JP2013518360A - 電線のシールド構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、電線を介して侵入する外部ノイズの影響を限界まで排除することのできる新規な電線のシールド構造を提供することを目的とする。
【解決手段】高い電磁波遮断性、振動吸収性、熱発散性等を備えるマグネシウムを主成分とする金属箔テープを、電線の外周に螺旋を描くように巻き付けることによって、高性能シールド層を形成することができる。さらに、AVケーブルにおいて、マグネシウムテープを信号線のIN側からOUT側に向って、反時計回り(左回り)の螺旋を描くように巻き付けてシールド層を形成することによって、非常に高い再現性をもって原音を再現することができる。
【選択図】図1
【解決手段】高い電磁波遮断性、振動吸収性、熱発散性等を備えるマグネシウムを主成分とする金属箔テープを、電線の外周に螺旋を描くように巻き付けることによって、高性能シールド層を形成することができる。さらに、AVケーブルにおいて、マグネシウムテープを信号線のIN側からOUT側に向って、反時計回り(左回り)の螺旋を描くように巻き付けてシールド層を形成することによって、非常に高い再現性をもって原音を再現することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、電線のシールド構造に関し、より詳細には、マグネシウムを主成分とする電線のシールド構造に関する。
一般に、電子機器への信号通信・電力供給等を目的とした各種電線は、電磁波や振動など、常に外部からのノイズに晒された状態で使用されている。電線が外部ノイズを拾ってしまうと、伝送中の信号が乱れ、コンピュータなどの精密電子機器においては、最悪の場合、誤作動が生じてしまうことがある。
このような外部ノイズの影響を低減すべく、従来、金属箔テープを使用して電線のシールドを形成することが検討されている。この点につき、特開2004−63418号公報(特許文献1)は、Al−PETテープや銅蒸着PETテープなどの金属箔テープを螺旋状に巻き付けてシールド層を形成した2芯平行シールドケーブルを開示する。これらの金属箔は、電磁波に対しては一定の遮蔽効果を奏するものの、振動吸収については十分な効果を奏するものとは言えなかった。また、近年の電子機器の高性能化、伝送信号の高速化、機器内配線の高密度化等に伴って、シールド効果の更なる向上が求められていた。
一方、AVケーブルのように、繊細なアナログ信号を忠実に伝送することが要請される電線においては、外部ノイズの影響が出力の質(音質・画質)に如実に表れてしまうため、外部ノイズの影響を限界まで排除することが要請される。さらに、オーディオケーブルのシールド層を銅箔やアルミ箔で構成した場合、それらの金属材料に固有の共振成分が音信号に入り込んでしまうため、出力音の音色に違和感が生じてしまう(いわゆる、金属音がのってしまう)という問題があった。
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、電線を介して侵入する外部ノイズの影響を限界まで排除することのできる新規な電線のシールド構造を提供することを目的とする。
本発明者らは、電線を介して侵入する外部ノイズの影響を限界まで排除することのできる新規な電線のシールド構造につき鋭意検討した結果、実用金属であるマグネシウムが備える高い電磁波遮断性、振動吸収性、熱発散性等の物性に着目し、マグネシウムを主成分とするテープ状の金属箔を、電線の外周に螺旋を描くように巻き付けてシールド層を形成する構成に想到して本発明に至ったのである。
また、本発明者らは、マグネシウムを主成分とするテープ状の金属箔を、AVケーブルのIN側からOUT側に向って、反時計回り(左回り)の螺旋を描くように巻き付けてシールド層を形成することによって、非常に高い再現性をもって原音が再現される現象を発見し、本発明に至ったのである。
上述したように、本発明によれば、電線を介して侵入する外部ノイズの影響を限界まで排除することのできる新規な電線のシールド構造が提供される。
以下、本発明のマグネシウムを主成分とする電線のシールド構造(以下、マグネシウムシールド構造という)について、図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態であるマグネシウムシールドケーブル10(以下、シールドケーブル10として参照する)を示す図である。図1に示すシールドケーブル10は、その両端に、それぞれ、ピンプラグ12(OUT側)およびピンプラグ13(IN側)を備えるRCAケーブルとして例示されている。図1(a)は、シールドケーブル10の側面図を示し、図1(b)は、図1(a)に示すシールドケーブル10のA−A線における断面図を示す。
図1(b)に示されるように、シールドケーブル10は、被覆された2本の信号線(すなわち、電線)を備える2芯ケーブルとして構成されており、ホット側(+)に接続される信号線14と、コールド側(−)に接続される信号線16を備え、信号線14および信号線16は、既知のシールド構造である銅線ブレード18によって被覆されている。
さらに、本実施形態のシールドケーブル10においては、銅線ブレード18の外周がマグネシウム・シールド層20によって被覆されており、最外周が合成樹脂からなるシース22によって被覆されて構成されている。
図1(a)においては、シールドケーブル10について、説明の便宜のため、シース22の一部を取り去り、内側のマグネシウム・シールド層20を表出させて示している。図1(a)に示されるように、本実施形態におけるマグネシウム・シールド層20は、テープ状の金属箔をシールドケーブル10の長手方向に螺旋状に巻き付けることによって形成されている。本実施形態におけるテープ状の金属箔は、マグネシウムを主成分とする金属箔によって構成されている。実用金属であるマグネシウムは、従来のシールド層の材料として採用されてきた、銅(Cu)やアルミ(Al)などに比べて、より優れた電磁波遮断性ならびに振動吸収性を有する。また、その密度が小さいため、製品の軽量化に資するという利点を備える。
本実施形態においては、テープ状の金属箔として、マグネシウム合金箔を用いることができ、純マグネシウム箔を用いることが最も望ましい。マグネシウム合金箔を用いる場合は、マグネシウムの純度が高いほどよく、マグネシウムの含有率が95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましい。
次に、本発明のマグネシウムシールド構造の形成方法について、図1に示したシールドケーブル10に基づいて説明する。図2は、本実施形態のシールドケーブル10のIN側近傍を拡大して示す図である。なお、図2においては、説明の便宜のため、シース22を取り去った状態のシールドケーブル10を示している。図2に示されるように、本実施形態におけるマグネシウムシールド構造に相当するマグネシウム・シールド層20は、銅線ブレード18の外周(すなわち、信号線14および16の外周)に対し、テープ状の金属箔テープ20aを螺旋状に巻き付けることによって形成されている。なお、本実施形態においては、IN側の始端からOUT側の終端に至るまでを、一本の連続した金属箔テープ20aを用いて巻き付けることが好ましい。
また、金属箔テープ20aの巻き付けに際しては、図2に示すように、金属箔テープ20aのテープ幅のおおよそ半分程度を重ねるようにして、テープ間に隙間を生じさせないように、均等に巻いていくことが好ましい。このような形で金属箔テープ20aを螺旋状に巻いていくことによって、使用の際にシールドケーブル10が曲げられた場合であっても、マグネシウム・シールド層20に隙間が生じたり、金属箔テープ20aが応力によって破断したりすることが防止される。
以上、本実施形態のシールドケーブル10におけるマグネシウム・シールド層20の形成方法について説明したが、次に、本実施形態のシールドケーブル10におけるマグネシウム・シールド層20の電気的な接続条件について、図3を参照して以下説明する。
図3は、本実施形態のシールドケーブル10のピンプラグの内部断面を示す図であり、図3(a)は、IN側のピンプラグ13の内部断面を示し、図3(b)は、OUT側のピンプラグ12の内部断面を示す。図3(a)に示されるように、IN側のピンプラグ13においては、信号線16は、ピン13aにはんだ付けなどによって電気的に接続され、信号線14は、ボディ13bに同じくはんだ付けなどによって電気的に接続されている。一方、マグネシウム・シールド層20とボディ13bとの間にはシース22が介在しており、マグネシウム・シールド層20とボディ13bとが電気的に断絶するように構成されている。
一方、図3(b)に示されるように、OUT側のピンプラグ12においては、信号線16および信号線14が、それぞれ、ピン12aおよびボディ12bにはんだ付けなどによって電気的に接続されている点についてはIN側と同様であるが、OUT側のピンプラグ12においては、IN側と異なり、図中の矢印が示すように、マグネシウム・シールド層20とボディ12bとが、はんだ付け、圧着、圧接、その他の適切な方法によって電気的に接続するように構成されている。以上、本実施形態におけるマグネシウム・シールド層20の電気的な接続条件について説明したが、次に、本発明のマグネシウムシールド構造が奏する作用効果について、同じく、シールドケーブル10に基づいて説明する。
図4は、本実施形態のシールドケーブル10の奏する作用効果を説明するための概念図である。ここでは、仮に、シールドケーブル10のピンプラグ13が図示しないCD再生装置Xに接続され、ピンプラグ12が図示しないアンプYに接続されているものとして説明する。CD再生装置Xにおいて所定の音源CDを再生した場合、CD再生装置Xから出力された音声信号は、シールドケーブル10内の信号線を通り、矢印の方向(紙面の右から左)に伝送される。
一方で、音声信号が伝送される間、シールドケーブル10は、外部ノイズ、すなわち、外部からの電磁波や振動などに晒される。外部ノイズ(N)は、シールドケーブル10のシース22を透過してマグネシウム・シールド層20に到達する。ここで、本実施形態におけるマグネシウム・シールド層20は、マグネシウムを主成分とする金属箔によって構成されており、マグネシウムは、電磁波遮断性が非常に高く、また、その振動吸収率は、実用金属中最も高いため、外部からシールドケーブル10内に侵入した電磁波がマグネシウム・シールド層20によって好適に遮断されるとともに、外部から伝播した振動がマグネシウム・シールド層20に好適に吸収される。
さらに本実施形態におけるシールドケーブル10において、上述したように、マグネシウム・シールド層20を一本の連続した金属箔テープ20aによって形成し、かつ、そのIN側端部をピンプラグ13と電気的に断絶し、OUT側端部をピンプラグ12のボディ12b(すなわち、コールド端子(−))と電気的に接続するように構成した場合には、ノイズが伝播する方向がIN側からOUT側へと整えられ、マグネシウム・シールド層20が外部から拾ったノイズをIN側のCD再生装置Xにフィードバックさせることなく、ピンプラグ12のボディ12b(すなわち、コールド端子(−))を経て、OUT側のアンプYのグランド(アース)に落とすことができる。以上、説明したように、本発明のマグネシウムシールド構造は、その材料として、電磁波遮断性および振動吸収性に共に優れたマグネシウムを採用することによって、伝送信号に対する外部ノイズの干渉を最大限に低減することができる。
以上、本発明のマグネシウムシールド構造について、図1〜図4に示す実施形態をもって説明してきたが、本発明のマグネシウムシールド構造は、上述した実施形態に限られるものではなく、要するに、マグネシウムを主成分とする金属箔テープが、電線の外周を覆うように螺旋状に巻かれてなるものは、本発明の範囲に含まれる。ここで、金属箔テープを電線の外周を覆うように巻く態様は、電線の被膜の外周面に直接金属箔テープを巻く態様であってもよく、複数の電線をまとめた束の外周に金属箔テープを巻く態様であってもよく、あるいは、既存の電線ケーブルのシースの外周面に対して金属箔テープを巻く態様であってもよく、複数の電線ケーブルをまとめた束の外周に金属箔テープを巻く態様であってもよい。
また、上述した説明においては、便宜上、RCAケーブルに基づいて本発明のマグネシウムシールド構造を説明してきたが、本発明のマグネシウムシールド構造の適用範囲は、特定の用途・規格を有する電線に限定されるものでなく、本発明のマグネシウムシールド構造は、コンピュータ関連機器の接続用ケーブル、AV関連機器の接続用ケーブルをはじめ、その他のあらゆる電子機器に接続されるケーブルに適用することができる。
コンピュータ関連機器の接続用ケーブルとしては、IDEケーブル、シリアルATAケーブル、HDMIケーブル、LANケーブル、モニタケーブル、USBケーブル、IEEEケーブル、SCSIケーブル、プリンタケーブル、コンピュータ関連機器の主電源ケーブル等を例示することができる。特に、データの高速転送を行なうためのSCSIケーブルに本発明のマグネシウムシールド構造を適用することは有用であろう。
また、AV関連機器の接続用ケーブルとしては、AVケーブル一般(オーディオケーブル・ビデオケーブル)、スピーカケーブル、マイクケーブル、D端子ケーブル、HDMIケーブル、ギターケーブルをはじめとする電気楽器用ケーブル、AV関連機器の主電源ケーブル等を例示することができる。その他、本発明のマグネシウムシールド構造は、各種電子機器の接続用ケーブル、主電源ケーブル、アンテナケーブル、電話ケーブル、等に適用することもできる。
さらに、本発明のマグネシウムシールド構造は、電子機器の外部接続ケーブルのみならず、電子機器の内部配線に対しても適用することができる。パーソナル・コンピュータの内部配線で言えば、CPUファンやケースファンなどの冷却装置の電源用ケーブル、ハードディスクドライブやDVDドライブなどの各種ドライブの電源用ケーブル、各種データ用ケーブル、等を例示することができる。以上、本発明のマグネシウムシールド構造の適用範囲について説明してきたが、本発明のマグネシウムシールド構造は、繊細なアナログ信号を忠実に伝送することが要請される電線に適用することによって、特に顕著な効果を奏するであろう。その中でも、本発明のマグネシウムシールド構造をAV機器接続の用途に適用することには、以下に示す利点がある。
これまでのように、AVケーブルのシールド層の材料として、銅(Cu)やアルミ(Al)等の他の金属を使用した場合、これらの金属の物性によって外部ノイズをキャンセルできたとしても、これらの金属自体は、信号線を伝播する音声信号に対して完全に中立ではなく、これらの金属に固有の振動が音声信号に干渉することは避けられない。このようなシールド層の材料金属による干渉が複合共振となって音声信号に入り込む結果、音源に録音されていないノイズがアンプに伝わってしまい、最終的な出力(音色)に聴感上の違和感が生じてしまう。
この点につき、本発明のマグネシウムシールド構造は、マグネシウムを主成分としているので、同様に、マグネシウムに固有の振動が音声信号に干渉することになるが、マグネシウムが音声信号に与える複合共振の影響は、木材が音声信号に与える複合共振の影響に非常に近いため、最終的な出力(音色)に聴感上の違和感をほとんど生じさせない。すなわち、音楽CDなどに録音された原音の成分には、一般に、木材由来の複合共振が予め織り込まれているため、木材に近い音色を持つマグネシウムは、これらの音声信号と相性がよい。その結果、本発明のマグネシウムシールド構造は、AVケーブルの用途においては、信号の乱れを防ぐだけでなく、原音のもつ質感をほとんど変化させないという特異な効果を奏する。
なお、AVケーブルの用途においては、マグネシウム金属箔テープの巻き方向を、図2に示すように、IN側からOUT側に向って、反時計回り(左回り)の螺旋を描くように巻き付けることが好ましい。この理由については、明らかでないが、IN側からOUT側に向って、時計回り(右回り)の螺旋を描くように巻き付けた場合と比較して、反時計回り(左回り)の螺旋を描くように巻き付けた場合の方がより音の輪郭がはっきりするという現象を本発明者らは発見した。また、本発明者らは、マグネシウム金属箔テープにおけるマグネシウムの含有率が97%以上の場合に、特に聴感が向上することを発見した。
以上、本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到することができるその他の実施形態であって、本発明の作用・効果を奏する構成は、本発明の範囲に含まれるものである。
以下、本発明のマグネシウムシールド構造について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
<マグネシウムシールドの遮蔽効果の検証>
本発明のマグネシウムシールドの遮蔽効果について、評価実験を行なった。なお、以下の評価実験は、IEC規格(IEC1196-1、IEC61196-1)に準拠した吸収クランプ法による(社団法人電線総合技術センター調べ)。
本発明のマグネシウムシールドの遮蔽効果について、評価実験を行なった。なお、以下の評価実験は、IEC規格(IEC1196-1、IEC61196-1)に準拠した吸収クランプ法による(社団法人電線総合技術センター調べ)。
評価対象として、市販のLANケーブル(カテゴリ6,全長7m,SANWA SUPPLY 製,型番:KB-T6E-07)のシースの上にIN側を始端とし、OUT側に向って、マグネシウム合金箔テープ(幅20mm、厚さ45μm、マグネシウム含有率95〜96%、アルミ3%、亜鉛1%、品番AZ31B、日本金属製)を、隙間ができないように、テープ幅を半分程度均等に重ねながら、IN側から見て反時計回りの螺旋状に巻いたものを用意した。併せて、比較例として、マグネシウム合金箔テープに代えて、同様の手順でアルミ箔テープを巻いたLANケーブル(比較サンプル1)、同様の手順で銅箔テープを巻いたLANケーブル(比較サンプル2)を用意した。
図5(b)〜(d)は、それぞれ、アルミ箔を巻いたLANケーブル(図5中、「Al−S」として参照する)、銅箔を巻いたLANケーブル(図5中、「Cu−S」として参照する)、および、マグネシウム合金箔テープを巻いたLANケーブル(図5中、「Mg−S」として参照する)について結果を示す。なお、図5(a)に、シールドを巻かない通常のLANケーブル(図5中、「Normal」として参照する)についての測定結果を参照データとして示した。
各グラフにおいて、縦軸は遠端回路における電磁波の放射電力量(dBμV)を、横軸は周波数(MHz)をそれぞれ示し、各グラフの下側には、測定系が持つレベル(感度)を参照データとして示している。また、各グラフの上側には4つの測定線が示されているが、これは、使用した市販のLANケーブルに含まれる4組のケーブル対毎の測定結果に対応している(各ケーブル対は異なるインピーダンスを有する)。
図5(b)および(c)に示されるように、「Al−S」および「Cu−S」においては、同程度の放射電力量が測定された。一方、図5(d)に示されるように、「Mg−S」においては、「Al−S」および「Cu−S」のそれと比較して格段に小さい放射電力量しか測定されなかった。以上の試験結果から、本発明のマグネシウムシールドが、外部からの電磁波に対して、従来のシールドよりも格段に高い遮蔽効果を有するものであることが示された。
<マグネシウムシールドが音響に与える影響の検証>
本発明のマグネシウムシールド構造を適用したケーブルを使用してオーディオ機器を接続し、聴感試験を行なった。
(マグネシウムシールドケーブルの作製)
既存のオーディオケーブルを使用して、本実施例のマグネシウムシールドケーブルを作製した。図6(a)〜(c)は、マグネシウムシールドケーブルの作製手順を時系列的に示す図であり、各図においては、各過程におけるケーブルの側面図と断面図(A−A線)を併せて示す。以下、図6を参照して、本実施例のマグネシウムシールドケーブルの作製方法について説明する。
本発明のマグネシウムシールド構造を適用したケーブルを使用してオーディオ機器を接続し、聴感試験を行なった。
(マグネシウムシールドケーブルの作製)
既存のオーディオケーブルを使用して、本実施例のマグネシウムシールドケーブルを作製した。図6(a)〜(c)は、マグネシウムシールドケーブルの作製手順を時系列的に示す図であり、各図においては、各過程におけるケーブルの側面図と断面図(A−A線)を併せて示す。以下、図6を参照して、本実施例のマグネシウムシールドケーブルの作製方法について説明する。
図6(a)に示すように、既存のオーディオケーブル30を用意した。オーディオケーブル30は、2芯信号線が銅線ブレード18およびシース22によって被覆されてなる一般的なRCAケーブル(品番K-1、KRYNA社製、全長1000mm)を使用した。まず、オーディオケーブル30のシース22の上に、IN側を始端とし、OUT側に向って、マグネシウム合金箔テープ32(幅20mm、厚さ55μm、マグネシウム含有率95〜96%、アルミ3%、亜鉛1%、品番AZ31B、日本金属製)を、隙間ができないように、テープ幅を半分程度均等に重ねながら、IN側から見て反時計回りの螺旋状に巻いていった。なお、上述したのと同様の手順で、マグネシウム合金箔テープ32を、IN側から見て時計回りに巻いたものも併せて作製した。
図6(b)は、マグネシウム合金箔テープ32を巻き終わった状態を示す。図6(b)に示されるように、マグネシウム合金箔テープ32の始端は、IN側のピンプラグ13とショートしないようにし、マグネシウム合金箔テープ32の終端は、OUT側のピンプラグ12のコールド端子(−)に電気的に接続した。なお、本実施例においては、図7に示すように、ピンプラグ12(OUT側)のボディ12bに設けたネジ穴に、導電性の金属ネジ34を螺合することによって、ボディ12bを貫通した金属ネジ34を介してマグネシウム合金箔テープ32とコールド端子(−)とを電気的に接続した。マグネシウムは、融点が高く、また、温度を高くすると発火の虞があるため、はんだ付けを用いないことが好ましく、図7に示すような方法の他、圧着または圧接によって電気的に接続することが好ましい。
最後に、図6(c)に示すように、マグネシウム合金箔テープ32を保護するため、熱収縮チューブ36(品番9.5-12mm、住友電工社製、全長1000mm)を使用して、最外周を被覆し、最終サンプルとした。なお、マグネシウム合金箔テープ32を、IN側から見て時計回りに巻いたものをサンプル1とし、反時計回りに巻いたものをサンプル2とした。
(聴感試験)
上述した手順で作製したサンプル1およびサンプル2、ならびに、比較例としての既存のオーディオケーブル30を用いて聴感試験を行なった。具体的には、上記各ケーブルを用いてCD再生装置とアンプとを接続したステレオ装置で、共通のCD音源を再生し、その音色を、音響機器開発のエンジニアに試聴してもらった。
上述した手順で作製したサンプル1およびサンプル2、ならびに、比較例としての既存のオーディオケーブル30を用いて聴感試験を行なった。具体的には、上記各ケーブルを用いてCD再生装置とアンプとを接続したステレオ装置で、共通のCD音源を再生し、その音色を、音響機器開発のエンジニアに試聴してもらった。
その結果、サンプル1(時計回り)は、比較例に比べて、音の解像度、S/N比、定位感、および位相感のいずれもが向上し、また、音質が軽くなったという評価を得た。サンプル2(反時計回り)については、サンプル1(時計回り)について上述したのと同様の評価の他、サンプル1(時計回り)に比較して、音像の高さや奥行き感がより忠実に表現され、ステージが見えやすくなったという非常に高い評価を得た。
以上の試験結果により、本発明のマグネシウムシールド構造をAVケーブルに適用した場合、ケーブルを介して侵入する外部ノイズの影響が限界まで排除され、原音が忠実に再現されることが示された。
10…マグネシウムシールドケーブル、12…ピンプラグ、13…ピンプラグ、14…信号線、16…信号線、18…銅線ブレード、20…マグネシウム・シールド層、22…シース、30…オーディオケーブル、32…マグネシウム合金箔テープ、34…金属ネジ、36…熱収縮チューブ
Claims (14)
- マグネシウムを主成分とするテープ状の金属箔を電線の外周に螺旋状に巻き付けて形成される、電線のシールド構造。
- 前記金属箔は、マグネシウム含有率が95%以上のマグネシウム金属箔である、請求項1に記載の電線のシールド構造。
- 前記マグネシウム金属箔は、純マグネシウム箔である、請求項2に記載の電線のシールド構造。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線のシールド構造を備える、シールドケーブル。
- マグネシウムを主成分とするテープ状の金属箔を、ケーブルのIN側からOUT側に向って螺旋状に巻き付けて形成されたシールド層を備える、AV機器接続用シールドケーブル。
- 前記金属箔は、マグネシウム含有率が95%以上のマグネシウム金属箔である、請求項5に記載のAV機器接続用シールドケーブル。
- 前記マグネシウム金属箔は、純マグネシウム箔である、請求項6に記載のAV機器接続用シールドケーブル。
- 前記シールド層は、前記金属箔をケーブルのIN側からOUT側に向って反時計回りの螺旋を描くように巻き付けて形成される、請求項5〜7のいずれか1項に記載のAV機器接続用シールドケーブル。
- 前記金属箔は、IN側の端子と電気的に断絶し、かつ、OUT側のコールド端子と電気的に接続される、請求項5〜8のいずれか1項に記載のAV機器接続用シールドケーブル。
- 前記シールド層は、一本の連続したテープ状の金属箔によって形成される、請求項5〜9のいずれか1項に記載のAV機器接続用シールドケーブル。
- マグネシウム含有率が95%以上の一本の連続したテープ状のマグネシウム金属箔を、ケーブルのIN側からOUT側に向って反時計回りの螺旋を描くように巻き付けて形成されたシールド層を備え、前記マグネシウム金属箔は、IN側の端子と電気的に断絶し、かつ、OUT側のコールド端子と電気的に接続される、AV機器接続用シールドケーブル。
- RCAケーブルのシースに対して、マグネシウム含有率が95%以上の一本の連続したテープ状のマグネシウム金属箔を、ケーブルのIN側からOUT側に向って反時計回りの螺旋を描くように巻き付けてシールド層を形成したAV機器接続用シールドケーブルであって、前記マグネシウム金属箔は、IN側のピンプラグと電気的に断絶し、かつ、OUT側のピンプラグのボディを貫通して螺合された金属ねじを介してOUT側のコールド端子と電気的に接続される、AV機器接続用シールドケーブル。
- 前記シールド層の外周が熱収縮性チューブによって被覆された、請求項12に記載のAV機器接続用シールドケーブル。
- 電線をシールドする方法であって、マグネシウムを主成分とするテープ状の金属箔を前記電線の外周に螺旋状に巻き付けてシールドする方法。
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