JP2013505013A - 強化導入遺伝子発現およびプロセッシングの産物および方法 - Google Patents

強化導入遺伝子発現およびプロセッシングの産物および方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2013505013A
JP2013505013A JP2012529354A JP2012529354A JP2013505013A JP 2013505013 A JP2013505013 A JP 2013505013A JP 2012529354 A JP2012529354 A JP 2012529354A JP 2012529354 A JP2012529354 A JP 2012529354A JP 2013505013 A JP2013505013 A JP 2013505013A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cell
transgene
transfection
protein
mar
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012529354A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013505013A5 (ja
Inventor
メルモ,ニコラス
ジロード,ピエール‐アラン
グランジャン,メラニー
フォルン,ヴァレリー ル
カラブレーゼ,デヴィッド
レガメー,アレキサンドレ
Original Assignee
セレクシス エス.エー.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by セレクシス エス.エー. filed Critical セレクシス エス.エー.
Publication of JP2013505013A publication Critical patent/JP2013505013A/ja
Publication of JP2013505013A5 publication Critical patent/JP2013505013A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/87Introduction of foreign genetic material using processes not otherwise provided for, e.g. co-transformation
    • C12N15/90Stable introduction of foreign DNA into chromosome
    • C12N15/902Stable introduction of foreign DNA into chromosome using homologous recombination
    • C12N15/907Stable introduction of foreign DNA into chromosome using homologous recombination in mammalian cells
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/85Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for animal cells
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/10Cells modified by introduction of foreign genetic material
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2830/00Vector systems having a special element relevant for transcription
    • C12N2830/46Vector systems having a special element relevant for transcription elements influencing chromatin structure, e.g. scaffold/matrix attachment region, methylation free island

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

導入遺伝子発現のための方法および真核生物宿主細胞を開示する。細胞を処理および/または修飾して、相同性組換え(HR)の増大、非相同的末端結合(NHEJ)の減少、および/または前記細胞におけるHR/NHEJ比の増強が可能である。有利には細胞のゲノム中に組み込まれて200超の導入遺伝子コピーを含み得るコンカテマー構造を形成する導入遺伝子を含むベクターで、そのような細胞をトランスフェクトすることができる。導入遺伝子発現をさらに増強および/または促進するために、MARなどのある発現増強エレメントが有利には提供される。ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与するタンパク質および/またはRNA、特に霊長類タンパク質および/またはRNAをコード化するトランスジェニック配列を含む組換え真核生物宿主細胞、特に非霊長類宿主細胞も開示される。
【選択図】図1C

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が参照することによって本明細書中に組み入れられる、2009年9月18日に出願された、米国仮特許出願第61/243,950号の利益を主張する。
本発明は、導入遺伝子発現のための方法および真核生物宿主細胞に関する。導入遺伝子発現は、非相同的末端結合(NHEJ)よりも相同的組換え(HR)を選択することによりブーストされる。本発明は、非霊長類真核生物宿主細胞において、霊長類、特にヒトに関連するタンパク質、ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に介在するかまたは影響を及ぼす経路を提供することにも関する。
治療的タンパク質の生物工学的産生ならびに遺伝子および細胞治療は、真核生物細胞中に導入された導入遺伝子の発現の成功にかかっている。導入遺伝子発現の成功は多くの場合、宿主染色体中に導入遺伝子組み込むことを必要とし、とりわけ、組み込まれた導入遺伝子コピー数によって、そして低いかもしくは不安定な転写および/または高いクローン変異性を引き起こし得る後成的な効果によって制限される。導入遺伝子発現産物の細胞からの輸送の失敗または低減もまた、多くの場合、治療的タンパク質の産生ならびに遺伝子および細胞治療を制限する。本発明を説明するために、特に実施に関するさらなる詳細を提供するために用いられる刊行物および他の資料(特許および受入番号を包含する)は、その全体が参照することによって本明細書中に組み込まれる。便宜上、刊行物は以下の文で、著者および日付によって参照され、添付の参考文献目録に著者のアルファベット順で列挙されている。真核生物のDNAはクロマチン中にぎっちりと詰め込まれているという事実から、直径数マイクロメートルの核内に真核生物ゲノム全体をちょうど収めることができる。しかし、この事実は、遺伝子発現が、高度に調節された精緻な細胞機構を含むクロマチンの局所的一時的凝縮および脱凝縮により制御されることを必要とする。加えて、宿主染色体中への導入遺伝子組み込みは、ほとんどの場合、ランダムな事象であり、その結果、ランダムな組み込み位置および様々なコピー数となる。安定な導入遺伝子発現において独立した形質転換体間で一般的に観察される高度の変異性は、宿主ゲノム内に組み込まれる導入遺伝子のコピー数および導入遺伝子組込み部位でのクロマチン環境に依存すると考えられる(Kalos and Fournier, 1995; Recillas−Targa et al., 2002)。ランダムな位置中に組み込まれる導入遺伝子の発現は、組み込み位置での調節エレメントの任意の存在ならびに組み込み位置に隣接する染色体ドメインのクロマチン構造により影響を受ける可能性がある。例えば、位置効果変動と呼ばれる現象は、抑制クロマチンに近いので、時間とともに活性遺伝子のサイレンシングを誘発し得る。(Robertson et al., 1995; Henikoff, 1996; Wakimoto, 1998)。
種々のトランスフェクション効率で遺伝子導入を促進するために、リン酸カルシウムDNA共沈、ポリエチレンイミン法、エレクトロポーレーションおよびポリカチオン性脂質などの多くの方法が開発されている。導入遺伝子のコピー数を増加させ、ひいては導入遺伝子発現を増大させる一方法は、遺伝子増幅である(Kaufman, 2000)。代替法は、合成または天然制御配列の挿入により発現ベクターを最適化することである。
ほ乳類細胞において導入遺伝子発現を増大させ、安定化させるために、マイナスの位置効果から導入遺伝子をするために後成的なレギュレーターが使用されており(Bell and Felsenfeld, 1999)、これらには、境界またはインスレーターエレメント、遺伝子座調節領域(LCR)、安定化およびアンチリプレッサー(STAR)エレメント、偏在的作用性(ubiquitously acting)クロマチンオープニング(UCOE)エレメントならびに前記マトリックス付着領域(MAR)が含まれる。これらの後成的なレギュレーターは全て、ほ乳類細胞系における組換えタンパク質産生のために使用されており(Zahn−Zabal et al., 2001; Kim et al., 2004)、また遺伝子治療のために使用されている(Agarwal et al., 1998; Allen et al., 1996; Castilla et al., 1998)。
前述のように、細胞からの導入遺伝子発現産物の輸送の失敗または低下によっても、治療的タンパク質の産生ならびに遺伝子および細胞治療が制限されることが多い。導入遺伝子発現産物は、多くの場合、種々の支障に直面する。すなわち、その天然のタンパク質を処理し、輸送する機構を備えているだけの細胞は、ある種の導入遺伝子発現産物を輸送することにより、特にそれらが多くの場合に望ましいよりも異常に高いレベルで産生される場合に、容易に限界を超える可能性があり、この産物を細胞内で凝集させ、および/または、たとえば機能的タンパク質産物の適切なフォールディングを妨げる。
輸送およびプロセッシングの支障を克服するために、種々の方法が実施されている。たとえば、改善された分泌特性を有するCHO細胞は、膜小胞輸送(membranous vesicles trafficking)、そしてひいては分泌されたタンパク質エキソサイトーシスのレギュレーターとして作用するSMタンパク質Munc18cまたはSly1の発現によって操作された(米国特許公開第20090247609号)。ERストレスを軽減し、タンパク質分泌を増大させるために、Xボックス結合タンパク質1(Xbp1)、分泌細胞分化ならびにER維持および増殖(expansion)を制御する転写因子、または種々のタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)も使用されている(Mohan et al. 2007)。タンパク質分泌を増大させるための他の試みには、CHO細胞におけるシャペロンERp57、カルネキシン、カルレティキュリンおよびBiP1の発現が含まれていた(Chung et al., 2004)。最後に、低温ショックで誘発されたタンパク質、低温誘発性RNA結合タンパク質(CIRP)の発現は、組換えγ−インターフェロンの収率を増大させることが示された。分泌複合体のタンパク質を過剰発現する試みもなされた。しかし、例えば、Lakkarajuら(2008)は、WTヒト細胞(たとえば、低レベルのSRP14を発現するように操作されていない細胞)においては外因性SRP14発現が分泌されたアルカリホスファターゼタンパク質の分泌効率を改善しなかったことを報告した。
したがって、効率的で、より信頼性の高い導入遺伝子発現、たとえば、組換えタンパク質産生および遺伝子治療が必要とされている。導入遺伝子発現産物を細胞の外側へうまく輸送することも必要とされる。
このような必要性および当該技術分野における他の必要性については、本発明のある実施形態で取り組む。
本発明は、導入遺伝子発現のための方法であって、(a)真核生物、好ましくはほ乳類宿主細胞を提供し(ここで、前記宿主細胞は、相同性組換え(HR)の増大、非相同的末端結合(NHEJ)の減少、および/または前記細胞におけるHR/NHEJ比の向上のために修飾または処理されている)、そして(b)前記細胞を、前記導入遺伝子を含む少なくとも1つのベクター、および場合によってマトリックス付着領域(MAR)エレメントでトランスフェクトすること(ここで、前記MARエレメントは、前記導入遺伝子に対してシスまたはトランスで提供される)を含む方法に関する。
(b)でのトランスフェクションは、1回だけの後続トランスフェクション(subsequent transfection)を含む後続トランスフェクションであってよく、その前に、核酸、たとえばベクターまたは核酸フラグメントでの初期トランスフェクション(1回だけの初期トランスフェクションを含む)が先行してもよい。細胞集団を化学または温度処理に付すことにより、前記細胞の細胞集団の細胞周期を同期させることができる。初期および後続トランスフェクションは、集団の細胞の大部分が細胞周期のG1期である時点で起こり得る。細胞集団の細胞の30%超、31%、32%、33%、34%、35%、36%、36%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%または45%超がG1期であり得る。好ましくは、初期トランスフェクションの前に、HR酵素、HRアクチベーターおよび/またはNHEJサプレッサーを投与することができる。細胞は組換え真核生物宿主細胞であってもよく、HR酵素、HRアクチベーターおよび/またはNHEJサプレッサーをコード化するトランスジェニック配列を含み得る。細胞はまた、NHEJまたはHR遺伝子において突然変異し得る。その代わりに、またはそれに加えて、前記細胞のゲノムを突然変異させて、NHEJを不活性化し、少なくとも1つのHR酵素、少なくとも1つのHRアクチベーターおよび/または少なくとも1つのNHEJサプレッサーの発現もしくは活性を増大させることができる。
前記初期トランスフェクションの核酸は、ある実施形態では、導入遺伝子を含むベクターである。初期トランスフェクションのベクターおよび前記少なくとも1つの後続トランスフェクションの少なくとも1つのベクターは、細胞のゲノム中への組み込みの前および/または後にコンカテマー構造を形成し得る。コンカテマー構造は、少なくとも200、300、400、500または600コピーの前記導入遺伝子を含み得る。細胞のHR/NHEJ比は、それぞれ、前記トランスジェニック配列を含まず、突然変異されていない細胞で見出される比よりも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30倍まで高い可能性がある。細胞のNHEJ活性は約0に等しい可能性がある。
前記少なくとも1つの後続トランスフェクション後に前記細胞のゲノム中に組み込まれた前記導入遺伝子の組み込みコピー数は、(b)のベクターで直接トランスフェクションすることにより得られる組み込みコピー数を表す基準値の2倍を超える可能性がある。
初期トランスフェクションの核酸は、MARエレメントおよび前記導入遺伝子を含むベクターであり得る。初期トランスフェクション、例えば1回の初期トランスフェクション後に、前記導入遺伝子の発現は、初期レベルに達する可能性があり、後続トランスフェクション、例えば1回の後続トランスフェクション後の導入遺伝子の発現は、付加的以上、好ましくは前記初期レベルの2倍、3倍または4倍超である後続レベルに達し得る。その代わりに、またはそれに加えて、初期トランスフェクション後に、細胞のゲノム中に組み込まれる導入遺伝子コピー数は、(n)に等しい可能性があり、少なくとも1回の後続トランスフェクション後に、ゲノム中に組み込まれる導入遺伝子コピー数は、2(n)、3(n)または4(n)超であり得る。導入遺伝子は、1つの座でコンカテマー構造として前記細胞のゲノム中に組み込まれる可能性がある。
(b)におけるMARエレメントは、発現を改善することができ、複数コピーの導入遺伝子を含むベクターを共組み込みから実質的または完全に防ぐことができる。
少なくとも1つの後続トランスフェクションのベクターの50%、60%、70%、80%超が核中に輸送され得る。
初期トランスフェクション後、導入遺伝子発現産物の初期レベルおよび初期導入遺伝子コピー数に到達する可能性がある。前記少なくとも1つの後続トランスフェクション後、導入遺伝子発現産物のレベルは、後続レベルまで増加する可能性があり、初期導入遺伝子コピー数は後続導入遺伝子コピー数まで増加する可能性があり、この場合、導入遺伝子発現産物の第1レベルから第2レベル間の増加は、初期導入遺伝子コピー数から後続導入遺伝子コピー数間の増加を20%、30%、40%、50%または60%を上回る可能性がある。
少なくとも1つの第1トランスフェクションの前記ベクターのベクター配列は、少なくとも、前記後続トランスフェクション(複数可)の第1のもののベクターのベクター配列と100%または少なくとも95%、90%、85%もしくは80%の配列同一性を有し得る。初期トランスフェクションのベクターは、MARエレメントを含んでもよく、前記MARエレメントは、少なくとも、前記後続トランスフェクション(複数可)の第1のもののベクターのMARエレメントと100%または少なくとも95%、90%、85%もしくは80%の配列同一性を有し得る。初期トランスフェクションのベクターは、導入遺伝子を含む可能性があり、導入遺伝子は、少なくとも、前記後続トランスフェクション(複数可)の第1のもののベクターの導入遺伝子と100%または少なくとも95%、90%、85%もしくは80%の配列同一性を有し得る。MARエレメントは、(b)においてベクターの一部としてシスで提供され得る。ある実施形態において、導入遺伝子には、少なくとも2つのMARエレメントが隣接している。MARエレメントは、前記導入遺伝子のプロモーター/エンハンサー配列の上流に位置する可能性がある。MAR配列は、配列番号1〜3と少なくとも90%の配列同一性を有し得るか、またはその変異体である。
本発明はまた、
(a)NHEJサプレッサーを発現するトランスジェニック配列、
(b)1つまたはそれ以上のHR酵素またはHRアクチベーターを発現するトランスジェニック配列、
(c)NHEJ遺伝子を不活性化もしくは下方調節する突然変異、および/または
(d)HR酵素、HRアクチベーターもしくはNHEJサプレッサーの発現もしくは活性を増強する突然変異を
含む組換え真核生物、好ましくはほ乳類の宿主細胞に関し、
この場合、組換え真核生物宿主細胞は、(a)および/または(b)の前記トランスジェニック配列を含まない細胞において見出される比よりも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30倍超高いHR/NHEJ比を有し、そして、場合によってマトリックス付着領域(MAR)エレメントを含む。
本発明はまた、
(a)NHEJサプレッサーを発現するトランスジェニック配列、
(b)1つまたはそれ以上のHR酵素またはHRアクチベーターを発現するトランスジェニック配列、
(c)NHEJ遺伝子を不活性化もしくは下方調節する突然変異、および/または
(d)HR酵素、HRアクチベーターまたはNHEJサプレッサーの発現または活性を増強する突然変異、および
前記細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子、および
場合によって、MARエレメント
を含む、組換え真核生物、好ましくはほ乳類の宿主細胞にも関し、ここで、前記MARエレメントは、シスまたはトランスで前記導入遺伝子に対して提供される。
1つまたはそれ以上のHR酵素は、Rad51、Rad52、RecA、Rad54、RuvCもしくはBRCA2であってよく、および/またはHRアクチベーターはRS−1であってよく、および/又NHEJサプレッサーは、NU7026および/またはワートマニンであってよい。
導入遺伝子は、誘導性プロモーターなどの誘導性発現のための制御エレメントと機能的に連結されている可能性があり、この場合、前記誘導性プロモーターは、場合によって、熱ショックプロモーターなどの物理的に活性化されたプロモーターまたはIPTGもしくはテトラサイクリンにより活性化されたプロモーターなどの化学的に活性化されたプロモーターである。
(c)または(d)における突然変異(複数可)は、xrcc4遺伝子、RAD51鎖トランスフェラーゼ遺伝子、DNA依存性タンパク質キナーゼ遺伝子、Rad52遺伝子、RecA遺伝子、Rad54遺伝子、RuvC遺伝子および/またはBRCA2遺伝子における突然変異(複数可)であり得る。
導入遺伝子は、細胞のゲノムの1つの座中に組み入れられる可能性があり、コンカテマー構造を形成する可能性がある。このコンカテマー構造は、少なくとも200、300、400、500または600コピーの導入遺伝子を含み得る。
本発明はまた、
ゲノムの1つの座中に組み込まれた、プロモーターに機能的に連結した導入遺伝子のコンカテマー構造を含む、組換え真核生物、好ましくはほ乳類宿主細胞にも関し、ここで、コンカテマー構造は、少なくとも300、400、500または600コピーの導入遺伝子および少なくとも1つのMARエレメントを含み、前記MARエレメントはシスまたはトランスで前記導入遺伝子に提供され、前記細胞は、好ましくは同期された細胞集団の一部である。
少なくとも1つのMARは、シスで提供される可能性があり、前記導入遺伝子の大部分は、前記導入遺伝子のそれぞれについてMARが提供されていてもよく、および/または導入遺伝子は少なくとも2つの前記MARエレメントと隣接していてもよい。少なくとも1つのMARエレメントは、配列番号1〜3と少なくとも90%の配列同一性を有し得るか、または配列番号1〜3の変異体であり得、および/または前記導入遺伝子のプロモーター/エンハンサー配列の上流に位置し得る。細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、幹細胞または前駆細胞であり得る。
本発明はまた、本明細書中に記載される組換え真核生物宿主細胞のいずれか1つの、特に前記導入遺伝子の発現のための使用にも関する。
本発明はまた、
a.第1容器中に、場合によってMARエレメントおよび導入遺伝子の前記ベクター中への組み込みの制限部位を含むベクター、
b.第2容器中に、本明細書中に記載される組換え真核生物宿主、ならびに
c.導入遺伝子発現のために前記細胞をトランスフェクトする際の前記ベクターの使用法の説明書
を含むキットにも関する。
キットは、同期剤または前記細胞(複数可)を含む細胞集団を同期させる方法に関する説明書も含んでもよい。ベクターを用いて細胞を少なくとも2回トランスフェクトすることができる(それぞれの場合、前記細胞集団の細胞のほとんどがG1期である)。
本発明はまた、
ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する少なくとも1つの霊長類タンパク質または霊長類RNAをコード化するトランスジェニック配列、たとえばシグナル認識粒子(SRP)のタンパク質もしくはRNAまたは分泌複合体(トランスロコン)のタンパク質もしくはそのサブユニットなど
を含む非霊長類組換え真核生物宿主細胞にも関する。
細胞は、シグナルペプチドコーディング配列と機能的に結合した導入遺伝子をさらに含んでもよく、この場合、前記導入遺伝子は、細胞中に複数コピーで、好ましくはコンカテマー構造の形態で存在してもよい。細胞は、少なくとも200、300、400、500または600コピーの導入遺伝子を含み得る。前記シグナルペプチドコーディング配列によってコード化されるシグナルペプチドは、アミノ酸の疎水性ストレッチを含み得、SRP54と相互作用するための1つまたはそれ以上の配列を有し得る。細胞はまた、前記導入遺伝子に対してシスまたはトランスに位置する後成的な調節エレメント、たとえばMARエレメントも含み得る。ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与するタンパク質またはRNAは、SRP、特にSRP9、SRP14、SRP19、SRP54、SRP68、SRP72および/または7SRNAのタンパク質またはRNAであってよい。SRPのタンパク質は、好ましくは、ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する1つもしくはそれ以上の他の前記タンパク質またはRNAと結合したヒトSRP14であり得る。1つまたはそれ以上の他の前記タンパク質は、ヒトSRおよび/またはヒトトランスロコンタンパク質であり得る。SRPのタンパク質は、好ましくはER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する1つまたはそれ以上の他の前記タンパク質またはRNAと結合したヒトSRP54であり得る。1つまたはそれ以上の他の前記タンパク質は、ヒトSRおよび/またはヒトトランスロコンタンパク質であり得る。
原形質膜を越える分泌および/または転位に関与するタンパク質またはRNAは、トランスロコンのタンパク質のうちの1つ、特にSec61αβγ、Sec62、Sec63および/またはそのサブユニットであってよい。原形質膜を越える分泌および/または転位に関与するタンパク質またはRNAは、SRP9、SRP14およびトランスロコンタンパク質の組み合わせであってよい。導入遺伝子は、免疫グロブリン、そのサブユニットもしくはフラグメントまたは融合タンパク質であってよい。非霊長類細胞は、齧歯類細胞、好ましくはCHO細胞であり得る。シグナル配列コーディング配列は、配列番号4〜11と少なくとも90%の配列同一性を有し得るか、または前記配列のいずれか1つの変異体であり得る。
本発明はまた、細胞の原形質膜を越える導入遺伝子発現産物の分泌および/または転位における非霊長類組換え真核生物宿主細胞の使用に関する。
本発明はまた、
(a)1つの容器中に、細胞のゲノムの一部、ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質またはRNA、たとえばシグナル認識粒子(SRP)のタンパク質またはRNAあるいは分泌複合体(トランスロコン)のタンパク質またはそのサブユニットをコード化するトランスジェニック配列を含む非霊長類組換え宿主細胞、
(b)別の容器中に、導入遺伝子を前記ベクター中に組み込むための制限部位および場合によってMARエレメントを含む少なくとも1つのベクター、ならびに
(c)前記細胞を使用して前記導入遺伝子の導入遺伝子発現産物を発現し、分泌させるための説明書
を含むキットに関する。
本発明はさらに:
(a)小胞体を越える分泌および/または転位に関与する少なくとも1つの霊長類タンパク質または霊長類RNAおよび/または小胞体および/または原形質膜、たとえばシグナル認識粒子(SRP)のタンパク質またはRNAまたは分泌複合体(トランスロコン)のタンパク質またはそのサブユニットをコード化するトランスジェニック配列、ならびに
(b)シグナルペプチドコーディング配列に機能的に結合した導入遺伝子
を含む非霊長類真核生物宿主細胞を提供することを含む、導入遺伝子のタンパク質分泌のための方法に関する。
トランスジェニック配列は、前記細胞中に存在する原形質膜を越える分泌および/または転位に関与するタンパク質またはRNAの合計量を、前記トランスジェニック配列を含む/発現する前の細胞中で見いだされるレベルよりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%を越えて増大させる可能性がある。
導入遺伝子は、細胞のゲノム中に組み入れられたコンカテマー構造として存在し得、この場合、コンカテマー構造は、好ましくは、少なくとも200、300、400、500または600コピーの導入遺伝子を含み、前記細胞のゲノムの1つの座中に組み入れられていてもよい。
シグナルペプチドコーディング配列によってコード化されるシグナルペプチドは、アミノ酸の疎水性ストレッチを含み得、SRP54と相互作用するための配列を有し得る。
(b)におけるトランスフェクションは、後続トランスフェクションであり得、ベクターまたは核酸フラグメントなどの核酸での初期トランスフェクションが先行してもよい。
初期トランスフェクションのベクターは、(b)におけるベクターに対応し得る。
トランスジェニック配列は、配列番号4〜11の群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有し得るか、または前記配列のいずれか1つの変異体であり得る。
本発明はまた、トランスジェニック配列の活性を増大させるタンパク質分泌および/または転位を特定するための方法であって:
組換えタンパク質をコード化する導入遺伝子を含む第1ほ乳類細胞をモニタリングし(ここで、前記組換えタンパク質は第1レベルで前記細胞により分泌される)、
前記組換えタンパク質をコード化する前記導入遺伝子を含む第2のほ乳類細胞をモニタリングし(組換えタンパク質は第2のレベルで前記細胞により分泌され、前記第2レベルは前記第1レベルを上回る)、
前記第1ほ乳類細胞中に、原形質膜を越える分泌および/または転位に関与する少なくとも1つのタンパク質またはRNAをコード化するトランスジェニック配列を導入し、そして
前記第1細胞における前記組換えタンパク質の分泌レベルの変化を測定すること
を含む方法にも関し、
この場合、第1レベルを越えた増加は、前記トランスジェニック配列の活性を増加させるタンパク質分泌を確認する。
MARおよび連続したトランスフェクションの遺伝子導入および発現に対する効果の分析ならびにMAR含有発現ベクターのダブルトランスフェクションにより得られる導入遺伝子発現レベルの図である。 MARおよび連続したトランスフェクションの遺伝子導入および発現に対する効果の分析ならびにMAR含有発現ベクターのダブルトランスフェクションにより得られる導入遺伝子発現レベルの図である。 MARおよび連続したトランスフェクションの遺伝子導入および発現に対する効果の分析ならびにMAR含有発現ベクターのダブルトランスフェクションにより得られる導入遺伝子発現レベルの図である。 MARおよび連続したトランスフェクションの遺伝子導入および発現に対する効果の分析ならびにMAR含有発現ベクターのダブルトランスフェクションにより得られる導入遺伝子発現レベルの図である。 MARおよび連続したトランスフェクションの遺伝子導入および発現に対する効果の分析ならびにMAR含有発現ベクターのダブルトランスフェクションにより得られる導入遺伝子発現レベルの図である。 MARおよび連続したトランスフェクションの遺伝子導入および発現に対する効果の分析ならびにMAR含有発現ベクターのダブルトランスフェクションにより得られる導入遺伝子発現レベルの図である。 連続トランスフェクションと細胞分裂サイクルを通しての細胞培養進行との間の至適時期の決定。 連続トランスフェクションと細胞分裂サイクルを通しての細胞培養進行との間の至適時期の決定。 連続トランスフェクションと細胞分裂サイクルを通しての細胞培養進行との間の至適時期の決定。 連続トランスフェクションと細胞分裂サイクルを通しての細胞培養進行との間の至適時期の決定。 連続トランスフェクションによるDNA輸送、組み込みおよび発現およびモノクローン細胞集団における平均GFP蛍光と導入遺伝子コピー数との間の関係。 連続トランスフェクションによるDNA輸送、組み込みおよび発現およびモノクローン細胞集団における平均GFP蛍光と導入遺伝子コピー数との間の関係。 連続トランスフェクションによるDNA輸送、組み込みおよび発現およびモノクローン細胞集団における平均GFP蛍光と導入遺伝子コピー数との間の関係。 連続トランスフェクションによるDNA輸送、組み込みおよび発現およびモノクローン細胞集団における平均GFP蛍光と導入遺伝子コピー数との間の関係。 連続トランスフェクションによるDNA輸送、組み込みおよび発現およびモノクローン細胞集団における平均GFP蛍光と導入遺伝子コピー数との間の関係。 トランスフェクトされたDNAの細胞内分布およびDNAのコンフォメーションの遺伝子導入および発現に対する影響。 トランスフェクトされたDNAの細胞内分布およびDNAのコンフォメーションの遺伝子導入および発現に対する影響。 トランスフェクトされたDNAの細胞内分布およびDNAのコンフォメーションの遺伝子導入および発現に対する影響。 MARSを介した高い導入遺伝子発現、プラスミド相同性および相同性組換えならびにMARでの繰り返しトランスフェクションにより改善された発現のモデル。 MARSを介した高い導入遺伝子発現、プラスミド相同性および相同性組換えならびにMARでの繰り返しトランスフェクションにより改善された発現のモデル。 MARSを介した高い導入遺伝子発現、プラスミド相同性および相同性組換えならびにMARでの繰り返しトランスフェクションにより改善された発現のモデル。 MARSを介した高い導入遺伝子発現、プラスミド相同性および相同性組換えならびにMARでの繰り返しトランスフェクションにより改善された発現のモデル。 MARSを介した高い導入遺伝子発現、プラスミド相同性および相同性組換えならびにMARでの繰り返しトランスフェクションにより改善された発現のモデル。 高および低組換えIgGプロデューサーCHOクローンにより発現された免疫グロブリンの重および軽鎖の特性化。 高および低組換えIgGプロデューサーCHOクローンにより発現された免疫グロブリンの重および軽鎖の特性化。 高および低組換えIgGプロデューサーCHOクローンにより発現された免疫グロブリンの重および軽鎖の特性化。 ERフォールディングならびに高および低IgG−プロデューサーのUPR機構の特性化。 組換えIgG産生CHOクローンのSRP14トランスフェクションは、軽鎖凝集を消滅させ、IgG分泌を救済した。 組換えIgG産生CHOクローンのSRP14トランスフェクションは、軽鎖凝集を消滅させ、IgG分泌を救済した。 SRP9、SRP14、SRP54、SRおよびトランスロコンの種々の組み合わせを発現するCHO細胞プールにおけるMAb産生の増加 2つのSGEが隣接した対象の導入遺伝子の発現カセットを示す発現ベクターのマップ。
本発明の文脈で用いられる導入遺伝子は、所定の成熟タンパク質(本明細書中では、タンパク質をコード化するDNAとも称する)または前駆体タンパク質もしくは機能的RNAをコードする、単離・精製されたデオキシリボヌクレオチド(DNA)配列である。本発明によるいくつかの好ましい導入遺伝子は、免疫グロブリン(Ig)およびFc−融合タンパク質および他のタンパク質、特に治療的活性を有するタンパク質(「バイオセラピューティックス」)をコード化する導入遺伝子である。本明細書中で用いられる場合、導入遺伝子という用語は、タンパク質をコード化するDNAとの関連では、RNA転写開始シグナル、ポリアデニル化付加部位、プロモーターまたはエンハンサーなどの非転写フランキング領域を含まない。一般的に、導入遺伝子という用語は、真核生物宿主細胞などの細胞中にトランスフェクションにより導入され(この用語は、本発明の文脈では、ウイルスベクターにより外来DNAを導入するプロセスも包含し、場合によっては形質導入とも称する)、本明細書においては「導入遺伝子発現産物」または「異種タンパク質」とも称する対象の産物をコード化するDNA配列に言及する場合にこの文脈では用いられる。導入遺伝子は、シグナルペプチドをコード化するシグナルペプチドコーディング配列に機能的に結合する可能性があり、これは次に小胞体および/または原形質膜を越える転位および/または分泌を媒介および/または促進し、分泌前または分泌中に除去される。「トランスジェニック配列」という用語は、一方では、真核生物宿主細胞などの細胞中にトランスフェクションにより導入され、対象の産物の発現および/または分泌を増大させるDNA配列に言及する場合に用いられる。トランスジェニック配列は、多くの場合、タンパク質またはRNA配列をコード化する。本発明のトランスジェニック配列は、例えば、HR(相同性組換え)を特異的に増強するか、または非相同的末端結合(NHEJ)を減少させるものである。各タンパク質を以下でさらに詳細に検討する。他の「トランスジェニック配列」は、プロセッシング、小胞体および/または原形質膜を越える分泌および/または転位に関与するタンパク質(複数可)またはRNA(複数可)をコード化するものである。「トランスジェニック配列」は、非翻訳制御配列を含み得る。
発現および/または分泌の増強を、各トランスジェニック配列を含まない対照細胞から得られる値に対して測定する。対照の値に対する任意の統計的に有意な増強は、促進として見なされる。
HR/NHEJ比(またはHR/NHEJ活性比)は、真核生物細胞、例えば組換え真核生物宿主細胞などの細胞で起こるHR(相同性組換え)のNHEJ(非相同的末端結合)活性に対する比である。HR/NHEJ比は、一般的に細胞集団において、すなわち、例えば、CHO細胞クローンなどの同じ種類の真核生物細胞の群で測定される。本明細書中で、例えば細胞のHR/NHEJ比を最適化または増強(増大)することについて言及する場合、当然ながら、そのような最適化または増強は各細胞集団で起こる。任意のそのような最適化または増強の基準点は、HR/NHEJ比を増強または最適化させるための手段が実施されなかった対応する細胞集団中に存在する比である。これは、たとえば、前記細胞の親細胞集団、すなわち、増強または最適化された細胞が誘導される細胞集団である。HR/NHEJ比(またはHR/NHEJ活性比)は、本明細書中では、たとえば、「前記トランスジェニック配列を含まない、および/または突然変異していない細胞」と称する参考細胞集団の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15倍超まで増強することができる。最適化および増強測定は、細胞が一般的に遺伝子改変されることなく「処理される」処理を含む。そのような処理は、細胞集団を同期させる簡単な手段を含み、したがって、集団の細胞のほとんどが、トランスフェクションの時点でG1期にある。そのような同期化を達成するための種々の方法が知られており、そしてそれらには、化学薬品(同期化薬品)および低温の使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。Golzioら(2002)は、細胞を酪酸ナトリウムでの処理に付すことによる細胞の同期化を記載している。Grosjeanら(2002)は、細胞の大部分が、同期化薬品としてのミモシンの投与後にG1およびS期の間の境界で停止されることを記載している。Bjursellら(1973)は、チミジンを使用してCHO細胞を同期させることを記載している。
HRはRAD51関連タンパク質群を必要とすることが報告されている(West 2003)。したがって、HRは、例えばRad51、Rad52、RecA、Rad54、RuvCまたはBRCA2をはじめとする追加のHRタンパク質(HR酵素)を細胞に提供することによって増強することができる。HRアクチベーターも用いることができる。これらには、RS−1(RD51刺激化合物1)が含まれるが、これに限定されるものではない。RS−1は、活性なシナプス前フィラメントの形成を促進することによってhRAD51の相同性組換え活性を増強する(Jayathilaka et al. 2008)。NHEJは、ほ乳類細胞において、2つのタンパク質複合体、DNA−PKcsと結合したヘテロ二量体Ku80−Ku70およびその補因子XRCC4と結合したリガーゼIVを含むことが報告されている(Delacote et al., 2002)。NHEJのサプレッサー(これもまた本発明との関連で用いることができる)には、NU7026(2−(モルホリン−4−イル)−ベンゾ(h)コメン−4−オン)(DNA−PK阻害剤)が含まれる。化学物質NU7026を用いたNHEJ機能の抑制は、DNA末端がインタクト相同性組換え修復経路に接近するのを促進する可能性がある(Yang et al. 2009)。NHEJの別のサプレッサーはワートマニン(p110PI3キナーゼのPI3k阻害剤)であり、これも、DNA二本鎖修復に介在することが知られているDNA依存性タンパク質キナーゼを阻害する(Boulton et al., 1996)。
細胞のHR/NHEJ比は、これらのHR酵素、HRアクチベーターおよび/またはNHEJサプレッサーを過剰発現することによるか、またはHRを活性化するかもしくはNHEJを抑制する物理的もしくは化学的処理によって増強することができる。このような過剰発現を達成する一方法は、そのような酵素などをコード化する「トランスジェニック配列」を各細胞中に導入することによる。そのような配列は、「トランスジェニック配列」と称し、対応する無修飾細胞の一部でないことを示す。トランスジェニック配列は、多くの場合、細胞のゲノム中に組み込まれる。
HR酵素、アクチベーターおよび/またはNHEJサプレッサーなどの前記タンパク質は、誘導的に、または構成的に修飾細胞において発現され得る。当業者は、誘導的または構成的発現を可能にする適切なベクター構造を容易に確認することができる。
同様に、細胞は、HRの増強および/またはNHEJの減少および/または細胞のHR/NHEJ比の増強のために突然変異によって修飾されている。いくつかの刊行物は、細胞におけるポリヌクレオチドのランダムな組み込みに関与する経路であるNHEJ経路の阻害を、HR/NHEJ比を改善するための方法として記載している(例えば、Krappmann et al., 2006を参照)。NHEJをブロックするために不活性化することができる遺伝子および/またはタンパク質としては、Ku80、Ku70、リガーゼIVまたはXRCC4が挙げられ(V3.3突然変異体に対する本明細書中の言及も参照)、本発明の関連で、HR/NHEJ比の非常に顕著な増強および導入遺伝子発現の改善、例えば平均で導入遺伝子発現の5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50倍までまたはさらには60倍までの増加をもたらす可能性がある。同様に、ある突然変異は、例えば、ある内因性HR酵素または細胞のアクチベーターの発現を増強することによって、HRを増強する可能性がある。
HR/NHEJピーク(またはHR/NHEJ活性ピーク)は、HR/NHEJ比が上昇し、ピークに達する真核生物細胞の細胞集団の細胞周期中の期間である。本発明の文脈で、細胞のHR/NHEJピークについて言及される場合、同じ種類の細胞集団の細胞、例えば、HR酵素を発現するようにトランスジェニック配列によって修飾された細胞集団について言及されると理解される。「HR/NHEJピーク」は、HR/NHEJまたは単にHRを表す値に対して時間をプロットしたグラフで最高のHR/NHEJ上昇(ピークの先端、ピーク先端)付近の期間を包含する。トランスフェクションについて好ましい期間は、HR/NHEJピーク(例えば、細胞周期のG1期)の前であり、したがってDNAは、ピークの先端へ向かって直線が上昇し始める値(「底値」)からピークの先端までHR/NHEJ(または単にHR)の50%以上の上昇に達する時点より定義される、ピークの先端付近の時間(ピーク先端、たとえば後期SおよびG2期)に細胞核に到達する。ピークは、細胞集団中の最小数の細胞がG1期、または初期S期(HR活性が低いことが知られている期)にある時、および/または細胞の大部分がS期またはG2期(HR活性が最高であることが知られている時)にある時に出現する。
細胞集団の細胞の大部分がG1期にある時点も、図2(B)で示されるグラフで示される。ここでは、各細胞周期状態(G1、S、G2/M)に関連する集団のパーセンテージが表示されている。この図からわかるように、図示される集団の細胞の80%超、85%超、90%超またはさらには95%超がG1、SまたはG2/M期のいずれかにあると特定された。これらの期のうちの1つにあることが判明した細胞のうち、大部分が、この例では、21時間後にG1期にあることが判明した。G1期細胞のパーセンタイルは、したがってSまたはG2/M期細胞のパーセンタイルと比較して最高であった。
機能的RNAには、タンパク質に翻訳されるのとは異なる細胞における直接的または間接的効果を生む任意の種類のRNAが含まれる。典型的な例は、アンチセンスRNAまたは低分子干渉RNA(si RNA)である。
真核生物宿主細胞は、本発明の導入遺伝子の「宿主」となるかまたは宿主となるように設計される細胞である。組換え真核生物宿主細胞は、遺伝子改変され、すなわち、一般的に導入遺伝子発現産物の発現または分泌を増強するために、ベクターなどの追加の配列を、そのゲノムの一部として、または染色体外因子の一部としてのいずれかで含む。
コンカテマーまたはコンカテマー構造は、長い連続したDNAストレッチまたは一列に連結した複数コピーの同じモノマーDNA配列を含む分子である。本発明の文脈で、モノマーDNA配列は導入遺伝子であるか、または多くの場合、導入遺伝子を含む。たとえば、プロモーターおよびエンハンサー配列を含み得る導入遺伝子のコンカテマー構造は、一般的に宿主細胞のゲノム中に組み込まれる。この組み込みは、宿主の染色体の複数の位置(座)(組み込み部位)または1つの座で起こり得る。1つのコンカテマー構造は、200、300、400、500、600、700超または800超の、前記導入遺伝子を含むモノマーDNA配列を含み得る。モノマーDNA配列の頭尾アレイ(head−to−tail array)が優先的に観察される。細胞中に複数コピーで存在するとされる導入遺伝子はコンカテマー構造を有し得る。
本発明のMARエレメント、MAR構築物、MAR配列、S/MARまたは単にMARは、天然に存在する「SAR」または「MAR」と1つまたはそれ以上(たとえば、2、3または4)の特徴を共有し、前記MARにより影響を受ける任意の遺伝子のタンパク質発現を促進する少なくとも1つの性質を有するヌクレオチド配列である。MARエレメントはまた、MAR活性、特に、転写調節、好ましくは増強活性だけてなく、たとえば、発現安定化活性および/または「増強されたMAR構築物」でも記載する他の活性も有する単離および/または精製核酸であるという特性も有する。MARエレメントは、境界またはインスレーターエレメント、遺伝子座調節領域(LCR)、安定化およびアンチリプレッサー(STAR)エレメント、ならびに偏在作用性クロマチンオープニング(UCOE)エレメントも含む後成的な調節エレメントのさらに広範囲の群に属する。MARエレメントは、それらが主に基づいている同定されたMARに基づいて定義することができる:MAR S4構築物は、したがって、そのヌクレオチドの大部分(50%+)がMAR S4に基づくMARエレメントである。AおよびT含有量が高いいくつかの簡単な配列モチーフが、SARおよび/またはMAR内で見いだされることが多いが、ほとんどの場合、それらの機能的重要性および潜在的な作用様式は解明されていない。これらには、Aボックス、Tボックス、DNA巻き戻しモチーフ、SATB1結合部位(Hボックス、A/T/C25)および脊椎動物またはショウジョウバエのコンセンサストポイソメラーゼII部位が含まれる。
MARエレメントにおいて一般的に見出されるAT/TA−ジヌクレオチドリッチなベントDNA領域(本明細書中で以下、「ATリッチな領域」と称する)は、多数のAおよびTを(特にジヌクレオチドATおよびTAの形態で)含むベントDNA領域である。好ましい実施形態では、100の連続した塩基対のストレッチ上、少なくとも10%のジヌクレオチドTA、および/または少なくとも12%のジヌクレオチドAT、好ましくは100の連続した塩基対のストレッチ上(またはATリッチな領域がより短い長さである場合に、それぞれの短いストレッチ上)、少なくとも33%のジヌクレオチドTA、および/または少なくとも33%のジヌクレオチドATを含みつつ、ベント二次構造を有する。しかし、「ATリッチな領域」は、約30ヌクレオチド以下の短いものであってもよいが、好ましくは約50ヌクレオチド、約75ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約150、約200、約250、約300、約350または約400ヌクレオチド長またはそれ以上である。
脊椎動物(RNYNNCNNGYNGKTNYNY)またはショウジョウバエ(GTNWAYATTNATNNR)のSATB1結合部位(Hボックス、A/T/C25)およびコンセンサストポイソメラーゼII部位などのいくつかの結合部位も、多くの場合、比較的高いAおよびT含有量を有する。しかし、結合部位領域(モジュール)、特に、結合部位のクラスターを含むTFBS領域は、領域の屈曲パターンの比較により、AおよびT含有量が高いMARエレメントからのATおよびTAジヌクレオチドリッチな領域(「ATリッチな領域」)から容易に区別することができる。たとえば、MAR1_68について、後者は約3.8または約4.0を越える平均屈曲率を有し得、一方、TFBS領域は約3.5または約3.3未満の平均屈曲率を有し得る。特定されたMARの領域は、これに限定されるものではないが、本明細書中の他の箇所で記載されるような相対的融解温度などの別の手段によっても確認することができる。しかし、そのような値は、種特異的であり、したがって種によって様々であり得、例えばさらに低い可能性がある。したがって、各ATおよびTAジヌクレオチドリッチな領域は、約3.2〜約3.4または約3.4〜約3.6または約3.6〜約3.8などの低い屈曲率を有し得、TFBS領域は、例えば約2.7未満、約2.9未満、約3.1未満、約3.3未満などの、比例して低い屈曲率を有し得る。SMAR Scan IIでは、それぞれのより低いウインドウサイズが当業者によって選択されるであろう。
MARエレメント、MAR構築物、MAR配列、S/MARまたは単なるMARという用語は、本発明のMAR構築物が基づく可能性がある天然に存在するおよび/または同定されたMARよりも増強した特性を有する、増強されたMAR構築物も含む。そのような特性には、これらに限定されるものではないが、完全長の天然に存在するおよび/または同定されたMARに対して減少した長さ、遺伝子発現/転写の増強、発現の安定性の増強、組織特異性、誘導性またはそれらの組み合わせが含まれる。したがって、増強されるMARエレメントは、例えば、同定されたMAR配列のヌクレオチドの数の約90%未満、好ましくは約80%未満、なお一層好ましくは約70%未満、約60%未満、または約50%未満を含み得る。MARエレメントは、適切な細胞の前記構築物での形質転換により導入遺伝子の遺伝子発現および/または転写を増強し得る。
MARエレメントは、対象の遺伝子が機能的に結合しているかまたは機能的に結合することができるプロモーター領域の上流に挿入される。しかし、ある実施形態において、MARエレメントが対象の遺伝子/ヌクレオチド酸配列の上流ならびに下流またはすぐ下流に位置するのが有利である。他の複数のMAR配置(シスおよび/またはトランスの両方)も本発明の範囲内に含まれる。
本発明はまた、1つまたはそれ以上の非MAR後成的レギュレーター、例えばこれらに限定されるものではないが、ヒストン修飾因子、例えばヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、他のDNAエレメント(後成的調節エレメント)、例えば遺伝子座調節領域(LCR)、インスレーター、例えばcHS4またはアンチリプレッサーエレメント(例えば、安定剤およびアンチリプレッサーエレメント(STARもしくはUCOEエレメント)またはホットスポットと組み合わされたMARエレメントの使用にも関する(Kwaks THJ and Otte AP)。
合成的とは、MAR/MARエレメントの関連で用いられる場合、そのデザインが、同定されたMARまたはそれに基づくMARの配列/領域または部分的領域の単純な入れ換え、複製および/または欠失以上のものを含むMARを指す。特に、合成MAR/MARエレメントは、一般的に、同定されたMARの1以上、好ましくは1つの領域(ただし、ある実施形態では合成または修飾される可能性がある)、ならびに具体的に設計され、十分に特性化されたエレメント、例えば1つもしくは一連のTFBS(好ましい実施形態では合成により産生される)を含む。これらのデザイナーエレメントは、多くの実施形態では、比較的短く、特に、一般的には約300bp長以下、好ましくは約100、約50、約40、約30、約20または約10bp長以下である。これらのエレメントは、ある実施形態においては多量体化されていてもよい。そのような合成MARエレメントもまた本発明の一部であり、当然のことながら、一般的にこの記載は、合成MARエレメントにも等しく当てはまる「MARエレメント」について当てはまるとされる任意のものであると理解され得る。
同定されたMARエレメントのヌクレオチド配列の機能的フラグメントも、前記のMARエレメントの機能を維持している限り、前記定義に含まれる。
いくつかの好ましい同定されたMARエレメントとしては、これらに限定されるものではないが、MAR 1_68、MAR X_29、MAR 1_6、MAR S4、MAR S46(これらおよび他のMARエレメントの配列の開示に関して参照することにより本出願に特に組み入れられるWO2005040377および米国特許出願第20070178469号で開示されるような全てのそれらの順列を含む)が挙げられる。ニワトリリゾチームMARも好ましい実施形態である(これもまた、そのMARエレメントの開示について本明細書中に特に組み込まれる米国特許第7,129,062号を参照)。
シスとは、たとえば、同じベクターまたは染色体などであるが、これらに限定されない同じ核酸分子上に2以上のエレメント(たとえばクロマチンエレメント)が配置されていることを指す。
トランスとは、たとえば、2以上のベクターまたは染色体であるが、これらに限定されない2以上の核酸分子上に2以上のエレメント(たとえばクロマチンエレメント)が配置されていることを指す。
配列は、シス/トランス位置からその活性を発揮する場合に、たとえば遺伝子に対してシスおよび/またはトランスで作用するといわれる。
本発明の導入遺伝子またはトランスジェニック配列は、多くの場合、ベクターの一部である。本発明によるベクターは、別の核酸、たとえば、ベクターに結合され、一般的にはその中に組み込まれている、このベクターにより発現される導入遺伝子を輸送することができる核酸分子である。たとえば、プラスミドは1種のベクターであり、レトロウイルスまたはレンチウイルスは別の種類のベクターである。本発明の好ましい実施形態では、ベクターはトランスフェクションの前に線形化される。
ベクターのベクター配列は、導入遺伝子などの任意の「他の」核酸ならびにMARエレメントなどの遺伝因子を除いたベクターのDNAまたはRNA配列である。
本明細書で「プラスミド」または「ベクター」相同性について言及する場合、この用語は、MARおよび遺伝子を含む全プラスミドまたはベクターの相同性(本明細書中では配列同一性と同義で用いられる)を指す。
本発明による真核生物(ほ乳類細胞を含む)、たとえば組換え真核生物宿主細胞を細胞培養条件下で維持することができる。この種類の細胞の非限定的な例は、非霊長類真核生物宿主細胞、たとえばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞および新生児ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)である。霊長類真核生物宿主細胞としては、たとえば、ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL 2)およびSV40で形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL−1587)が挙げられる。組換え真核生物宿主細胞は、たとえばトランスジェニック配列でのトランスフェクションおよび/または突然変異により修飾された細胞を意味する。真核生物宿主細胞は、前記細胞によって発現されたタンパク質の転写後修飾を実施することができる。本発明のある実施形態では、真核生物(たとえば非霊長類)宿主細胞の細胞カウンターパートは完全に機能的である。すなわち、たとえば突然変異によって不活性化されていない。むしろ、トランスジェニック配列(たとえば霊長類)が、その細胞カウンターパート(たとえば非霊長類)に加えて発現される。
本発明によるトランスフェクションは、たとえば、これらに限定されるものではないが、エレクトロポーレーション、リポフェクション、ウイルスベクターを介して(「形質導入」と称する場合もある)、またはポリカチオン性脂質が関与するものをはじめとする化学的手段を介する、レシピエント真核生物細胞中への核酸の導入である。
本明細書中で用いられる形質転換とは、核酸の添加による真核細胞の修飾を指す。たとえば、形質転換された細胞には、たとえば、この配列を含むベクターのエレクトロポーレーションによりトランスジェニック配列でトランスフェクトされた細胞が含まれる。しかし、本発明の多くの実施形態では、本発明のトランスジェニック配列を細胞中に導入する方法は、任意の特定の方法に限定されない。
シングルトランスフェクションとは、記載したトランスフェクションを1回だけ実施することを意味する。
転写とは、DNAテンプレートからのRNAの合成を意味する。「転写的活性」とは、転写される導入遺伝子を指す。
同一性は、全および完全配列などの2つのそのような配列間の一致の同一性によって決定される2つのヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味する。同一性は容易に計算することができる。2つのヌクレオチド配列間の同一性を測定するための多くの方法が存在するが、「同一性」という用語は、当業者に周知である(Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.,Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991)。2つの配列間の同一性を決定するために通常用いられる方法には、これらに限定されないが、Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, ed., Academic Press, San Diego, 1994、およびCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J Applied Math. 48: 1073 (1988)で開示されているものが含まれる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験された2つの配列間の最大一致をもたらすように設計されている。そのような方法は、コンピュータープログラムで体系化される。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、これらに限定されるものではないが、GCG(Genetics Computer Group, Madison Wis.)プログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12(1). 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Altschul et al. (1990); Altschul et al. (1997))が挙げられる。周知のSmith Watermanアルゴリズムを用いて同一性を決定することもできる。
実例として、たとえば、参考ヌクレオチド配列と少なくとも95%の「同一性」を有するヌクレオチド配列を含む核酸とは、参考ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5までの点突然変異を含み得る以外は、核酸のヌクレオチド配列が参考配列と同一であることを意味する。言い換えると、参考ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するヌクレオチドを得るためには、参考配列において5%までのヌクレオチドが欠失しているか、または別のヌクレオチドで置換されていてもよく、あるいは参考配列中の全ヌクレオチドの5%までの多くのヌクレオチドが参考配列中に挿入されていてもよい。参考配列のこれらの突然変異は、参考ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端位置で、またはこれらの末端位置間のどこかで起こり得、参考配列中のヌクレオチド間で個別に、または参考配列内で1以上の連続した群で点在している。約60%、約70%、約75%、約85%または約90%超の配列同一性も本発明の範囲内に含まれる。
別の核酸配列に対して実質的同一性を有する核酸配列は、記載される各方法に対して全くまたはほとんど影響を及ぼさず、多くの場合、100bpにおいて、1、2、3または4の突然変異に反映される、点突然変異、欠失または付加をその配列中に有する配列を指す。
本発明は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド変異体の両方に関する。「変異体」とは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと異なるが、その基本的性質を保持するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。一般的に、変異体は、全体的に密接に類似し、多くの領域で本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと同一である。
変異体は、コーディング領域、非コーディング領域、または両方で改変を含み得る。特に好ましいのは、サイレント置換、付加、または欠失をもたらすが、コード化されたポリペプチドの特性または活性を変更しない改変を含むポリヌクレオチド変異体である。遺伝コードの縮重によるサイレント置換によって産生されるヌクレオチド変異体が好ましい。さらに、5〜10、1〜5、または1〜2のアミノ酸が任意の組み合わせで置換、欠失、または付加されている変異体も好ましい。
本発明はまた、前記ポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体も含む。対立遺伝子変異体は、同じ染色体座を占有する遺伝子の2以上の代替形態のいずれかを示す。対立遺伝子変異は突然変異により自然に生じ、集団内で多形をもたらし得る。遺伝子突然変異はサイレント(コード化されたポリペプチドにおいて変化がない)である可能性があるか、または改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコード化する可能性がある。ポリペプチドの対立遺伝子変異体は、遺伝子の対立遺伝子変異体によってコード化されるポリペプチドである。
プロモーター配列または単にプロモーターとは、特定の核酸配列の発現に関して宿主細胞によって認識される核酸配列である。プロモーター配列は、ポリヌクレオチドの発現を調節する転写制御配列を含む。プロモーターは、突然変異体、トランケート型、およびハイブリッドプロモーターをはじめとする最適の宿主細胞において転写活性を示す任意の核酸配列であってよく、宿主細胞に対して相同性または異種のいずれかの細胞外または細胞内ポリペプチドをコード化する遺伝子から得ることができる。プロモーターは、前記プロモーターに対してその機能を発揮する場合、特定の核酸配列に対して「機能的に連結」される。
エンハンサーは、プロモーターに作用してその転写を増大させる、通常、約10〜約300ヌクレオチド長のDNAのシス作用型エレメントである。グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ−フェトプロテイン、およびインシュリンエンハンサーからのエンハンサーを用いることができる。しかし、ウイルスからのエンハンサーを用いることができ;例としては、複製起点の後側(late side)のSV40、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後側のポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
本明細書中で用いられる指数関数的とは、正確な数学的用語ではなく、細胞の生物学的成長曲線を表し、この場合、そのような成長のグラフは直線ではなく、上向きであり、少なくともある一定の期間にわたって連続して急勾配になる曲線である。いずれの場合でも、付加的以上のもの、たとえば増加を意味する。
発明の文脈で用いられる発現の変異性とは、1つの形質転換細胞の、同じ種類の別の形質転換細胞に対する発現における変異性を指す。この変異性は、異なる導入遺伝子コピーおよび/または導入遺伝子組込み部位の結果である。また、複数コピーの導入遺伝子の同じ座での共組み込みは、サイレンシングに至り、したがって変異性に貢献する可能性がある。
さらに、「comprise(含む)」という用語およびその派生語は、他の要素またはステップを除外するものではない。さらに、不定冠詞「a」およびその派生語は、複数を除外するものではない。請求の範囲に記載されるいくつかの特性の機能は、統一によって達成される可能性がある。特徴または値に関連した、実質的に、約、およそなどの用語はまた、特に、まさにこの特徴またはまさにこの値も規定する。
相同性組換え(HR)、非相同性末端結合(NHEJ)および導入遺伝子発現の変異性の減少
独立した形質転換体間の導入遺伝子発現における変異性は、細胞のゲノム中に安定して組み込まれた遺伝子の数および組み込み部位によって影響を受ける。MARを研究している際、そして特になぜMARによって導入遺伝子のさらに高い発現が得られるかを究明する際に、次のような、さらに幅広い、MARに無関係な発見をもたらす観察がなされた:
まず、定量PCRにより、MARエレメントがゲノム中に組み込まれた導入遺伝子コピー数を増加させることを証明できた。これらの結果により、以前の半定量的な観察結果が実証された(Kim et al., 2004; Girod et al., 2005)。加えて、安定な細胞プールの分裂中期の染色体の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション分析により、MARでトランスフェクトされた細胞においてさらに高い強度の蛍光が示され、したがって、導入遺伝子組込みの増加が確認された。
さらなる研究の結果、導入遺伝子および各MARでのシングルトランスフェクション後に、MARはトランスフェクション後に細胞核に輸送されるプラスミドの量に対して著しい影響を及ぼさなかったことが判明した。可能な解釈は、コンカテマー化および/または組み込みで細胞のゲノム中に組み込まれるコピー数が高いことの説明がつくということである。当初は、MARがDNA組換えシグナルとしての役割を果たし得ると考えられた。それらの構造特性、たとえばそれらの巻き戻しおよび対不形成可能性のために、トランスフェクトされたプラスミド間の相同性組換えの頻度を増大させることができ、かくしてさらに大きなコンカテマーの形成および多数のプラスミドコピーの組み込みが可能になる可能性が存在する。
第2に、ある状況下で、導入遺伝子の隣のMARでの2つの連続したトランスフェクション(1回の初期トランスフェクションおよび後続トランスフェクション)により、たとえば2つの独立したトランスフェクションから予想される単なる付加を提供するというよりむしろ、導入遺伝子発現にたとえば2倍の増加などの付加的以上の増加が可能になる。
定量PCRにより、連続MARトランスフェクションに関連する高い導入遺伝子発現は、1つの事象と比較して、複数のトランスフェクション事象後に組み入れられた導入遺伝子コピー数の同様の高い増加に基づくものであることが証明された。
核に進入したプラスミドの数が増加するので、連続したMARトランスフェクションにおいて多数の組み入れられた導入遺伝子コピーが、少なくとも一つには、連続したトランスフェクション中に細胞中に導入された相同性プラスミド間のより良好なコンカテマー化によるものであるかどうかをさらに調査した。相同性組換えを含むプロセスが疑われ、プラスミド相同性の効果を研究することによって試験した。特に、導入遺伝子、プラスミド骨格および/またはMARの種々の組み合わせでダブルトランスフェクションを実施した。FACS分析で、さらに高効率の組み込みおよび導入遺伝子発現のためには、高いプラスミド相同性(ベクター配列相同性ならびに導入遺伝子およびMAR相同性)が一般的に必要であることが明らかになった。発現およびベクター配列の遺伝子またはMARのいずれかを変えると、組み込みおよび導入遺伝子発現の両方の効率が低下した。実際、ダブルトランスフェクションの観察される効果は、全ての配列が異なる場合に全体としてなくなった。
加えて、連続トランスフェクション間のタイミングは、最適タンパク質発現を達成するために非常に重要であることが示された。2回目のトランスフェクションの時点で、細胞は、さらに高い組換え率に有利な細胞周期状態になければならず、さらに大きなコンカテマーの形成および宿主ゲノム中へのさらに多くのプラスミドの組み込みに至ると仮定された。上記のように、導入遺伝子のコンカテマー化は、真核生物細胞に存在する2つの主な機構が原因である可能性があり、その一方はHRであり、もう一方はNHEJである。したがって、ダブルトランスフェクションに対するどちらか一方の効果を試験した。このために、非相同性末端結合または相同性組換えのいずれかが欠損した異なるCHO突然変異体を使用した。NHEJ経路は効率的な導入遺伝子組込みおよび発現を拮抗し、一方、機能的相同性組換え経路およびトランスフェクトされたベクター上の相同性DNA配列は高レベル発現に有利であることが判明した。相同性組換えのみに依存する突然変異体CHO細胞を使用した場合、MAR含有ベクターのトランスフェクションにより、非突然変異細胞と比較して、導入遺伝子発現のレベルが非常に増加した。また、FISH分析は、特定の期間(ここでは21時間)での連続したトランスフェクションをともなう複数の組み込み事象を示さず、全ての導入遺伝子が1つの染色体座で組み込まれたことを示した。
したがって、MARの組み込みに対する非相同性末端結合または相同性組換えが欠損した宿主細胞の効果は、導入遺伝子に影響を及ぼし、MARに関係ないさらに広い概念、すなわち、導入遺伝子組込みにはHRが有利であり、NHEJが不利であるという考えが導かれた。したがって、本発明者らは、導入遺伝子組込み、そしてひいては導入遺伝子発現を増大させるためにこの発見を利用した方法および構築物を考案した。この方法には、化学的もしくは温度処理または細胞集団の同期化を可能にする他の処理などの処理で組み込みの時点でHRを増大、NHEJを減少、および/またはHR/NHEJ比を増大させるための方法が含まれる。他の処理および変法は、HR/NHEJ比の考察で前述されている。構築物は、主に、HR増強、NHEJ減少および/またはHR/NHEJ比の増強を可能にする好適な構造を有するものであった。
宿主細胞におけるNHEJの減少および/またはHRまたはHR/NHEJ比の増強は、MARが関与するかまたは関与しない連続したトランスフェクションに関連して特に有利な効果も有する。
しかし、MARに無関係なプロセスは、導入遺伝子組込みおよび発現に関して相当な進展をもたらすが、MARおよび他の後成的なレギュレーターはさらに、相同性組換えに有利に影響することにより、またそのうちのいくつかはすでに検討されている他の機構(たとえば、米国特許出願第US2007/0178469号を参照)によって一部説明できるさらに有利な特性を提供する。
MARエレメントは、非許容ヘテロクロマチン座における組み込みに起因する可能性が高い、サイレンシング効果から導入遺伝子を保護することにより、低レベルのタンパク質を発現する集団を減じることによって、導入遺伝子発現を改善する能力を有すると記載されている(Bell and Felsenberg, 1999)。MARの存在下で観察される抗サイレンシング効果は、導入遺伝子組込み部位でのヒストン過剰アセチル化などのクロマチン修飾(Recillas−Targa et al., 2002; Yasui et al., 2002)または核内局在化における変化を介してもたらされる可能性がある。さらに、MARは、クロマチンを修飾してさらに転写的に許容される状態をとる調節タンパク質を動員し得るか、または遺伝子発現を活性化する転写因子を動員することができる(Yasui et al., 2002; Hart and Laemmli, 1998)。あるいは、これに限定されるものではないが、MARは、タンパク質を動員して、組み込み事象についてより許容性である開口状態にクロマチン構造を改造することができる。また、導入遺伝子の転写は、MARによる導入遺伝子プロモーターまたはエンハンサーの活性化によって改善することができる。MARはまた、染色体内の許容性座における組み込みに有利であり得る。最後に、これらは、HRとは関係のない機構によって宿主ゲノム中に組み込まれる導入遺伝子コピー数を増大させる可能性がある。
この文脈で、より高いコピー数は常に導入遺伝子のより強力な発現を支持するという認識は、必ずしも妥当であるとは限らないことに注意すべきである。なぜなら、宿主ゲノム中に組み込まれた複数コピーの存在は、サイレンシングに有利であり、これは反復エレメントがヘテロクロマチンにおいて対合および集合する傾向があることに起因するからである。あるいは、反復遺伝子の発現は、二本鎖および/または低分子干渉RNAの形成に至る可能性があり、これは次に後成的なサイレンシングに至る可能性がある。しかし、本発明の文脈では、導入遺伝子コピー数および細胞は蛍光レベルがMARの存在下で十分に相関することを証明することができた。したがって、導入遺伝子発現の増加は、細胞のゲノム中にさらに多くの導入遺伝子が組み込まれることだけに起因するのではなく、タンデム遺伝子コピーの組み込みに関連する後成的なサイレンシング事象のMARが介在する阻害によっても支持される可能性が高い。
特に連続したトランスフェクションの文脈で上記したように、実施した実験における導入遺伝子組込み/発現の増加は、核中に輸送された導入遺伝子の量を定量化することによって一部説明することができた。実際、細胞核は、特にMARでの2回のトランスフェクションで、そして特に2回目のトランスフェクション中にさらなるプラスミドを受容することを示すことができた。なぜなら、第1トランスフェクションは、2回目のトランスフェクション中に細胞によるDNA取り込みおよび核輸送を促進することができるからである。実際、DNAの細胞内輸送を評価し、各トランスフェクション後にリソソーム、核およびサイトゾルなどの細胞小器官中の標識されたpDNAのパーセンタイルを定量化することによって、MARを有するプラスミドDNAが、リソソーム分解を免れ、2回目のトランスフェクション中にはるかに効率的に核に侵入するようであることを証明することができた。説明は、プラスミド、特に第1トランスフェクションのプラスミドは、細胞分解機構を飽和させ得、かくして2回目のトランスフェクション中に核へのさらに効率的な輸送を可能にするということである。
したがって、増強されたHR/NHEJ比,増強されたHRおよび/または減少したNHEJを有する細胞をMARエレメントと組み合わせることは、非常に有効であり、本発明の一部である。
相同性組換え(HR)および非相同性末端結合(NHEJ)の機構
導入遺伝子は、組換え機構を使用して、二本鎖切断端で宿主ゲノム中に組み込まれる。
二本鎖切断(DSB)は、生物学的に最も有害な種類のゲノム損傷であり、潜在的に細胞死または幅広い種類の遺伝子再配列に至る。正確な修復は、遺伝情報の維持および伝播の成功に必須である。
2つの主なDSB修復機構:非相同性末端結合(NHEJ)および相同性組換え(HR)がある。相同性組換えは、相同性を共有するDNA配列間の遺伝子交換のためのプロセスであり、細胞周期のS/G2期のみで有効であり、一方、NHEJは、2つの切断されたDNA末端(通常は配列相同性がない)を単につなぎ合わせ、そして細胞周期の全ての期で機能するが、G0〜G1、および有糸核分裂細胞の初期S期中で特に重要である(Wong and Capecchi, 1985; Delacote and Lopez, 2008)。脊椎動物では、HRおよびNHEJは、DSBの性質および細胞周期の期に応じて、DSB修復に異なって貢献する(Takata et al., 1998)。
NHEJ:基本的機構
概念的に、NHEJプロセスの分子機構は単純であるようにみえる:1)一組の酵素が切断されたDNA分子を捕捉し、2)2つのDNA末端をまとめる分子ブリッジが形成され、そして3)切断された分子を再ライゲートする。そのような反応を実施するために、ほ乳類細胞におけるNHEJ機構は、2つのタンパク質複合体、DNA−PKcs(DNA依存性タンパク質キナーゼの触媒サブユニット)と関連したヘテロ二量体Ku80/Ku70およびDNAリガーゼIVとその補因子XRCC4(X線相補性チャイニーズハムスター遺伝子4)および多くのタンパク質因子、たとえばArtemisおよびXLF(XRCC4様因子;またはCernunnos)(Delacote et al., 2002)を含む。NHEJは、しばしば、誤りがちなDSB修復と見なされる。というのも、これは通常配列相同性を有さない2つの切断されたDNA末端を単につなぎ合わせ、小さな挿入および欠失を生じるからである(Moore and Haber, 1996; Wilson et al., 1999)。NHEJは、細胞周期全体にわたってDSBの修復のための機構を提供するが、有糸核分裂細胞のG0−G1および初期S期で特に重要である(Takata et al., 1998; Delacote and Lopez, 2008)。NHEJによるDSBの修復は、細菌からほ乳類までにおよぶ生物で観察され、進化の間で保存されていることを示す。
DSB形成後、NHEJ修復経路における重要なステップは、切断されたDNA末端の物理的並置である。NHEJは、Ku70/80ヘテロ二量体タンパク質複合体の切断されたDNA分子の両端への会合により開始され、末端を捕捉し、つなぎ、他のNHEJの重要な因子のアセンブリのための足場を作製する。DNA結合Kuヘテロ二量体複合体は、DNA−PKcsをDSB(PIKK(タンパク質キナーゼのホスホイノシチド3−キナーゼ様ファミリー)に属する460kDaタンパク質)へ動員し(Gottlieb and Jackson, 1993)、そのセリン/トレオニンキナーゼ機能を活性化する(Yaneva et al., 1997)。2つのDNA−PKcs分子はDSB全体にわたって相互作用し、かくして切断されたDNA両端間で分子ブリッジを形成し、そしてそれらの分解を阻害する(DeFazio et al., 2002)。次に、DNA末端を直接ライゲートすることができるが、DSBから生じる末端のほとんどは、ライゲーション前に適切に処理されなければならない(Nikjoo et al., 1998)。切断の性質に応じて、ギャップを埋め、損傷を受けたDNAまたは切断の周りに二次構造を除去することによって適合性のオーバーハングを生成させるために、プロセッシング酵素の種々の組み合わせの作用が必要であり得る。NHEJプロセスにおけるこのステップは、NHEJ修復に関連するヌクレオチドの偶発的損失の原因となると考えられる。ほ乳類NHEJにおける1つの重要な末端プロセッシング酵素は、酵素のメタロ−β−ラクタマーゼスーパーファミリーのメンバーであるArtemisであり、これは、ほとんどの放射線感受性重症複合型免疫不全(SCID)患者において突然変異遺伝子として見いだされた(Moshous et al., 2001)。Artemisは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性と、DNA含有ds−ss転移およびDNAヘアピンに対するDNA−PKcs依存性エンドヌクレアーゼ活性との両方を有する(Ma et al., 2002)。その活性はまた、ATMによって調節される。したがって、Artemisは、複数のDNA−損傷応答に関与する可能性が高いようである。しかし、DSB修復における主な欠陥はArtemis欠損細胞では観察されなかったので、DNA病巣のサブセットのみがArtemisによって修復されるようである(Wang et al., 2005, Darroudi et al., 2007)。
修復を可能にするためにはDNAギャップを埋めなければならない。ヌクレオチドのDSBへの付加は、ポリメラーゼμおよびλに限定される(Lee et al., 2004; Capp et al., 2007)。XRCC4との相互作用により、ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)もDNA末端へ動員され、DNA重合およびライゲーションの両方が可能になる(Koch et al., 2004)。最後に、NHEJは、XRCC4、DNAリガーゼIVおよびXLFを含む複合体により実施されるステップである、DNA末端のライゲーションにより完成する(Grawunder et al., 1997)。他のリガーゼは、DNAリガーゼIVを部分的に置換することができる。なぜなら、NHEJはXRCC4およびリガーゼIVの非存在下で起こり得るからである(Yan et al., 2008)。さらに、研究により、XRCC4およびリガーゼIVはNHEJの外側では役に立たず、一方、対照的に、KUは転写、アポトーシス、および微環境に対する反応などの他のプロセスで作用することが示された(Monferran et al., 2004; Muller et al., 2005; Downs and Jackson, 2004)。
当業者には容易に理解されるように、NHEJを減少または停止させる、上述したタンパク質(例えば、ヘテロ二量体Ku80/Ku70、DNA−PKcsであるが、特にDNAリガーゼIV、XRCC4、ArtemisおよびXLF(XRCC4様因子;またはCernunnos)、PIKK(タンパク質キナーゼのホスホイノシチド3−キナーゼ様ファミリー)の遺伝子のうちの1つでまたはその付近での任意の突然変異は本発明の範囲内に含まれる。同様に、前記経路のうちのいずれか1つに対して作用して、これを減少または停止させる任意のタンパク質またはトランスジェニック配列は本発明の範囲内に含まれる。
HR:基本的機構
相同性組換え(HR)は非常に正確な修復機構である。相同性染色分体は切断された鎖の修復のためのテンプレートとしての役目を果たす。HRは、姉妹染色分体が利用可能である場合、細胞周期のSおよびG2期中で起こる。古典的HRは主に3つのステップ:1)切断された末端の5’の切除、2)ストランド侵入および相同性DNA二重鎖との交換、ならびに3)組換え中間体の分割によって特徴付けられる。異なる経路は、ストランド侵入を実施する能力に依存してDSB修復を完成することができ、合成依存性ストランドアニーリング(SDSA)経路、古典的二本鎖切断修復(DSBR)(Szostak et al, 1983)、切断により誘発される複製(BIR)、および、あるいは、一本鎖アニーリング(SSA)経路を含む。すべてのHR機構は、相互接続し、多くの酵素ステップを共有する。
すべてのHR反応の第1ステップは、MRN複合体(MRE11、RAD50、NBN(以前はNBS1、ナイミーヘン染色体不安定症候群1について、))およびCtIP(CtBP相互作用タンパク質)の助けを借りたヌクレアーゼによる5’末端切断DNAストランドの切除である(Sun et al., 1991; White and Haber, 1990)。結果としての3’一本鎖DSBの生成は、相同性配列を検索することができる。相同性二重鎖の侵入は、RAD51リコンビナーゼタンパク質でコーティングされた3’ss−DNAで構成されるヌクレオフィラメントによって実施される(Benson et al., 1994)。真核生物においてssDNAに関連したDNA代謝プロセスに関与するヘテロ三量体ssDNA結合ンパク質である複製タンパク質A(RPA)(Wold, 1997)の要件は、RAD51フィラメントのアセンブリに必要である(Song and sung, 2000)。次いで、RAD51は環状構造を有するRAD52と相互作用し(Shen et al., 1996)、RPA分子を置換し、RAD51ローディングを促進する(Song and sung, 2000)。Rad52は、酵母における組換えプロセスに重要である(Symington, 2002)。しかし、脊椎動物では、RAD52ではなくはむしろBRCA2(乳ガン2型感受性タンパク質)がストランド侵入および交換で重要な役割を果たすようである(Davies and Pellegrini, 2007; Esashi et al., 2007)。RAD51/RAD52相互作用は、RAD54の結合により安定化される。RAD54は、Dループ形成後の組換え中間体の成熟においても役割を果たす(Bugreev et al., 2007)。他方で、BRCA1(乳ガン1)はBARD1(BRCA1関連RINGドメイン1)およびBACH1(BTBおよびCNC相同性1)と相互作用して、それぞれ、リガーゼおよびヘリカーゼDSB修復活性を発揮する(Greenberg et al., 2006)。BRCA1はまた、CDKに依存した方法でCtIPと相互作用し、そしてDNA損傷に反応してユビキチン化を受ける(Limbo et al., 2007)。結果として、BRCA1、CtIPおよびMRN複合体は、細胞周期のSおよびG2期におけるDNAのHR介在性修復の活性化において役割を果たす。
ヌクレオフィラメントの侵入の結果、置換ループ(Dループ)と呼ばれるヘテロ二重鎖が形成され、侵入型ストランドによる二重鎖のうちの1本のストランドの置換および他のストランドとの対合を含む。次いで、いくつかのHR経路はテンプレートとして相同性配列を用いて修復を完成して、DSBを取り巻く配列を置換することができる。使用される機構に応じて、相同性テンプレートと切断されたDNA分子との間の相互交換(クロスオーバー)は、HR修復と関連し得るか、または関連し得ない。クロスオーバーは、重要な遺伝的影響、たとえばゲノム再配列またはヘテロ接合の損失を有し得る。
当業者には容易に理解されるように、HRを増強する、上述したタンパク質の遺伝子の1つでまたはその周りの任意の突然変異の1つでまたはその周りの任意の突然変異(例えば、MRN複合体(MRE11、RAD50、NBN(以前はNBS1ナイミーヘン染色体不安定症候群1について)のタンパク質)およびCtIP(CtBP相互作用タンパク質)、RAD51、複製タンパク質A(RPA)、Rad52、BRCA2(乳ガン2型感受性タンパク質)、RAD54、BRCA1(乳ガン1)はBARD1(BRCA1関連RINGドメイン1)、BACH1(BTBおよびCNC相同性1)と相互作用する)は、本発明の範囲内に含まれる。同様に、前記経路のうちの1つに対して作用して、これを向上させる任意のタンパク質またはトランスジェニック配列は本発明の範囲内に含まれる。
DNA DSB修復経路間の選択
NHEJおよびHRは、2つの主な真核生物DSB修復経路のようである。それにもかかわらず、それらの間のバランスは、種間で非常に異なる。脊椎動物細胞は、酵母よりも頻繁にNHEJを使用する。1つの解釈は、高等真核生物ゲノムの複雑さのために、HRに必要な相同性の検索がさらに困難になるということである。加えて、高レベルの反復は、異所性組換えの場合に遺伝的安定性にとって危険であり得る。あるいは、DNA−PKcs、BRCA1およびArtemisなどのいくつかの因子が脊椎動物で見いだされるが、酵母では見いだされない。
ほ乳類では、NHEJおよびHRは競合的方法および協調的方法の両方で機能することが知られており、齧歯類細胞およびヒトガン細胞系に関する研究は、NHEJとHR経路との間の選択が細胞周期段階に依存することを証明した。NHEJは細胞周期全体にわたってDSB修復のための機構を提供するが、有糸核分裂細胞のG0−G1および初期S期で特に重要であり(Takata et al., 1998; Delacote and Lopez, 2008)、一方、HRは、後期S/G2期において活性である。調節された発現および修復タンパク質のリン酸化、修復因子についてのクロマチンアクセシビリティー、および相同性修復テンプレートの利用可能性をはじめとするいくつかの因子も、両経路間の選択の調節に重要である。
HR効率を調節する重要な因子は、テンプレート利用可能性である。したがって、姉妹染色分体が利用可能である場合、細胞周期のSおよびG2期中に細胞がHRを上方調節することは意外ではない。なぜなら、これらはHRにとって好ましいテンプレートであるからである(Dronkert et al., 2000)。この選好は、これらがS期で形成される時から後期で分離するまで、姉妹染色分体間の近接性の効果により説明することができる。しかし、相同性テンプレートの存在は、HR適格性に十分ではない。細胞がG1からS/G2へと推移する際のNHEJからHRへのシフトが積極的に調節されることを示す証拠が増えている。
実際、HRは、ほ乳類細胞におけるCDKに依存した細胞周期制御によって厳しく調節される。BRCA2のセリン3291のCDKが介在するリン酸化は、Mおよび初期G1期でのRAD51とのその相互作用をブロックすることが示されている。このリン酸化は、これによりHRが下方調節される機構の1つである(Esashi et al., 2007)。さらに、HRとNHEJとの間の基本的な相違は、HRが介在する修復は、相同性検索およびストランド侵入のためにDNA切除(約100〜200ヌクレオチド)を必要とすることである(Sung and Klein, 2006)。DNA5’−末端切除が、HRを開始し、NHEJのさらなる可能性を阻害することによりDSB修復の選択に貢献する重要なステップであることは、現在明らかである。切除はCDK1活性に依存する。興味深いことに、CDK1をブロックすることは、DSB部位でのMRE1の存続につながり、このことは、CDK1活性が、切断された末端へのMRN動員のためではなく、むしろ末端切除の調節のために必要であることを示唆する(Ira et al., 2004)。最後に、RAD51およびRAD52発現は、S期中に増加し、HR活性化に貢献する(Chen et al., 1997)。対照的に、NHEJは、S期でのDNA−PK活性の減少によって下方調節される(Lee et al., 1997)。
HR/NHEJ界面でのタンパク質
修復経路間の選択の調節は、両修復経路で作用する早期作用型タンパク質によって制御することができる。MRN複合体およびATMはこれらに含まれ、それらのメディエーターおよびトランスデューサータンパク質とともに、任意のDNA損傷を感知し、シグナルを送る効率的なネットワークを形成する。このネットワークは、損傷後、非常に急速に機能し始め、タスクが完了するとすぐにスイッチオフになる。
MRN複合体は、HR、NHEJ、DNA複製、テロメア維持などのDNA修復機構および細胞周期チェックポイントへのシグナリングに関与する(D’Amours and Jackson, 2002; van den Bosch et al., 2003)。DNA損傷修復における第1ステップは、MRE1のDNA結合モチーフを介した、DSBの切断された末端とのヘテロ四量体(M2R2)としてのMRN複合体の会合である(de Jager et al., 2001)。この結合は、RAD50 WalkerAおよびBモチーフを有する球状ドメインとして配置され、DNA分子を架橋する。
MRN複合体はしたがって、DSBの第1センサーであり、2つのステップによりATMを活性化する(Mirzoeva and Petrini, 2003; Lavin 2007)。まず、これは、DNA末端の局所濃度を、ATMモノマー化を引き起こすレベルまで増加させる。次いで、ATMに対するNBN結合は、これを活性なコンフォメーションに変換する(Dupre et al., 2006)。一旦活性化されると、ATMはDSBシグナリングにおいて中心的役割を果たし、種々のタンパク質標的をリン酸化する。例えば、ATMは、p53中間体の作用により細胞周期停止を誘発する(Canman et al., 1998; Waterman et al., 1998)。他の基質、たとえばNBS、MRE1、BRCA1、CHK2、FANCD2、ArtemisおよびDNA−PKcsは活性化ATMキナーゼによりリン酸化され、DNA修復、細胞周期制御、および転写に関与することにより、細胞の運命を決定するために重要である。MRN複合体およびATMは、DSBの認識およびシグナリングにおいて相互依存している(Lavin, 2007)。
C末端S139残基でのATMによるH2Aの急速なリン酸化もDSBに反応して観察される(Burma et al., 2001; Stiff et al., 2004)。リン酸化されたH2AX(γH2AX)は数秒でDSBを取り巻くメガ塩基対領域上で見出され、いくつかのタンパク質のドッキング部位としての役割を果たすことにより、DNA損傷シグナル変換として機能する(Kim et al., 2006)。
MRE11のヌクレアーゼ活性は、RPAの結合部位である3’−ssDNA(White and Haber, 19990)を処理することにより、ほ乳類細胞においてCtIPと協同して一本鎖DNAの生成を調節することが判明している(Limbo et al., 2007; Sartori et al., 2007)。RPA−ssDNA複合体は、任意のさらなるヌクレアーゼ活性を阻害し、修復機構の作用部位を提供する(Sugiyma et al., 1997; Williams et al., 2007)。相同性配列の存在、タンパク質調節および切除の大きさに応じて、この後にHRA−NHEJのいずれかが続く(Rass et al., 2009)。
CtIPは最初に転写リプレッサーCtBP(カルボキシ末端結合タンパク質)および網膜芽細胞腫タンパク質およびBRCA1などの細胞周期レギュレーター(Fusco et al., 1998; Schaeper et al., 1998; Wong et al., 1998)に対するその結合のコファクターとして特性化された。CtIPは、細胞周期の進行において転写依存性および独立性の両方の関与をすることが知られている(Liu and Lee, 2006; Wu and Lee, 2006)。DNA DSBに対する細胞周期チェックポイント反応におけるその中心的役割に加えて、最近の研究では、CtIPは、DBS末端切除を開始することによりHRによるDSB損傷を修復する決定を制御することが示唆された(Sartori et al., 2007; You et al., 2009)。加えて、これは、G1期中のMMEJに必要なDSB末端の制限された切除に関与する可能性もある(Yun and Hiom, 2009)。したがって、CtIPは、細胞周期制御、DNA損傷チェックポイントおよび修復を関連付ける。MRN複合体もDSB末端切除に必要であるので、CtIPは、MRN複合体とBRCA1との間の物理的接続を提供する可能性が高い(Bernstein and Rothstein, 2009; Takeda et al., 2007)。
DNA修復に関与するこれらの遺伝子のいずれかにおける突然変異は、MRE11、NBS、およびRAD50における突然変異について、それぞれ毛細血管拡張性運動失調様障害(ATLD)(Steward et al., 1999; Taylor et al., 2004)、ナイミーヘン染色体不安定症候群(NBS)およびナイミーヘン染色体不安定症候群の変異形(Bendix−Waltes et al., 2005)などのゲノム不安定性症候群に至る。加えて、無発現変異は、マウスにおいて胚性致死に至る(Xiao and Weaver 1997; Luo et al., 1999; Zhu et al., 2001)。ATMまたはATR遺伝子における他の突然変異は、それぞれ、毛細血管拡張性運動失調(A−T)またはゼッケル症候群(SCKL1)などのゲノム不安定性症候群を引き起こす(O’Driscoll et al., 2003)。Artemis欠乏症(Moshous et al., 2001)、DNAリガーゼIV欠乏症(LigIV)(O’Driscoll et al., 2001)、Cernunnos−XLF(XRCC4様因子)欠乏症(Buck et al., 2006)、ブルーム症候群(BS)、ウェルナー症候群(WS)、およびファンコニ貧血(FA)は、DNA損傷修復機構の他のメンバーと関連する(Taniguchi and D’Andrea, 2006)。さらに、ゲノム不安定性障害に加えて、そのような症候群の患者は、様々な種類の悪性疾患を患っていることが多く、修復されていないDNA損傷とガン発症との間の関連を示す。DNA修復に関与する遺伝子は、したがって、腫瘍予防において重要な役割を果たす。
当業者には容易に理解されるように、修復経路間の選択をHRへとシフトされることにより、HRを増強、NHEJを減少、および/またはHR/NHEJ比を増強する上述した遺伝子のうちの1つまたはその周りでの任意の突然変異は、本発明の範囲内に含まれる。同様に、前記経路のいずれか1つに対し作用して、HRを増強、NHEJを減少、および/またはHR/NHEJ比を増強する任意のタンパク質またはトランスジェニック配列は、本発明の範囲内に含まれる。
非霊長類真核生物宿主細胞における導入遺伝子発現産物の増強された分泌
トランスフェクトされた細胞集団には、一般的に、相当量の導入遺伝子発現産物(10〜100および100〜1000超を示す中または高プロデューサークローン/細胞(それぞれ相対的光単位(relative light unit)(RLU))を産生する少量の細胞および導入遺伝子発現産物をほとんど産生しない細胞(たとえば10RLU未満を示す低プロデューサークローン/細胞)がある。しかし、場合によっては、特定の導入遺伝子から高プロデューサークローン/細胞を得ることができない。導入遺伝子発現におけるこの相違は産物特異性であり、ある「発現しにくい」タンパク質があることを示すことができた。そのような発現しにくいタンパク質の低プロデューサー細胞、程度は少ないがたとえば発現しやすいタンパク質の中および高プロデューサー細胞も、特に前駆体タンパク質の細胞内沈着および潜在的なポリペプチド架橋を示し、したがって、最終産物のプロセッシング、フォールディングおよび/またはアセンブリにおける問題の可能性も示した。
本明細書中に提示するさらなるデータは、特にER転位およびプロセッシングにおけるタンパク質分泌の問題も示唆した。タンパク質分泌経路の成分を発現することによりタンパク質分泌を増大させる以前の試みは成功していないが(Lakkaraju et al., 2008)、CHO細胞などの非霊長類細胞およびトランスジェニック配列、特にそのような成分をコード化する霊長類、たとえばヒト配列の組み合わせは、低プロデューサー細胞だけでなく、高プロデューサー細胞においても分泌の改善をもたらした。試験した成分のうち、特定のものおよび特定の組み合わせが特に好ましい結果をもたらした。たとえば、SRP14は、試験に成功したタンパク質のうちの1つであった。新生ポリペプチドがSRP54の助けを借りて利用可能なSRを見つけるまでは、延長を停止することが必要である可能性がある。トランスロコン(Transl)とのさらなる組み合わせが特に高い分泌をもたらしたので、転位が起こるためには、結果として得られる複合体をTranslと会合させる必要があり得、それ自体は小胞体中のシグナルペプチドの除去をもたらし、適切に処理され、組み立てられたタンパク質の分泌をもたらす。しかし、当業者には容易に理解されるように、他の成分のトランスジェニック配列の導入およびそのような配列の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。本明細書中の他の箇所のタンパク質分泌経路の説明について特に参照される。
本明細書中で、転位という用語は、小胞体の膜を越えた輸送を指すために主に用いられる。しかし、この用語は、多くの場合、文献ではさらに一般的な概念を指すために使用されると認められるべきである。
タンパク質分泌経路
タンパク質の分泌は、3つの界全ての生物に共通のプロセスである。この複雑な分泌経路は、特に、細胞の原形質膜を越えたサイトゾルからのタンパク質転位を必要とする。タンパク質がその最終目的地に到達するためには、複数のステップおよび様々な因子が必要である。ほ乳類細胞では、この分泌経路は、2つの主な高分子アセンブリ、つまりシグナル認識粒子(SRP)および分泌複合体(Sec複合体またはトランスロコン)を含む。SRPは、9、14、19、54、68および72kDaの質量を有する6つのタンパク質および7S RNAから構成され(Keenan, Freymann et al. 2001)、トランスロコンは、Sec61αβγ、Sec62およびSec63から構成されるドーナッツ形粒子である。
タンパク質分泌における第1ステップは、シグナルペプチドに依存し、これは、膜を越えた、小胞体(ER)の内腔中への新生タンパク質の転位に介在するポリペプチドのアミノ末端で特定のペプチド配列を含む。このステップの間、主な翻訳リボソームから現れるシグナルペプチドは、シグナルペプチドを認識するSRP粒子のサブユニット、すなわち、SRP54と相互作用する。シグナルペプチドに結合するSRPは、新生ポリペプチドのさらなる伸長をブロックし、その結果、翻訳停止となる。SRP9およびSRP14タンパク質は、伸長停止に必要である(Walter and Blobel 1981)。第2のステップで、リボソーム−新生ポリペプチド−SRP複合体を、SRP54のSRP受容体(SR)との相互作用によりER膜にドッキングさせる(Gilmore, Blobel et al. 1982; Pool, Stumm et al. 2002)。SRは、GTPase活性を示す2つのタンパク質、SRαおよびSRβを含むヘテロ二量体複合体である(Gilmore, Walter et al. 1982)。SRのSRP54との相互作用は、GTPの結合に依存する(Connolly, Rapiejko et al. 1991)。SRは、リボソーム−新生ポリペプチド複合体からのSRPの放出およびリボソームの出口部位のSec61複合体(トランスロコン)との会合を調整する。成長しつつある新生ポリペプチドは、トランスロコンチャンネルを通ってERに侵入し、翻訳がその通常の速度で再開する。リボソームは、翻訳が完了するまで、トランスコロンの細胞質表面上に結合したままである。リボソームに加えて、トランスロコンは、細胞質表面上のリボホリンならびにカルレティキュリンおよびカルネキシンなどのシャペロン、ならびに内腔面上のタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼと密接に関連している。成長する新生ポリペプチドがERの内腔中につきだした後、シグナルペプチドは、シグナルペプチダーゼと呼ばれる酵素によりプレタンパク質から切断され、それにより成熟タンパク質をER中に放出する。翻訳後修飾、正しいフォールディングおよび多量体化後に、タンパク質はERを出て、ゴルジ装置へ、次いで分泌小胞へと移動する。分泌小胞の原形質膜との融合により、ベシクルの内容物は細胞外環境中に放出される。
注目すべきことに、分泌されたタンパク質は、細胞膜を越えるそれら自身の転位に非常に適した特定のシグナル配列を有するように進化した。異なるシグナルペプチドとして見いだされる種々の配列は、独特の方法で分泌装置と相互作用する可能性がある。シグナル配列は、主に、疎水性であり、この特性は新生ペプチドを分泌タンパク質へと向かわせることに関与し得る。アミノ酸の疎水性ストレッチに加えて、多くの一般的な配列の特性は、ほとんどのほ乳類分泌シグナルによって共有される。異なるシグナルペプチドは異種タンパク質を分泌させる効率が異なるが、異種組換えタンパク質を分泌させるために用いることができるいくつかの分泌シグナルペプチド(すなわち、インターロイキンシグナル配列、免疫グロブリンシグナル配列、組織適合性受容体シグナル配列などの分泌シグナルペプチド)が特定されている。類似点にもかかわらず、これらの配列は、発現しにくいいくつかのタンパク質の効率的な分泌を促進するために最適でない。なぜなら、自然のシグナルペプチドは自然の状況から離れて正しく機能することができないからであるか、または宿主細胞もしくは分泌プロセスに関連する相違のためである。異種タンパク質の効率的な分泌に適切なシグナル配列の選択は、切断されたシグナルペプチド内の配列と成熟タンパク質の他の部分との相互作用によってさらに複雑になる可能性がある(Johansson, Nilsson et al. 1993)。
図面の詳述
繰り返しトランスフェクションの導入遺伝子発現に対する効果
あるヒトMAR、たとえばMAR1−68は、プロモーター/エンハンサー配列の上流に挿入された場合、培養された細胞ならびにマウスにおける遺伝子発現を強力に増大させ、そして安定化させることが判明している(Girod et al. 2007, Galbete et al. 2009)。
MARおよび連続したトランスフェクションの遺伝子導入および発現に対する効果の分析を図1に示す。図1(A)は、GFP発現細胞のポリクローン集団における蛍光分布を表す。CHO DG44細胞をMARエレメントがないGFP発現ベクター(GFP、左のプロフィール)、またはMAR1−68を含むベクター(MAR1−68GFP、左から2番目のプロフィール)、およびピューロマイシンに対する耐性を媒介するpSVpuroプラスミドでコトランスフェクトした。これらの細胞のうちのいくつかを同じであるが、選択プラスミド媒介ネオマイシン耐性を有するGFP発現ベクターで、第1トランスフェクションの翌日(右のプロフィール)またはピューロマイシン耐性についての2週間の選択後(右から2番目のプロフィール)のいずれかで第2のトランスフェクションに付した。ピューロマイシンおよび/またはネオマイシン耐性についての2週間の選択後、eGFP蛍光を細胞蛍光測定により定量化した。示したプロフィールは、4つの独立した実験の代表例である。図1(B)において、ヒストグラムは、パネルAで示すような安定な細胞プールの分析から測定した場合、10相対的光単位(RLU)未満を示す非/低エクスプレッサー(expressor)に相当する全細胞のパーセンテージ、または中および高(>100RLU)もしくは非常に高い(>1000RLU)GFP蛍光を示す細胞のパーセンテージを示す。図1(C)において、それぞれの安定なポリクローン細胞プールの平均GFP蛍光をMARGFPのトランスフェクションから得られたものに対して正規化し、4回の独立したトランスフェクションの平均および標準偏差をMARの非存在下での1回のトランスフェクションによって得られる蛍光からの増加(倍)として示す。星印は、GFP発現における有意差(スチューデントt検定、P<0.05)を示す。図1(D)は、ヒトMARの存在下または非存在下で1回または2回トランスフェクトした細胞におけるeGFP導入遺伝子染色体組み込み部位のFISH分析の結果を表す。安定な細胞プールの中期染色体の広がりを、MARのないGFPプラスミドでハイブリダイズし、そして結果の代表的な図を示す。図1(E)は染色体の拡大図であり、蛍光強度の違いを示す。
この図は、GFP発現ベクターおよび抗生物質耐性プラスミドのコトランスフェクションと、それに続いて、それらのゲノム中に安定に組み込まれた導入遺伝子を有する細胞の抗生物質選択により、典型的には、フローサイトメトリーにより分析した場合、ポリクローン細胞集団において蛍光の二峰性分布が得られることを示す(図1A)。この実験設定でY軸に重なる第1細胞亜集団は、検出不可能なレベルでGFPを発現する細胞に相当し、一方、細胞の別の亜集団は、著しいGFPレベルを発現する。MAR1−68を含めることにより、蛍光細胞からの発現レベルが増加し、付随してサイレント細胞の割合が減少した(15%対36%、図1B)。
同じGFP発現ベクターを2週間後に異なった抗生物質耐性遺伝子でコトランスフェクトした場合、蛍光の2.4倍の増加が平均して第2の抗生物質に対する耐性について選択した後に観察され、これは予想される2倍の増加に近い(図1Aおよび1C)。対照的に、GFP発現の予想外に高い(4〜5倍)の増加が、連日行った2回の連続したトランスフェクションとそれに続く両抗生物質での選択から観察された。平均して、ポリクローン集団の全ての細胞にわたって、MARのないシングルトランスフェクションに対して、MAR含有プラスミドの連続したトランスフェクションにより発現の20倍の増加が得られた(図1C)。さらに、一部の細胞は、非常に高い発現レベルを示し、サイレント細胞の発生はポリクローン集団からほぼ完全に抑止された(0.5%、図1B)。MARのない連続したトランスフェクションにより中程度のGFP発現が生じ、その結果、シングルトランスフェクションと比較した場合、全体的な蛍光レベルが3.2倍増加したが、サイレント細胞の発生を抑止しなかった(図1C、データは不掲載)。したがって、MARの存在および繰り返しトランスフェクションは相乗的に作用して、向上した発現レベルをもたらす。
全体として、MAR含有プラスミドの2回の連続した(第1および後続)トランスフェクションから得られる発現レベルは非常に高いので、UV照射をしなくても、太陽光で細胞培養単層からGFP蛍光を容易に見ることができた(図1F、太陽光で細胞単層の可視GFP蛍光によりMAR−GFPベクターで2回トランスフェクトされた安定なポリクローン細胞プールから得られるGFP発現レベルを示す)。CMVプロモーターおよびDsRedレポーター遺伝子を有するプラスミドで同様の結果が得られ、治療用免疫グロブリンの非常に高い発現も連続したトランスフェクションで得られたので(データは不掲載)、この効果は、この研究で使用したGFP導入遺伝子またはSV40プロモーターに限定されるものではなく、図1Gは、導入遺伝子発現と細胞分裂サイクルの期間との間の関係を示す。SV40プロモーターの上流にヒトMAR1−68ならびに軽および重鎖のそれぞれを含む免疫グロブリンG発現ベクターを抗生物質耐性プラスミドでコトランスフェクトし、そして抗生物質耐性細胞を3週間選択した。モノクローン細胞集団を2ラウンドの限界希釈により単離し、分泌されたIgG量および平均細胞分裂時間を測定した。四角および三角は、それぞれ1回または2回のトランスフェクション後に得られたクローンを表す)。興味深いことに、モノクローンCHO細胞クローンにより発現された免疫グロブリンの非常に高いレベルは、多くの場合、細胞分裂時間の増加と相関していた。このことは、タンパク質合成に関してそれらの生理学的限界に達していた可能性が高いことを示す。それら自身の細胞タンパク質(約100pg/細胞)と比較した場合、細胞は同様の量の組換えタンパク質を合成していたので、このことを予想することができる。これは、各細胞分裂で必要なエネルギーインプットを2倍にするはずである。それにもかかわらず、かなりにクローンは、細胞分裂を有意に減速させなかったので、自身の代謝を妨害することなく非常に高レベルで異種タンパク質を発現することが見出された(図1G)。
繰り返しトランスフェクションによる導入遺伝子の共組み込み
繰り返しトランスフェクションにより発現を引き起こす重要なパラメータは、トランスフェクション間の時間間隔であることが判明した。2回のトランスフェクションが2つの独立した、したがって付加的事象として挙動する場合、2週間後に細胞を再トランスフェクトすると、発現に対する相乗効果は観察されなかった(図1C)。このことは、各トランスフェクションのDNAが核内で染色体外エピソームとして相互作用しなければならない可能性があり、細胞ゲノム中に組み込まれる前に混合コンカテマーを形成する可能性があることを示唆する。これを、安定なポリクローン集団からの中期染色体スプレッドの蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)分析によって評価した。MARエレメントを用いるか、または用いないかのいずれかで1回トランスフェクトした80の個々のM期細胞を、MARを含まないGFPプラスミドからなるプローブとハイブリダイズした。1つの組み込み部位が観察されたが、MARでトランスフェクトされた細胞からさらに高い蛍光強度が観察された(図1DおよびE)。蛍光強度はダブルトランスフェクションプロセスにより更に増加し、このことは、さらに多数の導入遺伝子コピーが組み込まれたことを示唆する。1回または2回の連続したトランスフェクション後の全ての場合で独特の組み込み部位が見られた。しかし、1週間の間隔で2回トランスフェクトされた細胞の約半分で二重組み込み事象が観察され、この場合、染色体外エピソームDNAは第1トランスフェクションからほとんど残留していないはずである。このことは、第1トランスフェクションからのDNA組み込みが、2回目のトランスフェクションが実施される前に完了している場合、独立した組み込み事象が起こり得ることを示す。分析した細胞はいずれも同じ組み込み部位を有さなかったので、ダブルトランスフェクションは検出可能な染色体再配列に至らなかったし、また検出可能な好ましい染色体座での挿入にも至らなかった。したがって、2つのトランスフェクションによる導入遺伝子組み込みは、MAR含有プラスミドのシングルトランスフェクションについてすでに報告されているように(Girod et al. 2007)、任意の特定の染色体または染色体部位を目標とするようにされないようである。
高導入遺伝子発現ならびに細胞周期およびトランスフェクションのフェージング
トランスフェクション間のタイミングは高導入遺伝子発現に関与するようであるので、トランスフェクション間の時間間隔の体系的変化の効果を分析した。2回目のトランスフェクションを1回目の21時間後に実施した場合、モデル細胞において、最高のGFP発現レベルが観察され、シングルトランスフェクションと比較して、一貫して蛍光の5倍の増加が得られた。
図2は、連続したトランスフェクション間の至適時期をどのようにして決定したかを表す。図2(A)は、安定なポリクローン集団が、シングルトランスフェクション(−)によるか、または表示された時間間隔をあけたMAR−GFP発現プラスミドの2回の連続したトランスフェクションによって生成したことを示す。2週間の選択後、全ポリクローン集団の平均GFP発現を測定した。蛍光レベルを得られた最大値に対して正規化し、シングルトランスフェクションから得られる発現からの増加(倍)として表す(ここで、(n)は独立したトランスフェクションの数に相当する)。星印は、GFP発現における有意差(スチューデントt検定、P<0.05)を示す。図2(B)は、細胞周期の進行の分析を示す。第1および第2トランスフェクションの時点で、CHO細胞を収集し、ヨウ化プロピジウムで染色し、蛍光を細胞蛍光測定により分析した。相対的ヨウ化プロピジウム(PI)蛍光の分析は、細胞あたりのゲノムDNAの量を表す。各細胞周期状態(G1、S、G2/M)に関連する集団のパーセンテージは表示されるとおりである。
結果は、2回目のトランスフェクションを18時間、24時間および27時間後に実施した場合、シングルトランスフェクションに対して3〜3.5倍の発現の増加が得られたことを示す。しかし、この増加は、21時間後に得られるものよりも有意に低かった(図2A)。この期間は細胞通過後の細胞分裂サイクルの期間に近いので(図2CおよびD)、このことは、連続したトランスフェクションによる高い導入遺伝子発現が細胞分裂サイクルの特定の期と関連し得ることを示唆する。
分裂サイクルに沿って細胞の分布をDNAのヨウ化プロピジウム染色によって測定した。この分析は、細胞通過の18時間後のG1期の細胞の過剰出現を示し、そしてこれは、シングルトランスフェクションからの最高の発現を生じるタイミングに相当することが判明した(図2B、データは不掲載、および図2CおよびD、これらの図は細胞分裂サイクルを通しての細胞培養進行を示す。図2(C)は、細胞周期の進行の時間プロフィールを表す。CHO DG44細胞を、細胞周期分析のために、第1トランスフェクションの至適時期に相当する細胞通過の18時間後から始めて2時間ごとに収集した。細胞を固定し、DNAをヨウ化プロピジウムで染色した後、10,000細胞の蛍光レベルを得た。図2(D)は、細胞周期期間の測定を示す。G1期の細胞のパーセンテージを、細胞を通過させた後2時間ごとに測定した。ブラケットは、2つの最大間のタイミングを示し、これを1サイクル期間(14時間)と見なした。18時間の延長された第1サイクルは、t=0での細胞通過のために不安定であり、遅延は、細胞が培養皿表面に付着するため、そして細胞分裂サイクル進行を再開するためにさらに4時間必要であるためである)。G1細胞の類似のパターンおよび過剰出現は、第1トランスフェクションの12時間後(これもまた、第2のトランスフェクションにより最高レベルをもたらすタイミングに相当する)に得られた。発現が実際に細胞周期フェージングに関連する場合、導入遺伝子発現の別の最適値は、2回目のトランスフェクションを2細胞分裂に相当する間隔で実施する場合に観察されるはずである。42時間後、発現が1つのトランスフェクションについて得られるものと類似していたので、2つのトランスフェクションの相乗効果は失われた。しかし、導入遺伝子発現の第2の、さらに低いが相乗的な増加が48時間後に観察された。18時間での第1トランスフェクションから、そして21または48時間間隔で実施された第2のトランスフェクションについて観察されるさらに高い発現レベルは、最適のDNA転移および/または発現が特定の細胞分裂段階で起こり得ることを意味する。
細胞DNA取り込みに対するMARおよび連続したトランスフェクションの効果
FISH分析は、連続したトランスフェクションによる発現の増加が、一つには、ゲノム中のさらに多数の導入遺伝子コピーの組み込みから生じ得ることを示唆した(図1D)。1日間隔での連続したトランスフェクションは、核におけるプラスミドエピソーム濃度の増加をもたらし得、したがって、細胞ゲノム内の導入遺伝子組込みの可能性を増大させる。各トランスフェクションで核に侵入する導入遺伝子の量を評価するために、一時的シングルおよびダブルトランスフェクションをそれぞれ実施し、続いて2回目のトランスフェクションの1または2日後に単離された核からプラスミドを抽出し、リアルタイム定量PCR(qPCR)により導入遺伝子の定量化を行った。
図3は、連続したトランスフェクションに際してのDNA輸送、組み込みおよび発現を示す。図3(A)は、MARの有無にかかわらずGFPまたはDsRed(「RED」)プラスミドでのシングルおよびダブル一時的トランスフェクションの間に細胞核中に輸送されるGFP導入遺伝子の量を示す。MAR−GFP+MAR−REDは、MAR−GFPを1回目のトランスフェクション中に転移させ、一方、MAR−REDを2回目のトランスフェクションで使用するダブルトランスフェクションに相当する。核を単離し、全DNAをそれぞれシングルトランスフェクションまたは2回目のトランスフェクションの1日後に抽出し、核中に輸送されたGFP導入遺伝子の数をqPCRにより定量化した。結果を、参考CHO細胞ゲノムGAPDH遺伝子の結果に対して正規化し、4回の独立したトランスフェクションの平均を表す。図3(B)は、組み入れられたGFP導入遺伝子コピー数に対するMARおよび連続したトランスフェクションの効果を示す。全ゲノム組み入れ導入遺伝子DNAを先に記載されたGFP発現細胞から、安定なポリクローン細胞プールの3週間の選択後に抽出し、Aについてと同様にDNAを定量化した。図3(C)は、GFP発現に対するMARおよび連続したトランスフェクションの効果を示す。Bで分析した安定な細胞プールのGFP蛍光レベルを細胞蛍光測定により分析した。
図3(D)および(E)は、モノクローン細胞集団における平均GFP蛍光と導入遺伝子コピー数との間の関係を示す。
図3(D)では、GFP、MAR−GFPでトランスフェクトされたか、またはMAR−GFPで2回トランスフェクトされた異なる安定な細胞クローンの平均GFP蛍光レベルを、qPCRにより測定される、ゲノムあたりのそれらの導入遺伝子コピー数の関数として表す。
図3(E)では、導入遺伝子コピー数に対して正規化されたGFP蛍光レベル間の関係をゲノムあたりの組み込まれた導入遺伝子コピー数の関数として表す。算出した回帰曲線を点線で表し、Rは相関係数を示す。
結果から、MAR−GFPで2回トランスフェクトされた細胞が、MAR−GFPで1回だけトランスフェクトされた細胞よりも、それらの核において3.8倍多いGFP導入遺伝子コピーを示したことがわかる(図3A)。GFPまたはDsRed(「RED」)のいずれかを発現するこれらの異なるプラスミドでトランスフェクトされた細胞を比較した場合、MAR−GFPの2回目のトランスフェクションから生じる核送達が、このプラスミドのシングルトランスフェクションから観察されるものよりも4.2倍高いことが観察された。しかし、最初にトランスフェクトされたGFPプラスミドの核輸送は、2回目のトランスフェクションを実施することにより有意に増加しなかった。2回目のトランスフェクションからの核へのDNA輸送には、先の第1トランスフェクションを実施することが有利であると結論づけられた。
これらの結論は、DNA輸送の共焦点イメージングによって強化され、この場合、第1トランスフェクションに使用されるプラスミドをローダミンで標識し、一方、第2にトランスフェクトされるプラスミドをCy5で標識した(それぞれ、暗色(小さいドット)および白色(小さいドット)表示、図4A)。特に、図4は、トランスフェクトされたDNAの細胞内分布を表す。図4(A)は、DNA細胞内輸送の共焦点顕微鏡分析を示す。一時的シングルまたはダブルトランスフェクションを、表示されるように、ローダミンおよびCy5フルオロフォアで標識されたMARを有するかまたは有さないプラスミドを用いてCHO細胞において実施した。トランスフェクトされた細胞を固定し、トランスフェクション後3時間、6時間、21時間にDAPI(大きな暗色のエリアルスポット)で染色した。GFPを発現する細胞は、写真では大きな明色のエリアルスポットとして見える。図4(B)は、細胞内プラスミドDNA分布の定量化を示し、これは、エンドソーム/リソソームコンパートメントをLysoTracker Red DND−99で染色する以外は、Aについて実施した共焦点レーザー顕微鏡法で実施した。ローダミンまたはCy5蛍光から誘導されるクラスターの画素面積を用いて、約120細胞中のプラスミドDNAの量を推定した。
MARの有無にかかわらず第1トランスフェクション後の細胞核において類似した数のローダミンで標識されたプラスミドクラスターが観察され、これは、qPCRにより評価されるように、DNA輸送に対するMARの効果がないこととよく相関する(図3Aおよび4A)。核プラスミドクラスターは2つのトランスフェクション後の本質的に全ての細胞で観察された。しかし、ごく少数の細胞だけが一時的にトランスフェクトされた遺伝子を発現できるという以前の観察結果と一致して、ごくわずかな細胞だけがGFPを発現した(Akita et al. 2007)。
細胞取り込み、リソソーム回避および核内移行を含むことが知られている、CHO細胞におけるトランスフェクトされたプラスミドDNAの輸送は、エンドソーム/リソソーム分解により制限される(Akita et al. 2007)。したがって、トランスフェクトされたプラスミドDNAの細胞内輸送は、エンドソーム/リソソームおよび核コンパートメントをサイトゾルから区別するための特異的染色後に、各トランスフェクション後の細胞小器官およびサイトゾルにおけるその分布を定量化することによって評価した。図4Bにまとめた結果は、第1トランスフェクションの21時間後にMARの有無にかかわらずプラスミドDNAの類似した細胞内分布を示すが、MAR含有プラスミドの核輸送は、初期の時点で若干速いようであった。MARのないプラスミドの第2のトランスフェクションの実施により、核輸送は改善されなかった。しかし、MARのないプラスミドが40%未満であるのに比べて、全Cy5標識pDNAの80%が2回目のトランスフェクションの21時間後にMARの存在下で核中に位置していたので、MARエレメントを有するプラスミドは、リソソーム滞留を回避し、はるかに効率的に核に侵入した。むしろ、第1トランスフェクションについても見られるように、MARのないプラスミドのほとんどは最終的にリソソーム/エンドソームコンパートメントに落ち着いた。このように、MARおよび反復遺伝子導入のリソソーム回避に対する共同的効果が意外にも発見されたことで、単離された核におけるエピソームの濃度の増加について説明がつく(図3Aおよび4B)。この現象は、第1トランスフェクションのDNAによる細胞分解コンパートメントの飽和から起こる可能性があり、したがって、2回目のトランスフェクションのプラスミドが細胞原形質中に残留することが可能になり、細胞原形質中で、MARは核中への輸送を促進し得る。
MARエレメントはゲノムに組み込まれた導入遺伝子のコピー数を増加させる
次に、MARおよび連続したトランスフェクションにより誘発されるプラスミドDNAの輸送の増大が、CHO細胞のゲノム中への導入遺伝子組み込みを増加させるかどうかを試験した。安定なポリクローン細胞集団を図1についてと同様に選択し、ゲノムあたりの安定に組み入れられたGFP導入遺伝子コピーの平均数を、qPCRを用いて全細胞DNAに関して測定した。トランスフェクトされたプラスミド中にMARエレメントを含めることは、安定な細胞プールのゲノム中に組み込まれる導入遺伝子の数を有意に増大させる(図3B)。MARはシングルトランスフェクション後に核輸送を増大させるように作用しないので(図3A)、これは、MARがプラスミド自体のゲノム組み込みを増加させることができることを意味していた。この発見は、MARの使用により、レシピエント細胞のゲノム中に組み込まれる導入遺伝子のコピー数が増加するという以前の示唆(Girod et al. 2005, Kim et al. 2004)を実証する。
連続したトランスフェクションは、プラスミド組み込みの4倍の増加ももたらし、これは、一時的トランスフェクションにおいて見られる遊離細胞外エピソームの増加に比例する(図3Aおよび3B)。MARなしで1回トランスフェクトする場合、平均して48GFPプラスミドコピーが組み込まれ、一方、MARでのそれぞれ1回または2回の連続したトランスフェクションから平均して約163コピーおよび676コピーが得られると推定することができた。全体として、MARおよび連続したトランスフェクションの両方により相乗的に誘発された核輸送の増大により、MARにより引き起こされるプラスミド組み込みの増加と組み合わされた場合、導入遺伝子コピー数が10倍を越えて増加した。これにより、MARの以前に観察された抗サイレンシング効果から予想されるように、導入遺伝子発現がさらに増加した(15倍超、図3C)(Galbete et al. 2009)。
ポリクローン集団から単離された個々の細胞クローンにおいてGFP発現および導入遺伝子コピー数を評価する場合、導入遺伝子発現とコピー数との間に良好な全体的相関関係が見いだされた(図3D)。このことは、導入遺伝子コピー数が、MAR含有プラスミドのダブルトランスフェクションによる発現増加の主な駆動因子であることを示す。さらに、非常に多数の導入遺伝子コピーおよびMARが共組み込みされたMAR含有クローンから、発現の有意な減少は検出されなかった(図3E)。したがって、MARは、共組み込みされたプラスミドの反復性および/またはアンチセンス転写から生じ得る阻害効果、このMARエレメントの強力な抗サイレンシング特性の原因となり得る効果を防止することができたと結論づけられた(Galbete et al. 2009)。しかし、またはdsREDベクターでのコトランスフェクション実験において、個々の細胞クローンを分析した場合、または第1もしくは第2にトランスフェクトされたDNAからのGFP発現を比較した場合に見られるように、発現の平均レベルはコピー数と必ずしも完全に一致するわけではなった(図3Bおよび3C)。このことから、MAR含有プラスミドの2つのトランスフェクション後に観察される増強された導入遺伝子発現は、一つには、改善された核内移行およびゲノム組み込み、そしてひいては導入遺伝子コピー数、サイレンシングの欠如、ならびに導入遺伝子コピーあたりのさらに高い導入遺伝子発現により説明することができるが、他の効果も、トランスフェクション履歴および条件に応じて導入遺伝子発現に影響を及ぼし得るという結論に至った。
プラスミド組み込みおよび発現に対するDNA相同性の効果
MAR含有プラスミドの連続したトランスフェクションから観察される高いGFP蛍光が一つには1つの染色体座での増大した導入遺伝子組み込みから起こるので、この効果の分子基盤を評価した。例えば、クロマチンをアクセス可能な状態に維持し、したがって相同性組換えの適切な標的を提供するMARの能力から予想できるように、第1トランスフェクション中のMAR含有プラスミドの組み込みは、2回目のトランスフェクション中の同じゲノム座での第2の組み込みを促進する可能性がある。あるいは、核中の高濃度の染色体外エピソームによりもたらされ得るように、連続したトランスフェクションから観察される多数の組み込まれた導入遺伝子コピーは、両トランスフェクション中に導入されるプラスミドの更に効率的なコンカテマー化から起こり得る。相同性組換えは、トランスフェクトされたプラスミドの大きなコンカテマーの形成をもたらすことが提案され(Folger et al. 1985)、これはゲノムDNAでの組換えに際して複数のプラスミドの共組み込みに至る可能性がある。後者のモデルにおいて、相同性組換えは、第1および第2トランスフェクション中に用いられるプラスミド上の類似のプラスミド配列間で起こる可能性があり、したがって、導入遺伝子組込みおよび発現の有効性はDNA配列相同性に依存する。
導入遺伝子(GFPまたはDsRed)、プラスミド骨格(アンピシリンまたはカナマイシン細菌耐性)および/またはMAR(ニワトリリゾチームMARまたはヒトMAR1−68)の様々な組み合わせで連続したトランスフェクションを実施することにより、導入遺伝子発現に対するプラスミド相同性の効果を分析することによって、この後者の可能性をまず評価した。
図5は、MAR、プラスミド相同性および相同性組換えがどのように高い導入遺伝子発現をもたらすかを示す。図5(A)に関して、安定なポリクローン細胞プールを、異なる導入遺伝子(GFPまたはDsRed(「RED」))、MAR(ヒト1〜68についてMARまたはニワトリリゾチームMARについてMAR)、および/または細菌耐性遺伝子(アンピシリンもしくはカナマイシン)を有するプラスミドのトランスフェクションにより生成させ、そして4つの独立したトランスフェクションの相対的平均GFP蛍光は、MARのない1つのトランスフェクションから得られるものの4倍増加として示される。星印は、GFP発現における有意差(スチューデントt検定、P<0.05)を示す。図5(B)に関して、GFPまたはMAR1−68GFPプラスミドでの安定なトランスフェクションを、親CHO細胞系(AA8)において、および相同性組換え(51D1)または非相同性末端結合(V3.3)経路のいずれかがない突然変異体において実施した。シングルトランスフェクション((B)の上のパネル)または2回の連続したトランスフェクション((B)の下のパネル)から生じたそれぞれの安定なポリクローン細胞プールの平均GFP蛍光を、MARのないプラスミドで1回トランスフェクトされたAA8細胞から得られるものに対して正規化した。星印は、GFP発現における有意差(スチューデントt検定、P<0.05)を示す。51D1細胞のダブルトランスフェクションから安定にトランスフェクトされた細胞は得られなかった。
結果は、異なったMAR、導入遺伝子、または細菌耐性のトランスフェクションは全て、連続したトランスフェクションで通常観察される高い発現を減少させたことを示す(図5A)。異なるMAR、導入遺伝子およびベクターエレメント(MAR−GFP+MAR−RED構築物)を用いた場合、ダブルトランスフェクション効果はほぼ完全になくなり、このことは、連続したトランスフェクションから高い発現を達成するためにプラスミド相同性が必要であることを示唆する。
相同性組換えは、多くの場合、相同性組換え修復(HRR)と称するプロセスにおいて、二本鎖切断のDNA修復機構として誘発される。したがって、トランスフェクション前のプラスミド線形化が連続したトランスフェクションから得られる高い発現をもたらすかどうかを試験した。
図4(C)は、遺伝子導入および発現に対するDNAのコンフォメーションの効果を示す。線状または環状プラスミドでの1回または連続したトランスフェクション後の導入遺伝子発現レベルを比較するために、同じ等モル量のGFPおよびMAR−GFP環状DNAまたはPvuIで消化されたプラスミドをトランスフェクションのために使用した。選択の2週間後、安定にトランスフェクトされた細胞集団のeGFP蛍光を細胞蛍光測定により分析した。プロフィールは、MARのないプラスミドで1回トランスフェクトされた対照細胞からのGFP蛍光レベルの増加(倍)を示す。線状または環状プラスミドで得られる蛍光値をそれぞれ暗灰色または明灰色で示す。星印は、GFP発現におけるいくつかの有意差(スチューデントt検定、P<0.05)を示す。
導入遺伝子発現の付加的以上の増加は環状プラスミドでも観察されたが、全体的な発現は線状プラスミドを用いて得られるものよりも低く(図4C)、一貫して相同性組換えプロセスにおいて線状DNAの組換え誘導特性は増大していた(Wong et al. 1986)。
相同性組換えは増大した発現をもたらす
プラスミド相同性および二本鎖切断がダブルトランスフェクションによりさらに高い発現レベルを達成するために必要であることは、相同性組換えが関与し得ることを意味する。導入遺伝子は、非相同性末端結合(NHEJ)または相同性組換え(HR)と称する2つの拮抗経路ファミリーを用いて細胞ゲノム中に組み込まれることが提案された。細胞周期のSおよびG2/M期でDNA複製中またはDNA複製後にDNA損傷を修復するために用いられるHRにより例証されるように、これらの経路は、細胞周期の特定の期でより活性である(Takata et al. 1998)。古典的なNHEJ遺伝子がない細胞は、HRに偏った二本鎖切断端(DSB)修復を示し、このことは、これらの2つの主な経路が通常競合して、これらのDNA損傷を修復することを示唆している(Delacote et al. 2002)。したがって、HRを活性化するための一方法は、酵母およびほ乳類細胞で見られるように、NHEJを抑制または遺伝子不活性化することである(Delacote et al. 2002, Clikeman et al. 2001, Allen et al. 2002, Pierce et al. 2001)。MARおよび/または連続したトランスフェクションから生じる増大した導入遺伝子発現におけるHR関連機構の可能な結果を、このように、両経路の重要な成分において突然変異し、したがってHRまたはNHEJのいずれかの唯一の成分であるCHO細胞系を用いて直接評価した。
51D1 CHO突然変異体誘導体はRAD51鎖ランスフェラーゼがなく、したがって、相同性組換えが欠損し、一方、V3.3CHO細胞は、NHEJ経路を開始するために必須の役割を果たすDNA依存性タンパク質キナーゼDNA−PKの触媒活性がない(Jackson 1997, Hinz et al. 2006, Jeggo 1997)。MARなしで安定にトランスフェクトされた細胞と比較して、全GFP蛍光の3倍の増加が、野生型親細胞系(AA8)のポリクローン集団におけるMARによってもたらされた(図5B)。しかし、51D1細胞系において抗生物質耐性について選択した後に安定してトランスフェクトされたコロニーはほとんど生き残っておらず、GFP発現は非常に低いままであった。対照的に、NHEJ欠損細胞では導入遺伝子発現のMARによる活性化の悪化が観察され、その結果、MARのないGFP発現ベクターで1回トランスフェクトされた細胞と比較した場合、導入遺伝子発現が6倍以上増加した。
親AA8細胞と比較して、V3.3細胞由来のGFP発現は、MARの存在および連続したトランスフェクションの両方によって増加した点で、連続したトランスフェクションについて類似した傾向がみられた(図5B、上下のパネルで目盛りが異なることに注意)。親細胞における対照プラスミドのシングルトランスフェクションと比較して、NHEJ欠損V3.3細胞のMARでの2回の連続したトランスフェクションから、全体として、導入遺伝子発現において35倍の増加が得られた。対照的に、NHEJ経路の不活性化は、MARのないプラスミドの発現に対してほとんど影響を及ぼさず、このことは、MARの存在および高いHR活性はどちらも非常に高い導入遺伝子発現を得るために必須であることを示す。一貫して、HRが欠損した細胞は、低い発現レベルを生じ、一方、ダブルトランスフェクションから抗生物質耐性コロニーは得られなかった。
これらの結果から、連続した遺伝子導入プロセスで用いられる2つの選択遺伝子の組み込みおよび維持におけるHR経路の重要性が明らかになる。
図5(C)〜(E)は、MARでの繰り返しトランスフェクションにより改善された発現のモデルを示す。
図5(C)および(D)で示されるスキームにおいて見られるように、導入遺伝子発現の指数関数的増加は、MARエレメントおよびダブルトランスフェクションプロセスの両方に起因する、細胞核中へのプラスミドの増大した侵入およびゲノム組み込みによって部分的に説明される。第1トランスフェクション後、MARの存在は、トランスフェクトされたプラスミド間の相同性組換えの頻度を増大させる可能性があり、より大きなコンカテマー構造の形成およびより多くのプラスミドコピーの組み込みを可能にする。加えて、MARは、クロマチン構造を開口状態に改造するためにタンパク質を動員する可能性がある。図5(E)で見られるように、第1トランスフェクションおよび細胞の分解コンパートメントの起こり得る飽和の結果として、2回目のトランスフェクションのプラスミドは、より効率的に核へと輸送され得る。MARエレメントは、前述同様に組換えを促進するように作用することができ、両トランスフェクションからの相同性プラスミドのより良好なコンカテマー化を可能にする。細胞周期状態も最適タンパク質発現を達成するためのパラメータである。細胞がG1期にあるときにトランスフェクションを実施することにより、プラスミドは細胞周期の後期(たとえば、SまたはG2/M)で核に達する可能性があり、これは相同性組換えにとってより都合がよく、より大きなプラスミドコンカテマーの形成および染色体組み込みにさらに貢献する。
タンパク質分泌
低および高プロデューサーCHOクローンにより産生される組換えIgGの特性化
まず、高または低Mab産生レベルを示すCHO細胞クローンによるIgG重鎖および軽鎖の発現および分泌に影響を及ぼし得る支障または欠陥を検討した。
異なる組換えIgGを発現するCHO−K1 Sの種々のクローンを生成させた。
図6は、高および低組換えIgG−プロデューサーCHOクローンにより発現される免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の特性化を表す。
図6(A)は、抗ヒトIgG抗体を使用した細胞内(細胞可溶化物)および分泌されたIgG(培地)のウェスタンブロットを示す。高(HP)および低(LP)IgG−プロデューサーCHO−K1−Sを全細胞抽出に付し、Laemmli SDS−PAGE8%で分析した。免疫グロブリン重鎖および軽鎖を図ではそれぞれHCおよびLCとする。図6(B)は、TX−100溶解度分析を示す。細胞を、1%のTriton X100を含むPBS中に溶解させた。10.000×gで10分間遠心分離した後、Tx可溶性タンパク質を含む上清およびTx不溶性タンパク質を含むペレットを還元性および非還元性SDS−PAGE8%下で分割した。図6(C)は、IgGのフォールディングおよび分泌動力学のシクロヘキシミドベースの追跡分析を示す。高(HP)および低(LP)IgG−プロデューサーCHO−K1 Sクローンを100μMのシクロヘキシミドの存在下で培養した。種々の時点で、細胞を収集し、1%のTX−100を含有する緩衝液中に溶解させた。Tx可溶性および不溶性フラクションを次いで非還元性SDS−PAGE4〜10%で分割した。免疫グロブリンの遊離、二量体およびアセンブリ中間複合体を、それぞれ遊離−HCまたは遊離−LC;(LC)および(HC);HC−LCおよびIgGとした。矢印は、適切に処理された構造を示し、楔形は異常な構造を示す。
図6からわかるように、培養上清におけるMab力価は、過剰発現されたMabタンパク質によって非常に多様であった。しかし、結果は、再現性が高く、Mabは一貫して低産生性細胞クローンを産生するものもあれば、一貫して高産生性細胞クローンを産生するものもあった。しかし、発現レベルは、トランスフェクションに使用したプラスミド構築物と無関係であり、使用したシグナル配列に依存せず、実際、すべてのMabについて同じであった(データは不掲載)。
種々のクローンのポリペプチド生合成とIgG分泌レベルとの間の相関関係を見いだすために、各クローンによって発現された細胞内重鎖および軽鎖(HCおよびLC)を分析した。全細胞抽出物および定常状態でCHO−K1 Sクローンにより産生される分泌されたIgG免疫沈殿物を、SDS−PAGEにより還元条件下で分割した。タンパク質移動プロフィールから、それぞれ高IgG−プロデューサークローン12B、16DおよびS29のHCおよびLCの予想される50kDaおよび25kDaバンドが明らかになった。しかし、低IgG−プロデューサーC24およびC58により発現された軽鎖は、異常に高い見かけの分子量で移動した(図6A)。分泌されたタンパク質を分析すると、同じ異常な挙動がみられた。PNGase Fは、細胞抽出物に対して実施された脱グリコシル化実験を媒介し、分泌されたIgGはLC移動度を変更せず、このことは、低プロデューサーのLCの低速の電気泳動移動がさらなるグリカン部分によるものではなかったことを示す(データは不掲載)。
異常なLCの生化学的性質を評価するために、1%のtriton X−100(Tx)を含むPBS溶液中の細胞内HCおよびLC含有物を抽出し、10.000×gで10分間の遠心分離によりTx不溶性タンパク質からTx可溶性タンパク質を分離した。尿素9Mを追加したSDS含有Laemmli緩衝液中にタンパク質を完全に可溶化させた後、還元性SDS−PAGEによりフラクションを分割した。予想通り、高IgG−プロデューサークローンのLCおよびHCがTx可溶性フラクション中のみで検出された(図6(B);S29レーン)。しかし、C24およびC58低プロデューサーのLCのかなりの部分は、Tx処理によって可溶化することができず、細胞内沈着および潜在的なポリペプチド架橋を示した。驚くべきことに、LCのこのTx不溶性フラクションは、濃縮用ゲル中に残留したままであり、高分子量凝集物およびジスルフィド結合の形成を示すので、非還元条件下で分割することができなかった。これらのデータは、Tx耐性形態でのその凝集に至るLCフォールディングまたはアセンブリプロセスにおけるデフォルトを示唆していた。
シクロヘキシミドに基づく追跡アッセイを次に実施して、IgGフォールディングおよびアセンブリ動力学ならびにCHO細胞クローンにおけるIgG凝集体の運命を調査した。非還元性条件下での高プロデューサークローンのSDS−PAGE分析は、遊離LC種の蓄積およびHCおよびLC二量体の形成を明らかにした。HC含有種は、次第に減少するようであり、同時にHC−LC複合体中および完成IgG四量体中へ組み込まれた(図6C)。対照的に、LCは、低IgG−プロデューサー中の凝集形態内でのみ検出されるか(図1C、Tx−10不溶性パネル)またはHC−LCなどのアセンブリの中間複合体中および完成IgG中へ組み込まれた(図6C:Tx−100可溶性パネル)。興味深いことに、洗剤不溶性LC形態の量は、長時間にわたって一定のままであり、したがってIgGフォールディングプロセスに関与しなかった(図6C:Tx−100不溶性パネル、Agr−LC)。このことは、LC凝集物が任意のさらなるフォールディングおよびアセンブリプロセスについて役に立たないことを示した。
これらの結果から、以下の仮説をたてた:(1)高IgG−プロデューサーのERフォールディング機構および分泌能力は、HCおよびLCの大規模な生合成および蓄積により飽和に近いが、細胞はそれにもかかわらず、正常構造のMabのアセンブリを続行した;(2)低IgG−プロデューサーによって産生されたアセンブリできないLC凝集物の蓄積により、これらのクローンの分泌欠陥を説明できた;そして(3)低IgGプロデューサーにおけるLCシグナルペプチド切断やLCの付随する凝集の潜在的な欠損(ERにおけるポリペプチドの共翻訳転位のデフォルトを示す可能性がある)。
低プロデューサークローンにおけるERの潜在的な機能不全を評価するために、ERタンパク質フォールディングおよびストレス反応の種々のセンサーの発現を調べた。ERのフォールディング能力を越えた組換えタンパク質の過剰発現は、アンフォールド型タンパク質応答(Unfolded−Proteins−Response(UPR))と総称される一組の細胞応答を誘発することが示されている。これらの細胞機構は、ERフォールディング能力を改善し、ERストレスを軽減し、ER機能を回復する働きをすることができるが、これらはまた組換えタンパク質の産生を低下させる可能性もある(Khan SU et al, 2008; Kang S−W et al, 2006)。例えば、ERAD(ER関連分解)遺伝子発現のUPRによる活性化は、アンフォールド型またはミスアセンブルされたER関連組換えタンパク質に分解経路を標的とさせることができる。さらに、重度のERストレスの場合、それらのタンパク質分泌機構を適応させることができない細胞は、アポトーシス経路を誘発する可能性がある。
組換え免疫グロブリン鎖のLCミスプロセッシングおよび/または過剰発現がERストレスおよび/またはUPRを誘発し得るかどうかを評価するために、低および高プロデューサークローンを7日間培養し、培養手順に沿って種々の時間で分析した。
図7は、高および低IgG−プロデューサーのERフォールディングおよびUPR機構の特性化を示す。高(HP)、低(LP)IgG−プロデューサークローンおよび親細胞をバッチ培養法で培養した。培養の0、3、5および7日の種々の時点で細胞を収集した。細胞抽出物を次いで抗BiP抗体(上のパネル)および抗CHOP抗体(中間のパネル)を用いたウェスタンブロッティングによって分析した。タンパク質ローディング対照をGAPDH含有量(下のパネル)により推定した。CHOP前駆体および活性形態をそれぞれ星印および矢印により示した。
ウェスタンブロットは、2つの低プロデューサークローンにおいて、BiPの増大した発現、UPR活性化のセンチネルマーカーを示した。対照的に、高プロデューサークローンについてBiPレベルは検出の増加は検出されなかった(図7)。これらの結果は、ミスプロセッシングLCを発現する低プロデューサークローンが、BiP過剰発現によって媒介されるER−ストレス応答を誘発したことを示唆した。対照的に、高プロデューサークローンによって発現される低レベルのBiPタンパク質は、これらの細胞がUPRカスケードを活性化することなく非常に高レベルの組換えIgGを取り扱い、分泌することができることを示唆した。
タンパク質−フォールディングの支障またはミスフォールディングをUPRによって解決することができない場合、その発現を誘導することができる、CHOPプロアポトーシス転写因子の発現レベルも分析した。低および高IgG−プロデューサーCHOクローンはどちらも、Mabを発現しない対照細胞と比較した場合、CHOPタンパク質の過剰発現を示した(図7)。興味深いことに、CHOPタンパク質は培養の第5日まで2つの低プロデューサークローンにおいて次第に蓄積し、一方、細胞CHOPレベルおよびプロアポトーシス経路は高プロデューサークローンにおいて構成的に誘発されるようであった。
これらの観察結果は、BiPが介在する低プロデューサークローンのUPR応答の結果、UPRの末期となり、そしてアポトーシス細胞死プログラムが活性化されたことを意味するものであった。対照的に、高プロデューサークローンはBiPが介在するUPR応答を引き起こさなかったが、CHOPが介在するプロアポトーシス応答がこれらのクローンにおいて誘発された。このことは、組換えMabの異常で膨大な過剰発現は、主なERストレスセンサーBiPと独立して細胞死プログラムを開始し得ることを示唆するものであった。
異なるIgG−プロデューサークローンが組換えIgGタンパク質の種々のフォールディングおよびプロセッシング状態を示し、宿主細胞の異なる細胞および分子応答がそれらの発現および分泌中に誘発されたことも証明することができた。したがって、これらの種々の低および高プロデューサークローンはどちらも、発現しやすい組換えタンパク質または発現しにくい組換えタンパク質の工業生産に悪影響を及ぼし得る制限に直面する可能性がある。したがって、本発明者等は、生物工学アプローチを用いて組換えIgG産生を改善するための新規手段を特定するための細胞モデルとして、これらの高および低IgG−プロデューサーCHOクローンを引き続き使用した。
タンパク質のプロセッシングおよび救済効率的な分泌を修正するための戦略
低プロデューサークローンにおけるLCの溶解度の不足およびその低速の移動度は、ペプチドシグナルの存在を示唆し、ERコンパートメントに対するLCプレタンパク質の非効率的なターゲティングおよび/またはミスプロセッシングを支持した。したがって、シグナルペプチドミスプロセッシングおよび組換えIgGのIgG軽鎖の凝集は、ER中への不適切なターゲティングおよび/または転位から起こり得る可能性があった。最近の研究は、BiPなどのERストレス関連タンパク質を発現させるための宿主細胞系の生物工学が、異種タンパク質の分泌を改善できることを示唆した(Peng and M. Fussenegger, 2009)。しかし、ERストレスタンパク質BiPは低プロデューサークローンにおいてすでに自発的に上方調節されることが見出されたので、これは成功の可能性が高い選択肢ではなかった。
タンパク質転位機構の成分の過剰発現によりタンパク質分泌を改善する試みは、ほ乳類細胞系では成功しなかった。例えば、正常レベルを越えるSR14発現は培養されたヒト細胞からの分泌効率を改善しなかった(Lakkaraju et al., 2008)。
これらの結果と関係なく、アフィニティーシグナルペプチドと結合し、SRP−RNA−リボソーム複合体のER膜上へのドッキングを媒介する多タンパク質−RNA複合体であるシグナル認識粒子(SRP)のタンパク質またはシグナル認識粒子に関連するタンパク質を発現することにより、タンパク質分泌を増強する試みがなされた。具体的には、(1)ヒトSRP14サブユニット、(2)細胞アポトーシスの調節に関与するFADD(FAS関連デスドメイン)タンパク質のドミナントネガティブ型突然変異体が発現され、また(3)対照として無関係のGFPタンパク質も発現された。
1つは低収率モノクローナル抗体(例えば、インフリキシマブ、発現するのが困難なタンパク質)を発現し、もう1つは同じシグナルペプチドを有する高収率MAb(例えば、トラスツズマブ、発現しやすいタンパク質)を発現する、2つのクローン細胞系を使用し、5.1×10細胞を、エレクトロポーレーション(MICROPORATOR、1250V、20msパルス時間および3パルス)により表示されたタンパク質をコード化する5μgのプラスミドで再トランスフェクトした。ミクロポーレーション後に、8mMのグルタミンおよび2xHTを追加したSFM4CHO培地(HYCLONE)に細胞を添加した。2日後、細胞を適切な希釈度の選択マーカー(300μg/mL G418)でT75プレートに移し、そして細胞をさらに培養した。約2週間後、薬剤耐性細胞を振盪フラスコ中で増殖させ、SRP14発現集団を限界希釈プロセスにおける単細胞クローニングのために希釈した。以下に提示した結果は、表示されたタンパク質を発現する細胞クローンで得られた。
SRP14発現によるMab産生の増強
まず、細胞内HCおよびLCのTx溶解度を測定し、SRP関連タンパク質を発現する高および低IgG−プロデューサークローンの分泌レベル。
図8は、組換えIgG産生CHOクローンのSRP14トランスフェクションが軽鎖凝集をなくし、IgG分泌を救済したことを示す。2つの異なるCHOクローン、つまり高(F9)および低(A37)組換えIgG産生CHOクローンを、種々の対照または組換えIgGの正しいプロセッシングおよび分泌を救済すると予想される候補タンパク質をコードするcDNA構造でのトランスフェクションに付した(A:GFP;G:SRP14;H:FADD−DN)。
図8(A)において、タンパク質A、GまたはHを共発現する低および高プロデューサーCHOクローンの細胞抽出物のTX−100可溶性およびTX−100不溶性フラクションを4%〜10%勾配SDS−PAGEで分析し、IgGタンパク質をケミルミネッセンスにより検出した。明色矢印は、低IgGプロデューサー(明色楔形)によって産生された遊離・未処理LCおよび未処理・凝集LCを示す。GまたはHタンパク質のトランスフェクション後に低IgGプロデューサークローンによって産生された遊離した適切に処理されたLCを黒色楔形で示した。
図8(B)は、細胞培養培地上清に関して実施した、分泌されたMabのELISAアッセイから評価した場合の、SRP14発現ベクターでのトランスフェクション前(−)および後(G)のF9およびA37クローンの比生産性分布を示す。
興味深いことに、ウェスタンブロット分析は、完全長ヒトSRP14(Genebankアクセス番号X73459.1、その全体が参照することによって本明細書中に組み込まれる)の過剰発現は、pro−LCを、フォールディングおよびHCとのアセンブリについて適格な正常LC成熟形態のように移動する種への変換し、一方、HCの移動は影響を受けなかったことを示した(図8A、上のパネルのレーンG、矢印を参照)。なお一層驚くべきことに、SRP14過剰発現はTX不溶性フラクションにおけるLC凝集を完全に無効にした(図8A、下のパネル)。対照GFPタンパク質の発現は、タンパク質溶解度を改善せず、LCの適切なプロセッシングも回復しなかった(図8A、レーンA)。SRP14の発現は、高プロデューサークローンから得られるHCおよびLC移動パターンに対して影響を及ぼさなかったが、遊離HCおよびLCの量ならびに完全にアセンブルされたIgGの量は、対照と比較してやや増加した(図8A、FP−F9クローン、レーンG)。
SRP14の外因性発現の組換えIgG力価に対する影響を測定するために、上清細胞培養を次いでELISAにより分析し、適切にアセンブルされたMabについて調べた。低IgG−プロデューサーにおけるSRP14の過剰発現は、低プロデューサークローンからのIgG分泌の有意な増加をもたらした(図3B)。低プロデューサー細胞から単離されたクローン(LP−G集団)は、比生産性(Qp)において7倍の平均増加を示した。さらに、Qpの30%増加を観察することができたので(HP−Gクローン)、SRP14の外因性発現はまた、HPクローンの分泌も改善した。興味深いことに、発現しにくいMabおよび発現しやすいMabについて同じレベルでIgGを発現することができる個々のクローンが単離され(>40pcd)、このことは、転位におけるその後のステップが律速段階になることを示唆する。
外因性SRP14発現の作用は予想外である。SRPにより媒介される伸長停止におけるこのサブユニットの機能が与えられると、発現は、産生しにくいIgGプロデューサークローンにおけるLC伸長の遅延の拡大を引き起こし得る。低プロデューサークローンのMabの適切なプロセッシングは、予想外に長い翻訳中断を必要とする可能性がある。これはおそらくは、これらの特定のIgGの転位を媒介する複合体のER上へのドッキングの反応速度が他の分泌されたタンパク質よりも遅い可能性があるためである。外因性SRP14成分による翻訳速度の調節は、今度はERにおけるプロLCの共転位(co−translocation)に影響を及ぼすことができ、したがって、シグナルペプチドの効率的なプロセッシングを回復することができた。
別の制御タンパク質、すなわち、デスドメインを有するFAS関連タンパク質(FADD)の効果も、FADDのドミナントネガティブ変異体(FADD−DN)を発現することによって評価した(Newton, Harris et al. 1998)。FADD−DNの過剰発現もまた、SRP14について見られるように、LC凝集をなくすことが見出された(図8A、下のパネル、レーンH)。FADDは、死誘発シグナリング複合体(DISC)を形成することによって細胞においてアポトーシスを誘発するデス受容体(DR)タンパク質のファミリーと会合することが知られているので、このことは予想されなかった。細胞質に位置するFADDの主な生理学的役割は、このように、細胞死を誘発することであり、したがって、FADDを不活性化して、CHO細胞アポトーシスを防止する試みがなされた。しかし、最近の研究は、修飾および細胞内局在化に応じて、複数の非アポトーシス活性の原因はFADDであるとした。例えば、FADDリン酸化および核移行は遺伝子発現を調節し、細胞周期および有糸分裂進行の両方を活性化する(Tourneur and Chiocchia 2010)。さらに、RTN3と称するER結合タンパク質は、FADDをER膜に動員することができ、そしてFADD自体は非定型微小胞ベースの経路により分泌され得る。しかし、これまで、FADDはERによるタンパク質分泌の調節に関与しなかった。本発明者等の発見は、したがって、過剰発現されたMabのプロセッシングの改善の関連でFADDについての新規機能を示す。あるいは、FADD−DNの発現は、翻訳機構を飽和させた可能性があり、このプロセスをなんとか遅らせ、ERへの適切なターゲティングを可能にする。しかし、FADD−DNもGFP過剰発現も、高レベルでのIgG分泌を有意に回復しないことが判明した。したがって、SRP14の外因性発現のみが、Mab産生を回復することができた。したがって、SRP−複合体機能の調節は、ER−内腔トランスロコンパートナーの動員および/または新たに合成された(neosynthetized)LCのERフォールディングシャペロンとの相互作用に特に必要であり得ると仮定された。非常に高いMab分泌レベルは6ヶ月を越えて維持され、これがSRP14発現細胞の安定な性質であることを示す。流加培養法において、培地1リットルあたり8グラムを越えるMabが得られ、これは、本発明者等がこの発現しにくいタンパク質に関してSRP14発現なしでは達成できなかった高い力価である。
SRP14の発現後に良好な結果が得られたので、ERにおける新生ポリペプチドの適切な転位に貢献し得る他のタンパク質の影響を試験した。アフィニティーシグナルペプチドを結合し、SRP−RNA−リボソーム複合体のER膜上へのドッキングを媒介する多タンパク質−RNA複合体であるシグナル認識粒子(SRP)の他のタンパク質、またはSRP機能に関連するタンパク質も試験した。具体的には、本発明者等は(1)ヒトSRP54サブユニット(シグナル配列認識を増大させるために)、(2)ヒトSRP9および/またはSRP14サブユニット(これら2つのポリペプチドはインビボで複合体を形成して、おそらくは翻訳を遅延させるので)、(3)ヒトSRP受容体(SR)サブユニットαおよびβ(転位機構の能力を増大させるために)、および(4)トランスロコンSec61ヒトサブユニット(Transl)(おそらくはERにおける転位を改善するために)を発現した。
図9は、SRP9、SRP14、SRP54、SRおよびトランスロコンの種々の組み合わせを発現するCHO細胞プールにおけるMAb産生の増加を表す。低プロデューサーA37クローンを、表示された候補タンパク質の発現を引き起こすcDNA構造でのトランスフェクションに付した。培養上清をELISAにより分析し、Mab分泌の力価を測定した。
図面からわかるように、SRP14またはSRP54の発現は、Mab分泌の強力な増加に至るのに対して、SRおよびTranslは小さいが、依然として有意な分泌の増加をもたらし、一方、SRP9単独は発現を著しく改善しなかった(図9およびデータは不掲載)。これらのタンパク質の組み合わせも試験した。SRP9は、SRP14および/または54の発現により得られる陽性効果を完全に無効にし(SRP9+SRP14+SRP54レーン)、改善された分泌をもたらす任意のSRPタンパク質の単純な発現ではないことを示す。SR発現は、SRP14およびTranslのみによって媒介される効果をやや増加させたが、SRP9、14および54の存在下で得られる分泌を強力に増大させた(SRP9+SRP14+SRP54レーンをSRP9+SRP14+SRP54+SRレーンと比較)。しかし、分泌における最高の増加は、SRP14およびSRに加えてTranslを過剰発現する場合に得られた(SRP14+SR+Transl対SRP14+SR)。SRP14、SRP54、SRおよびTranslの他の組み合わせもタンパク質分泌を改善するために貢献し、したがって、このような組み合わせはすべて本発明で具体化されることは当業者には明らかであろう。
材料および方法
I.導入遺伝子組込みおよび発現
プラスミドおよび構築物
pGEGFPcontrolは、pEGFP−N1(CLONTECH)からeGFP遺伝子の発現を引き起こすpGL3(PROMEGA)由来のSV40初期プロモーター、エンハンサーおよびベクター骨格を含む。pPAG01SV40EGFPは、pGEGFPcontrolのSV40初期プロモーターの上流のニワトリリゾチームMARフラグメントの挿入から生じる(Girod et al. 2005)。ヒトMAR1−68は、DNA構造特性を用いてSMARScanプログラムにより特定された。これをpBluescriptにおいてヒト大腸菌人工染色体からクローンし、次いでSV40初期プロモーターの上流のpGEGFPcontrol中に挿入し、その結果、p1−68(NcoI filled)SV40EGFPプラスミドを得た(Girod et al. 2007)。
pGL3−basic(PROMEGA)においてpCMV−DsRed(CLONTECH)から、CMVプロモーター(エンハンサーを含む)の制御下でDsRed遺伝子を挿入することによって、pGL3−CMV−DsRedを作製した。BspHIで両プラスミドを消化することにより、pGL3−CMV−DsRedのアンピシリン遺伝子をpCMV−DsRed(CLONTECH)由来のカナマイシン耐性遺伝子と交換することによって、pGL3−CMV−DsRed−kanを次に作製した。次いで、ニワトリリゾチームまたはヒト1−68MARをpGL3−CMV−DsRed−kanプラスミド中に挿入した。これらを、ニワトリリゾチームフラグメントを含むKpnI/BglIIフラグメントとして、またはKpnI/BamHIヒト1−68MARフラグメントとして、pGL3−CMV−DsRed−kanにおけるCMVプロモーターの上流に挿入し、その結果、pPAG01GL3−CMV−DsRedおよびp1−68(NcoI)filledGL3−CMV−DsRedがそれぞれ得られた。
細胞培養およびトランスフェクション
CHO DG44細胞系(Urlaub 1983)を、HT(GIBCO)および10%のウシ胎仔血清(FBS、GIBCO)を追加したDMEM:F12(GIBCO)中で培養した。親CHO細胞AA8、NHEJ欠損細胞V3.3およびHR欠損細胞51D1(Adayapalam et al., 2008)はFabrizio Palitti博士のご厚意により提供を受け、10%ウシ胎仔血清および抗生物質を含むDMEM:F12培地中で培養した。
製造業者の説明書(INVITROGEN)にしたがって、Lipofect−AMINE2000を使用してこれらの細胞でトランスフェクションを実施した。蛍光励起セルソーター(FACS)を用い、トランスフェクション(一時的トランスフェクション)の1、2または3日後にGFPまたはDsRed蛍光レベルを分析した。GFPおよび/またはDsRedを発現するCHO−DG44細胞の安定なプールを耐性プラスミドpSVpuro(CLONTECH)のコトランスフェクションによって得た。CHO−DG44については5μg/mlのピューロマイシン(AA8、V3.3および51D1について8μg/mlのピューロマイシン)で2週間選択した後、細胞をFACSによって分析した。
複数のトランスフェクションを以下のように実施した:第1トランスフェクション後、耐性プラスミドが別の耐性遺伝子、pSV2 neo(CLONTECH)を含む以外は、前記のようにして、細胞を次いで二度目のトランスフェクトに付した。2つのトランスフェクションは、本文中で特に別段の記載がない限り、細胞周期に従うようにタイミングをはかった。2回目のトランスフェクションの24時間後、細胞を継代し、250μg/mlのG418および/または2.5μg/mlのピューロマイシン(AA8、V3.3および5A1D1について250μg/mlのG418および4μg/mlのピューロマイシン)で選択した。3週間の選択後、GFPおよび/またはDsRed発現をFACSにより分析した。
蛍光活性化セルソート
eGFPおよびDsRedタンパク質の一時的発現を、FACScaliburフローサイトメーター(BECTON DICKINSON)を用いてトランスフェクションの24時間、48時間または72時間後に定量化し、一方、安定な細胞プールの発現を、少なくとも2週間の抗生物質選択後に測定した。細胞をPBSで洗浄し、トリプシン−EDTA中に収集し、プールし、そして無血清合成ProCHO5培地(CAMBREX corporation)中に再懸濁させた。一時発現のためにGFPチャンネル(FL−1)で350V、DsRedチャンネル(FL−3)で450に設定して、FACScaliburフローサイトメーター(BECTON DICKINSON)で蛍光分析を行い、一方、FL−1について240VおよびFL−3について380Vの設定を使用して、安定な発現を分析した。安定なトランスフェクションについて100,000の事象を取得し、一時的トランスフェクションについては10,000の事象を取得した。WinMDソフトウェアを用いてデータ処理を実施した。
細胞周期分析
表示した時間で、DNAをヨウ化プロピジウム(PI)で染色した後に、CHO細胞のフローサイトメトリーにより細胞周期状態を分析した。細胞をまず(PBS)で洗浄し、トリプシン化し、そしてミクロ遠心分離器中、1500rpmで5分間遠心分離することにより、1mlの成長培地中に収集した。さらなるPBS洗浄後、細胞を1mlのPBS中に再懸濁させた後、500μlの冷70%エタノールを細胞懸濁液に渦状に撹拌しながら滴加することによりエタノールで固定した。試料を30分間−20℃でインキュベートし、そして細胞を前述同様に遠心分離した。結果として得られた細胞ペレットを、50μg/mlのRNaseAを追加した500μlの冷PBS中に再懸濁させ、そしてDNAを40μg/mlのPIで30分間暗所にて染色した。細胞を次いでPBSで洗浄し、遠心分離し、そして500μlのProCHO5培地(CAMBREX corporation)中に再懸濁させた後、FACScaliburフローサイトメーター(FL−3チャンネル;BECTON DICKINSON)で分析した。10,000事象をそれぞれの試料について取得した。
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション
FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)は、Derouaziら(2006)およびGirodら(2007)で記載されているようにして実施した。手短に説明すると、1−68ヒトMARの有無にかかわらずトランスフェクトし、そしてコルヒチンで処理した細胞から、中期染色体スプレッドを得た。MARなしでpSV40GEGFPプラスミドの直接ニック翻訳により調製したハイブリダイゼーションプローブを用いてFISHを実施した。
核およびDNAの単離
核を、一時的トランスフェクション(複数可)の1、2または3日後に、6ウェルプレート中で増殖させた増殖性およびコンフルエントCHO DG44細胞から単離した。1×10細胞を冷PBSで2回洗浄し、2体積の冷緩衝液A(10mMのHEPES(pH7.5)、10mMのKCl、1.5mMのMg(OAc)、2mMのジチオトレイトール)中に再懸濁させ、そして10分間氷上で膨張させた。Dounce Homogeniserを用いて細胞を破砕した。ホモジネートを2分間2000rpm、4℃にて遠心分離した。破砕した細胞のペレットを次いで150μlのPBS中に再懸濁させ、緩衝液B(30%のスクロース、50mMのTris−HCl(pH8.3)、5mMのMgCl2、0.1mMのEDTA)のクッション上に置き、9分間1200gで遠心分離した。核のペレットを200μlの緩衝液C(40%のグリセロール、50mMのTris−HCl(pH8.3)、5mMのMgCl、0.1mMのEDTA)中に再懸濁させ、そして必要になるまで−80℃で凍結保存した(Milligan et al. 2000)。
全細胞DNAを、CHO DG44安定細胞プールまたは単離された細胞核から、QIAGEN製のDNeasy Tissue Kitを用いて単離した。安定な細胞プールに関して、6ウェルプレート中で増殖する1×10コンフルエントCHO DG44細胞を集めた。培養された動物細胞からの全DNAの単離についての製造業者の説明書にしたがって、DNA抽出を実施した。単離された細胞核については、核の凍結ペレットをまず解凍し、300gで5分間遠心分離して緩衝液Cを除去した後、安定な細胞系についてと同じプロトコルにしたがってDNA抽出を開始した。
導入遺伝子コピー数測定および定量PCR
ゲノム中に組み込まれた導入遺伝子のコピー数を測定するために、約6ngのゲノムDNAを、EUROGENTEC Inc製のSYBR Green−Taqポリメラーゼキット、およびABI Prism 7700 PCRマシンを用いて定量PCRにより分析した。以下のプライマー:GFP−For:ACATTATGCCGGACAAAGCCおよびGFP−Rev:TTGTTTGGTAATGATCAGCAAGTTGを用いてGFP DNAを定量し、プライマーGAPDH−For:CGACCCCTTCAT−TGACCTCおよびGAPDH−Rev:CTCCACGACATACTCAGCACCを用いてGAPDH遺伝子を増幅した。GFP標的遺伝子コピー数の比を、以前に記載されているようにして、GAPDH参照遺伝子に対して計算した(Karlen et al. 2007)。トランスフェクション後の核中への導入遺伝子移入を定量するために、前記と同じGFPおよびGAPDHプライマー対を用いて精製された核から抽出されたDNAに関して定量PCRを実施した。
CHOゲノム配列はまだ利用可能でないので、参照として使用されるGAPDH遺伝子および偽遺伝子コピー数をマウスゲノムについて推定した。マウスゲノムに関するGAPDHプライマーによって生成された190bpのアンプリコンのDNA配列のNCBIソフトウェアを用いて実施したBLAST分析によりアラインメントを実施し、これにより、ハプロイドゲノムあたり88ヒットが得られた。CHO DG44は近二倍体細胞であるので(Derouazi et al. 2006)、本発明者らは176コピーのGAPDH遺伝子および偽遺伝子がCHO DG44細胞のゲノム中に存在すると推定する。この数値を、GFP導入遺伝子コピー数を定量するための正規化基準として使用した。
共焦点顕微鏡法
pGEGFPcontrolおよびp1−68(NcoI filled)SV40EGFPプラスミドを、Label IT Tracker TH−Rhodamine Kitによりローダミンで、またはLabel IT Tracker Cy 5 Kit(MIRUS, MIRUSBIO)によりCy5で、のいずれかで、製造業者のプロトコルにしたがって標識し、エタノール沈殿により精製した。トランスフェクションに関して、DNAトランスフェクションは、Lipofectamine 2000 Reagent(INVITROGEN)を用い、供給業者の説明書にしたがって実施した。トランスフェクションの3時間、6時間および21時間後、培地を除去し、細胞を4%パラホルムアルデヒドで室温にて15分間固定した。必要であれば、細胞を、LysoTracker(商標)Red DND−99(Molecular Probes, INVITROGEN)で75nMの最終濃度にて30分間処理した後、固定し、製造業者の説明書にしたがって酸性細胞小器官(たとえば、エンドソームおよびリソソーム)を染色した。固定された細胞を次いでPBSで2回洗浄し、DAPI/Vectashied溶液中にマウントして、核を染色した。
63x
NA1.4プランアクロマート対物レンズを備えたCARL ZEISS LSM 510 Meta倒立共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて蛍光および明視野画像を取得した。カバーガラスの底面から細胞の表面までのZシリーズ画像を取得した。各8ビットTIFF画像をImageJソフトウェアに移して、対象の各領域の全輝度および画素面積を定量化した。データ分析のためにサイトゾルs(cyt)、核s(nuc)およびリソソームs(lys)における各クラスターの画素面積を各XY平面で別々に合計した。これらの値(それぞれ、S’Z=j(cyt)、S’Z=j(nuc)およびS’Z=j(lys))を画像のZシリーズのすべてにわたってさらに合計し、それぞれ、S(cyt)、S(nuc)およびS(lys)と表示した。細胞における標識されたpDNAのクラスターの全画素面積S(tot)を、S(cyt)、S(nuc)およびS(lys)の合計として計算した。各コンパートメント中のpDNAの割合を、F(k)=S(k)/S(tot)(式中、S(tot)は各細胞内コンパートメント(核、サイトゾルまたはリソソーム)を表す)として計算した。
II.導入遺伝子発現産物分泌
プラスミドおよび構築物
発現ベクターは、アンピシリン耐性を付与するTransposon Tn3(AmpR)からの細菌ベータ−ラクタマーゼ遺伝子、および細菌性ColE1複製起源を含む。pGL3 Control(PROMEGA)の誘導体として、ベクターのターミネーター領域は、SV40ポリアデニル化シグナルの下流に位置するSV40エンハンサーを有する。ヒトガストリンターミネーターをSV40polyAシグナルとSV40エンハンサーとの間に挿入した。各ベクターは、発現カセットに隣接する2つのヒト1_68SGEおよびSV40プロモーターの制御下で組み込まれたピューロマイシン耐性遺伝子も含む。すべてのベクターはhGAPDHプロモーターの制御下でGOIをコード化する(図10)。
異なるクローンされた導入遺伝子を、Pwo SuperYield DNA Polymerase Kitを製造業者の説明書(ROCHE)にしたがって使用し、テンプレートとしてヒトユニバーサルcDNA(BioChain(登録商標))および発現ベクター中へのクローニングのための適合性制限部位を有する5’尾部を有するCDSの5’および3’末端に対する特異的プライマー(MICROSYNTH AG, Switzerland、表1を参照)を使用して、PCRにより増幅した。
PCR産物および発現ベクターを適切な制限酵素(NEW ENGLAND BIOLABSまたはPROMEGA)により消化した。消化されたDNAを1%w/vのアガロース(EUROBIO, CHEMIE BRUNSCHWEIG AG)ゲル上で電気泳動に付した。ベクターバンドおよび消化されたPCR産物を、DNAを損なわない調製用UVランプ((UL−6L, VILBER LOURMAT))下での可視化によりゲルから切り出し、1.5mLの微細管中に移し、製造業者の説明書にしたがって標準的技術(WIZARD SV GelおよびPCR CleanUp System(商標)、PROMEGA)を用いて精製した。
精製された両フラグメント(消化されたSelexis(商標)発現ベクターおよびPCR産物)を、LigaFast(商標) Rapid DNA Ligation System (PROMEGA)を用い、10μLの最終体積で5分間、RT(=室温)にて製造業者の説明書にしたがってライゲートした。全ライゲーション混合物を使用して、50μLのコンピテントDH5アルファ細胞(INVITROGEN)を製造業者の説明書にしたがって変換した。新たに作製されたプラスミドの完全性および適切な構造を制限分析によってチェックした。1つの細菌クローンを、プラスミドDNAのバルク抽出のために振盪管中、5mLのLB+100μg/mLのアンピシリン中で増殖させた。製造業者の説明書にしたがってWIZARD Plus SV Miniprepsキット(PROMEGA)を使用して、プラスミドを抽出した。プラスミドの完全性は、GOIおよび関連するフランキング配列をシーケンシングすることによって確認した。
確認したら、標準的DNA単離キット(JETSTAR 2.0, GENOMED)を用い、100μg/mLのアンピシリンを追加したLB中150mLの一夜培養物から、ベクターのマキシプレパレーション(maxipreparation)を実施して、非常に純粋なプラスミドDNAを得た。精製後、DNAを300μLの滅菌脱イオン水中に再懸濁させた。PvuI消化によって線形化を実施し、Quant−iT PicoGreen dsDNAアッセイキット(INVITROGEN/ Molecular Probes)を用いてDNA定量化を実施した。
Figure 2013505013
CHO細胞のトランスフェクションおよび安定な形質転換体の選択
CHO細胞をトランスフェクションの1日前に300,000細胞/mlの密度で継代した。トランスフェクション当日に、細胞を計数し、510,000個の細胞を遠心分離によって収集した。上清を除去し、細胞ペレットを30ulの再懸濁緩衝液(Buffer R、INVITROGEN)中に再懸濁させた。試験される1つのタンパク質をコード化する線形化プラスミド(4マイクログラム)を細胞に添加し、DIGITAL BIO TECHNOLOGY製のMicroporatorミニ装置を用いて細胞をエレクトロポーレートした。エレクトロポーレーションに使用した設定は、1230ボルト、20usおよび3パルスであった。
エレクトロポーレートされた細胞を、8mMのグルタミンおよび2xHTを追加した3mlの培地(SFM4CHO、Hyclone(商標))を含む6ウェルプレート中で培養した。トランスフェクションの1日後に、500ug/mlのG418を培地に添加することによって、安定な形質転換体の選択を開始した。培養の第3日に、遠心分離によって細胞を収集し、培地を、抗生物質を追加した10mlの新しい培地と取り替えた。1週間後、1.5×10の細胞を、抗生物質を追加した5mlの培地を含む50mlのミニ反応試験管(TBS)中に移し、振盪インキュベーター中でインキュベートした。1週間に2回継代することによって、培養を維持した。継代培養に際して、細胞の数を記録し、生成物の濃度をELISAにより測定した。これらの数値を使用して、試験される種々のタンパク質の効果を比較するために比生産性を計算した。
本発明を図面および対応する記載に基づいて詳細に説明し、記載しているが、この説明およびこの詳述は実例や典型例であり、本発明を限定するものではないと理解されるべきである。当業者が以下の請求の範囲から逸脱することなく変更および適用を実施できることは自明である。特に、本発明は、種々の実施形態と関連して本明細書中で記載される特性の任意の組み合わせの実施形態も含む。
参考文献目録
Agarwal et al. (1998). Scaffold attachment region−mediated enhancement of retroviral vector expression in primary T cells. J Virol.; 72: 3720−3728.
Akita et al. (2007). Cell cycle dependent transcription, a determinant factor of heterogeneity in cationic lipid−mediated transgene expression. J Gene Med, 9, 197−207.
Allen et al. (1996) High−level transgene expression in plant cells: effects of a strong scaffold attachment region from tobacco. Plant Cell 8, 899−913.
Allen et al. (2002). DNA−dependent protein kinase suppresses double−strand break−induced and spontaneous homologous recombination. Proc Natl Acad Sci U S A, 99, 3758−3763.
Bell, A.C. and Felsenfeld, G. (1999) Stopped at the border: boundaries and insulators. Curr Opin Genet Dev, 9, 191−198.
Bendix−Waltes R, Kalb R, Stumm M. (2005) Rad50 deficiency causes a variant form of Nijmegen breakage syndrome. Eur J Hum Genet 13: 63.
Benson et al. (1994). Purification and characterization of the human Rad51 protein, an analogue of E. coli RecA. Embo J 13, 5764−5771.
Bernstein, K. A., and Rothstein, R. (2009) At loose ends: resecting a double−strand break. Cell 137, 807−810.
Boulton SJ, Jackson SP (1996). Identification of a Saccharomyces cerevisiae Ku80 homologue: Role in DNA double strand break rejoining and in telomeric maintenance. Nucleic Acids Research 24:4639−4648.
Buck et al. (2006). Cernunnos, a novel nonhomologous end−joining factor, is mutated in human immunodeficiency with microcephaly. Cell 124, 287−299.
Bugreev et al. (2007). Rad54 dissociates homologous recombination intermediates by branch migration. Nat Struct Mol Biol 14, 746−753.
Burma et al.. (2001). ATM phosphorylates histone H2AX in response to DNA double−strand breaks. J Biol Chem 276, 42462−42467.
Canman et al. (1998). Activation of the ATM kinase by ionizing radiation and phosphorylation of p53. Science 281, 1677−1679.
Capp et al. (2007). Involvement of DNA polymerase mu in the repair of a specific subset of DNA double−strand breaks in mammalian cells. Nucleic Acids Res 35, 3551−3560.
Castilla et al. (1998). Engineering passive immunity in transgenic mice secreting virus−neutralizing antibodies in milk. Nat Biotechnol 16, 349−354.
Chen et al. (1997). Cell cycle−dependent protein expression of mammalian homologs of yeast DNA double−strand break repair genes Rad51 and Rad52. Mutat Res 384, 205−211.
Chung et al. (1993). A 5‘ element of the chicken betaglobin domain serves as an insulator in human erythroid cells and protects against position effect in Drosophila. Cell 74, 505−514.
Clikeman et al. (2001). Homologous recombinational repair of double−strand breaks in yeast is enhanced by MAT heterozygosity through yKU−dependent and −independent mechanisms. Genetics 157, 579−589.
Connolly et al. (1991). Requirement of GTP hydrolysis for dissociation of the signal recognition particle from its receptor. Science 252(5009): 1171−1173.
D‘Amours, D., and Jackson, S. P. (2002). The Mre11 complex: at the crossroads of dna repair and checkpoint signalling. Nat Rev Mol Cell Biol 3, 317−327.
Darroudi, F., Wiegant, W., Meijers, M., Friedl, A. A., van der Burg, M., Fomina, J., van Dongen, J. J., van Gent, D. C., and Zdzienicka, M. Z. (2007). Role of Artemis in DSB repair and guarding chromosomal stability following exposure to ionizing radiation at different stages of cell cycle. Mutat Res 615, 111−124.
Davies, O. R., and Pellegrini, L. (2007). Interaction with the BRCA2 C terminus protects RAD51−DNA filaments from disassembly by BRC repeats. Nat Struct Mol Biol 14, 475−483.
De Jager et al. (2001). Human Rad50/Mre11 is a flexible complex that can tether DNA ends. Mol Cell 8, 1129−1135.
DeFazio et al. (2002). Synapsis of DNA ends by DNA−dependent protein kinase. Embo J 21, 3192−3200.
Delacote, F., and Lopez, B. S. (2008). Importance of the cell cycle phase for the choice of the appropriate DSB repair pathway, for genome stability maintenance: the trans−S double−strand break repair model. Cell Cycle 7, 33−38.
Delacote et al. (2002) An xrcc4 defect or Wortmannin stimulates homologous recombination specifically induced by double−strand breaks in mammalian cells. Nucleic Acids Res, 30, 3454−3463.
Derouazi et al. (2006) Genetic characterization of CHO production host DG44 and derivative recombinant cell lines. Biochem Biophys Res Commun, 340, 1069−1077.
Downs, J. A., and Jackson, S. P. (2004). A means to a DNA end: the many roles of Ku. Nat Rev Mol Cell Biol 5, 367−378.
Dronkert et al. (2000). Mouse RAD54 affects DNA double−strand break repair and sister chromatid exchange. Mol Cell Biol 20, 3147−3156.
Dupre et al. (2006). Two−step activation of ATM by DNA and the Mre11−Rad50−Nbs1 complex. Nat Struct Mol Biol 13, 451−457.
Esashi, et al. (2007). Stabilization of RAD51 nucleoprotein filaments by the C−terminal region of BRCA2. Nat Struct Mol Biol 14, 468−474.
Folger et al. (1985) Nonreciprocal exchanges of information between DNA duplexes coinjected into mammalian cell nuclei. Mol Cell Biol, 5, 59−69.
Fusco, C., Reymond, A., and Zervos, A. S. (1998). Molecular cloning and characterization of a novel retinoblastoma−binding protein. Genomics 51, 351−358.
Galbete et al. (2009) MAR elements regulate the probability of epigenetic switching between active and inactive gene expression. Mol Biosyst, 5, 143−150.
Gilmore, R., G. Blobel, et al. (1982). “Protein translocation across the endoplasmic reticulum. I. Detection in the microsomal membrane of a receptor for the signal recognition particle.” J Cell Biol 95(2 Pt 1): 463−9.
Gilmore, R., P. Walter, et al. (1982). “Protein translocation across the endoplasmic reticulum. II. Isolation and characterization of the signal recognition particle receptor.” J Cell Biol 95(2 Pt 1): 470−7.
Girod et al. (2007) Genome−wide prediction of matrix attachment regions that increase gene expression in mammalian cells. Nat Methods, 4, 747−753.
Girod et al.(2005) Use of the chicken lysozyme 5‘ matrix attachment region to generate high producer CHO cell lines. Biotechnol Bioeng, 91, 1−11.
Golzio et al. (2002) Cell synchronization effect on mammalian cell permeabilization and gene delivery by electric field. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) − Biomembranes, Volume 1563 (1−2), Pages 23−28.

Gottlieb, T. M., and Jackson, S. P. (1993). The DNA−dependent protein kinase: requirement for DNA ends and association with Ku antigen. Cell 72, 131−142.

Grawunder et al. (1997). Activity of DNA ligase IV stimulated by complex formation with XRCC4 protein in mammalian cells. Nature 388, 492−495.

Greenberg et al. (2006). Multifactorial contributions to an acute DNA damage response by BRCA1/BARD1−containing complexes. Genes Dev 20, 34−46
Grosjean et al.(2002). Correlation between CHO cell cycle and transfection effiency using Ca/PO4. Cytotechnology 38.
Hart, C.M. and Laemmli, U.K. (1998) Facilitation of chromatin dynamics by SARs. Curr Opin Genet Dev, 8, 519−525.
Henikoff, S. (1996) Dosage−dependent modification of position−effect variegation in Drosophila. Bioessays, 18, 401−409.
Hinz et al. (2006) Repression of mutagenesis by Rad51D−mediated homologous recombination. Nucleic Acids Res, 34, 1358−1368.
Ira et al. (2004). DNA end resection, homologous recombination and DNA damage checkpoint activation require CDK1. Nature 431, 1011−1017.
Jackson, D.A. (1997) Chromatin domains and nuclear compartments: establishing sites of gene expression in eukaryotic nuclei. Mol Biol Rep, 24, 209−220.
Jayathilaka et al. (2008) A chemical compound that stimulates the human homologous recombination protein RAD51. PNAS 105 (41), 15848−15853.
Jeggo, P.A. (1997) DNA−PK: at the cross−roads of biochemistry and genetics. Mutat Res, 384, 1−14.
Johansson et al. (1993). Positively charged amino acids placed next to a signal sequence block protein translocation more efficiently in Escherichia coli than in mammalian microsomes. Mol Gen Genet 239(1−2), 251−6.
Kalos, M. and Fournier, R.E. (1995) Position−independent transgene expression mediated by boundary elements from the apolipoprotein B chromatin domain. Mol Cell Biol, 15, 198−207.
Karlen et al. (2007). Statistical significance of quantitative PCR. BMC Bioinformatics, 8, 131.
Kaufman, R.J. (2000). Overview of vector design for mammalian gene expression. Mol Biotechnol, 16, 151−160.
Keenan et al. (2001). The signal recognition particle. Annu Rev Biochem 70, 755−75.
Kim et al. (2004). Improved recombinant gene expression in CHO cells using matrix attachment regions. J Biotechnol, 107, 95−105.
Kim et al. (2006). Signaling networks controlled by the MRN complex and MDC1 during early DNA damage responses. Mol Carcinog 45, 403−408.
Koch et al. (2004). Xrcc4 physically links DNA end processing by polynucleotide kinase to DNA ligation by DNA ligase IV. Embo J 23, 3874−3885.
Krappmann et al. (2006) Eukaryot. Cell. 5:212−215.
Lakkaraju, A. K., C. Mary, et al. (2008). “SRP keeps polypeptides translocation−competent by slowing translation to match limiting ER−targeting sites."
Cell 133(3): 440−51.
Lavin, M. F. (2007). ATM and the Mre11 complex combine to recognize and signal DNA double−strand breaks. Oncogene 26, 7749−7758.
Lee et al. (2004). Implication of DNA polymerase lambda in alignment−based gap filling for nonhomologous DNA end joining in human nuclear extracts. J Biol Chem 279, 805−811.
Lee et al. (1997). Evidence for DNAPK− dependent and −independent DNA double−strand break repair pathways in mammalian cells as a function of the cell cycle. Mol Cell Biol 17, 1425−1433.
Limbo et al. (2007). Ctp1 is a cell−cycle−regulated protein that functions with Mre11 complex to control doublestrand break repair by homologous recombination. Mol Cell 28, 134−146.
Liu, F., and Lee, W. H. (2006). CtIP activates its own and cyclin D1 promoters via the E2F/RB pathway during G1/S progression. Mol Cell Biol 26, 3124−3134.
Luo et al. (1999). Disruption of mRad50 causes embryonic stem cell lethality, abnormal embryonic development, and sensitivity to ionizing radiation. Proc Natl Acad Sci U S A 96, 7376−7381.
Ma et al. (2002). Hairpin opening and overhang processing by an Artemis/DNA−dependent protein kinase complex in nonhomologous end joining and V(D)J recombination. Cell 108, 781−794.
Milligan et al. (2000). H19 gene expression is up−regulated exclusively by stabilization of the RNA during muscle cell differentiation. Oncogene, 19, 5810−5816.
Mirzoeva, O. K., and Petrini, J. H. (2003). DNA replication−dependent nuclear dynamics of the Mre11 complex. Mol Cancer Res 1, 207−218.
Mohan et al (2007). Effect of doxycycline−regulated protein disulfide isomerase expression on the specific productivity of recombinant CHO cells: thrombopoietin and antibody. Biotechnol. Bioeng. 98(3), 611−615.
Monferran et al. (2004). The membrane form of the DNA repair protein Ku interacts at the cell surface with metalloproteinase 9. Embo J 23, 3758−3768.
Moore, J. K., and Haber, J. E. (1996). Cell cycle and genetic requirements of two pathways of nonhomologous end−joining repair of double−strand breaks in Saccharomyces cerevisiae. Mol Cell Biol 16, 2164−2173.
Moshous et al. (2001). Artemis, a novel DNA doublestrand break repair/V(D)J recombination protein, is mutated in human severe combined immune deficiency. Cell 105, 177−186.
Muller et al. (2005). The double life of the Ku protein: facing the DNA breaks and the extracellular environment. Cell Cycle 4, 438−441.
Newton, Harris et al. (1998) A dominant interfering mutant of FADD/MORT1 enhances deletion of autoreactive thymocytes and inhibits proliferation of mature T lymphocytes. EMBO J. 17(3):706−18.
Nikjoo et al. (1998). Track structure in radiation biology: theory and applications. Int J Radiat Biol 73, 355−364.
O‘Driscoll et al. (2001). DNA ligase IV mutations identified in patients exhibiting developmental delay and immunodeficiency. Mol Cell 8, 1175−1185.
O‘Driscoll et al. (2003). A splicing mutation affecting expression of ataxia−telangiectasia and Rad3−related protein (ATR) results in Seckel syndrome. Nat Genet 33, 497−501.
Pierce et al. (2001) Ku DNA end−binding protein modulates homologous repair of double−strand breaks in mammalian cells. Genes Dev, 15, 3237−3242.
Pool, M. R., J. Stumm, et al. (2002). “Distinct modes of signal recognition particle interaction with the ribosome.” Science 297(5585): 1345−8.
Rass et al. (2009). Role of Mre11 in chromosomal nonhomologous end joining in mammalian cells. Nat Struct Mol Biol 16, 819−824.
Recillas−Targa et al. (2002) Position−effect protection and enhancer blocking by the chicken beta−globin insulator are separable activities. Proc Natl Acad Sci U S A, 99, 6883−6888.
Robertson et al. (1995) Position−dependent variegation of globin transgene expression in mice. Proc Natl Acad Sci U S A, 92, 5371−5375.
Sartori et al. (2007). Human CtIP promotes DNA end resection. Nature 450, 509−514.
Schaeper et al. (1998). Interaction between a cellular protein that binds to the C−terminal region of adenovirus E1A (CtBP) and a novel cellular protein is disrupted by E1A through a conserved PLDLS motif. J Biol Chem 273, 8549−8552.
Shen et al. (1996). Specific interactions between the human RAD51 and RAD52 proteins. J Biol Chem 271, 148−152.
Song, B., and Sung, P. (2000). Functional interactions among yeast Rad51 recombinase, Rad52 mediator, and replication protein A in DNA strand exchange. J Biol Chem 275, 15895− 15904.
Stewart et al. (1999). The DNA double−strand break repair gene hMRE11 is mutated in individuals with an ataxia−telangiectasia−like disorder. Cell 99, 577−587.
Stiff et al. (2004). ATM and DNA−PK function redundantly to phosphorylate H2AX after exposure to ionizing radiation. Cancer Res 64, 2390−2396.
Sugiyama et al. (1997). A single−stranded DNA binding protein is needed for efficient presynaptic complex formation by the Saccharomyces cerevisiae Rad51 protein. J Biol Chem 272, 7940−7945.
Sun et al. (1991). Extensive 3‘−overhanging, single−stranded DNA associated with the meiosis−specific double−strand breaks at the ARG4 recombination initiation site. Cell 64, 1155−1161.
Sung, P., and Klein, H. (2006). Mechanism of homologous recombination: mediators and helicases take on regulatory functions. Nat Rev Mol Cell Biol 7, 739−750.
Symington, L. S. (2002). Role of RAD52 epistasis group genes in homologous recombination and double−strand break repair. Microbiol Mol Biol Rev 66, 630−670.
Szostak et al. (1983) The double−strand−break repair model for recombination. Cell, 33, 25−35.
Takata et al. (1998) Homologous recombination and non−homologous end−joining pathways of DNA double−strand break repair have overlapping roles in the maintenance of chromosomal integrity in vertebrate cells. Embo J, 17, 5497−5508.
Takeda et al. (2007). Ctp1/CtIP and the MRN complex collaborate in the initial steps of homologous recombination. Mol Cell 28, 351−352.
Taniguchi, T., and D‘Andrea, A. D. (2006). Molecular pathogenesis of Fanconi anemia: recent progress. Blood 107, 4223−4233.
Taylor et al. (2004). Ataxia−telangiectasia−like disorder (ATLD)−its clinical presentation and molecular basis. DNA Repair (Amst) 3, 1219−1225.
Tourneur and Chiocchia (2010). FADD: a regulator of life and death. Trends Immunol, 31, 260−269.

Urlaub et al. (1983) Deletion of the diploid dihydrofolate reductase locus from cultured mammalian cells. Cell, 33, 405−412.
Van den Bosch et al. (2003). The MRN complex: coordinating and mediating the response to broken chromosomes. EMBO Rep 4, 844−849.
Wakimoto, B.T. (1998) Beyond the nucleosome: epigenetic aspects of position−effect variegation in Drosophila. Cell, 93, 321−324.
Walter, P. and G. Blobel (1981). “Translocation of proteins across the endoplasmic reticulum III. Signal recognition protein (SRP) causes signal sequence−dependent and site−specific arrest of chain elongation that is released by microsomal membranes.” J Cell Biol 91(2 Pt 1): 557−61.
Wang et al. (2005a). DNA ligase III as a candidate component of backup pathways of nonhomologous end joining. Cancer Res 65, 4020−4030.
Wang et al. (2005b). Artemis deficiency confers a DNA double−strand break repair defect and Artemis phosphorylation status is altered by DNA damage and cell cycle progression. DNA Repair (Amst) 4, 556−570.
Waterman et al.(1998). ATM dependent activation of p53 involves dephosphorylation and association with 14−3−3 proteins. Nat Genet 19, 175−178.
West, S.C. (2003) Molecular views of recombination proteins and their control. Nat Rev Mol Cell Biol, 4, 435−445.
White, C. I., and Haber, J. E. (1990). Intermediates of recombination during mating type switching in Saccharomyces cerevisiae. Embo J 9, 663−673
Williams et al. (2007). Mre11−Rad50−Nbs1 is a keystone complex connecting DNA repair machinery, double−strand break signaling, and the chromatin template. Biochem Cell Biol 85, 509−520.
Wilson et al. (1999). The role of Schizosaccharomyces pombe Rad32, the Mre11 homologue, and other DNA damage response proteins in non−homologous end joining and telomere length maintenance. Nucleic Acids Res 27, 2655−2661.
Wold, M. S. (1997). Replication protein A: a heterotrimeric, single−stranded DNA−binding protein required for eukaryotic DNA metabolism. Annu Rev Biochem 66, 61−92.
Wong et al. (1998). Characterization of a carboxy−terminal BRCA1 interacting protein. Oncogene 17, 2279−2285.
Wong, E.A. and Capecchi, M.R. (1986) Analysis of homologous recombination in cultured mammalian cells in transient expression and stable transformation assays. Somat Cell Mol Genet, 12, 63−72.
Wu, G., and Lee, W. H. (2006). CtIP, a multivalent adaptor connecting transcriptional regulation, checkpoint control and tumor suppression. Cell Cycle 5, 1592−1596.
Xiao, Y., and Weaver, D. T. (1997). Conditional gene targeted deletion by Cre recombinase demonstrates the requirement for the double−strand break repair Mre11 protein in murine embryonic stem cells. Nucleic Acids Res 25, 2985−2991.
Yan et al. (2007). IgH class switching and translocations use a robust non−classical end−joining pathway. Nature 449, 478−482.
Yaneva et al. (1997). Interaction of DNA−dependent protein kinase with DNA and with Ku: biochemical and atomic−force microscopy studies. Embo J 16, 5098−5112
Yang et al. (1996). p300/CBP−associated factor that competes with the adenoviral oncoprotein E1A. Nature 382, 319−324.
Yasui et al. (2002) SATB1 targets chromatin remodelling to regulate genes over long distances. Nature, 419, 641−645.
You et al. (2009). CtIP links DNA double−strand break sensing to resection. Mol Cell 36, 954−969.
Yun, M. H., and Hiom, K. (2009). CtIP−BRCA1 modulates the choice of DNA double−strandbreak repair pathway throughout the cell cycle. Nature 459, 460−463.
Zahn−Zabal et al. (2001). Development of stable cell lines for production or regulated expression using matrix attachment regions. J Biotechnol 87, 29−42.
Zhu et al. (2001). Targeted disruption of the Nijmegen breakage syndrome gene NBS1 leads to early embryonic lethality in mice. Curr Biol 11, 105−109.

Claims (70)

  1. 導入遺伝子発現のための方法であって:
    (a)真核生物、好ましくは、ほ乳類宿主の細胞を提供し(ここで、前記宿主細胞は、相同性組換え(HR)の増大、非相同的末端結合(NHEJ)の減少および/または前記細胞におけるHR/NHEJ比の増強のために修飾または処理されている)、そして
    (b)前記細胞を、
    前記導入遺伝子を含む少なくとも1つのベクター、および
    場合によって、マトリックス付着領域(MAR)エレメント(ここで、前記MARエレメントは前記導入遺伝子にシスまたはトランスで提供される)
    でトランスフェクトすることを含む、方法。
  2. (b)におけるトランスフェクションが後続トランスフェクションであり、ベクターまたは核酸フラグメントなどの核酸での初期トランスフェクションが先行する、請求項1記載の方法。
  3. 前記細胞の細胞集団の細胞周期が同期される、請求項2記載の方法。
  4. 前記初期および後続トランスフェクションが、集団の細胞の大部分が細胞周期のG1期にあるときに起こる、請求項2または3記載の方法。
  5. 細胞集団の細胞の30%超、31%超、32%、33%、34%、35%、36%、36%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%または45%がG1期にある、請求項4記載の方法。
  6. 細胞集団を化学的または温度処理に付すことによって、細胞周期が同期される、請求項3および以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  7. HR酵素、HRアクチベーターおよび/またはNHEJサプレッサーが、前記初期トランスフェクションの前に前記細胞に投与される、請求項2または以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記細胞が組換え真核生物宿主細胞であり、HR酵素、HRアクチベーターおよび/またはNHEJサプレッサーをコード化するトランスジェニック配列を含み、および/または前記細胞がNHEJまたはHR遺伝子において突然変異している、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記細胞が組換え真核生物宿主細胞であり、前記細胞のゲノムが、NHEJを不活性化し、少なくとも1つのHR酵素、少なくとも1つのHRアクチベーターおよび/または少なくとも1つのNHEJサプレッサーの発現または活性を増大させるように突然変異する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記初期トランスフェクションの核酸が、導入遺伝子を含む少なくとも1つのベクターであり、初期トランスフェクションの少なくとも1つの前記ベクターおよび前記少なくとも1つの後続トランスフェクションの少なくとも1つのベクターが細胞のゲノム中への組み込み前および/または組み込み後に1つまたはそれ以上のコンカテマー構造を形成する、請求項2または以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  11. 初期トランスフェクションの前記少なくとも1つのベクターおよび前記後続トランスフェクションの前記少なくとも1つのベクターが、細胞のゲノム中に組み込まれるコンカテマー構造を形成し、前記コンカテマー構造が、少なくとも200、300、400、500または600コピーの前記導入遺伝子を含む、請求項10記載の方法。
  12. 細胞のHR/NHEJ比が、前記トランスジェニック配列を含まず、突然変異していない細胞において見いだされる比よりもそれぞれ2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30倍まで高いか、またはNHEJ活性が0に等しい、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記少なくとも1つの後続トランスフェクション後に前記細胞のゲノム中に組み込まれた前記導入遺伝子の組み込みコピー数が、(b)のベクターで細胞を直接トランスフェクトすることによって得られる組み込みコピー数を表す基準値の2倍超である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記少なくとも1つの初期トランスフェクションがシングルトランスフェクションである、請求項2および後の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  15. 初期トランスフェクションの核酸が、MARエレメントおよび前記導入遺伝子を含むベクターであり、初期トランスフェクション後に、前記導入遺伝子の発現が初期レベルに達し、後続トランスフェクション後の導入遺伝子の発現が、付加的であるよりも高い後続レベルに達し、好ましくは1回の後続トランスフェクション後に、前記初期レベルの2倍、3倍または4倍を越える後続レベルに達する、請求項14記載の方法。
  16. (a)における核酸が、MARエレメントおよび前記導入遺伝子を含むベクターであり、初期トランスフェクション後に、細胞のゲノム中に組み込まれる導入遺伝子コピー数が(n)に等しく、少なくとも1つの後続トランスフェクション後に、ゲノム中に組み込まれる導入遺伝子コピー数が2(n)、3(n)または4(n)を越える、請求項14記載の方法。
  17. 少なくとも1つの後続トランスフェクションがシングルトランスフェクションである、請求項15または16記載の方法。
  18. 導入遺伝子が、前記細胞のゲノム中に、コンカテマー構造として、1つの座で組み込まれる、請求項15または16記載の方法。
  19. (b)におけるMARエレメントが、発現を改善し、複数コピーの導入遺伝子を含むベクターの共組み込みからの阻害効果を実質的にまたは完全に防止する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  20. 少なくとも1つの後続トランスフェクションのベクターの50%、60%、70%、80%超が核中に輸送される、請求項2および以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  21. 初期トランスフェクション後に、導入遺伝子発現産物の初期レベルおよび初期導入遺伝子コピー数に達し、前記少なくとも1つの後続トランスフェクション後に、導入遺伝子発現産物のレベルが後続レベルまで増加し、そして初期導入遺伝子コピー数が後続導入遺伝子コピー数まで増加し、導入遺伝子発現産物の第1から第2レベル間の増加が、初期導入遺伝子コピー数から後続導入遺伝子コピー数間の増加を20%、30%、40%、50%または60%上回る、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  22. 少なくとも1つの第1トランスフェクションの前記ベクターのベクター配列が、前記後続トランスフェクション(複数可)の少なくとも第1のもののベクターのベクター配列と100%または少なくとも95%、90%、85%もしくは80%の配列同一性を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  23. 初期トランスフェクションのベクターがMARエレメントを含み、前記MARエレメントが前記後続トランスフェクション(複数可)の少なくとも第1のもののベクターのMARエレメントと100%または少なくとも95%、90%、85%もしくは80%の配列同一性を有する、請求項2または以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  24. 初期トランスフェクションのベクターが導入遺伝子を含み、導入遺伝子が前記後続トランスフェクション(複数可)の少なくとも第1のもののベクターの導入遺伝子と100%または少なくとも95%、90%、85%もしくは80%の配列同一性を有する、請求項2または以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  25. MARエレメントが(b)におけるベクターの一部としてシスで提供される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  26. (b)における前記少なくとも1つのMARエレメントが(b)におけるベクターの一部としてシスで提供され、導入遺伝子が前記少なくとも2つのMARエレメントと隣接している、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  27. MARエレメントが前記導入遺伝子のプロモーター/エンハンサー配列の上流に位置する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  28. MAR配列が配列番号1〜3と少なくとも90%の配列同一性を有するか、またはその変異体である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  29. (a)NHEJサプレッサーを発現するトランスジェニック配列、
    (b)1つまたはそれ以上のHR酵素またはHRアクチベーターを発現するトランスジェニック配列、
    (c)NHEJ遺伝子を不活性化または下方調節する突然変異、および/または
    (d)HR酵素、HRアクチベーターもしくはNHEJサプレッサーの発現もしくは活性を増強する突然変異
    を含む組換え真核生物、好ましくはほ乳類の宿主細胞であって、
    (a)および/または(b)の前記トランスジェニック配列を含まない細胞において見いだされる比よりも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30倍超高いHR/NHEJ比を有し、
    場合によって、マトリックス付着領域(MAR)エレメントを含む、組換え真核生物の宿主細胞。
  30. (a)NHEJサプレッサーを発現するトランスジェニック配列、
    (b)1つまたはそれ以上のHR酵素またはHRアクチベーターを発現するトランスジェニック配列、
    (c)NHEJ遺伝子を不活性化または下方調節する突然変異、および/または
    (d)HR酵素、HRアクチベーターまたはNHEJサプレッサーの発現または活性を増強する突然変異、および
    前記細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子、ならびに
    場合によってMARエレメントを含み、前記MARエレメントがシスまたはトランスで前記導入遺伝子に対して提供される、組換え真核生物、好ましくはほ乳類の宿主細胞。
  31. 1つまたはそれ以上のHR酵素が、Rad51、Rad52、RecA、Rad54、RuvCまたはBRCA2であり、および/またはHRアクチベーターがRS−1であり、および/またはNHEJサプレッサーがNU7026および/またはワートマニンである、請求項29または30記載の細胞。
  32. 導入遺伝子が誘導性プロモーターなどの誘導性発現についての制御エレメントと機能的に連結し、前記誘導性プロモーターが熱ショックプロモーターなどの物理的に活性化されたプロモーターまたはIPTGもしくはテトラサイクリンなどにより化学的に活性化されたプロモーターなどの化学的に活性化されたプロモーターである、請求項29または30記載の細胞。
  33. (c)または(d)における前記突然変異が、xrcc4遺伝子、RAD51鎖トランスフェラーゼ遺伝子、DNA依存性タンパク質キナーゼ遺伝子、Rad52遺伝子、RecA遺伝子、Rad54遺伝子、RuvC遺伝子および/または、BRCA2遺伝子における突然変異である、請求項29または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  34. 導入遺伝子が細胞のゲノムの1つの座中に組み入れられ、そしてコンカテマー構造を形成する、請求項29または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  35. 前記コンカテマー構造が少なくとも200、300、400、500または600コピーの導入遺伝子を含む、請求項34または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  36. ゲノムの1つの座中に組み入れられた、プロモーターに機能的に連結された導入遺伝子のコンカテマー構造を含み、コンカテマー構造が少なくとも300、400、500または600コピーの導入遺伝子および少なくとも1つのMARエレメントを含み、前記MARエレメントがシスまたはトランスで前記導入遺伝子に対して提供され、前記細胞が好ましくは、同期された細胞集団の一部である、組換え真核生物、好ましくはほ乳類の宿主細胞。
  37. 少なくとも1つのMARがシスで提供され、前記導入遺伝子の大部分に前記導入遺伝子のそれぞれのMARが提供されている、請求項36記載の細胞。
  38. 導入遺伝子に少なくとも2つの前記MARエレメントが隣接している、請求項36記載の細胞。
  39. 少なくとも1つのMARエレメントが配列番号1〜3と少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号1〜3の変異体である、請求項29または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  40. MARエレメントが前記導入遺伝子のプロモーター/エンハンサー配列の上流に位置する、請求項29または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  41. 細胞がCHO細胞、HEK293細胞、幹細胞または前駆細胞である、請求項29または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  42. 前記導入遺伝子の発現における請求項29または以下の請求項のいずれか1項に記載のいずれか1つの組換え真核生物宿主細胞の使用。
  43. a第1容器中に、場合によってMARエレメントおよび前記ベクター中への導入遺伝子の組み込みのための制限部位を含むベクター、
    b第2容器中に、請求項28〜42の組換え真核生物宿主細胞、ならびに
    c導入遺伝子発現のために前記細胞をトランスフェクトする際の前記ベクターの使用法の説明書
    を含むキット。
  44. 同期剤または前記細胞(複数可)を含む細胞集団を同期させる方法に関する説明書を更に含む、請求項43記載のキット。
  45. ベクターを使用して、前記細胞集団の細胞のほとんどがG1期にある時に細胞を前記ベクターで少なくとも2回トランスフェクトする、請求項44記載のキット。
  46. 小胞体(ER)膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する少なくとも1つの霊長類タンパク質もしくは霊長類RNA、たとえばシグナル認識粒子(SRP)のタンパク質もしくはRNAまたは分泌複合体(トランスロコン)のタンパク質またはそのサブユニットをコード化するトランスジェニック配列を含む、非霊長類組換え真核生物宿主細胞
  47. 前記細胞が、シグナルペプチドコーディング配列に機能的に付着した導入遺伝子をさらに含み、前記導入遺伝子が細胞において複数コピーで、好ましくはコンカテマー構造の形態で存在する、請求項46記載の細胞。
  48. 前記細胞が、少なくとも200、300、400、500または600コピーの導入遺伝子を含む、請求項47記載の細胞。
  49. 前記シグナルペプチドコーディング配列によりコード化されるシグナルペプチドがアミノ酸の疎水性ストレッチを含み、SRP54と相互作用するための配列を有する、請求項47または48記載の細胞。
  50. 前記導入遺伝子に対してシスまたはトランスに位置する後成的な調節エレメント、たとえばMARエレメントをさらに含む、請求項46または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  51. ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する前記タンパク質またはRNAが、SRP、特にSRP9、SRP14、SRP19、SRP54、SRP68、SRP72および/または7SRNAのタンパク質またはRNAである、請求項46または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  52. SRPのタンパク質が、好ましくは、ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する1以上の他の前記タンパク質またはRNAと組み合わされたヒトSRP14である、請求項51記載の細胞。
  53. 前記1以上の他の前記タンパク質が、ヒトSRおよび/またはヒトトランスロコンタンパク質である、請求項52記載の細胞。
  54. SRPのタンパク質が、好ましくは、ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する1以上の他の前記タンパク質またはRNAと組み合わされたヒトSRP54である、請求項51記載の細胞。
  55. 前記1以上の他の前記タンパク質が、ヒトSRおよび/またはヒトトランスロコンタンパク質である、請求項54記載の細胞。
  56. ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する前記タンパク質またはRNAが、トランスロコンのタンパク質の1つ、特にSec61αβγ、Sec62、Sec63および/またはそのサブユニットである、請求項46または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  57. ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する前記タンパク質またはRNAが、SRP9、SR14およびトランスロコンタンパク質の組み合わせである、請求項46または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  58. 前記導入遺伝子が、免疫グロブリン、そのサブユニットもしくはフラグメントまたは融合タンパク質である、請求項46または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  59. 前記非霊長類細胞が、齧歯類細胞、好ましくはCHO細胞である、請求項46または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  60. シグナルペプチドコーディング配列が、配列番号4〜11と少なくとも90%の配列同一性を有するか、または前記配列のいずれか1つの変異体である、請求項46または以下の請求項のいずれか1項に記載の細胞。
  61. ER膜を越える転位および/または細胞の原形質膜を越える分泌における請求項46または以下の請求項のいずれか1項に記載の非霊長類組換え真核生物宿主細胞の使用。
  62. (a)1つの容器中に、細胞のゲノムの一部として、ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質またはRNA、たとえば、シグナル認識粒子(SRP)のタンパク質またはRNAまたは分泌複合体(トランスロコン)のタンパク質またはそのサブユニットをコード化するトランスジェニック配列を含む非霊長類組換え宿主細胞、
    (b)別の容器中に、導入遺伝子の前記ベクター中への組み込みのための制限部位および場合によってMARエレメントを含む少なくとも1つのベクター、ならびに
    (c)前記細胞を用いた前記導入遺伝子の導入遺伝子発現産物の発現および分泌のための説明書
    を含むキット。
  63. (c)ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する少なくとも1つの霊長類タンパク質または霊長類RNA、たとえばシグナル認識粒子(SRP)のタンパク質またはRNAまたは分泌複合体(トランスロコン)のタンパク質またはそのサブユニットをコード化するトランスジェニック配列、および
    (d)シグナルペプチドコーディング配列に機能的に付着した導入遺伝子
    を含む非霊長類真核生物宿主細胞を提供することを含む、導入遺伝子のタンパク質分泌のための方法。
  64. 前記トランスジェニック配列が、
    前記細胞中に存在する、ER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与するタンパク質またはRNAの総量を、前記トランスジェニック配列を発現する前の細胞中で見いだされるレベルよりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%を越えて増大させる、請求項63記載のタンパク質分泌のための方法。
  65. 前記導入遺伝子が細胞において細胞のゲノム中に組み込まれたコンカテマー構造として存在し、コンカテマー構造が好ましくは少なくとも200、300、400、500または600コピーの導入遺伝子を含み、前記細胞のゲノムの1つの座で組み込まれる、請求項63または64記載の方法。
  66. シグナルペプチドコーディング配列によってコード化されるシグナルペプチドが、アミノ酸の疎水性ストレッチを含み、SRP54と相互作用する配列を有する、請求項63または以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  67. (b)におけるトランスフェクションが後続トランスフェクションであり、ベクターまたは核酸フラグメントなどの核酸での初期トランスフェクションが先行する、請求項63または以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  68. 初期トランスフェクションの前記ベクターが(b)におけるベクターに対応する、請求項67記載の方法。
  69. トランスジェニック配列が、配列番号4〜11の群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有するか、または前記配列のいずれか1つの変異体である、請求項63または以下の請求項のいずれか1項に記載の方法。
  70. トランスジェニック配列の活性を増大させるタンパク質分泌および/または転位を特定する方法であって:
    組換えタンパク質をコード化する導入遺伝子を含む第1ほ乳類細胞をモニタリングし(ここで、前記組換えタンパク質は前記細胞により第1レベルで分泌される)、
    前記組換えタンパク質をコード化する前記導入遺伝子を含む第2ほ乳類細胞をモニタリングし(ここで、組換えタンパク質は前記細胞により第2レベルで分泌され、前記第2レベルは前記第1レベルを上回る)、
    前記第1ほ乳類細胞中にER膜を越える転位および/または原形質膜を越える分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質またはRNAをコード化するトランスジェニック配列を導入し、そして
    前記第1細胞中の前記組換えタンパク質の分泌レベルにおける変化を測定する(ここで、第1レベルを超える増加は、前記トランスジェニック配列の活性を増大させるタンパク質分泌を特定する)
    ことを含む、方法。
JP2012529354A 2009-09-18 2010-09-20 強化導入遺伝子発現およびプロセッシングの産物および方法 Pending JP2013505013A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US24395009P 2009-09-18 2009-09-18
US61/243,950 2009-09-18
PCT/IB2010/002337 WO2011033375A2 (en) 2009-09-18 2010-09-20 Products and methods for enhanced transgene expression and processing

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013505013A true JP2013505013A (ja) 2013-02-14
JP2013505013A5 JP2013505013A5 (ja) 2013-11-07

Family

ID=43430910

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012529354A Pending JP2013505013A (ja) 2009-09-18 2010-09-20 強化導入遺伝子発現およびプロセッシングの産物および方法

Country Status (12)

Country Link
US (1) US20120231449A1 (ja)
EP (1) EP2478108A2 (ja)
JP (1) JP2013505013A (ja)
KR (1) KR20120099376A (ja)
CN (1) CN102575264A (ja)
AU (1) AU2010297011A1 (ja)
CA (1) CA2774470A1 (ja)
IL (1) IL218383A0 (ja)
RU (1) RU2012107634A (ja)
SG (1) SG178940A1 (ja)
WO (1) WO2011033375A2 (ja)
ZA (1) ZA201201504B (ja)

Families Citing this family (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103451164A (zh) * 2006-07-14 2013-12-18 诺维信股份有限公司 用于产生具有生物学活性的分泌型多肽的方法
US20140304847A1 (en) * 2011-06-07 2014-10-09 Ralf Kühn Recombination efficiency by inhibition of nhej dna repair
US9963511B2 (en) * 2011-12-22 2018-05-08 Hoffmann-La Roche Inc. Expression vector organization, novel production cell generation methods and their use for the recombinant production of polypeptides
WO2013138850A1 (en) * 2012-03-19 2013-09-26 Madeleine Pharmaceuticals Ρτy Ltd Method of producing a recombinant peptide
RU2711505C9 (ru) * 2013-02-01 2020-08-12 Селексис С.А. Улучшенные экспрессия и процессинг трансгена
WO2015060935A1 (en) 2013-10-22 2015-04-30 Lubris, Llc Control of rheological properties of mixed hyaluronate/lubricin solutions
CN104975009B (zh) * 2014-04-01 2019-10-18 三生国健药业(上海)股份有限公司 一种新型的含mar核心片段的动物细胞表达载体
EP3188840A1 (en) 2014-09-07 2017-07-12 Selexis S.A. Microfluidic methods and cartridges for cell separation
WO2017109177A1 (en) 2015-12-24 2017-06-29 Selexis S.A. Improved eukaryotic cells for protein manufacturing and methods of making them
EP3653709B1 (en) 2016-02-22 2020-12-09 Caribou Biosciences, Inc. Methods for modulating dna repair outcomes
TWI827531B (zh) 2016-04-20 2024-01-01 美商再生元醫藥公司 基於使用增強表現基因座之製備抗體的組成物及方法
US11834670B2 (en) * 2017-04-19 2023-12-05 Global Life Sciences Solutions Usa Llc Site-specific DNA modification using a donor DNA repair template having tandem repeat sequences
JP2020534813A (ja) * 2017-09-08 2020-12-03 ライフ テクノロジーズ コーポレイション 改良された相同組換えおよびその組成物のための方法
EP3502259A1 (en) * 2017-12-19 2019-06-26 Universiteit Leiden A combinational strategy for reducing random integration events when transfecting plants
WO2019148166A1 (en) * 2018-01-29 2019-08-01 Massachusetts Institute Of Technology Methods of enhancing chromosomal homologous recombination
WO2020034097A1 (en) * 2018-08-14 2020-02-20 Wuxi Biologics (Shanghai) Co., Ltd. Transcriptional regulatory element and its use in enhancing the expression of exogenous protein
CN114514324A (zh) * 2019-10-10 2022-05-17 加利福尼亚州立大学董事会 稳定哺乳动物细胞的方法
CN110863008B (zh) * 2019-11-22 2020-10-16 昆明学院 Mar序列调控弱启动子构建高效表达载体的方法
KR20220145361A (ko) 2020-02-24 2022-10-28 노파르티스 아게 재조합적으로 생성된 폴리펩타이드의 정제
CN115960733B (zh) * 2022-09-19 2023-11-24 苏州泓迅生物科技股份有限公司 一种用于大片段dna组装的基因工程酵母菌、构建方法及其应用

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007013979A2 (en) * 2005-07-20 2007-02-01 Invitrogen Corporation Methods for increasing efficiency of homologous recombination
JP2007508831A (ja) * 2003-10-24 2007-04-12 セレキス エスアー Mar配列の多トランスフェクション手順による高効率の遺伝子導入および哺乳動物細胞における発現

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100408844B1 (ko) * 2000-07-29 2003-12-06 한국산업기술평가원 동물세포 발현벡터
EP1395669B1 (en) 2001-01-26 2009-07-22 Selexis S.A. Matrix attachment regions and methods for use thereof
CA2488668C (en) * 2002-06-06 2013-02-26 Her Majesty The Queen In Right Of Canada, As Represented By The Minister Of Agriculture And Agri-Food Modifying the dna recombination potential in eukaryotes
US20090247609A1 (en) 2007-12-20 2009-10-01 Hitto Kaufmann Sm-protein based secretion engineering

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007508831A (ja) * 2003-10-24 2007-04-12 セレキス エスアー Mar配列の多トランスフェクション手順による高効率の遺伝子導入および哺乳動物細胞における発現
WO2007013979A2 (en) * 2005-07-20 2007-02-01 Invitrogen Corporation Methods for increasing efficiency of homologous recombination

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6014052824; Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2004,101(33),p.12248-53 *
JPN6014052827; Mol Cancer Res.,2003,1(12),p.913-20 *

Also Published As

Publication number Publication date
US20120231449A1 (en) 2012-09-13
IL218383A0 (en) 2012-04-30
KR20120099376A (ko) 2012-09-10
WO2011033375A3 (en) 2011-05-12
WO2011033375A2 (en) 2011-03-24
EP2478108A2 (en) 2012-07-25
AU2010297011A1 (en) 2012-04-12
CN102575264A (zh) 2012-07-11
SG178940A1 (en) 2012-04-27
RU2012107634A (ru) 2013-10-27
CA2774470A1 (en) 2011-03-24
ZA201201504B (en) 2013-04-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2013505013A (ja) 強化導入遺伝子発現およびプロセッシングの産物および方法
AU2019250224B2 (en) Enhanced transgene expression and processing
KR20210143230A (ko) 뉴클레오티드 서열을 편집하기 위한 방법 및 조성물
Grandjean et al. High-level transgene expression by homologous recombination-mediated gene transfer
US11396664B2 (en) Replicative transposon system
JP2019509066A (ja) 増強型Sleeping Beautyトランスポゾン、並びに転移のキット及び方法
US20210115092A1 (en) Systems and methods for increasing efficiency of genome editing
WO2023147572A2 (en) Engineered multipartite transcriptional effectors sourced from human protein domains
KR20200132870A (ko) 중국 햄스터 난소 세포의 유전자 조작을 위한 htp 플랫폼
Sun et al. The piggyBac-based double-inducible binary vector system: a novel universal platform for studying gene functions and interactions
JP2006507847A (ja) 真核細胞内における配列特異的dna組換え
US9512230B2 (en) Transcription units and the use thereof in expression vectors
RU2808756C1 (ru) Улучшенные экспрессия и процессинг трансгена
US20120190065A1 (en) Combinatorial engineering
TWI475109B (zh) 通過抑制報告基因表現量的手段進行高產量細胞株選殖之策略
JP2004248509A (ja) 真核細胞内における配列特異的dna組換え
JP2016131516A (ja) ターミネータ配列とプロモータ配列とを順次備えた線状二本鎖dna

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130919

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130919

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20141216

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20150623