JP2014032819A - アルミ電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波溶接により端子金具を接続したときの接続信頼性を格段に向上することができるアルミ電線を提供する。
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導体素線を複数撚り合わせてなる集合導体の外周面に絶縁被覆が施され、超音波溶接により端子金具が接続されるアルミ電線において、集合導体を構成する導体素線の引張強さを70MPa以上100MPa以下とし、かつ、集合導体表面の潤滑油の付着量を0.10mg/kg以下とする。
【選択図】図3
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導体素線を複数撚り合わせてなる集合導体の外周面に絶縁被覆が施され、超音波溶接により端子金具が接続されるアルミ電線において、集合導体を構成する導体素線の引張強さを70MPa以上100MPa以下とし、かつ、集合導体表面の潤滑油の付着量を0.10mg/kg以下とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導体素線を複数撚り合わせてなる集合導体の外周面に絶縁被覆が施されたアルミ電線に関し、特に、超音波溶接により端子金具を接続する場合に好適なアルミ電線に関する。
近年、自動車の車内配線等に用いられるワイヤーハーネスの分野では、軽量化の観点から、銅電線の代替としてアルミ電線が使用され始めている。例えば、特許文献1〜3には、ワイヤーハーネスに適した特性(強度、展延性、導電性等)を有するアルミ電線が開示されている。
ところで、アルミ電線は、伸線工程、撚線工程、焼鈍工程、被覆押出工程により製造される。伸線工程、撚線工程では、作業性向上のために、導体表面に潤滑油が塗布される。焼鈍工程は、熱処理により伸線工程で硬化した導体素線の内部歪みを取り除き、組織を軟化させて、展延性(変形しやすさ)を向上させるために行われる。焼鈍条件(焼鈍温度、焼鈍時間)は、導体素線が所定の機械的特性(強度、展延性)を有するように設定される。
アルミニウムは、強度が高いほど展延性が低く、強度が低いほど展延性が高くなるので、導体素線の強度と展延性は、導体素線の引張強さで評価することができる。
特許文献1では、ワイヤーハーネスに適用されるアルミニウム合金線の特性として、引張強さが120MPa以上200MPa以下であることが好ましいとされている。
特許文献1では、ワイヤーハーネスに適用されるアルミニウム合金線の特性として、引張強さが120MPa以上200MPa以下であることが好ましいとされている。
一般に、ドアハーネス等の制御系電線にアルミ電線を適用する場合、アルミ電線の端末には圧着端子が接続される。制御系電線の場合は、導体サイズが数mm2程度であり、撚り本数も多くはないため、アルミニウムの表面に酸化皮膜が形成されていても、圧着端子に形成されたセレーションによって容易に破壊することができるので、電気的接続性は確保される。
一方、バッテリーケーブル等の電力系電線にアルミ電線を適用する場合、使用電流量が大きいために、導体サイズは10mm2以上となり、撚り本数も多くなる。そのため、圧着による端子金具の接続では、所望の電気的接続性を得ることが困難となる。
一方、バッテリーケーブル等の電力系電線にアルミ電線を適用する場合、使用電流量が大きいために、導体サイズは10mm2以上となり、撚り本数も多くなる。そのため、圧着による端子金具の接続では、所望の電気的接続性を得ることが困難となる。
そこで、導体サイズが10mm2以上であるアルミ電線に端子金具を接続する際には、超音波溶接が採用される(例えば特許文献4)。
超音波溶接とは、端子金具にアルミ電線の集合導体(導体素線の撚線)を載置して、超音波ホーン(集合導体に所定の周波数と振幅を有する超音波を供給する共鳴体)により接合面に加圧しながら超音波振動を与えることにより、接合面に局部的なスリップや弾性変形、塑性変形による摩擦熱を生じさせ、原子拡散を誘起して原子同士を結合させる方法である。アルミニウムの表面に酸化皮膜が形成されていたり不純物が付着したりしていても、初期の振動により除去され清浄な面同士が接触することとなるので、良好な電気的接続性が得られる。
超音波溶接とは、端子金具にアルミ電線の集合導体(導体素線の撚線)を載置して、超音波ホーン(集合導体に所定の周波数と振幅を有する超音波を供給する共鳴体)により接合面に加圧しながら超音波振動を与えることにより、接合面に局部的なスリップや弾性変形、塑性変形による摩擦熱を生じさせ、原子拡散を誘起して原子同士を結合させる方法である。アルミニウムの表面に酸化皮膜が形成されていたり不純物が付着したりしていても、初期の振動により除去され清浄な面同士が接触することとなるので、良好な電気的接続性が得られる。
しかしながら、導体サイズが60mm2(例えば素線径:0.5mm、撚り本数:290本)以上のアルミ電線に、超音波溶接により端子金具を接続した場合に、端子接続部(溶接部)の接続信頼性(溶接性)が低下することがあった。
そこで、本発明者等は、端子接続部の接続信頼性が低下する要因として、導体素線の機械的特性(展延性)、及び導体表面の清浄性に着目した。つまり、導体素線が超音波溶接時の加圧により変形しやすいこと、また、集合導体(導体素線)と超音波ホーンとの接触界面に不純物が介在しないことが、接続信頼性を向上する上で重要であると考えた。
そこで、本発明者等は、端子接続部の接続信頼性が低下する要因として、導体素線の機械的特性(展延性)、及び導体表面の清浄性に着目した。つまり、導体素線が超音波溶接時の加圧により変形しやすいこと、また、集合導体(導体素線)と超音波ホーンとの接触界面に不純物が介在しないことが、接続信頼性を向上する上で重要であると考えた。
特に、導体表面の清浄性については、アルミ電線の製造工程で使用される潤滑油が導体表面に残存することによる影響を検討した。一般に、アルミ電線の製造工程においては、所定の機械的特性が効率よく得られる範囲で、焼鈍時間はできるだけ短く設定される。そのため、導体表面に付着した潤滑油は完全に除去されず、少なからず残存する。しかし、導体表面に微量の潤滑油が残存していても、製品段階において支障ないため、従来は、これについては全く重要視されていない。
発明者等は、導体表面に潤滑油が残存すると、微量であっても超音波振動の伝達が阻害され、端子接続部の接続信頼性が低下するのではないかと考えた。そして、導体表面に残存する潤滑油の付着量が端子接続部の接続信頼性に影響を与えることを突き止め、超音波溶接に適した潤滑油の付着量を規定する本発明に想到した。
本発明の目的は、超音波溶接により端子金具を接続したときの接続信頼性を向上できるアルミ電線を提供することである。
本発明に係るアルミ電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導体素線を複数撚り合わせてなる集合導体の外周面に絶縁被覆が施され、超音波溶接により端子金具が接続されるアルミ電線であって、
前記集合導体を構成する導体素線の引張強さが、70MPa以上100MPa以下であり、
前記集合導体表面の潤滑油の付着量が、0.10mg/kg以下であることを特徴とする。
前記集合導体を構成する導体素線の引張強さが、70MPa以上100MPa以下であり、
前記集合導体表面の潤滑油の付着量が、0.10mg/kg以下であることを特徴とする。
本発明に係るアルミ電線によれば、超音波溶接により端子金具を接続したときの接続信頼性を格段に向上することができる。また、ワイヤーハーネスに要求される機械的特性(強度、展延性)も満たされる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係るアルミ電線1を示す斜視図である。図1に示すように、アルミ電線1は、複数の導体素線111を撚り合わせてなる集合導体11の外周面に絶縁被覆12が施された構成を有する。
図1は、実施の形態に係るアルミ電線1を示す斜視図である。図1に示すように、アルミ電線1は、複数の導体素線111を撚り合わせてなる集合導体11の外周面に絶縁被覆12が施された構成を有する。
導体素線111は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金で構成される。また、加工性、熱伝導性、電気伝導性の観点から、導体素線111は、純度99%以上の純アルミニウム(1000番台のアルミニウム)であることが好ましい。
集合導体11は、複数本の導体素線111を撚り合わせたものである。図1では簡略化して示しているが、集合導体11は、例えば、素線径:0.7mmの導体素線111を16本撚り合わせて一次集合線とし、さらにこれを19束撚り合わせた複合撚線(撚り本数:304本)である。
絶縁被覆12は、例えば塩化ビニル等の樹脂で構成され、所定の仕上がり外径となるように形成される。
なお、導体素線111の外径、撚り本数、また絶縁被覆12の厚さ、材質等は、ここで説明したものに限定されない。
なお、導体素線111の外径、撚り本数、また絶縁被覆12の厚さ、材質等は、ここで説明したものに限定されない。
図2は、超音波溶接によりアルミ電線1に接続される端子金具の一例を示す斜視図である。
図2に示す端子金具2は、例えばコネクタの雄型端子金具が接続される雌型端子金具である。端子金具2は、例えば黄銅又はリン青銅からなる金属板材のプレス加工により所定の形状に成形される。
図2に示す端子金具2は、例えばコネクタの雄型端子金具が接続される雌型端子金具である。端子金具2は、例えば黄銅又はリン青銅からなる金属板材のプレス加工により所定の形状に成形される。
図2に示すように、端子金具2は、接続相手となる雄型端子金具に接続される接続部21、接続部21に連設されるワイヤーバレル部22、及びワイヤーバレル部22に連設される被覆バレル部23を備える。
接続部21は、雄型端子金具(図示略)の雄タブを挿入可能な筒状に形成され、内部に弾性接触片21aを有する。弾性接触片21aと雄型端子金具(図示略)の雄タブとが弾性的に接触することにより、端子金具2と雄型端子金具(図示略)とが電気的に接続される。
ワイヤーバレル部22は、全体として断面U字状に成形され、アルミ電線1の端末部の集合導体11を把持して、超音波溶接により接続される。
被覆バレル部23は、ワイヤーバレル部22より大きい断面U字状に成形され、アルミ電線1の端末部の絶縁被覆12を把持して包み込むように圧着される。
被覆バレル部23は、ワイヤーバレル部22より大きい断面U字状に成形され、アルミ電線1の端末部の絶縁被覆12を把持して包み込むように圧着される。
アルミ電線1に端子金具2を接続するに際し、アルミ電線1の端末部は、所定長(例えば2〜3cm)の絶縁被覆12が剥がされ、集合導体11が露出した状態とされる。
超音波溶接では、図3に示すように、支持台(図示略)に端子金具2が固定され、露出した集合導体11がワイヤーバレル部22に載置される。そして、集合導体11の上方(ワイヤーバレル部22の底面と反対側)から超音波ホーン3が圧接される。集合導体11は、超音波ホーン3により所定の圧力(例えば4000N)で加圧されながら、所定の周波数、振幅を有する超音波振動が印加される。この状態で所定時間保持することにより、アルミ電線1は端子金具2に電気的に接続される。
超音波溶接では、図3に示すように、支持台(図示略)に端子金具2が固定され、露出した集合導体11がワイヤーバレル部22に載置される。そして、集合導体11の上方(ワイヤーバレル部22の底面と反対側)から超音波ホーン3が圧接される。集合導体11は、超音波ホーン3により所定の圧力(例えば4000N)で加圧されながら、所定の周波数、振幅を有する超音波振動が印加される。この状態で所定時間保持することにより、アルミ電線1は端子金具2に電気的に接続される。
上述したアルミ電線1は、伸線工程、撚線工程、焼鈍工程、押出被覆工程により製造される。
伸線工程では、太径のアルミ線を複数のダイスに通して段階的に細線化することにより、所定の素線径を有する導体素線111が作製される。導体素線111は、伸線されることで硬化する(引張強さが高くなる)。
撚線工程では、撚り線機で複数本の導体素線111を撚り合わせることにより、集合導体11が作製される。伸線工程、撚線工程では、作業性を向上させるために、導体表面に潤滑油が塗布される。そのため、伸線工程、撚線工程を経て作製された集合導体11の導体表面には潤滑油が付着する。
伸線工程では、太径のアルミ線を複数のダイスに通して段階的に細線化することにより、所定の素線径を有する導体素線111が作製される。導体素線111は、伸線されることで硬化する(引張強さが高くなる)。
撚線工程では、撚り線機で複数本の導体素線111を撚り合わせることにより、集合導体11が作製される。伸線工程、撚線工程では、作業性を向上させるために、導体表面に潤滑油が塗布される。そのため、伸線工程、撚線工程を経て作製された集合導体11の導体表面には潤滑油が付着する。
焼鈍工程では、集合導体11をボビンに巻回した状態で不活性ガス雰囲気中に配置し、所定の焼鈍条件で熱処理を施す。これにより、導体素線111は軟化し、内部歪みが取り除かれるため、展延性が向上する(引張強さは低下する)。また、集合導体11の表面に付着している潤滑油が除去される。
そして、押出被覆工程において、集合導体11の外周面に、所定厚さの絶縁被覆12が形成され、アルミ電線1が完成する。
本実施の形態では、上述した焼鈍工程を、所定の焼鈍条件下で行うことにより、集合導体11が所定の機械的特性(強度、展延性)を有するとともに、導体表面における潤滑油の付着量が所定量以下となるようにしている。具体的には、集合導体11を構成する導体素線111の引張強さが70MPa以上100MPa以下で、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg以下となるように、焼鈍条件を設定する。
ここで、集合導体11を構成する導体素線111の引張強さは、集合導体11の撚りを戻して採取した複数本(例えば5本)の素線を測定した平均値である。なお、集合導体11の引張強さは、導体素線111の引張強さ(平均値)と同じと考えてもよい。
また、導体表面の潤滑油の付着量は、アルミ電線1から所定の長さの集合導体11(撚り線)を切り出して、溶剤(例えばヘキサン)で十分に洗浄することにより、撚り線表面の付着油分を溶剤中に溶かし、その後この溶剤を蒸発、乾固させ、その後残渣分を油分濃度測定溶媒に溶解させ、油分濃度計で測定する。
焼鈍条件の一つである焼鈍温度は、焼鈍する材質により決定される。1000番台の純アルミニウムの場合、焼鈍温度は300〜400℃である。焼鈍温度を一定とした場合、焼鈍時間が長くなるにつれて、導体素線111は軟化され、内部歪みが取り除かれて展延性は向上する(引張強さは低下する)ので、焼鈍時間をある程度長くすることにより、集合導体11の引張強さを100MPa以下とすることができる。
また、焼鈍時間が長くなるにつれて、集合導体11の表面の潤滑油の付着量は少なくなるので、焼鈍時間をある程度長くすることにより、集合導体11の表面の潤滑油の付着量を0.10mg/kg以下とすることができる。
また、焼鈍時間が長くなるにつれて、集合導体11の表面の潤滑油の付着量は少なくなるので、焼鈍時間をある程度長くすることにより、集合導体11の表面の潤滑油の付着量を0.10mg/kg以下とすることができる。
一方で、集合導体11(導体素線111)の引張強さは、ある程度低下した後は、焼鈍時間を長くしても一定に保持される。したがって、アルミニウム又はアルミニウム合金の場合は、ワイヤーハーネス等の用途に要求される70MPa以上の強度は確保されると考えてよい。
したがって、焼鈍時間を一定時間以上とすることで、ワイヤーハーネス等の用途に要求される強度を確保しつつ、集合導体11の引張強さを100MPa以下とすることができ、かつ、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg以下とすることができる。
このように、実施の形態に係るアルミ電線1においては、集合導体11を構成する導体素線111の引張強さが100MPa以下となっているので、超音波溶接において集合導体11が加圧されたときに、導体素線111は容易に変形して、導体素線111同士の隙間がなくなる。
さらに、アルミ電線1においては、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg以下であり、集合導体11の導体表面は極めて清浄な状態となっているので、超音波溶接において集合導体11が加圧されたときに、導体素線111と超音波ホーン3が良好に密着し、導体素線111同士も良好に密着する。
これにより、超音波ホーン3からの超音波振動は効率よく集合導体11全体に伝達されるので、良質な端子接続部が形成される。したがって、超音波溶接によりアルミ電線1に端子金具2を接続したときの接続信頼性が格段に向上する。
さらに、アルミ電線1においては、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg以下であり、集合導体11の導体表面は極めて清浄な状態となっているので、超音波溶接において集合導体11が加圧されたときに、導体素線111と超音波ホーン3が良好に密着し、導体素線111同士も良好に密着する。
これにより、超音波ホーン3からの超音波振動は効率よく集合導体11全体に伝達されるので、良質な端子接続部が形成される。したがって、超音波溶接によりアルミ電線1に端子金具2を接続したときの接続信頼性が格段に向上する。
また、集合導体11の引張強さが70MPa以上となっているので、ワイヤーハーネスに要求される機械的特性(強度、展延性)は確保される。
このようにして得られた端子金具付きアルミ電線は、例えば自動車の車内配線用のワイヤーハーネス(特にバッテリーケーブル)として好適である。
このようにして得られた端子金具付きアルミ電線は、例えば自動車の車内配線用のワイヤーハーネス(特にバッテリーケーブル)として好適である。
集合導体11の引張強さが100MPaを超える場合、導体素線111が変形しにくく、超音波溶接時に、導体素線111同士の隙間をなくすために過大な加圧力が必要となるので、溶接設備が過度に大型化してしまうが、本実施の形態のアルミ電線1を適用することで、このような問題も生じない。
[実施例]
実施例1〜4では、材質がA1350のアルミニウムからなる素線径:0.7mmの導体素線111を16本撚り合わせて一次集合線とし、さらにこれを19束撚り合わせた複合撚線(撚り本数:304本)で集合導体11を構成したアルミ電線1を作製した(導体サイズ:120mm2)。アルミ電線1を作製するに際して、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg以下となるように焼鈍時間を設定して、焼鈍工程を行った。このときの焼鈍温度は360〜380℃とした。
なお、実施例1〜4において、伸線工程、撚線工程、押出被覆工程は同様に行った。また、実施例1〜4は焼鈍時間が異なるが、集合導体11の引張強さは焼鈍時間に関係なく、約90MPaであった。
実施例1〜4では、材質がA1350のアルミニウムからなる素線径:0.7mmの導体素線111を16本撚り合わせて一次集合線とし、さらにこれを19束撚り合わせた複合撚線(撚り本数:304本)で集合導体11を構成したアルミ電線1を作製した(導体サイズ:120mm2)。アルミ電線1を作製するに際して、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg以下となるように焼鈍時間を設定して、焼鈍工程を行った。このときの焼鈍温度は360〜380℃とした。
なお、実施例1〜4において、伸線工程、撚線工程、押出被覆工程は同様に行った。また、実施例1〜4は焼鈍時間が異なるが、集合導体11の引張強さは焼鈍時間に関係なく、約90MPaであった。
実施例1〜4で作製したアルミ電線1に、超音波溶接によりニッケルメッキ製の端子金具2を接続して、端子金具付きアルミ電線を作製した。また、溶接時の超音波出力は4KW、加圧力は4500Nであった。
[比較例]
比較例1〜3では、実施例と同様の構造を有するアルミ電線1を作製するに際して、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg超となるように焼鈍時間を設定して、焼鈍工程を行った。その他の条件は、実施例と同様とした。そして、比較例1〜3で作製したアルミ電線1に、超音波溶接によりニッケルメッキ製の端子金具2を接続して、端子金具付きアルミ電線を作製した。
比較例1〜3では、実施例と同様の構造を有するアルミ電線1を作製するに際して、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg超となるように焼鈍時間を設定して、焼鈍工程を行った。その他の条件は、実施例と同様とした。そして、比較例1〜3で作製したアルミ電線1に、超音波溶接によりニッケルメッキ製の端子金具2を接続して、端子金具付きアルミ電線を作製した。
実施例及び比較例で作製した端子金具付きアルミ電線を用いて、それぞれの端子接続部について接続信頼性を評価した。評価結果を表1に示す。
端子接続部の接続信頼性の評価は、端子接続部の引張荷重(端子金具からアルミ電線が抜ける又はアルミ電線が破断する荷重)で判断した。端子接続部の引張荷重が集合導体11の引張荷重(導体素線111の引張強さ×断面積)の40%未満(すなわち、4320N未満)である場合に実使用上問題ありとした。
端子接続部の接続信頼性の評価は、端子接続部の引張荷重(端子金具からアルミ電線が抜ける又はアルミ電線が破断する荷重)で判断した。端子接続部の引張荷重が集合導体11の引張荷重(導体素線111の引張強さ×断面積)の40%未満(すなわち、4320N未満)である場合に実使用上問題ありとした。
表1に示すように、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が少ない程、端子接続部の接続信頼性が向上した。また、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg以下である実施例1〜4については良好な接続信頼性が得られた。一方、集合導体11の表面の潤滑油の付着量が0.10mg/kg超である比較例1〜3については、所望の引張荷重が得られず、実使用上問題ありとなった。
また、実施例1〜4より、集合導体11の表面の潤滑油の付着量は0.08mg/kg以下であることが好ましく(実施例3)、0.05mg以下であることがより好ましい(実施例1、2)ことがわかった。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、実施の形態で説明したように、集合導体11の機械的特性と導体表面の潤滑油の付着量を規定することは、素線径が0.4〜1.0mm、撚り本数が150〜400本であるアルミ電線1に特に好適である。このようなアルミ電線1においては、導体素線111同士の隙間が極めて多く存在することとなり、超音波溶接時にこの隙間をなくすことが極めて重要となるためである。
例えば、実施の形態で説明したように、集合導体11の機械的特性と導体表面の潤滑油の付着量を規定することは、素線径が0.4〜1.0mm、撚り本数が150〜400本であるアルミ電線1に特に好適である。このようなアルミ電線1においては、導体素線111同士の隙間が極めて多く存在することとなり、超音波溶接時にこの隙間をなくすことが極めて重要となるためである。
また、本発明は、自動車等で使用されるバッテリーケーブルに限らず、産業用のアルミ電線であっても、超音波溶接で端子接続を行うものに活用できる。例えば、盤内配線等で使用されるアルミ電源ケーブルであって、特に導体サイズが10mm2以上のものに好適である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 アルミ電線
11 集合導体
111 導体素線
12 絶縁被覆
2 端子金具
21 接続部
22 ワイヤーバレル部
23 被覆バレル部
11 集合導体
111 導体素線
12 絶縁被覆
2 端子金具
21 接続部
22 ワイヤーバレル部
23 被覆バレル部
Claims (5)
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導体素線を複数撚り合わせてなる集合導体の外周面に絶縁被覆が施され、超音波溶接により端子金具が接続されるアルミ電線であって、
前記集合導体を構成する導体素線の引張強さが、70MPa以上100MPa以下であり、
前記集合導体表面の潤滑油の付着量が、0.10mg/kg以下であることを特徴とするアルミ電線。 - 前記集合導体表面の潤滑油の付着量が、0.08mg/kg以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミ電線。
- 前記集合導体表面の潤滑油の付着量が、0.05mg/kg以下であることを特徴とする請求項2に記載のアルミ電線。
- 前記集合導体は、素線径が0.4〜1.0mm、撚り本数が150〜400本であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアルミ電線。
- 前記導体素線が、純度99%以上の純アルミニウムで構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のアルミ電線。
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