JP2014014837A - 螺旋体の製造装置、製造方法、及び螺旋体 - Google Patents

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Abstract

【課題】螺旋体の外周にガイドとなるパイプ材がなくても軸線が曲がらず均一ピッチの所期形状の螺旋体を容易に製造することができる螺旋体の製造装置と製造方法を提供する。
【解決手段】螺旋体の材料となる形鋼の一端部を固定側チャック13で回転拘束状態で支持する。当該形鋼の他端部を回転側チャック14を介して回転駆動手段としてのモータ15に連結する。モータ15によって形鋼にねじりを付与し、当該ねじりの付与によって形鋼に発生する軸線方向の張力を所定の大きさに維持した状態で固定側チャック13と回転側チャック14を互いに漸次接近させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、螺旋体の製造装置、製造方法、及び螺旋体に関する。
例えば各種支柱、小型建造物、仮設建物、塀などの、比較的小型物件の地盤補強材として、螺旋杭が使用されている。この種の螺旋杭は、通常、圧延平鋼にねじり加工を施して螺旋体に加工した後、用途に応じた必要長(通常約1〜5m)に切断し、この螺旋体の地中に入る一端に杭としての先端加工を施す。また、地上に出る螺旋体の他端に建設物等と連結するための定着金具を取付ける。このようにして螺旋杭を製造する。
螺旋体のねじり加工の程度は、通常ピッチの大きさで表す。この「ピッチ」は「ねじり間隔」とも呼ばれ、平鋼を180°ねじった場合の隣接する二つの山と山の間の距離が「ピッチ」である。螺旋杭に適したピッチの大きさは、圧延平鋼の板幅をwとすると、概ね1.3w〜1.7wである。ねじりの程度が弱くピッチが1.7wよりも大きくなると、杭の地中支持力が減少して螺旋杭としての耐荷重が不足する。この反対にねじりの程度が強くピッチが1.3wより小さくなると、杭の地中支持力は増大するがスムーズな地中圧入が困難となる。このため、螺旋体のピッチは約1.3w〜1.7wとするのが望ましいとされている。このピッチの大きさを、螺旋杭の軸線に垂直な平面と螺旋羽根とが成す角(ピッチ角θ)で表すと、θ=約40°〜48°となる。
ところで、平鋼の従来のねじり加工については、例えば特許文献1(特開平11−309515号公報)や特許文献2(特開平7−80556号公報)に開示されている。特許文献1の装置は平鋼の一端を固定し反対側の端部をねじり回転するだけである。このようなねじり方であると、平鋼を螺旋体に加工する途中で螺旋体の軸線が直線にならず、軸線の途中がS字状または弓状に曲がったり、螺旋体の羽根が外周側で折れ曲がったりして、均一ピッチの正常な螺旋体にならない。このような現象は、螺旋体のねじり加工が進むに従っていっそう顕著になる。これは、平鋼の幅方向中央ではねじり変形が少ないのに対し、幅方向両側ではねじり変形が大きいためであり、このため平鋼を螺旋体に加工すると外周側では引張となるが中心側では圧縮となり、螺旋体の半径方向で圧縮力が作用するからである。また、両固定端の長さ方向の移動を完全に固定すると、ねじり加工が進むにつれて平鋼は縮もうとするため、両固定端には大きな引張力が掛かる。ピッチが1.5wになる前に平鋼が破断する確立が高くなる。また、大形の平鋼なら、長いスパンで数十トンから数百トンの張力が掛かるため、設備が巨大化する。
そこで特許文献2のように、平鋼を円筒状のパイプ材の中に挿入した状態で平鋼のみをねじり加工する製造法が提案されている。パイプ材の太さは平鋼が丁度入る程度の太さであり、このパイプ材をガイドとして平鋼の軸線が曲がらないようにねじり加工する。
特開平11−309515号公報 特開平7−80556号公報
しかしながら特許文献2の製造法は、螺旋杭が長尺になるとパイプ材もそれに見合うだけの長尺なものを用意し、その中に長い平鋼を入れなければならないので作業性が非常に悪い。平鋼とパイプ材がどちらも誤差が少ない直線状であると比較的スムーズに平鋼を挿入できるが、一方が少しでも曲がっていると平鋼の幅方向両端がパイプ材の内周面と擦れて挿入抵抗が発生し、作業時間が長引くことがある。
また、パイプ材と平鋼の間の隙間は製品の寸法精度との関係で所定の隙間以下に制限する必要があり、材料となる平鋼の幅が変わるとパイプ材も直径の異なるものに取り替えなければならず、このような取り替えのために作業時間が長くなる。さらに、パイプ材の中で平鋼をねじり加工して螺旋体にした後、当該螺旋体をパイプ材から取り出す作業が必要であり、この作業にも時間がかかっていた。
そこで本発明の目的は、ガイドとなるパイプ材がなくても軸線が曲がらず均一ピッチの所期形状の螺旋体を容易に製造することができる装置と方法を提供することにある。
本発明は平鋼をパイプ材に挿入する変わりに、螺旋加工を施す平鋼の長さ方向に当該平鋼の寸法と材質に見合った一定の引張力を負荷しながら、平鋼の幅wの例えば約1.3〜1.7倍までねじりを加える方法により、螺旋杭を製造する装置と方法を提供する。平鋼の寸法と材質に見合った負荷張力を与えることにより、螺旋体の軸線がS字上または弓状に曲るのを防止することができ、所望の螺旋ピッチで螺旋体を加工することができる。螺旋体の材料としては、平鋼以外の各種形鋼を使用可能であり、複数本の形鋼を組み合わせた組み合わせ形鋼も使用可能である。
すなわち本発明は、螺旋体の材料となる形鋼の一端部を固定側チャックで回転拘束状態で支持すると共に他端部を回転側チャックを介して回転駆動手段に連結し、前記回転駆動手段によって前記形鋼にねじりを付与し、当該ねじりの付与によって前記形鋼に発生する軸線方向の張力を所定の大きさに維持した状態で前記固定側チャックと回転側チャックを互いに漸次接近させることで前記形鋼を螺旋体に加工するようにした螺旋体の製造装置と製造方法である。
本発明は、螺旋体の材料となる形鋼に所定の張力をかけた状態でねじり加工を進めることで、螺旋体のねじり変形が軸線方向にわたって均一化され、所期のピッチで正しい形状の螺旋体を高い歩留まりで得ることができる。また、従来の装置に比べてガイドとなるパイプ材が不要であるため、パイプ材の中に螺旋体の材料を入れる時間と、加工後の螺旋体をパイプ材の中から取り出す時間を短縮することができる。
(a)は本発明の実施形態に係る螺旋体製造装置の正面図、(b)はその平面図である。 (a)は本発明の実施形態に係る螺旋体製造装置の回転側と固定側のチャックの正面図、(b)はその平面図である。 (a)は本発明の実施形態に係る螺旋体製造装置の回転側と固定側のチャックの変形例の正面図、(b)はその平面図である。 本発明の実施形態に係る螺旋体製造装置の油圧制御回路図である。 図2Bのチャックの拡大断面図である。 平鋼のねじり試験の結果を示す図である。 図5の結果をグラフ化した図である。 (a)は十字断面の螺旋杭の断面図、(b)はY字断面の螺旋杭の断面図である。 (a)は十字断面の螺旋杭の側面図、(b)、(c)はその端面図である。 (a)は十字断面の螺旋杭のチャックの縦断面図、(b)は十字断面の螺旋杭のチャックの横断面図である。 (a)は十字断面の螺旋杭と従来の螺旋杭の撓み量と負荷荷重を比較した表である。(b)は同表をグラフ化した図である。 十字断面の螺旋杭と従来の螺旋杭の粘性地盤での地中支持力を比較した表である。
以下、本発明の実施形態に係る螺旋体製造装置とその製造方法及び螺旋体について、図面を参照して説明する。
図1〜図6は平鋼P1を材料とする螺旋体P2の製造装置の実施形態を示している。平鋼P1以外の形鋼や複数本の形鋼を組み合わせた組み合わせ形鋼を材料とする螺旋体とその製造装置の実施形態は図7〜図11に示す。
図1の螺旋体製造装置10は、図1(a)(b)のように横長のフレーム11を有する。図1の(a)が正面図で(b)が平面図である。このフレーム11は、水平方向に延びる上下左右の4本のビーム11aを主要構成材とする。これら4本のビーム11aによって断面が矩形の枠体を構成している。そして当該枠体の内側に材料となる平鋼P1を搬入し、この平鋼P1をねじり加工して螺旋体P2を製造する。フレーム11の両端2箇所と中間2箇所に、4本のビーム11aを上下左右に連結する連結材11bが配設されている。
図1のフレーム11の右端外側に、平鋼P1ないし螺旋体P2に所定の張力を付与するための油圧シリンダ12が配設されている。この油圧シリンダ12のピストンロッド12aに、平鋼P1の端部を連結する固定側チャック13の後部が連結されている。この固定側チャック13はフレーム11の右端内側に位置し、後述するようにフレーム11の長手方向に移動可能とされている。また、フレーム11の左端上面に、回転側チャック14に連結されるモータ15と減速機16が配設されている。
固定側チャック13は、図2Aの右側に拡大して示すように下板13aと上板13bで構成され、これら上下2枚の板13a、13bの間に平鋼P1の端部を挟み込むようにしている。上下2枚の板13a、13bの水平方向左右両端は、各4本のボルト20で連結されている。通常の螺旋杭はこれらボルト20を締め付けることで固定側チャック13に十分な強度で連結可能である。やや大型の螺旋杭ではボルト20による締め付け力だけでは不足することもあるので、そのような場合は上下の板13a、13bと平鋼P1を貫通する連結ピン21を設ける。そして連結ピン21の先端に抜止めピン22を差し込む。
固定側チャック13の上の板13bの左右両端であって、ボルト20よりも外側に延びた部分は、フレーム11に長手方向に固定されたガイド板23にスライド可能に支持されている。このガイド板23は、図2A(b)の平面図に示すように、フレーム11の内側に固定された上下2枚の水平なガイド板23で構成され、これら上下のガイド板23の間に、固定側チャック13の上の板13bの両端がスライド可能に挿入されている。従って、固定側チャック13はガイド板23によって回転が拘束されているが、フレーム11の長手方向には移動可能である。
油圧シリンダ12のピストンロッド12aの先端に、フランジ24を介して、下板13aの後端中央が連結されている。ピストンロッド12aは、その軸線が固定側チャック13の中心線と一直線になるように配置され、ピストンロッド12aが伸縮することにより、固定側チャック13がガイド板23に沿ってフレーム11の長手方向に前後動するようになっている。
油圧シリンダ12は、図3のように、ピストン12bの片側にピストンロッド12aが取付けられた形式であり、ピストン12bの後ろ側の油室12cが電磁弁30を介して油槽31に連結されている。また、ピストン12bの前側の油室12dが、電磁弁32と電磁弁30を介して、電動機付油圧ポンプ33に接続されている。そして電動機付油圧ポンプ33によって油槽31から吸い上げた作動油を電磁弁30、32を通して所定圧で油室12dに供給するようにしている。また油圧ポンプ33の吐出圧は圧力計33aで確認することができるようになっている。
油室12dに近い方の電磁弁32にはリリーフ弁34が付設され、油室12d内の圧力が所定圧以上に上昇すると、リリーフ弁34を通して余分な作動油が油槽31に戻されるようになっている。これにより、固定側チャック13で平鋼P1の一端を回転拘束し、油圧シリンダ12によって平鋼P1に一定の張力を付与した状態で、後述する回転側チャック14で平鋼P1にねじりをかけていくと、ねじり加工の進行に伴って、固定側チャック13が図3で左方向、すなわち回転側チャック14に近づく方向に漸次移動するようになっている。
モータ15と減速機16は、モータ15の回転軸に取付けられたスプロケット40と、減速機16の入力軸に取付けられたスプロケット41と、両スプロケット間に左右方向に張られた無端チェーン42で連結されている。一方、フレーム11の左端内側に、モータ15と減速機16の下方に位置するように位置回転駆動軸43が配設されている。この回転駆動軸43は、二つの軸受45、46と、一つのスラスト軸受47で支持されている。二つの軸受45、46はビーム11aに固定され、スラスト軸受47は連結材11bに固定されている。
回転駆動軸43は、前記スラスト軸受47に支持された第1軸部43aと、この第1軸部43aの後方にカップリング44を介して連結された第2軸部43bで構成されている。第2軸部43bは前記二つの軸受45、46で支持され、第2軸部43bの後端部に取付けられたスプロケット48が、上下方向に張られた無端チェーン50を介して、減速機16の出力側スプロケット49と連結されている。
スラスト軸受47から図2Aで右側に延びた回転駆動軸43の端部に、回転側チャック14が取付けられている。この回転側チャック14も、前記固定側チャック13と同様に、二枚の板14a、14bで構成されている。二枚の板同士は、両端が各6本のボルト25で連結され、板14aと14bの間に平鋼P1の端部が挟み込まれている。これらボルト25による締め付け力で不足する場合は、上下の板14a、14bと平鋼P1を貫通する連結ピン26を設け、この連結ピン21の先端に抜止めピン27を差し込む。
固定側と回転側の各チャック13、14の構成は、前述の構成に限らず、他のいろいろな構成が可能である。図2Bはそのような変形例の一例であって、固定側と回転側の各チャック53、54の本体53a、54aの中に、図4のようにテーパ空間55を形成し、この空間55内に、一対のテーパブロック53b、54bを可動に収容している。テーパブロック53b、54bの互いに対向した面に、平鋼P1の端部に向かうように傾斜した爪部56が形成され、この爪部56で平鋼P1の端部を把持するようにしている。
平鋼P1は、テーパブロック53b、54bに矢印A方向に差し込む時はスムーズに挿入可能であり、この逆方向の矢印B方向に引張力がかかると、テーパブロック53b、54bがテーパ面53c、54cに沿って差し込み口に側に移動して互いに接近し、平鋼P1をますます強く挟み付ける。平鋼P1を螺旋体P2に加工した後に螺旋体P2の端部をチャック53、54から取り外す場合は、螺旋体P2の端部をいったんテーパブロック53b、54bの奥側に少し押し込む。これにより一対のテーパブロック53b、54bが後退して螺旋体P2の端部を挟みつける力が低下し、螺旋体P2の端部とテーパブロック53b、54bとの間に隙間があくので、以後、テーパブロック53b、54bを接近しないように保持した状態で螺旋体P2の端部を引き抜く。
螺旋体製造装置10は以上のように構成され、この製造装置10による螺旋体P2の製造は以下のように行われる。まず、材料となる平鋼P1をフレーム11の中に搬入して平鋼P1の一端を固定側チャック13に連結する。この連結の際、油圧シリンダ12のピストンロッド12aを最も短くするように、油圧ポンプ33と電磁弁30、32を作動させて、油圧シリンダ12の油室12dに対し作動油を供給する。平鋼P1の一端を固定側チャック13に連結したら、次に平鋼P1の反対側の端部を回転側チャック14に連結する。この連結の際、必要に応じて油圧シリンダ12のピストンロッド12aの突出長さを調節し、回転側チャック14に対する平鋼P1の端部の位置調整を行う。
このようにして平鋼P1の両端を固定側と回転側の二つのチャック13、14に連結した後、油圧ポンプ33を駆動して油圧シリンダ12の油室12dに所定の大きさの油圧をかける。これにより、固定側チャック13に図3で矢印A方向の引張力が作用し、平鋼P1に対して後述する最低限の引張力yを満足する張力が負荷される。そしてこのような最低限の負荷張力状態でモータ15を回転駆動する。モータ15が回転駆動すると回転側チャック14が回転し、平鋼P1にねじりがかけられる。平鋼P1にねじりがかかっていくに従って平鋼P1の全長は徐々に短くなる。この平鋼P1の長さの短縮によって平鋼P1の長さ方向で引張力が増大し、この引張力の増大によって油圧シリンダ12のピストンロッド12aが図3で矢印B方向に引っ張られる。
これにより油圧シリンダ12の油室12d内の圧力が高まり、当該圧力が所定値を超えるとリリーフ弁34が作動し、油室12d内の作動油の一部が油槽31に排出される。なお、前記圧力増大を圧力計32aで検知し、当該検知結果に基づいてリリーフ弁34を電磁制御で断続的に放することも可能である。このようなリリーフ弁34の作動によりピストンロッド12aが伸張し、固定側チャック13が図3で矢印B方向に移動する。また、油室12d内の圧力が所定圧に維持され、ピストンロッド12aによって螺旋体P2に負荷される張力が所定の大きさに維持される。従って、平鋼P1は全長にわたって等しい張力のもとでねじりがかけられるので、所期のピッチが螺旋体P2の全長にわたって均等に形成され、所期形状の正常な形の螺旋体P2が得られる。
ここで、油圧シリンダ12により平鋼P1(螺旋体P2)に負荷する張力の大きさについて説明する。平鋼P1の材質をSS400(一般構造用圧延鋼材)とした場合、固定側チャック13にかける最低限の負荷張力(kN)をyとすると、y=10.7x−44.3と表すことができる。xは平鋼の断面形状(幅w、厚さt)によって定まる指標であって、x=w2/100tである。この関係式から、平鋼P1の材質と断面形状がわかれば、最低負荷張力が直ちに算出される。
負荷張力が足りない場合、すなわち負荷張力y<10.7x−44.3の場合、少なくとも5本に1本以上の確率で螺旋体P2の不良品が出ることが確認された。図5と図6は、前述した製造装置10を使用し、負荷張力が前記最低負荷張力以上か以下かによって、製造される螺旋体P2がほぼ良品と不良品に分かれることを確認したねじり加工の試験結果を示している。
図5の試験では、平鋼P1の材料としてSS400(一般構造用圧延鋼材)を使用した。この材料は、螺旋杭として広く使用されている。試験は、板厚(6mm、9mm、12mm)と板幅を異ならせた6種類の平鋼で行った。図5の試験結果をグラフ化したものが図6であり、この図6から明らかなように、前記負荷張力の関係式で規定する所定張力よりも小さな張力では5本中1本以上が不良品となり、当該所定張力よりも大きい張力では5本中不良品が出なかった。
なお、図5で「正常作業」とは、ピッチ=1.5wのねじり回転で、折れ曲がり、湾曲、S字状曲がり等がない場合の作業である。「異常作業」とは、ピッチ=1.5wのねじり回転で、折れ曲がり、湾曲、S字状曲がり等がある場合の作業である。「正常作業」と「異常作業」の分類基準は、5本の加工でまったく異常が発生しない場合を「正常」とし、1本でも異常があれば「異常」とする。
同図から分るように、負荷張力をy≧10.7x−44.3にすると正常な螺旋加工が実施できた。但し、x≦5では螺旋加工中にキンクが発生し、正常な加工が出来なかった。また、38≦xとなると負荷張力が大きくなり過ぎ、両端のチャックにおいて平鋼P1のサイドラインでの局部的なせん断力が大きくなって破断に至り、正常な螺旋加工が出来なかった。また、負荷張力が過大で設備が必要以上に大型化するため経済的でない。従って、負荷張力yの前記関係式は5<x<38の範囲で適用するのが実用的かつ経済的である。
以上のように、負荷張力を所定張力以上に維持した状態で螺旋体を加工すると、螺旋体P2の軸線に曲がりや歪み等がない正常な螺旋体を製造することができる。この理由は、両チャック13、14間の負荷張力を前記所定の大きさ以上にすると、平鋼P1の幅方向中央付近の圧縮力が軽減され、S字状又は弓状の軸線曲がりが発生するのを防止することができるからである。但し、負荷張力を必要以上に大きくすると設備が大型化するだけであり、経済的な利点は特にない。逆に負荷張力を必要以上に大きくすると、螺旋体P2の外周部のやせ細りが発生し、また破断等の損傷の確率が増加し、製品の品質劣化、歩留まり低下や作業の安全性等に問題が発生する。
前記実施形態では螺旋体P2の材料として平鋼P1を例示したが、螺旋体P2の材料としては平鋼P1に限らず、図7(a)のように、例えば十字形断面を有する形鋼でもねじり加工により螺旋体とすることが可能である。図8のような十字形断面の螺旋体は強度的に有利であり、押し出し成形等で一体として構成することが可能である。しかし、そのような押出材はコスト的に高くつくので、汎用鋼材である山形鋼P3a−P3d(L形鋼)を背中合わせで4本組み合わせた十字形の組み合わせ形鋼P3にするのがよい。このようにすると、十字形断面の螺旋体を低コストで製造することができる。なお、4本の山形鋼P3a−P3dをねじり加工して螺旋体P2にした後に、各山形鋼がばらばらにならないためには、螺旋体P2のピッチ角を例えば約45度にするとよい。
また、図7(b)のように、Y字状断面の材料をねじり加工して螺旋体にすることも可能である。このようなY字状断面の材料は押し出し成形で一体に構成することが可能であるが、前述したように押し出し成形材ではコスト高となるので、への字形の形鋼P4a−P4cを3本背中合わせで組み合わせて組み合わせ形鋼P4とするのがよい。
図9は、十字形断面の螺旋体の製造装置に使用する固定側と回転側の各チャック63(64)である。チャックの向きは回転側チャックとして示しているが、同じ構成のチャックを固定側でも使用する。このチャック63(64)は、フランジ66によって回転駆動軸43又はピストンロッド12aに連結されるチャック本体63a(64a)と、このチャック本体63a(64a)の中のテーパ空間65に収容された矩形断面の4つのチャックブロック63b(64b)で構成され、これら4つのチャックブロック63b(64b)で十字形断面の各羽根を上下左右から挟み付けるようにしたものである。チャック63(64)に張力がかかるとテーパブロック53b、54bがテーパ面53c、54cに沿って差し込み口側に移動して互いに接近し、十字形断面の材料をますます強く挟みつける。
組み合わせ形鋼P3を螺旋体P2に加工した後に、チャック63(64)から取り外す場合は、螺旋体P2の端部を一旦テーパブロック53b、54bの側に押し込む。これにより一対のテーパブロック53b、54bが後退して螺旋体P2の端部を挟み付ける力が低下して螺旋体P2の端部に隙間が空くので、以後、テーパブロック53b、54bを接近しないように保持した状態で、螺旋体P2を引き抜く。
図10は、十字形断面の螺旋体が強度的に優れていることを剛性試験で確認した結果である。3種類の螺旋体(十字形断面)(1)(3)(5)と、3種類の従来品(平鋼)の螺旋体(2)(4)(6)をそれぞれ1.7m切り出した試料で比較した。剛性試験はスパン1m、その中心位置(片端から50cm)に荷重を負荷することにより行い、その撓み量で剛性を評価した。図10(a)の試験結果をまとめたのが図10(b)である。同じ負荷荷重で本発明の螺旋杭と従来の螺旋杭を比較すると、本発明の螺旋杭の方が撓み量が約1/3〜1/5と少ない。このことから、十字形断面の螺旋杭は同程度の外形寸法及びピッチで三倍程度の強度を有することがわかる。
図11は、十字形断面の螺旋体と平鋼の螺旋体を使用した螺旋杭の地盤支持力を粘性地盤で試験した結果である。この試験で十字形断面の螺旋体は地盤圧入時に特に撓みがなく、順調に杭打ち作業を行うことができた。一週間後に螺旋杭の引き抜き試験を行い、その結果を図11に示している。この支持力(螺旋杭の先端面積を無視すれば、引抜力と等しい)の比較結果から見て、十字形断面の螺旋杭は、一部例外(螺旋体(4))はあるものの、羽根の数が多い分だけ平鋼の螺旋体よりも地盤支持力が高いことがわかる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では固定チャック13をフレーム11の長手方向に移動可能に支持したが、この固定チャック13をフレーム11の長手方向に移動できないように固定する代わりに、回転側チャック14をフレーム11の長手方向に移動可能にしてもよい。このような変形例は一般的には構造的に複雑化する割に利点が少ないが、回転側チャック14のスラスト軸受47に油圧シリンダで負荷張力をかけることで技術的に実現可能である。
10:螺旋体製造装置
11:フレーム
12:油圧シリンダ
12a:ピストンロッド
12b:ピストン
13:固定側チャック
14:回転側チャック
15:モータ
16:減速機
43:回転駆動軸
44:カップリング
47:スラスト軸受
P1:平鋼
P2:螺旋体

Claims (7)

  1. 螺旋体の材料となる形鋼の一端部を固定側チャックで回転拘束状態で支持すると共に他端部を回転側チャックを介して回転駆動手段に連結し、前記回転駆動手段によって前記形鋼にねじりを付与し、当該ねじりの付与によって前記形鋼に発生する軸線方向の張力を所定の大きさに維持した状態で前記固定側チャックと回転側チャックを互いに漸次接近させることで前記形鋼を螺旋体に加工するようにした螺旋体の製造装置。
  2. 前記形鋼の両端を連結する固定側チャックと回転側チャックを長手方向両端に配設した横長フレームと、
    前記フレームの一端部に配設され、前記固定側チャックを回転拘束状態で長手方向に移動可能にガイドするガイド部材と、
    前記固定側チャックの後部に連結された油圧シリンダと、
    前記フレームの他端部に配設され、前記回転側チャックに回転駆動力を伝達するモータと、
    を有する請求項1の螺旋体の製造装置。
  3. 前記油圧シリンダに接続したリリーフ弁によって前記形鋼に発生する軸線方向の張力を一定に維持するようにした請求項2の螺旋体の製造装置。
  4. 螺旋体の材料となる前記形鋼の一端部を固定側チャックで回転拘束状態で支持すると共に他端部を回転側チャックを介して回転駆動手段に連結し、前記回転駆動手段によって前記形鋼にねじりを付与し、当該ねじりの付与によって前記形鋼に発生する軸線方向の張力を所定の大きさに維持した状態で前記固定側チャックと回転側チャックを互いに漸次接近させることで前記形鋼を螺旋体に加工するようにした螺旋体の製造方法。
  5. 螺旋体の材料となる前記形鋼が熱間圧延平鋼SS400であって、その板幅をw、厚さをtとした場合、下記の関係式(1)から算出される最低張力y(kN)を当該平鋼に作用させるようにした請求項4の螺旋体の製造方法。
    y=10.7x−44.3 …(1)
    ここでxは、平鋼の幅w(mm)と厚さt(mm)からx=w2/100tの式により決まる指標である。
  6. 複数本の形鋼を組み合わせた組み合わせ形鋼を請求項4の製造方法で軸線方向に所定の張力をかけた状態でねじり加工して得られた螺旋体。
  7. 等辺山形鋼を4本組み合わせて十字形断面にした組み合わせ形鋼をねじり加工して得られた請求項6の螺旋体。
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