以下、本発明に係る掘削バケットの実施の形態を、油圧ショベルに装備された掘削バケットを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1ないし図7は本発明に係る掘削バケットの第1の実施の形態を示している。
図中、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成されている。上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム3Aの前部側には作業装置4が俯仰動可能に設けられ、該作業装置4によって土砂の掘削作業を行うものである。
ここで、作業装置4は、旋回フレーム3Aの前端側に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト5と、該スイングポスト5に俯仰動可能に取付けられたブーム6と、該ブーム6の先端側に俯仰動可能に取付けられたアーム7と、該アーム7の先端側に連結ピン8を用いて回動可能に取付けられた後述の掘削バケット11と、一端側がアーム7にピン結合され他端側が掘削バケット11に連結ピン9を用いて連結されたバケットリンク10と、スイングポスト5とブーム6との間に設けられたブームシリンダ6Aと、ブーム6とアーム7との間に設けられたアームシリンダ7Aと、アーム7とバケットリンク10との間に設けられたバケットシリンダ10Aとにより大略構成されている。そして、作業装置4は、ブーム6及びアーム7を俯仰動させつつアーム7の先端側で掘削バケット11を回動させることにより、土砂の掘削作業等を行うものである。
次に、第1の実施の形態に用いられる掘削バケットの具体的な構成について説明する。
11は連結ピン8を用いてアーム7の先端側に回動可能に取付けられた掘削バケットを示している。この掘削バケット11は、バケットシリンダ10Aを伸縮させることにより連結ピン8を中心として回動し、地面等を掘削して土砂を掬い上げ、所望の排土場所に排出するものである。
掘削バケット11は、図2および図3に示すように、後述するバケット基体13と、一対のブラケット19,20と、前底板21と、左前側板22と、右前側板23とにより大略構成されている。この場合、バケット基体13と一対のブラケット19,20とは、図3に示すように、鋳造手段を用いて一体成形されることにより、例えば鋳鉄製あるいは鋳鋼製の基体側一体物12として構成されている。
13は掘削バケット11のベースとなるバケット基体を示している。このバケット基体13は鋳造品からなり、後述の各ブラケット19,20と共に基体側一体物12を構成するものである。ここで、バケット基体13は、後述の底板14と、左側板15と、右側板16とにより構成されている。
14はバケット基体13の底部をなす底板を示し、該底板14は、下前端14Aと、上前端14Bと、下前端14Aと上前端14Bとの間に形成された凹湾曲状の湾曲面14Cとにより、全体としてU字状の断面形状を有する板状に構成されている。そして、底板14の内面14D側には、後述の土砂収容部17が形成され、底板14の外面14E側には、上前端14Bの近傍に位置して後述の各ブラケット19,20が設けられている。
ここで、底板14の下前端14Aは、左,右方向に延び、後述する前底板21が溶接手段を用いて接合されるものである。このため、図6に示すように、下前端14Aの端縁部は基体側接合端としての底板側接合端14Fとなり、この底板側接合端14Fには底板側開先14Gが形成されている。底板側開先14Gは、底板側接合端14Fの端縁部から底板14の外面14Eに向けて傾斜し、底板側開先14Gの開先角度θ1は、例えば45°に設定されている。この場合、底板側開先14Gは、底板14の底板側接合端14Fに対して切削加工等の後加工を施したものではなく、基体側一体物12の鋳造時に形成されるものである。
15は底板14の左側に設けられた左側板を示し、16は底板14の右端側に設けられた右側板を示している。これら左,右の側板15,16は、底板14を挟んで左,右方向で対面し、底板14の下前端14Aと上前端14Bとの間を上,下方向に延びた状態で、底板14と一体成形されるものである。
ここで、左側板15の前端15Aには、底板14の上前端14Bの近傍部位から逆L字状に切欠かれた基端側接合端としての左側板側接合端15Bが、上,下方向に延びて設けられている。この左側板側接合端15Bには、後述する左前側板22が溶接手段を用いて接合されるため、図7に示すように、左側板15の左側板側接合端15Bには、左側板側開先15Cが形成されている。この左側板側開先15Cは、左側板側接合端15Bの端縁部から左側板15の外面15Dに向けて傾斜し、左側板側開先15Cの開先角度θ2は、例えば45°に設定されている。
一方、右側板16の前端16Aにも、底板14の上前端14Bの近傍部位から逆L字状に切欠かれた基端側接合端としての右側板側接合端16Bが、上,下方向に延びて設けられている。この右側板側接合端16Bには、後述する右前側板23が溶接手段を用いて接合されるため、右側板16の右側板側接合端16Bにも、左側板側接合端15Bと同様な右側板側開先(図示せず)が形成されている。
このように、バケット基体13は、底板14と、左側板15および右側板16とにより構成され、底板14と左,右の側板15,16とによって囲まれた空間が、バケット基体13の土砂収容部17となっている。また、底板14の下前端14Aおよび上前端14B、左側板15の前端15A、右側板16の前端16Aとによって、バケット基体13の開口部18が形成されている。
次に、19は底板14の上前端14B側に設けられた左ブラケットを示し、20は左ブラケット19と対をなして底板14の上前端14B側に設けられた右ブラケットを示している。ここで、左,右のブラケット19,20は、鋳造手段を用いてバケット基体13と一体成形され、これら左,右のブラケット19,20とバケット基体13とからなる基体側一体物12が鋳造されている。
左,右のブラケット19,20は、図1に示す作業装置4のアーム7に、連結ピン8を用いて回動可能に連結されるものである。このため、左,右のブラケット19,20は、左,右方向で一定の間隔をもって対面し、図1に示す連結ピン8が挿通されるピン挿通孔19A,20Aと、連結ピン9が挿通されるピン挿通孔19B,20Bとがそれぞれ穿設されている。
このように、本実施の形態では、底板14と左,右の側板15,16とからなるバケット基体13と、左,右一対のブラケット19,20とを、鋳造手段を用いて一体成形することにより、基体側一体物12が鋳造されている。この場合、バケット基体13は、後述の前底板21が接合されていない底板14と、後述の左前側板22が接合されていない左側板15と、後述の右前側板23が接合されていない右側板16とにより構成されている。
これにより、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とからなる基体側一体物12の外形形状を小さく抑えることができる。従って、例えばシェルモールド鋳造法を用いて基体側一体物12を形成する場合に、前底板21、左,右の前側板22,23を含む掘削バケット全体を鋳造する場合に比較して、鋳造設備の規模を縮小することができる構成となっている。
次に、21は底板14の下前端14Aに設けられた前底板(カッティングエッジ)を示し、この前底板21は、左,右方向に延びる長方形の平板状に形成されている。前底板21は、バケット基体13の左,右の側板15,16間に位置し、底板14の下前端14Aに設けられた底板側接合端14Fに溶接手段を用いて接合されるものである。
ここで、前底板21は、例えば鋼板材を用いて形成され、前底板21の厚さ寸法は、バケット基体13を構成する底板14の下前端14Aの厚さ寸法よりも大きく設定されている。また、前底板21は、底板14の底板側接合端14Fに溶接される前段階で、予め焼入れ処理が施されることにより、その硬度が高められている。これにより、前底板21は、掘削バケット11を用いて地面等を掘削するときに、地面から受ける衝撃に対し充分な剛性を有するものとなっている。
22は左側板15の前端15Aに設けられた左前側板(左サイドエッジ)を示している。左前側板22は、例えば鋼板材を用いて上,下方向に延びる略長方形の平板状に形成され、その下端側には、後述の左サイドカッタ25を取付けるための3個のボルト挿通孔22Aが穿設されている。そして、左前側板22は、左側板15の左側板側接合端15Bと、前底板21の上面とに溶接手段を用いて接合されるものである。
23は右側板16の前端16Aに設けられた右前側板(右サイドエッジ)を示している。右前側板23は、例えば鋼板材を用いて上,下方向に延びる略長方形の平板状に形成され、その下端側には、後述の右サイドカッタ26を取付けるための3個のボルト挿通孔23Aが穿設されている。そして、右前側板23は、右側板16の右側板側接合端16Bと、前底板21の上面とに溶接手段を用いて接合されるものである。
ここで、左前側板22および右前側板23の厚さ寸法は、バケット基体13を構成する左側板15および右側板16の厚さ寸法よりも大きく設定されている。また、左前側板22および右前側板23は、左側板15の左側板側接合端15Bおよび右側板16の右側板側接合端16Bに溶接される前段階で、予め焼入れ処理が施されることにより、その硬度が高められている。これにより、左前側板22および右前側板23は、掘削バケット11を用いて地面等を掘削するときに、地面から受ける衝撃に対し充分な剛性を有するものとなっている。
24は前底板21の前端部に左,右方向に並んで設けられた複数(例えば3個)の掘削爪を示している。これら各掘削爪24は、前底板21の前端部に溶接等の手段を用いて固着されたアダプタ24Aと、このアダプタ24Aにピン等(図示せず)を用いて着脱可能に取付けられた爪部材24Bとにより構成されている。そして、各掘削爪24は、前底板21から前方に突出し、当該前底板21に先立って固い地面等を掘削するものである。
25は左前側板22の下端側に設けられた左サイドカッタを示している。左サイドカッタ25は、鋼板材等を用いて多角形の板状に形成され、左前側板22の各ボルト挿通孔22Aに対応する3個のボルト挿通孔25Aが穿設されている。そして、左前側板22の各ボルト挿通孔22Aと左サイドカッタ25の各ボルト挿通孔25Aにボルト27を挿通し、該ボルト27にナット28を螺合することにより、左サイドカッタ25は、左前側板22の下端側に着脱可能に取付けられている。
26は右前側板23の下端側に設けられた右サイドカッタを示している。右サイドカッタ26は、鋼板材等を用いて多角形の板状に形成され、右前側板23の各ボルト挿通孔23Aに対応する3個のボルト挿通孔26Aが穿設されている。そして、右前側板23の各ボルト挿通孔23Aと右サイドカッタ26の各ボルト挿通孔26Aにボルト27を挿通し、該ボルト27にナット28を螺合することにより、右サイドカッタ26は、右前側板23の下端側に着脱可能に取付けられている。
これら左サイドカッタ25および右サイドカッタ26は、左前側板22および右前側板23から前方に突出し、左前側板22および右前側板23に先立って固い地面等を掘削するものである。
本実施の形態による掘削バケット11は上述の如き構成を有するもので、次に、掘削バケット11を製造する手順について説明する。
まず、図3に示すように、底板14と左,右の側板15,16とからなるバケット基体13と、左,右のブラケット19,20とを、シェルモールド鋳造法を用いて一体成形する。ここで、シェルモールド鋳造法は、フェノール系樹脂の粘結剤を添加した鋳物砂を加熱した金型にかけることにより、熱硬化したシェル型の鋳型を製作し、この鋳型を用いて鋳物を形成するものである。
これにより、底板14と左,右の側板15,16とからなるバケット基体13と、左,右のブラケット19,20とが一体物となった基体側一体物12を鋳造することができる。この結果、泥掃け性に関わるバケット基体13の形状を、鋳造によって自由に形成することができ、掘削バケット11の泥掃け性を高めることができる。
一方、基体側一体物12には、前底板21、左前側板22、右前側板23が含まれていないので、基体側一体物12の外形形状を小さく抑えることができ、鋳造設備の規模を縮小することができる。この結果、前底板21、左前側板22、右前側板23を含む掘削バケット11全体を鋳造する場合に比較して、鋳造設備の規模を縮小することができる。この結果、製造コストを低減しつつ泥掃け性のよい掘削バケット11を製造することができる。
次に、図3および図4に示すように、基体側一体物12を構成する底板14の底板側接合端14Fに、予め焼入れ処理を施すことにより硬度を高めた前底板21を溶接する。この場合、図6に示すように、底板側接合端14Fには、底板14の外面14Eに向けて傾斜する底板側開先14Gが設けられている。この結果、底板側開先14Gと前底板21との接合部に良好な溶接ビード29を形成することができ、基体側一体物12と前底板21との接合強度を高めることができる。
一方、基体側一体物12を構成する左側板15の左側板側接合端15Bに、予め焼入れ処理を施すことにより硬度を高めた左前側板22を溶接すると共に、基体側一体物12を構成する右側板16の右側板側接合端16Bに、予め焼入れ処理を施すことにより硬度を高めた右前側板23を溶接する。この場合、図7に示すように、左側板側接合端15Bには、左側板15の外面15Dに向けて傾斜する左側板側開先15Cが設けられている。この結果、左側板側開先15Cと左前側板22との接合部に良好な溶接ビード30を形成することができる。また、右側板側接合端16Bにも、左側板側開先15Cと同様な右側板側開先(図示せず)が設けられ、右側板側接合端16Bと右前側板23との接合部に良好な溶接ビード30を形成することができる。従って、基体側一体物12と左前側板22との接合強度を高めると共に、基体側一体物12と右前側板23との接合強度を高めることができる。
このようにして、図4に示すように、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とが鋳造により一体成形された基体側一体物12に対し、鋼板材を用いてそれぞれ個別に形成された前底板21、左前側板22、右前側板23を、溶接手段を用いて接合することができる。
次に、図5に示すように、前底板21の前端部に掘削爪24のアダプタ24Aを溶接等の手段を用いて固着し、このアダプタ24Aに爪部材24Bを取付ける。一方、左前側板22の下端側に、ボルト27およびナット28を用いて左サイドカッタ25を取付けると共に、右前側板23の下端側に、ボルト27およびナット28を用いて右サイドカッタ26を取付ける。
これにより、図2に示すように、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とからなる基体側一体物12に対し、前底板21、左前側板22、右前側板23が溶接等の手段によって接合され、前底板21の前端部に複数の掘削爪24が取付けられると共に、左,右の前側板22,23の下端側に左,右のサイドカッタ25,26が取付けられた掘削バケット11を製造することができる。
かくして、本実施の形態によれば、底板14および左,右の側板15,16からなるバケット基体13と、底板14の上前端14B側に設けられた一対のブラケット19,20とを鋳造により基体側一体物12として形成し、この基体側一体物12に対し、それぞれ個別に形成された前底板21と左,右の前側板22,23とを溶接によって接合することにより、掘削バケット11を製造することができる。これにより、バケット基体13の形状を鋳造によって自由に形成することができるので、掘削バケット11の泥掃け性を高めることができる。
また、バケット基体13と一対のブラケット19,20とによって構成される基体側一体物12を鋳造することにより、前底板21と左,右の前側板22,23とを含む掘削バケット11全体を鋳造する場合に比較して、鋳造設備の規模を縮小することができる。この結果、製造コストを低減しつつ泥掃け性のよい掘削バケット11を製造することができる。
一方、基体側一体物12に接合する前段階で、前底板21および左,右の前側板22,23に対して予め焼入れ処理を施す構成としている。これにより、硬度が高められた前底板21および左,右の前側板を基体側一体物12に接合することができ、掘削バケット11の耐久性を高めることができる。しかも、外形形状が小さな前底板21と左,右の前側板22,23とに焼入れ処理を施すことにより、掘削バケット11を製造した後に、この掘削バケット11の前底板21と左,右の前側板22,23とに対して焼入れ処理を施す場合に比較して、焼入れ作業の無駄を省くことができ、その作業性を高めることができる。
しかも、基体側一体物12の底板14には、前底板21に接合される底板側接合端14Fに底板側開先14Gを設け、基体側一体物12の左側板15には、左前側板22に接合される左側板側接合端15Bに左側板側開先15Cを設け、基体側一体物12の右側板16には、右前側板23に接合される右側板側接合端16Bに、左側板側開先15Cと同様な右側板側開先を設ける構成としている。
これにより、基体側一体物12と前底板21との間を溶接によって接合するときに、底板側接合端14Fに設けた底板側開先14Gと前底板21との間に良好な溶接ビード29を形成することができ、基体側一体物12と前底板21との接合強度を高めることができる。一方、基体側一体物12と左,右の前側板22,23との間を溶接によって接合するときに、左側板側接合端15Bに設けた左側板側開先15Cと左前側板22との間、右側板側接合端16Bに設けた右側板側開先と右前側板23との間に良好な溶接ビード30を形成することができ、基体側一体物12と左,右の前側板22,23との接合強度を高めることができる。
この場合、基体側一体物12の底板側接合端14F、左側板側接合端15B、右側板側接合端16Bには、それぞれ鋳造時に鋳型によって底板側開先14G、左側板側開先15C、右側板側開先を形成しておくことができる。これにより、底板側接合端14F、左側板側接合端15B、右側板側接合端16Bに対し、底板側開先14G、左側板側開先15C、右側板側開先を後加工する必要がなくなり、基体側一体物12の製造コストを低減することができる。
次に、図8ないし図13は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、鋳物を用いて形成された前底板と、鋼板材を用いて形成された左,右の前側板とを基体側一体物に接合する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
31は第2の実施の形態による掘削バケットを示し、この掘削バケット31は、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とが鋳造手段を用いて一体成形された基体側一体物12と、鋳物を用いて形成された後述の前底板32と、鋼板材を用いて形成された後述の左前側板34と、右前側板35とにより構成されている。
32はバケット基体13を構成する底板14の下前端14Aに設けられた前底板を示し、前底板32は、第1の実施の形態による前底板21に代えて第2の実施の形態に用いられるものである。ここで、前底板32は、左,右方向に延びる略長方形状をなし、底板14の下前端14Aに溶接によって接合されるエッジ部32Aと、該エッジ部32Aの前端部に左,右方向に並んで配置されエッジ部32Aから前方に突出する楔状の3個の爪部32Bとからなり、鋳鉄または鋳鋼を用いて一体成形されている。
この場合、前底板32のエッジ部32Aの厚さ寸法は、底板14の下前端14Aの厚さ寸法と等しく設定されている。また、エッジ部32Aの左,右方向の両端側は、それぞれ上向きに屈曲した左屈曲部32C,右屈曲部32Dとなり、左屈曲部32Cの上端部は後述する左前側板34の下端部に溶接され、右屈曲部32Dの上端部は後述する右前側板35の下端部に溶接される構成となっている。
ここで、エッジ部32Aのうち底板14の下前端14Aに接合される端縁部は、前底板側接合端32Eとなり、図12に示すように、前底板側接合端32Eには前底板側開先32Fが形成されている。この前底板側開先32Fは、前底板側接合端32Eの端縁部から前底板32の外面32Gに向けて傾斜し、前底板側開先32Fの開先角度θ3は、例えば45°に設定されている。これにより、底板14の底板側接合端14Fに形成された底板側開先14Gと、前底板32の前底板側接合端32Eに形成された前底板側開先32Fとの間にV形開先を形成することができる。従って、このV形開先の位置で溶接を行うことにより、底板14の底板側接合端14Fと前底板32の前底板側接合端32Eとが板厚の全域に亘って溶込み、底板側開先14Gと前底板側接合端32Eとの接合部に良好な溶接ビード33を形成することができ、基体側一体物12と前底板21との接合強度を高めることができる構成となっている。
この場合、前底板側開先32Fは、前底板側接合端32Eに対して切削加工等の後加工を施したものではなく、前底板32の鋳造時に形成されるものである。また、前底板32は、底板14の底板側接合端14Fに溶接される前段階で、予め焼入れ処理が施されることにより、その硬度が高められている。
34はバケット基体13を構成する左側板15の前端15Aに設けられた左前側板を示している。左前側板34は、鋼板材を用いて上,下方向に延びる略長方形の平板状に形成され、その下端側には3個のボルト挿通孔34Aが穿設されている。ここで、左前側板34の厚さ寸法は、左側板15の厚さ寸法よりも大きく設定され、左前側板34は、左側板15の左側板側接合端15Bと、前底板32の左屈曲部32Cの上端部とに溶接手段を用いて接合されるものである。
35はバケット基体13を構成する右側板16の前端16Aに設けられた右前側板を示している。右前側板35は、鋼板材を用いて上,下方向に延びる略長方形の平板状に形成され、その下端側には3個のボルト挿通孔35Aが穿設されている。ここで、右前側板35の厚さ寸法は、右側板16の厚さ寸法よりも大きく設定され、右前側板35は、右側板16の右側板側接合端16Bと、前底板32の右屈曲部32Dの上端部とに溶接手段を用いて接合されるものである。
この場合、図13に示すように、左側板側接合端15Bには、左側板15の外面15Dに向けて傾斜する左側板側開先15Cが設けられているので、左側板側開先15Cと左前側板34との接合部に良好な溶接ビード36を形成することができる。また、右側板側接合端16Bにも、左側板側開先15Cと同様な右側板側開先が設けられているので、右側板側開先と右前側板35との接合部に良好な溶接ビード36を形成することができる。
また、左前側板34および右前側板35は、左側板15の左側板側接合端15Bおよび右側板16の右側板側接合端16Bに溶接される前段階で、予め焼入れ処理が施されることにより、その硬度が高められている。
そして、左前側板34の各ボルト挿通孔34Aと左サイドカッタ25の各ボルト挿通孔25Aにボルト27を挿通し、該ボルト27にナット28を螺合することにより、左前側板34の下端側に、左サイドカッタ25が着脱可能に取付けられている。一方、右前側板35の各ボルト挿通孔35Aと右サイドカッタ26の各ボルト挿通孔26Aにボルト27を挿通し、該ボルト27にナット28を螺合することにより、右前側板35の下端側に、右サイドカッタ26が着脱可能に取付けられている。
第2の実施の形態による掘削バケット31は上述の如き構成を有するもので、底板14と左,右の側板15,16とからなるバケット基体13と、左,右のブラケット19,20とが鋳造手段を用いて一体成形された基体側一体物12に対し、鋳物により形成された前底板32と、鋼板材により形成された左前側板34および右前側板35とを溶接手段を用いて接合することにより、掘削バケット31を製造することができる。
この場合、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、泥掃け性に関わるバケット基体13の形状を、鋳造によって自由に形成することができ、掘削バケット31の泥掃け性を高めることができる。一方、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とからなる基体側一体物12には、前底板32、左前側板34、右前側板35が含まれないので、基体側一体物12の外形形状を小さく抑えることができ、鋳造設備の規模を縮小することができるので、製造コストを低減しつつ泥掃け性のよい掘削バケット31を製造することができる。
しかも、第2の実施の形態によれば、前底板32の前底板側接合端32Eには、その鋳造時に前底板側開先32Fが形成されるので、底板14の底板側接合端14Fに形成された底板側開先14Gと、前底板32の前底板側接合端32Eに形成された前底板側開先32Fとの間にV形開先を形成することができる。従って、このV形開先の位置で溶接を行うことにより、底板14の底板側接合端14Fと前底板32の前底板側接合端32Eとの間に良好な溶接ビード33を形成することができ、底板14と前底板32との接合強度を高めることができる。
次に、図14ないし図18は本発明の第3の実施の形態を示し、第3の実施の形態の特徴は、鋼板材を用いて形成された前底板と、鋳物を用いて形成された左,右の前側板とを基体側一体物に接合する構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
41は第3の実施の形態による掘削バケットを示し、この掘削バケット41は、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とからなる基体側一体物12と、鋼板材を用いて形成された後述の前底板42と、鋳物を用いて形成された後述の左前側板44および右前側板46とにより構成されている。
42はバケット基体13を構成する底板14の下前端14Aに設けられた前底板を示している。この前底板42は、鋼板材を用いて左,右方向に延びる長方形の平板状に形成され、前底板42の厚さ寸法は、底板14の下前端14Aの厚さ寸法よりも大きく設定されている。
また、前底板42は、底板14の底板側接合端14Fに溶接される前段階で、予め焼入れ処理が施されることにより、その硬度が高められている。そして、前底板42は、底板14の底板側接合端14Fに溶接手段を用いて接合されている。この場合、図17に示すように、底板14の底板側接合端14Fには底板側開先14Gが設けられているので、底板側開先14Gと前底板42との接合部に良好な溶接ビード43が形成され、基体側一体物12と前底板42との接合強度を高めることができる構成となっている。
一方、前底板42の前端部には、各掘削爪24のアダプタ24Aが溶接等の手段を用いて固着され、これらアダプタ24Aにピン等(図示せず)を用いて爪部材24Bが着脱可能に取付けられている。
44はバケット基体13を構成する左側板15の前端15Aに設けられた左前側板を示している。この左前側板44は、上,下方向に延びる平板状をなし左側板15の左側板側接合端15Bに溶接によって接合される左エッジ部44Aと、該左エッジ部44Aの下端側に配置され左エッジ部44Aから前方に突出する四角形状の左カッタ部44Bとからなり、鋳鉄または鋳鋼を用いて一体成形されている。
この場合、左前側板44の左エッジ部44Aの厚さ寸法は、左側板15の厚さ寸法と等しく設定されている。左エッジ部44Aのうち左側板15の前端15Aに接合される端縁部は、左前側板側接合端44Cとなり、図18に示すように、左前側板側接合端44Cには左前側板側開先44Dが形成されている。この左前側板側開先44Dは、左前側板側接合端44Cの端縁部から左前側板44の外面44Eに向けて傾斜し、左前側板側開先44Dの開先角度θ4は、例えば45°に設定されている。これにより、左側板15の左側板側接合端15Bに形成された左側板側開先15Cと、左前側板44の左前側板側接合端44Cに形成された左前側板側開先44Dとの間にV形開先を形成することができ、左側板側接合端15Bと左前側板側接合端44Cとの接合部に良好な溶接ビード45を形成することができ、基体側一体物12と左前側板44との接合強度を高めることができる構成となっている。
46はバケット基体13を構成する右側板16の前端16Aに設けられた右前側板を示している。この右前側板46は、左前側板44と同様に、右エッジ部46Aと右カッタ部46Bとからなり、鋳鉄または鋳鋼を用いて一体成形されている。
この場合、右前側板46の右エッジ部46Aの厚さ寸法は、右側板16の厚さ寸法と等しく設定されている。右エッジ部46Aのうち右側板16の前端16Aに接合される端縁部は、右前側板側接合端46Cとなり、この右前側板側接合端46Cにも、左前側板側接合端44Cと同様な右前側板側開先が形成されている。これにより、右側板16の右側板側接合端16Bに形成された右側板側開先と、右前側板46の右前側板側接合端46Cに形成された右前側板側開先との間にV形開先を形成することができ、右側板側接合端16Bと右前側板側接合端46Cとの接合部に良好な溶接ビード45を形成することができ、基体側一体物12と右前側板46との接合強度を高めることができる構成となっている。
第3の実施の形態による掘削バケット41は上述の如き構成を有するもので、第1の実施の形態と同様に、泥掃け性に関わるバケット基体13の形状を、鋳造によって自由に形成することができ、掘削バケット41の泥掃け性を高めることができる。一方、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とからなる基体側一体物12には、前底板42、左前側板44、右前側板46が含まれないので、基体側一体物12の外形形状を小さく抑えて鋳造設備の規模を縮小することができ、製造コストを低減しつつ泥掃け性のよい掘削バケット41を製造することができる。
しかも、第3の実施の形態によれば、左前側板44の左前側板側接合端44Cに形成された左前側板側開先44Dと左側板15の左側板側接合端15Bに形成された左側板側開先15Cとの間にV形開先を形成することができ、右前側板46の右前側板側接合端46Cに形成された右前側板側開先と右側板16の右側板側接合端16Bに形成された右側板側開先との間にV形開先を形成することができる。従って、このV形開先の位置で溶接を行うことにより、左側板15と左前側板44との接合強度、右側板16と右前側板46との接合強度を高めることができる。
次に、図19ないし図22は本発明の第4の実施の形態を示し、第4の実施の形態の特徴は、鋳物を用いて形成された前底板と、鋳物を用いて形成された左,右の前側板とを基体側一体物に接合する構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
51は第4の実施の形態による掘削バケットを示し、この掘削バケット51は、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とからなる基体側一体物12と、鋳物を用いて形成された後述の前底板52と、鋳物を用いて形成された後述の左前側板54および右前側板56とにより構成されている。
52はバケット基体13を構成する底板14の下前端14Aに設けられた前底板を示している。この前底板52は、左,右方向に延びる略長方形状をなし、底板14の下前端14Aに溶接によって接合されるエッジ部52Aと、該エッジ部52Aの前端部に左,右方向に並んで突設された3個の爪部52Bとからなり、鋳鉄または鋳鋼を用いて一体成形されている。この場合、前底板52のエッジ部52Aの厚さ寸法は、底板14の下前端14Aの厚さ寸法と等しく設定されている。また、エッジ部52Aの左,右方向の両端側は、それぞれ上向きに屈曲した左屈曲部52C,右屈曲部52Dとなっている。
ここで、エッジ部52Aのうち底板14の下前端14Aに接合される端縁部は、前底板側接合端52Eとなり、図21に示すように、前底板側接合端52Eには前底板側開先52Fが形成されている。この前底板側開先52Fは、前底板側接合端52Eの端縁部から前底板52の外面52Gに向けて傾斜し、前底板側開先52Fの開先角度θ5は、例えば45°に設定されている。これにより、底板14の底板側接合端14Fに形成された底板側開先14Gと、前底板52の前底板側接合端52Eに形成された前底板側開先52Fとの間にV形開先を形成することができる。従って、このV形開先の位置で溶接を行うことにより、底板14の底板側接合端14Fと前底板52の前底板側接合端52Eとの接合部に良好な溶接ビード53を形成することができる構成となっている。また、前底板52は、底板14の底板側接合端14Fに溶接される前段階で、予め焼入れ処理が施されることにより、その硬度が高められている。
54はバケット基体13を構成する左側板15の前端15Aに設けられた左前側板を示している。この左前側板54は、左側板15の左側板側接合端15Bに溶接によって接合される左エッジ部54Aと、該左エッジ部54Aの下端側に設けられた左カッタ部54Bとからなり、鋳鉄または鋳鋼を用いて一体成形されている。この場合、左前側板54の左エッジ部54Aの厚さ寸法は、左側板15の厚さ寸法と等しく設定されている。左エッジ部54Aのうち左側板15の前端15Aに接合される端縁部は、左前側板側接合端54Cとなり、図22に示すように、左前側板側接合端54Cには左前側板側開先54Dが形成されている。この左前側板側開先54Dは、左前側板側接合端54Cの端縁部から左前側板54の外面54Eに向けて傾斜し、左前側板側開先54Dの開先角度θ6は、例えば45°に設定されている。これにより、左側板15の左側板側接合端15Bに形成された左側板側開先15Cと、左前側板54の左前側板側接合端54Cに形成された左前側板側開先54Dとの間にV形開先を形成することができ、左側板側開先15Cと左前側板側開先44Dとの接合部に良好な溶接ビード55を形成することができる構成となっている。
56はバケット基体13を構成する右側板16の前端16Aに設けられた右前側板を示している。この右前側板56は、左前側板54と同様に、右エッジ部56Aと右カッタ部56Bとからなり、鋳鉄または鋳鋼を用いて一体成形されている。
この場合、右前側板56の右エッジ部56Aの厚さ寸法は、右側板16の厚さ寸法と等しく設定されている。右エッジ部56Aのうち右側板16の前端16Aに接合される端縁部は、右前側板側接合端56Cとなり、この右前側板側接合端56Cにも、左前側板側開先54Dと同様な右前側板側開先が形成されている。これにより、右側板16の右側板側接合端16Bに形成された右側板側開先と、右前側板56の右前側板側接合端56Cに形成された右前側板側開先との間にV形開先を形成することができ、右側板側接合端16Bと右前側板側接合端56Cとの接合部に良好な溶接ビード55を形成することができる構成となっている。
第4の実施の形態による掘削バケット51は上述の如き構成を有するもので、第1の実施の形態と同様に、泥掃け性に関わるバケット基体13の形状を、鋳造によって自由に形成することができ、掘削バケット51の泥掃け性を高めることができる。一方、バケット基体13と左,右のブラケット19,20とからなる基体側一体物12には、前底板52、左前側板54、右前側板56が含まれないので、基体側一体物12の外形形状を小さく抑えて鋳造設備の規模を縮小することができ、製造コストを低減しつつ泥掃け性のよい掘削バケット51を製造することができる。
しかも、第4の実施の形態によれば、底板14の底板側接合端14Fに形成された底板側開先14Gと、前底板52の前底板側接合端52Eに形成された前底板側開先52Fとの間にV形開先を形成することができる。従って、このV形開先の位置で溶接を行うことにより、底板14の底板側接合端14Fと前底板52の前底板側接合端52Eとの間に良好な溶接ビード53を形成することができ、底板14と前底板52との接合強度を高めることができる。
また、第4の実施の形態によれば、左側板15の左側板側接合端15Bに形成された左側板側開先15Cと、左前側板54の左前側板側接合端54Cに形成された左前側板側開先54Dとの間にV形開先を形成することができ、右側板16の右側板側接合端16Bに形成された右側板側開先と、右前側板56の右前側板側接合端56Cに形成された右前側板側開先との間にV形開先を形成することができる。従って、このV形開先の位置で溶接を行うことにより、左側板15と左前側板54との接合強度、右側板16と右前側板56との接合強度を高めることができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、基体側一体物12を構成するバケット基体13の底板14、左側板15、右側板16に対し、前底板21、左前側板22、右前側板23を別々に接合した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図23に示す変形例のように、前底板21と、左前側板22と、右前側板23とを予め一体的に組立てた前板組立体57を形成し、この前板組立体57を、基体側一体物12に対して溶接手段を用いて接合する構成としてもよい。このことは、第2,第3,第4の実施の形態についても同様である。