JP2019077799A - フォトクロミック物質およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無害で環境保全上安全であり、高温安定で焼成時に分解せず、黄茶色から橙色を呈し、フォトクロミック性を示す無機のフォトクロミック物質を提供する。【解決手段】フォトクロミック物質は、セリウム(Ce)、ユーロピウム(Eu)、およびプラセオジム(Pr)を含む金属酸化物であり、組成式:Ce1−X−YEuXPrYO2−δ(0<X≦0.1、0<Y≦0.2)で表される。また、少なくとも一部は蛍石型の結晶構造の固溶体である。このフォトクロミック物質は、紫外線の照射によって緑がかった色味に変化する。【選択図】図2
Description
本開示は、環境に影響が少なく、高温安定性および毒性のない黄茶色から橙色を呈する無機材料であって、フォトクロミック性を有するフォトクロミック物質、およびその製造方法に関する。
無機組成物の顔料には、特有の色合いや着色性のほか、熱的安定性、化学的安定性、安全性、分散性が必要とされ、適当な顔料を選択する際にはこれらの特性を満たすことが必要である。
セラミクス、ペイントやプラスチックなどの産業において現在広く使用されている、黄色から黄茶色、橙色を呈する無機顔料として、カドミウムを含んだ顔料がある。例えば、硫化カドミウム、カドミウムセレン化合物(CdS‐CdSe)系が用いられるが、これらは有害物質である。また、900℃以上の焼成条件で、その温度に耐えられず、分解して、高温で使用しにくい問題点がある。
他には、アンチモンと鉛による鮮やかな黄色の顔料もあるが、これもさらに耐熱性が低く、毒性がある。したがって、有害性がなく、また耐熱性の高い黄色から橙系顔料の開発が求められている。
さらには、近年の省エネルギーの観点から、外部からエネルギーを必要とせず変色する現象を利用した顔料の機能化が期待されている。フォトクロミズム現象は光照射によって変色が起こるものである。フォトクロミック物質は、光ディスクメモリ、光スイッチ、光印刷用インク、ディスプレイ、サングラス、調光ガラスなど様々な工業製品に応用されることが期待されており、また顔料の幅を広げるのに適している。しかし、そのようなフォトクロミック性を示す物質は有機物が主体で、熱安定な無機組成物としての例は少ない。このため、熱的、化学的に安定性を有する無機物からなるフォトクロミック物質が注目されている。
無機のフォトクロミック物質としては、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化チタン、これら酸化物の混合物などが知られている。しかしながら、これらの物質は、本質的に人体に有害な紫外光領域にしか感度を示さない。また、その色合いを黄色〜橙色のような暖色系に調整することができない。
特許文献1では、黄色や橙色系顔料の製造方法として、ナフタレンテトラカルボン酸とフェニレンジアミンの縮合反応により得られる反応混合物を、溶媒存在下でカリウム塩と反応させた後、55℃以下で加水分解を行うナフトイレンビスベンゾイミダゾールの製造方法により、赤橙色から黄色系顔料を製造できるとしているが、有機物であり、耐熱性を必要とする工程には利用できない。
特許文献2には、金及び/または銀ナノ粒子を含有する化粧用顔料組成物が提案されている。ナノレベルの微粒子金属を使用しており、高温での耐熱性の観点からは使用できないし、自然光による変色は起こらない。
特許文献3には、橙色系着色ジルコニア粉末及び焼結体並びにその製造方法が提案されており、酸化セリウムを4〜20mol%含有し、その結晶構造が正方晶又は正方晶80%以上と残部単斜晶との混合相からなる橙色系着色ジルコニア粉末及び焼結体、並びにその製造方法が記載されている。高温耐熱性に優れているので焼結体として利用できるが、これを顔料として利用するには焼結体の破砕ならびに粉砕等の微粒化に多大な作業を必要とするうえ、フォトクロミック性は示さない。
特許文献4には、組成式ZrXCeYTbZO2−δ(X+Y+Z=1、Xが0.20〜0.99、Yが0〜0.80、Zが0.005〜0.06)で表される黄茶色から橙色の無機顔料が記載されているが、フォトクロミック性を示すことは記載されていない。
また、非特許文献1には、黄色顔料として、組成式Ce1−x−yZrxBiyO2−y/2で表される無機顔料が記載されているが、フォトクロミック性を示すことは記載されていない。
また、その他に希土類元素であるプラセオジムを珪酸ジルコニウムに固溶させたものが黄色系顔料として用いられているが、フォトクロミック性を示すことは知られていない。
T. Masui, et al., J. Jpn. Soc. Colour Mater., 85[1], 9-13 (2012)
本開示の課題は、無害で環境保全上安全であり、高温安定で焼成時に分解せず、黄茶色から橙色を呈し、かつフォトクロミズム現象を伴う無機化合物であるフォトクロミック物質を提供することである。また、その製造方法を提供することである。
発明者らは、このような課題を解決するために種々検討を重ねた結果、高温安定で、黄茶色から橙色を呈し、かつフォトクロミズム現象を伴うセラミクス基の新規な材料を見出した。すなわち、本開示によれば、以下のフォトクロミック物質およびその製造方法が提供される。
組成式:Ce1−X−YEuXPrYO2−δ(0<X≦0.1、0<Y≦0.2)で表され、少なくとも一部は蛍石型の結晶構造の固溶体であるフォトクロミック物質。
組成式:Ce1−X−YEuXPrYO2−δ(0<X≦0.1、0<Y≦0.2)で表されるフォトクロミック物質の製造方法であって、Ce、Eu、およびPrを含む溶液から、それら元素を含む沈殿物を生成する工程と、沈殿物を焼成する工程と、を有したフォトクロミック物質の製造方法。
以下、図面を参照しつつ本開示の実施形態について説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
(フォトクロミック物質の組成)
本開示のフォトクロミック物質は、セリウム(Ce)、ユーロピウム(Eu)、およびプラセオジム(Pr)を含む金属酸化物であり、組成式:Ce1−X−YEuXPrYO2−δ(0<X≦0.1、0<Y≦0.2)で表される。ここでδの値は、Ceが+4価を示し、Euが+2価と+3価を示し、Prが+3価と+4価を示すため、X、Yの値、およびEu、Prの価数の割合に応じて決定される。
本開示のフォトクロミック物質は、セリウム(Ce)、ユーロピウム(Eu)、およびプラセオジム(Pr)を含む金属酸化物であり、組成式:Ce1−X−YEuXPrYO2−δ(0<X≦0.1、0<Y≦0.2)で表される。ここでδの値は、Ceが+4価を示し、Euが+2価と+3価を示し、Prが+3価と+4価を示すため、X、Yの値、およびEu、Prの価数の割合に応じて決定される。
CeとEuとPrの合計に対するEuの原子割合Xは、より好ましくは0.002以上0.05以下である。この範囲とすれば、より鮮やかな黄茶色から橙色系の色彩とすることができ、色の変化の大きな優れたフォトクロミック性を有するものとできる。さらに好ましくは0.005以上0.01以下であり、最も好ましくは0.006以上0.008以下である。
また、CeとEuとPrの合計に対するPrの原子割合Yは、より好ましくは0.0002以上0.01以下である。この範囲とすることで、フォトクロミック物質の明度を適切な範囲とすることができ、より鮮やかな黄茶色から橙色系の色彩とすることができ、色の変化の大きな優れたフォトクロミック性を有するものとできる。さらに好ましくは0.0005以上0.005以下であり、最も好ましくは0.0006以上0.001以下である。
Prに対するEuの割合(X/Y)は、1以上500以下とすることが好ましい。この範囲とすることで、より鮮やかな黄茶色から橙色系の色彩とすることができ、色の変化の大きな優れたフォトクロミック性を有するものとできる。より好ましくは2以上200以下、さらに好ましくは5以上100以下、最も好ましくは10以上50以下である。
(フォトクロミック物質の結晶構造)
本開示のフォトクロミック物質は、Ce、Eu、Prの酸化物の固溶体を含み、黄茶色から橙色を呈し、フォトクロミズム現象を伴う無機化合物である。
本開示のフォトクロミック物質は、Ce、Eu、Prの酸化物の固溶体を含み、黄茶色から橙色を呈し、フォトクロミズム現象を伴う無機化合物である。
ここで、セリア系化合物は、添加物によって詳細には複雑な状態を示すとの研究があるが、本開示のフォトクロミック物質は、少なくともその一部が固溶体を形成している。セリウム酸化物中にユーロピウムおよびプラセオジムが含まれその結晶構造として一体化していると橙色を呈するため、この一体となった結晶形態(固溶体)を少なくとも含むことが必要となる。本開示のフォトクロミック物質は、酸化セリウムを主体とし、酸化セリウムは蛍石型の結晶構造である。よって、上記の固溶体とは、酸化セリウムの蛍石型の結晶構造において、一部のセリウム原子をユーロピウムやプラセオジムの原子で置換した構造である。しかし、すべての粉末が上記特定の結晶構造であることは必要でなく、複合酸化物やそれらの混合物を含んでもよい。ただし、フォトクロミック性を十分に発揮させるために、固溶体を50%以上含むことが好ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
(フォトクロミック物質の色について)
本開示のフォトクロミック物質の色彩(紫外線照射による色変化前の色彩)は、黄茶色〜橙色であり、色空間(CIE L*a*b*)において、L*は50以上95以下、a*は0以上10以下、b*は10以上40以下である。L*は反射率の尺度(明/暗シェーディング)であり、100(白色)〜0(黒色)に変動する。a*とb*は色の傾向の値であり、正のa*=赤色、負のa*=緑色、正のb*=黄色、負のb*=青色であり、L*は黒色〜白色、a*は緑色〜赤色、b*は黄色〜青色の変化を示す。色味はEuやPrの割合によって調整することができる。Prの割合が高くなるとL*が減少し、a*が増加し、b*が減少する傾向にある。また、Euの割合が高くなると、L*、a*はあまり変動せず、b*は減少する傾向にある。なお、酸化セリウムは淡黄色であり、たとえばL*=95、a*=−6、b*=29である。
本開示のフォトクロミック物質の色彩(紫外線照射による色変化前の色彩)は、黄茶色〜橙色であり、色空間(CIE L*a*b*)において、L*は50以上95以下、a*は0以上10以下、b*は10以上40以下である。L*は反射率の尺度(明/暗シェーディング)であり、100(白色)〜0(黒色)に変動する。a*とb*は色の傾向の値であり、正のa*=赤色、負のa*=緑色、正のb*=黄色、負のb*=青色であり、L*は黒色〜白色、a*は緑色〜赤色、b*は黄色〜青色の変化を示す。色味はEuやPrの割合によって調整することができる。Prの割合が高くなるとL*が減少し、a*が増加し、b*が減少する傾向にある。また、Euの割合が高くなると、L*、a*はあまり変動せず、b*は減少する傾向にある。なお、酸化セリウムは淡黄色であり、たとえばL*=95、a*=−6、b*=29である。
色変化前における色彩は、L*は、65以上95以下、a*は4以上10以下、b*は15以上40以下の範囲とするのが好ましい。この範囲であれば、より鮮やかな黄茶色〜橙色系の色彩とすることができる。
(フォトクロミック性について)
本開示のフォトクロミック物質は、紫外線(たとえば波長280〜380nm)を照射すると、黄茶色〜橙色の色味から緑がかった色味に変化する。緑がかるのは、高波長領域(およそ600nm以上)での吸収が生じるためである。つまり、吸収により赤色が低下し、その補色として緑色の色味が増すのである。紫外線照射による変色後、紫外線から遮断して放置すると、緑がかった色味から赤みが徐々に戻っていき、数時間程度で元の色味に戻る。このように本開示のフォトクロミック物質は、紫外線照射と遮断によって可逆的に色を変化させることができ、繰り返し何度も変色させることができる。
本開示のフォトクロミック物質は、紫外線(たとえば波長280〜380nm)を照射すると、黄茶色〜橙色の色味から緑がかった色味に変化する。緑がかるのは、高波長領域(およそ600nm以上)での吸収が生じるためである。つまり、吸収により赤色が低下し、その補色として緑色の色味が増すのである。紫外線照射による変色後、紫外線から遮断して放置すると、緑がかった色味から赤みが徐々に戻っていき、数時間程度で元の色味に戻る。このように本開示のフォトクロミック物質は、紫外線照射と遮断によって可逆的に色を変化させることができ、繰り返し何度も変色させることができる。
紫外線照射による色空間の各座標値の変化量は、たとえば、ΔL*が−10以上0未満、Δa*が−10以上0未満、Δb*が−10以上0未満である。また、Δb*はΔa*におよそ比例し、比例係数は0.9〜1.1である。ここでΔL*は、紫外線照射による色変化後におけるL*の値と、色変化前におけるL*の値との差である。Δa*、Δb*も同様である。変化量は照射する紫外線量により制御することができ、紫外線照射時間が長くなるほど大きくなる傾向にあるが、数分程度で変化量は最大となり飽和する。その変化量の最大値は、Euの原子割合XやPrの原子割合Yによって調整可能である。変化量の最大値は、ΔL*が−5以上0未満、Δa*が−10以上−5以下、Δb*が−10以上−5以下となるようにするとよい。明度の変化が少なく、鮮やかさを保ったまま色味を変化させることができる。
本開示の物質がフォトクロミック性を示す理由は、次のように推定される。図5に示すように、酸化セリウムにEuを単独で添加した場合(Ce0.99Eu0.01O2−δの場合)、波長360nmの紫外線による励起によってEu3+発光中心による590nmの蛍光(f−f遷移によるもの)が発生するが、EuとPrの双方を添加している本開示のフォトクロミック物質の場合(Ce0.9895Eu0.01Pr0.0005O2−δの場合)には、この590nmの蛍光は減少していた。また、酸化セリウムにPrを単独で添加した場合には、600nm付近以上の高波長領域での光吸収は見られなかった。以上から、本開示のフォトクロミック物質におけるフォトクロミック性は、紫外線の吸収によってEu3+−Pr3+中心が生成し、Eu3+−Pr3+中心により600nm付近以上での長波長領域の吸収が生じるためであると推定される。
(添加元素について)
本開示のフォトクロミック物質は、セリウムとの酸化物を主体とするが、その結晶構造において他の安定化剤元素を含んでいてもよい。これらの安定化剤は例えばカルシウム酸化物、マグネシウム酸化物などのアルカリ土類金属系酸化物であり、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物も耐火物や触媒材として周知のものである。また、希土類金属も安定化元素として知られ、周期律表で原子番号が57〜71の、ユーロピウムおよびプラセオジム以外の希土類元素を使用できる。ただし、これら安定化剤元素の割合は、本開示のフォトクロミック物質中の全金属元素に対して10mol%以下とすることが好ましく、1mol%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは0.1mol%以下である。
本開示のフォトクロミック物質は、セリウムとの酸化物を主体とするが、その結晶構造において他の安定化剤元素を含んでいてもよい。これらの安定化剤は例えばカルシウム酸化物、マグネシウム酸化物などのアルカリ土類金属系酸化物であり、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物も耐火物や触媒材として周知のものである。また、希土類金属も安定化元素として知られ、周期律表で原子番号が57〜71の、ユーロピウムおよびプラセオジム以外の希土類元素を使用できる。ただし、これら安定化剤元素の割合は、本開示のフォトクロミック物質中の全金属元素に対して10mol%以下とすることが好ましく、1mol%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは0.1mol%以下である。
また、とくに陶磁器用顔料でしばしば行われる高温焼成では、一般的に着色性成分は、その一部の成分が金属酸化物中から析出し、あるいは揮散して回復できない材料変化がおこる懸念がある。しかし、本開示のフォトクロミック物質は、1000℃以上でも分解せずに安定している。そのため、本開示のフォトクロミック物質を顔料として使用すれば、このような変化がなく高温焼成時でも橙色系色が得られる。
(本開示のフォトクロミック物質の特性)
本開示のフォトクロミック物質は、黄茶色〜橙色の暖色系の色彩であり、このような色彩でフォトクロミック性を有した無機化合物は従来知られていない新規な物質である。本開示のフォトクロミック物質は、無機化合物であるため、熱的、化学的に安定しており、耐久性に優れている。たとえば、1000℃以上の高温であっても分解せずに安定している。
本開示のフォトクロミック物質は、黄茶色〜橙色の暖色系の色彩であり、このような色彩でフォトクロミック性を有した無機化合物は従来知られていない新規な物質である。本開示のフォトクロミック物質は、無機化合物であるため、熱的、化学的に安定しており、耐久性に優れている。たとえば、1000℃以上の高温であっても分解せずに安定している。
また、本開示のフォトクロミック物質は、酸化セリウムを主体とするものであるが、酸化セリウムは毒性が十分に低いと考えられている。また、EuやPrの酸化物も同様に毒性が低いと考えられている。そのため、本開示のフォトクロミック物質もまた毒性は低いと考えられ、無害で環境保全上安全な物質であると考えられる。
(フォトクロミック物質の製造方法)
本開示のフォトクロミック物質は、所定の金属成分(Ce、Eu、Pr)を含む溶液の沈殿物から固形物を生成させ、400〜1000℃で焼成することにより得られる。例えば、所定の成分である金属化合物もしくは金属塩水溶液、その混合物、または金属の酸溶液を混合し、これに沈殿剤を加えて得られた沈殿物を焼成する方法により製造することができる。ここで、所定の金属化合物の酸または水溶液は、反応により組成が上記の望ましい組成になるように複合の金属成分が酸化物となる溶液である。
本開示のフォトクロミック物質は、所定の金属成分(Ce、Eu、Pr)を含む溶液の沈殿物から固形物を生成させ、400〜1000℃で焼成することにより得られる。例えば、所定の成分である金属化合物もしくは金属塩水溶液、その混合物、または金属の酸溶液を混合し、これに沈殿剤を加えて得られた沈殿物を焼成する方法により製造することができる。ここで、所定の金属化合物の酸または水溶液は、反応により組成が上記の望ましい組成になるように複合の金属成分が酸化物となる溶液である。
溶液に含まれる金属成分は、セリウム化合物、ユーロピウム化合物、およびプラセオジウム化合物として供給され、例えば高純度の硝酸塩、オキシ硝酸塩、塩化物、オキシ塩化物、硫酸塩、オキシ硫酸塩、酢酸塩など、酸あるいは水に可溶な化合物があげられる。また、セリウム等の金属を硝酸等に溶解した水溶液を原料としてもよい。また上記の混合物でもよい。ここで、各原料の純度は、発色の純粋さに影響を与えなければ99.5%以上を使用してもよく、とくに着色源のユーロピウムおよびプラセオジウムについてはそれを利用することが好ましい。そしてアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、シュウ酸、炭酸ガス、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液、あるいは混合水溶液を上記の金属を溶解した液に入れ、固化させる。
本開示のフォトクロミック物質の製造例を、Xが0.01、Yが0.0005である、組成物(Ce0.9895Eu0.01Pr0.0005O2−δ)を例にとり説明する。硝酸セリウム水溶液、硝酸ユーロピウム水溶液、硝酸プラセオジム水溶液を、モル比で金属成分が所定となるように混合する。これにアンモニア水を過剰に加えてその溶液のpHが10になるように調整し、十分攪拌する。得られた沈殿物を吸引濾過し、さらに洗浄を行い、回収したのち、大気中乾燥し、その後例えば600℃にて3時間で焼成する。その後、さらに、例えば900℃にて3時間で焼成してもよい。
一方、本開示のフォトクロミック物質は、例えば、所定の金属化合物の酸または水溶液を混合し、これに沈殿剤となるクエン酸などの不溶性の錯体化合物を加える沈殿法によっても作製してもよい。また、水溶性の有機酸や錯形成剤を加えて溶媒を除去することでそれらの複合もしくは混合した有機酸塩や錯体を得てから焼成する製造方法も可能である。本開示のフォトクロミック物質の製造例は、例えば原料組成の混合水溶液に少量の有機酸もしくは錯形成剤、あるいはその混合物を入れて蒸発乾固させた固形物である塩を含む混合物を得て、これを例えば900℃にて3時間で焼成し、さらに粉砕することにより製造される。水溶性の有機酸あるいは錯形成剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などが使用できる。
前記焼成後に粉砕されるフォトクロミック物質の粒子経は、分散性に優れる1μm以下の微細な粒子とすることもできるが、通常は数十μm程度の粒子として回収するのが望ましく、粉砕機などで微細な粉砕物とすることができる。また、高温焼成で使用するときはこれを再度焼成すればよい。これら粒度についてはこれを後述する着色用組成物等を作製する場合には、適宜粉砕すればよい。微粒子顔料は塗料や絵の具など室温以下で使用される無機顔料に適するので、微細であることはよい。顔料とするときの焼成温度は、特に限定されるものではなく乾燥状態での粉末でもよいが、400〜1000℃にて1〜100時間焼成することにより得られる。焼成雰囲気としては大気でよく、ただし酸素を含む雰囲気であれば大気以外でもよい。また、本開示のフォトクロミック物質は、金属酸化物の前駆体となる化合物の混合物を焼成することにより製造できる。なお、この400〜1000℃未満の温度で焼成する効果は明らかではないが、いわゆるアニールの効果があり、顔料を安定化し着色状態を良くする。また、高温での顔料使用時に対してあらかじめ安定性を保持するのに適当である。
上記のような沈殿法と焼成法を組み合わせた製造方法では、本開示のフォトクロミック物質におけるEuの原子割合XやPrの原子割合Yを制御することが容易となる。その結果、フォトクロミック物質の色彩をより容易に制御することができる。
上記沈殿法と焼成の組み合わせによる合成法以外に、本開示のフォトクロミック物質は、CeO2、Eu2O3、Pr6O11を適切なモル比で秤量して混合した後、大気中で焼成する、いわゆる固相反応法により製造することもできる。固相反応法において用いられるセリウム化合物、ユーロピウム化合物、およびプラセオジム化合物としては、上記酸化物のほかに、高純度の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩などを用いることが可能であり、加熱により分解して金属酸化物またはその混合物になるものであればよい。焼成条件としては、1300〜1550℃で焼成し、その後400〜1000℃で再焼成することが好ましい。得られた粉末を例えばボールミル等を用いて粉砕し、洗浄、分級さらに乾燥や再焼成を行ってもよい。以上のようにして得られる本開示のフォトクロミック物質は、有害金属を含まずに安全で、黄茶色から橙色を呈しフォトクロミック性を示す無機材料であり、優れた化学的安定性や耐熱性を示す。
(フォトクロミック物質の用途)
本開示のフォトクロミック物質は、顔料として利用することができ、種々の素材の着色用材として利用できる。すなわち、例えばセラミクス、陶磁器、ガラス、プラスチック、塗料、ゴム、釉薬、紙、インク、化粧品、染料、皮革、セメント、壁材等にバルク用材あるいは表面コート用材として、本開示のフォトクロミック物質を含む組成物を提供できる。また、簡易な紫外線検出器、光スイッチ、調光ガラス、など様々な用途に利用することができる。
本開示のフォトクロミック物質は、顔料として利用することができ、種々の素材の着色用材として利用できる。すなわち、例えばセラミクス、陶磁器、ガラス、プラスチック、塗料、ゴム、釉薬、紙、インク、化粧品、染料、皮革、セメント、壁材等にバルク用材あるいは表面コート用材として、本開示のフォトクロミック物質を含む組成物を提供できる。また、簡易な紫外線検出器、光スイッチ、調光ガラス、など様々な用途に利用することができる。
プラスチックとしては、熱可塑性又は熱硬化性型であってよく、本開示のフォトクロミック物質との混合をよくするため、それ以外の少量の有機物を含んでいてもよい。熱可塑性プラスチックとして、例えば、塩化ビニル、ビニルアルコール、スチレン系ポリマー類、スチレンと幾多の他の共重合体、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、さらにアクリル系のポリメタクリル酸メチルやポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレンさらにセルロース系のセルロースアセテートやポリアミドなどがあげられる。熱硬化性樹脂について、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリエステルなどがあげられる。より具体的には、フッ素樹脂、特にポリテトラフルオルエチレンやポリカーボネート、またPETのような汎用樹脂にも使用できる。本開示のフォトクロミック物質のプラスチックに対する配合割合は1〜50重量%、より好ましくは2〜20重量%がよい。
また、ペイントに対する本開示のフォトクロミック物質の配合割合は5〜50重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。さらに本開示のフォトクロミック物質は、セラミクス、磁器、陶器、タイル、レンガの着色にも使用することができる。セラミクスの組成物に10〜60重量%混合してよく、この場合には全体的に黄色の色合いを出すことができる。また、セメント、石膏、種々の無機接着剤に使用されても本来成分の性質を低下させず、例えば白いセメントに水、砂、砂利が添加されるコンクリートを黄色に着色するのに適用される。
一方、セラミクスの表面に膜状に本開示のフォトクロミック物質を付与して着色することができる。特に、本開示のフォトクロミック物質を他成分と混合して釉薬組成物とした後、セラミクス表面に塗布、焼成することにより着色した膜が形成される。本開示のフォトクロミック物質の添加量は、母体となる釉薬の1〜40重量%である。陶磁器質においては種々の特有な技術が必要となるが、本開示のフォトクロミック物質は高温において安定であるため、どの工程においても変質せず、発色性と安定性において優れている。このような着色層の形成は、比較的純度の高いアルミナ質セラミクスにおいては、その色彩があざやかで、素地との反応なく発色が良好であり、陶磁器、素焼、低品位の粘土も用いてもよく、さらにタイルや玩具、食器、管、板、壁材などの表面に形成するための顔料として良好である。
本組成物は、焼成された素地への直接の塗布・焼成する方法ほか、粉末成形体内への付与や、多孔質への浸み込みによる表面層など、種々の工程で本開示のフォトクロミック物質を利用できる。さらには、シリカ(酸化ケイ素)を多量に含む釉薬のような陶磁器への適用を妨げるものではなく、例えば本開示のフォトクロミック物質に、シリカと鉛を含む一般的なガラスフリット素材と少量の有機剤と水を加えてスラリーとした混合物を陶磁器に塗布し、400〜1000℃で焼成することで黄色の層を陶磁器等の表面に形成することができる。ただし、少し高温でも短時間、例えば、700〜1250℃にて30分以内の短時間の焼成することで黄色の層を設けることができる。
本開示のフォトクロミック物質は、L*が50以上95以下、a*が0以上10以下、b*が10以上40以下の顔料として特に優れている。また、組成の異なる(つまり色彩の異なる)複数の本開示のフォトクロミック物質を混合して用いることで適切な色彩に調整してもよい。また、本開示のフォトクロミック物質と他の色彩の顔料との混合での使用を除外するものではない。
以下に本開示の実施例を示すが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではなく、明細書に記載される趣旨によるいかなる発明も本願には含まれる。
(実施例1:試料の色評価)
組成が、Ce:Eu:Pr=1−X―Y:X:Y(原子分率比)となるように下記のように試料を合成した。1mol・dm−3濃度のCeNH4(NO3)2水溶液、1mol・dm−3濃度のEu(NO3)3水溶液、1mol・dm−3濃度のPr(NO3)3水溶液(試薬はいずれも和光純薬製)を作製したのち、CeとEuとPrを上の化学式での化学量論比で、総モル量合計が0.1mol・dm−3となるように混合して出発溶液を作製した。これに8wt%濃度のアンモニア水を添加し、pH10になるまで沈殿を生成させ、吸引濾過しながらさらに水洗した。このとき、金属成分が沈殿物に含まれていることを残液の化学分析により確認した。沈殿物を濾過操作にて回収したのち、大気中110℃で一晩乾燥し、大気中600℃にて3時間焼成した。乳鉢で粉砕して粉末試料を得た。得られた試料の組成は下記表1の通りである。
組成が、Ce:Eu:Pr=1−X―Y:X:Y(原子分率比)となるように下記のように試料を合成した。1mol・dm−3濃度のCeNH4(NO3)2水溶液、1mol・dm−3濃度のEu(NO3)3水溶液、1mol・dm−3濃度のPr(NO3)3水溶液(試薬はいずれも和光純薬製)を作製したのち、CeとEuとPrを上の化学式での化学量論比で、総モル量合計が0.1mol・dm−3となるように混合して出発溶液を作製した。これに8wt%濃度のアンモニア水を添加し、pH10になるまで沈殿を生成させ、吸引濾過しながらさらに水洗した。このとき、金属成分が沈殿物に含まれていることを残液の化学分析により確認した。沈殿物を濾過操作にて回収したのち、大気中110℃で一晩乾燥し、大気中600℃にて3時間焼成した。乳鉢で粉砕して粉末試料を得た。得られた試料の組成は下記表1の通りである。
試料1〜6のX線回折分析を行った結果、図1に示すように、いずれも結晶相としてCeO2と同様の立方晶蛍石型構造の回折ピークが認められた。このように、試料2〜6には、蛍石型の構造の固溶体の形成が確認された。
これらの粉末試料の色彩をミノルタ製色彩色差計CR‐240により測定し、L*a*b*表色系で与えられる色度座標によって定量化した。ここで、L*は反射率の尺度(明/暗シェーディング)であり、100(白色)〜0(黒色)に変動する。a*とb*は色の傾向の値であり、正のa*=赤色、負のa*=緑色、正のb*=黄色、負のb*=青色であり、L*は黒色〜白色、a*は緑色〜赤色、b*は黄色〜青色の変化を示す。
測定の結果、各粉末試料は、表1に示すようなL*、a*、b*を示した。試料1およびPrのみを導入した試料2、3(CeO2、Ce0.9995Pr0.0005O2−δ 、Ce0.95Pr0.05O2−δ)に着目すると、Pr量の増加に従いそれぞれ、a*値は−6から6、13へと上昇し、b*値は29から21、9へと低下した。CeO2単独での淡黄色に対して、Pr添加によって赤みが増して橙、褐色の色味へと変化したことがわかる。ただし、Pr量が増えるとL*が減少して暗くなるため、高い明度を得るためにはPr量を抑える必要があることがわかった。また、試料1とEu添加のみの試料6(Ce0.99Eu0.01O2−δ)を比較すると、L*は95で変化せず、a*は−6から−5、b*は29から24に変化したが、どちらも淡黄色を示した。また、試料2と、試料2にEuを導入した試料4、5とを比較すると、Euの増加に従い、a*は6、5、4と変化し、b*は21、19、15と変化したが、いずれも橙の色味であった。
このように、CeにEuとPrを同時に添加して蛍石構造の固溶体が形成された金属酸化物とした試料4、5は、表1に示すようなL*、a*、b*を示し、橙色系顔料に適するとともに、有機物と違い耐熱性に優れているという利点を有していることがわかった。
(実施例2:試料のフォトクロミック性評価1)
実施例1と同様にして試料2、4〜6を合成した。そして、試料2、4〜6について、紫外可視分光光度計(U−3000、日立ハイテクノロジーズ製、光源:WIランプとD2ランプ)を用いてUV−vis拡散反射スペクトルを測定した。その結果を図2に示す。測定は10秒間隔で90秒まで行い、反射スペクトルの経時変化を見た。
実施例1と同様にして試料2、4〜6を合成した。そして、試料2、4〜6について、紫外可視分光光度計(U−3000、日立ハイテクノロジーズ製、光源:WIランプとD2ランプ)を用いてUV−vis拡散反射スペクトルを測定した。その結果を図2に示す。測定は10秒間隔で90秒まで行い、反射スペクトルの経時変化を見た。
図2(a)、(d)のように、Eu導入がない試料2(Ce0.9995Pr0.0005O2−δ)とPr導入がない試料6(Ce0.99Eu0.01O2−δ)では、反射スペクトルに経時変化は見られなかった。
一方、図2(b)、(c)のように、EuとPrの両方を導入した試料4(Ce0.9945Eu0.005Pr0.0005O2−δ)と試料5(Ce0.9895Eu0.01Pr0.0005O2−δ)では、時間経過により反射スペクトルが変化していることがわかり、600nm付近よりも長波長領域で反射率が低下することがわかった。その長波長領域での反射率は、最初の測定(0秒)から10秒後の測定で大きく低下し、それ以降の測定では反射率の低下はゆるやかであった。波長740nm(赤色)での反射率の変化量(最初の測定に対する相対値)は、10秒後で−6%、90秒後で−15%であった。この波長の反射率の低下は、つまり赤色の吸収であり、その補色として緑色の色味が増加していることがわかった。
試料2、4〜6の光照射による発色の時間変化を色彩色差計(CR‐2600d、コニカミノルタ製、光源:ハロゲンランプ)により調べた結果を図3に示す。光照射は、色彩色差計の光源によるものである。CIE L*a*b*値の変化を、L*値およびa*b*座標の図上に示して、時間ごとに異なる記号でプロットして区別している。
図3(a)、(d)のように、Eu導入がない試料2とPr導入がない試料6では、L*、a*、b*すべてで値に時間変化がなく、変色が認められなかった。
一方、図3(b)、(c)のように、EuとPrの両方を導入した試料4と試料5では、時間経過による変色が認められ、L*、a*、b*すべての値が、光の照射時間が長くなるほど低下していった。(L*、a*、b*)の変化量(ΔL*、Δa*、Δb*)として、光照射90秒での変化量は、試料4では(−2、−3、−3)、試料5では(−3、−3、−3)であった。
この結果、CeにEuとPrを同時に添加した試料4、5は、光照射下でフォトクロミックス性を示す物質であり、光照射によって緑色の色味が増加することがわかった。
(実施例3:試料のフォトクロミック性評価2)
実施例2の色彩色差計による測定後、直ちに試料を紫外可視分光光度計に移し、UV−vis拡散反射スペクトルを測定した。測定は10分間隔で60分後まで行い、反射スペクトルの時間変化を調べた。また、光照射による測定、評価が終わるごとに、紫外可視分光光度計内で試料を暗部に放置した。測定結果を図4に示す。図4において、点線は光照射による変色をしていない状態での反射スペクトルであり、実施例2の測色試験前のUV−vis拡散反射スペクトル(図2における0秒のもの)である。
実施例2の色彩色差計による測定後、直ちに試料を紫外可視分光光度計に移し、UV−vis拡散反射スペクトルを測定した。測定は10分間隔で60分後まで行い、反射スペクトルの時間変化を調べた。また、光照射による測定、評価が終わるごとに、紫外可視分光光度計内で試料を暗部に放置した。測定結果を図4に示す。図4において、点線は光照射による変色をしていない状態での反射スペクトルであり、実施例2の測色試験前のUV−vis拡散反射スペクトル(図2における0秒のもの)である。
図4(a)、(d)のように、Eu導入がない試料2とPr導入がない試料6では、反射スペクトルに経時変化は見られなかった。なお、図4(a)においては、30〜60分後の線(e〜hの符号の線)は20分後の線(dの符号の線)と重なるため、符号を省略している。
一方、図4(b)、(c)のように、PrとEuの両方を導入した試料4、5では、波長600nm付近以上の高波長領域での反射率が時間経過により低いところから高くなり徐々に回復していくことがわかった。特に、測定開始から10分後までに反射率が大きく回復し、その後はゆるやかに回復していくことがわかった。ただし、光照射による変色をしていない状態での反射スペクトル(図中の点線a)と、60分後の反射スペクトル(図中の線h)とを比較すると、完全には反射率が回復していないことがわかる。しかし、日を改めてUV−vis拡散反射スペクトルを測定したところ、点線で示した反射スペクトルと同様の反射スペクトルを測定できたことから、数時間光を遮断すれば完全に反射率を回復できるものと推察される。
このように、EuとPrの両方を導入した試料4、5は、橙色系の色彩であり、光照射と光遮断で可逆的に色を変化させることができるフォトクロミック物質である。また、熱的、化学的に安定な無機化合物である。
なお、実施例では、試料作製の焼成温度を600℃としていたが、これを900℃とした場合でも、色調と色変化は同様であった。さらには、EuとPrの含量を変えても、ともに含まれていることがあれば、同様の色調と色変化が観測された。
本開示のフォトクロミック物質は、顔料などとして利用することができ、着色のための各種添加物として利用することができる。
Claims (8)
- 組成式:Ce1−X−YEuXPrYO2−δ(0<X≦0.1、0<Y≦0.2)で表され、少なくとも一部は蛍石型の結晶構造の固溶体である、
ことを特徴とするフォトクロミック物質。 - 0.002≦X≦0.05、0.0002≦Y≦0.01であることを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミック物質。
- X/Yは、1以上500以下である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフォトクロミック物質。
- 前記固溶体を50%以上含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフォトクロミック物質。
- 色変化前の色彩は、色空間(CIE L*a*b*)において、L*は50以上95以下、a*は0以上10以下、b*は10以上40以下である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフォトクロミック物質。
- 色変化前に対する色変化後の色彩の変化量は、色空間(CIE L*a*b*)において、L*が−10以上0未満、a*が−10以上0未満、b*が−10以上0未満である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフォトクロミック物質。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のフォトクロミック物質を含むことを特徴とする顔料。
- 組成式:Ce1−X−YEuXPrYO2−δ(0<X≦0.1、0<Y≦0.2)で表されるフォトクロミック物質の製造方法であって、
Ce、Eu、およびPrを含む溶液から、それら元素を含む沈殿物を生成する工程と、前記沈殿物を焼成する工程と、を有したフォトクロミック物質の製造方法。
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CN111454710A (zh) * | 2020-06-04 | 2020-07-28 | 天津城建大学 | 光致变色草酸氧钛盐材料及其制备方法 |
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- 2017-10-25 JP JP2017206278A patent/JP2019077799A/ja active Pending
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