JP2014022583A - 圧電素子デバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電極パターンを、エッチング以外の手段で形成することにより、コストアップを招くことなく、生産性を上げることができる製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム10上に電極用導電層12が積層されている積層体13の前記電極用導電層12に電極パターン15を打ち抜いた後、前記電極用導電層12の前記電極パターン15以外の部分を除去することにより、電極パターン15を作成工程と、電極パターン15が形成された積層体17と長尺の圧電フィルムとを貼着する工程を含む。
【選択図】図2
【解決手段】プラスチックフィルム10上に電極用導電層12が積層されている積層体13の前記電極用導電層12に電極パターン15を打ち抜いた後、前記電極用導電層12の前記電極パターン15以外の部分を除去することにより、電極パターン15を作成工程と、電極パターン15が形成された積層体17と長尺の圧電フィルムとを貼着する工程を含む。
【選択図】図2
Description
本発明は、圧電フィルムの少なくとも片面に電極パターンが形成され、この電極パターンが保護フィルムで覆われている圧電素子デバイスの製造方法に関する。
圧電素子として圧電フィルムを用いた圧電素子デバイスは、一般に、図1に示すような構成を有している。すなわち、圧電フィルム1の片面又は両面に、電極2が設けられていて、この電極2は、端子接続部分2aを残して、保護用プラスチックフィルム3で覆われている。図1中、4は、電極2と保護用プラスチックフィルム3とを接着する接着剤層である。図1(a)は、電極2が圧電フィルム1の表面の一部に設けられた圧電素子デバイスであり、図1(b)は圧電フィルム1’の表面全体に電極2が設けられた圧電素子デバイスである。
このような圧電素子デバイスは、例えば、米国特許6996891号(特許文献1)に記載されているように、電極となる金属フィルムと誘電フィルムとを組合せた積層フィルムにおいて、前記金属フィルムの不要部分をエッチングによって除去して電極パターン形成した後、この電極パターンが形成された積層フィルムに、圧電フィルムをラミネートすることにより製造している。以上の工程は、通常、長尺の誘電フィルム、金属フィルム、圧電フィルムを使用し、これらの長尺フィルムを2つのロールで挟持しながら送り出す、いわゆるロールtoロールによる連続プロセスで行われ、ラミネートした後、センサ素子単位でカットすることにより、個々の圧電素子デバイスを得ている。
特許文献1の方法では、電極パターンをエッチングにより形成している。本工程は、レジスト塗工、露光硬化、現像によるエッチングマスクの形成、表面脱脂、エッチング液への浸漬、水洗等による電極パターンの形成が複数の工程を経て行われることから、連続工程における設備が複雑となり、加工にも時間がかかる。このため、電極パターンの形成工程部分がロールtoロールの連続工程に組み込まれている場合、電極パターン形成工程の処理時間が生産性に及ぼす影響は大きく、ロールtoロールによる連続生産性のメリットが十分に生かされにくい傾向がある。
溶解力の高い強酸又は強アルカリ性のエッチング液を使用することで、エッチング液の浸漬時間を短くすることは可能であるが、電極が設けられる誘電フィルムやエッチングマスクを形成するレジスト材料として、耐食性に優れた材料を使用する必要がある。また、誘電フィルム上に金属フィルムを積層する手段についても、エッチング処理により劣化しないような手段を選択する必要があることから、汎用の接着剤等を用いる貼着ができず、コストアップ招来の原因となる。
このような理由から、圧電素子デバイスの製造において、エッチングに代わる電極パターン形成手段の開発が求められている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電極パターンを、エッチング以外の手段で形成することにより、コストアップを招くことなく、生産性を上げることができる製造方法を提供することにある。
本発明の圧電フィルムデバイスの製造方法は、圧電フィルム;該圧電フィルムの少なくとも一面に設けられた電極;該電極を保護するプラスチックフィルム;及び前記電極と前記プラスチックフィルムとを貼着する接着剤層を備えた圧電素子デバイスの製造方法において、前記プラスチックフィルム上に電極用導電層が積層されている積層体の前記電極用導電層に電極パターンを打ち抜いた後、前記電極用導電層の前記電極パターン以外の部分を除去することにより、電極パターンを作成する電極パターン作成工程を含むことを特徴とする。前記電極パターン作成工程により電極パターンが作成された積層体を加熱する工程を、さらに含んでもよい。
前記接着剤層の間の接着力は0.05〜1N/cmであることが好ましく、また、前記接着剤層の前記プラスチックフィルムに対する接着力が前記電極用導電層に対する接着力よりも大きいことが好ましい。
本発明の製造方法を適用する積層体として、前記プラスチックフィルム上に第1電極用導電層が積層され、該第1電極用導電層上に圧電フィルムと第2電極用導電層との組合せ単位が少なくとも1つ積層されている圧電フィルム含有積層体を使用し、前記電極パターンの作成工程は、前記圧電フィルム含有積層体を、第2電極用導電層側から、前記圧電フィルム及び前記第1電極用導電層を打ち抜いた後、電極パターン以外の部分を除去することにより、前記電極パターンを作成する工程であってもよい。あるいは前記積層体として、前記プラスチックフィルム上に第1電極用導電層が積層された積層体を使用し、前記電極パターン作成工程により得られた電極パターン形成後の積層体と、圧電フィルムとを貼着する工程を含んでもよい。前記圧電フィルムとしては、圧電処理された多孔質プラスチックフィルムであることが好ましい。
本発明は、圧電フィルム;該圧電フィルムの少なくとも一面に設けられた電極;該電極を保護するプラスチックフィルム;及び前記電極と前記プラスチックフィルムとを貼着する接着剤層を備えた圧電素子デバイスであって、前記電極が打ち抜きにより形成されている圧電デバイスを包含する。
本発明の製造方法によれば、電極パターンの形成に関して、エッチング工程を採用していないので、コストアップを招くことなく、圧電デバイスの連続生産性を高めることができる。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の圧電素子デバイスの製造方法は、圧電フィルム;該圧電フィルムの少なくとも一面に設けられた電極;該電極の少なくとも一部を覆うプラスチックフィルム;及び前記電極と前記プラスチックフィルムとを貼着する接着剤層を備えた圧電素子デバイスの製造方法に関する。
製造対象となる圧電素子デバイスの構成は、図1(a)又は(b)に示すような、1つの圧電フィルム1(又は1’)の両面に電極2が設けられ、電極2の外表面に、端子接続部分2aを残して、プラスチックフィルム3が接着剤層4を介して貼着されている構成の他、圧電フィルムと電極の組合せを繰り返し単位5(又は5’)として、複数の繰り返し単位5を含む多層構造の圧電素子デバイスも対象となる。
本発明の製造方法は、以上のような圧電素子デバイスの製造方法であって、前記プラスチックフィルム上に電極用導電層が設けられている積層体の前記電極用導電層を打ち抜いた後、前記電極用導電層の不要部分を除去することにより、前記電極パターンを作成する工程を含む。
本発明の製造方法で原料として用いる積層体は、(i)プラスチックフィルム上に接着剤層を介して電極用導電層が積層されているシングル積層体;(ii)シングル積層体の電極用導電層上に、さらに圧電フィルムが積層されている圧電フィルム付き積層体;(iii)圧電フィルムの両面に電極用導電層が積層され、一方の電極用導電層が、プラスチックフィルムで覆われているダブル積層体;(iv)シングル又はダブル積層体上に圧電フィルムと電極用導電層の組合せ単位が複数積層されたマルチ積層体などを用いることができる。
積層体の基材となるプラスチックフィルム(「基材フィルム」と略称する場合がある)は、圧電素子デバイスにおいて、電極を保護するために、電極に貼着される保護用のフィルムとなる。本発明の製造方法によれば、エッチング処理を行わないことから、化学的処理を受けることがないので、その種類は特に限定しない。従って、基材フィルムとしては、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを用いることができる。
電極用導電層は、銅箔、アルミニウム箔等の金属フィルム、ITO(酸化インジウムスズ)等を蒸着した導電フィルムが好ましいが、電極用導電層が圧電フィルムの表面に形成されている場合には、金属やカーボンペーストの印刷、金属やカーボン、ITO等の蒸着により形成されてもよい。
圧電フィルムの種類は、特に限定せず、従来より圧電フィルムとして周知のポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム、円盤状の気泡を有する延伸多孔質ポリプロピレンフィルム等の多孔質ポリオレフィンフィルム、さらに例えば、特願2012−24542号等で提案されている多孔質フッ素樹脂系フィルムなどを用いることができる。このようなプラスチックフィルムの両面に高電圧を印加したり、高電界下で数分間、保持したり、フィルムから所定間隔をあけて、コロナ放電により荷電させること等により、圧電性を付与することができる。このような圧電処理は、デバイスを製造するロールtoロールのラインに含めることが望ましい。
基材フィルムと電極用導電層とを貼着するのに用いられる接着剤層は、基材フィルム上に液状接着剤を塗工することにより形成してもよいし、予め作成されたフィルム状接着剤であってもよい。打抜き後に行われる電極用導電層の不要部分の除去の観点から、接着剤層と基材フィルムとの接着力、又は接着剤層と電極用導電層との接着力が弱い接着剤を用いる。具体的には、接着力が0.05〜1.0N/cmの接着剤、より好ましくは0.1〜0.5N/cmの接着剤を用いることが好ましい。この程度の弱い接着力とすることにより、不要部分を剥離により除去することができるが、接着力が弱すぎると、打抜き時や打抜き後の不要部分の剥離除去の際に、電極用導電層全体が剥がれてしまうおそれがある。一方、接着力が強すぎると、打抜き後の不要部分の除去が困難となる。
また、接着剤層の基材フィルムに対する接着力を、電極用導電層に対する接着力よりも大きい接着剤を用いることが好ましい。基材フィルムに対する接着力を、電極用金属フィルムに対する接着力よりも大きくすることにより、不要部分の除去後にも、基材フィルム上に接着剤層が残すことが可能となり、残存した接着剤を、後述する他の積層体との接着に利用することができる。
接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定しないが、上記接着力を有する樹脂組成物として、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステルとアクリルニトリル共重合体、アクリル酸エステルとオレフィンとの共重合体等のアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、液状ゴム、及びこれらの混合物、さらには必要に応じて硬化剤を含有させた組成物を使用することができる。接着性組成物と電極用導電層との接着力が上記範囲内となるような組成を適宜選択すればよい。また、加熱等により、接着力が増加する接着性組成物が好ましい。
以上のような構成を有する積層体を用いて電極パターンを作成する。
本発明では、電極パターンの作成方法として、エッチングに代えて、ハーフカットを採用するところに特徴がある。すなわち、前記基材フィルム上に電極用導電層が積層されている積層体の電極用導電層を打抜き、基材フィルムを打ち抜かないことで、ロールtoロールの連続的製造工程のうちの一工程として、前記電極パターンを作成する。
本発明では、電極パターンの作成方法として、エッチングに代えて、ハーフカットを採用するところに特徴がある。すなわち、前記基材フィルム上に電極用導電層が積層されている積層体の電極用導電層を打抜き、基材フィルムを打ち抜かないことで、ロールtoロールの連続的製造工程のうちの一工程として、前記電極パターンを作成する。
ハーフカットとは、カットする対象の積層体の一部のみにカッターを挿入することをいう。本発明では、電極パターンを形成するために、電極用導電層を打抜き、基材となるプラスチックフィルムは打ち抜かない。導電層のうち、電極となる部分を打ち抜いた後、打ち抜いた電極パターン以外の部分、すなわち電極を形成しない部分(不要部分)を除去することで、電極パターンを形成することができる。なお、導電層を打ち抜いた後、不要部分が除去できさえすれば、導電層が必ずしも完全に切断されている必要はなく、容易に切り離すことができるような薄皮又は微細線で不要部分とつながっていても構わない。
ハーフカットに使用するカッター(又はプレス機)としては、特に限定しないが、トムソン型、ピナクル型、電鋳型を利用したプレス機やロータリーダイなどを用いることができる。
従って、前記(i)シングル積層体を用いる場合、電極用導電層を打抜き、基材フィルムは打ち抜かない。打抜き後、電極を形成しない部分の金属層を剥離除去する。
(ii)圧電フィルム付き積層体の場合には、圧電フィルムと電極用導電層を打抜き、基材フィルムは打ち抜かない。打抜き後、電極を形成しない部分(不要部分)を剥離除去する。
(iii)ダブル又はマルチ積層体の場合、基材フィルムだけを残して、基材フィルムが積層されていない側の電極用導電層、及び圧電フィルムを打ち抜いた後、電極を形成しない部分の圧電フィルム及び電極用導電層を剥離除去する。
(ii)圧電フィルム付き積層体の場合には、圧電フィルムと電極用導電層を打抜き、基材フィルムは打ち抜かない。打抜き後、電極を形成しない部分(不要部分)を剥離除去する。
(iii)ダブル又はマルチ積層体の場合、基材フィルムだけを残して、基材フィルムが積層されていない側の電極用導電層、及び圧電フィルムを打ち抜いた後、電極を形成しない部分の圧電フィルム及び電極用導電層を剥離除去する。
なお、不要部分の剥離除去に関して、基材フィルムと電極用導電層とを接着している接着剤層については、基材フィルム上に残存していてもよいし、不要部分に伴って剥離除去されてもよい。不要部分に伴って剥離除去されるか否かは、接着剤層に用いられる接着剤の接着力、被着体である基材フィルム、電極用導電層に対する親和性等によって異なる。
代表的な態様の製造方法について、図に基づいて説明する。
図2は、第1の実施態様として、シングル積層体(i)を用いた場合の電極パターン作成工程を示している。図2(a)は、保護フィルムとして用いられる長尺の基材フィルム10を示しており、基材フィルム10のほぼ中央に、一定間隔ごとに窓部10aが開設されている。また、フィルム10の片面に、接着剤層11が設けられている。このような接着剤層付き基材フィルムの接着剤層11上に、電極パターンを形成するための長尺の金属フィルム12を積層して、シングル積層体13が得られる(図2(b))。このようなシングル積層体13において電極用導電層となる金属フィルム12を、カッターPにて電極パターンを打抜き、電極パターン以外の部分(不要部分)を剥離除去する。図2(c)は、打抜き後、不要部分14を剥離除去した後の上面図及び断面図である。図2(c)において除去される不要部分14は、点線で囲まれた部分(黒塗り部を除く)として表わされ、打抜き後、残っている部分は、形成された電極パターン15として表わされている。
図2は、第1の実施態様として、シングル積層体(i)を用いた場合の電極パターン作成工程を示している。図2(a)は、保護フィルムとして用いられる長尺の基材フィルム10を示しており、基材フィルム10のほぼ中央に、一定間隔ごとに窓部10aが開設されている。また、フィルム10の片面に、接着剤層11が設けられている。このような接着剤層付き基材フィルムの接着剤層11上に、電極パターンを形成するための長尺の金属フィルム12を積層して、シングル積層体13が得られる(図2(b))。このようなシングル積層体13において電極用導電層となる金属フィルム12を、カッターPにて電極パターンを打抜き、電極パターン以外の部分(不要部分)を剥離除去する。図2(c)は、打抜き後、不要部分14を剥離除去した後の上面図及び断面図である。図2(c)において除去される不要部分14は、点線で囲まれた部分(黒塗り部を除く)として表わされ、打抜き後、残っている部分は、形成された電極パターン15として表わされている。
このようにして得られたシングル積層体の電極パターン(図2(c))を用いて、圧電素子デバイスを作成する方法を図3に示す。2つの電極パターンが形成された積層体(第1電極パターン付き積層体17a,第2電極パターン付き積層体17b)で、長尺の圧電フィルム18を挟むようにラミネートする。図3(b)はラミネートした状態を示している。ロールtoロール方式による連続プロセスでは、圧電フィルム18の両面に電極パターン15が繰り返し形成された長尺の積層体が得られる。この長尺の積層体を、矢印位置でカットすることにより、図1(a)に示す構成を有するような個々の圧電素子デバイスが得られる。
図4は、第2の実施態様として、ダブル積層体(iii)を用いた場合の電極パターン作成工程を示している。ダブル積層体25は、圧電フィルム23の両面に接着剤層24a,24bを介して第1導電層22a及び第2導電層22bが夫々積層され、第1導電層22a上に、さらに接着剤層21を介して基材フィルム20が貼着されている。基材フィルム20には、電極となる導電層22aに接続端子を接続するための窓部20aが開設されている。
基材フィルム20が積層されていない電極用導電層(第2導電層)22bの側からカッターPが、第2導電層22b及び圧電フィルム23及び第1導電層22aに挿入され、第1導電層22a及び第2導電層22bに同形同大の電極パターンの切り込みが形成される。電極パターン以外の部分(不要部分)を基材フィルム20から剥離除去することで、圧電フィルム26’の両面に同形同大の電極パターン27a,27bが形成された圧電素子単位が、長尺の基材フィルム20上に形成される。
なお、電極用導電層22a,22bは第1の実施態様のように金属フィルムであってもよいし、圧電フィルム上に印刷や蒸着により形成した金属やカーボンなどの導電体であってもよく、電極用導電層が印刷により形成される場合には、接着剤層24a、24bはなくてもよい。接着剤層21の接着力が弱く、例えば、電極用導電層22a又は基材フィルム20に対する接着力が0.05〜1.0N/cmである場合には、圧電フィルム23とともに、電極用導電層22aにおける電極以外の部分(不要部分)が、基材フィルム20から剥離除去される。
次いで、図4(b)に示すように、上記で得られた圧電フィルムの両面に電極パターンが形成された積層体の第2電極を覆うように、長尺の第2基材フィルム20’を、第2基材フィルム20’上に積層された接着剤層21’を介して貼着すると、図1(b)に示すような、両面に電極を有するタイプの圧電素子デバイスが得られる。
なお、接着剤として、電極用導電層22aに対する接着力が基材フィルム20に対する接着力よりも小さい接着剤を用いた場合には、通常、図5に示すように、接着剤層21は基材フィルム20上に留まることなく、不要部分として、一緒に剥離除去されることになる。
第2の態様の製造方法によれば、圧電フィルムの両面に、同形同大の電極パターンが平行に設けられた圧電素子を容易に得ることができるので、打抜き後、圧電フィルムを挟んで、電極パターン付き積層体を貼り合わせる第1の態様と比べて、圧電フィルムの両面に形成される電極パターンの平行関係の精度が高いという利点がある。
打抜き後、電極用導電層の不要部分を除去した後、積層体を加熱してもよい。加熱により軟化して、電極パターンと基材フィルム表面との濡れ性がよくなり、接着力を増大させることができる接着剤、あるいは加熱により接着性樹脂組成物の架橋硬化の進行により、電極パターンと基材フィルムとの接着力を増大させることができ、積層間が剥離しにくい耐久性のある圧電デバイスとすることができる。電極パターンが形成された積層体を、さらに、圧電フィルムと貼着する場合、前記接着力増大のための加熱は、電極パターン形成後、圧電フィルムとの貼着前に行ってもよいし、圧電フィルムとの貼着後に行ってもよい。
以上のように、本発明の製造方法では、電極パターン作成工程でエッチング処理を行わないので、多孔質圧電フィルムを用いる場合であっても、電極用導電層を積層した状態で、電極パターン作成工程に供することができる。
また、本発明の製造方法では、電極パターン作成工程において、エッチング工程を採用せず、打抜き工程を採用しているので、長尺の基材フィルムに金属フィルム、圧電フィルムなどが積層された長尺の積層フィルムを使用する連続工程において、電極パターン作成工程を組み込むことができ、しかも電極パターン作成工程は、エッチング処理と比べて、加工時間が短いので、生産性が増大する。
さらに、従来、エッチング処理を用いる場合では、圧電フィルムへの影響、特に多孔質圧電フィルムを用いる場合には、エッチング液への浸漬を適用することができないという理由から、電極パターン形成後に、圧電フィルムを貼り合わせて製造していた。圧電フィルムの両面に電極が設けられる圧電素子デバイス、さらには圧電フィルムと電極とを組み合わせた繰り返し単位を複数有する多層構造の圧電素子デバイスの場合、貼り合わせ方法では、電極位置がずれないようにする必要があり、高精度の貼り合わせ位置決めが求められる。しかしながら、本発明の方法では、予め圧電フィルムを含む多層構造の積層体を用いて、一度に打ち抜くことができるので、電極と圧電フィルムとが複数層積層されたマルチ積層体であっても、同形同大の電極の設置位置の平行度が高い圧電素子デバイスを容易に製造することが可能となる。このことは、特性が安定した圧電素子デバイスを得ることができ、不良率の発生を低減できることを意味する。
本発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
〔接着剤層の接着力とハーフカットの関係〕
保護用プラスチックフィルムとして東レのポリエステルフィルム(厚み188μm)を用いた。
電極用導電フィルムとしては、厚み18μmの銅箔(福田金属製RCF−T5B)を用いた。
上記ポリエステルフィルム上に、表1に示す組成を有する接着剤組成物No.1〜6を、トルエンを主成分とする有機溶剤500部に溶解して得られた接着剤溶液をマルチコータで塗工した後、150℃で2分間加熱乾燥することにより、厚み50μmの半硬化状態のフィルム状接着剤を得た。
保護用プラスチックフィルムとして東レのポリエステルフィルム(厚み188μm)を用いた。
電極用導電フィルムとしては、厚み18μmの銅箔(福田金属製RCF−T5B)を用いた。
上記ポリエステルフィルム上に、表1に示す組成を有する接着剤組成物No.1〜6を、トルエンを主成分とする有機溶剤500部に溶解して得られた接着剤溶液をマルチコータで塗工した後、150℃で2分間加熱乾燥することにより、厚み50μmの半硬化状態のフィルム状接着剤を得た。
このフィルム状接着剤上に、上記銅箔を載せ、80℃の加熱ラミネータ(但しNo.6については140℃の加熱ラミネータ)を用いて貼り合わせた。尚、No.2については、ラミネート後150℃で2分間加熱して、接着強度を増加させた。
ラミネート後の接着力を、JIS C6481に準拠した180°ピーリング試験により、保護フィルム側から剥がすことにより、測定した。測定後、銅箔をトムソンプレスによりハーフカットした後、不要部分を剥離除去した。このとき、問題なく、銅箔部分のみを剥離除去できた場合を「○」、打抜き後にカッターを抜く際に、銅箔が剥がれたり、打抜き後の剥離除去の際にパターン部分も一緒に剥離された場合を「×」として、評価した。
剥離後、さらに150℃で40分間加熱して、接着力強度の増大を図った。加熱後の接着力を、ラミネート後の接着力と同様の方法で測定した。これらの結果を、接着剤組成物の組成と併せて、表1に示す。
尚、接着剤組成物に用いた成分は、以下の通りである。
・アクリル系樹脂1:エチレンアクリレート、ブチルアクリレート、及びアクリロニトリルの共重合体であり、官能基としてエポキシ基を有する。重量平均分子量(Mw)は85万であり、エポキシ価0.21g・eq、理論ガラス転移温度(Tg)12℃である。
・アクリル系樹脂2:ポリブチルアクリレートで、重量平均分子量(Mw)37000、理論ガラス転移温度(Tg)−55℃である。
・エポキシ樹脂1:DIC株式会社の「エピクロン(登録商標)−N740」。これはフェノール−ノボラック型エポキシ樹脂である。
・エポキシ樹脂2:DIC株式会社の「エピクロン(登録商標)695」。これはノボラック型エポキシ樹脂である。
・ポリアミド樹脂1:T&K TOKA製の固形ポリアミド樹脂「TXM258SB」(重量平均分子量4−5万)
・ポリアミド樹脂2:T&K TOKA製の液状ポリアミド樹脂「TXM74B3」
・ブタジエンゴム:サートマー製の液状ブタジエンゴム「RICON657」
・EEA樹脂:三井デュポンポリケミカル製の「AS252」
・ポリエチレン:住友化学製の「C215」
・硬化剤:アミン系硬化剤として4,4−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、マイクロカプセル型硬化剤として旭イーマテリアルズ社の「ノバキュア(商品名)HX3088」、三フッ化ホウ素系硬化剤としてステラケミファ株式会社の「BF3MEA」を用いた。
・充填剤:日本ミストロンの「ミストロンタルク(商品名)」(粒径5μmのタルク)を用いた。
・アクリル系樹脂1:エチレンアクリレート、ブチルアクリレート、及びアクリロニトリルの共重合体であり、官能基としてエポキシ基を有する。重量平均分子量(Mw)は85万であり、エポキシ価0.21g・eq、理論ガラス転移温度(Tg)12℃である。
・アクリル系樹脂2:ポリブチルアクリレートで、重量平均分子量(Mw)37000、理論ガラス転移温度(Tg)−55℃である。
・エポキシ樹脂1:DIC株式会社の「エピクロン(登録商標)−N740」。これはフェノール−ノボラック型エポキシ樹脂である。
・エポキシ樹脂2:DIC株式会社の「エピクロン(登録商標)695」。これはノボラック型エポキシ樹脂である。
・ポリアミド樹脂1:T&K TOKA製の固形ポリアミド樹脂「TXM258SB」(重量平均分子量4−5万)
・ポリアミド樹脂2:T&K TOKA製の液状ポリアミド樹脂「TXM74B3」
・ブタジエンゴム:サートマー製の液状ブタジエンゴム「RICON657」
・EEA樹脂:三井デュポンポリケミカル製の「AS252」
・ポリエチレン:住友化学製の「C215」
・硬化剤:アミン系硬化剤として4,4−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、マイクロカプセル型硬化剤として旭イーマテリアルズ社の「ノバキュア(商品名)HX3088」、三フッ化ホウ素系硬化剤としてステラケミファ株式会社の「BF3MEA」を用いた。
・充填剤:日本ミストロンの「ミストロンタルク(商品名)」(粒径5μmのタルク)を用いた。
ラミネート後の接着力が1.0N/cmを超えるNo.2では、打抜き後の剥離除去が困難であった。一方、ラミネート後の接着力が0.05N/cm未満であるNo.5では、打抜きの際に金属箔が剥がれてしまい、うまく打ち抜くことができなかった。
一方、ラミネート後の接着力が0.05〜1.0N/cmであるNo.1,3,4,6は、いずれも打抜き性を満足することができ、且つ加熱により、保護フィルムとの必要な接着強度を確保することができた。
一方、ラミネート後の接着力が0.05〜1.0N/cmであるNo.1,3,4,6は、いずれも打抜き性を満足することができ、且つ加熱により、保護フィルムとの必要な接着強度を確保することができた。
本発明の製造方法によれば、エッチング処理を経ることなく、電極パターンを作成することができ、しかも長尺の基材フィルムを用いるロールtoロールによる連続生産工程に適用できるので、圧電フィルムを用いた圧電素子デバイスの製造方法の生産性改善を図ることができる。
1,1’ 圧電フィルム
2 電極
3 基材フィルム
4 接着剤層
10,20,20’ 基材フィルム
11,21,21’ 接着剤層
12,22a,22b 電極用導電層
15 電極パターン
18 圧電フィルム
23,26’ 圧電フィルム
27a,27b 電極用導電層
2 電極
3 基材フィルム
4 接着剤層
10,20,20’ 基材フィルム
11,21,21’ 接着剤層
12,22a,22b 電極用導電層
15 電極パターン
18 圧電フィルム
23,26’ 圧電フィルム
27a,27b 電極用導電層
Claims (8)
- 圧電フィルム;該圧電フィルムの少なくとも一面に設けられた電極;該電極を保護するプラスチックフィルム;及び前記電極と前記プラスチックフィルムとを貼着する接着剤層を備えた圧電素子デバイスの製造方法において、
前記プラスチックフィルム上に電極用導電層が積層されている積層体の前記電極用導電層に電極パターンを打ち抜いた後、前記電極用導電層の前記電極パターン以外の部分を除去することにより、電極パターンを作成する電極パターン作成工程を含むことを特徴とする圧電フィルムデバイスの製造方法。 - 前記電極パターン作成工程後の積層体を加熱する工程を、さらに含む請求項1に記載の圧電フィルムデバイスの製造方法。
- 前記接着剤層の接着力が0.05〜1N/cmである請求項1又は2に記載の圧電素子デバイスの製造方法。
- 前記接着剤層の前記プラスチックフィルムに対する接着力は、前記電極用導電層に対する接着力より大きい請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電フィルムデバイスの製造方法。
- 前記積層体として、前記プラスチックフィルム上に第1電極用導電層が積層され、該第1電極用導電層上に圧電フィルムと第2電極用導電層との組合せ単位が少なくとも1つ積層されている圧電フィルム含有積層体を使用し、
前記電極パターンの作成工程は、前記圧電フィルム含有積層体を、第2電極用導電層側から、前記圧電フィルム及び前記第1電極用導電層を打ち抜いた後、電極パターン以外の部分を除去することにより、前記電極パターンを作成する工程である請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電素子デバイスの製造方法。 - 前記積層体として、前記プラスチックフィルム上に第1電極用導電層が積層された積層体を使用し、
前記電極パターン作成工程により得られた電極パターン形成後の積層体と、圧電フィルムとを貼着する工程を含む
請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電素子デバイスの製造方法。 - 前記圧電フィルムは、圧電処理された多孔質プラスチックフィルムである請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧電素子デバイスの製造方法。
- 圧電フィルム;該圧電フィルムの少なくとも一面に設けられた電極;該電極を保護するプラスチックフィルム;及び前記電極と前記プラスチックフィルムとを貼着する接着剤層を備えた圧電素子デバイスであって、前記電極は、打ち抜きにより形成されている圧電デバイス。
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JP2020134444A (ja) * | 2019-02-25 | 2020-08-31 | ロボセンサー技研株式会社 | 圧電センサ |
JP2020161651A (ja) * | 2019-03-27 | 2020-10-01 | 三井化学株式会社 | エレクトレット素子および電子装置 |
-
2012
- 2012-07-19 JP JP2012160233A patent/JP2014022583A/ja active Pending
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