JP2014021104A - 放射性Cs汚染水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】放射性Cs汚染水のCsイオンを低コストで迅速かつ効率的に吸着除去できる放射性Cs汚染水の処理方法を提供する。
【解決手段】水中で、所定の鉄シアノ錯体と鉄塩化合物とを反応させてPB(プルシアンブルー)M(I)3xFe(III)4-x[Fe(II)(CN)63(M(I)は1価のカチオン、xは0又は1)の含有液を得る工程(A)、PBの分子及び/又はそのクラスターにCsイオンを吸着させる工程(B)、工程(B)の後にMe(II)塩化合物(Me(II)は所定の2価の遷移金属)を添加しこれを加水分解することで工程(B)を経た処理液中に六方晶の結晶構造をとるMe(II)(OH)2を含有させる工程(C)を含み、鉄シアノ錯体の量α(mol)とMe(II)塩化合物の量β(mol/L)の比(α/β)が0.1〜10である。
【選択図】なし

Description

本発明は、放射性Cs汚染水の処理方法に関し、詳しくは、放射性Csイオンで汚染された汚染水中のCsイオンを吸着除去して無害化する処理方法に関する。
2011年3月11日の福島第1原発の爆発により大量の放射性セシウムCsが環境中に放出され、東日本の広域に亘り甚大な被害を齎した。特に、半減期がそれぞれ2年、30年と永い放射性Cs134とCs137による環境汚染は深刻であり、それらを除去するため、様々な技術が使用されてきた。例えば、放射性Cs汚染水のCsイオンの除去にゼオライトやプルシアンブルー色素顔料などの吸着剤が使用されている。
ゼオライトは多孔質の吸着剤で比較的大きな比表面積を有し、該表面のシリケート基Si−O-による陽イオン交換作用によりCsイオンを捕捉するのであるが、汚染水にNaイオンやKイオン、Caイオン、Mgイオン、Caイオンなどが高濃度に存在すると、これら陽イオンとの平衡作用によって捕捉したCsイオンが脱離するなど、Csイオンを選択的に吸着できないという問題があった。
一方、プルシアンブルー色素顔料は、Csイオンを選択的に吸着することができ、海水のようにNaイオン、Kイオン、Mgイオンなどの陽イオンを含む汚染水を処理する場合であっても、これらの陽イオンによる阻害作用の影響はゼオライトと比較して小さい。
しかし、プルシアンブルー色素顔料を吸着剤として用いる場合、99%以上のCs除去率を得るためには24時間以上の時間が必要であるという問題があった。
また、プルシアンブルー色素顔料は微粉体の状態で用いられるため、Csイオンを吸着させても濾過によって取り除くことが困難である(篩目を通過してしまう)。そのため、沈殿・濾過工程では硫酸バンドなどの凝集剤の併用が必須であった。
このように、ゼオライトなど多孔質の吸着剤は比表面積が大きくカチオン吸着速度に優れるが、Csイオン選択性に問題があり、他方、PBはCsイオン選択性に優れるが、遅い吸着速度に欠点があった。
この点、大きな比表面積を有し、吸着特性、Csイオン選択性ともに優れた吸着剤の開発も行われており、例えば、メソポーラスシリカ粒子表面にアンカー分子を介して、銅―鉄シアン化錯体を担持させ優れたCsイオン吸着性能を有する吸着剤が開発されている(非特許文献1参照)。
しかし、銅−鉄シアン錯体をシリカ表面に繋ぐアンカーに高価なシリル化剤を使用するため、大量のCs汚染水を処理するにはコスト面で問題があった。
Thanapon Sangvani et.al J Hazard mater. 2010 October 15; 182(1-3): 225-231
そこで、本発明は、放射性Cs汚染水のCsイオンを低コストで迅速かつ効率的に吸着除去することのできる放射性Cs汚染水の処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、以下の如き検討・考察を行った。
すなわち、まず、従来吸着剤として用いられていたプルシアンブルー色素顔料は粉末であり、Csイオンがプルシアンブルー色素顔料の結晶格子内に捕捉されることで吸着されていたものと考えられる。
この場合、Csイオンが該結晶格子内を拡散する必要がある。つまり、プルシアンブルー色素顔料によるCsイオンの吸着速度はCsイオンの該結晶格子内への拡散が律速になっているものと考えられる。
しかし、結晶格子内でのCsイオンの拡散係数は極めて小さいため、Csイオンに対する優れた吸着選択性にも係わらず、Cs汚染水からCsイオンを効果的に吸着・除去するには24時間以上の時間を要していたものと理解される。
以上の点を踏まえてさらに鋭意検討を重ねた結果、従来のプルシアンブルー色素顔料のように粉末状で用いるのではなく、分子及び/又はクラスターの状態でCsイオンに作用させること、及び、系内に六方晶の結晶構造をとるMe(II)(OH)2(但し、Me(II)は2価の遷移金属である)で表される水酸化物を共存させて、Csイオンを吸着したプルシアンブルーを凝集沈殿させることが、本発明の上記課題を解決するにおいて重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる放射性Cs汚染水の処理方法は、水中で、M(I)4Fe(II)(CN)6及び/又はM(I)3Fe(III)(CN)6で表される鉄シアノ錯体(但し、M(I)は1価のカチオンである)と、2価及び/又は3価の鉄塩化合物とを反応させることにより、M(I)3xFe(III)4-x[Fe(II)(CN)63(但し、xは0又は1である)で表されるプルシアンブルーの分子及び/又はそのクラスターの含有液を得る工程(A)と、前記工程(A)を放射性Cs汚染水中で行うか、及び/又は、前記工程(A)でプルシアンブルー含有液を得た後に放射性Cs汚染水と混合することにより、前記プルシアンブルーの分子及び/又はそのクラスターにCsイオンを吸着させる工程(B)と、前記工程(B)を経た処理液中に、六方晶の結晶構造をとるMe(II)(OH)2(但し、Me(II)はマンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びカドミウムから選ばれる少なくとも1種の2価の遷移金属である)で表される水酸化物を含有させる工程(C)とを含み、前記工程(C)では、前記工程(B)の後にMe(II)塩化合物を添加するとともに該Me(II)塩化合物を加水分解することにより、前記水酸化物を処理液中に含有させるようにし、かつ、前記鉄シアノ錯体の量をα(mol)とし、前記Me(II)塩化合物の量をβ(mol/L)とするとき、αとβの比(α/β)が0.1〜10であることを特徴とする。
なお、以下では、「プルシアンブルー」を「PB」と略記することがある。
本発明によれば、放射性Cs汚染水のCsイオンを低コストで迅速かつ効率的に吸着除去することができる。
実施例18においてCsイオン濃度のpH依存性を示すグラフである。 実施例19においてCsイオン濃度の経時変化を示すグラフである。
以下、本発明にかかる放射性Cs汚染水の処理方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明の放射性Cs汚染水の処理方法は、下記工程(A)〜(C)を必須に備えているものである。以下の説明から分かるように、工程(A)〜(C)は順次行われる必要はなく、同時に行われてもよい。
なお、本発明において、各種薬剤の添加方法は、粒剤、粉末、水溶液、分散液など、いずれの形態で使用しても良く、特に限定されない。
〔工程(A)〕
工程(A)は、水中で、M(I)4Fe(II)(CN)6及び/又はM(I)3Fe(III)(CN)6で表される鉄シアノ錯体と、2価及び/又は3価の鉄塩化合物とを反応させることにより、M(I)3xFe(III)4-x[Fe(II)(CN)63で表されるPB分子及び/又はそのクラスターの含有液を得る工程である。
ここで、M(I)は1価のカチオンであり、例えば、Li+、Na+、K+、NH4 +などが挙げられるが、好ましくは、Na+及び/又はK+である。
2価及び/又は3価の鉄塩化合物は、特に限定するわけではないが、(2価又は3価の)鉄の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩などが好ましく挙げられる。
また、xは0又は1である。
工程(A)におけるPBの合成反応は、M(I)4Fe(II)(CN)6で表される鉄シアノ錯体(フェロシアン化合物)及び/又はM(I)3Fe(III)(CN)6で表される鉄シアノ錯体(フェリシアン化合物)と、2価及び/又は3価の鉄塩化合物との反応によって実施されるものであり、具体的には以下に説明するとおりである。
すなわち、まず、フェロシアン化合物からの合成は、下記反応式(1)に示すとおりである。
Figure 2014021104
また、フェリシアン化合物からの合成は、下記反応式(2)〜(4)に示すとおりである。
Figure 2014021104
Figure 2014021104
Figure 2014021104
PBの理想的な形は不溶性の(PB2)とされているが、実際の反応では主生成物は水溶性の(PB1)であって、Csイオンの吸着には水不溶性の(PB2)よりも水溶性の(PB1)の方が重要な役割をすると考えられる。
〔工程(B)〕
工程(B)は、工程(A)を放射性Cs汚染水中で行うか、及び/又は、工程(A)でPB含有液を得た後に放射性Cs汚染水と混合することにより、PB分子及び/又はそのクラスターにCsイオンを吸着させる工程である。
すなわち、工程(B)は、工程(A)を放射性Cs汚染水中で行うことによって工程(A)と同時に行っても良いし、工程(A)の後に放射性Cs汚染水と混合して行っても良く、その両方であってもよい。
このように、本発明では、上記反応(1)〜(4)で生成する上記(PB1)及び/又は上記(PB2)を水溶液から分離することなくCsイオンに作用させるので、微粉末のPBを添加する従来法と異なり、Csイオンの吸着が短時間(例えば、1時間程度)で平衡に達する。
PB分子がCsイオンを捕捉する反応を式(5)に示す。
Figure 2014021104
上式(5)において、m=n=1のときはPB分子、n≧m>1のときはPB分子のクラスターを表す。
ここで、PB分子が、Naイオン、Kイオンなどの他のアルカリ金属イオンや、Mgイオン、Caイオンなどのアルカリ土類金属イオンよりも、Csイオンと優先的に結合する機構は、R.G.Pearsonが提唱したHSAB規則により説明することができる(Pearson, Ralph G. (1963)."Hard and Soft Acids and Bases". J. Am. Chem. Soc.85 (22): 3533-3539.を参照)。
すなわち、HSAB規則によると、Csは主量子数6のアルカリ金属であり、Csイオンの最低空原子軌道LUAOは6s軌道となり、それぞれ3s、4s軌道がLUAOであるNaイオン、Kイオン、Caイオンに比較して、分極し易く軟らかい酸に分類される。つまり、アルカリイオンの酸としての硬さ、軟らかさの順は次のようになる。
軟らかい Cs+≫K+>Na+〜Mg2+〜Ca2+ 硬い
一方、PBイオンFe(III)[Fe(II)(CN)6]-は軟らかい塩基に分類される。HSAB規則によれば、硬い酸は硬い塩基と強く結合し、軟らかい酸は軟らかい塩基と強く結合するが、硬い酸と軟らかい塩基の間又は軟らかい酸と硬い塩基の間で形成される結合は弱い。従って、Csイオンは他のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンよりもPBイオンと強く結合する。
HSAB規則は量子化学で説明されている(G.Klopman (1968). "Chemical Reactivity and Concept of Charge- and Frontier-Controlled Reactions" J. Am. Chem. Soc. 90(2):223-234.を参照)。
それによると、酸と塩基の結合形成による安定化エネルギー(−ΔE)は式(6)で表される。
Figure 2014021104
a:M(I)イオンの電荷 qb:PBイオンbの電荷
ε:反応場の誘電率 rab:M(I)とPBの結合距離
Γab:クーロン反発項
m *:PBイオンbの最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー
n *:陽イオンaの最低非占有原子軌道(LUAO)エネルギー
m:PBイオンのHOMOを構成する原子軌道関数の係数の最大値
n:M(I)イオンのLUAO関数の係数
β:M(I)のLUAOとPBイオンのHOMOの共鳴積分項
式(6)の左辺−ΔEの値が大きいほど酸と塩基の結合は安定化する。右辺の第1項と第2項はそれぞれM(I)イオンの正電荷とPBイオンの負電荷のクーロン相互作用と溶媒和によるエネルギーの安定化を意味し、硬い酸と硬い塩基の相互作用には第1項と第2項が寄与する。
電荷密度が小さいCsイオンとPBイオンの場合、第1項及び第2項の−ΔE値への寄与は小さい。一方、第3項は軟らかい酸と軟らかい塩基の相互作用を意味しており、軟らかい酸CsイオンのLUAOと軟らかい塩基のPBイオンFe(III)Fe(II)(CN)6 -の最高占有分子軌道(LUMO)間の強い相互作用が−ΔE値の増加に大きく寄与するのである。つまり、この場合、第3項の|Em *−En *|が小さくβ2が大きくなるので、第3項が−ΔE値の増加に寄与することになる。
硬い酸であるNaイオン,Kイオン,Mgイオン,Caイオンと軟らかい塩基であるPBイオンとの相互作用では式(6)の第1項〜第3項による−ΔE増加への寄与は小さい。つまり、これらのカチオンとPBイオンは強い結合を形成しない。
従って、下式(7)において、平衡反応は以下の順で右側に傾斜する。
M(I)+: Cs+≫K+>Na+
Figure 2014021104
次に、PBによるCsイオンの迅速な吸着という本発明特有の機構については、次のように説明される。
すなわち、工程(A)において生成したPBは、生成直後では分子の状態であるか及び/又は数分子が集合した微小な集合体(クラスター)の状態にある。
そして、生成したPB分子とCsイオンとの接触表面が水溶液中で絶えず更新される結果、CsイオンとPB分子及び/又はそのクラスターとの接触が効率的に行われ、短時間で吸着平衡が達成されるものと考えられる。撹拌条件下においては、特に迅速な吸着が可能である。
これに対して、従来のように、成長した結晶構造を有する微粉末のPBを添加する場合、Csイオンの吸着速度はCsイオンの結晶格子内での拡散が律速となるため、吸着平衡に達するまでに1日以上を要していたものと考えられる。
〔工程(C)〕
工程(C)は、工程(B)を経た処理液中に、六方晶の結晶構造をとるMe(II)(OH)2(但し、Me(II)は2価の遷移金属である)で表される水酸化物(以下、単に、「Me(II)水酸化物」ということがある)を含有させる工程である。
Me(II)としては、水酸化物が六方晶の結晶構造をとる2価の遷移金属であれば特に限定されないが、例えば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウムなどが挙げられる。
工程(B)を経た処理液中に、Me(II)水酸化物を含有させる方法としては、例えば、予め及び/又は前記工程(B)の後にMe(II)塩化合物を含有させておくとともに該Me(II)塩化合物を加水分解する方法が挙げられる。
Me(II)塩化合物としては、例えば、前記Me(II)の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩などが好ましく挙げられる。
上記Me(II)塩化合物は、予め処理液中に含有させておいても良いし、工程(B)を経た後に別途添加するなどして含有させても良く、その両方であっても良い。
また、3価の遷移金属塩、例えば塩化鉄(III)を処理液に含有させておいてこれを還元剤で塩化鉄(II)に還元したり、あるいは、1価の遷移金属塩、例えば塩化銅(I)を処理液に含有させておいてこれを塩化銅(II)に酸化したりすることによって、Me(II)塩化合物を含有させるようにする方法も本発明の範疇に入る。
Me(II)塩化合物の加水分解によるMe(II)水酸化物への変換は、下記反応式(8)で表される。
Figure 2014021104
このような加水分解は、水溶液のpHを調整することによって容易に進行させることができる。
ここで、Csイオンを吸着するPB分子及び/又はそのクラスターの実体は、主に、上式(1)〜(4)における(PB1)又は(PB2)であること、また、工程(A)では、鉄シアン錯体とMe(II)塩化合物との反応によりPBが速やかに生成することから、Csイオンを吸着するPB分子の分子数は鉄シアノ錯体の分子数に関係する。
従って、鉄シアノ錯体の量をα(mol)とし、Me(II)塩化合物の量をβ(mol/L)とするとき、αとβの比(α/β)はPB分子数とMe(II)水酸化物の数の比に相関するパラメーターとなる。
本発明では、パラメーターα/βの範囲は0.1〜10であることが好ましく、0.2〜6であることがより好ましい。
Csイオンを吸着したPB分子の不溶化や凝集の効果を得る上では、α/βを0.1より小さくしてもそれ以上の改善効果は期待できず、むしろ、過剰のMe(II)塩化合物によって処理液の水質を損なうおそれがある。一方、α/βが10を超えると、Me(II)水酸化物によるCsイオンを吸着したPB分子の不溶化、凝集効果が不十分となり、濾過工程において、Csイオンを吸着したPB分子及び/又はそのクラスターがフィルターの篩目を透過するおそれがある。
特に、処理液の全シアン濃度の排水基準値を考慮する場合には、α/βが0.1〜1.0であることが好ましい。
また、本発明でCsイオンを捕捉する活物質はαPB・βMe(II)(OH)2であると考えられる。
従って、PB量(mol)とMe(II)水酸化物の量(mol)はそれぞれ鉄シアノ錯体の量(mol)とMe(II)塩化合物の量(mol)で代表される。
本発明によって、例えば、Csイオン濃度が10mg/LのCs汚染水1000mLからCsイオンを効果的に除去する場合、α+βが2.5mmol以上であれば、本発明の目的を十分に達成することができる。
Me(II)塩化合物の加水分解を行う際の水溶液のpHは3〜11の範囲であることが好ましく、pH6〜10であることがより好ましい。
pHが3未満であると、Me(II)塩化合物の加水分解が進まずに意図した効果が得られないおそれがある。また、加水分解のpHが高すぎると、PB分子の分解が起こり、処理液のシアン濃度が環境基準値もしくは排水基準値を超えるおそれがあるとともに、凝集構造が壊れ、不溶化したCs吸着PBが再溶解したり、PB分子のクラスターを再生したりするおそれがある。
工程(B)を経た処理液中に、Me(II)水酸化物を含有させるための別の方法として、前記工程(B)の後に、Me(II)水酸化物及び/又はMe(II)の酸化物を添加することにより、Me(II)水酸化物を処理液中に含有させるようにするにしてもよい。
また、鉄粉や亜鉛粉などを処理液に含有させておいて、これを空気や腐食などで酸化することによって、Fe(OH)2やZn(OH)2などのMe(II)水酸化物を含有させるようにする方法も本発明の範疇に入る。
以上のような方法により処理液中にMe(II)水酸化物を共存させることによってPB分子及び/又はそのクラスターが不溶化、凝集し、粗大粒子化(通常、粒径1μm以上)する機構については、詳細は定かでないが、本発明者らは以下のように考察した。
すなわち、PB分子及び/又はそのクラスターの凝集や沈殿のためにMe(II)塩化合物を用いる場合、Csイオンを吸着したPB分子やPB分子クラスターの凝集・不溶化は、Me(II)塩化合物分子のMe(II)のd軌道とPB分子及び/又はそのクラスターのシアノ基のπ電子との相互作用により、Me(II)塩化合物がPB分子と架橋結合を形成して不溶化する。さらに、処理液のpHを弱酸〜弱アルカリに調整するなどしてMe(II)塩化合物を加水分解するとMe(II)水酸化物が生成し、結晶構造を形成する。なお、このMe(II)水酸化物の溶解度積は10-12以下と小さい。
そして、本発明のMe(II)水酸化物は六方晶の結晶構造を取るので、PB分子及び/又はそのクラスターのシアノ基を介して架橋構造を形成しながら、該結晶のc軸方向に層状に結晶成長し、1μm以上の粗大粒子を形成する。
以上の結果、該粗大粒子は、Csと結合したPB分子及び/又はそのクラスターがMe(II)水酸化物の層状構造の層間にインターカレートした構造を有していると考えられる。
一方、PB分子及び/又はそのクラスターの凝集や沈殿のためにMe(II)水酸化物、Me(II)の酸化物、Me(II)の金属粉などを添加する場合、前記d−π相互作用により、水難溶性のMe(II)水酸化物の結晶表面でPB分子及び/又はそのクラスターと架橋結合が形成される。Me(II)水酸化物は六方晶で層状構造を取っているので、処理工程の攪拌によりPB分子及び/又はそのクラスターと架橋結合をしたMe(II)水酸化物の結晶面が剥離する。
そして、剥離した該結晶面はPB分子及び/又はそのクラスターを層間にインターカレートした形で層状に結晶成長して、粒子径1μm以上の粗大粒子が形成されるものと考えられる。
Me(II)水酸化物には不安定なものが多く、乾燥状態では容易に脱水縮合して該酸化物Me(II)Oに変換される。Me(II)Oは水溶液では水和反応によりMe(II)水酸化物に変換されるので、本発明においてはMe(II)OとMe(II)水酸化物は同等と考えることができる。
一般に水処理工程では微粒子を凝集させるために硫酸バンドAl2(SO43や塩鉄Fe(III)などを添加する方法が汎用されている。また、廃液中の重金属類の不溶化にマグネシウム塩MgSO4などを添加する方法が採られている。しかし、本発明ではMe(II)塩化合物の代わりに前記凝集剤や不溶化剤を適用しても効果は得られない。これはAl(III)、Fe(III)、Mg(II)は硬い酸に属し、軟らかい塩基のPB分子のシアノ基との相互作用による結合形成が出来ないためと考えられる。
ただし、本発明において、前記凝集物の沈殿速度や濾過速度を促進するために、無機及び/又は有機の凝集剤を用いることを排除するものではない。例えば、アニオン系の高分子凝集剤を微量添加することで、Csイオン捕捉凝集物の沈殿速度を格段に速めることも可能である。
PB分子及び/又はそのクラスターをゲストとしてインターカレートしたホストのMe(II)水酸化物の一部は脱水して酸化物Me(II)Oを形成するので、吸着剤の構造としては、例えば(9)式で示すことができる。
Figure 2014021104
上式(9)において、x+y=1であり、m、nは正数である。
〔その他の工程〕
工程(C)でMe(II)水酸化物によりPB分子及び/又はそのクラスターを凝集・沈殿させた後は、通常、濾過による沈殿物の除去を行う。
この場合、濾過する際の処理液についてもpH調整を行うことが好ましい。その範囲はpH3〜11であることが好ましく、pH5〜10であることがより好ましく、pH6〜8であることが特に好ましい。
以下、実施例を用いて、本発明にかかる放射性Cs汚染水の処理方法について詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、放射性Cs汚染水の入手には制約があるため、実施例の多くを入手可能な安定同位体133Csで代用して実施した。
しかし、以下で観察される化学的、物理的な事象は、133Csの放射性同位体である137Cs、134Csのそれと完全に一致する。
従って、133Csを含む模擬汚染水、模擬海水及び放射性Cs汚染水からCsを除去した以下の実施例は、同時に、放射性同位体である137Cs、134Csについての効果も実証するものである。
以下の実施例及び比較例で用いた薬品のうち、フェロシアン化ナトリウム10水和物以外の薬品は全てキシダ化学社製のものを使用した。
〔実施例1〕
Csイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1Lにフェロシアン化カリウム3水和物1.5g(3.55mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物1.0g(3.7mmol)を加えてPBを生成させた。
次に、硫酸マンガン(II)1水和物1.0g(5.9mmol)を添加した。
5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7.0に調整しながら攪拌を続けた。処理開始から1時間後、攪拌を止めて静置した。篩目1μm、5Cの濾紙を用いて、処理液を濾過し、濾液を得た。
濾液のCsイオン濃度はアジレント社の誘導結合型プラズマ質量分析装置(ICP−MS)7000xで測定を行った。また、濾液の全シアン濃度はJIS K0102 38.1.2及び38.2に準拠して実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.001mg/L(定量下限値0.001mg/L)であり、除去率は99.999%であった。また、全シアン濃度は検出されなかった(定量下限0.01mg/L)。
〔実施例2〕
実施例1で、硫酸マンガン(II)1水和物0.06g(0.355mmol)を添加したほかは実施例1と同じ方法で実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.1mg/Lであり、除去率は99.9%であった。
〔実施例3〕
10mLの蒸留水にフェロシアン化カリウム3水和物1.5g(3.55mmol)と塩化鉄(III)6水和物1.0g(3.7mmol)を加えPBを合成して、その水溶液をそのままCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1Lに加えたほかは実施例1と全て同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.004mg/Lであり、除去率は99.996%であった。また、全シアン濃度は検出されなかった(定量下限0.01mg/L)。
〔実施例4〕
実施例1のPBの合成をフェリシアン化カリウム無水物1.2g(3.6mmol)、塩化鉄(II)4水和物0.72g(3.6mmol)を混合して実施したほかは、実施例1と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.002mg/Lであり、除去率は99.998%であった。また、全シアン濃度は0.02mg/Lであった(定量下限0.01mg/L)。
〔実施例5〕
実施例1でフェリシアン化カリウム無水物0.6g(1.8mmol)、フェロシアン化カリウム3水和物0.76g(1.8mmol)に、還元剤として亜硫酸ナトリウム無水物0.5gを加えた後、塩化鉄(II)4水和物0.72g(3.6mmol)を加えてPBの合成を行ったほかは、全て実施例1と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.001mg/Lであり、除去率は99.999%であった。また、全シアン濃度は0.8mg/Lであった。
〔実施例6〕
Csイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物(Alfa Aesar社製)1.45g(3mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物0.87g(3.2mmol)を加えてPBを生成させた。
次に、塩化ニッケル(II)0.39g(3.0mmol)の水溶液10mLを添加した。
5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.0に調整しながら1時間攪拌をつづけた。pH調整を止めて更に1時間攪拌を行った後静置した。処理液のpHは7.2であった。
処理液を篩目1μmの5Cの濾紙で濾過して濾液を得た。濾液のCsイオン濃度及び全シアン濃度を実施例1と同様に測定した。
濾液のCsイオン濃度は0.001mg/L(定量下限値0.001mg/L)であり、除去率は99.999%であった。また、全シアン濃度は0.9mg/Lであった。
〔実施例7〕
実施例6で塩化コバルト(II)0.2g(1.5mmol)と塩化ニッケル(II)0.2g(1.5mmol)を含む水溶液10mLを模擬Cs汚染水に加えたほかは、全て実施例6と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.004mg/Lであり、除去率は99.996%であった。また、全シアン濃度は検出されなかった(定量下限0.01mg/L)。
〔実施例8〕
Csイオン10mg/Lを含み塩化ナトリウム3.0%、塩化マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.05%からなるCs汚染模擬海水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物0.87g(1.8mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物0.54g(2.0mmol/L)を加えてPBを合成した後、塩化コバルト(II)0.4g(3.1mmol)を添加した。
5mol/L水酸化ナトリウム水溶液で処理液のpHを8〜9の間に維持しながら30分間攪拌を行った。さらに攪拌を続けると、1時間後に処理液のpHは7.0になった。攪拌を止め、処理液を篩目1μmのガラスフィルターで吸引濾過し、濾液を得た。
濾液について実施例1と同様の方法でCsイオン濃度及び全シアン濃度を測定した結果、Csイオン濃度は0.001mg/Lであり、除去率は99.99%であった。全シアン濃度は検出されなかった(定量下限0.01mg/L)。
〔実施例9〕
実施例8で塩化コバルト(II)の代わりに塩化鉄(II)4水和物0.7g(3.5mmol)を加え、また、処理液を還元条件にするため亜硫酸ナトリウム無水物1.0g(8mmol)を加えたほかは、実施例8と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.008mg/Lであり、除去率は99.92%であった。全シアン濃度は0.02mg/Lであった。
〔実施例10〕
実施例8で塩化コバルト(II)の代わりに硫酸亜鉛(II)0.7g(3.5mmol)を加えたほかは、実施例8と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.012mg/Lであり、除去率は99.88%であった。全シアン濃度は0.02mg/Lであった。
〔実施例11〕
実施例8で塩化コバルト(II)の代わりに塩化鉄(III)無水物0.52g(3.2mmol)を加え、続いて亜硫酸ナトリウム無水物6.3g(5mmol)を加えたほかは、実施例8と同様に実施した。
濾液のCsイオン濃度は0.008mg/Lであり、除去率は99.92%であった。全シアン濃度は0.03mg/Lであった。
〔実施例12〕
実施例8のCs汚染模擬海水1Lを、Csイオン1mg/Lを含み塩化ナトリウム3.0%、塩化マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.05%からなるCs汚染模擬海水1Lに代えたほかは、全て実施例8と同様に実施した。
また、硫酸マンガン(II)、塩化鉄(II)4水和物、塩化ニッケル(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛(II)、硝酸カドミウム(II)についても塩化コバルト(II)に等しい当量を加えてそれぞれ同様に実施した。
いずれの濾液についてもCsイオンは検出されなかった(定量下限値0.001mg/L)。全シアン濃度についても全て環境基準値(0.05mg/L)未満であった。
〔実施例13〕
Csイオン10mg/Lを含み塩化ナトリウム3.0%、塩化マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.05%からなるCs汚染模擬海水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物0.8g(1.65mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物0.45g(1.66mmol/L)を加えてPBを合成した後、水酸化コバルト(II)0.3g(3.3mmol)を加えてpHを7〜8に調整して攪拌を続けた。
3時間後に攪拌を止めて静置した。5Cの濾紙で処理液を濾過し、濾液について実施例1と同じ方法でCsイオン濃度と全シアン濃度を測定した。
さらに、水酸化コバルト(II)の代わりに水酸化銅(II)、水酸化ニッケル(II)、酸化マンガン(II)、酸化亜鉛(II)、酸化鉄(II)についても同様に実施した。但し、酸化鉄(II)の添加の場合は、亜硫酸水素ナトリウムにより処理液の溶存酸素濃度を0ppmに維持しながら実施した。
表1に測定結果を示した。
Figure 2014021104
〔実施例14〕
Csイオン10mg/Lを含み塩化ナトリウム3.0%、塩化マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.05%からなるCs汚染模擬海水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物1.05g(2.17mmol)を加え、続いて、攪拌下、塩化鉄(III)6水和物0.6g(2.2mmol/L)を加えてPBを合成した後、硫酸銅(II)、塩化コバルト(II)についてα/β値を変えた条件でそれぞれ添加した後、処理液のpHを7〜8に調整して攪拌を続けた。1時間後に攪拌を止めて静置した。5Cの濾紙で処理液を濾過し、濾液について実施例1と同じ方法でCsイオン濃度と全シアン濃度を測定した。
α/β、α+β及び測定結果を表2に示した。
Figure 2014021104
〔実施例15〕
放射性Csで汚染された焼却灰を水で洗浄して、放射能濃度490Bq/kgの放射能Cs汚染水を調製した。
Csの放射能濃度の内訳はCs137:290Bq/kg、Cs134:200Bq/kg汚染水の各種イオン濃度は次の通り:
カチオン: Ca2+:2400mg/L K+:2.0% Na+:8700mg/L
アニオン: SO4 2-:1800mg/L Cl-:2.6%
汚染水のpHは11.5であった。
この汚染水1kgに4mol/Lの硫酸を加えてpH7に調整した後、フェロシアン化ナトリウム10水和物0.5g(1mmol)を加えた。続いて、攪拌しながら塩化鉄(III)4水和物0.4g(1.2mmol)を添加した。
次に、硫酸マンガン(II)1水和物0.3g(1.8mmol)を添加した。
5mol/L水酸化ナトリウムでpHを8に調整しながら攪拌を0.5時間続けた。
0.5時間後、攪拌を止め、処理液を篩目1μmテフロン(登録商標)製フィルターで吸引濾過し、濾液を得た。
濾液について放射能濃度を測定した。放射能濃度の測定は、日立アロカ社製放射能測定装置CAN−OSP−NAIで所定の時間行った。
1)Cs汚染水処理前
測定時間:30分間
放射能濃度:490Bq/kg(検出限界20Bq/kg)
2)処理後濾液
測定時間:1時間
放射能濃度:ND(検出限界:10Bq/kg)
また、全シアン濃度は検出されなかった(定量下限値0.01mg/L)。
〔実施例16〕
実施例15で硫酸マンガン(II)1水和物を硫酸鉄(II)7水和物0.5g(1.8mmol)に代え、硫酸ナトリウム無水物0.5gを加えたほかは、実施例15と同様に実施した。
処理濾液の放射能Csによる放射能濃度は検出されなかった(検出限界:137Cs、134Csともに10Bq/kg)。また、全シアン濃度は検出されなかった。
〔実施例17〕
実施例15で硫酸マンガン(II)1水和物を硫酸銅(II)0.29g(1.8mmol)に代えたほかは、実施例15と同様に実施した。
処理濾液の放射能Csによる放射能濃度は検出されなかった(検出限界:137Cs、134Csともに10Bq/kg)。また、全シアン濃度は検出されなかった。
〔比較例1〕
実施例1で用いたCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1LにPB4g(大日精化工業社製:NH4Fe(III)Fe(II)(CN)6)を加えて2時間攪拌を行った。硫酸バンドAl2(SO43を1g添加し、攪拌しながら5mol/L水酸化ナトリウム水溶液で処理液のpHを9.0に調整した。続いて、アニオン系高分子凝集剤(MTアクアポリマー社製のアコフロックA115)の0.1%水溶液を1mL添加し、フロックを形成させた後、処理液を5Cの濾紙で濾過した。
濾液についてCsイオン濃度の測定を実施例1と同様にして実施した。
濾液のCsイオン濃度は55.6mg/Lであり、除去率は44.4%であった。
〔比較例2〕
Csイオン濃度10mg/Lの模擬海水1Lについて、比較例1と同様、大日精化工業製のPB1gを添加し、pHを8に調整して攪拌を24時間実施した。PB添加から1時間、6時間、8時間経過の処理液100mLをそれぞれ採取した。採取した処理液それぞれに比較例1と同様のアニオン系高分子凝集剤を添加した後、5Cの濾紙で濾過を行い、濾液についてCsイオン濃度を比較例1と同様にして測定した。24時間経過については残処理液について、凝集剤を添加して沈殿形成後、同様に濾過を行ないCsイオン濃度の測定を実施した。各経過時間採取試料の濾液のCsイオン濃度を表3に示した。
Figure 2014021104
〔比較例3〕
実施例1で用いたCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1LにPB4g(大日精化工業社製:NH4Fe(III)Fe(II)(CN)6)を加えて1時間攪拌を行った。
攪拌終了後、処理液を5Cの濾紙で濾過したところ、PBも濾紙を通過してしまい、紺青の濾液が得られた。
〔比較例4〕
実施例1で用いたCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水1LにPB1g(大日精化工業社製:NH4Fe(III)Fe(II)(CN)6)を加え、続いて硫酸マンガン(II)1.0gを加えて攪拌を2時間行った。その間、処理液のpHを5mol/L水酸化ナトリウム水溶液により9.0に調整した。攪拌終了後、処理液を5Cの濾紙で濾過を実施した。
濾液についてCsイオン濃度の測定を実施例1と同様にして実施した。
濾液のCsイオン濃度は64.5mg/Lであり、除去率は35.5%であった。
〔比較例5〕
実施例8の模擬海水1Lに、攪拌下、フェロシアン化ナトリウム10水和物1g(2.1mmol)、続いて、塩化鉄(III)4水和物0.57g(2.1mmol)を加えてPBを合成した。15分攪拌後、凝集剤として塩化鉄(III)4水和物1.14g(4.2mmol)を加えた。5mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.5に調整しながら塩化鉄(III)の加水分解を行った。PB合成から1時間後に攪拌を止め静置し、処理液を5Cの濾紙で濾過を行い、濾液についてCsイオン濃度と全シアン濃度をそれぞれ測定した。
〔比較例6〕
比較例5で凝集剤を硫酸マグネシウム(II)1.0g(8.3mmol)に代えて加水分解をpH9.5に調整して実施したほかは比較例5と同様に実施した。
〔比較例7〕
比較例5で凝集剤を硫酸アルミニウム(III)0.75g(5.0mmol)に代えて加水分解をpH8.5に調整して実施したほかは比較例5と同様に実施した。
比較例5〜7の濾液のCsイオン濃度及び全シアン濃度を表4に示した。
Figure 2014021104
〔比較例8〕
Csイオン濃度10mg/LのCs汚染模擬海水1Lに天然ゼオライト10gを添加し1時間攪拌後5Cの濾紙で濾過を行った。
濾液について実施例1と同様の方法でCsイオン濃度を測定した結果、Csイオン濃度は8.0mg/Lであり、除去率は20%であった。
〔実施例18:処理液のpHの影響〕
安定元素133Csからなる炭酸セシウムCs2CO3を蒸留水1Lに溶解してCsイオン濃度100mg/Lの模擬Cs汚染水を調製した。
該模擬Cs汚染水にフェロシアン化カリウム3水和物1.5g(3.5mmol)を添加し、続いて、攪拌しながら塩化鉄(III)6水和物1.0g(3.7mmol)を添加した。添加と同時に模擬水溶液は紺青色に変化しPBが生成した。次に、硫酸マンガン(II)1水和物を0.68g(4mmol)添加し、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整しながら3時間攪拌を行った後、処理液を5Cの濾紙で濾過した。
濾液についてアジレント社の誘導結合型プラズマ質量分析装置(ICP−MS)7000xでCsイオン濃度を定量した。処理液のpHに対する処理液のCsイオン濃度を図1に示す。
pH4〜11の広い範囲で本発明技術が高いCs除去能率を有することが分かった。
また、本発明によれば、Cs汚染水中のアルカリイオンやアルカリ土類金属イオンの影響は少なく、Csイオン濃度10mg/Lの模擬海水で迅速かつ高効率にCsイオンを除去できることが確認された。
〔実施例19:Csイオン除去効果の迅速性についての検証〕
1)模擬海水の調製
蒸留水に塩化ナトリウム3%、塩化カリウム0.5%を溶解するとともに、炭酸セシウムを添加し、Csイオン濃度10mg/Lの模擬海水を調製した。
2)PB処理
模擬海水1Lにフェロシアン化ナトリウム10水和物0.87g(1.8mmol)を添加し、攪拌した。続いて攪拌しながら塩化鉄(III)6水和物540mg(2.0mmol/L)を添加した。
添加と同時に模擬海水は紺青色に変化した。
3)PB不溶化処理
15分間攪拌後、Me(II)塩化合物として硫酸マンガン(II)1水和物0.5g(3mmol)を処理液に添加した。続いて、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えて処理液のpH6〜9の範囲でMe(II)塩化合物の加水分解を行った。
さらにpHを8に調整しながら攪拌を続けた。処理開始後1時間、3時間、6時間、24時間後に処理液100mLを採取した。
4)濾過
各処理時間で採取した処理液を5Cの濾紙で濾過した。濾液をICP−MSによるCsイオン濃度測定試料に供した。
硫酸マンガン(II)1水和物の他に塩化コバルト(II)、塩化鉄(II)、塩化ニッケル(II)、塩化銅(II)、酢酸亜鉛(II)についてもそれぞれ3mmolを添加して上記処理を実施した。その結果を図2に示す。図2では、比較のために、上記比較例2の結果も併せて図示した(図2中の「PB」)。
本発明では、処理時間は1〜3時間で十分であり、長時間の処理は却って発明の効果が失われていくことが分かった。これは、長時間処理で遷移金属Me(II)の酸化反応や形成されたMe(II)水酸化物の脱水縮合反応などが起こり、PB分子やそのクラスターをインターカレートした前記Me(II)水酸化物の層状構造が毀されるためと考えられる。
本発明の放射性Cs汚染水の処理方法は、Csイオンで汚染された水から、Csイオンを迅速かつ効率的に吸着除去するための処理方法として、好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. 水中で、M(I)4Fe(II)(CN)6及び/又はM(I)3Fe(III)(CN)6で表される鉄シアノ錯体(但し、M(I)は1価のカチオンである)と、2価及び/又は3価の鉄塩化合物とを反応させることにより、M(I)3xFe(III)4-x[Fe(II)(CN)63(但し、xは0又は1である)で表されるプルシアンブルーの分子及び/又はそのクラスターの含有液を得る工程(A)と、
    前記工程(A)を放射性Cs汚染水中で行うか、及び/又は、前記工程(A)でプルシアンブルー含有液を得た後に放射性Cs汚染水と混合することにより、前記プルシアンブルーの分子及び/又はそのクラスターにCsイオンを吸着させる工程(B)と、
    前記工程(B)を経た処理液中に、六方晶の結晶構造をとるMe(II)(OH)2(但し、Me(II)はマンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びカドミウムから選ばれる少なくとも1種の2価の遷移金属である)で表される水酸化物を含有させる工程(C)と、
    を含み、
    前記工程(C)では、前記工程(B)の後にMe(II)塩化合物を添加するとともに該Me(II)塩化合物を加水分解することにより、前記水酸化物を処理液中に含有させるようにし、かつ、前記鉄シアノ錯体の量をα(mol)とし、前記Me(II)塩化合物の量をβ(mol/L)とするとき、αとβの比(α/β)が0.1〜10である、放射性Cs汚染水の処理方法。
  2. 前記αとβの比(α/β)が0.1〜1である、請求項1に記載の放射性Cs汚染水の処理方法。
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