JP2014043509A - ポリアミド樹脂水性分散液の製造方法 - Google Patents

ポリアミド樹脂水性分散液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粘度の経時変化が少ない等の安定性に優れたポリアミド樹脂水性分散液の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤及び水性媒体を含み、
B型回転式粘度計における25℃、60rpmでの粘度が300mpa・s以上であるポリアミド樹脂分散原料液を、
内部挿入式の撹拌機により、撹拌機の羽根の先端周速が10m/s以上かつ、下記の式(1)で定義されるパス回数P1が20回以上で、または、
連続循環処理方式の撹拌機により、撹拌機の羽根の先端周速が10m/s以上かつ、下記の式(2)で定義されるパス回数P2が1回以上で
撹拌する、ポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
式(1)
パス回数P1=Q×撹拌時間(min)/全液量(L)
ここで、Qは吐出量[L/min]を示し、以下の式で表される。
Q =Nq・n・d3/1000
Nq:吐出係数 n:撹拌翼回転数[rpm] d:撹拌翼径[cm]
式(2)
パス回数P2= 流量(L/min)×撹拌時間(min)/全液量 (L)
【選択図】なし

Description

本発明はポリアミド樹脂水性分散液の製造方法および当該製造方法により得られるポリアミド樹脂水性分散液を用いた繊維用処理剤、並びに当該繊維用処理剤で処理して得られる繊維または繊維複合化材料に関する。
ポリアミド樹脂の水性分散液は、基材に塗布してポリアミド樹脂のコーティング塗膜を形成することにより、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐摩耗性、気体遮断性、接着性等を付与することができることから、水性インキ、繊維目止め剤、ガラス繊維集束剤、紙処理剤、バインダー、潤滑剤、鋼板表面処理剤、表面改質剤および芯地接着剤等のホットメルト接着剤等に広く用いられている。このようなポリアミド樹脂の水性分散液の用途のひとつとして繊維用処理剤がある。
繊維には多くの種類があり、その用途も家庭用衣料から宇宙科学の分野に到るまで千差万別であり、さまざまな形態で産業の発展に貢献している。例えば、繊維を大別すると、植物や動物から得られる天然繊維、有機化学物質を合成して得られる合成繊維、半合成繊維、再生繊維などの有機繊維、アクリル繊維またはピッチを原料として、高温で炭化して製造された炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、岩石繊維等の無機繊維が知られている。
これらの繊維を工業的に使用する場合、処理剤を用いて使用されることが多い。処理剤の機能も多様であり、繊維の形状を整えたり、繊維に柔軟性を持たせ、繊維の加工工程を円滑に進めるために用いられるものや、繊維に強度、柔軟性、耐熱性、耐候性、スリップ防止、制電性、抗菌性等の高機能を付与するために用いられるものがある。一般的に、繊維用処理剤は液状の形態で用いられることが多く、樹脂を溶液に溶解した溶液型の繊維用処理剤と樹脂を水に分散させた水性分散液型の繊維用処理剤があるが、水性分散液型のものは、溶液型のものと比較して、繊維用処理剤を乾燥し、液分を気化して除去した際、耐熱性や強度に優れる皮膜を形成させることが容易であるため、繊維の物理的強度を向上させることができる。また、得られる皮膜をバインダーとして、各種マトリックス樹脂との良好な接着性を持たせることも可能にさせるという特徴もある。
特に、ポリアミド樹脂の水性分散液を繊維用処理剤として用いた場合、ポリアミド樹脂の優れた特性を利用して、繊維の物理的強度や接着性のほか、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐摩耗性、気体遮断性等の機能を繊維に持たせることができる。また、ポリアミド樹脂は各種の熱可塑性樹脂との相溶性に優れることから、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とした繊維複合化材料を製造するのに好適に用いることができる。
このような繊維用処理剤として使用可能なポリアミド樹脂水性分散液に関して検討された例はいくつかあり、例えば、下記特許文献1には、黄変性や機械的安定性を改良するため、ポリアミド樹脂の水性分散液に塩基性物質、アンモニア化合物等を配合する方法が記載され、下記特許文献2には、水性分散液の接着力の向上を図るため、ポリアミド樹脂の水性分散液にエポキシ化合物等の架橋剤を配合する方法が記載されている。
しかしながら、ポリアミド樹脂の水性分散液は、ポリアミド樹脂の種類にもよるが、他の汎用樹脂の水性分散液と比較して、相対的に安定性が悪く取り扱いが難しいという欠点があり、経時的な粘度変化が大きく、製造条件の適正化に苦労する点も多くあり、特許文献1や2による方法でも、安定性の面であまり問題の解決には到らなかった。
これは、ポリアミド樹脂は、分子中に強い極性のアミド結合を有し、また、カルボキシル基やアミノ基などのイオン性の官能基を有するため、水中で粒子が複雑な電解質的な挙動を示すことに起因していると推測される。このようなポリアミド樹脂の水性分散液の安定性を改良するために、下記特許文献3には、アミノ酸と界面活性剤を併用して安定性を向上させる方法等が記載されている。
しかしながら、特許文献3の方法によって得られたポリアミド樹脂水性分散液は安定性はやや改良されるが、接着性が劣り、繊維用処理剤として用いるためにはさらなる改良の余地がある。
特開2005−105192号公報 特開2005−126562号公報 特表平6−509824号公報
本発明の目的は、粘度の経時変化が少ない等の安定性に優れたポリアミド樹脂水性分散液の製造方法を提供することにある。本発明の目的はまた、前記製造方法で得られるポリアミド樹脂水性分散液を含む接着性に優れた繊維用処理剤を提供することにある。本発明の目的はさらに、前記繊維用処理剤を用いて得られる繊維または繊維複合化材料を提供することにある。
本発明者は、上記した目的を達成するために鋭意研究を重ねてきた結果、特定の組成及び特定の粘度を有するポリアミド樹脂分散液を特定の撹拌条件で撹拌することにより、粘度の経時変化が少ない等の安定性に優れたポリアミド樹脂水性分散液が得られることを見出した。また、得られたポリアミド樹脂水性分散液は、繊維用処理剤として用いた際、繊維とマトリックス樹脂との接着性が優れた繊維複合化材料を得ることを可能とするものであり、これにより機械的特性が良好な繊維複合化材料が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
ポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤及び水性媒体を含み、
B型回転式粘度計における25℃、60rpmでの粘度が300mpa・s以上であるポリアミド樹脂分散原料液を、
内部挿入式の撹拌機により、撹拌機の羽根の先端周速が10m/s以上かつ、下記の式(1)で定義されるパス回数P1が20回以上で、または、
連続循環処理方式の撹拌機により、撹拌機の羽根の先端周速が10m/s以上かつ、下記の式(2)で定義されるパス回数P2が1回以上で
撹拌する、ポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
式(1)
パス回数P1=Q×撹拌時間(min)/全液量(L)
ここで、Qは吐出量[L/min]を示し、以下の式で表される。
Q =Nq・n・d3/1000
Nq:吐出係数 n:撹拌翼回転数[rpm] d:撹拌翼径[cm]
式(2)
パス回数P2=流量(L/min)×撹拌時間(min)/全液量 (L)
項2.
撹拌機が回転せん断型撹拌機である項1に記載のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
項3.
前記ポリアミド樹脂分散原料液が、
ポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤及び水性媒体を含む混合液を、前記ポリアミド樹脂の軟化温度以上で撹拌し、乳化させて得られる乳化液である、
項1又は2に記載のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
項4.
高分子分散剤が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
項5.
前記ポリアミド樹脂分散原料液に、
ポリアミド樹脂100質量部に対して高分子分散剤が0.01〜10質量部含まれる、項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
項6.
項1〜5のいずれかに記載の製造方法で得られるポリアミド樹脂水性分散液を含む繊維用処理剤。
項7.
繊維用処理剤が炭素繊維用処理剤である項6記載の繊維用処理剤。
項8.
項6または7記載の繊維用処理剤で繊維を処理して、繊維用処理剤で処理された繊維または繊維複合化材料を製造する方法。
本発明のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法によれば、粘度の経時変化が少ない等、安定性に優れたポリアミド樹脂水性分散液を得ることが可能となる。さらに前記ポリアミド樹脂水性分散液を含む繊維用処理剤は接着性に優れており、当該繊維用処理剤を用いると、繊維とマトリックス樹脂との接着性に優れた繊維複合化材料を得ることができる。
以下、本発明のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法について詳しく説明する。
本発明のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法は、特定の組成及び特定の粘度を有するポリアミド樹脂分散液を特定の撹拌条件で撹拌することを特徴とする。本明細書では、この撹拌前の、特定の組成及び特定の粘度を有するポリアミド樹脂分散液を、便宜上、ポリアミド樹脂分散原料液とよぶ。
ポリアミド樹脂分散原料液は、B型回転式粘度計における25℃、60rpmでの粘度が300mpa・s以上である。(以下、粘度とは、特に断りのない限りB型回転式粘度計における25℃、60rpmでの粘度をいう。)
また、ポリアミド樹脂分散原料液は、ポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤及び水性媒体を含む。
ポリアミド樹脂分散原料液の製造方法としては、上記特定の粘度及び特定の組成を有するポリアミド樹脂分散原料液が製造できる限り特に限定されず、例えば、ポリアミド樹脂を、機械粉砕法、冷凍粉砕法、湿式粉砕法等で粉砕して得られるポリアミド樹脂粉体を水性媒体中に所定の粘度になるように分散させる方法、界面活性剤等を用いてポリアミド樹脂を乳化して得られた乳化液に粘度調整剤を添加する方法、ポリアミド樹脂中の末端カルボキシル基を塩基性物質を用いて中和し自己乳化して乳化液を製造する方法などが挙げられる。なお、塩基性物質や高分子分散剤は、選択した製造方法に応じて、適宜加えることができる。
本発明においては、粘度の調整が容易であるという観点から、特に、ポリアミド樹脂中の末端カルボキシル基を塩基性物質を用いて中和し自己乳化して乳化液を製造する際に、塩基性物質の量を調整し、粘度を300mpa・s以上に調整することで、ポリアミド樹脂分散原料液を製造する方法が好適に用いられる。以下、この方法の一態様について詳しく説明する。
この方法の一態様では、先ず、容器内にポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤および水性媒体を投入し、これらの混合液を調製する。
混合液の調製に用いる容器としては、内容物を均一に混合できる撹拌手段とを備えた容器が好ましい。また、ポリアミド樹脂が水性媒体中で軟化する温度以上の温度に加熱するための加熱手段を備えた容器が好ましい。また、耐圧容器が好ましい。これらの条件を2種又は全て兼ね備えた容器が中でも好ましい。例えば、撹拌機付きの耐圧オートクレーブ等が特に好ましい。
次に、上記混合液をポリアミド樹脂の軟化温度以上に加熱し撹拌して、混合液を乳化させる。これにより得られた乳化液を室温まで冷却することにより粘度が300mpa・s以上のポリアミド樹脂分散原料液が得られる。以上が、ポリアミド樹脂分散原料液を製造する好適な方法の一態様である。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、市販されているものを用いてもよいし、あるいは適宜製造したものを用いてもよい。
ポリアミド樹脂の製造方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、ω−アミノ−ω′カルボン酸の重縮合または環状ラクタムの開環重合等の方法が挙げられる。ここで、重縮合または開環重合の際に重合調節剤として、ジカルボン酸またはモノカルボン酸を用いることができる。
ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミンおよびメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
ジカルボン酸の具体例としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸およびダイマー酸(リノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪酸より合成される炭素数36の不飽和ジカルボン酸)等が挙げられる。
ω−アミノ−ω′カルボン酸の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
環状ラクタムの具体例としては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタムおよびω−ラウリルラクタム等が挙げられる。
前記重合調節剤として用いられるジカルボン酸の具体例としては、前記、ポリアミド樹
脂の製造に用いられるジカルボン酸と同様に、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、ス
ベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テト
ラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジ
カルボン酸およびダイマー酸等が挙げられる。また、モノカルボン酸の具体例としては、カプロン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、ウンデカン酸およびドデカン酸等が挙げられる。
本発明においては、前記の方法により得られるポリアミド樹脂の中でも、特に、−[NH(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CH10CO]−、−[NH(CH11CO]−および−[NH(CHNHCO−D−CO]−(式中Dは炭素数34の不飽和炭化水素を示す)からなる群より選ばれた少なくとも1種を構造単位とするポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
これらの具体例としては、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−
ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/
11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/6
6/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/610/1
1/12共重合ナイロンおよびダイマー酸系ポリアミド樹脂、これらの共重合ナイロンとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリアミドエラストマー等が挙げられる。なお、「/」は各ナイロンの共重合体であることを示すため用いた記号である。例えば、6/66共重合ナイロンは、6−ナイロンと66−ナイロンの共重合ナイロンを表す。
またさらに、本発明に用いられるポリアミド樹脂の例として、ダイマー酸系ポリアミドや、ポリアミドエラストマーも例示される。ポリアミドエラストマーとしては、具体的には、ナイロンとポリエステルとの共重合体、又はナイロンとポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体である、ポリアミドエラストマーが例示される。当該ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等が例示される。また、当該ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が例示される。
ポリアミドは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ポリアミド系エラストマーは、特に限定されるものではないが、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含んでなるブロック共重合体が好ましい。特に、ポリアミド及びポリエーテルが共重合した構造を有するブロック共重合体が好ましく、なかでもポリアミド及びポリエーテルが共重合した構造からなるブロック共重合体が好ましい。ポリエーテルブロックの構成成分としては、例えば、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等のグリコール化合物並びにポリエーテルジアミン等のジアミン化合物等を挙げることができる。これらの構成成分は、2種以上のものが用いられてもよい。このようなポリアミドエラストマーとしては、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの結合部の分子構造、すなわち結合形態が異なる数種類のもの、例えば、「(ポリアミドブロック)−CO−NH−(ポリエーテルブロック)」の結合形態を有するポリエーテルブロックアミド共重合体、「(ポリアミドブロック)−CO−O−(ポリエーテルブロック)」の結合形態を有するポリエーテルエステルブロックアミド共重合体等を挙げることができる。
ポリアミドエラストマーは、公知であるか、又は公知の方法により容易に製造することができる。例えば、ラクタム化合物、アミノカルボン酸化合物およびジアミン化合物のうちの少なくとも1種とジカルボン酸とを反応させて実質的に両末端がカルボキシル基であるポリアミドブロックを調製した後、このポリアミドブロックにポリエチレンオキシドグリコール等のグリコール化合物若しくはポリエーテルジアミン等のジアミン化合物を添加して加熱することで反応させる方法等を挙げることができる。また、市販品を購入して用いることもできる。市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製ポリエーテルブロックアミド共重合体(商品名“UBESTAXPA9044X2”)、アルケマ社製ポリエーテルエステルブロックアミド共重合体(商品名“ペバックス2533SA01”)等を用いることができる。
なお、限定的な解釈を望むものではないが、ポリアミド系エラストマーが、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含んでなるブロック共重合体である場合、ポリアミドブロックを有する硬質高分子部位(ハードセグメントともいう)と、ポリエーテルブロックを有する軟質高分子部位(ソフトセグメントともいう)とが組み合わされた構造を有すると考えられる。
本発明に用いられる塩基性物質としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物やアンモニア、アミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂水性分散液の静置安定性が優れる観点から特に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好適に用いられる。塩基性物質は、1種で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩基性物質は、得られるポリアミド樹脂水性分散液の粘度の経時変化が少ない、あるいは得られるポリアミド樹脂水性分散液を繊維用処理剤に用いた際に繊維とマトリックス樹脂との接着性が優れる、等の観点から、特に限定はされないが、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基1モルに対し、塩基の価数が好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.4モル以上となるようにポリアミド樹脂分散原料液に含まれる。また、好ましくは、2モル以下、より好ましくは1.5モル以下となるようにポリアミド樹脂分散原料液に含まれる。またさらに、好ましくは0.1〜2モル、より好ましくは0.4〜1.5モルとなるようにポリアミド樹脂分散原料液に含まれる。
ここで塩基の価数は、塩基性物質1分子が供給し得るOHの数である。例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム1モルの塩基の価数は1モルである。また例えば、水酸化カルシウム1モルの塩基の価数は2モルである。
なお、用いる塩基性物質が1価の塩基性物質(例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)である場合には、塩基の価数は塩基性物質のモル数と同値なので、“ポリアミド樹脂分散原料液には、これに含まれるポリアミド樹脂の末端カルボキシル基1モルに対して、上記“特定のモル値”(例えば0.1モル以上)の塩基性物質が含まれる”と換言できる。
また、ここで本発明者たちが鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基を中和するために用いる塩基性物質の添加量を増やし中和度を大きくするにつれて、ポリアミド樹脂分散原料液の粘度が大きくなる関係があることが分った。したがって、本発明においては、塩基性物質の量を調整することによりポリアミド樹脂分散原料液の粘度を300mpa・s以上にすることができる。
ポリアミド樹脂分散原料液は、粘度が300mpa・s以上であり、好ましくは300mpa・s以上10000mpa・s以下であり、より好ましくは500mpa・s以上5000mpa・s以下である。粘度を300mpa・s以上に調整することで、後述の攪拌工程による効果を顕著にし、安定性と接着性に優れ、繊維を処理した際に、繊維とマトリックス樹脂との接着性が優れたポリアミド樹脂水性分散液を得ることができる。
本発明に用いられる高分子分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステルの塩、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンポリアミン、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体等を挙げることができる。高分子分散剤は1種で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ポリアミド樹脂との相溶性が優れ、本発明により得られるポリアミド樹脂水性分散液の特徴である粘度の経時変化が少ない等、安定性に優れ、繊維用処理剤として用いた際、繊維とマトリックス樹脂との接着性に優れた繊維複合化材料を得ることが可能となるポリアミド樹脂水性分散液が得られるという観点からポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体等が優れ、さらに耐熱性に優れるという観点を追加すると特にポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
ポリビニルピロリドン(PVP)は、ビニルピロリドンを重合して得られる高分子であればよく、共重合体としてポリビニルピロリドンを含む高分子でもよい。これらは、市販されているものを用いることができる。ポリビニルピロリドンの質量平均分子量は、特に限定されないが、10,000〜5,000,000が好ましく、特に得られるポリアミド樹脂水性分散液が安定性に優れるという観点から100,000〜3,000,000がより好ましい。
高分子分散剤の使用量(ポリアミド樹脂分散原料液に含まれる量)は、特に制限はされないが、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜8質量部がより好ましく、1〜6質量部がさらに好ましい。高分子分散剤の使用量が0.01質量部以上の場合、得られるポリアミド樹脂水性分散液の粘度の経時変化が少ない等、静置安定性の面で好ましい。高分子分散剤の使用量が10質量部以下の場合、繊維用処理剤として繊維を処理した場合に、繊維とマトリックス樹脂との間の接着性がより良好であり好ましい。
特に、上述したポリアミド樹脂分散原料液を製造する好適な方法の一態様においては、高分子分散剤は、最初の混合液の調整段階で添加しなくても、ポリアミド樹脂中の末端カルボキシル基を塩基性物質を用いて中和し、自己乳化し乳化液を得るまでの間であれば、いつでも任意に添加することができ本発明の効果を得ることができる。ただし、得られるポリアミド樹脂水性分散液の静置安定性と接着性が特に良好であるとの観点から、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基を塩基性物質で中和するまでの間にポリアミド樹脂に添加しておくのが好ましい。
本発明に用いられる水性媒体としては、水又は水を主成分とした媒体が好ましく、水がより好ましい。水としては、水道水、工業用水、イオン交換水、脱イオン水、純水などの各種の水を用いることができる。特に脱イオン水および純水が好ましい。また、用いる水には、本発明の目的が阻害されない範囲において、必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、防かび剤、消泡剤等が適宜添加されていてもよい。
なお、本発明のポリアミド樹脂水性分散液の“水性”は水性媒体を含むことを意味する。
本発明のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法は、上記ポリアミド樹脂分散原料液を、特定の先端周速かつ特定のパス回数で撹拌することを特徴とする。
撹拌には、撹拌機を用いる。撹拌は、撹拌機の先端収束が、10m/s以上となる条件で行う。
ポリアミド樹脂分散原料液に、撹拌機の先端周速が10m/s以上となる撹拌を行うための撹拌機としては特に限定されず、通常型撹拌機、高速回転式撹拌機等、公知のものを使用することができる。
通常型撹拌機としては、例えば多翼タービン翼、フラットタービン翼、フラットパドル翼、ピッチドタービン翼、ピッチドパドル翼、プロペラ翼、アンカー翼等の構造が簡単で安価な撹拌翼を供えたものが挙げられる。これらは、処理液を入れた容器に上部より挿入し撹拌を行う内部挿入式タイプとして使用することができる。
また、高速回転式の撹拌機としては、高速回転遠心放射型撹拌機や高速回転せん断型撹拌機がある。高速回転遠心放射型撹拌機としては、例えば丸鋸の刃を交互に上下に折り曲げた歯付き円盤型インペラを供えたものを使用することができ、具体的には、プライミクス(株)製の内部挿入式タイプのT.Kホモディスパー等を使用することができる。高速回転せん断型撹拌機には、回転翼が固定翼に収納された形状で、両者の間に設けられた微細な間隙で起こる強力なせん断作用や衝撃力を利用して、流体を微粒化する内部挿入式タイプと、流体の入り口と出口を設けた円筒状容器内に回転翼を挿入したものに処理液をポンプ等を用いてワンスルーで通過させ連続的に循環させて撹拌を行う連続循環処理方式タイプがある。前者のものとしては、プライミクス(株)製のT.Kロボミックス、T.Kホモミクサー等が例示でき、後者のものとしては、プライミクス(株)製のT.Kパイプラインホモミクサー、T.Kホモミックラインフロー等が例示できる。
本発明においては、ポリアミド樹脂系分散原料液に強力なせん断力と衝撃力を加えることを可能とし、安定性と接着性に優れた本発明の水性分散液を得、繊維用処理剤として用いた際、繊維とマトリックス樹脂との接着性が優れた繊維複合化材料を得ることが可能となるという観点から、高速回転せん断型撹拌機を好適に用いることができる。
本発明においてポリアミド樹脂分散原料液を内部挿入式の撹拌機で撹拌する場合、撹拌機の羽根の先端周速が10m/s以上かつ、下記の式(1)で定義されるパス回数P1が20回以上の条件で行う。撹拌機の羽根の先端周速は10m/s以上であり、好ましくは10〜40m/s、より好ましくは15〜30m/sである。パス回数P1は20回以上であり、好ましくは30回以上、より好ましくは50〜10000回、さらに好ましくは100〜3000回、よりさらに好ましくは150〜1000回、特に好ましくは200〜500回である。
本発明において、先端周速とは、以下の式により算出される値である。
先端周速(m/s)=d×π×n/(100×60)
(ただし、nは撹拌翼回転数[rpm]を、dは撹拌翼径[cm]を、それぞれ示す)
また、パス回数は、撹拌機の種類によって、計算法が異なり、通常撹拌機、高速回転遠心放射型撹拌機、内部挿入式タイプの高速回転せん断型撹拌機の場合、以下の式を用いて、計算することができる。
パス回数P1=Q×撹拌時間(min)/全液量(L)
ここで、Qは吐出量[L/min]を示し、以下の式で表される。
Q=Nq・n・d/1000
(ただし、Nqは吐出係数を、nは撹拌翼回転数[rpm]を、dは撹拌翼径[cm]を、それぞれ示す。)
ここで、吐出係数Nqは、撹拌翼の形状等によって異なる。吐出係数は、実測により算出することも可能であるが、撹拌機メーカーの技術書、例えば、「乳化分散の理論と実際(実用編):特殊機化工業株式会社(現プライミクス株式会社)編、1997年発行」や「撹拌技術:佐竹化学機械工業株式会社編、1992年」に算出された値が予め記載されているので、当該記載されている値を用いることができる。
本発明においてポリアミド樹脂分散原料液を連続循環処理方式の撹拌機で撹拌する場合、撹拌機の羽根の先端周速が10m/s以上かつ、下記の式(2)で定義されるパス回数P2が1回以上の条件で行う。撹拌機の羽根の先端周速は10m/s以上、好ましくは15m/s以上、より好ましくは20m/s以上である。パス回数P2は1回以上であり、好ましくは3〜100回、より好ましくは3〜20回である。
連続循環処理方式の高速回転せん断型攪拌機の場合は、パス回数P2は以下の式を用いて算出される値である。
パス回数P2= 流量(L/min)×攪拌時間(min)/全液量 (L)
本発明において、このような攪拌操作を行うことが好ましい理由としては、以下のように推測される。
すなわち、ポリアミド樹脂を分子レベルから考察すれば、ポリアミド樹脂中には極性が大きいアミド結合が存在し、また、カルボキシル基やアミノ基などのイオン性の官能基を有するため、水中でポリアミド樹脂粒子(以下単に「粒子」ともいう)同士が複雑な電解質的な挙動を示す。そのため、粒子同士が凝集しようとする相互作用が強い。ポリアミド樹脂水性分散液は、静置下でも徐々に粘度が増粘する傾向があり、水性媒体等で水性分散液中のポリアミド樹脂の濃度を下げない限りは、粘度を下げることが難しい場合があるが、これは粒子の凝集作用によるものと推測される。また、粒子の凝集作用により増粘した水性分散液は接着性に劣り、例えば、繊維用処理剤として用いた場合、繊維とマトリックス樹脂との接着性が悪くなると推測される。
これらの原因は、粒子表面においてマトリックス樹脂と水素結合を形成するポリアミド樹脂中のカルボキシル基等の官能基が、粒子が凝集することによって偏在化が進み、マトリックス樹脂と水素結合を形成しにくくなるためと考えられたが、本発明者たちは、本発明の撹拌操作を行うことにより、粒子が凝集しにくく、静置下で粘度が上昇しにくい安定性に優れた水性分散液が得られることを見出した。
得られた水性分散液については、粒子間の凝集がほぐれ、粒子の分散性が良くなったため、繊維に均一に含浸させやすくなった。さらには、マトリックス樹脂との接着性が優れ、繊維用処理剤として適していることも判明した。これは、撹拌により、粒子表面のイオン性の官能基の偏在化が解消され粒子表面のイオンの均一化が進んだためと推測される。
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂水性分散液は、エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸を共重合してなる共重合体(以下「エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体」ともいう)をさらに含有することにより、水性分散液の安定性と接着性を高め、繊維処理剤として用いた際には、処理した繊維とマトリックス樹脂との接着性をさらに高めることができる。
エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体としては、例えば、エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸を共重合した共重合体(より具体的には、エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸のランダム共重合体、ポリエチレンに不飽和カルボン酸がグラフトした共重合体等)が挙げられる。またさらに、エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸以外の成分を加えて共重合した共重合体等が挙げられる。
上記エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、含まれる炭素原子数が6以下の不飽和カルボン酸、ジカルボン酸等を挙げることができる。含まれる炭素原子数が6以下の不飽和カルボン酸としては、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が、また、ジカルボン酸としては、具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が、それぞれ例示される。これらの中でもアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。なお、エチレン性不飽和カルボン酸は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明では、エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体に代えて、または共に、該共重合体の塩を用いることもできる。例えば、アンモニアや水酸化ナトリウム等を用いて、該共重合体を自己乳化させて得られる、該共重合体アンモニウム塩又はナトリウム塩等を用いることができる。より具体的には、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体(エチレンとアクリル酸の共重合体)を自己乳化させて得られる、エチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩又はナトリウム塩等を好ましく用いることができる。エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸の塩として市販品を用いることもできる。例えば、エチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩として、住友精化株式会社製の商品名“ザイクセンA”を利用することができる。
これらのエチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体(又はその塩)の添加時期は、特に限定されないが、攪拌操作前のポリアミド樹脂分散原料液の製造時に添加してもよいし、攪拌操作によりポリアミド樹脂水性分散液が得られた後に添加してもよい。
また、エチレン及びエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体(又はその塩)の使用量は、特に制限はされないが、ポリアミド樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、2〜10量部がより好ましい。
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂水性分散液は、本発明の目的を阻害しない範囲において、必要に応じて、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤を含むことで、ポリアミド樹脂の熱劣化を抑制され、繊維処理剤として用いた場合に、得られた繊維または繊維複合化材料の耐熱性等の機械的特性を向上させることができる。
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂水性分散液中のポリアミド樹脂の濃度は、0.1〜80質量%であることが望ましく、さらに好ましくは1〜60質量%である。ポリアミド樹脂の濃度が80質量%以下の場合、水性分散液の安定性の面でより好ましい。ポリアミド樹脂の濃度が0.1質量%以上の場合、接着性の面でより好ましい。
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂水性分散液において、分散されたポリアミド樹脂の粒子の平均粒子径は、通常、0.1〜20μmである。平均粒子径が0.1μm以上の場合、分散液の粘度がより好適であり、より取り扱いやすく、また、20μm以下の場合、ポリアミド樹脂の粒子がより沈降しにくい等、分散液の安定性の面で好適であり、また、繊維用処理剤として用いた際には、繊維への均一含浸性がより良好で好ましい。ここで、平均粒子径の値は、レーザー回折・散乱法により求めた値である。なお、直径1μmの球と同じ回折・散乱光のパターンを示す被測定粒子は、その形状に関わらず粒子径1μとして算出する。
本発明により得られるポリアミド樹脂水性分散液を繊維用処理剤として好適に用いることができる。当該ポリアミド樹脂水性分散液そのものを繊維用処理剤として用いてもよいし、当該ポリアミド樹脂水性分散液に、通常繊維用処理剤に含まれ得る成分をさらに添加した上で繊維用処理剤として用いてもよい。つまり、本発明は、当該ポリアミド樹脂水性分散液を含む繊維用処理剤を包含する。
繊維用処理剤の処理対象とする繊維は、特に限定されない。有機繊維としては、植物や動物から得られる綿、麻、亜麻、黄麻、羊毛、カシミヤ等の天然繊維、有機化学物質を合成して得られる6−ナイロン、66−ナイロン等のポリアミド系合成繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリアクリルニトリル系合成繊維、ポリビニルアルコール系合成繊維、ポリ塩化ビニル系合成繊維、ポリ塩化ビニリデン系合成繊維、ポリエチレン系合成繊維、ポリプロピレン系合成繊維、ポリウレタン系合成繊維等の合成繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維が例示できる。無機繊維としては、アクリル繊維またはピッチを原料として、高温で炭化して製造された炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、岩石繊維など各種繊維が例示できる。
中でも、本発明により得られるポリアミド樹脂水性分散液と相溶性が優れ、繊維に対して処理剤が均一に含浸しやすいという観点から、有機繊維としてはポリアミド系繊維、無機繊維としては炭素繊維を良好に使用することができる。
ポリアミド樹脂水性分散液をポリアミド系繊維用処理剤として用いる際のポリアミド系繊維としては、特に限定されない。6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/610/11/12共重合ナイロンおよびダイマー酸系ポリアミド樹脂、これらの共重合ナイロンとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリアミドエラストマー等から構成される繊維が好適に用いられる。
ポリアミド樹脂水性分散液を炭素繊維用処理剤として用いる際の炭素繊維としては、特に限定されない。炭素繊維の具体例としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ等、繊維状であれば種類は特に限らないが、安価なコストを実現できる点と炭素繊維を束ねてなる炭素繊維束から得られる成形体が良好な機械的特性を持つという点でポリアクリロニトリル系炭素繊維が好適に用いられる。
形態についても、連続長繊維や連続長繊維をカットした短繊維、粉末状に粉砕したミルド糸等、いずれでも良い。これらは、織物、編み物、不織布等のシート状等に、用途や必要特性に応じて適宜選ぶことができる。
繊維用処理剤を繊維に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、繊維用処理剤としてポリアミド樹脂水性分散液を入れた処理槽に繊維を含浸した後、繊維を引揚げる方法、分散液を繊維に滴下し散布する方法の他、ナイフコート法、ローラー浸漬法やローラー接触法等を適用して行うこともできる。繊維への付着量の調整は、水性分散液中のポリアミド樹脂濃度を調整することによってもできる。また、絞りコントローラー等を用いて、繊維表面に付着したポリアミド樹脂を拭き取ることによって調節することもできる。
繊維用処理剤を繊維に付着させた後、続いて乾燥処理によって水分を除去することにより、本発明により得られた繊維用処理剤で処理された繊維が得られる。
このときの乾燥処理の方法としては、特に限定されないが、例えば熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーター等の熱媒を用いる方法を選択することができる。
本発明から得られる繊維用処理剤を付着させた繊維の繊維用処理剤の付着量は、付着前の繊維100質量部に対しての付着後の繊維の質量増加分にて表すことができる。繊維用処理剤の付着量は、0.1〜20質量部であることが望ましく、さらに好ましくは1〜15質量部である。付着量が20質量部未満であれば、繊維の柔軟性が損なわれず、良好に使用することができる。付着量が0.1質量部超であれば、繊維とマトリックス樹脂を配合して繊維複合化材料を製造する際、繊維とマトリックス樹脂との接着性がより良好であり、繊維複合化材料の強度等、機械的特性が優れうる。
本発明の繊維用処理剤で処理された繊維は、マトリックス樹脂を配合させ繊維強化樹脂組成物として用いることができる。ここで、マトリックス樹脂は熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のどちらにも、特に限定されないが、本発明のポリアミド樹脂水性分散液と相溶性が優れることの他、得られた成形品の機械的特性が良く、かつ成形効率の高いプレス成形または射出成形が可能であり、リサイクル面を考慮しても、熱可塑性樹脂のほうが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィンの他、スチレン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチレンメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノールフェノキシ樹脂、フッ素樹脂、さらには、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、飽和ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジェン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、およびこれらの樹脂を2種類以上ブレンドしたものが例示できる。
本発明により得られるポリアミド樹脂水性分散液を繊維用処理剤として用いた場合、粘度の経時変化が少ない等、安定性と接着性に優れており、繊維を処理した際、繊維とマトリックス樹脂との接着性が優れた繊維複合化材料を得ることが可能となる。
このようにして得られた繊維複合化材料は、繊維とマトリックス樹脂との接着性が良好であるため、例えば、薄肉化させ、非常に強度や曲げ特性等の機械的特性が良好な繊維複合化材料を製造することを可能とさせる。このような繊維複合化材料は、自動車や航空機、スポーツ関連製品および医療器具等を製造するための構造材料用として極めて有用であり、衣料材料、カーペットおよびエアバッグなどに用いられるナイロンやポリエステル等の繊維のコーティング剤等として、広い用途において活用することができる。
次に本発明における実施例、比較例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<ポリアミド樹脂水性分散原料液の調製>
直径50mmのタービン型撹拌羽根を備えた内容積1リットルの耐圧オートクレーブ中に、6/66/12共重合ナイロン(融点159℃、末端カルボキシル基180ミリモル/kg、末端アミノ基10ミリモル/kg)240g、脱イオン水141.2g、10%水酸化ナトリウム水溶液14g、およびポリビニルピロリドン4.8g(ISPジャパン株式会社の商品名「PVP K−90」:質量平均分子量900,000〜1500,000)を仕込み密閉した。次に、撹拌機を始動し、1000rpmの回転数で撹拌しながらオートクレーブ内部を180℃まで昇温した。内温を180℃に保ちながらさらに30分間撹拌した後、冷却し、内温が90℃に到達した際に、脱イオン水400gを加えた。さらに、室温まで冷却し、ポリアミド樹脂水性分散原料液を得た。この原料液中のポリアミド樹脂の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所、商品名“SALD−2000J”)を用いて測定した。また、当該原料液を25℃の恒温水槽に移動させ、B型回転式粘度計を用いて25℃、60rpmでの粘度を測定した。
<ポリアミド樹脂水性分散原料液の撹拌>
上記のようにして得た原料液を1リットルビーカーに400g入れた後、内部挿入式の高速回転せん断型攪拌機(プライミクス社製の商品名「T.Kロボミックス」:攪拌翼径2.7cm、吐出係数0.15)を用いて、9000rpm、5分(先端周速12.7m/s、パス回数P1;332回)の攪拌操作を行った後、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
なお、各例においては、用いたポリアミドの密度がほぼ1g/cmであるため、水性分散原料液の密度は1000g/Lと換算してパス回数を算出した。
実施例2
実施例1において、10%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を13.6gとした以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例3
実施例1において、10%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を13.0gとした以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例4
実施例1において、10%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を15.8gとした以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例5
実施例1において、12000rpm、5分(先端周速17.0m/s、パス回数P1;443回)の攪拌操作を行った以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例6
実施例1において、内部挿入式の高速回転せん断型攪拌機に代えて、攪拌翼としてフラットパドル(4枚羽根、攪拌翼径7.7cm、吐出係数0.5)を備えた通常型の攪拌機を用いて、2500rpm、2分(先端周速10.1m/s、パス回数P1;2853回)の攪拌操作を行った以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例7
実施例1において、内部挿入式の高速回転せん断型攪拌機に代えて、連続循環処理方式タイプの高速回転せん断型攪拌機(プライミクス社製の商品名「T.KパイプラインホモミキサーSL型」:攪拌翼径4.8cm)を用いて、流量0.2L/minで9000rpm、2.5分間(先端周速22.6m/s、パス回数P2;1.25回)の攪拌操作を行った以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例8
実施例7において、流量0.2L/minで10分間(先端周速22.6m/s、パス回数P2;5回)の攪拌操作を行った以外は、実施例7と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例9
実施例1において、ポリビニルピロリドンの使用量を1.2gとした以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例10
実施例1において、ポリビニルピロリドンの使用量を9.6gとした以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例11
実施例1において、脱イオン水400gを加える際、エチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液(住友精化株式会社製の商品名“ザイクセンA”;固形分濃度25%、アクリル酸の共重合比率21.1%)48gを追加して加えた以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例12
エチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液(住友精化株式会社製の商品名“ザイクセンA”;固形分濃度25%、アクリル酸の共重合比率21.1%)96gを追加して加えた以外は、実施例11と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例13
実施例1において、ポリビニルピロリドン4.8gに代えて、ポリエチレングリコール4.8g(第一工業製薬株式会社の商品名「PEG20000」:質量平均分子量200,000)を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例14
脱イオン水400gを加える際、エチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液(住友精化株式会社製の商品名“ザイクセンA”;固形分濃度25%、アクリル酸の共重合比率21.1%)48gを追加して加えた以外は、実施例13と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例15
実施例1において、ポリビニルピロリドン4.8gに代えて、ポリエチレングリコール9.6g(第一工業製薬株式会社の商品名「PEG20000」:質量平均分子量200,000)を用い、脱イオン水400gを加える際、エチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液(住友精化株式会社製の商品名“ザイクセンA”;固形分濃度25%、アクリル酸の共重合比率21.1%)48gを追加して加えた以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例16
ポリエチレングリコール9.6gに代えて、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体12.0g(旭電化株式会社製の商品名“プルロニックF108”;質量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)を用いた以外は、実施例15と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
実施例17
6/66/12共重合ナイロンの使用量を144gとし、合わせて、ポリアミド系エラストマー(宇部興産株式会社製の商品名“UBESTA XPA9044X2”;ポリエーテルブロックアミド共重合体、融点150℃)96gを使用し、10%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を5.6gとした以外は、実施例16と同様に操作し、本発明のポリアミド樹脂水性分散液を得た。
比較例1
実施例1において、攪拌操作を行わなかった以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド樹脂水性分散液を得た。
比較例2
実施例1において、ポリビニルピロリドンを用いなかった以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド樹脂水性分散液を得た。
比較例3
実施例1において、10%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を11.9gとした以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド樹脂水性分散液を得た。
比較例4
実施例1において、高速回転せん断型攪拌機を用いて、6000rpm、5分(先端周速8.5m/s、パス回数P1;221回)の攪拌操作を行った以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド樹脂水性分散液を得た。
比較例5
実施例1において、高速回転せん断型攪拌機を用いて、9000rpm、15秒(先端周速12.7m/s、パス回数P1;16.6回)の攪拌操作を行った以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド樹脂水性分散液を得た。
比較例6
3500rpm、2.5分間(先端周速8.8m/s、パス回数P2;1.25回)の攪拌操作を行った以外は、実施例7と同様に操作し、ポリアミド樹脂水性分散液を得た。
比較例7
流量0.2L/minで1分間(先端周速22.6m/s、パス回数P2;0.5回)の攪拌操作を行った以外は、実施例7と同様に操作し、ポリアミド樹脂水性分散液を得た。
(静置安定性評価)
実施例1〜17および比較例1〜7で得られたポリアミド樹脂水性分散液を25℃設定の恒温機に移動させ、40日間静置させた後、粒子径と粘度を測定し、ポリアミド樹脂水性分散液の静置安定性を評価した。結果を表1に示す。ここで、静置安定性評価の評価基準は以下のとおりである。
◎:粘度値、粒径値ともにほとんど変化していない。(増加率20%未満程度)
○:粘度値は少し大きくなっているが(増加率100%未満程度)、粒径値はほとんど変化していない。
△:粘度値、粒径値ともに少し大きくなっている。(粘度値増加率100%以上、粒径値増加率20%以上)
×:粘度値、粒径値ともに大幅に大きくなっている。(粘度値増加率200%以上、粒径値増加率50%以上)
(接着性評価1)
実施例1〜17および比較例1〜7で得られたポリアミド樹脂水性分散液を、固形分濃度(ポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤、及びエチレンアクリル酸共重合体の合計濃度)が8質量%になるように脱イオン水を用いて希釈した。このポリアミド樹脂水性分散液1Lを、含浸槽に入れた。
次に、ボビンに巻かれた炭素繊維束(三菱レイヨン株式会社製の商品名“パイロフィルTR50SI5L”:フィラメント数15000本、フィラメント径7μm、目付け1000mg/m)をボビンより送り出した後、実施例1〜17および比較例1〜5で得られたポリアミド樹脂水性分散液を入れた含浸槽で連続的にローラー浸漬を行った後、熱風乾燥(190℃5分)を行った。ここでは、浸漬後の絞りを調整し、熱風乾燥後の各ポリアミド樹脂水性分散液の付着量が、付着前の炭素繊維束の質量を100質量部とした場合に対して3質量部になるように調整した。
得られた炭素繊維束をナイロン6シート(長さ;25cm 幅;3.5cm、厚み;0.5mm)上に置いた後、加熱温度240℃に設定したプレス機(株式会社東洋精機製作所製の商品名“熱傾斜試験機”)を用いて、0.2MPa、30秒の条件で熱融着(接着面積0.6cm)した後、裁断し試験片を作成した。JIS K6850を参考に、オートグラフ(島津製作所の商品名“AGS−J”)を用いて、引張速度3mm/minの条件で、炭素繊維束とナイロン6シートの引張せん断強度を測定した。剥離強度が4.5Mpa以上であると接着性に優れていると判断した。
(接着性評価2)
実施例1〜17および比較例1〜7で得られたポリアミド樹脂水性分散液を、固形分濃度(ポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤、及びエチレンアクリル酸共重合体の合計濃度)が20質量%になるように脱イオン水を用いて希釈した。このポリアミド樹脂水性分散液1Lを含浸槽に入れた。
次に15cm×3.5cmに裁断したナイロン66の織布(平織、経糸:46本/インチ、緯糸:46本/インチ、総繊度470dtexのナイロン66合糸使用)を含浸槽に入れ、浸漬させた後、熱風乾燥(190℃、5分)を行った(付着量5%)。次に、当該織布を裁断した後、ナイロン6シート(長さ;25cm幅;3.5cm、厚み;0.5mm)と重ね合わせ、加熱温度240℃に設定したプレス機(株式会社東洋精機製作所製の商品名“熱傾斜試験機”)を用いて、0.2MPa、90秒の条件で熱融着(接着面積2.5cm)した後、裁断し、試験片を作成した。JIS K6850を参考に、オートグラフ(島津製作所の商品名“AGS−J”)を用いて、引張速度3mm/minの条件で、ナイロン66織布とナイロン6シートの引張せん断強度を測定した。剥離強度が1.2Mpa以上であると接着性に優れていると判断した。
以上の結果を、表1及び表2に示す。
Figure 2014043509
Figure 2014043509
表1及び2から、本発明により得られるポリアミド樹脂水性分散液は、粘度の経時変化が少ない等、安定性と接着性に優れ、繊維用処理剤として用いて、繊維を処理した際、繊維とマトリックス樹脂との接着性が優れていることが分った。
一方、比較例1〜7の本発明の攪拌操作を行わない、あるいは、高分子分散剤を用いないポリアミド樹脂水性分散液は、粘度の経時変化が大きい等、安定性が劣るものであったり、マトリックス樹脂との接着性が劣っていることが分った。
本発明から得られるポリアミド樹脂水性分散液は、粘度の経時変化が少ない等、安定性と接着性に優れているため、実用上、使いやすく、また、繊維処理剤として用い、繊維を処理した際、繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であるため、繊維複合化材料を製造した際、強度等の機械的特性が良好な複合化材料を製造することができる。

Claims (8)

  1. ポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤及び水性媒体を含み、
    B型回転式粘度計における25℃、60rpmでの粘度が300mpa・s以上であるポリアミド樹脂分散原料液を、
    内部挿入式の撹拌機により、撹拌機の羽根の先端周速が10m/s以上かつ、下記の式(1)で定義されるパス回数P1が20回以上で、または、
    連続循環処理方式の撹拌機により、撹拌機の羽根の先端周速が10m/s以上かつ、下記の式(2)で定義されるパス回数P2が1回以上で
    撹拌する、ポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
    式(1)
    パス回数P1=Q×撹拌時間(min)/全液量(L)
    ここで、Qは吐出量[L/min]を示し、以下の式で表される。
    Q =Nq・n・d3/1000
    Nq:吐出係数 n:撹拌翼回転数[rpm] d:撹拌翼径[cm]
    式(2)
    パス回数P2=流量(L/min)×撹拌時間(min)/全液量 (L)
  2. 撹拌機が回転せん断型撹拌機である請求項1に記載のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
  3. 前記ポリアミド樹脂分散原料液が、
    ポリアミド樹脂、塩基性物質、高分子分散剤及び水性媒体を含む混合液を、前記ポリアミド樹脂の軟化温度以上で撹拌し、乳化させて得られる乳化液である、
    請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
  4. 高分子分散剤が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
  5. 前記ポリアミド樹脂分散原料液に、
    ポリアミド樹脂100質量部に対して高分子分散剤が0.01〜10質量部含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂水性分散液の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で得られるポリアミド樹脂水性分散液を含む繊維用処理剤。
  7. 繊維用処理剤が炭素繊維用処理剤である請求項6記載の繊維用処理剤。
  8. 請求項6または7記載の繊維用処理剤で繊維を処理して、繊維用処理剤で処理された繊維または繊維複合化材料を製造する方法。
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