JP2014035072A - 摩擦係合要素の製造方法、及び、摩擦係合要素 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分な耐久性及び補油性を維持して摺動時の摩擦係数を安定化させることができる摩擦係合要素の製造方法を提供する。
【解決手段】ガス軟窒化処理によってドリブンプレート15の表面15aをポーラス層で形成することにより、十分な量の作動油を補油させる。この場合において、ポーラス層の形成は複数回のガス軟窒化処理によって行うことにより、十分な硬さ及び膜厚を有するポーラス層をドリブンプレート15の表層に形成し、摩耗等の経年変化にも対応してドリブンプレート15の表面15aの十分な耐久性を確保する。加えて、ドリブンプレート15の表面15aに対し、ショットブラスト等を用いた凹凸加工処理を行い、断面曲線の算術平均高さが所定範囲の凹凸を形成することにより、ドリブンプレート15の表面15aにおける更なる補油性の向上を図る。
【選択図】図3

Description

本発明は、湿式多板式のクラッチやブレーキ等の摩擦係合装置に用いられる摩擦係合要素の製造方法、及び、摩擦係合要素に関する。
従来、例えば、車載の自動変速機や自動変速機からの駆動力を前後輪に伝達するトランスファ等には、湿式多板式のクラッチやブレーキ等の摩擦係合装置が用いられている。この種の摩擦係合装置は、一般に、摩擦係合要素(摩擦板)として複数のドライブプレートとドリブンプレートとを備え、これらドライブプレートとドリブンプレートとが交互に配設されて要部が構成されている。
このような摩擦係合装置では、耐摩耗性の向上等を目的として、摩擦係合要素の表面を改質するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、クラッチプレートの摺接面に、窒化処理、又は、焼き入れ焼き戻し処理を施した後、さらに、ダイヤモンド状炭素薄膜を施す技術が開示されている。
一方、この種の摩擦係合装置を4輪駆動車のトランスファに用いる場合において、ジャダーやタイトコーナブレーキング現象等の発生を防止するためには、差動時における摩擦係合要素間の摩擦係数(μ値)を安定化させることが重要となる。μ値を安定化させるための対策として、例えば、窒化処理によって形成されるポーラス層を補油層として利用し、摺動時の摩擦係合要素間に油膜を保持させることが考えられる。この場合、摩耗等の経年変化にも対応して補油性を維持するため、ポーラス層の膜厚を所定以上の厚さに形成することが好ましい。
特開2006−250364号公報
しかしながら、ポーラス層の膜厚は、窒化処理時間等を長く設定することで厚く形成することが可能であるものの、その背反として、ポーラス層の硬度の低下や空孔の不均一化等による耐久性の低下を招く虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、十分な耐久性及び補油性を維持して摺動時の摩擦係数を安定化させることができる摩擦係合要素の製造方法、及び、摩擦係合要素を提供することを目的とする。
本発明の一態様による摩擦係合要素の製造方法は、湿式の摩擦係合装置に用いられる摩擦係合要素の製造方法であって、前記摩擦係合要素の金属表面に凹凸面を形成するための凹凸加工処理を行う手順と、前記凹凸加工処理後の前記摩擦係合要素に窒化処理を複数回行う手順と、を備えたものである。
また、本発明の一態様による摩擦係合要素は、湿式の摩擦係合装置に用いられる摩擦係合要素であって、金属表面に凹凸面を形成するための凹凸加工処理と、前記凹凸加工処理後に複数回行う窒化処理によって、表面の断面曲線の算術平均高さが3.0〜5.0μmの範囲内であり、且つ、硬さが500HV以上であって、膜厚が25〜60μmの範囲内のポーラス層を表層に形成したものである。
本発明によれば、十分な耐久性及び補油性を維持して摺動時の摩擦係数を安定化させることができる。
車載のトランスファを示す要部断面図 ドライブプレートとドリブンプレートとを示す分解斜視図 ドリブンプレートの表面処理手順を示すフローチャート (a)は#30のアルミナ粒を用いたショットブラストによって凹凸加工処理したドリブンプレートの表面を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面を示す立体図であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面の断面形状を示す図表 (a)は#30のセラミックスビーズを用いたショットブラストによって凹凸加工処理したドリブンプレートの表面を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面を示す立体図であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面の断面形状を示す図表 (a)は#320のアルミナ粒を用いたショットブラストによって凹凸加工処理したドリブンプレートの表面を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面を示す立体図であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面の断面形状を示す図表 (a)は#230のアルミナ粒を用いたショットブラストによって凹凸加工処理したドリブンプレートの表面を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面を示す立体図であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面の断面形状を示す図表 (a)は570℃の温度で3時間のガス軟窒化処理を3回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真 (a)は520℃の温度で3時間のガス軟窒化処理を3回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真 (a)は620℃の温度で3時間のガス軟窒化処理を3回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真 (a)は570℃の温度で6時間のガス軟窒化処理を2回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真 (a)は570℃の温度で3時間のガス軟窒化処理を4回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は車載のトランスファを示す要部断面図、図2はドライブプレートとドリブンプレートとを示す分解斜視図、図3はドリブンプレートの表面処理手順を示すフローチャート、図4(a)は#30のアルミナ粒を用いたショットブラストによって凹凸加工処理したドリブンプレートの表面を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面を示す立体図であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面の断面形状を示す図表、図5(a)は#30のセラミックスビーズを用いたショットブラストによって凹凸加工処理したドリブンプレートの表面を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面を示す立体図であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面の断面形状を示す図表、図6(a)は#320のアルミナ粒を用いたショットブラストによって凹凸加工処理したドリブンプレートの表面を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面を示す立体図であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面の断面形状を示す図表、図7(a)は#230のアルミナ粒を用いたショットブラストによって凹凸加工処理したドリブンプレートの表面を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面を示す立体図であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表面の断面形状を示す図表、図8(a)は570℃の温度で3時間のガス軟窒化処理を3回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真、図9(a)は520℃の温度で3時間のガス軟窒化処理を3回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真、図10(a)は620℃の温度で3時間のガス軟窒化処理を3回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真、図11(a)は570℃の温度で6時間のガス軟窒化処理を2回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真、図12(a)は570℃の温度で3時間のガス軟窒化処理を4回行ったときのドリブンプレートのポーラス層を示す電子顕微鏡写真であって(b)は同条件によって処理したドリブンプレートの硬化層深さを示す図表であって(c)は同条件によって処理したドリブンプレートの表層部の組織を示す電子顕微鏡写真であって(d)は同条件によって処理したドリブンプレートの中心部の組織を示す電子顕微鏡写真である。
図1において符号1は、例えば、フロントエンジン・フロントドライブ車ベース(FFベース)の4輪駆動車に採用されるトランスファを示す。このトランスファ1には、図示しない自動変速装置からの駆動力がトランスミッション出力軸5を介して伝達される。このトランスファ1に伝達された駆動力は、リヤドライブ軸6を介して後輪終減速装置(図示せず)に伝達されるとともに、リダクションドライブギヤ7を介して前輪終減速装置(図示せず)に伝達される。
トランスファ1は、自動変速装置に連設するトランスファケース2を有し、このトランスファケース2内に、摩擦係合装置としての湿式多板クラッチ(トランスファクラッチ)10が収容されて要部が構成されている。
具体的に説明すると、トランスファケース2内にはトランスミッション出力軸5の先端側が臨まされ、このトランスミッション出力軸5には、上述のリダクションドライブギヤ7とともにクラッチハブ11が固設されている。また、トランスファケース2内において、トランスミッション出力軸5の同軸上にはリヤドライブ軸6の基端部が相対回転自在に配設され、このリヤドライブ軸6には、クラッチドラム12が固設されている。クラッチドラム12の内周面はクラッチハブ11の外周面に対向されており、これらの対向領域には、クラッチハブ11の外周面にスプライン嵌合された複数の摩擦係合要素としてのドライブプレート16と、クラッチドラム12の内周面にスプライン嵌合された複数の摩擦係合要素としてのドリブンプレート15とが交互に重ねられた状態で配設されている(図1,2参照)。
また、クラッチドラム12内には油圧室17が形成され、この油圧室17内には、ドライブプレート16とドリブンプレート15とを一体的に押圧するトランスファピストン18が配設されている。そして、トランスファピストン18による押圧力の制御を通じて、トランスファクラッチ10の締結力が制御されることにより、トランスファ1による前輪と後輪とのトルク配分比は、例えば、100:0から50:50の間で可変制御される。
ここで、上述のトランスファ1において、トランスファクラッチ10を構成するドライブプレート16及びドリブンプレート15は、例えば、自動車構造用熱間圧延鋼板(SAPH材)によって構成されている。これらのうち、ドライブプレート16の表面16aには、例えば、摩擦による振動や異音の発生を抑えつつ所定の摩擦特性を得ることを目的として、不織布あるいは樹脂などからなる摩擦材が貼着され、これにより、ドリブンプレート15との摺接面が形成されている。一方、ドリブンプレート15の表面15aには、耐摩耗性及び補油性等を向上するための表面処理が施され、これによりドライブプレート16との摺接面が形成されている。
このドリブンプレート15に対する表面処理は、例えば、図3に示す手順に従って行われる。すなわち、ドリブンプレート15の粗材が投入されると、先ず、ステップS101において、例えば、ショットブラストを用いた凹凸加工処理が行われる。この凹凸加工処理では、例えば、粒度の番手が♯30〜♯60の範囲内のショット粒或いはメディアを研磨材(ショット玉)として使用することが可能であり、これにより、ドリブンプレート15の表面15aには、例えば、断面曲線の算術平均高さPa=3.0〜5.0μm、断面曲線の最大高さPz=18.0〜22.0μmの凹凸が形成される。
本実施形態において、より具体的には、研磨材として、例えば、番手が♯30のアルミナ粒が好適に用いられる。これにより、例えば、図4に示すように、ドリブンプレート15の表面15aには、断面曲線の算術平均高さPa=4.4μm程度、断面曲線の最大高さPz=18.9μm程度の均質な凹凸が形成される。
そして、ステップS102に進むと、凹凸加工処理後のドリブンプレート15の粗材に対し、窒化処理が行われる。具体的には、ステップS102において、ドリブンプレート15の粗材には、窒素雰囲気中での熱処理(ガス軟窒化処理)が行われる。このガス軟窒化処理は、例えば、560〜580℃の温度範囲内で3〜6時間行うことが可能である。
ステップS103に進むと、予め設定された回数(複数回)の窒化処理が行われたか否かの判定が行われる。ここで、窒化処理の回数としては、例えば、2〜4回の回数を好適に設定することが可能である。このステップS103において、窒化処理回数が設定回数未満であると判定された場合には、ステップS102の窒化処理が再度行われる。
一方、ステップS103において、窒化処理回数が設定回数に達していると判定された場合には、ドリブンプレート15の粗材に対する表面処理が終了する。これにより、ドリブンプレート15の表層には、平均膜厚が45μm〜70μmの化合物層が形成され、この化合物層内の表面側に、硬さの最大値が450HV以上、且つ、平均膜厚が25〜60μmのポーラス層が形成される。
ここで、本実施形態において、より具体的には、例えば、ステップS102でのガス軟窒化処理の条件として、処理温度570℃、処理時間3時間が設定され、さらに、ステップS103で判定される窒化処理回数として3回が設定されている。これにより、例えば、図8に示すように、ドリブンプレート15の表層には、平均膜厚が65μm程度の化合物層が形成され、この化合物層内の表面側に、硬さの最大値が500HV程度、且つ、平均膜厚が55μm程度のポーラス層が形成される。
このような実施形態によれば、ガス軟窒化処理によってドリブンプレート15の表面15aをポーラス層で形成することにより、ドリブンプレート15の表面15aに十分な量の作動油を補油させることができる。この場合において、ポーラス層の形成は複数回のガス軟窒化処理によって行うことにより、十分な硬さ及び膜厚を有するポーラス層をドリブンプレート15の表層に形成することができ、摩耗等の経年変化にも対応してドリブンプレート15の表面15aの十分な耐久性を確保することができる。加えて、ドリブンプレート15の表面15aに対し、ショットブラスト等を用いた凹凸加工処理を行い、断面曲線の算術平均高さが所定範囲の凹凸を形成することにより、ドリブンプレート15の表面15aにおける更なる補油性の向上を図ることができる。
従って、特に、本実施形態のようにトランスファ1のトランスファクラッチ10に対して上述の表面処理を行えば、スリップ制御時等の摩擦係数を安定化してジャダーやタイトコーナブレーキング現象の発生を的確に防止することができる。
次に、上述の凹凸加工処理(ショットブラスト処理)における条件設定までの経緯について説明する。
本出願人らは、作動油の補油性に優れた凹凸をドリブンプレート15の表面15aに形成すべく、種々の研磨材を用いたショットブラスト処理を行い、処理後の表面15aの凹凸の大きさとして断面曲線の算術平均高さPaと最大高さPzについて検証した。その結果、例えば、アルミナ粒を研磨材として用いた場合、番手が大きい場合には表面15aの凹凸の大きさにさほど変化は見られなかったものの(図6,7参照)、所定の番手未満では、粒径と凹凸の大きさは略比例関係となっている(すなわち、番手が小さくなるほど凹凸が大きくなる)ことを確認した(図4参照)。このような傾向は、例えば、セラミックスビーズを研磨材として用いた場合にも確認することができた(例えば、図5参照)。但し、番手♯30のアルミナ粒とセラミックスビーズによる処理結果を比較すると、細かい凹凸については大差ないものの、アルミナ粒による凹凸は平均すると直線的であるのに対し、セラミックスビーズによる凹凸は平均しても直線的とはならず所定に波打った形状となる。
なお、凹凸を大きくすれば補油性の向上を期待できる反面、強度的な面で耐久性の低下を招く虞がある。従って、これらの要求を充足するためには、断面曲線の算術平均高さPaが3.0〜5.0μmの範囲内であることが望ましい。
以上に基づき、研磨材としては、番手が♯30〜60の範囲のショット粒或はメディアを用いることが望ましいと結論づけ、最も望ましい研磨材として、番手が♯30のアルミナ粒を選定した。
次に、上述の窒化処理(ガス軟窒化処理)における条件設定までの経緯について説明する。
一般に、ドリブンプレート15等の摩擦係合要素対するポーラス層の形成は1回のガス軟窒化処理によって行われ、当該ガス軟窒化処理によって形成されるポーラス層の膜厚は、処理温度及び処理時間によって制御される。しかしながら、本出願人らによる実験の結果、所定以上の膜厚のポーラス層を得ようとした場合、単に処理時間を長く設定しただけではポーラス層の厚膜化には限界があり、一方、処理温度を高く設定しすぎると、ポーラス層が脆く不均一となったり、クラック等が発生することが確認された。
そこで、本出願人らは、ガス軟窒化処理を複数回行うことでポーラス層を厚膜化することについて検討した。その結果、例えば、図8,11,12の比較からも明らかなように、同一の温度条件(例えば、570℃)でガス軟窒化処理を行った場合、処理回数が多くなるほどポーラス層の膜厚を厚く形成することができ、しかも、ポーラス層の硬さ及び均斉度等についてもさほど低下しないことが確認された。但し、ガス軟窒化処理を2回或いは3回行った場合には、ポーラス層の膜厚が回数に応じて顕著に増加することが認められたものの、4回目以降はガス軟窒化処理の回数に対して膜厚の増加量が鈍化することが確認された。
また、図8〜10の比較からも明らかなように、同一の処理時間及び処理回数であっても、ガス軟窒化処理の処理温度が高くなるほどポーラス層の膜厚が増加することが確認された.但し、例えば、図9に示すように、処理温度が低すぎると(例えば、520℃)、ポーラス層自体が形成されず、逆に、例えば、図10に示すように、処理温度が高すぎると(例えば、620℃)、ポーラス層の均斉度の低下(組織の粗大化)やクラック(亀裂)の発生等が認められた。
なお、摩耗等によるポーラス層の経年変化等も考慮し、耐久性について検討した場合(使用状況による)、ポーラス層の膜厚は50μm以上、且つピーク硬さ500Hv以上を確保されることが望ましい。
以上に基づき、ガス軟窒化処理の条件としては、処理温度が560〜580℃の範囲にあり、処理時間が3〜6時間の範囲であって、処理回数が2〜4回であることが望ましいと結論づけ、最も望ましい条件として、処理温度が570℃、処理時間が3時間であって、処理回数が3回となる条件を選定した。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、本発明の摩擦係合要素が適用される摩擦係合装置としては、トランスファ用の湿式多板式のクラッチに限定されないことはもちろんである。
また、例えば、上述の実施形態においては、湿式多板式のクラッチに本発明を適用した一例について説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、例えば、湿式多板式のブレーキに対しても適用が可能である。
また、上述の実施形態においては、一方の摩擦係合要素であるドリブンプレートに対してのみ表面処理を行う一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ドライブプレートのみ、或いは、ドライブプレート及びドリブンプレートの両方に対して表面処理を行うことも可能である。
1 … トランスファ
2 … トランスファケース
5 …トランスミッション出力軸
6 … リヤドライブ軸
7 … リダクションドライブギヤ
10 … トランスファクラッチ(摩擦係合装置)
11 … クラッチハブ
12 … クラッチドラム
15 … ドリブンプレート(摩擦係合要素)
15a … 表面
16 … ドライブプレート(摩擦係合要素)
16a … 表面
17 … 油圧室
18 … トランスファピストン

Claims (2)

  1. 湿式の摩擦係合装置に用いられる摩擦係合要素の製造方法であって、
    前記摩擦係合要素の金属表面に凹凸面を形成するための凹凸加工処理を行う手順と、
    前記凹凸加工処理後の前記摩擦係合要素に窒化処理を複数回行う手順と、を備えたことを特徴とする摩擦係合要素の製造方法。
  2. 湿式の摩擦係合装置に用いられる摩擦係合要素であって、
    金属表面に凹凸面を形成するための凹凸加工処理と、前記凹凸加工処理後に複数回行う窒化処理によって、表面の断面曲線の算術平均高さが3.0〜5.0μmの範囲内であり、且つ、硬さが500HV以上であって、膜厚が25〜60μmの範囲内のポーラス層を表層に形成したことを特徴とする摩擦係合要素。
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