JP2014033218A - レーザ切断方法およびレーザ加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】サファイアを切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に切断することができるレーザ切断方法を提供すること。
【解決手段】集光位置におけるレーザ強度が0.5〜500PW/cmの範囲内となるように、レーザパルスをサファイアの表面近傍に集光照射する。照射されたレーザパルスは、セルフチャネリング効果により形成される一過性の光導波路に沿ってサファイア内を光軸方向に伝播し、サファイア内にアスペクト比の高い応力ひずみ領域を形成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、サファイアを加工対象物とするレーザ切断方法に関する。
近年、エレクトロニクスやフォトニクスなどの先端技術分野の急速な発展に伴い、これらを支える各種デバイス素子のさらなる微細化が大きく望まれている。従来、半導体デバイスを微細化する手段として、ダイヤモンドブレードなどによる機械的な切断技術が用いられてきた。これらは十分確立された技術ともいえるが、「切りしろ」による材料の歩留まりの低下や、微細化の加工分解能などといった本質的な限界に行き当たりつつある。一方、このような機械的な加工技術に代わり急速に進展しつつある微細加工技術として、レーザ加工法がある。
レーザ加工法は、加工対象物に高輝度のレーザパルスを照射し、焦点位置の微小領域における物質の構造破壊や改質などにより発生する損傷(クラック)を起点として、加工対象物を切断する方法である。この方法では、レーザ照射により生じる損傷を切断予定ラインに沿って複数形成した後、機械的応力を印加して加工対象物を微細なチップ状に切断する。加工対象物のうち、実用上特に重要なものとしては、機能性半導体層(例えば、シリコンやガリウム砒素など)を積層した誘電体基板(サファイアやガラスなど)からなる薄い板状のデバイスが挙げられる。
例えば、特許文献1には、加工対象物に対して透明な波長(加工対象物が吸収しない波長)のレーザパルスを加工対象物の内部に集光させて、集光位置において大きさが数十〜数百μm程度の乱れた形状を有する損傷(クラック)を発生させ、機械的応力を印加することによりこのクラックを起点として基板を切断する方法が開示されている。
また、特許文献2には、光学系を介してレーザパルスを加工対象物の表面上方に集光照射して加工対象物の表面にV字型の損傷を形成し、加工対象物を高い分解能で加工する方法が記載されている。
特開2003−19582号公報 特開2006−114786号公報
特許文献1の加工方法では、加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域(クラック領域、溶融処理領域または屈折率の変化した領域)を誘発させることで加工を行なっている。クラックの形成は、光学的絶縁破壊(ブレイクダウン)により誘起され、溶融熱処理領域の形成は、光熱的効果により誘起される。したがって、特許文献1の加工方法では、損傷サイズが比較的大きくなってしまい(数十〜数百μm程度)、加工精度には一定の限界があった。
一方、特許文献2の加工方法では、高い分解能で加工対象物を加工することはできるものの(クラック幅:10μm)、形成されるクラックの深さが浅い(30μm)ため、加工対象物を切断(割断)するにはクラックを連結させて形成する必要があり、加工速度には一定の限界があった(10mm/s)。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、サファイアを高精度かつ高速にレーザ切断する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、セルフチャネリング効果を利用してレーザパルスを光軸方向に伝播させることで、サファイア内の深部まで応力ひずみ領域を高精度かつ高速に形成できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すレーザ切断方法に関する。
[1]レーザパルスを集光レンズを通してサファイアに集光照射しながら、前記サファイアの切断予定ラインを前記レーザパルスビームで走査して、前記切断予定ラインに沿って前記サファイアに複数の応力ひずみ領域を形成するステップと、前記複数の応力ひずみ領域が形成されたサファイアに機械的応力を加えて、前記サファイアを前記切断予定ラインに沿って切断するステップと、を有するレーザ切断方法であって、前記応力ひずみ領域を形成するステップにおいて、前記レーザパルスを前記サファイアの表面近傍に集光照射するとともに、前記サファイアの表面における前記レーザパルスのレーザ強度を0.5〜500PW/cmの範囲内として、前記サファイアの表面を起点として内部に向かう、光軸方向に伸長した形状の応力ひずみ領域を、セルフチャネリング効果により形成する、レーザ切断方法。
[2]前記集光レンズとサファイアとの距離は、前記集光レンズの作動距離±500μmの範囲である、[1]に記載のレーザ切断方法。
本発明によれば、サファイアを高精度かつ高速にレーザ切断することができる。また、本発明によれば、ウェハ上のマイクロデバイス層の損傷を回避しつつ、マイクロデバイス層/ウェハを切断することができる。
本発明のレーザ加工方法を用いた加工対象物の切断方法の一例を示す図 複数のレーザビームを1つの集光レンズに導入する例を示す図 セルフチャネリング効果を説明するための図 本発明のレーザ加工方法を用いて加工対象物に穴あけ加工をする様子を示す図 レーザの照射位置からの距離と電子密度との関係を示すグラフ 本発明のレーザ加工装置の構成の一例を示すブロック図 本発明のレーザ加工装置を用いた加工工程を示すフローチャート 実施例1の結果を示す写真 実施例2の結果を示す写真 実施例3の結果を示す写真
1.本発明のレーザ加工方法
本発明のレーザ加工方法は、レーザパルスを集光レンズにより加工対象物の表面近傍に集光照射するステップを有し、所定のパルス幅のレーザパルスを所定の強度で加工対象物の表面近傍に照射することを特徴とする。後述するように、加工対象物に照射されたレーザパルスは、セルフチャネリング効果により形成される一過性の光導波路に沿って加工対象物内を光軸方向に伝播し、加工対象物内に応力ひずみ領域を形成する。
なお、本明細書において「応力ひずみ領域」とは、レーザ光を吸収することで生じる改質、クーロン爆発、原子構造再配列、熱膨張、溶融などの現象により均一な加工対象物内に不均一な領域が出現し、その結果、加工対象物内において応力がかかり、脆くなった領域をいう。ここで「改質」には、アモルファス化や、多結晶化、化学結合の切断、イオン化による電子価数またはイオン価数の変化などが含まれる。
図1は、本発明のレーザ加工方法を用いて加工対象物を切断する例を示す図である。図1(A)に示されるように、レーザパルス100を加工対象物110の表面近傍に集光照射するステップを繰り返しながら、レーザパルス100と加工対象物110との相対位置を変えることで、応力ひずみ領域130を切断予定ライン120に沿って複数形成することができる。図1(B)に示されるように、加工対象物110に応力ひずみ領域130を複数形成した後、加工対象物110に機械的応力(例えば、曲げ応力やせん断応力など)を加えることにより、図1(C)に示されるように、加工対象物110を切断予定ライン120に沿って容易に切断(割断)することができる。本発明のレーザ加工方法を用いて切断された加工対象物は、乱れがなく平坦かつシャープな切断面を有する(実施例参照)。
本発明のレーザ加工方法において、レーザパルスの光源は、特に限定されず、Ti:サファイアレーザやクロムフォルステライトレーザ、Yb:YAGレーザ、Yb:KGWレーザ、Yb:KG(WOレーザ、各種ファイバーレーザ、各種ディスクレーザ、各種色素レーザなどを用いることができる。レーザビームの種類(光強度分布に関する分類)は、特に限定されないが、後述するようにポンデラモーティブ力の作用によるセルフチャネリング効果を利用する観点からガウシアンビームが好ましい。
本発明は、レーザパルスのレーザ強度が0.5〜500PW(ペタワット)/cmの範囲内であることを一つの特徴とする。ここで「レーザパルスのレーザ強度」とは、集光点におけるレーザ強度を意味する。後述するように、0.5PW/cm以上のレーザ強度のレーザパルスを加工対象物に照射することで、加工対象物内の電子にポンデラモーティブ力を作用させることができ、結果としてセルフチャネリング効果を利用したレーザパルスの伝播および応力ひずみ領域の形成を実現することができる。レーザ強度の上限を500PW/cmとしているのは、現段階における実用的なレーザのレーザ強度の最高値であるためであり、これ以上の値でも同様の効果を得られる可能性はある。
また、本発明は、レーザパルスのパルス幅が100〜1000フェムト秒の範囲内であることも一つの特徴とする。レーザパルスのパルス幅が100フェムト秒未満の場合、現実的な問題として高出力レーザパルスを安定して照射するのが難しく、レーザパルスのパルス幅が1000フェムト秒を超える場合、加工精度の低下に繋がる光学的絶縁破壊(ブレイクダウン)が発生してしまう恐れがある。
レーザパルスの偏光特性は、特に限定されないが、後述するようにポンデラモーティブ力の作用によるセルフチャネリング効果を利用する観点から直線偏光であることが好ましい。レーザパルスが直線偏光の場合、レーザパルスの偏光方向は切断予定ラインに対して略垂直な方向で、かつ加工対象物の表面に略平行な方向(図1(A)の矢印102の方向)であることが好ましい。本発明のレーザ加工方法を用いて結晶性材料であるサファイアを加工したところ、レーザパルスの偏光方向に対して垂直な方向にサファイアが切断(割断)されやすいという傾向が明確に認められた。したがって、本発明のレーザ加工方法を用いてサファイアを切断(割断)する場合であれば、レーザパルスの偏光方向を切断予定ラインに対して略垂直な方向とすることで、切断(割断)されやすい方向と切断予定ラインの方向とを一致させることができ、より効率的に切断(割断)を行うことができる。
レーザパルスは通常直線偏光であるが、レンズを通過したりミラーで反射されたりすると、その偏光面が回転したり解消されたりする。したがって、レーザパルスの偏光方向を波長板(1/2波長板、1/4波長板)や偏光板などの偏光調整器を用いて所望の方向(例えば、切断予定ラインに対して略垂直な方向)に調整することが好ましい。
レーザパルスのパルスエネルギーは、特に限定されないが、1〜1000μJ/パルスの範囲内であることが好ましい。ここで「パルスエネルギー」とは、集光レンズ通過後のレーザパルスの1パルス当りのエネルギーを意味する。レーザパルスのパルスエネルギーは、加工対象物の電子を励起することができ、かつこの励起電子にポンデラモーティブ力を作用させることができる範囲内であればよく、加工対象物の材質や厚さなどによって適宜選択すればよい。
レーザパルスの波長は、加工対象物のバンドギャップに応じて適宜選択すればよいが、500〜1600nmの範囲内であることが好ましい。例えば、レーザパルスの1光子のエネルギーh(c/λ)(h:プランク定数、c:光速、λ:レーザ光の波長)は、バンドギャップ(Eg)に対して「1h(c/λ)≦Eg≦nh(c/λ)」(n=8〜9程度)の範囲の関係にあればよい。この式からわかるように、応力ひずみ領域は1光子吸収または多光子吸収のいずれによっても形成されうる。なお、この範囲を若干逸脱しても応力ひずみ領域を形成することは可能である。
レーザパルスの繰り返し周波数は、特に限定されないが、1kHz〜1MHzの範囲内であることが好ましい。
例えば、加工対象物が厚さ50〜200μmのサファイアの場合、レーザパルスのパルスエネルギーは5〜15μJ/パルスの範囲内であることが好ましく、波長は500〜1500nmの範囲内であることが好ましい。加工対象物の厚みが増した場合は、レーザパルスのパルスエネルギーを増大させるか、繰り返し周波数を増大させるか、または走査速度を遅くするなどの調整を適宜行えばよい。
また、加工対象物がレーザパルス照射面の反対側の面に機能層を有する場合、レーザパルスのパルスエネルギーは、応力ひずみ領域が機能層まで到達しない程度の強度であることが好ましい。応力ひずみ領域が機能層まで到達すると、機能層の機能を阻害し、デバイスの寿命を縮めてしまうおそれがあるからである。
集光レンズは、レーザパルスを加工対象物の表面近傍に集光させるための凸レンズである。集光レンズの開口数は、レーザパルスのレーザ強度を0.5PW/cm以上とする観点から、0.4〜0.95の範囲内であることが好ましい。
集光レンズによって集光されたレーザパルスは、加工対象物の表面近傍に照射される。ここで「加工対象物の表面近傍に照射する」とは、レーザパルスの集光点が加工対象物の表面から±500μmの範囲内に位置するように照射することを意味する。集光レンズと加工対象物との距離(L)は、集光レンズの作動距離(WD)±500μmの範囲内であること、すなわち以下の式を満たすことが好ましい。
WD−500μm≦L≦WD+500μm
ここで「作動距離(WD)」とは、加工対象物の表面に焦点を合わせたときの集光レンズ(対物レンズ)の先端(表面)から加工対象物までの最短距離を意味する。したがって、レーザパルスの集光点は、加工対象物の外部であっても内部であってもよいが、加工対象物の内部である方がより好ましい。
光源から出射されたレーザビームは、2本以上のレーザビームに分割されてもよい。このとき、ハーフミラーなどを用いることで、分割するレーザビームのエネルギー強度を調整することができる。このようにレーザビームを分割する場合、各レーザビームを異なる集光レンズを介してそれぞれ異なる加工対象物に照射してもよい。このようにすることで、1つのレーザ光源を用いて複数の加工対象物を同時にレーザ加工することができる。
また、複数本のレーザビームが1つの集光レンズに導入されてもよい。このとき、各レーザビームは、それぞれ異なるレーザ光源から出射されたレーザビームであってもよいし、1つのレーザ光源から出射されたレーザビームを分割したレーザビームであってもよい。各レーザパルスは、集光レンズに同時に導入されてもよいし、異なるタイミングで導入されてもよい。1つの集光レンズに導入されるレーザビームの数は、特に限定されないが、1〜8本の範囲内であることが好ましい。
複数本のレーザビームが1つの集光レンズに導入される場合、各レーザビームは、加工対象物の異なる領域を照射するように集光レンズに導入されることが好ましい。例えば、各レーザビームの集光レンズへの入射角度を変えることにより、各レーザビームの照射位置を異なるものとすることができる。例えば、図2に示すように、レーザビーム100a,bをそれぞれ異なるミラー140a,bを用いて反射させることにより、レーザビーム100a,bの集光レンズ150への入射角度を変えることができる。より具体的には、レーザビーム100a,bの集光レンズ150への入射角度は、ミラー140a,bのチルト角を調整することにより制御することができる。各レーザビームの照射位置の間隔は、後述するように1〜50μmの範囲内であることが好ましい。このように、複数本のレーザビームを1つの集光レンズに導入することで、加工時間をさらに短縮することができる。
加工対象物は、特に限定されないが、レーザ加工後に機械的応力を加えて切断(割断)する場合は、切断を容易にする観点から結晶性の部材であることが好ましい。また、加工対象物のバンドギャップは、0.9eV以上であることが好ましい。このような加工対象物として、サファイアやシリコンカーバイド、ガラス類、ダイアモンドなどが挙げられる。
前述の通り、レーザパルスを加工対象物の表面近傍に集光照射するステップを繰り返しながら、レーザパルスと加工対象物との相対位置を変えることで、応力ひずみ領域を切断予定ラインに沿って複数形成することができる(図1参照)。例えば、レーザパルスを照射するステップを繰り返しながら加工対象物を10〜2000mm/秒の速度で移動させて、切断予定ラインをレーザビームで走査すればよい。走査回数は、特に限定されないが、1回走査してもよいし、2回以上繰り返し走査してもよい。
また、あるレーザパルスの発振が開始されてから次のレーザパルスの発振が開始されるまでの間(「1サイクルタイム」という)に、加工対象物は1〜50μm程度移動されることが好ましい。このようにすることで、加工対象物に形成される応力ひずみ領域(または穴)の間隔(それぞれの中心間の距離)が1〜50μmの範囲内となり、機械的応力を加えた際に切断予定ラインに沿って容易に切断(割断)することができる。なお、隣接する応力ひずみ領域は、連結していてもよいし、離れていてもよい。本発明のレーザ加工方法では、応力ひずみ領域が加工対象物の深部まで形成されるため、隣接する応力ひずみ領域が離れていても切断予定ラインに沿って容易に切断することができる。
2.セルフチャネリング効果を利用した応力ひずみ領域の形成
本発明のレーザ加工方法では、加工対象物に照射されたレーザパルスは、セルフチャネリング効果により形成される一過性の光導波路に沿って加工対象物内を光軸方向に伝播し、加工対象物内に応力ひずみ領域を形成する。以下、図3を参照して、本発明のレーザ加工方法において応力ひずみ領域が形成されるメカニズムについて説明する。
まず、レーザ強度が非常に高いレーザパルス100(1パルス)が加工対象物110の表面近傍に集光照射されると、加工対象物110の表面近傍においてレーザパルスの前半部分100−1により多光子吸収が生じ、電子が励起されて束縛の弱い状態または電離状態になる(図3(A)参照)。なお、レーザパルス100のレーザ強度がさらに高い場合は、プラズマがさらに発生する(図示せず)。
レーザパルス100(図3(A)と同一のパルス)が加工対象物110内に進入すると、レーザパルス100によるポンデラモーティブ力210(後述)が励起電子200に作用する。このポンデラモーティブ力により、励起電子200はレーザパルス100の照射領域の周囲に追い出される(図3(B)参照)。結果として、レーザパルス100の照射領域では、励起電子200が追い出されるために電子の密度が低くなり、照射領域の周辺領域では、追い出されてきた励起電子220の分だけ電子の密度が高くなる。
後述するように、電子密度は屈折率に寄与するため、照射領域の周囲近傍に形成される電子密度の高い領域230は屈折率が小さく、照射領域内の電子密度の低い領域240は屈折率が大きくなる。このように、照射領域およびその周辺領域に屈折率の分布が生じることで、一過性の導波路が形成され、レーザパルスの中間部分100−2および後半部分100−3はこの導波路内に閉じ込められながら進行するとともに応力ひずみ領域130を形成する(図3(C)参照)。このように、自ら導波路を形成することを「セルフチャネリング」という。
以後、レーザパルス100のエネルギーが消失するまで、セルフチャネリング効果による深部への進行と応力ひずみ領域130の形成が続く(図3(D)参照)。レーザパルスのエネルギーは、加工対象物による多光子吸収だけでなく、プラズマによる散乱によっても消費される。最終的に、レーザパルス100を単発照射するだけで、応力ひずみ領域130を加工対象物110内の深部まで形成することができる(図3(E)参照)。
なお、同じ領域にレーザパルス100を繰り返し照射することで、加工対象物110にアスペクト比の高い穴250を形成することもできる(図3(F)参照)。レーザパルス100を同一領域に照射する回数は、特に限定されないが、1〜10回の範囲内であることが好ましい。
図4は、加工対象物にアスペクト比の高い穴を形成する様子を示す図であり、左から右に向かって各ステップを時系列で示している。図4において、1回目のレーザパルス100aを照射すると、上述の通り応力ひずみ領域130が形成される。次いで、2回目のレーザパルス100bを同じ領域に照射すると、応力ひずみ領域130の最表層においてアブレーション260が発生し、応力ひずみ領域130の最表層の部分が除去される。以後同様に、3回、4回とレーザパルス100c,dを同じ領域に照射することで、応力ひずみ領域130であった領域にアスペクト比の高い穴250を形成することができる。
3.ポンデラモーティブ力について
ここで、本発明のレーザ加工方法のメカニズムの骨子となる「ポンデラモーティブ力」について簡単に説明する。
自由な電子または束縛のゆるい電子に周波数nの光を照射すると、光を照射された電子は、光の交周電場に揺さぶられ、その電場E(t)に追随して振動しようとする。完全に自由な電子の場合、周波数(振動数)nの光を照射すると、電子は振動数nで振動しようとする。この過程は、電子と光との相互作用の基本過程であり、線形過程である。
ところが、入射光の強度(光子数)が高くなってくると、上記のような線形過程の他に、様々な非線形過程が誘起されるようになる。特に、入射光のレーザ強度(I)が1cmあたり0.5PW以上になると(I≧0.5PW/cm)、ポンデラモーティブ力(ponderomotive force)と呼ばれる非線形な力が電子に作用するようになる。
ポンデラモーティブ力は、入射光の電磁場と電子とがローレンツの力を通じて相互作用して発生する力である。ポンデラモーティブ力の力ベクトルFは、以下の式(1)のように書くことができる。
ここで、eは電子の電荷素量、mは電子の質量、ωは入射光の周波数(振動数)、Eは入射光の電場ベクトルであり、∇はナブラ演算子である。
式(1)から、電子が光のような勾配電場によってポンデラモーティブ力を受けた場合、ポンデラモーティブ力は、電場の強い領域から電場の弱い領域へと向かう方向に電子を追い出そうとする力として作用することがわかる。したがって、レーザパルスがガウシアンビーム型の強度分布を有するような場合は、図3(B)に示されるように、励起電子は、ポンデラモーティブ力によってレーザビーム光軸の中央部分から周辺部位へと追い出されるのである。
前述の通り、本発明のレーザ加工方法において、加工対象物にレーザパルスを照射すると、照射領域に存在する電子は、レーザパルスの前半部分により励起され、束縛の弱い状態または電離状態になる(図3(A)参照)。次いで、当該領域にレーザパルスの中間部分が進入すると、レーザパルスの中間部分は、励起電子にポンデラモーティブ力を作用させる。ここでレーザがガウシアンビーム型の強度分布を有する場合は、励起電子はポンデラモーティブ力によってビーム光軸の中央部分から周辺部位へと追い出され(図3(B)参照)、照射領域において屈折率の分布が生じ、一過性の「導波路」が形成される(図3(C)参照)。
この作用を定式化して以下に述べる。上記のポンデラモーティブ力による電子の移動の結果、屈折率分布n(r)は式(2)のようになる。
ここで、座標rは光軸に対して垂直方向の軸である。nは材料の屈折率であり、nは非線形屈折率(カー効果による)であり、I(r)は入射光の強度分布関数(ガウス関数)であり、ω(r)は材料中のプラズマ振動数である。
ここで、ω(r)は、
である。N(r)は、電子密度をあらわす関数である。
その結果、N(r)は、バルク中の電子密度(N)を用いると、以下の式が成立する。
図5は、上の式(4)から得られる、レーザの集光点における、レーザの集光点からの距離と電子密度との関係を示すグラフである。横軸(r)は、光軸に対して垂直方向の座標(距離)を示し、0が光軸中心を示す。縦軸(N(r)/N)は、バルク中の電子密度(N)を1としたときの電子密度を示す。また、曲線1はビーム径を「1D」とし、レーザ強度を「7.8I」としたときのシミュレーション結果を示し、曲線2はビーム径を「2D」とし、レーザ強度を「4I」としたときのシミュレーション結果を示し、曲線3はビーム径を「2.8D」とし、レーザ強度を「1I」としたときのシミュレーション結果を示す(「D」および「I」に特別な意味はない)。前述の通り、電子密度が低い領域では屈折率は大きくなり、電子密度が高い領域では屈折率は小さくなる。したがって、このグラフより、ビーム光軸中央部で屈折率が大きく、周辺部では屈折率が小さい「導波路」が一時的に形成されることがわかる。
4.まとめ
以上のように、本発明のレーザ加工方法は、レーザ強度が非常に高いレーザパルス(0.5PW/cm以上)を加工対象物の表面近傍に集光照射することで、セルフチャネリング効果により加工対象物内に形成される一過性の光導波路に沿ってレーザパルスを伝播させ、アスペクト比の高い応力ひずみ領域を高精度に形成することができる。したがって、本発明のレーザ加工方法を用いて加工対象物を切断すれば、加工対象物を切断予定ラインに沿って高精度かつ容易に切断することができる。
また、本発明のレーザ加工方法は、レーザパルスの単発照射でアスペクト比の高い応力ひずみ領域を形成することができ、かつ隣接する応力ひずみ領域同士は連結している必要がないため、加工対象物を短時間で加工することができる。したがって、本発明のレーザ加工方法を用いて加工対象物を切断すれば、加工対象物を高速に切断することができる。
また、本発明のレーザ加工方法は、加工ラインの幅を2μm程度まで小さくすることができる。したがって、本発明のレーザ加工方法を用いて加工対象物を切断すれば、チップの収率を向上させることができる。
また、本発明のレーザ加工方法は、穴あけ加工を行うことなく応力ひずみ領域を形成することができる。したがって、本発明のレーザ加工方法を用いて加工対象物を切断すれば、発塵量を極めて少量に抑えつつ、加工対象物を切断することができる。
5.本発明のレーザ加工装置
本発明のレーザ加工方法は、これに限定されるわけではないが、図6に示されるレーザ加工装置を用いて実施することができる。
図6において、レーザ加工装置300は、レーザ光源310、テレスコープ光学系320、偏光調整光学系330、ダイクロイックミラー340、集光レンズ150、ステージ350、観察用光学系360、自動照準システム370、ハーフミラー380、XYZステージコントローラ390、コンピュータ400、およびモニタ410を有する。
レーザ光源310は、レーザパルスを発生させる。レーザ光源は、例えば、波長500〜1600nm、パルス幅100〜1000フェムト秒、繰り返し周波数1kHz〜1MHz、パルスエネルギー1〜1000μJ/パルスのレーザパルスを発生させる。レーザ光源310は、例えば、Ti:サファイアレーザやクロムフォルステライトレーザ、Yb:YAGレーザ、Yb:KGWレーザ、Yb:KG(WOレーザ、各種ファイバーレーザ、各種ディスクレーザ、各種色素レーザなどである。
テレスコープ光学系320は、好ましい加工形状を得るために、レーザ光源310から出力されたレーザパルスのビーム径を最適化する光学系である。
偏光調整光学系330は、テレスコープ光学系320を通過したレーザパルスを、加工対象物110の切断予定ラインに対して垂直な直線偏光に調整する。例えば、偏光調整光学系330は、1/2波長板や偏光板などの偏光調整器を含む。
ダイクロイックミラー340は、偏光調整光学系330を通過したパルスレーザをほぼ100%反射させ、観察用光学系360からの観察光および自動照準システム370からの計測用レーザをほぼ100%透過させるミラーである。
集光レンズ150は、開口数が0.4〜0.95の顕微鏡用の対物レンズであって、ダイクロイックミラー340で反射されたレーザパルスを集光する。集光レンズ150と加工対象物110の表面との距離(L)が集光レンズの作動距離(WD)±500μmの範囲を満たすように、集光レンズ150は配置されている。
ステージ350は、加工対象物110が載置される載置台と、載置台をXYZ軸方向に移動させることおよびXYZ軸を中心として回転させることができる駆動機構とを有する。ステージ350上の加工対象物110は、この駆動機構によって切断予定ラインに沿ってXY軸方向に移動されるだけでなく、Z軸方向にも移動されうる。加工対象物110をZ軸方向に移動させることで、レーザパルスの集光点を加工対象物110の表面近傍の所望の位置に設定することができる。
観察用光学系360は、加工対象物110の加工部位を観察するための光学系である。例えば、観察用光学系360は、照明光学系や、光学絞り、CCDカメラなどを含む。CCDカメラにより撮像された撮像データは、コンピュータ400に出力され、モニタ410に表示される。
自動照準システム370は、加工対象物110の表面の位置を計測するための計測用レーザを発生させる計測用光源や、加工対象物110の表面からの計測用レーザの反射光を検出する検出器などを有する。自動照準システム370は、ステージ350上の加工対象物110の表面からの計測用レーザの反射光を検出して加工対象物110の表面位置を検出する。検出結果は、XYZステージコントローラ390に出力される。
ハーフミラー380は、自動照準システム370からの計測用レーザをほぼ100%反射させ、観察用光学系360からの観察光をほぼ100%透過させるミラーである。自動照準システム370からの計測用レーザは、ハーフミラー380、ダイクロイックミラー340、および集光レンズ150を透過して加工対象物110の表面に到達し、反射される。この反射光は、再び集光レンズ150およびダイクロイックミラー340を透過し、ハーフミラー380で反射されて自動照準システム370に到達する。
XYZステージコントローラ390は、フィードバック回路を有し、自動照準システム370によって得られた加工対象物110の表面位置の情報に基づいて、レーザパルスの照射が切断予定ライン(XY軸方向)に合うように、ステージ350をフィードバック制御する。
コンピュータ400は、レーザ光源310、観察用光学系360、およびXYZステージコントローラ390に接続されており、これら各部を総合的に制御する。例えば、コンピュータ400は、所定のプログラムに従って、XYZステージコントローラ390によるフィードバック制御を通じてステージ350を駆動させることにより、レーザビームで任意の切断予定ラインを走査する。
次に、上記構成を有するレーザ加工装置300を用いた加工工程について、図7に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、加工対象物110に対するレーザ光源310の最適なレーザ強度を決定する(S1000)。前述の通り、加工対象物110の表面におけるレーザ強度が0.5〜500PW/cmの範囲内となるように決定することが好ましい。次いで、ステージ350を移動させてレーザパルスの照射位置を決定し(S1100)、コンピュータ400に対して切断予定ラインのプログラミングを行う(S1200)。
次いで、加工対象物110をステージ350の載置台に載置して位置決めを行う(S1300)。このとき、計測用および照明用の光源をオンにする。次いで、レーザ光源310をオンにしてレーザパルスを加工対象物110の切断予定ラインに集光照射する(S1400)。これにより、加工対象物110の切断予定ライン上に応力ひずみ領域が形成される。このとき、切断予定ラインに沿ってステージ350をXY軸方向(水平方向)に移動することで、切断予定ラインに沿って応力ひずみ領域を形成することができる。
最後に、加工対象物110に機械的応力を印加して、加工対象物110の切断予定ラインに沿って切断(割断)する(S1500)。これにより、加工対象物110は微小なチップに切断される。
以下、本発明を実施例を参照してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
実施例1では、本発明のレーザ加工方法を用いてサファイア基板を切断(割断)した例を示す。
本実施例では、図6に示される構成のレーザ加工装置を使用した。高出力半導体レーザからの励起光をレーザ光源(Yb:KGW)に照射して、レーザパルス(パルス幅:約300フェムト秒,波長:1030nm,繰り返し周波数:30kHz)を発振させた。集光レンズの開口数は、0.68とした。
厚さ約100μmのサファイア基板(Al)をステージ上に載置し、基板の表面近傍に集光するようにレーザ光源から発振されたレーザパルスを基板に照射した。このとき、レーザパルスの偏光方向を、走査方向(切断予定ラインの方向)に垂直な方向で、かつ基板の表面に平行な方向の直線偏光とした。集光レンズ通過後のレーザパルスのパルスエネルギーは、14μJ/パルスであった。また、レーザ強度は〜5PW/cmであった。
基板を載置したステージを切断予定ラインの方向に150mm/秒の速度で移動させることで、切断予定ラインに沿って5μmごとにレーザパルスを1回照射した。切断予定ラインの走査回数は1回とした(シングルスキャン)。
図8(A)は、レーザ照射後の基板表面の顕微鏡写真である。この図に示されるように、形成された応力ひずみ領域の幅(加工ラインの幅)は約5μmであり、きわめて高い分解能で加工することができた。応力ひずみ領域同士は連結しておらず、隣接する各応力ひずみ領域の中心間の距離は約5μmであった。
このレーザ照射された基板に機械的応力を加えたところ、容易に切断(割断)することができた。図8(B)は、切断後の基板断面の様子を示す顕微鏡写真である。図8(C)は、その断面をさらに拡大した顕微鏡写真である。図8(B)および図8(C)に示されるように、応力ひずみ領域は、基板の厚さの半分程度の深さ(約60μm)まで伸長しており、基板の裏面には達していなかった。また、切断面は、平滑かつ基板面に対して垂直であった。
このように、本発明のレーザ加工方法を用いることで、アスペクト比の高い応力ひずみ領域を切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に形成することができ、結果としてサファイア基板を切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に切断することができる。
実施例2では、実施例1と異なるレーザ照射条件(繰り返し周波数、レーザパルスエネルギー、レーザ強度、レーザ照射間隔)で、本発明のレーザ加工方法を用いてサファイア基板を切断(割断)した例を示す。
本実施例では、実施例1と同じ構成のレーザ加工装置を使用した。高出力半導体レーザからの励起光をレーザ光源(Yb:KGW)に照射して、レーザパルス(パルス幅:約300フェムト秒,波長:1030nm,繰り返し周波数:10kHz)を発振させた。集光レンズの開口数は、0.68とした。
実施例1と同様のサファイア基板をステージ上に載置し、基板の表面近傍に集光するようにレーザ光源から発振されたレーザパルスを基板に照射した。このとき、レーザパルスの偏光方向を、走査方向(切断予定ラインの方向)に垂直な方向で、かつ基板の表面に平行な方向の直線偏光とした。照射されたレーザパルスのパルスエネルギーは5μJ/パルスであった。また、レーザ強度は〜1.8PW/cmであった。
基板を載置したステージを切断予定ラインの方向に沿って100mm/秒の速度で移動させることで、切断予定ラインに沿って10μmごとに基板にレーザパルスを1回照射した。切断予定ラインの走査回数は1回とした(シングルスキャン)。
図9(A)は、レーザ照射後の基板表面の顕微鏡写真である。この図に示されるように、応力ひずみ領域の幅(加工ラインの幅)は約2μmであり、きわめて高い分解能で加工することができた。応力ひずみ領域同士は連結しておらず、隣接する各応力ひずみ領域の中心間の距離は約10μmであった。
このレーザ照射された基板に機械的応力を加えたところ、容易に切断することができた。図9(B)は、切断後の基板断面の様子を示す顕微鏡写真である。図9(C)は、その断面をさらに拡大した顕微鏡写真である。図9(B)および図9(C)に示されるように、応力ひずみ領域は、基板の厚さの半分程度の深さ(図中縦方向のスケールバー:約44μm)まで伸長しており、基板の裏面には達していなかった。また、切断面は、平滑かつ基板面に対して垂直であった。
このように、本発明のレーザ加工方法を用いることで、アスペクト比の高い応力ひずみ領域を切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に形成することができ、結果としてサファイア基板を切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に切断することができる。
実施例1,2では、1つの領域につきレーザパルスを1回照射して応力ひずみ領域を形成する例を示した。実施例3では、1つの領域につきレーザパルスを複数回(100回)照射して穴あけ加工した例を示す。
本実施例では、実施例1と同じ構成のレーザ加工装置を使用した。高出力半導体レーザからの励起光をレーザ光源(Yb:KGW)に照射して、レーザパルス(パルス幅:約300フェムト秒,波長:1030nm,繰り返し周波数:80kHz)を発振させた。集光レンズの開口数は、0.65とした。
実施例1と同様のサファイア基板をステージ上に載置し、基板の表面近傍に集光するようにレーザ光源から発振されたレーザパルスを基板の1つの領域に100回照射した。このとき、レーザパルスの偏光方向を、基板の表面に平行な方向の直線偏光とした。照射されたレーザパルスのパルスエネルギーは10μJ/パルスであった。また、レーザ強度は〜3.3PW/cmであった。
図10(A)は、レーザ照射後の基板表面の顕微鏡写真である。この図に示されるように、形成された穴の大きさは約12μmであり、きわめて高い分解能で加工することができた。図10(B)は、レーザ照射後の基板断面の様子を示す顕微鏡写真である。図10(B)に示されるように、形成された穴は、深さ約20μmまで伸長しており、基板の裏面には達していなかった。
このように、本発明のレーザ加工方法を用いることで、アスペクト比の高い穴を切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に形成することができ、結果としてサファイア基板を切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に切断することができる。
本発明のレーザ切断方法は、アスペクト比の高い応力ひずみ領域を切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に形成することができるだけでなく、加工ラインの幅が小さく、かつ発塵量が極めて少ないため、次世代のダイシング技術として有用である。
100 レーザパルス(レーザビーム)
100−1 レーザパルスの前半部分
100−2 レーザパルスの中間部分
100−3 レーザパルスの後半部分
102 偏光方向
110 加工対象物
120 切断予定ライン
130 応力ひずみ領域
140 ミラー
150 集光レンズ
200 励起電子
210 ポンデラモーティブ力
220 追い出された励起電子
230 電子密度が高い領域
240 電子密度が低い領域
250 加工対象物に形成された穴
260 アブレーション
300 レーザ加工装置
310 レーザ光源
320 テレスコープ光学系
330 偏光調整光学系
340 ダイクロイックミラー
350 ステージ
360 観察用光学系
370 自動照準システム
380 ハーフミラー
390 XYZステージコントローラ
400 コンピュータ
410 モニタ
本発明は、サファイアを加工対象物とするレーザ切断方法およびレーザ加工装置に関する。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、サファイアを高精度かつ高速にレーザ切断する方法および装置を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下に示すレーザ切断方法に関する。
[1]パルス幅が100〜1000フェムト秒のレーザパルスを集光レンズを通してサファイアに集光照射しながら、前記サファイアの切断予定ラインを前記レーザパルスビームで走査して、前記切断予定ラインに沿って前記サファイアに複数の応力ひずみ領域を形成するステップと、前記複数の応力ひずみ領域が形成されたサファイアに機械的応力を加えて、前記サファイアを前記切断予定ラインに沿って切断するステップと、を有するレーザ切断方法であって、前記応力ひずみ領域を形成するステップにおいて、前記レーザパルスを前記サファイアの表面近傍に集光照射するとともに、前記サファイアの表面における前記レーザパルスのレーザ強度を0.5〜500PW/cm の範囲内として、前記サファイアの表面を起点として内部に向かう、光軸方向に伸長した形状の応力ひずみ領域を、セルフチャネリング効果により形成する、レーザ切断方法。
[2]前記集光レンズとサファイアとの距離は、前記集光レンズの作動距離±500μmの範囲である、[1]に記載のレーザ切断方法。
また、本発明は、以下に示すレーザ加工装置に関する。
[3]パルス幅が100〜1000フェムト秒のレーザパルスを発生するレーザ光源と、前記レーザパルスを集光する集光レンズと、サファイアが載置されるステージと、前記集光レンズと前記ステージとの相対的位置を変化させて、前記レーザパルスの集光位置を調整する位置制御手段と、前記レーザ光源のレーザ強度を調整するレーザ強度制御手段と、を有し、前記位置制御手段とレーザ強度制御手段とにより、前記レーザパルスを前記サファイアの表面近傍に集光照射するとともに、前記サファイアの表面における前記レーザパルスのレーザ強度を0.5〜500PW/cm の範囲内として、前記サファイアの表面を起点として内部に向かう、光軸方向に伸張した形状の応力ひずみ領域を、セルフチャネリング効果により形成する、レーザ加工装置。
[4]前記位置制御手段は、前記集光レンズとサファイアとの距離を、前記集光レンズの作動距離±500μmの範囲内に調整する、[3]に記載のレーザ加工装置。
本発明のレーザ切断方法およびレーザ加工装置は、アスペクト比の高い応力ひずみ領域を切断予定ラインに沿って高精度かつ高速に形成することができるだけでなく、加工ラインの幅が小さく、かつ発塵量が極めて少ないため、次世代のダイシング技術として有用である。

Claims (2)

  1. レーザパルスを集光レンズを通してサファイアに集光照射しながら、前記サファイアの切断予定ラインを前記レーザパルスビームで走査して、前記切断予定ラインに沿って前記サファイアに複数の応力ひずみ領域を形成するステップと、
    前記複数の応力ひずみ領域が形成されたサファイアに機械的応力を加えて、前記サファイアを前記切断予定ラインに沿って切断するステップと、を有するレーザ切断方法であって、
    前記応力ひずみ領域を形成するステップにおいて、前記レーザパルスを前記サファイアの表面近傍に集光照射するとともに、前記サファイアの表面における前記レーザパルスのレーザ強度を0.5〜500PW/cmの範囲内として、前記サファイアの表面を起点として内部に向かう、光軸方向に伸長した形状の応力ひずみ領域を、セルフチャネリング効果により形成する、
    レーザ切断方法。
  2. 前記集光レンズとサファイアとの距離は、前記集光レンズの作動距離±500μmの範囲である、請求項1に記載のレーザ切断方法。
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