JP2014022437A - 涙滴状磁芯及びこれを用いたコイル装置 - Google Patents

涙滴状磁芯及びこれを用いたコイル装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、製造効率にすぐれ、初期のインダクタンスが大きく、安定した直流重畳特性を有する涙滴状磁芯及びこれを用いたコイル装置を提供することである。
【解決手段】本発明に係る涙滴状磁芯は、磁性材料からなり、コイル装置20に用いられる磁芯であって、一端が直角に屈曲した曲部16により連続する直線状の第1直線部11と第2直線部15と、該第1直線部と第2直線部の他端どうしを連繋する円弧状の円弧部17と、を具える。また、本発明に係るコイル装置は、前記涙滴状磁芯10に、巻線を施してなる。
【選択図】図9

Description

本発明は、電源回路やインバータなどの交流機器における整流回路、雑音防止回路、共振回路等に装備されるコイル装置に用いられる磁芯に関するものである。
各種交流機器の回路に搭載されるコイル装置は、環状の磁芯にコイルを巻装して構成される。
巻線を容易に行なうために、円環状のトロイダル磁芯の一部を磁路方向に幅を持たせて切断した隙間部を形成し、該隙間部から導線を通しつつ巻き付けたコイル装置が提案されている(例えば特許文献1の従来の技術の図10参照)。
上記コイル装置においては、導線は1ターンずつ手作業により巻き付ける必要があり、製造効率に劣る。
そこで、棒状の磁芯を図14(a)に示すように、直線部(71)を具えた略円形となるように屈曲し、一方の端面(72)が直線部(71)の側面(73)と向かい合うように隙間部(74)を形成したコイル装置(70)も提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
特許第4603728号公報 特許第4745543号公報
しかしながら、上記コイル装置(70)においては、隙間部(74)を形成する端面(72)は、該端面(72)よりも面積の大きい直線部(71)の側面(73)と対向する。従って、図14(b)に示すように、端面(72)と側面(73)との間で磁束(図中矢印で示す)が漏洩し、インダクタンス値の低下を招く。特に、漏れ磁束が導線(75)を回避すると、巻数の二乗に比例した所期のインダクタンスを発揮することはでない。また、漏れ磁束が導線(75)と鎖交することによって生じる渦電流によって、所謂銅損が増大し、また磁束が主磁路から逸脱することから、磁芯に不要の渦電流損が生じることから発熱の原因となる。
さらに、上記特許文献2では、段落[0033]において、前記隙間(74)に磁性又は非磁性によるギャップ材を埋め戻すことで、インダクタンス値を高くしたり、漏れ磁束を抑えたり、磁歪による磁芯の振動を抑えることが開示されている。
ところが、現実的には、せいぜい非磁性のギャップ材を隙間部に接着固定して、磁歪による磁芯の振動を抑制したり、磁気引き付け現象による振動音低減などに留まっているのが実態であり、特に磁性を有するギャップ材による埋め戻しは、磁気特性や磁性材料の工法及び加工精度、表面粗度のばらつき管理などが必要となり、これらに伴って製造コストの上昇や製造効率の低下を避けることは難しいため、一般的に実用化が困難である。
また、非磁性ギャップ材に代えて、磁性粉を接着剤と混合した磁性材を作製し、隙間部に塗布することでインダクタンス値を高くすると共に漏れ磁束を抑制する方法も知られている。しかしながら、磁性粉を混合した接着剤の粘度が作業限界のペースト状となるまで混合割合を増加させても、透磁率は2〜5程度の一桁台に留まる。このため、インダクタンスを向上したり漏れ磁束が低減するといった一定の効果はあるものの、その活用範囲は極低磁場に限られると共に、反って高磁場時の磁気飽和特性は悪化する欠点があることが直流重畳特性から判っている。
本発明の目的は、製造効率にすぐれ、初期のインダクタンスが大きく、安定した直流重畳特性を有する涙滴状磁芯及びこれを用いたコイル装置を提供することである。
本発明に係る涙滴状磁芯は、
磁性材料からなり、コイル装置に用いられる磁芯であって、
一端が直角に屈曲した曲部により連続する直線状の第1直線部と第2直線部と、
該第1直線部と第2直線部の他端どうしを連繋する円弧状の円弧部と、
を具える。
前記曲部は、外周面及び内周面が円弧状とすることができる。
前記第1直線部は、磁路に直交する方向に切断された隙間部を有し、該隙間部は、前記曲部側の第1端面と、該第1端面と対向し、略同一面積である第2端面を具えることができる。
前記隙間部には、磁性材料からなるギャップ用磁芯を挿入することができる。
前記ギャップ用磁芯と、前記隙間部の第1端面及び第2端面との間には、ギャップが形成されることが望ましい。
前記第1直線部、曲部、第2直線部及び円弧部は、前記隙間部の第1端面及び第2端面を除き、電気絶縁性の樹脂により被覆することができる。
また、本発明に係る涙滴状磁芯を用いたコイル装置は、上記涙滴状磁芯に、巻線を施してなる。
前記コイル装置は、涙滴状磁芯に、前記隙間部から予め巻線したコイルを挿入して構成することができる。
本発明に係る涙滴状磁芯は、第1直線部と第2直線部を有しているから、涙滴状磁芯の周面に樹脂被覆を行なう際、巻線を施す際、隙間部を形成する際などの作業時に、インサート成型機、巻線機、巻線用の治具、隙間部を形成するための切断機への取付け、位置決めを容易に行なうことができ、また、取付時や位置決め時、さらには作業時における涙滴状磁芯のずれを抑えて、効率よく巻線等の前記作業を行なうことができる。
また、本発明に係る涙滴状磁芯は、曲部を円弧状とすることで、磁路を全体に亘って略同一とすることができる。
本発明に係る涙滴状磁芯は、隙間部は、略同一面積である第1端面と第2端面が対向しているから、隙間部からの磁束の漏洩を抑えることができ、漏れ磁束に起因するインダクタンスの低下や渦電流損などを可及的に低減できる。また、隙間部は、涙滴状に形成された磁芯を切断することで形成することができ、棒状の磁芯を屈曲させて作製する場合に比して、寸法精度を可及的に高めることができる。
本発明に係る涙滴状磁芯は、前記隙間部に磁性材料からなるギャップ用磁芯を挿入することで、隙間部を埋めて所望の磁気特性を得ることができる。特に、前記ギャップ用磁芯と、前記隙間部の第1端面及び第2端面との間に、夫々ギャップを形成することで、ギャップ用磁芯が隙間部内で多少位置ずれしていても、インダクタンス値を維持したままで漏れ磁束の大きさを分散し、分布拡大を抑制することができる。
本発明に係る涙滴状磁芯は、隙間部を形成する前に、予め電気絶縁性の樹脂により被覆し、被覆の後、前記樹脂と共に第1直線部を切断することで、隙間部を形成することができ、これにより隙間部を形成する第1端面と第2端面が樹脂で被覆されることなく、第1直線部、曲部、第2直線部及び円弧部が樹脂被覆された涙滴状磁芯を得ることができる。
本発明に係る涙滴状磁芯は、前記第2直線部の内周面に被覆された表面が、前記隙間部の第1表面に連続することで、コイル装置を作製する際に、予め巻線したコイルを、曲部側から隙間部を通して第2直線部に挿入し、さらに押し込むことで円弧部、第1直線部に予め巻回したコイルに装着することができる。
図1は、本発明の涙滴状磁芯の一実施形態を示す斜視図である。 図2は、図1の涙滴状磁芯に直接コイルを巻回してなるコイル装置の平面図である。 図3は、隙間部を形成した本発明の涙滴状磁芯の一実施形態を示す斜視図である。 図4は、図3の涙滴状磁芯に予め巻回したコイルを挿入する工程を示す平面図である。 図5は、隙間部にギャップ用磁芯を挿入したコイル装置の部分断面図である。 図6は、図1に示した涙滴状磁芯を絶縁樹脂にて被覆した磁芯被覆体の斜視図である。 図7は、図6の線7−7に沿う断面図である。 図8は、図6の磁芯被覆体に直接コイルを巻回してなるコイル装置の平面図である。 図9は、隙間部を形成した磁芯被覆体の斜視図である。 図10は、図9の磁芯被覆体に予め巻回したコイルを挿入する工程を示す平面図である。 図11は、図10により作製されたコイル装置の平面図である。 図12は、隙間部にギャップ用磁芯を挿入したコイル装置の部分断面図である。 図13は、実施例における直流重畳特性を示すグラフである。 図14(a)は、背景技術にて説明したコイル装置の平面図、図14(b)は、隙間部の部分拡大図である。
以下、本発明に係る涙滴状磁芯(10)を用いたコイル装置(20)の一実施例について、図面を参照しながら説明を行なう。
<第1実施形態>
第1実施形態は、本発明に係る涙滴状磁芯(10)にコイル(21)を直巻きしたコイル装置(20)について説明する。
図1は、本発明に係る涙滴状磁芯(10)の斜視図である。涙滴状磁芯(10)は、磁性材料から作製される。
涙滴状磁芯(10)を構成する磁性材料として、鉄系、鉄−ケイ素系、鉄−アルミニウム−ケイ素系、鉄−ニッケル系の材料、鉄系やCo系のアモルファス材料などを例示できる。涙滴状磁芯(10)は、これら磁性材料からなる薄板を積層又は巻回した積層磁芯、これら磁性材料からなる粉末を加圧成形してなる圧粉磁芯、または磁性材料からなる粉末を焼結してなるフェライト磁芯とすることができる。これらの製法により作製する涙滴状磁芯(10)は環状であり、隙間部を後加工で形成するので、棒状の磁芯を屈曲させた形状に比して高い寸法精度とすることができる。
涙滴状磁芯(10)は、図1に示すように、一端が略直角に屈曲した曲部(16)により連続する直線状の第1直線部(11)と第2直線部(15)と、該第1直線部(11)と第2直線部(15)の他端どうしを連繋する円弧状の円弧部(17)と、を具える。
より詳細には、図1に示すように、第1直線部(11)と第2直線部(15)は、略同一の長さLに形成され、第1直線部(11)と第2直線部(15)とを繋ぐ曲部(16)は、円弧角が略90°、内周面(18)と外周面(19)が夫々内径rとR(但しr<R)の同心円弧状に形成される。また、第1直線部(11)と第2直線部(15)の他端どうしを繋ぐ円弧部(17)も円弧角が略270°の同心の円弧状に形成され、磁芯(10)は内周面(18)及び外周面(19)が夫々涙滴状となっている。なお、説明を判り易くするために、図1では、第1直線部(11)、曲部(16)、第2直線部(15)、円弧部(17)の各境界を破線で示している。
涙滴状磁芯(10)は、内周面(18)及び外周面(19)に対して垂直に切断したときに、何れの位置においても断面積が略同一となるように形成することが望ましく、図示のように断面矩形とすることが好適である。なお、涙滴状磁芯(10)の断面形状は、矩形に限定されず、円形、楕円形などとしてもよい。
上記のように、涙滴状磁芯(10)の断面積が略同一となるように構成することで、後述するとおりコイル装置(20)を構成したときに、主磁路の面積を略同一とすることができ、安定したインダクタンス特性を得ることができる。
上記涙滴状磁芯(10)は、図示省略するクランプ等の治具に取り付けて、コイル(21)をなす導線(22)が巻き付けられる。治具は、例えば曲部(16)を把持して涙滴状磁芯(10)を固定することができる。このとき、磁芯(10)が涙滴状であって、第1直線部(11)と第2直線部(15)が直線状であるから、治具への位置決めを容易に行なうことができる。
導線(22)は、手作業又は巻線機により涙滴状磁芯(10)に巻回されてコイル(21)をなし、図2に示すようにコイル装置(20)が作製される。
巻線を行なう際に、上記では実質的に手作業に頼らざるを得ず、コイル装置(20)の製造効率に劣る。そこで、図3に示すように、図1の涙滴状磁芯(10)の一部を切断して隙間部(12)を形成し、該隙間部(12)から導線(22)を通しながら巻き付けることで、製造効率を高めることができる。
さらには、図4に示すように、予め導線(22)を巻回したコイル(21)(所謂空芯コイル)を隙間部(12)から通すことで、製造効率を可及的に高めることもできる。
隙間部(12)は、例えば、曲部(16)と第1直線部(11)の境界(図1中破線で示す)から第1直線部(11)側に所望の幅で略垂直に第1直線部(11)を切断することで形成できる。隙間部(12)の前記境界側の端面を第1端面(13)、該第1端面(13)と対向する面を第2端面(14)としたときに、第1端面(13)は、第2直線部(15)の内周面(18)よりも曲部(16)の内周面(18)の曲率半径rの分だけ飛び出すように形成されて第2直線部(15)の内周面(18)とは同一平面になく、且つ、第1端面(13)と第2端面(14)は、曲面部分ではなく第1直線部(11)を切断することで同一面積で対向するから、曲面部分に形成した場合に比して磁路の近距離方向へ集中する漏れ磁束を回避することができ、これに起因する渦電流損も低減できる。
また、隙間部(12)は、第1端面(13)及び第2端面(14)の面積が、第1直線部(11)の垂直断面と同一面積であるから、端面(13)(14)間における磁束の漏れも磁路方向に正確な安定したものになる。
涙滴状磁芯(10)を第1直線部(11)で切断しているから、曲面部分で切断する場合に比して、砥石や切断刃の逃げを抑えることができ、隙間部(12)の形成も容易で且つ高精度となる。
隙間部(12)には、図5に示すように、磁性材料からなるギャップ用磁芯(30)を挿入することができる。
ギャップ用磁芯(30)は、鉄系、鉄−ケイ素系、鉄−アルミニウム−ケイ素系、鉄−ニッケル系の材料、鉄系やCo系のアモルファス材料などの磁性材料から作製される。ギャップ用磁芯(30)は、これら磁性材料からなる薄板を積層又は巻回した積層磁芯、これら磁性材料からなる粉末を加圧成形してなる圧粉磁芯、または磁性材料からなる粉末を焼結してなるフェライト磁芯を例示できる。積層磁芯の場合、所望形状に打ち抜いた薄板をかしめたり、端面を溶接することでブロック化することが望ましい。
ギャップ用磁芯(30)を隙間部(12)に挿入することで、隙間部(12)を埋めて所望の磁気特性を得ることができる。特に、ギャップ用磁芯(30)と、隙間部(12)の第1端面(13)及び第2端面(14)との間に、夫々ギャップGが形成されるようにギャップ用磁芯(30)を挿入することで、ギャップ用磁芯(30)が隙間部(12)内で多少位置ずれしていても、インダクタンス値を維持したままで漏れ磁束の大きさを分散し、分布拡大を抑制することができる。
ギャップ用磁芯(30)を隙間部(12)に挿入することで、隙間部(12)における漏れ磁束の拡大を抑制できるから、ギャップ用磁芯(30)に重なるようにコイル(21)を密に巻回することができるので、渦電流による銅損への影響を抑制しつつ、インダクタンスを増大させることができる。
なお、ギャップ用磁芯(30)は、上記に限定されるものではなく、性能や製造効率は劣るが、極低磁場におけるインダクタンス確保などの所望特性を求め、磁性材料を接着剤と混合したペースト状のもので隙間部(12)を埋めるようにしてもよい。
本発明では、上記のように涙滴状磁芯(10)に第1直線部(11)と第2直線部(15)を設けたことで、同じ直径のトロイダル磁芯に比して磁路長を約5%長くすることができ、また、窓面積も約5%大きくすることができる。これにより、インダクタンス値を約14%向上させることができる。
<第2実施形態>
第2実施形態は、図6及びその断面図である図7に示すように、前記第1実施形態において図1を用いて説明した涙滴状磁芯(10)を電気絶縁性の樹脂(41)により被覆した磁芯被覆体(40)にコイル(21)を巻回したコイル装置(20)について説明する。なお、第1実施形態と共通する部分は適宜説明を省略する。
涙滴状磁芯(10)への樹脂被覆は、インサート成型により行なうことができる。このとき、涙滴状磁芯(10)に第1直線部(11)及び第2直線部(15)が設けられているから、インサート成型機内での位置決めピンを直線部(11)(15)に当てることで、位置決めや固定を容易に行なうことができる。
また、予め樹脂製のケース半体を作製しておき、涙滴状磁芯(10)に一対のケース半体を被せることで、樹脂被覆して、磁芯被覆体(40)を形成することもできる。
上記磁芯被覆体(40)は、図示省略するクランプ等の治具に取り付けて、コイル(21)をなす導線(22)が巻き付けられる。治具は、例えば曲部(16)側を把持して磁芯被覆体(40)を固定することができる。このとき、磁芯被覆体(40)が涙滴状であって、直線部を有するから、治具への位置決めを容易に行なうことができる。
導線(22)は、手作業又は巻線機により磁芯被覆体(40)に巻回されてコイル(21)をなし、図8に示すようにコイル装置(20)が作製される。
また、図7に示すように、図6の磁芯被覆体(40)の一部を切断して隙間部(12)を形成し、該隙間部(12)から導線(22)を通しながら巻き付けることで、コイル装置(20)(図11参照)の製造効率を高めることができる。
さらには、図10に示すように、予め導線(22)を巻回したコイル(21)(所謂空芯コイル)を隙間部(12)から通すことでコイル装置(20)(図11参照)を作製することもでき、これにより、コイル装置(20)の製造効率を可及的に高めることができる。
隙間部(12)は、例えば、涙滴状磁芯(10)の曲部(16)と第1直線部(11)の境界(前述の図1中破線で示す)から第1直線部(11)側に所望の幅で略垂直に第1直線部(11)を切断することで形成できる。隙間部(12)の前記境界側の端面を第1端面(13)、該第1端面(13)と対向する面を第2端面(14)としたときに、第1端面(13)は、第2直線部(15)の内周面(18)よりも曲部(16)の内周面の曲率半径rの分だけ飛び出すように形成されて第2直線部(15)の内周面(18)とは同一平面になく、且つ、第1端面(13)と第2端面(14)は、曲面部分ではなく第1直線部(11)を切断することで同一面積で対向するから磁束の漏洩も抑制でき、これに起因する渦電流損を低減することができる。
涙滴状磁芯(10)を樹脂被覆した後切断して隙間部(12)を形成することで、第1直線部(11)、曲部(16)、第2直線部(15)及び円弧部(17)は、隙間部(12)の第1端面(13)及び第2端面(14)を除き、樹脂により被覆されている磁芯被覆体(40)を作製することができる。
また、隙間部(12)は、第1端面(13)及び第2端面(14)の面積が、第1直線部(11)の垂直断面と同一面積であるから、端面(13)(14)間における磁束の漏洩もほとんど生じない。
磁芯被覆体(40)は、直線部で切断しているから、曲面部分で切断する場合に比して、砥石や切断刃の逃げを抑えることができ、隙間部(12)の形成も容易で且つ高精度となる。
上記のように、磁芯被覆体(40)に隙間部(12)を形成する場合、空芯コイル(21)を挿入する際に、隙間部(12)の第1端面(13)と第2直線部(15)の樹脂被覆された内面との段差をなくして、空芯コイル(21)の挿入を容易とするために、図9に示すように、被覆される樹脂(41)の厚さDは、曲部(16)の内周面の曲率半径r、即ち、第2直線部(15)からの第1端面(13)の飛び出し量と略同一とすることが望ましい。
また、隙間部(12)には、図12に示すように、磁性材料からなるギャップ用磁芯(30)を挿入することができる。ギャップ用磁芯(30)については、第1実施形態に詳細を示している。
ギャップ用磁芯(30)を隙間部(12)に挿入することで、隙間部(12)を埋めて所望の磁気特性を得ることができる。特に、ギャップ用磁芯(30)と、隙間部(12)の第1端面(13)及び第2端面(14)との間に、夫々ギャップGが形成されるようにギャップ用磁芯(30)を挿入することで、ギャップ用磁芯(30)が隙間部(12)内で多少位置ずれしていても、インダクタンス値を維持したままで漏れ磁束の大きさを分散し分布拡大を抑制することができる。
また、ギャップ用磁芯(30)を隙間部(12)に挿入することで、隙間部(12)における漏れ磁束の拡大を抑制できるから、ギャップ用磁芯(30)に重なるようにコイル(21)を密に巻回することができるので、渦電流による銅損の影響を抑制しつつ、インダクタンスを増大させることができる。
なお、ギャップ用磁芯(30)は、上記に限定されるものではなく、性能や製造効率は劣るが、磁性材料を接着剤と混合したペースト状のもので隙間部(12)を埋めるようにしてもよい。
本発明では、上記のように涙滴状磁芯(10)に第1直線部(11)と第2直線部(15)を設けたことで、磁芯被覆体(40)は、同じ直径のトロイダル磁芯に比して磁路長を約5%長くすることができ、また、窓面積も約5%大きくすることができる。これにより、インダクタンス値を約14%向上させることができる。
上記第1実施形態及び第2実施形態では、第1直線部(11)に隙間部(12)を形成しているが、第2直線部(15)に隙間部を形成してもよいことは勿論である。
上記した第2実施形態のコイル装置(20)(発明例1乃至発明例3)について、直流重畳特性の比較を行なった。
涙滴状磁芯(10)は、第1直線部(11)及び第2直線部(15)の長さLが7.1mm、厚さ、即ち内周面(18)と外周面(19)と差は4.75mm、曲部(16)の内周面(18)の曲率半径rが1.2mm、外周面(19)の曲率半径Rが6mm、高さ15mm、円弧部(17)の直径が23.7mmに形成した。また、涙滴状磁芯(10)は、方向性ケイ素鋼板を用いて、涙滴状に巻き取り巻終わり部を溶接固定したものである。
上記涙滴状磁芯(10)を厚さ1.2mmの絶縁性樹脂(41)により被覆し、幅2mmの隙間部(12)を形成した。発明例2及び発明例3については、該隙間部(12)に以下に示すギャップ用磁芯(30)を充填又は挿入した。
発明例1は、隙間部(12)の埋め戻しを行なっていない実施例である。
発明例2は、隙間部(12)にセメンダスト粉(Fe−Al−Si組成)を用いた磁性材料粉と1液性エポキシ系接着剤を重量比80:20で混合した高粘度ペースト状の接着剤により埋め戻している。
発明例3は、無方向性ケイ素鋼板0.2mm厚を使用し、打ち抜き積層し端面部を溶接にて固定しブロック化した、幅1mmのギャップ用磁芯(30)を隙間部(12)に挿入した実施例であり、ギャップ用磁芯(30)と第1端面(13)、第2端面(14)との間に夫々0.5mmのギャップGを設けた実施例である。
上記発明例1乃至発明例3について、直流バイアス電流を印加し、直流重畳特性を比較した。結果を図13に示す。
図13を参照すると、発明例1は、インダクタンス値は発明例3に比して低いが、安定した磁気飽和特性を有することがわかる。
また、発明例2は、発明例1及び発明例3に比して、初期インダクタンス値を高くすることができる。一方で、直流バイアス電流が大きくなるにつれて、インダクタンス値のドロップ率が高いことがわかる。
発明例3は、発明例1よりも磁気飽和特性にすぐれ、隙間部(12)に無方向性ケイ素鋼板を積層してブロック化したギャップ用磁芯(30)を挿入したことで、積極的に微小な空隙を設けることができ、磁芯の仕上がり寸法精度に頼ることなく磁気特性を安定させることができたことがわかる。このため、隙間部(12)をギャップ用磁芯(30)の寸法で調整することができ、容易に低コストで所望の磁気特性を確保することができる。
また、ギャップ用磁芯(30)を挿入したことで、インダクタンス値を向上させることができ、さらには、直線部分に形成された第1端面(13)と第2端面(14)により、磁路の近距離方向へ集中する漏れ磁束を回避でき、効率的にインダクタンスを向上させることができる。
なお、発明例3について、隙間部(12)に挿入するギャップ用磁芯(30)は、主磁束が通過する方向に対して直角になる両側面にほぼ同一幅のギャップGを2カ所形成している。このギャップGについて、ギャップ用磁芯(30)の位置が中央から僅かに位置ずれしたコイル装置(20)を作製して、上記と同様に直流重畳特性を測定したところ、インダクタンス値を維持したまま、漏れ磁束のバラツキを抑制できた。従って、発明例3のコイル装置(20)は、組立時にギャップ用磁芯(30)の取付精度の誤差を許容できる実用度の高いコイル装置であることがわかる。
本発明は、製造効率にすぐれ、初期のインダクタンスが大きく、安定した直流重畳特性を有する涙滴状磁芯及びこれを用いたコイル装置として有用である。
(10) 涙滴状磁芯
(11) 第1直線部
(12) 隙間部
(13) 第1端面
(14) 第2端面
(15) 第2直線部
(16) 曲部
(17) 円弧部
(20) コイル装置
(30) ギャップ用磁芯
(40) 磁芯被覆体

Claims (12)

  1. 磁性材料からなり、コイル装置に用いられる磁芯であって、
    一端が直角に屈曲した曲部により連続する直線状の第1直線部と第2直線部と、
    該第1直線部と第2直線部の他端どうしを連繋する円弧状の円弧部と、
    を具える涙滴状磁芯。
  2. 前記曲部は、外周面及び内周面が円弧状である請求項1に記載の涙滴状磁芯。
  3. 前記第1直線部は、磁路に直交する方向に切断された隙間部を有し、該隙間部は、前記曲部側の第1端面と、該第1端面と対向し、略同一面積である第2端面を具える請求項1又は請求項2に記載の涙滴状磁芯。
  4. 前記第1端面は、前記第2直線部の内周面とは同一平面にない請求項3に記載の涙滴状磁芯。
  5. 前記隙間部には、磁性材料からなるギャップ用磁芯が挿入される請求項3又は請求項4に記載の涙滴状磁芯。
  6. 前記ギャップ用磁芯と、前記隙間部の第1端面及び第2端面との間には、ギャップが形成される請求項5に記載の涙滴状磁芯。
  7. 前記ギャップ用磁芯は、積層磁芯、圧粉磁芯又は焼結磁芯である請求項5又は請求項6に記載の涙滴状磁芯。
  8. 前記第1直線部、曲部、第2直線部及び円弧部は、積層磁芯、圧粉磁芯又は焼結磁芯である請求項1乃至請求項7の何れかに記載の涙滴状磁芯。
  9. 前記第1直線部、曲部、第2直線部及び円弧部は、前記隙間部の第1端面及び第2端面を除き、電気絶縁性の樹脂により被覆されている請求項2乃至請求項8の何れかに記載の涙滴状磁芯。
  10. 前記第2直線部の内周面に被覆された樹脂の表面は、前記隙間部の第1端面に連続する請求項9に記載の涙滴状磁芯。
  11. 請求項1乃至請求項10の何れかに記載の涙滴状磁芯に、巻線を施してなるコイル装置。
  12. 請求項3乃至請求項10の何れかに記載の涙滴状磁芯に、前記隙間部から予め巻線したコイルを挿入して構成されるコイル装置。
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