JP2014009431A - 親水性繊維と吸水性樹脂からなる複合物 - Google Patents

親水性繊維と吸水性樹脂からなる複合物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、吸水性樹脂の濡れ性を改善し、粒子ごとのオーダーでゲルブロッキングを防止することで、吸水速度、吸収後のドライ感に優れる吸収体を構成するための複合物、該複合物を使用した吸水シート、該吸水シートを使用した吸収性物品、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】平均粒子径が10〜200μmの親水性繊維と平均粒子径が50〜500μmの吸水性樹脂から構成され、親水性繊維と吸水性樹脂が直接接着していることを特徴とする複合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、親水性繊維と吸水性樹脂から構成される複合物、吸水シート、吸収性物品、及び、その製造方法に関する。
近年、大量の水を吸収してゲル化する吸水性樹脂が開発され、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料分野を中心に利用されている。吸水性樹脂は、通常は微粉末であるため取り扱い性が悪いという欠点があり、紙おむつ等の衛生材料分野においては、パルプ等と混合し、袋に詰めて使用されている。パルプは吸水性樹脂を担持する役割と、吸水性樹脂同士が接触して通液を妨げるゲルブロッキングを防止する役割を果たす。しかしながら、吸水性樹脂とパルプは比重が異なるため分離しやすく、内部で偏りが生じ、ゲルブロッキングを抑えられず、吸水性能を一定に発揮しがたいという問題点がある。また、必要パルプ量が多く厚みが厚くなるという問題がある。更には、これらの方法は、吸水性樹脂を固定化するために比較的長い繊維のパルプを使用する必要があり、粉砕条件が難しく生産性に劣る、また微粉砕されたパルプが工程でロスになり材料の使用効率が悪いという問題がある。
このような問題を解決するために、粉末の吸水性樹脂をシートに固定化しシート状に成形した吸収体を使用することが検討されており、シート状に成形するための方法として、以下の方法が知られている。例えば、引用文献1では吸水性樹脂を固定してシートとするために熱溶融性の接着剤を用いて吸水性樹脂を結合させている。引用文献2においては、粉砕パルプと熱可塑性繊維の混合物に熱処理を加えることでシート状に成形し、そこへ吸水性樹脂の粉末固体を担持させている。引用文献3には、吸水性樹脂中の粘着成分を利用し、含水したパルプと吸水性樹脂を乾燥させながら固着する方法が開示されている。引用文献4には、吸水性樹脂とパルプ等の繊維状材料とを均一に混合し、水を用いてパルプ同士の水素結合を形成させ、シート状に形成した例が開示されている。引用文献5では、重合進行中の吸収性ポリマー粒子を繊維質基材に付着させ、繊維質基材上で吸水性樹脂の重合を行っている。引用文献6には、親水性の基材へ吸水性樹脂を直接結合させることで、基材から吸水性樹脂への水分の通路をつくり、吸水性樹脂自体の高い吸収倍率を発揮できる吸水シートが開示されている。
特許第3196933号公報 特開昭53−4789号公報 特開昭56−60556号公報 特表2003−508647号公報 特開2003−11118号公報 国際公開第2006/121148号
しかしながら、これらのシート構造では、吸水性樹脂の膨潤空間が十分に確保されておらずゲルブロッキングを防ぎきれない、吸水性樹脂の濡れ性が悪い等の理由により、吸水速度、ドライ感の点で満足のいくものは得られていなかった。
本発明は、吸水性樹脂の濡れ性を改善し、粒子ごとのオーダーでゲルブロッキングを防止することで、吸水速度、吸収後のドライ感に優れる吸収体を構成するための複合物、該複合物を使用した吸水シート、該吸水シートを使用した吸収性物品、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、特定の大きさの親水性繊維と特定の大きさの吸水性樹脂が直接接着された複合物は、どのような形態で使用されても粒子同士のゲルブロッキングが発生せず、また高い濡れ性をしめすため、吸水速度とドライ感に優れることを見出した。また、親水性繊維と吸水性樹脂と水を混合した状態から脱水乾燥する工程を含んで製造することで、理想的な複合物が形成されることを見出した。
また、複合物を接着剤で基材に接着する、又は、複合物を熱可塑性繊維と混合して融着することで、複合物の特性を最大限に活かした薄型の吸水シートを形成できることを見出した。
更には、該吸水シートに補助部材をつけるだけでそのまま吸収性物品として使用することができ、使用部材が少なく省資源な吸収性物品を形成できることを見出した。また、該吸収性物品は、吸水シート製造工程と同一ラインで製造することができるため、高い生産性で製造できることを見出した。
すなわち本発明は以下のような複合物、吸水シート、吸収性物品、及びそれらの製造方法である。
[1]平均粒子径が10〜200μmの親水性繊維と平均粒子径が50〜500μmの吸水性樹脂から構成され、親水性繊維と吸水性樹脂が直接接着していることを特徴とする複合物。
[2]親水性繊維がセルロース系繊維であることを特徴とする[1]に記載の複合物。
[3]親水性繊維と吸水性樹脂の質量比が、1:5〜2:1であることを特徴とする[1]、 又は[2]に記載の複合物。
[4]吸水性樹脂が酸基を有しており、
吸水性樹脂が酸基と反応しうる官能基を有している、又は、吸水性樹脂あるいは複合物が酸基と反応しうる官能基を2つ以上有する化合物を含有しており、
該酸基が、酸基と反応しうる官能基により架橋していることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の複合物。
[5]見かけの嵩比重と、圧縮後嵩比重の比が1:2〜1:10であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の複合物。
[6]吸水性樹脂被覆率が80%以上であることを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の複合物。
[7] 上記[1]から[6]のいずれかに記載の複合物が、基材へ接着剤にて接着されていることを特徴とする吸水シート。
[8] 上記[1]から[6]のいずれかに記載の複合物が、熱可塑性繊維の熱融着によってシート化されていることを特徴とする吸水シート。
[9]上記[7]、又は、[8]に記載の吸水シートと補助部材から構成されることを特徴とする吸収性物品。
[10] 上記[7]、又は、[8]に記載の吸水シートと伸縮性不織布から構成されることを特徴とする吸収性物品。
[11]親水性繊維と吸水性樹脂と水の混合物を、脱水乾燥させる工程を含む、[1]から[6]のいずれかに記載の複合物の製造方法。
[12]親水性繊維と吸水性樹脂を混合し、これに水を加える工程、又は、親水性繊維と水を混合し、これに吸水性樹脂を加える工程を含む、[11]に記載の複合物の製造方法。
[13]脱水乾燥させる工程以前の親水性繊維と吸水性樹脂と水の混合物中の、吸水性樹脂と水の質量比が20:1〜1:5であることを特徴とする[11]、又は、[12]に記載の複合物の製造方法。
[14]熱可塑性繊維の熱融着が熱風にてなされることを特徴とする[8]に記載の吸水シートの製造方法。
[15]吸水シートの製造工程と、補助部材の装着工程が同一ラインで行われることを特徴とする[9]に記載の体液吸収物品の製造方法。
本発明によれば、吸水速度、吸収後のドライ感に優れる複合物を提供できる。該複合物はどのような使用方法をしてもゲルブロッキングが発生することはなく、高い濡れ性を示すために、衛生材料等に好適に使用できる。
また、該複合物はゲルブロッキング防止のための衛生材料が不要であるため、使用部材を減らすことができ、衛生材料等の製造プロセスの簡略化、省資源化にも貢献することもできる。
また、本発明の吸水シートは、薄型でありながら高い吸水速度を示すため漏れのリスクを低減できる。
伸縮性不織布の全体図 伸縮性不織布の製造工程を示す図 ダイ開口の拡大図 複合繊維の断面図 伸縮性複合繊維の平面図 複合物の光学顕微鏡写真
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔1.複合物〕
本発明の複合物は、少なくとも平均粒子径が10−200μmの親水性繊維と、平均粒子径が50−500μmの吸水性樹脂から構成されており、両者は直接接着している。
親水性繊維は液体を一時的に捕獲する速度は速いが、圧力が加わると液体を離してしまう。一方、吸水性樹脂は、吸水速度は遅いが液体を完全に取り込み、圧力がかかっても液体を保持することができる。
本発明の複合物は、親水性繊維が捕獲した液体を、速やかに吸水性樹脂へ送り込むことができる構造であるため、吸水速度が速く、ドライ感に優れると考えられる。
本発明の複合物において、親水性繊維は吸水性樹脂同士の接触を防ぎ、吸水性樹脂の膨潤を阻害するゲルブロッキングの形成を防止する。また、親水性繊維が通水路となって吸水性樹脂へ液体を輸送することで、吸水速度を高めることができる。
上記の機構で吸水速度を高めるためには、親水性繊維と吸水性樹脂が接着剤などを介さず直接接着していることが必須である。
接着剤を使用して接着した場合、接着剤が親水性繊維から吸水性樹脂への液体の輸送を妨げるため、吸水速度を高めるという効果が得られない。直接接着している形態としては、特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂と親水性繊維との水素結合や化学結合、吸水性樹脂の表面や内部に親水性繊維が取り込まれるような形態であることが好ましい。親水性繊維から吸水性樹脂への液体の輸送により吸水速度を向上させるという観点からは、吸水性樹脂の表面や内部に親水性繊維が取り込まれている形態で接着していることが最も好ましい。
接着している形態は光学顕微鏡等で観察することにより、確認することができる。また、複合物を接着剤が溶解するような有機溶剤で洗浄した際に、親水性繊維と吸水性樹脂の脱離が起こるか否かによって直接接着であるか否かを確認することができる。親水性繊維と吸水性樹脂が直接接着している場合は、洗浄により、親水性繊維と吸水性樹脂の脱離が起こらない。
吸水性樹脂の表面や内部に親水性繊維が取り込まれる形態は、例えば、吸水性樹脂と親水性繊維を水の存在下で脱水乾燥することで実現できる。親水性繊維を通液路に用いるというコンセプトは古くからあるが、吸水速度の点で大きな効果を得られているものはなかった。
本発明の複合物は親水性繊維の平均粒子径が10−200μmであることにより、吸水性樹脂同士のブロッキングを防止し、液体を一次捕獲し吸水性樹脂へ液体を送り込む層として十分な厚みを維持できかつ、過度な繊維の絡み合いが抑えられるため、吸水速度が特に向上するいった効果を奏する。本発明に用いる親水性繊維は平均粒子径が10−200μmであることが必須であり、20−120μmであることが好ましく、30−80μmであることがより好ましく、35−55μmであることが更に好ましく、40−50μmであることが最も好ましい。
親水性繊維の平均粒子径が10μm以上で、吸水性樹脂同士の接触を防ぐことができ、また、複合物と液体が接触した際に、吸水性樹脂表面に液体が直接接触することを防ぐことができる。一方、親水性繊維の平均粒子径が200μm以下で、親水性繊維同士の絡み合い凝集による通液性の低下、及び、取り扱い性の悪化を防ぐことができる。
本発明で用いる親水性繊維の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、測定することができる。測定する際は、分散媒体として水に分散させた親水性繊維を超音波で1分間処理し、25℃における体積基準のメジアン径を測定する。本発明で用いる親水性繊維は、上記の方法により平均粒子径が測定できれば形状は限定されない。すなわち、親水性繊維は粒子状である必要はなく、棒状、鱗片状、針状、ひも状等の形状であっても、上記の方法で測定した平均粒子径が10−200μmであれば用いることができる。
複合物を製造するプロセス中において親水性繊維の平均粒子径を調整することもできるが、あらかじめ平均粒子径の調整された親水性繊維を使用することが好ましい。複合物中の親水性繊維の平均粒子径については、適当な方法により親水性繊維と吸水性樹脂を分離することで測定することができる。例えば、アクリル酸系の吸水性樹脂であれば、吸水状態で紫外線をあてることで吸水性樹脂を水溶化させることができる。吸水性樹脂を水溶化すれば、ろ過等により親水性繊維を分離することができる。使用する親水性繊維、吸水性樹脂の種類に応じて、適した分離方法をとればよい。
親水性繊維と吸水性樹脂の質量比は1:5〜2:1であることが好ましく、1:4〜1:1であることがより好ましく、1:3〜7:10であることが更に好ましく、2:5〜3:5であることが最も好ましい。親水性繊維の質量比率が1/6以上であると、吸水性樹脂同士が接触する確率を低くし、吸水速度を高くすることができるため好ましい。親水性繊維の質量比率が2/3以下であると、複合物の吸水時のドライ感を出すことができるため好ましい。
親水性繊維と吸水性樹脂の質量比は、予め質量を測っておいた複合物から、適宜、吸水性樹脂と親水性繊維を分離してそれぞれの質量を測定することにより、算出することができる。予め、所定の質量比の親水性繊維と吸水性樹脂を使用して複合物を製造することが、原料を効率的に利用するという観点から好ましい。
複合物の見かけの嵩比重と圧縮後の嵩比重は1:2〜1:10であることが好ましく、4:9〜1:7であることがより好ましく、2:5〜1:5であることが更に好ましく、4:11〜1:4であることが最も好ましい。
本発明において見かけの嵩比重とは、加重がかかっていない状態において、吸水性樹脂の粒子と粒子間空隙をあわせた体積あたりの質量のことをあらわす。具体的には、メスシリンダーに適当量の複合物をいれ、ふたをかぶせて上下に10回程度ふり、10分程度放置する。その後、体積を読み取り、質量を測定し、質量を体積で除することで算出する。
一方、圧縮後の嵩比重は、加重をかけた状態において、吸水性樹脂の粒子と粒子間空隙をあわせた体積あたりの質量のことをあらわす。圧縮後の嵩比重は、メスシリンダーに適当量の複合物をいれ、ふたをかぶせて上下に10回程度ふり、10分程度放置したのち、5kg/cm2の加重を10分間かけてから同様に測定し、算出する。これらの測定は、23℃、相対湿度30%RHで行う。
見掛けの嵩比重と圧縮後の嵩比重の比は、吸水性樹脂の周りにどれだけの空間を確保できているかという指標となる。
見かけの嵩比重と圧縮後の嵩比重の比のうち、見かけの嵩比重の比率が1/3以上で、吸水性樹脂の周りに十分な空間を確保でき、ゲルブロッキングを防ぐことができる。一方、見かけの嵩比重と圧縮後の嵩比重の比のうち、見かけの嵩比重の比率が1/11以下であれば、製造プロセスにおいて取り扱い性が悪化することをなく製造できる。
本発明の複合物は、吸水性樹脂の被覆率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、99%以上であることが最も好ましい。被覆率は、100μmから300μmの範囲が写る程度に拡大して複合物の写真をとり、写真中における吸水性樹脂部分の面積を、繊維部分の面積で除することで算出することができる。写真は光学顕微鏡、または、電子顕微鏡で、吸水性樹脂と親水性繊維の区別をしやすい方を使用することが出来る。角度、測定部位を変えながら1つの複合物あたり10視野の写真を撮って同様に測定を行い、10回の平均値を被覆率とする。被覆率が高いほど効率的に吸水性樹脂同士のゲルブロッキングを抑制することができるため好ましい。
複合物中の吸水性樹脂は吸水性の観点から酸基を有していることが好ましい。さらに、複合物中、又は吸水性樹脂中に酸基と反応する官能基を複数もった化合物を含有していることが好ましい。酸基と反応する官能基は、吸水性樹脂自身が官能基として有していてもかまわない。酸基と反応する官能基は、吸水性樹脂と親水性繊維、吸水性樹脂同士、吸水性樹脂中の酸基同士の架橋剤として働く。
吸水性樹脂と親水性繊維及び/又は吸水性樹脂中の酸基同士が、酸基と反応する官能基を複数もった化合物によって架橋されていることが好ましい。酸基はカルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基と反応する官能基としては、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基などが挙げられる。該酸基と反応する官能基を複数もった化合物は、多価アルコール、多価アミン、多価エポキシド等が挙げられ、吸水速度の観点から多価アルコールであることが好ましい。酸基と反応する官能基を複数もった化合物が多価アルコールである場合、酸基とエステル結合を形成する。
本発明の複合物に、親水性繊維と吸水性樹脂以外のものを組み合わせることは好ましい。例えば、界面活性剤や脱臭剤等と組み合わせることが好ましい。
〔2.親水性繊維〕
発明に用いる親水性繊維は平均粒子径が10−200μmであり、20−120μmであることが好ましく、30−80μmであることがより好ましく、35−55μmであることが更に好ましく、40−50μmであることが最も好ましい。平均粒子径は前述の方法で測定できる。
本発明における親水性繊維をJIS Z 8901に従い篩にて粒度を測定した場合、目の開き355μmの篩を50質量%以上通過することが好ましく、70質量%以上通過することがより好ましく、80質量%以上通過することが更に好ましく、90質量%以上通過することが最も好ましい。また、目の開き300μmの篩を50質量%以上通過することが好ましく、70質量%以上通過することがより好ましく、80質量%以上通過することが更に好ましく、90質量%以上通過することが最も好ましい。親水性繊維の粒度が大きいと、親水性繊維同士が絡み合いやすくなる。
本発明における親水性繊維は、見かけの嵩比重が0.05〜0.65g/mlであることが好ましく、0.1〜0.55g/mlであることがより好ましく、0.15〜0.45g/mlであることが更に好ましく、0.2〜0.35g/mlであることが最も好ましい。親水性繊維の見かけの嵩比重が0.05〜0.65g/mlで、吸水性樹脂の周辺に適切な大きさの空間が形成され、親水性繊維が吸水性樹脂への通水と濡れ性に寄与することができ、吸水速度が向上する。
見かけの嵩比重は、複合物の見かけの嵩比重と同様の方法で測定できる。
本発明における親水性繊維は、液体を保持することができれば特に限定されず任意のものを使用することができる。親水性繊維の素材は、液体を保持することができれば特に限定されないが、中でもセルロース系繊維が好ましい。本発明におけるセルロース系繊維とは、セルロースを主原料とした繊維のことを表す。セルロースは、例えばエステル化やエーテル化などの処理により誘導体化されたものを使用しても構わない。また、他の繊維と混ぜたものでもよい。
セルロースとしては、綿、麻、レーヨン、ポリノジック、リヨセル、キュプラ、パルプ等が挙げられる。中でも、パルプが好ましい。パルプとしては、木材パルプでも、非木材パルプでも構わない。木材パルプでは、針葉樹を使用してもよいし、広葉樹を使用してもよい。非木材パルプとしては、例えばバガス、草・藁・竹等を挙げることができる。また、古紙等からも再生してパルプとすることもできるが、衛生材料に使用する場合には、木材等から直接製造されるバージンパルプであることが好ましい。
衛生材料において、パルプは吸水性樹脂を絡めて担持する、液体の捕獲性を高める等の目的で広く利用されており、通常はパルプ原料を粉砕して繊維状にして使用される。繊維同士の絡み合いを利用して吸水性樹脂を効率よく担持するためには10〜13mm程度の長い繊維が好ましく使用されている。しかしながら、このような長い繊維長をターゲットとして粉砕を行っても、使用に適さない微粉末も同時に生成してしまう。この微粉末は衛生材料製造工程では、拡散してロスとなるため問題となっている。
本発明においては、ロスになるような小さい粒子径のパルプを中心として使用する。この領域をターゲットとして粉砕するのは、長い繊維をターゲットとするよりも簡便な装置で行うことができるし、粒子径分布も狭くすることができる。このため、本発明において粉砕パルプを使用する場合は、従来と比較してパルプのロス率が減り生産性が上がるというメリットがある。
吸水シートにおいては、親水性繊維の量が、10〜150g/m2となることが好ましく、20〜100g/m2であることがより好ましく、30〜80g/m2であることが更に好ましく、40〜60g/m2であることが最も好ましい。10g/m2より少ないと吸水速度が劣る場合があり、150g/m2より多いとドライ感に劣る場合がある。
〔3.吸水性樹脂〕
本発明における吸水性樹脂の平均粒子径は50〜500μmであることが必須であり、好ましくは75〜400μm、より好ましくは100〜300μm、更に好ましくは125〜275μm、最も好ましくは150〜250μmである。平均粒子径が500μmより大きいと、吸水性樹脂の単位質量あたりの表面積が小さくなるため、親水性繊維との接触面が小さくなり、吸水速度が向上するという効果を得られにくい。平均粒子径が50μmより小さいと吸水性能に劣るためドライ感が得られにくい。
本明細書において、吸水性樹脂の平均粒子径は、以下のように求める。吸水性樹脂を目の開きが20μm、25μm、32μm、38μm、45μm、53μm、63μm、75μm、90μm、106μm、212μm、300μm、425μm、500μm、600μm、710μm、850μm、1000μm、1180μm、1400μm、1700μm、2500μmの篩を使用して篩い分ける。通過することのできた篩の目の開きと通過することのできない篩の目の開きの中間の値を粒子径とする。例えば、25μmの篩を通過することのでき、20μmの篩を通過することのできない吸水性樹脂の粒子径は22.5μmとする。それぞれの粒子径ごとに、粒子径と吸水性樹脂全体中のその粒子径の質量比率の積を求め、その全ての和を算出し、平均粒子径とする。なお、20μmの篩を通過したものについては、10μmとし、2500μmの篩の上に残ったものについては、2700μmとする。
粒子径は特に限定されないが10μm以上の粒子径であることが、吸水性樹脂の取り扱い上、微粉の発生が問題となることが多いことから好ましい。より好ましくは40μm以上であり、更に好ましくは80μm以上である。吸水性樹脂の分級は、例えば、篩を用いて適時図ることができる。吸水性樹脂の形状は特に限定されないが、粒子状であることが好ましい。懸濁重合による球状のもの、水溶液重合品を破砕した不定形のもの、比表面積を増やすための多孔質形状、球状粒子を複数凝集させた形状等、特に限定されない。
また、吸水性樹脂は、目の開きが90μmの篩を通過できる粒子は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。また、目の開きが425μmの篩を通過できない粒子は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。さらに、目の開きが300μmの篩を通過できない粒子は70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。このような比較的シャープな粒子径分布を持つ吸水性樹脂を使用すると、均一な複合物を作りやすく、その後の取り扱い性に優れる。
本発明中の吸水性樹脂は、吸水性樹脂全量に対する残存モノマー濃度が200質量ppm(以下、単に「ppm」ともいう。)以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましく、10ppm以下であることが最も好ましい。残存モノマーが多いと、液吸収時の溶出成分が多く、吸水速度及び吸水量の観点から好ましくない。
製造前の吸水性樹脂材料中の残存モノマー濃度は5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましく、0.05%以下であることが最も好ましい。残存モノマーは、複合物製造時又は完成後に加熱処理を施し重合を完結させることによっても低減できる。出発材料として残存モノマーが多い状態の吸水性樹脂を使用すると、複合物製造時に該残存モノマーの重合反応を完結させるのが困難で、最終的に残存モノマーが多量に残りやすいため好ましくない。また、反応方法によっては風合いを損なうことがあり好ましくない。このようなことから、本発明においては、予め重合された吸水性樹脂を用いることが好ましい。
残存モノマー量は、以下のような方法を用いて定量することができる。吸水性樹脂を、吸水性樹脂質量の250倍の0.9%生理食塩水に加え、常温で撹拌しながら6時間程度抽出した後にろ過をする。濾液を、液体クロマトグラフィー法を用いて定量する。
本発明において、吸水性樹脂の種類は特に限定されず、どのような吸水性樹脂でも構わないが、側鎖に酸基を有する吸水性樹脂であることが好ましく、側鎖にカルボキシル基を有する吸水性樹脂であることが更に好ましい。カルボキシル基含有単位としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、ソルビン酸、けい皮酸、これらの無水物及びこれらの中和塩等の単量体から誘導される単位が挙げられる。
側鎖に酸基を有する吸水性樹脂の場合、酸基のうち30mol%以上が塩の形で中和されていることが好ましく、50mol%以上がより好ましく、70mol%以上が更に好ましい。中和の塩の種類は特に限定されないが、ナトリウム塩、及び/又はアンモニウム塩で中和されていることが、吸水性能の観点から好ましい。接着性の観点からは30mol%以上がアンモニウム塩の形で中和されていることが好ましく、50mol%以上がより好ましく、70mol%以上が更に好ましく、90mol%以上が最も好ましい。
側鎖に酸基を有する吸水性樹脂は、液体吸収時に酸基同士の静電反発が起こり、吸水速度が速くなるため好ましい。酸基が中和されていると、浸透圧により液体が吸水性樹脂内部に吸収されるため好ましく、塩により親水性繊維と直接接着しやすいため好ましい。親水性繊維としてセルロースを用いる場合は、アンモニウム塩の形で中和されていると、アンモニウムはセルロースとの親和性が高く、強固に直接接着しやすいため、好ましい。ただし、酸基が塩の形で中和されていると、pHが塩基性になりやすいため、衛生材料で使用する場合には、吸水シート成形後の吸水性樹脂中の酸基のうち、中和されている割合は、30〜90mol%であることが好ましく、50〜80mol%であることがより好ましい。
吸水性樹脂は、酸基を含有していない単位を有していてもよく、例としては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクレリート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペジリン、N−アクリロイルピロリジン等のノニオン性化合物から誘導される親水性単位や、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、塩化ビニル、ブタジエン、イソブテン、エチレン、プロピレン、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の化合物から誘導される疎水性単位等が挙げられる。
また、吸水性樹脂には、ポリマー分子鎖間の重合性架橋剤となる単位が含まれていても構わない。例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ビスフェノールジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルオキシ酢酸塩等から誘導される単位が挙げられる。
また、吸水性樹脂には、酸基と反応する官能基を複数もった化合物が含まれていても構わないし、吸水性樹脂が酸基と反応する官能基を有していてもかまわない。酸基と反応する官能基を複数もった化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;(ポリ)グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの多価アルコール類;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンジアミンなどの多価アミン類等が挙げられる。反応速度のコントロールの容易さから、多価アルコール類が好ましい。また、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの多価イオン類等も吸水性樹脂が有する酸基と反応して架橋剤として働くので好ましく用いることができる。吸水性樹脂が酸基と反応する官能基を有している場合、酸基と反応する官能基としてはヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基などが挙げられる。
酸基と反応する官能基を複数もった化合物、多価イオン類の添加割合は吸水性樹脂に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、0.7〜5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることが更に好ましい。
酸基を有する吸水性樹脂の酸基がナトリウム塩やアンモニウム塩などの形で中和されている場合、中和されている酸基以外の酸基が、酸基と反応する官能基を複数もった化合物と反応するのが好ましい。
吸水性樹脂の種類としては、ポリアクリル酸部分中和物重合架橋体(例えば特開昭55−84304号公報参照)、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物(例えば特公昭49−43395号公報参照)、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物(例えば特開昭51−125468号公報参照)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の鹸化物(例えば特開昭52−14689号公報参照)、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物(例えば特公昭53−15959号公報参照)、ポリグルタミン酸塩(例えば特開2003−192794号広報参照)等、多くが知られている。吸収性能、コスト等の観点から、通常衛生材料用途に使用されているポリアクリル酸塩共重合体やポリアクリル酸部分中和物重合架橋体が好ましい。
以下に、使用する吸水性樹脂の好ましい例としてポリアクリル酸重合架橋体について説明する。ポリアクリル酸重合架橋体では、ポリマー分子鎖中における繰り返し単位の好ましくは50mol%以上がカルボキシル基含有単位である。より好ましくは80mol%以上であり、更に好ましくは90mol%以上である。繰り返し単位のうちのカルボキシル基含有単位の割合が50mol%より小さいと吸収性能に劣る場合がある。ポリマー分子鎖中のカルボキシル基は一部が中和(部分中和)されていることが好ましく、塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、アンモニア等の含窒素塩基性物が挙げられる。カルボキシル基の30mol%以上が中和されていることが好ましく、50mol%以上が中和されていることがより好ましく、70mol%以上が中和されていることが更に好ましく、90mol%以上が中和されていることが最も好ましい。
ただし、衛生材料に用いる場合は、吸水シート中の吸水性樹脂が有するカルボキシル基のうち、中和されている割合は、50〜80mol%であることが好ましい。pHの観点から塩の種類としては、ナトリウム、カリウム、アンモニア、リチウムを含む少なくとも1種類以上で部分中和されることが好ましく、ナトリウム及び/又はアンモニアで部分中和されることがより好ましい。親水性繊維としてセルロース系繊維を使用する場合、接着性の観点からはアンモニア単独で部分中和されることは好ましく、ポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基中和塩のうち50mol%以上がアンモニウム塩であることが好ましく、より好ましくは70mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、最も好ましくは全てアンモニウム塩で中和される。なお、吸水性樹脂中のアンモニウム塩の割合は、吸水性樹脂中の全窒素原子量を求めることで計算することができる。吸水性樹脂中の全窒素原子量はケルダール法により求めることができる。
吸水シート中の吸水性樹脂中心部のカルボキシル基のアンモニア中和率が吸水性樹脂外表面のカルボキシル基のアンモニア中和率よりも高い状態で存在する分布構造をもつことは好ましい。吸水性樹脂中心部のカルボキシル基のアンモニア中和率が50mol%以上であることが好ましく、60mol%以上であることがより好ましく、70mol%以上であることが最も好ましく、吸水性樹脂外表面のカルボキシル基のアンモニア中和率が50mol%未満であることが好ましく、45mol%以下であることがより好ましく、40mol%以下であることが最も好ましい。
また、吸水性樹脂中心部と吸水性樹脂外表面の中和率の差が5mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることが更に好ましい。吸水性樹脂中心部のカルボキシル基のアンモニア中和率が上記の数値であると無加圧における吸水倍率の低下が起こりにくく好ましい。また、吸水性樹脂外表面のカルボキシル基中和率が上記の数値であると加圧下の吸水倍率が低下しにくく好ましい。ただし、加熱工程等を経ることにより、アンモニアが揮発するため、カルボキシル基のアンモニア中和率は減少する傾向にあり、一定でない。上記の吸水性樹脂中心部及び吸水性樹脂外表面のアンモニア中和率は最終的な製品において、上記の範囲であることが好ましい。
吸水性樹脂の外表面の中和率(「表面塩濃度」ともいう。)が高いほど、親水性繊維との接着力を高めることができるため、親水性繊維との接着前(すなわち、例えば脱水工程における、脱水前)は表面塩濃度が高く、接着後に表面塩濃度を低くすることが好ましい。また、複合物を加熱脱水により製造する場合は、加熱前の吸水性樹脂の表面塩濃度が高く、加熱後の吸水性樹脂の表面塩濃度を低くすることが好ましい。なお、本明細書において、塩濃度とは、酸基(カルボキシル基)の中和率と同義である。
当該吸水性樹脂外表面とは、当該吸水性樹脂の外部に露出している部分をいう。また、当該吸水性樹脂中心部とは当該吸水性樹脂の吸水性樹脂外表面から最も内奥の部分をいう。当該吸水性樹脂は吸水性樹脂内部にコア−シェル構造をもつことが好ましいが、吸水性樹脂全体として平均化されたカルボキシル基中和率は30mol%以上であることが好ましく、より好ましくは50mol%以上である。吸水性樹脂全体の平均カルボキシル基中和率が極端に低下すると無加圧化での吸水倍率の低下を招くことがある。
当該吸水性樹脂の中和率は、カルボキシル基中和率を赤外吸光分析法の一つである顕微ATR法によって測定することにより求めることができる。
吸水性樹脂外表面のカルボキシル基中和率の測定は顕微ATR法にて直接吸水性樹脂外表面を測定する。吸水性樹脂中心部の測定は、例えばウルトラミクロトーム(Reichert製 ULTRACUT N)を用いることにより吸水性樹脂を割断して中心部を露出させてから顕微ATR法にて測定する。測定装置は例えばBio−Rad社製 FTS−575などを用いることができる。カルボン酸及びカルボキシレートの組成比を規定する指標として、1695cm-1(カルボン酸νC=O ベースライン1774〜1616cm-1)及び1558cm-1(カルボキシレートνCOO- ベースライン1616〜1500cm-1)のピーク面積比(1695/1558cm-1)を計算する。別途、全カルボン酸の10mol%,30mol%,50mol%,70mol%,90mol%,100mol%を塩で中和した部分重合架橋ポリアクリル酸を標準サンプルとして測定し、作成した検量線より組成比を求める。
吸水性樹脂は吸水性能が高いほど好ましく、無加圧時の吸水倍率の測定において、吸水倍率が40g/g以上であることが好ましく、45g/g以上であることがより好ましく、50g/g以上であることが更に好ましい。また、保水倍率の測定において、保水倍率が25g/g以上であることが好ましく、29g/g以上であることがより好ましく、33g/gであることが更に好ましく、39g/g以上であることが最も好ましい。また、57g/cm2での加圧下における吸水倍率が10g/g以上であることが好ましい。
吸水性樹脂の吸水倍率が高いほど、使用する吸水性樹脂の量を減らすことができるため好ましい。なお、本明細書において吸水性樹脂の吸水倍率とは0.9%の生理食塩水を、吸水性樹脂に荷重がかからない状態において、自由に膨潤吸収できる量のことである。吸水性樹脂の吸水倍率は以下のような方法で測定する。吸水性樹脂0.05gを不織布製のティーバッグ式袋(60×40mm)に均一に入れ、23℃の0.9%生理食塩水中に浸漬する。180分後にバッグを取り出し、ティーバッグの角を固定し斜めの状態で10分間吊るして水切り後、質量を測定する。吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行い、質量を測定しブランクとする。(式4)に従って吸水倍率を算出する。測定は3回行い、平均値を吸水倍率とする。
(式4)吸水性樹脂の吸水倍率(g/g)={(吸収後のティーバッグの質量)−(吸収後のブランクのティーバッグの質量)−(吸水性樹脂の質量)}/(吸水性樹脂の質量)
本発明の吸水性樹脂の加圧下吸水倍率は以下の方法により測定する。吸水性樹脂0.02gを内径25mm、高さ30mmで底部に250メッシュのナイロン不織布を備えたアクリル樹脂製円筒に入れ、円筒の中にスムーズに動くシリンダーを入れて測定装置とし、質量を測定する。測定装置のシリンダーの上部に0.8psi相当の278.33gの荷重を載せて荷重とし、0.9%生理食塩水60gを入れた内径120mmのシャーレに入れる。60分後に取り出して紙製タオルの上に3秒間静置して水切りをし、荷重を取り除いた後の装置の質量を測定し、(式5)に従って加圧下吸水倍率を算出する。
(式5)吸水性樹脂の加圧下の吸水倍率(g/g)=(吸収後の装置の質量(g)−吸収前の装置の質量(g))/(吸水性樹脂の質量)
本明細書において吸水性樹脂の保水倍率は以下のようにして算出できる。上記Tea−bag法の吸水倍率測定試験実施直後の含水した吸水性樹脂を包含したティーバックを遠心分離機に入れ、250で3分間脱水し、質量を測定する。吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行い、質量を測定しブランクとし、これらの値から、(式6)に従って保水倍率を算出する。測定は3回行い、平均値を保水倍率とする。
(式6)吸水性樹脂の保水倍率(g/g)={(吸水後遠心分離機で脱水後のティーバッグの質量)−(吸水後のブランクのティーバッグ質量)−(吸水性樹脂の質量)}/(吸水性樹脂の質量)
本発明に使用する吸水性樹脂の好ましい製造方法の一例は、不飽和カルボン酸アンモニウム塩を含有する単量体溶液を、ラジカル系重合開始剤を用いて重合して、得られる吸水性樹脂を乾燥する方法である。以下、この例について説明する。
不飽和カルボン酸アンモニウム塩単量体は特に限定するものではなく(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアンモニウム塩が挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩を用いる。不飽和カルボン酸アンモニウム塩の製造方法はカルボン酸の中和、若しくは不飽和アミド化合物若しくは不飽和ニトリル化合物の微生物になどによる加水分解物などの誘導体でも構わない。
不飽和カルボン酸アンモニウム塩以外のその他単量体を添加することもできる。その他単量体成分としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中で1種類、若しくは2種類以上を全単量体成分中の50mol%以下で添加することができる。
また、吸水性樹脂には、酸基と反応する官能基を複数もった化合物を添加してもよい。酸基と反応する官能基を複数もった化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;(ポリ)グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの多価アルコール類;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンジアミンなどの多価アミン類等が挙げられる。
また、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの多価イオン類等も吸水性樹脂が有する酸基と反応して架橋剤として働くので添加してもよい。
もう一つの架橋剤である重合性架橋剤を共重合することも問題ない。重合性架橋剤としてはジエチレングリコールジアクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ビスフェノールジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルオキシ酢酸塩などが挙げられる。これらの重合性架橋剤の中でN,N’−メチレンビスアクリルアミド若しくはトリメチロールプロパントリアクリレートが特に望ましい。
他の添加物として吸水性樹脂の表面積を広げることを目的として発泡剤を添加することが好ましい。発泡剤としては公知の炭酸塩を用いることができる。炭酸塩としては塩又は混合塩を含むいずれの炭酸塩、炭酸水素塩が本発明でも使用される。本発明にとってより好ましい炭酸塩の例としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等及びこれらの水和物等が挙げられ、それらの1種類又は2種類以上が用いられる。特に、本発明にとって好ましい炭酸塩は1価カチオン、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウムの炭酸塩又は炭酸水素塩である。多価カチオン種からなる炭酸塩を用いた場合、カルボキシル基を有する重合体は多価カチオン種により金属架橋されて吸水性能に悪影響を及ぼすことがある。
炭酸塩の単量体水溶液に対する添加量は単量体成分に対して0.01〜10質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。炭酸塩の添加量が0.01質量%未満であると重合により得られる含水ゲルは多孔質体とならない。また、10質量%を超えて添加すると水可溶分が増加すると共に吸水性樹脂の保水能力にも支障をきたす。また、炭酸塩は紫外線照射前に添加することが好ましく、添加方法としては、炭酸塩をそのまま添加するかあるいは、任意の溶媒中に溶かし込み炭酸塩溶液として添加してもよい。
発泡剤及び発泡時期をコントロールする目的で消泡剤を使用することもできる。消泡剤としては一般的に破泡剤、抑泡剤、整泡剤等として公知のものを使用することができ、1種又は2種類以上組み合わせて用いることもできる。消泡剤の具体的なものとしては、油脂類、脂肪酸類、低級アルコール類、高吸アルコール類、金属石鹸類、シリコーン類、疎水性シリカ・シリコーンコンパウンド類、脂肪酸エステル類、ポリグリコール類、ポリグリコールエステル類、ポリエーテル類、変性シリコーン類、油溶性ポリマー類、有機リン系化合物、硫酸化脂肪酸類、ポリエーテル誘導体、シリカ・変性シリコーンコンパウンド類などが挙げられる。
単量体溶液の溶媒は、単量体の溶解性に優れたものであれば特に限定しない。特に好ましくは水単独であるが、エタノール、メタノール、アセトンなどの親水性溶媒を単独若しくは複数混合して使用してもよい。また、必要に応じて塩化ナトリウムなどの塩類、pHコントロールを目的としたアンモニアなどの塩基性化合物を添加しても良い。重合方法は溶液重合などの公知の方法を用いることができるが、水溶液重合が有機溶媒を使わないで済むなど、エネルギー的な観点からも好ましい。反応器の形式は、熱及び/又は紫外線照射により重合を開始するものが好ましく、回分式若しくは連続式のいずれでも構わない。公知の反応装置である、エンドレスベルトのような装置を用いても構わない。
不飽和単量体の重合方法は特に限定されず、水溶液重合、逆相懸濁重合、逆相乳化重合、噴霧重合、ベルト重合など一般に広く用いられている方法が適用できる。重合開始方法も特に限定されず、ラジカル重合開始剤による重合、放射線、電子線などの照射による重合、光増感剤による紫外線重合を行うこともできる。かかるラジカル重合に用いられる開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酢酸などの有機化酸化物、などの公知の開始剤が挙げられる。酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合はL−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤を併用してもよい。
重合開始方法としてラジカル系光重合開始剤と過酸化物を用いて紫外線照射をして重合することは好ましい。ラジカル系光重合開始剤としては、例えば、一般に光重合に用いられているベンゾイン、ベンジル、アセトフェノン、ベンゾフェノン及びこれらの誘導体が挙げられる。また、誘導体の例としては、ベンゾイン系のものとして、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン系のものとして、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチルー1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モンフォリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン系のものとして、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイルー4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキシ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
その他のラジカル系光重合開始剤としてはアゾ化合物も使用できアゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物等も利用できる。
しかし、この場合、比較的多量に添加する必要があり、また、高重合度化が困難であるという理由から、ベンゾイル基を有するラジカル系光重合開始剤を用いる方が好ましい。
重合開始剤の添加量は単量体成分に対して0.0001〜0.1質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.001〜0.01質量%である。光重合開始剤の添加量が単量成分に対して0.0001質量%未満であると重合性が極端に低くなり、他方、0.1質量%を超えると、低分子量体が増加する傾向にあり、水可溶分が増加する傾向にある。
残留モノマーを低減させるためには公知の開始剤を用いることができる。開始剤としては過酸化物を用いることが好ましい。好ましい過酸化物の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酢酸などの有機過酸化物、などが挙げられる。それらの1種類若しくは2種類以上を組み合わせ用いることもできる。過酸化物の添加量は単量体成分に対して0.001〜10質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜1質量%である。過酸化物の添加量が0.001質量%未満であると残留モノマーを十分に減少させることが困難になり、10質量%以上添加すると水可溶分が増加すると共に得られた吸水性樹脂が着色する場合がある。
重合開始前に予め単量体溶液中の脱酸素操作を行っておくことは好ましい。具体的には十分な時間の不活性ガスによるバブリングにより溶存酸素を取り除く。また、反応器内雰囲気も窒素、ヘリウムなどの不活性ガスに置換されていることが望ましい。本発明においては単量体水溶液の溶存酸素を4ppm以下にすることが好ましく、更に好ましくは1ppm以下にすることである。単量体水溶液の溶存酸素が4ppmを超えると、重合開始時間が遅延し、また反応が完結せず、残留モノマーが増加する場合がある。
反応器内は減圧、常圧、加圧のいずれであっても良い。
重合のコントロールの観点から紫外線の照射により重合を開始させることは好ましい。この場合、不飽和単量体水溶液中に紫外線を十分に透過させることが望ましい。単量体水溶液の厚みは反応温度(重合体の最高到達温度)の制御と、紫外線の透過を十分に保つため50mm以下が好ましく、更に好ましくは20mm以下である。単量体水溶液の厚みが50mmを超えると紫外線照射が均一に行われなくなり、重合体が不均一になる場合がある。該単量体水溶液の厚みの下限値に特に制限はないが、生産性を考慮すると1mm以上が好ましい。
紫外線の光量は特に制限されないが、通常は10〜10000mJoul/cm2とするのが好ましい。この範囲より少ないと重合が不十分な場合があり、この範囲より多いと過剰照射のため、得られた重合体の架橋点が切断され、水可溶分が増える場合があるので好ましくない。また、紫外線照射に使用する光源としては、従来公知の光源が使用でき、例えば、水銀ランプ、メタルハイドランプ等を、反応条件を考慮して使用すればよい。照射波長も特に制限されるものではなく、通常200〜450nmの波長光が用いられる。紫外線照射時間は上記光量になるように決定されるが、上記条件下、照射を開始した直後に重合が開始され、通常、10〜180秒の短時間の照射で十分に重合は完結する。
重合開始温度は0〜30℃で行うことが好ましい。紫外線照射前の不飽和単量体水溶液は、その液温が30℃以下に維持されているものが好ましく、より好ましくは0〜20℃に維持されているものである。該単量体水溶液が30℃を超える場合は、反応系の温度が高くなりすぎるため、低分子量化し、保水能力の低下、かつ水可溶分の増加を引き起こす可能性がある。該単量体水溶液温度の下限については特に制限はなく、該単量体水溶液が凍結しない温度であればよく、通常は0℃以上であればよい。
該単量体水溶液の濃度は単量体が溶解できる範囲であれば特に制限されるものではないが、10〜70質量%が好ましく、特にアクリル酸アンモニウムを単量体として用いる場合は、経済的、反応制御のしやすさなどの観点からは30〜65質量%が最も好ましい。
水溶性不飽和単量体が重合し始めると、系内の温度が上昇するが、優れた吸水性樹脂を得るためには系内の最高到達温度を120℃以下に抑えることが好ましく、より好ましくは100℃以下に抑えることである。系内の最高到達温度が120℃を超えると、単量体水溶液が重合して得られる重合体は、その水可溶分が増加する場合がある。また保水能力の悪いものとなる場合がある。重合時の最高到達温度抑制する方法としては種々考えられ、例えば、外部から重合体接触部分を冷却する方法、重合体に冷風を当てる方法等考えられるが、これらの方法は設備も大きくなるので、前記した条件、すなわち、単量体水溶液濃度を30〜65%にし、該単量体水溶液の温度を30℃以下にし、また、該単量体水溶液の厚みを50mm以下、好ましくは1〜20mmにするという条件を採用して、系内の最高到達温度を120℃以下に抑えることが望ましい。
反応後、溶液重合では含水ゲル状の吸水性樹脂が生成する。これを粗解砕してから乾燥させることは好ましい。乾燥後に数百μm程度にまで粉砕できる。粒子径分布は1μm〜3000μmに収まることが望ましく、特に望ましいのは301000μm〜1000μm、更に望ましいのは100〜600μmである。粗解砕の方法としては、ゴム状弾性体を切断、押出しできる装置を用いることができ、例えば、カッター型切断機、チョッパー型切断機、ニーダー型切断機等、公知の技術を用いて容易に達成できる。カッター型切断機を用いた場合ゲル切断時のシェアーによりポリマーの劣化が少なく好ましい。乾燥されたゲルを粉砕するには従来公知の粉砕方法を採用することができる。例えば、振動式粉砕機、衝撃式粉砕機、摩擦型粉砕機等によって所望の粒子径に粉砕することができる。粉砕時及び/又は粉砕後に親水性繊維を同時に混合しても構わない。
乾燥方法は特に限定するものではなく真空乾燥、熱風乾燥が望ましい。本発明に用いることのできる乾燥機は、通常の乾燥機や加熱炉を用いることができ、例えば、熱風乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機、誘電加熱乾燥機などが挙げられる。乾燥温度は70℃〜180℃の範囲が好ましく、特に好ましくは100〜120℃である。
乾燥前に親水性繊維を混合しておけば、親水性繊維と吸水性樹脂の複合物を形成することができる。混合はいつ行っても構わないが、ある程度粒子形状を整えた後に混合したほうが均一に混合できるため好ましい。すなわち、含水ゲルを疎解砕し、予備乾燥を行い、粉砕した後に混合することが好ましい。ここでいう予備乾燥は、好ましく粉砕できる程度の乾燥度を示す。
乾燥後、吸水性樹脂の加熱処理を行ってもよい。加熱処理によって、重合を進め、重合架橋度を調整することができる。加熱終了後に連続的に同じ乾燥機内で加熱してもよく、乾燥工程とは独立の工程としてもよい。この加熱処理は、親水性繊維の存在下で行うことが好ましい。
加熱処理前の吸水性樹脂の表面強度は0.1〜5.5Nであることが好ましく、0.1〜5Nであることがより好ましく、0.2〜4Nであることが更に好ましく、0.2〜3Nであることが最も好ましい。このような表面強度の低い吸水性樹脂は、ゲルブロッキングが非常に生じやすく従来の吸収体構造中では使用することが不可能である。しかし、本発明において、このような表面強度の低い吸水性樹脂は、親水性繊維との直接接着が強固になるという点でメリットとなり好ましい。
吸水性樹脂と親水性繊維を水の存在下で加熱することにより、直接接着している箇所を多く有する複合物を形成することができる。直接接着し、水分を減らした後も加熱を行い、吸水性樹脂の架橋を進め、表面強度を高めることは好ましい。このとき、酸基と反応する官能基を複数もった化合物等が存在していると、架橋剤として働き、吸水性樹脂表面の架橋度が高まり、いわゆる表面架橋のような効果が得られるだけでなく、親水性繊維との接着も高まるため好ましい。酸基と反応する官能基を複数もった化合物等は、予め前述した方法で吸水性樹脂中に含有させてもよいし、複合物を形成する際に、脱水乾燥前に加えたり、散布してもよい。複合物を形成する際に水を使用する場合、酸基と反応する官能基を複数もった化合物等が水と一緒に親水性繊維との界面や、吸水性樹脂内部へと取り込まれやすくなる。親水性繊維との界面において架橋度が高まると、親水性繊維から吸水性樹脂への通液速度が高まるため好ましい。一方、吸水性樹脂内部の架橋度が高まると、吸水性樹脂全体の吸水倍率を低下させてしまう場合がある。これを防止するためには、複合物を製造する際、含水させてから乾燥するまでの時間をコントロールする、反応性の低い架橋剤を用い熱量で架橋をコントロールするなどの方法がある。熱量で架橋をコントロールするとは、熱風などの外部からの熱によって加熱を行った場合、吸水性樹脂内部と比較して外部の温度が高まるため、この差を用いて架橋密度に分布をつける方法である。縮合成の架橋剤による吸水性樹脂内部の架橋を考慮に入れ、予め架橋度を下げておいた吸水性樹脂を使用することは好ましい。一方、架橋密度をコントロールする方法として、アンモニウム塩などの揮発性の塩を使用することも可能である。すなわち、塩の状態の酸基は縮合架橋しないため、予め、加熱前の酸基を中和しておくと、含水した状態においても架橋は進行しない。加熱によって塩を揮発させた場合、表面、又は、親水性繊維から塩がとんでいくため、塩がとんだ部分だけ架橋が進行するため、表面近く、又は親水性繊維周辺のみの架橋度を高めることができる。
表面強度とは、吸水性樹脂の粒子表面の変形しやすさを表すパラメーターである。特定倍率に液体を吸収して膨潤した吸水性樹脂を容器に入れて荷重をかけていくと、容器内で隙間をあけて充填されていた吸水性樹脂の隙間を埋めるようにゲルが移動、変形していく。表面強度は、吸収した吸水性樹脂が実体積になった時の弾性率であるので、ゲル粒子間の相互作用の大きさや表面の変形しやすさを意味する。表面強度が大きいということは、吸水性樹脂が変形しにくいことを表す。変形しにくいと、吸水性樹脂と親水性繊維が直接接着しにくい場合がある。本発明の吸水性樹脂の表面強度は、以下のように求める。
装置:島津オートグラフAG−1
試料:吸水性樹脂0.10gを精秤し、底面に75μmの孔径のナイロンシートを貼り付けた内径20.5mm、高さ50mmの円筒容器の底に均一に入れた。50φのシャーレを用意し、0.90gの生理食塩水をいれ、吸水性樹脂の入った円筒容器を静置し、1時間吸収膨潤させた。
測定:1kNのロードセルを使用し、直径19.7mmの円柱軸をとりつけた。測定レンジは0.2kNと設定し、ロードセルに荷重がかからない高さにあわせ、そこから降下速度0.6mm/分という一定の速度で下がるように設定する。ロードセルに加わる圧力を経時的に記録した。ここで、表面強度とは実体積になった時点における荷重(N)を表す。吸水性樹脂の実体積は、生理食塩水の比重1.010g/cm3と吸水性樹脂の比重を利用して計算した。
親水性繊維と直接接着しやすい吸水性樹脂の条件として、吸水性樹脂表面近傍の塩濃度が、50mol%以上であることが好ましく、より好ましくは60mol%以上、更に好ましくは70mol%である。アンモニウム塩を含有している場合には、80mol%以上が好ましく、より好ましくは85mol%以上である。表面塩濃度が高いほど、親水性繊維との接着性が高まる。最終的な吸水シート中の吸水性樹脂の表面塩濃度については特に制限はないが、好ましくは90mol%以下、より好ましくは80mol%以下である。最終的なシート中の吸水性樹脂の表面塩濃度が低い方が、仮に湿潤空気下にさらされた時にもベトツキを起こしにくく有利である。また、液体吸収後の膨潤時に粒子同士の接触が生じた場合において複合物中での水溶液拡散性が高い状態で維持できるので、大変好ましい。
高い吸水倍率を維持するためには、吸水性樹脂全体の塩濃度を高める必要があるが、複合物中の液拡散性を高く維持するためには、表面近傍の塩濃度を低くすることが望まれる。すなわち、表面塩濃度だけを下げて、内部の塩濃度を高めることが好ましい。具体的には、表面塩濃度を吸水性樹脂中心部の塩濃度に比べて、10mol%以上低くすることが好ましく、より好ましくは20mol%以上、更に好ましくは30mol%以上表面塩濃度を下げることである。なお、表面近傍とは、表面から深さ方向に約1μm厚みの外層部のことである。
表面近傍の塩濃度の調整は、親水性繊維との直接接着の形成と同時に、加熱によって行われることにより、接着力と吸収力を高いレベルでバランスさせることができるため好ましい。この加熱処理における温度は乾燥処理における温度よりも10℃以上高いことが好ましい。加熱条件とは加熱温度と加熱時間の2つの要素からなり、吸水性樹脂及び/又は複合物の吸水性能に大きな影響を与える。要求される特性によって変更されるが、乾燥条件よりも10℃以上高いことが好ましく、更に好ましくは20℃以上、最も好ましくは30℃以上高いことかが好ましく、かつ100〜250℃の範囲が好ましくあり、より好ましくは115〜200℃、更に好ましくは130〜170℃である。加熱時間は10秒〜5時間が好ましく、より好ましくは30秒〜1時間であり、更に好ましくは1分〜30分である。低温すぎる場合は、架橋の進行が遅く時間がかかり、高温すぎる場合には架橋のコントロールが難しい場合がある。
吸水性樹脂がアンモニウム塩主体で形成されている場合、この条件のもとで加熱処理を行うと、吸水性樹脂の吸水性樹脂外表層の中和率と吸水性樹脂中心部の中和率を好ましい範囲に調整することができる。この好ましい範囲としては、吸水性樹脂中心部のカルボキシル基アンモニア中和率が50mol%以上、好ましくは60mol%以上、最も好ましくは70mol%以上であり、吸水性樹脂外表面のカルボキシル基アンモニア中和率が50mol%未満、好ましくは45mol%以下、最も好ましくは40mol%以下である。吸水性樹脂中心部と吸水性樹脂外表面の中和率の差が5mol%以上であることが好ましく、更に好ましくは10mol%以上である。アンモニアが存在すると、親水性繊維と吸水性樹脂が直接接着しやすくなるため好ましい。なお、加熱処理装置については特に制限無く、熱風乾燥機、流動層乾燥機、ナウター式乾燥機などの公知の装置が用いられる。
吸水シートにおいては、吸水性樹脂の量は、20〜300g/m2が好ましく、50〜250g/m2であることがより好ましく、70〜200g/m2であることが更に好ましく、90〜180g/m2であることが最も好ましい。少なすぎるとドライ感が劣る場合があり、多すぎてもそれほど吸水速度、ドライ感といった効果に変化はない。
〔4.複合物の製造方法〕
本発明の複合物は、吸水性樹脂と親水性繊維が直接接着していればどのような方法で製造してもよいが、親水性繊維と吸水性樹脂と水の存在下に、互いに接触した状態で脱水乾燥させて製造することが好ましい。これにより、吸水性樹脂と親水性繊維が高度に接着した複合物が得られる。吸水性樹脂が酸基を含有している場合は、架橋剤として働く、酸基と反応する官能基を複数もった化合物等を含有した状態で脱水乾燥を行うことが好ましい。
吸水性樹脂と親水性繊維との相互作用を最大限に利用するために、脱水乾燥前には十分に混合されていることが好ましい。混合工程において、混合時に適度に水が存在していると、親水性繊維と吸水性樹脂の間に適度な相互作用が働き混合性が良好となる。
原料となる吸水性樹脂に大量の水が存在する場合は均一に混ぜることが難しくなるため、吸水性樹脂の含水量は、吸水性樹脂の質量に対して、0.1〜100質量%であることが好ましく(すなわち、吸水性樹脂100質量部に対して、0.1〜100質量部)、1〜40質量%であることがより好ましく、1.5〜20質量%であることが更に好ましく、2〜12質量%であることが最も好ましい。
脱水乾燥前、親水性繊維及び/又は吸水性樹脂が水を含有していればよい。吸水性樹脂を含水状態で保存すると、吸収性能が低下する場合があるため、原料として保存する場合には、親水性繊維が水を含有していることが好ましい。この場合、親水性繊維を湿度のある空気中に保存しておけば、自然に含水される。吸水性樹脂をすぐに使用する場合には、吸水性樹脂が水分を含有していてもよく、合成後に完全乾燥しない吸水性樹脂を用いることで好適な水分範囲とすることができる。
吸水性樹脂、親水性繊維、水との混合は、どの順番で行ってもよい。水と吸水性樹脂を最初に混合すると、吸水性樹脂同士がゲルブロッキングをおこしやすくなるため、親水性繊維と水を混合し、親水性繊維と水の混合状態が維持されているところに、混合しながら吸水性樹脂を分散するように投入するか、吸水性樹脂と親水性繊維を混合し、親水性繊維と水の混合状態が維持されているところに、混合しながら水を投入することが好ましい。後者の方法の場合、なるべく均質に水が散布されるように、スプレーなどをつかって霧状で投入するか、スチーム等を使用することが好ましい。
これらの工程はヘンシェルミキサー等を使用し、混合状態を維持しながら行うことが好ましい。
脱水乾燥させる工程以前の親水性繊維と吸水性樹脂と水の混合物中の、吸水性樹脂と水の質量比は20:1〜1:5であることが好ましく、15:1−1:2であることがより好ましく、10:1−1:1であることが更に好ましく、10:3−10:7であることが最も好ましい。このときの水の量は、含水した状態の吸水性樹脂及び親水性繊維における合計の含水量をあらわす。乾燥前の含水量が少ない場合は、吸水性樹脂と親水性繊維との直接接着している箇所が少なくなる傾向にあり、多すぎる場合には乾燥時間が長くなる傾向にある。
脱水乾燥は、親水性繊維と吸水性樹脂が効率よく接触している状態で行うことが好ましいため、混合工程の後に乾燥を行うことが好ましい。
脱水方法は特に限定されず、加熱による方法、減圧による方法、気流による方法等が挙げられ、複数を組み合わせてもよい。親水性繊維と吸水性樹脂の直接接着を強めるという観点から、加熱は行うことが好ましい。加熱の方法は特に限定されず、熱風による方法、マイクロ波を使用する方法、赤外光線を使用する方法等、設備に応じて自由に選択することができる。加熱の温度は60〜250℃であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましく、100〜180℃であることが更に好ましく、120〜150℃であることが最も好ましい。低温の場合は乾燥効率が悪くなる傾向にあり、高温すぎると着色する場合がある。
脱水の程度は特に限定されないが、吸水性樹脂の乾燥前の含水率に対する乾燥後の含水率が70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが最も好ましい。
乾燥後の含水量は特に限定されないが、吸水性樹脂の質量に対して0.01〜100質量%であることが好ましく、0.1〜50質量%であることがより好ましく、0.5〜20質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが最も好ましい。水分が多すぎる場合は、吸収能力を低下させる可能性がある。
親水性繊維と吸水性樹脂を効率よく直接接着させるためには、親水性繊維と吸水性樹脂を混合した後に、所定の水分量へと高め、その後に乾燥を行うことが好ましい。水分量を高める方法は、特に限定されず、水に浸す方法、水を噴霧する方法等が挙げられる。含水させる水に、不純物を含んでいても構わない。不純物としては、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、鉄イオンなどの陽イオン、塩素イオンなどの陰イオン、アセトン、アルコール類、エーテル類、アミン類などの水溶性有機化合物などが挙げられる。吸水性樹脂及び/又は複合物のpH調整のために、酸性又は塩基性のものを使用してもよい。吸水性樹脂と後述する基材との接触性や吸収能力の点から考えると、不純物量は水道水レベルであることが好ましく、不純物のない蒸留水又はイオン交換水を単独で用いることがより好ましい。
複合物は、吸水性樹脂の既存の設備(表面架橋設備)で製造することができるため、吸水性樹脂を製造する場所で複合物を製造することは好ましい。また、親水性繊維を製造する装置は衛生材料会社や製紙会社が保有しているため、衛生材料用に吸水シート化、吸収性物品化を行う場合には、これらの場所の近くで行うことは好ましい。
複合物は、例えば、親水性繊維と吸水性樹脂を接触した状態で脱水乾燥させることで得られる。吸水性樹脂は、重合によって含水ゲルとして得られる場合が多い。水溶液重合の場合は、これを粗解砕して予備乾燥を行い、粉砕を行って粒子径を整える。粉砕の時点では、完全に水が飛びきらず水分が残っている。これと、親水性繊維を混合し、脱水乾燥することで複合物を形成できる。すなわち、複合物は、例えば、吸水性樹脂が含水ゲルであり、吸水性樹脂が含水した状態で親水性繊維と混合することにより接触させて、脱水する工程を備える、製造方法により得ることができる。
粉砕により微粒子ができ、廃棄される場合もあるが、親水性繊維と複合されることにより廃棄量を減らすこともできるため好ましい。親水性繊維の混合は、親水性繊維を粉砕機に投入することで行ってもよい。懸濁重合の場合には、重合時点で粒子径を整えることができる。通常は、ろ過や遠心分離で含水状態の吸水性樹脂を回収する。回収を行った後に親水性繊維と混合してもよいが、重合後に溶媒が存在する状態で親水性繊維を投入すれば、均一に混合できるため好ましい。
本発明に用いる吸水性樹脂では架橋剤として働く、酸基と反応する官能基を複数もった化合物等を用いて架橋処理を行ってもよい。架橋処理は、加熱により行われることが好ましく、親水性繊維と混合された吸水性樹脂は、表面架橋装置を使って脱水乾燥を行うことができる。酸基と反応する官能基を複数もった化合物を加える場合には、親水性繊維と混合前の方が有効利用できるため好ましい。例えば、水溶液重合の場合は、粒子径を調整し、酸基と反応する官能基を複数もった化合物を添加し、親水性繊維と混合することは好ましい。例えば、懸濁重合の場合には、重合後に溶媒中へ酸基と反応する官能基を複数もった化合物を加えることで均一に粒子表面に分散でき、その後、親水性繊維を加えることは好ましい。
〔5.吸水シート〕
本発明の複合物を接着剤にて基材に接着、固定化することでシート化することができる。また、本発明の複合物と熱可塑性繊維を混合し、熱可塑性繊維が熱融着することでシートを形成することができる。通常、これらの方法でシート化を行うと、吸水性樹脂表面に接着剤成分や熱可塑性繊維が付着し、吸水性樹脂の膨潤を阻害することとなる。しかしながら、本発明の複合物は、親水性繊維により吸水性樹脂のまわりに十分な空間が確保されているため、これらの接着成分が吸水性樹脂表面に直接付着する確率は低い。このため、シート化した際にも吸水性能を損なうことがなく、高い吸水速度、ドライ感をもった薄型シートを形成することができる。複合物が移動して偏りができると、吸水性能が安定しない場合もあるため、複合物は実質的にシートに固定化されていることが好ましい。
本発明の吸水シートと他のシート状材料を組み合わせて吸収体としての性能を調整することは好ましい。吸水シートの使用目的によっては、必要に応じて消臭剤、香料、各種無機粉末、発泡剤、顔料、染料、抗菌剤、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、キレート剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、塩類等が入っていても構わない。より柔軟性を増すため、界面活性剤を含むことは好ましい。
本発明において基材とは、シート形状を保てる素材のことをいう。本発明においては、基材はシート状であればどのような素材でもよく、紙、布、フィルム等があげられる。紙とは、JIS P 0001で定義される広義の意味での紙のことを指し、布とはJIS L 0206で定義されるシート状繊維製品の総称である。布はシートを形成する手段によって織物、編物、組み物、レース、網、不織布に分類されるが、本発明に使用する布は、織物、編物、不織布が好ましく、より好ましくは不織布である。紙及び布は、パルプなどの短繊維などと異なり形態安定性に優れているため好ましい。不織布とは、JIS L 0222により定義される。
基材の原料に限定はなく、複数の組み合わせの基材でもよい。親水性の原料であれば通水性を付与することができるし、疎水性の原料であれば、表面側についてはドライ感を向上させるための層として、裏面側であれば止水層としての利用ができる。基材繊維としては、天然繊維、合成繊維の双方があり、更に複数の繊維の組み合わせでも構わない。繊維の長さは、短繊維でも長繊維でも構わない。強化のためや親水性付与のために処理を施していても構わない。
親水性のものは吸液性、通水性に優れており、親水性繊維や吸水性樹脂と親和性が高いという特徴をもつ。疎水性のものはドライ感に優れており、疎水性繊維と親和性が高いという特徴をもつ。これらの性能は、いずれも吸収体として好ましいものであるため、親水性、疎水性の特徴を併せ持つ基材は好ましいといえる。親水性、疎水性の特徴を併せ持つとは、親水性と疎水性の2種以上の素材が混合された基材でもよいし、親水性の素材に疎水化処理を施したものや、疎水性の素材に親水化処理を施したものでもよい。また、短繊維よりも連続長繊維の方が通液性に優れるため、親水性の部分は連続長繊維であることは好ましい。
基材の形状は特に限定されず、厚さは好ましくは0.001mm〜1cm、より好ましくは0.01mm〜5mmであり、更に好ましくは0.05mm〜3mmであり、最も好ましくは0.1mm〜1mmである。質量は好ましくは0.1g/m2〜200g/m2であり、より好ましくは0.5g/m2〜100g/m2であり、更に好ましくは1g/m2〜60g/m2であり、最も好ましくは2g/m2〜30g/m2である。薄すぎるもの、軽すぎるものについては、強度の点から好ましくない。
複合物を基材に接着させるための接着剤は、親水性のものと、疎水性のものがある。親水性の接着剤は、例えば、低分子量のポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等がある。疎水性の接着剤は、主に熱により溶解するいわゆるホットメルト接着剤が好ましく使用される。親水性接着剤は使用中に溶解して接着性が低下する場合があるため、疎水性の接着剤を使用することが好ましい。
本発明における熱可塑性繊維の材質はどのようなものでもよく、一般的なポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等を好適に使用することができる。融着量をコントロールしやすい芯鞘構造の繊維を用いることは好ましいといえる。この場合、芯部のガラス転移温度よりも鞘部のガラス転移温度が低い、又は、芯部の融点よりも鞘部の融点が低いことが好ましい。芯部と鞘部の融点の差は10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることが更に好ましい。熱可塑性繊維は1種類でもよいし、複数の種類のものを使用してもよい。熱可塑性繊維は疎水性を示すものを使用することが好ましい。性能を調整するために熱可塑性を示さない繊維を同時に使用することも好ましく、セルロース等の親水性繊維等が適宜使用される。
繊維の太さは特に限定されないが、0.01〜200デニールであることが好ましく、0.1〜100デニールであることがより好ましく、0.5〜50デニールであることが更に好ましく、1.2〜15デニールであることが最も好ましい。細すぎると疎水性繊維同士の間の空間が小さくなりすぎて吸収性能を損なう場合があり、太すぎると感触が悪くなる場合がある。繊維長は特に限定されないが、0.1〜20mmであることが好ましく、0.5〜10mmであることがより好ましく、1〜5mmであることが更に好ましい。短すぎる場合は、接合力が弱くなる場合があり、長すぎる場合は、混合性が悪くなる場合がある。
熱可塑性繊維の量は、吸水シートに対して、5〜100g/m2が好ましく、10〜80g/m2であることがより好ましく、15〜60g/m2であることが更に好ましく、20〜40g/m2であることが最も好ましい。少なすぎるとシート強度が弱くなる場合があり、多すぎると吸水速度が遅くなる場合がある。
本発明の吸水シートは、シート形状であり、脱離する成分はほとんどないことが好ましい。吸水シートに、別途粒子状のもの、繊維状のもの等を組み合わせて使用してもよいが、その場合は、簡単に脱離する部分を除いた部分のみを吸水シートとする。簡単に脱離する部分とは、シートの端を手で持ち、シートを垂直にした状態で、30cmの幅を1秒あたり1往復する速度で10回した時点でシートから脱離しているものを指す。
吸水シート全体における、親水性繊維と疎水性繊維の比は、質量比で、9:1〜2:8であることが好ましく、より好ましくは8:2〜3:7であり、更に好ましくは8:2〜4:6であり、最も好ましくは7:3〜5:5である。親水性繊維が多いほど、シートにおける液体の捕獲力が高まり、疎水性繊維が高いほどシートにおける液体の拡散力が高まるため、これらのバランスを調整することが好ましい。
吸水シート全体における、吸水性樹脂と親水性繊維の比は、質量比で、10:1〜1:5であることが好ましく、9:1〜1:3であることがより好ましく、8:1〜1:2であることが更に好ましく、8:2〜1:1であることが最も好ましい。親水性繊維が多いほど、瞬間の保水力は高くなるがドライ感に劣る可能性がある。吸水性樹脂が多いほどドライ感に優れるが、粒子系の小さい吸水性樹脂を固定化しきれずに脱離する可能性がある。
疎水性繊維の熱融着によって吸水シートを形成する場合、加熱はシートに加重のかからない状態で行うことが好ましい。加重がかかった状態で加熱を行うと、シート中での空間が小さくなり、吸水性能が低下する場合がある。加重がかからない状態で加熱する方法としては、熱風による乾燥があげられる。
乾燥に用いる熱風の温度としては100〜190℃が好ましい。最適な温度は用いる繊維の融点によって異なり、融点よりも10〜60℃高い温度で行うことが好ましい。温度が低すぎると乾燥に時間がかかりすぎる場合があるし、温度が高すぎると溶融量をコントロールするのが難しくなる。風速としては0.1〜100m/sが好ましく、1〜40m/sであることがより好ましく、3〜20m/sであることが更に好ましい。熱風乾燥に用いる好ましい装置としては、バッチ式熱風乾燥機、コンベア式熱風乾燥機等の各種熱風乾燥機などがあげられる。
加熱時のシート内部の温度を均一にするために、シート内部に水分のある状態で加熱することは好ましい。水分が存在している場合、水が蒸発するまでは系内の温度は100度に保たれるため、均一に加熱される。また、水分は親水性繊維や吸水性樹脂と親和性が高く、熱可塑性繊維との親和性は低いため反発力が生じ、適切な空間が確保されやすい。
本発明の吸水シートは、例えば、吸水シートを縦160mm、横70mmの長方形に切り取り、台上に静置し、生理食塩水15gを1.5秒かけて滴下したときの、滴下を開始してから、吸収され吸水シート表面の液が見えなくなった時点までの時間(吸水速度(秒))が、13秒以下であることが好ましく、10秒以下であることがより好ましい。また、例えば、上記滴下開始から5分後に、予め質量を測定しておいた縦100mm、横100mmの正方形のろ紙を、滴下位置へのせ、その上にろ紙と同じ底面積をもつ3.5kgの重りをのせ、ろ紙をのせてから3分後に重りをはずし、ろ紙の質量を測定したときの、ろ紙の質量増加分(リウェット量(g))が、0.2g以下であることが好ましく、0.1g以下であることがより好ましい。
〔6.吸収性物品〕
本発明の吸水シートは、必要に応じて、透水シート、不透水シート、ギャザー等の補助部材を加えることでそのまま吸収性物品とすることが可能である。この吸収性物品は、薄型でかつ、吸水速度とドライ感に優れるため、紙おむつ、尿パッド、及び生理用ナプキン等の使い捨て用の衛生材料に好適に使用できる。
本発明の吸水性物品の製造方法においては、吸水シートの製造工程と、補助部材の装着工程が同一ラインで行われることが、生産性の観点から好ましい。本発明における吸水シートは、生産性が高いため衛生材料として十分な生産速度をもつ。また、本発明の吸水シートを衛生材料に使用すると、薄型でかつ十分な吸水能力を保有することから、衛生材料の使用部材の点数を減らすことができる。このため、従来の衛生材料プロセスよりも、機械の数を減らすことができ、生産性を高めることができる。
また、本発明の吸水シートは伸縮性不織布と組み合わせることで、フィット感のよい吸収性物品を得ることができる。従来の吸収体をこのような伸縮性不織布と組み合わせると、伸縮時に吸収性能が低下してしまうが、本発明の吸収シートはどのような状況でも吸水性能を発揮できるため好ましい。
〔7.伸縮性不織布について〕
本発明における伸縮性不織布とは、伸縮性のある素材であれば特に限定されずどのようなものでもよい。本発明に用いる伸縮性不織布は伸縮性複合繊維からなる。たとえば以下のような方法によって、伸縮度が高く、ボリューム感に富み、手触りがよい伸縮性複合繊維を効率よく得ることができる。
非相溶性の弾性ポリマーと非弾性ポリマーそれぞれからなる伸縮性繊維と非伸縮性繊維とを一体化して、伸縮性繊維と非伸縮性繊維とが周方向に交互に露出する複合繊維を形成する。この複合繊維表面において長さ方向に延びる伸縮性繊維の各露出部の、最大の露出部の表面積を分母に、他の露出部の表面積を分子として比をとった場合に、その各値が0.8未満を満足するようにする。露出部の表面積の算出方法は後述する。
この複合繊維を長さ方向に伸長することで、伸縮性繊維と非伸縮性繊維とを分離させ、非伸縮性繊維を三次元捲縮させ、伸縮性繊維に非伸縮性繊維を螺旋状に絡ませて伸縮性複合繊維を形成する。なお、伸縮性繊維からなる露出部が1つのみである場合には、その露出部を最大露出部とし、他の露出部の複合繊維単位長さあたりの表面積が0だと考えて上記比が0.8未満を満たすようにする。 このようにすれば、各露出部の表面積が異なるので、複合繊維を伸長した際に、収縮する応力がこれらの露出部間で異なってくる。そのため、伸縮性繊維と非伸縮性繊維との境界面に働くずれ応力の大きさも異なり、それゆえ非伸縮性繊維に歪みが生じ、この歪みにより伸縮性繊維と非伸縮性繊維とが分離しやすくなる。このように分離がほぼ完全であるため、複合繊維の伸縮度が向上する。
最大の露出部の表面積と他のそれぞれの露出部の表面積(他の露出部がない場合は大きさを0とする)との比をとった場合にそれが0.8未満、好ましくは0.5未満を満足するように形成することにより、収縮応力の大きさが最大露出部と他の露出部とで大きく異なってき、ずれ応力が大きなものとなり、分離の効率が特に良好になる。このように分離の効率がよいため、複合繊維の繊度を従来よりも小さくし、細く滑らかにすることが可能となる。また、この歪みにより分離後に非伸縮性繊維に三次元状の大きな捲縮が生じるため、複合繊維が嵩高となりボリューム感がアップする。
伸縮性繊維にこの三次元捲縮した非伸縮性繊維が螺旋状に絡みつき、非伸縮性繊維が伸縮性繊維を取り巻く割合が増えるため手触りが向上する。このように、伸長させるだけで十分に分離できるので、伸縮性を有する複合繊維を効率よく製造でき、また、製造コストを比較的低廉に抑えることができる。
このような複合繊維は、伸長後、他の繊維と混合するか単体で撚って伸縮性糸としてもよいし、他の繊維と混合するか単体で不織布に形成後伸長して伸縮性不織布としてもよい。
伸縮性複合繊維100質量%中において、伸縮性繊維の占める割合が30〜90質量%であると、螺旋状の絡みつき、手触りがいずれも良好になるため好ましい。より好ましくは40〜80質量%である。伸縮性繊維の占める割合が少なすぎると、収縮する応力が小さくなりすぎ、分離が困難となり、伸縮性繊維に非伸縮性繊維が螺旋状に絡みつきにくい。一方、伸縮性繊維の占める割合が多すぎると、弾性ポリマーが有するゴム様の感触をなくすことが困難となる。
この伸縮性複合繊維に、親水成分および抗菌成分および消臭成分のうち、少なくとも一つを含有させると、含有成分に応じた特有の機能、すなわち親水機能や抗菌機能や消臭機能を持たせることができる。
伸縮性繊維と非伸縮性繊維から上記の方法で複合繊維を形成し、これを伸長すると、伸縮性繊維に非伸縮性繊維が螺旋状に絡みついた伸縮性複合繊維を効率よく生産することができる。この伸縮性複合繊維は嵩高で手触りや見た目も良好である。
以下、図面を参照して詳細に説明する。図1に示す実施形態にかかる伸縮性不織布1は、弾性ポリマーからなる原料Aと、非弾性ポリマーからなる原料Bとから製造される。原料A、原料Bは熱可塑性ポリマーであることが好ましい。ここで、原料Aと原料Bとは互いに非相溶であるものを選択する。
原料Aとしては、ウレタン系、スチレン系、エステル系、エチレン系、塩化ビニル系、ナイロン系等の弾性熱可塑性ポリマーが好適であり、これらの混合物でもよく、また、これらの弾性熱可塑性ポリマーが主体であれば、非弾性熱可塑性ポリマーが数%含まれていてもよい。原料Bとしては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ナイロン系、ポリビニルアルコール等の非弾性熱可塑性ポリマーが好適であり、これらの混合物でもよく、また、これらの非弾性熱可塑性ポリマーが主体であれば、弾性熱可塑性ポリマーが数%含まれていてもよい。
これら原料A、Bには親水成分や抗菌成分、消臭成分などを練り込んでもよい。親水成分としては、各種ステアレート、各種スルホン酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイトなどの水溶性ポリマーが考えられ、これらは原料A、Bの一方に0.2〜7質量%程度、又は、原料A、Bの双方に0.2〜14質量%程度混入するとよい。抗菌成分、消臭成分としては、酸化チタン、ホワイトカーボン、銀化合物、ゼオライト、竹抽出物などが考えられ、これらは原料A、Bの一方に0.2〜2.0質量%程度、又は、原料A、Bの双方に0.2〜2.0質量%程度混入するとよい。
この原料A、Bから伸縮性不織布1を製造するには、図2に示すような工程を経る。図示のように、まず、原料A、Bをそれぞれホッパー21、22に投入し、押出機23、24で加熱溶融し、ダイ25に供給する。このダイ25内部には、上下方向に延びる通路が形成され、ここを原料A、Bが流通する。また、ダイ25下面には、この通路に連通するほぼ円形の微小なノズル開口25aが複数縦横に並列して形成されている。
ここで、ノズル開口25aは、図3(a)、(b)、(c)のような形状となっている。すなわち、図3(a)の場合は、ほぼバチ型の中央開口25bと、その両側に隣接する長軸方向に尖ったほぼ楕円型の側部開口25cとからなる。また、図3(b)の場合は、四辺が凹円弧状の3辺と凸円弧状の1辺とからなる変形方形の中央開口25bと、この中央開口25bの凹円弧状の3辺にそれぞれ隣接する長軸方向に尖ったほぼ楕円型の側部開口25cとからなる。さらに、図3(c)の場合は、ほぼイチョウの葉型の中央開口25bと、その下方に隣接するほぼ双葉型の側部開口25cとからなる。
中央開口25bには、押出機23から溶融した原料Aが供給され、側部開口25cには、押出機24から溶融した原料Bが供給されている。こうして、中央開口25bからは、弾性熱可塑性ポリマーからなる伸縮可能な伸縮性繊維11が紡ぎ出され、側部開口25cからは、非弾性熱可塑性ポリマーからなる伸縮不能な非伸縮性繊維12が紡ぎ出され、これらは紡出と同時に溶融状態において一体化する。この一体化した状態において、上述したように原料Aと原料Bとは互いに非相溶であるため、溶け合ったり、混ざり合あったりすることが無い。そのため、ダイ25のノズル開口25aの形状に対応して、図4(a)、(b)、(c)に示すような伸縮性繊維11と非伸縮性繊維12とが表面に交互に露出した複合繊維10が形成される。ここで、伸縮性繊維11が複合繊維10表面に露出する露出部は、図4(a)の場合、11a、11cの2つであり、図4(b)の場合、11b、11d、11eの3つであり、図4(c)の場合、11fの1つである。 また、この複合繊維10は、100質量%中、30〜90質量%が伸縮性繊維11により構成されるように原料比等が適宜調節されている。また、図4(a)、(b)、(c)からわかるように、伸縮性繊維11の複合繊維10表面に露出する複数の露出部11a〜11eのうち、最大の表面積を有する最大露出部11a、11bと、他の露出部11c、11dおよび11eの表面積との大きさの比率、つまり複合繊維10断面における周長の比率は、以下のような関係を有する。すなわち、それぞれの単位長さ当たりの表面積の大きさをS(11a)〜S(11e)で表わすと、S(11c)/S(11a)<0.8、S(11d)/S(11b)<0.8かつS(11e)/S(11b)<0.8を満足する。また、露出部11fが一つしかない図4(c)の場合には、他の露出部の表面積が0であり、露出部11fを最大露出部だと考えると、同じく0/S(11f)=0<0.8の関係を満足する。
図2のように、この複合繊維10は、ダイ25の下方に配置された冷却チャンバ26を通り抜ける。冷却チャンバ26には、送風ブロワ27がつながれており、その室内に風が常時送り込まれている。そのため、ここを通る複合繊維10は空気延伸されつつ冷却される。
図2のように、冷却チャンバ26の下方には捕集コンベア28が配置されている。この捕集コンベア28は、プーリ28aと、プーリ28aにより回転駆動されるネット状の無端ベルト28bとからなる。また、捕集コンベア28には、サクションボックス29が内蔵されている。そして、サクションボックス29には、吸引ブロワ30がつながれている。そのため、ネット状の無端ベルト28bにはサクションボックス29により吸引力が付与されている。こうして、冷却チャンバ26を通り抜けた複合繊維10は、捕集コンベア28上に吸いつけられることで堆積捕集され、繊維ウェブとなり、無端ベルト28bの回転により捕集コンベア28の排出端に向かって送り出される。
捕集コンベア28の排出端から排出された繊維ウェブはガイドローラ31に案内されて、対の熱エンボスローラ32に送り込まれる。繊維ウェブは、熱エンボスローラ32に挟み込まれてポイントボンディングされて繊維シートとなる。
この繊維シートは、さらに、2対のニップローラ33に送り込まれる。ニップローラ33の間で繊維シートには、一定以上、好ましくは70%以上の伸長が与えられた後に開放される。
伸長の際には、上述した表面積の関係から、伸縮性繊維11と非伸縮性繊維12との境界面に大きなずれ応力が生じるため、これらがスムーズに分離される。 また、図5のように、非伸縮性繊維12に三次元捲縮が生じ、これが伸縮性繊維11に螺旋状に絡みつく。こうして、嵩高でボリューム感に富み、伸縮度が高く、ゴム様の感触をなくした手触りの良好な伸縮性不織布1が得られる。この伸縮性不織布1は、一旦ワインダローラ34に巻き取られ、その後適宜カットするなどして利用に供される。
この実施形態においては、複合繊維10から伸縮性不織布1を形成したが、同様に溶融紡糸にて形成された複合繊維10を、直接2対のニップローラに送り込むなどして、長さ方向に伸長させ、伸縮性繊維11と非伸縮性繊維12を分離させ、伸縮性複合繊維を形成してもよい。このような伸縮性複合繊維を他の繊維と混合するかあるいは単体で撚ることで、伸縮性糸が得られる。さらに、これを織機にて織って伸縮性を有する織布とすることもできる。
また、実施の形態においては、複合繊維10の断面形状を円形としたが、これに限定されず、たとえば多角形や中空のドーナツ型としてもよい。また、複合繊維10の伸縮性繊維11と非伸縮性繊維12とからなる構造は、上述した表面積の関係や質量比の関係などを満足する限りにおいては、実施形態に限定されることなく、自由に変更可能である。
〔8.複合物、吸水シートの製造装置〕
次に、本発明の複合物、吸水シートの好ましい製造装置例について説明するが、本発明の吸水シートの製造装置は以下に限定されるものではない。
(a)親水性繊維を粉砕する装置
親水性繊維がシートやロール形状である場合、粉砕することによって平均粒子径を整えることができる。一般的なパルプシート用粉砕機を好適に利用することができる。粉砕した親水性繊維は通常のタンクに貯蔵することができる。
(b)親水性繊維と吸水性樹脂とを混合する装置
タンクに貯蔵されている親水性繊維と、別のタンクに貯蔵されている吸水性樹脂を任意の比で混合するために計量する装置を有することが好ましい。混合比率の計量は、一般的な質量計測器を用いることができる。計量された親水性繊維と吸水性樹脂との混合は、気流混合できる容器を用いることが好ましく、例えば、内部に螺旋溝が施工されたホッパー等を使用することができる。下部に堆積した混合物は、例えば、スクリュー等を用い回転数をコントロールすることで、定量を次工程へ送ることができる。
(c)含水率を高めるための装置
吸水性樹脂の水分量が少ない場合には含水率を高めることが好ましい。均一に含水させるために、親水性繊維と吸水性樹脂をミキサー等で混合しながら含水率を高めることが好ましい。含水率を高めるための装置として、水の噴霧装置を好適に使用することができる。水の噴霧装置は、例えば、スプレーを使用することができる。(b)と(c)は同じ装置を使用してもよい。親水性繊維と水を混合しながら、そこへ吸水性樹脂をフィードしてもよい。
(d)脱水乾燥するための装置
脱水乾燥は、熱風乾燥機を好適に使用することができる。この乾燥機は前述のコンベア上に設置してもよいし、固定式乾燥機でもよい。乾燥時間が長くなる場合には、固定式乾燥機が好ましい。乾燥された複合物は、タンク等へためておくこともできる。
(e)複合物と疎水性繊維とを混合する装置
上記、(b)工程と同様の装置を好適に使用することができるが、混合されたものをシート成形工程へ供するために、気流を流せる構造を有することが好ましい。気流量をコントロールすることにより、定量をシート成形工程へ供給することができる。
(f)シート成形装置
シート成形は、例えばコンベア方式で行うことができ、熱伝導性のよい金属性のネットコンベア等を好ましく使用できる。コンベアに供給された原料の厚みをそろえる為、ネットの下部より吸引する装置を有することが好ましい。シートを用いる場合には、シートの送り出し部も有することが好ましい。また、疎水性繊維、親水性繊維、吸水性樹脂を均一に供給する装置を有していてもよい。全ての原料が供給された後に、厚みを均一にするためにプレスされることは好ましい。プレスは、例えばローラープレスが好適に使用でき、ローラープレスの表面にはエンボス加工等がなされていてもよい。後の加熱工程の効率を高めるために、プレスの温度を高めていても構わない。加熱により、疎水性繊維を溶融しシート状にするための装置は、通常の熱風乾燥機を使用でき、連続的に加熱をして成形できる。コンベアが乾燥機の中を通過するトンネル乾燥方式でもよいし、ドラム方式でもよい。加熱後、厚みをそろえるためにプレス装置を有することが好ましい。成形されたシートをそのまま製品とする場合には巻き取り装置に巻き取ることができる。幅をそろえるためのスリット装置を設けてもよい。予め、親水性繊維、及び/又は、吸水性樹脂、及び/又は、疎水性繊維を混合しない場合は、このコンベア上にそれぞれの原料を直接供給し、同様の操作でシート化することもできる。
(e)工程を行わず、基材に接着剤を使用して吸収シートを形成することもできる。この場合、基材の送り出し装置、基材へ接着剤を塗布する装置、複合物を定量的にフィードする装置があれば吸収シートを製造できる。
(g)吸収性物品の製造装置
(f)工程において成形された吸水シートの巻き取りを行わず、そのまま一般的な吸収性物品製造工程へ送ることができる。例えば、いわゆるトップシートといわれる透水性のシートを送り込む装置、いわゆるバックシートといわれる防水性のシートを送り出す装置、接着装置があれば、そのまま吸収性物品を製造することもできるため、既存の吸収性物品の工程を大幅に簡略化することができる。もちろん、一般的な吸収性物品製造に使用されるギャザー、テープ等をつける装置や、型抜装置も具備させることは可能である。
本発明において吸収性物品の製造装置は特に限定されず、従来の吸水シートの製造に用いられている装置を使用することができる。具体的にはバックシート用素材の連続体を、作業ドラムの周面に沿って搬送しつつ、本発明の吸水シートを作業ドラムの周面上に位置するバックシート用素材の連続体上に供給して固着した後、このバックシート用素材の連続体を吸収性物品の寸法に対応した長さに切断する。本発明の吸収性物品においてはトップシートを設けることが好ましく、バックシート用素材の連続体を吸収性物品の寸法に対応した長さに切断する前に、トップシート用素材の連続体を作業ドラムに供給して、バックシート用素材と吸水シートの連続体に固着することにより製造することができる。
〔9.吸収性物品の製造方法〕
本発明に係る吸収性物品は、本発明の吸水シートと補助部材、又は本発明の吸水シートと伸縮性不織布から構成されることが好ましい。補助部材としては吸水シートの一方の面上に備えられたトップシート、吸水シートの他方の面上に備えられたバックシート、透水シート、不透水シート、ギャザー等が挙げられる。
吸収性物品は、例えば、本発明の吸水シートと、連続的に送り出されるトップシート及び/又は連続的に送り出されるバックシートと、を接着する工程を備える製造方法により製造することができる。
また、吸収性物品の製造方法は、作業ドラムの周面に沿って搬送される、バックシート用素材の連続体上に、吸収シートを供給して固着する工程と、吸水シートを固着したバックシート用素材の連続体を吸収性物品の寸法に対応した長さに切断する工程と、を備えるものとすることもできる。
この場合において、上記吸水シート及びバックシートが固着した連続体を切断する工程の前に、吸水シートを固着したバックシート用素材の連続体に、トップシート用素材の連続体を供給して固着する工程を更に備えるものとすることができる。
また、本発明の吸水シートの製造工程と、吸収性物品の製造において補助部材を着装する工程は同一ラインであることが、生産性の観点から好ましい。
〔10.吸水シートの用途〕
本発明の吸水シートは、紙おむつ、尿パッド及び生理用ナプキン等の使い捨て用の衛生材料の吸収部材、動物用シーツ、ペットシーツ等の愛玩動物用の排泄物処理材の吸収部材、
冷凍水産物の運搬の際に、水産物が氷解した水に濡れるのを防止する吸収性シート、又は鉢植えを被う水蒸発防止用の吸収性シート、鉢植えの下に敷く吸収性シート、水槽の回りに配置する吸収性シート、結露防止材用シート等に使用する吸収性シート、傘立ての受部等の滴の垂れる箇所に配置して、傘等から落ちる水滴を吸収する水滴吸収マット、
乗り物のヘッドカバー用のマットとして、又はヘルメット又は帽子内の蒸れ防止用マット、例えば温水洗浄便座(TOTO株式会社製のウォシュレット(登録商標)便器等)での排便後のトイレットペーパーシート、雨天の場合に、屋根の無いイベント会場の雨天の日の雨による床の濡れ防止用吸収性マット、
雨の日の自動車、列車若しくは飛行機等の乗り物の床の濡れ防止用吸収性マット、雨の日の病院、サービスエリア、デパート、ホテル、店舗、オフィスビル若しくはレジャー施設の床の濡れ防止用吸収性マット、
冷蔵庫内の濡れ防止用吸収性マット、調理場の床の濡れ防止用吸収性マット、並びに炊事場又は調理場の生ゴミのドリップ吸収用の吸水シート、給水設備、給湯設備又は便器若しくは洗面具等の衛生器具を備える床の濡れ防止用吸収性マット、冷蔵庫の周囲の床の濡れの防止用吸収性マット、レジャーマツト若しくはマッサージ療法用シーツ、並びにベッド用補助マット、
野菜、青果物若しくは花卉類の保水又は調湿機能を有する包装材料、鮮魚、生肉、総菜食品又は弁当等の保水又は調湿機能を有する包装材料、並びに種子、菌株、幼苗若しくは球根の包装材料、機械類や窓の掃除用、建築物の天井部、壁部、床部若しくは窓部等の結露及び濡れの拭き取り用のウエス又は雑巾として、園芸植物の栽培時における水蒸発防止用等に好ましく使用することができる。
特に、吸水速度とドライ感に優れることから、紙おむつ、尿パッド、及び生理用ナプキン等の使い捨て用の衛生材料の吸収部材に好適に使用できる。
本発明の吸水シートはグリル受け皿用吸水シートとして好適である。本発明におけるグリルとは、炙り焼く調理法のための調理器具を指す。熱放射が炙り焼きの主要な加熱源であり、直火のほか、電磁波によるもの、ガス燃焼によって金属の板や遠赤外線セラミックスを高温に熱し、ここから放射される赤外線を調理に利用するもの、電熱器のジュール熱を熱源とするものでもよい。
グリルの例として、魚焼きグリルが挙げられる。通常は、ガスコンロに組み込まれ、魚などを焼く機構である。焼くものは魚に限定されない。魚焼きグリルはいわゆるグリル全般やオーブンに比べると内部容積が小さいが、一品当たりの大きさがそれほどでもない炙り焼き料理全般を調理でき、例えばグラタン、ハッシュドポテトやピザのような洋食から、焼き魚(秋刀魚や干物)など和食まで幅広く対応できる。しかし内部に付着した油を清掃せず、またグリル受け皿に水を入れずに調理すると発火・炎上することもあり問題となっている。
水を使用した場合にも、油が水に直接おちると飛び散るし、油がこびりついたものの清掃にはかなりの手間がかかるという問題がある。本発明の吸水シートをグリル皿に敷いて吸水させた状態で使用すれば、吸水シートが油を吸収するためグリル皿が汚れることもない。通常の吸水性樹脂は油を吸収することは困難であるが、本発明の吸水シートの構造においては、シート内部に空隙を有するので油を吸収することが可能である。また、疎水性の繊維を存在させる、または、疎水性基材を使用するなどにより、シート構造中の疎水性部位に油を閉じ込めることができる。
油が内部に保持されると、匂いの発生量が低下するというメリットがある。油の多い料理を行う際には、大量の水を敷いておいて、その上に本発明の吸水シートをおくという使用方法もできる。この場合、吸水シートは水に浮くため、油を吸収しやすくなる。本発明の吸水シートは使用後の吸水シートも形がくずれないようにすることが可能であるため、簡単に取り外すことができる。
吸水性樹脂の脱離がある場合には、洗うことが困難となるが、本発明の吸水シートは吸水性樹脂の脱離がおこらないため、グリルを洗うのも簡単である。更には、焼くことによって発生する匂いも吸着するという効果もあり、換気扇をまわさずとも部屋の匂いを気にしなくてよいというメリットがある。更に、本発明の吸水シートは複数回使用することができる。一度、取り外してグリルを洗浄してから、同じシートをおいてもよいし、洗わずにそのまま使うこともできる。
取り外す場合には、乾燥させて保存してもよい。洗わずにそのまま使う場合、注水を忘れる可能性があるが、通常、グリルは密閉構造であり、吸水性樹脂が吸収した水分は簡単に離さない。シート形状がくずれてしまうと、分離した繊維等が存在する可能性があり、その部分がこげて食品に匂いが付着してしまう可能性があるが、本発明の吸水シートでは、構造を維持するようにすることもできるため、このような問題は起こらない。
吸水後に吸水性樹脂が脱落してしまう従来のシートでは、使用後の掃除が簡単になるどころか面倒になってしまうし、吸水性樹脂が食品につくと、食品の水分をすってしまうためおいしさを損なう原因となるため、複数回使用は不可能である。吸収トレーに従来の吸水シートを設置した例(例えば、特許公開2005−124833)もあり、トレーごと廃棄できるとされているが、トレーは無駄でありごみが増えるだけでなく、かさばるためグリルの種類によっては使用ができない場合がある。更に、吸水性樹脂は脱離してしまいこぼれることがある。
このタイプのものは、一度使用すると性能がかわるため、再使用することは困難である。
本発明の吸水シートは棺桶用吸水シートとして好適に使用できる。棺桶とは、遺体を安置するためのものであり、人用でも動物用でもかまわない。現在では遺体を(人・動物を問わず)安置する際(棺桶)、夏・冬問わず「ドライアイス」を遺体の側や下に置き(夏場6〜8月)遺体から出る分泌物の吸収及び腐敗を防止(遅らせる)する為に吸水シートを使用する。本発明の吸水シートは、従来の吸水シートと比較し、液体の拡散力が優れている為、液体や匂いをシート全面で均一吸収されるので、シートの使用効率に優れている。
また従来の吸水シートにおいては、吸収部分が盛り上がり遺体の汚れや外観の悪化がおこってしまうが、本発明の吸水シートではこのようなことはない。更に、本発明の吸水シートは少ない量の資源で本来の目的を達成できる好適なシートである。
本発明の吸水シートは結露防止材用吸水シートとして好適に使用できる。本発明の吸水シートを窓等に貼り付けておくことで、建物のガラス面、窓枠、壁面等の結露発生面に発生した結露水をすばやく確実に吸収でき、ガラス面や枠部に結露水が溜まるという不都合を回避できる。結露防止材用吸水シートとしては、従来、酸性紙の吸湿性を利用したもの、シリカゲル粉末を中性紙に抄き込んだもの、シリカゲル単品での利用と様々あるが、シリカゲルの吸湿速度や紙の吸湿量には限界がある。
本発明の吸水シートは吸水性樹脂のもつ絶対吸収量の多さ(シリカゲルの数倍以上)に特徴がある。また、過剰な水分を吸っても溶液になることがない。更に、リウェットが少ないため接触の際にも水がこぼれおちることがない。それぞれの材料をバランス良く配合することによって、柔軟で薄くて、設置したい場所に容易に切り貼りして使用できるものであり、結露防止材用吸水シートに好適である。従来の一般的な吸水性樹脂のシートだけでは水分が吸収されると吸水性樹脂が膨らみドロドロになり脱落する恐れがあるので、吸水性樹脂のシートを不織布等の袋状のもので覆わなければならず、結果として厚みが増し、又生産設備及び原材料コストが高くつく欠点がある。
また、一旦ガラス面に貼着した後は、長期間に亘って剥がされることなく、吸収された水分を自然乾燥により蒸発させることにより吸水能力を再生させるのが普通である。従来の吸水性樹脂シートは、結露水が触れた場所で特異的に多く吸収し、飽和に達した後にオーバーフローした液体が拡散していくことになる。このため、オーバーフローしたものは漏れやすいという問題と、液体を吸収した吸水性樹脂の表面積が小さいため、吸収能力を再生しがたいという問題点があった。
そのため、特に、ガラス面に生じた結露水の量が多く、結露水量が結露防止材用吸水シートの吸水許容量を、その吸収能力が再生しないうちに超過した場合には、結露水が落下し枠に溜まってしまうという問題があった。本発明の吸水シートでは、全体で均一に吸収させることが可能であるためにオーバーフローしにくいという利点と、全体の吸水性樹脂が吸水に使用されるため、表面積が大きく、蒸散により吸収能力が再生しやすいというメリットがある。
本発明の吸水シートは、汗取りパッド用吸水シートとして好適に使用できる。本発明の吸水シートを汗取りパッドとして、脇、額、首、背中等に配置することで、汗を吸い取り清潔にたもつことができる。汗取りパッドに必要とされるのは、吸水速度、ドライ感、装着感である。吸水速度とドライ感を目的とした汗取りパッドは存在するが、吸水後の装着感を考慮したものは存在しない。
本発明の吸水シートは、全体で均一に吸収させることも可能であるため、汗の吸収前後においてフィット感が変化しないというメリットがある。更に、本発明の吸水シートは柔軟性に優れているため、装着感に優れる。当然、吸水性樹脂の脱離がないため、吸水性樹脂が体にふれて感触が悪いという問題も起こらない。本発明の吸水シートは、親水性繊維が吸水シート構造中に汗を素早くとりこむため吸水速度は十分であるし、親水性繊維から吸水性樹脂へ液体が送り込まれるためドライ感にも優れる。
アンモニアを吸収することで、匂いの防止効果もある。また、従来の汗取りパット等の代表的な生産方法は、脇の下用においては、主に母乳のタレを防ぐ(母乳パット)の設備を応用又は改造して生産するが、非常に大型かつ投資額が大きくしかも生産効率(スピードが遅い)が悪い。従来設備は、(1)フィルム工程、(2)アンダーシート供給、(3)粉砕工程、(4)吸水性樹脂ばらまき工程、(5)折り工程(2〜3つ折り)、(6)不織布巻き工程、(7)シール兼打抜き工程、(8)計数、(9)整列となり、大変複雑かつ生産効率が悪くコスト高になっている。汗取りパット(シート)を目的とした従来品は、サニタリーナプキンの生産機と巾(額・首・背中用等)以外は同仕様にも関わらず、別の生産機を要するため設備費が非常に高くついている。
本発明の吸水シートは、シート(防水体が必要な場合はシート片面にラミネート加工済のもの)を巻取りロール状のまま構成機にかけ、任意形状にスリット処理を施す又は打抜くだけで本シートが簡単に作れる為、材料費も少なく生産コストも安く、生産性よく作れ、従来品よりも優れた汗取り関係製品ができる。
本発明の吸水シートは、洋服防汚パッド用吸水シートとして好適に使用できる。洋服防汚パッド用吸水シートとは、洋服のなかの特に汚れやすい襟、袖等に貼り付けることで、洋服の汚れを防止するシートである。特に白地のシャツの場合に効果を発揮する。洋服の汚れは、皮脂汚れが温度の上昇で酸化することにより生じる。皮脂汚れは汗とともに皮膚から排出されるため、汗と同時に吸収することで洋服の汚れを防止することができる。本発明の吸水シートは、汗を吸収しやすく、油も吸水シート中へ取り込みやすいため防汚効果にすぐれる。更に、柔らかく装着感にすぐれ、汗を吸収した場合にもフィット感に優れるという特徴がある。吸水性樹脂の脱離がおこると、感触が悪くなるがその問題も生じない。アンモニアを吸収することで匂い防止効果も発揮する。
本発明の吸水シートは、寝具カバー用吸水シートとして好適に使用できる。寝具とは、枕、敷布団、掛け布団、ベッド、及びシーツ類をあらわす。寝ているときには大量の発汗を伴い、同時に皮脂汚れも排出されるため、寝具が汚れやすい。皮脂汚れと汗を同時に吸収することで寝具の汚れを防止することができる。本発明の吸水シートは、汗を吸収しやすく、油も吸水シート中へ取り込みやすいため防汚効果にすぐれる。更に、柔らかく感触がよく、汗を吸収した場合にも感触が悪化しないという特徴がある。吸水性樹脂の脱離がおこると、感触が悪くなるだけでなく、掃除の問題も生じるがが、その問題も生じない。アンモニアを吸収することで匂い防止効果も発揮する。
本発明の吸水シートは、食物の周辺でも好適に使用できる。例えば、冷凍した食物を解凍する際の解凍パッド用吸水シートとして、液体のでる調理材料の水分除去パッド用吸水シートとして好適に使用できる。食物から液体が出ていると見た目が悪く、おいしさを低減させる原因となる。更には、吸収したシートが凸凹になると、見た目の印象が悪い。特に、商品の場合には見た目は重要である。
吸水性樹脂が食物に触れると、食物から液体をうばってしまい、おいしさが低減する。そのため、吸水性樹脂が脱離して表面に出てこないことは必須であるし、吸収体構造中の吸水性樹脂と食物が水分のやりとりをしないことが好ましい。本発明の吸水シートにおいては、食物と接する面に、吸水性樹脂の存在しない層を設けておくことでこれを達成できる。更には、匂いも低減させることができる。
本発明の吸水シートはマスク用吸水シートとしても好適に使用できる。各種マスクが市販されているが、通常は繊維の目の細かさで異物を止める構造であり、花粉等の微細なものを完全に止めることは難しい。含水させた本発明の吸水シートをマスクに使用することで、花粉等を止める能力が高まる。マスクにおいては、吸水性樹脂が存在しない部分がある場合や、場所によって吸水程度が異なると、花粉等を止める能力にばらつきがでてしまい好ましくない。本発明の吸水シートは全体に均一に吸水するため好ましく使用できる。当然、吸水性樹脂の脱離等があると、感触が悪いという問題もあるが、本発明の吸水シートではこのような問題は生じない。
本発明の吸水シートは電子機器の水濡れ防止パッド用吸水シートとして好適に使用できる。パソコンやデジカメ等の精密機器は、水によって本体の故障だけでなく、データの損失という問題もあるため、液体を誤ってこぼしたときに水濡れを防止することが特に求められている。精密な部品の全てを防水性シートで覆うことは困難であるため、吸水シートが好適に使用できる。
従来の吸水シートでは、脱離した吸水性樹脂が部品中に入り込み問題となるが、本発明の吸水シートは脱離成分がないため好ましく使用できる。また、電子機器においては小型化がある種の価値を有するため、液体を吸収して膨潤するスペースというのはほとんどない。一部のみが吸収して堰をつくってしまうと、それ以上吸収されなくなってしまうことは問題であり、本発明の吸水シートのように全体で吸収することが求められる。
以下に本発明の具体的な実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されない。
以下の測定は特に記載のない限り、25℃、50%RHの環境で行う。なお、測定で用いる生理食塩水の濃度は0.9質量%である。
(1)無加圧における吸水性樹脂の吸水倍率の測定;Tea−bag法
吸水性樹脂A(g)(約0.05g)を不織布製のティーバッグ式袋(60×40mm)に均一に入れ、23℃の生理食塩水中に浸漬する。180分後にバッグを取り出し、ティーバッグの角を固定し斜めの状態で10分間吊るして水切り後、ティーバック式袋の質量B(g)を測定する。ブランクとして同様の操作を、吸水性樹脂を行い、質量C(g)を計測した。(式4)に従って吸水倍率を算出する。測定は3回行い、平均値を吸水倍率とする。これらの値から、吸水倍率を次式より求めた。
吸水倍率(g/g)=(B(g)−C(g))/A(g)
(2)吸水性樹脂の吸水速度の測定;ボルテックス法
100mlのガラス製ビーカーに25℃に調整した生理食塩水を50g測り取った。ここに30×8mmの回転子を入れ、回転計のついたマグネチックスターラーの上にのせ、600rpmで回転させた。非接触式回転計にて、回転数を確認した。吸水性樹脂を2.00g測り取り、ビーカーに投入した。吸水性樹脂投入後から、液表面が平らになるまでの時間を吸収時間とした。
(3)吸水性樹脂外表面と中心部のカルボキシル基中和率の測定
(i)測定装置
測定装置はBio−Rad社製 FTS−575を用いた。
(ii)測定条件
顕微ATR法(結晶板Ge 1回反射)
Back Ground:Air、常温測定
アパーチャー:50×50μm
積算回数:100回
上記の測定条件で得られたスペクトルデータから1695cm-1(カルボン酸νC=O、ベースライン1774〜1616cm-1)及び1558cm-1(カルボキシレートνCOO-、ベースライン1616〜1500cm-1)のピーク面積比(1695/1558cm-1)を求めた。
(iii)検量線の作成
検量線作成用試料として全カルボン酸の10mol%,30mol%,50mol%,70mol%,90mol%,100mol%をアンモニアで中和した部分重合架橋ポリアクリル酸を用いた。検量線試料を割断し、中心部分を顕微ATR法にて1試料につき5回測定した。−COOH/−COO-ピーク面積比より検量線(5次多項式近似曲線)を作成した。割断はウルトラミクロトーム(Reichert社製 ULTRACUT N)にて行った。
(iv)サンプルの測定
検量線試料と同様に測定を行った。吸水性樹脂外表面はATR法で直接測定し、吸水性樹脂中心部はウルトラミクロトームにて割断を行ってからATR法にて測定を行った。吸水性樹脂外表面は1試料につき3回、吸水性樹脂中心部は1試料につき5回測定を行い、その平均値を測定結果とした。
(4)吸水性樹脂の残留モノマーの測定
300mlのビーカーに吸水性樹脂1gを精秤し、生理食塩水を250g加えて6時間攪拌した。所定時間経過後、メンブレンフィルターでろ過し、ろ液を高速液体クロマトグラフィーで分析した。高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下のとおりである。
カラム:東ソー製、ODS80Ts
カラム温度:40℃
キャリアー:10mMリン酸水溶液、0.7ml/minで流した
検出:UV207nm
打ち込み量:50μl
(5)吸水性樹脂の加圧下吸水倍率の測定
底面に250メッシュのナイロン網を貼ったアクリル樹脂製の円筒形器具(外径35.0mm、内径24.5mm、高さ30mm、重さD(g))に、吸水性樹脂E(g)(約0.16g)を均一になるように入れ、0.0g/cm2では重りとしては何ものせず、57g/cm2では重りとして278.3gの分銅(外径24.5mm)をのせた。SUS製シャーレ(内径120mm)に生理食塩水を60ml入れ、円筒形器具を中に1時間置いた。所定時間経過後、紙製タオルにて水切りを行い、天秤で器具全体の質量F(g)を測定した。得られた値から、下記式により加圧下吸水倍率を求めた。
吸水倍率(g/g)=(F(g)−D(g)−分銅の重さ(g))/E(g)
(6)吸水性樹脂の保水倍率の測定
吸水性樹脂の保水力を示す指標として下記式で表される「保水倍率」を用いた。上記Tea−bag法の吸水倍率測定試験実施直後の含水した吸水性樹脂を包含したティーバックを遠心分離機に入れ、250Gで3分間脱水し、質量を測定した。吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行い、質量を測定しブランクとした。これらの値から、次式に従って保水倍率を算出した。測定は3回行い、平均値を保水倍率とした。
吸水性樹脂の保水倍率(g/g)={(吸水後遠心分離機で脱水後のティーバッグの質量)−(吸水後のブランクのティーバッグ質量)−(吸水性樹脂の質量)}/(吸水性樹脂の質量)
(7)吸水性樹脂の表面強度の測定
装置:島津オートグラフAG−1
試料:吸水性樹脂0.10gを精秤し、底面に75μmの孔径のナイロンシートを貼り付けた内径20.5mm、高さ50mmの円筒容器の底に均一に入れた。50φのシャーレを用意し、0.90gの生理食塩水を入れ、吸水性樹脂の入った円筒容器を静置し、1時間吸収膨潤させた。
測定:1kNのロードセルを使用し、直径19.7mmの円柱軸をとりつけた。測定レンジは0.2kNと設定し、ロードセルに荷重がかからない高さにあわせ、そこから降下速度0.6mm/分という一定の速度で下がるように設定した。ロードセルに加わる圧力を経時的に記録した。ここで、表面強度とは実体積になった時点における荷重(N)を表す。吸水性樹脂の実体積は、生理食塩水の比重1.010g/cm3と吸水性樹脂の比重から計算した。
(8)シートの吸水倍率及びシート中の吸水性樹脂の吸水倍率の測定
シートの吸収倍率は、吸水性樹脂と同様にT−Bag法で測定した。シート中の吸水性樹脂の吸収倍率は、吸水性樹脂を含まない以外は同等のシートの吸収倍率を測定し、ブランクとし、以下の式によって計算した。
シート中の吸水性樹脂の吸収倍率(g/g)={(吸収後のシートの質量)−(吸収後のブランクのシートの質量)−(シート中の吸水性樹脂の質量)}/(シート中の吸水性樹脂の質量)
(9)シートの吸水速度、拡散長、及びリウェット量の測定
シートを縦160mm、横70mmの長方形に切り取り、台上に静置した。ここへ色つき生理食塩水15gを1.5秒かけて滴下した。吸収体の表面を注意深く観察し、滴下を開始してから、吸収し、シートの表面の液が見えなくなった時点までの時間を測定し、吸水速度(秒)とした。滴下開始から3分後に液体が拡散した長さを測定し、拡散長(mm)とした。滴下開始から5分後に、予め質量を測定しておいた縦100mm、横100mmの正方形のろ紙を、滴下位置へのせ、その上にろ紙と同じ底面積をもつ3.5kgの重りをのせた。ろ紙をのせてから3分後に重りをはずし、ろ紙の質量を測定した。ろ紙の質量増加分をリウェット量(g)とした。
(10)脱離試験
200g/m2の生理食塩水を完全に吸収させた後、シートの端を手で持ち、シートを垂直にした状態で、30cmの幅を1秒あたり1往復する速度で10回往復した時点で、実質的に吸水性樹脂の崩れ、移動、脱離が生じていないかどうかを見た目で判断した。500g/m2の液体を完全に吸収させた後、吸収部位を手で持って、上下に20cmの幅を1秒あたり1往復する速度で10回往復した時点で、シートとしての形状に変化がないかどうかを見た目で判断した。更に、生理食塩水中に完全に漬け込んで飽和膨潤に達した後に同様の試験を行い、実質的に吸水性樹脂の崩れ、移動、脱離、シート形状の崩れが生じていないかどうかを見た目で判断した。
(11)剛軟性の評価
剛軟性は、JIS規格L1096記載の剛軟性D法(ハートループ法)に従って評価した。
(12)短時間リウェット法
所定の大きさの吸収体を用意する。シートになっていない場合は、所定の面積に、所定の質量の複合物や吸水性樹脂、親水性繊維などを均一に散布し、その上にユニチャーム社製「ライフリーさわやかパット20cc用」から回収した表面シートを配置し、セロハンテープにて四隅を貼り付け固定することで吸収体とする。
吸収体に5ccの生理食塩水を5秒間で滴下し、30秒後に、吸収体上に予め質量を測っておいたろ紙を載せ、ろ紙の上に1.96kgのオモリ加重を載せる。この状態で10秒間放置した後に、ろ紙を取り除き、ろ紙の重さを測り、元の質量から増加した質量をリウェット量とする。本測定では測定までの時間が短いため、測定値は吸水速度の指標となる。
(13)長時間リウェット法
液を滴下してから10分後にろ紙を載せるという以外は、短時間リウェット法と同様の方法で測定する。本測定では吸収に十分な時間をかけることができるため、ドライ感の指標となる。
(14)親水性繊維の平均粒子径
分散媒体として水に分散させた親水性繊維を超音波で1分間処理し、25℃における体積基準のメジアン径を測定する。測定は、レーザー回折散乱粒度分布計(堀場製作所(株)製、LA−910)を用いた。平均粒子径は体積頻度の数平均として算出した。
(15)吸水性樹脂の平均粒子径
吸水性樹脂を目の開きが20μm、25μm、32μm、38μm、45μm、53μm、63μm、75μm、90μm、106μm、212μm、300μm、425μm、500μm、600μm、710μm、850μm、1000μm、1180μm、1400μm、1700μm、2500μmの篩を使用し、ロータップ式篩振盪機を用いて10分間篩い分けを行った。通過することのできた篩の目の開きと通過することのできない篩の目の開きの中間の値を粒子径とし、それぞれの粒子径ごとに、粒子径と吸水性樹脂全体中のその粒子径の質量比率の積を求め、その全ての和を算出し、平均粒子径とした。なお、20μmの篩を通過したものについては、10μmとし、2500μmの篩の上に残ったものについては、2700μmとした。
〔製造例1〕(アクリル酸の中和によるアクリル酸アンモニウムの調製)
アクリル酸は和光純薬製、試薬特級品を使用した。アクリル酸は使用する前に蒸留を行い、重合禁止剤を除去してから使用した。次に、アクリル酸100kgを水91.02kgに溶解した。この水溶液を氷浴にて冷却し、液温30℃以下に保ちながら、25質量%のアンモニア水溶液117.94kgを攪拌しながら徐々に加え、40質量%のアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
〔製造例2〕(アクリル酸の中和によるアクリル酸ナトリウムの調製)
アクリル酸は和光純薬製、試薬特級品を使用した。アクリル酸は使用する前に蒸留を行い、重合禁止剤を除去してから使用した。次に、アクリル酸100kgを水43.2kgに溶解した。この水溶液を氷浴にて冷却し、液温30℃以下に保ちながら、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液166.7kgを攪拌しながら徐々に加え、40質量%の75mol%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
〔製造例3〕
製造例1の40質量%アクリル酸アンモニウム水溶液を300kg、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.0623kg添加した。次に42質量%グリセリン水溶液を1.43kg添加した。続いて光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを0.0067kgと過硫酸アンモニウムを0.0033kg添加し、この単量体水溶液を10℃に冷却し、窒素ガスでバブリングすることにより脱気し、反応系中を窒素置換した。溶存酸素は1ppm以下となった。この水溶液を水溶液厚み20mmとなるようにして、高圧水銀ランプ(SEN EngineeringCO.,Ltd.製 MUMK−20−25XE、20W、発光長253nm;これを3台使用)を用いて、2分間紫外線を照射した(光量 684mJ/cm2)。内部温度は13℃から開始して最高到達温度は約90℃であった。その後、ゲルを取り出し粗解砕を行ってから130℃の熱風乾燥機を用いて1時間予備乾燥させた。この吸水性樹脂を吸水性樹脂(1)とした。
〔製造例4〕
吸水性樹脂(1)を、130℃の熱風乾燥機を用いて、更に1時間乾燥させたのち、ホモジナイザーで粉砕を行った。この吸水性樹脂を吸水性樹脂(2)とした。
〔製造例5〕
吸水性樹脂(2)を、175℃の熱風乾燥機を用いて25分加熱した。この吸水性樹脂を吸水性樹脂(3)とした。
〔製造例6〕
製造例1の40質量%アクリル酸アンモニウム水溶液を300kg、トリメチロールプロパントリアクリレートを0.024kg添加した。続いて光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを0.0067kgと過硫酸アンモニウムを0.0033kg添加し、この単量体水溶液を10℃に冷却し、窒素ガスでバブリングすることにより脱気し、反応系中を窒素置換した。溶存酸素は1ppm以下となった。この水溶液を水溶液厚み20mmとなるようにして、高圧水銀ランプ(SEN EngineeringCO.,Ltd.製 MUMK−20−25XE、20W、発光長253nm;これを3台使用)を用いて、2分間紫外線を照射した(光量 684mJ/cm2)。内部温度は13℃から開始して最高到達温度は約90℃であった。その後、ゲルを取り出し粗解砕を行ってから130℃の熱風乾燥機を用いて2時間乾燥させた。乾燥終了後、ホモジナイザーにて粉砕した。この吸水性樹脂を吸水性樹脂(4)とした。
〔製造例7〕
吸水性樹脂(4)50kgに、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.125kg、水を3kg、シリカを0.3kg添加し、混合した。これを25℃で真空乾燥させた。これを吸水性樹脂(5)とした。
〔製造例8〕
吸水性樹脂(5)を、180℃の熱風乾燥機を用いて10分加熱した。この吸水性樹脂を吸水性樹脂(6)とした。
〔製造例9〕
製造例2の40質量%の75mol%中和アクリル酸ナトリウム水溶液300kgに、トリメチロールプロパントリアクリレート0.036kgを添加した。続いて光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを0.0067kgと過硫酸ナトリウムを0.0033kg添加し、この単量体水溶液を10℃に冷却し、窒素ガスでバブリングすることにより脱気し、反応系中を窒素置換した。この水溶液を水溶液厚み20mmとなるようにして、高圧水銀ランプ(SEN EngineeringCO.,Ltd.製 MUMK−20−25XE、20W、発光長253nm;これを3台使用)を用いて、2分間紫外線を照射した(光量 684mJ/cm2)。内部温度は13℃から開始して最高到達温度は約90℃であった。その後、ゲルを取り出し粗解砕を行ってから130℃の熱風乾燥機を用いて2時間乾燥させる。乾燥終了後、ホモジナイザーにて粉砕した。この吸水性樹脂を吸水性樹脂(7)とした。
〔製造例10〕
吸水性樹脂(7)50kgをビーカーに仕込み、架橋剤としてグリセリンを1kg、水を0.5kg、シリカを0.3kgを添加し、25℃で真空乾燥させた。これを吸水性樹脂(8)とした。
〔製造例11〕
吸水性樹脂(8)を、180℃の熱風乾燥機を用いて10分加熱した。この吸水性樹脂を吸水性樹脂(9)とした。
それぞれの吸水性樹脂について、平均粒子径106〜300μmのものを篩わけにより取得した。その性能を以下の表1に示した。吸水性樹脂は加熱により性能が変化する。吸水性樹脂(3)、(6)、(9)に関しては、一般の吸収体に使用する場合に好ましい加熱条件を設定したものである。本発明においては、複合物製造中に加熱工程があるが、親水性繊維と接触した状態で脱水乾燥されると、親水性繊維と吸水性樹脂が直接接着する。複合物製造時においては、吸水性樹脂同士の接触がなく均一であることと、親水性繊維の効果により、吸水性樹脂単独の場合よりも、低温短時間の加熱で高い性能を発揮することができる。また、このとき、吸水性樹脂外表面の中和率も効率的に低下する。すなわち、吸水性樹脂(2)を使用した場合には、吸水性樹脂(3)と、吸水性樹脂(4)又は(5)を使用した場合には、吸水性樹脂(6)と、同程度の中和率になる。吸水性樹脂(3)、(6)のように、中和率が一定以下になるとアンモニアの揮発速度が遅くなり、塩濃度はほとんど低下しない。
日本製紙ケミカル社製の粉末セルロース、KCフロック(工業グレード)のW−50GKを500gと、吸水性樹脂(5)で300μmの篩を通過し90μmの篩を通過しなかったもの1000gとを、ヘンシェルミキサーへ入れてよく攪拌した。攪拌しながら、水をミスト状にして500g噴霧した。これを取り出し、イナートオーブンにて窒素気流下で140℃10分の加熱を行った。これを複合物(1)とする。複合物(1)の光学顕微鏡写真を図6に示す。吸水性樹脂同士の凝集はなく、吸水性樹脂の周りを繊維が完全に取り囲んで直接接着している。親水性繊維の平均粒子径は48μmであり、吸水性樹脂の平均粒子径は188μmであった。
この複合物1.0gを使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、0.04gであった。長時間リウェット法の結果は0.03gであった。
吸水性樹脂(4)で300μmの篩を通過し90μmの篩を通過しなかったものを使用する以外は実施例1と同様の方法で複合物を製造した。これを複合物(2)とする。親水性繊維の平均粒子径は46μmであり、吸水性樹脂の平均粒子径は193μmであった。この複合物1.5gを使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、0.06gであった。長時間リウェット法の結果は0.03gであった。
吸水性樹脂(8)を使用する以外は実施例1と同様の方法で複合物を製造した。これを複合物(3)とする。親水性繊維の平均粒子径は50μmであり、吸水性樹脂の平均粒子径は185μmであった。この複合物1.3gを使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、0.06gであった。長時間リウェット法の結果は0.04gであった。
最初に粉末セルロースと水を混合し、混合しながらそこへ吸水性樹脂(5)をゆっくりと加えていく以外は実施例1と同様の方法で複合物を製造した。親水性繊維の平均粒子径は43μmであり、吸水性樹脂の平均粒子径は196μmであった。これを複合物(4)とする。この複合物1.0gを使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、0.04gであった。長時間法リウェットの結果は0.03gであった。
吸水性樹脂(4)を用い、水にグリセリン20gを溶解して使用した以外は、実施例1と同様の方法で複合物を製造した。親水性繊維の平均粒子径は43μmであり、吸水性樹脂の平均粒子径は192μmであった。これを複合物(5)とする。この複合物1.0gを使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、0.03gであった。長時間リウェット法の結果は0.03gであった。
ユニチャーム社製の「ライフリーさわやかパット20cc用」からバックシートとティッシュ部分を回収した。ここへ、ホットメルト接着剤を使用して複合物(1)1.0gを接着させた。これを吸収シート(1)とする。この回収シート(1)を使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、0.02gであった。長時間リウェット法の結果は0.02gであった。
疎水性繊維(東洋紡製PET/PE芯鞘繊維、1.7デニール、繊維長40mm)から構成されたアンダーシート(16g/m2)を配置した。ここへ、複合物(1)と疎水性繊維(東洋紡製PET/PE芯鞘繊維、11デニール、繊維長50mm)を質量比5:1で混合したものを150g/m2となるよう配置した。その上に、親水性繊維(レオニア製ロールパルプでトリートメント加工品をハンマー粉砕)と疎水性繊維(東洋紡製PET/PE芯鞘繊維、1.7デニール、繊維長40mm)を6:4で混合し、30g/m2となるように均一にのせ、界面活性剤(サンモリン OT−70 5%)を20g/m2となるようにスプレーにて噴霧した。この時の水分量は吸水性樹脂に対して20質量%であった。コンベア式の乾燥炉にて温風乾燥(乾燥温度145℃、乾燥時間6秒、風速5m/秒)を行い、平プレス(温度110℃、空気圧力0.1N/cm2)にてプレスを行って、巻取りを行い、シートを取得した。これを吸水シート(2)とした。この吸水シート(2)170mm×50mmを使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、0.02gであった。長時間リウェット法の結果は0.02gであった。
〔比較例1〕
水を使用しない以外は実施例1と同様の方法をおこなった。水が存在していないため、親水性繊維と吸水性樹脂はほとんど接着しなかった。
吸水性樹脂と粉末セルロースを分離した後、吸水性樹脂0.67g、粉末セルロース0.33gを測りとり、再度均一に混合して、短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、リウェット量は1.3gであった。長時間リウェット法の結果は0.05gであった。
〔比較例2〕
親水性繊維として、レオニア製ロールパルプ(トリートメント加工品)をハンマー粉砕したものを用いた以外は実施例1と同様の方法をおこなった。このパルプの平均粒子径は800μmであった。光学顕微鏡で観察したところ、パルプが長すぎて凝集がおこっていた。この複合物1.0gを使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、リウェット量は1.4gであった。長時間リウェット法の結果は0.03gであった。
〔比較例3〕
日本製紙ケミカル社製粉末セルロース、KCフロック(食品添加物)W−400Gから篩を用いて10μm以下の成分を回収し、親水性繊維として、回収したものを使用する以外は、実施例1と同様の方法で複合物を製造した。この複合物1.0gを使用して短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、1.3gであった。長時間リウェット法の結果は0.03gであった。
〔比較例4〕
市販品の軽失禁パッドの20cc用からドライヤーでホットメルトをはがしながら吸収体部分のみを回収した。この吸収体は不織布の袋の内側にホットメルト接着剤を塗布し、吸水性樹脂を塗布した形態の吸収体であり、接着していない状態の吸水性樹脂も多く存在していた。吸収体部分は1.76gであった。接着していない吸水性樹脂があったが、中心部にあつめて短時間リウェット法で測定したところ、0.6gであった。一方、吸水性樹脂が偏った状態で測定したところ、リウェット量は1.2gとなった。長時間リウェット法の結果はそれぞれ0.4g、0.7gであった。
〔比較例5〕
市販品の軽失禁パッド20cc用を用意し、これを比較吸収性物品とした。上部からギャザー付きのトップシート、不織布、比較例4の吸収体、ティッシュ紙、粉砕パルプ、ティッシュ紙、防水フィルムという構成であった。短時間リウェット法でリウェット量を測定したところ、0.06〜0.2gと評価結果が安定しなかった。長時間リウェット法の結果は0.03〜0.05gであった。
紙おむつ、尿パッド、及び生理用ナプキン等の使い捨て用の衛生材料の吸収部材、動物用シーツ、ペットシーツ等の愛玩動物用の排泄物処理材の吸収部材、冷凍水産物の運搬の際に、水産物が氷解した水に濡れるのを防止する吸収性シート、又は鉢植えを被う水蒸発防止用の吸収性シート、鉢植えの下に敷く吸収性シート、水槽の回りに配置する吸収性シート、結露防止用シート等に使用する吸収性シート、傘立ての受部等の滴の垂れる箇所に配置して、傘等から落ちる水滴を吸収する水滴吸収マット、乗り物のヘッドカバー用のマットとして、又はヘルメット又は帽子内の蒸れ防止用マット、例えば温水洗浄便座(TOTO株式会社製のウォシュレット(登録商標)便器など)での排便後のトイレットペーパーシート、雨天の場合に、屋根の無いイベント会場の雨天の日の雨による床の濡れ防止用吸収性マット、雨の日の自動車、列車若しくは飛行機などの乗り物の床の濡れ防止用吸収性マット、雨の日の病院、サービスエリア、デパート、ホテル、店舗、オフィスビル若しくはレジャー施設の床の濡れ防止用吸収性マット、冷蔵庫内の濡れ防止用吸収性マット、調理場の床の濡れ防止用吸収性マット、並びに炊事場又は調理場の生ゴミのドリップ吸収用の吸水シート、給水設備、給湯設備又は便器若しくは洗面具等の衛生器具を備える床の濡れ防止用吸収性マット、冷蔵庫の周囲の床の濡れの防止用吸収性マット、レジャーマツト若しくはマッサージ療法用シーツ、並びにベット用補助マット、野菜、青果物若しくは花卉類の保水又は調湿機能を有する包装材料、鮮魚、生肉、総菜食品又は弁当等の保水又は調湿機能を有する包装材料、並びに種子、菌株、幼苗若しくは球根の包装材料、機械類や窓の掃除用、建築物の天井部、壁部、床部若しくは窓部等の結露及び濡れの拭き取り用のウエス又は雑巾として、園芸植物の栽培時における水蒸発防止用等の産業上の利用可能性をもつ。
1 伸縮性不織布
10 複合繊維
11 伸縮性繊維
11a〜11f 伸縮性繊維の露出部
12 非伸縮性繊維
21、22 ホッパ
23、24 押出機
25 ダイ
25a ノズル開口
25b 中央開口
25c 側部開口
26 冷却チャンバ
27 送風ブロワ
28 捕集コンベア
28a プーリ
28b 無端ベルト
29 サクションボックス
30 吸引ブロワ
31 ガイドローラ
32 熱エンボスローラ
33 ニップローラ
34 ワインダローラ
40 従来の複合繊維
41 伸縮性繊維
42 非伸縮性繊維

Claims (15)

  1. 平均粒子径が10〜200μmの親水性繊維と平均粒子径が50〜500μmの吸水性樹脂から構成され、親水性繊維と吸水性樹脂が直接接着していることを特徴とする複合物。
  2. 親水性繊維がセルロース系繊維であることを特徴とする請求項1に記載の複合物。
  3. 親水性繊維と吸水性樹脂の質量比が、1:5〜2:1であることを特徴とする請求項1、又は、請求項2に記載の複合物。
  4. 吸水性樹脂が酸基を有しており、
    吸水性樹脂が酸基と反応しうる官能基を有している、又は、吸水性樹脂あるいは複合物が酸基と反応しうる官能基を2つ以上有する化合物を含有しており、
    該酸基が、酸基と反応しうる官能基により架橋していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の複合物。
  5. 見かけの嵩比重と、圧縮後嵩比重の比が1:2〜1:10であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の複合物。
  6. 吸水性樹脂被覆率が80%以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の複合物。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の複合物が、基材へ接着剤にて接着されていることを特徴とする吸水シート。
  8. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の複合物が、熱可塑性繊維の熱融着によってシート化されていることを特徴とする吸水シート。
  9. 請求項7、又は、請求項8に記載の吸水シートと補助部材から構成されることを特徴とする吸収性物品。
  10. 請求項7、又は、請求項8に記載の吸水シートと伸縮性不織布から構成されることを特徴とする吸収性物品。
  11. 親水性繊維と吸水性樹脂と水の混合物を、脱水乾燥させる工程を含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載の複合物の製造方法。
  12. 親水性繊維と吸水性樹脂を混合し、これに水を加える工程、又は、親水性繊維と水を混合し、これに吸水性樹脂を加える工程を含む、請求項11に記載の複合物の製造方法。
  13. 脱水乾燥させる工程以前の親水性繊維と吸水性樹脂と水の混合物中の、吸水性樹脂と水の質量比が20:1〜1:5であることを特徴とする請求項11、又は、請求項12に記載の複合物の製造方法。
  14. 熱可塑性繊維の熱融着が熱風にてなされることを特徴とする請求項8に記載の吸水シートの製造方法。
  15. 吸水シートの製造工程と、補助部材の装着工程が同一ラインで行われることを特徴とする請求項9に記載の体液吸収物品の製造方法。
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