JP2004248509A - 真核細胞内における配列特異的dna組換え - Google Patents
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Abstract
【解決手段】真核細胞内におけるDNAの配列特異的組換えの方法であって、少なくとも1つの組換え配列を含有するヌクレオチド配列を含む第1DNAの細胞中への導入、少なくとも1つのさらなる組換え配列を含有するヌクレオチド配列を含む第2DNAを細胞中に導入する工程、及びバクテリオファージIambdaインテグラーゼIntによって配列特異的組換えを行う工程を含む方法に関する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真核細胞内におけるDNAの配列特異的組換えの方法であって、少なくとも1つの組換え配列を含有するヌクレオチド配列を含む第1DNAの細胞中への導入、少なくとも1つのさらなる組換え配列を含有するヌクレオチド配列を含む第2DNAを細胞中に導入する工程、及びバクテリオファージlambdaインテグラーゼIntによって配列特異的組換えを行う工程を含む方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
真核ゲノムの制御操作及びエピソームベクターからの組換えタンパク質の発現は、生体内の特異性遺伝子の機能を解析する重要な方法である。さらに、前記操作は、医学の遺伝子治療法で役割を演じる。この文脈では、トランスジェニック動物の生産、遺伝子又は遺伝子セグメントの変化(いわゆる“遺伝子ターゲティング”)及び外来性DNAの、より高等な真核生物のゲノム中への標的組込みが特に重要である。最近、これら技術は、配列特異的組換え系の特徴づけ及び応用によって改良できるだろう。
【0003】
さらに、所望のポリペプチド/産物をコードし、かつ発現する発現カセットの、生物工学的な関連宿主細胞のゲノム中への配列特異的組込みも、生物薬剤の製造でさらに重要になっている。安定的な形質転換細胞系内における所望のポリペプチドの発現レベルは、組み込む部位によって決まる。配列特異的組込みにより、高い転写活性を有する部位を好ましく使用できる。所望のポリペプチド/産物を発現する生産細胞系を製造する従来の方法は、宿主細胞のゲノム中への組換え発現ベクターのランダムな組込みに基づいている。安定な形質転換細胞系内における関心のある組込み遺伝子の発現レベルの変化は、主に染色体の位置とコピー数の相異に起因する。異質染色質に近接したランダムな組込みの結果、可変レベルの導入遺伝子発現となる。関心のある組込み遺伝子の発現を促進する染色体の位置は、真正染色質の転写活性領域であると考えられる。この組込みの無秩序が、組換え細胞の頑強さ、生産性及び品質に大きな多様性をもたらし、高レベルで所望のポリペプチドを発現する適切な細胞クローンを同定かつ単離するために、精巧なスクリーニングプロセスを必要とする。さらに、異質性は、各クローンについて最適の生産プロセスを開発しなければならず、適切な生産細胞系の開発は時間を浪費し、労力集約的かつ高価なプロセスを生じさせることをも意味する。
【0004】
伝統的な配列特異性DNAリコンビナーゼは2種のファミリーに分類されている。第1ファミリー、いわゆる“インテグラーゼ”ファミリーのメンバーは、2つの定義されたヌクレオチド配列(以下組換え配列と称する)間のDNA鎖の切断及び再結合を触媒する。組換え配列は、2個の異なるDNA分子上にあるか又は1個のDNA分子上にあってもよく、それぞれ分子間組換え又は分子内組換えとなる。分子内組換えでは、反応の結果は、相互の組換え配列のそれぞれの配向性によって決まる。逆位、すなわち逆の配向性の組換え配列の場合、組換え配列間にあるDNAセグメントの反転が起こる。DNA基質上の直列的、すなわちタンデム反復の組換え配列の場合、欠失が起こる。分子間組換え、すなわち、両方の組換え配列が2個の異なるDNA分子上に位置する場合、その2個のDNA分子の融合が起こりうる。インテグラーゼファミリーのメンバーは、通常分子内及び分子間組換えの両方を触媒するが、いわゆる“インベルターゼ/リゾルベース”という第2ファミリーのリコンビナーゼは、分子内組換えしか触媒することができない。
【0005】
現在、真核生物ゲノムの操作に使用されているリコンビナーゼは、インテグラーゼファミリーに属する。前記リコンビナーゼは、バクテリオファージP1のCreリコンビナーゼ及び酵母菌由来のFlpリコンビナーゼである(Muller,U.(1999)Mech.Develop.,82,pp.3)。Creリコンビナーゼが結合する組換え配列はloxPと言われる。loxPは、2個の13塩基対長の逆方向ヌクレオチド配列と、該逆方向配列間にある8塩基対長のスペーサーとから成る34塩基対長のヌクレオチド配列である(Hoess,R.ら,(1985)J.Mol.Biol.,181,pp.351)。Flpについて結合配列と言われるFRTが同様に構築されている。しかし、それらはloxPとは異なる(Kilby,J.ら(1993)Trends Genet.,9,pp.413)。従って、組換え配列は、相互に置き換えることができない、すなわち、CreはFRT配列を組換えることができず、FLPはloxP配列を組換えることができない。両組換え系は長距離にわたって活性であり、すなわち、反転され或いは欠失され、かつ2個のloxP又はFRT配列によって隣接されるDNAセグメントは、数10,000塩基対長でありうる。
【0006】
例えば、マウス系における組織特異的組換え、植物及び動物における染色体転座、及び遺伝子発現の制御誘導が前記2種の系で達成された;Muller,U.(1999)Mech.Develop.,82,pp.3の論文をレビューせよ。DNAポリメラーゼβは、このようにしてマウスの特定組織内で欠失された;Gu,H.ら(1994)Science,265,pp.103。さらなる実施例は、DNA腫瘍ウイルスSV40発癌遺伝子のマウスの水晶体内における特異的な活性化であり、この組織内で排他的に腫瘍形成を導く。Cre−loxP戦略は、誘導プロモーターとも併用された。例えば、リコンビナーゼの発現は、インターフェロン−誘導プロモーターで調節され、肝臓内で特異性遺伝子の欠失を惹起し、他の組織内では無いか又は低い程度だけだった;Muller,R.ら(1995)Science,269,pp.1427。
【0007】
従来、インベルターゼ/リゾルベースファミリーの3メンバーが、真核生物ゲノム操作のために使用されてきた。バクテリオファージMuインベルターゼGinの突然変異体は、植物プロトプラスト内のDNA断片の反転を補助因子無しで触媒することができる。しかし、この突然変異体は超−組換え遺伝子である、すなわち、その天然の組換え配列以外でもDNA鎖切断を触媒することが発見された。これは、植物プロトプラストゲノムにおける意図しない部分的に致死的な組換え事象を招来する。ストレプトコッカスピオゲン(Streptococcus pyogenes)由来のβ−リコンビナーゼは、マウス細胞培養内で直列反復として2個の組換え配列間の組換えを触媒し、その結局該セグメントの除去となる。しかし、欠失と同時に反転も検出され、真核生物ゲノム操作のために制御して使用する系としては不適である。大腸菌由来のγδリゾルベースは、エピソーム及び人工的に導入されたゲノム組換え配列上で活性であることが分かっているが、後者の反応の効率は未だにかなり低い。
【0008】
真核生物ゲノムのCre及びFlpリコンビナーゼによる操作は、それぞれかなりの欠点を示す。欠失、すなわちゲノム中の2個のタンデム反復loxP又はFRT組換え配列の組換えの場合、そのタンデム反復間にあるDNAセグメントの不可逆的損失がある。このように、このDNAセグメント上に位置する遺伝子は、該細胞及び生体にとって永久に失われる。従って、例えば生体の以後の発生段階における該遺伝子の機能の新たな解析のために元の状態を再構築することは不可能である。欠失によって生じるDNAセグメントの不可逆的損失は、それぞれのDNAセグメントの反転によって回避しうる。遺伝子は、反転によって、失われることなく不活性化され、やはり以後の発生段階で、又は成熟動物内で、逆組換えによるリコンビナーゼの時間調節された発現によって転換されうる。しかし、この改変方法でCre及びFlpリコンビナーゼの両方を使用すると、組換え事象の結果として組換え配列が変わるので、反転を調節できないという欠点がある。従って、繰り返される組換え事象により、いくらかだけ、よくても反応平衡時の標的細胞の50%でしか、それぞれのDNAセグメントの反転が起こらないので、それぞれの遺伝子の不活性化が起こる。単一の組換え後にさらなる反応のためには使用できない、突然変異型loxP配列を構築することによって、少なくとも部分的にこの問題を解決する努力が払われてきた。しかし、この欠点は反応の唯一性、すなわち、反転による遺伝子の不活性化後の逆組換えによる、その後の活性化がないことである。
【0009】
Flpリコンビナーゼのさらなる欠点は、37℃における熱安定性が低減され、そのため、より高等な真核生物内、例えば約39℃の体温を有するマウス内での組換え反応の効率を制限する。それゆえに、野生型リコンビナーゼのような高い熱安定性を示すFlp突然変異体が生成された。しかし、この突然変異体Flp酵素でさえ、未だCreリコンビナーゼより低い組換え効率を示す。
【0010】
配列特異性リコンビナーゼのさらなる用途は、医学分野、例えば遺伝子治療にあり、リコンビナーゼが安定的かつ制御された方法で、所望のDNAセグメントをそれぞれのヒト標的細胞のゲノム中に組み込む。Cre及びFlpは両方とも分子間組換えを触媒しうる。両リコンビナーゼは、そのそれぞれの組換え配列のコピーを保有するプラスミドDNAを、相同的組換えによって真核生物ゲノム中に既に挿入されている対応組換え配列と組換える。しかし、この反応は真核生物ゲノム内に“天然に”存在する組換え配列を含むことが望ましい。loxP及びFRTは、それぞれ34及び54ヌクレオチド長なので、これら組換え配列がゲノムの一部として完全に一致することは統計的にありえない。組換え配列が存在する場合でさえ、上述した逆反応の欠点が未だに存在する、すなわち、両Cre及びFlpリコンビナーゼは、分子内組換えによる成功した組込み後に挿入されるDNAセグメントを切除しうる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の1つの課題は、簡単かつ制御可能な組換え系、及び必要な実施手段を提供することである。本発明のさらなる課題は、組換え系及び所望のDNA配列の安定的な標的組込みを実行しうる必要な実施手段の提供である。本発明のさらなる課題は、当該組換え系の1つに基づいた改良されたタンパク質発現系の生成を可能にする方法の提供である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、特許請求の範囲で特徴づけられた主題によって解決される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、以下の例示でさらに詳細に説明される。
図1は、組換え反応、すなわち野生型インテグラーゼIntで触媒される組込み及び除去の概略的な説明を示す。組換え配列attPのコピーを保有する高次らせんプラスミドDNA(上部)が示される。attPは、Int用の5つのいわゆるアーム結合部位(P1、P2、P1’、P2’、P3’)、2つのコアInt結合部位(C及びC’;黒矢印で示される)、IHF用の3つの結合部位(H1、H2、H’)、Xis用の2つの結合部位(X1、X2)、及び実際のDNA鎖交換が起こるいわゆるオーバーラップ領域(白抜き四角)から成る。attPの天然の相手配列、attBは、真下の線状DNAセグメント上に示され、Int用の2つのコア結合部位(B及びB’;白抜き矢印で示される)と、オーバーラップ領域から成る。attB及びattP間の組換えでは、attBを保有するDNAセグメント中への該プラスミドの組込みを惹起するInt及びIHFが必要である。それによって、2つの新たなハイブリッド組換え配列、attL及びattRが形成され、除去の標的配列として働く。後の反応は、野生型状態でInt及びIHFを必要とし、かつさらにファージlambdaによってコードされた補助因子XISを必要とする。
【0014】
図2は、分子内及び分子間組換え反応を示す。(A)分子内組込み(attB×attP)組換え。(B)分子間組込み(attB×attP)組換え。(C)分子内除去(attL×attR)組換え。(D)分子間除去(attL×attR)組換え。基質ベクター及び予想される組換え産物が各パネルの上部に示される。GFP−発現細胞のフラクションは、基質及び発現ベクターの共形質移入後の3時点におけるFACSで決定された。縦線で示される標準偏差と共に3アッセイの平均値を示す。
【0015】
図3は、att部位内のIntアーム結合DNA配列の存在が分子間組換えを刺激することを示す。(A)分子間組換え用基質ベクターの対は、異なる組合せでattB又はattPのどちらかを含み、CMVプロモーターで作動されるGFPを発現する産物を生成する。(B)種々の組合せの基質ベクターを、野生型Int、突然変異体Int−h、又はInt−h/218用の発現ベクターと共−形質移入した。48時間で細胞をFACSによって解析し、2対の基質についてGFP−発現細胞の割合を決定した。示されるように、参照としてattPとattPとの間の組換えが役に立った。縦線で示される標準偏差と共に3アッセイの平均値を示す。IntについてのGFP−発現細胞の実際の平均値(%)は、0.08(B×B)、1.24(P×P)、及び0.81(P×B)だった。Int−hの平均値は、1.15(B×B)、8.07(P×P)、及び9.90(P×B)だった。Int−h/218の平均値は、4.01(B×B)、17.62(P×P)、及び16.45(P×B)だった。
【0016】
図4は、精製IHFタンパク質が野生型Intによる分子内−及び分子間組込み組換えを刺激することを示す。(A)基質ベクターの模式図であり、過渡的に野生型Int又はInt−hのどちらかを発現するHeLa細胞中への形質移入前にIHFと共に或いはIHF無しでインキュベートした。(B)形質移入後48時間で、GFP−発現細胞のフラクションをFACSのよって解析した。これらフラクションの割合をIHFによる組換えの活性化としてプロットした。グラフは、縦線で示される標準偏差と共に3アッセイの平均値を示す。IHFの存在下及び非存在下におけるGFP−発現細胞の実際の平均値(%)は、それぞれ、分子内組換えの場合Int(7.93/1.26)及びInt−h(17.57/13.14)であり、分子間組換えの解析ではInt(13.94/3.47)及びInt−h(20.33/16.83)だった。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語“形質転換”又は“形質転換する”、“形質移入”又は“形質移入する”は、細胞中への核酸配列のいずれの導入をも意味し、結果として遺伝子修飾、組換え、形質転換又はトランスジェニック細胞となる。導入は、技術的に周知かつ例えばSambrook,J.ら(1989)(Molecular Cloning:A Laboratory Manual Cold Spring Harabor Laboratory,Cold Spring Harabor,New York又はAusubel,F.M.ら(1994更新)Current Protocols in Molecular Biology,New York:Greene Publishing Associates and Wiley−Interscienceに記載されているいずれの方法によっても行うことができる。方法としては、限定するものではないが、リポフェクチン、エレクトロポレーション、多カチオン(DEAE−デキストランのような)−媒介形質移入、プロトプラスト融合、ウイルス感染及び微量注入が挙げられ、又はカルシウム法、電気ショック法、静脈内/筋肉内注射、エアゾール吸入若しくは卵母細胞注射によって行うことができる。形質転換の結果、宿主細胞の一過性又は安定した形質転換となりうる。用語“形質転換”又は“形質転換する”は、それぞれのウイルスについて天然に1つであるやり方でのウイルス核酸配列の導入をも意味する。ウイルス核酸配列は、ありのままの核酸配列として存在する必要はないが、ウイルスタンパク質エンベロープ内に収容されうる。このように、この用語は、用語“形質転換”又は“形質転換する”として通常知られている方法だけに関係しているわけではない。最適な形質移入頻度及び導入核酸の発現を与える形質移入法が好ましい。好適な方法は、日常的な手順によって決定することができる。安定な形質移入体のため、構成物は、宿主細胞のゲノム若しくは人工的な染色体/微小染色体中に組み込まれ、又は宿主細胞内で安定して維持されるように染色体外に位置づけられる。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語“組換え配列”は、attB、attP、attL及びattR配列及びその誘導体に関する。attB配列の例は、配列番号:13で特定され、attPの例は、配列番号:14で特定され、attLの例は、配列番号:15で特定され、attRの例は、配列番号:16で特定される。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語“誘導体”は、天然に存在するattB、attP、attL及びattRと対照的に、オーバーラップ領域及び/又はコア領域内に1個以上の置換、好ましくは7個、さらに好ましくは2、3、4、5又は6個の置換を有するattB、attP、attL及びattRに関する。用語“誘導体”は、attB、attP、attL又はattRの少なくとも1つのコアInt結合部位にも関する。用語“誘導体”は、attP、attL又はattRの少なくとも1つのコアInt結合部位プラスInt用のアーム結合部位の1以上のコピーにも関する。用語“誘導体”は、attP、attL又はattRの少なくとも1つのコアInt結合部位プラスIHF、FIS又はXIS因子結合部位の1以上のコピーにも関する。用語“誘導体”は、これら特徴の組合せにも関する。さらに、用語“誘導体”は、そのいずれの機能性断片及び配列特異的組換えを支持する真核細胞内の内因性ヌクレオチド配列、例えばヒトゲノム内で同定されたattH(例えば、WO01/16345参照)にも関する。用語“誘導体”は、一般的に、本発明の意図した使用を認識するのに好適なattB、attP、attL及びattRを包含し、該配列が、バクテリオファージlambdaのインテグラーゼ(野生型又は修飾された)によって作動される配列特異的組換え事象を媒介することを意味する。
【0020】
用語“機能性断片”は、置換、欠失、及び/又は挿入(野生型若しくは修飾タンパク質結合部位の存在又は非存在を含む)を有するattB、attP、attL及びattRに関し、バクテリオファージlambdaの野生型若しくは修飾インテグラーゼによって作動される組換え事象における前記配列の使用にはほんとんど影響しない。機能性は、同一条件下で(例えば、インビトロ又はインビボ使用、同一の宿主細胞型、同一の形質移入条件、同一宿主因子の存在又は非存在、同一緩衝液条件、同一温度等)同一のリコンビナーゼを用いる場合、対応する天然の組換え配列に比し、組換え頻度が少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約90%、なおさらに好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは約100%より多い場合は、ほとんど影響されない。代わりに、attB、attP、attL及び/又はattR配列における置換、欠失、及び/又は挿入は、バクテリオファージlambdaの野生型又は修飾インテグラーゼによって作動される組換え事象を少なくとも増強させ、前記増強は、例えば(i)組換え事象(組込み及び/又は除去)の効率を高めること、(ii)組換えの特異性を高めること、(iii)除去組換え事象を助けること(iv)組込み組換え事象を助けること、(v)同一条件下で(上記参照)同一のリコンビナーゼを用いる場合、対応する天然の組換え配列に比し、いくつか又はすべての宿主因子の要求を軽減することから成る。
【0021】
修飾された組換え部位又は修飾されたインテグラーゼの機能性は、所望の特有な特徴によって決まる技術的に公知な方法で示すことができる。例えば、本発明で述べるような共−形質移入アッセイ(結果5.1又はWO01/16345の実施例3参照)を用いて、種々の細胞系における染色体外DNAのインテグラーゼ−媒介組換えを特徴づけできる。要するに、細胞が、インテグラーゼタンパク質をコードする発現ベクターと、リコンビナーゼ用基質である、機能性/非機能性リポーター遺伝子(例えば、GFPのような蛍光タンパク質)をコードし、かつその中に少なくとも1つの組換え配列を含有する基質ベクターとで共−形質移入される。発現ベクターによってインテグラーゼが発現すると、リポーター遺伝子の機能が非機能性/機能性にならしめられる。従って、組換えられた基質ベクターを回収し、DNAレベルでの組換えの証拠(例えば、PCRの実施、組換え領域の配列解析、制限酵素解析、サザン−ブロット解析によって)を捜すか、又はタンパク質レベルでの組換えの証拠(例えば、ELISA、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降、免疫染色、蛍光タンパク質のFACS−解析)を捜すことによって組換え活性を分析することができる。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語“オーバーラップ領域”は、鎖切断及び再連結を含むDNA鎖交換が起こる組換え配列の配列を定義し、かつ野生型att部位内のコンセンサスDNA配列5’−TTTATAC−3’、又は機能性ヌクレオチド置換を有する前記配列に関する。オーバーラップ領域の配列が、組換える相手の配列間で同一であることが唯一の必須条件である。
【0023】
用語“コア結合部位”は、2つの逆方向に不完全に反復されるコピーを指し、各セットの野生型att部位内でオーバーラップ領域によって分離されている。このコア結合部位は、低い親和性でインテグラーゼと結合することによる組換えには必須である。各コア結合部位は、9個の相接塩基対から成り、野生型att部位内でB−配列ではヌクレオチド配列5’−CTGCTTTTT−3’から成り、B’−配列ではヌクレオチド配列5’−CAAGTTAGT−3’(逆相補性鎖)から成り、C−配列ではヌクレオチド配列5’−CAGCTTTTT−3’から成り、かつC’−配列ではヌクレオチド配列5’−CAACTTAGT−3’(逆相補性鎖)から成るDNA配列、又は機能性ヌクレオチド置換を有する前記配列に関する。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語“Int用アーム結合部位”又は“アーム結合部位”は、コンセンサス配列5’−C/AAGTCACTAT−3’又は機能性ヌクレオチド置換を有する前記配列に関する。Int用アーム結合部位は、コアInt結合部位の種々の距離の上流及び/又は下流に位置しうる。
本明細書で組換え配列、アーム結合部位、及び宿主因子結合部位に関して使用する場合、用語“相同体”又は“相同的な”又は“類似の”は、天然に存在する組換え配列、アーム結合部位、及び宿主因子結合部位に、約70%、好ましくは約80%、さらに好ましくは約85%、なおさらに好ましくは約90%、より好ましくは約95%、最も好ましくは約99%同一である核酸配列に関する。例えば、組換え配列を比較したとき、P<10−5の確立を示すNCBIの類似アルゴリズムBLAST(Basic Local Alignment Search Tool,Altschulら,Journal of Molecular Biology 215,403−410(1990))の標準パラメーターを用いて、配列が相同的又は類似とみなされる。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語“ベクター”は、細胞内での核酸の摂取、増殖、発現又は伝達のための天然に存在する又は合成的に生成された構成物に関し、例えば、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工的な染色体/微小染色体、バクテリオファージ、ウイルス又はレトロウイルスである。ベクターを構築するために使用する方法は、当業者には周知であり、かつ種々の刊行物に記載されている。好適なベクターを構築する特定の技法は、プロモーター、エンハンサー、終止及びポリアデニル化シグナル、選択マーカー、複製開始点、及びスプライシングシグナルのような機能性及び調節性成分の詳細を含め、前出のSambrook,J.ら(1989)、及びその中で引用されている参照文献でレビューされている。真核生物発現ベクターは、通常、複製開始点のような細菌内におけるベクター及び細菌内における選択用抗生物質抵抗性遺伝子の伝播を促進する原核配列をも含む。ポリヌクレオチドを操作的に連結できるクローニング部位を含有する種々の真核生物の発現ベクターは技術的に周知であり、いくつかは、Stratagene,La Jolla,CA;Invtrogen,Carlsbad,CA;Promega,Madison,WI又はBD Biosciences Clontech,Palo Alto,CAのような会社から商業的に入手可能である。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語“関心のある遺伝子”、“所望の配列”、又は“所望の遺伝子”は、同じ意味を有し、かつ関心のある産物をコードするいずれの長さのポリヌクレオチド配列をも指す。選択配列は、完全長若しくは先端を切り取られた遺伝子、融合若しくは標識遺伝子でよく、またcDNA、ゲノムDNA、又はDNA断片でよく、好ましくはcDNAである。それは、自然の配列、すなわち天然に存在する形態でよく、又は突然変異を起こし、若しくは他の方法で所望通りに修飾することができる。これら修飾としては、選択した宿主細胞内におけるコドンの用法を最適にするためのコドン最適化、ヒト化又は標識化が挙げられる。選択配列は、分泌される細胞質、核、膜結合若しくは細胞表面ポリペプチドをコードしうる。“関心のある産物”としては、タンパク質、ポリペプチド、その断片、ペプチド、アンチセンスRNAが挙げられ、これらはすべて選択した宿主細胞内で発現することができる。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語“核酸配列”、“ヌクレオチド配列”、又は“DNA配列”は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドと、その断片及び部分と、ゲノム若しくは合成起源のDNA又はRNAとを指し、一本鎖又は二本鎖でよく、センス又はアンチセンス鎖を表す。配列は、非コーディング配列、コーディング配列又はその両者の混合でよい。本発明のポリヌクレオチドは、1種以上のコドンがそのシノニムで置換されている核酸領域を包含する。
【0028】
本発明の核酸配列は、当業者に周知の標準的な技法によって調製することができる。用語“コードする”又は“コーディング”は、染色体又はmRNA内の遺伝子のような核酸中の特異的配列のヌクレオチドの、定義された配列のヌクレオチド(すなわちrRNA、tRNA、他のRNA分子)又はアミノ酸を有する、生物学的プロセスで他のポリマー及び巨大分子の合成用鋳型として働くための固有な特性及びその結果生じる生物学的特性を指す。従って、遺伝子は、当該遺伝子によって産生されたmRNAの転写及び翻訳により細胞又は他の生体系内にタンパク質を生成する場合に、タンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり、かつ通常配列一覧表に与えられるヌクレオチド配列であるコーディング鎖と、遺伝子又はcDNAの転写用の鋳型として使用される非コーディング鎖は、両方とも当該遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードするということができる。タンパク質をコードする核酸は、異なるヌクレオチド配列を有するが、遺伝コードの縮重のため該タンパク質の同じアミノ酸配列をコードするいずれの核酸をも包含する。
【0029】
用語“ポリペプチド”は、アミノ酸残基配列又はタンパク質と互換的に使用され、かついずれの長さのアミノ酸のポリマーをも意味する。この語は、限定するものではないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化又はタンパク質プロセシングを含む反応によって翻訳後に修飾されるタンパク質をも包含する。修飾及び変更、例えば、他のタンパク質への融合、アミノ酸配列置換、欠失、又は挿入は、分子がその生物学的機能活性を維持しながらポリペプチドの構造に生じさせることができる。例えば、特定のアミノ酸配列置換は、ポリペプチド又はその根底にある核酸コーディング配列に生じさせることができ、かつ同様の特性を有するタンパク質を得ることができる。アミノ酸修飾は、例えば部位特異的突然変異又はその根底にある核酸配列についての突然変異を媒介としたポリメラーゼ連鎖反応を行うことで調製することができる。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語“発現”は、宿主細胞内における非相同的核酸の転写及び/又は翻訳を指す。宿主細胞内の所望産物の発現レベルは、細胞内に存在する対応mRNAの量、又は選択配列によってコードされた所望ポリペプチドの量に基づいて決定することができる。例えば、選択配列から転写されたmRNAは、細胞性RNAへのノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNA保護、インサイツハイブリダイゼーションによって、又はPCR(Sambrook,J.ら(1989)、前出;Ausubel,F.M.ら(1994更新)、前出)で定量できる。選択配列でコードされたタンパク質は、種々の方法、例えばELISA、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降によって、タンパク質の生物活性のアッセイによって、又はタンパク質の免疫染色後のFACS解析PCRによって定量できる(Sambrook,J.ら(1989)、前出;Ausubel,F.M.ら(1994更新)、前出)。
【0031】
“発現カセット”は、転写される1個以上の遺伝子を含有する構成物内の領域を定義し、該セグメント内に含まれる遺伝子は、相互に操作的に連結され、かつ単一のプロモーターから転写され、結果として異なる遺伝子は少なくとも転写的に連結される。1つより多くのタンパク質又は産物が、各転写単位から転写かつ発現されうる。各転写単位は、該単位内に含まれる選択配列の転写及び翻訳に必要な調節要素を含む。
用語“操作的に連結”は、2個以上の核酸配列又は配列要素が、その意図した様式で機能できるようなやり方で位置づけることを意味する。例えば、プロモーター及び/又はエンハンサーは、コーディング配列がシスで作用して連結配列の転写を制御又は調節する場合、該コーディング配列に操作的に連結される。一般に、しかし必ずではないが、操作的に連結されるDNA配列は相接しており、2個のタンパク質コーディング領域を連結する必要があり、又は分泌リーダーの場合、相接かつ読み枠内である。
【0032】
用語“選択マーカー遺伝子”は、該遺伝子を保有する細胞だけを、対応する選択物質の存在下で特異的に選択させ、又は選択させない遺伝子を指す。例示として、抗生物質抵抗性遺伝子をポジティブ選択性マーカー遺伝子として使用することができ、対応する抗生物質の存在下、該遺伝子で形質転換された宿主細胞をポジティブに選択させ;非形質転換宿主細胞は選択培養条件下では成長又は生存できない。選択性マーカーはポジティブ、ネガティブ又は二機能性でありうる。ポジティブ選択性マーカーは、薬物に対する抵抗性を与えることによって、該マーカーを保有する細胞の選択を可能にし、又は宿主細胞内の代謝又は異化欠陥を補う。対照的に、ネガティブ選択マーカーは、該マーカーを保有する細胞を選択的に排除させる。例えば、マーカーとしてHSV−tk遺伝子を用いると、アシクロビア及びガンシクロビアのような薬剤に感受性の細胞を生じさせる。ここで使用される選択性マーカー遺伝子には、増幅可能な選択性マーカーを含め、コードされた産物が選択特性を保持する限り、組換え操作された突然変異体及び変種、断片、機能性等価物、誘導体、相同体及び自然の選択性マーカー遺伝子融合が包含される。有用な誘導体は、一般に、選択特性を伴う選択性マーカーの領域又はドメイン内に実質的な配列類似性(アミノ酸レベルで)を有する。
【0033】
二機能性マーカーを含め種々のマーカー遺伝子について記述されており(例えば、WO92/08796及びWO94/28143参照)、参照によって本明細書に取り込まれる。例えば、真核細胞と共に一般的に使用される選択性遺伝子としては、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンセターゼ、アスパラギンシンセターゼ用の遺伝子、及びネオマイシン(G418)、ピューロマイシン、ヒスチジノールD、ブレオマイシン及びフレオマイシンに抵抗してコードする遺伝子が挙げられる。
【0034】
選択は、蛍光活性化細胞分類(FACS)により、例えば細胞表面マーカー、細菌性β−ガラクトシダーゼ又は蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びそのAequorea victoria及びRenilla reniformis又は他種由来の変種;赤色蛍光タンパク質、蛍光タンパク質及びその非生物発光種由来の変種(例えば、Discosoma sp.、Anempmia sp.、Clavularia sp.、Zoanthus sp.)を用いて組換え細胞用に選択させることもできる。
用語“選択薬剤”は、特定の選択性遺伝子内に欠失している宿主細胞の成長又は生存を妨害する物質を指す。例えば、形質移入された細胞中のAPH(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ)のような抗生物質抵抗性遺伝子の存在を選択させるため、抗生物質ジェネテシン(Geneticin)(G418)が使用される。
【0035】
バクテリオファージlambdaのインテグラーゼ(通常、かつ本明細書では“Int”と呼ばれる)は、Cre及びFlpのように配列特異性の伝統的なDNAリコンビナーゼのインテグラーゼファミリーに属する。その天然の機能では、Intは、2種の組換え配列、すなわちattB及びattP間の組込み組換えを触媒する。attBは、21個のヌクレオチドを含み、最初大腸菌ゲノムから単離された:Mizuuchi,M.及びMizuuchi,K.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,pp.3220。他方、243個のヌクレオチドを有するattPはずっと長く、バクテリオファージlambdaのゲノム中に天然に存在する;Landy,A.,及びRoss,W.(1997)Science,197,pp.1147。Intリコンビナーゼは、7個の結合部位を有し、attPにはすべて、attBには2個ある。Intの生物学的機能は、環状ファージゲノムの大腸菌染色体上の座attB中への配列特異的組込みである。Intは、組込み組換えのためにタンパク質補助因子、いわゆる組込み宿主因子(通常、かつ本明細書では“IHF”と呼ばれる)を必要とする;Kikuchi,Y.,及びNash,H.,(1978)J.Biol.Chem.,253,7149。IHFは、attPとの機能性組換え複合体の構築に必要である。組込み反応のための第2補助因子は、attPのDNAネガティブ高次コイルである。最後に、attBとattPとの間の組換えは、2つの新しい組換え配列、すなわちattL及びattRの形成を導き、さらなる組換え反応、除去反応のための基質及び認識配列として働く。バクテリオファージlambda組込みの包括的な概要は、例えばLandy,A.(1989)Annu.Rev.Biochem.,58,pp.913に記載されている。
【0036】
細菌ゲノム由来のファージゲノムの除去も、Intリコンビナーゼによって触媒される。このためには、Int及びIHFに加え、バクテリオファージlambdaによってコードさる、さらなる補助因子が必要である。これは、attR中に2つの結合部位を有するエキシシオナーゼ(excisionase)(通常、かつ本明細書で“XIS”と呼ばれる)である;Gottesman,M.及びWeisberg,R.(1971) The Bacteriophage Lambda,Cold Spring Harabor Laboratory,pp.113。組込み組換えと対照的に、組換え配列のDNAネガティブ高次コイルは、除去組換えに必要でない。しかし、DNAネガティブ高次コイルは、組換え反応の効率を高める。除去反応の効率のさらなる改善が、第2補助因子、すなわちFIS(反転刺激のための因子)で達成することができ、XISと共に作用する;Landy,A,(1988)Annu.Rev.Biochem.,58,pp.913。除去は、インテグラーゼの遺伝的に完全な逆反応、すなわち、この場合もやはりattB及びattPが生成される。バクテリオファージLambda除去の包括的な概要は、Landy,A.(1989)Annu.Rev.Biochem.,58,pp.913に記載されている。
【0037】
本発明の一局面は、真核細胞内におけるDNAの配列特異的組換えの方法に関し、以下の工程を含む。
a)第1attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を細胞中に導入する工程、
b)第2attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を細胞中に導入する工程、ここで、前記第1DNA配列がattB配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattP配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattL配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attP若しくはattL配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattR配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attP若しくはattR配列又はその誘導体を含み、
c)バクテリオファージLambdaインテグラーゼIntによって配列特異的組換えを行う工程。
【0038】
工程c)において、配列特異的組換えが、Int又はInt及びXIS、FIS、及び/又はIHFによって行われる方法が好ましい。工程c)において、配列特異的組換えが、Int又はInt及びXIS因子によって、或いはInt及びIHFによって、或いはInt及びXISとIHFによって行われる方法が最も好ましい。さらに好ましくは、本方法は、工程c)において、配列特異的組換えが、修飾Int、好ましくはInt−h又はInt−h/218よって行われる。この文脈では、XIS、FIS及び/又はIHFと共に修飾Intを使用することも本発明の意義内である。
【0039】
この発明の最も好ましい実施形態では、真核細胞内のDNAの配列特異的組換えは、同一又はほぼ同一の組換え部位間で行われる。従って、本発明は、上述したような配列特異的組換えの方法に関し、前記第1DNA配列がattB配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattP配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattP配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattL配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattL配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattR配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattR配列又はその誘導体を含む。
【0040】
本発明の方法は、天然に存在するattB、attP、attL及び/又はattR配列のみならず、修飾した、例えば置換attB、attP、attL及び/又はattRでも実施することができる。例えば、バクテリオファージlambdaと大腸菌のattPとattB相同性配列(野生型配列の突然変異体)間の組込み組換えでは、attB(Nash,H.(1981),Annu.Rev.Genet.,15,pp.143;Nussinov,R.及びWeisberg,R.(1986)J.Biomol.Struct.Dynamics,3,pp.1134)及び/又はattP内(Nash,H.(1981),Annu.Rev.Genet.,15,pp.143)の1以上の置換が観察されている。
【0041】
本発明は、使用するattB、attP、attL及び/又はattR配列が、天然に存在するattB、attP、attL及び/又はattR配列と比較して1以上の置換を有する方法に関する。このattB、attP、attL及び/又はattR配列が、1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上の置換を有する方法がこのましい。置換は、オーバーラップ領域及びコア領域の両方で起こりうる。7個のヌクレオチドを含む完全なオーバーラップ領域も置換されうる。置換が、コア領域内又はオーバーラップ領域内のいずれかのattB、attP、attL、及び/又はattR配列中に導入される方法がさらに好ましい。好ましくは、オーバーラップ内の1置換の導入、及びコア領域内の1又は2置換の同時導入である。本発明は、使用するattB、attP、attL、及び/又はattR配列が、天然に存在するattB、attP、attL、及び/又はattR配列と比較して、前記組換え部位の誘導体であり、その機能性断片も含む方法にも関する。
【0042】
組換え配列中への1以上の置換という形の修飾は、該修飾にもかかわらず組換えが遂行されうるように選択される。このような置換の例は、例えば前出のNash,H.(1981)及び前出のNussinov,R.及びWeisberg,R.(1986)にリストされているが、これに限定すると考えるべきでない。さらなる修飾は、例えば、突然変異法(この多くが前出のAusubel,F.M.ら(1994更新)に記載されており、例えば本発明の実施例(実施例1及び2、結果5.1)に記載されているように試験組換えでその使用について試験することができる。
さらに、本発明は、使用するattB、attP、attL、及び/又はattR配列が、それぞれのコアInt結合部位の1つだけを含む方法に関するが、2つ以上のコアInt結合部位も好ましい。好ましい実施形態では、本発明は、使用するattB、attP、attL、及び/又はattR配列が、それぞれのコアInt結合部位の1つだけから成る方法に関する。別の実施形態では、使用するattB、attP、attL、及び/又はattR配列は、2つ以上のコアInt結合部位から成る。
【0043】
さらに、本発明は、使用するattB、attP、attL、及び/又はattR配列がコアInt結合部位に加え、Int用の、1以上、好ましくは2、3、4、5又は5より多くのアーム結合部位のコピーを含む方法に関する。前記結合部位は、配列5’−C/AAGTCACTAT−3’(配列番号:1)を有するコンセンサスモチーフ又はヌクレオチド置換を有しかつ、Int結合に関して機能的であるその修飾配列を含む。Int用のアーム結合部位は、種々の距離でコアInt結合部位の上流及び/又は下流に位置することができる。
【0044】
本発明の方法を実施するため、第1組換え配列は、例えば真核細胞のゲノム又は人工的な微小染色体内で所望の標的座中への組込みを可能にするさらなるDNA配列を含むことができる。この組換えは、例えば、細胞内組換えメカニズムで媒介される相同的組換えによって起こる。前記組換えでは、さらなるDNA配列は、標的座のDNAに相同的であり、かつattB、attP、attL、若しくはattR配列又はその誘導体のそれぞれの3’及び5’の両方に位置しなければならない。当業者は、相同的組換えが十分な確立で起こるようにするために、相同性の程度をどのくらいにし、かつそれぞれ3’及び5’配列の長さをどの程度にするかを知っている:Capecchi,M.(1988)Science,244,pp.1288のレビュー参照。
しかし、第1組換え配列を他のいずれかのメカニズムによって真核細胞のゲノム、又はいずれかの人工的な微小染色体中に組み込むことも可能であり、例えば、やはり細胞内組換え事象で媒介されるランダムな組込みによる。例えば、loxP/FRT配列を用いて組み込まれる部位とは異なる部位を用いて配列特異的組換えによる前記第1組換え部位の組込みも考えられる。
【0045】
第2組換え配列は、所望の標的座中への相同的組換えによる組込みに必要なDNA配列を含むことができる。本発明の方法では、第1及び/又は第2組換え配列の両者がさらなるDNA配列を含むことができる。両DNA配列がさらなるDNA配列を含む方法が好ましい。
第1及び第2組換え配列の導入は、継続的かつ組換え配列が2個の異なるDNA分子上に存在する共−形質転換の状態で行うことができる。好ましい方法は、さらなるDNA配列を有する又は無い第1及び第2組換え配列が存在し、単一のDNA分子上の真核細胞中に導入される。さらに、第1組換え配列が、1細胞中に導入され、第2組換え配列が別の細胞中に導入され、その後これら細胞が融合される。用語融合は、生体の交雑のみならず最も広い意味の細胞融合を意味する。
【0046】
本発明の方法を用いて、例えば、分子内組換えで逆方向に配向されている組換え配列間にあるDNAセグメントを反転させることができる。さらに、本発明の方法を用いて、分子内組換えで直列に配向されている組換え配列間にあるDNAセグメントを欠失させることができる。組換え配列が、それぞれ5’−3’又は3’−5’配向で組み込まれる場合、それらは直列に存在する。例えばattB配列が5’−3’で組み込まれ、attP配列が3’−5’配向で組み込まれると、組み合え配列は逆方向である。それぞれ例えば相同的組換えによってエキソンのイントロン配列5’及び3’中に組み込まれ、かつ該組換えがインテグラーゼによって遂行される場合、それぞれ、逆方向組換え配列の場合エキソンが反転され、直列方向組換え配列の場合は欠失される。この手順により、それぞれの遺伝子でコードされたポリペプチドはその活性若しくは機能を失い、又は反転又は欠失によって転写が停止され、(完全な)転写物が生成されない。この方法で、例えば、コードされたポリペプチドの生体機能を調べることができる。さらに、反転又は欠失反応を用い、例えば、コードされたポリペプチドの転写及び/又は翻訳を可能にする調節要素によるコードされたポリペプチドの読み枠の機能的な連結によって、所望ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を活性化することができる。調節要素としては、限定するものではないが、プロモーター及び/又はプロモーター/エンハンサー要素が挙げられ、種々の真核生物発現系について技術的に周知である。
【0047】
しかし、第1及び/又は第2組換え配列は、関心のある1種以上のポリペプチド/産物をコードするさらなる核酸を含むことができる。例えば、組換え配列によって、分子内組換え後に過渡的又は安定的に発現されるゲノム中に構造タンパク質、酵素的又は調節的タンパク質を導入することができる。導入するポリペプチド/産物は、内因性又は外因性のものでよい。さらに、マーカータンパク質又は生物薬剤関連治療用ポリペプチドを導入することができる。当業者には、本発明の方法を適用するこのリストが例示のためだけであり、限定でないことが分かる。従来使用していたCre及びFlpリコンビナーゼと共に実施される本発明の適用の例は、例えば、Kilby,N.ら,(1993),Trends Genet.,9,pp.413のレビューで見られる。
【0048】
さらに、本発明の方法はを用いて、エピソーム基質上の分子内組換えにより、ベクター上のDNAセグメントを欠失又は反転させることができる。欠失反応は、例えば、いわゆるヘルパーウィルスからパッケージング配列を欠失させるために使用することができる。この方法は、遺伝子治療適用のウィルスベクターの工業生産で広範な用途がある:Hardy,S.ら,(1997),J.Virol.,71,pp.1842。
【0049】
分子間組換えは、それぞれattB、attP、attL、若しくはattR又は種々の組合せのatt配列或いはその誘導体のコピーを有する2個のDNA分子の融合を惹起する。例えば、attB又はその誘導体は、まず、細胞又は人工的な微小染色体の既知で、よく特徴づけされたゲノム座内の相同的組換えによって導入される。次いで、分子間組換えにより、ベクター又はDNA−セグメントを保有するattB、attP、attL、若しくはattRが、前記ゲノムのattB配列中に組み込まれる。この方法では、突然変異体インテグラーゼ、例えば、組換えが起こる真核細胞内のInt−h又はInt−h/218の共−発現が好ましい。最も好ましくは、突然変異体インテグラーゼInt−h/218の共−発現である。当該突然変異体インテグラーゼをコードする遺伝子は、形質移入、好ましくは共−形質移入される第2DNAベクター上、或いはattP、attL、attR若しくはattB配列又はその誘導体を保有するベクター又はDNA−セグメント上に位置しうる。さらなる配列は、ベクター又はDNA−セグメント、例えば、loxP/FRT配列と隣接する特定のマーカータンパク質用の遺伝子を保有するattB、attP、attL、又はattR上に位置しうる。このアプローチでは、例えば、ある細胞型内の異なる遺伝子の比較発現解析で、前記遺伝子がそれぞれのゲノム組込み座の正又は負の効果によって影響されないことに到達する。さらに、本発明の方法を用いて、エピソーム基質上の分子間組換えによりベクター上のDNAセグメントを融合することができる。融合反応を用い、例えば、表現型をスクリーニングするための組換え体タンパク質又は関連ドメインを発現させることができる。この方法は真核細胞内のタンパク質機能の高処理能力解析に使用できるので、非常に興味深い。
【0050】
上述したように、分子間組換えを用いて、1種以上の所望ポリペプチド/産物をコードする1個以上の関心のある遺伝子を、例えば、エピソーム基質、人工的な微小染色体、又は第1組換え配列を含有する種々の宿主細胞ゲノム中に導入することができる。この文脈では、第2DNAは、少なくとも1個の組換え配列、例えばattP、attB、attL、attR又はその誘導体に加え、1種以上の所望タンパク質/産物の発現用の1個以上の発現カセットを含む。当該発現カセットは、第2組換え配列と該発現カセットとを含むDNAと、前に前記エピソーム基質、人工的な微小染色体、又は宿主細胞ゲノム中に導入されている第1組換え配列との間の配列特異的組換えを可能にする組換え配列によって、所望の標的座中に導入される。この実施形態は、生物薬剤製品の製造に好適な高発現細胞系を確立するために非常に興味深い。
【0051】
この文脈では、少なくとも1つの組換え配列を含む第1DNAは、例えば、宿主細胞のゲノム、人工的な微小染色体又は宿主細胞内に含まれるエピソーム基質中へのランダムな組込みによって導入されなければならない。代わりに、宿主細胞は、対応する少なくとも1つの組換え部位を含む人工的な微小染色体又はエピソーム基質で形質転換することができる。組換え配列を、バクテリオファージlambdaインテグラーゼIntによって認識される、所望の標的座中に組み込むための他の方法は、上述したような相同的組換え法を使用することである。
【0052】
所望の標的座中に組換え配列を導入した安定的な形質移入体の選択を容易にするため、同一の標的座中に同時に、選択マーカー遺伝子が共−導入される。これは、例えば、組換え配列及び選択マーカー遺伝子が同一ベクター又はDNAセグメント上に一緒に位置する場合、標的座中に導入され、例えば、上述のいずれの方法によっても達成することができる(相同的組換え、ランダム組込み等)。選択マーカー遺伝子の発現レベルは、組込み部位における転写活性と関係するので、組込みの部位における高い発現レベル、細胞の頑強さ、及び例えば、バイオリアクター内での良い成長特性を示す細胞は、効率的に同定することができる。選択マーカー遺伝子の発現レベルは、技術的に周知な方法により、例えば、細胞中に存在する対応mRNAの量、又は該遺伝子でコードされるポリペプチドの量に基づいて決定することができる。例えば、導入された遺伝子配列から転写されたmRNAは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNA保護、細胞性RNAへのインサイツハイブリダイゼーション又はPCRによって定量することができる(Sambrook,J.ら(1989)、前出;Ausubel,F.M.ら(1994更新)、前出)。選択配列でコードされるタンパク質は、種々の方法、例えば、ELISA、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降、タンパク質の生体活性のアッセイ、タンパク質染色後のFACS解析、又は蛍光タンパク質の蛍光シグナルの測定によって定量することができる(Sambrook,J.ら(1989)、前出;Ausubel,F.M.ら(1994更新)、前出)。このような方法によって、生物薬剤製造用の生産細胞系の優れた候補を得ることができる。
【0053】
組込まれた組換え配列(第1組換え配列)は、さらなるDNA分子、例えば少なくとも1つのさらなる組換え配列(第2組換え配列)を保有するベクター又はDNAセグメントの、バクテリオファージlambdaインテグラーゼIntによる配列特異的組換えによる転写活性座中への組込みを可能にする。好ましくは、少なくとも1つの第2組換え配列を含む当該さらなるDNA分子は、さらに、関心のある少なくとも1つの生物薬剤関連遺伝子の発現用発現カセットを含む。このため、好ましくは宿主細胞ゲノム中に転写活性座で組み込まれた、第1組込み組換え配列を含む宿主細胞は、バクテリオファージlambdaインテグラーゼInt用の第2組換え配列を含むDNA分子で形質移入され、かつ第1及び第2組換え配列間の配列特異的組換え、好ましくは、第2組換え配列を含むDNA分子の、第1組換え配列を含む宿主細胞ゲノム中への組込みを可能にする条件下で培養される。第1及び第2組換え配列は、バクテリオファージlambdaインテグラーゼInt又はその機能性突然変異体による配列特異的組換えを可能にする、attP、attB、attL、attR、又はそのいずれかの誘導体でよい。例えば、第1組換え配列がattP又はその誘導体を含む場合、第2組換え配列は、attP、attB、attL、attR、又はそのいずれかの誘導体を含む。
【0054】
配列特異的組換えがIntにより、又はIntとXIS、FIS及び/又はIHFによって行われる方法が好ましい。配列特異的組換えがIntにより、又はIntとXIS因子により、又はIntとIHFにより、又はIntとXISとIHFによって行われる方法が最も好ましい。
配列特異的組換えが修飾Int、好ましくはInt−h又はInt−h/218によって行われる方法がさらに好ましい。この文脈では、修飾IntのXIS及び/又はIHFと一緒に使用することも本発明の意義内である。
【0055】
このアプローチにより、バクテリオファージlambdaインテグラーゼInt用の第2組換え配列を含むいずれのDNA配列も、宿主細胞の既知で、よく特徴づけかつ定義されている座中に組み込まれる。配列特異的組換えが起こった細胞を選択するため、例えば、選択マーカー遺伝子、例えばプロモーター若しくはプロモーター/エンハンサーの無い、又は該遺伝子のコーディング領域の部分だけを含む非機能性発現カセットを導入することができる。配列特異的組換えが起こった場合だけ、選択マーカー遺伝子の効率的な発現を有する完全かつ機能的な発現カセットが生成され、そして配列特異的組込みによって関心のある遺伝子を組み込んだ細胞の選択を可能にする。
【0056】
本発明の方法により、組込みの定義された部位で、例えばゲノム座中に組み込まれるDNA配列の同一性によってのみ宿主細胞と異なる生産細胞系を得ることができる。異なる細胞クローン間の遺伝的変異が少ないので、生産細胞系の開発のために、より一般的なプロセスを使用することができ、ひいてはクローン選択及び最適生産プロセスの開発の時間及び能力を軽減する。生産細胞系は、所望ポリペプチドの製造に使用できる。
【0057】
従って、本発明のさらなる局面は、真核細胞内で1つ以上の所望ポリペプチド/産物をコードする少なくとも1つの関心のある遺伝子を発現させる方法に関し、以下の工程を含む。
a)attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含む第1DNAを細胞中に導入する工程、
b)attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体含む第2DNAと、少なくとも1つの関心のある遺伝子とを細胞中に導入する工程、
c)前記細胞をバクテリオファージlambdaインテグラーゼIntと接触させる工程、
d)バクテリオファージlambdaインテグラーゼIntによる配列特異的組換えを行う工程、ここで、第2DNAが第1DNA中に組み込まれる、及び
e)前記細胞を、関心のある前記遺伝子が発現される条件下で培養する工程。
【0058】
前記第1DNA配列がattB配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattP配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattL配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attP若しくはattL配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattR配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attP若しくはattR配列又はその誘導体を含む方法が好ましい。
【0059】
本方法のさらに好ましい実施形態では、前記第2DNAが前記細胞中に導入される前に、第1DNAが宿主細胞のゲノム、人工的な微小染色体又はエピソーム要素中に、好ましくは高い転写活性を示す部位で組み込まれた。
本方法は、少なくとも1つ以上の関心のある遺伝子を発現させる方法であって、前記宿主細胞は、前記宿主細胞のゲノム中に組み込まれた1つのattB、attP、attL、若しくはattR配列又はその誘導体を含む方法にも関し、以下の工程を含む。
a)attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含むDNAと、少なくとも1つの関心のある遺伝子と前記細胞中に導入する工程、
b)前記細胞をバクテリオファージlambdaインテグラーゼIntと接触させる工程、
c)バクテリオファージlambdaインテグラーゼIntによる配列特異的組換えを行う工程、ここで、第2DNAは第1DNA中に組み込まれる、
d)前記細胞を、関心のある前記遺伝子が発現される条件下で培養する工程。
【0060】
本方法は、宿主細胞中に、この細胞の遺伝子操作によって組み込まれているattB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体によってのみならず、該ゲノムの天然に存在する組換え配列、例えば、WO01/16345で記載されているattH−部位(5’−GAAATTCTTTTTGATACTAACTTGTGT−3’;配列番号:17)又はInt若しくはそのいずれかの機能性突然変異体によって媒介される配列特異的組換えを可能にするいずれの他の組換え配列によっても実施することができる。
前記配列特異的組換えがIntにより、又はIntとXIS因子により、又はIntとIHFにより、又はIntとXISとIHFによって行われる当該方法が好ましい。前記配列特異的組換えが修飾Int、好ましくはInt−h又はInt−h/218によって行われる方法がさらに好ましい。この文脈では、修飾IntのXIS及び/又はIHFと一緒に使用することも本発明の意義内である。Int、Int−h又はInt−h/218、XIS、及び/又はIHFは、精製状態の細胞に、又は該配列特異的組換えが行われる、前記宿主細胞によって共−発現される細胞に添加することができる。
【0061】
上述した方法のさらなる実施形態は、関心のある遺伝子でコードされ、かつ前記宿主細胞内で発現されるポリペプチド/産物が培地中に分泌されている場合、該細胞又は細胞培養上清から単離される方法に関する。
前記生産細胞は、優先的に、血清の無い培地及び懸濁培養液内で、所望の遺伝子の発現及び該細胞及び/又は細胞培養上清から関心のあるタンパク質を単離するのに好ましい条件下で培養される。好ましくは、関心のあるタンパク質は、分泌ポリペプチドとして培地から回収され、又は分泌シグナル無しで発現される場合、宿主細胞ライセートから回収することができる。関心のあるタンパク質を他の組換え体タンパク質、宿主細胞タンパク質及び混入物から、関心のあるタンパク質の実質的に相同的な調製が得られるやり方で精製することが必要である。第1工程として、細胞及び/又は粒状細胞デブリが培地又はライセートから除去されることが多い。その後関心のある産物が、例えば、免疫親和性又はイオン交換カラムに基づく分画、エタノール沈降、逆相HPLC、シリカ上又はDEAEのようなカチオン交換樹脂上のSephadexクロマトグラフィーによって、混入物可溶性タンパク質、ポリペプチド及び核酸から精製される。一般に、宿主細胞によって発現される異種タンパク質の精製の仕方を当業者に教示する方法は技術的に周知である。このような方法は、例えばHarissら(1995)Protein Purification:A Practical Approach,Pickwood and Hames,des.,IRL Press及びScopes,R.(1988) Protein Purification,Springer Verlagに記載されている。従って、上述した少なくとも1つの関心のある遺伝子を発現させる方法は、さらに精製工程を加えることができ、所望ポリペプチドが、宿主細胞から又は培地中に分泌されている場合は細胞培養から精製される。
【0062】
本発明の方法は、すべての真核細胞内で行うことができる。細胞及び細胞系は、例えば、細胞培養内に存在し、限定するものではないが、酵母菌、植物、昆虫又は哺乳類細胞のような真核細胞が挙げられる。例えば、細胞は、卵母細胞、胚幹細胞、造血幹細胞又はいずれのタイプの分化細胞でもよい。真核細胞が哺乳類細胞である方法が好ましい。哺乳類細胞が、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ウシ、ヒツジ又はブタ細胞である方法が、さらに好ましい。生物薬剤の生産に好ましい細胞系又は“宿主細胞”は、ヒト、マウス、ラット、モンキー、又はげっ歯類の細胞系である。さらに好ましくは、ハムスター細胞、好ましくはBHK21、BHK TK、CHO、CHO−K1、CHO−DUKX、CHO−DUKX B1、及びCHO−DG44細胞又は該細胞系のいずれかの誘導体/子孫である。特に好ましくはCHO−DG44、CHO−DUKX、CHO−K1及びBHK21であり、なおさらに好ましくはCHO−DG44及びCHO−DUKX細胞である。さらに、マウス骨髄腫細胞、好ましくはNS0及びSp2/0細胞又は該細胞系のいずれの誘導体/子孫も生産細胞系として知られている。
【0063】
宿主細胞は、血清の無い条件下、任意に動物起源のいずれのタンパク質/ペプチドも無い培地内に定着、適合、かつ完全に培養される場合に最も好ましい。Ham’s F12(Sigma,Deisenhofen,Germany)、RPMI−1640(Sigma)、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM;Sigma)、Minimal Essential Medium(MEM;Sigma)、Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM;Sigma)、CD−CHO(Invtrogen,Carlsbad,CA)、CHO−S−SFMII(Invtrogen)、血清の無いCHO培地(Sigma)、及びタンパク質の無いCHO培地(Sigma)は、例示的な適切な栄養溶液である。いずれの培地も必要に応じ、種々の化合物で補充することができ、例としては、ホルモン及び/又は他の成長因子(インシュリン、トランスフェリン、上皮成長因子、インシュリン様成長因子のような)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸塩のような)緩衝液(HEPESのような)、ヌクレオシド(アデノシン、チミジンのような)、グルタミン、グルコース又は他の同等のエネルギー源、抗生物質、痕跡成分が挙げられる。いずれの他の必要補充も、当業者が知っている適切な濃度で含めることができる。本発明では、血清の無い培地の使用が好ましいが、適量の血清で補充した培地も宿主細胞の培養に使用することができる。選択性遺伝子を発現する遺伝子修飾細胞の成長及び選択のため、適切な選択薬剤が培地に添加される。
【0064】
本発明の“所望のタンパク質/ポリペプチド”又は“関心のあるタンパク質/ポリペプチド”は、例えば、限定するものではないが、インシュリン、インシュリン様成長因子、hGH、tPA、以下のようなサイトカイン、インターロイキン(IL)、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、インターフェロン(IFN)α、IFNβ、IFγ、IFNω又はIFNτ、TNFα及びTNFβ、TNFγのような腫瘍壊死因子(TNF)、TRAIL;G−CSF、GM−CSF、M−CSF、MCP−1及びVEGFが挙げられる。また、エリスロポイエチン又は他のいずれのホルモン成長因子及びアゴニスト若しくはアンタゴニストとして働き、及び/又は治療若しくは診断用途を有する他のいずれのポリペプチドの生産物も包含される。本発明の方法は、モノクロナール、ポリクロナール、多特異的かつ単一鎖抗体、又はその断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fc及びFc’−断片、重及び軽免疫グロブリン鎖及びその定常、可変若しくは超可変領域並びにFv−及びFd−断片のような抗体の生産にも有利に使用することができる(Chamov,S.M.ら(1999)Antibody Fusion Proteins,Wiley−Liss Inc.)。
【0065】
Fab断片(断片抗原結合(Fragment antigen−binding=Fab))は、隣接の定常領域によって一緒に保持されている両鎖の可変領域から成る。これらは、例えば従来の抗体由来のパパインによるプロテアーゼ消化によって形成されうるが、遺伝子工学によってその間に類似のFab断片も生成されうる。さらに抗体断片、F(ab’)2断片が含まれ、ペプシンによるタンパク質分解切断によって調製されうる。遺伝子工学的方法を用いると、重鎖の可変領域(VH)及び軽鎖の可変領域(VL)のみから成る短縮抗体断片を生成することができる。これらは、Fv断片(可変断片Fragment variable)=可変部の断片)と呼ばれる。これらFv−断片は、定常鎖のシステインによる2本の鎖の共有結合を欠いているので、Fv断片は安定化されることが多い。重鎖及び軽鎖の可変領域を短いペプチド断片、例えば10〜30アミノ酸、好ましくは15アミノ酸で連結すると有利である。このようにして、ペプチドリンカーで連結されたVH及びVLから成る単一ペプチド鎖が得られる。この種の抗体タンパク質は、一本鎖−Fv(scFv)として知られる。先行技術から知られるこの種のscFv−抗体タンパク質の例は、Huston C.ら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,16,pp.5879に記載されている。
【0066】
近年、多量体誘導体としてscFvを調製するための種々の戦略が発展してきた。これは、特に結合活性が高められるのみならず、薬物動態学的及び生体内分布特性が改良された組換え抗体を導くことを意図している。scFvの多量体化を達成するため、scFvは、多量体化ドメインとの融合タンパク質として調製された。多量体化ドメインは、例えば、IgG又はロイシン−ジッパードメインのようなコイルドコイル構造(ヘリックス構造)のCH3領域でよい。しかし、scFvのVH/LH領域間の相互作用を多量体化(例えば、ジア(dia)−、トリ−及びペンタ体)に使用する戦略もある。ジア体(diabody)により、当業者は二価のホモ二量体scFv誘導体を意味する。scFv分子のリンカーを5〜10アミノ酸に短縮した結果、ホモ二量体の形成となり、鎖間VH/VL−重なりが生じる。ジア体は、ジスルフィド架橋の組込みによって、さらに安定化することができる。先行技術のジア体−抗体タンパク質の例は、Perisic,O.ら(1994)Structure,2,pp.1217で見つけることができる。
【0067】
ミニ体により、当業者は二価のホモ二量体scFv誘導体を意味する。それは、免疫グロブリン、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1の、ヒンジ領域(例えば、これもまたIgG1由来)とリンカー領域を介してscFvに連結されているCH3領域を含有する融合タンパク質から成る。先行技術のミニ体−抗体の例は、Hu,S.ら(1996)Cancer Res.,56,pp.3055で見つけることができる。トリア体により、当業者は三価のホモ三量体scFv誘導体を意味する。(Kortt A.A.ら(1997) Protein Engineering,10,pp.423)。リンカー配列無しでVH−VLが直接融合された結果三量体を形成しているscFv誘導体である。
当業者は、二、三又は四価構造を有し、かつscFvから誘導されるいわゆるミニ抗体にも精通している。多量体化は、二、三又は四価のコイルドコイル構造によって達成される(Pack,P.ら(1993)Biotechnology,11,pp.1271;Lovejoy,B.ら(1993)Science,259,pp.1288;Pack,P.ら(1995)J.Mol.Biol.,246,pp.28)。本発明の好ましい実施形態では、関心のある遺伝子は、上述した所望のポリペプチドのいずれについてもコードされ、好ましくはモノクロナール抗体、その誘導体又は断片についてコードされる。
【0068】
本発明のいずれの実施形態を実施するためにも、インテグラーゼは組換え配列に上で作用しなければならない。第1及び第2組換え配列の導入前既に真核細胞内には、インテグラーゼ若しくはインテグラーゼ遺伝子及び/又は補助因子若しくは補助因子遺伝子、例えばXIS因子若しくはXIS因子遺伝子及び/又はIHF若しくはIHF遺伝子が存在しうる。それらは、第1及び第2組換え配列の導入の間、又は第1及び第2組換え配列の導入後に導入することもできる。リコンビナーゼ及び宿主因子タンパク質の精製は技術的に記述されている(Nash,H.A.(1983)Methods of Enzymology,100,pp.210;Filutowicz,M.ら(1994)Gene,147,pp.149)。それらが既知の場合、例えばInt又はCreリコンビナーゼの例について記述されている手順により、細胞抽出を用いるか或いは酵素を用いて部分的に精製することができる。精製タンパク質は、標準的な技法、例えば注射若しくは微量注射により、又はIHFについて本発明の実施例2で述べているようなリポフェクションによって細胞中に導入することができる。配列特異的組換えに使用するインテグラーゼは、好ましくは、反応が行われる細胞内で発現される。当該目的のため、インテグラーゼ遺伝子を含む第3DNA配列が細胞中に導入される。例えばattL/attRで配列特異的組換えが行われる場合、さらにXIS因子遺伝子(第4DNA配列)が細胞中に導入される。相同的組換えによって又はランダムに、該細胞の真核ゲノム又は人工的な微小染色体中に、第3及び/又は第4DNA配列が組み込まれる方法が最も好ましい。第3及び/又は第4DNA配列が、調節配列を含み、その結果インテグラーゼ遺伝子及び/又はXIS因子遺伝子の空間的及び/又は一過性発現となる方法がさらに好ましい。
【0069】
この場合、空間的発現は、Intリコンビナーゼ、XIS因子,及び/又はIHF因子が、それぞれ、細胞型特異的プロモーターにより特定の細胞型内でのみ発現され、かつこれら細胞、例えば肝臓細胞、腎臓細胞、神経細胞又は免疫系の細胞内でのみ組換えを触媒することを意味する。インテグラーゼ/XIS因子/IHF発現の調節では、特定の発生段階から又は該段階で、或いは成熟生体内の特定時点で活性なプロモーターによって、一過性発現を達成することができる。さらに、誘導性プロモーター、例えばインターフェロン又はテトラサイクリン依存型プロモーターを利用して一過性発現を達成することができる:Muller,U.(1999) Mech.Develop.,82,pp.3のレビューを参照せよ。
【0070】
本発明の方法で用いるインテグラーゼは、バクテリオファージlambdaの野生型及び修飾(突然変異を起こされた)インテグラーゼの両方でよい。野生型インテグラーゼは、補助因子、すなわちIHFと共にでなければ高効率で組換え反応を遂行することができないので、本発明の方法では修飾インテグラーゼを使用することが好ましい。本発明の方法で野生型インテグラーゼを使用する場合、組換え反応の刺激を達成するためにIHFを添加する必要がある。修飾インテグラーゼは、前記インテグラーゼが、IHF又はXIS及びFISのような他の宿主因子無しで組換え反応を遂行できるように修飾される。例えば、attL及びattR配列間の組換え反応は、宿主因子を添加せずに修飾Intで達成することができる(結果5.1と、図2C及び2D参照)。
【0071】
修飾ポリペプチドの生産及び所望活性のスクリーニングは最新技術であり、容易に実施できる;Erlich,H.(1989)PCR Technology.Stockton Press。例えば、修飾インテグラーゼについてコードする核酸配列は、インビトロ又は細菌若しくは真核細胞中への該コード化配列の導入時に、インテグラーゼ中に転写かつ翻訳されるいずれの核酸配列をも含むことを意図している。修飾インテグラーゼタンパク質コード化配列は、該コードされたポリペプチドの組換え活性を意味する生体機能的活性が維持される限り、天然に存在し(自然突然変異により)又は組換え操作した突然変異体及び変種、先端が切り取られた変形及び断片、機能性同等物、誘導体、天然に存在する若しくは野生型タンパク質の相同体及び融合体でよい。修飾リコンビナーゼが、本発明の結果5.1又はWO 01/16345の実施例3に記載されているような、基質ベクターと発現ベクターによる共−形質移入アッセイで測定した場合、野生型インテグラーゼIntの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも100%の活性を有する場合、リコンビナーゼ活性が維持される。特定のアミノ酸配列置換をインテグラーゼ又はその根底にある核酸コーディング配列に生じさせ、同様の特性を有するタンパク質を得ることができる。アミノ酸の疎水性親水性指標 (Kyte,J.ら(1982)J.Mol.Biol.,157,pp.105)を利用して機能的に等価なインテグラーゼポリペプチドを与えるアミノ酸置換は、その根底にある核酸配列上で部位特異的突然変異又は突然変異媒介ポリメラーゼ連鎖反応を行うことで調製することができる。本発明では、突然変異体又は修飾インテグラーゼが好ましく、野生型タンパク質に比し、1種以上の宿主因子と関係なく改良されたリコンビナーゼ活性/組換え効率又は組換え活性を示す。“野生型タンパク質”は、そのコードするポリペプチドの完全な、先端が切り取られていない、天然に存在する遺伝子を意味する。好ましい2つのInt突然変異体は、Int−h及びInt−h/218と呼ばれるバクテリオファージlambdaインテグラーゼである;Millerら(1980)Cell,20,pp.721;Christ,N.及びDroge,P.(1990)J.Mol.Biol.,288,pp.825。Int−hは、野生型Intと比べて174位にグルタミン酸残基の代わりにリジン残基を含む。Int−h/218は、218位にグルタミン酸残基の代わりにさらにリジン残基を含み、かつInt−h遺伝子のPCR突然変異によって生成された。前記突然変異体は、大腸菌内、真核細胞内、及びインビトロ、すなわち精製基質と共に反応管内におけるattB/attB、attP/attP、attL/attL又はattR/attR及びすべての他の可能な組合せ、例えばattP/attR、attL/attP、attL/attB、又はattR/attB又はその誘導体間の組換えを、補助因子IHF、XIS、及び/又はFIS及びネガティブ超コイル無しで触媒することができる。組換え効率の向上は、補助因子、例えばFISで達成できる。突然変異体Int−h/218は、組換え反応を高い効率で触媒するので、好ましい。
【0072】
第1反応が除去となり、かつ使用した2個の組換え配列が同一、例えばattP/Pである場合、組換え後の組換え配列は、該基質上の配列と同一であり、例えば、ここでは2個のattP配列である。しかし、2個の相手配列が異なる場合、例えば、attP/Rの場合、組換え反応はハイブリッド組換え配列を生成し、一方の配列(例えばattP)由来の半機能と、他方の配列(attR)由来の半機能を含む。半機能組換え部位は、5’又は3’のどちらかがオーバーラップを形成すると定義することができ、このオーバーラップが、各場合に半機能部位の一部とみなされる。使用する組換え配列のそれぞれのオーバーラップ領域が同一の場合、除去反応は、本発明のいずれの組換え配列によっても達成することができる。さらに、オーバーラップ領域は、相互に組換え配列の方向性、すなわち逆又は直列も表す。反応は、野生型Intでは、低効率でのみ行うことができるが、IHFの添加又はIHFの非存在下コア結合部位に加えアーム結合部位の存在が反応を刺激して効率を高める。修飾Intでは、いずれの補助因子無しでも反応を遂行できる。
【0073】
さらに、Xis因子遺伝子を含む追加のDNA配列が細胞中に導入される方法が好ましい。最も好ましい方法は、該追加のDNAが、さらにXis因子遺伝子の空間的及び/又は一過性発現を生じさせる調節DNA配列を含む。
例えば、特定の細胞型内で遺伝子の活性化/不活性化を惹起するIntによる成功した分子内組換え(反転)後、前記遺伝子は、Intの同時発現と共に誘導されるXISの空間的及び/又は一過性発現によって、後の時点で再び不活性化又は活性化されうる。
【0074】
さらに、本発明は、組換え配列又はその誘導体の使用、例えば、真核細胞内のDNAの配列特異的組換えにおいて配列番号:2で特定されるようなattPの誘導体の使用に関する。真核細胞は、その細胞内にインテグラーゼ又はXis因子を持たない生体、例えば、哺乳類の細胞凝集体内に存在しうる。前記生体を用い、その細胞内にインテグラーゼ又はXis因子を有する他の生体で育種して、その子孫の細胞内で該配列特異的組換えが遂行されるような子孫を生産することができる。従って、本発明は、真核細胞内における配列特異的組換えでのインテグラーゼ又はインテグラーゼ遺伝子及びXis因子又はXis因子遺伝子及びIHF因子又はIHF因子遺伝子の使用にも関する。さらに、本発明は、本発明の方法が実施される真核細胞及び細胞系に関し、前記細胞又は細胞系は本発明の方法の実施後に得られる。
【0075】
本発明の実施は、特に言及しない限り、本技術の当業者のスキルである細胞生物学、分子生物学、細胞培養、免疫学等の従来の技法を利用する。これら技法は、現在の文献に完全に開示されている。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning::Laboratory Manual,2ndEd.,Cold Spring Harabor Laboratory Press,Cold Spring Harabor,N.Y.(1989);AusubelらCurrent Protocols in Molecular Biology(1987更新);Brown ed.Essential Molecular Biology,IRL Press(1991),Goeddel ed.,Gene Expression Technology,Academic Press(1991);Bothwellら,eds.,Recombinamt DNA Methodology, Academic Press(1989);Kriegler,Gene Transfer and Expressin,Stockton Press(1990);McPhersonら,PCR:A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press(1991);Gaitら,Oligonucleotide Synthesis(1984);Miller & Calos eds.,Gene Transfer Vectors for Mamalian Cells(1987);Bulter ed.,Mammalian Cell Growth and Apoptosis,A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press(1995);Malemedら,eds.,Flow Cytometry and Sorting,Wiley−Liss(1990);Current Protocols in Cytometry,Jhon Wiley & Sons,Inc.(更新);Wirth & Hauser,Genetic Engineering of Animals Cells,in:Biotechnology Vol.2,Puhler ed,VCH,Weinheim 663−744;シリーズMethods of Enzymology(Academic Press Inc.),及びHarlowら,eds.,Antibodies:A Laboratory Mannual(1987)を参照せよ。
【0076】
この明細書で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、この発明が属する技術の当業者のスキルレベルを指標する。本明細書で引用されるすべての刊行物及び特許出願は、この発明が属する技術の状態をさらに完全に記述するため、その全体が参照によって本明細書に取り込まれる。一般的に上述した本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに容易に理解されるだろう。以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、どのようにしても本発明を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0077】
1.発現及び基質ベクターの製造
模擬及びInt発現ベクターpCMV、pCMVSSInt、pCMVSSInt−h、及びpCMVSSInt−h/218の作製は、以下に記載されている;Lorbach,E.ら(2000)J.Mol.Biol,296,pp.1175。Int発現は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターによって作動される。
直列反復としてattB/attP(p IR)又はattL/attR(p ER)を含む、分子内組換えアッセイで用いる基質ベクターは、pGEM(登録商標)4Z(Promega)の誘導体である。p IRは、二本鎖オリゴヌクレオチドとしてattBをClaI/EcoRI−切断pPGKneo中に挿入することで作製した。このベクターは、pPGKSSInt−hの誘導体であり、PstI/XbaIによってInt−hがネオマイシン遺伝子(neo)で置換された。CMVプロモーターと、ハイブリッドイントロンは、鋳型としてpCMVSSIntを用いたPCRで生成し、KpnI/ClaI−切断、attB含有pPGKneoベクター中にクローン化した。このCMV−attB−neo−発現カセットをPCRによってBamHI−切断pGEM(登録商標)4Z中にクローン化した。翻訳停止シグナルを欠失しているP’−アーム内にA→C置換を含むattP部位は、プライマーを用いてアセンブリPCRによって生成した。
(attP01)5’−GTCACTATCAGTCAAAATACAATCA−3’(配列番号:3)、
(attP02)5’−TGATTGTATTTTGACTGATAGTGAC−3’(配列番号:4)、
(PFP−NsiI)5’−CCAATGCATCCTCTGTTACAGGTCACTAATAC−3’(配列番号:5)、及び
(P’RP−EcoRV−NotI)5’−ATAAGAATGCGGCCGCAGATATCAGGGAGTGGGACAAAATTGAA−3’(配列番号:6)。
【0078】
pGFPattB/attPは鋳型として使用した(Lorbach,E.ら(2000)、前出)。PCR断片をNsiI及びNotIで切断し、転写終止カセットを含有する、pBS302(Gibco/BRL)から生成されたBamHI/PstI断片の3’−末端に連結した。GFP遺伝子及びポリAシグナルを、pCMVSSGFP(pCMVSS−Intの誘導体、Int−h遺伝子がPstI/XbaIによってeGFPで置換されている)を用いてPCRによりクローン化した。GFP含有PCR断片をNotI及びXbaIで切断し、BamHI/NotI−切断転写終止/attP断片と一緒に、既にCMVプロモーター、attB及びneo発現カセットを含有するBamHI/XbaI−切断ベクター中に連結した。p ERは、attLがpGFPattL/attR(Lorbach,E.ら(2000)、前出)を鋳型として用いるPCRによってattLが生成されたこと以外、pλIRのように作製し、かつClaI/EcoRI−切断pPGKneo中にクローン化した。attR部位は、鋳型としてpGFPattL/attRを用いるPCRにより生産し、産物をNsiI及びNotIで切断した。
【0079】
分子間組換えアッセイ用の基質ベクターは、異なる付着部位の前にCMVプロモーターを含む:pCMVattPmutは、そのP−アーム内に3個のG→C置換を含む。これらの変化は、組換え後のGFP発現を妨げるであろうATG開始コドンを除去するために必要だった。置換は、attPのタンパク質結合部位の外側であり、アセンブリPCRで誘導された。まず、2つのオーバーラップPCR産物が生成され、1つはプライマー対attp−ATC−1/attP−2を有し、1つはattP−ATC−3/attP−4を有していた。pGFPattB/attPを鋳型として使用した。PCR産物をゲル−精製し、プライマーattP−PstI及びattP−XbaIによるPCR用の鋳型として用いた。その結果の産物をPstI及びXbaIで消化させ、pCMVSSInt中にクローン化した。アセンブリPCR用のプライマー配列は以下の通りである。
(attP−ATC−1)5’−TTTGGATAAAAAACAGACTAGATAATACTGTAAAACACAAGATATGCAGTCACTA−3’(配列番号:7)、
(attP−2)5’−TAACGCTTACAATTTACGCGT−3’(配列番号:8)、
(attP−ATC−3)5’−CTGCATATCTTGTGTTTTACAGTATTATCTAGTCTGTTTTTTATCCAAAATCTAA−3’(配列番号:9)、
(attP−4)5’−CTGGACGTAGCCTTCGGGCATGGC−3’(配列番号:10)、
(attP−PsiI)5’−GACTGCTGCAGCRTCTGTTACAGGTCAC−3’(配列番号:11)、
(attP−XbaI)5’−GACTGTCTAGAGAAATCAAATAATGAT−3’(配列番号:12)。
【0080】
pCMVattBは、attBを二本鎖オリゴヌクレオチドとしてPsiI/XbaI−切断pCMVattPmut中に挿入することで生成した。pCMVattLは、attL用鋳型としてp ERを用いてPCRにより生成し、PstI/XbaI−切断pCMVattPmut中に導入した。
転写終止シグナルと、プロモーター無しのGFP遺伝子の前に位置するatt部位とを含むベクターは、以下のように作製した:まずpTKHyg(Clontech)からのハイグロマイシンの一部をAvaI及びNdeIを用いて欠失させることでpWSattBGFPを生成した。このベクターバックボーンは、付着末端がクレノウポリメラーゼで平滑にされた後、連結された。PCRで生成されたattB−GFP断片がMfeI及びHindIII中にクローン化され、それによってattBの新しいNheI部位5’が生じた。最後に、EcoRI及びNheIによる制限を通じて転写終止配列が挿入された。pWSattRGFPは、p ER由来のBamHI/NotI転写終止−attR断片を単離することによって生成され、同一酵素で切断されたpWSattBGFP中に挿入された。pWSattPGFPは、鋳型としてpGFPattP/attBを用いてPCRにより生成され、EcoRI/NotIで切断され、attBと置換しているpWSattBGFP中に挿入された。プラスミドは、大腸菌株XL1−Blueから親和性クロマトグラフィー(Qiagen)によって単離された。関連遺伝子要素のヌクレオチド組成は、蛍光に基づいた373Aシステム(Applied Biosystems)を用いたDNA配列決定によって検証した。
【0081】
2.細胞培養、組換えアッセイ、及びフローサイトメトリー
HeLa細胞を、10%のウシ胎児血清、ストレプトマイシン[0,1mg/ml]及びペニシリン[100U/ml]で補充したダルベッコ(Dulbecco)の変性イーグル培地(DMEM)内で培養した。形質移入前に細胞を2回継代接種した。
典型的な組換えアッセイは以下のように行った。細胞を収集し、PBSで洗浄し、L−グルタミン及びフェノールレッド(Life Technologies)の無いRPMI 1640中に再懸濁させた。総量60μg、モル比1:1の発現及び基質ベクターを約1×107個の細胞中に300V及び960μFで遺伝子パルサー(Bio−Rad)を用いて導入した。エレクトロポレーション後、細胞を10cm皿上に適宜希釈して塗布した。形質移入後24、48、72時間で単一細胞懸濁液を調製した。7−アミノ−アクチノマイシンD(Sigma)で染色することで死滅細胞を該分析から排除し、細胞をFACSキャリバー(FACScalibur)(Becton Dickinson)によって解析した。FACSデータは、CellQuestTMソフトウェアで解析した。分子間組換えアッセイの形質移入効率は、各実験について40μgのpCMVを20μgのpEGFP−C1(Clontech)と一緒に共−形質移入することで決定し;分子内組換えの形質移入効率は、30μgのpCMVと30μgのpEGFP−C1で決定した。
【0082】
精製IHFを含む実験は、まず30μgのInt発現ベクターを約6×106個の細胞に、上述したようなエレクトロポレーションによって導入することで行った。3〜4時間後、約1×105個の細胞を、分子内組換えでは2μgの基質ベクターにより、又は分子間組換えではモル比1:1で総量2μgの基質ベクターによって形質移入した。基質を、室温で2μgの精製IHF(Lange−Gustafson BJ,Nash HA.,Int−h、バクテリオファージlambdaの部位特異的組換えに関与する変異タンパク質の精製及び特性,J.Biol.Chem. 1984年10月25日;259(20):12724−32)と共に低塩緩衝液(50mM NaCl、10mMトリス−HCl、pH8.0、1mM EDTA)内で少なくとも30分間予備インキュベートした。IHF−DNA複合体の形質移入は、FuGene(Boehringer Mannheim)で行い、効率は常に80%の範囲内だった。上述したように、さらに48時間後フローサイトメトリーで細胞を解析した。
【0083】
3.結果
3.1 分子内及び分子間組換え反応の動力学
我々は以前の研究で、突然変異体Intが大腸菌及びヒト細胞内で天然のアクセサリー因子の非存在下で、分子内組込み及び除去組換えを触媒することを示した(Christ,N.ら(1999),前出;Lorbach,E.ら(2000),前出)。しかし、哺乳類細胞内のエピソームDNAセグメントの相互作用に関する興味深い問題は、2つの組換え部位が異なるDNA分子上にトランス状態で配置されている場合、突然変異体Intの分子内組換え反応の遂行能力に関係する。そこで、我々は、まず分子内−及び分子間組込み組換え反応を比較した。
【0084】
転写終止シグナルに隣接する直列反復としてattBとattPを含む基質で分子内組換えを試験した。この組換えカセットは、順次CMVプロモーター及びGFPのコーディング領域に隣接する。attBとattPとの組換えは、ハイブリッド部位attLとattRを生成し、結局終止シグナルの除去となる。その後のGFP遺伝子の発現が組換えのリポーターとして働く(図2A、上部)。
Int、Int−h、又はInt−h/218のどれかの発現ベクターは、基質ベクターと一緒にHeLa細胞中に共−形質移入された。発現ベクターバックボーン(模擬)をネガティブ対照として用いた。各実験で独立的に決定される形質移入効率は、95〜98%(データ示さず)の範囲だった。3実験からのFACS解析は、両突然変異体Intが効率的に組換えを触媒し、いくつかの実験では約30%GFP−発現細胞となることを示す(図2A、下部)。組換え産物のヌクレオチド配列は、PCR断片のDNA配列決定によって間接的に決定され、突然変異体Intで触媒される鎖−転移−反応が予期したハイブリッドatt部位(データ示さず)を生成することを確証した。
【0085】
二重突然変異体Int−h/218がInt−hより活性であることは明かであり、野生型Intはほとんど不活性だった。形質移入後48時間でGFP−発現細胞のフラクションが増加し、その後の24時間は安定したままだった。反応の時間経過は、組換え事象の大多数が最初の24時間以内で起こったにちがいないことをも示している。これは、HeLa細胞内におけるInt−h/218発現の時間経過とよく相関している(データ示さず)。GFP−発現細胞のフラクションが、分子内でなく分子間組込み組換えの結果だったという可能性を排除することはできないが、データセットは、分子間組換えの解析についての参照として使用できる。
【0086】
attB及びattPを別個のプラスミド上に位置づけることで、分子間組込み組換えを解析した。組換えは、CMVプロモーターをGFP遺伝子の上流位に転位置した(図2B、上部)。それゆえに、attBとattPとの間の分子間組換えのみが、GFP−発現細胞を生成した。2個の基質ベクターのInt発現ベクターとの共−形質移入後のFACS解析により、分子内組換えの基質で生成された結果に匹敵する結果を得た(図2B、下部)。この場合もやはり、組換え事象の大多数が形質移入後最初の24時間以内で起こったにちがいなく、Int−h/218がInt−hより活性だった。野生型Intは、ごく少量だけのGFP−発現フラクションを生成した。これら結果は、24〜72時間の時間経過にわたり、突然変異体Intによる分子間組込み組換えは、少なくとも対応する分子内反応と同程度の効率であることを示している。
同じ実験戦略を利用して分子内−及び分子間除去(attL×attR)組換え経路を比較した。結果は、この場合もやはり突然変異体Intによる分子間組換えが分子内組換えと同程度の効率であることを示した(図2C及びD)。しかし、除去組換え反応の効率は、組込み組換えと比べて僅かに低減した。野生型Intによる組換えは、やはりほとんで検出できなかった。
【0087】
3.2 att内のDNAアーム結合部位は必要ないが、組換えを刺激する。
これまでの結果は、突然変異体Intがエピソーム基質上の組込み及び除去組換えを相当数の形質移入細胞で触媒することを示した。対照的に、野生型Intの組換え活性は、バックグラウンドをかろうじて超えて検出された。野生型Intによる除去組換えは、タンパク質補助因子IHF及びXISの存在に依存するが、負のDNAの超コイルを必要としないので、この結果は、これら補助因子の真核対応物がヒト細胞内に欠けていることを示している。さらに、エピソーム基質は位相幾何学的に形質移入後すぐに弛緩されることが分かっている(Schwikardiら(2000)FEBSLetters,471,pp.147)。従って、突然変異体Intは、attPで構築されるインタソーム(intasome)のような定義された核タンパク質複合体を形成せずに組換えを達成するようである。これは、組換えにおけるDNAアーム結合部位の機能的役割の問題を提起する。それらは、これまでに利用した相手att部位の少なくとも一方に存在した。
【0088】
この問題を研究するため、種々の組合せでattB又はattPを含む基質ベクターの対による分子間組換えを使用した(図3A)。組換えの結果生じたGFP−発現細胞のフラクションは、Int発現ベクターとの共−形質移入後48時間でFACSにより決定した。形質移入効率は、常に90%以上だった(データ示さず)。3実験の結果は、attP対間の分子間組換えはattBとattPとの間の組換えと同程度の効率だった(図3B)。しかし、Int−h/218だけが、基質としてattB対を有意な程度に利用した。この反応の効率は、attPとattP又はattBとattPとの間の反応に比し、平均4倍減少した。それゆえ、2個のattB間の組換えの結果生じたGFP−発現細胞のフラクションは、4〜5%のレベルに低下した。これら結果は、att部位におけるアーム型配列の存在は、Int−h/218による組換えには必要ないが、反応を有意に刺激することを示している。この刺激効果は、Int−hを使用した場合、さらに明白である(約8倍)。さらに、野生型Intで観察された残りの組換え活性は、アーム結合部位の存在に非常に依存するようである。
【0089】
3.3 野生型Intによる組換えは、形質移入されたIHFタンパク質によって刺激される。
野生型Intによってインビトロ及び大腸菌内で触媒される効率的な組込み組換えは、タンパク質補助因子IHF及びattPの超コイル化を必要とする。哺乳類細胞では、どちらの補助因子も明らかに欠いていることが、超コイル基質と共に予備インキュベートした精製IHFがHeLa細胞中に共−導入される場合、野生型Intの残りの組換え活性が増加するかどうかを研究するきっかけとなった。この可能性を調べるため、まず野生型Int又はInt−hのどちらかの発現ベクターを導入した。エレクトロポレーション後3〜4時間で、精製IHFと共に、又は無しで分子内−又は分子間組換え用基質をインキュベートした。タンパク質−DNA混合物及びタンパク質の無い対照試料をFugeneによって形質移入した(図4A)。さらに48時間後、GFP−発現細胞のフラクションを比較した。
【0090】
野生型Intによる分子内組換えは、IHFの存在により平均して5倍まで刺激された。GFP−ポジティブ細胞のフラクションは増加し、例えば、一実験ではIHFの非存在下で約1%からIHFの存在下で6%に増加した。分子間組換えに及ぼす刺激効果も有意であるが、あまり目立たなかった(約3倍)。形質移入後48時間で、Int−hの活性は影響されないので、刺激は野生型に特異的だった。重要なことに、対照は、形質移入効率もIHFタンパク質の存在によって影響されないことを示した(データ示さず)。
【0091】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】組換え反応、すなわち野生型インテグラーゼIntで触媒される組込み及び除去の概略的な説明図である。
【図2】分子内及び分子間組換え反応を示す。
【図3】att部位内のIntアーム結合DNA配列の存在が分子間組換えを刺激することを示す。
【図4】精製IHFタンパク質が野生型Intによる分子内−及び分子間組込み的組換えを刺激することを示す。
Claims (23)
- 真核細胞内におけるDNAの配列特異的組換えの方法であって、以下の工程、
a)第1attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含むDNAを細胞中に導入する工程、
b)第2attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含むDNAを細胞中に導入する工程であって、前記第1DNA配列がattB配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattP配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattL配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attP若しくはattL配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattR配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attP若しくはattR配列又はその誘導体を含むことを特徴とする工程、及び
c)バクテリオファージlambdaインテグラーゼIntによって配列特異的組換えを行う工程、
を含む方法。 - 人工的な微小染色体又は前記真核細胞のゲノム内に請求項1記載の第1att配列又はその誘導体を組み込んだ、真核細胞内におけるDNAの配列特異的組換えの方法であって、請求項1に記載の工程b)及びc)を含む方法。
- 前記第1att配列又はその誘導体が、前記真核細胞のゲノム内に天然に存在するか、或いは前もって導入されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 真核細胞内で、1種以上の所望のポリペプチド/産物をコードする関心のある少なくとも1つの遺伝子を発現させる方法であって、以下の工程、
a)attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含む第1DNAを細胞中に導入する工程、
b)attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含む第2DNAと、関心のある少なくとも1つの遺伝子を細胞中に導入する工程、
c)前記細胞をバクテリオファージlambdaインテグラーゼIntと接触させる工程、
d)バクテリオファージlambdaインテグラーゼIntによる配列特異的組換えを行う工程であって、前記第2DNAが前記第1DNA中に組み込まれることを特徴とする工程、及び
e)前記細胞を、関心のある前記遺伝子が発現される条件下で培養する工程、
を含む方法。 - 前記第1DNA配列がattB配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattP配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattL配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attP若しくはattL配列又はその誘導体を含み、或いは前記第1DNA配列がattR配列又はその誘導体を含む場合、前記第2配列がattB、attP若しくはattR配列又はその誘導体を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 前記第2DNAが前記細胞中に導入される前に、前記第1DNAが宿主細胞のゲノム、人工的な微小染色体又はエピソーム要素中に組み込まれていることを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
- 前記第1DNAが宿主細胞ゲノム中に組み込まれていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 1種以上の所望のポリペプチド/産物をコードする関心のある少なくとも1つの遺伝子を、バクテリオファージlambda Int又はその機能性突然変異体によって媒介される配列特異的組換えを可能にする少なくとも1つの天然に存在する組換え配列を有する真核細胞内で発現させる方法であって、以下の工程、
a)attB、attP、attL若しくはattR配列又はその誘導体を含むDNAと、少なくとも1つの関心のある遺伝子を前記細胞中に導入する工程、
b)前記細胞をバクテリオファージlambdaインテグラーゼIntと接触させる工程、
c)前記細胞内の天然に存在する前記組換え配列と、前記細胞中に導入された前記DNAとの間で、バクテリオファージlambdaインテグラーゼIntによる配列特異的組換えを行う工程、及び
d)前記細胞を、関心のある前記遺伝子が発現される条件下で培養する工程、
を含む方法。 - 前記天然に存在する配列が、attHであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
- 前記所望のポリペプチド/産物が、宿主細胞又は細胞培地から単離されることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の方法。
- attP、attB、attL若しくはattRの前記誘導体が、Int用のアーム結合部位の1コピー又は1より多くのコピーを含むか、或いは前記誘導体が、コアInt結合部位の1コピー又は1より多くのコピーを含むか、或いは前記誘導体が、Int用アーム結合部位の1コピー又は1より多くのコピーと、コアInt結合部位の1コピー又は1より多くのコピーとの組合せを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- attP、attB、attL若しくはattRの前記誘導体が、コアInt結合部位の1コピー又は1より多くのコピーから成るか、或いは前記誘導体が、Int用アーム結合部位の1コピー又は1より多くのコピーと、コアInt結合部位の1コピー又は1より多くのコピーとの組合せから成ることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記コア結合部位が、9個の相接塩基対から成り、かつ、野生型att部位内の、B−配列ではヌクレオチド配列5’−CTGCTTTTT−3’から成り、B’−配列ではヌクレオチド配列5’−CAAGTTAGT−3’(逆相補性鎖)から成り、C−配列ではヌクレオチド配列5’−CAGCTTTTT−3’(逆相補性鎖)から成り、かつC’−配列ではヌクレオチド配列5’−CAACTTAGT−3’(逆相補性鎖)から成るDNA配列、又は機能性ヌクレオチド置換を有する前記配列に関係することを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
- 前記配列特異的組換えが、Intと、XIS、FIS及び/又はIHFから選択される1種以上の補助因子とによって行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 前記配列特異的組換えが、修飾Int、好ましくはInt−h又はInt−h/218によって行われることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
- Int、Int−h又はInt−h/218、XIS、FIS及び/又はIHFが、精製形態で細胞に添加されるか、或いは前記宿主細胞によって共−発現され、前記配列特異的組換えが行われることを特徴とする請求項14に記載の方法。
- さらに、Int遺伝子、又はInt遺伝子と、XIS遺伝子、FIS遺伝子及び/又はIHF遺伝子から選択される1種以上の補助因子とを含む第3又は第3及び第4DNA配列が、それぞれ前記細胞中に導入されることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
- 配列特異的組換えが修飾Int、好ましくはInt−h又はInt−h/218によって行われる場合、XIS、FIS、IHFのどれも必要ないことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 前記第1及び/又は第2組換え配列が、さらに、関心のあるポリペプチドの核酸コーディングを含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
- 前記関心のあるポリペプチドが、抗体、ホルモン又は成長因子であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
- 前記宿主細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 前記哺乳類細胞がげっ歯類細胞、好ましくはマウス又はハムスター細胞であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
- 前記ハムスター細胞がBHK又CHO細胞であり、かつ前記マウス細胞がマウス骨髄腫細胞、好ましくはNSO及びSp2/0細胞であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
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