JP5484702B2 - 水質浄化材料およびそれを用いた水質浄化方法 - Google Patents
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Description
水環境学会誌第22巻第11号875−881(1999)
また、本発明による水質浄化材料は、排水中のリン濃度が高い場合においても、従来の水質浄化材料に比較して吸着能力の低下が少なく、極めて高性能なリン吸着材料が提供される。
本発明における水質浄化材料は鉄イオンおよびカルシウムイオンを含む複合金属水酸化物を含むものである。そして、この複合金属水酸化物は複数の層が積層した層状構造を有している。また、層の基本的な構造は、カルシウムイオンを中心とした八面体が二次元的に連なっているものである。本発明においては複合金属水酸化物はカルシウムイオンと鉄イオンとを含むが、前記した層を構成するカルシウムイオンの一部が鉄イオンに置換されたものと考えることができる。このため、層は全体として正電荷を帯びている。そして、この層の間には陰イオンと結晶水とが存在し、複合金属水酸化物全体が電気的に中性となっている。
[Ca2+ 1−xFe3+ x(OH)2]
で表すことができる。通常のハイドロタルサイトは、一般式[M2+ 1−yM3+ y(OH)2][Ap− y/p・qH2O]で表される層状構造を有し、本発明における水質浄化材料においても近似した構造を含有すると考えられる。しかし、本発明においてCaおよびFeは全てハイドロタルサイトの基本骨格に含まれるわけではなく、ハイドロタルサイト構造におけるブルーサイト層の表面にCaおよびFeがイオン形態で付着していることが特徴のひとつである。したがって、正確にはハイドロタルサイトの一般式とは化学量論比が異なる。しかし、ハイドロタルサイト構造特有の層状構造を有することも特徴であるため、本発明における複合金属水酸化物の組成式は、少なくとも[Ca2+ 1−xFe3+ x(OH)m]と表すことができる。通常のハイドロタルサイト構造と同一の構造をとるのであれば、m=2となるが、本発明においては、ブルーサイト層表面にCaイオンおよびFeイオンが更に存在し、また、表面のCaイオンおよびFeイオンが水中の水酸基と化学的な作用を持ちやすいと考えられる。従って、本発明においては1.6<m<2.3の範囲であると推定され、この範囲であることが好ましい。
塩化カルシウム8.3gと塩化鉄(III)4.1gとを純水に混合し、NaOH溶液で溶液がアルカリ性になるように調整しながら溶解させて最終的に200mLの溶液を得た。次に、溶液を80℃〜100℃に保ちながら数時間保持して沈殿物を生成させた。最後に、生成した沈殿物を濾別して洗浄し、90℃〜100℃で数時間乾燥して供試体1とした。供試体1は、カルシウムと鉄との複合金属水酸化物であり、一般式
[Ca0.75Fe0.25(OH)m]
で表すことができることをイオンクロマトグラフ法およびICP発光分光法により確認した。また、この複合金属水酸化物が層状構造を有していることをX線回折法により確認した。
一方、リン酸イオン濃度、硫酸イオン濃度、硝酸イオン濃度が夫々20mg/Lとなるよう調整された混合水溶液を排水模擬液として準備した。この排水模擬液50mLに20mgの供試体1を投入し、2時間混合撹絆して水質浄化処理を行った。処理後、供試体と上澄み液を濾別し、上澄み液中の各イオン濃度を定量分析し、各イオンの残存率およびリン吸着量を算出した。得られた結果は表1に示す通りであった。
原料として、塩化カルシウム9.3gと塩化鉄(III)2.6gとを用いたほかは、実施例1と同様の方法により供試体2を得た。供試体2は、一般式
[Ca0.84Fe0.16(OH)m]
で表すことができる複合金属水酸化物であること、および層状構造を有していることを実施例1と同様の方法により確認した。
この供試体2を用いて実施例1と同様の方法で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
原料として、塩化カルシウム7.6gと塩化鉄(III)3.2gとを用いたほかは、実施例1と同様の方法により供試体3を得た。供試体3は、一般式
[Ca0.79Fe0.21(OH)m]
で表すことができる複合金属水酸化物であること、および層状構造を有していることを実施例1と同様の方法により確認した。
この供試体3を用いて実施例1と同様の方法で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
原料として、塩化カルシウム6.9gと塩化鉄(III)4.1gとを用いたほかは、実施例1と同様の方法により供試体4を得た。供試体4は、一般式
[Ca0.72Fe0.28(OH)m]
で表すことができる複合金属水酸化物であること、および層状構造を有していることを実施例1と同様の方法により確認した。
排水模擬液に、リン酸イオン濃度、硫酸イオン濃度、硝酸イオン濃度が夫々40mg/Lとなるよう調整した混合水溶液を用いたほかは、実施例1と同様にして、水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
供試体2を用いて実施例5と同様の要領で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
供試体3を用いて実施例5と同様の要領で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
供試体4を用いて実施例5と同様の要領で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
塩化アルミニウム8.0gと塩化マグネシウム1.9gとを純水に混合し、NaOH溶液で溶液がアルカリ性になるように調整しながら溶解させて最終的に200mLの溶液を得た。次に、溶液を80℃〜100℃に保ちながら数時間保持して沈殿物を生成させた。最後に、生成した沈殿物を濾別して洗浄し、90℃〜100℃で数時間乾燥して供試体5とした。この供試体5はマグネシウムとアルミニウムとを含むハイドロタルサイトからなるものである。この供試体5を用いて実施例1と同様の方法で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
供試体5を用いて実施例5と同様の要領で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
原料として、塩化カルシウム9.7gと塩化鉄(III)2.1gとを用いたほかは、実施例1と同様の方法により供試体6を得た。供試体6は、一般式
[Ca0.87Fe0.13(OH)2]
で表すことができる複合金属水酸化物であること、および層状構造を有していることを実施例1と同様の方法により確認した。しかし、X線回折による分析では、水酸化カルシウム由来のピークが層状構造に由来するピークの1/2を超えていた。この供試体6を用いて実施例5と同様の方法で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
原料として、塩化カルシウム7.7gと塩化鉄(III)5.0gとを用いたほかは、実施例1と同様の方法により供試体7を得た。供試体7は、一般式
[Ca0.70Fe0.30(OH)2]
で表すことができる複合金属水酸化物であることを実施例1と同様の方法により確認した。しかし、層状構造が実質的に形成されていないことが確認された。この供試体7を用いて実施例5と同様の要領で水質浄化処理を行った。得られた結果は表1に示す通りであった。
Claims (5)
- 鉄イオンおよびカルシウムイオンを構造中に含む複合金属水酸化物を含み、前記複合金属水酸化物が層状構造を有し、かつX線結晶構造解析によって測定される水酸化カルシウムまたは水酸化鉄由来のメインピーク強度の合計が、層状構造由来のメインピーク強度の1/2以下であることを特徴とする水質浄化材料。
- 前記複合金属水酸化物がハイドロタルサイト様構造を有する、請求項1に記載の水質浄化剤。
- 前記複合金属水酸化物が、一般式:
[Ca2+ 1−xFe3+ x(OH)m]で表され、かつ0.16≦x≦0.28、1.6<m<2.3である、請求項1または2に記載の水質浄化材料。 - 前記複合金属水酸化物を構成する複合金属水酸化物の層の表面にカルシウムイオンまたは鉄イオンが付着している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水質浄化材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水質浄化材料を排水に接触させ、前記排水中のイオン種を除去することを特徴とする水質浄化方法。
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