以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[物流管理システムの構成]
図1は、本発明の実施形態による物流管理システムの構成を示すブロック図である。図1を参照するに、物流管理システムはメイン・システム100とバックアップ・システム200とを備えている。メイン・システム100は、平常時に、物流に関する業務を管理するためのシステムとして利用される部分である。バックアップ・システム200は、地震等に被災することによってメイン・システム100の機能が停止した場合、メイン・システム100に代わって物流に関する業務を管理するためのシステムである。バックアップ・システム200は一般に、メイン・システム100の所在地からは遠く離れた場所に設置され、メイン・システム100と同時には被災しないように配慮されている。バックアップ・システム200は更に、活断層のない地域等、メイン・システム100の所在地よりも地震等の自然災害が少ない場所に設置されている。メイン・システム100とバックアップ・システム200とは、イントラネット又はインターネット等のWAN300を通して各地の物流センター等のLAN400に接続され、更に電話回線600に接続されている。それらのシステム100、200は、WAN300又は電話回線600を通したEDI(Electronic Data Interchange)を利用して、荷主及び荷受け人等の顧客が所有するPC(Personal Computer)700から、物品の配送に関する注文を受け付ける。また、それらのシステム100、200の間は専用回線500で直に接続されている。専用回線500は、物理的なものであっても、VPN(Virtual Private Network)を利用した論理的なものであってもよい。
メイン・システム100は、第1受注部110、第1記録部120、第1管理部130、第1ネットワーク通信部140、第1専用回線通信部150、及び第1バス160を含む。これらの要素は、第1バス160によって互いにデータ交換可能に接続されている。
第1受注部110は、顧客のPC700又は物流センター等のLAN400と第1管理部130との間でのEDIによるデータ交換に利用される。第1受注部110は第1受付部111とEDIサーバ112とを含む。第1受付部111は電話回線600に接続され、電話回線600を通して顧客のPC700からEDIデータを受け付けてEDIサーバ112へ渡す。顧客からのEDIデータは注文に関するデータである。注文は、入庫予定及び出荷指示等のデータの登録要求、並びに、各種データの照会及び変更要求を含む。第1受付部111は更に、電話回線600を通してEDIサーバ112から顧客のPC700へEDIデータを送る。顧客へのEDIデータは、入庫、在庫、又は出庫に関する報告、及び照会への回答を含む。EDIサーバ112はワークステーション又はPCで構築され、EDIに利用される各種アプリケーション・プログラムを実行して、EDIの各種機能を実行する。特にEDIデータは顧客ごとにコード及びフォーマットが異なるので、EDIサーバ112は各顧客からのEDIデータを、第1管理部130で使用されるコード及び統一フォーマットに変換して第1管理部130に渡す。また、EDIによる通信プロトコルも顧客ごとに異なるので、EDIサーバ112は各顧客に合った通信プロトコルでEDIデータをその顧客のPC700と交換する。更に、EDIサーバ112はEDIデータを、電話回線600と第1受付部111とで構成される通信経路の他に、WAN300と第1ネットワーク通信部140とで構成される通信経路を通して、顧客のPC700又は物流センター等のLAN400と交換する。
第1記録部120は、大容量HDDを含むストレージ・サーバである。第1記録部120は第1受注部110からEDIデータと環境設定データとを受け取って保管する。環境設定データは、第1受注部110が顧客のPC700からEDIデータを受け付けるための環境を設定するのに必要なパラメータであり、電話番号、センター・コード、パスワード、及び通信速度等、EDIサーバ112と顧客のPC700との間での通信プロトコルの利用に必要なパラメータ、及び、フォーマット変換に必要なパラメータを含む。
第1管理部130はWMSサーバ131と業務サーバ132とを含む。WMSサーバ131はメインフレームに組み込まれ、倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)と配送管理システム(TMS:Transportation Management System)とを構成する各種アプリケーション・プログラムを実行する。WMSは、物流センター等における、入庫、在庫、出庫、ピッキング、検品、及び棚卸し等、倉庫管理に関するデータを、マスタ・データとトランザクション・データとの形式で管理する。TMSは、自動車、船、及び飛行機等の配送手段の割り当て(以下、配車という。)、配送手段の運行状況と物品の配送状況との把握、及び運賃の計算に利用され、それらの処理に関するデータをマスタ・データとトランザクション・データとの形式で管理する。WMSサーバ131はEDIサーバ112を通して、顧客からはデータの登録要求又は変更要求を受け、各物流センター等のLAN400からは倉庫管理又は配車処理に関するデータを受ける。WMSサーバ131は更に、それらのデータに応じて各種マスタ・データとトランザクション・データとを更新する。業務サーバ132はワークステーション又はPCで構築され、量販店、通販、アパレル、医療、住宅建材、及び化学物質の運搬等、顧客の業種別に備えられ、物流に関する情報処理のうち、各業種に固有の情報処理を行う。
第1ネットワーク通信部140は、WAN300に接続されたルータを含み、メイン・システム100内の他の要素と顧客のPC700又は物流センター等のLAN400との間で、WAN300を通して交換されるデータを中継する。
第1専用回線通信部150は、専用回線500に接続されたルータを含む。第1専用回線通信部150は、第1受注部110、第1記録部120、及び第1管理部130からデータを受け取り、専用回線500を通してバックアップ・システム200へそのデータを送出する。逆に、第1専用回線通信部150はバックアップ・システム200から専用回線500を通してデータを受け取り、そのデータをメイン・システム100内の各要素110、120、130へ送出する。
バックアップ・システム200は、第2受注部210、第2記録部220、第2管理部230、第2ネットワーク通信部240、第2専用回線通信部250、及び第2バス260を含む。これらの要素は、第2バス260によって互いにデータ交換可能に接続されている。
第2受注部210は、顧客のPC700又は物流センター等のLAN400と第2管理部230との間でのEDIによるデータ交換に利用される。第2受注部210は第2受付部211とEDIサーバ212とを含む。第2受付部240は電話回線600に接続されている。物流管理システムの管理者は、メイン・システム100の機能が停止した場合、電話回線600の管理会社に、メイン・システム100の第1受付部111宛の通話を第2受付部211宛の通話に切り換えさせる。それにより、第2受付部211は電話回線600を通して、顧客のPC700とEDIサーバ212との間でEDIデータを交換させる。EDIサーバ212はワークステーション又はPCで構築され、メイン・システム100のEDIサーバ112と機能が同等である。EDIサーバ212はメイン・システム100のEDIサーバ112と、物理的に同じ構成であっても、仮想サーバの利用によって論理的に対応する構成であってもよい。メイン・システム100の機能が停止した場合、EDIサーバ212は、第2記録部220に保管されたEDIデータと環境設定データとの複製を利用して、メイン・システム100のEDIサーバ112に代わって、EDIの各種機能を継続する。具体的には、EDIサーバ212は各顧客からのEDIデータを、第2管理部230で使用されるコード及び統一フォーマットに変換して第2管理部230に渡す。また、EDIサーバ212は各顧客に合った通信プロトコルでEDIデータをその顧客のPC700と交換する。更に、EDIサーバ212はEDIデータを、電話回線600と第2受付部211とで構成される通信経路の他に、WAN300と第2ネットワーク通信部240とで構成される通信経路を通して、顧客のPC700又は物流センター等のLAN400と交換する。
第2記録部220は、大容量HDDを含むストレージ・サーバである。第2記録部220は専用回線500を通して、メイン・システム100の第1記録部120からはEDIデータと環境設定データとを、メイン・システム100のWMSサーバ131と業務サーバ132とからはマスタ・データとトランザクション・データとを、それぞれ所定の時間間隔、例えば5分間隔で複製する。第2記録部220は更に、メイン・システム100の機能が停止した場合、EDIサーバ212からEDIデータを受け取って保管する。それにより、第2記録部220は第1記録部120に代わって、第1記録部120の機能を継続する。
第2管理部230はWMSサーバ231と業務サーバ232とを含む。WMSサーバ231はワークステーション又はPCで構築され、メイン・システム100のWMSサーバ131と機能の一部が同等である。特にWMSサーバ231はメイン・システム100のWMSサーバ131よりも簡単な構成である。WMSサーバ231は、第2記録部220に保管されたマスタ・データとトランザクション・データとの複製を監視する。それにより、WMSサーバ231の状態が、メイン・システム100のWMSサーバ131の最新の状態と等しく維持される。メイン・システム100の機能が停止した場合、WMSサーバ231は、第2記録部220に保管されたマスタ・データとトランザクション・データとの複製を利用して、WMSとTMSとに関するアプリケーション・プログラムを実行する。それにより、WMSサーバ231はメイン・システム100のWMSサーバ131に代わって、WMSとTMSとの機能のうち、最低限継続が必要なものを継続する。WMSサーバ231は特にメイン・システム100のWMSサーバ131に代わって、各物流センター等のLAN400とWAN300を通してデータを交換する。業務サーバ232はワークステーション又はPCで構築され、メイン・システム100の業務サーバ132と機能が同等である。業務サーバ232はメイン・システム100の業務サーバ132と、物理的に同じ構成であっても、仮想サーバの利用によって論理的に対応する構成であってもよい。業務サーバ232は、第2記録部220に保管されたマスタ・データとトランザクション・データとの複製を監視する。それにより、業務サーバ232の状態が、メイン・システム100の業務サーバ132の最新の状態と等しく維持される。メイン・システム100の機能が停止した場合、業務サーバ232は、第2記録部220に保管されたマスタ・データとトランザクション・データとの複製を利用して、メイン・システム100の業務サーバ132と同様に各種アプリケーション・プログラムを実行する。それにより、業務サーバ232はメイン・システム100の業務サーバ132に代わって、その機能を継続する。
第2ネットワーク通信部240は、WAN300に接続されたルータを含む。一方、第2ネットワーク通信部240は、平常時、第2バス260から切断されている。物流管理システムの管理者は、メイン・システム100の機能が停止した場合に、第2ネットワーク通信部240を第2バス260に接続する。それにより、第2ネットワーク通信部240は、WAN300を通してバックアップ・システム200内の他の要素と顧客のPC700又は物流センター等のLAN400との間で交換されるデータを中継する。
第2専用回線通信部250は、専用回線500に接続されたルータを含む。第2専用回線通信部250はメイン・システム100から専用回線500を通してデータを受け取り、第2受注部210、第2記録部220、及び第2管理部230へそのデータを送出する。逆に、第2専用回線通信部250は、バックアップ・システム200内の各要素210、220、230からデータを受け取り、専用回線500を通してメイン・システム100へそのデータを送出する。
各物流センター等のLAN400は、ルータ401、サーバ402、PC端末403、及びバス404を含む。それらの要素はバス404で互いにデータ交換可能に接続されている。ルータ401はWAN300に接続され、WAN300を通して、サーバ402の管理するデータをメイン・システム100又はバックアップ・システム200へアップロードし、逆に、メイン・システム100又はバックアップ・システム200の管理するデータをサーバ402へダウンロードする。サーバ402は物流センター等の業務管理に関するアプリケーション・プログラムを実行して、その物流センター等における入庫、在庫、出庫、及び配車等に関するデータを管理する。PC端末403は、オペレータによって入力された、入庫、在庫、出庫、及び配車等に関するデータをサーバ402に登録する。また、PC端末403は、オペレータの操作に応じて、WAN300を通してメイン・システム100又はバックアップ・システム200にアクセスし、顧客からの注文、他の物流センター等における入庫/在庫/出庫状況、特定の商品の配送状況、及び特定の配送手段の稼働状況等に関するデータを画面又は帳票に出力する。
[EDIサーバと業務サーバとのIPアドレス]
メイン・システム100及びバックアップ・システム200の各要素にはIP(Internet Protocol)アドレスが割り当てられている。特に、バックアップ・システム200のEDIサーバ212と業務サーバ232とはそれぞれ、メイン・システム100のEDIサーバ112と業務サーバ132と同じIPアドレスを共有する。
顧客のPC700、及び物流センター等のサーバ402とPC端末403とは、WAN300を通してメイン・システム100の要素にデータを送る際、その要素のIPアドレスを宛先に指定する。ここで、顧客のPC700をWAN300に接続するルータと、その物流センター等のルータ401とのいずれのルーティング・テーブルにも“AS−path−prepend”が設定されている。それにより、各ルータ401からメイン・システム100までの経路が通過するAS(Anonymous System)の数よりも、そのルータ401からバックアップ・システム200までの経路が通過するASの数が見かけ上多い。その結果、EDIサーバ112、212又は業務サーバ132、232を宛先とするデータが送られる場合、各ルータ401からメイン・システム100までの経路が、各ルータ401からバックアップ・システム200までの経路よりも優先される。すなわち、各ルータ401はデータをメイン・システム100へ優先的に送る。メイン・システム100が正常に機能している場合、そのデータは第1ネットワーク通信部140によって受理される。一方、メイン・システム100の機能が被災時の障害によって停止している場合、物流管理システムの管理者は第1ネットワーク通信部140にそのデータを拒否させる。それに応じて、各ルータ401はそのデータをバックアップ・システム200へ送出する。こうして、顧客のPC700、及び物流センター等のLAN400からメイン・システム100宛で送出されるデータを、メイン・システム100の状態に応じて、メイン・システム100とバックアップ・システム200とのいずれに受理させることもできる。
[EDIデータ]
図2は、EDIデータの典型的なデータ構造を示す模式図である。このデータ構造は、EDIデータの主な標準規格、EDIFACT、CII、及びANSI X12で共通する。図2を参照するに、EDIデータの1つのファイル800は一般に複数のメッセージ・グループ801から構成される。各メッセージ・グループ801の先端にはグループ・ヘッダ811が置かれ、後端にはグループ・トレーラ813が置かれている。それらによって、異なるメッセージ・グループ間の境界が識別される。グループ・ヘッダ811とグループ・トレーラ813との間には、一般に複数のメッセージ812が配置される。各メッセージ812の先端にはメッセージ・ヘッダ821が置かれ、後端にはメッセージ・トレーラ823が置かれている。それらによって、異なるメッセージ間の境界が識別される。メッセージ・ヘッダ821とメッセージ・トレーラ823との間には、一般に複数のデータ要素822が配置される。各データ要素822は、発注者名、配送対象物の品名、及び数量等、顧客とWMSサーバ等との間で交換されるべき明細情報の各項目を表すテキスト・データを含む。異なるデータ要素間の境界は、アスタリスク又は正符号等、特定の区切り記号によって識別される。
[EDIサーバ]
図3の(a)は、EDIサーバと他の装置との間で行われるデータ交換を示す模式図である。図3の(b)は、図3の(a)に示されている装置間で交換されるデータの内訳を示す表である。
EDIサーバ112は、顧客のPC700又は物流センター等のPC端末403から第1群のデータを受信する。図3の(b)に示されているように、第1群のデータは、入庫予定、出荷指示、品名メンテナンスデータ、及び得意先メンテナンスデータを含む。入庫予定は、荷主から所望の物流センター等へ物品を配送することを要求するためのEDIデータであり、荷主名、入庫先、入庫対象物の品名、及び数量等の明細情報を含む。出荷指示は、所望の物流センター等から荷受け人へ物品を配送することを要求するためのEDIデータであり、荷主名、出庫元、配送先、出庫対象物の品名、及び数量等の明細情報を含む。品名メンテナンスデータと得意先メンテナンスデータとはそれぞれ、WMSサーバ131に管理されている品名マスタと得意先マスタとに新たなデータを登録し、又は登録済みのデータを変更することを要求するEDIデータである。第1群のデータは一般に顧客別にフォーマットが異なる。EDIサーバ112は第1群のデータを受けたとき、それらのデータを統一フォーマットに変換する。この変換処理をマッピングという。EDIサーバ112はまた、第1群のEDIデータで使用される文字コード及び区分コード(以下、文字コード等と略す。)を、統一フォーマットで使用される文字コード等へ変換する。文字コードは、JISコード、EUC−JPコード、及びShift_JISコードを含む。区分コードは、商品の種類等、種々の分類を識別するためのコードであり、顧客ごとに異なる。
EDIサーバ112は、第1群のデータにマッピングと文字コード等の変換とを施した後、それらのデータをWMSサーバ131へ送る。図3の(a)では、第2群のデータが、EDIサーバ112からWMSサーバ131へ送られるデータを表す。図3の(b)に示されているように、第2群のデータは入庫イメージと出荷イメージとを含む。入庫イメージは、入庫予定を統一フォーマットに変換したものであり、出荷イメージは、出荷指示を統一フォーマットに変換したものである。
EDIサーバ112は、WMSサーバ131から第3群のデータを受信する。図3の(b)に示されているように、第3群のデータは、入庫報告、出庫報告、在庫報告、及び運賃データを含む。入庫報告は、顧客からの入庫予定に応じて行われた入庫に関する報告を表すEDIデータである。出庫報告は、顧客からの出荷指示に応じて行われた出庫に関する報告を表すEDIデータである。在庫報告は、WMSサーバ131が顧客から在庫の照会を受けたとき、その照会への回答として作成されるEDIデータである。運賃データは、顧客からの入庫予定又は出荷指示に応じて行われた物品の配送に要した運賃を表すEDIデータである。入庫報告、出庫報告、在庫報告、及び運賃データのフォーマットは、WMSサーバ131によって、送信先の顧客のPC700がEDIに使用するフォーマットに予め設定されている。従って、EDIサーバ112は、入庫報告、出庫報告、在庫報告、及び運賃データに文字コード等の変換のみを施して、顧客のPC700へ送信する。図3の(a)では、第4群のデータが、EDIサーバ112から顧客のPC700へ送られるEDIデータを表す。
EDIサーバ112はまた、WMSサーバ131と業務サーバ132との間で交換されるデータを中継する。図3の(a)では、第5群のデータが、業務サーバ132からEDIサーバ112へ送られるデータを表し、第6群のデータが、EDIサーバ112から業務サーバ132へ送られるデータを表す。図3の(b)に示されているように、第2群のデータは第5群のデータを含み、第3群のデータは第6群のデータを含む。
[EDIサーバによる顧客のPC等からWMSサーバへのデータ送信]
図4は、EDIサーバ112が顧客のPC700等からWMSサーバ131へEDIデータを送信する処理のフローチャートである。ステップS401では、EDIサーバ112は、電話回線600又はWAN300を通して、顧客のPC700、又は物流センター等のサーバ402若しくはPC端末403から第1群のデータを受信する。次のステップS402では、EDIサーバ112は第1群のデータを統一フォーマットにマッピングする。次のステップS403では、EDIサーバ112は第1群のデータの文字コード等を、統一フォーマットで使用される文字コード等へ変換する。次のステップS404では、EDIサーバ112は、ステップS402、S403による処理を受けた第1群のデータをWMSサーバ131へ送信する。こうして、処理は終了する。
[EDIサーバによるWMSサーバから顧客のPC等へのデータ送信]
図5は、EDIサーバ112がWMSサーバ131から顧客のPC700等へEDIデータを送信する処理のフローチャートである。ステップS501では、EDIサーバ112は、WMSサーバ131から、第3群のデータのうち、入庫報告、出庫報告、在庫報告、又は運賃データを受信する。次のステップS502では、EDIサーバ112は、WMSサーバ131から受信されたEDIデータの文字コード等を、顧客のPC700とEDIサーバ112との間でのデータ交換で使用される文字コード等へ変換する。次のステップS503では、EDIサーバ112は、ステップS502による処理を受けたEDIデータを、電話回線600又はWAN300を通して顧客のPC700等へ送信する。こうして、処理は終了する。
[マスタ・データとトランザクション・データ]
マスタ・データは、1つのコードで一意に特定されるデータの集合、すなわちレコードから構成されている。例えば荷主マスタでは、一人の荷主に一意に割り当てられた識別子に、その荷主の名前と住所等の個人情報を表すレコードが対応付けられている。マスタ・データは、第1管理部130が顧客のPC700又は物流センター等のPC端末403から登録要求又は変更要求を受けたとき、第1管理部130によって作成され、又は変更される。トランザクション・データは、各種マスタ・データから引用されたコードの組み合わせに対応付けられたレコードから構成されている。例えば入出庫ジャーナルでは、倉庫の識別子と入出庫の対象物の識別子等の組み合わせに、日付と数量等を表すレコードが対応付けられている。倉庫の識別子は倉庫マスタによって特定の倉庫に関するレコードに対応付けられ、入出庫の対象物の識別子は品名マスタによって、特定の物品の種類と品番等を表すレコードに対応付けられている。トランザクション・データは、顧客のPC700若しくは物流センター等のPC端末403によって第1管理部130に入力され、又は、第1管理部130によって作成される。
[WMSサーバがWMSとして行う処理]
メイン・システム100のWMSサーバ131がWMSとして行う処理は、入庫管理、出庫管理、及び在庫管理を含む。バックアップ・システム200のWMSサーバ231も、WMSとして最低限継続させるべき機能として、それらの処理を行う能力を備えている。入庫管理は推奨ロケーションの選択処理と入庫確定処理とを含む。推奨ロケーションの選択処理では、顧客からの入庫予定に応じて入庫品の収納場所が選択される。入庫確定処理では、入庫実績に基づいて入庫作業の結果が確定されて入庫報告が作成される。出庫管理は引当処理と出庫確定処理とを含む。引当処理では、顧客からの出荷指示に応じて在庫の引き当てが行われる。出庫確定処理では、積込確認に応じて出庫作業の結果が確定されて出庫報告が作成される。在庫管理は、在庫データに基づいて、在庫報告を作成すると共に、倉庫の空き場所(以下、ロケーションという。)を把握する処理を含む。
<入庫管理>
図6の(a)は、入庫管理のうち、推奨ロケーションの選択処理を示す模式図である。WMSサーバ131はEDIサーバ112から入庫予定901を受信する。入庫予定901は、入庫元の場所、及び入庫品の種類と数量を表す。WMSサーバ131は、荷主マスタ、倉庫マスタ、及び品名マスタ等を参照して、入庫予定901からそれらの情報を読み出す。一方、WMSサーバ131はロケーション・データ902を含む。ロケーション・データ902はトランザクション・データであり、各倉庫の場所とロケーション、及びそのロケーションの大きさを表す。WMSサーバ131は、倉庫マスタ及び品名マスタ等を参照して、ロケーション・データ902からそれらの情報を読み出す。WMSサーバ131は、入庫予定901とロケーション・データ902とに基づいて推奨ロケーションを選択する。推奨ロケーションは、入庫品の収納場所として推奨されるロケーションである。WMSサーバ131は更に、選択された推奨ロケーションを示す入庫手板903を作成する。入庫手板903は、推奨ロケーションを含む物流センター等のPC端末によって画面又は紙に出力され、その物流センター等の作業員に対して入庫作業を指示するのに利用される。
図6の(b)は、入庫管理のうち、入庫確定処理を示す模式図である。入庫手板903に基づいた入庫作業が完了した場合、その作業の結果を示す入庫実績904が入庫手板903に加えられる。WMSサーバ131はその入庫実績904と入庫予定901とを対比して、入庫作業の結果を確定し、その結果を示す入庫ジャーナル905を作成する。入庫ジャーナル905はトランザクション・データである。WMSサーバ131は更に、入庫ジャーナル905に基づいて未入庫リスト906と入庫報告907とを作成する。未入庫リスト906は、入庫予定901の示す入庫品のうち、まだ入庫されていないもののリストである。未入庫リスト906は、物流センター等のPC端末によって画面又は紙に出力され、その物流センター等の作業員に対して更なる入庫作業を指示するのに利用される。入庫報告907は、確定された入庫作業の結果を示すEDIデータであり、EDIサーバ112を通して顧客のPC700へ送信される。
図7は、入庫管理のフローチャートである。ステップS701では、WMSサーバ131がEDIサーバ112から入庫予定を受信する。次のステップS702では、WMSサーバ131が入庫予定に応じて推奨ロケーションを選択する。次のステップS703では、WMSサーバ131が、選択された推奨ロケーションを示す入庫手板を作成する。次のステップS704では、WMSサーバ131が入庫実績を受け付けて、その入庫実績と入庫予定とを対比することで入庫作業の結果を確定する。次のステップS705では、WMSサーバ131は入庫作業の結果から入庫報告を作成して、EDIサーバ112へ送信する。こうして、処理は終了する。
<出庫管理>
図8の(a)は、出庫管理のうち、引当処理を示す模式図である。WMSサーバ131はEDIサーバ112から出荷指示910を受信する。出荷指示910は、出荷先の場所、及び出荷品の種類と数量を表す。WMSサーバ131は、荷主マスタ、倉庫マスタ、及び品名マスタ等を参照して、出荷指示910からそれらの情報を読み出す。一方、WMSサーバ131は在庫データ911を含む。在庫データ911は、各物流センター等に保管された在庫を示すトランザクション・データであり、出荷対象の物品の在庫を含む倉庫の場所、及びその在庫の収納場所と数量を表す。WMSサーバ131は、荷主マスタ、倉庫マスタ、及び品名マスタ等を参照して、在庫データ911からそれらの情報を読み出す。WMSサーバ131は出荷指示910と在庫データ911とに基づいて引当データ912を作成する。引当データ912は引当対象の在庫を示す。WMSサーバ131は更に、引当データ912に基づいて送り状データ913とピッキング指示914とを作成する。送り状データ913は、引当対象の在庫の種類と数量、及びその在庫の出荷先と出荷期日を示すトランザクション・データであり、後述のように、TMSによって配車処理に利用される。ピッキング指示914は、引当対象の在庫を保管する物流センター等ごとに、その在庫とその収納場所とを示すデータである。ピッキング指示914は、引当対象の在庫を保管する物流センター等に送られ、その物流センター等のサーバ又はPC端末により、ピッキング・リスト915と出荷指図書916との作成に利用される。ピッキング・リスト915はピッキング対象の在庫とその収納場所とのリストであり、出荷指図書916は、ピッキングされた在庫の出荷先と出荷期日とを示す。ピッキング・リスト915と出荷指図書916とは、その物流センター等のPC端末によって画面又は紙に出力され、その物流センター等の作業員に対して出庫作業を指示するのに利用される。
図8の(b)は、出庫管理のうち、出庫確定処理を示す模式図である。ピッキング・リスト915と出荷指図書916とに従って、ピッキングされた在庫が出荷物として配送車両等に積み込まれた場合、出庫作業の結果を示す積込確認917がWMSサーバ131に入力される。WMSサーバ131はその積込確認917に応じて出庫作業の結果を確定し、その結果を示す出庫ジャーナル918を作成すると共に、在庫データ911を更新する。出庫ジャーナル918はトランザクション・データである。WMSサーバ131は更に、出庫ジャーナル918に基づいて出庫報告919を作成する。出庫報告919は、確定された出庫作業の結果を示すEDIデータであり、EDIサーバ112を通して顧客のPC700へ送信される。
図9は、出庫管理のフローチャートである。ステップS901では、WMSサーバ131がEDIサーバ112から出荷指示を受信する。次のステップS902では、WMSサーバ131が出荷指示に応じて引当データを作成する。次のステップS903では、WMSサーバ131が引当データに基づいて、送り状データとピッキング指示とを作成する。次のステップS904では、WMSサーバ131が積込確認を受け付けて出庫作業の結果を確定する。次のステップS905では、WMSサーバ131は、出庫作業の結果から出庫報告を作成して、EDIサーバ112へ送信する。こうして、処理は終了する。
<在庫管理>
図10は、在庫管理の処理を示す模式図である。WMSサーバ131は顧客から在庫の照会を受けたとき、入庫ジャーナル905と出庫ジャーナル918とを参照して在庫の現状を確認して、その現状に基づいて在庫データ911を更新すると共に、在庫報告920を作成する。在庫報告920は、在庫の現状を示すEDIデータであり、EDIサーバ112を通して顧客のPC700へ送信される。WMSサーバ131はその他に、在庫の現状に基づいて、入庫管理で利用されるロケーション・データ902を更新する。また、在庫の整理等で在庫の収納場所又はロケーションが変更された場合、WMSサーバ131は在庫の現状に基づいて、それらの変更を示す入出庫ジャーナル921を作成する。
[WMSサーバがTMSとして行う処理]
メイン・システム100のWMSサーバ131がTMSとして行う処理は、配車処理、配送手段の運行状況と物品の配送状況との追跡処理、及び運賃計算を含む。バックアップ・システム200のWMSサーバ231は、TMSとして最低限継続させるべき機能として、配車処理を行う能力を備えている。配車処理では、配送担当者が出荷物に配送手段を割り当てる作業が、コンピュータを利用して支援される。配送手段の運行状況と物品の配送状況との追跡処理では、WMSサーバ131と各物流センター等のLAN400との間のデータ交換によって、配送手段の運行状況と物品の配送状況とが監視される。運賃計算では、出庫ジャーナル及び配車データ等に基づいて、出荷物の配送に要した運賃が計算される。
<配車処理>
図11は、配車処理を示す模式図である。WMSサーバ131は配車処理に、号車マスタ1001、地区マスタ1011、及び社員マスタ1021を利用する。号車マスタ1001は、各物流センター等又は運送業者が所有する配送手段、各配送手段の積載可能な物品の種類と数量、及び各配送手段の利用スケジュールを示す。地区マスタ1011は、物流センター等及び運送業者のそれぞれが配送を担当する地区を示す。社員マスタ1021は、配送手段の運転に従事する社員の識別情報、運転可能な配送手段の種類、及び危険物取扱者等の資格を示す。WMSサーバ131はその他に、路線業者着店マスタ、路線業者振分マスタ、郵便番号マスタ、及び運賃契約マスタ等を配車処理に利用してもよい。WMSサーバ131は、それらのマスタ・データと、出庫管理中の引当処理で作成された送り状データ913とを配車担当者に参照させて、出荷物を出荷先へ配送するのに利用可能な配送手段を割り当てさせる。WMSサーバ131は更に、配車データ1002、共用送り状1003、及び積込確認表1004を作成する。配車データ1002は、出荷物の配送に割り当てられた配送手段を示す。共用送り状1003は、出荷元の物流センター等のPC端末によって画面又は紙に出力され、配送手段の運転手又は運送業者に配送作業を指示するのに利用される。積込確認表1004は、出荷元の物流センター等のPC端末によって画面又は紙に出力され、その物流センター等の作業員に対して配送手段への出荷物の積み込み作業を指示するのに利用される。
図12は、配車処理のフローチャートである。ステップS1201では、WMSサーバ131の中でTMSとして機能する部分が、WMSとして機能する部分から送り状データを受信する。次のステップS1202では、WMSサーバ131が、配車担当者の操作に従って配車データを作成する。次のステップS1203では、WMSサーバ131が、送り状データと配車データとに基づいて、共用送り状と積込確認表とを作成する。こうして、処理は終了する。
[各記録部に保管されるデータ]
図13の(a)は、第1記録部120に保管されるデータの構造を示す模式図である。図13の(a)を参照するに、第1記録部120は、EDIデータ121と環境設定データ122とを含む。EDIデータ121は、EDIサーバ112が顧客のPC700及び物流センター等のPC端末403との間で交換するEDIデータの全体であり、具体的には、図3の(b)に示されている第1〜6群のデータに含まれるEDIデータである。環境設定データ122は、第1受注部110が顧客のPC700からEDIデータを受け付けるための環境を設定するのに必要なパラメータである。EDIデータ121と環境設定データ122とは、EDIサーバ112によって第1記録部120に書き込まれる。
図13の(b)は、第2記録部220に保管されるデータの構造を示す模式図である。図13の(b)を参照するに、第2記録部220は、EDIデータ221、環境設定データ222、WMSデータ223、及び業務サーバ・データ224を含む。
EDIデータ221と環境設定データ222とはそれぞれ、第1記録部120に保管されたEDIデータ121と環境設定データ122との複製である。被災時の障害によってメイン・システム100の機能が停止した場合、第2受注部210のEDIサーバ211が、第2記録部220に保管されたEDIデータ221と環境設定データ222とを利用して、顧客のPC700と第2管理部230との間でのEDIによるデータ交換を継続する。
WMSデータ223は、メイン・システム100のWMSサーバ131がWMS及びTMSとして機能する際に利用する各種マスタ・データMSTとトランザクション・データTRSとの組み合わせである。具体的には、図13の(b)に示されているように、マスタ・データMSTは、荷主マスタ、得意先マスタ、品名マスタ、倉庫マスタ等を含み、トランザクション・データTRSは、入出庫ジャーナル、送り状データ、及び配車データを含む。WMSデータ223は、メイン・システム100のWMSサーバ131によって専用回線500を通して第2記録部220へ所定の時間間隔、例えば5分間隔で書き込まれる。被災時の障害によってメイン・システム100の機能が停止した場合、バックアップ・システム200のWMSサーバ231が、第2記録部220に保管されたWMSデータ223を利用して、WMSの入庫管理、出庫管理、及び在庫管理、並びにTMSの配車処理を継続する。
業務サーバ・データ224は、メイン・システム100の業務サーバ132が利用する各種マスタ・データとトランザクション・データとの組み合わせである。業務サーバ・データ224は、メイン・システム100の業務サーバ132によって専用回線500を通して第2記録部220へ所定の時間間隔、例えば5分間隔で書き込まれる。被災時の障害によってメイン・システム100の機能が停止した場合、バックアップ・システム200の業務サーバ232が、第2記録部220に保管された業務サーバ・データ224を利用して、メイン・システム100の業務サーバ132の機能を継続する。
[メイン・システムとバックアップ・システムとの間でのデータ同期]
図14は、メイン・システム100のWMSサーバ131と第1記録部120とからバックアップ・システム200の第2記録部220までのデータの伝送経路を示す模式図である。
第1記録部120は、図13の(a)に示されているEDIデータ121と環境設定データ122とのそれぞれの変更履歴を含む。第1記録部120はそれらの変更履歴を利用して、所定の時間間隔、例えば5分間隔で各データ121、122の差分データを生成し、その差分データを第2記録部220宛で第1バス160へ送出する。第1専用回線通信部150はその差分データを専用回線500へ送出する。第2専用回線通信部250はその差分データを専用回線500から受け取って第2バス260へ送出する。第2記録部220はその差分データを受け取り、その差分データを利用して、自身の保管するEDIデータ221と環境設定データ222とを更新する。
メイン・システム100のWMSサーバ131は、図13の(b)に示されているWMSデータ223の変更履歴を含む。WMSサーバ131はその変更履歴を利用して、所定の時間間隔、例えば5分間隔でWMSデータ223の差分データを生成し、その差分データを第2記録部220宛で第1バス160へ送出する。第1専用回線通信部150はその差分データを専用回線500へ送出する。第2専用回線通信部250はその差分データを専用回線500から受け取って第2バス260へ送出する。第2記録部220はその差分データを受け取り、その差分データを利用して、自身の保管するWMSデータ223を更新する。バックアップ・システム200のWMSサーバ231はそのWMSデータを監視して、その変化に合わせて、内蔵の記憶部に保管されたデータを更新する。
メイン・システム100の業務サーバ132も同様に、自身の使用するマスタ・データとトランザクション・データとを所定の時間間隔、例えば5分間隔で、バックアップ・システム200の第2記録部220へ書き込む。バックアップ・システム200の業務サーバ232はそれらのデータを監視して、それらの変化に合わせて、内蔵の記憶部に保管されたデータを更新する。
被災時による障害でメイン・システム100の機能が停止した場合、バックアップ・システム200がメイン・システム100に代わって業務を継続する。それにより、第1記録部120が停止している間に第2記録部220のデータ221−224が更新されるので、第1記録部120のデータ121、122と第2記録部220のデータ221、222との間に差が生じる。従って、メイン・システム100の機能が復旧したとき、第2記録部220は、第1記録部120が停止する前後での差分データをメイン・システム100へ送る。メイン・システム100はその差分データに基づいて第1記録部120のデータ121、122を更新する。WMSサーバ131、231と業務サーバ132、232とに保管されるデータについても同様である。こうして、メイン・システム100は復旧後にバックアップ・システム200の機能を継続することができる。
[物流センター等による物流管理システムへのアクセス]
<メイン・システムが正常に機能している場合>
図15は、メイン・システム100が正常に機能している際に、ある物流センターのPC端末403からIPアドレス“10.70.yy.yy”へデータが伝送される経路を示す模式図である。ここで、IPアドレス“10.70.yy.yy”は、メイン・システム100のEDIサーバ112とバックアップ・システム200のEDIサーバ212とによって共有されている。PC端末403は、物流管理システムのEDIサーバへアクセス要求を送る際、その宛先にIPアドレス“10.70.yy.yy”を指定する。物流センターのルータ401はバス404を通してそのアクセス要求を受け取り、その宛先“10.70.yy.yy”を参照する。ルータ401のルーティング・テーブルによれば、WAN300では、ルータ401からメイン・システム100までの経路が通過するASの数よりも、ルータ401からバックアップ・システム200までの経路が通過するASの数が多い。従って、ルータ401はPC端末403からのアクセス要求をメイン・システム100へ送る。メイン・システム100では、第1ネットワーク通信部140が物流センターのルータ401からアクセス要求を受け取り、その宛先“10.70.yy.yy”を参照して、そのアクセス要求を第1バス160へ送出する。EDIサーバ112はそのアクセス要求の宛先“10.70.yy.yy”を参照して、そのアクセス要求を受理する。また、第1専用回線通信部150は、そのアクセス要求の宛先“10.70.yy.yy”を参照して、そのアクセス要求を専用回線500から遮断する。一方、バックアップ・システム200では、第2ネットワーク通信部240と第2バス260との間が切断されている。従って、第2ネットワーク通信部240は、仮に物流センターのルータ401からアクセス要求を受け取っても、そのアクセス要求を破棄する。こうして、メイン・システム100が正常に機能している場合、物流センターのPC端末403からIPアドレス“10.70.yy.yy”へのアクセス要求は、メイン・システム100のEDIサーバ112へ届く。
<メイン・システムの機能が停止している場合>
図16は、メイン・システム100の機能が停止している際に、ある物流センターのPC端末403からIPアドレス“10.70.yy.yy”へデータが伝送される経路を示す模式図である。PC端末403は物流管理システムのEDIサーバへアクセス要求を送る際、その宛先にIPアドレス“10.70.yy.yy”を指定する。物流センターのルータ401はバス404を通してそのアクセス要求を受け取り、その宛先“10.70.yy.yy”を参照する。図15の場合と同様に、ルータ401はルーティング・テーブルに従って、PC端末403からのアクセス要求をメイン・システム100へ送る。物流管理システムの管理者は、被災時の障害によってメイン・システム100の機能が停止した場合、第1ネットワーク通信部140の設定を変更して、WAN300からのデータの受信を拒否させる。従って、物流センターのルータ401からのアクセス要求は第1ネットワーク通信部140には受理されない。その場合、物流センターのルータ401はルーティング・テーブルに従って、メイン・システム100の次に優先度の高いバックアップ・システム200へアクセス要求を送出する。物流管理システムの管理者は、バックアップ・システム200において第2ネットワーク通信部240と第2バス260との間を接続する。それにより、第2ネットワーク通信部240は、物流センターのルータ401からアクセス要求を受け取り、その宛先“10.70.yy.yy”を参照して、そのアクセス要求を第2バス260へ送出する。バックアップ・システム200のEDIサーバ212はそのアクセス要求の宛先“10.70.yy.yy”を参照して、そのアクセス要求を受理する。また、物流管理システムの管理者は第1専用回線通信部150に専用回線500からのデータの受信を拒否させる。それにより、専用回線500が実質上切断されるので、アクセス要求が専用回線500を通してメイン・システム100に到達することはない。こうして、メイン・システム100の機能が停止している場合、物流センターのPC端末403からIPアドレス“10.70.yy.yy”へのアクセス要求は、バックアップ・システム200のEDIサーバ212へ届く。
[本発明の実施形態の利点]
本発明の実施形態によるバックアップ・システム200は、上記のとおり、メイン・システム100の第1受注部110、第1記録部120、及び第1管理部130のそれぞれと同等な機能部210、220、230を備えている。それらの機能部210−230は、EDI、WMSによる入庫管理、出庫管理、及び在庫管理、並びに、TMSによる配車処理を行う。このように、バックアップ・システム200は、メイン・システム100の機能の中から、物流に関する業務の継続に必要最低限な機能を選択して二重化したものである。それにより、バックアップ・システム200のWMSサーバ231を、メインフレームよりも構成が簡単なワークステーションで構築する等、バックアップ・システム200の構成をメイン・システム100の構成よりも簡単化することができる。また、バックアップ・システム200の機能部210−230がメイン・システム100の機能部110−130と同じ状態を常に維持するには、EDIデータ221、環境設定データ222、及びWMSデータ223が、メイン・システム100からバックアップ・システム200へ所定の時間間隔で複製されさえすればよい。こうして、バックアップ・システム200は、メイン・システム100よりも簡単な構成であっても、被災時の障害によってメイン・システム100の機能が停止した場合に、速やかにメイン・システム100に代わって業務を継続することができる。
上記のバックアップ・システム200は更に、EDIサーバ212に、メイン・システム100のEDIサーバ112と同じIPアドレスを割り当てている。それにより、図15、16に示されているように、メイン・システム100の機能が正常であるか否かに応じて、顧客のPC700及び物流センター等のLAN400からEDIサーバへのアクセスが、メイン・システム100とバックアップ・システム200との間で自動的に切り換えられる。特にその切り換えは、いずれの顧客のPC700及び物流センター等のLAN400にアクセス先のIPアドレスを変更させなくても実現される。その結果、バックアップ・システム200は、アクセス先がメイン・システム100からバックアップ・システム200へ切り換えられたことにかかわらず、顧客のPC700及び物流センター等のLAN400に作業を継続させることができる。