パピローマウイルスは、DNAゲノムと、エンベロープを有さないビリオンと20面体カプシドを持つDNAウイルスである。二本鎖で環状のHPVのDNAゲノムは、後期遺伝子のコーディング領域1つと、早期遺伝子のコーディング領域1つと、早期遺伝子及び後期遺伝子の発現を制御する種々の転写因子に対する結合部位を持つ非コーディング上流調節領域を含有する。後期遺伝子コーディング領域における2つの別々のオープンリーディングフレームはウイルスのカプシドタンパク質L1及びL2をコードする。これら2つのウイルスのカプシドタンパク質は同一のクラスに属し、カプシドタンパク質L1は異なったHPV型間で保存性の高い主要なカプシドタンパク質である。早期遺伝子における8つのオープンリーディングフレームは、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7及びE8と命名された8つの早期ウイルスタンパク質をコードする。早期タンパク質E6及びE7は宿主細胞の不死化及び形質転換に並びに長期のウイルス複製及び生き残りに重要な癌タンパク質である。
高リスクのHPVによる感染には2つの早期ウイルスタンパク質E6とE7が必要とされ、それらは、試験管内で細胞を形質転換し、悪性腫瘍を維持するのにその存在が必要とされるので癌タンパク質である。前癌性又は癌の子宮頸部組織におけるE6及びE7の発現の阻害は侵襲性の癌の進行を阻止する。宿主の組織の内側でE6及びE7癌タンパク質は、内因性宿主細胞調節タンパク質p53及び網膜芽腫(Rb)腫瘍抑制タンパク質の活性をそれぞれ負に遮断し、アポトーシスの阻害及び細胞周期の調節解除を引き起こして子宮頸癌の発生をもたらすことによって機能する。E6癌タンパク質は、DNAの損傷に対して細胞を保護し、アポトーシスを調節する細胞因子であるp53に結合し、p53の分解を誘導する。p53タンパク質のレベルを低下させることによってE6癌タンパク質は腫瘍の細胞死を妨げる。E7癌タンパク質はRbに結合して正常な細胞周期を破壊し、細胞増殖を引き起こす。E7癌タンパク質はさらにサイクリン依存性キナーゼ阻害剤タンパク質p21との相互作用を介して細胞の制御を不安定化させる。HPVのE6とE7癌タンパク質は形質転換された生殖組織で継続して産生されることが分かっている。これらの相互作用は、宿主細胞の増殖及び分化を制御するステージ(すなわち、形質転換)、正常細胞の前腫瘍細胞への及び最終的には癌の悪性度の完全な発現への変換の第1段階を設定する。
腫瘍の進行で役割を担うと思われる追加の一事象は、宿主ゲノムへのHPVのDNAの組込みであり、それはE2のオープンリーディングフレームを破壊することが多く、結果的にE6及びE7癌タンパク質の過剰発現を生じ、宿主ゲノムの不安定を生じる可能性がある。追加の補因子及び突然変異事象は、侵襲性の子宮頸癌の病態形成に重要である可能性があり、それらには、染色体再構成、構成的へテロ接合性の喪失及び癌原遺伝子の活性化が挙げられ得る。
HPV16及びHPV18の双方は培養にてヒト角化細胞を不死化することが示され、侵襲性の子宮頸癌を誘導する、間違いなく最も共通する高リスクのHPV型である。HPV16型単独による感染は、50%を超える子宮頸癌症例に関連し、大部分は扁平上皮癌を生じる。HPV18の感染は、腺癌を誘導する可能性がさらに高い。一部の研究は、子宮頸部組織における腺癌は扁平上皮癌から生じる癌よりも予後の好ましくないさらに活発な形態の癌を生じることを示している。このことは、HPV18感染のある個体はほかの形態のHPV感染のあるものよりはるかに乏しい予後を有し得ることを示唆している。
米国では、ほとんどのパップ検査の結果は正常であるが、毎年、約4〜500万の異常なパップ検査の結果が見つかっている。ほとんどの異常な結果は軽度の異常(ASC−US、パップ検査結果の通常2〜5%)又はLSIL(結果の約2%)であり、HPVの感染を示している。ほとんどの低悪性度の子宮頸部異形成は子宮頸癌に至ることなく自然に退行するが、異形成は高い警戒を必要とする指標として役立ち得る。CIN1は最も一般的で最も良性の形態の子宮頸部上皮内の新生組織形成であり、普通、2年以内に自然に解消する。このために、LSILは単に「成り行きを見守る」という視点で管理され得る。しかしながら、さらに重篤な異形成に進行する12〜16%の機会があるので、内科医は生検を伴った膣鏡診を行うことによってさらに積極的に結果を追跡することを求め得る。異形成が進行するならば、治療が必要となり得る。従って、その場でHPV癌タンパク質を検出するためにパップ塗抹検査と共にHPVのE6E7のICCアッセイを提供することが有用であり、ASC−US、LSIL又はCIN1の患者では、高悪性度の異形成を検出し、即座の介入に役立ち得るCIN2以上を内在するものを特定し、「成り行きを見守る」やり方に関連する不安を回避することが特に有益である。
高悪性度の扁平上皮内病変又はHSIL又はHGSILはその場での中程度又は重度の子宮頸部上皮内新生組織形成又は癌腫を示す。それは普通、パップ検査に続いて診断される。場合によっては、適切に経過観察されなければ、これらの病変は結局侵襲性の子宮頸癌になる。HGSILは癌が存在することを意味するものではない。HGSILの結果を持つ女性すべてのうちで2%以下がその時点で侵襲性の子宮頸癌を有するが、約20%は治療せずに侵襲性の子宮頸癌に進行する。この進行と闘うには、普通、生検を伴う膣鏡診を即座に行って異形成組織を採取する又は取り除くことによってHGSILに対応する。この組織を病理検査に送り、パップ塗抹検査より確定的である組織分類に付す。HGSILは一般にCIN2又はCIN3の組織分類に相当する。従って、その場でHPVのE6E7癌タンパク質を検出するためにHE(ヘマトキシリンとエオシンの染色)と共にHPVのE6E7のIHCアッセイ又はパップ検査と共にHPVのE6E7のICCアッセイを提供することが役に立ち、特にCIN2/CIN3の患者の特定で役に立つ。
本発明の実施形態は、種々の免疫アッセイと、たとえば、高リスク及び低リスクのHPV型が感染した高悪性度の異形成細胞からのE6、E7癌タンパク質の過剰発現が1以上の抗体によって検出できるように、生体マーカーとしてのHPV癌タンパク質に対するモノクローナル抗体を提供する。種々の実施形態は、子宮頸部細胞に存在するHPV癌タンパク質の存在と量を検出して侵襲性の処置なしで高悪性度又は前癌の病変を持つ患者を特定するHPV全細胞免疫アッセイを提供する。
一部の実施形態では、生体試料に存在する1以上のパピローマウイルス型に由来する1以上のタンパク質との1以上の抗体の結合は、顕微鏡下にてタグを付けた1以上の抗体と反応する剤の存在を検出して調べることができ、その剤には比色剤、蛍光色源体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。生体試料には、子宮頸部細胞、子宮頸部組織、子宮頸部ぬぐい液、体液、血清、血液、腫瘍、細胞培養物、生検検体及びこれらの組み合わせを挙げることができる。生体試料は、異常なパップ検査結果のために紹介患者としての人々の群又は子宮頸癌の日常的なスクリーニングのための一般的な集団から得ることができる。
本発明の特定の実施形態によれば、パピローマウイルス感染についてヒト対象をスクリーニングする方法は、マイクロタイタープレート上の生体試料に存在する1以上のパピローマウイルス型に由来する1以上のパピローマウイルスタンパク質を細胞内で検出するための、薄層のヒト細胞を含有するマイクロタイタープレートの固相上での全細胞免疫アッセイによって実施することができる。薄層は、子宮頸部細胞の単層である。
本発明の特定の実施形態によれば、薄層の臨床細胞診試料を含有するマイクロタイタープレート上の1以上の全細胞免疫アッセイは、1以上の精製組換えパピローマウイルスタンパク質に対して生成した又はHPV感染に冒された1以上の細胞性タンパク質に対して生成した1以上の抗体にヒト細胞が結合するように実施され、抗体の少なくとも1つは、パピローマウイルスの癌タンパク質を認識して、マイクロタイタープレートの表面上の薄層の臨床細胞診試料に存在する1以上のパピローマウイルス型に由来する1以上のタンパク質を検出することが可能である。パピローマウイルスの癌タンパク質には、HPV16−E6タンパク質、HPV16−E7タンパク質、HPV18−E6タンパク質、HPV18−E7タンパク質、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。細胞性タンパク質には、p16INK、pRB、p53、E2F、E2F活性化細胞周期タンパク質、サイクリン依存性キナーゼ、CDK4、CDK6、Ki67(MIB−1)、MYCタンパク質、サイクリン−A、サイクリン−B、サイクリン−E、テロメラーゼ−TERC、MCM2、TOP2A、熱ショックタンパク質40(HSP40)、熱ショックタンパク質60(HSP60)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、CA9/MN、ラミニン5、brn−3a、CDKN2、トポイソメラーゼ2A、ミクロソーム維持タンパク質−2、ミクロソーム維持タンパク質−4、ミクロソーム維持タンパク質−5、サバイビン、VEGF、p27(kip1)及びp21(waf)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の実施形態は、最も高リスクのHPV型による感染が単一のモノクローナル抗体及び/又は一般的な汎抗体によって検出できるように種々の免疫アッセイと、HPVウイルスタンパク質に対するモノクローナル抗体を提供する。本発明は、高処理能力形式でHPVタンパク質の存在を検出するHPV細胞に基づいたELISAアッセイを提供する。ヒト対象におけるパピローマウイルスを検出する方法は、形態的に異常なヒト細胞と正常なヒト細胞の混合物に加工したヒト対象からの臨床試料にて、たとえば、細胞に基づいたELISAのような1以上の免疫アッセイを実施することを含む。生体試料は、以下:子宮頸部組織、子宮頸部ぬぐい液、体液、血清、血液、腫瘍、細胞培養物、生検検体及びこれらの組み合わせの1以上から得られる細胞を含み得る。生体試料は、子宮頸癌の日常のスクリーニングのための一般集団としての人々の群から得られ得る。
特定の一実施形態では、本発明の自動化された高処理能力のHPV細胞に基づいたELISAを、HPV感染及び子宮頸癌、そのほかの癌の早期診断のための一般的スクリーニングと、侵襲性の子宮頸癌の特異的な検出と、そのほかのHPV関連の癌、早期段階の前癌病変並びに後期段階の癌の進行の検出に使用することができる。HPVウイルスタンパク質、HPV癌タンパク質を検出し、子宮頸癌を早期スクリーニングし、並びにCIN及び/又は侵襲性の子宮頸癌及びそのほかの癌を診断するための生体マーカーとして及び有用なツールとして有用なHPVタンパク質に対する種々の新規モノクローナル抗体が提供される。
1以上の精製された組換えパピローマウイルスタンパク質に対して生成された1以上のタグ付き抗体によって臨床試料に存在する1以上のパピローマウイルス型から1以上のパピローマウイルスタンパク質を検出することができる。当該技術で検出に好適な様々な剤によって1以上の抗体にタグを付けることができ、その際、剤は比色剤、化学発光剤、蛍光色原体及びそれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、1以上の抗体の少なくとも1つの抗体がパピローマウイルス早期タンパク質を認識することが可能である。パピローマウイルス早期タンパク質は、たとえば、HPV16−E6タンパク質、HPV16−E7タンパク質、HPV18−E6タンパク質、HPV18−E7タンパク質、及びこれらの組み合わせであり得る。
特定の実施形態によれば、ヒト細胞の混合物を液状溶液からマイクロタイタープレートに適用することができる。マイクロプレートに先立って、異なった孔サイズによって細胞の混合物を濾過し、混合物のほかの細胞から子宮頸部細胞を分離することができる。勾配を含有する溶液を介して細胞を遠心し、採取混合物から子宮頸部細胞を得ることもできる。マイクロタイタープレートの表面は、剤で処理して表面上の細胞の付着性を保持するガラス又はプラスチックの表面であり得る。マイクロタイタープレートの表面は膜系のフィルターを含んで望ましくない血液細胞、粘液、細胞残渣等から子宮頸部細胞を分離することもできる。膜の孔サイズは5ミクロン〜10ミクロンに及び得る。表面上への子宮頸部細胞の付着を可能にする剤によって膜を予備処理することができる。ヒト細胞の薄層はたとえば、単層の子宮頸部細胞であり得る。
特定の実施形態によれば、標準化工程を実施してマイクロタイタープレートの各ウェルにおける調べる細胞の数を標準化する。たとえば、細胞充実性(=mLでの試料溶液当たりのμLでの細胞ペレット)を得て、試料全体での細胞の変動を標準化することができる。別の例として、全細胞ELISAアッセイの後、マイクロタイタープレート上の細胞を核の比色用又は蛍光染色用の剤によって対比染色して各ウェルで調べる細胞の数を定量することができる。別の例として、全細胞ELISAは、2以上の抗体、HPV癌タンパク質を検出するための少なくとも1つ、一般の細胞性タンパク質を検出するための1つ、たとえば、内部対照としてのβ−アクチンの使用を含むことができる。これによって患者間にて細胞の数を標準化すること、及び一方の検出によるHPV特異的抗体によるHPV特異的タンパク質を発現する細胞と、他方の検出で対比染色された細胞の比を計算することが可能になる。2つの検出から得られた比は、異常細胞と正常細胞の混合物に存在するHPVのE6E7の程度を表した。
一実施形態では、細胞に基づいたELISA用の検出方式は、可視光、UV光の吸収能を持つプレートリーダー、照度計、蛍光色素の励起及び放射のための種々の波長、及びこれらの組み合わせを含み得る。比色基質を伴った膜系のフィルター式マイクロタイタープレートを用いる実施形態では、比色分析の発色が必ずしも器具を使用せずに可視化され得る。この膜系のELISAは比色検出用又は化学発光検出用の溶液系基質と共に使用することもできる。別の実施形態では、検出方式は、測定を捕捉するCCDカメラ又はそのほかの撮像装置であることができ、それは任意で入射放射線の供給源としてレーザーを用いて得ることができる。
特定の実施形態では、臨床試料で細胞診パパニコロウ塗抹アッセイを実施して細胞診パパニコロウ塗抹検査の結果を1以上の免疫組織学アッセイの結果と比較することができる。臨床試料で核酸のハイブリッド形成アッセイを実施してパピローマウイルスのゲノムの存在を検出することもできる。
種々の実施形態は、一般のHPV感染並びに高リスクのHPV及び低リスクのHPVを含む種々のHPV遺伝子型による感染を含むHPV感染を検出するのに有用な種々の方法、検出アッセイ、キット、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、ポリペプチド、及び核酸に関する。HPVウイルスタンパク質、HPV癌タンパク質を検出すること、子宮頸癌の早期スクリーニング、及び≧CIN2又は≧CIN3の病期を診断することのための生体マーカー及び有用なツールとして有用な、HPVタンパク質に対する種々の新規モノクローナル抗体が提供される。本明細書に記載されるツールは、HPV感染の早期の臨床スクリーニング及び子宮頸癌及びそのほかのHPV関連の癌の一般的な診断にも使用することができる。
一実施形態では、1以上の精製した組換えパピローマウイルスタンパク質には、パピローマウイルスE6タンパク質、パピローマウイルスE7タンパク質、パピローマウイルスL1タンパク質、及びこれらの組み合わせが挙げられる。組換えパピローマウイルスタンパク質には、組換えHPV16−E6タンパク質、組換えHPV16−E7タンパク質、組換えHPV18−E6タンパク質、組換えHPV18−E7タンパク質、組換えHPV16−L1タンパク質、組換えHPV18−L1タンパク質、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態は、単一のモノクローナル抗体によって高リスク及び低リスクのHPV型による感染を検出することができるようにHPVウイルスタンパク質に対する種々のモノクローナル抗体を提供する。一部の実施形態はまた、1以上のHPV型を検出するためのHPV型非特異的なモノクローナル抗体も提供する。すなわち、単一の抗体が1を超えるウイルス型に由来するHPVタンパク質を認識することができる。我々はそれらを汎特異的抗体と呼ぶ。1以上のパピローマウイルス型には、高リスクHPV型、低リスクHPV型、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−56、HPV−58、HPV−59及びHPV−68、HPV−6、HPV−11、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−53、HPV−54、HPV−55及びHPV−56、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
以下の用語及び略語についての定義を以下に設定する。
NILM:悪性腫瘍の上皮内病変について陰性。NILMは、新生組織形成の細胞上の証拠がない場合に使用され;これには反応性修復性の変化のような生物及び/又は非腫瘍の知見が含まれ得る。
ASC−US:意味不明の異型性扁平上皮細胞。細胞は普通、中間にある又は表在性の扁平上皮細胞のサイズであり、ほかに特定されないLSIL又はSILを示唆するが、その診断ではない核変化を有する。
ASC−H:異型性扁平上皮細胞はHSILを除外することはできない。細胞は普通、化生性細胞のサイズであり、単一又はクラスターに見えてもよく、HSILを示唆するが、その診断ではない。
LSIL:HPVの細胞病理学的作用/軽い異形成/CIN1を包含する低悪性度の扁平上皮内病変。
HSIL:中程度の異形成/CIN2及び重度の異形成/CIS/CIN3、及び浸潤が疑われる特徴を持つHSILを包含する高悪性度の扁平上皮内病変。
扁平上皮癌(SCC):近隣組織、血管、リンパ管及びリンパ節に局所的に浸潤する子宮頸部の癌。その進行した段階では、治療するのは困難であり、致命的となり得る。ステージ及び侵襲の程度によって、子宮頸部の侵襲性癌は、局所の切除、子宮摘出、放射状の子宮摘出、放射線及び化学療法によって治療され得る。
腺癌:子宮頸部癌のほとんどが外部皮膚を構成する扁平上皮細胞から生じる一方で、子宮に繋がる子宮頸管の内側を覆う粘液産生細胞から生じる偶発的な癌がある。この腺型を「扁平上皮癌」に対抗して「腺癌」と呼ぶ。腺癌は検出するのが困難であり得る。扁平上皮癌と異なって、腺癌前兆は存在する場合、パップ塗抹では特定するのが困難であり得る。扁平上皮細胞の異形成の子宮頸部における扁平上皮癌への緩やかな進行は腺癌においてはそれほど同様ではない。
本発明の競合的利点
ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によるヒト対象におけるHPV関連の抗体の存在を検出する試みは一般に極度に低いアッセイ感度をもたらすので、商業的に好適な診断検査に開発することはできない。Nindl,I.,Benitez−Bribiesca,L.,Berumen,J.,N,F.,Fisher,S.,Gross,G.,Lopez−Carillo,L.,Muller,M.,Tommasino,M.,Vazquez−Curiel,A.,及びGissmann,L.(1994)、Antibodies against Linear and Conformational Epitopes of the Human Papillomavirus(HPV)Type 16 E6 and E7 Oncoproteins in Sera of Cervical Cancer Patients,Arch.Virol.137,341−353.これらELISAアッセイのほとんどは単一のウイルスタンパク質又は短いペプチド断片を対象としており、ヒト対象に由来する抗体と上手く相互作用し、強く且つ特異的にそれに結合することはできない。アッセイの特異性及び感度が相当低いのでHPV関連の侵襲性子宮頸癌と確認された患者の試料を用いても、患者試料のたった53%がHPV感染について陽性であると見い出されたにすぎない。従って、臨床試料用の診断ツールとして利用できる成功したELISAアッセイは存在しない。
一部の実施形態はCIN2/3についてのE6又はE7の抗体を開発することに存在する3つの難題を解決することを指向する。第1に、HPVタンパク質は臨床試料に少量存在する細胞内タンパク質である。第2に、HPVタンパク質の立体構造は試料採取の工程に敏感である。第3に、それぞれ異なったE6コーディング配列を持つHPV型が多数存在する。従って、HPVタンパク質は上手く大量生産されたことがなく、抗体産生のための免疫原として使用されるようにHPV感染培養細胞株から精製されたこともない。小型の合成ペプチド又は変性させた組換えタンパク質に対して産生された既知の抗HPV抗体は一般に臨床診断での使用には不向きであるが、感染したヒト細胞に自然に存在するHPVウイルスタンパク質とそれらが必ずしも反応しないからである。Veress,G.,Konya,J.,Csiky−Meszaros,T.,Czegledy,J.,およびGergely,L.(1994)、Human Papillomavirus DNA and 抗HPV Secretory IgA Antibodies in Cytologically Normal Cervical Specimens,Journal of Medical Virology、43,pp201−207;Sun,Y.,Shan,K.V.,Muller,M.,Munoz,N.,Bosch,X.F.,及びViscidi,P.P.(1994)、Comparison of Peptide Enzyme−Linked Immunisorbent Assay and Radioimmunoprecipitation Assay with In Vitro−Translated Proteins for Detecti on fo Seruym Antibodies to Human Papillomavirus Type 16 E6 and E7 Proteins,Journal of Clinical Microbiology、1994,pp2216−2220;Meschede,W.,Zumbach,K.,Braspenning,J.,Scheffner,M.,Benitez−Bribiesca,L.,Luande,J.,Gissmann,L.,及びPawlita,M.(1998)、Antibodies against Early Protein of Human Papillomaviruses as Diagnostic Markers for Invasive Cervical Cancer,Journal of Clinical Microbiology,475−480;Sehr,P.,Zymbach,K.,及びPawlita,M.(2001)、A Generic Capture ELISA for Recombinant Proteins Fused to Glutathione S−Transferase:Validation for HPV Serology,Journal of Immunological Methods、253,153−162;Matlashewski,G.,Banks,L.,Wu−Liao,J., Spence,P.,Pirn,D.,及びCrawford,L.(1986)、The Expression of Human Papillomavirus Type 18 E6 Protin in Bacteria and the Production of anti−E6 Antibodies,/.Gen.Virol.67,1909−1916。別の技術的な難題は、自然にHPVに感染したヒト組織におけるホルマリン固定とパラフィン包埋の際に生じるタンパク質の立体構造変化に関する。このことは臨床的に意義のある試料にてHPVタンパク質を検出することの困難さの一因となっている。E6癌タンパク質が多数のシステインアミノ酸を含有し、E6癌タンパク質の正確なトポグラフィは多数のジスルフィド結合の形成を必要とするという事実によってそのような癌タンパク質の製造及びその場での検出が非常に困難なものとなっている。これらの要因は、変性させた組換えタンパク質又は合成ペプチドから産生された利用できる抗体が信頼できる試験管内診断での使用を可能にするように上手く機能しないという事実に対する説明を提供する。加えて、E6タンパク質の小型ペプチドを用いた特定の免疫アッセイは極度に低いアッセイの特異性及び感度を生じることも知られていた。Nindl,I.,Benitez−Bribiesca,L.,Berumen,J.,N,F.,Fisher,S.,Gross,G.,Lopez−Carillo,L.,Muller,M.,Tommasino,M.,Vazquez−Curiel,A.,及びGissmann,L.(1994)、Antibodies against Linear and Conformational Epitopes of the Human Papillomavirus(HPV)Type 16 E6 and E7 Oncoproteins in Sera of Cervical Cancer Patients,Arch.Virol.137,341−353。従って、試験管内診断のための臨床試料に存在するウイルス癌タンパク質を検出することが可能な抗HPV抗体を生成するための、免疫原として精製された天然の形態の利用可能なE6タンパク質は存在しない。
本発明は、新規の抗体と、E6、E7、L1、L2を含むがこれらに限定されない組換え発現させたHPVタンパク質と、全細胞アッセイを含むツールの新規の組み合わせを用いたウイルス癌タンパク質検査への新規のアプローチを提供する。本発明は、臨床試料における細胞内HPV癌タンパク質を検出するための第1の全細胞ELISAを可能にする。この全細胞ELISAは子宮頸癌及びそのほかのHPV関連の癌の診断とスクリーニングにおける真の前癌状態の生体マーカーとしてのHPV癌タンパク質の検出を可能にする。
組換えHPV−E6及び抗体の開発。E6抗体の開発は、凝集しやすいE6癌タンパク質を得ることの困難さによって妨害されてきた。さらに、臨床試料におけるE6タンパク質の検出は、タンパク質の立体構造変化を生じる試料採取条件のために困難である。我々は、技術的障壁を克服して非変性の可溶性形態でのHPV−E6組換えタンパク質を製造し、HPV−E6癌タンパク質に対する特異性の高い抗体を開発した。本発明は、汎抗HPV−E6抗体、すなわち、固定された細胞における最も一般的な高リスクHPV型を検出することが可能である単一抗体を提供する。同一の方法を用いて組換えHPV−E7タンパク質と抗体を開発し、汎抗HPV−E7抗体を得た。また同一方法を用いて組換えHPV−L1タンパク質と組換えHPV−L2タンパク質と抗体を開発し、汎抗HPV−L1抗体と汎抗HPV−L2抗体を得た。
全細胞アッセイのアプローチ。我々はまたIHCアッセイ及びICCアッセイを開発し、固定した臨床試料にてこれらの型の抗体を用いてE6、E7及びL1タンパク質を得た。子宮頸部組織及び剥離した子宮頸部細胞診試料における我々のIHC及びICCの試験は、臨床試料におけるE6、E7及びL11タンパク質を検出することが可能であるこれらの抗体型の有用性を実証している。生検についての侵襲性の処置を回避し、染色に基づいた形態学の解釈とIHC/ICCの結果の主観性と変動性を回避するために、我々は全細胞ELISAに基づく客観的な基盤を開発し、子宮頸癌のスクリーニングに強力なツールを提供した。HPVのE6、E7及びL1の全細胞ELISAはそれぞれ高処理能力アッセイにて細胞内のE6、E7及びL1のタンパク質を測定し、子宮頸癌及びそのほかのHPV関連の癌の診断とスクリーニングにおける真の前癌状態の生体マーカーとしてのHPV癌タンパク質の検出を可能にする。これらのアッセイは、細胞溶解を必要とせず、タンパク質抽出の過程でタンパク質の立体構造の変化を生じ得る界面活性剤の使用を回避し、子宮頸部細胞における天然のE6、E7及びL1のタンパク質の直接検出を可能にする。アッセイは、客観的な検査を提供し、高悪性度の前兆を持つ患者を特定するので、膣鏡診や生検のための不必要な侵襲性の処置を回避する。このELISA方式は、さらに特異的で臨床的に意義のある生体マーカーを使用して、日常の子宮頸癌スクリーニングに好適であるように自動化することができる客観的で、さらに感度の高い、強力な高処理能力の検査を提供し、E6、E7及びL1のタンパク質の二元(存在又は非存在)測定又は半定量的測定を提供するであろう。
現在、HPV関連のタンパク質又は抗体の存在を臨床的に測定する市販の免疫アッセイは存在しない。従って、本発明の実施形態は、HPV感染、異形成及びHPV関連の子宮頸癌に有用な診断ツールを提供する。加えて、本明細書に記載される免疫アッセイの結果を用いてp53及びRBに特異的に設計されたそのほかの市販の免疫アッセイと比較することができる。たとえば、HPV16及びHPV18のような高リスク型のHPV感染は、子宮頸部細胞の悪性度を誘導し、宿主細胞のp53及びRB内因性タンパク質を変化させ/減らし、細胞の機能不全及び最終的には癌をもたらすE6及びE7、ウイルス癌タンパク質の発現によって子宮頸癌を引き起こし得ることが知られている。従って、同一のヒト対象に由来する、たとえば、子宮頸部組織、体液、血清等のような臨床試料で生じたHPV感染によって変化したこれらタンパク質すべてのレベルでのアッセイ結果を比較することが熟考される。
図11は本発明の1以上の実施形態に係る方法の例を説明している。
工程110では、HPVによる感染に感受性の細胞の集団を含む臨床試料を得る。臨床試料は、生きているヒト対象からの子宮頸部細胞、子宮頸部組織、子宮頸部ぬぐい液、体液、血清、血液、腫瘍、細胞培養物、生検検体、及びこれらの組み合わせを含む試料である。臨床試料は、異常なパップ検査結果による紹介患者としての人々の群又は子宮頸癌の日常スクリーニングの一般集団としての群から得ることができる。
工程120では、臨床試料を回収液に分散する。ELISAプレート上での全細胞免疫アッセイの例として、子宮頸部擦り取りからの細胞を客観的測定用のマイクロタイタープレートのウェルの表面上に直接塗抹した。別の例として、子宮頸部細胞を液状溶液に回収し、製造元の指示書に従って処理する。
工程130では、臨床試料を容器に付着させ、固体表面に細胞を不動化する。液状溶液によって回収された臨床試料を製造元の指示書に従って処理する。マイクロタイタープレートのウェル上、又は好適な結合用に被覆された若しくは処理されたガラス若しくはプラスチックの表面のようなそのほかの種類の表面上、たとえば、結合する細胞のために処理されたプラスチック表面、若しくは結合するタンパク質のために処理されたプラスチック表面;結合した薄層の膜を伴ったガラス若しくはプラスチックの表面上に置かれた薄層の細胞。表面はビーズの形態で接触面積を最大化することができる。各試料を単一容器に負荷した。複数の容器を組み合わせて高処理能力工程のためのマイクロタイタープレートとしての形式を形成した。次いで不動化した細胞を固定した後、抗原の回収、ブロッキングを行い、本発明の種々の抗HPV抗体と共にインキュベートする。
工程140では、HPV感染によって発現されるHPVタンパク質に特異的に結合する一次抗体(抗HPV抗体)が得られる。抗HPV抗体は検出剤で直接標識してもよいし、検出剤で標識した二次抗体によって間接的に検出されてもよい。HPVタンパク質を含有するマイクロタイタープレート上の細胞は、溶液中の抗HPV抗体に結合する。未結合の抗HPV抗体を洗浄によって取り除き、タグの付いた抱合体を伴う二次抗体を加え、その後、プレートリーダーによって分析される適当な基質を加える。
工程150では、HPV感染細胞によって発現されるHPVタンパク質に特異的に結合する一次抗体を用いて、臨床試料における1以上の免疫アッセイを実施する。未結合の抗HPV抗体を洗浄によって取り除き、タグの付いた抱合体を伴う二次抗体を加え、その後、プレートリーダーによって分析される適当な基質を加える。例として、抗HPV抗体は、ビオチンで直接タグを付けてもよいし、又はHRP若しくはビオチンでタグを付けた二次抗体若しくは基質として使用される適当な剤に続いて検出されるそのほかの剤によって検出されてもよく、又は適当なリーダーで直接検出される蛍光色原体でタグを付けてもよい。抗体前ブロッキング溶液は、特定のタンパク質又はBSA又は血清を含有して抗体の非特異的結合から細胞を遮断してもよい。後ブロッキング溶液は、一次抗体のインキュベートと共に使用されるように少ないタンパク質又は血清を伴った、抗体前ブロッキング溶液と類似の溶液を含有してもよい。HPV抗体を含有する溶液は濃縮された形態であってもよく、又は使用準備済み試薬として希釈した形態であってもよい。二次抗体を含有する溶液は、濃縮された形態であってもよく、又は使用準備済み試薬として希釈した形態であってもよい。
工程160では、臨床試料で発現される一次抗体に特異的に結合するHPVタンパク質を検出し、測定し、定量する。試料における標的タンパク質への抗体の結合を表すシグナル強度の読み取りに好適な基質を試料に加え、試料で発現されるタンパク質を定量する。例として、比色法について、ELISAのTMB基質又はその同等物を用いて、タンパク質への抗体の結合から生じる西洋ワサビペルオキシダーゼ活性を検出する。TMBの試料への添加の際、酸の停止溶液の添加で黄色(450nmで最大吸収)に変わる青色を生じる。比色プレートリーダーを用いてシグナル強度を読み取った。別の例として、化学発光法について、市販の化学発光基質を用いてタンパク質への抗体の結合から生じる西洋ワサビペルオキシダーゼ活性を検出する。試料への基質の添加の際、化学発光プレートリーダーを用いて化学発光強度を読み取った。さらに別の例として、蛍光法について、市販の蛍光基質を用いてタンパク質への抗体の結合から生じる西洋ワサビペルオキシダーゼ活性を検出した。試料への基質の添加の際、蛍光プレートリーダーを用いて蛍光強度を読み取った。
工程170では、臨床試料におけるHPVタンパク質発現の量に基づいた臨床試料の疾患悪性度を判定する。例として、HPV組換えタンパク質の既知の量を標準曲線として使用することによってHPV癌タンパク質の発現レベルを定量することができる。シグナル読み取りのカットオフ閾値を選択してHPVタンパク質の発現レベルを定量し、それを用いてアッセイの陽性率を決定し、試料の疾患悪性度を決定する。
当該技術で一般に知られる、たとえば、細菌の発現系、ウイルスの発現系、酵母の発現系、哺乳類の発現系、たとえば、大腸菌、酵母、バキュロウイルス、及び/又は哺乳類細胞の培養のような種々の好適な系にて本明細書に記載されるような1以上の組換えタンパク質を発現させることができる。ほかの手段によってポリペプチドを入手してもよいが、本発明の実施形態は、ほとんど天然の形態(またはそれに近い形態)で1以上の組換えタンパク質を提供するが、それは、免疫アッセイにてHPV感染のあるヒト対象の組織の抗体との結合に対して非常に望ましい立体構造であり得る。得られた組換えタンパク質をアッセイの陽性対照に使用し、抗体を生じるための免疫原としても使用する。
HPV組換えタンパク質は、どんな種類のHPVウイルスタンパク質でもあり得、E2、E6、E7、L1、L2を含むが、これらに限定されない早期遺伝子及び/又は後期遺伝子のHPVタンパク質であることができ、種々のHPV型に由来することができる。一部の実施形態は、HPV発癌性タンパク質の部分配列又は完全長配列を含有する組換えハイブリッドタンパク質のような組換えタンパク質を提供する。たとえば、タンパク質精製の間の望ましくない凝集、タンパク質の不安定性、低レベルの発現、精製したタンパク質の低い免疫原性応答のために入手し、精製するのが非常に困難であることが分かっている完全長のE6、E7及び/又はL1のポリペプチド配列。たとえば、多数の早期E6癌タンパク質は、多数のシステインアミノ酸を含有するので、E6癌タンパク質の正しいトポグラフィは多数のジスルフィド結合の形成を正確に必要とする。加えて、早期E6及びE7タンパク質の小型ペプチドを用いた特定の免疫アッセイは、極度に低いアッセイの特異性と感度を生じるので商業化された診断ツールとして不向きであることが知られていた。
HPV組換えタンパク質を製造し、抗血清を生成し、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナル抗体をスクリーニングするための免疫原として使用した。種々の組換えタンパク質のクローニングと製造には、HPV16−E6とHPV18−E6の遺伝子、HPV16−E7とHPV18−E7の遺伝子、HPV16−L1とHPV18−L1の遺伝子によってコードされる遺伝子が含まれる。非常に望ましい立体構造を持つほとんど天然の形態(又はそれに近い形態)で組換えタンパク質を提供するために、大腸菌で発現された組換えHPVのE6、E7又はL1タンパク質を可溶性分画から精製し、次いで濃縮し、PBSで透析して免疫原として使用した。マウスの免疫と融合は常法によって行い、ELISAでの我々のスクリーニング基準を満たすクローンを選択した。各ハイブリドーマ細胞株を組織培養にて増殖させ、腹水産生のためにマウスに注入した。腹水を回収し、アイソタイプを決定し、HPV免疫アッセイで使用するためにプロテインGカラムによって精製した。
一部の実施形態はHPVタンパク質に対するモノクローナル抗体を指向する。免疫原として天然の立体構造で大量の精製組換えHPVタンパク質を入手することが、臨床試料にてHPVタンパク質を検出するために特異的な抗体を生成することにおける第1の重大な工程となる。E6及びE7は、タンパク質精製の間の望ましくない凝集、タンパク質の不安定性、低レベルの発現、精製したタンパク質の低い免疫原性応答のために単離し、精製することが非常に困難であることが知られている。我々は、技術的障壁を克服して非変性で可溶性の形態にてHPV−E6及びE7組換えタンパク質を製造した。我々が開発した精製方法が、抗HPV抗体を結合する天然の形態に極めて近い立体構造を生じることを実証するために、我々は、ヒトHPV抗体を含有するHPV感染した子宮頸部試料(PCRにて高リスクHPV陽性)を用い、精製した組換えHPVタンパク質を調べた。そのようなE6及びE7組換えタンパク質を用いてHPV感染を検出する試験は、HPV感染へのヒトの免疫応答によって産生された抗HPV抗体へのこれらタンパク質の結合を裏付けた。これらの結果は、そのような精製組換えHPVタンパク質が、抗血清を生じ、生体内で天然のHPVウイルスタンパク質を認識することができる抗体を生成するための免疫原としての使用に好適であることを示唆している。我々は、非変性で可溶性のE6及びE7組換えタンパク質を抗原刺激に使用し、それによってHPVのE6及びE7癌タンパク質に対する特異性の高い抗体を開発した。
得られたポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、子宮頸部生検、血清又は生殖器ぬぐい液検体におけるHPV感染の診断及びヒト及びそのほかの対象における疾患レベルの評価に有用である。特に、本発明の抗体を用いた診断によって悪性転換に高リスクの患者の特定及び試料に関連するCINの特定のフェーズの特定が可能になる。血清の分析に抗体を用いてHPVウイルスを検出し、感染組織の転移におけるウイルスを検出することができ、同様にHPV免疫療法、抗HPVワクチン又はHPV感染及び/又は子宮頸癌の制御を指向するそのほかの治療剤の進行をモニターすることもできる。
従って、一部の実施形態は、精製したHPV16−E6組換えタンパク質と精製したHPV18−E6組換えタンパク質によって抗体産生ハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることによって2つの異なるHPV型、HPV16とHPV18に由来するE6タンパク質上の共通のエピトープを認識することが可能であるモノクローナル抗体を提供する。一部の実施形態は、HPV16−E7とHPV18−E7タンパク質上の共通するエピトープを認識するモノクローナル抗体を提供する。例として、モノクローナル抗体を用いて種々の生体試料、細胞株及び/又は種々の悪性度の上皮病変(CIN2、CIN3、LSIL、HSIL、ASC−US)の臨床試料、並びに様々な子宮頸癌、扁平上皮癌(SCC、一般的な癌の型)及び腺癌(ADC、腺の癌の型)にて調べた。
例となる得られたモノクローナル抗体には、HPV16−E6とHPV16−E7ウイルスタンパク質の双方に結合することが可能なモノクローナル抗体の型;HPV16−E6とHPV16−E7とHPV16−L1ウイルスタンパク質すべてに結合することが可能なモノクローナル抗体の別の型;HPV18−E6とHPV18−E7ウイルスタンパク質の双方に結合することが可能なモノクローナル抗体の別の型が挙げられる。従って、本発明の方法を用いて産生されるモノクローナル抗体は、高リスクHPV型、低リスクHPV型、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−56、HPV−58、HPV−59、及びHPV−68、HPV−6、HPV−11、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−53、HPV−54、HPV−55及びHPV−56、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される同一のHPV型に由来する2以上のHPVウイルスタンパク質に結合することが可能である。
これらのモノクローナル抗体を1以上の免疫アッセイに用いてHPV感染及びHPVに関連する子宮頸癌及びそのほかの疾患を検出することができる。好適な免疫アッセイには、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、パピローマウイルスタンパク質についての抗原アッセイ、パピローマウイルスタンパク質に対する抗体についての抗体アッセイ、パピローマウイルス免疫複合体についてのアッセイ、タンパク質チップアッセイ、放射性免疫沈降アッセイ、迅速膜免疫クロマトグラフィアッセイ、迅速スティック免疫クロマトグラフィアッセイ、組織及び子宮頸部細胞についての免疫組織化学、及び後にフローサイトメトリーが続く免疫細胞化学アッセイが挙げられ得る。
我々は、非変性で可溶性のE6及びE7タンパク質を抗原刺激に使用し、それによってE6及びE7癌タンパク質に対する特異性の高い抗体を開発した。
当初の試験は、子宮頸癌組織における異なった応用:ELISA、ウエスタンブロット、及び免疫組織化学(IHC)を介した我々の新規の抗E6及び抗E7抗体の使用を支えた。臨床試料からの検証結果は、我々の抗E7モノクローナル抗体は子宮頸部組織における高悪性度の異形成の特定について生体マーカーとして使用することができ、信頼できる臨床診断アッセイで使用することができることを示唆している。
子宮頸癌からの高リスク型として特定された15型と共に生殖器感染で特定された40を超えるHPV型があり、その中でHPV16型は子宮頸癌症例の約50%の割合を占め、18型はさらなる20〜25%の割合を占める。しかしながら、HPV16及びHPV18の感染を含む多数のHPV感染は自己限定性なので、組織におけるHPV−E6及びE7癌タンパク質の検出は、HPVの型にかかわらず、高悪性度の異形成細胞を特定する最も直接的で強力な検査であり得る。我々の目標は、癌の発症に関連する最も高リスクのHPV型と反応することが可能であるHPV−E7特異的なモノクローナル抗体を得ることであった。我々は、HPVの16型と18型(子宮頸癌症例の約75%の割合を占める)に由来するHPV組換えタンパク質によってハイブリドーマクローンをスクリーニングして高リスクHPV型の大半又はすべてに由来する関連タンパク質を検出することが可能なクローンを特定した。加えて、我々は、無関係なHPVタンパク質によってハイブリドーマクローンをスクリーニングしてHPV構造タンパク質への非特異的結合を持つものを推定した。ハイブリドーマのスクリーニングで使用した精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質には、HPV16−E6タンパク質、HPV16−E7タンパク質、HPV16−L1タンパク質、HPV18−E6タンパク質、及びHPV18−E7タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。我々のIHCの結果を調べた組織のHPV遺伝子型決定のデータと比較すると、我々の抗E7抗体は、HPV16及びHPV18だけでなく、16型に密接に関係する(すなわち、31、33、35、52、58型)及び18型に密接に関係する(すなわち、45型)追加の高リスク型を含む共通する高リスク型のほとんどを特定する。
本発明の一態様は、モノクローナル抗体を製造する方法を提供する。該方法には、精製した種々の組換えパピローマウイルスタンパク質を入手することと、2以上の精製組換えパピローマウイルスタンパク質によって抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングし、2以上の精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質上の共通するエピトープを認識することが可能であり、生体試料及び臨床試料における2以上の精製組換えパピローマウイルスタンパク質及び相当するパピローマウイルスタンパク質に結合することが可能であるモノクローナル抗体を得ることが含まれる。
加えて、2以上の精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質による抗体産生ハイブリドーマ細胞の陽性選抜と非HPVタンパク質による抗体産生ハイブリドーマ細胞の陰性選抜を含む方法を用いて、2以上のヒトのパピローマウイルスタンパク質に対して結合特異性を持つモノクローナル抗体を製造する。たとえば、方法は、2以上の精製組換えパピローマウイルスタンパク質対する陽性の反応性と非HPVタンパク質に対する陰性の反応性によって、抗体産生ハイブリドーマ細胞が2以上のヒトパピローマウイルスタンパク質に結合特異性を持つ抗体を生成するように抗体産生細胞を選抜することによって、2以上の精製組換えパピローマウイルスタンパク質により抗体産生ハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることを含み得る。2以上の精製組換えパピローマウイルスタンパク質には、たとえば、HPV16−E6タンパク質、HPV16−E7タンパク質、HPV16−L1タンパク質、HPV18−E6タンパク質、HPV18−E7タンパク質、HPV18−L1タンパク質、及びこれらの組み合わせが挙げられてもよい。
本発明の別の方法は、第1のHPV型由来の第1の精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質と第2のHPV型由来の第2の精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質によって抗体産生ハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、2以上の異なったHPV型に由来するヒトパピローマウイルスタンパク質上の共通するエピトープを認識することが可能であるモノクローナル抗体を得ることを含む。本発明のさらに別の方法は、第1のHPV型由来の第1の精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質と第2のHPV型由来の第2の精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質によって抗体産生ハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、第1と第2の精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質の一方だけの特異的エピトープを認識することが可能であり、そのほかの精製組換えヒトパピローマウイルスタンパク質を認識することが可能ではないモノクローナル抗体を得ることを提供する。
本発明の別の態様は、異なったHPV型に由来する2以上のHPVウイルスタンパク質に結合することが可能である方法及びモノクローナル抗体を提供する。異なったHPV型に由来する2以上の精製組換えパピローマウイルスタンパク質対する陽性の反応性と非HPVタンパク質に対する陰性の反応性によって、抗体産生ハイブリドーマ細胞が2以上のHPVウイルスタンパク質に結合特異性を持つ抗体を生成するように抗体産生細胞を選抜することによって、2以上の精製組換えパピローマウイルスタンパク質により抗体産生ハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることによってモノクローナル抗体が得られる。例となるモノクローナル抗体には、とりわけ、種々の免疫アッセイに使用されるHPV16−E7とHPV18−E7ウイルスタンパク質の双方に結合することが可能なモノクローナル抗体の型;HPV16−E6とHPV18−E6に結合することが可能なモノクローナル抗体の別の型;HPV16−L1とHPV18−L1に結合することが可能なモノクローナル抗体の別の型が挙げられる。
本明細書に記載されるモノクローナル抗体は、様々なウイルス型の間で共通するエピトープを認識する汎抗体である。HPV16及びHPV18は子宮頸癌の原因となる最も共通する2つの型である。13のHPV高リスク型の中で、2つの主要な群には、HPV16及びその関連型、たとえば、31、33、35、52、58型と、HPV18及びその関連型、たとえば、45型が挙げられる。HPV16とHPV18は、生殖器感染に関する40を超えるHPV型の中で識別可能な群ではあるが、ゲノム配列の解析は、表1に示すようにHPV16とHPV18の間及びそのほかの群の間で相同性を示す。我々は、HPV16−E6とHPV18組換えタンパク質によって抗体をスクリーニングし、HPV16、31、33、52、58及びHPV18、45に結合することが可能な汎抗体を得た。この汎抗体は、ほとんどの高リスク型のHPV感染に存在するHPVのE6タンパク質の検出について新規である。
本発明のさらの別の態様は、第1のHPVウイルスタンパク質のみに結合することが可能であり、第1のHPVウイルスタンパク質とは異なる第2のHPVウイルスタンパク質には結合することが可能ではないHPV型特異的なモノクローナル抗体を提供する。そのようなモノクローナル抗体は、第1のHPV型に由来する第1の精製組換えパピローマウイルスタンパク質に対する陽性の反応性と第2のHPV型に由来する第2の精製組換えパピローマウイルスタンパク質に対する陰性の反応性によって抗体産生ハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることによって得ることができ、その際、第1と第2のウイルスタンパク質は第1と第2のHPV型の第1と第2の精製組換えパピローマウイルスタンパク質に相当する。HPV型特異的なモノクローナル抗体は、一方だけのウイルスタンパク質、第1のウイルスタンパク質にのみ結合することが可能であり得る。第1のウイルスタンパク質には、高リスクHPV型、低リスクHPV型、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−56、HPV−58、HPV−59及びHPV−68、HPV−6、HPV−11、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−53、HPV−54、HPV−55及びHPV−56、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるHPV型に由来するウイルスタンパク質が挙げられてもよい。例となるモノクローナル抗体には、HPV16−E6タンパク質、HPV16−E7タンパク質、HPV16−L1タンパク質、HPV18−E6タンパク質、HPV18−E7タンパク質、及びHPV18−L1タンパク質の群から選択されるたった1つのウイルスタンパク質を認識するモノクローナル抗体が挙げられる。本発明の方法によって製造されるそのような型のモノクローナル抗体を使用して1以上の免疫アッセイにて特異的なウイルスタンパク質の存在を検出することができる。
本明細書で開発されたような抗体は、HPVの早期及び後期遺伝子によってコードされ、免疫アッセイに有用な品質の高い且つ適切に精製された組換えタンパク質と結びつき、HPV感染及び子宮頸癌の検出をスクリーニングするために非常に高い感度と特異性を生成する。モノクローナル抗体は、とりわけ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、パピローマウイルスタンパク質についての抗原アッセイ、パピローマウイルスタンパク質に対する抗体についての抗体アッセイ、パピローマウイルス免疫複合体についてのアッセイ、タンパク質チップアッセイ、放射性免疫沈降アッセイ、迅速膜免疫クロマトグラフィアッセイ、迅速スティック免疫クロマトグラフィアッセイ、組織及び/又は子宮頸部細胞についての免疫組織化学、及び後にフローサイトメトリーが続く免疫細胞化学アッセイから成る群から選択される1以上の免疫アッセイで使用することができる。一実施形態では、1以上の免疫アッセイは、最少限の機器を必要とする又は追加の機器を必要としない非侵襲性であってもよい。
HPVに対するモノクローナル抗体の産生のための既知のプロトコールは、抗HPVモノクローナル抗体の産生には一般に不向きであり、一般のヒト集団のスクリーニング用の免疫細胞化学的な診断検査に使用することはできない。これは、これらのプロトコールで産生された抗体が感染したヒト細胞に見られる天然に存在するHPVタンパク質と必ずしも反応するわけではないからである。さらに、従来技術の抗体によって認識されるエピトープは必ずしも、臨床検体の採取、固定及び保存に関与する標準的な手順に耐性であるエピトープではない。
精製した組換えタンパク質を使用して、動物種に注射し、特異的結合について組換えタンパク質でスクリーニングすることによって抗血清、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を生じた。多数の好都合な動物種を使用して適当な抗血清を調製し、それらの抗血清を直接使用することができる。好適な動物種には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、又はたとえば、ヒツジのようなさらに大きな哺乳類が挙げられる。そのような動物への投与については、アジュバント、普通、フロインドの完全アジュバントの存在下で組換えタンパク質を一般に投与し、常法によってポリクローナル血清を定期的に回収する。
注射した動物からの脾臓細胞又はそのほかの抗体産生細胞を不死化し、モノクローナルな抗体産生クローンを得ることによってKohlerとMilsteinの方法を用いて又はさらに最近のその改変法によりモノクローナル抗体を作製してもよい。HPV陽性及び陰性のヒト血清試料は、モノクローナル抗体クローンの特異性を確保するためのモノクローナル抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングするのに有用である。精製したE6、E7及びL1と反応性の1を超える陽性のクローンを得ることができ、得られた細胞培養物のマウス又はそのほかの動物源へのさらなる注射を使用してたとえば、プロテインAアフィニティカラムクロマトグラフィによってモノクローナル抗体を精製するための腹水を生成することができる。精製した抗体を我々のELISAにおける捕捉プローブ若しくは検出プローブとして用いることができ、又は吸収検出方式、蛍光検出方式、又は化学発光検出方式にてELISA基質の検出のためにHPR、APなどのような検出酵素で抱合することができる。
クローニングのための及び免疫アッセイを実施するための基本的な技法は、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Harlow及びLane,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.1989;「Molecular Cloning」、A Laboratory Manual,Sambrook,Fritsch及びManiatis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989及び当該技術で既知のそのほかの書物及びマニュアルに見つけることができる。
たとえば、1以上の免疫系のアッセイには、たとえば、マイクロタイタープレートの底面、膜及び/又はチップのような表面に被覆された精製パピローマウイルスタンパク質を有する抗体に基づくアッセイが含まれ得る。被覆されない表面は非結合のタンパク質でブロックすることができる。次いで、たとえば、多分HPVウイルス又はHPV関連タンパク質に対する抗体を伴う試料のような調べられる試料を、被覆した精製パピローマウイルスタンパク質に結合させることによって表面に結合させることができる。結合した抗体/精製パピローマウイルスタンパク質の複合体は、二次抗体と、比色基質、化学発光基質又は蛍光基質を用いた多数の市販の検出方式によって検出することができる。二次抗体の一例は、西洋ワサビのペルオキシダーゼを抱合した、たとえば、ヒト免疫グロブリン(いgG、IgA等に特異的な)に対する抗体のような二次抗体である。最終的な結果はマイクロプレートリーダーによって読み取ることができ、又は比色基質を用いる場合、眼によって視覚化することができる。
別の例として、抗原アッセイには、たとえば、マイクロタイタープレートの底面、膜及び/又はチップのような表面上に、当該抗原への結合に親和性を有する捕捉抗体のような一次抗体を被覆することが関与する。当該抗原は、たとえば、HPVウイルス遺伝子、たとえば、早期遺伝子又は後期遺伝子等によってコードされてもよいパピローマウイルス、癌タンパク質、カプシドタンパク質であり得る。表面上の非結合部分をブロックした後、分析される臨床試料を適用して捕捉抗体と結合させて免疫複合体を形成し、当該抗原に結合させることによって別の一次抗体又は検出抗体によってそれを検出することができる。従って、2つの一次抗体又は一対の捕捉抗体と検出抗体がまさにサンドイッチのように当該抗原と相互作用する。捕捉抗体は、2つの抗体が、当該抗原、たとえば、とりわけ、HPVウイルスタンパク質、HPV癌タンパク質、カプシドタンパク質に特異的に結合することができる限り、検出抗体と同一の抗体又は異なった抗体であることができる。
次に、挟まれて結合した抗体/抗原の複合体を二次抗体で検出することができるが、それは、検出抗体に親和性を有し、比色、化学発光、蛍光の基質及び多数の異なった種類の基質を用いた標準的な免疫複合体検出方式による測定を円滑にする。最終的な読み取り又は視覚化は、適当な光吸収リーダーを伴った機器によって実施することができ、又は眼で直接視覚化することができ、結果を対照試料と比較することができる。陽性の結果は、当該抗原の一次抗体、捕捉抗体及び検出抗体との結合を示すので、臨床試料における当該抗原の存在を示す。それに対して、陰性の結果は、当該抗原の一次抗体との結合がないことを示すので、臨床試料における当該抗原の非存在を示す。
1以上の免疫アッセイを用いて、とりわけ、抗原、抗体、及び抗原/抗体免疫複合体を含むが、これらに限定されない少なくとも3つの種類の当該標的タンパク質を検出することができる(以後、それぞれ、抗原検査、抗体検査及び抗原/抗体免疫複合体検査とも言う)。
1以上の免疫アッセイの形式は、マイクロプレート形式(たとえば、32穴、48穴、96穴又は384穴)、縦側又は外側の膜に基づいた迅速検査、複数スポットの又は多重化したタンパク質チップであってもよい。アッセイの原理は、アッセイについて設計した特定の機器による異なった読み取りや形式における結果を解析するために選択される基質によって検出方式が変化することを除いて上述と同様である。加えて、或る形式における免疫アッセイの或る型で開発された手順、条件、結合特異性を同一の若しくは異なった免疫アッセイの異なった形式、又は同一の若しくは異なった形式における異なった免疫アッセイに応用することができる。
ELISAの手順も種々の形式で実施することができる。抗抗体、ストレプトアビジン/ビオチン複合体及び酵素抗酵素抗体複合体を用いてELISAの感度を高める方法は当該技術で周知である。抗原の固定用の固体支持体又は表面は普通、本明細書に記載されるようにプラスチックであるが、たとえば、ラテックスやアガロースのようなそのほかの種々の固体支持体が記載されている。抗原が直接固体支持体/固相に固定される必要もない。たとえば、抗原に固相固定された抗体を介して固体支持体に特異抗原を固定する一般に使用されるELISA形式、いわゆる捕捉抗体ELISA又はサンドイッチELISAがある。シート形式での固体支持体への抗原のブロッティング(転移)を含む特定の場合の免疫アッセイは免疫ブロッティングと呼ばれる。通常、固体支持体はニトロセルロース又はナイロン膜/シートであるが、そのほかの支持体も記載されている。種々の結合、混合、インキュベート、コーティング、又はブロッティングの相互作用がELISAアッセイに関与する。ELISAアッセイに先立って、ゲル電気泳動又は類似の方法によってそのサイズに従って抗原又は抗体を分離することができる。シート上の特異抗原に結合する抗体の検出は、そのほかの免疫アッセイと同様の方法で実施することができる。
96穴形式が、アッセイ手順及び条件を最適化する高処理能力のスクリーニング形式である。異なった数の穴を持つ他の形式も使用することができる。たとえば、HPV感染について陽性であるドナー被験者からの血清試料及びHPV感染のない未体験被験者からの血清試料にて陽性対照及び陰性対照を実施した。免疫アッセイは、たとえば、E6、E7及びL1抗体の検出にて高い感度を生じることが見い出された。当初の滴定曲線を実施し、ELISAアッセイの条件を最適化した。
結合に好適な条件は、たとえば、固体支持体又は溶液にて捕捉剤と標的剤の間、一次抗体と二時抗体の間、組換えタンパク質と組換えタンパク質に結合することができるタンパク質又は抗体の間で生じる結合を可能にする条件(塩濃度、pH、界面活性剤、タンパク質濃度、温度等という点で)である。そのような条件は、特に抗体及びその抗原に関して当該技術で周知である(たとえば、Harlow and Lane (Antibodies: A
Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.
(1989)を参照)。特異的結合に好適な条件は通常、互いに選択的に結合するために約10−6M未満の解離定数(KD)を有する結合相手又は結合対を許容する。
精製組換えタンパク質を加える前に、コーティングのために抗E6、抗E7及び抗L1捕捉抗体をマイクロタイタープレートの底面に付着させた。次いで、検出抗体を用いて、捕捉抗体に結合し、捕捉された組換えタンパク質を検出する。最適化された捕捉抗体と検出抗体の濃度が特定された。抗原検出のためのELISAアッセイにて線形性を生じる反応における組換えタンパク質の濃度が決定された。サンドイッチELISAを別の日と同様に同一の日に複数回繰り返してアッセイの再現性と信頼性を判定した。各アッセイの特異性と感度を判定した。さらに、ELISAアッセイは、他の癌に対して子宮頸癌を検出するのに選択性を有する、たとえば、卵巣癌又は子宮内膜癌の試料と交差反応をしないことが示された。HPVはすべてでないにしろほとんどの子宮頸癌の細胞で見い出されるが、他の癌とは普通関連しないことが知られているので、本明細書に記載されるような抗原検査は他の癌に関連する抗原を検出すべきではない。この選択性を調べるために、たとえば、卵巣癌及び子宮内膜癌の細胞株の組織からの抽出物を調べ、抗原検査の陰性対照として役立てることができる。
HPVの全細胞ELISAの例として基本的な検査手順は以下のとおりである:
*(10〜20ml)
子宮頸部擦り取りに由来するヒト細胞をいったんマイクロタイタープレートにて細胞の単層又は薄層に処理し、固定すると、抗体前ブロッキング溶液でマイクロタイタープレートのウェルをしばらくブロックし、その後HPV抗体と共にインキュベートすることによって全細胞ELISAを実施した。次いでPBS又はH2O2又はそのほかの溶液で3〜5回プレートを洗浄し、未結合のHPV抗体を取り除いた。次いで二次抗体、たとえば、抗マウスIgG/HRPと共にスライドをインキュベートし、その後、洗浄し、検出用の適当な基質を結合させた。基質の例として、ペルオキシダーゼと過酸化水素の存在下でTMAが酸化され、存在する酵素の量に左右される酵素活性の部位で青色溶液の沈殿を生じる。青色溶液は、細胞に存在するHPVタンパク質とのHPV抗体の特異的な結合を示す。アッセイは室温又は結合反応を加速するそれより高い温度で実施することができる。このHPV全細胞ELISAアッセイは、手動で実施することができ、又は自動化によって操作することができるので、子宮頸部擦り取りに由来する上皮細胞におけるHPV感染のスクリーニング及びHPV癌タンパク質の検出に対して強力なツールを提供する。
HPVのELISAアッセイが様々な疾患悪性度の異形成細胞を特定することができることを実証するために、軽度、中程度、重度又は侵襲性の新生組織形成の試料すべてを調べた。これらの試料には、たとえば、CIN1、CIN2、CIN3、LSIL、HSIL又はASC−USが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される全細胞ELISAアッセイを用いて種々の液状溶液における種々の悪性度からの種々の試料源を調べることができることを実証するために、様々な液状溶液における様々な悪性度の試料も一部の実施形態で調べた。
子宮頸部の癌は生殖器を冒す癌の最も一般的な形態である。それは局所的に近隣組織、血管、リンパ管及びリンパ節に浸潤する。その進行したステージでは、治療することが困難であり、致死的であると言える。子宮頸部の癌を発症する前に普通、異形成として知られる可逆性である前癌状態の変化の期間が存在する。子宮頸部のほとんどの癌が外部皮膚を構成している扁平上皮細胞に由来する一方で、子宮に繋がる子宮頸管の内側を覆う粘液産生細胞から生じる偶発的な癌がある。この腺型を「扁平上皮癌(SCC)」に対抗して「腺癌(ADC)」と呼ぶ。扁平上皮癌と異なって、腺癌の前兆は存在する場合、パップ塗抹では特定するのが困難であり得るので腺癌は検出するのが困難である。扁平上皮細胞の異形成の子宮頸部における扁平上皮癌への緩やかな進行は腺癌においてはそれほど同様ではない。その結果、子宮頸部の腺癌は、扁平上皮癌よりも進行したステージで検出されることが多い。治療はさらに一般的な扁平上皮癌と同様である。しかしながら、さらに進行したステージで見つけられることが多いのでさらに強力な治療が必要とされることが多い。従って、一部の実施形態で記載されるHPVの全細胞ELISAアッセイを用いて液状溶液にて腺癌細胞の早期スクリーニングからHPV癌タンパク質の存在を検出することが決定的になる。
HPV関連の新生組織形成の病理学的な性状分析
中程度の異形成は、子宮頸部の皮膚がそうであるべきよりも中程度に早く増殖し、軽度のステージを超えて進行していることを意味する。子宮頸部の生検は、十分に成熟することなく皮膚表面の途中に増殖する未成熟の基底細胞を示す。中程度の異形成は、これらの変化が進行し、治療しなければ侵襲性の子宮頸癌に進行するさらに大きなリスクがあるので重要である。その理由のために、中程度の異形成は「高悪性度」の病変又はHGSILとして知られる。この状態の別の徴候は、「CIN2」(子宮頸部上皮内新生組織形成、悪性度II)である。パップ塗抹における中程度の異形成は普通、膣鏡診による子宮頸部のさらなる検査が必要とされることを示す。中程度の異形成が確認されれば、そのときそれは普通治療される。治療には凍結手術、LEEP又はレーザーが挙げられてもよい。治療に続いて、経過観察として普通、頻繁なパップ塗抹が得られ、再発(約10%の機会)があるかどうか確認するが、再発は、直ちに診断され、さらなる治療が行われる。
異常細胞が基底膜を介してその下の組織に浸潤すれば、それは癌とみなされる。重度の異形成については、異形成の中の異常細胞が基底膜を浸潤しないので癌とはみなされないが、前癌状態の問題であるとみなされる。従って、定義によってそれらは癌ではない。その場での癌腫は、皮膚の全厚さに延びる異常細胞があることを意味する。これらの細胞は個々にまさに癌細胞のように見える。その場での癌腫は、多数の権威によって重度の異形成又はCIN3と臨床的に同等であるとみなされ、直ちに且つ慎重に評価されるべきである。治療には、それらを凍結することによって(凍結手術)、それらを気化させることによって(レーザー)又は帯電ワイヤループによって削り取ることによって(LEEP)異常細胞を取り除くことが挙げられてもよい。一部の状況では、問題を取り除くには子宮頸部円錐切除の形態でのさらに広範な手術が必要とされる。
実施例1:抗血清を生成し、ハイブリドーマ細胞株からモノクローナル抗体をスクリーニングするために免疫原として使用するためのHPV組換えタンパク質の発現、精製及び調製
HPV組換えタンパク質は、どんな種類のHPVウイルスタンパク質でもあり得、E2、E6、E7、L1、L2を含むが、これらに限定されない早期遺伝子及び/又は後期遺伝子のHPVタンパク質であることができ、種々のHPV型に由来することができる。本発明の一態様は、HPV発癌性タンパク質の部分配列又は完全長配列を含有する組換えハイブリッドタンパク質のような組換えタンパク質を提供する。たとえば、タンパク質精製の間の望ましくない凝集、タンパク質の不安定性、低レベルの発現、精製したタンパク質の低い免疫原性応答のために入手し、精製するのが非常に困難であることが分かっている完全長のE6、E7及び/又はL1のポリペプチド配列。たとえば、多数の早期E6癌タンパク質は、多数のシステインアミノ酸を含有するので、E6癌タンパク質の正しいトポグラフィは多数のジスルフィド結合の形成を正確に必要とする。加えて、早期E6及びE7タンパク質の小型ペプチドを用いた特定の免疫アッセイは、極度に低いアッセイの特異性と感度を生じるので試験管内診断での臨床用ツールとして不向きであることが知られていた。
例となる発癌性E6又はE7早期遺伝子のクローニングを本明細書で記載する。HPV16のE6、E7又はL1遺伝子のアミノ酸コーディング領域を含有するDNA断片をポリメラーゼ鎖反応(PCR)の増幅によって得た。DNA断片をヒスチジンタグ発現ベクターにサブクローニングしてE6又はE7組換えタンパク質の発現用のプラスミドDNAを生成した。とりわけ、ヒスチジンタグ(たとえば、HIs6、His8等)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合、マルトース結合タンパク質(MBP)を伴った他の型の発現ベクターも使用した。加えて、DNA断片を他の発現系、たとえば、バキュロウイルス、酵母等にサブクローニングして種々のHPV型及び株からE6又はE7組換えタンパク質を発現させることができる。たとえば、バキュロウイルスで発現させたHPV16からのL1組換えタンパク質を得て、HPV−16−L1−バキュロと命名した。
IPTGによる誘導を用いて大腸菌BL21(DE3)にてE6又はE7組換えタンパク質を発現させた。37℃でのタンパク質発現の2時間のインキュベートの後、供給元(それぞれAmersham及びNew England Biolabs)によって推奨されたプロトコールを用いてE6又はE7組換えタンパク質を得て、約1mg/Lの最終濃度に精製した。さらに長いインキュベート時間とタンパク質精製カラムの再流出は、さらに高いタンパク質収率を生じ、結果的に約2〜10mg/Lの収量で大きく濃縮された精製組換えタンパク質を生じることが分かった。組換えGST−E6又はHis−E6タンパク質の純度はPAGE解析に基づいて>90%であると推定された。組換えE6又はE7融合タンパク質を用いて臨床試料におけるE6又はE7抗体の存在を検出することができ、ポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体の産生のための免疫原として使用することができた。
クローニングのための及び免疫アッセイを行うための基本的な技法は、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Harlow及びLane,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.1989;「Molecular Cloning」、A Laboratory Manual,Sambrook,Fritsch及びManiatis編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,並びに当該技術で既知のそのほかの書物及びマニュアルに見つけることができる。HPV組換えタンパク質についての我々の精製と性状分析の手順は、「ヒトのパピローマウイルスの検出方法及び子宮頸癌におけるその応用」と題する共同所有の米国特許第7,732,166号に記載されており、その内容はその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
図1C.HisタグNi−NTAカラムを用いた組換えE6タンパク質についてのゲル精製画像。レーン8〜11に相当する溶離液(楕円形で囲み、矢印で示した)を回収して非凝集の単量体形態での精製組換えHPV−E6タンパク質を得た。図1Cは、IPTGで誘導し、SDS−PAGEで解析した完全長のHPV18−E6組換えタンパク質の発現を示す。得られたHisタグ付きのHPV18−E6組換えタンパク質の分子量は約20.5KDである。組換えE6タンパク質の純度はPAGE解析に基づいて約90%以上であると推定された。図1Cに示されたような精製された組換えE6タンパク質を1以上の免疫アッセイに使用して、たとえば、抗体アッセイ等における検出抗体として使用した。精製された組換えE6タンパク質はまた、HPV16−E6タンパク質に特異的な抗血清、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を生成するための免疫原としても使用した。
別の例として、図1Dは、精製された組換えE6タンパク質のゲル濾過カラムクロマトグラフィの結果を示し、精製された組換えタンパク質HPV16−E6が約20.5kDaの分子サイズを持つ単量体の可溶性タンパク質であることを示している。精製された組換えE6タンパク質はBSAより後に溶出された。
図1A〜図1B。それぞれHisタグ付きNi−NTA及びGSTタグカラムを用いた組換えE7タンパク質のゲル精製画像。レーン4〜5に相当する溶離液(楕円形で囲んだ)を回収して非凝集の単量体形態での精製組換えHPV−E7タンパク質を得た。図1A及び図1Bは例となる精製された組換えHis−タグ(図1A)及びGSTタグ(図1B)のHPV18−E7タンパク質を示すSDS−PAGEである。図1Bに示される例として、GSTタグ付きのHPV18−E7組換えタンパク質を円で示すような分子量37.2kDaの主要な単一バンドとしての均質性に精製する。得られた組換えHPV18−E7−GSTタンパク質の分子量は約37.2KDである。組換えHPV18−E7−GSTタンパク質を得て、約1mg/Lの最終濃度に精製した。組換えHPV−18E7−HISタンパク質も得て、約1mg/Lの最終濃度に精製した。他の発現系も使用して種々のHPV遺伝子型及び株からE7組換えタンパク質を発現させた。たとえば、HPV18からE7組換えタンパク質を得て、HPV18−E7−hisと命名した。組換えE7融合タンパク質又は組換えE7バキュロウイルスタンパク質を使用して臨床試料におけるE7抗体の存在を検出し、ポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体の産生のための免疫原としても使用した。
一般に、本明細書に記載されるような手順を用いた一対の正行プライマーと逆行プライマーを用いたポリメラーゼ鎖反応(PCR)による増幅により、種々の組換えタンパク質発現系にて早期遺伝子及び後期遺伝子をクローニングすることによって種々の高リスクHPV型及び低リスクHPV型又は株から組換えタンパク質を得た。たとえば、HPV16のL1タンパク質の組換えN末端断片はHisタグ付きの発現系における発現によっても得られた。たとえば、HPV16からの部分的な及び完全長のL1組換えタンパク質は、Hisタグ付きの発現系及びバキュロウイルス発現系から得られ、HPV16−L1N−his及びHPV16L1his(バキュロ−SF9)と名付けた。組換えL1タンパク質及び/又は組換えL1部分タンパク質を用いて、臨床試料におけるL1抗体の存在を検出し、ポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体の産生のための免疫原としても使用した。
Hisタグ付きの発現系における発現によってもHPV16−L1タンパク質の組換えN末端断片を得た。HPV16−L1のN末端組換えタンパク質の分子量は約34KDである。C末端断片も得た。同一の技法を適用してHPV18−L1タンパク質を生成し、ポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体の生成のための免疫原として使用した。
実施例2:抗HPV抗体の調製。実施例1に記載されたような技法を用いて生成した組換えHPVタンパク質を抗血清、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の生成のための免疫原として使用した。
クローニングのための及び免疫アッセイを行うための基本的な技法は、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Harlow及びLane,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.1989;「Molecular Cloning」、A Laboratory Manual,Sambrook,Fritsch及びManiatis編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,並びに当該技術で既知のそのほかの書物及びマニュアルに見つけることができる。抗体産生、産生した抗体の性状分析及び特定のアッセイについての我々の手順の詳細は、「HPVタンパク質に対する新規モノクローナル抗体」と題する2009年6月10日に出願された共同所有の米国特許出願、出願番号12/456,053、「早期段階及び後期段階のHPV感染のその場での検出」と題する2009年6月10日に出願された米国特許出願、出願番号12/456,054、「早期段階及び後期段階のHPV感染のその場での検出」と題する2009年6月10日に出願された米国特許出願、出願番号12/456,055、及び「早期段階及び後期段階のHPV感染の検出」と題する2009年6月10日に出願された米国特許出願、出願番号12/456,076に記載されている。それぞれの全内容はその全体があらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れられる。
図2.ポリクローナル抗HPV−E6及び抗HPV−E7を用いた子宮頸癌細胞株及び子宮頸部組織由来の細胞溶解物におけるHPV組換えタンパク質及びHPVタンパク質を検出するウエスタンブロッティング画像。図2A、ウサギ抗HPV16−E7抗体(RAb4)及びウサギ抗HPV18−E7抗体(RAb2)を用いて、HPVI8を感染させたHela細胞、HPVI6を感染させたCaSM細胞、及びHPV陰性のC33A細胞におけるHPV−E7タンパク質発現のレベルを検出した。精製した組換えタンパク質を暗い染色と共に陽性対照として使用した。抗β−アクチン抗体を内部対照として用いたが、それも細胞株すべてについて暗い染色を示した。結果は、RAb4が、HPV18を感染させた(HeLa)及びHPV16を感染させた(CaSki)である細胞溶解物からのHPV−E7タンパク質を検出することを示している。これらのデータは、ポリクローナル抗HPV16−E7抗体がHPV18−E7タンパク質と交差反応性であることを示唆している。RAb2は、HPV18を感染させている細胞溶解物からのHPV−E7タンパク質を検出する。図2B、ウサギ抗HPV16−E6抗体を用いて子宮頸癌組織から抽出した細胞溶解物におけるHPV−E6タンパク質を検出した。HPV16−E6及びHPV18−E6組換えタンパク質を陽性対照として用い、暗い染色が得られた(レーン1及び2)。HPV18を感染させたHeLa細胞溶解物も暗い染色を提供した(バンド3)。ヒト子宮頸部から抽出した正常細胞は陰性の結果を提供した(レーン4及び6)。ヒト子宮頸部から抽出した癌細胞は陽性の結果を提供した(レーン5及び7)。これらのデータは、ポリクローナル抗HPV16−E6抗体がHPV16とHPV18のE6組換えタンパク質及び子宮頸癌組織由来のタンパク質双方を検出できることを明らかにしている。
実施例2.6:抗HPV抗体の特異性
1以上の免疫アッセイを用いて、2以上のHPV組換えタンパク質によりハイブリドーマ細胞株をスクリーニングすることによって生成したモノクローナル抗体の特異性を調べることができる。EIA(酵素免疫アッセイ)及び/又はウエスタンブロットをアッセイ形式として用いて本明細書に記載されるHPV抗体の特異性を調べた。抗HPV抗体を得るために使用した元々のスクリーニングタンパク質及びスクリーニングに用いなかったそのほかのタンパク質を含む種々の精製した組換えHPVタンパク質を用いてマイクロタイタープレートを被覆し、得られた抗HPV抗体の特異性をEIAにて調べた。子宮頸癌(HPVの感染を伴う又は伴わない)からの細胞溶解物におけるタンパク質も用いてウエスタンブロットによって抗HPV抗体の特異性を調べた。HPV抗体のHPV感染細胞株由来タンパク質との結合及び反応性を確認するには、ウエスタンブロットは非常に有用であり、HPV感染細胞株に存在するタンパク質に相当する特異的なタンパク質バンドを実証する。SDS−PAGEゲル上にて、これらのウエスタンブロットのタンパク質バンドをその予想される分子量位置にて組換えHPVタンパク質と比較することができる。HeLa細胞株(HPV18陽性)、SiHa細胞株(HPV16陽性)及びC33A細胞株(HPV非感染)を含む子宮頸癌細胞株の細胞溶解物を用いてウエスタンブロット上でHPVモノクローナル抗体によってHPVのE6、E7又はL1の検出を実証した。
図3は、種々のハイブリドーマクローンに由来する抗HPV−E6、抗HPV−E7及び抗L1抗体の種々のHPVタンパク質との交差反応性を示す。6×Hisを陰性対照として使用した。これらのデータは、本発明に記載されるモノクローナル抗体がHPV組換えタンパク質に結合することが可能であるHPV型特異的なクローン及び型非特異的なクローンを含むことを明らかにしている。
図4Aは、マウス抗HPV−E6抗体を用いて種々のHPVタンパク質を検出するELISAの結果を示す。HPV16−E6とHPV18−E6タンパク質によって特異的な結合が得られた。図4B.種々の細胞株にてマウス抗HPV18−E6抗体を用いたウエスタンブロットの結果。陽性の染色は、HPV18を感染させたHeLa細胞株にて得られた。組換えHPV18−E6タンパク質を陽性対照として使用した。抗β−アクチン抗体を内部陽性対照として使用した。図4C.マウス抗HPV−E7抗体を用いて種々のHPVタンパク質を検出したELISAの結果。HPV16−E7とHPV18−E7タンパク質によって特異的な結合が得られた。図4D.種々の細胞株にてマウス抗HPV−E7抗体を用いたウエスタンブロットの結果。陽性の染色は、HPV18を感染させたHeLa細胞株にて得られた。組換えHPV18−E7タンパク質を陽性対照として使用した。抗β−アクチン抗体を内部陽性対照として使用した。
本発明に記載されるような様々なHPV型に由来する2以上のHPVウイルスタンパク質に結合することが可能であるモノクローナル抗体を実証するために、HPV16及びHPV18の組換えE6タンパク質と反応することが可能であるモノクローナル抗体を得た。図4Aは、組換えHPV16−E6及びHPV18−E6タンパク質と反応することが可能である共通するエピトープを持つモノクローナル抗体の特異性を示す。本明細書に記載される抗体によって検出されるようにマイクロタイタープレートに被覆された組換えタンパク質は天然の形態である。これらのデータは、モノクローナル抗体が、天然形態の組換えHPV16−E6及びHPV18−E6タンパク質と強く反応するが、天然形態の組換えHPV−E7又はHPV−L1タンパク質とは非反応性であることを明らかにしている。これらのデータは、この抗体が天然形態の組換えHPV16−E6及びHPV18−E6タンパク質と反応することが可能であるHPV−E6の共通エピトープを含有することを示している。図4Bは、種々の子宮頸癌細胞株に由来する細胞溶解物を用いてHPV16及びHPV18の組換えE6タンパク質と結合する図4Aで調べたのと同一のモノクローナル抗体と反応させたウエスタンブロットの結果を示す。17kDaの標準分子量マーカー付近でモノクローナル抗体によって検出されたように単一バンドで示された細胞溶解物及び組換えタンパク質は双方共、HeLa(HPV18)の子宮頸癌細胞株由来のHPV−E6タンパク質の検出を示すが、C33A(HPV非感染)細胞株では示さない。予想された分子量で示された組換えタンパク質のレーンでのバンドは、モノクローナル抗体が変性させたHPV18−E6組換えタンパク質に強く反応することを示す。
本発明に記載されるような様々なHPV型に由来する2以上のHPVウイルスタンパク質に結合することが可能であるモノクローナル抗体を実証する別の例として、図4C(円で囲んだ)は、組換えHPV16−E7及びHPV18−E7タンパク質双方と反応することが可能であるモノクローナル抗体の特異性をEIAにて示す。本明細書に記載される抗体によって検出されるマイクロタイタープレートに被覆された組換えタンパク質は天然の形態である。これらのデータは、本明細書に記載されるモノクローナル抗体が、天然形態のHPV16−E6及びHPV18−E6タンパク質に強く反応するが、天然形態のHPV−E6又はHPV−L1タンパク質には非反応性であることを明らかにしている。これらのデータは、この抗体が、天然形態のHPV16−E6及びHPV18−E6タンパク質に反応することが可能であるHPV−E7の共通エピトープを含有することを示している。
第1のHPVウイルスタンパク質とのみ反応することが可能であり、第1のウイルスタンパク質とは異なる第2のウイルスタンパク質とは反応しないモノクローナル抗体を実証するために、図4C(第1のグラフ)は、組換えHPV16−E7と反応することが可能であるが、そのほかの組換えHPVタンパク質とは反応しないモノクローナル抗体の特異性をEIAで示す。データは、特異的なエピトープを含有するこのモノクローナル抗体の特異性がEIAにてHPV16−E7のみと反応することが可能であり、HPV18−E7又はそのほかの組換えHPVタンパク質と交差反応性ではないことを示している。本明細書に記載される抗体によって検出されるマイクロタイタープレート上に被覆された組換えタンパク質は天然の形態である。これらのデータは、本明細書に記載されるモノクローナル抗体が天然形態の組換えHPV16のE7タンパク質に強く反応するが、天然形態の組換えHPVのE6又はL1タンパク質に交差反応しないことを示す。これらのデータはまた、このモノクローナル抗体がHPV16のE7タンパク質のみと反応することが可能であるHPV16のE6特異的なエピトープを含有することも示す。図4C(第2のグラフ)は、EIAにて組換えHPV18−E7と反応することが可能であるが、そのほかのHPVタンパク質と反応することが可能ではないモノクローナル抗体の特異性を示す。
実施例2に記載された手順は、少なくとも精製した組換えHPV16−E6タンパク質、HPV16−E7タンパク質、HPV16−L1タンパク質、HPV18−E6タンパク質、HPV18−E7タンパク質、HPV−18−L1タンパク質及びその組み合わせに対して生じた少なくともモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を製造し、性状分析する技法を提供する。実施例2に記載された結果は、少なくともHPV16−E6タンパク質、HPV16−E7タンパク質、HPV16−L1タンパク質、HPV18−E6タンパク質、HPV18−E7タンパク質、HPV−18−L1タンパク質及びその組み合わせへのこれら抗体の特異的結合を実証している。データは汎抗体の創製を実証しており、そのそれぞれは、少なくとも2つのHPV型に由来するHPVタンパク質を検出することが可能である。
実施例3:試料の採取及び調製の詳細な手順。本出願に記載される全細胞ELISAアッセイで使用するための試料の採取及び調製についての詳細な手順が本実施例で記載される。
本発明における種々の試料で記載されるように全細胞ELISAで使用される試料には組換えタンパク質、培養細胞株及び臨床試料が挙げられるが、これらに限定されない。
使用した組換えタンパク質は実施例1で提供された手順に従って入手し、性状分析した。使用した培養細胞株は試験管内の細胞培養の構成成分から得た。
使用した臨床試料は生きているヒト対象から得た。試料を得たヒト対象は以下のカテゴリーに入る。1.試料が日常の健康診断で得られ、日常のスクリーニングの一部として使用された健常なヒト対象。2.HPVに感受性だった(たとえば、家族歴;特定の環境因子にさらされた;等によって判定されるような)ヒト対象。3.異常性の徴候(たとえば、子宮頸部疣贅、など)を有したヒト対象。4.子宮頸部疾患を有すると条件付で診断された(たとえば、パップ塗抹、ハイブリッド捕捉、PCR検査等に基づくそのほかの検査によって判定されたような)ヒト対象。
本発明における種々の試料で記載されるような全細胞ELISAに使用される臨床試料はヒト対象から得た子宮頸部擦り取りに由来した。こうして本明細書で使用されるような試料は、必ずしも液体形態、すなわち、水溶液ではないが、通常、物質又は物質の混合物を含む。試料はすべて婦人科検診のための予定された外来診療の間に女性患者から得た。ヒト対象に検鏡を挿入した後、子宮頸部にブラシ又は綿球を挿入し、回転させて子宮頸部細胞、すなわち、子宮頸部擦り取りを得た。次いでブラシ又は綿球を取り出し、直ちに保存溶液に入れた。市販され、臨床で使用されているThinPrep(登録商標)(Hologic社)保存溶液及びSurePath(登録商標)(BD Biosciences社)保存溶液を含むが、これらに限定されない種々の保存溶液が使用されている。
実施例4:全細胞ELISAの詳細な手順。本出願に記載されるような全細胞ELISAで使用される種々のアッセイ条件に関連する詳細な手順を本実施例で記載する。
例として、タンパク質、細胞又は臨床試料(以後、試料)を全細胞ELISAアッセイに用いた。溶液中に固定剤及び保存剤を含有するマイクロタイタープレートのウェル又は回収バイアルに試料を直接付着させることができる。アッセイに先立って、予備処理しないで、又は抗原回収手順、細胞濃縮手順又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない種々の予備処理と共に試料を使用した。
抗原回収手順は、種々の温度にて種々の時間、種々の緩衝化溶液にて試料を処理することによって実施した。使用した温度は室温から100℃以上、すなわち、120℃に及ぶ。使用した緩衝化溶液は、高いpHのトリス緩衝液(pH=9〜10)及び低いpHのクエン酸緩衝液(pH=約6)を含む。使用した処理時間は5分間から45分間に及ぶ。
以下の手順を用いて細胞濃縮を実施した。回収液中の試料を遠心し、又は撹乱せずに30分間〜2時間静置して細胞を回収バイアルの底に沈めた。次いで上清の一部を取り除いて試料を濃縮した。
単一の処理、組み合わせの処理、又は無処理の後、アッセイ用容器の表面に試料を分配した。使用した種々の表面には、好適な結合特異性のために被覆した又は処理したガラス又はプラスチックの表面、たとえば、細胞が結合するように処理したプラスチック表面又はタンパク質が結合するように処理したプラスチック表面;付着した薄層の膜を持つガラス又はプラスチックの表面が挙げられるが、これらに限定されない。表面はまたビーズの形態で接触面積を最大化することもできる。各試料を単一の容器に負荷した。複数の容器を組み合わせて高処理能力法のためのマイクロタイタープレートとしての形式を形成した。
容器の表面に試料を分配した後、試料を表面に不動化した。不動化のための種々の条件を使用している。試料を撹乱することなく表面に静置して不動化を実施した。不動化時間は10分間から24時間に及んだ。不動化温度は4℃から37℃に及んだ。
不動化の後、試料を固定した。種々の固定条件を使用している。使用した固定溶液には100%メタノール、100%エタノール及び100%アセトンが挙げられる。使用した固定時間は、即座の風乾から24時間又は固定溶液が助けなしで完全に蒸発するまでに及んだ。使用した固定温度は4℃から室温に及んだ。
固定の後、試料を透過処理して、抗体が細胞に入って細胞内で抗原への抗体結合のアクセシビリティを可能にするように細胞膜を破壊した。たとえば、冷却(−20℃)90%メタノールの脱イオン水溶液のようなアルコール系溶液並びにサポニン、トリトン、NP−40、ツイーン20及びジギトニンのような界面活性剤系溶液を含むが、これらに限定されない種々の透過処理剤を使用している。種々の濃度の各透過処理剤(すべて脱イオン水で希釈した):0.1%〜5%のHP−40、0.1%〜2.5%のツイーン20、0.001%〜0.5%のサポニン、0.1%〜2.5%のジギトニン、及び0.01%〜1%のトリトンを使用している。室温〜1℃の種々の透過処理温度を使用している。5分間〜30分間の種々の透過処理時間を使用している。インキュベートは穏やかな振盪のもとで行った。
アッセイ手順に沿って;一般に前の工程から残留溶液を除去する目的で新しい溶液を添加する前に洗浄溶液を使用した。脱イオン水、リン酸緩衝液、生理食塩水、及びツイーン20含有のリン酸緩衝化生理食塩水を含む種々の洗浄溶液を使用している。0.1%〜1%に及ぶ種々の濃度のツイーン20を使用している。即座の廃棄から5分間に及ぶ種々の洗浄時間を使用している。撹乱することなく試料をインキュベートできる又は穏やかな振盪を伴った洗浄手順を行っている。洗浄手順は2〜4回使用している。
透過処理後、容器内の溶液を廃棄した。試料を洗浄溶液で洗浄した。次いで試料を3%H2O2と共にインキュベートし、さもなければ高い背景シグナルを生じる内因性の水素ペルオキシダーゼをブロックした。脱イオン水、100%メタノール又はリン酸緩衝化生理食塩水を用いて3%H2O2溶液を調製している。10分間〜30分間に及ぶインキュベート時間を用いている。インキュベートの後、容器内の溶液を廃棄し、試料を洗浄した。
次いで試料をブロッキング溶液にてインキュベートし、試料及び表面における非特異的な結合部位をブロックし、非特異的な結合を排除した。種々のブロッキング条件を使用している。使用されているブロッキング溶液には正常なヤギ血清、カゼイン緩衝液及び市販のアッセイ希釈液及びアッセイ緩衝液が挙げられる。使用されているインキュベート時間は1時間から24時間に及ぶ。使用されているブロッキング温度には室温及び4℃が挙げられる。穏やかな振盪のもとでインキュベートを行った。インキュベートの後、ブロッキング溶液を廃棄した。
試料に発現される組換えタンパク質又は当該タンパク質に結合する一次抗体を試料に加えた。種々の条件が実施されている。種々のポリクローナル又はモノクローナルの抗HPV−E6又は抗HPV−E7抗体が使用されている。1:50〜1:1000の希釈に及ぶ抗体の種々の希釈が使用されている。10%正常ヤギ血清、カゼイン緩衝液及びアッセイ希釈剤を含む種々の希釈剤が使用されている。1時間〜24時間に及ぶ種々のインキュベート時間の長さが使用されている。室温及び4℃を含む種々のインキュベート温度が使用されている。穏やかな振盪のもとでインキュベートを行った。インキュベートの後、一次抗体溶液を廃棄した。洗浄溶液で試料を洗浄した。
一次抗体に結合する二次抗体を試料に加えた。種々のインキュベート条件が実施されている。ビオチン又は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合された抗体を含む種々の二次抗体が使用されている。ビオチン化抗体については1:125〜1:1000の希釈及びHRP結合の抗体については1:125〜1:250に及ぶ二次抗体の種々の希釈が使用されている。リン酸緩衝化生理食塩水、正常なヤギ血清、カゼイン緩衝液及び市販のアッセイ希釈剤を含む種々の希釈剤が使用されている。30分間〜1時間に及ぶ種々のインキュベート時間が使用されている。穏やかな振盪のもとでインキュベートを行った。インキュベートの後、二次抗体溶液を廃棄した。洗浄溶液で試料を洗浄した。
ビオチン化二次抗体を使用したのであれば、次いでストレプトアビジン結合のHRP溶液と共に試料をインキュベートした。種々のインキュベート条件が実施されている。1:250〜1:600の希釈に及ぶHRP溶液の種々の希釈が実施されている。45分間〜1時間に及ぶ種々のインキュベート時間が実施されている。リン酸緩衝化生理食塩水、正常なヤギ血清、カゼイン緩衝液及び市販のアッセイ希釈剤を含む種々の希釈剤が使用されている。穏やかな振盪のもとでインキュベートを行った。インキュベートの後、溶液を廃棄した。洗浄溶液で試料を洗浄した。
試料における標的タンパク質への抗体の結合を表すシグナル強度の読み取りに好適な基質を試料に加え、タンパク質又は試料で発現されたタンパク質の量の測定値を得た。種々の基質が使用されている。基質はすべて市販であり、基質の調製は提供される指示書に従った。穏やかな振盪のもとでインキュベートを行った。
比色法については、ELISA基質TMB又はその同等物を用いて、タンパク質への抗体の結合から生じる西洋ワサビのペルオキシダーゼ活性を検出した。TMBの試料への添加の際、酸の停止溶液の添加で黄色に変わる(450nmにて最大吸収)青色を生じる。比色プレートリーダーを用いてシグナル強度を読み取った。
化学発光法については、市販の化学発光基質を用いてタンパク質への抗体の結合から生じる西洋ワサビのペルオキシダーゼ活性を検出した。試料への基質の添加の際、化学発光プレートリーダーを用いて化学発光強度を読み取った。
蛍光法については、市販の蛍光基質を用いてタンパク質への抗体の結合から生じる西洋ワサビのペルオキシダーゼ活性を検出した。試料への基質の添加の際、蛍光プレートリーダーを用いて蛍光強度を読み取った。
実施例5:培養細胞で実施した全細胞ELISAアッセイ
本出願に記載されるような全細胞ELISAの実現可能性を実証するために、実施例4に記載されたようなアッセイ手順を培養細胞に適用したが、そこでは、細胞集団及び細胞数がさらに均一である。
例として、抗HPV−E7抗体を用いて全細胞ELISAを実施し、HPV陽性細胞株HeLa及びHPV陰性細胞株C33aにおけるHPV−E7癌タンパク質の発現レベルを検出した。HeLa細胞及びC33a細胞は細胞培養構成成分から得た。細胞培養溶液の種々の濃度:50μL当たりおよそ9000個のHela細胞、4500個のHela細胞、4000個のC33a細胞及び2000個のC33a細胞を調製した。透明でポリスチレン被覆した平底の高結合の96穴マイクロタイタープレートに、50μLの各細胞株の各濃度の2つ組を分配した。室温にて30分間細胞を不動化した。不動化の後、溶液を廃棄し、25μLの100%エタノールを用いて細胞を固定し、室温にて即座に風乾した。固定の後、穏やかに振盪しながら、室温にて5分間、100μLの冷却(−20℃)90%メタノールの脱イオン水溶液によって細胞を透過処理した。透過処理の後、容器内の溶液を廃棄し、穏やかな振盪のもと、リン酸緩衝化生理食塩水で5分間、2回洗浄した。100μLの3%H2O2を試料に加え、穏やかに振盪しながら室温で20分間インキュベートして内因性の水素ペルオキシダーゼをブロックした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、穏やかに振盪しながら各時、5分間、3回細胞を洗浄した。次いで、試料及びマイクロタイタープレートの表面での非特異的な結合部位をブロックするために100μLの10%正常ヤギ血清にて室温で1時間、細胞をインキュベートして非特異的な結合を排除した。50μLの抗HPV−E7抗体を10%正常ヤギ血清中1:200に希釈で用い、穏やかに振盪しながら室温にて1時間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで5%正常ヤギ血清での1:500の希釈を用いて50μLのビオチン化二次抗体を加え、穏やかに振盪しながら室温にて30分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いでPBSにて1:600の希釈を用いて50μLのストレプトアビジン結合HRP溶液を加え、穏やかに振盪しながら室温にて45分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで、50μLのTMB基質を加え、撹乱せずに10分間室温で試料をインキュベートした。次いで25μLの酸停止溶液を加え、酵素反応を停止し、比色プレートリーダーを用いてシグナル強度を読み取った。少なくとも2回アッセイを繰り返して再現性を確認した。全細胞ELISAの結果を図6Aに示す。
図6Aは、抗HPV−E7抗体の有無にて標準化せずに細胞株についての平均吸収を示す。各読み取りはELISAウェルの全細胞に相当し、細胞数は図の説明にて示す。有意に多い量のHPV陰性C33a細胞を負荷したという事実にもかかわらず、HPV陽性HeLa細胞のシグナル強度はHPV陰性C33a細胞のそれよりも有意に高い。一次抗体なしで行ったアッセイを陰性対照として用いた。無視できるシグナル強度が生じた。
標準化を行ったが、そのデータを図6Bに示す。抗HPV−E7抗体の有無にてHPV陽性HeLa細胞とHPV陰性C33a細胞についての平均吸収。読み取りは標準化され、細胞当たりの吸収に相当する。HPV陽性HeLa細胞とHPV陰性C33a細胞の間のシグナル強度の差異は、標準化しなかった図6Aで示されたデータと比べてさらに大きくなった。
別の例として、種々の濃度のHPV陽性HeLa細胞及びHPV陰性C33a細胞を用いて全細胞ELISAアッセイを行った。用いたHeLa細胞の濃度は、50μL当たり、1250、2500、3750及び5000個の細胞である。C33a細胞の濃度は50μL当たり2500、5000、10000及び20000個の細胞である。[0154]に記載されたのと同様の手順を用いた。10%の正常ヤギ血清における1:200の希釈にて抗HPV−E7抗体を用いた。少なくとも2回アッセイを繰り返して再現性を確認した。生成したデータをプロットしてHeLa細胞及びC33a細胞の双方について滴定曲線を生成した。
図6Cは、細胞数を標準化することなく吸収を測定する比色法を用いた抗HPV−E7抗体に対するHPV陽性HeLa細胞(菱形の点)及びHPV陰性C33a細胞(四角の点)についての滴定曲線を示す。読み取りはELISAウェル当たりの平均読み取りに相当することを提示する。5000個の細胞をアッセイに使用した場合、HPV陽性細胞株とHPV陰性細胞株の間で吸収における差異が生じる。ウェル当たり10000個を超える高い細胞数を用いた場合、C33aについてのシグナル強度が飽和したということは、容器の表面に負荷した細胞が過飽和だった可能性があったことを示す。
細胞数の標準化を行ったが、その結果を図6Dに示す。吸収を測定する比色法を用いたHPV陽性HeLa細胞(菱形の点)及びHPV陰性C33a細胞(四角の点)についての滴定曲線。図6Cの読み取りを細胞数に基づいて標準化したので細胞当たりの平均読み取りに相当する。HPV陽性HeLa細胞についてのデータは、アッセイに使用した細胞の量が多すぎない場合、シグナル強度が最適化されることを示す。HPV陰性C33a細胞についてのデータは、アッセイに使用した細胞の量にかかわらず、シグナル強度が最小を保持するということはこの特定の細胞株がHPV陰性であることを裏付けている。
別の例として、抗HPV−E6抗体を用いて全細胞ELISAアッセイを行い、[0154]に記載されたのと同様の手順を用いて、癌の臨床試料、培養したHPV陽性のHeLa及びSiHa細胞、並びにHPV陰性のC33a細胞におけるHPV−E6癌タンパク質の発現レベルを検出した。癌の臨床試料は、そのまま、すなわち、細胞数を標準化することなく回収溶液に回収されたまま使用し、回収液はSurePath(登録商標)保存溶液である。使用した3種の培養細胞株の濃度は、50μL当たり、36000、27000、1800及び9000個である。10%正常ヤギ血清にて1:200の希釈で抗HPV−E6抗体を用いた。少なくとも2回アッセイを繰り返して再現性を確認した。生成したデータをプロットして図6Eに提示するように相対的な吸収強度として示した。
図6Eは、癌の臨床試料、HPV陽性のHeLa及びSiHa細胞、並びにHPV陰性のC33a細胞についてHPV−E6抗原捕捉に対するHPV−E6抗体を用いた全細胞ELISAから得た吸収を示す。癌の臨床試料は高い吸収シグナルを示す。HPV陽性のHeLa及びSiHa細胞についての吸収の強度は細胞数に比例する。36000個のHeLa又はSiHa細胞は癌の臨床試料について得られたものに匹敵するシグナル強度を示した。HPV陰性のC33a細胞の強度は低い。
要するに、図6に示すようにこの実施例で提供されたデータは、抗HPV−E6又は抗HPV−E7抗体を用いた全細胞ELISAによって培養細胞及び癌の臨床試料にてHPV−E6又はHPV−E7癌タンパク質の発現レベルの検出が可能になることを実証している。精製組換えHPVタンパク質に対して生じた1以上の抗HPV抗体の、HPV感染細胞によって発現されるHPVタンパク質への特異的な結合が検出された。HPV感染細胞によるHPVタンパク質発現のレベルは、吸収シグナルの強度に基づいて検出され、定量された。HPV感染細胞によって発現されたHPVタンパク質の定量された発現レベルは、全細胞ELISAで使用される培養細胞試料における測定された細胞数に基づいて標準化された。
実施例6:全細胞ELISAアッセイを用いた臨床試料におけるHPV癌タンパク質の発現レベルの検出
HPV関連の感染をスクリーニングし、診断するために全細胞ELISAを使用することができることを実証するために、組織診断を伴った臨床細胞診試料、組織診断を伴わない盲検の臨床細胞診試料、子宮頸癌試料、及び正常な子宮頸部細胞診試料を含む種々の群の臨床細胞診試料で全細胞ELISAを実施した。これらの臨床細胞診試料は、ThinPrep(登録商標)保存溶液又はSurePath(登録商標)保存溶液のいずれかに入れた。
例として、抗HPV−E6抗体を用いて全細胞ELISAを行い、臨床試料におけるHPV−E6癌タンパク質の発現レベルを検出した。合計355の臨床細胞診試料を用いた。透明でポリスチレン被覆した平底の高結合の96穴マイクロタイタープレートに、50μLの各細胞株の各濃度の2つ組を分配した。室温にて30分間細胞を不動化した。不動化の後、溶液を廃棄し、25μLの100%エタノールを用いて細胞を固定し、室温にて即座に風乾した。固定の後、穏やかに振盪しながら、室温にて5分間、100μLの冷却(−20℃)90%メタノールの脱イオン水溶液によって細胞を透過処理した。透過処理の後、容器内の溶液を廃棄し、穏やかな振盪のもと、リン酸緩衝化生理食塩水で5分間、2回洗浄した。100μLの3%H2O2を試料に加え、穏やかに振盪しながら室温で20分間インキュベートして内因性の水素ペルオキシダーゼをブロックした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、穏やかに振盪しながら各時、5分間、3回細胞を洗浄した。次いで、試料及びマイクロタイタープレートの表面での非特異的な結合部位をブロックするために100μLの10%正常ヤギ血清にて室温で1時間、細胞をインキュベートして非特異的な結合を排除した。50μLの抗HPV−E6抗体を10%正常ヤギ血清中1:200に希釈で用い、穏やかに振盪しながら室温にて1時間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで5%正常ヤギ血清での1:500の希釈を用いて50μLのビオチン化二次抗体を加え、穏やかに振盪しながら室温にて30分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いでPBSにて1:600の希釈を用いて50μLのストレプトアビジン結合HRP溶液を加え、穏やかに振盪しながら室温にて45分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで、50μLのTMB基質を加え、撹乱せずに10分間室温で試料をインキュベートした。次いで25μLの酸停止溶液を加え、酵素反応を停止し、比色プレートリーダーを用いてシグナル強度を読み取った。少なくとも2回アッセイを繰り返してデータの品質と再現性を確保した。全細胞ELISAの結果を図7に示す。
図7A.組換えHPV−E6タンパク質の発現レベルを測定する抗HPV−E6モノクローナル抗体を用いた全細胞吸収ELISAから得られた平均吸収強度の標準曲線。図7B.355の臨床試料から得られた平均吸収強度。組織ステージ:279の正常試料、48のCIN1試料、5のCIN3試料及び23の子宮頸癌試料によって群分けした臨床細胞診試料(試料数=355)についての誤差棒としての標準偏差によって棒が示される。図5で記載されたようなHPV−E6タンパク質の標準曲線(図7Aとして再び示す)に対応させることによってHPV−E6タンパク質の発現レベルを推定することができる。355の臨床細胞診試料のうち、38試料は、その組織ステージに関連する結果がない盲検細胞診試料であった。これら38試料のデータは図7Cに示す。図7Cでは、抗HPV−E6モノクローナル抗体を用いてHPV−E6タンパク質の発現レベルを測定する全細胞吸収ELISAから得られた平均吸収強度を示す盲検試験1つ(右のパネル)と組み合わせた全試験(右のパネル)。棒は、臨床細胞診試料に関する誤差棒としての標準偏差を示す。左記のグラフは、17の正常(WNL)、14のCIN1、5のCIN3及び2の癌(SCC)試料を伴った代表的な盲検試験の1つを示す。アッセイの陽性率を決定し、試料の感染ステージを決定するためにカットオフ閾値を0.341に設定し、HPV−E6の発現レベルを推定した。双方のグラフからの結果は同程度であり、本出願に記載されるような全細胞吸収ELISAを用いることが再現性のあるデータを生成することを実証している。滴定曲線(図7A、上左パネル)と比較することによって、これらのデータは臨床試料の感染ステージをスクリーニングし、決定するのに使用することができる。
355の臨床試料によって得られた全細胞ELISAのデータをヒストグラムとしてプロットして個々の吸収強度及びこれらのシグナル強度の分布を示した。図8Aは、HPV−E6タンパク質の発現レベルを測定する抗HPV−E6モノクローナル抗体を用いた全細胞吸収ELISAから得られた各臨床試料についての個々の吸収強度を示すヒストグラムである。合計、279の正常、48のCIN1、5のCIN3及び23の子宮頸癌(CxCa)の試料がこの試験にはある。データは、本出願に記載されるような全細胞吸収ELISAが、HPV−E6タンパク質の発現レベルを表すその吸収強度に基づいて異なった子宮頸部疾患悪性度によって臨床症例を識別できることを実証している。図8Bに示すように、臨床試料を用いて得られたデータで統計的解析を行った。図8Bは、合計355の細胞診試料を解析することによって得られたROC曲線(受信者動作特性)の要約を示す。ROC解析は、真の陽性率又は感度と疑陽性率又は1−特異性の相関プロットである。この解析は、おそらく最適なモデルを選択し、階層分布から独立して準最適なものを捨てるツールを提供する。この図はy軸としての1−特異性とx軸としての特異性によって生成される。右下角の大きな空間は、この試験で選択されたモデルが高い感度と高い選択性を提供することを示す。表におけるRAの値(ROC面積)は、試験性能、すなわち、RA≧0.9は優れている、0.9≧RA≧0.8は良好、等を示す。我々のROC解析の結果は、右下面に大きな空間を与え、試験の本例は非常に高い感度と高い特異性を有することを示している。
別の例として、臨床試料でHPV−E6癌タンパク質の発現レベルを検出する抗HPV−L1抗体を用いて全細胞ELISAを実施した。[0165]に記載されたのと同様の手順を用いて合計82の臨床試料を調べた。代表的なデータを表3に要約する。
本実施例に記載される手順は、HPVによる感染に感受性の固定した細胞集団を含む臨床試料における本出願に記載されるような全細胞ELISAアッセイの実現可能性を実証する。本実施例で提供される結果は、臨床試料からの細胞の集団によって発現されたHPVタンパク質への、精製組換えHPVタンパク質に対して生じた1以上の抗HPV抗体の特異的結合が検出されたことを実証する。HPV感染した細胞によるHPVタンパク質発現のレベルが吸収シグナル強度に基づいて検出され、定量された。HPV感染細胞によって発現されたHPVタンパク質の定量化された発現レベルを所定のHPVタンパク質発現レベルの閾値及びHPVタンパク質の標準曲線と比較した。所定のHPVタンパク質発現レベルの閾値は、臨床試料における癌のステージ又は形質転換の病理学的ステージに関連する。合計355の症例で検出されたHPV型には、表4で要約するように8、16、18、33、35及び69の型が挙げられる。これらのデータは、本明細書に記載される全細胞ELISAで使用される汎抗体が、最もリスクの高い型のHPV感染を持つ臨床試料に由来するHPV癌タンパク質を検出することが可能であることを実証している。
実施例7:全細胞ELISAデータの標準化
本出願に記載される全細胞ELISAアッセイに使用される臨床試料における細胞密度を標準化する種々の方法
実施例7.1:アッセイ前の細胞充実度の標準化:ELISAアッセイ用のマイクロタイタープレートの各ウェルに負荷される試料がほぼ同一レベルの細胞密度を含有するようにアッセイ前に臨床試料にて細胞密度を標準化すること。それは以下の手順に従って実施された。回収液中の個々の試料を撹乱しないで少なくとも30分間〜2時間静置して回収バイアルの底に細胞を沈めた。細胞ペレットの体積を測定し、ペレットの体積(μL)と溶液の総体積(mL)の比を計算することによって細胞の密度、すなわち、試料の細胞充実度を得た。試料を濃縮する又は希釈してその細胞充実度を同一にすることによって標準化を実施した。例として、標準化の際の試料は同一の細胞充実度を有する。別の例として25以上の細胞充実度を持つ試料をそのまま使用した。25未満の細胞充実度を持つ試料は標準化して細胞充実度を25にした。
実施例7.2:内部陽性対照としてのハウスキーピング遺伝子を用いた細胞数の標準化:例として、抗β−アクチンを内部陽性対照として使用して容器の表面に付着した細胞数に言及した。アクチンは細胞の運動性、構造及び整合性に関与する高度に保存されたタンパク質である。β−アクチン抗体は、細胞の総タンパク質の同一比率のままであることが特定されているので免疫アッセイにおける負荷対照として広く使用されている。抗β−アクチンを用いた標準化は以下の手順に従って実施した。2つ組の試料を容器の表面に負荷し、実施例4に記載されたのと同様のアッセイ手順を用いてアッセイを実施した。ブロッキング手順の完了の際、2つ組試料の一方を抗HPV一次抗体と共にインキュベートしたが、2つ組試料の他方を抗β−アクチン抗体と共にインキュベートした。インキュベートの完了後、2つ組双方についてアッセイの残りを行った。抗β−アクチン抗体のインキュベートについて種々の条件が実施されている。1:50〜1:400の希釈に及ぶ抗β−アクチン抗体の種々の希釈が使用されている。1時間〜24時間に及ぶ種々のインキュベート時間が使用されている。室温〜4℃に及ぶ種々のインキュベート時間が使用されている。
例として、抗β−アクチン抗体を用いて全細胞ELISAを実施し、HPV陽性細胞株HeLa及びHPV陰性細胞株C33aにてβ−アクチンタンパク質の発現レベルを検出した。HeLa細胞及びC33a細胞は細胞培養構成成分から得た。細胞培養溶液の種々の濃度は、50μL当たりおよそ1250、2500、5000及び10000個の細胞であるように調製した。透明でポリスチレン被覆した平底の高結合の96穴マイクロタイタープレートに、50μLの各細胞株の各濃度の2つ組を分配した。室温にて30分間細胞を不動化した。不動化の後、溶液を廃棄し、25μLの100%エタノールを用いて細胞を固定し、室温にて即座に風乾した。固定の後、穏やかに振盪しながら、室温にて5分間、100μLの冷却(−20℃)90%メタノールの脱イオン水溶液によって細胞を透過処理した。透過処理の後、容器内の溶液を廃棄し、穏やかな振盪のもと、リン酸緩衝化生理食塩水で5分間、2回洗浄した。100μLの3%H2O2を試料に加え、穏やかに振盪しながら室温で20分間インキュベートして内因性の水素ペルオキシダーゼをブロックした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、穏やかに振盪しながら各時、5分間、3回細胞を洗浄した。次いで、試料及びマイクロタイタープレートの表面での非特異的な結合部位をブロックするために100μLの10%正常ヤギ血清にて室温で1時間、細胞をインキュベートして非特異的な結合を排除した。50μLの抗β−アクチン抗体を10%正常ヤギ血清中1:200希釈及び1:400希釈で用い、穏やかに振盪しながら室温にて1時間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで5%正常ヤギ血清での1:500の希釈を用いて50μLのビオチン化二次抗体を加え、穏やかに振盪しながら室温にて30分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いでPBSでの1:600の希釈を用いて50μLのストレプトアビジン結合HRP溶液を加え、穏やかに振盪しながら室温にて45分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで、50μLのTMB基質を加え、撹乱せずに10分間室温で試料をインキュベートした。次いで25μLの酸停止溶液を加え、酵素反応を停止し、比色プレートリーダーを用いてシグナル強度を読み取った。少なくとも2回アッセイを繰り返してデータの品質と再現性を確保した。全細胞ELISAの結果を図9Aに示す。
図9Aは、抗β−アクチン抗体を用いてHPV陽性細胞株HeLa(菱形と四角の点)及びHPV陰性細胞株C33a(三角と円の点)にてβ−アクチンタンパク質の発現レベルを検出する全細胞ELISAから得た細胞株についての吸収強度(OD)を示す。結果は、吸収強度が、HPV陽性又は陰性の細胞株であるかどうかにかかわらず、マイクロタイタープレートのウェルに負荷された細胞の数と共に増大することを示している。β−アクチン抗体の様々な濃度も調べられている。200倍希釈及び400倍希釈は、ウェルに負荷された固定された量の細胞について吸収強度に最少限の差異を提供した。結果は、本出願に記載されるような全細胞ELISAにてマイクロタイターウェルに不動化された細胞の量を定量する基準としてβ−アクチンを使用することができることを示した。
別の例として、抗HPV−E6抗体と抗β−アクチン抗体を並行して用いて全細胞ELISAを実施し、並べて比較するためにHPV陽性細胞株HeLa及びHPV陰性細胞株C33aにてHPV−E6癌タンパク質とβ−アクチンタンパク質の発現レベルを検出した。HeLa細胞及びC33a細胞は細胞培養構成成分から得た。培養細胞株の細胞を数え、50μL当たりおよそ7500個の細胞であるように調製した。透明でポリスチレン被覆した平底の高結合の96穴マイクロタイタープレートに、各細胞株の各濃度の50μLの2つ組の2セットを分配した。室温にて30分間細胞を不動化した。不動化の後、溶液を廃棄し、25μLの100%エタノールを用いて細胞を固定し、室温にて即座に風乾した。固定の後、穏やかに振盪しながら、室温にて5分間、100μLの冷却(−20℃)90%メタノールの脱イオン水溶液によって細胞を透過処理した。透過処理の後、容器内の溶液を廃棄し、穏やかな振盪のもと、リン酸緩衝化生理食塩水で5分間、細胞を2回洗浄した。100μLの3%H2O2を試料に加え、穏やかに振盪しながら室温で20分間インキュベートして内因性の水素ペルオキシダーゼをブロックした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、穏やかに振盪しながら各時、5分間、3回細胞を洗浄した。次いで、試料及びマイクロタイタープレートの表面での非特異的な結合部位をブロックするために穏やかに攪拌しながら100μLの10%正常ヤギ血清にて室温で1時間、細胞をインキュベートして非特異的な結合を排除した。2つ組試料の1セットに50μLの抗β−アクチン抗体を10%正常ヤギ血清中1:200希釈で用いた。2つ組試料の別のセットに50μLの抗HPV−E6抗体を10%正常ヤギ血清中1:200希釈で用いた。穏やかに振盪しながら室温にて1時間試料すべてをインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで5%正常ヤギ血清での1:500の希釈を用いて50μLのビオチン化二次抗体を加え、穏やかに振盪しながら室温にて30分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いでPBSでの1:600の希釈を用いて50μLのストレプトアビジン結合HRP溶液を加え、穏やかに振盪しながら室温にて45分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで、50μLのTMB基質を加え、撹乱せずに10分間室温で試料をインキュベートした。次いで25μLの酸停止溶液を加え、酵素反応を停止し、比色プレートリーダーを用いてシグナル強度を読み取った。少なくとも2回アッセイを繰り返して再現性を確認した。子宮頸癌細胞株についての抗β−アクチン抗体を用いた全細胞ELISAの結果を図9Aに示す。
図9Bは、細胞におけるHPV−E6とβ−アクチンタンパク質の発現レベルを検出する抗HPV−E6抗体と抗β−アクチン抗体を用いた全細胞ELISAから得た7500個のHeLa細胞(斜線の棒、HPV陽性細胞株)と7500個のHT3細胞(無地の棒、HPV陰性細胞株)についての吸収強度を示す。一次抗体を加えない細胞試料を対照として使用し、それは最少限のシグナル強度を示す。結果は、抗HPV−E6抗体を用いた場合、HeLa細胞とHT3細胞の間で吸収強度に有意差があることを示し、それら2つの細胞株におけるHPV−E6タンパク質の差別的な発現レベルを示す。対照的に、β−アクチン抗体を用いた場合、2つの細胞株間の吸収強度の差異は無視できるということは、β−アクチンは細胞の総タンパク質で同じレベルのままであり、全細胞ELISAアッセイ用の容器の表面に不動化された細胞の量を標準化するので、本出願に記載されるようなHPVタンパク質を定量するための基準として使用することができることを示している。β−アクチンから生じるシグナル強度は細胞の総タンパク質に比例するので、種々の細胞数の試料に由来する抗HPV−E6から生じるシグナル強度は抗β−アクチン抗体から生じるシグナル強度に基づいて標準化することができる。図9Cは、細胞におけるHPV−E6とβ−アクチンタンパク質の発現レベルを検出する抗HPV−E6抗体と抗β−アクチン抗体を用いた全細胞ELISAから得た7500個のHeLa細胞(斜線の棒、HPV陽性細胞株)と7500個のHT3細胞(無地の棒、HPV陰性細胞株)についての吸収強度の比を示す。抗β−アクチン抗体を用いて本出願に記載されるような全細胞ELISAにてマイクロタイターのウェルに不動化された種々の数の細胞からのHPVタンパク質の発現に関連するシグナル強度を標準化した。次いで我々は、ウェル当たりの細胞における抗β−アクチン抗体によって検出されるβ−アクチンの量に基づいてHPVタンパク質の発現レベルを標準化する。これらのデータは、種々の数の細胞を含有することが多い臨床試料からのシグナル強度を標準化するのに使用される参照としてβ−アクチンを使用することができることを実証した。
次いでそれぞれ種々の量の細胞数から成ると思われる臨床試料にて参照としてβ−アクチンを用いたシグナル強度の標準化を調べた。[0179]に記載されたのと同じプロトコールに従って、抗HPV−E6抗体と抗β−アクチン抗体を用いて全細胞ELISAを実施し、16の臨床試料におけるHPV−E6癌タンパク質とβ−アクチンタンパク質の発現レベルを並行して検出した。実施例5.1に記載されたようなアッセイ前の標準化を行うことなく、透明で平底の高結合の96穴マイクロタイタープレートに、各試料の50μLの2つ組の2セットを分配した。室温にて30分間試料を不動化した。不動化の後、溶液を廃棄し、25μLの100%エタノールを用いて試料を固定し、室温にて即座に風乾した。固定の後、穏やかに振盪しながら、室温にて5分間、100μLの冷却(−20℃)90%メタノールの脱イオン水溶液によって試料を透過処理した。透過処理の後、容器内の溶液を廃棄し、穏やかな振盪のもと、リン酸緩衝化生理食塩水で5分間、細胞を2回洗浄した。100μLの3%H2O2を試料に加え、穏やかに振盪しながら室温で20分間インキュベートして内因性の水素ペルオキシダーゼをブロックした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、穏やかに振盪しながら各時、5分間、3回細胞を洗浄した。次いで、試料及びマイクロタイタープレートの表面での非特異的な結合部位をブロックするために穏やかに攪拌しながら100μLの10%正常ヤギ血清にて室温で1時間、試料をインキュベートして非特異的な結合を排除した。2つ組試料の1セットに50μLの抗β−アクチン抗体を10%正常ヤギ血清中1:200希釈で用いた。2つ組試料の別のセットに50μLの抗HPV−E6抗体を10%正常ヤギ血清中1:200希釈で用いた。穏やかに振盪しながら室温にて1時間試料すべてをインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで5%正常ヤギ血清での1:500の希釈を用いて50μLのビオチン化二次抗体を加え、穏やかに振盪しながら室温にて30分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いでPBSでの1:600の希釈を用いて50μLのストレプトアビジン結合HRP溶液を加え、穏やかに振盪しながら室温にて45分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで、50μLのTMB基質を加え、撹乱せずに10分間室温で試料をインキュベートした。次いで25μLの酸停止溶液を加え、酵素反応を停止し、比色プレートリーダーを用いてシグナル強度を読み取った。少なくとも2回アッセイを繰り返して再現性を確認した。全細胞ELISAの結果を図10に示す。
β−アクチンが臨床試料の間に存在する細胞数の変動を標準化する基準として使用することができることを実証するために、重複したセットでの全細胞ELISAにて16の代表的な臨床試料を調べた。抗HPV−E6抗体を用いて第1のセットの試料を調べた。抗β−アクチン抗体を用いて第2のセットの試料を調べた。別々に設定された第1と第2から分析されたデータセットは単一のマーカー実験として定義される(図10A)。2つのマーカーの比で双方のセットから分析されたデータは二重マーカー実験として定義される(図10B)。図10は、(A)単一マーカー、抗HPV−E6抗体と二重マーカー、抗HPV−E6抗体及び抗β−アクチン抗体を用いたスクリーニング方法の比較を示す。図10Aでは、単一マーカースクリーニングを使用した。16の臨床試料をスクリーニングする抗HPV−E6抗体を用いた全細胞ELISAから吸収強度(OD)データを得た。ODが0.400より高い場合HPV陽性と定義した。8試料がHPV陽性、及び8試料がHPV陰性として調べられた。図10Bでは、二重マーカースクリーニングを使用した。(A)で調べた同じ16の臨床試料をスクリーニングする抗HPV−E6抗体と抗β−アクチン抗体を用いた全細胞ELISAから吸収強度(OD)データを得た。抗E6と抗β−アクチンのODの比が2.0より高い場合、HPV陽性と定義した。単一マーカースクリーニングで陽性と調べられた同じ8試料は、二重マーカースクリーニング法を用いている間、陽性のままであり、ほかの8は陰性のままである。これらのデータは、本出願に記載されるような全細胞ELISAアッセイにてマイクロタイターのウェルに不動化された細胞の量を標準化するのに抗β−アクチン抗体を使用することができることを実証した。抗β−アクチン抗体を使用することによって、抗β−アクチン抗体を用いて得られたシグナル強度に基づいて種々の量の細胞を伴う試料に関連するシグナル強度を標準化することができる。
実施例7.3:細胞染色、例としてトリパンブルー染色を用いた標準化:アッセイが完了し、ELISAデータがプレートリーダーから得られた後、容器内の溶液を廃棄した。試料を洗浄した。50μLのトリパンブルー溶液を容器に分配した。トリパンブルー溶液中にて5分間試料をインキュベートし、その後溶液を廃棄した。細胞染色の暗さを観察し、それが容器の表面に付着した細胞の量を表す。試料における細胞の量はこうして推定され、細胞数に従ってELISAデータを標準化することができる。
本実施例に記載される手順は、臨床試料におけるHPVタンパク質の発現レベルの測定と定量を可能にする臨床試料における細胞数の標準化のための種々の方法を明らかにする。臨床試料に由来するマイクロタイタープレートに不動化された標準化された細胞におけるHPVタンパク質への抗HPV抗体の特異的な結合に基づいて、この方法は臨床試料に存在するHPVタンパク質の正確な定量的分析を可能にする。
実施例8:試料におけるHPVタンパク質の発現レベルの定量
本発明に記載される全細胞ELISAは、精製組換えHPVタンパク質に対して生じた抗体へのそれら癌タンパク質の特異的な結合に基づいてシグナル読み取りの形態で当該試料におけるHPV癌遺伝子の発現を検出する。従って、試料から得たシグナル強度を既知の濃度のHPV組換えタンパク質から得たシグナル強度と比較することによってHPV癌タンパク質の発現レベルの定量を達成することができる。
種々の濃度の精製組換えHPVタンパク質でELISAアッセイを行った。実施例1に記載された手順を用いて精製組換えHPVタンパク質を入手し、性状分析した。50μL当たり200ng〜50μL当たり0.02pgのタンパク質の連続希釈をリン酸緩衝化生理食塩水で作製した。各希釈の50μLの試料の3つ組を透明でポリスチレン被覆した平底の高結合の96穴マイクロタイタープレートに分配した。4℃にて24時間、タンパク質試料を不動化した。不動化の後、溶液を廃棄した。試料及びマイクロタイタープレートの表面での非特異的な結合部位をブロックするために100μLの10%正常ヤギ血清にて室温で2時間、試料をインキュベートして非特異的な結合を排除した。50μLの一次抗体、抗HPV−E6抗体又は抗HPV−E7抗体を10%正常ヤギ血清中1:200に希釈で用い、穏やかに振盪しながら室温にて1時間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで5%正常ヤギ血清での1:500の希釈を用いて50μLのビオチン化二次抗体を加え、穏やかに振盪しながら室温にて30分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いでPBSにて1:600の希釈を用いて50μLのストレプトアビジン結合HRP溶液を加え、穏やかに振盪しながら室温にて45分間試料をインキュベートした。インキュベートが完了した後、溶液を廃棄し、それぞれ穏やかに振盪しながら、PBS洗浄溶液で5分間、3回試料を洗浄した。次いで、50μLのTMB基質を加え、撹乱せずに10分間室温で試料をインキュベートした。次いで25μLの酸停止溶液を加え、酵素反応を停止し、比色プレートリーダーを用いてシグナル強度を読み取った。少なくとも2回アッセイを繰り返してデータの品質と再現性を確保した。シグナル強度のデータをタンパク質の相当する濃度に対してグラフ化し、吸収タンパク質の標準曲線を生成した。
上述と同様の手順にて、白色のポリスチレン被覆した平底で高結合の96穴マイクロタイタープレートを用いてもアッセイを行った。化学発光シグナルの読み取りのために50μLの化学発光基質を使用した。シグナル強度のデータをタンパク質の相当する濃度に対してグラフ化し、化学発光タンパク質の標準曲線を生成した。
図5は、HPV−E6及びHPV−E7タンパク質のためのタンパク質標準曲線の結果を示す。抗HPV−E6モノクローナル抗体を使用してHPV−E6タンパク質の存在を検出した。抗HPV−E7モノクローナル抗体を使用してHPV−E7タンパク質の存在を検出した。図5A:比色法を用いたHPV18−E6タンパク質(菱形の点)及びHPV16−E6(四角の点)についての標準曲線;図5B:発光法を用いた種々の希釈(菱形の点:200倍希釈、四角の点:1000倍希釈、及び三角の点:5000倍希釈)のHPV18−E6タンパク質についての標準曲線;図5C:発光法を用いたHPV16−E6タンパク質についての標準曲線;図5D:比色法を用いたHPV18−E7タンパク質(菱形の点)とHPV16−E7タンパク質(四角の点)についての標準曲線;図5E:発光法を用いた種々の希釈(菱形の点:200倍希釈、四角の点:1000倍希釈、及び三角の点:5000倍希釈)のHPV18−E7タンパク質についての標準曲線;図5F:発光法を用いたHPV16−E7タンパク質についての標準曲線。これらの標準曲線は、臨床試料で発現されるHPV−E6又はHPV−E7の量を推定するのに使用した。発現されたHPV−E6又はHPV−E7タンパク質の量に基づいて臨床試料を子宮頸癌進展の様々なステージに分類した。本発明に記載される方法によって疾患の悪性度に相関した臨床試料にてHPVタンパク質の定量が可能になる。
本実施例に記載される手順及び結果は、精製組換えHPVタンパク質への抗HPV抗体の特異的な結合から得られるHPVタンパク質の発現レベルの量を表す吸収シグナル及び発光シグナルの強度を用いて少なくともHPV18−E6、HPV18−E7、HPV16−E6及びHPV16−E7についてのHPVタンパク質標準曲線を生成する方法を明らかにしている。これらのHPVタンパク質標準曲線を用いて、臨床試料で得られるシグナル強度を比較し、本出願に記載されるような全細胞ELISAアッセイで使用される臨床試料中のHPV感染細胞におけるHPVタンパク質の発現レベルを推定した。