JP2014040795A - 回転機械及びそのクリアランス調整方法 - Google Patents

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尚之 梅津
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Abstract

【課題】車軸と車室の間のクリアランスを効果的に調整しうる回転機械及びそのクリアランス調整方法を提供する。
【解決手段】
回転機械は、車室と、少なくとも一部が前記車室内に配置される車軸と、前記車室の上部と下部の少なくとも一方における少なくとも一つの検出対象部位の前記車軸に対する鉛直方向の相対位置を検出する検出部と、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動させるための駆動部と、前記検出部の検出結果に応じて前記駆動部を制御する制御部とを備える。
【選択図】 図1

Description

本開示は、回転体としての車軸の少なくとも一部が車室内に設けられた回転機械(例えば、蒸気タービン、圧縮機、ガスタービン等)及びそのクリアランス調整方法に関する。
回転機械は、一般に、動翼がロータシャフトに取り付けられた車軸と、車軸の少なくとも一部を覆うように設けられ、動翼と対峙するように配置される静翼が取り付けられた車室とを備える。車軸は、軸受により回転自在に支持されている。これにより、車室(静止部)に対する車軸(回転部)の相対的な回転運動が可能となり、車室内を流通する流体のエネルギーと車軸の回転エネルギーとの間でエネルギーが変換される。
例えば、蒸気タービンやガスタービンに代表される原動機としての回転機械では、車室内を流通する流体(蒸気又は燃焼ガス)のエネルギーが、車軸の回転エネルギーに変換される。これに対し、圧縮機に代表される被駆動機としての回転機械では、車軸の回転エネルギーが車室内を流通する流体のエネルギーに変換される。
回転機械の運転効率は、回転部(動翼がロータシャフトに取り付けられた車軸)と静止部(静翼が取り付けられた車室)との間のクリアランスの大きさの影響を受けることが一般に知られている。すなわち、車軸と車室との間のクリアランスが大きいと、クリアランスを介して流体が漏洩し、回転機械の性能が低下してしまう。
一方、車軸と車室との間のクリアランスが小さすぎると車軸と車室が接触し、軸振動が発生して回転機械の破損の原因になる。また、開放点検後における回転機械の再組立てが困難になる可能性がある。
よって、回転機械の性能向上と車軸−車室間の接触防止とを両立する観点から、車軸と車室との間のクリアランスは適切な範囲内に設定することが重要となる。
ところで、特許文献1には、コンバインドサイクル発電プラント(ガスタービン及び蒸気タービンの組み合わせ)の鋼製架台の変形を歪みセンサで検出し、歪みセンサの検出結果に基づいて油圧ジャッキを昇降させて、鋼製架台の曲げ変形を矯正する技術が開示されている(特許文献1の段落0062及び0063並びに図9参照)。そして、鋼製架台の曲げ変形が油圧ジャッキにより矯正される結果、蒸気タービン及びガスタービンの回転軸が適正に維持されるようになっている。
特開2007−292194号公報
しかしながら、回転機械の運転状態によって車室が一時的に弾性変形し、車軸と車室との間のクリアランスが変化するため、クリアランスが適切な範囲から逸脱する可能性がある。例えば、蒸気タービンの起動時、高温高圧の蒸気が車室内に導入される結果、車室が過渡的に変形し、車軸と車室との間のクリアランスが変化する。
また、回転機械の車室は自重や使用状況によって経年的に塑性変形し、車軸と車室との間にクリアランスを十分に確保できず、開放点検後の回転機械の再組立てが困難になることも起こり得る。もちろん、回転機械の再組立てに支障が出ないように初期設定時のクリアランスを大きくすることも考えられるが、この場合、必要以上に大きなクリアランスにすると、回転機械の性能が低下してしまう。よって、初期設定のクリアランスは回転機械の性能の観点で許容できる程度の大きさにしておき、仮に開放点検後の回転機械の再組立てが困難であれば、車室と基礎との間にシムを挿入し、車軸に対する車室の相対位置を一時的に調整する手法が考えられる。ところが、シムを用いた車軸に対する車室の相対位置の調整作業は、開放点検の期間延長の原因となり多大な時間を要してしまう。
この点、特許文献1は、回転機械の車軸と車室との間のクリアランス調整について何ら開示していない。すなわち、特許文献1に記載の発電プラントにおける油圧ジャッキは、あくまで鋼製架台の曲げ変形を矯正するためのものであって、車軸と車室との間のクリアランス調整を行うものではない。
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて案出されたものであり、車軸と車室の間のクリアランスを効果的に調整しうる回転機械及びそのクリアランス調整方法を提供することを目的とする。
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、車室と、一部が前記車室内に配置される車軸と、前記車室の上部と下部の一方又は両方における検出対象部位の前記車軸に対する鉛直方向の相対位置を検出する検出部と、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動させるための駆動部と、前記検出部の検出結果に応じて前記駆動部を制御する制御部とを備える。
回転機械の車室は、定期点検時などの開放作業の容易性を考慮して、上半車室と下半車室とを厚肉のフランジ状に形成された水平継ぎ手部において締結した構造になっていることが多い。そのため、車室の水平方向における変形は水平継ぎ手部(厚肉のフランジ)で抑制され、相対的に車室の鉛直方向の変形が起こりやすい傾向にある。また、車室内に流体を導入するための管台は、車室鉛直方向(厚肉フランジ部を避けた箇所)に設置されることが多い。このため、車室の上部と下部とで温度差が生じ、これも、相対的に車室の鉛直方向の変形が起こりやすい要因の1つになっている。よって、車室の変形に起因した車軸と車室との間のクリアランスの変化は、車室の側部と比較すれば、車室の上部又は下部で顕著に表れることが多い。
そこで、上述のように、車室の上部と下部の一方又は両方における検出対象部位の車軸に対する鉛直方向の相対位置を検出部で検出し、この検出結果に応じた制御部による制御下で駆動部が車室及び車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる。これにより、車室の変形による影響を受けやすい車室上部又は車室下部における車軸と車室との間のクリアランスを効果的に調整することができる。
一実施形態において、前記検出対象部位は、前記車軸の軸方向に互いに間隔をおいて位置し、前記検出部によってそれぞれ前記相対位置が検出される複数の部位を含み、前記制御部は、各部位における前記相対位置に基づいて、前記車室と前記車軸との間の鉛直方向のクリアランスの前記軸方向における分布を推定し、前記クリアランスが許容範囲内に収まるように前記駆動部を制御する。
このように、車軸の軸方向に互いに間隔を空けて位置する複数の部位における相対位置を検出部によって検出することで、車軸の軸方向における車室−車軸間のクリアランスの分布を推定できる。よって、車室の過渡的な弾性変形又は経年的な塑性変形に起因して車室−車軸間のクリアランスが車軸の軸方向において不均一になった場合であっても、制御部による駆動部の制御によって車室−車軸間のクリアランスを適切な範囲内で維持できる。
一実施形態において、前記検出対象部位は、前記車室の上部に位置する上側部位と、前記車室の下部に位置する下側部位とを含み、前記検出部は、前記上側部位及び前記下側部位の両方について前記相対位置を検出し、前記制御部は、前記上側部位及び前記下側部位のそれぞれにおける前記相対位置に基づいて、前記車室の上部における前記車室と前記車軸との間の鉛直方向の第1クリアランス及び前記車室の下部における前記車室と前記車軸との間の鉛直方向の第2クリアランスを推定し、前記第1クリアランス及び前記第2クリアランスが許容範囲内に収まるように前記駆動部を制御する。
このように、車室上部に位置する上側部位と車室下部に位置する下側部位を含む複数の部位における相対位置を検出部によって検出することで、車室上部と車室下部のそれぞれについて車室−車軸間のクリアランス(第1クリアランス及び第2クリアランス)を推定できる。よって、車室の過渡的な弾性変形又は経年的な塑性変形に起因して車室の鉛直方向のサイズが変化した場合(すなわち、車室が鉛直方向に膨張又は収縮した場合)であっても、制御部による駆動部の制御によって車室−車軸間のクリアランスを適切な範囲内で維持できる。
例えば、車室上部に蒸気導入管が接続された蒸気タービンの起動時において、蒸気導入管を介した高温高圧の蒸気の車室への供給開始直後、車室上部が車室下部に比べて急速に昇温されるため、車室上部の変形に車室下部の変形が追従できず、車室全体としては単純な曲げ変形では表せない複雑な変形を示すことがある。このような複雑な車室変形が起きた場合、車室の鉛直方向のサイズは不明であるから、車室上部又は車室下部の何れか一方における検出対象部位にて相対位置を検出しても、車室上部における車軸とのクリアランスと、車室下部における車軸とのクリアランスとの両方を把握することは難しい。これに対し、上述のように、車室上部に位置する上側部位と車室下部に位置する下側部位を含む複数の部位における相対位置を検出部によって検出すれば、車室上部と車室下部のそれぞれについて車室−車軸間のクリアランス(第1クリアランス及び第2クリアランス)を把握できる。よって、複雑な車室変形によって車室の鉛直方向のサイズが変化した場合であっても、制御部による駆動部の制御によって車室−車軸間のクリアランスを適切な範囲内で維持できる。
一実施形態において、前記制御部は、前記回転機械の起動、負荷変化又は停止を示す外部信号をトリガーとして前記駆動部の制御を開始する。
これにより、車室が過渡的に変形しやすい回転機械の運転状態(起動時、負荷変化時、停止時)において、車軸と車室との間の鉛直方向のクリアランスを適切な範囲内で維持できる。
一実施形態において、前記駆動部は、油圧ジャッキと、該油圧ジャッキへの圧油供給量を調節するアクチュエータとを含み、前記制御部は、前記外部信号の受信時点から、前記回転機械の起動、負荷変化又は停止後に前記車室の形状が安定するまでに要する時間を経過したとき、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方が前記油圧ジャッキの制御開始前の位置に戻るように、前記アクチュエータを制御して前記油圧ジャッキへの圧油供給を停止する。
このように、信頼性がさほど高くない油圧ジャッキの利用を車軸と車室との間のクリアランスの調整の必要性が高い期間(回転機械の起動、負荷変化又は停止の時点から車室形状が安定するまでの期間)に制限することで、回転機械の通常運転時における信頼性を損なわずにクリアランス調整が可能になる。
一実施形態において、前記検出部は、前記検出対象部位の鉛直方向位置を検出する第1センサと、前記車軸の鉛直方向位置を検出する第2センサとを含み、前記第1センサ及び前記第2センサの検出結果から前記相対位置を算出する。
例えば、第1センサは、第1サポートによって車室及び車軸から独立して支持されており、第1センサから検出対象部位までの鉛直方向における距離を検出可能に構成され、第2センサは、第2サポートによって車室及び車軸から独立して支持されており、第2センサから車軸又は車軸を回転自在に支持する軸受の軸受箱までの鉛直方向における距離を検出可能に構成されていてもよい。
なお、第1センサ及び第2センサの具体例として、レーザ変位計、静電容量式変位計、光ファイバ変位計、渦電流式変位計、超音波式変位計、接触式変位計等が挙げられる。
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械のクリアランス調整方法は、車室と、一部が前記車室内に配置される車軸と、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動可能に構成された駆動部とを備える回転機械における前記車室と前記車軸との間の鉛直方向のクリアランスを調整する方法であって、前記車室の上部と下部の一方又は両方における検出対象部位の前記車軸に対する鉛直方向の相対位置を検出する第1のステップと、前記相対位置の検出結果に応じて前記駆動部を制御し、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる第2のステップとを備える。
上記クリアランス調整方法では、車室の上部及び下部の一方又は両方における検出対象部位の相対位置を検出し、検出結果に応じた駆動部の制御により、車室及び車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる。よって、車室の変形による影響を受けやすい車室上部又は車室下部における車軸と車室との間のクリアランスを効果的に調整することができる。
一実施形態において、前記第1のステップでは、前記車軸の軸方向に互いに間隔をおいて位置する複数の前記検出対象部位の前記相対位置を検出し、前記第2のステップでは、各検出対象部位における前記相対位置に基づいて、前記車室と前記車軸との間の鉛直方向のクリアランスの前記軸方向における分布を推定し、該クリアランスが許容範囲内に収まるように前記駆動部を制御する。
このように、車軸の軸方向に互いに間隔を空けて位置する複数の検出対象部位における相対位置を検出することで、車軸の軸方向における車室−車軸間のクリアランスの分布を推定できる。よって、車室の過渡的な弾性変形又は経年的な塑性変形に起因して車室−車軸間のクリアランスが車軸の軸方向において不均一になった場合であっても、駆動部の制御によって車室−車軸間のクリアランスを適切な範囲内で維持できる。
一実施形態において、前記第1のステップでは、前記車室の上部に位置する上側部位及び前記車室の下部に位置する下側部位の両方について前記相対位置を検出し、前記第2のステップでは、前記上側部位及び前記下側部位のそれぞれにおける前記相対位置に基づいて、前記車室の上部における前記車軸との間の鉛直方向の第1クリアランス及び前記車室の下部における前記車軸との間の鉛直方向の第2クリアランスを推定し、前記第1クリアランス及び前記第2クリアランスが許容範囲内に収まるように前記駆動部を制御する。
このように、車室上部に位置する上側部位と車室下部に位置する下側部位を含む複数の部位における相対位置を検出することで、車室上部と車室下部のそれぞれについて車室−車軸間のクリアランス(第1クリアランス及び第2クリアランス)を推定できる。よって、車室の過渡的な弾性変形又は経年的な塑性変形に起因して車室の鉛直方向のサイズが変化した場合であっても、駆動部の制御によって車室−車軸間のクリアランスを適切な範囲内で維持できる。
一実施形態において、前記第2のステップでは、前記回転機械の起動、負荷変化又は停止を示す外部信号により前記駆動部の制御を開始する。
これにより、車室が過渡的に変形しやすい回転機械の運転状態(起動時、負荷変化時、停止時)において、車軸と車室との間の鉛直方向のクリアランスを適切な範囲内で維持できる。
一実施形態において、前記駆動部は、油圧ジャッキと、前記油圧ジャッキへの圧油供給量を調節するアクチュエータとを含み、前記外部信号の受信時点から、前記回転機械の起動、負荷変化又は停止後に前記車室の形状が安定するまでに要する時間を経過したとき、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方が前記油圧ジャッキの制御開始前の位置に戻るように、前記アクチュエータを制御して前記油圧ジャッキへの圧油供給を停止する第3のステップを更に備える。
このように、信頼性がさほど高くない油圧ジャッキの利用を車軸と車室との間のクリアランスの調整の必要性が高い期間(回転機械の起動、負荷変化又は停止の時点から車室形状が安定するまでの期間)に制限することで、回転機械の通常運転時における信頼性を損なわずにクリアランス調整が可能になる。
一実施形態において、前記第1のステップでは、前記検出対象部位の鉛直方向位置を計測する第1センサと、前記車軸の鉛直方向位置を計測する第2センサとを用いて、前記第1センサ及び前記第2センサの計測結果から前記相対位置を取得する。
例えば、第1センサは、第1サポートによって車室及び車軸から独立して支持され、第2センサは、第2サポートによって車室及び車軸から独立して支持されており、検出するステップでは、第1センサから検出対象部位までの鉛直方向における距離を第1センサによって計測し、第2センサから車軸又は車軸を回転自在に支持する軸受の軸受箱までの鉛直方向における距離を第2センサによって計測してもよい。
なお、第1センサや第2センサの具体例として、レーザ変位計、静電容量式変位計、光ファイバ変位計、渦電流式変位計、超音波式変位計、接触式変位計等が挙げられる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、車室の上部と下部の一方又は両方における検出対象部位の車軸に対する鉛直方向の相対位置を検出し、検出結果に応じた駆動部の制御により、車室及び車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動させるようにしたので、車室の変形による影響を受けやすい車室上部又は車室下部における車軸と車室との間の鉛直方向のクリアランスを効果的に調整することができる。
一実施形態に係る回転機械の概略図である。 検出部の第1センサの取付け位置を説明するための図である。 検出部の第2センサの取付け位置を説明するための図である。 一実施形態における駆動部及び制御部の構成を示すブロック図である。 検出部の検出結果に基づいて車室又は車軸の移動量決定の手法を説明するための図である。 一実施形態における、制御部による駆動部の制御のフローチャートである。 一実施形態における回転機械の起動及び通常運転を行う手順を示すフローチャートである。 一実施形態における回転機械の停止手順を示すフローチャートである。 一実施形態における駆動部の構成を示す図である。 一実施形態における検出部の構成を示す図である。 一実施形態における、車室と車軸との間のクリアランスの調整手法を示す図である。
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
図1は、一実施形態に係る回転機械の概略図である。同図に示す回転機械1は、車室2と、車室2内に少なくとも一部が配置された車軸4とを備えた蒸気タービンである。他の実施形態では、回転機械1は、蒸気タービン以外の任意の種類の回転機械(ガスタービンや圧縮機等)であってもよい。
回転機械1において、車室2は、外側に設けられる外部車室2Aと、外部車室2Aによって覆われるように設けられ、外部車室2Aに支持される内部車室2Bとで構成される。車室2には、外部車室2Aに接続された蒸気導入管(不図示)を介して蒸気が導入されるようになっている。蒸気導入管からの蒸気は、図1の矢印で示すように、内部車室2Bの内側に形成された蒸気通路Sを流れる。蒸気通路Sには、不図示の翼根リングを介して内部車室2Bの内周面に取り付けられた静翼3が複数段にわたって配列されている。
なお、図1に示す回転機械1は、外部車室2A及び内部車室2Bからなる二重車室構造であり、且つ、蒸気導入管からの蒸気が左右に分流して内部車室2Bを流れるダブルフロー形式である。他の実施形態では、回転機械1は、一重車室構造であってもよいし、蒸気導入管からの蒸気が蒸気通路内を一方向に流れるシングルフロー形式であってもよい。
一方、車軸4は、ロータシャフト5と、ロータシャフト5の外周に取り付けられた動翼6とで構成される。ロータシャフト5は、外部車室2Aを貫通するように配置され、一対の軸受8によって回転自在に軸支される。各軸受8は軸受箱7に収容されている。ロータシャフト5に取り付けられた複数段の動翼6は、蒸気通路S内において、静翼3と対峙するように配置される。
また、回転機械1には、図1に示すように、車室2(外部車室2A)における少なくとも一つの検出対象部位25の鉛直方向位置を検出する第1センサ24Aと、車軸4又は軸受箱7の鉛直方向位置を検出する第2センサ24Bとが設けられている。これら第1センサ24A及び第2センサ24Bは、後述の検出部24を構成する。
第1センサ24Aは、第1センサ24Aから検出対象部位25までの鉛直方向における距離を検出可能に構成されている。第2センサ24Bは、第2センサ24Bから車軸4又は軸受箱7までの鉛直方向における距離を検出可能に構成されている。この第1センサ24A及び第2センサ24Bとして、例えば、レーザ変位計、静電容量式変位計、光ファイバ変位計、渦電流式変位計、超音波式変位計、接触式変位計等を用いることができる。
図2(a)〜(c)は、第1センサ24Aの取付け位置を説明するための図である。なお、説明の便宜上、図2(a)〜(c)では内部車室2Bを省略している。
図2(a)に示すように、第1センサ24Aは、ロータシャフト5の軸心Cの上方に配置され、車室2及び車軸4から独立して第1サポート26によって支持されている。第1センサ24Aの位置は、ロータシャフト5の軸心Cの直上に限らず、ロータシャフト5の軸心Cから鉛直方向上方に延びる直線に対して線対称である角度範囲α内における検出対象部位25の鉛直方向位置を検出可能な位置であればよい。なお、角度範囲αは、個々の回転機械1の変形の傾向に応じて決定してもよく、例えば90度以下(典型的には60度以下)である。
なお、外部車室2Aは、上半車室40及び下半車室42の半割り構造になっている。上半車室40と下半車室42は、外部車室2Aの両側部に位置する水平継ぎ手部44において、それぞれのフランジ41,43がボルト締結される。そのため、外部車室2Aの水平方向における変形は厚肉のフランジ41,43からなる水平継ぎ手部44で抑制され、相対的に外部車室2Aの鉛直方向の変形が起こりやすい傾向にある。また、外部車室2Aに接続された蒸気導入管は、厚肉のフランジ41,43を避けた車室鉛直方向に設置されることが多く、このため、車室2の上部と下部とで温度差が生じ、相対的に外部車室2Aの鉛直方向の変形が起こりやすくなる。
他の実施形態では、図2(b)に示すように、第1センサ24Aは、ロータシャフト5の軸心Cの下方に配置され、車室2及び車軸4から独立して第1サポート27によって支持されている。第1センサ24Aの位置は、ロータシャフト5の軸心Cの真下に限らず、ロータシャフト5の軸心Cから鉛直方向下方に延びる直線に対して線対称である角度範囲β内における検出対象部位25の鉛直方向位置を検出可能な位置であればよい。なお、角度範囲βは、個々の回転機械1の変形の傾向に応じて決定してもよく、例えば90度以下(典型的には60度以下)である。
他の実施形態では、図2(c)に示すように、第1センサ24Aが、ロータシャフト5の軸心Cの上方及び下方において、車室2及び車軸4から独立して第1サポート26,27によって支持される。各第1センサ24Aの位置は、ロータシャフト5の軸心Cから鉛直方向に延びる直線に対して線対称である角度範囲α,β内における検出対象部位25の鉛直方向位置を検出可能な位置であればよい。この際、角度範囲α,βは、それぞれ、個々の回転機械1の変形の傾向に応じて決定してもよく、例えば90度以下(典型的には60度以下)である。
図3は、第2センサ24Bの取付け位置を説明するための図である。なお、図3では、説明の便宜上、軸受箱7内に収容される軸受8、油圧ジャッキ22及び基礎9を省略している。
同図に示すように、少なくとも一つの第2センサ24Bが、軸受箱7の上方に配置され、車室2及び車軸4から独立して第2サポート28によって支持されている。ロータシャフト5は、軸受8によって軸受箱7に対して位置が規制されている。よって、第2センサ24Bにより軸受箱7の鉛直方向位置の計測結果が得られれば、ロータシャフト5(車軸4)の鉛直方向位置を特定することができる。
なお、軸受箱7の鉛直方向位置の計測結果から間接的に車軸4の鉛直方向位置を検出する手法に替えて、第2センサ24Bによって車軸4の鉛直方向位置を直接的に検出してもよい。
また、図1に示すように、車室2の外部車室2Aは、油圧ジャッキ12を介して基礎9上に設置される。同様に、車軸4を軸支する一対の軸受8の軸受箱7は、それぞれ、油圧ジャッキ22を介して基礎9上に設置される。油圧ジャッキ12,22は、後述の駆動部10(図4参照)の一部を構成している。駆動部10は、第1センサ24A及び第2センサ24Bを含む検出部24の検出結果に基づいて制御部30によって制御される。
図4は、駆動部10及び制御部30の構成を示すブロック図である。
駆動部10は、油圧ジャッキ12,22に加えて、圧油供給源(油圧ポンプ)14から油圧ジャッキ12,22への圧油供給量を調節するアクチュエータ16を含む。アクチュエータ16と油圧ジャッキ12,22との間の油圧回路を流れる圧油の圧力は、圧力センサ18によって計測されるようになっている。圧力センサ18の計測結果は、制御部30に送られる。
幾つかの実施形態において、制御部30は、駆動部10の制御の要否を判断する制御要否判断部32と、車室2又は車軸4の鉛直方向の移動量を決定する移動量決定部34と、圧力センサ18の計測結果に基づいて駆動部10のアクチュエータ16に油圧ジャッキ12,22への圧油供給量を調節させる指令部36とを備える。
制御要否判断部32は、回転機械1の起動、負荷変化又は停止を示す外部信号を受信し、この外部信号に基づいて駆動部10の制御の要否を判断する。外部信号は、回転機械1の運転制御を行うプラント制御室から出力された起動信号、負荷変化信号又は停止信号であってもよい。制御要否判断部32は、受信した外部信号をトリガーとして制御部30による駆動部10の制御が必要であると判断し、制御部30による駆動部10の制御を開始すべく、移動量決定部34にその旨を伝える。
移動量決定部34は、制御部30による駆動部10の制御が必要であると制御要否判断部32が判断した場合、車室2(外部車室2A)及び車軸4の少なくとも一方の鉛直方向における移動量を決定する。この際、第1センサ24A及び第2センサ24Bを含む検出部24の検出結果が考慮される。すなわち、移動量決定部34は、検出部24の検出結果に基づいて、内部車室2Bと車軸4との間のクリアランスを所望の範囲内に維持するために、外部車室2A及び車軸4の少なくとも一方の鉛直方向における移動量を決定する。なお、移動量は、個々の回転機械1の仕様によって決まる移動可能範囲(例えば数mm以下)内で設定される。
移動量決定部34は、個々の回転機械1の車室変形の傾向を示すデータが予め記憶されたデータベース38からデータを読み出し、これを検出部24の検出結果とともに考慮して、車室2及び車軸4の少なくとも一方の鉛直方向における移動量を決定する。
データベース38に予め記憶されたデータは、第1センサ24A及び第2センサ24Bの検出結果と、これに対応する車室2(外部車室2A及び内部車室2B)の形状との相関データであってもよい。この場合、移動量決定部34は、第1センサ24A及び第2センサ24Bの検出結果をデータベース38から読み出した相関データに当てはめることで、車室2(外部車室2A及び内部車室2B)の形状を把握する。このようにして把握された車室形状から、移動量決定部34は、内部車室2Bと車軸4の間のクリアランスを推定し、このクリアランスが所望の範囲内に収まるように外部車室2A及び車軸4の少なくとも一方の鉛直方向における移動量を決定してもよい。
移動量決定部34によって決定された移動量は指令部36に送られ、アクチュエータ16の制御に用いられる。指令部36は、移動量決定部34によって決定された移動量を実現すべく、油圧ジャッキ12,22への圧油供給量をアクチュエータ16に調節させる。この際、指令部36がアクチュエータ16に与える指令値は、アクチュエータ16と油圧ジャッキ12,22との間の油圧回路における圧油の圧力(圧力センサ18の計測結果)に基づいて決定される。すなわち、指令部36は、移動量決定部34によって決定された移動量が実現されるように、圧力センサ18の計測結果に基づいて、油圧ジャッキ12,22に供給される圧油の圧力を制御する。例えば、指令部36は、移動量決定部34によって決定された移動量を実現するための圧油の圧力と、圧力センサ18によって得られた圧油の圧力の計測値との偏差に基づくフィードバック制御を行ってもよい。
油圧ジャッキ12,22は、アクチュエータ16により調節された圧油供給量に応じて、車室2(外部車室2A)又は車軸4を鉛直方向に移動する。これにより、内部車室2Bと車軸4との間のクリアランスが所望の範囲内に維持される。
制御部30は、油圧ジャッキ12,22の利用を、車室2と車軸4との間のクリアランスの調整の必要性が高い期間(回転機械1の起動、負荷変化又は停止の時点から車室形状が安定するまでの期間)に制限する。
例えば、制御要否判断部32は、外部信号の受信時点から、回転機械1の起動、負荷変化又は停止後に車室2の形状が安定するまでに要する時間を経過したとき、それ以降は制御部30による駆動部10の制御が不要であると判断する。そして、制御要否判断部32は、車室2又は車軸4を駆動部10の制御開始前の位置に戻したうえで制御部30による駆動部10の制御を停止すべく、移動量決定部34にその旨を伝える。移動量決定部34は、制御要否判断部32からの判断に基づき、その時点までに油圧ジャッキ12,22が車室2又は車軸4を持ち上げた分だけ、車室2又は車軸4を下方に移動させるように指令部36に指示を送る。この指示に従って、指令部36は、アクチュエータ16に油圧ジャッキ12,22への圧油の供給を停止させる。このようにして、車室2又は車軸4は駆動部10の制御開始前の位置に戻り、且つ、制御部30による駆動部10の制御は停止される。
図5(a)〜(c)は、検出部24の検出結果に基づいて車室2又は車軸4の移動量決定の手法を説明するための図である。
図5(a)に示すように、外部車室2Aが上方に凸形状になるように全体的に湾曲変形した場合、内部車室2Bは外部車室2Aによって持ち上げられる。その結果、内部車室2B及びこれに取り付けられた静翼3と車軸4との鉛直方向のクリアランスは、車室上部において広がり、車室下部において狭まる。そこで、移動量決定部34は、検出部24の検出結果に基づいて車軸4の鉛直方向上方への移動量を決定する。こうして決定された移動量は指令部36に送られ、アクチュエータ16の制御に用いられる。そして、アクチュエータ16によって油圧ジャッキ22への圧油供給量が調節され、油圧ジャッキ22によって車軸4が鉛直方向上方に移動せしめられる(図中の矢印参照)。
なお、図5(a)に示す実施形態では、車軸4の軸方向に互いに間隔を空けて位置する複数の検出対象部位25−i(i=1,…m;ただし、mは2以上の整数。)において、検出部24によって、車軸4に対する外部車室2Aの鉛直方向の相対位置の検出が行われる。これにより、車軸4の軸方向における内部車室2Aと車軸4との間のクリアランスの分布を推定できる。よって、内部車室2Aの過渡的な弾性変形又は経年的な塑性変形に起因して内部車室2B−車軸4間のクリアランスが車軸4の軸方向において不均一になった場合であっても、制御部30による駆動部10の制御によって内部車室2B−車軸4間のクリアランスを所望の範囲内に維持できる。
図5(b)に示すように、外部車室2Aが下方に凸形状になるように全体的に湾曲変形した場合、内部車室2Bは外部車室2Aによって下方に引き下げられる。その結果、内部車室2B及びこれに取り付けられた静翼3と車軸4との鉛直方向のクリアランスは、車室上部において狭まり、車室下部において広がる。そこで、移動量決定部34は、検出部24の検出結果に基づいて外部車室2Aの鉛直方向上方への移動量を決定する。こうして決定された移動量は指令部36に送られ、アクチュエータ16の制御に用いられる。そして、アクチュエータ16によって油圧ジャッキ12への圧油供給量が調節され、油圧ジャッキ12によって外部車室2Aが鉛直方向上方に移動せしめられる(図中の矢印参照)。
また、図5(b)に示す実施形態では、図5(a)を用いて説明した実施形態と同様な理由で、車軸4の軸方向に互いに間隔を空けて位置する複数の検出対象部位25−i(i=1,…m;ただし、mは2以上の整数。)において、検出部24によって、車軸4に対する外部車室2Aの鉛直方向の相対位置の検出が行われる。
図5(c)に示すように、上方に凸形状となるような上半車室40の変形に下半車室42が追従できず、外部車室2Aが全体として複雑に変形した場合、内部車室2Bは上半車室40によって持ち上げられ、内部車室2B及びこれに取り付けられた静翼3と車軸4との鉛直方向のクリアランスは、車室上部において広がり、車室下部において狭まると考えられる。ところが、このような複雑な車室変形が起きた場合、外部車室2Aの鉛直方向のサイズは不明であるから、車室上部又は車室下部の何れか一方における検出対象部位にて前記相対位置を検出しても、上半車室40と車軸4とのクリアランスと、下半車室42と車軸4とのクリアランスとの両方を定量的に把握することは難しい。
そこで、図5(c)に示す実施形態では、上半車室40に位置する上側部位25A−i(i=1,…m;ただし、mは1以上の整数。)と下半車室42に位置する下側部位25B−j(j=1,…n;ただし、nは1以上の整数。)を含む複数の検出対象部位25において、検出部24によって、車軸4に対する外部車室2Aの鉛直方向の相対位置の検出を行うようになっている。これにより、内部車室2Bの上部と車軸4との間の第1クリアランスと、内部車室2Bの下部と車軸4との間の第2クリアランスとの両方を把握できる。よって、複雑な車室変形によって車室2の鉛直方向のサイズが変化した場合であっても、制御部30による駆動部10の制御によって内部車室2B−車軸4間のクリアランスを所望の範囲内に維持できる。なお、同図には、内部車室2Bの下部と車軸4との間の第2クリアランスが過小であるため、制御部30による駆動部10の制御により油圧ジャッキ22を用いて車軸4を鉛直方向上方に移動させる様子を示している(図中の矢印参照)。
図6は、制御部30による駆動部10の制御のフローチャートである。
最初に、制御要否判断部32は、回転機械1の起動、負荷変化又は停止を示す外部信号の受信があったか否かを判断する(ステップS2)。制御要否判断部32による外部信号の受信があった場合(ステップS2のYES判定)、制御要否判断部32は、外部信号をトリガーとして制御部30による駆動部10の制御が必要であると判断し、制御部30による駆動部10の制御を開始すべく、移動量決定部34にその旨を伝える。一方、制御要否判断部32による外部信号の受信がない場合(ステップS2のNO判定)、引き続き、制御要否判断部32において外部信号の受信の有無を判断する。
ステップS4では、第1センサ24A及び第2センサ24Bを含む検出部24により、検出対象部位25における車室2の車軸4に対する鉛直方向の相対変位が検出される。そして、移動量決定部34において、車室2と車軸4との間のクリアランスが許容範囲内であるか否かが判断される(ステップS6)。
車室2と車軸4との間のクリアランスが許容範囲から逸脱している場合(ステップS6のNO判定)、ステップS8に進んで、移動量決定部34が検出部24の検出結果に基づいて車室2及び車軸4の少なくとも一方の鉛直方向における移動量を決定する。そして、指令部36は、移動量決定部34の指示に従って、車室2及び車軸4の少なくとも一方の移動量が実現されるようにアクチュエータ16に油圧ジャッキ12,22への圧油供給量を調節させる(ステップS10)。
なお、車室2と車軸4との間のクリアランスが許容範囲内である場合(ステップS6のYES判定)、ステップS8及びS10は省略して、ステップS12に進む。
ステップS12では、制御要否判断部32が、外部信号の受信時点から所定時間(回転機械1の起動、負荷変化又は停止後に車室2の形状が安定するまでに要する時間)を経過したか否かを判断する。
外部信号の受信時点から所定時間を経過した場合(ステップS12のYES判定)、制御要否判断部32は、それ以降の制御部30による駆動部10の制御が不要であると判断する。そして、制御要否判断部32は、車室2又は車軸4を駆動部10の制御開始前の位置に戻したうえで制御部30による駆動部10の制御を停止すべく、移動量決定部34にその旨を伝える。移動量決定部34は、制御要否判断部32からの報告に基づき、それまでに油圧ジャッキ12,22が車室2又は車軸4を持ち上げた分だけ、車室2又は車軸4を下方に移動させるように指令部36に指示を送る。この指示に従って、指令部36は、アクチュエータ16に油圧ジャッキ12,22への圧油の供給を停止させる(ステップS14)。
なお、外部信号の受信時点から所定時間を経過していない場合(ステップS12のNO判定)、ステップS4に戻って、検出部24によって、検出対象部位25における車室2の車軸4に対する鉛直方向の相対変位を検出する。
図7は、制御部30による駆動部10の上述の制御を伴う回転機械1の起動及び通常運転を行う手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS20において、“リセット”と称される回転機械1の起動準備作業(例えば、操作系統や保安装置の動作確認)を行う。その後、プラント制御室からの起動信号に従って、回転機械1の起動を開始する(ステップS22)。この際、車室2が過渡的に変形しうるから、起動信号をトリガーとして制御部30による駆動部10の制御を開始し、車室2と車軸4との間のクリアランス調整を行う(ステップS24)。そして、制御部30は、起動信号の受信時点から所定時間(回転機械1の起動開始後に車室2の形状が安定するまでに要する時間)を経過したか否かを判断する(ステップS26)。起動信号の受信時点から所定時間を経過した場合(ステップS26のYES判定)、ステップS28に進んで、制御部30はアクチュエータ16に油圧ジャッキ12,22への圧油の供給を停止させる。一方、起動信号の受信時点から所定時間を経過していない場合(ステップS26のNO判定)、ステップS24に戻って、制御部30が駆動部10を制御して、車室2と車軸4との間のクリアランス調整を引き続き行う。
ステップS28にて油圧ジャッキ12,22への圧油供給を停止した後、回転機械1の通常運転が行われる(ステップS30)。負荷変動信号がプラント制御室から入力されると、回転機械1の負荷変化が開始される(ステップS32)。この際、車室2が過渡的に変形しうるから、負荷変化信号をトリガーとして制御部30による駆動部10の制御を開始し、車室2と車軸4との間のクリアランス調整を行う(ステップS34)。そして、制御部30は、負荷変化信号の受信時点から所定時間(回転機械1の負荷変化開始後に車室2の形状が安定するまでに要する時間)を経過したか否かを判断する(ステップS36)。負荷変化信号の受信時点から所定時間を経過した場合(ステップS36のYES判定)、ステップS38に進んで、制御部30はアクチュエータ16に油圧ジャッキ12,22への圧油の供給を停止させる。一方、負荷変化信号の受信時点から所定時間を経過していない場合(ステップS36のNO判定)、ステップS34に戻って、制御部30が駆動部10を制御して、車室2と車軸4との間のクリアランス調整を引き続き行う。
図8は、制御部30による駆動部10の上述の制御を伴う回転機械1の停止を行う手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS40において、停止信号がプラント制御室から受信されると、運転を行っていた回転機械1の停止操作を開始する。この際、車室2が過渡的に変形しうるから、停止信号をトリガーとして制御部30による駆動部10の制御を開始し、車室2と車軸4との間のクリアランス調整を行う(ステップS42)。そして、制御部30は、停止信号の受信時点から所定時間を経過したか否かを判断する(ステップS44)。ステップS44における“所定時間”は、回転機械1の停止操作開始後に車室2の形状が安定するまでに要する時間であり、回転機械1のロータターニングが実施される時間以上に設定される。ここで、回転機械1のロータターニングとは、車軸4の湾曲を防止する観点から、回転機械1の停止から車軸4が自然冷却されるまでの期間(典型的には5〜10時間)、車軸4を数rpmで連続的に回転させることをいう。
停止信号の受信時点から所定時間を経過した場合(ステップS44のYES判定)、ステップS38に進んで、制御部30はアクチュエータ16に油圧ジャッキ12,22への圧油の供給を停止させる。一方、停止信号の受信時点から所定時間を経過していない場合(ステップS44のNO判定)、ステップS42に戻り、制御部30が駆動部10を制御して、車室2と車軸4との間のクリアランス調整を引き続き行う。
以上説明したように、本発明の少なくとも一実施形態では、回転機械1は、車室2と、一部が車室2内に配置される車軸4と、車室2の上部と下部の一方又は両方における検出対象部位25の車軸4に対する鉛直方向の相対位置を検出する検出部24と、車室2及び車軸4の少なくとも一方を鉛直方向に移動させるための駆動部10と、検出部24の検出結果に応じて駆動部10を制御する制御部30とを備える。
そのため、車室2の変形による影響を受けやすい車室2の上部や下部における車軸4と車室2との間の鉛直方向のクリアランスを効果的に調整することができる。
したがって、本発明の上述の実施形態では、車室2と車軸4との間のクリアランスを所望の範囲内に調整して、車室2と車軸4との接触を防止できる。その結果、回転機械1の運転中における軸振動を防止しながら、回転機械1の性能を向上することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、油圧ジャッキ12,22を含む駆動部10を用いたが、車室2又は車軸4を鉛直方向に移動可能であれば駆動部10の具体的構成は限定されず、油圧ジャッキに替えて電動シリンダや空圧シリンダ等の任意の機器を含む駆動部を採用してもよい。
また、図9に示すように、車軸4のロータシャフト5を軸支する軸受8の複数のパッド8A〜8Dの背面側に油圧ジャッキ52A〜52Dを設け、この油圧ジャッキ52A〜52Dへの圧油供給量を調節するアクチュエータを制御部30(指令部36)で制御してもよい。この場合、油圧ジャッキ52A〜52Dによって各パッド8A〜8Dを動かすことで、上下方向(鉛直方向)を含む全方位に車軸4を移動させることができる。そのため、車室2を鉛直方向に持ち上げるための油圧ジャッキ12は不要になる。
また、上述の実施形態では、第1センサ24Aが検出対象部位25までの鉛直方向における距離を検出可能に構成され、第2センサ24Bが車軸4又は軸受8の軸受箱7までの鉛直方向における距離を検出可能に構成されている(図1参照)。すなわち、上述の実施形態における検出部24は、それぞれ、第1サポート26,27や第2サポート28によるセンサ取付位置を基準として、第1センサ24A及び第2センサ24Bから計測対象(検出対象部位25及び車軸4又は軸受箱7)までの距離を計測し、これらの計測値から、検出対象部位25における車室2の車軸4に対する鉛直方向の相対位置を検出するようになっている。
しかし、検出部24の具体的構成は、車室2の上部と下部の少なくとも一方における少なくとも一つの検出対象部位25の車軸4に対する鉛直方向の相対位置を検出可能であれば特に限定されない。
例えば図10に示すように、第1センサ24A及び第2センサ24Bとして計測対象の絶対的な高さを計測可能なセンサを用い、第1センサ24A及び第2センサ24Bを、それぞれ、車室2(外部車室2A)と軸受箱7に直接取り付けてもよい。この場合、第1センサ24Aによって得られた車室2(外部車室2A)の絶対高さ、及び、第2センサ24Bによって得られた軸受箱7の絶対高さから、検出対象部位25における車室2の車軸4に対する鉛直方向の相対位置が検出される。
また、上述の実施形態では、駆動部10によって車室2又は車軸4を単純に鉛直方向に移動させるようになっていたが、車室2と車軸4との間のクリアランスの軸方向における分布によっては、車室2又は車軸4を鉛直方向に移動させることに加えて、車室2又は車軸4の傾きを調節してもよい。
例えば、図11に示すように、車室2内を流体が一方向に流れるシングルフロー形式の回転機械1の場合、ダブルフロー形式とは異なり車室2が対称形状ではないから、車室2の変形によって車室2と車軸4との間のクリアランスは車軸4の軸方向に沿って非対称の分布を有する。そこで、車室2及び車軸4の少なくとも一方を駆動部10によって鉛直方向に移動させる際、車室2と車軸4との間のクリアランスが車軸4の軸方向位置によらず許容範囲内に収まるように、車室2又は車軸4の傾きを調節してもよい。図11に示す実施形態では、流体流れの下流側(図中右側)において、車室2と車軸4との間のクリアランスの所望の範囲からの逸脱が顕著であるため、流体流れの下流側における駆動部10による車軸4の持ち上げ量を流体流れの上流側における持ち上げ量よりも大きく設定している。これにより、車室2と車軸4との間のクリアランスを車軸4の軸方向位置によらず許容範囲内に収めることができる。
また、上述の実施形態において、制御要否判断部32において、回転機械1の起動、負荷変化又は停止を示す外部信号に基づいて制御部30による駆動部10の制御の要否が判断される。しかし、制御部30による駆動部10の制御は、車室2と車軸4との間のクリアランス調整を要する状況下であれば、回転機械1の状態によらず何時でも行うことができる。
例えば、回転機械1の経年的な塑性変形によって開放点検後の回転機械1の再組立てが困難である場合において、制御部30による駆動部10の制御を行えば、多大な時間を要する車室と基礎との間へのシム挿入作業を行わずに、車室2と車軸4との間のクリアランスを短時間で調整できる。よって、回転機械1の開放点検の期間短縮につながる。
さらに、上述の実施形態における駆動部10及び制御部30は、既設の回転機械の改造工事によって追設されてもよい。駆動部10及び制御部30を追設する簡単な改造工事によって、既設の回転機械においても、車室2と車軸4との間のクリアランスの効果的な調整が可能になる。
1 回転機械
2 車室
2A 外部車室
2B 内部車室
3 静翼
4 車軸
5 ロータシャフト
6 動翼
7 軸受箱
8 軸受
8A〜8D パッド
9 基礎
10 駆動部
12 油圧ジャッキ
14 圧油供給源
16 アクチュエータ
18 圧力センサ
22 油圧ジャッキ
24 検出部
24A 第1センサ
24B 第2センサ
25 検出対象部位
26,27 第1サポート
28 第2サポート
30 制御部
32 制御要否判断部
34 移動量決定部
36 指令部
38 データベース
40 上半車室
41 フランジ
42 下半車室
43 フランジ
44 水平継ぎ手部

Claims (16)

  1. 車室と、
    一部が前記車室内に配置される車軸と、
    前記車室の上部と下部の一方又は両方における検出対象部位の前記車軸に対する鉛直方向の相対位置を検出する検出部と、
    前記車室及び前記車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動させるための駆動部と、
    前記検出部の検出結果に応じて前記駆動部を制御する制御部とを備えることを特徴とする回転機械。
  2. 前記検出対象部位は、前記車軸の軸方向に互いに間隔をおいて位置し、前記検出部によってそれぞれ前記相対位置が検出される複数の部位を含み、
    前記制御部は、各部位における前記相対位置に基づいて、前記車室と前記車軸との間の鉛直方向のクリアランスの前記軸方向における分布を推定し、前記クリアランスが許容範囲内に収まるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
  3. 前記検出対象部位は、前記車室の上部に位置する上側部位と、前記車室の下部に位置する下側部位とを含み、
    前記検出部は、前記上側部位及び前記下側部位の両方について前記相対位置を検出し、
    前記制御部は、前記上側部位及び前記下側部位のそれぞれにおける前記相対位置に基づいて、前記車室の上部における前記車軸との間の鉛直方向の第1クリアランス及び前記車室の下部における前記車軸との間の鉛直方向の第2クリアランスを推定し、前記第1クリアランス及び前記第2クリアランスが許容範囲内に収まるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機械。
  4. 前記制御部は、前記回転機械の起動、負荷変化又は停止を示す外部信号により前記駆動部の制御を開始することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の回転機械。
  5. 前記駆動部は、油圧ジャッキと、該油圧ジャッキへの圧油供給量を調節するアクチュエータとを含み、
    前記制御部は、前記外部信号の受信時点から、前記回転機械の起動、負荷変化又は停止後に前記車室の形状が安定するまでに要する時間を経過したとき、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方が前記油圧ジャッキの制御開始前の位置に戻るように、前記アクチュエータを制御して前記油圧ジャッキへの圧油供給を停止することを特徴とする請求項4に記載の回転機械。
  6. 前記検出部は、前記検出対象部位の鉛直方向位置を検出する第1センサと、前記車軸の鉛直方向位置を検出する第2センサとを含み、前記第1センサ及び前記第2センサの検出結果から前記相対位置を算出することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の回転機械。
  7. 前記第1センサは、第1サポートによって前記車室及び前記車軸から独立して支持されており、前記第1センサから前記検出対象部位までの鉛直方向における距離を検出可能に構成され、
    前記第2センサは、第2サポートによって前記車室及び前記車軸から独立して支持されており、前記第2センサから前記車軸又は前記車軸を回転自在に支持する軸受の軸受箱までの鉛直方向における距離を検出可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の回転機械。
  8. 前記第1センサ及び前記第2センサの少なくとも一方は、レーザ変位計、静電容量式変位計、光ファイバ変位計、渦電流式変位計、超音波式変位計及び接触式変位計の何れか一つであることを特徴とする請求項6又は7に記載の回転機械。
  9. 車室と、前記車室内に配置される車軸と、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動可能に構成された駆動部とを備える回転機械における前記車室と前記車軸との間の鉛直方向のクリアランスを調整する方法であって、
    前記車室の上部と下部の一方又は両方における検出対象部位の前記車軸に対する鉛直方向の相対位置を検出する第1のステップと、
    前記相対位置の検出結果に応じて前記駆動部を制御し、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる第2のステップとを備えることを特徴とする回転機械のクリアランス調整方法。
  10. 前記第1のステップでは、前記車軸の軸方向に互いに間隔をおいて位置する複数の前記検出対象部位の前記相対位置を検出し、
    前記第2のステップでは、各検出対象部位における前記相対位置に基づいて、前記車室と前記車軸との間の鉛直方向のクリアランスの前記軸方向における分布を推定し、該クリアランスが許容範囲内に収まるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項9に記載の回転機械のクリアランス調整方法。
  11. 前記第1のステップでは、前記車室の上部に位置する上側部位及び前記車室の下部に位置する下側部位の両方について前記相対位置を検出し、
    前記第2のステップでは、前記上側部位及び前記下側部位のそれぞれにおける前記相対位置に基づいて、前記車室の上部における前記車軸との間の鉛直方向の第1クリアランス及び前記車室の下部における前記車軸との間の鉛直方向の第2クリアランスを推定し、前記第1クリアランス及び前記第2クリアランスが許容範囲内に収まるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項9又は10に記載の回転機械のクリアランス調整方法。
  12. 前記第2のステップでは、前記回転機械の起動、負荷変化又は停止を示す外部信号により前記駆動部の制御を開始することを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の回転機械のクリアランス調整方法。
  13. 前記駆動部は、油圧ジャッキと、前記油圧ジャッキへの圧油供給量を調節するアクチュエータとを含み、
    前記外部信号の受信時点から、前記回転機械の起動、負荷変化又は停止後に前記車室の形状が安定するまでに要する時間を経過したとき、前記車室及び前記車軸の少なくとも一方が前記油圧ジャッキの制御開始前の位置に戻るように、前記アクチュエータを制御して前記油圧ジャッキへの圧油供給を停止する第3のステップを更に備えることを特徴とする請求項12に記載の回転機械のクリアランス調整方法。
  14. 前記第1のステップでは、前記検出対象部位の鉛直方向位置を計測する第1センサと、前記車軸の鉛直方向位置を計測する第2センサとを用いて、前記第1センサ及び前記第2センサの計測結果から前記相対位置を取得することを特徴とする請求項9乃至13の何れか一項に記載の回転機械のクリアランス調整方法。
  15. 前記第1センサは、第1サポートによって前記車室及び前記車軸から独立して支持され、前記第2センサは、第2サポートによって前記車室及び前記車軸から独立して支持されており、
    前記第1のステップでは、前記第1センサから前記検出対象部位までの鉛直方向における距離を前記第1センサによって計測し、前記第2センサから前記車軸又は前記車軸を回転自在に支持する軸受の軸受箱までの鉛直方向における距離を前記第2センサによって計測することを特徴とする請求項14に記載の回転機械のクリアランス調整方法。
  16. 前記第1センサ及び前記第2センサの少なくとも一方は、レーザ変位計、静電容量式変位計、光ファイバ変位計、渦電流式変位計、超音波式変位計及び接触式変位計の何れか一つであることを特徴とする請求項14又は15に記載の回転機械のクリアランス調整方法。
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