JP2014030397A - 多孔質フィルターカラム、試薬カートリッジ、および核酸精製キット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の多孔質フィルターカラム1は、円筒状の側面部12と、排出口17を有して漏斗状に形成され、側面部と接続される底面部13とを有する外容器と、外容器の内腔を覆うように側面部と底面部との接続部位に配置された多孔質フィルター18と、軸線方向における一方の端面が多孔質フィルターに接触するように外容器内に配置され、多孔質フィルターを外容器内に保持する円筒状の中空部材20とを備え、中空部材20の外径は、側面部の内径と略同一であり、中空部材20の高さは、側面部の高さの2分の1以上であって、側面部の高さ以下であることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
しかし、Oリングに覆われるフィルター部分はろ過に利用できないため、ろ過に利用可能なフィルター面積が狭くなり、ろ過効率が低下する。その結果、加圧しても流体の移動量が増加しにくい。また、Oリングとカラムとの間に生じる隙間に溶液が残りやすいため、核酸抽出用途においては多孔質フィルターへの吸着効率・洗浄効率が共に悪く、試料の純度や収量が低下することが問題となっていた。
しかし、液体を通過させるカラム内の多孔質フィルターの保持に不具合がある場合、また多孔質フィルターの端部がむき出しの状態であるため、多孔質フィルターの端部に欠け、破れが存在したり、保持の不具合により多孔質フィルターの端部に隙間が生じたりしている場合は、回収される核酸の収量や溶出量が低下してしまうため、改善の余地がある。
本発明の他の目的は、溶液の浸透性および流体の移動量が高く保持され、溶液の溶出量が安定した、試薬カートリッジおよび核酸精製キットを提供することである。
また、前記保持部材の前記端面の面積は、前記多孔質フィルターのろ過面の面積の30パーセント以下であってもよい。
さらに、前記多孔質フィルターが核酸吸着能を有してもよい。
多孔質フィルターカラム1は、外容器10、多孔質フィルター18、支持部材19、および中空部材20を図3(b)のように組み合わせて構成されている。多孔質フィルターカラム1の使用時は、外容器10上部の開口部11より後述の試料溶液や洗浄溶液などの試液類が分注され、次いで加圧エア導入により試液類が多孔質フィルター18に吸着又は通過、ろ過されて、開口部11と反対側の排出口17より排出もしくは別容器へ回収される。
図4は外容器10の断面図である。外容器10は全体形状が略円筒形の部材であり、上端側の開口部11と、円筒状の側面部12と、漏斗状に形成されて側面部12に接続された底面部13と、底面部13の中央に突出するように形成されたノズル状の排出口17とを有している。本実施形態では、樹脂を用いて上述の各部を一体成型することにより外容器10が構成されている。開口部11周辺には径方向外側に突出する鍔部16が形成されており、側面部12の外周面には、軸線方向に延びる凸部(突起)15が形成されている。
外容器10の形状は上端の開口部11と下端の排出口17とがいずれも開口して貫通した筒状になっており、上端の開口部11から被検体が溶解された状態の溶解液や洗浄液、溶出液などが供給される。これらの液体は、多孔質フィルター18及び支持部材19を通過して排出口17から排出される。
担持部の形状はこれには限られず、例えば、図5(b)に示すように、環状の担持部14Aとしてもよい。この場合、多孔質フィルター18の下面側を覆いにくいため、実質的なろ過面積を広くとることができる。したがって、試料液体の粘度や濃度が高い場合等により、高いろ過効率が必要な場合に適している。
なお、本発明において担持部は必須ではなく、省略されてもよい。
多孔質フィルター18は、外容器10の内部において、側面部と底面部とが接続されている両者の境界部に、外容器10の内腔を覆うように配置されている。
多孔質フィルター18としては、生体試料が化学的に吸着するような親水性基を表面に有する材料を用いて、試料溶液が内部に浸透して試料が効率よく吸着する為に表面積の大きい多孔質の膜状に形成したものが好ましい。また、洗浄液による洗浄時には核酸を吸着保持し、回収液による回収時には核酸の吸着力を弱めて離すように構成されている。本発明における多孔質材料として、ガラスウール等の繊維状の材料を重ね合わされたものが用いられてもよい。
さらに、ガラスやセラミックスなどの親水基を持たない材料の表面に親水基を有する材料をコーティングさせたものであっても良く、コーティングに用いる材料としては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等の有機材料のポリマーが好ましい。
本明細書において「親水基」とは、水との相互作用を持つことができる有極性の基を指し、核酸等の生体物質の吸着に関与する全ての基が当てはまる。このような親水基としては、水との相互作用を持つ極性基で核酸を吸着することができるものであればよく、例えば水酸基、カルボキシル基、シアノ基、オキシエチレン基、アミノ基や、親水性をコントロールする目的でこれらの親水基を修飾した基などを挙げることができる。
多孔質フィルター18は洗浄・ろ過等の際に加圧手段により加圧されるため、強度の低い多孔質フィルター18を用いる場合、多孔質フィルター18が撓んでしまい、外容器10の内面と多孔質フィルター18との間に溶液が通過する隙間が生じ、この部分からの溶液漏れが起こるおそれがあるが、剛性の高い支持部材19を配置しておくことにより、多孔質フィルター18が撓むことを防ぎ、強度の低い多孔質フィルター18を用いた場合でも好適に加圧することができる。そのため、支持部材19の剛性は多孔質フィルター18よりも高くなっており、多孔質フィルター18が外容器10内で変形することが支持部材19によって抑制されている。
支持部材19は、少なくとも核酸に対する吸着性が低く、かつ被検体から核酸を抽出する反応を阻害しない材料によって形成されていることが好ましい。
支持部材19としては、例えば樹脂の粒を焼結させて作製された、液体が通過できるフィルター状のものを用いることが好ましいが、これに限定されるものではなく、洗浄等に用いる溶媒に溶解せず、溶媒によって剛性が低下せず、試料や試薬等に影響を与える物質が溶出せず、対象とする溶液や不純物等が通過できる孔を有していればよい。支持部材19の作製には外容器10と同様の樹脂材料を用いることができるが、フィルターを通過した液体が滞りなく通過できるよう、多孔質に形成されるものであれば特に限定されるものではない。
図6(a)は中空部材20の底面図であり、図6(b)は中空部材20の側面図である。図6(a)および図6(b)に示すように、中空部材20は円筒状の部材である。中空部材20において、底面側の端面20Aは、中空部材20の軸線と直交する平坦な面とされている。
ただし、多孔質フィルター18の浮き上がりを確実に抑えつつ保持するには、中空部材20に一定の剛性が必要とされるため、中空部材20の厚みtは、0.2mm以上必要であり、0.3mm以上であることが好ましい。
また、核酸を精製する工程において、溶解液、洗浄液等が多孔質フィルターカラム1に分注されるが、最大量が分注された場合でも、液面が外容器10内の中空部材20より高くならないように中空部材20の高さhが設定されるのが好ましい。これは、液面が中空部材20より高くなると、中空部材20の外周面と外容器10の内面との隙間に液体が浸入し、空気層による圧力が掛かり難く、且つ詰まってしまう可能性が高くなるためである。このような事態が生じると、乾燥工程においては乾燥不十分となり、多孔質フィルターの洗浄で用いた洗浄液中のエタノールが残留してしまう。その結果、多孔質フィルターから核酸を回収した際に、回収した核酸にエタノールが混入してしまい、回収した核酸を用いた反応に関する不具合の発生率が高くなる。
廃液ウェル130に形成された凹部の内径は、側面部12の外径より大きいため、多孔質フィルターカラム1の排出口17から突起15まではウェル内に挿入されるが、突起15は廃液ウェル130内に進入できないため、突起15が設けられた部位は廃液ウェル130内に進入せず、排出口17が廃液ウェル内の廃液に接しない高さに支持される。また、当該凹部は多孔質フィルターカラム1の外形と略一致した内面形状とされている。このため廃液ウェル130に多孔質フィルターカラム1が差し込まれた状態では、凹部により多孔質フィルターカラム1が好適に支持されて試薬カートリッジ100内で転倒しないようになっている。
端部が浮き上がると、外容器10との内面と多孔質フィルター18との間に隙間が生じ、この隙間から気体や液体が逃げてしまうため、回収される核酸の収量や溶出量が低下するという問題があった。
これに対し、高さの低い円環状のワッシャや、周方向に等間隔で配置された保持部を有する部材を用いて多孔質フィルターを抑えることが提案されているが、浮き上がりを確実に防止するには至っていなかった。
<1>多孔質フィルターカラム1の作製
外容器10は側面部12の内径13mm、側面部12の高さ14.66mmのポリプロピレン成形品とした。中空部材20はポリプロピレンで成形し、外径13.1mm、内径12.5mm(厚さ0.3mm)、高さ12.3mmとした。支持部材19にはポリプロピレンの粒を焼結させて作製した直径13mm、厚み1mmの硬質フィルターを使用した。多孔質フィルター18には直径13mm、平均孔径0.8μm、厚み740μmのグラスファイバーフィルターを用いた。
外容器10の開口部11から、支持部材19、多孔質フィルター18を順に挿入して側面部12と底面部13との境界付近に配置し、その後開口部11から中空部材20を挿入し、中空部材20の端面で多孔質フィルター18の周縁を押さえつけるように中空部材20を外容器10内に配置することにより、多孔質フィルターカラムを製造した。
本実施例の多孔質フィルターカラムを用いて全血からの核酸抽出を行い、比較例と比較した。比較例の構成および核酸注出の手順について以下に示す。
上記中空部材20に代えて、図7に示すポリプロピレンで成形した押え部材30を用いた。円環部31の寸法は、外径11.9mm、内径10.7mm(厚さ0.6mm)、高さ1mmとした。脚部32は円環部31の周方向において等間隔に3つ設けられており、円環部31の径方向外側に0.6mm突出させ、高さは2mmとした。中空部材20に代えて押え部材30を用いた点以外は、実施例と同様にして、多孔質フィルターカラムを作製した。
<2>溶解液および洗浄液の調製
溶解液(4Mのグアニジン塩酸塩、10v/v%のTritonX−100、50mMのTris−HCl、10mMのEDTAを含む)および洗浄液(3mMのTris−HCl、0.3mMのEDTA、30mMのNaCl、70v/v%のエタノールを含む)を調製した。
全血100μLと<2>で調製した溶解液500μLを55℃で2分間混合・攪拌し、実施例及び比較例の多孔質フィルターカラムの開口部より分注して多孔質フィルターに接触させ、1分間インキュベートした。次に、ポンプによる加圧エアを導入し、全血溶解液を排出した。
以下、溶解液600μL、<2>で調製した洗浄液650μLに関しても同様に分注と排出操作を行った(洗浄液は2回繰り返し)。最後に55℃に加温した回収液(純水)350μLを分注して核酸を溶出し、その溶出量を測定した。実施例では核酸抽出操作を15回繰り返し、比較例では9回繰り返した。
次に、実施例の測定結果を表1に、比較例の測定結果を表2にそれぞれ示す。
以上より、本実施例の多孔質フィルターカラムは、カラム内に多孔質フィルターを確実に保持しつつ、溶液の浸透性および流体の移動量、更に溶出液の量に関してもフィルター本来の性能を極力損なわないことが示された。
例えば、外容器の内面および中空部材の外周面の少なくとも一方に、ローレットを形成したり、表面荒らしの処理を施したりすることにより、外容器と中空部材との間に生じる摩擦力を高めてもよい。
10 外容器
11 開口部
12 側面部
13 底面部
14 担持部
15 突起
16 鍔部
17 排出口
18 多孔質フィルター
19 支持部材
20 中空部材(保持部材)
20A 端面
51 核酸精製キット
100 試薬カートリッジ
110 サンプルウェル(被検体収容部)
121、122、123、124、125、126 試薬ウェル(試薬収容部)
130 廃液ウェル(廃液収容部)
200 分注チップラック
201 分注チップ
Claims (6)
- 円筒状の側面部と、排出口を有して漏斗状に形成され、前記側面部と接続される底面部とを有する外容器と、
前記外容器の内腔を覆うように前記側面部と前記底面部との接続部位に配置された多孔質フィルターと、
軸線方向における一方の端面が前記多孔質フィルターに接触するように前記外容器内に配置され、前記多孔質フィルターを前記外容器内に保持する円筒状の保持部材と、
を備え、
前記保持部材の外径は、前記側面部の内径と略同一であり、
前記保持部材の高さは、前記側面部の高さの2分の1以上であって、前記側面部の高さ以下であることを特徴とする多孔質フィルターカラム。 - 前記保持部材の厚みが0.2ミリメートル以上1.5ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質フィルターカラム。
- 前記保持部材の前記端面の面積は、前記多孔質フィルターのろ過面の面積の30パーセント以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質フィルターカラム。
- 前記多孔質フィルターが核酸吸着能を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の多孔質フィルターカラム。
- 被検体から核酸を分離精製するための試薬が収容され、分注チップを用いて前記液体が分注される試薬カートリッジであって、
前記被検体を収容する被検体収容部と、
前記試薬を収容する試薬収容部と、
前記分離精製において発生する廃液を収容する廃液収容部と、
請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔質フィルターカラムと、
を備えることを特徴とする試薬カートリッジ。 - 請求項5に記載の試薬カートリッジと、
前記分注チップを複数収容するための分注チップ収容体と、
を備えることを特徴とする核酸精製キット。
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