JP2014000864A - 電磁弁装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】実用性の高い電磁弁装置を提供する。
【解決手段】プランジャを弁座から離座させる方向に付勢する付勢部材と、着座させる方向に付勢するための磁界を形成する第1コイルおよび第2コイルとを有する電磁弁と、それら第1コイルおよび第2コイルに個別に通電する通電コントローラとを備えさせ、その通電コントローラが、開弁状態から閉弁状態に切り換えるべく、第1コイルと第2コイルとの一方に移動電流imを通電し、プランジャを移動させた位置で保持するために必要な保持電流ihを第1コイルと第2コイルとの他方に通電するとともに、それら2つのコイルの他方への保持電流ihの通電時に、保持電流を通電していない方のコイルに追加保持電流ih +を通電可能に構成する。
【選択図】図6

Description

本発明は、通電・非通電が切り換えられることで開弁状態と閉弁状態とが切り換えられる電磁弁とその電磁弁に通電する通電装置とを含んで構成される電磁弁装置に関する。
下記特許文献1には、複数の電磁弁を含んで構成される電子制御式の液圧ブレーキシステムが記載されている。それら複数の電磁弁の中には、正常時において常時通電されて、システムの電子制御を可能とするとともに、システムへ通電不能な失陥が生じた場合に非通電状態とされることで、機械的にブレーキを作動させるためのものが存在する。液圧ブレーキシステムの他にも、電磁弁とその電磁弁に通電する通電装置とを含んで構成される電磁弁装置が搭載される種々のシステムが存在する。
特開2011−156998号公報
例えば、電磁弁が常開弁であり、電磁弁が有するプランジャの先端に高圧側の液圧が作用する構成のものである場合、閉弁している状態において高圧側の液圧が高くなると、開弁してしまう虞がある。また、その高圧側の液圧に依拠した力によって開弁しないように、通電する電流を大きくすると、電磁弁の発熱が問題となる。そのような問題に対処することにより、電磁弁装置の実用性を向上させ得ると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い電磁弁装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の電磁弁装置は、プランジャを弁座から離座させる方向に付勢する付勢部材と、着座させる方向に付勢するための磁界を形成する第1コイルおよび第2コイルとを有する電磁弁と、それら第1コイルおよび第2コイルに個別に通電する通電コントローラとを備え、その通電コントローラが、開弁状態から閉弁状態に切り換えるべく、プランジャを移動させるために必要な電流である移動電流を第1コイルと第2コイルとの一方に通電し、そのプランジャが移動した後に、そのプランジャを移動させた位置で保持するために必要な電流である保持電流を第1コイルと第2コイルとの他方に通電するように構成されるとともに、それら2つのコイルの他方への保持電流の通電時に、それらの一方に、保持電流とは別にプランジャを保持するための電流である追加保持電流を通電するように構成されたことを特徴とする。
本発明の電磁弁装置によれば、例えば、2つのコイルのうちのいずれかに保持電流を通電しているのに加えて、その保持電流を通電していない方のコイルに追加保持電流を通電するように構成することで、閉弁状態を確実に維持することが可能である。また、例えば、本発明の電磁弁装置によれば、追加保持電流通電制御において保持電流を小さくすることで、その保持電流を通電しているコイルの発熱を抑えることが可能である。そのような利点を有することで、本発明の電磁弁装置は、実用性の高いものとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(3)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項2に(4)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(5)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(6)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項5に(7)項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、請求項6に(8)項の技術的特徴を付加したものが請求項7に、請求項1ないし請求項7のいずれか1つに(9)項の技術的特徴を付加したものが請求項8に、請求項8に(10)項の技術的特徴を付加したものが請求項9に、請求項9に(11)項の技術的特徴を付加したものが請求項10に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(13)項の技術的特徴を付加したものが請求項11に、請求項11に(14)項の技術的特徴を付加したものが請求項12に、それぞれ相当する。
(1)(a)開口を有する弁座と、(b)その弁座に対して着座・離座可能なプランジャと、(c)そのプランジャを前記弁座から離座させる方向に自身の弾性力によって付勢する付勢部材と、(d)それぞれが、通電されることで前記プランジャを前記弁座に着座させる方向に付勢するための磁界を形成する第1コイルおよび第2コイルとを有し、(i)前記プランジャが前記弁座から離座し、作動液が前記開口を高圧側から低圧側に向かって通過することを許容する開弁状態と、(ii)前記プランジャが前記弁座に前記開口を塞ぐようにして着座し、作動液が前記開口を通過することを禁止する閉弁状態とが切り換わるように構成された電磁弁と、
前記第1コイルおよび前記第2コイルに個別に通電可能とされ、前記開弁状態から前記閉弁状態に切り換えるべく、前記プランジャを移動させるために必要な電流である移動電流を前記第1コイルと前記第2コイルとの一方に通電し、そのプランジャが移動した後に、そのプランジャを移動させた位置で保持するために必要な電流である保持電流を前記第1コイルと前記第2コイルとの他方に通電するように構成された通電コントローラと
を備えた電磁弁装置であって、
前記通電コントローラが、
前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に、前記保持電流とは別に前記プランジャを保持するための電流である追加保持電流を通電する追加保持電流通電制御を実行可能に構成された電磁弁装置。
本項に記載の「電磁弁」は、いわゆるオンオフ弁であり、2つのコイルが非通電である場合に開弁状態,2つのコイルの少なくとも一方へ通電されることで閉弁状態となるもの、つまり、常開弁である。そして、本項に記載の電磁弁は、弁座を挟んで、プランジャが内部に配設される液室と、プランジャとは反対側の液室との2つの液室が形成されており、プランジャが弁座に着座している状態においては、プランジャの先端には、プランジャとは反対側の液室の液圧が作用することになる。したがって、そのような常開弁は、閉弁状態において、プランジャとは反対側の液室の液圧が高くなると、その液圧に依拠した力が、コイルの電磁力に依拠したプランジャを着座させる方向の力を超え、プランジャが開弁させられる虞がある。本項に記載の電磁弁装置は、そのような場合であっても、2つのコイルのうちのいずれかに保持電流を通電しているのに加えて、その保持電流を通電していない方のコイルに追加保持電流を通電するように構成することができる。そのような構成とすれば、上記追加保持電流通電制御によって、閉弁状態を確実に維持することが可能である。
また、本項に記載の電磁弁装置は、追加保持電流通電制御において、保持電流を小さくすることで、その保持電流を通電しているコイルの発熱を抑えることが可能である。なお、保持電流を小さくする場合において、上記の閉弁状態を確実に維持するという観点からすれば、低下させた保持電流と追加保持電流とを足し合わせた電流の大きさが、低下させる前の保持電流より大きくされることが望ましい。
(2)前記通電コントローラが、
前記保持電流を、それが前記移動電流より小さくなるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に通電する(1)項に記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、上述のように、保持電流が移動電流より小さくされており、消費電力を抑えることができるとともに、コイルの発熱を抑えることが可能である。
(3)前記通電コントローラが、
前記追加保持電流通電制御を実行している場合に、実行していない場合に比較して、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に通電する前記保持電流を小さくするように構成された(1)項または(2)項に記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、追加保持電流通電制御を実行した場合に、保持電流を通電しているコイルの負担を軽減するとともに、そのコイルの発熱を抑制することが可能である。したがって、本項の態様によれば、耐久性に優れた電磁弁装置が実現する。
(4)前記通電コントローラが、
前記追加保持電流通電制御において、前記保持電流と前記追加保持電流とを足し合わせた電流の大きさが、前記追加保持電流通電制御を実行していない場合の前記保持電流より大きくなるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に前記保持電流を通電するとともに、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に前記追加保持電流を通電するように構成された(3)項に記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、追加保持電流通電制御において保持電流を低減する場合の、必要最低限の電流を定めた態様である。
(5)前記通電コントローラが、
前記保持電流を、それが前記移動電流より小さくなるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に通電するように構成されるとともに、
前記追加保持電流通電制御において、前記保持電流と前記追加保持電流とを足し合わせた電流の大きさが、前記移動電流以上となるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に前記保持電流を通電するとともに、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に前記追加保持電流を通電するように構成された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、保持電流と追加保持電流とを足し合わせた電流が移動電流以上なるようにすることで、プランジャに作用させる着座させる方向の力が比較的大きなものとなり、閉弁状態を確実に維持することが可能である。なお、本項の態様に、先に述べた保持電流を小さくする態様を合わせた態様とすることで、コイルの発熱を抑制しつつ、閉弁状態を確実に維持することができる。
(6)前記電磁弁が、前記プランジャとは反対側が高圧側となるような箇所に配設され、
前記通電コントローラが、
前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、高圧側の液圧に依拠して前記プランジャの先端に作用する力が設定された力を超えるような状況下において、前記追加保持電流通電制御を実行するように構成された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、電磁弁が配設される状態を限定するとともに、その電磁弁に対して追加保持電流通電制御を実行する条件を限定した態様である。本項に記載の「高圧側の液圧に依拠して前記プランジャの先端に作用する力が設定された力を超えるような状況下」か否かは、プランジャの先端に作用する高圧側の液圧が閾圧を超えたか否かによって判定することができる。なお、高圧側の液圧に基づいて判定する場合、本項に記載の態様は、高圧側の液圧を直接的に検出するような構成であってもよく、間接的に検出するような構成であってもよい。例えば、高圧側の液圧が、何らかの入力に応じて増加するような構成である場合に、その入力量に基づいて判定するような構成とすることができる。
(7)前記通電コントローラが、
前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、前記プランジャの先端に作用する高圧側の液圧が閾圧を超えた場合に、前記追加保持電流通電制御を実行するように構成された(6)項に記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、高圧側の液圧に基づいて、追加保持電流通電制御を実行するか否かを判定する態様である。
(8)前記通電コントローラが、
前記プランジャの先端に作用する高圧側の液圧の増加速度が設定速度を超える場合に、前記閾圧を小さくするように構成された(7)項に記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、高圧側の液圧の増加速度が高い場合には、低い場合に比較して、早いタイミングで追加保持電流を通電するように構成される。したがって、本項の態様によれば、追加保持電流の通電が遅れて開弁してしまうような事態を回避すること、つまり、より確実に閉弁状態を維持することが可能である。なお、本項の態様は、閾圧を、予め定められた値とする態様であってもよく、液圧の増加速度に応じて変更するような態様であってもよい。
(9)当該電磁弁装置が、ブレーキ操作部材になされた操作に基づいて車両を制動させる液圧ブレーキシステムに搭載され、
前記電磁弁が、
前記プランジャとは反対側の液圧が、前記ブレーキ操作部材の操作量の変化に伴って変動するような箇所に配設された(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の電磁弁装置。
本項に記載の電磁弁装置は、液圧ブレーキシステムの一構成要素とされた態様であり、電磁弁が、ブレーキ操作部材の操作量の増加に応じて液圧も増加するような箇所に配設された態様である。ちなみに、電磁弁装置が液圧ブレーキシステムに搭載された本項の態様よび以下に説明する態様から、カテゴリを「液圧ブレーキシステム」へと変更した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
(10)前記通電コントローラが、
前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、前記ブレーキ操作部材の操作量が閾操作量を超える場合に、前記追加保持電流通電制御を実行するように構成された(9)項に記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、電磁弁装置が液圧ブレーキシステムの一構成要素とされた上述の態様において、高圧側の液圧が依拠するブレーキ操作部材の操作量に基づいて、追加保持電流通電制御を実行する否かを判定するように構成されている。本項の態様は、ブレーキ操作部材の操作量に基づいて、プランジャの先端に作用する力を推定することができるため、本項の態様は、先に述べた態様である、高圧側の液圧に依拠して前記プランジャの先端に作用する力が設定された力を超えるような状況下において、追加保持電流通電制御を実行する態様であると考えることもできる。
(11)前記通電コントローラが、
前記ブレーキ操作部材の操作速度が設定速度を超える場合に、前記閾操作量を小さくするように構成された(10)項に記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、ブレーキの操作速度が高い場合には、低い場合に比較して、早いタイミングで追加保持電流を通電するように構成される。したがって、本項の態様によれば、追加保持電流の通電が遅れて開弁してしまうような事態を回避すること、つまり、より確実に閉弁状態を維持することが可能である。ちなみに、本項の態様は、先に述べた態様である、プランジャの先端に作用する高圧側の液圧の増加速度が設定速度を超える場合に閾圧を小さくする態様と、同様の態様であると考えることができる。
(12)前記液圧ブレーキシステムが、
車輪に対応して設けられ、自身に供給される作動液の圧力によって作動して車輪に制動力を付与するブレーキ装置と、
高圧源と、
その高圧源の作動液の圧力を前記ブレーキ操作部材になされた操作に基づいた大きさの制御圧に調圧する調圧装置と、
(a)ハウジングと、(b)前記ブレーキ操作部材と連結されて前記ハウジング内に配設された入力ピストンと、(b)その入力ピストンの前方側に配設された加圧ピストンとを有し、(A)前記加圧ピストンの前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が前記加圧ピストンの前進によって加圧される加圧室が、(B)前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの間にピストン間室が、(C)前記調圧装置からの調圧された作動液が流入し、前記加圧ピストンを前方に押す力を発生させるための入力室が、(D)前記ピストン間室と対向する位置に、自身の内部の作動液の液圧によって前記加圧ピストンを後方に押す力を発生させるための対向室が、それぞれ形成されたシリンダ装置と、
前記ピストン間室と前記対向室とを連通する連通路と、
前記対向室を低圧源と接続する低圧路と
を含んで構成され、
当該電磁弁装置が有する前記電磁弁が、
前記低圧路に配設され、(i)前記閉弁状態とされることで、前記対向室と前記低圧源とを遮断して前記対向室と前記ピストン間室とを連通させ、前記ピストン間室の液圧に依拠した前記加圧ピストンを前方に押す力が前記対向室の液圧に依拠した前記加圧ピストンを後方に押す力によって打ち消され、前記入力室の液圧に依拠した前記加圧ピストンを前方に押す力に依存した大きさの制動力を前記ブレーキ装置が発生させる状態を実現させ、(ii)前記開弁状態とされることで、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力の前記加圧ピストンへの伝達を許容し、その操作力と前記入力室の液圧に依拠した前記加圧ピストンを前向きに押す力との両者に依存した大きさの制動力を前記ブレーキ装置が発生させる状態を実現させる(9)項ないし(11)項に記載の電磁弁装置。
本項に記載の態様は、電磁弁装置が液圧ブレーキシステムに搭載された態様において、電磁弁が配設された箇所を、さらに限定した態様である。
(13)当該電磁弁装置が、
車輪に制動力を付与するブレーキ装置と、そのブレーキ装置に作動液を供給する作動液供給装置とを有し、車輪のロックに対処するためのABS制御を実行可能とされた液圧ブレーキシステムに搭載され、
前記電磁弁が、
前記作動液供給装置と前記ブレーキ装置との間に配設され、前記ABS制御実行時に、前記開弁状態において前記ブレーキ装置の液圧を増圧し、前記閉弁状態において前記ブレーキ装置の増圧を禁止するものであり、
前記通電コントローラが、
前記ABS制御において閉弁状態を実現するために、前記移動電流を前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に通電し、前記保持電流を前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に通電するとともに、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、前記作動液供給装置から供給される作動液の液圧が閾圧を超えた場合に、前記追加保持電流通電制御を実行するように構成された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電磁弁装置。
本項に記載の電磁弁装置は、液圧ブレーキシステムの一構成要素とされた態様であり、先に述べた態様とは、電磁弁の配設された箇所が異なる。ABS制御では、ブレーキ装置の液圧を、制御くれなく緻密に制御するために、ブレーキ装置の液圧を増圧させる弁の高圧側は、比較的高い液圧に維持される場合が多い。本項に記載の態様は、ABS制御実行中における電磁弁の開弁状態を確実に維持することが可能である。
なお、本項に記載の「作動液供給装置」は、上記の電磁弁を介してブレーキ装置に作動液を供給可能なものであれば、特に限定されない。その作動液供給装置には、例えば、高圧源を有してその高圧源の作動液の液圧を調圧する調圧装置や、ブレーキ装置の液圧を減圧させる際の液圧を上記電磁弁の高圧側に送るためのポンプ装置等の種々のものを採用することができる。
(14)前記通電コントローラが、
前記追加保持電流通電制御において、前記保持電流と前記追加保持電流とを足し合わせた電流の大きさが、前記移動電流以上となるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に前記保持電流を通電するとともに、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に前記追加保持電流を通電するように構成された(13)項に記載の電磁弁装置。
急ブレーキの際にABS制御が実行された場合には、ブレーキ装置の液圧を増圧させる弁の高圧側は、非常に高い液圧とされる。本項に記載の態様によれば、比較的大きな電流を2つのコイルの両者に通電することで、プランジャに、着座させる方向の大きな力を作用させることができ、ABS制御実行中における電磁弁の開弁状態をより確実に維持することが可能である。
請求可能発明の実施例である電磁弁装置を含んで構成される車両用液圧ブレーキシステムの概略図である。 図1に示すABSアクチュエータの概略図である。 図1に示すシミュレータ制御弁の正面断面図である。 図1に示すブレーキ電子制御ユニットの機能を示すブロック図であり、請求可能発明の実施例である電磁弁装置が有する通電コントローラの構成を示す図である。 電磁弁の必要電流と2つのコイルの各々への通電電流のタイムチャートである。 保持電流通電時における必要電流と2つのコイルの各々への通電電流のタイムチャートである。 図4に示すブレーキ電子制御ユニットにおいて実行されるシミュレータ制御弁通電制御プログラムを表すフローチャートである。 図7に示すシミュレータ制御弁通電制御プログラムにおいて実行される分担通電制御サブルーチンを表すフローチャートである。 図8に示す分担通電制御サブルーチンにおいて実行される開弁状態実現処理サブルーチンを表すフローチャートである。 図8に示す分担通電制御サブルーチンにおいて実行される閉弁状態実現処理サブルーチンを表すフローチャートである。 図9に示す開弁状態実現処理サブルーチンにおいて実行される保持電流通電制御サブルーチンを表すフローチャートである。 図4に示すブレーキ電子制御ユニットにおいて実行される保持電流通電制御プログラムを表すフローチャートである。
以下、請求可能発明を実施するための形態としての実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
<車両用液圧ブレーキシステムの構成>
図1に、請求可能発明の実施例である電磁弁装置を搭載した車両用液圧ブレーキシステム10を、模式的に示す。その車両用液圧ブレーキシステム10は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12と、前後左右の車輪14にそれぞれ設けられた4つのブレーキ装置16と、それら4つのブレーキ装置16に供給する作動液を加圧するマスタシリンダ装置18と、ブレーキ装置16とマスタシリンダ装置18との間に設けられてマスタシリンダ装置18によって加圧された液圧を調整するABSアクチュエータ20とを備えている。また、マスタシリンダ装置14は、高圧源として作動液の圧力を高圧にするための高圧源装置22と、低圧源として作動液を大気圧下で貯留するリザーバ24とを備えている。
4つのブレーキ装置16は、詳しい説明は省略するが、それぞれ、車輪14とともに回転するブレーキ回転体としてのディスクロータに、非回転体に保持された摩擦材としてのブレーキパッドをブレーキシリンダの液圧によって押し付けて、車輪14に制動力を付与するディスクブレーキである。
高圧源装置22は、高圧発生装置30と増減圧装置32とを含んで構成され、高圧発生装置30によって作動液の液圧を高圧とし、その高圧とされた作動液を増減圧装置32によって調圧してマスタシリンダ装置18に供給するものである。高圧発生装置30は、リザーバ24から作動液を汲み上げるポンプ40と、そのポンプ40を駆動するポンプモータ42と、ポンプ40から吐出された作動液を加圧された状態で蓄えるアキュムレータ44とを含んで構成される。ポンプモータ42は、アキュムレータ44に蓄えられている作動液の圧力が、高圧源液圧センサ[Ph]46の検出値に基づいて、予め定められた範囲内にあるように制御される。
増減圧装置32は、高圧発生装置30によって定められた範囲内に高められた作動液の液圧を調圧するレギュレータ50を主体とするものである。そのレギュレータ50は、自身に供給される作動液の液圧(パイロット圧)に応じて機械的に作動するパイロット式の圧力制御弁であり、そのパイロット圧に応じて高圧発生装置30の液圧を調圧し、その調圧した作動液をマスタシリンダ装置18に供給するものである。また、増減圧装置32は、増圧用リニア弁52および減圧用リニア弁54を含んで構成される。通常、レギュレータ50は、それら増圧用リニア弁52および減圧用リニア弁54によって調整された作動液の液圧をパイロット圧として利用し、高圧発生装置30の液圧を調圧するようになっている。
マスタシリンダ装置18は、上記の高圧源装置22から供給される作動液の液圧と、ブレーキペダル12に加えられた踏力との少なくとも一方に依拠して、自身が有する2つの加圧室R1,R2の液圧を加圧する。なお、加圧室R1は、2つの前輪14FL,FRに設けられたブレーキ装置16FL,FRに接続され、加圧室R2は、2つの後輪14RL,RRに設けられたブレーキ装置16RL,RRに接続される。マスタシリンダ装置18は、ハウジング60と、そのハウジング60内に摺動可能な3つのピストン62,64,66とを含んで構成される。3つのピストンについて詳しく説明すれば、運転者によりブレーキペダル12に加えられた踏力を入力する入力ピストン62と、第1加圧室R1を加圧するための第1加圧ピストン64と、第2加圧室R2を加圧するための第2加圧ピストン66である。ちなみに、図1は、ブレーキペダル12が操作されていない状態、つまり、マスタシリンダ装置18が作動していない状態を示している。
マスタシリンダ装置18は、ハウジング60内に、上記第1加圧室R1,第2加圧室R2の他にも、いくつかの液室が区画形成されている。なお、第1加圧室R1は、ハウジング60の前端と第1加圧ピストン64とによって区画形成され、第2加圧室R2は、第1加圧ピストン64と第2加圧ピストン66との間に区画形成されている。そして、入力ピストン62と第2加圧ピストン66との間には、ブレーキペダル12の操作に伴う入力ピストン62の移動によって加圧されるピストン間室R3が区画形成されている。また、第2加圧ピストン66には、中間部に鍔部70が設けられており、その鍔部70の前方側と後方側との各々に、液室R4,R5が形成されている。鍔部70の後方側の液室R4は、その鍔部70の後方側の面とハウジング60とによって区画形成され、高圧源装置22のレギュレータ50によって調圧された作動液が流入する入力室である。一方、鍔部70の前方側の液室R5は、その鍔部70の前方側の面,第2加圧ピストン66の前方側外周面,ハウジング60によって区画形成され、ピストン間室R3に連通可能な液室である。なお、第2加圧ピストン66の後端面の面積と、鍔部70の前方側の面の面積とが等しくされている。つまり、ピストン間室R3と液室R5とが連通している場合には、第2加圧ピストン66の後端面に作用する第2加圧ピストン66を前方に移動させる向きの力と、鍔部70の前方側の面に作用する第2加圧ピストン66を後方に移動させる向きの力とが釣り合うようになっている。つまり、液室R5は、ピストン間室R3に対向して設けられた対向室である。
ピストン間室R3と対向室R5とを連通する連通路74には、常閉の電磁弁76が設けられている。その電磁弁76は、非通電状態においてピストン間室R3から対向室R5への作動液の流れを禁止し、通電状態においてピストン間室R3から対向室R5への作動液の流れを許容するものである。そのような構成により、電磁弁76が非通電状態、つまり、電磁弁76が閉弁状態においては、第2加圧ピストン66は、ピストン間室R3の液圧に応じた力と、入力室R4の液圧に依拠した力との両者によって動作させられる。つまり、ブレーキペダル12の操作に依拠した力と、高圧源装置22に依拠した力との両者が作用するのである。一方、電磁弁76が通電状態、つまり、電磁弁76が開弁状態においては、ピストン間室R3の液圧に応じた力は、対向室R5の液圧に応じた力と打ち消し合い、第2加圧ピストン66は、入力室R4の液圧に依拠した力のみによって動作させられることになる。以下の説明において、電磁弁76を、連通切換弁76と呼ぶ場合がある。
また、上記の連通路74における連通切換弁76の下流側から分岐して、リザーバ24に連通する低圧路78が設けられている。その低圧路78には、非通電状態おいて開弁状態となる常開の電磁弁80が設けられている。つまり、その電磁弁80は、非通電状態において、対向室R5からリザーバ24への作動液の流れを許容し、通電状態において、対向室R5からリザーバ24への作動液の流れを禁止する。また、その低圧路78における電磁弁80の上流側には、ストロークシミュレータ82が設けられている。つまり、連通切換弁76が開弁状態であり、かつ、電磁弁80が閉弁状態である場合に、ブレーキペダル12の操作に対する反力を付与するようになっている。以下の説明において、電磁弁80を、シミュレータ制御弁80と呼ぶ場合がある。
ABSアクチュエータ20は、図2に示すように、ブレーキ装置16の液圧を増圧するための増圧弁90と、ブレーキ装置16の液圧を減圧するための減圧弁92との各々を、4つの車輪14に対応して4つずつ有している。そのABSアクチュエータ20は、例えば、車輪14がロックした場合に、増圧弁90によって、マスタシリンダ装置18からブレーキ装置16への作動液の流れを遮断するとともに、減圧弁92によって、ブレーキ装置16からリザーバ24への作動液の流れを許容して、車輪14のロックを解除するように構成される。また、ABSアクチュエータ20は、2つのポンプ94と、それら2つのポンプ94を駆動するポンプモータ96とを有している。ABS制御の実行中において、それら2つのポンプ94とポンプモータ96は、ブレーキ装置18の液圧を減圧した場合に、そのブレーキ装置18から流出した作動液を、増圧弁90の高圧側の通路に戻すように作動させられる。
シミュレータ制御弁80およびABSアクチュエータ20が有する4つの増圧弁90は、ともに常開弁であり、同じ構成の電磁弁である。以下に、それらの電磁弁の構造について、シミュレータ制御弁80を代表して、そのシミュレータ制御弁80の正面断面図である図3を参照ししつつ、簡単に説明する。シミュレータ制御弁90は、中空形状のハウジング100と、そのハウジング100内に自身の軸線方向に移動可能に設けられたプランジャ102とを備えている。そのハウジング100は、それの下端部が、有蓋円筒状の弁部材104により形成されており、その弁部材104が、ハウジング100内を第1液室106と第2液室108とに区画している。その弁部材104には、軸線方向に貫通し、第1液室106と第2液室108とを連通する連通穴110が設けられている。
そして、ハウジング102の第2液室108は、下方に開口しており、高圧側の作動液路に接続されている。つまり、第2液室108は、対向室R5および連通切換弁76を介してピストン間室R3と連通している。一方、ハウジング100の第1液室106は、低圧側の作動液路に接続されている。つまり、第1液室106は、リザーバ24と連通可能となっている。
プランジャ102は、上記のハウジング100の第1液室106内に収容されており、その第1液室106内において軸線方向に移動可能とされている。そのプランジャ102は、下端側がロッド状のものであり、その先端(下端)が、弁部材104に形成された連通穴110に向かい合うようにされている。つまり、そのプランジャ102の下端が、弁体として機能し、ハウジング100の連通穴110を形成する部分が、弁座として機能する。そして、プランジャ102の下端が、その弁座に着座することで、連通穴110が塞がれる。プランジャ102は、弁部材104との間に配設されたコイルスプリング120によって、その弁部材104から離れる方向に向かって付勢されている。つまり、付勢部材としてのコイルスプリング120は、プランジャ102を弁座から離間させる方向に付勢するものとなっている。
また、シミュレータ制御弁90は、プランジャ102を動作させるための電磁力を発生させる2つのコイル130,132(図4参照)を備えている。詳しい図示は省略するが、それら2つのコイル130,132は、2本の導線が一体的に螺旋状に巻かれ、一体的に形成されている。そして、それら2つのコイル130,132は、ハウジング100の上部外周面に固定されたコイルケース134内に収容されている。そして、それら2つのコイル130,132が通電された場合には、コイルケース134,ハウジング100,プランジャ102によって磁界が形成され、2つのコイル130,132は、プランジャ102がコイルスプリング120によって付勢される方向とは逆方向、つまり、プランジャ102を弁座に接近させる方向の電磁力を発生させる。
なお、2つのコイルである第1コイル130,第2コイル132の各々は、半径,長さ,巻き数が同じもの、つまり、同じインダクタンスのものとされている。したがって、第1コイル130および第2コイル132の各々に、同じ大きさの電流が通電されると、同じ大きさの電磁力を発生させるようになっている。
当該液圧ブレーキシステムでは、図1に示すように、ブレーキ電子制御ユニット160(以下、「ECU160」と呼ぶ場合がある。)が設けられている。ECU160は、連通切換弁76,シミュレータ制御弁80,高圧発生装置30が有するポンプモータ42,およびABSアクチュエータ20が有する4つの増圧弁90,4つの減圧弁92,ポンプモータ96の作動を制御する制御装置であり、各ブレーキ装置16に供給する作動液の液圧を制御するものである。ECU160は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータ162と、ポンプモータ42,96に対応する駆動回路と、各種電磁弁52,54,76,80,90,92等のそれぞれに対応する複数の駆動回路とを有している。なお、図4には、連通切換弁76,シミュレータ制御弁80,ABSアクチュエータ20が有する増圧弁90,減圧弁92,ポンプモータ96に対応する駆動回路164,166,168,170,172のみを図示している。それら複数の駆動回路164等には、バッテリ176が接続されており、そのバッテリ176から電力が供給される。
さらに、複数の駆動回路166等には、コンピュータ162が接続されており、そのコンピュータ162が、それら複数の駆動回路164等に各制御信号を送信する。詳しくは、コンピュータ162は、ポンプモータ42,96の駆動回路にモータ駆動信号を送信し、増圧用リニア弁52,減圧用リニア弁54の駆動回路には、各リニア弁52,54の有するソレノイドが発生させる電磁力を制御するための電流制御信号を送信する。さらに、連通切換弁76,シミュレータ制御弁80のそれぞれの駆動回路172,174に各種電磁弁を開閉するための制御信号を送信する。なお、シミュレータ制御弁80は、2つのコイル130,132を有しているため、それら2つのコイル130,132の各々に対応して2つの駆動回路166a,166bが設けられている。さらにまた、ABSアクチュエータ20が有する4つの増圧弁90および4つの減圧弁92の各々に対応する複数の駆動回路168,170には、各種電磁弁の開閉時間を制御するための電流制御信号を送信する。なお、4つの増圧弁90の各々は、2つのコイル130,132を有しているため、それら2つのコイル130,132の各々に対応して2つの駆動回路168a,168bが設けられている。このように、コンピュータ162が各駆動回路164等に各制御信号を送信することで、ポンプモータ42,96、各種電磁弁52等の作動を制御する。なお、コンピュータ162には、上記高圧源液圧センサ46とともに、連通路74における連通切換弁76とピストン間室R3との間に設けられた操作入力圧センサ[PS]180、低圧路78におけるシミュレータ制御弁80と連通切換弁76との間に設けられた反力圧センサ[PR]182、高圧源装置22と入力室R4との間に設けられた調整圧センサ[PIN]184、シミュレータ制御弁80の第1コイル130および第2コイル132の各々の温度を検出するための2つの温度センサ[T]186,188、ブレーキペダル12の操作量を検出するストロークセンサ[St]190等が接続されており、それらセンサによる検出値は、後に説明する制御において利用される。
<車両用液圧ブレーキシステムの作動>
以上のように構成された液圧ブレーキシステム10の作動について簡単に説明する。まず、液圧ブレーキシステム10は、通常、ブレーキペダル12になされた操作に応じて制動力を発生させるべく、高圧源装置22の制御によって、ブレーキ装置16の液圧が制御される。具体的には、まず、ECU160は、連通切換弁76を通電して開弁状態とするともに、シミュレータ制御弁80を通電して閉弁状態として、ブレーキペダル12に加えられた踏力が打ち消されるようにする。そして、その状態で、増圧用リニア弁52および減圧用リニア弁54を制御することで、増減圧装置32から出力される液圧、つまり、入力室R4の液圧を制御するのである。それにより、第2加圧ピストン66および第1加圧ピストン64を前方に移動させ、第1加圧室R1および第2加圧室R2が加圧され、その加圧された作動液がブレーキ装置16に供給されるのである。つまり、高圧源装置22およびシリンダ装置18とを含んで、ブレーキ装置16に作動液を供給する作動液供給装置が構成されている。
ただし、急ブレーキの場合、つまり、ブレーキペダル12の操作速度Vstが設定値V0を超えた場合には、高圧源装置22の液圧に依拠した力の入力だけでなく、ブレーキペダル12に加えられた踏力も入力され、大きな制動力を発生させるようになっている。具体的には、ECU160は、連通切換弁76を非通電として閉弁状態とするともに、シミュレータ制御弁80を非通電として開弁状態とするのである。それにより、入力室R4が高圧源装置22によって加圧されるだけなく、ブレーキペダル12に加えられた踏力によってピストン間室R1も加圧され、第2加圧ピストン66には、ブレーキペダル12の操作に依拠した力と、高圧源装置22に依拠した力との両者が作用することになる。つまり、第1加圧室R1および第2加圧室R2が急激に加圧され、ブレーキ装置16の液圧が急激に上昇し、大きな制動力を発生させるのである。
次に、バッテリ172から電力供給を受けることができない失陥が生じた場合を考える。その場合には、各種電磁弁に電力を供給できないため、連通切換弁76が閉弁状態とされるとともに、シミュレータ制御弁80が開弁状態とされる。また、増圧用リニア弁52および減圧用リニア弁54は、ともに閉弁状態となり、作動液の液圧を調整することができなくなる。さらに、ポンプモータ42を駆動することができないため、ポンプ40によって作動液を汲み上げることができない。つまり、アキュムレータ44には、それ以上、作動液を蓄えさせることができないのである。なお、この場合には、レギュレータ50は、第2加圧室R2からブレーキ装置16に供給される作動液の液圧をパイロット圧として利用して、高圧発生装置30の液圧を調圧するようになっている。
したがって、上記のような失陥が生じた場合には、アキュムレータ44に作動液が蓄えられている間は、ブレーキペダル12の操作に依拠した力と、高圧源装置22に依拠した力との両者を利用して、制動力を発生させることが可能である。そして、アキュムレータ44に蓄えられていた作動液が無くなった場合には、ブレーキペダル12の操作に依拠した力のみで、制動力を発生させることとなる。
また、本液圧ブレーキシステム10においては、ABSアクチュエータ20の作動を制御することで、車両の挙動を安定化させるための制御、いわゆるABS(Anti-lock Brake System)制御,VSC(Vehicle Stability Control)制御,TRC(Traction Control)制御が実行されるようになっている。ABS制御は、急ブレーキ時等において車輪のロックを抑制するための制御であり、VSC制御は、車両旋回時における車輪の横滑りを抑制するための制御である。また、TRC制御は、車両発進時,急加速時等に駆動輪の空転を抑制するための制御である。
それらABS制御,VSC制御,TRC制御では、各ブレーキ装置16に対応して設けられた増圧弁90と減圧弁92とが制御されることで、各ブレーキ装置16のブレーキ圧が個別に制御される。ABS制御等は、公知の制御であることから、本請求可能発明に関係するABS制御についてのみ簡単に説明し、VSC制御およびTRC制御についての説明は省略するものとする。ABS制御は、制動時において、車輪速センサによって各車輪14の回転速度を検出し、それから得られる車輪速,車輪減速度,車輪のスリップ率等に基づき、ECU160のコンピュータ162によって、実行するか否かの判定が行われている。ABS制御を実行する必要があると判定されたブレーキ装置16がある場合には、そのブレーキ装置16のブレーキ圧の減圧,保持,増圧が繰り返し行われるように、そのブレーキ装置16に対応する増圧弁90と減圧弁92とが制御される。具体的には、ABS制御においては、増圧弁90が閉弁されるとともに減圧弁92が開弁され、ブレーキ装置16への作動液の供給を禁止するとともにブレーキ装置16からの作動液の流出を許容してブレーキ圧を減圧する減圧モードと、増圧弁90および減圧弁92の両者が閉弁され、ブレーキ装置16への作動液の供給およびブレーキ装置16からの作動液の流出の両者を禁止してブレーキ圧を保持する保持モードと、増圧弁90が開弁されるとともに減圧弁92が閉弁され、ブレーキ装置16への作動液の供給を許容してブレーキ圧を増圧する増圧モードとが、車輪減速度やスリップ率等に基づいて切り換えられるようになっている。そのことにより、車輪14のロックが防止されつつ、安定した制動力を発生させるようになっている。
<電磁弁装置の制御>
当該車両用液圧ブレーキシステム10が有するシミュレータ制御弁80およびABSアクチュエータ20が有する増圧弁90は、上述したように、2つのコイルを備えているため、それらシミュレータ制御弁80および増圧弁90への通電方法に特徴を有しているため、以下に、それらシミュレータ制御弁80および増圧弁90の制御方法について、詳しく説明する。
I)シミュレータ制御弁の通電制御
i)通電コイル変更制御
まず、車両のイグニッションスイッチがON状態とされると、ECU160は、連通切換弁76に通電して開弁状態とするとともに、シミュレータ制御弁80に通電して閉弁状態とする。ECU160は、それら連通切換弁76およびシミュレータ制御弁80へ通電する際には、プランジャを移動させるのに必要な電流である移動電流imを通電し、プランジャが移動した後に、プランジャを移動させた位置で保持するために必要な電流であり、移動電流より小さな保持電流ih(=0.7×im)を通電する。そして、ECU160は、2つのコイル130,132を有するシミュレータ制御弁80へ通電する際には、通電するコイルを、第1コイル130と第2コイル132との間で切り換えつつ変更する制御を実行する。その制御は、移動電流imを通電するコイルと保持電流ihを通電するコイルとを変更するとともに、保持電流ihを通電するコイルを途中で切り換える制御である。
具体的には、移動電流imを通電する時間より保持電流ihを通電する時間の方が長くなるため、シミュレータ制御弁80の第1コイル130の温度T1と第2コイル132の温度T2とを比較して、温度が高い方のコイルに移動電流imを通電してプランジャ102を移動させ、その後、温度が低い方のコイルに保持電流ihを通電するようになっている。図5に、必要電流、および、通電コイル変更制御を実行した場合における第1コイル130の通電電流,第2コイル132の通電電流のタイムチャートを示している。その図5は、第1コイル130の温度が第2コイル132より高くなっている場合のものであり、第1コイル130に移動電流imが通電され、その後、第2コイル132に保持電流ihが通電されている。
また、第1コイル130あるいは第2コイル132のいずれかに保持電流ihが通電されている場合、その保持電流ihが通電されているコイルの負担が大きくならないように、保持電流ihを通電するコイルが切り換えられようになっている。詳しくは、ECU160は、保持電流ihを通電しているコイルの温度が、通電していないコイルの温度に比較して、設定温度ΔT以上高くなった場合に、保持電流ihを通電するコイルを切り換えるようになっている。図5に示すように、ECU160は、第1コイル130と第2コイル132とに、交互に保持電流ihを通電するのである。
ii)追加保持電流通電制御
シミュレータ制御弁80は、図3に示すように、第1コイル130が発生させる電磁力FC1あるいは第2コイル132が発生させる電磁力FC2によって、コイルスプリング120の弾性力FSに抗してプランジャ102を移動させ、コイルスプリング120の弾性力FSと、高圧側の液圧に依拠してプランジャ102に作用する力FFとに抗して、着座した状態を維持する。したがって、液圧に依拠した力FFが大きくなると、プランジャ102を離座させる方向の力が大きくなって開弁してしまう虞がある。
そこで、本液圧ブレーキシステム10においては、図6に示すように、第1コイル130と第2コイル132との一方に保持電流ihを通電している状態において、シミュレータ制御弁80の高圧側の液圧に依拠してプランジャ102の先端に作用する力が設定された力を超えるような状況下において、保持電流を通電していない方のコイルにも通電するようになっている。シミュレータ制御弁80の高圧側の液圧は、ブレーキペダル12の操作量Stの増加に伴って増加する。本液圧ブレーキシステムにおいては、ストロークセンサ190によって検出されたブレーキペダル12の操作量Stが閾操作量St0を超えた場合には、プランジャ102の先端に作用する力が設定された力を超えるような状況下にあると判断する。そしてECU160は、保持電流を通電していない方のコイルに、保持電流とは別にプランジャ102を保持するための電流である追加保持電流ih +を通電する追加保持電流通電制御を実行するのである。なお、その追加保持電流ih +は、保持電流ihと同じ大きさの電流である。
また、その追加保持電流通電制御において、ECU160は、保持電流を低減するようになっている。具体的には、ECU160は、保持電流と追加保持電流とを足し合わせた電流が、移動電流と等しくなるように、2つのコイルの一方に保持電流を低減するのである。つまり、低減する保持電流ih’は、0.3×imである。
したがって、本液圧ブレーキシステム10においては、上記の追加保持電流通電制御によって、確実に閉弁状態維持することが可能である。また、第1コイル130と第2コイル132との一方に通電している保持電流を低減することで、その保持電流を通電しているコイルの負担を軽減するとともに、発熱を抑制することが可能である。
さらに、追加保持電流通電制御を実行する条件に用いられる閾操作量St0は、ブレーキペダル12の操作速度Vstに基づいて変更されるようになっている。具体的には、ストロークセンサ190の検出値から演算された操作速度Vstが閾操作速度V1を超えた場合に、閾操作量の値をSt0から、そのSt0より小さなSt1に変更するのである。そのことにより、急ブレーキ等の速度の速いブレーキ操作がなされた場合には、比較的速いタイミングで、追加保持電流の通電が開始される。したがって、追加保持電流の通電が遅れて開弁してしまうような事態を回避でき、閉弁状態をより確実に維持することが可能である。
iii)失陥時の通電制御
シミュレータ制御弁80および増圧弁90は、2つのコイル130,132を有しているため、例えば、断線等によって、それら2つのコイルの一方に通電できない失陥が生じた場合には、通電可能なコイルのみで、プランジャを作動させるようになっている。つまり、そのような失陥が生じた状態でプランジャ102を作動させる際には、通電可能なコイルのみに、移動電流imを通電し、その後、保持電流ihを通電するのである。したがって、そのような失陥が生じた場合であっても、液圧ブレーキシステム10は、正常時と同様に作動させることが可能である。なお、図5には、第1コイル130が断線した場合の例を示している。
II)増圧弁の通電制御
ABSアクチュエータ20が有する4つの増圧弁90は、通常は通電されず開弁状態とされており、上述したように、ABS制御,VSC制御,TRC制御が実行される場合に、開閉が制御される。通常時の基本的な制御は、シミュレータ制御弁80と同様であり、移動電流imを通電するコイルと保持電流ihを通電するコイルとを変更するとともに、保持電流ihを通電するコイルを途中で切り換える制御を実行する。また、これら4つの増圧弁90の各々においても、シミュレータ制御弁80と同様に、高圧側の液圧に依拠してプランジャ102の先端に作用する力が設定された力を超えるような状況下において、追加保持電流通電制御が実行されるようになっている。ただし、増圧弁90の各々に対しては、高圧側の液圧に基づいて、追加保持電流通電制御を実行するか否かが判定される。具体的には、増圧弁90が、2つのコイルの一方に保持電流を通電している状態において、調整圧センサ184によって検出された調整圧PINが閾圧PIN0を超えた場合に、追加保持電流通電制御が実行される。また、追加保持電流通電制御を実行する条件に用いられる閾圧PIN0は、調整圧PINの増加速度VPに基づいて変更されるようになっている。具体的には、調整圧センサ184の検出値から演算された調整圧PINの増加速度VPが閾増加速度VP0を超えた場合に、閾増加速度の値をPIN0から、そのPIN0より小さなPIN1に変更するのである。
なお、増圧弁90は、通常時においては通電されていない電磁弁であるため、増圧弁90の各々に対して実行される追加保持電流通電制御では、2つのコイルの一方に通電している保持電流の大きさは変更せずに、2つのコイルの他方に大きさが0.3×imの追加保持電流を通電するようになっている。つまり、増圧弁90の各々に対して実行される追加保持電流通電制御においても、保持電流ihと追加保持電流ih +とを足し合わせた電流の大きさが、移動電流imと同じ大きさとされるようになっている。
また、ABS制御が、急ブレーキによる車輪14のロックに対処するために実行された場合、増圧弁90の高圧側の液圧は非常に高い状態で維持される場合が多い。そこで、調整圧PINの増加速度VPが閾増加速度VP0を超えて閾増加速度の値がPIN1に変更された状態で、追加保持電流通電制御が実行された場合には、移動電流imと同じ大きさの追加保持電流ih +が通電される。その際には、2つのコイルの一方に通電している保持電流ihの大きさが、移動電流imと同じ大きさに変更されるようになっている。それにより、ABS制御によって、増圧弁90の高圧側の液圧が非常に高い値で維持されたとしても、増圧弁90は、確実に閉弁状態を維持することが可能となっている。
<制御プログラム>
上述のような電磁弁の制御は、図7にフローチャートを示すシミュレータ制御弁通電制御プログラムと、図12にフローチャートを示すABSアクチュエータ20が有する増圧弁90に対する保持電流通電制御プログラムとが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、設定された時間間隔をおいてECU160により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、それら制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
I)シミュレータ制御弁通電制御プログラム
図7にフローチャートを示すシミュレータ制御弁通電制御プログラムでは、まず、ステップ1(以下、ステップを「S」と略す)〜S3ににおいて、第1コイル130と第2コイル132との各々が通電可能か否かの判定が行われる。それら第1コイル130と第2コイル132との両者が通電可能な場合には、S4において、それらの両者を利用した制御である分担通電制御が実行される。また、第1コイル130と第2コイル132のいずれか一方に通電できない場合には、S5もしくはS6において、通電可能なコイルのみで通電する失陥時通電制御が実行される。なお、2つのコイル130,132の両者に通電できない場合には、シミュレータ制御弁80は開弁状態となる。
S4の分担通電制御は、図8にフローチャートを示す分担通電制御サブルーチンが実行されることによって行われる。そのサブルーチンでは、まず、S11において、ストロークセンサ190の検出値からブレーキペダル12の操作量Stが取得されるとともに、ブレーキペダル12の操作速度Vstが演算される。次に、S12において、急ブレーキフラグFLBのフラグ値が確認される。その急ブレーキフラグFLBは、閉弁状態を実現する場合に、フラグ値が0とされ、開弁状態を実現する場合に、フラグ値が1とされるものである。急ブレーキフラグFLBの初期値は0であるため、通常は、S13,S14はスキップされる。その場合、S15において、ブレーキ操作速度Vstが設定速度V0を超えているか否かが判定される。ブレーキ操作速度Vstが設定値V0以下である場合には、S16において、後に詳しく説明する閉弁状態を実現するための処理が行われる。一方、S15において、ブレーキ操作速度Vstが設定値V0を超えている場合には、S17において、急ブレーキフラグFLBのフラグ値が1とされ、S18において、開弁状態を実現するための処理が行われる。
なお、S18の開弁状態実現処理は、そのブレーキ操作が終了するまで継続して行われる。具体的には、S12において、急ブレーキフラグFLBのフラグ値が1であると判定された場合には、S13において、ブレーキペダル12の操作量Stが0か否かの判定が行われ、0でない場合には、S14〜S17がスキップされ、S18の開弁状態実現処理が実行されるようになっている。一方、S13において、操作量Stが0である場合には、S14において、急ブレーキフラグFLBのフラグ値が0とされ、S15以下の処理が行われる。
S16の閉弁状態を実現するための処理は、図9にフローチャートを示す閉弁状態実現処理サブルーチンが実行されることによって行われる。また、S18の開弁状態を実現するための処理は、図10に示す開弁状態実現処理サブルーチンが実行されることによって行われる。これら閉弁状態実現処理サブルーチンおよび開弁状態実現処理サブルーチンでは、負担の軽いコイルを優先して使用すべく、優先するコイルを示すためのフラグである優先コイルフラグFLCが用いられる。その優先コイルフラグFLCのフラグ値は、第1コイル130を優先させる場合に1とされ、第2コイル132を優先させる場合に2とされる。
閉弁状態実現処理サブルーチンは、2つのコイル130,132の各々に、移動電流を通電するのか、保持電流を通電するのかを決定するものである。このサブルーチンでは、まず、S21において、カウンタCmがカウントアップされ、S22において、そのカウンタCmが設定値Cm0以上か否かが判定される。カウンタCmが設定値Cm0より小さい場合には、S23以下において、移動電流を通電する処理が行われ、カウンタCmが設定値Cm0以上となった場合には、S26以下において、保持電流を通電する処理が行われる。
カウンタCmが設定値Cm0より小さい場合、S23においては、優先コイルフラグFLCのフラグ値が確認され、S24もしくはS25において、そのフラグ値に対応するコイルとは別のコイルに、移動電流imを通電する。一方、カウンタCmが設定値Cm0以上の場合には、S26において、もう1つのカウンタChがカウントアップされ、続くS27において、そのカウンタChが設定値Ch0以上か否かが判定される。カウンタChが設定値Ch0以上である場合には、S28において、カウンタChがリセットされ、S29〜S31において、保持電流を通電するコイルを切り換える処理が行われる。なお、カウンタChが設定値Ch0より小さい場合には、S28〜S31の処理がスキップされる。
次いで、S32において、保持電流を通電する制御を実行するための処理が行われる。その保持電流通電制御は、図11にフローチャートを示す保持電流通電制御サブルーチンが実行されることによって行われる。そのサブルーチンでは、まずS51において、ブレーキペダル12の操作速度Vstが閾操作速度V1を超えたか否かが判定される。次いで、操作速度Vstが閾操作速度V1以下である場合にはS52において、操作速度Vstが閾操作速度V1より大きい場合にはS56において、追加保持電流を通電するか否かの判定が行われる。具体的には、S52においては、ブレーキペダル12の操作量Stが閾操作量St0を超えたか否かにより判定され、S56においては、操作量Stが閾操作量St0より大きな値であるSt1を超えたか否かにより判定される。
S52もしくはS56の判定において操作量Stが閾操作量以下である場合には、S53以下において、保持電流を通電するための処理が行われる。具体的には、S53において、優先コイルフラグFLCのフラグ値が確認され、そのフラグ値に対応するコイルに保持電流ihを通電するようになっている。一方、操作量Stが閾操作量を超えた場合には、S57において、優先コイルフラグFLCのフラグ値が確認され、そのフラグ値に対応するコイルに通電している保持電流を低減するとともに、保持電流を通電していない方のコイルに追加保持電流ih +を通電するようになっている。
また、図8にフローチャートを示した分担通電制御サブルーチンのS18における開弁状態実現処理は、先にも述べたように、図10にフローチャートを示す開弁状態実現処理サブルーチンが実行されることによって行われる。そのサブルーチンでは、まず、S41において、閉弁状態実現処理サブルーチンで用いられたカウンタCmおよびChがリセットされる。次いで、S42において、温度センサ186,188により検出された第1コイル130の温度と第2コイルの温度とが比較され、S43,S44において、温度が低い方のコイルを優先するように、優先コイルフラグFLCのフラグ値が決定される。そして、S45において、2つのコイル130,132の両者に通電しないように、両者の目標電流が0とされる。以上で、1回のシミュレータ制御弁通電制御プログラムの実行が終了する。
II)ABS増圧弁−保持電流通電制御プログラム
ABSアクチュエータ20が有する増圧弁90の必要電流は、ABS制御を実行するためのプログラムにおいて決定される。そして、図12にフローチャートを示す保持電流通電制御プログラムは、ABS制御中における必要電流が保持電流ihである場合に、各コイルの通電電流を決定するためものである。なお、ABS制御を実行するためのプログラムについては省略するものとする。
保持電流通電制御プログラムでは、まず、S61において、必要電流i*が保持電流ihであるか否かが判定され、必要電流i*が保持電流ihである場合に、S62以下の処理が行われ、必要電流i*が保持電流ihでない場合には、S62以下の処理がスキップされて1回のプログラムの実行が終了する。
必要電流i*が保持電流ihである場合、S62において、調整圧センサ184により検出された調整圧PINが取得されるとともに、その検出値から調整圧の増加速度VPが演算される。次いで、S63において、調整圧の増加速度VPが閾速度VP0を超えたか否かが判定される。次いで、増加速度VPが閾速度VP0以下である場合にはS64において、増加速度VPが閾速度VP0を超えた場合にはS65において、追加保持電流を通電するか否かの判定が行われる。具体的には、S64においては、調整圧PINが閾圧PIN0を超えたか否かにより判定され、S65においては、調整圧PINが閾圧PIN0より大きな値であるPIN1を超えたか否かにより判定される。
S64もしくはS65の判定において調整圧PINが閾圧以下である場合には、S66以下において、保持電流を通電するための処理が行われる。

具体的には、S66において、優先コイルフラグFLCのフラグ値が確認され、そのフラグ値に対応するコイルに保持電流ihを通電するようになっている。一方、調整圧PINが閾圧を超えた場合には、S69において、2つのコイルの一方に通電している保持電流を増加するとともに、保持電流を通電していない方のコイルに追加保持電流を通電するようになっている。以上で、1回の保持電流通電制御プログラムの実行が終了する。
<電磁弁装置の機能構成>
上述したような制御を実行するECU160のコンピュータ162は、前述した各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図4に示すように、コンピュータ162は、シミュレータ制御弁80が正常な場合に、プランジャを作動させるのに必要な電流である必要電流を、2つのコイルの各々に分担する制御を実行する分担通電制御実行部200と、2つのコイルの一方に通電できない失陥が生じた場合に、通電可能なコイルだけで、電磁弁を開閉させる制御を実行する失陥時通電制御実行部202とを有している。その分担通電制御実行部200は、2つのコイルの一方に移動電流を通電するとともに、他方に保持電流を通電して、通電するコイルを変更する制御を実行する機能部であり、定められた条件を満たした場合に追加保持電流を通電する追加保持電流通電制御実行部204を含んで構成される。
なお、分担通電制御実行部200は、図8の分担通電制御サブルーチンを実行する部分が相当し、失陥時通電制御実行部202は、図7のシミュレータ制御弁通電制御プログラムのS5,6を実行する部分が相当する。また、追加保持電流通電制御実行部204は、図11に示した保持電流通電制御サブルーチンのS51,52,S56〜59を実行する部分が相当する。
以上のような構成から、液圧ブレーキシステム10は、電磁弁とその電磁弁のコイルに通電する通電コントローラとを備えた電磁弁装置220を含んで構成されている。その電磁弁装置220が有する通電コントローラ222は、シミュレータ制御弁80およびABSアクチュエータ20が有する4つの増圧弁90の各々のコイルに、開弁状態と閉弁状態とを切り換えるために通電するものであり、上述した分担通電制御実行部200、失陥時通電制御実行部202、シミュレータ制御弁80の2つのコイル130,132に対応する2つの駆動回路166a,166b、4つの増圧弁90の各々の2つのコイル130,132に対応する駆動回路168a,168bを含んで構成されているのである。
10:車両用液圧ブレーキシステム 12:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材) 14:車輪 16:ブレーキ装置 18:マスタシリンダ装置 20:ABSアクチュエータ 22:高圧源装置 24:リザーバ(低圧源) 46:高圧源液圧センサ[PH] 60:ハウジング 62:入力ピストン 64:第1加圧ピストン 66:第2加圧ピストン 74:連通路 76:連通切換弁 78:低圧路 80:シミュレータ制御弁〔電磁弁〕 90:増圧弁〔電磁弁〕 92:減圧弁 102:プランジャ 104:弁部材〔弁座〕 106:第1液室 108:第2液室 120:コイルスプリング〔付勢部材〕 130:第1コイル 132:第2コイル 160:ブレーキ電子制御ユニット[ECU] 162:コンピュータ 200:分担通電制御実行部 202:失陥時通電制御実行部 204:追加保持電流通電制御実行部 220:電磁弁装置 222:通電コントローラ
m:移動電流 ih:保持電流 St:操作量 St0,St1:閾操作量 ih +:追加保持電流 Vst:操作速度 V1:閾操作速度 PIN:調整圧 PIN0,PIN1:閾圧

Claims (12)

  1. (a)開口を有する弁座と、(b)その弁座に対して着座・離座可能なプランジャと、(c)そのプランジャを前記弁座から離座させる方向に自身の弾性力によって付勢する付勢部材と、(d)それぞれが、通電されることで前記プランジャを前記弁座に着座させる方向に付勢するための磁界を形成する第1コイルおよび第2コイルとを有し、(i)前記プランジャが前記弁座から離座し、作動液が前記開口を高圧側から低圧側に向かって通過することを許容する開弁状態と、(ii)前記プランジャが前記弁座に前記開口を塞ぐようにして着座し、作動液が前記開口を通過することを禁止する閉弁状態とが切り換わるように構成された電磁弁と、
    前記第1コイルおよび前記第2コイルに個別に通電可能とされ、前記開弁状態から前記閉弁状態に切り換えるべく、前記プランジャを移動させるために必要な電流である移動電流を前記第1コイルと前記第2コイルとの一方に通電し、そのプランジャが移動した後に、そのプランジャを移動させた位置で保持するために必要な電流である保持電流を前記第1コイルと前記第2コイルとの他方に通電するように構成された通電コントローラと
    を備えた電磁弁装置であって、
    前記通電コントローラが、
    前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に、前記保持電流とは別に前記プランジャを保持するための電流である追加保持電流を通電する追加保持電流通電制御を実行可能に構成された電磁弁装置。
  2. 前記通電コントローラが、
    前記追加保持電流通電制御を実行している場合に、実行していない場合に比較して、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に通電する前記保持電流を小さくするように構成された請求項1に記載の電磁弁装置。
  3. 前記通電コントローラが、
    前記追加保持電流通電制御において、前記保持電流と前記追加保持電流とを足し合わせた電流の大きさが、前記追加保持電流通電制御を実行していない場合の前記保持電流より大きくなるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に前記保持電流を通電するとともに、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に前記追加保持電流を通電するように構成された請求項2に記載の電磁弁装置。
  4. 前記通電コントローラが、
    前記保持電流を、それが前記移動電流より小さくなるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に通電するように構成されるとともに、
    前記追加保持電流通電制御において、前記保持電流と前記追加保持電流とを足し合わせた電流の大きさが、前記移動電流以上となるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に前記保持電流を通電するとともに、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に前記追加保持電流を通電するように構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の電磁弁装置。
  5. 前記電磁弁が、前記プランジャとは反対側が高圧側となるような箇所に配設され、
    前記通電コントローラが、
    前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、高圧側の液圧に依拠して前記プランジャの先端に作用する力が設定された力を超えるような状況下において、前記追加保持電流通電制御を実行するように構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の電磁弁装置。
  6. 前記通電コントローラが、
    前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、前記プランジャの先端に作用する高圧側の液圧が閾圧を超えた場合に、前記追加保持電流通電制御を実行するように構成された請求項5に記載の電磁弁装置。
  7. 前記通電コントローラが、
    前記プランジャの先端に作用する高圧側の液圧の増加速度が設定速度を超える場合に、前記閾圧を小さくするように構成された請求項6に記載の電磁弁装置。
  8. 当該電磁弁装置が、ブレーキ操作部材になされた操作に基づいて車両を制動させる液圧ブレーキシステムに搭載され、
    前記電磁弁が、
    前記プランジャとは反対側の液圧が、前記ブレーキ操作部材の操作量の変化に伴って変動するような箇所に配設された請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の電磁弁装置。
  9. 前記通電コントローラが、
    前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、前記ブレーキ操作部材の操作量が閾操作量を超える場合に、前記追加保持電流通電制御を実行するように構成された請求項8に記載の電磁弁装置。
  10. 前記通電コントローラが、
    前記ブレーキ操作部材の操作速度が設定速度を超える場合に、前記閾操作量を小さくするように構成された請求項9に記載の電磁弁装置。
  11. 当該電磁弁装置が、
    車輪に制動力を付与するブレーキ装置と、そのブレーキ装置に作動液を供給する作動液供給装置とを有し、車輪のロックに対処するためのABS制御を実行可能とされた液圧ブレーキシステムに搭載され、
    前記電磁弁が、
    前記作動液供給装置と前記ブレーキ装置との間に配設され、前記ABS制御実行時に、前記開弁状態において前記ブレーキ装置の液圧を増圧し、前記閉弁状態において前記ブレーキ装置の増圧を禁止するものであり、
    前記通電コントローラが、
    前記ABS制御において閉弁状態を実現するために、前記移動電流を前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に通電し、前記保持電流を前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に通電するとともに、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方への前記保持電流の通電時に、前記作動液供給装置から供給される作動液の液圧が閾圧を超えた場合に、前記追加保持電流通電制御を実行するように構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の電磁弁装置。
  12. 前記通電コントローラが、
    前記追加保持電流通電制御において、前記保持電流と前記追加保持電流とを足し合わせた電流の大きさが、前記移動電流以上となるように、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記他方に前記保持電流を通電するとともに、前記第1コイルと前記第2コイルとの前記一方に前記追加保持電流を通電するように構成された請求項11に記載の電磁弁装置。
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