達率αを上記式(5)’に代入すると、Zb=28.4mmが得られた。
また、条件2では、反射源R2の中心位置Zu=23mm、測温値Tu=67℃である。
さらに、条件2では(条件8も同じ)、鋳型銅板C入側と出側の冷却水の温度差Ti−To=38℃、最大鋳造幅Wmax=1250mm、実際の鋳造幅W=1200mmであったため、前述した式(4)より、Tw=36℃であった。
上記のTw=36℃、Tu=67℃、Zb=28.4mm、Zu=23mmを前述した式(3)(G1=1、G2=0とした)に代入すると、aa=−5.74が得られた。また、上記のTw=36℃、aa=−5.74、Zb=28.4mmを前述した式(6)に代入すると、bb=199が得られた。
従って、前述した式(2)より、温度分布Tmpは、以下の式(2)’で推定される。
Tmp=−5.74×Z+199 ・・・(2)’
この(2)’式において、Zを熱電対TCの測温点と等しい18mmにすると、Tmp=96℃となる。
以上のように、条件8は、条件2での測温値を、温度分布Tmpを用いて熱電対TCの測温点に等しい位置での温度に補正したものであり、これにより、補正後の測温値が熱電対TCの指示とほぼ同じになることがわかる。同様に、条件9は条件3での測温値を、条件10は条件5での測温値を、条件11は条件7での測温値を、それぞれ推定した温度分布Tmpを用いて熱電対TCの測温点に等しい位置での温度に補正したものであり、補正後の測温値が熱電対TCの指示とほぼ同じになることがわかる。
2・・・送受信制御装置
3・・・演算制御装置(演算手段)
100・・・連続鋳造用鋳型銅板の温度測定装置
C・・・鋳型銅板
M・・・溶融金属(溶鋼)
R・・・反射源
U・・・超音波
Claims (2)
- 溶融金属の連続鋳造用鋳型を構成する鋳型銅板の温度を測定する方法であって、
超音波の反射源として、前記鋳型銅板の溶融金属との近接面に対向する面で開口し、前記鋳型銅板の内部に延びる孔を設ける第1の手順と、
前記反射源に向けて、超音波送受信子から前記鋳型銅板の溶融金属との近接面に対して略平行な方向に超音波を伝搬させる第2の手順と、
前記反射源で反射し前記超音波送受信子によって検出した超音波エコーの伝搬時間と、超音波の伝搬速度の温度依存性とに基づき、前記鋳型銅板の温度を算出する第3の手順と、
前記第3の手順で算出した前記鋳型銅板の温度と、前記鋳型銅板の冷却条件によって定まる前記鋳型銅板と前記鋳型銅板用の冷却水との熱伝達率、前記鋳型銅板による鋳片の鋳造幅、前記鋳型銅板入側の前記冷却水の温度及び前記鋳型銅板出側の前記冷却水の温度とに基づき、前記鋳型銅板の前記溶融金属との対向方向の温度分布を推定し、前記第3の手順で算出した前記鋳型銅板の温度を前記推定した温度分布を用いて補正する第4の手順と、を含むことを特徴とする連続鋳造用鋳型銅板の温度測定方法。 - 溶融金属の連続鋳造用鋳型を構成し、溶融金属との近接面に対向する面で開口し内部に延びる孔が超音波の反射源として設けられた鋳型銅板の温度を測定する装置であって、
前記反射源に向けて、前記鋳型銅板の溶融金属との近接面に対して略平行な方向に超音波を伝搬させる超音波送受信子と、
前記反射源で反射し前記超音波送受信子によって検出した超音波エコーの伝搬時間と、超音波の伝搬速度の温度依存性とに基づき、前記鋳型銅板の温度を算出する演算手段とを備え、
前記演算手段は、前記算出した前記鋳型銅板の温度と、前記鋳型銅板の冷却条件によって定まる前記鋳型銅板と前記鋳型銅板用の冷却水との熱伝達率、前記鋳型銅板による鋳片の鋳造幅、前記鋳型銅板入側の前記冷却水の温度及び前記鋳型銅板出側の前記冷却水の温度とに基づき、前記鋳型銅板の前記溶融金属との対向方向の温度分布を推定し、前記算出した前記鋳型銅板の温度を前記推定した温度分布を用いて補正することを特徴とする連続鋳造用鋳型銅板の温度測定装置。
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- 2012-08-29 JP JP2012188522A patent/JP5804384B2/ja active Active
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