JP2014044929A - 二次電池装置,二次電池における内部ガスの発生量推定方法,二次電池の制御方法,および二次電池の製造方法 - Google Patents

二次電池装置,二次電池における内部ガスの発生量推定方法,二次電池の制御方法,および二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電池の外形部材の種類に関わらず適用でき,内部ガスの発生量を高精度に検知することができる二次電池装置,その内部ガスの発生量推定方法,その制御方法,およびその製造方法等を提供すること。
【解決手段】本発明の二次電池装置1は,二次電池10で発生するアコースティックエミッション信号(AE信号)を検知するAE検知部12と,検知されたAE信号のレベルが閾値を超えるイベントの発生を検知するAE信号イベント分離部17と,イベントの発生の程度に基づいて,二次電池10の内部ガスの発生量を出力するガス発生量出力部と18を有している。ここで,AE信号のレベルが閾値以下の状態から閾値を超えたときをイベントの開始時とし,その後にAE信号のレベルが閾値を下回り続けている時間があらかじめ定めた収束時間を超えたときをイベントの終了時とする。イベントの発生の程度が激しいほど,大きい発生量を出力する。
【選択図】図1

Description

本発明は,二次電池を搭載する二次電池装置に関する。さらに詳細には,二次電池の充放電に伴う電池内でのガス発生量や電解液の含浸不良を精度よく検知できるようにした二次電池装置に関するものである。本発明はさらに,同様の二次電池における内部ガスの発生量推定方法,二次電池の制御方法,および二次電池の製造方法にも関する。
従来から,車両その他の各種機器には,必要な電力の供給源として二次電池を搭載しているものがある。二次電池では,充放電の状況により内部でガスが発生する場合がある。内部でのガスの発生は,二次電池の内圧を上昇させて二次電池の安定的な動作に対する支障となるので好ましくない。また,二次電池の内部でガスが発生するということ自体が多くの場合,過充電や過放電といった二次電池に好ましくない事象が原因となって起こる。このため,内部ガスが発生しているような状況では,充放電電流を通常時よりも制限する等の特別な制御が必要となる。
そのような特別な制御を行うためには,二次電池における内部ガスの発生状況を,当該電池を解体等することなく検知する必要がある。そのための従来の検知技術として,特許文献1に提案されているものが挙げられる。特許文献1の技術は,鉛蓄電池を対象とし,過充電時のガス発生をアコースティックエミッションの検出により検知するものである。
特開平7−85892号公報
しかしながら前記した従来の技術には,次に説明する問題点があった。すなわち,従来技術におけるアコースティックエミッションの検出では,二次電池におけるガス発生の事実は検知できるものの,ガスの発生量を見積もることができていなかった。このため,ガスの発生による内圧の上昇の程度まで分かるには至っていなかった。
一方,圧力センサを用いれば内圧の上昇の程度を知ることはできる。しかし圧力センサによる検出結果からガスの発生量を精度よく見積もることができるのは,硬質ケースを電池容器として用いる電池に限られる。硬質ケースは内圧の上昇程度ではほとんど変形しないため,内圧上昇の程度とガス発生量との相関性が高い。しかしラミネートタイプなどの容易に変形する種類の外形部材を有する電池の場合,内圧上昇時に外形部材がある程度変形してしまう。そしてその変形の程度は,個々の電池により異なり,一律でない。このため内圧からガスの発生量を算出してもその精度は低かった。また,圧力センサは電池の内部に設置する必要がある。このため電池の構造が複雑なものになってしまうという問題もあった。
さらには,二次電池内の電極捲回体における含浸不良を検知することができなかった。二次電池の製造過程には,電極捲回体に電解液を含浸させる工程がある。この際に電極捲回体の内部に,電解液が含浸していない領域である気泡が残ることがある。このように気泡が残った電極捲回体を有する二次電池は,初期性能や耐久性能に劣るものとなってしまう。このような気泡の残留を,含浸不良という。従来は,時間をかけて検査をしても含浸不良の検出はできなかった。特許文献1のようにアコースティックエミッションを検出する手法を用いても,そのことだけで含浸不良を検知できるわけではなかった。
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,電池の外形部材の種類に関わらず適用でき,内部ガスの発生量を高精度に検知することができる二次電池装置,二次電池における内部ガスの発生量推定方法,二次電池の制御方法,および二次電池の製造方法を提供することにある。さらには,電極捲回体における含浸不良を検知できる二次電池装置等を提供することにある。
この課題の解決を目的としてなされた,内部ガスの発生量の推定に係る本発明の二次電池装置は,二次電池で発生するアコースティックエミッション信号を検知するAE検知部と,AE検知部で検知されたアコースティックエミッション信号のレベルがあらかじめ定めた閾値を超えるイベントの発生を検知するAE信号イベント分離部と,AE信号イベント分離部で検知されたイベントの発生の程度に基づいて,二次電池における内部ガスの発生量を出力するガス発生量出力部とを有し,AE信号イベント分離部は,アコースティックエミッション信号のレベルが閾値以下の状態から閾値を超えたときを1回のイベントが開始する開始時とし,開始時後にアコースティックエミッション信号のレベルが閾値を下回り続けている時間があらかじめ定めた収束時間を超えたときを,開始時に開始したイベントが終了する終了時とし,ガス発生量出力部は,イベントの発生の程度が激しいほど,大きい発生量を出力するものである。
この二次電池では,二次電池の内部でガスの発生により気泡が生成するとき,アコースティックエミッション信号が発生する。そのため,AE検知部の検知信号が閾値を超えるイベントがAE信号イベント分離部により検知される。こうして検知されたイベントは,二次電池内でのガスの発生に関する情報を含んでいる。このため,イベントに基づき,ガス発生量出力部で内部ガスの発生量が出力される。こうして,内部ガスの発生量が検知される。
本発明におけるAE信号イベント分離部は,開始時から終了時までのイベント期間中におけるアコースティックエミッション信号のエネルギー値を積算してそのときのイベントのエネルギー値とするものであることが望ましい。この場合,ガス発生量出力部は,イベントのエネルギー値を累積した累積エネルギー値が激しいほど,大きい発生量を出力するものであることが望ましい。これにより,低温時や大電流時まで含めた広範な条件下で高精度なガス発生量の検知がなされる。
あるいは,本発明におけるガス発生量出力部は,イベントの発生件数が多いほど,大きい発生量を出力するものであることとしてもよい。これでも,低温時や大電流時を除けば,高精度なガス発生量の検知がなされる。
本発明の二次電池装置ではさらに,AE信号イベント分離部もしくはガス発生量出力部が,開始時から終了時に至るまでの間におけるアコースティックエミッション信号の最大振幅値が,あらかじめ定めた,閾値より高い限界値を超えたか否かを判定し,ガス発生量出力部は,限界値を超えた場合にはそのときのイベントを無視し,限界値を超えなかった場合にはそのときのイベントを内部ガスの発生量の出力に供することが望ましい。これにより,気泡の生成以外の要因によるイベントを排除でき,より高精度なガス発生量の検知ができる。
本発明の二次電池ではまた,AE信号イベント分離部は,開始時から終了時までの間に,アコースティックエミッション信号のレベルが再び閾値以下の状態から閾値を超えたとしても,そのときを新たに開始時とはしないことが好ましい。さらには,終了時の後であっても,あらかじめ定めた不感時間が経過するまでの間には,アコースティックエミッション信号のレベルが閾値以下の状態から閾値を超えたとしても,そのときを新たなイベントの開始時とはしないことが望ましい。これにより,仮に2粒以上の気泡がほぼ同時に生成することがあっても,そのことによる処理の混乱なく,ガス発生量の検知ができる。
さらに,本発明の二次電池装置に,二次電池の充放電を制御する充放電制御部を備え,充放電制御部は,ガス発生量出力部により出力される内部ガスの発生量があらかじめ定めた正常範囲より多い状況下では,通常の状況よりも充放電の許容電流値を限定した限定制御を行うものとすることが考えられる。これにより,二次電池の寿命が近づいているような状況下では,二次電池に過大な負荷を掛けないようにすることができる。さらには,ガス発生量出力部により出力される内部ガスの発生量があらかじめ定めた正常範囲より多い状況下ではそのことをユーザに報知する報知部を有してもよい。
また,本発明は,二次電池で発生するアコースティックエミッション信号を検知し,検知されたアコースティックエミッション信号のレベルがあらかじめ定めた閾値を超えるイベントの発生を検知し,検知されたイベントの発生の程度に基づいて,二次電池における内部ガスの発生量を出力するとともに,イベントの発生の検知の際に,アコースティックエミッション信号のレベルが閾値以下の状態から閾値を超えたときを1回のイベントが開始する開始時とし,開始時後にアコースティックエミッション信号のレベルが閾値を下回り続けている時間があらかじめ定めた収束時間を超えたときを,開始時に開始したイベントが終了する終了時とし,内部ガスの発生量の出力の際に,イベントの発生の程度が激しいほど,大きい発生量を出力することによる,二次電池における内部ガスの発生量推定方法をも対象とする。
また,本発明は,前記の発生量推定方法により内部ガスの発生量を出力し,出力された発生量があらかじめ定めた正常範囲より多い状況下では,通常の状況よりも充放電の許容電流値を限定した限定制御を行うことを特徴とする,二次電池の充放電を制御する二次電池の制御方法をも対象とする。
また,本発明は,製造された二次電池に対して充放電試験を行うとともに,その際に前記の発生量推定方法により内部ガスの発生量を出力し,出力された発生量があらかじめ定めた正常範囲より多かった場合には,その二次電池を不合格として排除し,出力された発生量があらかじめ定めた正常範囲以内であった場合には,その二次電池を合格とする二次電池の製造方法をも対象とする。
また,二次電池の含浸不良の判定に係る発明の二次電池装置は,二次電池を押圧する押圧部材と,押圧部材の押圧力を上昇させる押圧力制御部と,二次電池で発生するアコースティックエミッション信号を検知するAE検知部と,押圧部材の押圧力が上昇しているときにAE検知部で検知されたアコースティックエミッション信号中における,二次電池が含浸不良のものである場合に発生する含浸不良指標事象の発生状況に基づいて,二次電池が含浸不良のものであるか否かを判定する含浸不良判定部とを有している。
この二次電池装置は,押圧部材の押圧力を上昇させていくときに二次電池内で発生するアコースティックエミッション信号を,AE検知部で検知する。ここで,二次電池が含浸不良のものである場合には,検知されるアコースティックエミッション信号中に,特有の含浸不良指標事象が含まれることとなる。そこでその含浸不良指標事象の発生状況に基づいて,二次電池が含浸不良のものであるか否かの判定をすることができる。
この二次電池装置は好ましくは,アコースティックエミッション信号の振幅値があらかじめ定めた含浸不良判定閾値を超えたことを検出する閾値超え検出部を有し,含浸不良判定部は,押圧部材の押圧力が上昇しているときにおける閾値超え検出部による閾値超えの回数があらかじめ定めた判定値以上となった場合には二次電池が含浸不良のものであると判定し,閾値超え検出部による閾値超えの回数が判定値に達しないまま,押圧部材の押圧力の上昇が終了するに至った場合には二次電池が含浸不良のものでないと判定するものであるとよい。すなわち,振幅値の閾値超えを,含浸不良指標事象として用いることができる。
この二次電池装置はあるいは,AE検知部で検知されたアコースティックエミッション信号のレベルがあらかじめ定めた閾値を超えるイベントの発生を検知するAE信号イベント分離部を有し,含浸不良判定部は,押圧部材の押圧力が上昇しているときにおけるイベントの累積発生件数があらかじめ定めた判定値以上となった場合には二次電池が含浸不良のものであると判定し,イベントの累積発生件数が判定値に達しないまま,押圧部材の押圧力の上昇が終了するに至った場合には二次電池が含浸不良のものでないと判定するものであってもよい。つまりイベントも,含浸不良指標事象として用いることができる。
ここでAE検知部は,押圧部材に取り付けられていることが望ましい。AE検知部が押圧部材に取り付けられているということは,判定の際,対象となる個々の二次電池にいちいちAE検知部を取り付けなくてよいということである。このため判定の所要時間が短い。また判定精度も高い。AE検知部の押圧部材への取り付け箇所の状態が一定となるからである。
押圧部材は,軽金属で形成されたものであることが好ましい。軽金属は一般的に,アコースティックエミッション信号の伝達性に優れ,高い判定精度が得られるからである。さらに押圧部材の具体的材質としてはアルミなどが望ましく,押圧部材におけるAE検知部が取り付けられている箇所の厚さは,1mm以上1cm以下であることが好ましい。
この二次電池装置は押圧部材に押圧力を供給する押圧力供給部材と,押圧部材と押圧力供給部材との間の位置,もしくは,二次電池と押圧部材との間の位置に配置された除振部材とを有し,押圧力供給部材とAE検知部との間には必ず除振部材が配置されている一方,二次電池とAE検知部との間には除振部材が配置されていないことが望ましい。これにより,押圧力供給部材で押圧部材を二次電池に向けて押し付けることができる。また,押圧力供給部材の振動は除振部材で遮断されるので,AE検知部に伝わることがない。その一方,二次電池のアコースティックエミッション信号は除振部材により遮断されることなくAE検知部に到達する。
この二次電池装置はさらに,二次電池が,偏平形状の硬質ケースに偏平型の電極捲回体を収納してなるものであり,押圧部材は,二次電池の最大面積の外表面を押圧するものであり,押圧部材の縦横のサイズが,二次電池の最大面積の外表面に対して上下左右に1cm以上の余白があり,電極捲回体の平坦部分のサイズに対して−3cmを下回らないサイズであることが望ましい。押圧部材のサイズが大きすぎると,硬質ケースの側壁部分の剛性により,電極捲回体に押圧力があまり掛からない。押圧部材が小さすぎると,電極捲回体のうちごく一部分のみに押圧力が掛かることになり,電極捲回体からの気泡の脱出が十分には起こらない。押圧部材が上記の範囲内のサイズであれば,適切な判定に有利である。
また,二次電池の含浸不良の有無の判定方法の発明では,二次電池を押圧するとともにその押圧力を上昇させていき,押圧力が上昇しているときに二次電池で発生するアコースティックエミッション信号を検知し,検知されたアコースティックエミッション信号中における,二次電池が含浸不良のものである場合に発生する含浸不良指標事象の発生状況に基づいて,二次電池が含浸不良のものであるか否かを判定する。
この判定方法では,二次電池を複数の押圧部材で押圧するとともに,二次電池が複数の押圧部材以外のものに接触しない状態で含浸不良の有無の判定を行うことが望ましい。あるいは,二次電池を押圧部材で押圧するとともに,二次電池と押圧部材以外のものとの間に除振部材を配置した状態で含浸不良の有無の判定を行うこととしてもよい。床等の外部へのアコースティックエミッション信号の漏洩,あるいは外部からのアコースティックエミッション信号の侵入は,判定精度を下げる要因だからである。
また,二次電池の含浸不良の判定の発明に係る,二次電池の充放電を制御する二次電池の制御方法では,前述の含浸不良の有無の判定方法により二次電池の含浸不良の有無を判定し,含浸不良があると判定された状況下では,含浸不良がないと判定された状況よりも充放電の許容電流値を限定した限定制御を行う。また,同じく二次電池の製造方法では,製造された二次電池に対して,前述の含浸不良の有無の判定方法により二次電池の含浸不良の有無を判定し,含浸不良があると判定された場合には,その二次電池を不合格として排除し,含浸不良がないと判定された場合には,その二次電池を合格とする。
また,本発明においては,前述のガス発生量の推定と,含浸不良の有無の判定とをいずれも行うようにすることもできる。
本発明によれば,電池の外形部材の種類に関わらず適用でき,内部ガスの発生量を高精度に検知することができる二次電池装置等が提供されている。また,電極捲回体における含浸不良をも検知できるようにされている。
実施の形態の二次電池装置のブロック図である。 実施の形態の二次電池装置のブロック図である。 二次電池内で気泡の発生が起こったときのAE信号を示すグラフである。 AE信号における累積イベント件数と二次電池におけるガス発生量との関係を示すグラフである。 低温条件および大電流条件を除いた場合のAE信号における累積イベント件数と二次電池におけるガス発生量との関係を示すグラフである。 AE信号の2乗の値(エネルギー値)の波形を示すグラフである。 AE信号における累積エネルギー値と二次電池におけるガス発生量との関係を示すグラフである。 AE信号における累積エネルギー値と二次電池におけるガス発生量との関係を示すグラフである。 AE信号における,ピークが過大であったイベントを除いたときの,累積エネルギー値と二次電池におけるガス発生量との関係を示すグラフである。 AE信号からイベントを分離する処理を説明するフローチャートである。 イベントに基づきガス発生量を算出する処理を説明するフローチャートである。 第2の形態の二次電池装置における二次電池周辺を示す斜視図である。 図12の二次電池の正面透視図である。 図12の二次電池の断面図である。 第2の形態の二次電池装置における押圧機構を示す側面図である。 第2の形態の一変形例に係る側面図である。 第2の形態の二次電池装置のブロック図である。 第2の形態における含浸不良判定時の押圧力を示すグラフである。 第2の形態における押圧荷重上昇時のAE信号(気泡あり)を示すグラフである。 第2の形態における押圧荷重上昇時のAE信号(気泡なし)を示すグラフである。 第2の形態における押圧荷重上昇時のAEイベントの累積件数を示すグラフである。
[第1の形態]
以下,内部ガスの発生量の推定に係る本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の形態は,図1あるいは図2のブロック図に示す二次電池装置に本発明を適用したものである。図1に示す二次電池装置1は,二次電池10と,負荷である充放電回路11とを有している。二次電池装置1では,二次電池10から充放電回路11への電力の供給や,充放電回路11で回生により生じた電力での二次電池10の充電が行われる。二次電池装置1は,二次電池10および充放電回路11の他に,AEセンサ12,アンプ13,制御回路14,電圧計15,電流計16,報知部19を有している。
AEセンサ12は,二次電池10のアコースティックエミッションすなわち弾性振動を受けて,電気信号に変換して出力するものである。AEセンサ12は,圧電素子その他の,受ける押圧力に応じた電圧信号を出力する素子によって構成されている。本形態で使用するAEセンサ12は,超音波帯域の弾性振動に対して感度を持つものである。具体的には10〜2000kHzの周波数範囲にて感度を有するものである。AEセンサ12の感度は,この周波数範囲内で一律であってもよいし,この周波数範囲内の特定の周波数帯にて感度が高いものであってもよい。また,AEセンサ12は,二次電池10に直接に固定されていてもよいし,二次電池10を保持する保持部材に固定されていてもよい。
アンプ13は,AEセンサ12の出力信号(以下,「AE信号」という)を増幅するものである。制御回路14は,AE信号に基づいて充放電回路11を制御する回路である。このため制御回路14には,アンプ13で増幅されたAE信号が入力されるようになっている。制御回路14は,信号分離部17と,ガス発生量算出部18とを有している。信号分離部17は,入力されたAE信号を解析し,後述するように「イベント」の分離を行うものである。ガス発生量算出部18は,信号分離部17で分離された「イベント」に基づいて,二次電池10における内部ガスの発生量を算出するものである。電圧計15は,二次電池10の電圧を検知するものである。電流計16は,二次電池10の電流を検知するものである。報知部19は,二次電池装置1の状況についてのユーザへの報知を行うものである。
図1の二次電池装置1は,1つの二次電池10により充放電回路11に電力を供給するシステムを対象とするものである。これに対し,図2の二次電池装置2のように多数の二次電池10を有するシステムを対象とすることもむろん可能である。図2では多数の二次電池10のうちの1つにAEセンサ12を設けているが,2つ以上の二次電池にAEセンサ12を設けた構成とすることも可能である。二次電池10自体は,硬質ケースを電池容器として用いるものでもよいし,ラミネートタイプの外装材を有するものでもよい。
図1や図2の二次電池装置1,2は,例えば電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されて使用されるものである。その場合,充放電回路11には,車輪を駆動する駆動モータが含まれる。この場合,走行状況や運転者の操作に応じて駆動モータを制御する走行制御装置も充放電回路11に含まれる。むろん,これ以外の種々の電池搭載機器にも図1や図2の二次電池装置1,2を適用可能である。
図1,図2における制御回路14は,二次電池10における内部ガスの発生状況に応じて,二次電池10と充放電回路11との間で流れる充放電電流の電流値の許容範囲を限定するものである。そのために制御回路14では,AEセンサ12が出力するAE信号,より詳細にはアンプ13で増幅されたAE信号に基づいて,二次電池10における内部ガスの発生量を算出する。
具体的には,まず信号分離部17でAE信号から「イベント」を分離する信号処理がなされる。これを図3のグラフにより説明する。図3は,横軸を時間とし縦軸をAE信号の値[V]としたグラフである。図3の縦軸では,図中の中央にゼロ点を置いている。二次電池10が発するAE信号は,通常時(ガス発生による気泡の生成が起きていないとき)には,ほとんどゼロである(図3中の「通常期間」)。二次電池10は,機械的な可動部分を有していないからである。
しかし,二次電池10内でガスが発生して気泡を生成しているときには,微小ながら弾性振動が発生する。このためAE信号の値が通常期間よりも大きくなる。このとき,発生するのは振動であるから,AE信号の符号は正と負とを周期的に反復する。その周波数はおおむね超音波帯である。1粒の気泡の生成が終了すると,再び通常期間に戻る。本発明ではこれを「イベント」と呼んでいる。図3中の1つのイベントが,1粒の気泡の生成に相当する。よって,AE信号からこのイベントの発生を検出することで,二次電池10内でのガス発生の状況が分かるのである。
図3中の縦軸のT1,T2は,イベントが発生しているか否かを識別するための閾値である。T1は正側の閾値で,T2は負側の閾値である。T1,T2の絶対値は等しい。本形態の例では,T1,T2の絶対値は,アンプ13による増幅後の値として20μV前後である。つまり,AE信号がT2〜T1の範囲内である間は通常期間と見なし,AE信号が当該範囲を超えるとイベントの開始と見なすのである。そして,AE信号の振動が減衰して,そのピーク値においてもT2〜T1の範囲内に収まっている状態になると,イベントの終了と見なすのである。イベントの終了と見なすタイミングの詳細については後述する。この開始から終了までが1回のイベントである。イベント終了後は再び通常期間となる。なお,図3中の縦軸のT3,T4については後に説明する。
本発明者らは,このイベントの発生件数が一定条件下ではガスの発生量との間でよい相関性を有することを見出した。以下,このことを説明する。図4のグラフに,温度および充放電電流を一定にした状態での充放電サイクル試験を行った際におけるイベント発生件数(縦軸)とガス発生量(横軸)との関係の測定結果を示す。この試験は,図1に示した二次電池装置1を用いて,二次電池10の体積膨張を別途測定しながら行った。
この試験の測定条件は,次の4通りとした。
第1条件:温度25℃,電流1C(C(シー)は二次電池10を1時間で充電または放電させきる電流値)
第2条件:温度60℃,電流1C
第3条件:温度25℃,電流5C
第4条件:温度0℃,電流1C
つまり,第1条件が標準の試験条件であり,第2条件は標準条件に対し温度を上げた条件,第3条件は標準条件に対し大電流にした条件,第4条件は標準条件に対し温度を下げた条件である。
図4に見るように,第1条件(標準条件)の3つのプロット点は,ほぼ直線状をなしている。これより,温度と電流がいずれも一定であれば,イベント件数とガス発生量とが比例する傾向があることが分かる。また,第2条件(高温)のプロット点も,第1条件のプロット点がなす直線上に乗っている。これより,電流が一定であれば,温度がやや高くても第1条件の比例関係が維持されることが分かる。
しかしながら,第3条件(大電流)や第4条件(低温)のプロット点は,前記の直線から外れている。つまり,大電流の場合や低温の場合には第1条件の比例関係が維持されないのである。これらの場合には,イベント件数の割にガス発生量が少なくなっている。これらの場合に第1条件の比例関係から外れる理由は,次のように推定される。つまり,第3,第4条件の場合には,ガス発生により生成する個々の気泡の径が,第1条件の場合よりも小径であると考えられる。第3条件(大電流)の場合にはガス発生の反応速度が速いため,気泡が大きく成長する前に次の気泡の生成が始まってしまうためと考えられる。第4条件(低温)の場合には,電解液の粘度が上昇しているために電解液が動きにくく,気泡が大きく成長することが難しいためであると考えられる。これらの理由により,第3,第4条件の場合には,ガス発生量の割にイベント件数が多くなり,第1条件の比例関係から外れるのである。
つまり,大電流や低温といった条件の場合を除けば,イベント件数とガス発生量との相関性は高いのである。そこで,イベント件数とガス発生量との関係を図5に示すようにテーブル化しておくことで,イベント件数からガス発生量を導き出すことができる。図5の例では決定係数R2 が0.998と,かなりよい相関性が示されている。すなわち,図5のようなテーブルをあらかじめ作成して,図1または図2中のガス発生量算出部18に格納しておけばよい。こうしておくことで,信号分離部17で計数したAE信号中のイベント件数に基づき,ガス発生量算出部18でガス発生量の算出を行うことができる。なお,図5のテーブルでは当然,イベントの発生の程度が激しいほど,つまりイベントの件数が多いほど,ガス発生量が多くなっている。
このようにテーブルを用いて二次電池10の内部におけるガス発生量の算出を行う場合にはむろん,前記したように二次電池10の体積膨張を別途測定する必要はない。また,図1や図2中の電圧計15,電流計16の出力値も,ガス発生量の算出のために特に必要な訳ではない。これにより例えば,ガス発生量が正常範囲を逸脱して多くなった状況では,二次電池10の充放電電流の制限を通常時と比較して厳しくするような指示を,制御回路14から充放電回路11に出すことができる。
ここでいうガス発生量が多くなった状況の判定方法としては例えば,ガス発生量を累積した総量にあらかじめ上限値を設定しておくことが考えられる。あるいは,適当な長さの単位時間当たりのガス発生量,すなわちガス発生速度にあらかじめ上限値を設定しておくことも考えられる。つまり,累積ガス発生量もしくはガス発生速度が上限値を以上となったときに,ガス発生量が多くなった状況であると判定して上記の指示を行うのである。あるいは,累積ガス発生量とガス発生速度とにそれぞれ上限値を設定しておき,2つの上限値を併用すること等でもよい。
上記のようにイベント件数に基づいてガス発生量を算出する場合には,二次電池10の使用状況に大電流や低温といった条件が入ってくると精度が低下する。しかしながら本発明者らは,イベント件数以外の別の指標を用いることで,二次電池10の使用状況に関わらず高精度なガス発生量の算出ができることを見出した。以下,このことについて説明する。
本発明者らが見出したのは,AE信号におけるイベントの発生件数よりも,イベントの際のAE信号のエネルギー値の累積値の方が二次電池10内のガス発生量をよりよく指標するということである。AE信号のエネルギー値は基本的に,AE信号の電圧値の2乗で与えられる。図3に示したイベント発生時におけるエネルギー値のグラフを図6に示す。図6のグラフでは,AE信号のうちイベント開始時からイベント終了時までのイベント期間内に限りAE信号の2乗値,すなわちエネルギー値を算出して示している。すなわち,通常期間におけるAE信号値はノイズの域を出ないものとして無視している。そして,イベント期間中のエネルギー値を積算した値をそのイベントのエネルギー値とする。
本発明者らは,先に示した第1〜第4条件と同じ条件にて試験を行い,イベントのエネルギー値を累積した累積エネルギー値とガス発生量との相関関係を評価した。結果を図7に示す。図7では,第1条件(標準条件)の3つのプロット点および第2条件(高温)のプロット点ばかりでなく,第3条件(大電流)や第4条件(低温)のプロット点も含めて,ほぼ直線状をなしている。これより,累積エネルギー値とガス発生量との相関関係は,二次電池10の使用状況に関わらず高いと言える。この点が,先に示した図4の場合(イベント件数による算出)には大電流や低温の条件下で精度が低下していたのと異なる。
このように累積エネルギー値を用いることで大電流や低温の条件下でも同一の相関性に含めることができる理由は,以下のように考えられる。すなわち,イベントのエネルギー値はそもそも,生成する気泡の大きさとほぼ比例すると考えられる。つまり,大きな気泡を生成するイベントほど,1イベントあたりのエネルギー値が大きいのである。エネルギー値を用いることにより,気泡の大きさという要因が取り入れられることになる。このため,適用範囲が広いのである。一方,イベント件数を用いる場合には気泡の大きさは無視されていたと言える。このため,生成する気泡の大きさが異なるような状況を対象とすると精度が低下したのである。
図8に,AE信号の累積エネルギー値とガス発生量との相関関係のグラフを示す。図8の例では,決定係数R2 が0.9905となっている。この決定係数は,図5の例における決定係数よりやや低い。図8の例ではまた,図中の右上に関係が直線性から外れている領域Aが存在する。この領域Aの存在が,図8が決定係数で図5に及ばない原因であると考えられる。つまり,相関性の良否自体では,図5の方が図8より優れている。しかしながら図8のグラフは,大電流や低温といった条件の場合を除外せずに包含しているという点では図5の例よりも優れている。
図8の例で決定係数がさほど高くなかった理由としては,AE信号には気泡の生成に起因するもの以外のものが含まれることが考えられる。例えば,生成した気泡の移動や破裂,気泡同士の合体などが挙げられる。また,二次電池10の内圧上昇による電極板や集電部材などの固体部材の変形も,AE信号の原因となる。特に二次電池10のサイズが大きい場合には,これらに起因するAE信号の影響が大きいと考えられる。そしてこれらの現象はいずれも,気泡の生成と比べて突発的であるため,発生するAE信号の振幅も大きいと考えられる。これより,図3に例示したようなイベントのうち,振幅が特に大きいものは,気泡の生成以外の要因に起因するものとして除外してしまえばよいことになる。
そこで本形態では,図3の説明の中で述べた閾値T1,T2よりもさらに高レベルの限界値T3,T4を設定している。T3は正側の限界値で,T4は負側の限界値である。T3,T4の絶対値は等しい。本形態の例では,閾値T1,T2が25.5dBであるとして,限界値T3,T4を30dBに設定している。つまり,限界値T3,T4は,閾値T1,T2に対して,AEセンサ12の出力電圧値としては4〜5桁程度高レベルなのである。あるイベントについてその出力値のピークが限界値T3,T4を超えてしまった場合には,そのイベントは考慮の対象から外されることになる。むろん図3に示したイベントでは,ピーク値が限界値T3,T4には達しておらず,考慮の対象から外されることはない。
このようにしてピーク値が過大であったイベントを除外した上で図8のグラフを書き直したものが,図9のグラフである。図9のグラフでは,図8のグラフに存在したような相関性の悪い領域Aが存在しない。また,決定係数R2 が0.9988と,図5のグラフの決定係数をも凌ぐほど高くなっている。これより,図9のようなテーブルをあらかじめ作成して図1または図2中のガス発生量算出部18に格納しておけばよい。こうすることで,低温や大電流といった条件を含めた広範な条件下にて高い精度でガス発生量の算出を行うことができる。なお,図8(領域Aの部分を除く)や図9のテーブルでも,イベントの発生の程度が激しいほど,つまりイベントの累積エネルギー値が大きいほど,ガス発生量が多くなっている。
続いて,本形態の二次電池装置1の制御回路14での信号処理を,フローチャートにより説明する。制御回路14での信号処理は,信号分離部17の処理と,ガス発生量算出部18の処理とに分けられる。前者の処理は,AE信号から図3に示したようなイベントを分離して認識することである。後者の処理は,前者の処理で分離されたイベントに基づいて,ガス発生量を算出することである。
まず前者の処理を,図10のフローチャートにより説明する。このフローチャートの処理は,二次電池装置1の稼働中常に実施されている。したがってこのフローチャートの処理が実行されるときには,アンプ13から信号分離部17に対し,AE信号の電圧値が所定のサンプリング間隔で常時入力されている。所定のサンプリング間隔とは,例えば,1マイクロ秒程度のあらかじめ定めた時間間隔である。
このフローチャートではまず,サンプリングしたAE信号の電圧値が閾値を上回っているか否かを判定する(S1)。つまり,AE信号の電圧値が図3に示した閾値T1,T2の範囲内に入っているか否かを判定する。具体的には,電圧値の絶対値が閾値T1,T2の絶対値以下であればNoと判定し,電圧値の絶対値が閾値T1,T2の絶対値を超えていればYesと判定する。
判定がNoである場合には,未だイベントが開始していない通常期間であることになる。このため,特に何も処理をすることなく,S1の判定をさらに続ける。二次電池10内で気泡の生成が開始すると,AE信号の値が上昇する。これによりS1の判定がYesになると,イベントが開始したことになる。つまり,S1の判定がNoからYesに変わった時が,イベントの開始時である。イベントが開始されると,不感時間の計時開始と,AE信号の電圧値の記録開始とが行われる(S2)。AE信号の電圧値の記録は,前述のエネルギー値の算出と,当該イベントにおけるピーク値の決定とのための必要から,イベントの期間中にわたって行われる。
不感時間とは,一旦イベントが開始するとその後の一定時間の間には,重ねてイベントを開始させないための期間である。複数のイベントが同時に起こると処理が混乱するので,これを避けるためである。よって本形態では,現に起こっているイベントの数は高々「1」である。このため,一旦イベントが開始すると,不感時間が満了しないうちは,たとえAE信号の電圧値が閾値以内から閾値を超えることがあっても,重ねてイベントが開始されることはない。図3等に示したようにAE信号は正負にわたり反復する信号であるが,上記の理由により,複数のイベントが同時に起こっているように扱われることはない。不感時間は,例えば50ミリ秒程度のあらかじめ定めた時間である。むろん不感時間は,1回のイベントの収束,つまり1粒の気泡の生成の終了に通常要する時間より長く設定されている。
イベントが開始されてからでも,AE信号の電圧値と閾値T1,T2との対比が行われる。イベントの期間中には,AE信号の電圧値が閾値を下回ったか否かが判定される(S3)。AE信号の電圧値が閾値を下回らない間は(S3:No),S3の判定が反復される。
AE信号の電圧値が閾値を下回ると(S3:Yes),収束時間を超えたか否かが判定される(S4)。収束時間は,イベントが終了したと見なしてよいか否かの指標となる時間である。収束時間は,AE信号が正負を反復する周期よりも長い時間であり,例えば1ミリ秒程度のあらかじめ定めた時間である。収束時間の計時は,S3の判定がNoからYesに変わると開始される。また,S3の判定がYesからNoに変わると,収束時間が計時中であってもその計時は停止かつリセットされる。よって,その後再びS3の判定がNoからYesに変わると,改めて最初から計時時間の計時が開始される。
図3に示したようにイベントの途中であっても,AE信号の正負の反復により,S3の判定がNoからYesに変わることは随時起こる。しかし,AE信号の正負の反復により,すぐに再びS3の判定がYesからNoに戻るので,収束時間の計時はリセットされ,S4の判定はNoである。すなわち,S3の判定がNoからYesに最後に変わってからYesであり続けている時間が収束時間に達しない限り,S4の判定はYesにならないのである。
イベントが収束に至ると,つまり1粒の気泡の生成が終了すると,AE信号の振幅の減衰により,そのピーク値といえども閾値T1,T2に達しないことになる。これにより初めて,S3の判定がYesであり続けながら収束時間の計時が満了するに至る。これによりS4の判定がYesとなる。このとき,(S1:Yes)で開始されたイベントが終了したと見なされる。この後は再び,イベント中ではない通常期間となる。なお,イベントの開始から終了までの時間は,概ね4マイクロ秒程度である。
イベントが終了すると,S2で開始したAE信号の電圧値の記録を終了する(S5)。そして,記録されたAE信号,すなわちイベント1回分のAE信号に基づき,そのイベントのエネルギー値の算出と,イベント期間中のAE信号の最大振幅値の決定が行われる。そして,算出したエネルギー値と,決定した最大振幅値とを,ガス発生量算出部18へ報告する(S6)。
それから,S2で計時を開始した不感時間が満了したか否かを判定する(S7)。不感時間の満了を待ってから(S7:Yes),S1の処理へ戻る。すなわち,新たなイベントの開始が可能な状態となる。
以上が図10の処理である。この処理が二次電池装置1の稼働中実施され続ける。これにより,イベントが起こるたびに,すなわち二次電池10内で気泡が生成されるたびに,そのときのイベントにおけるAE信号のエネルギー値と最大振幅値とが,信号分離部17からガス発生量算出部18へ報告されるのである。
なお,1粒の気泡の生成の途中で別の気泡の生成が開始された場合でも,前述の不感時間の効果により,イベントの件数としては合計で1件である。ただしその場合,その1件のイベントにおけるエネルギー値は,単独の気泡の生成によるイベントの場合より大きくなる。このため,ガス発生量算出部18での算出処理の精度を特に落とすことはない。
続いて,ガス発生量算出部18での処理を図11のフローチャートにより説明する。このフローチャートの処理は,信号分離部17からの図10中のS6の報告があったときに開始される。このフローではまず,報告されたイベントが,気泡の生成によるものであるか否かを判定する(S11)。具体的にはむろん,報告内容中に含まれている最大振幅値により判定する。この判定は,最大振幅値が,前述の限界値T3,T4に相当する値を超えているかどうかによりなされる。最大振幅値が限界値を超えていれば前述のように,当該イベントは気泡の生成以外の要因によるものと考えられるからである。このためS11では,最大振幅値が限界値を超えていればNoと判定され,最大振幅値が限界値以内であればYesと判定される。
S11の判定がNoであった場合には,S12以下の処理を行うことなく,そのまま図11のフローを終了する。報告されたイベントは気泡の生成によるものではないと考えられるからである。つまり当該報告は無視される。
S11の判定がYesであった場合には,エネルギー値の積算を行う(S12)。すなわち,当該報告が当該二次電池10についての初めての報告(S11で排除されたものを除く,以下同じ)である場合には,報告内容中のエネルギー値を記憶する。過去にも報告があった場合には,すでに記憶しているエネルギー値に今回報告されたエネルギー値を加算する。
そして,積算後のエネルギー値をガス発生量に変換する(S13)。すなわち,ガス発生量算出部18には前述のように図9のグラフに基づくテーブル(マップ)が格納されている。積算後のエネルギー値によりこのテーブルを参照することで,現時点での二次電池10内のガス発生量を算出するのである。
続いて,算出したガス発生量が,あらかじめ設定されている前述の上限値に達しているか否かが判定される(S14)。ここでは前述のように,ガス発生量についての上限値による判定に替えてもしくは加えて,ガス発生速度の上限値による判定を行ってもよい。S14の判定がNoであった場合には,S15の処理を行うことなく図11のフローを終了する。この場合の図1または図2中の充放電回路11の動作は,充放電回路11に本来設定されている通常の動作である。
S14の判定がYesであった場合,すなわちガス発生量が上限値に達している場合には,制御回路14から充放電回路11へ指示が出される(S15)。その指示の内容は,通常時の動作と比較して二次電池10の充放電電流の制限を厳しくするような指示である。二次電池10に過大な負荷を掛けないためである。
またこのとき,図1または図2中の報知部19により,ユーザーへの報知を行うようにしてもよい。例えば本形態の二次電池装置1がハイブリッド自動車または電気自動車の車載モータおよび電池である場合,報知部19は,ダッシュボード中の警告灯や音声によるドライバーへの注意喚起手段である。これによりドライバーに,二次電池10が寿命に近づいていること等を認識させることができる。以上が図11の処理である。
また,上記の処理を,二次電池の製造プロセスに応用することができる。その場合には,電池ケースに電極積層体を挿入して電解液を注入すること等により二次電池を作製した後,製造された二次電池に対して充放電試験を行う。そしてその充放電試験の際に前述の処理を行って内部ガスの発生量を出力する。そして,出力された発生量があらかじめ定めた正常範囲より多かった場合には,その二次電池を不合格として排除する。すなわちそのような電池は出荷しない。出力された発生量があらかじめ定めた正常範囲以内であった場合には,その二次電池を合格とし,需要先へ出荷する。これにより,不良品の二次電池を需要先へ出荷してしまうことを防止できる。
以上の図10および図11の説明では,イベント期間中のAE信号の最大振幅値がその限界値T3,T4を超えているか否かの判定を,ガス発生量算出部18にて行うものとした(図11のS11)。しかしながらこの判定を,ガス発生量算出部18ではなく信号分離部17で行うこともできる。その場合には,図10のフロー中のS2からS5に至るAE信号の電圧値の記録中にその電圧値を監視し続けることになる。そして限界値T3,T4を超えるレベルの電圧値が記録された場合には,記録を中止してそのときのイベントを破棄すればよい。この場合に図11ではS11の判定は不要である。また,この場合の電圧値の監視は,必ずしも電圧値の全記録期間にわたって行う必要はない。イベント開始時からあらかじめ定めた期間(例えば4ミリ秒程度)のみ監視すれば十分である。気泡の発生以外の要因による高レベルの振幅が発生するのは多くの場合,イベント開始時の直後だからである。
また図10の説明では,不感時間の満了時を,S1:Yesの直後から例えば50ミリ秒程度としたが,S4:Yesの直後からの経過時間で定めてもよい。その場合でも,S2からS4:Yesまでの間に新たに別のイベントが開始してしまうことはないからである。つまりその場合でも,S2からS4:Yesまでの間が不感時間であることに変わりはない。その場合のS4:Yesの直後から不感時間満了までの計時時間は,S5のエネルギー値の算出および最大振幅値の決定,そしてS6の報告を行うことができる程度の長さが確保されていれば十分である。
また,図10および図11では,図11のS13でのガス発生量への変換を,図9のグラフに基づくテーブルにより行うことを前提として説明した。しかし,図9のテーブルの代わりに,図5あるいは図8(領域Aの部分を除く)のグラフに基づくテーブルを用いることもできる。
図5のテーブルを用いる場合には,図10のS5におけるエネルギー値の算出や最大振幅値の決定は不要で,S6ではイベントの発生のみを報告することになる。S2からS5までのAE電圧値の記録も不要である。そして図11では,S11の判定を行わず,S12ではイベントの件数を積算することになる。なお,図5のテーブルを用いつつ図11のS11の判定を行うこともできる。その場合には,図10でS2からS5までのAE電圧値の記録を行い,S5では最大振幅値の決定を行う。
図8のテーブルを用いる場合には,図10中のS2からS5までのAE電圧値の記録は不要で,S5では当然,最大振幅値の決定はしない。そして図11では,S11の判定を行わない。
以上詳細に説明したように本実施の形態の二次電池装置1,2によれば,二次電池10にAEセンサ12を設けて,二次電池10のアコースティックエミッションを検出するようにしている。そしてAE信号における二次電池10内の気泡生成に起因するイベントを分離して,このイベントに基づいてガス発生量の算出を行うようにしている。これにより,二次電池10における内部ガスの発生を単に検知するにとどまらず,ガスの発生量を精度よく算出するようにしている。しかもそのことを,圧力センサを設けることなくして達成している。これにより,電池の外形部材の種類に関わらず適用でき,内部ガスの発生量を検知することができる二次電池装置,二次電池における内部ガスの発生量推定方法,二次電池の制御方法,および二次電池の製造方法が実現されている。
さらに,イベントに基づいてガス発生量を算出するにあたり,イベントのエネルギー値の累積値やあるいは件数に基づいてガス発生量への変換を行うようにしている。これにより,高精度に内部ガスの発生量を検知できるようにしている。特にエネルギー値の累積値を用いる場合には,低温や大電流などの条件を含めた広い条件下で高い精度が維持される。また,AE信号の振幅値が限界値を超えていたイベントは除外することにより,さらに高い精度が得られるものである。
[第2の形態]
続いて,第2の形態について説明する。第2の形態は,検査対象の二次電池が,製造過程での電解液含浸工程で電極捲回体に気泡が残留したもの(含浸不良)であるか否かを判定することに主眼をおいた形態である。本形態では図12に見るように,AEセンサ12が,二次電池10に直接固定されるのではなく,押圧板20への取り付けとなる。押圧板20は,二次電池10を押圧する板状の部材である。押圧板20は,二次電池10の最大面積の面を押圧するように配置されている。
図12に示される二次電池10を正面視にて図13に示す。図13では,二次電池10の内部構造をも一部示している。図13に示されるように二次電池10では,電池ケース23の内部に電極捲回体21が収納されている。本形態における電池ケース23は,硬質ケースである。また,本形態における電極捲回体21は,偏平型のものである。なお,偏平型の電極捲回体21に替えて,短冊状の電極板を平積みした電極積層体を用いるものであってもよい。図13中に破線で示す領域22は,電極捲回体21が電池ケース23の内面からの押圧力を受けうる範囲である。そして,二次電池10の正面中で押圧板20が占めている領域は,領域22より小さく,領域22の中に完全に収まっている。
本形態の例としては,二次電池10および押圧板20のサイズは,以下のようになっているものとする。ここで縦方向,横方向とは,図13中の上下方向,左右方向のことである。
縦方向 横方向
二次電池10 9.1cm 14.8cm
押圧板20 7.0cm 9.0cm
図14に,二次電池10の断面図を示す。二次電池10に収納されている電極捲回体21は,正負の電極板をセパレータとともに捲回して偏平形状としたものである。電池ケース23は,本体24と蓋部材25とから成っている。ただし以下では,特に本体24と蓋部材25とを区別する必要がない限り,単に電池ケース23と称するものとする。二次電池10にはさらに,外部端子51と,集電端子53とが備えられている。外部端子51と集電端子53とはともに,蓋部材25に取り付けられている。これにより,外部端子51が集電端子53を介して電極捲回体21の電極板と導通するようになっている。なお,蓋部材25はインシュレータ52により,外部端子51等から絶縁されている。
図14では,電池ケース23の外側に押圧板20が存在している範囲と,電池ケース23の内面と電極捲回体21とが接触している範囲とがほぼ同じになっている。しかしながら,押圧板20の押圧力を強めると,電池ケース23の内面と電極捲回体21との接触範囲はもっと広がる。図13で押圧板20より領域22の方が広いのはこのためである。
次に,押圧板20の押圧機構を説明する。本形態では,図15に示すように,押圧ロッド26を設けて押圧板20を二次電池10へ向けて押し付けるようにしている。つまり,押圧板20の押圧力は,押圧ロッド26から供給される。押圧ロッド26と押圧板20との間には,振動を吸収する除振部材27が配置されている。図15では二次電池10の片側当たり2本の押圧ロッド26が描かれているが,実際には4本の押圧ロッド26で押圧板20の四隅付近を押圧する。なお,各押圧ロッド26に対しては,駆動源28から押圧力が供給されるようになっている。押圧力の発生源である駆動源28としては,公知のソレノイドや油圧ポンプ等を用いればよい。
なお図16に示すように,AEセンサ12を1つだけとすることもできる。図16の例では,AEセンサ12のない図中左側においては,押圧ロッド26と押圧板20との間に除振部材27を配置する代わりに,押圧板20と二次電池10との間に除振部材29を配置している。除振部材27が押圧ロッド26の1本分の押圧面積のみをカバーするのに対し,除振部材29は押圧板20の板面全体をカバーする大形のものである。図15の例と図16の例とのいずれでも,押圧ロッド26とAEセンサ12との間には必ず,除振部材27または29が介在している。除振部材27,29としては,シリコンゴムなど,アコースティックエミッションを吸収する弾性体がよい。なお,二次電池10とAEセンサ12との間には,除振部材27,29が配置されていない。
本形態の二次電池装置のブロック図を図17に示す。図17のブロック図では,図1あるいは図2のブロック図に示したものに加えて,押圧板20,押圧ロッド26,駆動源28が追加されている。また,制御回路14により駆動源28を操作するようになっている。さらに,ガス発生量算出部18の代わりに含浸不良判定部30が設けられている。含浸不良判定部30は,AE信号を信号分離部17に通した結果に基づき,二次電池10における含浸不良の有無を判定するものである。
次に,本形態の二次電池装置における含浸不良の判定手順を説明する。本形態の二次電池装置における含浸不良の判定では,図18のグラフに示すように,押圧板20による二次電池10への押圧力を,F0からスタートしてF1まで上昇させる。この押圧力上昇に要した時間を押圧力増加時間という。押圧力の上昇は,制御回路14により駆動源28を制御することで行う。なお,この含浸不良の判定の際には,充放電回路11による二次電池10の充放電は行わない。
この押圧力上昇の際におけるAE信号を信号分離部17で解析する。押圧板20の押圧力を上昇させていくと,電極捲回体21の内部に含浸している電解液が押し出されて電極捲回体21の外に出て来る。このときの液移動による振動がアコースティックエミッションとしてAEセンサ12に検知される。ここで,電極捲回体21の中に含浸不良による気泡が存在すると,その気泡も押圧力上昇とともに移動する。気泡の一部は電極捲回体21の外に出て来る。このときには,液のみが電極捲回体21から流出するときよりも大きなAE信号が発生する。このため,気泡が含まれているかいないかによって,AEセンサ12に検知されるAE信号に差異がある。この差異により,含浸不良の有無を判定できるのである。
なお,この際に押圧ロッド26自身の振動がAEセンサ12に拾われることはない。なぜなら,前述のように押圧ロッド26とAEセンサ12との間には必ず,除振部材27または29が介在しているからである。押圧ロッド26自体には駆動源28の振動がかなり伝わっており,もしこれがAEセンサ12に拾われるとノイズとなり判定精度を下げてしまう。しかしながら本形態では,この振動は除振部材27,29により遮断され,AEセンサ12に伝わることはない。このため,駆動源28の振動による影響を受けることなく,高精度な判定ができる。
一方,二次電池10で発生したアコースティックエミッション自体が除振部材27,29により遮断されてしまいAEセンサ12に届かない,ということはない。除振部材27,29は前述のように,二次電池10とAEセンサ12との間には配置されていないからである。
図19および図20に,押圧力上昇の際に記録されるAE信号の振幅値の履歴を示す。図19は,対象とする電極捲回体21に含浸不良がある場合のものである。図20は,対象とする電極捲回体21に含浸不良がない場合のものである。図19および図20においてカーブLは,押圧ロッド26による押圧力である。つまりカーブLは,実測時における図18のグラフといってよい。カーブLの形自体は,図19と図20とで同じである。図19および図20では,横軸の経過時間にして概ね,10秒の時点から35秒の時点までの約25秒間が押圧力増加時間となっている。押圧力の増加が完了した状態での押圧力は約5kN(押圧板20の圧力としては約930kPa)である。また,押圧力増加時間終了後に約10秒間にわたって押圧状態を維持し,約45秒の時点で押圧力を解除している。なお図19および図20では,押圧荷重の値を左側の縦軸にて示している。
図19および図20におけるプロット点(図19では黒四角,図20では黒三角)は,AEセンサ12で検知されたAE信号の振幅値を示しており,その値は右側の縦軸にて示される。なお図19および図20の測定は,図16に示した,AEセンサ12を1つだけ有する構成の二次電池装置により行ったものである。
図19と図20との相違点は,AE信号が45dBを超えるプロット点の有無にある。すなわち,図19にはそのような高dBのプロット点があるのに対し,図20には高dBのプロット点がないのである。そして,図19の高dBプロット点は,10秒の時点以後にのみ存在する。つまり,押圧力の増加が開始されるより前の期間には存在せず,押圧力が増加し始めて以降にのみ存在する。より詳細に言えば,押圧力増加時間中にも,その後の押圧力維持時間中にも存在する。
これより,これらの高dBプロット点は,対象の二次電池10の電極捲回体21から気泡が脱出するときのAE信号を表すと考えられる。つまり,高dBのプロット点は,含浸不良がある二次電池10に特有のものである。言い替えると高dBのプロット点は,二次電池10が含浸不良のものである場合に発生する含浸不良指標事象である。これより,図19のような測定を行ったときに高dBのプロット点が観測されるか否かにより,対象の二次電池10が含浸不良のものであるかそうでないかを判定できるのである。むろん,高dBのプロット点が観測されればその二次電池10は含浸不良のものであり,観測されなければその二次電池10には含浸不良の問題はない。
よって,図17のブロック図に示した本形態の二次電池装置においては,押圧力増加時間およびその後の押圧力維持時間にわたって,AE信号の振幅値を信号分離部17で抽出しつつ,その振幅値が閾値を超えたかどうかを含浸不良判定部30で監視すればよい。閾値超えがあれば含浸不良と判定でき,閾値超えがないまま押圧力解除に至れば含浸不良でないと判定できる。その際の閾値は,図19および図20の例では45dBであったが,二次電池10や押圧板20の仕様に応じてあらかじめ定めておけばよい。具体的には,願不良の有無があらかじめ分かっている二次電池10を対象として,図19および図20に示したような試験測定を行うことで,適切な閾値を決定できる。
なお,振幅値が前述の閾値を超えた回数について判定値を設定してもよい。すなわち,押圧力増加時間および押圧力維持時間に振幅値が閾値を超えることがあったとしても,その回数があまりに少ない場合には,含浸不良でないと判定することとしてもよい。その場合の判定値は,あらかじめ設定しておく。この場合には,押圧力増加時間および押圧力維持時間に振幅値の閾値超えの回数が,前記判定値に達した場合に含浸不良と判定することになる。一方,閾値超えの回数が前記判定値に達しないまま押圧力解除に至れば含浸不良でないと判定される。[0101]で述べたのは,この判定値が「1」である場合に相当する。
この含浸不良の有無の判定は,AE信号の振幅値によるばかりでなく,第1の形態で述べた「イベント」の発生状況によっても可能である。押圧力上昇時の電極捲回体21からの電解液の流出や気泡の脱出により,AE信号にイベントが発生するからである。つまりイベントも,二次電池10が含浸不良のものである場合に発生する含浸不良指標事象なのである。そして,含浸不良がある二次電池10では,気泡の脱出がある分,含浸不良のない二次電池10よりもイベントの発生件数が多いからである。この場合には,AE信号からイベントを信号分離部17で分離しつつ,分離されたイベントの件数を含浸不良判定部30で累積すればよい。
含浸不良の有無によるイベントの発生状況の違いを,図21のグラフに示す。図21のグラフ中のカーブLは,図19および図20中のカーブLと同じである。図21中のプロット点は,累積でのイベント発生件数を示している。累積件数の値は右側の縦軸で示している。黒四角のプロット点が含浸不良ありの例で黒三角のプロット点が含浸不良なしの例である点では図19および図20と同様である。
図21の黒四角および黒三角のプロット点の配置から,含浸不良の有無のいずれでも,押圧力上昇とともにイベントの累積件数が増加していることが分かる。そして,黒四角(含浸不良)と黒三角(含浸不良なし)とを比較すると,黒四角の方が黒三角よりイベント件数が多い。よって,イベント件数の多寡により,対象の二次電池10における含浸不良の有無を判定することができる。図21の例では,累積件数に80〜100の範囲内程度の閾値を設定しておけばよい。これにより,イベントの累積件数が閾値を超えれば含浸不良と判定し,閾値を超えないまま押圧力解除に至れば含浸不良でないと判定することができる。
なお図21では,黒四角,黒三角ともに,一番最後のところでイベント件数がその直前に比して約20ほど上昇している。これは,押圧ロッド26による押圧力を解除するときにある程度まとまった件数のイベントが発生するためであると解される。これは,含浸不良の有無とは無関係な現象である。よって,この押圧力解除時の件数上昇の直前までの累積イベント件数にて判定することとしてもよい。
本形態の二次電池装置では,上記のようにして,二次電池10における含浸不良の有無を判定することができる。また,本形態の二次電池装置がハイブリッド自動車または電気自動車の車載モータおよび電池である場合,第1の形態の図11のS15のように,制御回路14から充放電回路11へ指示が出すことができる。その指示の内容は,含浸不良のある二次電池10であった場合には,含浸不良のない正常な二次電池10の場合の動作と比較して,二次電池10の充放電電流の制限を厳しくするような指示である。含浸不良のある二次電池10は,全く使用できないというわけではないが,正常な二次電池10と比較して性能が低い。このため,過大な負荷を掛けないことが望ましいからである。またこのとき,図1または図2中の報知部19により,ユーザーへの報知を行うようにしてもよい。これによりドライバーに,二次電池10が本来の性能より低いものであることを認識させることができる。
また,本形態の二次電池装置も第1の形態の場合と同様に,二次電池の製造プロセスに応用することができる。その場合には,製造された二次電池を対象として含浸不良の有無を判定する。含浸不良であると判定された二次電池10は不合格とし,少なくとも正常品としては出荷しない。含浸不良でないと判定された二次電池10を合格とし,正常品として需要先へ出荷する。これにより,低性能の二次電池10を正常品として需要先へ出荷してしまうことを防止できる。
以上詳細に説明したように第2の形態の二次電池装置によれば,二次電池10を押圧板20で押圧するようにしている。そして,押圧板20の押圧力を増加させていく過程でのAE信号の振幅値またはイベントの発生件数を監視することとしている。これにより,二次電池の外形部材の種類に関わらず適用でき,二次電池における含浸不良の有無を判定することができる二次電池装置,二次電池における含浸不良の判定方法,二次電池の制御方法,および二次電池の製造方法が実現されている。
さらに本形態では,AEセンサ12を,二次電池10への直接取り付けではなく押圧板20への取り付けとしている。二次電池10にAEセンサ12を直接取り付ける方式でも判定が可能ではあるが,押圧板20にAEセンサ12を取り付ける方式の方が,次の2点で有利である。
第1に判定に要する時間の点で有利である。押圧板20にAEセンサ12を取り付ける方式では,AEセンサ12を押圧板20にあらかじめ取り付けておくことができる。このため,判定対象の二次電池10にいちいちAEセンサ12を取り付ける必要がなく,工程時間が短くて済む。第2に,判定精度の点でも有利である。判定対象の二次電池10にAEセンサ12を逐一取り付けるとした場合,取り付けのための接着剤の量や厚さ,硬化の程度によって,二次電池10からAEセンサ12へのAE信号の伝達性が影響されてしまう。このため,AEセンサ12の実効的な感度が個々の二次電池10によりまちまちとなってしまう。押圧板20にAEセンサ12を取り付ける方式では,押圧板20へのAEセンサ12の取り付け状況が一定であるため,AEセンサ12の感度も一定となる。このため,判定精度が高いのである。
押圧板20の材質については,密度5.0g/cm3以下の軽金属,中でもアルミなどが好ましい。軽金属はAE信号を伝達しやすいからである。また,押圧板20のサイズについては,縦,横,厚さとも,基本的には小さい方がよい。押圧板20が大きいと,二次電池10から伝わったAE信号が押圧板20の内部で減衰してしまい,AEセンサ12へ十分伝わらないためである。
押圧板20の縦横のサイズについては,二次電池10の最大面積の面に対して,上下左右に1cm以上の余白があることが望ましい。押圧板20のサイズが二次電池10のサイズにあまりに近いと判定精度が悪いからである。なぜなら,押圧板20の縁辺が二次電池10の電池ケース23における側壁面に近い部位に位置しており,電池ケース23があまり変形しないためである。このため,押圧板20による押圧が電極捲回体21にうまく伝わらず,電極捲回体21からの気泡等の脱出があまり起こらないのである。
一方,押圧板の縦横サイズが小さすぎても判定精度が悪い。電極捲回体21の中央部分のみが押圧力を受けることとなり,気泡等の脱出があまり起こらないからである。このため押圧板20の縦横のサイズは,電極捲回体21の平坦部分(非塗工部やターン部を除いた部分)のサイズに対して−3cmを下回らないことが望ましい。
また,押圧板20の厚みについては,1cm以下がよい。押圧板20が厚過ぎると,AE信号がAEセンサ12まで伝わり難いからである。ただ,押圧板20が薄すぎると必要な強度が得られないことから,1mm以上の厚さがあるとよい。なお,上記の厚さの条件が,AEセンサ12を取り付ける箇所だけで満たされているものであってもよい。AEセンサ12の取付箇所以外の箇所はもっと厚くてもよい。
さらに本形態では,押圧ロッド26とAEセンサ12との間には必ず,除振部材27または29を介在させている。このため,駆動源28に起因する振動によるAEセンサ12への影響を排除しており,判定精度が高い。なお,判定は,対象の二次電池10が,押圧板20あるいは除振部材29以外には何物にも接触しない状況で行うことが望ましい。外部からのノイズの侵入や,検出しようとするアコースティックエミッションの一部が外部へ漏れることを防ぐためである。仮に例えば床上に二次電池10を置いた状態で判定する場合には,床と二次電池10との間にも除振部材を介在させることが望ましい。
また,判定の際の押圧力の上昇のスピードについても有利な範囲がある。上昇が速すぎると,気泡以外の要因によるAE信号が大きく,気泡によるAE信号の検知感度が低いからである。一方,上昇が遅すぎると,気泡の脱出速度も遅く,発生するAE信号自体が小さくなってしまうからである。このため,押圧力の上昇スピードは,1〜8kPa/秒の範囲内,より好ましくは1〜5kPa/秒の範囲内がよい。図19〜図21の判定例では約30秒で上昇させているが,この場合の押圧力上昇時間の好適な範囲は,1〜300秒,より好ましくは10〜30秒である。
AEセンサ12の通過特性については,100〜300kHz通過型がよいが,押圧力の上昇スピードに応じて調整するとよい。また,AEセンサ12を押圧板20に取り付ける代わりに,二次電池10を固定するアーム部材やベルトコンベアに載せるためのケース等,二次電池10と接触する何らかの金属部材に取り付けてもよい。また,第1の形態のガス発生量の算出と,第2の形態の含浸不良の有無の判定とをいずれも行うように構成することもできる。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,対象とする二次電池の種類については,過充電時や過放電時などに内部でガスが発生するものであれば何でもよい。二次電池を多数使用する二次電池装置に適用する場合には,そのうちの2以上の電池にAEセンサを設けてそれぞれガス発生量や含浸不良を検知するようにしてもよい。また,イベントの累積エネルギー値あるいは件数をガス発生量に変換するに当たっては,あらかじめ内容を記憶したテーブルを用いるほか,その都度演算処理によるようにしてもよい。
1,2 二次電池装置
10 二次電池
11 充放電回路
12 AEセンサ
14 制御回路
17 信号分離部(AE信号イベント分離部,閾値超え検出部)
18 ガス発生量算出部
19 報知部
20 押圧板
21 電極捲回体
23 電池ケース
26 押圧ロッド
27 除振部材
29 除振部材
30 含浸不良判定部

Claims (24)

  1. 二次電池を搭載する二次電池装置において,
    前記二次電池で発生するアコースティックエミッション信号を検知するAE検知部と, 前記AE検知部で検知されたアコースティックエミッション信号のレベルがあらかじめ定めた閾値を超えるイベントの発生を検知するAE信号イベント分離部と,
    前記AE信号イベント分離部で検知されたイベントの発生の程度に基づいて,前記二次電池における内部ガスの発生量を出力するガス発生量出力部とを有し,
    前記AE信号イベント分離部は,
    アコースティックエミッション信号のレベルが前記閾値以下の状態から前記閾値を超えたときを1回のイベントが開始する開始時とし,
    前記開始時後にアコースティックエミッション信号のレベルが前記閾値を下回り続けている時間があらかじめ定めた収束時間を超えたときを,前記開始時に開始したイベントが終了する終了時とし,
    前記ガス発生量出力部は,イベントの発生の程度が激しいほど,大きい発生量を出力するものであることを特徴とする二次電池装置。
  2. 請求項1に記載の二次電池装置において,
    前記AE信号イベント分離部は,前記開始時から前記終了時までのイベント期間中におけるアコースティックエミッション信号のエネルギー値を積算してそのときのイベントのエネルギー値とするものであり,
    前記ガス発生量出力部は,前記イベントのエネルギー値を累積した累積エネルギー値が激しいほど,大きい発生量を出力するものであることを特徴とする二次電池装置。
  3. 請求項1に記載の二次電池装置において,
    前記ガス発生量出力部は,イベントの発生件数が多いほど,大きい発生量を出力するものであることを特徴とする二次電池装置。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の二次電池装置において,
    前記AE信号イベント分離部もしくは前記ガス発生量出力部は,前記開始時から前記終了時に至るまでの間におけるアコースティックエミッション信号の最大振幅値が,あらかじめ定めた,前記閾値より高い限界値を超えたか否かを判定するものであり,
    前記ガス発生量出力部は,
    前記限界値を超えた場合にはそのときのイベントを無視し,
    前記限界値を超えなかった場合にはそのときのイベントを内部ガスの発生量の出力に供することを特徴とする二次電池装置。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の二次電池装置において,前記AE信号イベント分離部は,
    前記開始時から前記終了時までの間に,アコースティックエミッション信号のレベルが再び前記閾値以下の状態から前記閾値を超えたとしても,そのときを新たに開始時とはしないものであることを特徴とする二次電池装置。
  6. 請求項5に記載の二次電池装置において,前記AE信号イベント分離部は,
    前記終了時の後であっても,あらかじめ定めた不感時間が経過するまでの間には,アコースティックエミッション信号のレベルが前記閾値以下の状態から前記閾値を超えたとしても,そのときを新たなイベントの開始時とはしないものであることを特徴とする二次電池装置。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の二次電池装置において,
    前記二次電池の充放電を制御する充放電制御部を有し,
    前記充放電制御部は,前記ガス発生量出力部により出力される内部ガスの発生量があらかじめ定めた正常範囲より多い状況下では,通常の状況よりも充放電の許容電流値を限定した限定制御を行うものであることを特徴とする二次電池装置。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の二次電池装置において,
    前記ガス発生量出力部により出力される内部ガスの発生量があらかじめ定めた正常範囲より多い状況下ではそのことをユーザに報知する報知部を有することを特徴とする二次電池装置。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか1つに記載の二次電池装置において,
    前記二次電池を押圧する押圧部材と,
    前記押圧部材の押圧力を上昇させる押圧力制御部と,
    前記押圧部材の押圧力が上昇しているときに前記AE検知部で検知されたアコースティックエミッション信号中における,前記二次電池が含浸不良のものである場合に発生する含浸不良指標事象の発生状況に基づいて,前記二次電池が含浸不良のものであるか否かを判定する含浸不良判定部とを有することを特徴とする二次電池装置。
  10. 請求項9に記載の二次電池装置において,
    アコースティックエミッション信号の振幅値があらかじめ定めた含浸不良判定閾値を超えたことを検出する閾値超え検出部を有し,
    前記含浸不良判定部は,
    前記押圧部材の押圧力が上昇しているときにおける前記閾値超え検出部による閾値超えの回数があらかじめ定めた判定値以上となった場合には前記二次電池が含浸不良のものであると判定し,
    前記閾値超え検出部による閾値超えの回数が前記判定値に達しないまま,前記押圧部材の押圧力の上昇が終了するに至った場合には前記二次電池が含浸不良のものでないと判定するものであることを特徴とする二次電池装置。
  11. 請求項9に記載の二次電池装置において,前記含浸不良判定部は,
    前記押圧部材の押圧力が上昇しているときにおける前記イベントの累積発生件数があらかじめ定めた判定値以上となった場合には前記二次電池が含浸不良のものであると判定し,
    前記イベントの累積発生件数が前記判定値に達しないまま,前記押圧部材の押圧力の上昇が終了するに至った場合には前記二次電池が含浸不良のものでないと判定するものであることを特徴とする二次電池装置。
  12. 請求項9から請求項11までのいずれか1つに記載の二次電池装置において,
    前記AE検知部は,前記押圧部材に取り付けられていることを特徴とする二次電池装置。
  13. 請求項12に記載の二次電池装置において,
    前記押圧部材は,軽金属で形成されたものであることを特徴とする二次電池装置。
  14. 請求項13に記載の二次電池装置において,
    前記押圧部材は,アルミで形成されたものであり,
    前記押圧部材における,前記AE検知部が取り付けられている箇所の厚さが,1mm以上1cm以下であることを特徴とする二次電池装置。
  15. 請求項9から請求項14までのいずれか1つに記載の二次電池装置において,
    前記押圧部材に押圧力を供給する押圧力供給部材と,
    前記押圧部材と前記押圧力供給部材との間の位置,もしくは,前記二次電池と前記押圧部材との間の位置に配置された除振部材とを有し,
    前記押圧力供給部材と前記AE検知部との間には必ず前記除振部材が配置されている一方,前記二次電池と前記AE検知部との間には前記除振部材が配置されていないことを特徴とする二次電池装置。
  16. 請求項9から請求項15までのいずれか1つに記載の二次電池装置において,
    前記二次電池は,偏平形状の硬質ケースに偏平型の電極捲回体を収納してなるものであり,
    前記押圧部材は,前記二次電池の最大面積の外表面を押圧するものであり,
    前記押圧部材の縦横のサイズは,
    前記二次電池の最大面積の外表面に対して上下左右に1cm以上の余白があり,
    前記電極捲回体の平坦部分のサイズに対して−3cmを下回らないサイズであることを特徴とする二次電池装置。
  17. 二次電池における内部ガスの発生量推定方法において,
    前記二次電池で発生するアコースティックエミッション信号を検知し,
    検知されたアコースティックエミッション信号のレベルがあらかじめ定めた閾値を超えるイベントの発生を検知し,
    検知されたイベントの発生の程度に基づいて,前記二次電池における内部ガスの発生量を出力し,
    前記イベントの発生の検知の際に,
    アコースティックエミッション信号のレベルが前記閾値以下の状態から前記閾値を超えたときを1回のイベントが開始する開始時とし,
    前記開始時後にアコースティックエミッション信号のレベルが前記閾値を下回り続けている時間があらかじめ定めた収束時間を超えたときを,前記開始時に開始したイベントが終了する終了時とし,
    内部ガスの発生量の出力の際に,イベントの発生の程度が激しいほど,大きい発生量を出力することを特徴とする二次電池における内部ガスの発生量推定方法。
  18. 請求項17に記載の二次電池における内部ガスの発生量推定方法において,
    前記二次電池を押圧するとともにその押圧力を上昇させていき,
    前記押圧力が上昇しているときに前記二次電池で発生するアコースティックエミッション信号を検知し,
    検知されたアコースティックエミッション信号中における,前記二次電池が含浸不良のものである場合に発生する含浸不良指標事象の発生状況に基づいて,前記二次電池が含浸不良のものであるか否かを判定することによる,二次電池の含浸不良の有無の判定方法をも実施することを特徴とする二次電池における内部ガスの発生量推定方法。
  19. 請求項18に記載の二次電池における内部ガスの発生量推定方法において,
    前記二次電池を複数の押圧部材で押圧するとともに,
    前記二次電池が前記複数の押圧部材以外のものに接触しない状態で含浸不良の有無の判定を行うことを特徴とする二次電池における内部ガスの発生量推定方法。
  20. 請求項18に記載の二次電池における内部ガスの発生量推定方法において,
    前記二次電池を押圧部材で押圧するとともに,
    前記二次電池と前記押圧部材以外のものとの間に除振部材を配置した状態で含浸不良の有無の判定を行うことを特徴とする二次電池における内部ガスの発生量推定方法。
  21. 二次電池の充放電を制御する二次電池の制御方法において,
    請求項17に記載の発生量推定方法により内部ガスの発生量を出力し,
    出力された発生量があらかじめ定めた正常範囲より多い状況下では,通常の状況よりも充放電の許容電流値を限定した限定制御を行うことを特徴とする二次電池の制御方法。
  22. 請求項21に記載の二次電池の制御方法において,
    請求項18から請求項20のいずれか1つに記載の含浸不良の有無の判定方法により二次電池の含浸不良の有無を判定し,
    含浸不良があると判定された状況下では,含浸不良がないと判定された状況よりも充放電の許容電流値を限定した限定制御を行うことを特徴とする二次電池の制御方法。
  23. 二次電池の製造方法において,
    製造された二次電池に対して充放電試験を行うとともに,その際に請求項17に記載の発生量推定方法により内部ガスの発生量を出力し,
    出力された発生量があらかじめ定めた正常範囲より多かった場合には,その二次電池を不合格として排除し,
    出力された発生量があらかじめ定めた正常範囲以内であった場合には,その二次電池を合格とすることを特徴とする二次電池の製造方法。
  24. 請求項23に記載の二次電池の製造方法において,
    製造された二次電池に対して,請求項18から請求項20のいずれか1つに記載の含浸不良の有無の判定方法により二次電池の含浸不良の有無を判定し,
    含浸不良があると判定された場合には,その二次電池を不合格として排除し,
    含浸不良がないと判定された場合には,その二次電池を合格とすることを特徴とする二次電池の製造方法。
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