上述およびその他の特徴を、以下の詳細な説明により具体的に示す。
驚くべきことに、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマー(本明細書では、軟質ブロック単位を有するポリエステル-ポリカーボネートとも呼ばれる)を含む熱可塑性組成物は、成型したときに、光学レンズの適用例で必要とされる曲面の優れた複製をもたらすことが見出された。熱可塑性組成物は、薄肉物品を調製するのに適した高度な型充填を示し、望ましくは、成型再現性のある成型された物品において優れた表面平滑性と、優れた離型特性とを有する。光学レンズの適用例では、標準的な光学グレードのポリカーボネートに対して高い透明度(即ち、ASTM D1003-00に従い3.2mmのプラーク板に関して測定された、85%以上の高い透過率および1%未満の低いヘイズ)および低い複屈折など、熱可塑性組成物の優れた光学的性質も重要である。熱可塑性組成物は、望ましくは、光学的、機械的、および表面仕上げの性質を犠牲にすることなく、高い溶融流動性(1.2Kgの荷重の下および250℃の温度で測定された、10分当たり13から25立方センチメートル(cc/10分))を有する。
熱可塑性組成物から調製された光学レンズは、望ましくは、0.5から100mm2の有効表面積(入射光を屈折させる、レンズの使用可能な表面積と定義される)と、0.25mmから2.5mmのレンズ厚(最小限に屈折した入射光の光路に平行に、レンズの中心を通して測定された)とを有する。熱可塑性組成物から成型された光学レンズは、優れた機械的性質、低い複屈折、および優れた化学的および寸法的安定性を示す。
本明細書の物品(例えば、光学レンズ)が成型される熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを含む。一般に、本明細書で使用される「ポリカーボネート」という用語または接尾語は、式(1):
(式中、R1基の総数の少なくとも60パーセントが芳香族有機基であり、その残りは脂肪族、脂環式、または芳香族基である)の反復構造カーボネート単位を有する組成物を意味する。一実施形態では、各R1が芳香族有機基、例えば式(2):
-A1-Y1-A2- (2)
(式中、A1およびA2のそれぞれは、単環式2価アリール残基であり、Y1は、A1をA2から切り離す1個または2個の原子を有する架橋基である)の残基である。例示的な実施形態では、1個の原子がA1をA2から切り離す。このタイプの基の例示的な非限定的な例は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-C(O)-、メチレン、シクロヘキシル-メチレン、2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンである。架橋基Y1は、炭化水素基、またはメチレン、シクロヘキシリデン、もしくはイソプロピリデンなどの飽和炭化水素基であってもよい。
ポリカーボネートは、式(3):
HO-A1-Y1-A2-OH (3)
(式中、Y1、A1、およびA2は上述の通りである)のジヒドロキシ化合物を含む、式HO-R1-OHを有するジヒドロキシ化合物の反応によって生成されてもよい。一般式(4)のビスフェノール化合物も含まれ:
上式で、RaおよびRbはそれぞれ、ハロゲン原子または1価の炭化水素基を表し、これらは同じでも異なっていてもよく; pおよびqはそれぞれ独立して0から4の整数であり; Xaは、式(5):
(式中、RcおよびRdはそれぞれ独立して、水素原子または1価の直鎖状若しくは環状炭化水素基を表し、Reは、2価の炭化水素基である)の基の1つを表す。
ある実施形態において、ヘテロ原子含有環状アルキリデン基は、価数が2以上の少なくとも1個のヘテロ原子と、少なくとも2個の炭素原子とを含む。ヘテロ原子含有環状アルキリデン基で使用されるヘテロ原子は、-O-、-S-、および-N(Z)-を含み、但しZは、水素、ヒドロキシ、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシ、またはC1〜12アシルから選択された置換基である。存在する場合、環状アルキリデン基またはヘテロ原子含有環状アルキリデン基は、3から20個の原子を有していてもよく、単一の飽和または不飽和環であってもよく、または、縮合環が飽和しており、不飽和であり、または芳香族である縮合多環式環系であってもよい。
置換または非置換のシクロヘキサン単位を含有するその他のビスフェノール、例えば式(6):
(式中、各Rfは独立して水素、C1〜12アルキル、またはハロゲンであり;各Rgは独立して水素またはC1〜12アルキルである)のビスフェノールを使用することができる。置換基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環状、2環式、分枝状、飽和、又は不飽和であってもよい。そのようなシクロヘキサン含有ビスフェノール、例えばフェノール2モルと水素化イソフォロン1モルとの反応生成物は、ガラス転移温度が高くかつ加熱撓み温度が高いポリカーボネートポリマーを作製するのに有用である。シクロヘキシルビスフェノールを含有するポリカーボネート、または前述の少なくとも1つとその他のビスフェノールポリカーボネートとを含む組合せは、APEC(登録商標)という商標名の下、Bayer Co.から供給される。
式HO-R1-OHを有するその他の有用なジヒドロキシ化合物は、式(7):
(式中、各Rhは独立して、ハロゲン原子、C1〜10アルキル基などのC1〜10ヒドロカルビル、ハロゲン置換C1〜10アルキル基などのハロゲン置換C1〜10ヒドロカルビルであり、nは0から4である)の芳香族ジヒドロキシ化合物を含む。ハロゲンは、通常は臭素である。
例示的なジヒドロキシ化合物は、下記の化合物:4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(α、α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6'-ジヒドロキシ-3,3,3',3'-テトラメチルスピロ(ビス)インダン("スピロビインダンビスフェノール")、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9、10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾール、レゾルシノール、置換レゾルシノール化合物、例えば5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、または2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなど;カテコール;ヒドロキノン;置換ヒドロキノン、例えば2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、および2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなど、ならびに前述のジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を含む組合せを含む。
式(3)によって表すことができるビスフェノール化合物の具体的な例には、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以後、「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)が含まれる。前述のジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を含む組合せを使用してもよい。
特定の実施形態では、式(4)中のXaは、置換された、縮合C5〜18ヘテロシクロアルキリデンである。特定の実施形態では、置換された縮合C5〜18ヘテロシクロアルキリデン含むジヒドロキシ芳香族モノマーは、式(8):
(式中、Ri、Rj、およびRkは独立してC1〜12ヒドロカルビルであり、GはC1〜12アルキルまたはC6〜18芳香族基であり、u、v、およびwはそれぞれ独立して、0から4の整数である)
の2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジン(2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オンとも呼ばれる)である。例示的な実施形態では、ジヒドロキシ芳香族モノマーが、式(8):
を有する2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)である。
上述のポリカーボネートに加え、ポリカーボネートとその他の熱可塑性ポリマーとの組合せ、例えばホモポリカーボネートおよび/またはポリカーボネートコポリマーとの組合せを使用してもよい。
ポリカーボネートが含まれる特定の実施形態では、ポリカーボネートは、ビスフェノールAから誘導された直鎖状ホモポリマーであってもよく、A1およびA2のそれぞれはp-フェニレンであり、Y1はイソプロピリデンである。ポリカーボネートは一般に、25℃のクロロホルム中で決定された場合に1グラム当たり0.3から1.5デシリットル(dl/g)、特に0.45から1.0dl/gの固有粘度を有していてもよい。ポリカーボネートは、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、1ミリリットル当たり1ミリグラムのサンプル濃度でかつポリカーボネート標準で較正した状態で測定された場合、10,000から100,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。
ある実施形態では、ポリカーボネートは、指定された温度および荷重でオリフィスを通る熱可塑性樹脂の押出し速度を測定する、メルトボリュームフローレイト(しばしば、MVRと略される)を有していてもよい。物品の形成に有用なポリカーボネートは、ASTM D1238-04またはISO 1133に従い1.2Kgの荷重の下300℃で測定された、10分当たり0.5から80立方センチメートル(cc/分)のMVRを有していてもよい。ポリカーボネートがポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの他にも使用される特定の実施形態では、ポリカーボネート(またはポリカーボネートの組合せ、即ち、ポリカーボネート組成物)が、ASTM D1238-04またはISO 1133に従い1.2Kgの荷重の下300℃で測定された、45から75cc/10分、特に50から70cc/10分、より特別には55から65cc/10分のMVRを有する。
本明細書で使用される「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」は、ホモポリカーボネート、カーボネート中に異なるR1部分を含むコポリマー(本明細書では「コポリカーボネート」と呼ばれる)、カーボネート単位およびエステル単位やポリシロキサン単位などのその他のタイプのポリマー単位を含むコポリマー、ホモポリカーボネートとコポリカーボネートとの少なくとも1種を含む組合せをさらに含む。本明細書で使用される「組合せ」は、ブレンド、混合物、アロイ、および反応生成物などを含む。特定のタイプのコポリマーは、ポリエステル-ポリカーボネートとしても知られているポリエステルカーボネートである。そのようなコポリマーは、式(1)の反復カーボネート鎖単位の他に、式(9):
(式中、R2は、ジヒドロキシ化合物から誘導された2価の基であり、例えばC2〜10アルキレン基、C6〜20脂環式基、C6〜20芳香族基、またはポリオキシアルキレン基であって、アルキレン基が2から約6個の炭素原子、特に2、3、または4個の炭素原子を含有するものであってもよく; Tは、ジカルボン酸(脂肪族、芳香族、またはアルキル芳香族)から誘導された2価の基であり、例えばC4〜18脂肪族基、C6〜20アルキレン基、C6〜20アルキレン基、C6〜20脂環式基、C6〜20アルキル芳香族基、またはC6〜20芳香族基であってもよい)の単位をさらに含有する。コポリマーは、少なくとも2個の異なるモノマーを含有するポリマーと定義される。コポリマーが3個の異なるモノマーを含有する場合は、ターポリマーと呼ぶこともできる。ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーという用語におけるポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートという用語は、ポリマー中に含有される構成成分を記述する用語であるが、コポリマーは、これらの構成成分を含有するポリマーに必ず限定されると解釈されるべきではない。
R2は、直鎖、分枝鎖、または環状(多環式を含む)構造を有するC2〜30アルキレン基であってもよい。あるいはR2は、上記式(4)の芳香族ジヒドロキシ化合物から、または上記式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されてもよい。
ポリエステル単位を調製するのに使用してもよい芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-ビス安息香酸、および前述の酸の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。1,4-、1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸など、縮合環を含有する酸を存在させることもできる。特定のジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらの組合せである。特定のジカルボン酸は、イソフタル酸およびテレフタル酸の組合せを含み、イソフタル酸とテレフタル酸との重量比は約91:9から約2:98である。別の特定の実施形態では、R2がC2〜6アルキレン基であり、Tがp-フェニレン、m-フェニレン、ナフタレン、2価の脂環式基、またはこれらの組合せである。この種類のポリエステルには、ポリ(アルキレンテレフタレート)が含まれる。
コポリマー中のエステル単位とカーボネート単位とのモル比は非常に多様であってもよく、例えば、最終組成物の所望の性質に応じて1:99から99:1、特に10:90から90:10、より具体的には25:75から75:25であってもよい。
ある実施形態では、熱可塑性組成物は、ポリエステル-ポリカーボネートコポリマー、特に、式(9)のエステル単位が、本明細書では脂肪族ジカルボン酸エステル単位とも呼ばれる軟質ブロックエステル単位を含むポリエステル-ポリカーボネートコポリマーを含む。軟質ブロックエステル単位を含む、そのようなポリエステル-ポリカーボネートコポリマーは、本明細書ではポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートとも呼ばれる。
ある実施形態では、軟質ブロックエステル単位は、C6〜20脂肪族ジカルボン酸エステル単位を含むことができ(C6〜20は、末端カルボキシル基を含む)、直鎖(即ち、非分枝状)または分枝鎖ジカルボン酸、シクロアルキルまたはシクロアルキリデン含有ジカルボン酸単位、またはこれらの構造単位の組合せであってもよい。ある実施形態では、C6〜20脂肪族ジカルボン酸エステル単位は、メチレン(-CH2-)反復単位を含む直鎖アルキレン基を含む。
特定の実施形態では、有用な軟質ブロックエステル単位は、式(9a):
(式中、mは4から18である)の単位を含む。式(9a)の特定の実施形態では、mが8から10である。
ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、軟質ブロック単位を25重量%以下含むことができる。ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、式(9a)の単位を、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの全重量に対して0.5から10重量%、特に1から9重量%、より具体的には3から8重量%の量で含む。
ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、軟質ブロックエステル単位およびカーボネート単位のコポリマーである。ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、式(9b):
(式中、各R3は独立して、式(4)または(7)のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導され、mは4から18であり、xおよびyはそれぞれ、実施形態においてポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの平均重量パーセンテージを表し、平均重量パーセンテージの比x:yは、10:90から0.5:99.5、特に9:91から1:99、より具体的には8:92から3:97であり、x+yは100である)
で示される。別の実施形態では、式(9b)中の各R3は独立して、式(8)のジヒドロキシ芳香族化合物から、単独でまたは式(4)もしくは(7)の別の同一ではないジヒドロキシ芳香族化合物式と組み合わせて誘導される。別の実施形態においても、xおよびyはそれぞれ、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの平均重量パーセンテージを表すことができ、平均重量パーセンテージの比x:yは、2:98から32:68であり、x+yは100である。別の実施形態では、xおよびyはそれぞれ、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの平均モルパーセンテージを表すことができ、平均モルパーセントの比x:yは7.5:92.5から30:70であり、x+yは100である。
本明細書で定義される軟質ブロックエステル単位は、α,ωC6〜20脂肪族ジカルボン酸またはその反応性誘導体から誘導することができる。特定の実施形態では、軟質ブロックエステル単位は、α,ωC10〜12脂肪族ジカルボン酸またはその反応性誘導体から誘導することができる。別の特定の実施形態では、末端カルボキシレート基が反復メチレン(-CH2-)単位(mは式(9a)に関して定義された通りである)の鎖により接続されている式(9a)の脂肪族エステル単位のカルボキシレート部分が、対応するジカルボン酸またはその反応性誘導体、例えば酸ハロゲン化物(特に、酸塩化物)またはエステルなどから誘導される。したがって、ある実施形態では、式(9a)の軟質ブロック単位は、式(9c):
(式中、mは4から18である)
の、対応する非分枝状α-ω脂肪族ジカルボン酸のエステル化から誘導される。
例示的なα,ωジカルボン酸(そこから、対応する酸塩化物を誘導することができる)には、ヘキサン二酸(アジピン酸とも呼ばれる)などのα,ωC6ジカルボン酸;デカン二酸(セバシン酸とも呼ばれる)などのα,ωC10ジカルボン酸;ドデカン二酸(場合によってDDDAと略される)などのα,ωC12ジカルボン酸、およびヘキサデカン二酸(場合によってHDDAと略される)α,ωC16ジカルボン酸が含まれる。脂肪族ジカルボン酸は、これらの例示的な炭素鎖長に限定されず、C6〜20の限度内にあるその他の鎖長を使用してもよいことが理解されよう。直鎖メチレン基およびビスフェノールAポリカーボネート基を含む軟質ブロックエステル単位を有するポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの特定の実施形態を、式(9d):
(式中、mは4から18であり、xおよびyは式(9b)に関して定義された通りである)に示す。特定の例示的な実施形態では、有用なポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーが、セバシン酸エステル単位およびビスフェノールAカーボネート単位(式(9d)、mは8であり、x:yの平均重量比は6:94である)を含む。
ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、110から145℃、特に115から145℃、より具体的には120から145℃、より具体的には128から139℃、さらにより具体的には130から139℃のガラス転移温度(Tg)を有することが望ましい。
別の実施形態では、ポリエステル-ポリカーボネートコポリマーが、C6〜44脂肪族ジカルボン酸をベースにした式(9)のエステル軟質ブロックを含む。ある実施形態では、C6〜44脂肪族ジカルボン酸は、上述の直鎖α,ωC6〜20脂肪族ジカルボン酸をベースにした式(9a)のエステル単位とすることができる。別の実施形態では、C6〜44脂肪族ジカルボン酸エステル単位は、式(9e):
(式中、mおよびm'は独立して0から38であり、nおよびn'は独立して0から38であり、合計m+m'+n+n'は、8から38の整数である)
の分枝鎖C14〜44脂肪族ジカルボン酸エステル単位とすることができる。特定の実施形態では、脂肪族ジカルボン酸は、合計m+m'+n+n'が14から38の整数であるC20〜44脂肪族ジカルボン酸である。より具体的な実施形態では、脂肪族ジカルボン酸は、合計m+m'+n+n'が15から38の整数であるC21〜44脂肪族ジカルボン酸である。さらにより具体的な実施形態では、脂肪族ジカルボン酸は、合計m+m'+n+n'が16から38の整数であるC22〜44脂肪族ジカルボン酸である。ある実施形態では、式(9e)の脂肪族ジカルボン酸は分枝状である。
別の特定の実施形態では、C36脂肪族ジカルボン酸エステル単位は、mおよびm'が独立して0から30であり、nおよびn'が独立して0から30であり、合計m+m'+n+n'が30である式(9e)の構造を有する。別の特定の実施形態では、C36脂肪族ジカルボン酸エステル単位は、mおよびm'のそれぞれが独立して5から10であり、nおよびn'のそれぞれが独立して5から10であり、合計m+m'+n+n'が30である式(9e)の構造を有する。例示的な実施形態では、C36脂肪族ジカルボン酸エステル単位において、mおよびm'は独立して7または8であり、nおよびn'は独立して7または8であり、合計m+m'+n+n'が30である。別の特定の実施形態では、C44脂肪族ジカルボン酸エステル単位は、mおよびm'が独立して0から30であり、nおよびn'が独立して0から30であり、合計m+m'+n+n'が38である式(9e)の構造を有する。例示的な実施形態では、C44脂肪族ジカルボン酸エステル単位において、mおよびm'は独立して12または13であり、nおよびn'は独立して6または7であり、合計m+m'+n+n'は38である。そのような二酸は、一般にダイマー脂肪酸とも呼ばれ、容易に入手可能である生物学的に誘導された原料の縮合から誘導することができる。
ある実施形態では、C6〜44脂肪族ジカルボン酸エステル単位を有するポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートが、軟質ブロックエステル単位およびカーボネート単位のコポリマーである。ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを、式(9f):
(式中、各R3は独立して、式(8)のジヒドロキシ芳香族化合物から、単独で、または式(4)もしくは(7)の別の同一ではないジヒドロキシ芳香族化合物と組み合わせて誘導され、m、m'、n、およびn'は、式(9e)に関して定義された通りである)
に示す。一実施形態では、zおよびyはそれぞれ、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの平均重量パーセンテージを表すことができ、平均重量パーセンテージの比z:yは2:98から32:68であり、z+yは100である。別の実施形態では、zおよびyはそれぞれ、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの平均モルパーセンテージを表すことができ、平均モルパーセンテージの比z:yは7.5:92.5から30:70であり、z+yは100である。
式(9e)の軟質ブロック単位は、式(9g):
(式中、m、m'、n、およびn'は、式(9e)に関して定義された通りである)
の、対応するカルボン酸のエステル化から誘導される。
ある実施形態では、式(9g)の脂肪族ジカルボン酸は、2種の不飽和脂肪族酸の付加反応から誘導することができる。本明細書で使用される「不飽和」は、一不飽和、二不飽和、三不飽和、多価不飽和、または前述の少なくとも1種の組合せを意味することができる。脂肪族ジカルボン酸中の不飽和部位に関して、シス異性体、トランス異性体、またはシスおよびトランス異性体の組合せは、反応物不飽和脂肪族酸中に存在することができ(例えば、単一の脂肪族ジカルボン酸は、シスおよびトランス異性体化二重結合のそれぞれの少なくとも1つを有することができる)、または、不飽和脂肪族酸の異なる異性体を組み合わせることができる(例えば、トランス脂肪族酸とシス脂肪族酸との組合せが使用される)ことが理解されよう。反応して脂肪族ジカルボン酸を形成することができる脂肪族酸は、反応した不飽和酸において炭素を合わせた数が、得られる脂肪族ジカルボン酸がC14〜44二酸になるように選択されることを前提として、C3〜37不飽和酸、特にC4〜30不飽和酸、より具体的にはC6〜22不飽和酸、さらにより具体的にはC12〜22不飽和酸を含むことができる。
特定の実施形態では、有用な脂肪族ジカルボン酸は、オレイン酸、リノール酸、またはこれらの組合せなど、2種のC18不飽和酸の反応から得ることができるC36脂肪族ジカルボン酸である。別の特定の実施形態では、有用な脂肪族ジカルボン酸は、C44脂肪族ジカルボン酸である。他の特定の実施形態では、C44脂肪族ジカルボン酸は、エルカ酸(C22)のダイマー化によって調製することができる。天然の供給源から誘導されたダイマー脂肪酸は、Uniqema、Cognis、およびOleonを含む化学薬品供給元から市販されている。
したがって、ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、C6〜44脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体から誘導された軟質ブロックエステル単位、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンから誘導されたカーボネート単位、およびジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されたカーボネート単位を含む。本明細書においてポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートで使用されるように、ジヒドロキシ芳香族化合物および2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンは、同一ではない。別の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、本質的に、C6〜44脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体から誘導された軟質ブロックエステル単位、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジン、およびジヒドロキシ芳香族化合物からなる。さらに別の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、C6〜44脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体から誘導された軟質ブロックエステル単位、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジン、およびジヒドロキシ芳香族化合物からなる。例示的な実施形態では、C6〜44脂肪族ジカルボン酸は、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、C36脂肪族ジカルボン酸(場合によっては、単にC36二酸と呼ばれる)、または前述の少なくとも1種を含む組合せを含む。
ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのモノマー単位100重量パーセントに対して、モノマー単位として軟質ブロックエステル単位を10から32重量%、特に10から30重量%、より具体的には10から25重量%、より具体的には10から20重量%、さらにより具体的には12から20重量%含む。
また別の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのモノマー単位100重量パーセントに対して、モノマー単位として2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンを19から77重量%、特に34から77重量%、より具体的には34から75重量%、より具体的には34から70重量%、さらにより具体的には34から60重量%、さらにより具体的には34から53重量%含む。
また別の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのモノマー単位100重量パーセントに対して0から76重量%、より具体的には0から65重量%、さらにより具体的には0から58重量%含む。ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートがターポリマーである特定の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのモノマー単位100重量パーセントに対して、ジヒドロキシ芳香族化合物を10から58重量%、より具体的には20から58重量%、さらにより具体的には33から58重量%、さらにより具体的には34から53重量%含む。
ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、本明細書で企図される適用例に関して、特にレンズの適用例に関して、1.590以上の屈折率(RI)と、標準的な光学グレードのビスフェノールAポリカーボネートの場合よりも低い、測定された複屈折とを有することが望ましい。
下記の積:
BR=(一部の屈折率)×(部分厚)
と定義することができかつ厚さの単位(本明細書では、ナノメートル、「nm」と略される)で表すことができる複屈折(本明細書では「光学遅延」とも呼ばれる)は、成型条件に強く依存する。成型物品の等方性のレベルが高くなるほど(即ち、均一性が高くなるほど)、複屈折はより低くなる。成型パラメーターを、例えばより高い成型温度の使用または保持時間の短縮により変更することによって、成型物品の等方性を促進させることができる。特に、本明細書に開示されるポリマー組成物の場合、押出し機のバレル温度を上昇させかつ成型温度を上昇させることにより調製された物品は、複屈折の著しい低下を示す。成型されたプラスチックの低い複屈折は、低い光の歪みおよびより良好な品質の画像をもたらす。さらに、成型中のレンズなどの部品の複製は、一貫した製品の性質に必須であるので、ポリマーの加工性(即ち、流動性)は重要な追加の要件である。155℃よりも低いガラス転移温度(Tg)と、十分な流動性を目的として十分に低い分子量(例えば、25,000g/mol以下のMw)が、必要とされる。複屈折は、ポリマー形状がその流動性に及ぼす異方性効果により生じてもよく、射出成型されたプラスチック(例えば、成型されたレンズなど)のポリマー鎖は、流動方向に沿って配向する。望ましくは、高い流動性はより多くのランダム化とより低い配向度をもたらし、したがってより低い複屈折は、より高い流動性の材料に関連付けられる。耐熱性も必要とされ、PMMAなどの典型的な光学グレード熱可塑性樹脂は、そのような適用例に典型的には適していない。したがって、少なくとも120℃の加熱撓み温度に基づく熱安定性が、この適用例に必要である。
驚くべきことに、C14〜44脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体から誘導された軟質ブロックエステル単位、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンから誘導されたカーボネート単位、および2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンと同一ではないジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されたカーボネート単位を含むポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、レンズの厚さをできる限り薄く、最小限に抑えるのに十分高い屈折率(例えば、1.590以上)を維持しながら、同等のしかし軟質ブロックエステル単位を有していないポリカーボネートの場合よりも低いガラス転移温度および複屈折を含む、望ましい性質を保有することが見出された。流動性を増大させかつTgを低下させる脂肪族軟質ブロックの組合せは、低い複屈折および高い屈折率の2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンモノマー(例えば、PPPBPなど)の望ましい性質と共に、軟質ブロックを10重量%超および2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンを34重量%超の量でポリマー中で組み合わせたときには、光学的適用例、特に本明細書に記述されるカメラレンズの性能要件を満たすコポリマーまたはターポリマーを提供する。エステル結合の量が増加すると、ポリマーの分解および成型物品(例えば、レンズ)の黄色度が増大する可能性があることが観察された。したがって、望ましくは、エステル官能基の含量は、組成物に高い安定性をもたらすためにできる限り低い濃度で維持されるべきであり、これは、より高い炭素含量(例えば、C36)の軟質ブロック単位を使用することによって、最も容易に実現される。
ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ポリカーボネート標準に較正された架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用したゲル透過クロマトグラフィーにより測定されたとき、7,500から60,000g/mol、特に10,000から50,000g/mol、さらにより具体的には10,000から25,000g/mol、さらにより具体的には12,000から23,000g/molの重量平均分子量を有する。
ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、155℃以下、特に150℃以下、さらにより具体的には145℃以下のガラス転移温度を有する。別の実施形態では、ガラス転移温度は80℃以上であり、特に90℃以上であり、より具体的には100℃以上であり、さらにより具体的には110℃以上である。特定の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、120℃超から155℃、より具体的には125から152℃、より具体的には130から150℃、より具体的には135から145℃、さらにより具体的には135から140℃のガラス転移温度を有する。
ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、1.560以上の、特に1.570以上の、より具体的には1.580以上の、マルチアングルエリプソメトリーにより測定された屈折率を有する。特定の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、1.590以上の、特に1.595以上の、さらにより具体的には1.600以上の屈折率を有する。
ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの薄膜の固有複屈折は、UV-VISスペクトル(約200nmから約750nm)上で偏光光線を使用するマルチアングルエリプソメトリーにより測定された、擦られた方向と擦られた方向に直角な方向(即ち、薄膜のx-y平面において、直交している)との間の屈折率の差によって、一方向に擦られた250から500nmの厚さを有するポリマーの流延薄膜から測定することができる。ある実施形態では、250から500nmの厚さを有しかつ飽和点まで擦られたポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの薄膜は、0.015以下、特に0.014以下、より具体的には0.013以下、さらにより具体的には0.012以下の固有複屈折を有する。
ある実施形態では、1.2mmの厚さを有しかつバレル温度300℃および型温100℃でポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを含む熱可塑性組成物から成型されたプラーク板は、Michel-Levy複屈折スケールを使用して偏光顕微鏡により測定された、300nm以下、特に250nm以下、より具体的には200nm以下の相対平均複屈折を有する。
別の実施形態では、0.5mm2から100mm2の有効レンズ面積を有し、かつポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを含む熱可塑性組成物から押出し機バレル温度300℃で成型され、かつ平行Nicols法により波長590nmで複屈折に関して測定されたカメラレンズは、90nm以下、特に88nm以下、より具体的には85nm以下の複屈折を有する。
ポリエステル-ポリカーボネートを含むポリカーボネートは、界面重合および溶融重合などの方法によって製造することができる。界面重合の反応条件は様々にすることができるが、例示的な方法は一般に、2価フェノール反応物を水性苛性ソーダまたはカリに溶解しまたは分散させる工程と、得られた混合物を適切な水不混和性溶媒媒体に添加する工程と、反応物およびカーボネート前駆体を、トリエチルアミンまたは相間移動触媒などの触媒の存在下、制御されたpH条件下で、例えば約8から約10で接触させる工程とを含む。最も一般に使用された水不混和性溶媒には、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、およびトルエンなどが含まれる。
カーボネート前駆体には、例えば、臭化カルボニルもしくは塩化カルボニルなどのカルボニルハロゲン化物、または、2価フェノールのビスハロホルメート(例えば、ビスフェノールAやヒドロキノンなどのビスクロロホルメート)もしくはグリコールのビスハロホルメート(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、またはポリエチレングリコールのビスハロホルメート)などのハロホルメートが含まれる。カーボネート前駆体の前述のタイプの少なくとも1種を含む組合せを、使用してもよい。例示的な実施形態では、カーボネート結合を形成する界面重合反応は、カーボネート前駆体としてホスゲンを使用し、ホスゲン化反応と呼ばれる。
使用してもよい相間移動触媒の中には、式(R3)4Q+X (式中、各R3は、同じでありまたは異なっており、かつC1〜10アルキル基であり; Qは、窒素またはリン原子であり; Xは、ハロゲン原子またはC1〜8アルコキシ基またはC6〜18アリールオキシ基である)の触媒がある。有用な相間移動触媒には、例えば、[CH3(CH2)3]4NX、[CH3(CH2)3]4PX、[CH3(CH2)5]4NX、[CH3(CH2)6]4NX、[CH3(CH2)4]4NX、CH3[CH3(CH2)3]3NX、およびCH3[CH3(CH2)2]3NX (式中、XはCl-、Br-、C1〜8アルコキシ基、またはC6〜18アリールオキシ基である)が含まれる。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量に対して約0.1から約10重量%であってもよい。別の実施形態では、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量に対して約0.5から約2重量%であってもよい。
全てのタイプのポリカーボネート末端基は、そのような末端基が組成物の所望の性質に著しく悪影響を及ぼさないという条件で、ポリカーボネート組成物で有用であることが企図される。
分枝状ポリカーボネートブロックは、重合中に分枝剤を添加することによって調製されてもよい。これらの分枝剤は、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、および前述の官能基の混合物から選択された少なくとも3個の官能基を含有する多官能性有機化合物を含む。特定の例には、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、トリメリット酸三塩化物、トリス-p-ヒドロキシフェニルエタン、イサチン-ビス-フェノール、トリス-フェノールTC (1,3,5-トリス((p-ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス-フェノールPA (4(4(1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)-エチル)α,α-ジメチルベンジル)フェノール)、4-クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が含まれる。分枝剤は、約0.05から約2.0重量%のレベルで添加されてもよい。線状ポリカーボネートおよび分枝状ポリカーボネートを含む混合物を使用してもよい。
連鎖停止剤(キャッピング剤とも呼ばれる)を、重合中に含めてもよい。連鎖停止剤は、分子量成長速度を制限し、したがってポリカーボネートにおける分子量を制御する。例示的な連鎖停止剤は、ある特定のモノフェノール化合物、モノカルボン酸塩化物、および/またはモノクロロホルメートを含む。モノフェノール連鎖停止剤としては、フェノールなどの単環式フェノール、p-クミル-フェノール、モノ安息香酸レゾルシノール、p-およびtert-ブチルフェノールなどのC1〜C22アルキル置換フェノール; およびp-メトキシフェノールなどのジフェノールのモノエーテルが挙げられる。8から9個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル置換基を含むアルキル置換フェノールを、特に挙げることができる。ある特定のモノフェノールUV吸収剤、例えば、4置換-2-ヒドロキシベンゾフェノンおよびその誘導体、アリールサリチレート、ジフェノールのモノエステル、例えばモノ安息香酸レゾルシノール、2-(2-ヒドロキシアリール)-ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、2-(2-ヒドロキシアリール)-1,3,5-トリアジンおよびその誘導体などを、キャッピング剤として使用してもよい。
モノカルボン酸塩化物を、連鎖停止剤として使用してもよい。これらには、単環式モノカルボン酸塩化物、例えば塩化ベンゾイル、C1〜C22アルキル置換塩化ベンゾイル、塩化トルオイル、ハロゲン置換塩化ベンゾイル、塩化ブロモベンゾイル、塩化シンナモイル、4-ナジミドベンゾイル塩化物、およびこれらの組合せ;多環式モノカルボン酸塩化物、例えばトリメリット酸無水物塩化物、および塩化ナフトイル;単環式および多環式のモノカルボン酸塩化物の組合せが含まれる。約22個以下の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸の塩化物が有用である。塩化アクリロイルおよび塩化メタクリロイルなど、脂肪族モノカルボン酸の官能化塩化物も有用である。フェニルクロロホルメート、アルキル置換フェニルクロロホルメート、p-クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメート、およびこれらの組合せなどの単環式モノクロロホルメートを含むモノクロロホルメートも有用である。
あるいは、ポリカーボネートまたはポリエステル-ポリカーボネートを作製するのに溶融法を使用してもよい。一般に、溶融重合法において、ポリカーボネートは、均一な分散体を形成するために、ジヒドロキシ反応物とジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートエステルとを、溶融状態でエステル交換触媒の存在下、BANBURY(登録商標)ミキサーまたは2軸押出し機などで共反応させることにより調製してもよい。揮発性1価フェノールは、溶融反応物から蒸留によって除去され、ポリマーは溶融残渣として単離される。ポリカーボネートを作製するのに特に有用な溶融法は、アリール上に電子求引置換基を有するジアリールカーボネートエステルを使用する。電子求引置換基を有する特に有用なジアリールカーボネートエステルの例には、ビス(4-ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2-クロロフェニル)カーボネート、ビス(4-クロロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、ビス(4-メチルカルボキシルフェニル)カーボネート、ビス(2-アセチルフェニル)カルボキシレート、ビス(4-アセチルフェニル)カルボキシレート、または前述の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。さらに、使用されるエステル交換触媒は、上記の式(R3)4Q+X (式中、各R3、Q、およびXは、上記にて定義された通りである)の相間移動触媒を含んでいてもよい。エステル交換触媒の例には、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムフェノレート、または前述の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
特に、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを含むポリエステル-ポリカーボネートは、界面重合によって調製することができる。ジカルボン酸(α,ωC6〜20脂肪族ジカルボン酸など)そのものを利用するのではなく、対応するジカルボン酸ハロゲン化物、特に酸二塩化物および酸二臭化物など、ジカルボン酸の反応性誘導体を用いることが可能であり、場合によっては好ましくもある。したがって、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、または前述の少なくとも1種を含む組合せ(ポリ(アリーレートエステル)-ポリカーボネートに関して)を使用する代わりに、イソフタロイルジクロライド、テレフタロイルジクロライド、および前述の少なくとも1種を含む組合せを用いることが可能である。同様に、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートでは、例えばC6ジカルボン酸塩化物(塩化アジポイル)、C10ジカルボン酸塩化物(塩化セバコイル)、またはC12ジカルボン酸塩化物(塩化ドデカンジオイル)などの酸塩化物誘導体を使用することが可能であり、望ましくもある。ジカルボン酸または反応性誘導体は、最初の縮合でジヒドロキシ芳香族化合物と縮合させ、その後、in situホスゲン化を行って、ジヒドロキシ芳香族化合物とのカーボネート結合を発生させてもよい。あるいは、ジカルボン酸または誘導体を、ホスゲン化と同時に、ジヒドロキシ芳香族化合物と縮合させてもよい。
他の点では組成的に適切なポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのメルトボリュームフローレイトが、適切に高くないある実施形態では、即ちMVRが、1.2Kgの荷重の下、250℃で測定されたときに13cc/10分未満である実施形態では、反応押出しの条件下で再分配触媒を使用して処理することにより、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを変性させて、より高い流動性(即ち、1.2Kgの荷重の下、250℃で測定されたとき、13cc/10分以上である)を有する反応生成物を得ることができる。反応押出し中、再分配触媒は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートが供給されている押出し機内に再分配触媒の希釈水溶液を射出することにより、400重量ppm以下の少量で、典型的には含まれる。
ある実施形態では、再分配触媒は、テトラアルキルホスホニウムヒドロキシド、テトラアルキルホスホニウムアルコキシド、テトラアルキルホスホニウムアリールオキシド、テトラアルキルホスホニウムカーボネート、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラアルキルアンモニウムカーボネート、テトラアルキルアンモニウムホスファイト、テトラアルキルアンモニウムアセテート、または前述の触媒の少なくとも1種を含む組合せであり、各アルキルは独立して、C1〜6アルキルである。特定の実施形態では、有用な再分配触媒は、テトラC1〜6アルキルホスホニウムヒドロキシド、C1〜6アルキルホスホニウムフェノキシド、または前述の触媒の1種または複数を含む組合せである。例示的な再分配触媒は、テトラ-n-ブチルホスホニウムヒドロキシドである。
ある実施形態では、再分配触媒は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの重量に対して、重量で40から120ppm、特に40から110ppm、より具体的には40から100ppmの量で存在する。
上記にて広く定義されるポリカーボネートは、上記ポリカーボネートとポリエステルとのブレンドをさらに含んでいてもよい。有用なポリエステルには、例えば、式(9)の反復単位を有するポリエステルを含めてもよく、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル、およびポリエステルコポリマーが含まれる。本明細書に記述されるポリエステルは、一般に、ブレンドされた場合はポリカーボネートと完全に混和性になる。
そのようなポリエステルは、一般に、芳香族ポリエステル、ポリ(アルキレンアリーレート)を含むポリ(アルキレンエステル)、およびポリ(シクロアルキレンジエステル)を含む。芳香族ポリエステルは、式(9) (式中、DおよびTはそれぞれ、上述の芳香族基である)によるポリエステル構造を有していてもよい。ある実施形態では、有用な芳香族ポリエステルは、例えば、ポリ(イソフタレート-テレフタレート-レゾルシノール)エステル、ポリ(イソフタレート-テレフタレート-ビスフェノールA)エステル、ポリ[(イソフタレート-テレフタレート-レゾルシノール)エステル-co-(イソフタレート-テレフタレート-ビスフェノールA)]エステル、またはこれらの少なくとも1種を含む組合せを含んでいてもよい。コポリエステルを作製するために、脂肪族ジカルボン酸および/または脂肪族ポリオールから誘導された単位を、ポリエステルの全重量に対して少量の、例えば約0.5から約10重量%有する芳香族ポリエステルも企図される。ポリ(アルキレンアリーレート)は、式(9) (式中、Tは、芳香族ジカルボキシレート、脂環式ジカルボン酸、またはその誘導体から誘導された基を含む)によるポリエステル構造を有していてもよい。特に有用なT基の例には、1,2-、1,3-、および1,4-フェニレン; 1,4-および1,5-ナフチレン;およびシスまたはトランス-1,4-シクロヘキシレンなどが含まれる。特に、Tが1,4-フェニレンである場合、ポリ(アルキレンアリーレート)はポリ(アルキレンテレフタレート)である。さらに、ポリ(アルキレンアリーレート)の場合、特に有用なアルキレン基Dは、例えば、エチレン、1,4-ブチレン、シスおよび/またはトランス-1,4-(シクロヘキシレン)ジメチレンを含むビス-(アルキレン-2置換シクロヘキサン)を含む。ポリ(アルキレンテレフタレート)の例には、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、およびポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)が含まれる。ポリ(エチレンナフタノエート)(PEN)およびポリ(ブチレンナフタノエート)(PBN)などの、ポリ(アルキレンナフトエート)も有用である。有用なポリ(シクロアルキレンジエステル)は、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)である。前述のポリエステルの少なくとも1種を含む組合せを使用してもよい。
アルキレンテレフタレート反復エステル単位を、その他のエステル基と共に含むコポリマーを、使用してもよい。有用なエステル単位は、個々の単位としてまたはポリ(アルキレンテレフタレート)のブロックとしてポリマー鎖中に存在することができる、異なるアルキレンテレフタレート単位を含んでいてもよい。そのようなコポリマーの特定の例には、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)-co-ポリ(エチレンテレフタレート)が含まれ、ポリマーがポリ(エチレンテレフタレート)を50mol%以上含む場合はPETGと略され、ポリマーがポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)を50mol%超含む場合はPCTGと略される。
ポリ(シクロアルキレンジエステル)は、ポリ(アルキレンシクロヘキサンジカルボキシレート)を含んでいてもよい。これらの中で、特定の例は、式(10):
(式中、式(9)を使用して記述されるように、R2は、1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導された1,4-シクロヘキサンジメチレン基であり、Tは、シクロヘキサンジカルボキシレートまたはその化学的均等物から誘導されたシクロヘキサン環である)
の反復単位を有するポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノール-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)であり、シス異性体、トランス異性体、または前述の異性体の少なくとも1種を含む組合せを含んでいてもよい。
ポリエステルは、上述の界面重合もしくは溶融法縮合(melt-process condensation)によって、溶液相縮合によって、またはエステル交換重合によって、例えばジメチルテレフタレートなどのジアルキルエステルを、酸触媒を使用してエチレングリコールとエステル交換することによって、ポリ(エチレンテレフタレート)を発生させることができる。分枝剤、例えば、3個以上のヒドロキシル基または3官能性もしくは多官能性カルボン酸を有するグリコールが組み込まれた、分枝状ポリエステルを使用することが可能である。さらに、組成物の究極的な最終用途に応じて、ポリエステル上に様々な濃度の酸およびヒドロキシル末端基を有することが、場合によっては望ましい。
ポリエステル-ポリカーボネートコポリマーは、一般に、1,500から100,000g/mol、特に1,700から50,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、15,000から45,000g/mol、特に17,000から40,000g/mol、より具体的には20,000から30,000g/mol、さらにより具体的には20,000から25,000g/molの分子量を有する。分子量の決定は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用しかつポリカーボネート参照に較正された、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して行われる。サンプルは、約1mg/mlの濃度に調製され、約1.0ml/分の流量で溶出される。
ポリエステル-ポリカーボネートは一般に、ASTM D1238-04またはISO 1133に従い300℃および1.2キログラムの荷重で測定された、約5から約150cc/10分のMVR、特に約7から約125cc/10分、より具体的には約9から約110cc/10分、さらにより具体的には約10から約100cc/10分のMVRを有していてもよい。ポリカーボネートとの商用のポリエステルブレンドは、例えばXYLEX(登録商標)X7300を含むXYLEX(登録商標)の商標名で市販されており、商用のポリエステル-ポリカーボネートは、例えばLEXAN(登録商標)SLX-9000を含むLEXAN(登録商標)SLXポリマーの商標名で市販されており、SABIC Innovative Plastics (旧GE Plastics)から入手可能である。
ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ASTM D1238-04に従い250℃でかつ1.2キログラムの荷重の下6分間の滞留時間で測定された、約2から約25cc/10分のMVRを有する。同様に、ある実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ISO 1133に従い250℃でかつ1.2キログラムの荷重の下4分間の滞留時間で測定された、約2から約25cc/10分のMVRを有する。特定の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ASTM D1238-04に従い250℃でかつ1.2キログラムの荷重の下6分間の滞留時間で測定された、約13から約25cc/10分、より具体的には約15から約22cc/10分のMVRを有する。同様に、特定の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、ISO 1133に従い250℃でかつ1.2キログラムの荷重の下4分間の滞留時間で測定された、約13から約25cc/10分、より具体的には約15から約22cc/10分のMVRを有する。
ある実施形態では、熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートおよび任意の添加されたポリカーボネートの全重量に対して50から100重量%の量で、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを含む。別の特定の実施形態では、熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのみ含む。別の特定の実施形態では、熱可塑性樹脂は、反応生成物を形成するために反応押出しがなされたポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを含む。別の特定の実施形態では、熱可塑性樹脂は、反応押出しがなされたポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのブレンドを含む。
上記にて定義されたポリカーボネートは、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーも含む。コポリマーのポリシロキサン(本明細書では「ポリジオルガノシロキサン」とも呼ばれる)ブロックは、式(11):
(式中、Rは出現するごとに、同じでありまたは異なっており、C1〜13の1価の有機基である)
の反復シロキサン単位(本明細書では「ジオルガノシロキサン単位」とも呼ばれる)を含む。例えば、Rは独立して、C1〜C13アルキル基、C1〜C13アルコキシ基、C2〜C13アルケニル基、C2〜C13アルケニルオキシ基、C3〜C6シクロアルキル基、C3〜C6シクロアルコキシ基、C6〜C14アリール基、C6〜C10アリールオキシ基、C7〜-C13アリールアルキル基、C7〜C13アリールアルコキシ基、C7〜C13アルキルアリール基、またはC7〜C13アルキルアリールオキシ基であってもよい。前述の基は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、またはこれらの組合せにより完全にまたは部分的にハロゲン化されていてもよい。前述のR基の組合せを、同じコポリマーで使用してもよい。
式(11)のDの値は、熱可塑性組成物中の各成分のタイプおよび相対量と、組成物の所望の性質と、同様の考慮事項に応じて様々に広く変えることができる。一般にDは、2から1,000、特に2から500、より具体的には5から100の平均値を有していてもよい。いくつかの適用例では、Dは、30から60の平均値を有していてもよい。例示的なシロキサンブロックは、平均D値45を有していてもよい。
Dがより低い値の場合、例えば40未満の場合、比較的多量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーを使用することが望ましいと考えられる。逆に、Dがより高い値の場合、例えば40超の場合、比較的少量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーを使用することが必要と考えられる。
第1および第2(またはそれ以上)のポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーの組合せを使用してもよく、その場合、第1のコポリマーのDの平均値は、第2のコポリマーのDの平均値よりも少ない。
一実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(12):
(式中、Dは上記にて定義された通りであり;各Rは、独立して、同じでも異なっていてもよく、上記にて定義された通りであり;各Arは、独立して、同じでも異なっていてもよく、置換または非置換C6〜C30アリーレン基であり、但し結合は、芳香族部分に直接接続されている)
の反復構造単位によって提供される。式(12)中の有用なAr基は、C6〜C30ジヒドロキシアリーレン化合物、例えば上記の式(3)、(4)、または(7)のジヒドロキシアリーレン化合物から誘導することができる。前述のジヒドロキシアリーレン化合物の少なくとも1種を含む組合せを使用してもよい。ジヒドロキシアリーレン化合物の特定の例は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニルスルフィド)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパンである。前述のジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を含む組合せを使用してもよい。
式(12)の単位は、式(13):
(式中、R、Ar、およびDは、上述の通りである)
の、対応するジヒドロキシ化合物から誘導することができる。式(13)の化合物は、相間移動の条件下、ジヒドロキシアリーレン化合物と、例えばα,ω-ビスアセトキシポリジオルガノシロキサンとの反応によって得ることができる。
別の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(14):
(式中、RおよびDは、上述の通りであり、R4は出現するごとに、独立して、2価のC1〜C30アルキレンであり、但し重合したポリシロキサン単位は、その対応するジヒドロキシ化合物の反応残基である)
の単位を含む。特定の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(15):
(式中、RおよびDは、上記にて定義された通りである)
の反復構造単位によって提供される。式(15)中の各R5は、独立して、2価のC2〜C8脂肪族基である。式(15)中の各Mは、同じでも異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルケニルオキシ基、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルコキシ、C6〜C10アリール、C6〜C10アリールオキシ、C7〜C12アリールアルキル、C7〜C12アリールアルコキシ、C7〜C12アルキルアリール、またはC7〜C12アルキルアリールオキシであってもよく、各nは独立して0、1、2、3、または4である。
一実施形態では、Mは、ブロモもしくはクロロ、メチル、エチル、もしくはプロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、もしくはプロポキシなどのアルコキシ基、またはフェニル、クロロフェニル、もしくはトリルなどのアリール基であり; R5は、ジメチレン、トリメチレン、またはテトラメチレン基であり; Rは、C1〜8アルキル、トリフルオロプロピルなどのハロアルキル、シアノアルキル、またはフェニル、クロロフェニル、もしくはトリルなどのアリールである。別の実施形態では、Rは、メチル、またはメチルとトリフルオロプロピルとの混合物、またはメチルとフェニルとの混合物である。さらに別の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、R5は2価のC1〜C3脂肪族基であり、Rはメチルである。
式(15)の単位は、対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(15a):
(式中、R、D、M、R5、およびnは、上述の通りである)
から誘導することができる。そのようなジヒドロキシポリシロキサンは、式(16):
(式中、RおよびDは、先に定義された通りである)
の水素化シロキサンと、脂肪族性不飽和1価フェノールとの間で白金触媒による付加を行うことによって作製することができる。有用な脂肪族性不飽和1価フェノールには、例えば、オイゲノール、2-アリルフェノール、4-アリル-2-メチルフェノール、4-アリル-2-フェニルフェノール、4-アリル-2-ブロモフェノール、4-アリル-2-t-ブトキシフェノール、4-フェニル-2-フェニルフェノール、2-メチル-4-プロピルフェノール、2-アリル-4,6-ジメチルフェノール、2-アリル-4-ブロモ-6-メチルフェノール、2-アリル-6-メトキシ-4-メチルフェノール、および2-アリル-4,6-ジメチルフェノールが含まれる。前述の少なくとも1種を含む混合物を使用してもよい。
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、ポリシロキサン-ポリカーボネートの全重量に対して、カーボネート単位を50から99.9重量%、およびシロキサン単位を0.1から50重量%含む。特定のポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーは、カーボネート単位を90から99重量%、特に75から99重量%、およびシロキサン単位を1から25重量%、特に1から10重量%含む。例示的なポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーは、シロキサン単位を約6重量%含んでいてもよい。別の例示的なポリシロキサン-ポリカーボネートは、シロキサン単位を約20重量%含む。ポリシロキサン-ポリカーボネートにおいて組成物の重量パーセントに言及した場合は全て、ポリシロキサン-ポリカーボネートの全重量に対するものである。
例示的なポリシロキサン-ポリカーボネートは、ジメチルシロキサン単位(例えば、Rがメチルである式(12))から誘導されたポリシロキサン単位と、ビスフェノールAから誘導されたカーボネート単位、例えばA1およびA2のそれぞれがp-フェニレンでありY1がイソプロピリデンである式(3)のジヒドロキシ化合物とを含む。ポリシロキサン-ポリカーボネートは、2,000から100,000g/mol、特に5,000から50,000g/molの重量平均分子量を有していてもよい。いくつかの特定のポリシロキサン-ポリカーボネートは、例えば、15,000から45,000g/molの重量平均分子量を有する。本明細書で言及される分子量は、1ミリリットル当たり約1ミリグラムのサンプル濃度で、かつポリカーボネート標準に較正された、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用するゲル透過クロマトグラフィーによって測定される。
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、1.2kgの荷重の下、300℃で測定された、1から50cc/10分、特に2から30cc/10分のメルトボリュームフローレイトを有することができる。特定のポリシロキサン-ポリカーボネートは、1.2kgの荷重の下、300℃で測定された、5から15cc/10分のメルトボリュームフローレイトを有することができる。異なる流動性のポリシロキサン-ポリカーボネートの混合物は、全体的に望ましい流動性を実現するのに使用することができる。商用のポリシロキサン-ポリカーボネートは、SABIC Innovative Plastics (旧GE Plastics)から入手可能なLEXAN(登録商標)EXLポリカーボネートという商標名で市販されている。
含まれる場合には、熱可塑性組成物は、ポリカーボネートホモおよび/またはコポリマーのブレンドを含むポリカーボネート、ポリエステル、上記にて開示されたポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネート以外のポリエステル-ポリカーボネート、またはポリシロキサン-ポリカーボネートを、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートおよび任意の添加されたポリカーボネートの全重量に対して50重量%以下、特に1から50重量%、より具体的には10から50重量%の量で含んでいてもよく、但しポリカーボネートの添加が、熱可塑性組成物の所望の性質に著しく悪影響を及ぼさないことを条件とする。
本明細書に開示された熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートを含む。熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートとは異なるポリカーボネートをさらに含んでいてもよい。
驚くべきことに、上述のポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーを含む高い流動性、延性の、透明な熱可塑性組成物は、所望の性能要件(即ち、透明度、および1.2kgの荷重の下、300℃で、最大25cc/10分のMVR)を満たしまたは超える。ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマー、即ちコポリマー鎖に沿ってランダムに組み込まれた脂肪族ジカルボン酸エステル軟質ブロック単位を有するポリカーボネートは、ポリマー鎖中に軟質ブロックセグメント(例えば、反復-CH2-単位の柔軟性のある鎖)を有し、ポリカーボネート中にこれらの軟質ブロックセグメントが含まれることによって、得られる軟質ブロック含有ポリカーボネートコポリマーのガラス転移温度(Tg)が低下する。ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの重量の0.5から10重量%の量で軟質ブロックを含むこれらの熱可塑性組成物は、透明であり、かつ軟質ブロックを含まないポリカーボネートホモポリマーまたはコポリマーよりも高いMVRを有する。
ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーの軟質ブロック単位は、本明細書に開示されるα,ωC6〜20ジカルボン酸に特に限定しなくてもよいが、より短い軟質ブロック鎖長(C6未満、カルボン酸基を含む)は、所望のレベル(即ち、250℃および1.2kgの荷重で約13cc/10分以上)までMVRを増大させるのに十分な鎖の柔軟性を、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートに提供することができず;同様に、軟質ブロック鎖長を増大させる(C20超、カルボン酸基を含む)ことにより、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネート組成物中に結晶ドメインの生成をもたらすことができ、それが、低い透明度および高いヘイズにとして現れる可能性があるドメインの相分離をもたらす可能性があり、Tg(多数のTg値が異なる相分離ドメインに関して得られる場合)およびMVR(250℃および1.2kgの荷重で、約13cc/10分未満の値までMVRが低下する)などの熱的性質に影響を及ぼす可能性があると考えられる。
熱可塑性組成物のいくつかの実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、界面または溶融加工法により調製されたままの状態で直接使用される。しかし、いくつかの代替の実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートが不適切に低いメルトフロー(即ち、250℃および1.2kgの荷重で約13cc/10分未満)を有する可能性がある場合、したがって型を完全に満たすことができない場合、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、例えばテトラ-n-ブチルホスホニウムヒドロキシドの水溶液(最大40重量%)など、再分配触媒を用いた反応押出しによってさらに加工することができる。驚くべきことに、通常なら所望の衝撃強さおよび透明度を有するがメルトフローが十分に高くないポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートは、再分配触媒の作用によって、より高いメルトフロー(即ち、250℃および1.2kgで13cc/10分超)を有しかつ3.2mmの厚さで測定したときに衝撃強さ、低複屈折、型充填および離型能、85%超の高い可視光透過度(透過率%)、および1%未満のヘイズなどの熱可塑性樹脂およびそこから調製されたレンズ物品のその他の所望の特徴に著しい損失がない、反応生成物を形成することができる。
例示的な熱可塑性組成物は、ポリ(セバシン酸エステル)-co-(ビスフェノールAカーボネート)を含む。広く様々な熱可塑性組成物およびそこから誘導された物品は、熱可塑性組成物を変化させることによってだけではなく(例えば、ポリ(セバシン酸エステル)-co-(ビスフェノールAカーボネート)においてセバシン酸をアジピン酸に替える)、一定の分子量を維持しながらブレンド中のセバシン酸分の量を変化させることによって、得ることができることが理解されよう。同様に、新しい熱可塑性組成物は、例えばセバシン酸の含量を一定に保ちながら、例示的なコポリマーブレンドの成分の分子量を変化させることによって、同定することができる。
特に、熱可塑性組成物の延性、透明度、およびメルトフローは、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの組成によって変えることができる。例えば、脂肪族ジカルボン酸エステル単位(例えば、セバシン酸)の重量%は、熱可塑性組成物の全重量の1から10重量%まで変えることができる。コポリマーにおけるセバシン酸(またはその他のジカルボン酸エステル)の分布(ポリマー鎖中)も、所望の性質を得るためにポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーの合成方法(例えば、再分配触媒を用いた低MVRポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの、界面、溶融加工、または別の反応押出し)を選択することによって変えることができる。このように、高い流動性(1.2kgおよび250℃で最大25cc/10分のMVR)を有する熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのMVRが非常に低くまたは不透明であり(軟質ブロックの長さが非常に長く、コポリマー中の軟質ブロックの濃度が非常に高く、またはコポリマーの全体の分子量が非常に高く、またはコポリマーが、コポリマー中の軟質ブロック単位が凝集してより大きなブロックを形成しているブロック構成を有する場合)、その一方で、透過率85%以上、ヘイズ1%未満(厚さ3.2mmの成型プラーク板に関して測定された)、および高い流動性(例えば、1.2kgおよび250℃で最大25cc/10分のMVR)、および延性を有する透明な生成物を得ることができる場合に、さらに実現することができる。この性質の組合せを有する熱可塑性組成物は、例えば、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーが存在しないビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーのポリカーボネート組成物から得ることができない。
したがって熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーと、任意選択で、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートとは同一ではないポリカーボネートポリマーとを含む。そのような添加されたポリカーボネートポリマーを含めてもよいが、熱可塑性組成物には必須ではない。ある実施形態では、望む場合には、熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートおよび任意の添加されたポリカーボネートの全重量に対して50重量%以下の量で、ポリカーボネートを含んでいてもよい。熱可塑性ポリマーで特に有用なものには、ホモポリカーボネート、コポリカーボネート、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、これらとポリエステルとのブレンド、および前述のポリカーボネート型樹脂またはブレンドの少なくとも1種を含む組合せが含まれる。熱可塑性組成物の所望の性質が著しく悪影響を受けないことを条件に、ポリカーボネートなどのその他のポリマーを含むことが可能であることに、さらに留意すべきである。特定の実施形態では、熱可塑性組成物は、本質的に、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーからなる。別の特定の実施形態では、熱可塑性組成物は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーからなる。
上述のポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーおよび任意の添加されたポリカーボネートコポリマーに加え、熱可塑性組成物は、このタイプの熱可塑性組成物に通常は組み込まれる様々なその他の必須ではない添加剤をさらに含むことができ、この添加剤は、熱可塑性組成物の所望の性質に著しく悪影響を及ぼさないように選択されるものである。添加剤の混合物を使用してもよい。そのような添加剤は、熱可塑性組成物を形成するための成分の混合中、適切な時間混合することができる。
本明細書で企図される有用な添加剤には、染料および顔料を含む着色剤、酸化防止剤、熱安定化剤、光および/またはUV光安定化剤、可塑剤、潤滑剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、ドリップ防止剤、および放射線(γ)安定化剤など、または前述の添加剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。その他の樹脂および/または添加剤を、本明細書に記述される熱可塑性組成物に使用してもよいと考えられるが、そのような添加剤は、いくつかの例示的な実施形態では望ましいが必須ではない。
ある実施形態では、熱可塑性組成物は、ASTM D1238-04に従い250℃でかつ1.2キログラムの荷重の下、6分の滞留時間で測定された、約2から約25cc/10分、より具体的には約3から約22cc/10分のMVRを有する。同様に、ある実施形態では、熱可塑性組成物は、ISO 1133に従い250℃でかつ1.2キログラムの荷重の下、4分の滞留時間で測定された、約2から約25cc/10分、より具体的には約3から約22cc/10分のMVRを有する。
ある実施形態では、熱可塑性組成物は、ASTM D1238-04に従い250℃でかつ1.2キログラムの荷重の下、6分の滞留時間で測定された、約13から約25cc/10分、より具体的には約15から約22cc/10分のMVRを有する。同様に、ある実施形態では、熱可塑性組成物は、ISO 1133に従い250℃でかつ1.2キログラムの荷重の下、4分の滞留時間で測定された、約13から約25cc/10分、より具体的には約15から約22cc/10分のMVRを有する。
ある実施形態では、熱可塑性組成物は、厚さ3.2mmを有する物品に成型された場合、ASTM D1003-00に従って85%超、特に87%以上、より具体的には89%以上、さらにより具体的には90%以上の透過率%を有する。
ある実施形態では、熱可塑性組成物は、厚さ3.2mmを有する物品に成型された場合、ASTM D1003-00に従って1%以下、特に0.95%以下、より具体的には0.9%以下のヘイズを有する。
ある実施形態では、熱可塑性組成物は、厚さ3.2mmを有する物品に成型された場合、ASTM D1925-70に従い測定されたときに4未満、特に3未満、より具体的には2.5未満の黄色度指数(YI)を有する。
熱可塑性組成物は、当技術分野で一般的に使用可能な方法で製造することができ、例えば、一実施形態において、手順の一つのやり方として、粉末にしたポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマー、任意の追加のポリカーボネート、および所望する場合、他の添加剤を、最初にHENSCHEL MIXER(登録商標)高速撹拌機の中で混合する。これだけに限らないが手練りを含めた他の低剪断プロセスもまた、このブレンディングを遂行することができる。次いでこのブレンドを、ホッパーを介して押出し機のスロートへ流し込む。あるいは、1つまたは複数の成分を、スロートおよび/またはサイドスタッファーを介して下流で押出し機に直接供給することによって、組成物に組み込むこともできる。添加剤はまた、所望のポリマー樹脂と共にマスターバッチに混合して、押出し機に流し込むこともできる。押出し機は一般的に、組成物を流動させるのに必要とされる温度より高い温度ではあるが、熱可塑性組成物の成分が分解して、組成物に有意に不利な影響を及ぼさないような温度で作動する。押出物は、水槽の中で直ちにクエンチし、ペレット化する。このように調製したペレットは、押出物を切断するとき、所望する場合、4分の1インチ以下の長さであってよい。このようなペレットは、その後の成型、成形、または形成のために使用することができる。
具体的な実施形態では、熱可塑性組成物を調製する方法は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマー、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマー、および任意の追加のポリカーボネートを溶融混合する工程を含む。この溶融混合は、押出成形で行うことができる。一実施形態では、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマー、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマー、および任意の追加のポリカーボネートの比率は、低温NIIおよび延性に有意に不利な影響を与えず、生成した組成物がメルトボリュームレイト(MVR)を最大にするように選択される。さらなる具体的な実施形態では、熱可塑性ポリマーは、本明細書中、上で定義された、ポリカーボネート型ポリマー(ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートに加えて含まれるもので、これとは等しいものではない)を含む。
具体的な実施形態では、この混合押出し機は、2軸押出し機である。この押出し機は通常、180〜385℃、具体的には200〜330℃、より具体的には220〜300℃の温度で作動し、ダイ温度は、異なってもよい。押し出された熱可塑性組成物は、水でクエンチし、ペレット化する。
熱可塑性組成物は、ペレットとして提供することができ、デバイスで使用するための製品、例えば携帯電話、カメラ、携帯情報端末、DVDプレーヤーおよび録音機器などを含めた携帯用電子機器用途に使用するためのレンズなどを形成するのに有効である。一実施形態において、熱可塑性組成物は、射出成型により有用な造形品へと成型することができる。熱可塑性組成物は、その高い流動特性により、優れた金型充填能力を有するのが望ましい。
熱可塑性組成物から作製された製品(例えば製品)は、薄壁製品を含めた様々な用途において具体的に使用することができ、これらには、透明性、高度の再現性で定義される精密さ、衝撃強度を含めた力学的特性の保持、および正確な光学的特性が必要とされる。このような熱可塑性組成物は、流動性の改善により成型品における残留応力を減少させる。
一実施形態では、熱可塑性組成物は、カメラレンズ、例えば、携帯電話カメラ用、およびデジタル静止画像カメラ用;および自動車のカメラレンズなどを含めた光学レンズの製造に使用される。レンズセットが必要な、例えばカメラレンズなどの用途には、1つまたは複数のこれら光学レンズを、熱可塑性組成物を使用して製造することができる。優れた金型充填特性のためのより良い流動性(MVR)を有し、しかも望ましい力学的特性を維持する熱可塑性組成物の使用は、このようなレンズの製造において、熱可塑性組成物から成型される連続的なレンズに対して高度の再現性が得られることが驚くことに判明した。
レンズを製造する方法もまた開示される。成型プロセスの間、成型したレンズの複製は、レンズの規格に非常に正確であり、レンズからレンズへと一貫して再現可能でなければならない。さもなければ、再現性基準を満たさないレンズは、不鮮明な画像を提供することになる。一実施形態では、熱可塑性組成物から調製する光学レンズ(例えばカメラレンズなど)を製造する方法は、三次元接触形状測定で測定したとき基準ゲージから400nm未満の範囲で外れる精密な寸法を有するレンズを提供する。さらなる実施形態では、熱可塑性組成物から調製した、連続的な光学レンズはそれぞれ、三次元接触測定法により測定したとき、基準ゲージから400nm未満の範囲で外れる精密な寸法を有する。
本明細書中に開示されている光学レンズは、いくつかの寸法の特徴により定義される。一実施形態では、レンズのサイズは、「効果的レンズ領域」という用語で特徴づけられ、これは、曲率が正であり、それ故この領域を介して屈折する光は、実際のイメージングに使用可能であるレンズの領域として定義される。本明細書中で定義される「曲率」とは、レンズの光学半径の逆数である(光路で定義された通り)。例えば平面は、無限大の半径を有し、したがってゼロ曲率である。レンズ、例えば本明細書中に記載されているものなどは、レンズ周囲の周りの平坦な部分を含み、この部分は、レンズを光学的アセンブリーにはめ込むために使用される。この平坦な部分は、効果的レンズ領域の一部とはみなされない。典型的なレンズは、少なくとも2つの表面、すなわち第1の表面と第2の表面とを有する。第1の(入射)表面上で、光はレンズに侵入し、第2の(屈折)表面を介して抜け出る。これらの表面のうちの1つまたは両方は、曲率を有していてもよい。上で定義された効果的レンズは、第1の表面と第2の表面が同一であってよく、または第1の表面と第2の表面が異なってもよい。異なる場合、第1の表面と第2の表面の効果的表面積のより大きな値の方が、全体のレンズに対する効果的レンズ領域と考えられる。
一実施形態では、光学レンズは、0.5mm2〜100mm2の効果的レンズ領域(ELA)を有する。具体的な実施形態では、光学レンズは、0.5mm2〜10mm2のELAを有し、より具体的な実施形態では、光学レンズは、カメラレンズおよび自動車レンズに使用することができる。別の具体的な実施形態では、光学レンズは、5mm2〜100mm2のELAを有し、この場合、別のより具体的な実施形態において、光学レンズは、デジタル静止カメラレンズに使用することができる。
本明細書中で定義されたELA直径は、レンズの効果的な(光学的に使用可能な)領域の最外部の外周を測定した直径について述べている。これに対して、レンズの全直径は、光学的に無関連の平坦な部分を含む直径である。例えば、携帯電話のカメラレンズは通常、効果的な領域に対して2.3mmの直径を有する。レンズ直径と効果的レンズ領域(ELA)の関係をさらに例示すると、直径2mmのレンズに対して、ELAは3.1mm2であり、直径8mmのレンズに対して、ELAは、50.3mm2であり、直径10mmのレンズに対して、ELAは、78.5mm2であり、直径12mmのレンズに対して、ELAは、113.1mm2である。
光学レンズはまた、これらの厚さにより特徴づけることができる。本明細書中で定義されるレンズの厚さは、レンズ中央で測定する(すなわち、z軸に沿って、レンズのx-y面にて測定したレンズの直径に対して直角)。レンズは曲率を有するので、レンズの厚さは、表面の輪郭に沿って異なり得る。また、レンズの種類(凸面、凹面など)に応じて、厚さの変動は、広く異なることができる。一実施形態では、光学レンズは、レンズ中央で測定した場合、厚さ0.25〜2.5mm、具体的には0.5〜2.4mm、より具体的には0.8〜2.3mmを有する。
例示的レンズの種類(用途による)および効果的レンズ領域(ELA)の異なる寸法の相互関係、ELAの直径(すなわち、ELAで定義されたレンズの光学的有用部分の測定された直径)、全体の直径(すなわち、周辺の平坦部分の全直径および効果的レンズ領域の直径)およびレンズの厚さを、以下のTable 1(表1)において例示する。
本明細書中、上に記載されているレンズは、本明細書中、上で定義された効果的領域および厚さの制約内での任意の有用な形を有することができる。例えば、カメラレンズは、焦点を有する球状または非球状レンズであってよい。球状レンズは、例えば、ダブル凸面レンズ、ダブル凹面レンズ、度のない凸面レンズ、度のない凹面レンズ、メニスカス凸面レンズまたはメニスカス凹面レンズであってよい。あるいは、非球状のレンズは、長円体、双曲線、または放物線の面を有する。
また驚くことに、光学レンズの複屈折は、軟質ブロックなしで、ポリカーボネートを使用して調製した、匹敵するレンズの複屈折よりかなり低い。理論に制約されることを望むことなく、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのポリマー鎖における追加の柔軟性は、成型機の金型へ流動する間、よりランダム化された方向性を提供し、柔軟性のより低いポリマー(例えばビスフェノールAホモポリマーなど)の鎖を、押出成形(流動)の方向の向きにすることができると考えられている。したがってこのような方向性のランダム化は、鎖内のおよび鎖間の順序付けを最小化することができ、これが次に偏光効果を減少させ、それ故、生じた光学レンズの複屈折を減少させる。成型したレンズの許容可能な複製および複屈折を得るために、金型温度は、115から135℃が望ましく、シリンダー温度は、300〜340℃であり、冷却時間は、45〜75秒の間である。
よって、一実施形態において、金型温度120℃、シリンダー温度310℃、および保持圧力80MPaで、0.8秒間成型した光学レンズは、Parallel Nicols法に従い590nmの波長で測定された、平均複屈折81nm未満、具体的には76nm未満、より具体的には73nm未満を有する。具体的な実施形態では、熱可塑性組成物から成型した光学レンズは、三次元接触形状測定により測定した、400nm(0.4マイクロメーター)の全耐性以内である表面変動を有し、またParallel Nicols法に従い波長590nmで測定した平均遅延76nm未満、具体的に73nm未満を有する。別の実施形態において、熱可塑性組成物から成型した光学レンズは、ASTM D 1238-04に従い、およそ250℃で、および1.2kgの荷重下、および6分の滞留時間で、11cc/10分のメルトボリュームレイトを有する、光学的品質のビスフェノールAポリカーボネートから成型した光学レンズの複屈折より低い複屈折を有する。
具体的な用途および製品は、本明細書中に開示されているが、当業者であれば、本明細書中の熱可塑性組成物の用途は、これらの用途に限定されると考えてはならないことを理解されよう。
熱可塑性組成物は、以下の非限定的な実施例によりさらに例示される。
実施例(以下の表ではEx.に短縮されている)および比較例(以下の表ではCEx.に短縮されている)のためのすべての熱可塑性組成物は、Table 2(表2)に列挙された1つまたは複数の以下の成分を使用して調製した。
混合された熱可塑性組成物を、バレル温度40-200-225-250-260-260-260-260℃で、供給量20kg/時間および送り速度350rpmで作動している、WernerおよびPfleiderer ZSK 25-mm 2軸押出し機で混合した。2軸押出し機は、熱可塑性組成物の優れた混合物を生産するのに十分な配分的および分散的な混合要素を有していた。続いてこの組成物を、およそ120℃で4時間乾燥させ、次いでバレル温度255-260-250-240℃および金型温度70または90℃を使用してHuskyまたはBOY射出成型機で成型し、30秒間冷却した。
熱可塑性組成物を、以下の通り、14mmの外側直径(OD)のレンズへと成型した。熱可塑性組成物を、シリンダー温度300〜340℃で作動しているNihon Yuki HF1 Hungry-フィーダー一軸スクリュー押出機に充填し、光学的用途のための最大射出速度330mm/秒で、金型温度115〜135℃で作動している、FANUC ROBOSHOT S-2000i 50B、500kilo-Newton(50重量トン)射出成型機に供給した。乾燥は、60〜200℃で作動している、10マイクロメートルフィルター付の44-リットルMatsui MCAX-140-J媒体温度調節機を使用して、および窒素純度99.99%を提供するTaiyo Nissan M-10窒素発生器を使用した窒素パージを使用して遂行し、60秒間冷却した。成型したレンズは、450mmストロークおよび60°〜90°のスイング角を有するYushin HopFive 450 Runner Take-outロボットで取り出した。すべてのレンズは、Class 10,000クリーンルーム環境で成型した。当業者であれば、押出成形および成型方法は、これら温度に制限されるものではないことを認識されたい。
熱可塑性組成物の特性は、本明細書において以下の通り求めた。250℃で、1.2kgの荷重下で、およびISO1133に従い、4分間または12分間の滞留時間、またはASTMD1238-04に従い6分間の滞留時間でメルトボリュームレイト(MVR)を求め、cc/10分の単位で報告する。架橋したスチレン-ジビニルベンゼンカラム、およそ1mg/mlの試料濃度、およびトルエンまたはクロロホルム溶出剤の溶出速度0.5〜1.5ml/分を使用した、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用してポリマーの分子量(Mw)を求め、ポリカーボネート基準に対して較正した。
ガラス転移温度(Tg、半分の熱容量、単位:℃)を、10℃/分の温度上昇速度で作動する示差走査熱量計(DSC)を使用して第2の熱から求めた。ASTMD648-06に従い、熱ひずみ/熱撓み温度(HDT)(℃)を、1.8MPaで、沿層方向で求めた。
80mm×10mm×3mmの成型した試料(棒)について、ASTMD256-04またはISO180に従い、23℃の温度で、Notched Izod impact(NII)およびunnotched Izod impact(UNI)試験で求めたが、ここでNIIおよびUNI衝撃強度は、1平方メートル当たりのキロジュール(kJ/m2)の単位でそれぞれ報告している。
Newtons(N)で報告される、Multi Axial Impact(MAI)、両方ともジュール(J)で報告される最大偏位および破壊点でのエネルギー、破壊点撓み(mm)、および不具合モードを、ISO6602またはASTM D3763に従い3.2mmディスクを使用して求めた。ISO527に従い、23℃の温度で、引張係数(MPa)、引張破壊応力(MPa)および引張ひずみ(%)を、それぞれ成型した製品に対して求めた。Vicat軟化温度は、ASTM D1525に従い、Centigrade(℃)で報告する。
Gretagmacbethで製造されたColorEye(商標)7000A分光光度計を使用して呈色能力を遂行した。ASTM6290に従い反射率モード下で、3.2mmカラーチップについてCIE(L*、a*、b*)値を求め、高光沢ポリカーボネート基準を使用して、5重量%の白色顔料(T1O2)の添加量で較正した。CIE(Commission Internationale de l''Eclairage)により詳述されているCIELAB呈色測定方法に従い、光吸収スペクトルのデータから呈色能力を求めた。E*、L*、a*およびb*の値を、試験した実施例に対して報告している。
ヘイズ(%)および光伝達(%)を、ASTM D 1003-00に従い3.2mm成型したプラーク板を使用してそれぞれ求めた。ASTM D 1925-70に従い黄色度指数(YI)を求めた。
ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネート組成物とガラス転移温度の関係。軟質ブロックコポリマー材料に対して、ガラス転移温度は、軟質ブロックモノマーのパーセントならびに分子量に依存する。図1は、ガラス転移温度と対比したポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートの軟質ブロック(セバシン酸)のパーセントのプロットである。このプロットは、異なるポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネート(0.5、2、4、6、8、10、および12重量%のセバシン酸含有量)に対するガラス転移温度の変動を図示するもので、Tgは、コポリマーに対して、増加する軟質ブロック含有量の関数として直線的な減少を示す。重量平均分子量は、これら試料のそれぞれに対しておよそ18,000g/molで維持した。6重量%のセバシン酸を含む材料について、以下の実施例に対して、さらなる実験を行った。
Table 3(表3)は、以下に記載される比較例1および実施例1に対して、上記方法に従い試験した組成情報および特性を示す。
Table 3(表3)は、Table 2(表2)に見出されるPAE-PC-1およびBPA-PCから調製した実施例1(Ex.1)および比較例1(CEx.1)の熱可塑性組成物のための上記方法に従い試験した組成情報および特性を示す。
Table 3(表3)に示された熱可塑性組成物の特性において、実施例1および比較例1の熱可塑性組成物の粘度は、OQ-PC材料(MVRは11cc/10分、等しい測定条件)に対して、PAE-PC-1と比較して、かなりより低い(すなわち、より高いMVR値、250℃、1.2kg荷重、および6分間の滞留時間、19cc/10分で測定)ことが見て取れる。BPA-ポリカーボネート樹脂、例えばOQ-PCなどに対して、MVRの増加はまた、衝撃性能の軽減を伴うことが公知である。
熱的性能(Tg)は、本組成物に対するMVRの増加を考慮すると予期されないことはない実施例1のPAE-PC-1の穏やかな減少を示すが、実施例1のPAE-PC-1の力学的特性は、比較例1のOQ-PCのものに匹敵すると見て取ることができる。
最も良い複製を示すレンズの複屈折測定は、以下の図4に対して記載されている通りである。
市販の、高い流動性の、光学グレードの材料(OQ-PC)の成型複製性能は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネート(PAE-PC-1)に匹敵した。効果的開口直径(Φ)14mmおよび厚さ1.5mmを有する、試験製品としての非球状レンズ(メニスカスレンズ)は、二凹面またはメニスカスレンズを生産することが可能な非球状のレンズ成型型を使用して、これら材料のそれぞれから成型された。このツールを使用して成型した試料レンズの概略図は、図2Aにおいて示されており、このツールを使用して成型した10の例示のレンズを示す写真が、図2Bにおいて見られる。
成型中のレンズの複製。複製(すなわち、一組の測定基準と同調した、レンズからレンズへの再現性)を、120または200mmトラバース装置、12.5mmからのゲージ領域、0.8nm〜12.8nmのゲージ分解能、および光学部品に対する測定性能1/10λを有する、Taylor-Hobson Form TALYSURF(登録商標)PGI表面形状測定装置を使用して求めた。成型したレンズにおける高精度の程度を、三次元(3D)接触測定により測定する。表面形状測定装置の測定から得たデータは、各組成物に対する最適な成型条件下での複製(計画実験により決定される。この実験において、CEx.1の材料から成型したレンズを、金型温度135℃、シリンダー温度330℃、および保持圧力および時間系列、80MPa/0.8秒、50MPa/2.0秒、および40MPa/2.0秒で成型し、Ex.1の材料から成型したレンズは、金型温度120℃、シリンダー温度310℃、および保持圧力および時間系列、80MPa/0.8秒、50MPa/2.0秒、および40MPa/2.0秒で成型した)は、両方の材料(CEx.1のOQ-PCおよびEx.1のPAE-PC-1)から調製したレンズに対して許容可能な再製可能性をもたらしたことを示した。レンズ面形状(複製、および必要寸法からのずれ)は規格内であった。これは、各レンズに対する精密寸法は、全体の許容差に対して400nmの基準線以内であったことを意味する。図3Aは、CEx.1のOQ-PCを使用して作られたレンズの表面プロファイルを示す;図3Bは、Ex.1のPAE-PC-1を使用して作られたレンズの表面プロファイルを示す。図3Aにおいて、各組成から調製されたレンズは、400nm(0.4マイクロメートル)以内の全体許容差である表面変動を示していることが見て取れる。
複屈折の測定。CEx.1およびEx.1の材料から成型したレンズに対して複屈折を測定した。CEx.1の材料から成型したレンズを、金型温度135℃、シリンダー温度330℃、ならびに保持圧力および時間系列、80MPa/0.8秒、50MPa/2.0秒、および40MPa/2.0秒で成型した。Ex.1の材料から成型したレンズを、金型温度120℃、シリンダー温度310℃、ならびに保持圧力および時間系列、80MPa/0.8秒、50MPa/2.0秒、ならびに40MPa/2.0秒で成型した。例示的レンズに対する複屈折(すなわち、400nm基準線による許容差セットの範囲内)を、波長590nmで作動するOji Instruments Kobra-CCD自動複屈折アナライザーを使用して測定した。図4は、複屈折測定からの結果の比較を示している。図4Aでは、図4Bにおける点線より下の領域と比較したとき、点線より下の領域において、より高い程度の複屈折に相当するより大きな輪郭が存在することが見て取れる。OQ-PCレンズ(CEx.1)に対して計算した複屈折の平均は、81nmであり、これは図4Bにおいて見られるPAE-PC-1(Ex.1)レンズに対する平均遅延71nmよりも10nm大きい。これによって、PAE-PC-1から調製したレンズの複屈折は、OQ-PCと比較して著しい向上を示している。
熱および湿度試験。Ex.1およびCEx.1から調製した成型したレンズの試料を、85℃で、相対湿度85%という条件に、およそ1,000時間曝露した。次いで光透過率のパーセントおよびヘイズのパーセントを含めたレンズの光学的特性を測定した。1,000時間後、パーセント透過率における1%未満の減少が、すべての可視波長に対して観察され、このように試験した試料に対して観察されたパーセントヘイズ値は、Ex.1に対して1%未満のままでいることが見出された。
比較例2〜4、および実施例2〜18。適切な溶融流動および光学的特性を有するポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーを、再分布触媒の存在下、このような材料を押出成形条件の対象とすることによって、不適切なまたはあまり最適ではないより高い分子量の、高粘度材料から調製した(例えば、ヘイズが高すぎる場合、またはMVRが低いマージンの場合)。PAE-PC-2は、等しい測定条件下で、PAE-PC-1より高い分子量(Mw=19,500g/mol)およびより低いMVR(13.8cc/10分)を有するが、治験1(CEx.2および3ならびにExs.2-10)の光学的試料に対しては、金型温度を90℃に保持し、治験2(CEx.4、およびExs.11〜18)の光学的試料に対しては金型温度を70℃に保持した以外は等しい押出成形および成型条件下で、再分布によりこれを改質した。PAE-PC-2を、添加物および再分布触媒(TBPH、水溶液)と、治験1(Table 4(表4))および治験2(Table 5(表5))に対して記載した比率で混合し、押し出すことによって、対応するより高い流動性のポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーを形成した。これら押出成形条件下で、生成された再分布したPAE-PCの特性は、以下のTable 4(表4)および5に示されている。
治験1および2のそれぞれに対するデータにおいて見られるように(Table 4(表4)および5)、MVR値は、TBPH添加量が高くなるにつれて増加した。図5は、治験1および2に対する合わせたMVRデータについての、MVRのppm TBPHに対するプロットを示したものであり、ここで、MVRの非直線性であるが(二次)、しかし一貫性のある全体の増加は、試料に対するTBPH添加量の増加と共に見られる。MVRの結果は、最高添加量のTBPH(Ex.16では160ppm TBPH、およびEx.17では200ppm TBPH)を除いてすべてに対して、250℃/1.2kgにおいて13〜25cc/10分という所望の領域内に入る。図5にプロットされたMVRデータにおいて観察された逸脱は、特に50ppm未満のTBPH添加量で、MVR測定方法の変動に、および再分布プロセスにおける変動に起因し得ると考えられている。混合条件、例えば、二軸押し出し機に対して一軸押し出し機の使用、押出し機のバレル温度プロファイルにおける変動、およびスループット(送り速度に基づく)は、再分布効率に、それ故、例えば分子量および再分布した生成物のMVRなどの特性に影響を与える可能性があることは理解されよう。
120ppm(Ex.16およびEx.17)を超えるTBPH量を有する再分布に対するMVR値は、250℃/1.2kgにおける所望の最大値である25cc/10分を超えた。再分布したPAE-PC-2に対して、滞留時間を4分間から12分間へと増加させることによって、Ex.15ではMVRの-0.2%のわずかな減少をもたらしたが、これは、滞留時間の追加と共におよそ0.7%の粘度のわずかな増加を示したCEx.4.(TBPHの添加はなし)と比較して、延長した滞留に伴う、わずかから無視できる範囲の粘度の減少であることを指摘している。したがって、再分布したPAE-PC-2(Ex.15)の粘度のわずかな変化は、追加の8分間の滞留時間(4分間と12分間との間)に対して、温度250℃における粘度の安定した生成物を示し、これは、TBPH触媒が混合プロセス中に分解したことを示唆している。
MVR、Vicat軟化、3.2および2.5mmプラーク板厚さでの光学的データ(すなわち、%T、ヘイズ、およびYI)および分子量を含めた、Table 4(表4)および5に示された残りのデータは、すべて許容される制限内であった。図6は、重量平均分子量(Mw)および多分散(PD)と対比したppm TBPH触媒のプロットを示している。このプロットにおいて、Mwの減少は、TBPH触媒添加量の増加と共に、ほぼ逆に比例し、直線的であり、再分布した生成物は、触媒添加量75ppm以上において2.20〜2.25の間の一定の多分散に接近することを見て取ることができる。金型温度70℃(治験2、Table 5(表5))での試料の成型中に、成型した試料は、100〜120ppmまたはこれ以上のTBPHと共に調製した材料については(すなわち、Ex.14付近から開始する)、スプルーにおいて破壊されることが観察された。
ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーおよびターポリマー組成物の調製および計画実験による分析。C36軟質ブロックを有する一連のポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーおよびターポリマーの調製を行うことによって、各繰返し単位の組成物および比率に基づく、これらポリマー組成物に対するガラス転移温度、屈折率、および固有複屈折を含めた特性を検査した。これらポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーおよびターポリマーのそれぞれは、ポリマー組成物について実験的設計と比較した。実験的設計を調製することによって、カメラレンズを調製するのに有用なガラス転移温度、屈折率、および固有複屈折を有するポリマー組成物を提供することが予想される、見込まれる組成上の境界条件を示す。
各ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーまたはターポリマーにおける軟質ブロックは、C36脂肪族ジカルボン酸(Uniqemaから入手可能)から誘導され、カーボネート単位は、2-フェ二ル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェ二ル)フタルイミジン(PPPBP)から誘導され、追加のカーボネート基(Ex.20以外はすべての実施例に存在する)は、ビスフェノールA(BPA)または1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェ二ル)シクロヘキサン(DMBPC)のいずれかから誘導された。軟質ブロック、PPPBP、およびBPAまたはDMBPCの重量による比率を以下のTable 6(表6)に提供する。他に特定されていない限り、追加のカーボネート基はBPAから誘導されたことに注意されたい。ポリマーを調製するために使用した例示的界面重合法および溶融重合法を以下の通り記載する。
界面重合に対する例示的処置:ホスゲン化(実施例21)の間、ビス(4-ヒドロキシフェ二ル)-N-フェ二ル-フタルイミジン(PPPBP)とC36二酸の共同供給。塩化メチレン(20L)、水(6L)、ビスフェノールA(BPA、2116g)、p-クミルフェノール(PCP、150g)、トリエチルアミン(85ml)およびグルコン酸ナトリウム(10g)を、力学的撹拌器、冷却器、および腐蝕性洗浄通気システムを備えた75L反応器に充填した。ホスゲン(625g)を、60g/分の速度で、反応器に添加し、その一方で50重量%の腐食剤を、pHをおよそ5に維持する速度で添加した。ホスゲンを添加すると同時に、PPPBPおよびC36二酸の溶液を反応器に共同供給した。具体的に、水中(6660g)に溶解したPPPBP(1750g)と50重量%の腐食剤(940g)の溶液を、900g/分の速度で供給し、同時にC36二酸(PRIPOL(登録商標)1009二酸、625g)の塩化メチレン(2L)中溶液を、250g/分の速度で反応器に供給した。ホスゲン添加が完了したら、PPPBP溶液、およびC36二酸溶液、追加の腐食剤を反応器に添加することによって、およそ10のpHを達成し、この時点で、pHをおよそ10.5で維持するような速度で腐食剤を添加しながら、追加のホスゲン(1600g)を60g/分の速度で添加した。次いで反応器から試料採取し、GPC分析のための後処理を行うことによって、分子量に基づきこの反応の完了を判定したが、この試料後工程では、希酸(0.1 NHCl)で洗浄し、続いて、残留する塩素イオン濃度が5ppm未満となるまで脱イオン水で繰り返し洗浄することが必要であった。GPC結果は、21,830g/molの酸洗浄した試料に対するMwを示し、アミン処理した試料のMwは20,785であり、アミン処理した試料に対して、酸洗浄した試料のMwは4.8%減少した。
GPC分析の遅延の間生じ得る任意の潜在的劣化を埋め合わせるため、追加のホスゲン(200g)を、およそpH9を成し遂げるために十分な腐食剤と共に、80g/分の送り速度で添加した。次いでこの反応混合物を窒素でパージすることによって、残留するホスゲンを除去し、別のタンクに移し、遠心することによって分離させ、水層を除去した。次いでポリマーを含有する有機層を、1N HCl(水性)を用いて遠心装置上で洗浄し、続いてその後脱イオン水で洗浄し、残留する塩素イオン濃度が<5ppm(重量による)になるまでこれを続け、水蒸気沈殿によりポリマーを単離し、続いて熱い窒素下で乾燥させた。最終の乾燥ポリマーは、Mw20,673およびGPC(ポリカーボネート基準に対して)による2.33の多分散、<1ppmのトリエチルアミン、<1ppmの残留塩素イオン、および0.07ppmの残留Feを有した。
ポリマーは、以下のTable 6(表6)に記載されているように、比率および置換(例えば、Ex.20においてBPAは、Ex.21のビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェ二ル)-1,1-シクロヘキサン(DMBPC)で置き換えられる)に従いこのように調製した。
溶融重合のための一般的な処置。制限された量で入手可能なモノマーに基づくコポリマーの特性を評価するため、溶融trans-エステル化反応を、25グラムスケールバッチ反応器内で、バッチモードで行った。反応器を1M HCl中に少なくとも24時間の間浸漬し、続いて18.2ミリオーム(mΩ)脱イオン水ですすぎを繰り返し行う(5回以上)ことによって、残留するナトリウムをガラス反応器から取り出した。比例積分微分温度(PID)制御装置で、加熱マントルを使用してこの反応器を加熱した。留出物収集フラスコの真空ポンプ下流に流れ出る窒素により反応器内の圧力を制御し、圧力ゲージで圧力を測定した。ストック触媒(テトラメチル水酸化アンモ二ウム(TMAH;Sachem、水中25重量%)およびNaOH(Acros、0.5mol/L))を、18.2mΩ水で適切な濃度に希釈することによって、触媒溶液を調製した。100マイクロリットルの量で含まれる触媒を使用して、反応物中、ジオール1モル当たりTMAHを2.5×10-5の触媒濃度で(例えば、PPPBP、BPA、およびDMBPC)、またはNaOHが使用される場合、反応物中、ジオール1モル当たり1.0×10-6molのNaOHの濃度で、すべての反応を行った。添加した触媒の量は、25gの反応スケールに対して100マイクロリットルで維持し、より高いレベルが必要である場合、より濃縮した溶液を調製した。
この反応において、ガラス反応器管に、ジオールと二酸の合計が0.05879〜0.05995モルの固体ジオールおよび二酸を充填した。次いで固体のビス(メチルサリチル)カーボネート(0.0605モル)を添加した(含量は、ジオールに基づく標的とするモル比1.01〜1.03に依存するよう調整)。次いでこの反応器を組み立て、密封し、容器を窒素で3回パージした。触媒をモノマーに添加した。反応器を気圧付近にし、ヒーターを第1のセットポイントに設定した瞬間と同じ瞬間に反応時間を開始した。
反応体(二酸、ジオール、BMSC、および触媒)は、180℃、1,000mバール気圧で、一緒に溶融し、オーバーヘッド冷却器を100℃に加熱した。6分後、40rpmでの撹拌を開始した。反応体(モノマー)が溶融してからおよそ15分間後、反応器内の気圧を500mバールに下げ、撹拌を継続した。45分後、反応器の温度を5分間に渡り270℃までつり上げた。次いで、50分の時点で、この反応器の温度を300℃に設定し、同時に、気圧を全真空(およそ0.5〜およそ1mバール)までゆっくりと低下させた。全真空は、通常およそ4分後に達成される。所望の粘度まで到達したとき(一般的におよそ60分間の反応時間の後)、重合を中止し、穏やかな窒素流動下で反応器を気圧に戻した。気圧まで到達したとき、撹拌機を停止し、わずかな窒素の超過圧力で生成物を押し出しながら、反応器の底部を開くことによって生成物を反応管から流した。生成された生成物は、Tgおよび、分子量(GPC、ポリカーボネート基準)について分析し、次いで続きの成型プロセスで使用した。
屈折率および固有複屈折(BR*)の測定。ポリマー組成物(実施例19〜28および比較例5)に対して、屈折率および固有複屈折を、これらそれぞれが本明細書に参照により組み込まれている以下で開示されている方法に基づき、以下の方法で行った、Toney、M.F.ら、「Near surface alignment of polymers in rubbed films」、Nature、1995年、374巻、709頁;Ge、J. J.ら、「Surface studies of polyimide thin films via surface-enhanced Raman scattering and second harmonic generation,」Macromol.Rapid Commun.、1998年、19巻、619頁;およびAgra、D.M.G.ら、「Relaxation dynamics of rubbed polystyrene thin films」Europhys. Lett.、2000年、51巻、655頁。
試験するポリマー組成物の溶液は、ケイ素ウエハー上でスピンコーティングすることによって、250〜500nmの厚さ(典型的な厚さは400nm)を有する薄膜を形成した。この膜をホットプレート上でベーキングすることによって、残留する溶媒を除去した。次いでキャストフィルムの屈折率をマルチアングルエリプソメトリーで測定し、UV-VISスペクトル(およそ200nm〜およそ750nm)に渡る偏光ビームを薄膜に照射する。エリプソメーターは、いくつかの異なる角度での反射ビームの位相および強度を測定し、次いで測定データを一連の式にフィットさせ、屈折率を波長の関数として得る。初期RIの測定後、膜は、単一方向に縦方向に沿って、ベルベットペーパーを使用して、25回より多く擦り、通常40〜45回擦った(1回の摩擦は、ベルベットペーパーを使用して、ウエハーを1回横断するのと同じ)。こうして擦った膜は、飽和点、すなわち、ある点を超えると、オペレーターに関わらず、さらなる摩擦は、鎖配列をさらに増加させないような点に到達すると言われている。ベルベットペーパーで薄膜の表面を擦ることによって、摩擦方向に沿ってポリマー鎖を整列させることが可能であった。エリプソメトリーで、屈折率を擦った薄膜上で再び測定した。擦った方向のRIは、摩擦方向に垂直に測定したRIよりも大きく、擦った薄膜が飽和するまで増加することが観察された。次いで、以下の式で示されているように、摩擦方向と垂直の薄膜のRIから、摩擦方向のRIを引くことによって、固有複屈折を計算する:
RI(摩擦方向)-RI(摩擦方向と垂直)=BR*(固有複屈折)
ここで、固有複屈折は、単位なしの数であることを理解されたい。飽和での値は、様々な異なるポリマーに対して報告された溶融物応力光学的係数(Cm)値と十分に相関し、したがって、飽和値は、十分に整列したポリマー鎖の、Table 6(表6)で報告された「固有BR」、またはBR*を意味するものとして特定された。この技法は、RIおよびBR*によりポリマーを特徴づける、素早いおよび便利な方法を意味し、スクリー二ングのために少量(25〜50g)で入手可能なサンプルに対して特に有用である。
Table 6(表6)のポリマー組成物を、図7に示した計画実験で作成した三元組成プロットと比較して分析することによって、鎖長の異なる、異なる量の軟質ブロックと、全体の炭素量との間で、組成全体に与える効果を判定する。この軟質ブロックは、C36脂肪族二酸から誘導され、高回転性のバリアジヒドロキシ芳香族モノマー(PPPBP)と共重合され、量の増加と共に屈折率およびTgの増加が得られる。場合による第3のジヒドロキシ芳香族モノマー(BPAまたはDMBPC、後者は、前者より高い回転性のバリアおよび屈折率を有し、それ故より高いTgおよびRIをポリマーに付与する)は、実施例19以外は各ポリマー組成物に含めた。
図7は、DESIGN-EXPERT(登録商標)ソフトウエア(STAT-EASE(登録商標)、Software corporationから入手可能)を使用して作成した三元組成オーバーレイプロットを示している。オーバーレイプロットは、0〜100重量%のBPA(「A:」と標識した頂点)、0〜100重量%のPPPBP(「B:」と標識した頂点)、および0〜100重量%の軟質ブロック(「C:」と標識した頂点)のポリマー組成物に対する全組成スペースを表している。したがって各頂点は相当するモノマーの100%のホモポリマーを示し、三角形の各足の部分は、異なる組成のコポリマー、例えば、100重量%のPPPBPから100重量%の軟質ブロック(および0重量%のBPA)まで変動するコポリマー組成を示すB:からC:で表されるベースラインなどを記載している。
全体の三角形のプロット内に含有されている線は、ポリマー組成物と相互関係がある特性に対する境界条件に相当する。例えば、「Tg:155」と標識された線は、ガラス転移温度の上限である155℃に対する境界条件を示し、この線から左の設計スペースの組成物(すなわち、「Tg:155」線とA:-B:境界の間)は、155℃を超えるガラス転移温度を有し、同様に「Tg:120」と標識された線は、120℃のガラス転移温度の下限に対する境界条件を示し、この線から右の設計スペースの組成物(すなわち、「Tg:120」線とA:-C:境界の間)は、120℃未満のガラス転移温度を有する。「BR:0.015」と標識された線は、複屈折の上限(μmで表され、固有複屈折0.015に相当する)を示し、この線から右のポリマー組成物(「BR:0.015」とA:-C:との境界の間)は0.015を超える固有複屈折を有する。「RI:1.59」と標識された線は、屈折率の下限を示し、この線より右のポリマー組成物(「RI:1.59」とA:-C:境界の間)は、1.590未満の屈折率を有する。
組成のデータポイントXI(23重量%の軟質ブロックおよび77重量%のPPPBP)、X2(32重量%の軟質ブロックおよび68重量%のPPPBP)、X3(7重量%の軟質ブロック、20重量%のPPPBP、および73重量%のBPA)、およびX4(2重量%の軟質ブロック、19重量%のPPPBP、および79重量%のBPA)は、4つの線で定義される境界スペースの内側を形成するコーナー組成物の印となる(図7のTg:155、Tg:120、RI:1.59、およびBR:0.015)。これら4つの線で境界される斜線領域は、このポリマー組成物に対して計算した最適設計スペースであり、この設計スペースに入るいずれの組成物もが、カメラレンズのためのTg、RI、およびBRに対する性能必要条件を満たすと考えられている。
また図7では、設計ポイント1、2、および4〜7、(それぞれCExs.5〜10に相当する)および3、8、および9(それぞれExs.19〜21に相当する)をこのプロット上に重ね合わせることによって、高い屈折率(≧1.590)および低い固有複屈折(≦0.015nm)、およびTg(120℃〜155℃)を必要とする用途に有用な特性を有する組成物を同定する。したがって、図7の斜線領域内のデータポイントの分布はカメラレンズのための上記基準のすべてを満たした実施例に相当すると考えられている。したがって、実験の設計プロットによるとデータポイント3、8、および9に対する組成物(Exs.19、20、および21に相当する)およびデータポイント4および7および(CExs.7および10)は、カメラレンズに対する基準をそれぞれ満たすはずである。以下でデータを分析する。
Table 6(表6)に記載されている例において、軟質ブロック/PPPBP/BPAターポリマー(Exs.19〜21)は、RI値1.593(Ex.21)〜1.599(Ex.19)を示し、コポリマーを含有する、匹敵する軟質ブロックは、1.575(CEx.6)〜1.587(CEx.7)のRIを有し、匹敵するビスフェノールAホモポリマー(CEx.5)に対するRI値もこの中に入る。同様に、例示的ターポリマーは、固有複屈折0.003(Ex.19)〜0.013(Ex.21)を示し、比較例は、0.009(CExs.7および10)〜0.011(CEx.6)の範囲にあり、これらすべては、望ましくは、BPAホモポリマーCEx.5(0.025)の固有複屈折のおよそ半分以下であり、0.015以下のカメラレンズに適した所望の範囲内である。
軟質ブロック/PPPBPコポリマー(Ex.19)および軟質ブロック/PPPBP/DMBPCターポリマー(Ex.20)は、BPA含有ターポリマーと比較して、それぞれより高い屈折率の値、一般的に1.593(Ex.21)を示し、比較例ではより低かった。さらに、匹敵する軟質ブロックBPAコポリマーのRI(CExs.8および9は、それぞれRI値1.579および1.580を有する)は、これらの軟質ブロック含有量(それぞれ3.5重量%および2.5重量%)が低くとも、両方とも軟質ブロックPPPBPコポリマーのRIより低かった(Ex.19;RO、1.599)。これらは明らかに、PPPBPモノマーがもたらす有利なRI性能を示している。また、軟質ブロックPPPBPコポリマーEx.19(0.003)に対する固有複屈折は、比較例(CEx.5、0.025)または最も良いDMBPC含有ターポリマー(Ex.20、0.011)のいずれより有意に低い。
Table 6(表6)において一般的に見られるように、およそ20mol%で存在するより高い分子量の軟質ブロック(例えば、C36二酸)から誘導された軟質ブロックは、構造的に堅いモノマーPPPBP(例えば、Ex.19を参照されたい)と組み合わせて、これら組成物に対して得られる最高の屈折率および最低の固有複屈折をもたらした。しかしターポリマーに対して、少量(およそ7.5モル)の高炭素含有量の軟質ブロック(例えば、C36二酸、Exs.20および21)は、十分な固有複屈折を提供する一方で、低炭素含有量の軟質ブロック(例えば、CEx.7)の量の増加と共に見出される優れた固有複屈折をもたらさなかった。しかし、この比較例におけるより多くの量の軟質ブロックは、より高いBPA添加量(PPPBPは高くはない)により埋め合わされ、RIのターゲットである1.590以上を満たすには不十分(1.587)であるRIを提供した。ターポリマー中のコモノマーとして、重量によって同等の組成物に対し、C36軟質ブロックおよびPPPBPの後の第3のモノマーとして含まれていたDMBPCは、RIおよび固有複屈折の両方において、BPA(DMBPCを用いたEx.20を、BPAを用いたEx.21と比較)よりも全体において良い性能を提供した。
Table 6(表6)全体のデータから、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンモノマー(例えば、PPPBP)から誘導された、比較的より高い量のカーボネート単位の包含により、例えば、ビスフェノールAから誘導されたカーボネート単位と比較して、望ましくは高いRIおよび低下したBRが生じたことを見て取れる。したがって、例えばレンズなどの用途のための、許容される固有複屈折およびRIの増加は、少なくともおよそ30mol%のPPPBPを必要とする(例えば、30mol%のPPPBP、固有複屈折0.013、およびRI1.593を有するEx.26を参照されたい)。
増加したDMBPCまたはPPPBPの含有量は、ガラス転移温度を増加させ、加工寛容度を減少させる(例えば、75重量%のPPPBPを用いたEx.19は、Tg152℃を有するのに対して、40重量%のBPAを用いたCEx.10は、Tg108℃を有する)こともまた述べられるべきである。軟質ブロックの量の上昇は、Tgをかなり減少させることができ、PPPBPまたはDMBPCの量の増加で埋め合わせられない場合、結果として生じる溶融特性が、プロセシングに不適切となることがある(例えば、押出成形および成型)。許容されるプロセシング条件(例えば、押出成形および成型条件)を得るため、このモノマーの脂肪族の部分の長さに応じて、少なくとも7.5mol%の脂肪族コモノマーが望ましい。例えば、7.5mol%のC36二酸および30.0mol%のセバシン酸から、同一のTgを得ることができる。しかし、ポリエステル-ポリカーボネート中のエステル含有量を増加すること(同一のTgを達成するため、より高い脂肪族ジカルボン酸含有量のセバシン酸で測定した場合)によって、切望しない副反応物の可能性が増加する結果となった。したがって、これらの特性と配慮のバランスを維持することは、有用な組成物を提供するために絶対必要である。全体の基準に基づき、Exs.19、20、および21の組成物であれば、一般的にカメラレンズに対して許容できる。これらのうちExs.20および21は、最低の軟質ブロック含有量(C36二酸)を有する。データポイント3(Ex.19)、4(CEx.7)、6(CEx.9)、8(Ex.20)、および9(Ex.21)を示す実験の設計プロットとの比較は、実験データと密接に一致するカメラレンズに対する基準をそれぞれ満たすべきであるのに対して、CEx.7のRI(RI、1.587)は、カメラレンズ組成物に対する適切さを低めてしまう。
異なる成型条件に対する複屈折(遅延)の比較。実施例22および23に対するおよび市販のポリマー比較例11に対する遅延値は、望ましい複屈折と最小の変色のバランスを達成するための最適な成型条件を判定するための異なる成型条件を使用して、成型したプラーク板を調製することによって判定された。評価したポリマー組成物に対して使用した成型条件をTable 7(表7)に記載する。
全部で3つの異なる成型設定、すなわち設定1、2、および3を使用して、実施例22(90:10mol%BPA/DDDAコポリマーに相当する)および実施例23(90:10モル%DMBPC/DDDAに相当する)に対して、最低の遅延に対する最適の成型条件を判定する。これらは、実施例21に対して、および比較例11(ZEONEX(登録商標)E48Rサイクロ-オレフィンポリマー、Zeon Chemicalsから入手可能)に対して上述されているように界面重合でそれぞれ調製した。バレル加熱域温度300、310、および320℃、ノズル温度315℃、および金型温度100℃で、成型した1.2mmの厚さのプラーク板上で遅延を測定し、50%相対湿度で24時間、状態が維持され、偏光顕微鏡およびMichel-Levy複屈折チャートを使用して分析し、上記Ex.1に対して論じた押出加工および成型条件を使用してサンプルレンズに成型した各ポリマーのサンプルに対して計算された平均遅延として、ナノメータ(nm)単位で報告した。各成型したプラーク板に対する破壊的干渉縞を、この方法を使用して、射出点から1.3cmのプラーク板上の点で測定した。破壊的干渉の例を、図8に示す。図8は、複屈折の増加により、設定1、2、および3で得たExs.22および23、およびCEx.11のそれぞれに対する干渉のカラー様式(虹様効果)を示す。図8の実施例および比較例に対する遅延値をTable 8(表8)で要約している。
Table 8(表8)は、実施例22および23のポリマー組成物は、プラーク板に対して射出点から1.3cmの地点で、設定3(バレル加熱域は1〜3であり、設定2よりも、ノズル温度はそれぞれ10℃高く、金型温度は、25℃高い)で測定した場合、それぞれ最大遅延値200nmを有することを示す。比較例11はまた、最大遅延200nmを示し、設定3のより高いバレル、ノズル、および金型温度で実施例22および23に匹敵した。一般的に、最も良い複屈折(すなわち、最低の最大遅延値)は、最高の成型温度で得た。しかし、成型温度の増加は、樹脂変色(すなわち、分解)の増加に相関し、したがって最終の製品の色と、複屈折とのバランスを最適化する必要がある。
図9は、実施例22および23、および比較例11のこれら異なる成型条件に対する感受性をさらに図示し、最低の複屈折を得るために必要な最適な成型条件の目安を提供する。設定2および3で成型したプラーク板が最も少ない干渉色パターンを有する(最低は、設定3での実施例22および23であり、設定2での比較例11であった)に対して、設定1の実施例23は、一番大きな干渉色ならびに最大の遅延値2,100nmを明らかに示したことにより証明されるように、データにおいて、l→2→3と設定が変更するにつれて(すなわち、バレル加熱域1から3、射出ノズルおよび金型の温度が増加するにつれて)複屈折が改善されているのが見て取れる。
成型したレンズの複屈折の測定。異なるバレル温度で成型したレンズに対して複屈折を測定したが、この場合、温度を変化させることによって、成型したレンズに欠陥を引き起こすことなく、最低の全体の複屈折を得ることができる。図9に示されているように、直径22mmを有するFanuc 50T-成型機を、射出サイクル時間90秒で、使用することによって、1回の射出につき4つのレンズを調製した。4つのレンズとランナーの重量は、5.1gであり、射出1回当たりのポリマーの対応する容積が低いので、さらに一組4つのレンズを生産するためのサイクル時間が高い(90秒)ので、バレル内のポリマーの滞留時間が、気温下で25分間に渡り、温度の増加および延長と共に分解および変色を引き起こす可能性がある。
通常ポリマー組成物の評価は、バレル温度330℃で開始され、試料は、図9において見られるように、均一に成形されたレンズが必要とされる場合には、射出欠陥、例えば外への広がり、変色、筋、およびバブルなどについてチェックを行う。このような欠陥が観察されたら、バレル気温を、5℃ずつ低下させ、それぞれの低下ごとに成型を行い、欠陥のない、均一に成形されたレンズが得られるまでこれを続ける。
成型したレンズの全体の複屈折を、上で論じたように、590nmの波長で作動させて、KOBRA-CCD自動複屈折アナライザー使用して測定した。図10は、DMBPC/PPPBP/C36二酸ターポリマー(実施例25、Table 6(表6)から)、BPA/PPPBP/C36二酸ターポリマー(実施例21、Table 6(表6)から)、および基準の光学品質のポリカーボネート(OQ-PC;比較例1の組成物に相当する)に基づくレンズの代表的記録を示している。異なる色は、遅延の尺度である。図10に見られるように、実施例24および25のそれぞれは、各レンズの効果的領域に対して、成型したレンズに対する低い全複屈折最大値(すなわち、88nm未満の遅延)を示すが、ただし、DMBPC含有レンズの効果的領域は、BPA含有レンズに対するものよりもわずかに大きい(実施例に対するx-y座標)。これらのデータに基づき、実施例20の材料は、バレル温度300℃で成型したとき、効果的なレンズ領域の関数として最低の全複屈折を示した。
この書かれた明細書は、実施例を使用することによって、最も良い方法を含めた本発明を開示し、またいかなる当業者も、本発明を作製および使用することが可能になる。特許性のある本発明の範囲は、特許請求の範囲で定義され、当業者に起こる他の実施例を含んでもよい。このような他の実施例は、特許請求の範囲の言語とは文字通り異ならない構造的要素を有する場合、またはこれらが、特許請求の範囲の言語とは文字通り実体のない相違点を有する同等の構造的要素を含む場合、これらが特許請求の範囲内であることを意図する。
すべての引用された特許、特許出願および他の参考文献は、これら全体が、本明細書に参照により組み込まれている。しかし、本出願の用語が、参考文献に組み込まれている用語と矛盾または衝突する場合、本出願からの用語が、組み込まれた参考文献からの矛盾する用語より優先される。
本明細書中に開示されているすべての範囲は、エンドポイントを含め、これらエンドポイントは、互いに独立して結合できる。例えば、「およそ25重量%以下、または、より具体的には、およそ5重量%〜およそ20重量%」の範囲は、「およそ5重量%〜およそ25重量%」などの範囲のエンドポイントおよびすべての中間の値を含む。接尾語「(s)」は、本明細書で使用する場合、それが修飾する単数と複数の両方の用語を含むことを意図し、したがってその用語のうちの少なくとも1つを含む(例えば、着色料(s)は、少なくとも1つの着色料を含む)。「場合による」または「場合によって」は、続いて記載されている事象または状況が起こる可能性または起こらない可能性があることを意味し、明細書は、事象が起こる例およびそれが起こらない例を含む。本明細書で使用する場合、「組合せ」は、ブレンド、混合、アロイ、反応生成物などが含まれる。すべての参考文献は、本明細書に参照により組み込まれている.
化合物は、基準命名法を使用して記載される。例えば任意の指摘された基により置換されていない任意の位置は、示された結合により、または水素原子により満たされたその原子価を有すると理解されている。2つの文字または記号の間にないダッシュ記号(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素を介して結合する。
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」という用語は、炭素および水素を、場合によって少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、ハロゲン、または硫黄と共に含む置換基を大まかに指す。「アルキル」は、直鎖または分枝の鎖の一価の炭化水素基を指す。「アルキレン」は、直鎖または分枝の鎖の二価の炭化水素基を指す。「アルキリデン」は、両方の原子価が単一の一般的な炭素原子上にある直鎖または分枝の鎖二価の炭化水素基を指す。「アルケニル」は、炭素-炭素二重結合により結合している少なくとも2個の炭素を有する直鎖または分枝の鎖の一価の炭化水素基を指す。「シクロアルキル」は、少なくとも3個の炭素原子を有する、非芳香族一価の単環式または多環炭化水素基を指す。「シクロアルケニル」は、少なくとも3個の炭素原子を有する、少なくとも1つの不飽和度を有する非芳香族環状鎖の二価の炭化水素基を指す。「アリール」は、芳香環または環の中に炭素のみを含有する芳香族一価の基を指す。「アリーレン」は、芳香環または環の中に炭素のみを含有する芳香族二価の基を指す。「アルキルアリール」は、上で定義されたアルキル基で置換されているアリール基を指し、4-メチルフェニルは、例示的アルキルアリール基である。「アリールアルキル」は、上で定義されたアリール基で置換されているアルキル基を指し、ベンジルは、例示的アリールアルキル基である。「アシル」は、指示された数の炭素原子が、カルボニル炭素橋(-C(=0)-)を介して結合している、上で定義されたアルキル基を指す。「アルコキシ」は、指摘された数の炭素原子が、酸素橋(-0-)を介して結合している、上で定義されたアルキル基を指す。「アリールオキシ」は、指摘された数の炭素原子が、酸素橋(-0-)を介して結合している、上で定義されたアリール基を指す。
様々な種類の光学グレード製品は、本発明の開示のポリマーを含有する、1つまたは複数の成分を含有することができる。
一実施形態では、光学グレード製品は、カメラレンズ、ゴーグルレンズ、ライトガイド、撮像媒体、または透明ベゼルである。
当業者であれば、光学グレード製品を包含する製造品を製造することができ、例えばカメラ製造技法は、当技術分野で十分に理解されている。
一実施形態では、製造品は耐光性ハウジングを含む撮像装置であってよく、このハウジングは、シャッター、シャッター制御ビヒクル、撮像基材、および光透過媒体を含有し、この光透過媒体は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマー含む、熱可塑性組成物を含む、光学グレード製品を含有し、このポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマーは、以下のモノマー単位:C20〜44脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体から誘導された軟質ブロックエステル単位を10〜25重量%、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンから誘導されたカーボネート単位を34〜77重量%、およびジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されたカーボネート単位(ただし2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンは除く)を0〜76重量%を含み、軟質ブロックエステル単位、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジン単位、およびジヒドロキシ芳香族化合物単位の重量パーセンテージの合計は、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのモノマー単位の100重量パーセントであり、熱可塑性組成物の屈折率は、1.590以上であり、コポリマーのガラス転移温度は120〜155℃である。
別の実施形態において、製造品は、遮光ハウジングを含む撮像装置であってよく、このハウジングは、シャッター、シャッター制御ビヒクル、撮像基材、および光透過媒体を含有し、この光透過媒体は:a)ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートコポリマー(以下のモノマー単位:式(9e)の軟質ブロックエステル単位:
(式中、mおよびm'は、独立して0〜38である、nおよびn'は、独立して0〜38であり、およびm+m'+n+n'の合計は、14〜38の整数である)を10〜25重量%、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンから誘導されたカーボネート単位を34〜77重量%、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジンと同一ではないジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されたカーボネート単位を0〜76重量%含み、軟質ブロックエステル単位、2-ヒドロカルビル-3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)フタルイミジン単位、およびジヒドロキシ芳香族化合物単位の重量パーセンテージの合計が、ポリ(脂肪族エステル)-ポリカーボネートのモノマー単位の100重量パーセントである)、およびb)BPAポリカーボネートを含む組成物を含有し、この熱可塑性組成物から成型し、厚さ3.2mmを有する製品は、ASTMD1003-00に従い測定したとき、1.0パーセント以下のヘイズを有し、熱可塑性組成物の屈折率は、1.590以上であり、このカメラレンズは、効果的レンズ領域0.5mm2〜100mm2を有し、バレル温度300℃で前記熱可塑性組成物から成型され、parallel Nicols方法により、波長590nmで複屈折を測定した場合、90ナノメートル以下の複屈折を有する。
本発明を記載する状況での(特に以下の特許請求の範囲の状況で)、「a」および「an」および「the」という用語ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書中で他に指示されない限りまたは文脈により明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈されるものとする。さらに、「第1の」「第2の」などの用語は、本明細書中で、任意の順序、量、または重要性を意味せず、むしろ一つの要素と別の要素とを区別するために使用されることにさらに注目されたい。修飾語「およそ」は、量に関連して使用される場合、述べられている値を含み、文脈により決定される意味を有する(例えば、これは、特定の量の測定に関連する誤差の程度を含む)。
本明細書で使用する場合、「含む」は、「基本的にからなる」および「からなる」を含む。さらなる実施形態では、本発明は、従属請求項の独立請求項への組合せおよび下位の組合せを包含する。例えば、2つの従属請求項が一独立請求項に依存する場合、両方の従属請求項の主題を組み合わせて、一独立請求項にできる。
さらに別の実施形態において、開示した範囲、例えば重量%、温度、分子量、および/または炭素量は、この範囲内の任意の中間値を含み、および/または開示した範囲内の任意の下位の範囲を含めたものとする。
典型的な実施形態が、例示目的で記載されるのに対して、前述の明細書は、本明細書中の範囲を限定するものとみなされてはならない。したがって、様々な修正、適応、および代替形態が、本明細書中の趣旨および範囲から逸脱することなしに、当業者に生じる可能性がある。