JP2014028708A - 無機組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無害で環境保全上安全であり、高温安定で焼成時に分解せず、黄茶色から橙色を呈する無機顔料を提供する
【解決手段】ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、およびテルビウム(Tb)を含む組成式ZrXCeYTbZO2−δ(X+Y+Z=1、原子比)を主成分とする無機顔料であって、Xが0.20〜0.99、Yが0〜0.80、Zが0.005〜0.06である黄茶色から橙色を呈する無機顔料とその製造方法、ならびにこの顔料を含む着色用組成物。
【選択図】 図1
【解決手段】ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、およびテルビウム(Tb)を含む組成式ZrXCeYTbZO2−δ(X+Y+Z=1、原子比)を主成分とする無機顔料であって、Xが0.20〜0.99、Yが0〜0.80、Zが0.005〜0.06である黄茶色から橙色を呈する無機顔料とその製造方法、ならびにこの顔料を含む着色用組成物。
【選択図】 図1
Description
本発明は、環境に影響が少なく、高温安定性および毒性のない黄茶色から橙色を呈する無機顔料に関する。
無機組成物の顔料は、セラミクス、ペイントやプラスチックなどの産業において広く使用されている。その用途には、特有の色合いや着色性のほか、熱的安定性、化学的安定性、安全性、分散性が必要とされ、適当な顔料を選択する際にはこれらの特性を満たすことが重要である。現在用いられている黄色から黄茶色、橙色を呈する無機顔料としては、カドミウムを含んだ顔料が主体であり、とくに硫化カドミウムやカドミウムセレン化合物(CdS‐CdSe)系が用いられているが、これらは有害である。また、1000℃以上の焼成条件では、その温度に耐えられず分解して、使用しにくいといった問題点がある。したがって、有害性がなく、また耐熱性の高い黄色系顔料の開発が求められている。
特許文献1では、黄色や橙色系顔料の製造方法として、ナフタレンテトラカルボン酸とフェニレンジアミンの縮合反応により得られる反応混合物を、溶媒存在下でカリウム塩と反応させた後、55℃以下で加水分解を行うナフトイレンビスベンゾイミダゾールの製造方法により、赤橙色から黄色系顔料を製造することができるとしているが、有機物であり、耐熱性を必要とする工程には利用できない。
特許文献2には、金及び/または銀ナノ粒子を含有する化粧用顔料組成物が提案されている。ナノレベルの微粒子金属を使用しており、高温での耐熱性の観点からは使用できない。
特許文献3には、橙色系着色ジルコニア粉末及び焼結体並びにその製造方法 が提案されており、酸化セリウムを4〜20mol%含有し、その結晶構造が正方晶又は正方晶80%以上と残部単斜晶との混合相からなる橙色系着色ジルコニア粉末及び焼結体、並びにその製造方法が記載されている。高温耐熱性に優れているので焼結体として利用できるが、これを顔料として利用するには焼結体の破砕ならびに粉砕等の微粒化に多大な作業を必要とし、このままでは使用できない問題がある。
特許文献4には、安定して黄橙色に着色した透光性セラミクスとして、鉄(Fe)とクロム(Cr)成分とを含有したY3Al5O12(YAG)を主成分とするセラミクスが提案されている。これは焼結体として発現する発色であるので、顔料粉末としては十分でない。
本発明の課題は、無害で環境保全上安全であり、高温安定で焼成時に分解せず、黄茶色から橙色を呈する無機顔料を提供することである。
本発明者らは、このような課題を解決するために種々検討を重ねた結果、高温安定で、黄茶色から橙色を呈する、セラミクス基の新規な材料を見出した。すなわち、本発明によれば、以下の無機顔料およびその製造方法が提供される。
[1] ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、およびテルビウム(Tb)を含む組成式ZrXCeYTbZO2−δ(X+Y+Z=1、原子比)、0≦δ≦0.03である無機顔料であって、Xが0.20〜0.99、Yが0〜0.80、Zが0.005〜0.06である黄茶色から橙色を呈する無機顔料。
[2] Xが0.35〜0.80、Yが0.15〜0.60、Zが0.01〜0.05である前記[1]に記載の無機顔料。
[3] 所定の金属成分を含む溶液の沈殿物から固形物を生成させ、400〜1000℃で焼成して得られる前記[1]または[2]に記載の無機顔料の製造方法。
[4] 前記[1]〜[2]に記載の顔料を10重量%以上含み、セラミクス、ガラス、ペイント、プラスチック、ゴム、紙、インク、化粧品、あるいは染料への着色皮膜形成ならびにバルク状材料のための着色用組成物。
[5] セラミクス製品に前記[4]の着色用組成物を塗布し、400〜1250℃で焼成するセラミクス製品の色付け方法。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
本発明の無機顔料は、ジルコニウム(Zr)とセリウム(Ce)とテルビウム(Tb)の酸化物であり、ZrとCeとTbの合計に対するZrの割合が20〜99原子%、より好ましくは35〜80原子%、Ceの割合が0〜80原子%、より好ましくは15〜60原子%、Tbの割合が0.5〜6原子%、より好ましくは1〜5原子%であり、ジルコニウムとセリウムならびにテルビウムの酸化物の固溶体を含み、黄茶色から橙色を呈する。
ここで、セリア・ジルコニア系化合物は、詳細には複雑な状態を示すとの研究があるが、本発明の無機顔料は、少なくともその一部が固溶体を形成していることが好ましい。セリウムがジルコニウム酸化物中に、あるいは、ジルコニウムがセリウム酸化物中にその結晶構造として一体化していると、橙色を呈するため、この一体となった結晶形態(固溶体)を少なくとも含むことが必要となる。しかし、すべての粉末が特定の結晶構造であることは必要でなく、複合酸化物やそれらの混合物を含んでも顔料として使用しうる。
本発明の顔料はジルコニウムとセリウムとの酸化物を主体とするが、その結晶構造において他の安定化剤元素を含むこともできる。これらの安定化剤は例えばカルシウム酸化物、マグネシウム酸化物などのアルカリ土類金属系酸化物であり、ジルコニア耐火物として周知のものである。また、希土類金属も安定化元素として知られ、周期律表で原子番号が57〜71の、テルビウム以外の希土類元素を使用できる。また、とくに陶磁器用顔料でしばしば行われる高温焼成では、一般的に着色性成分は、その一部の成分が金属酸化物中から析出し、あるいは揮散して回復できない材料変化がおこる懸念があるが、本発明によればこのような変化がなく高温焼成時でも橙色が得られる。
なお、本発明の顔料粉末においての色度座標について、座標L*は65以上、a*は7以上、B*は35以上を満たす顔料、あるいはそれらを混合して用いた場合には適切な色彩を有する。なお、本発明の顔料と他の色彩との混合での使用を除外するものではなく、以下の実施例にて詳細に述べる。
上記の顔料は、所定の金属成分を含む溶液の沈殿物から固形物を生成させ、400〜1000℃で焼成することにより得られる。例えば、所定の成分である金属化合物もしくは金属塩水溶液、その混合物、または金属の酸溶液を混合し、これに沈殿剤を加えて得られた沈殿物を焼成する方法により製造することができる。ここで、所定の金属化合物の酸または水溶液は、反応により組成が上記の望ましい組成になるように複合の金属成分が酸化物となる溶液である。
本発明の顔料の製造例をZr:Ce:Tb=40:55:5(原子%)で表される組成の顔料を例にとり説明する。硝酸ジルコニル水溶液、硝酸セリウム水溶液、硝酸テルビウム水溶液をモル比40:55:5となるように混合する。これにアンモニア水を過剰に加えてその溶液のpHが10になるように調整し、十分攪拌する。得られた沈殿物を吸引濾過し、さらに洗浄を行い、回収したのち、大気中乾燥し、その後例えば600℃にて3時間で焼成する。その後、さらに、例えば900℃にて3時間で焼成してもよい。
溶液に含まれる金属成分は、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、およびテルビウム化合物として供給され、例えば高純度の硝酸塩、オキシ硝酸塩、塩化物、オキシ塩化物、硫酸塩、オキシ硫酸塩、酢酸塩など、酸あるいは水に可溶な化合物があげられる。また、セリウム等の金属を硝酸等に溶解した水溶液を原料としてもよい。また上記の混合物でもよい。ここで、各原料の純度は、発色の純粋さに影響を与えなければ99.5%以上を使用してもよいが、少なくとも着色源のテルビウムについては99.8%以上を利用することが好ましい。そしてアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、シュウ酸、炭酸ガス、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液、あるいは混合水溶液を上記の金属を溶解した液に入れ、固化させる。
一方、本発明の顔料は、例えば、所定の金属化合物の酸または水溶液を混合し、これに沈殿剤となるクエン酸などの不溶性の錯体化合物を加える沈殿法によっても作製してもよい。また、水溶性の有機酸や錯形成剤を加えて溶媒を除去することでそれらの複合もしくは混合した有機酸塩や錯体を得てから焼成する製造方法も可能である。本発明の橙色顔料の製造例は、例えば組成がCe0.60Zr0.35Tb0.05O2−δで表される顔料において、Ce(NO3)3水溶液、ZrO(NO3)2水溶液、およびTb(NO3)3水溶液をCe:Zr:Tb=60:35:5(原子%)となるように混合したのち、これを少量の有機酸もしくは錯形成剤、あるいはその混合物を入れて蒸発乾固させた固形物である塩を含む混合物を得てこれを例えば900℃にて3時間で焼成し、さらに粉砕することにより製造される。水溶性の有機酸あるいは錯形成剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などが使用できる。
前記焼成後に粉砕される顔料の粒子経は分散性に優れる1μm以下の微細な粒子とすることもできるが、通常は数十μm程度の粒子として回収する。微粒子顔料は塗料や絵の具など室温以下で使用される無機顔料に適するので、粉砕機などで微細な粉砕物とすることができる。また、高温焼成で使用するときはこれを再度焼成すればよい。これら粒度についてはこれを後述する着色用組成物等を作製する場合には適宜粉砕すればよい。顔料とするときの焼成温度は、特に限定されるものではなく乾燥状態での粉末でもよいが、400〜1000℃にて1〜100時間焼成することにより得られる。焼成雰囲気としては大気でよく、ただし酸素を含む雰囲気であれば大気以外でもよい。また、本発明の無機顔料は、金属酸化物の前駆体となる化合物の混合物を焼成することにより製造できる。なお、この400〜1000℃未満の温度で焼成する効果は明らかではないが、いわゆるアニールの効果があり顔料を安定化し着色状態を良くする。また、高温での顔料使用時に対してあらかじめ安定性を保持するのに適当である。なお焼成して得られる顔料は組成がZrXCeYTbZO2−δ(X+Y+Z=1、原子比)、0≦δ≦0.03であり、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、およびテルビウム(Tb)の各原子比をX、Y、Z(X+Y+Z=1)としたこれら元素の酸化物であって、Xが0.20〜0.99、Yが0〜0.80、Zが0.005〜0.06である黄茶色から橙色を呈する無機顔料である。
上記沈殿法と焼成の組み合わせによる合成法以外に、本発明の顔料は、CeO2、ZrO2、TbO2を適切なモル比で秤量して混合した後、大気中で焼成する、いわゆる固相反応法により製造することもできる。本固相反応法において用いられるセリウム、ジルコニウム、およびテルビウムの各化合物としては、酸化物のほかに、高純度の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩などを用いることが可能であり、加熱により分解して金属酸化物またはその混合物になるものであればよい。焼成条件としては、1300〜1550℃で焼成し、その後400〜1000℃で再焼成することが好ましい。得られた粉末を例えばボールミル等を用いて粉砕し、洗浄、分級さらに乾燥や再焼成を行ってもよい。以上のようにして得られる本発明の無機顔料の製造法は、有害金属を含まずに安全で、黄茶色から橙色を呈する無機顔料であり、その化学的安定性や耐熱性が優れた顔料となる。
本発明の顔料は、種々の素材の着色用材として利用できる。すなわち、例えばセラミクス、陶磁器、ガラス、プラスチック、塗料、ゴム、釉薬、紙、インク、化粧品、染料、皮革、セメント、壁材等にバルク用材あるいは表面コート用材として、本発明の顔料を含む組成物を提供できる。
前記プラスチックとしては、熱可塑性又は熱硬化性型であってよく、顔料との混合をよくするため、それ以外の少量の有機物を含んでいてもよい。熱可塑性プラスチックとして、例えば、塩化ビニル、ビニルアルコール、スチレン系ポリマー類、スチレンと幾多の他の共重合体、例えばアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体(ABS)、さらにアクリル系のポリメタクリル酸メチルやポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレンさらにセルロース系のセルロースアセテートやポリアミドなどがあげられる。熱硬化性樹脂について、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリエステルなどがあげられる。より具体的には、フッ素樹脂、特にポリテトラフルオルエチレンやポリカーボネート、またPETのような汎用樹脂にも使用できる。本発明の黄色系顔料のプラスチックに対する配合割合は1〜50重量%、より好ましくは2〜20重量%がよい。
また、ペイントに対する本発明の顔料の配合割合は5〜50重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。さらに本発明の顔料は、セラミクス、磁器、陶器、タイル、レンガの着色にも使用することができる。セラミクスの組成物に10〜60重量%混合してよく、この場合には全体的に黄色の色合いを出すことができる。また、セメント、石膏、種々の無機接着剤に使用されても本来成分の性質を低下させず、例えば白いセメントに水、砂、砂利が添加されるコンクリートを黄色に着色するのに適用される。
一方、セラミクスの表面に膜状に本発明の顔料を付与して着色することができる。特に、本発明の顔料を他成分と混合して釉薬組成物とした後、セラミクス表面に塗布、焼成することにより着色した膜が形成される。本顔料の添加量は、母体となる釉薬の1〜40重量%である。陶磁器質においては種々の特有な技術が必要となるが、本顔料は高温において安定であるため、どの工程においても変質せず、発色性と安定性において優れている。このような着色層の形成は、比較的純度の高いアルミナ質セラミクスにおいては、その色彩があざやかで、素地との反応なく発色が良好であり、陶磁器、素焼、低品位の粘土も用いてもよく、さらにタイルや玩具、食器、管、板、壁材などの表面に形成するための顔料として良好である。
シリカ(酸化ケイ素)を多量に含む釉薬と本発明の顔料は高温で一部ジルコンとなる場合があり注意を要するが、そのような使用を妨げるものではない。例えばジルコニウム・セリウム・テルビウム酸化物を含む本発明の顔料に、シリカと鉛を含む一般的なガラスフリット素材と少量の有機剤と水を加えてスラリーとした混合物を陶磁器に塗布し、400〜1000℃で焼成することで黄色の層を陶磁器等の表面に形成することができる。ただし、少し高温でも短時間、例えば、700〜1250℃にて30分以内の短時間の焼成することで黄色の層を設けることができる。すでに焼成された素地への直接の塗布・焼成する方法ほか、粉末成形体内への付与や、多孔質への浸み込みによる表面層など、種々の工程で本発明の顔料を利用できる。
(実施例1:顔料の色評価1)
組成がZr:Ce:Tb=X:0.95−X:0.05(原子%比、0〜0.95)となるように下記のように顔料を合成した。1mol・dm−3濃度のZrO(NO3)2水溶液、1mol・dm−3濃度のCeNH4(NO3)2水溶液、1mol・dm−3濃度のTb(NO3)3水溶液(試薬はいずれも和光純薬製)を作製したのち、ジルコニウムとセリウムを上の化学式での化学量論比で、総モル量合計が0.1mol・dm−3となるように混合して出発溶液を作製した。これに8wt%濃度のアンモニア水を添加し、pH10になるまで沈殿を生成させ、吸引濾過しながらさらに水洗した。このとき、金属成分が沈殿物に含まれていることを残液の化学分析により確認した。沈殿物を濾過操作にて回収したのち、大気中110℃で一晩乾燥し、大気中500℃にて3時間焼成した。目視では、Xが0.4〜0.8において茶色がかった橙色、X=0.95において鮮やかな橙色を呈する粉末であった。その後、大気中でさらに900℃にて3時間焼成して、さらに粉砕した粉末について、色の評価を行ったところ、900℃加熱による大きな変色がなかった。粉末のX線回折分析を行い、結晶相として蛍石構造の固溶体の形成が確認された。次にX=0.95、0.80〜0に順次変化させた、これらの粉末顔料の色彩をミノルタ製色彩色差計CR‐240により測定し、L*a*b*表色系で与えられる色度座標によって定量化した。ここでは、L*は反射率の尺度(明/暗シェーディング)、100(白色)〜0(黒色)に変動する。a*とb*は、色の傾向の値であり、正のa*=赤色、負のa*=緑色、正のb*=黄色、負のb*=青色であり、L*は黒色〜白色、a*は緑色〜赤色、b*は黄色〜青色の変化を示す。これの顔料は、表1に示すようなL*、a*、b*を示し、さらに、目視でX≧0.4において、茶色がかった橙色、x=0.95において鮮やかな橙色を呈することから、橙系顔料に適するとともに、耐熱性に優れていることがわかった。
組成がZr:Ce:Tb=X:0.95−X:0.05(原子%比、0〜0.95)となるように下記のように顔料を合成した。1mol・dm−3濃度のZrO(NO3)2水溶液、1mol・dm−3濃度のCeNH4(NO3)2水溶液、1mol・dm−3濃度のTb(NO3)3水溶液(試薬はいずれも和光純薬製)を作製したのち、ジルコニウムとセリウムを上の化学式での化学量論比で、総モル量合計が0.1mol・dm−3となるように混合して出発溶液を作製した。これに8wt%濃度のアンモニア水を添加し、pH10になるまで沈殿を生成させ、吸引濾過しながらさらに水洗した。このとき、金属成分が沈殿物に含まれていることを残液の化学分析により確認した。沈殿物を濾過操作にて回収したのち、大気中110℃で一晩乾燥し、大気中500℃にて3時間焼成した。目視では、Xが0.4〜0.8において茶色がかった橙色、X=0.95において鮮やかな橙色を呈する粉末であった。その後、大気中でさらに900℃にて3時間焼成して、さらに粉砕した粉末について、色の評価を行ったところ、900℃加熱による大きな変色がなかった。粉末のX線回折分析を行い、結晶相として蛍石構造の固溶体の形成が確認された。次にX=0.95、0.80〜0に順次変化させた、これらの粉末顔料の色彩をミノルタ製色彩色差計CR‐240により測定し、L*a*b*表色系で与えられる色度座標によって定量化した。ここでは、L*は反射率の尺度(明/暗シェーディング)、100(白色)〜0(黒色)に変動する。a*とb*は、色の傾向の値であり、正のa*=赤色、負のa*=緑色、正のb*=黄色、負のb*=青色であり、L*は黒色〜白色、a*は緑色〜赤色、b*は黄色〜青色の変化を示す。これの顔料は、表1に示すようなL*、a*、b*を示し、さらに、目視でX≧0.4において、茶色がかった橙色、x=0.95において鮮やかな橙色を呈することから、橙系顔料に適するとともに、耐熱性に優れていることがわかった。
(表1)
(実施例2:顔料の色評価2)
組成がZr:Ce:Tb=X:0.99−X:0.01(原子%比、0〜0.99)となるように、実施例1と同様に顔料を合成した。大気中でさらに900℃にて3時間焼成して、その後粉砕した粉末について、色の評価を行ったところ、表1に示すようなL*、a* 、b*の値を示した。目視では、X=0.2以上において茶色がかった橙色、X=0.99において鮮やかな橙色を呈することから、橙系顔料に適するとともに、耐熱性に優れていることがわかった。また、紫外可視分光計において可視光の吸収反射特性を調べ、呈色機構を研究した結果、結晶構造から色彩に影響する遷移に効果的であることが明らかとなっており、本発明において化合物の構造とその混合割合に由来する色発現が示唆されている。
組成がZr:Ce:Tb=X:0.99−X:0.01(原子%比、0〜0.99)となるように、実施例1と同様に顔料を合成した。大気中でさらに900℃にて3時間焼成して、その後粉砕した粉末について、色の評価を行ったところ、表1に示すようなL*、a* 、b*の値を示した。目視では、X=0.2以上において茶色がかった橙色、X=0.99において鮮やかな橙色を呈することから、橙系顔料に適するとともに、耐熱性に優れていることがわかった。また、紫外可視分光計において可視光の吸収反射特性を調べ、呈色機構を研究した結果、結晶構造から色彩に影響する遷移に効果的であることが明らかとなっており、本発明において化合物の構造とその混合割合に由来する色発現が示唆されている。
(表2)
(実施例3:顔料を含むフリットの色評価)
実施例2で作製した顔料Zr0.40Ce0.59Tb0.01O2−δ(色調L*77.7、a*7.4、b*41.0)ならびにZr0.60Ce0.39Tb0.01O2−δ(色調L*78.8、a*7.3、b*37.5)を用いて陶磁器顔料を作製し、さらにフリット(SiO2 及びPbOを含有)に混合し、さらに溶剤を混合してスラリーを作製した。次にジルコニアビーズを入れたプラスチック容器を遊星型粉砕機で顔料とフリットを1時間粉砕混合した。スラリーを乾燥後、粉末を75ミクロンふるい下として取り出し、これを釉として白色の成形陶器素地に塗布および筆にて加飾した。徐々に加熱し、800℃にて5分保持し、その後冷却して層状の顔料着色層を確認した。この色彩を調べたところ、Zr0.40Ce0.59Tb0.01O2−δ(色調L*74.0、a*7.0、b*35.5)、Zr0.60Ce0.39Tb0.01O2−δ(色調L*73.0、a*7.1、b*36.0)でいずれも橙色系の着色ができた。
実施例2で作製した顔料Zr0.40Ce0.59Tb0.01O2−δ(色調L*77.7、a*7.4、b*41.0)ならびにZr0.60Ce0.39Tb0.01O2−δ(色調L*78.8、a*7.3、b*37.5)を用いて陶磁器顔料を作製し、さらにフリット(SiO2 及びPbOを含有)に混合し、さらに溶剤を混合してスラリーを作製した。次にジルコニアビーズを入れたプラスチック容器を遊星型粉砕機で顔料とフリットを1時間粉砕混合した。スラリーを乾燥後、粉末を75ミクロンふるい下として取り出し、これを釉として白色の成形陶器素地に塗布および筆にて加飾した。徐々に加熱し、800℃にて5分保持し、その後冷却して層状の顔料着色層を確認した。この色彩を調べたところ、Zr0.40Ce0.59Tb0.01O2−δ(色調L*74.0、a*7.0、b*35.5)、Zr0.60Ce0.39Tb0.01O2−δ(色調L*73.0、a*7.1、b*36.0)でいずれも橙色系の着色ができた。
本発明の酸化物は顔料に利用することができる。
Claims (5)
- ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、およびテルビウム(Tb)を含む組成式ZrXCeYTbZO2−δ(X+Y+Z=1、原子比)、0≦δ≦0.03である無機顔料であって、Xが0.20〜0.99、Yが0〜0.80、Zが0.005〜0.06である黄茶色から橙色を呈する無機顔料。
- Xが0.35〜0.80、Yが0.15〜0.60、Zが0.01〜0.05である請求項1に記載の無機顔料。
- 所定の金属成分を含む溶液の沈殿物から固形物を生成させ400〜1000℃で焼成して得られる請求項1または2に記載の無機顔料の製造方法。
- 請求項1〜2に記載の顔料を10重量%以上含み、セラミックス、ガラス、ペイント、プラスチック、ゴム、紙、インク、化粧品、あるいは染料への着色皮膜形成ならびにバルク状材料のための着色用組成物。
- セラミクス製品に請求項4の着色用組成物を塗布し、400〜1250℃で焼成するセラミクス製品の色付け方法。
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