JP2014001463A - 銀付調人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

銀付調人工皮革およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は従来の基材よりも高分子弾性体の含浸量が少なく安価で、風合いがソフトかつ充実感を有する銀付調皮革を提供する。
【解決手段】 以下(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とする銀付調人工皮革。
(1)基材を構成する布帛の見掛け密度が0.40〜0.80g/cm
(2)高分子弾性体Aが布帛に対して5%以下、
(3)基材の表面に高分子弾性体Bからなる表皮層が存在、
(4)表皮層を形成する高分子弾性体Bが、基材の表面から10〜100μmの範囲で基材の厚さ方向内部へ浸透
【選択図】 なし

Description

本発明は従来よりも基材内部に存在する高分子弾性体の量が少なく安価に製造可能で、風合いがソフトかつ充実感を有する銀付調人工皮革に関するものである。
近年、合成皮革や人工皮革は、天然皮革の代替品として靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリアなどのあらゆる分野に多く利用されている。これらは、より高い品質と感性、とりわけ優美な天然皮革調の外観と柔軟な素材が求められている。
従来の人工皮革用基材の製造方法の多くは、概略次のようないくつかの工程からなる。溶解性、分解性を異にする2種類の重合体から紡糸した多成分系繊維をステープル化し、カード、クロスラッパー、ランダムウェーバー等を用いて所望の重量のウェブとし、次いでニードルパンチ、ウォータージェット等により繊維を互いに絡ませることで絡合不織布化した後、ポリウレタンに代表される高分子弾性体の溶液若しくはエマルジョン液を付与して凝固させ、その後で該多成分系繊維中の一成分の除去または減量により極細繊維とする方法、あるいは前記において高分子弾性体を含浸・凝固させる工程と該多成分系繊維を極細繊維とする工程を逆の順序で行う方法である。これらの方法により絡合不織布を構成する繊維を極細化させた柔軟な人工皮革用基材を得ることができ、それら基材をベースとする各種人工皮革素材を用いることで、製品は極細繊維特有の風合いと外観による優れた素材感が得られることが種々の製品市場で広く認知されている。
例えば、銀付調人工皮革を得る方法として、0.1デシテックス以下の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタン樹脂を含浸凝固した基材に、離型紙を用いて天然皮革のシボを再現した樹脂フィルムを作製し、該基材に貼り付ける造面方法(所謂、乾式造面方法)は公知であるし、また、上記基材の表面にポリウレタン溶液をコーティングして湿式凝固して湿式多孔構造からなる発泡層を形成した後に着色してエンボスロールで型押しする方法(所謂、湿式造面方法)も公知である(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、前者の乾式造面方法では、接着層を半乾燥状態としているために基材層への沈み込みが実質的になく、または基材層表層部の微細な気孔を潰すことなく製造できるものの、接着力の不足による剥離強力の低いものとなる。現実的には剥離強力を維持するために、乾燥を最小限にとどめざるを得ず、基材層表層部の微細な気孔が存在する十分な柔軟性を持ったシートを得ることが不可能であり、さらに一度離型紙上に銀付用樹脂や接着用樹脂をコーティングしたものを貼り合わせる作業が必要になりプロセスが増えるばかりか、コーティングした樹脂が存在しない隙間が湿式凝固法より多くできるため、充実感が劣る問題があった。一方、後者の方法では、特に基材の内部に高分子弾性体の含浸が少ない場合、基材層中に銀面層用樹脂が浸透し過ぎる問題と同時に、基材層表層部の微細な気孔を構成している高分子弾性体を溶かして気孔を潰してしまうために折れシボが悪く、風合いが硬くなり、一体感のないものとなる問題があった。
後者の湿式造面方法の改善として、ポリウレタン水混和性有機溶剤溶液を離型紙上に塗布したあと、離型紙と水を含浸させた基材と貼り合せ一体化しポリウレタンを凝固させることにより、基材中にポリウレタンが入り風合いが固くなることを防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、本方法は、基材が多孔質樹脂を含まない繊維のみからなるものであり、繊維中にポリウレタンを入り込ませない工夫が見られるが、得られるシートは基材中に多孔質樹脂を含まないために皮革様のものとはほど遠くゴムライクなものであった。
一方、少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂である極細繊維発生型繊維からなる長繊維ウエブを絡合処理し、面積収縮率が35%以上である収縮処理および極細繊維化処理を行って得られる極細長繊維絡合シートが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。本方法によれば、含浸する高分子弾性体量を1〜15%まで低減させても、皮革様シートとして優れた充実感と柔軟性を兼ね備えたものが得られる。
さらに上記提案をさらに進めたものとして、極細長繊維の繊維束絡合体の表面から2/3の厚みの領域である表層の繊維占有率が36〜56体積%であり、裏面から1/3の厚みの領域である底層の繊維占有率が表層よりも低くしたものが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかし上記した2つの技術も基材に含浸する高分子弾性体量をより少ない範囲に規制すると、より柔軟性に優れるものの、乾式造面法よりもプロセスが簡略な湿式造面法で造面すると、基材に存在する高分子弾性体が少ないことに起因した造面樹脂の沈み込みが顕著に現れてしまい、風合いが硬い銀付調人工皮革となってしまう。以上、含浸する高分子弾性体が少ない基材を用いて、湿式造面方法における表面層(銀付調人工皮革の銀面層)を形成するに際して、表面層を構成する樹脂の沈み込みを抑制・制御する方法や、風合いがソフトでかつ充実感を有する安価な銀付調人工皮革は未だ得られていない。
特公昭60−71777号公報 特公昭46−91541号公報 特開2006−2287号公報 国際公開第2011/121940パンフレット
本発明は従来よりも基材内部に存在する高分子弾性体の量が少なく安価に製造可能で、風合いがソフトかつ充実感を有する銀付調人工皮革を提供することにある。
上記課題を達成すべく本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とする銀付調人工皮革である。
(1)基材を構成する布帛の見掛け密度が0.40〜0.80g/cm
(2)高分子弾性体Aが布帛に対して5質量%以下、
(3)基材の表面に高分子弾性体Bからなる表皮層が存在、
(4)表皮層を形成する高分子弾性体Bが、基材の表面から10〜100μmの範囲で基材の厚さ方向内部へ浸透、
また、本発明は、三次元絡合不織布の表面に表皮層を形成してなる銀付調人工皮革であって、下記工程(1)〜(5)を順次行うことを特徴とする銀付調人工皮革の製造方法である。
工程(1):水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分とで形成された複合繊維からなるウェブを絡合して複合繊維絡合体を形成する工程、
工程(2):水溶性高分子成分を除去して三次元絡合不織布を形成する工程、
工程(3):工程(1)で得られる複合繊維絡合体または工程(2)で得られる三次元絡合不織布の内部に高分子弾性体Aを三次元絡合不織布に対して5質量%以下とする工程、
工程(4):三次元絡合不織布の内部にポリアミド誘導体の塩化合物を付与する工程、
工程(5):三次元絡合不織布の表面に高分子弾性体Bからなる表皮層を湿式凝固法により形成する工程、
本発明の方法によれば、人工皮革用の基材において布帛の内部に含有させる高分子弾性体の量を低減しても、該基材の表面に湿式凝固法を用いて表面層を形成するに際し、湿式凝固する高分子弾性体を過度に内部に沈み込ませず、剥離強力が低下することなく充実感と柔軟性を両立した銀付調人工皮革を提供することが可能になる。
本発明を達成するための具体的な手段の例を以下に述べる。まず、本発明に用いる基材は、見掛け密度が0.40〜0.80g/cmの布帛であれば特に限定するものではなく、不織布、織編物で代表される布帛を用いることが可能であるが、皮革様の風合いや充実感や柔軟性に優れるため、三次元絡合不織布が好ましい。
本発明の布帛を構成する繊維は、皮革様の風合いを得るため極細繊維であることが好ましく、また強度が高くなる点から長繊維であることが好ましい。また、皮革様の風合いと機械強度を得る点で布帛を構成する繊維は、極細長繊維束三次元絡合不織布が最も好ましく、繊維束を構成する極細繊維の平均繊度は、0.001〜0.5dtex、さらには0.01〜0.4dtex、とくには0.02〜0.3dtexの範囲であることが好ましい。極細繊維の平均繊度が低すぎる場合には、繊維機械強度が劣る場合や、染色するに際しては、発色性が劣る場合がある。また、極細長繊維の平均繊度が高すぎる場合には、天然皮革のような表面の緻密感やボリューム感が得られにくくなる傾向がある。
本発明に好適な極細繊維を得るためには、例えば化学的または物理的性質の異なる少なくとも2種類の可紡性成分からなる複合繊維を用いることが好ましく、高分子弾性体Aを含浸させた後または含浸させる前の適当な段階で少なくとも1種類の成分を抽出除去して繊維形態を変えることが可能な極細繊維発生型繊維がより好ましい。この極細繊維発生型繊維は、海島型複合紡糸繊維、海島型混合紡糸繊維などで代表される海島型繊維や、花弁型や積層型繊維等の多成分系複合繊維のいずれも使用でき、チップブレンド(混合紡糸)方式や複合紡糸方式で代表される方法を用いて得られる。また、得られる三次元絡合不織布の強度が向上する点から、海島型繊維が好ましい。
海島型繊維の場合、抽出後の繊維を形成する成分としては、公知の成分、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系およびポリオレフィン系等の成分であれば特に限定するものではない。極細繊維を形成する樹脂は、極細繊維を形成可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート,ジメチルイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート,スルホイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート,ポリトリメチレンテレフタレートポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体などの脂肪族ポリエステル;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6−12などのポリアミド;ポリエチレン,ポリプロピレン(PP),ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール;ポリウレタン系エラストマー,ポリアミド系エラストマー,ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
上記樹脂の中では、PET、イソフタル酸変性PETなどの変性PET、ポリ乳酸、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド6−12、ポリプロピレンなどが好ましい。特に、PETおよびイソフタル酸変性PET等の変性樹脂は、後述する湿熱収縮処理時における収縮特性が良好であるので特に好ましい。なお、変性PETにおける変性量は、例えば、0.1〜30mol%、さらには0.5〜15mol%、とくには1〜10mol%の範囲が好ましい。
また海島型繊維の抽出成分は、水溶性高分子成分であって、抽出後の繊維を構成する成分は、水難溶性成分である。水難溶性成分は、水溶性高分子成分との親和性の小さいポリマーであって、かつ紡糸条件下で水溶性高分子成分の溶融粘度より大きい溶融粘度であるか、あるいは表面張力の大きいポリマーであることが好ましい。上記成分の組み合わせであれば、化学薬品などを用いることなく熱水で可塑化し、後術する収縮処理する場合には収縮と抽出を同時に行え、さらに後述する高分子弾性体水分散液を三次元絡合不織布へ付与する場合、添加した添加剤を同時に除去できる人工皮革用の基材の製造が可能となるため好ましい。
本発明の複合繊維絡合体を構成する複合繊維に用いられる水溶性高分子成分としては、紡糸可能であり、かつ水溶液で抽出可能な成分であれば公知のポリマーが使用できるが、熱水で溶解除去が容易であり、抽出の際水難溶性成分や高分子弾性体成分の分解反応が実質的に起こらず、水難溶性成分や高分子弾性体成分が限定されない点、更には環境に配慮した点等から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(以下、単にPVAと称する場合がある。)が好ましい。PVAとしては、粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)が200〜500のものが好ましく、中でも230〜470の範囲のものが好ましく、250〜450のものが特に好ましい。重合度が200未満の場合には溶融粘度が低すぎて、安定な複合化が得られにくい。重合度が500を超えると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルから樹脂を吐出することが困難となる。重合度500以下のいわゆる低重合度PVAを用いることにより、熱水で溶解するときに溶解速度が速くなるという利点も有る。
ここで言うPVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAを再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められるものである。
P=([η]10/8.29)(1/0.62)
重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に達せられる。
本発明に用いられるPVAのケン化度は90〜99.99モル%の範囲であることが好ましく、93〜99.98モル%の範囲がより好ましく、94〜99.97モル%の範囲がさらに好ましく、96〜99.96モル%の範囲が特に好ましい。ケン化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く、熱分解やゲル化によって満足な溶融紡糸を行うことができないのみならず、生分解性が低下し、更に後述する共重合モノマーの種類によってはPVAの水溶性が低下し、本発明の複合繊維を得ることができない場合がある。一方、ケン化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することができにくい。
本発明で使用されるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。PVAを溶解した後のPVA含有廃液の処理には活性汚泥法が好ましい。該PVA水溶液を活性汚泥で連続処理すると2日間から1ヶ月の間で分解される。また、本発明に用いるPVAは燃焼熱が低く、焼却炉に対する負荷が小さいので、PVAを溶解した排水を乾燥させてPVAを焼却処理してもよい。
本発明に用いられるPVAの融点(Tm)は、160〜230℃が好ましく、170〜227℃がより好ましく、175〜224℃が特に好ましく、180〜220℃がとりわけ好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し繊維強度が低くなると同時に、PVAの熱安定性が悪くなり、繊維化できない場合がある。一方、融点が230℃を超えると、溶融紡糸温度が高くなり紡糸温度とPVAの分解温度が近づくためにPVA繊維を安定に製造することができない。
PVAの融点は、DSCを用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
本発明に用いられるPVAは、ビニルエステル単位を主体として有する樹脂をケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを容易に得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
本発明で使用されるPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体の種類としては、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中にPVA構成単位の1〜20モル%存在していることが好ましく、さらに4〜15モル%が好ましく、6〜13モル%が特に好ましい。さらに、α−オレフィンがエチレンである場合には、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%、より好ましくは6〜13モル%導入された変性PVAを使用する場合である。
本発明で使用されるPVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、a、a’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃の範囲が適当である。
本発明において好適な複合繊維は、機械的物性に優れることから長繊維が好ましく、複合繊維の繊度は5dtex(以下、デシテックスと称する場合もある)以下が好ましく、3デシテックス以下がより好ましい。人工皮革などの繊維質シートでは、一般的に繊度が小さいほど目付斑が少なく柔軟な風合いが得られる。本発明においても複合繊維の繊度が5デシテックスを超える場合には基材の風合いが硬くゴワゴワとした触感が強調され適当でない。しかしながら、あまりに繊度が小さすぎると基材中の繊維が過密充填になるので、複合繊維は0.5デシテックス以上、さらには1デシックス以上が好ましい。
複合繊維は、従来の銀付人工皮革用の基材(単に基材と称する場合もある。)において最も一般的に実施されてきたように、目的の繊度に紡糸、延伸し、捲縮を付与した後で任意の繊維長にカットして、ステープルとし、カード、クロスラッパー、ランダムウェバー等を用いて複合繊維短繊維ウェブを製造してもよいが、本発明では、複合長繊維ウェブをもちいることが好ましい。複合長繊維ウェブは、紡糸ノズル孔から吐出した中空繊維発生型複合繊維を冷却装置により冷却せしめた後、エアジェット・ノズルのような吸引装置を用いて、目的の繊度となるように、1000〜6000m/分の複合繊維の引取り速度に該当する速度で高速気流により牽引細化させた後、開繊させながら移動式ネットなどの捕集面上に堆積させて繊維ウェブを形成させ、次工程に搬送するためにウェブの形態を安定化する必要がある場合は、引き続きこの繊維ウェブをプレス等により部分的に圧着して形態を安定化させることにより、得ることができる。そして、複合長繊維ウェブは、従来の短繊維を経由する繊維ウェブ製造方法では必須の原綿供給装置、開繊装置、カード機などの一連の大型設備を必要としないという生産上の利点がある。また、長繊維ウェブを用いて得られる長繊維不織布、あるいはそれを用いた人工皮革用の基材は、構造において連続性の高い繊維からなるので、強度などの物性面においても従来一般的であった短繊維不織布、あるいはそれを用いた人工皮革用の基材に比べて高いものを得ることができるといった利点がある。
このようにして得られた繊維ウェブを、目的とする目付の不織布を得るため、複数枚重ね合わせ、下記のニードルパンチングを含む絡合処理によって、繊維を実質的に切断することなく、厚み方向に繊維を配向させつつ繊維同士を絡合させて複合繊維絡合体とする。
本発明におけるニードルパンチング工程で用いるフェルト針は、公知の物が用いられるが、繊維ウェブの厚さ方向への複合繊維同士の交絡を確実に行うためには、針をウェブへ突き刺す際に針1本当たりの抵抗がより低く、繊維を切断させにくい方が好ましいので、より細い針、あるいはバーブが少ない1バーブ針が好適に用いられる。また、不織布の表層領域の見掛け密度を中層付近より高くし、平滑でより緻密な表面状態を得るためには、バーブが多めの3バーブ、6バーブ、9バーブ等の針が効果的である。従って、これらの針を組み合わせて用いることで、例えば繊維同士が融着しているなどの交絡させにくい状態にある繊維ウェブを用いた場合でも、効果的に交絡させた上で表面層は平滑で緻密な状態にある複合繊維絡合体を得ることも可能である。
ニードルパンチング工程において、繊維ウェブに突き刺すフェルト針の単位面積辺りの本数は、使用する針の形状やウェブの目付により異なり、使用する針のスロートデプスが深く、ウェブを貫通するバーブ数が多く、ウェブの目付が高い場合は少ない本数で効果的に繊維同士を交絡させ易く、逆にスロートデプスが浅く、繊維ウェブを貫通するバーブ数が少なく、ウェブの目付が低い場合は必要な本数が多くなるが、一般に200〜2500本/cmの範囲で設定される。一般的に海島型複合繊維のニードルパンチング工程において、ニードルパンチング条件が強すぎる場合には海島型複合繊維の切断や繊維の損傷がおこり交絡しにくく、またニードルパンチング条件が弱すぎる場合には厚さ方向への繊維の配列数が不足し易い傾向にある。ニードルパンチングにより得られた複合繊維絡合体の目付けとしては100〜3000g/mの範囲が好ましい。
次に、ニードルパンチなどの絡合処理後の複合繊維絡合体を収縮処理する必要がある。収縮処理は公知の方法を行うことが可能であるが、収縮処理とPVAを溶解除去することによって極細繊維化処理を同時に行う点で、熱水処理により連続して極細繊維を発現させ三次元繊維絡合不織布を収縮させることが好ましい。上記処理により連続して極細繊維を発現させ三次元絡合極細繊維不織布を得ることが可能である。この際、収縮処理による面積収縮率が35%以上であることが天然皮革様の基材として使用する上で好ましい。面積収縮率35%未満の場合には、得られる三次元絡合極細繊維不織布の見かけ密度が充分に高くならず、該基材の形態保持が困難となるため、基材の製造工程の取扱上または工程通過性の点で不都合を生じるとともに、皮革様の基材として充分な強度を得られず、後に人工皮革として仕上げた場合の充実感も劣る。収縮処理の条件としては、第一段階として好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下の温水中に5〜300秒間浸漬した後、第二段階として好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上の温水中に浸漬する。以上の方法によって面積収縮率が35%以上の状態で、更に極細繊維発生型繊維が極細繊維化された三次元絡合不織布を得ることができる。また、面積収縮率の上限は特に設けないが、物理的な収縮の限度や風合いなどを考慮すると80%以下であることが好ましい。なお、ここでいう面積収縮率とは、以下の式で示すように、収縮前の面積から収縮後の面積を引いた値を収縮前の面積で除した比率を表す。
(収縮処理前のシート面の面積−収縮処理後のシート面の面積)/収縮処理前のシート面の面積×100
前記面積は、シートの表面の面積と裏面の面積の平均面積を意味する。
また、溶解効率を高めるために、必要に応じて、ロールでのニップ処理、高圧水流処理、超音波処理、シャワー処理、攪拌処理、揉み処理等を行ってもよい。
得られた収縮後の三次元絡合不織布の密度は、後に得られる銀付調人工皮革の充実感、風合いの観点から0.40〜0.80g/cmであることが必要である。0.40g/cm未満では、風合いは柔らかいものの充実感に欠け、後述する湿式多孔構造からなる表皮層を形成した後に得られる銀付調人工皮革の一体感に劣り、バランスの悪いものとなる。さらに、湿式凝固による湿式多孔構造からなる表皮層を形成する場合、表皮層を形成する高分子弾性体が基材の内部まで過度に浸透しやすく、風合いが硬くなる。一方、0.80g/cmを越える場合、充実感は得られるものの、皮革様の風合いが固く極端に劣ったものとなるため、不適当である。
皮革様の基材は、三次元繊維絡合体を拘束することにより形態安定性を付与したり、剛性を付与したり、風合いを改良したり調整したりする目的で、必要に応じて高分子弾性体Aを含有させてもよい。皮革様の基材が高分子弾性体Aを含有する場合、その割合は、布帛特に三次元絡合体の質量に対し、5質量%以下であることが重要であり、好ましくは0〜4.5質量%、より好ましくは0〜4質量%である。なお、高分子弾性体Aの含有割合が多すぎる場合には、ゴム感が強くなり風合いを損なう、さらに製造コストが高くなる。また、基材が高分子弾性体Aを含有する場合、高分子弾性体Aは、上記範囲内であれば、繊維束の内部に含浸していてもよく、繊維束の外部に付着していてもよい。
高分子弾性体Aとしては、ゴム、エラストマーなどが特に限定なく使用される。その具体例としては、例えば、ブタジエンゴム,イソプレンゴム,クロロプレンゴム,スチレン−ブタジエンゴムなどのジエン系ゴム;ニトリルゴム,水素化ニトリルゴムなどニトリル系ゴム;アクリルゴムなどのアクリル系ゴム;ポリエーテルウレタンゴム,ポリエステルウレタンゴムなどのウレタン系ゴム;シリコーン系ゴム;エチレン−プロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;フッ素系ゴム;スチレン−ブタジエンブロック共重合体,スチレン−イソプレンブロック共重合体,スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体,スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体,アクリロニトリル−スチレン共重合体,もしくはこれらの水添物又はエポキシ化物などのポリスチレン系エラストマー;プロピレン−エチレン・プロピレンゴム共重合体などのオレフィンとゴム成分との共重合体、又はその水添物などのポリオレフィン系エラストマー;ポリエーテルウレタンエラストマー,ポリエステルウレタンエラストマー,ポリエーテルエステルウレタンエラストマー,ポリカーボネートウレタンエラストマー,ポリエーテルカーボネートウレタンエラストマー,ポリエステルカーボネートウレタンエラストマーなどのポリウレタン系エラストマー;ポリエーテルエステルエラストマー,ポリエステルエステルエラストマーなどのポリエステル系エラストマー;ポリエステルアミドエラストマー,ポリエーテルエステルアミドエラストマーなどのポリアミド系エラストマー;塩化ビニル系エラストマーなどのハロゲン系エラストマー;などが挙げられる。これらは、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記高分子弾性体の中では、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などのエラストマー、特に、ポリウレタン系エラストマーが好ましい。
本発明では、銀付調人工皮革とするため後述する表皮層形成において、表皮層を構成する高分子弾性体Bが表面から一定以上の沈み込みが抑制されていなければならず、前記した皮革様の基材へ特定の前処理剤を付与する必要がある。そして前処理剤としてはポリアミド誘導体の塩化合物が必要であり、ポリアミド誘導体が下記一般式(1)であることが好ましい。
CONR(RNR’)nOCR’ (1)
(但し、R、R’は炭素数11〜25のアルキル基、Rは炭素数2ないし3のアルキレン基、R、R’はHあるいは分子間架橋結合で、同一であっても異なるものであってもよく、nは1〜8の整数)
本発明において使用される上記ポリアミド誘導体は、アルキル基の炭素数が11〜25の高級脂肪酸とアルキレン基の炭素数が2ないし3のポリアルキレンポリアミンを脱水縮合し、さらに必要に応じ尿素あるいはチオ尿素等で架橋して得られる前記一般式で表される化合物あるいはそれをエピハロヒドリンにより重縮合することにより得られる。これに用いられる高級脂肪酸の例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギジン酸、ベヘニン酸等が挙げられ、なかでもアルキル基の炭素数が17以上の高級脂肪酸が好ましい。
またポリアルキレンポリアミンの例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン等が挙げられる。さらにエピハロヒドリンと反応させると、エピハロヒドリンは2官能性の化合物であるため、ポリアミド誘導体をカチオン化すると共に架橋し、その結果、塩化合物が得られる。なかでも[C2245CONHCNHCOC2347]HClが最も好ましい。なお基材の表面に表皮層を形成する前の前処理剤としてポリアミド誘導体の塩化合物が必須であることの明確なメカニズムは不明だが、濡れ性と撥水性のバランス効果があり、適度な繊維接着性を有することで、極細繊維間、あるいは極細繊維束間に対する濡れ性を適度に抑制する効果によって、基材の表面から内部方向に高分子弾性体Bの溶液の浸透を抑える効果が有ると推定している。本発明の前処理剤を用いれば、基材に含浸されている高分子弾性体Aが5質量%以下と非常に少なくとも、また高分子弾性体Aが溶剤で希釈されたものを湿式凝固してスポンジのネットワークの無い水系の分散液であっても溶剤系高分子弾性体Bの浸透が抑制される点で優れた効果を有することが可能である。
また、前記前処理剤を付与する際、より強い柔軟性や撥水性を持たせるため柔軟剤や撥水剤を添加してもかまわないが、後に表面へ塗布する高分子弾性体B溶液に使用している溶剤と溶解度パラメーター(以下、SP値と記載)が近い柔軟剤を使用すると高分子弾性体B溶液と柔軟剤や撥水剤が相溶し、高分子弾性体B溶液が基材内部へ浸透しやすくなるため好ましくない。例えば高分子弾性体B溶液で使用する溶剤がDMF(SP値24.8)の場合、エーテル類(SP値20.5)の組み合わせで用いると、高分子弾性体B溶液が基材の内部へ浸透しやすくなり、本発明で目的にしている銀付調人工皮革が得られ難くなるため好ましくない。
本発明では、銀面調人工皮革とするため、基材表面に高分子弾性体Bからなる表皮層を銀面調の樹脂層として形成する。高分子弾性体Bからなる表皮層の形成方法としては、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、液面接触法、ナイフコート法などで高分子弾性体Bの溶液または分散液を基材の表面に直接塗布して形成する湿式凝固法や、意匠模様付きの離型紙上に高分子弾性体Bの溶液または分散液を付与し形成された銀面調の樹脂層を基材の表面に貼り合わせる乾式凝固法等が挙げられるが、生産性を落とさず、高い剥離強力を有するものが得られやすい点から、高分子弾性体Bの分散液または溶液を繊維束絡合体の表面に直接塗布して形成する湿式凝固法を採用し、表面層としては、湿式凝固法から形成される湿式多孔構造が好ましい。
表皮層の形成に用いられる高分子弾性体Bとしては、従来から銀面調人工皮革の製造に用いられている公知の高分子弾性体が用いられ、高分子弾性体Aと同じく、ゴム、エラストマーなどが特に限定なく使用される。具体的な例は、基材に付与する高分子弾性体Aで記載したものと同じもの、特にポリウレタンが好ましく、ポリウレタンをDMF溶液で希釈した後、基材表面に塗布し、公知の方法で湿式凝固する。
表皮層の厚さは、用途において必要とされる表面強度などの機械物性を有し、かつ基材との風合いバランスや基材とトータルでの厚さが所望の範囲に入れば、特に限定されるものではないが、目安は20〜500μmの範囲であり、例えば平滑でありかつ柔軟で一体感のある風合いを特徴としつつ、機能性として通気性、透湿性をも向上させたような人工皮革を得たい場合などは、50〜300μmが好ましい。高分子弾性体Bの溶液や分散液および凝固方法は、上記の表皮層の厚さが得られるのであれば、公知の方法が採用可能である。
本発明では前記した通り、表皮層を形成する前に少なくとも基材の表面に前処理を施すことによって表皮層の浸透(以下、沈み込みと称する場合もある。)が抑制され、得られた表皮層を形成する高分子弾性体Bの浸透深さは、基材の表面から10〜100μmの範囲で基材の厚さ方向内部へ10〜100μm浸透しており、好ましくは20〜90μm、より好ましくは30〜80μmである。沈み込み深さが10μm未満であれば、表皮層と基材との接着性が弱く剥離強力に劣る一方、沈み込み深さが100μmを越える場合、得られる銀付調人工皮革の風合いが固く劣ったものとなると共に、使用する高分子弾性体Bの使用量が増えることでコストupに繋がるため、不適当である。
以下実施例により、本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中で記載される部および%は、特にことわりのない限り質量に関するものである。以下の実施例および比較例において融点の測定、機械的物性その他の評価は以下の方法に従った。
[人工皮革用基材の見掛け密度の測定]
人工皮革用基材の単位面積あたりの質量(g/cm)を厚さ(cm)で除した値を見掛け密度(g/cm)とし、人工皮革用基材の任意の10箇所について測定した見掛け密度を算術平均した値を、その人工皮革用基材の見掛け密度とする。なお、厚さは、JISL1096に準じて荷重240gf/ cmで測定される。
[銀付人工皮革の剥離強力測定方法]
長さ15cm、巾2.5cm、厚さ5mmのポリウレタン製ゴム板の表面をサンドペーパーにて軽く削り取って二液架橋タイプのポリウレタン接着剤をいずれかの端部から長さ10cm程度の範囲に均一に塗布し、一方、銀付調人工皮革を長さ25cm、巾2.5cmに切り出した試験片の表面にも同様にいずれかの端部から長さ10cm程度の範囲に接着剤を均一塗布し、それら接着剤を塗布した端部同士が重なるように貼り合わせる。貼り合わせた試験片とゴム板を2〜4kg/cm2程度の圧力でプレスした後、25℃にて1昼夜放置する。試験片およびゴム板それぞれの接着剤を塗布していない端部を、初期間隔5cmにセットした引張試験機の上下それぞれのチャックに挟んで、引張速度10cm/分での引張時間に対応した、ゴム板と試験片との接着部分の剥離強力を測定し、チャートに記録する。チャート上に得られた引張時間−剥離強力曲線の剥離強力がほぼ一定している箇所についての平均値を読み取り、その試験片の剥離強力値とした。1種類の銀付調人工皮革について、任意の3箇所から切り出した試験片3個の剥離強力測定値を算術平均した値を、その銀付調人工皮革の剥離強力値とした。
[高分子弾性体表面沈み込み深さ測定方法]
高分子弾性体溶液を基材の表面に塗布、凝固、乾燥した後の断面を倍率100倍で電子顕微鏡観察し、任意5点の沈み込み深さの平均で求めた。
実施例1
変性PVA(水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂:海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(島成分)とを、海成分/島成分の質量比が25/75となるように、260℃に設定した溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。そして、紡糸速度が4000m/分となるようにエジェクター圧力を調整することにより平均繊度2.5dtexの海島型複合繊維をネット上に堆積させ、目付30g/m2のスパンボンドシートを得た。
次に、得られたスパンボンドシートを12枚重ね、クロスラッピングにより総目付が360g/m2のウェブを作製した。そして、ウェブに針折れ防止油剤をスプレーした。
そして、ニードル番手40番のニードル針(バーブ数9個)を用いて、ウェブの表側から600パンチ/cm2、裏側から400パンチ/cm2でニードルパンチ処理した。そして、さらに、ニードル番手42番のニードル針を用いて表面側から600パンチ/cm2、裏面側から300パンチ/cm2でニードルパンチ処理した。このようにして複合繊維絡合体を得た。なお、ニードルパンチ処理によるウェブの面積収縮率は25%であった。ニードルパンチ後の複合繊維絡合体の目付は491g/m2、層間剥離強力は10.1kg/2.5cmであった。
次に、得られた複合繊維絡合体を70℃の熱水中に90秒間浸漬することにより湿熱収縮処理して、さらに95℃の熱水中に10分間浸漬することにより海島型複合繊維から変性PVAを溶解除去し、さらに乾燥することにより基材を得た。なお、湿熱収縮処理前後の面積収縮率は48%であった。得られた三次元絡合不織布は、極細長繊維の平均繊維繊度は0.1dtexであり、目付726g/m2、厚み1.24mm、見掛け密度0.584g/cm3であった。
次に、前処理剤としてニッテックスAP(吉村油化学株式会社製)を用いた見かけ濃度9%の水溶液を準備し、得られた三次元絡合不織布へpick up65%で付与し、120℃で15分間乾燥した。
次に、ポリウレタン樹脂としてMP145(DIC製)をDMFで希釈し粘度8000cpsとなるよう調整した。この溶液を5m/分の速度で400g/mとなるよう塗布し、29℃のDMF3%水溶液中で湿式凝固し、脱洗処理を行い、120℃で乾燥を行った。得られた基材のポリウレタン樹脂の沈み込み深さは51μmであり、沈み込みすぎること無く適度な沈み込みが得られた。その後、基材を温度147℃、線圧42.9kg/cm、3.5m/分の速度でエンボス処理を行い、銀付調人工皮革を得た。得られたものは、剥離強力9.6kg/2.5cmと高く、風合いのよいものであった。
(床比重変更)
実施例2
三次元絡合不織布の見かけ比重を0.527g/cmとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。湿式凝固後のポリウレタン樹脂の沈み込み深さは52μmであり、沈み込みすぎること無く適度な沈み込みだった。最終的に得られた銀付調人工皮革は皮革様の柔軟で充実感のある風合いを有し、剥離強力は10.1kg/2.5cmと高いものであった。
(撥水剤変更)
比較例1
前処理剤として柔軟剤を混合した、ソフトロンDX−1/ニッテックスARS=5(g/L)/75(g/L)(吉村油化学株式会社製)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。湿式凝固後のポリウレタン樹脂の沈み込み深さは250μmと大きなものだった。最終的に得られた銀付調人工皮革は、風合いが硬く、剥離強力は7.9kg/2.5cmとやや低いものであった。

Claims (4)

  1. 以下(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とする銀付調人工皮革。
    (1)基材を構成する布帛の見掛け密度が0.40〜0.80g/cm
    (2)高分子弾性体Aが布帛に対して5質量%以下、
    (3)基材の表面に高分子弾性体Bからなる表皮層が存在、
    (4)表皮層を形成する高分子弾性体Bが、基材の表面から10〜100μmの範囲で基材の厚さ方向内部へ浸透、
  2. 表皮層が高分子弾性体Bの湿式多孔構造からなる請求項1に記載の銀付調人工皮革。
  3. 布帛が極細長繊維三次元絡合体である請求項1または2に記載の銀付調人工皮革。
  4. 三次元絡合不織布の表面に表皮層を形成してなる銀付調人工皮革であって、下記工程(1)〜(5)を順次行うことを特徴とする銀付調人工皮革の製造方法。
    工程(1):水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分とで形成された複合繊維からなるウェブを絡合して複合繊維絡合体を形成する工程、
    工程(2):水溶性高分子成分を除去して三次元絡合不織布を形成する工程、
    工程(3):工程(1)で得られる複合繊維絡合体または工程(2)で得られる三次元絡合不織布の内部に高分子弾性体Aを三次元絡合不織布に対して5質量%以下付与する工程、
    工程(4):三次元絡合不織布の内部にポリアミド誘導体の塩化合物を付与する工程、
    工程(5):三次元絡合不織布の表面に高分子弾性体Bからなる表皮層を湿式凝固法により形成する工程、
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