上記従来の冷媒熱交換器において、冷媒管の長手方向の端部は、炉中ロウ付けによってヘッダにロウ付け接合される。具体的には、冷媒管の長手方向の端部をヘッダに差し込むことによって構成された熱交集合体をロウ付け炉内で加熱して、ロウ材を溶融させ、溶融したロウ材によって、冷媒管の長手方向の端部をヘッダに接合する。
このような炉中ロウ付け時には、ロウ付け炉内における加熱によって冷媒管が長手方向に伸び、その後の冷却によって冷媒管が長手方向に縮む。例えば、長さが2m程度のアルミニウム又はアルミニウム合金製の冷媒管を使用する場合には、ロウ材が溶融する600℃程度の温度までロウ付け炉内を加熱すると、冷媒管の長さが約30mm程度伸び縮みする。ここで、加熱によって冷媒管が長手方向に伸びる際には、ヘッダが冷媒管と一緒に移動する。しかし、冷却によって冷媒管が長手方向に縮む際には、ヘッダが冷媒管と一緒に移動しにくいため、冷媒管の長手方向の端部がヘッダから抜けることがある。そうすると、冷媒管の長手方向の端部とヘッダとの間のロウ付け不良が発生するおそれがある。特に、冷媒管及びヘッダ内を流れる冷媒として二酸化炭素のような耐圧性が要求される冷媒を使用する場合には、ヘッダの肉厚を大きくすることによってヘッダの重量が大きくなるため、ヘッダが冷媒管と一緒にさらに移動しにくくなり、冷媒管の長手方向の端部がヘッダから抜けることが多くなる。
本発明の課題は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の冷媒管の長手方向の端部をヘッダにロウ付け接合することによって構成される冷媒熱交換器及びその製造方法において、炉中ロウ付け時における冷媒管のヘッダからの抜けを抑えることにある。
第1の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の冷媒管の長手方向の端部をヘッダにロウ付け接合することによって構成される冷媒熱交換器の製造方法である。この製造方法では、ヘッダに冷媒管の長手方向の端部を差し込むことによって熱交集合体を構成するとともに、ヘッダに冷媒管が差し込まれた状態を維持する抜け止め手段を熱交集合体に設ける。そして、抜け止め手段が設けられた熱交集合体をロウ付け炉内において加熱することによって冷媒管の長手方向の端部をヘッダにロウ付け接合するようにしている。
この製造方法によれば、抜け止め手段によって、炉中ロウ付け前に予めヘッダに冷媒管が差し込まれた状態が維持されるようにしているため、ロウ付け炉内の冷却によって冷媒管が長手方向に縮む際に、ヘッダが冷媒管と一緒に移動するようになる。これにより、炉中ロウ付け時における冷媒管のヘッダからの抜けを抑えることができる。そして、冷媒管の長手方向の端部とヘッダとの間のロウ付け不良の発生を抑えることができる。
第2の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、第1の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法において、ヘッダにアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材を溶接することによって抜け止め手段が構成されている。
この製造方法によれば、炉中ロウ付け前に、予めヘッダにアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材を溶接した構成を抜け止め手段として使用している。このため、炉中ロウ付け時に、溶接によってヘッダに固定されたアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材が冷媒管と同程度の伸び縮みをすることによって、ヘッダに冷媒管が差し込まれた状態を確実に維持することができる。
第3の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、第2の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法において、差し込み維持部材がヘッダに差し込まれた状態で溶接されている。
この製造方法によれば、冷媒管の長手方向の端部をヘッダに差し込んで熱交集合体を構成する際に、差し込み維持部材もヘッダに差し込んでヘッダに溶接することによって、抜け止め手段を容易に構成することができる。
第4の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、第3の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法において、冷媒管が複数あり、冷媒管の一部が差し込み維持部材を構成している。
この製造方法によれば、差し込み維持部材として複数の冷媒管の一部を使用している。このため、冷媒管の長手方向の端部をヘッダに差し込んで熱交集合体を構成する際に、複数の冷媒管の一部をヘッダに溶接することによって、冷媒管を差し込み維持部材として容易に機能させることができる。
第5の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、第2の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法において、ヘッダが差し込み維持部材側に向かって延びる差し込み維持部材側延出部を有しており、差し込み維持部材が差し込み維持部材側延出部に溶接されている。
この製造方法では、ヘッダに差し込み維持部材側延出部を設けているため、差し込み維持部材をヘッダに容易に溶接することができる。
第6の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、第1の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法において、ヘッダに装着される結合部材と、結合部材に固定されるアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材とによって抜け止め手段が構成されている。
この製造方法では、炉中ロウ付け前に、予め結合部材をヘッダに装着するとともにアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材を結合部材に固定した構成を抜け止め手段として使用している。このため、炉中ロウ付け時に、結合部材を介してヘッダに固定されたアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材が冷媒管と同程度の伸び縮みをすることによって、ヘッダに冷媒管が差し込まれた状態を確実に維持することができる。
第7の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、第6の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法において、結合部材がヘッダに着脱可能に装着されている。
この製造方法では、ヘッダに結合部材を着脱可能に装着しているため、結合部材及び差し込み維持部材からなる抜け止め手段を炉中ロウ付け後に取り外すことができる。このため、抜け止め手段を炉中ロウ付け時における冷媒管のヘッダからの抜けを抑えるための治具として機能させることができる。
第8の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、第1〜第7の観点のいずれかにかかる冷媒熱交換器の製造方法において、抜け止め手段がヘッダの長手方向の端部に設けられている。
この製造方法では、抜け止め手段をヘッダの長手方向の端部に設けているため、抜け止め手段を熱交集合体に容易に設けることができる。また、抜け止め手段をヘッダの長手方向の両端部に設ける場合には、ヘッダの長手方向のいずれの位置においても、ヘッダを冷媒管の伸び縮みに応じて均等に移動させることができる。
第9の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法は、第1〜第8の観点のいずれかにかかる冷媒熱交換器の製造方法において、ヘッダが、冷媒管の長手方向の端部をヘッダに差し込む際に、冷媒管の長手方向の端部に当接することによって、冷媒管の長手方向の端部のヘッダへの差し込み深さを制限する差し込み深さ制限部を有している。
差し込み深さ制限部によって冷媒管の長手方向の端部のヘッダへの差し込み深さを制限するヘッダ構造では、冷媒管が長手方向に伸びる際に、冷媒管の長手方向の端部が差し込み深さ制限部を押圧するため、ヘッダが冷媒管と一緒に移動しやすい。しかし、冷却によって冷媒管が長手方向に縮む際には、冷媒管の長手方向の端部が差し込み深さ制限部から離れるため、ヘッダが冷媒管と一緒に移動しにくく自重によって残りやすい。
しかし、この製造方法では、抜け止め手段によって、炉中ロウ付け前に予めヘッダに冷媒管が差し込まれた状態が維持されるようにしているため、ロウ付け炉内の冷却によって冷媒管が長手方向に縮む際に、ヘッダが冷媒管と一緒に移動するようになる。これにより、差し込み深さ制限部によって冷媒管の長手方向の端部のヘッダへの差し込み深さを制限するヘッダ構造であるにもかかわらず、炉中ロウ付け時における冷媒管のヘッダからの抜けを抑えることができる。
第10の観点にかかる冷媒熱交換器は、第1〜第9の観点のいずれかにかかる製造方法によって製造されたものである。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
第1及び第10の観点にかかる冷媒熱交換器及びその製造方法では、炉中ロウ付け時における冷媒管のヘッダからの抜けを抑えることができる。そして、冷媒管の長手方向の端部とヘッダとの間のロウ付け不良の発生を抑えることができる。
第2の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法では、ヘッダに冷媒管が差し込まれた状態を確実に維持することができる。
第3の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法では、抜け止め手段を容易に構成することができる。
第4の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法では、冷媒管を差し込み維持部材として容易に機能させることができる。
第5の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法では、差し込み維持部材をヘッダに容易に溶接することができる。
第6の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法では、ヘッダに冷媒管が差し込まれた状態を確実に維持することができる。
第7の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法では、抜け止め手段を炉中ロウ付け時における冷媒管のヘッダからの抜けを抑えるための治具として機能させることができる。
第8の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法では、抜け止め手段を熱交集合体に容易に設けることができる。また、ヘッダの長手方向のいずれの位置においても、ヘッダを冷媒管の伸び縮みに応じて均等に移動させることができる。
第9の観点にかかる冷媒熱交換器の製造方法では、差し込み深さ制限部によって冷媒管の長手方向の端部のヘッダへの差し込み深さを制限するヘッダ構造であるにもかかわらず、炉中ロウ付け時における冷媒管のヘッダからの抜けを抑えることができる。
以下、本発明にかかる冷媒熱交換器及びその製造方法の実施形態及びその変形例について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる冷媒熱交換器及びその製造方法の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
(1)冷媒熱交換器の全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる冷媒熱交換器1の概略構成図である。図2は、図1の冷媒熱交換器1のA部を拡大した斜視図である。
冷媒熱交換器1は、例えば、スプリットタイプの空気調和装置の室外ユニットに設けられる。この場合において、冷媒熱交換器1は、室外ユニットに設けられた室外ファンによって供給される空気と冷媒との間で熱交換を行う室外熱交換器として機能する。尚、冷媒熱交換器1の用途は、室外熱交換器に限定されるものではなく、他の用途にも使用可能である。
冷媒熱交換器1は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の冷媒管10の長手方向の端部12、13をヘッダ20、30にロウ付け接合することによって構成される熱交換器である。
具体的には、冷媒熱交換器1は、主として、複数の冷媒管10と複数の伝熱フィン40とによって構成された積層型熱交換器である。冷媒管10は、図1及び図2における上下方向(すなわち、ヘッダ20、30の長手方向に沿う方向)に間隔を空けて複数段(ここでは、4段)配列されており、冷媒管10の長手方向の端部12、13がヘッダ20、30にロウ付け接合されている。ここで、冷媒管10は、複数の流路穴11が形成された多穴管からなる。伝熱フィン40は、図1及び図2において、上下に隣接する冷媒管10に挟まれた通風空間に配置されている。ヘッダ20、30は、図1において、上下方向に延びる筒状部材であり、冷媒管10を支持する機能と、冷媒を冷媒管10の複数の流路穴11に導く機能と、複数の流路穴11から出てきた冷媒を集合させる機能とを有している。また、ここでは、炉中ロウ付け時における冷媒管10のヘッダ20、30からの抜けを抑えるために、冷媒熱交換器1に冷媒管10が差し込まれた状態を維持する抜け止め手段60が設けられるようになっているが、この抜け止め手段60については、後述するものとする。
(2)冷媒管
冷媒管10は、ここでは、図2に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平した断面形状を有する扁平多穴管である。冷媒管10には、複数(ここでは、9個)の流路穴11が、冷媒管10の長手方向の端部12、13を冷媒管10の長手方向に沿って見た際に、扁平した断面形状の長辺方向(すなわち、図1及び図2における紙面前後方向)に並んで配置されている。流路穴11は、円形又は多角形の穴形状を有しており、冷媒管10の長手方向の端部12、13間を貫通している。冷媒管10は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の金属材料を押し出し成形することによって形成されている。尚、流路穴11の数は、9個に限定されるものではなく、9個より多くても少なくてもよい。また、冷媒管10は、クラッド材である。具体的には、冷媒管10は、その扁平面にロウ材が張り合わされた部材である。
(3)伝熱フィン
伝熱フィン40は、ここでは、図1及び図2に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金等の薄板状の金属材料が長手方向に波形に折り曲げられることによって形成される波形フィンである。伝熱フィン40は、谷部41と山部42と伝熱面43とを有している。谷部41及び山部42は、冷媒管10の扁平面に接触して、ロウ付け接合されている。伝熱面43には、ここでは、熱交換効率を向上させるためのルーバー状の切り起こし部44が形成されている。すなわち、ここでは、冷媒熱交換器1として、波形フィンタイプの積層型熱交換器が採用されている。
(4)ヘッダ
<ヘッダの全体構成>
ヘッダ20は、ここでは、図1に示すように、仕切板21によって、内部空間が2つに仕切られている。そして、冷媒熱交換器1を冷媒の放熱器として機能させる場合には、冷媒がヘッダ20の上部空間に流入する。ヘッダ20の上部空間に流入した冷媒は、上方に配置されている冷媒管10の流路穴11を通じてヘッダ30に流入する。ヘッダ30に流入した冷媒は、折り返されて、下方に設置されている冷媒管10の流路穴11を通じてヘッダ20の下部空間に流入し、その後、冷媒熱交換器1を出る。このとき、冷媒は、冷媒管10の流路穴11を通過する際に、冷却源としての空気との熱交換によって冷却される。また、冷媒熱交換器1を冷媒の蒸発器として機能させる場合には、冷媒がヘッダ20の下部空間に流入する。ヘッダ20の下部空間に流入した冷媒は、下方に配置されている冷媒管10の流路穴11を通じてヘッダ30に流入する。ヘッダ30に流入した冷媒は、折り返されて、上方に配置されている冷媒管10の流路穴11を通じてヘッダ20の上部空間に流入し、その後、冷媒熱交換器1を出る。このとき、冷媒は、冷媒管10の流路穴11を通過する際に、加熱源としての空気との熱交換によって蒸発する。尚、仕切板の数や配置等を含めた冷媒熱交換器1のパス取りは、図1に示すものに限定されるものではない。
ヘッダ20、30は、ここでは、図1及び図3に示すように、主として、基礎部材22、32と、連結部25、35とを有している。そして、冷媒管10は、連結部25、35を介して、ヘッダ20、30にロウ付け接合されている。ここで、図3は、図1の冷媒熱交換器1をB方向から見た矢視図である。尚、ヘッダ20の構成は、基本的にヘッダ30の構成と同じである。このため、以下の説明では、ヘッダ30の構成だけについて説明し、ヘッダ20の構成については、ヘッダ30の30番台の符号を20番台の符号に読み換えるものとする。
<基礎部材>
基礎部材32は、ここでは、図3及び図4に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金等の金属材料からなり、主として、円筒部33と、連通孔形成部34とを有している。ここで、図4は、基礎部材32の斜視図である。
円筒部33は、主流路33aが形成された細長い略円柱形状の部分である。主流路33aは、ヘッダ本体32の内部に形成された冷媒流路である。主流路33aは、円筒部33の長手方向に沿う方向から見た断面形状が円形の孔である。主流路33aは、ヘッダ30の長手方向に沿って延びている。主流路33aは、連通孔形成部34に形成された複数の連通孔34aに連通している。
連通孔形成部34は、円筒部33の側壁と一体的に繋がる略矩形形状の部分である。また、連通孔形成部34は、ヘッダ30の長手方向に沿って延びている。連通孔形成部34には、複数(ここでは、4個)の連通孔34aが形成されている。連通孔34aは、連通孔形成部34の長手方向に並んで形成されている。連通孔34aは、冷媒管10と同じ配列間隔を空けて冷媒管10の端部13に対向するように配置されている。また、ここでは、連通孔34aは、略円形の孔である。そして、ヘッダ30と冷媒管10とが接合される際には、連通孔形成部34に連結部35が接合されるようになっている。
<連結部>
連結部35は、ここでは、図3、図5及び図7に示すように、基礎部材32と冷媒管10とを連結する部材の集合体である。ここで、図5は、図1の冷媒熱交換器1のI−I断面図(左側の端部付近のみ)である。図7は、図3の冷媒熱交換器1のIII−III断面図(左側の端部付近のみ)である。
連結部35は、主として、スペーサ部材36と、固定部材37と、保持部材38とを有している。スペーサ部材36は、連通孔形成部34の冷媒管10の端部13側の面(すなわち、円筒部33から遠い側の面)に接触するように配置されている。固定部材37は、スペーサ部材36の冷媒管10の端部13側の面(すなわち、円筒部33から遠い側の面)に接触するように配置されている。保持部材38は、連通孔形成部34、スペーサ部材36及び固定部材37を円筒部33から遠い側から取り囲むように配置されている。すなわち、連結部35を構成するスペーサ部材36、固定部材37及び保持部材38は、基礎部材32側から順に配置されている。
スペーサ部材36は、図3、図5及び図7〜図9に示すように、ヘッダ30の長手方向に延びる細長い略矩形形状の部材である。ここで、図8は、図5及び図6の冷媒熱交換器1のIV−IV断面図である。図9は、図5及び図6の冷媒熱交換器1のV−V断面図である。スペーサ部材36には、複数(ここでは、4個)の対向孔36aが形成されている。対向孔36aは、スペーサ部材36の長手方向に並んで形成されている。対向孔36aは、連通孔34a及び冷媒管10と同じ配列間隔を空けて、連通孔34a及び冷媒管10の端部13に対向するように配置されている。そして、対向孔36aは、冷媒管10の長手方向に沿う方向から見た断面形状が連通孔34a及び流路穴11の全てに連通する扁平形状の孔(より具体的には、略長方形状の孔)である。すなわち、スペーサ部材36の対向孔36aは、基礎部材32と冷媒管10との間に、基礎部材32からの冷媒を冷媒管10の複数の流路穴11に分配するための流路、又は、冷媒管10の複数の流路穴11からの冷媒を合流させるための流路をなしている。また、対向孔36aの長辺方向の寸法は、冷媒管10の扁平した断面形状の長辺方向の寸法よりも小さくなっている。このため、スペーサ部材36は、対向孔36aの長辺方向の外周側の両端部36bが、冷媒管10の端部13を冷媒管10の長手方向に沿って見た際に、冷媒管10の端部13の一部(ここでは、長辺方向の端面13b)に接触するように配置されている。すなわち、スペーサ部材36の端部36bは、冷媒管13の端部13をヘッダ30に差し込む際に、冷媒管13の長手方向の端部13に当接することによって、冷媒管10の長手方向の端部13のヘッダ30への差し込み深さを制限する差し込み深さ制限部を構成している。尚、ここでは、対向孔36aの短辺方向の寸法は、冷媒管10の扁平した断面形状の短辺方向の寸法よりも大きくなっているが、冷媒管10の扁平した断面形状の短辺方向の寸法よりも小さくなっていてもよい。また、スペーサ部材36は、クラッド材である。具体的には、スペーサ部材36は、基礎部材32及び冷媒管10と同じアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属材料を心材としており、この心材の表面にロウ材が張り合わされた部材である。そして、スペーサ部材36は、基礎部材32の連通孔形成部34及び冷媒管10の長手方向の端部13にロウ付け接合されている。
固定部材37は、図3、図5、図7及び図10に示すように、ヘッダ30の長手方向に延びる細長い略矩形形状の部材である。ここで、図10は、図5及び図6の冷媒熱交換器1のVI−VI断面図である。固定部材37には、複数(ここでは、4個)の挿入孔37aが形成されている。挿入孔37aは、固定部材37の長手方向に並んで形成されている。挿入孔37aは、連通孔34a、対向孔36a及び冷媒管10と同じ配列間隔を空けて、連通孔34a及び対向孔36aに対向するように配置されている。そして、挿入孔37aは、冷媒管10の長手方向に沿う方向から見た断面形状が冷媒管10の長手方向の端部13を挿入することが可能な扁平形状の孔である。このため、固定部材37は、冷媒管10の長手方向の端部13を挿入孔37aに挿入した状態で支持している。尚、ここでは、挿入孔37aの短辺方向及び長辺方向の寸法は、冷媒管10の扁平した断面形状の短辺方向及び長辺方向の寸法とほぼ同じになっているが、冷媒管10の扁平した断面形状の短辺方向及び長辺方向の寸法よりも大きくてもよい。また、固定部材37は、基礎部材32及び冷媒管10と同じアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属材料からなる。そして、固定部材37は、冷媒管10の長手方向の端部13を支持した状態で、スペーサ部材36及び冷媒管10の長手方向の端部13にロウ付け接合されている。
保持部材38は、図3、図5、図7〜図11に示すように、ヘッダ30の長手方向に延びる細長い略矩形形状の部材である。ここで、図11は、図5及び図6の冷媒熱交換器1のVII−VII断面図である。保持部材38は、ヘッダ30の長手方向に沿って見た際に、略U字形状を有している。保持部材38には、複数(ここでは、4個)の挿入孔38aが形成されている。挿入孔38aは、保持部材38の長手方向に並んで形成されている。挿入孔38aは、連通孔34a、対向孔36a、挿入孔37a及び冷媒管10と同じ配列間隔を空けて、連通孔34a、対向孔36a及び挿入孔37aに対向するように配置されている。そして、挿入孔38aは、冷媒管10の長手方向に沿う方向から見た断面形状が冷媒管10の長手方向の端部13が挿入可能な扁平形状の孔である。このため、保持部材38は、固定部材37と同様に、冷媒管10の長手方向の端部13を挿入孔38aに挿入した状態で支持している。すなわち、固定部材37は、保持部材38に挿入された状態の冷媒管10の長手方向の端部13を挿入した状態で支持していることになる。尚、ここでは、挿入孔38aの短辺方向及び長辺方向の寸法は、冷媒管10の扁平した断面形状の短辺方向及び長辺方向の寸法とほぼ同じになっている。そして、保持部材38は、スペーサ部材36、固定部材37及び冷媒管10を保持し、この保持状態のままで、保持部材38の基礎部材32側の先端部38bが基礎部材32の連通孔形成部34にカシメ固定されている。すなわち、基礎部材32は、保持部材38との間に固定部材37及びスペーサ部材36を挟むように設けられ、保持部材38にカシメ固定されている。また、保持部材38も、スペーサ部材36と同様のクラッド材である。そして、保持部材38は、固定部材37及び冷媒管10の長手方向の端部13にロウ付け接合されている。
(5)抜け止め手段を設けない場合の冷媒熱交換器の製造方法(ロウ付け接合)
このような冷媒熱交換器1において、後述の抜け止め手段60を設けない場合には、以下のような手順でロウ付け接合が行われて、冷媒熱交換器1が製造される。
まず、ヘッダ20、30に冷媒管10の長手方向の端部12、13を差し込むとともに伝熱フィン40を冷媒管10間に配置することによって熱交集合体を構成する。ここでは、冷媒管10の端部12、13を保持部材28、38の挿入孔28a、38a、及び、固定部材27、37の挿入孔27a、37aに挿入する。これにより、冷媒管10の端部12、13は、スペーサ部材26、36の対向孔26a、36aの長辺方向の外周側の両端部である差し込み深さ制限部26b、36bに当接するまで差し込まれた状態になる。そして、基礎部材22、32を保持部材28、38との間に固定部材27、37及びスペーサ部材26、36を挟むように設けて、基礎部材22、32を保持部材28、38にカシメ固定する。そして、ヘッダ20、30に差し込まれた状態の冷媒管10間に伝熱フィン40を配置することによって熱交集合体を構成する。
次に、この熱交集合体をロウ付け炉内において加熱する。このとき、熱交集合体は、冷媒管10の扁平した断面形状の長辺が上下方向を向く姿勢で炉内に配置される(図2、図5及び図8〜図11参照)。すると、スペーサ部材36や保持部材38に張り合わされたロウ材が溶融し、溶融したロウ材によって、冷媒管10の長手方向の端部12、13がヘッダ20、30に接合される。ここでは、基礎部材22の連通孔形成部24、スペーサ部材26、固定部材27及び保持部材28との間が互いにロウ付け接合されることによって、ヘッダ20を構成する。また、基礎部材32の連通孔形成部34、スペーサ部材36、固定部材37及び保持部材38との間が互いにロウ付け接合されることによって、ヘッダ30を構成する。そして、ヘッダ20、30が構成されるとともに、冷媒管10の長手方向の端部12、13がヘッダ20、30にロウ付け接合される。
しかし、このような炉中ロウ付け時には、図5に示すように、ロウ付け炉内における加熱によって冷媒管10が長手方向に伸び、その後の冷却によって冷媒管10が長手方向に縮む。例えば、長さが2m程度のアルミニウム又はアルミニウム合金製の冷媒管10を使用する場合には、ロウ材が溶融する600℃程度の温度までロウ付け炉内を加熱すると、冷媒管10の長さが約30mm程度伸び縮みする。ここで、加熱によって冷媒管10が長手方向に伸びる際には、ヘッダ20、30が冷媒管10と一緒に移動する。しかし、冷却によって冷媒管10が長手方向に縮む際には、ヘッダ20、30が冷媒管10と一緒に移動しにくいため、冷媒管10の長手方向の端部12、13がヘッダ20、30から抜けることがある。そうすると、冷媒管10の長手方向の端部12、13とヘッダ20、30との間のロウ付け不良が発生するおそれがある。特に、ここでは、差し込み深さ制限部26b、36bによって冷媒管10の長手方向の端部12、13のヘッダ20、30への差し込み深さを制限する構造を採用しているため、冷媒管10が長手方向に伸びる際に、冷媒管10の長手方向の端部12、13が差し込み深さ制限部26b、36bを押圧する。このため、ヘッダ20、30が冷媒管10と一緒に移動しやすい。しかし、冷却によって冷媒管10が長手方向に縮む際には、冷媒管10の長手方向の端部12、13が差し込み深さ制限部26b、36bから離れるため、ヘッダ20、30が冷媒管10と一緒に移動しにくく自重によって残りやすい。また、冷媒管10及びヘッダ20、30内を流れる冷媒として二酸化炭素のような耐圧性が要求される冷媒を使用する場合には、ヘッダ20、30の肉厚を大きくすることによってヘッダ20、30の重量が大きくなるため、ヘッダ20、30が冷媒管10と一緒にさらに移動しにくくなり、冷媒管10の長手方向の端部12、13がヘッダ20、30から抜けることが多くなる。
このように、冷媒熱交換器1では、炉中ロウ付け時における冷媒管10のヘッダ20、30からの抜けを抑えるという技術的な課題があり、これに対して、ここでは、後述するように、熱交集合体に抜け止め手段60を設けた状態で炉中ロウ付けを行うようにしている。
(6)抜け止め手段を設ける場合の冷媒熱交換器の製造方法(ロウ付け接合)
<抜け止め手段>
炉中ロウ付け時における冷媒管10のヘッダ20、30からの抜けを抑えるためには、炉中ロウ付け時の冷媒管10の伸び縮みを許容しつつヘッダ20、30に冷媒管10が差し込まれた状態を維持する手段を熱交集合体に設けた状態で炉中ロウ付けを行うことが好ましい。
そこで、ここでは、図1〜図3及び図6〜図11に示すように、ヘッダ20、30にアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材50を溶接した構成からなる抜け止め手段60を設けるようにしている。ここで、図6は、図1の冷媒熱交換器1のII−II断面図(左側の端部付近のみ)である。差し込み維持部材50は、冷媒管10と同じアルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平した断面形状を板状部材である。差し込み維持部材50は、ヘッダ20、30への差し込み代を有していない分だけ、冷媒管10よりも長手方向の寸法が短くなっている。そして、差し込み維持部材50の長手方向の端部52、53は、スポット溶接等によって、ヘッダ20、30に溶接されている(以下、差し込み維持部材50の溶接部分を溶接部51とする)。ここでは、差し込み維持部材50は、ヘッダ20、30を構成する保持部材28、38の外面に溶接されている。また、差し込み維持部材50は、ヘッダ20、30の長手方向の端部に設けられている。特に、ここでは、差し込み維持部材50は、ヘッダ20、30の長手方向の両端部に設けられている。すなわち、差し込み維持部材50は、複数の冷媒管10をヘッダ20、30の長手方向間に挟むように設けられている。また、ここでは、差し込み維持部材50は、ヘッダ20、30の長手方向に隣り合う冷媒管10との間に伝熱フィン40を挟むことが可能な間隔を空けて配置されている。これにより、伝熱フィン40の谷部41及び山部42は、冷媒管10間だけでなく、冷媒管10と差し込み維持部材50との間にもロウ付け接合されている。
<抜け止め手段を設ける場合のロウ付け接合>
このような冷媒熱交換器1において、上述の抜け止め手段60によって、以下のような手順でロウ付け接合が行われて、冷媒熱交換器1が製造される。
まず、ヘッダ20、30に冷媒管10の長手方向の端部12、13を差し込むとともに伝熱フィン40を冷媒管10間に配置することによって熱交集合体を構成する。ここでは、冷媒管10の端部12、13を保持部材28、38の挿入孔28a、38a、及び、固定部材27、37の挿入孔27a、37aに挿入する。これにより、冷媒管10の端部12、13は、スペーサ部材26、36の対向孔26a、36aの長辺方向の外周側の両端部である差し込み深さ制限部26b、36bに当接するまで差し込まれた状態になる。そして、基礎部材22、32を保持部材28、38との間に固定部材27、37及びスペーサ部材26、36を挟むように設けて、基礎部材22、32を保持部材28、38にカシメ固定する。次に、複数の冷媒管10をヘッダ20、30の長手方向間に挟むように差し込み維持部材50を配置し、差し込み維持部材50の長手方向の端部52、53をヘッダ20、30の保持部材28、38の外面にスポット溶接等によって溶接する。このとき、差し込み維持部材50は、ヘッダ20、30の長手方向の端部に配置されるため、ヘッダ20、30に容易に溶接することができる。そして、ヘッダ20、30に差し込まれた状態の冷媒管10間、及び、ヘッダ20、30に溶接された状態の差し込み維持部材50とヘッダ20、30に差し込まれた状態の冷媒管10との間に伝熱フィン40を配置することによって熱交集合体を構成する。
次に、この熱交集合体をロウ付け炉内において加熱する。このとき、熱交集合体は、冷媒管10の扁平した断面形状の長辺が上下方向を向く姿勢で炉内に配置される(図2、図5、図6及び図8〜図11参照)。すると、スペーサ部材36や保持部材38に張り合わされたロウ材が溶融するとともに、冷媒管10が長手方向に伸びる。このとき、冷媒管10の長手方向への伸びとともに、ヘッダ20、30も冷媒管10と一緒に移動する。特に、ここでは、冷媒管10が長手方向に伸びる際に、冷媒管10の長手方向の端部12、13が差し込み深さ制限部26b、36bを押圧するため、この押圧によってヘッダ20、30が冷媒管10と一緒に移動する。また、冷媒管10と同じアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材50も、冷媒管10と同程度だけ長手方向に伸びることになる。このとき、差し込み維持部材50は、溶接によってヘッダ20、30に固定されているため、上記のロウ材を溶融させる程度の加熱では、溶接部51における差し込み維持部材50とヘッダ20、30の固定が外れるような不具合は発生しない。
その後、ロウ付け炉内を冷却する。すると、溶融したロウ材が凝固しながら、冷媒管10が長手方向に縮む。このとき、冷媒管10が長手方向に縮むとともに、差し込み維持部材50も長手方向に縮む。ここで、差し込み維持部材50は、ロウ付け炉内の加熱及び冷却の行程全体を通じて、ヘッダ20、30と固定された状態が維持されるため、ロウ付け炉内の冷却によって冷媒管10及び差し込み維持部材50が長手方向に縮む際にも、ヘッダ20、30と一緒に移動し、その結果、ヘッダ20、30が冷媒管10と一緒に移動するようになる。すなわち、抜け止め手段60によって、炉中ロウ付け前に予めヘッダ20、30に冷媒管10が差し込まれた状態が維持されるようにしているため、ロウ付け炉内の冷却によって冷媒管10が長手方向に縮む際に、ヘッダ20、30が冷媒管10と一緒に移動するようになる。しかも、ここでは、抜け止め手段60をヘッダ20、30の長手方向の両端部に設けているため、ヘッダ20、30の長手方向のいずれの位置においても、ヘッダ20、30を冷媒管10の伸び縮みに応じて均等に移動させることができる。これにより、炉中ロウ付け時における冷媒管10のヘッダ20、30からの抜けを抑えることができる。特に、ここでは、差し込み深さ制限部26b、36bによって冷媒管10の長手方向の端部12、13のヘッダ20、30への差し込み深さを制限するヘッダ構造であるにもかかわらず、炉中ロウ付け時における冷媒管10のヘッダ20、30からの抜けを抑えることができる。そして、このような抜け止め手段60によって冷媒管10のヘッダ20、30からの抜けが抑制された状態においては、ヘッダ20、30溶融したロウ材が凝固する際に、冷媒管10の長手方向の端部12、13がヘッダ20、30に確実に接合される。ここでは、基礎部材22の連通孔形成部24、スペーサ部材26、固定部材27及び保持部材28との間が互いにロウ付け接合されることによって、ヘッダ20を構成する。また、基礎部材32の連通孔形成部34、スペーサ部材36、固定部材37及び保持部材38との間が互いにロウ付け接合されることによって、ヘッダ30を構成する。そして、ヘッダ20、30が構成されるとともに、冷媒管10の長手方向の端部12、13がヘッダ20、30にロウ付け接合される。
このように、ここでは、抜け止め手段60によって、炉中ロウ付け前に予めヘッダ20、30に冷媒管10が差し込まれた状態が維持されるようにしているため、ロウ付け炉内の冷却によって冷媒管10が長手方向に縮む際に、ヘッダ20、30が冷媒管10と一緒に移動するようになる。特に、ここでは、ヘッダ20、30にアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材50を溶接した構成を抜け止め手段60として使用しているため、差し込み維持部材50が冷媒管10と同程度の伸び縮みをする。これにより、炉中ロウ付け時における冷媒管10のヘッダ20、30からの抜けを確実に抑えることができる。そして、冷媒管10の長手方向の端部12、13とヘッダ20、30との間のロウ付け不良の発生を抑えることができる。
(7)変形例1
上記の実施形態では、図6、図7、図10及び図11に示すように、抜け止め手段60を構成する差し込み維持部材50がヘッダ20、30の外面(例えば、保持部材28、38の外面)に溶接されているが、これに限定されるものではない。
例えば、図12〜図15に示すように、抜け止め手段60を構成する差し込み維持部材50がヘッダ20、30に差し込まれた状態で溶接されていてもよい。具体的には、抜け止め手段60を構成する差し込み維持部材50をヘッダ20、30への差し込み代を有するものとする。一方、ヘッダ20、30を構成する保持部材28、38には、差し込み維持部材50の長手方向の端部52、53に対応する位置に、冷媒管10の長手方向の端部12、13を挿入するための挿入孔28a、38aと同様の挿入孔28c、38cを形成しておく。そして、差し込み維持部材50を挿入孔28c、38cに差し込んだ状態で保持部材28、38に溶接する。
本変形例においても、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。しかも、本変形例においては、冷媒管10の長手方向の端部12、13をヘッダ20、30に差し込んで熱交集合体を構成する際に、差し込み維持部材50もヘッダ20、30に差し込んでヘッダ20、30に溶接することができる。このため、抜け止め手段60を容易に構成することができる。また、挿入孔28c、38cによって差し込み維持部材50をヘッダ20、30に溶接する位置の位置決めも容易である。
尚、図12〜図15では、差し込み維持部材50を保持部材28、38だけに差し込む構成を採用しているが、これに限定されるものではない。例えば、ここでは図示しないが、固定部材27、37にも挿入孔を設けて差し込み維持部材50の長手方向の端部52、53を差し込むようにしてもよい。
(8)変形例2
上記の実施形態及び変形例1では、図1、図2、図4及び図6〜図15に示すように、抜け止め手段60を構成する差し込み維持部材50が、冷媒管10とは異なり、流路穴11を有していないが、これに限定されるものではない。
例えば、図16〜図25に示すように、複数(ここでは、6本)の冷媒管10のうちの一部を差し込み維持部材50として機能させるようにしてもよい。具体的には、複数の冷媒管10のうちヘッダ20、30の長手方向の両端部に設けられた2本の冷媒管10を、他の冷媒管10と同様に、ヘッダ20、30に差し込んだ状態で、ヘッダ20、30の保持部材28、38の外面に溶接する。
本変形例においても、上記の実施形態及び変形例1と同様の作用効果を得ることができる。しかも、本変形例においては、冷媒管10の長手方向の端部12、13をヘッダ20、30に差し込んで熱交集合体を構成する際に、複数の冷媒管10の一部をヘッダ20、30に溶接することによって、冷媒管10を差し込み維持部材50として容易に機能させることができる。また、差し込み維持部材50として機能させる冷媒管10についても、他の冷媒管10と同様に、流路穴11、スペーサ部材26、36の対向孔26a、36a、及び、基礎部材32の連通孔24a、34aに冷媒を流すことによって、伝熱面積を増大させる、又は、小型化に寄与することができる。尚、冷媒管10を差し込み維持部材50だけとして機能させる場合には、対向孔26a、36aや連通孔24a、34aを塞ぐようにしてもよい。
(9)変形例3
上記の実施形態では、図6、図7、図10及び図11に示すように、抜け止め手段60を構成する差し込み維持部材50が保持部材28、38の外面に溶接されているが、これに限定されるものではない。
例えば、図26に示すように、ヘッダ20、30に差し込み維持部材50側に向かって延びる差し込み維持部材側延出部54を設けて、差し込み維持部材50が差し込み維持部材側延出部54に溶接し、これを抜け止め手段60として機能させるようにしてもよい。具体的には、ヘッダ20、30を構成する保持部材28、38の長手方向の端部を差し込み維持部材50側に折り曲げることによって、差し込み維持部材側延出部54を形成する。そして、差し込み維持部材50の長手方向の端部52、53を差し込み維持部材側延出部54に溶接する。尚、差し込み維持部材側延出部54は、保持部材28、38ではなく、基礎部材22、32やスペーサ部材26、36、固定部材27、37に形成するようにしてもよい。
本変形例においても、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。しかも、本変形例においては、ヘッダ20、30に差し込み維持部材側延出部54を設けているため、差し込み維持部材50をヘッダ20、30に容易に溶接することができる。
(10)変形例4
上記の実施形態及び変形例1〜3では、図1、図3、図6、図7、図12、図13、図16、図18、図20及び図21に示すように、抜け止め手段60を構成する差し込み維持部材50がヘッダ20、30に直接溶接されているが、これに限定されるものではない。
例えば、図27に示すように、ヘッダ20、30に結合部材55を装着し、結合部材55に差し込み維持部材50を固定することで、抜け止め手段60を構成するようにしてもよい。具体的には、ヘッダ20、30の長手方向の端部に嵌合可能なC字形状の結合部材55を装着し、この結合部材の外面に差し込み維持部材50の長手方向の端部52、53を溶接等によって固定する。尚、結合部材55は、ヘッダ20、30の長手方向の端部に嵌合可能な形状であれば、C字形状でなくてもよい。
本変形例においては、炉中ロウ付け前に、予め結合部材55をヘッダ20、30に装着するとともにアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材50を結合部材55に固定した構成を抜け止め手段として使用することになる。このため、炉中ロウ付け時に、結合部材55を介してヘッダ20、30に固定されたアルミニウム又はアルミニウム合金製の差し込み維持部材50が冷媒管10と同程度の伸び縮みをすることによって、ヘッダ20、30に冷媒管10が差し込まれた状態を確実に維持することができる。
しかも、本変形例において、結合部材55をヘッダ20、30の長手方向の端部に着脱可能に嵌合させる構成を採用すると、結合部材55及び差し込み維持部材50からなる抜け止め手段60を炉中ロウ付け後に取り外すことができる。このため、抜け止め手段60を炉中ロウ付け時における冷媒管10のヘッダ20、30からの抜けを抑えるための治具として機能させることができる。