JP2013501732A - ファーミキューテス門に属する細菌による感染症の治療及び免疫学的診断のための、PBP2aまたはそれに相同な配列を持つタンパク質に対するモノクローナル抗体 - Google Patents

ファーミキューテス門に属する細菌による感染症の治療及び免疫学的診断のための、PBP2aまたはそれに相同な配列を持つタンパク質に対するモノクローナル抗体 Download PDF

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本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、スタフィロコッカス・シウリ、エンテロコッカス属種などの病原菌から産生されたPBP2aタンパク質またはPBP2aに相同な配列を持つ他のタンパク質を認識してそれに結合することができるモノクローナル抗体に関する。また、本発明は、βラクタム系抗菌薬に対する耐性を検出するための相補的な免疫学的診断における、PBP2aまたはそれに相同な配列を持つ他のタンパク質を認識してそれに結合することができるモノクローナル抗体の使用に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、スタフィロコッカス・シウリ、エンテロコッカス属種などの病原菌から産生されたPBP2aまたはそれに相同な配列を持つ他のタンパク質を認識してそれに結合することができるモノクローナル抗体に関する。
また、本発明は、βラクタム系抗菌薬に対する耐性を検出するための相補的な免疫学的診断における、PBP2aまたはそれに相同な配列を持つ他のタンパク質を認識してそれに結合することができるモノクローナル抗体の使用に関する。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によって引き起こされた感染症は、臨床医にとって大きな関心事であり、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(1)によって引き起こされた感染症よりも高い罹患率及び死亡率を示す。さらに、MRSAによる感染症は入院期間が長くなり抗菌剤の費用も嵩むので、MRSAに感染した患者の治療コストは高くなる(1)。
MRSAによって引き起こされた感染症の治療のために最初に選択された抗菌剤はバンコマイシンであった。しかし、米国及びオーストラリアの社会におけるMRSA株の分離の増加は、日本、米国(5)及びブラジル(6)においてバンコマイシンに対して中程度の耐性を有するMRSA株が確認されたことと共に、現在の状況をより厳しいものにしている。2004年になされた、バンコマイシンに対して完全に耐性を有するMRSA株についての報告(7)は、医療・化学の分野に深刻な懸念を引き起こした。MRSAは、現在入手可能な全ての薬剤に対して耐性を有する病原菌である、恐ろしい「スーパーバグまたはスーパー細菌」となる強力な候補となっている。
通常、院内感染におけるMRSA罹患率(MRSAによって引き起こされた全ての感染症の割合)は、この10年間では漸増傾向にある。Jarvis他によって行われた研究では、米国の337の病院の1268のICU(集中治療室)におけるICU内でのMRSAによる感染症の症例数は660から2184へ増加し、罹患率は35%から64.45へ増加している(8)。日本では、MRSAによって引き起こされた院内感染(HI)の罹患率は、60〜90%の深刻な値を示している(9)。米国で行われた研究では、MRSAによる院内感染(HI)の罹患率は、1974年には2%だったのが1997年には50%となり(10, 11)、米国の一部の病院では、HIの80%以上がMRSAによって引き起こされている(12)。英国では、MRSAによる院内感染の罹患率は、1989年から1995年にかけて1.55から15.2%へ増加しており、現在(2004)では41.5%と推定される(13)。
高い罹患率に加えて、特に教育実習病院及び大型病院では、MRSAは主要な病原菌起因の伝染病と見なされており、ブラジルの病院でアウトブレイクしている(14)。1986年には、サンパウロの大学病院で患者から分離された病院起源の黄色ブドウ球菌株の50%以上がメチシリンに対して耐性を有しており、1993には、パウリスタ大学医学部(Paulista Medicine School)の小児科病院でのMRSAの発症率は70%であった(15)。Resende他によってベロオリゾンテ(Belo Horizonte)の病院で行われた研究(16)では、MRSAの罹患率が71%であることが指摘されている。
MRSA株は、例えばPBP2aなどのβラクタムクラスの抗菌剤に対する親和性が非常に低いペニシリン結合タンパク質を産出する(17)。遺伝子mecAによりコード化されたこの酵素の存在下では、βラクタム系抗菌薬が存在していても、細菌はペプチドグリカンを合成することができる。前記酵素は、イヌの正常フローラに存在する細菌であるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌及びスタフィロコッカス・シウリにも見ることができる。院内MRSA株は、βラクタム系抗菌薬に対する耐性に加えて、第1の選択治療として依然としてグリコペプチド(バンコマイシン、テイコプラニン)が使用される他の利用可能な抗菌剤クラスの大部分に対して耐性を示す。
PBP2aに対してDNAワクチン使用した2つの研究によれば、このタンパク質は免疫原性であり、得られた免疫応答は、マウスモデルで実施した分析では、MRSAに対する防御能を与えることができることが報告されている(18, 19)。しかし、院内感染では、患者の大部分は、免疫抑制されていることが知られている(20)。この場合、細菌感染の制御時間に起因して、ワクチンは防御抗体を生成することができない。
PBP2a免疫原性
GoffinとGhuysenの分類によれば、PBP2aはクラスIIマルチモジュラー酵素である(40)。76キロダルトンのこの酵素は、膜結合領域と、非ペプチド転移酵素領域と、ペプチド転移酵素領域とから構成され、細菌性ペプチド転移反応に関与する4−アミノ酸活性コア(STQK)を含んでいる(20 bis Ryfell, 1990)。
PBP2aに対するDNAワクチンについての最新の研究では、Ohwada他の研究では3〜4回、Senna他の研究では1000回全身感染させて免疫を与えた動物において細菌が減少することが報告されている(腎臓能の定量化)。上記の研究の著者は、遺伝子mecAの全配列(膜固定領域を除く)とペプチド転移酵素領域の内部フラグメントをそれぞれ使用した。
しかし、上述の方法では、ワクチンは、細菌感染の制御時間に起因して、防御抗体を生成することができない。従って、MRSAによる感染の場合は、抗PBP2aモノクローナル抗体の投与が、前記感染を治療するための最も適切な治療である。
WO 1999/041285 A1号公報
本発明の主な目的は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、スタフィロコッカス・シウリ、エンテロコッカス属種などの病原菌から産生されたPBP2aタンパク質(配列番号1)またはPBP2aに相同な配列を持つ他のタンパク質を認識してそれに結合することができるモノクローナル抗体を提供することである。
本発明の他の目的は、βラクタム系抗菌薬に対する耐性を検出するための相補的な免疫学的診断における、PBP2aまたはそれに相同な配列を持つ他のタンパク質を認識してそれに結合することができるモノクローナル抗体の使用である。
本発明のモノクローナル抗体は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16及び17の配列で表される。
抗PBP2a抗体を産生するための免疫動物の血清の免疫酵素試験(ELISA)を示す。 生サンプル及び精製後サンプルを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分析した結果を示す。 抗PBP2aモノクローナル抗体を含む上清に対するMRSA及びMSSA溶解物の免疫ブロッティング試験を示す。 抗PBP2aモノクローナル抗体で培養し、フィコエリトリン(PE)で標識したMRSA(CEB)及びMSSA細菌のフローサイトメトリーの結果を示す。 異なるMRSA株の接種材料に対する、抗PBP2a精製モノクローナル抗体及びバンコマイシンによって与えられたインビトロでの防御能試験(MIC−最小阻止濃度)を示す。 抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物及び非処理動物に亜致死量のMRSA CEB株を全身感染させ、それぞれの動物の腎臓感染を定量化した結果を示す。 抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物及び非処理動物に亜致死量のMRSAイベリア型株(ヨーロッパ流行型クローン)を全身感染させ、それぞれの動物の腎臓感染を定量化した結果を示す。 抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物及び非処理動物に亜致死量のWB79 CA−MRSA株(ブラジル市中獲得型株)を全身感染させ、それぞれの動物の腎臓感染を定量化した結果を示す。 致死量の細菌(MRSA CEB)に感染させた後の処理(感染防御)動物及び非処理(対照)動物の生存曲線を示す。 致死量の細菌(イベリア型MRSA)に感染させた後の処理(感染防御)動物及び非処理(対照)動物の生存曲線を示す。 致死量の細菌(WB79 CA−MRSA)に感染させた後の処理(感染防御)動物及び非処理(対照)動物の生存曲線を示す。 細菌(MRSA CEB)に感染させた後の、抗PBP2aモノクローナル抗体、バンコマイシン及び、抗体+バンコマイシンの組合せで処理した動物及び非処理動物の腎臓における細菌の定量を示す。 抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物の腎臓における細菌の定量を示す。 組換えPBP2a(抗原)とモノクローナル抗体クローン38との相互作用を示す。 組換えPBP2a(抗原)とモノクローナル抗体クローン10との相互作用を示す。 FITCで標識された抗PBP2a抗体の存在下でのMRSAサンプルのフローサイトメトリーによる第2の解析のグラフである。 VREエンテロコッカス株に対する、抗体によって与えられたインビトロ防御能の結果を示す。 腹腔内感染を決定するためのLD50及び致死量を示す。 全身感染に対する、腸球菌由来の抗PBP2a及びPBP5モノクローナル抗体のインビトロ防御能の有効性結果を示す。 MRSAイベリア型株(ヨーロッパ流行型クローン)を全身感染させ、それぞれの動物の腎臓感染を定量化した結果を示す。
抗菌剤に対する多耐性を有する細菌による感染症の発生は、驚くべき増加を示している。MRSAによって引き起こされた院内感染の罹患率は世界中で増加しており、高い死亡率を示し、抗菌剤の集中的な使用及び患者の長期間の入院に起因して高いコストを生じさせている(24)。新規な有効な薬剤が市場にほとんど現れないことにより、化学療法に基づく治療はすでに限界に達している(25)。
これに関連して、有望な代替案と思われる受動免疫療法は、従来の化学療法と比較して様々な有利な特徴を有する:とりわけ、低い毒性、長い血漿半減期(このことにより投与量が減少するので治療が容易になり、最終的な治療コストも低くなる)、及び、特に本発明のモノクローナル抗体は、Paul Ehrlichにより推奨されている選択的毒性(薬物が関連する病原菌を選択的に除去する)という有利な特徴を有する(25a)。この最後の特徴は、多耐性細菌の出現をもたらす、広域スペクトル抗菌剤により果たされるいわゆる選択圧力を防止するのに大変役立つ(26)。
本発明のモノクローナル抗体を開発するために、本願発明者は、マウスモデルにDNAワクチンを用いた予備研究(18、19、20)及び免疫構造分子分析(immunostructural molecule analyses)に基づいて、標的としてPBP2aを選択した。PBP2aの構造は2002年に解明されており(29)、PDB(タンパク質 Data Bank)にlwmrのコードで保存されている。
他のアプローチとは異なり、本願発明者は、ペプチド転移酵素ドメインにおいて酵素活性コア(SxxK)の側面に位置する、76アミノ酸を有する分子の内部領域について研究した。エピトープ同定解析分析を前記分子及び別のクラスIICHMアレル(Tepitopeプログラム)に対するそれらの提示について行い、その後、前記分子でのそれらの位置を確認した(SPDB-Viewerプログラム)。このアプローチは、抗体が、天然分子の標的にアクセスする能力を評価することを可能にする。
このコンピュータ分析の結果は、酵素活性コアの近傍に位置し、クラスIICHMアレルによる優れた認識度を有し、かつPBP2aの表面に位置するエピトープの存在を示す(データは示さない)。
これらのコンピュータによるシミュレーションは、標的認識試験(免疫ブロッティング、フローサイトメトリー)の実施により確認され、PBP2a領域に対する抗体結合は、高い防御能を与えることが可能であることを示し、インビトロ及びインビボ試験の実施によって得られた結果により実証された。前記抗体は76個のアミノ酸断片から作製されており、Ohwada及びSennaの研究によって前に示されたような、完全PBP2aによる免疫付与により作製された抗体よりも高い防御能を与えることが示され、本願発明者からの結果によって確認された。
MRSAによって引き起こされた感染症の疫学は、全世界の病院におけるアウトブレイク及び流行に関与する優勢クローンタイプの存在を示す。そのようなクローンは、非流行性MRSA株よりも高いコロニー形成能力及び病原性を示す(30)。
得られた結果を実証するために、MRSAにより引き起こされたほとんどの感染症(特に病院における感染症)の代表例である、様々なMASAクローン(流行型クローン)について研究した。
CEB株(ブラジル流行型クローン)は、ブラジルの病院においてMASAによって引き起こされたほとんどの感染症に関与しており(31)、南アメリカの他の国々やポルトガル、チェコスロバキアでも確認されている(34)。ヨーロッパ流行型クローン(イベリア型MASA)がヨーロッパの国々及び米国において発見されている(35)。
MASAによって引き起こされた市中感染症の症例が増加しているため、ブラジルで分離された株(WB79 CA-MRSA)が最近の試験に含められた。これらの試験は、院内MRSA株の特徴とは異なる高い病原性(パントン・バレンタイン・ロイコシジン(Panton-Valentine leukocidin)の存在)及び抗菌剤耐性を有するという、病院で発見されたものとは異なる特徴を示す(36)。近年、男性同性愛者の集団におけるCA−MRSAによる感染症のアウトブレイクが米国で確認されている(37)。この時点から、MRSAによって引き起こされた感染症は、STD(性感染症)としての面も持つと言える。
抗PBP2a抗体の投与によって付与された防御能は、様々な被験クローンの全てに対して有効性を示し、あらゆるMRSA型によって引き起こされた感染症(市中型または病院型)に対して適用性があることを信じさせる。
本発明のモノクローナル抗体のいくつかの重要な特徴について述べる。
(i)インビトロでの防御結果は、関連する作用機序(分子活性コアに近い領域の遮断)が、細菌の成長及び増殖を阻害するのに十分であることを信じさせる。同様に、βラクラム系抗生物質については、この機序は時間依存性であり、細菌を増加段階にある最近を薬物作用の標的に曝す必要がある。
(ii)この特徴は、長い血中半減期を示す抗体の薬物速度論的特性によるものである(38)。抗生物質治療と比較して、このことは、より少ない投与回数で患者に対する治療効果を示し、結果として、最終コストがより低くなることを意味する。これらのアイデアは、バンコマイシンを用いた防御能比較分析の実施によって確認された(以下参照)。
(iii)インビトロでの細菌の成長の抑制もまた、本発明の抗体が、オプソニン作用及び補体活性化などの従来の補助的な抗原‐抗体反応機構を必要としないことを意味する。ほとんどの院内感染が免疫抑制状態の患者において発生することを考えると、本発明のモノクローナル抗体の特長は極めて重要である。
(iv)黄色ブドウ球菌の表面にプロテインAが存在することが知られている。この分子は、免疫グロブリンのFc領域に対して結合し、免疫システムのオプソニン作用を阻害するという特徴を有する(38)。本願発明者による試験から得られた結果により、投与された抗体集団は、PBP2a阻害を妨げることなく、細菌表面に存在するプロテインAを飽和させることができると考えられる。
MRSAによって引き起こされた全身感染症は、グリコペプチド、とりわけバンコマイシンを用いて治療されてきた。しかし、前記薬剤は、免疫毒性、聴器毒性、腎毒性及び一過性好中球減少症などの様々な副作用をもたらしたり、長期間の投与を必要としたり、高い最終治療コストをもたらしたりする。
マウス感染モデルを使用することにより、バンコマイシンによる治療、本発明のモノクローナル抗体による治療、及び、バンコマイシンと本発明のモノクローナル抗体の2つの薬剤による治療を互いに比較することが可能となる。得られた結果は、本発明のモノクローナル抗体の1回の投与は、バンコマイシンの5回の投与と同じかまたはそれよりも高い作用を示した。まや、バンコマイシンと本発明のモノクローナル抗体の同時投与は、別々に投与するよりも、殺菌においてより効果的であった。バンコマイシン及び本発明のモノクローナル抗体の投与により、本発明のモノクローナル抗体による治療コストがより低くなったり、または、深刻な状態の患者の回復がより効果的になることが判明したので、これらのデータは非常に重要である。
MRSAによる感染症を治療するための抗PBP2aモノクローナル抗体の使用に加えて、本発明は以下の用途も考慮する。
(i)本発明の抗PBP2aモノクローナル抗体による、エンテロコッカス属種株のPBP5に近い分子量を有するタンパク質の認識結果は、本発明の抗体の投与によって前記病原菌に対する防御応答を得ることが可能であることを示す。PBP5はPBP2aと相同性を有しており、両方ともβラクタム系抗菌薬に対する親和性が低いクラスB多調節PBPとして分類される(40)。腸球菌は深刻な院内感染を引き起こす細菌であり、高程度の内因性を有し、抗菌剤に対する耐性を獲得する。バンコマイシン耐性株(VRE)は、グリコペプチドに対する耐性を有する遺伝子の保有宿主の役割を果たし、他の病原菌へ移動することができる(41)。
(ii)本発明の抗体は、免疫診断試験によるPBP2a同定に用いることができる。例えば、本発明の抗体に結合したラテックス粒子の凝集に基づく免疫試験を行うことにより、数時間で、全てのβラクラム系抗生物質に対する耐性の予測結果を得ることができる。抗菌剤に対する感受性についての従来の試験(例えば、抗生物質感受性試験)では、結果が出るまでに12〜24時間かかった。
(iii)本発明のモノクローナル抗体が、慢性潰瘍に対しての標題の用途に成功的に使用されたら(インフリキシマブ、Streit他の文献及びWO 1999/041285 A1(特許文献1)を参照)、MRSAによる鼻腔除菌を促進するために、及び、前記病原体によって引き起こされた皮膚病変を治療するために、本発明のモノクローナル抗体を局所的に投与してもよい。
最先端に見られる問題及び知識に基づいて、本願発明者は、実験動物に対して、遺伝子mecA(配列番号2)に相当する構造を有するDNAワクチンによる免疫付与を行った。前記免疫付与は、膜固定領域に対しては行わず、酵素活性コアを含んでいるペプチド転移酵素ドメイン(配列番号3)の76個のアミノ酸を有する内部領域に対して行った。
前記免疫付与は、遺伝子mecAの全配列(膜固定領域を除く)及びペプチド転移酵素ドメインの内部断片を使用して、PBP2aに対するDNAワクチンを開発したOhwada他及びSenna他の研究において示された条件と同一の条件で行われた。免疫付与は4回の投与によって行われ、免疫動物及び非免疫動物対照群をMRSAによって全身感染させ、2つの特定の時期において、被験動物の腎臓内に存在する細菌数を測定した。得られた結果は、ペプチド転移酵素断片で免疫付与した場合は、遺伝子mecAで免疫付与した場合よりも、被験動物の腎臓内に存在する細菌数が大幅に減少したことを示した。
従って、ペプチド転移酵素断片に対して生成された本発明の抗体は、上記の用いられた状態において(マウスモデルにおけるDNAワクチン)、PBP2aに対する抗体を用いた場合よりも優れた防御能を提供する。前記ペプチド転移酵素断片は、酵素活性コアSTQK(配列番号4)を含む。
従って、得られた結果に基づいて、本発明者は、PBP2aタンパク質またはそれに相同な配列を持つ他のタンパク質を認識してそれに結合することができるモノクローナル抗体の作製方法と、前記酵素活性コアを含むペプチド転移酵素断片の使用を提供する。
以下、本発明を実施例を参照して説明するが、これらの実施例は限定的なものとして解釈されるべきではない。
材料及び方法
1.細菌:
次のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌株を使用した。イベリア型MRSA、COL−MRSA(パスツール研究所の抗菌剤部門のDr. Patrice Courvalinから譲り受けた)、WB79 CA−MRSA及びCEB−MRSA(UFRJの微生物学研究所のDr. Agnes Figueiredoから譲り受けた);バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカリス株;及びメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)株。大腸菌株、BL21 DE3(Novagen)及びTOP10(Invitrogen)を対照として使用した。
2.動物:
CECAL-FIOCRUZから入手してLAEAN-BioManguinhosに収容した4〜8週齢の雌のBalb/Cマウスを、免疫付与分析及びインビボ防御能分析に使用した。
3.免疫付与:
まず、マウス(4匹の被験動物)に100mgのpCI−ネオプラスミ:MRSA mecA遺伝子の断片(18)を投与し、その14日後、MRSA PBP2a(21)の内部領域に対応する、10mgの精製された組換えタンパク質を投与た。そして、完全フロイントアジュバント中で乳化させ、14日後、不完全フロイントアジュバント内で乳化させた。その14日後、免疫応答が最も高かった被験動物(酵素免疫分析‐ELISAによって評価した)に、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中で希釈した10mgの精製タンパク質を静脈投与した。IV(静脈)注射の3日後、被験動物をCOで窒息させて安楽死させた後(CEUA L0009-07プロトコル−FIOCRUZ)、細胞融合のために脾臓を無菌的に取り出した。免疫応答が最も高かった被験動物の血清を、他の免疫学的試験のための免疫陽性対照として使用した。
4.モノクローナル抗体の作製:
脾臓から取り出したリンパ球を、融合用ポリエチレングリコールを用いてSP2/0−Ag14骨髄腫細胞(ATCC 1581)と融合させた後、「免疫学における最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)」(22)のモノクローナル抗体作製プロトコルに従って、ヒポキサンチン‐アミノプテリン‐チミジン培地中で37℃、10%CO雰囲気下で培養した。その14日後、精製された組換えタンパク質を抗原として使用して、後述する方法に従って、結果として得られたハイブリドーマをELISA試験によって評価した。評価が一番高かったハイブリドーマをクローニングした後、ELISAによって最も良いクローンを選択して液体窒素中に保存した。
5.酵素免疫分析−ELISA:
炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中でマキシソープ(Maxisorp)98ウエルプラスチックプレートを500ng/ウエルの組換えタンパク質(PBP2a断片)で感作させた後、4℃で一晩培養した。翌日、前記プレートを、Tween 20を0.05%含有しているPBSで3回洗浄し、脱脂粉乳5%含有PBS及び中に37℃で2時間保存した。サンプル(免疫動物の血清を1:100で希釈したもの、または、培養細胞の上清)を分析した後、37℃で2時間培養した。前記プレートを、再び、Tween 20(0.05%)含有PBSで3回洗浄し、抗Ig複合体を1:5000の希釈率で加え、その後、37℃で90分間培養した。その後、前記プレートをTween 20(0.05%)含有PBSで3回洗浄した後、TMBペルオキシダーゼ顕色剤(BioRad)を添加し、光を遮った状態で15分間培養した。0.5NのHSOを添加して反応を中断させた後、450nmで測定した。1:200で希釈した多クローン性高度免疫血清を陽性対照として用いた。
5.1.酵素免疫分析に基づく結合力分析:
5.1.1.尿素による結合力分析(Niederhouser他−5.1):
プロトコルは、免疫分析(5)のプロトコルと類似しているが、次の点を変更した。サンプル(100ngのクローン10精製モノクローナル抗体及び2.0ngのクローン38精製モノクローナル抗体)を37℃で2時間培養した後、前記サンプルをTween 20(0.05%)含有PBS中で8Mの尿素で3回洗浄した。その後、Tween 20(0.05%)含有PBSで4回洗浄した。通常に処理した(尿素で処理しなかった)同一のサンプルを対照として用いた。前記サンプルの光学密度を測定した後、尿素を用いて測定した値を尿素を用いないで測定した値で割り、それに100掛けることによって結合率を計算した(パーセンタイル結果)。
5.1.2.チオシアン酸アンモニウムによる結合力分析(Goldblat他−5.2):
プロトコルは、免疫分析(5)のプロトコルと類似しているが、次の点を変更した。サンプル(100ngのクローン10精製モノクローナル抗体及び2.0ngのクローン38精製モノクローナル抗体)を37℃で2時間培養した後、前記サンプルを次の濃度のチオシアン酸アンモニウムで37℃で30分間処理した。3M;1.5M;1.0M;0.75M;0.50M;0.25M;及び0.125M。チオシアン酸アンモニウムで処理しなかったサンプルを各クローンの対照として用いた。
前記サンプルの光学密度を測定した後、次の式によって結合率を計算した。
AR(結合率)=((log50−logA)×(B−A)/logB−logA)+A
ただし、log50=1.70とする。Aは、50%未満の吸光度減少が得られた、最も低いチオシアン酸アンモニウム濃度である。Bは、50%を超える吸光度減少が得られた、最も高いチオシアン酸アンモニウム濃度である。
6.モノクローナル抗体の作製及び精製:
前もって選択したクローン10及び38のサンプルを、10%のCOの雰囲気下のストーブ中の100mLの小瓶中で、1%のBSAが添加された無血清培地(GIBCO VP-SFM)中で成長させた。上清を遠心分離した後、0.22μmのフィルタでろ過し、SelectSureプロテインA MAB樹脂(GE)を用いた高性能クロマトグラフィー(HPLC)で精製した。前記抗体を、pH10.0の1M Trisを使用してpH7.0に中性化した後、脱イオン水中で0.5倍のPBSに対して透析させる。前記サンプルを凍結乾燥処理し、脱イオン水中で再懸濁させ、ローリー法で定量化し、ポリアクリルアミドゲル中の電気泳動によって評価した。
7.標的認識:
7.1.インビトロでのPBP2a認識‐免疫ブロッティング:
MRSA(CEB)株、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)株、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム株、及びBL−21 DE3大腸菌株を指数増殖期で成長させた。1mLの各サンプルを遠心分離し、mini-Bead Beater device(Biospect Products)のガラスビーズ内で撹拌して溶解させた(3回、30秒間)。各サンプルの1アリコートを12%変性のポリアクリルアミドゲル内で電気泳動させ(SDS-PAGE)、その後、前記タンパク質をナイロン膜へ移動させた(Hybond N-BioRad)。前記膜を、脱脂粉乳10%及びBSA(ウシ血清アルブミン)1%を含有しているPBS緩衝液に入れて緩やかに撹拌した。前記膜をTween 20(0.05%)含有PBS中で3回洗浄した後、PBS中で3回洗浄した。その後、洗浄した膜を、PBS中で1:1の割合で希釈した抗PBP2aモノクローナル抗体の上清と共に、2時間培養した。培養後、前記膜を上述した方法で洗浄し、1:15,000の割合でアルカリホスファターゼ複合体(マウス抗IgG抗体‐Sigma A3688)と90分間培養する。その後、PBS中での洗浄を繰り返し、アルカリホスファターゼ用のWestern Blue基板(Promega)による成長を行った。
7.2.細菌表面でのPBP2a認識‐フローサイトメトリー:
MRSA(CEB)株を静止期(ON)または指数増殖期で成長させた。前記サンプルを、1倍のPBS中で洗浄し、0.6のDO600(〜10細菌/mL)で再懸濁させた。そして、1mL(10細菌)中で遠心分離し、0.5%BSA及び1:10で希釈した正常血清(マウス:ヒト)中で再懸濁させた。そして、前記サンプルを4℃で30分間培養した後、前記濃縮物(ペレット)をPBS中で2回洗浄し、0.5%BSAと1:10,000で希釈した抗PBP2aモノクローナル抗体を含有している100μLのPBS中で再懸濁させ、4℃で30分間培養した。このステップの後、前記サンプルを前述した方法で再び洗浄し、0.5%BSAとPE(フィコエリトリン)マウス抗Ig複合体の希釈物(1:1000)を含有している100μLのPBS中で再懸濁させ、その後、暗い状態で4℃で30分間培養した。その後、前記サンプルを再び洗浄し、2%パラホルムアルデヒドを含有しているPBS中で4℃で15分間静置した。この前処理の後、前記サンプルをフローサイトメータ(Becton and Dickinson社製のFACScalibur)で分析した。
8.インビトロ防御分析‐最少阻害濃度の測定:
MSRA株(CEB、イベリア型、COL及びCA)を、600nmでの光学密度が0.5になるまで指数増殖期で成長させた。
適用される接種材料は、約100,000個の細菌を含むように調節した。ミュラーヒントン(Muller Hinton)培養液、細菌接種材料、及び、増殖中の精製抗PBP2aモノクローナル抗体を試験管または14キャビティプレートに加えた。前記試験管またはプレートを37℃で12時間培養した。その後、サンプルにおける濁度を観察した。この最小抑制濃度は、より少ない量の抗体で最近接種材料(100,000個の細菌)の成長を抑制することができると考えられる。
9.インビボ防御能分析:
9.1.MRSA株についての致死量及びLD50の測定
リード・ミュンヒ(Reed-Muench)の方法(23)に従って、MRSA株(CEB、イベリア型、WB79 CA及びCOL)について致死量及びLD50の測定を行った。8週齢の雌のBalb/Cマウスのグループを、成長中の細菌を腹腔内経路で投与することにより接種し、7日間観察した。この期間を生き延びた被験動物を、動物保護法に従って安楽死させた。
9.2.全身感染及び細菌腎臓感染の定量分析
MRSA株(CEB、イベリア型、WB79 CA)を指数増殖期で成長させ(DO600〜0.6)、約2×10の細菌に相当するDO600〜0.5で1倍の無菌PBS中で洗浄し、再懸濁した。この濃度は、希釈率により計算し、オキサシリンを10mg/mLの濃度で含有しているBHI寒天プレート上に播種した。1日目に、8週齢の雌のBalb/Cマウスに対して、400mgの抗PBP2aモノクローナル抗体の腹腔内投与を1回行った。6日目に、被験動物を安楽死させ、腎臓を無菌的に取り出した。その後、腎臓を、1mLの無菌ルリア培地中で均質化した後、10倍に希釈した。100μLの各希釈液を、オキサシリンを10mg/mLの濃度で含有しているBHI寒天プレート上に播種した後、37℃で24時間培養した。そして、得られたコロニー数のカウントと総希釈率の計算を行った。
9.3.生存分析
MRSA株を、接種材料の調節を前に設定したLD50で行う以外は、前述した方法と同一の条件で成長させた。1日目に、8週齢の雌のBalb/Cマウスに対して、精製された抗PBP2aモノクローナル抗体の服腔内投与を1回行った。翌日、被験動物と対照群に対して、腹腔内経路での投与を1回行うことによって、各株のLD50に従って、2.5〜6.0×10の細菌を感染させた。被験動物を10日間観察した後、生き残ったものを安楽死させた。
10.抗PBP2aモノクローナル抗体及びバンコマイシンのインビボ防御能の比較研究−腎臓感染の定量化
分析I
8週齢の雌のBalb/Cマウスの4つのグループ(1グループあたり4匹)に、6.0×10個の細菌(CEB−MRSA)を腹腔内経路で投与して感染させた。被験動物のグループ1〜3に対しては、精製されたモノクローナル抗体(MAB)、バンコマイシン、MAB+バンコマイシンをそれぞれ投与した。陰性対照としてのグループ(グループ4)には何も投与しなかった。
グループ1:MAB(400μg)(1日目)
グループ2:バンコマイシン(150μg、筋肉内投与経路、12時間毎)
グループ3:バンコマイシン+MAB(350μg)(感染の1日後)
グループ4:対照
抗体及びバンコマイシンの最初の投与は、細菌投与の4時間後に行った。被験動物を4日目に安楽死させ、腎臓を無菌的に取り出し、前述した方法を用いて腎臓感染の定量化を行った。
分析II
この分析は、細菌投与量を低くする(7.0×10個の細菌)こと以外は、分析Iと同じ方法で行った。グループ1は500μgの精製されたモノクローナル抗体で処理;グループ2はバンコマイシンで処理(150μg、筋肉内投与経路、12時間毎:5回投与);グループ3はバンコマイシン+500μgのモノクローナル抗体;グループ4は対照とする(非処理動物)。
11.抗PBP2aモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の相補性決定領域(CDR)の決定
11.1.ハイブリドーマ細胞からのmRNA抽出
mRNAを抽出するために、RNeasy Minikitキット(Qiagen)を使用して、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養細胞の10mLの遠心分離濃縮物(ペレット)を処理した。
11.2.cDNA取得
逆転写反応:製造ガイドラインに従って、M−MLV逆転写キット(Invitrogen)を使用して相補的DNAを得た。
11.3.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるVH鎖及びVL鎖の増幅
この反応は、下記の開始配列(プライマー)を使用して行った。
11.4.抗PBP2aモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖のシークエンシング
シークエンシングのステップ:
I.増幅
増幅は、配列番号1〜39によって定義された前述の開始配列を使用して行った。
II.シークエンシング
装置BI Prism 3100 Genetic Analyser(Hitachi)を使用した。
11.5.軽鎖及び重鎖のCDRの配列分析及び同定
後でKabat's(24)及びChotia's(25)のアルゴリズムで解析して軽鎖及び重鎖のCDRを同定するために、得られたDNA配列をDNASTAR社のプログラム(ExPASy部位翻訳プログラム)を用いて分析してアミノ酸配列に翻訳した。
12.モノクローナル抗体についての結合定数及び解離定数の決定(表面プラズモン共鳴(SPR)(Biacore)方法によるクローン10及び38)
Biacore X(登録商標)装置(Biacore AB, Uppsala, Sweden)のCM−5センサを使用してSPR測定を行った。結合試薬及びHBS−EP緩衝液(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% P20(Tween 20、pH7.4)はGE Healthcare社から入手した。
例2
1.マウス抗PBP2aモノクローナル抗体の獲得
前述の免疫付与プロトコルを用いて動物群へ免疫を行った。ELISA試験による評価結果を図1に示す。
融合手順(番号90-LATAの融合)を行った後、上清(ハイブリドーマ)を96ウェルでELISA試験によって解析した。そのうち、上位5個のサンプルを選択して細胞を増やした(クローニング)。その後、再び、得られた上清をELISAによって解析した。ELISAによって得られた結果を検証するために精製組換えタンパク質(PBP2a)に対する免疫ブロッティングによって陽性サンプルを検証した。最終結果を表1に示す。
図1は、抗PBP2a抗体産生のために免疫された動物の血清の酵素免疫測定(ELISA)の結果を示している。横縞模様のグラフはそれぞれ、免疫された動物の100倍希釈した血清に対応する。矩形波模様(一番右)のグラフは、陽性対照血清である。1つ目の横縞模様の棒グラフ:免疫前血清;2つ目の棒グラフ:4回目の免疫付与後の血清;3つ目の棒グラフ:5回目の免疫付与後の血清。
表1.融合90のクローニング:結論
選択されたクローンから、クローン77〜38に対して再クローニング手順を行い、分泌モノクローナル抗体の細胞安定性を検証した。解析した50ウェルのうち、全てがELISA陽性であった。これらのクローンは増やされ、LATAM(Laboratorio de tecnologia de anticorpos monoclonais:モノクローナル抗体技術研究所)の液体窒素施設に貯蔵されている。
2.モノクローナル抗体の成長、産生及び精製
手順は、前述のように標準化した。産物は、上清100mL当たり約4mgのモノクローナル抗体であり、精製手順を実行した。結果を以下に示す。
図2に、生サンプル及び精製後サンプルを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分析した結果を示す。この図2は、精製前(カラム1)及び精製後(2)の上清サンプルを用い、MAb SelectSure樹脂を充填したHPLCカラムを通し、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分析した結果を示している。カラム3〜9は、得られた精製サンプル分画に対応する。矢印は、約150kDaの大きさを示している。
3.モノクローナル抗体の機能的特性解析
3.1.インビトロPBP2a認識−免疫ブロッティング
標的病原体(PBP2a及び類似配列)における抗体認識能力を調べるために、PBP2aを有する細菌(CEB及びCOL MRSA)、MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)株(PBP2aを有しない)、バンコマイシン耐性腸球菌属(PBP5を有する)、βラクラム系抗生物質に対する親和性が低下したペプチド転移酵素(PBP2aに相同)、及び陰性対照として大腸菌株(組換えタンパク質を作製)に対して免疫ブロッティング試験を行った。その結果、それぞれPBP2a及びPBP5の大きさに相当するMRSA及びエンテロコッカス属種株における分子量約76kDaのタンパク質を抗体が認識できたことが分かった。モノクローナル抗体は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌のタンパク質(PBP2a陰性)とも大腸菌株とも反応性が示されなかった。結果を図3(MRSA及びMSSAに対する免疫ブロッティング)に示す。
抗PBP2aモノクローナル抗体を含む上清に対するMRSA及びMSSA溶解物の免疫ブロッティング試験の結果を図3に示す。
1.−分子量マーカー(カレイドスコープ);
2.−指数増殖期において成長させたMSSAサンプル;
3及び4.−指数増殖期において成長させたMRSAサンプル;
5.−静止期において(一晩)成長させたMSSAサンプル;
6及び7.−静止期において成長させたMRSAサンプル。左の矢印は、PBP2a分子量を示している。
3.2.細菌表面上のPBP2a認識−フローサイトメトリー
フローサイトメトリー試験の目的は、モノクローナル抗体による未変性状態の標的細菌認識の検証である。前の試験(免疫ブロッティング)では、変性ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動によるタンパク質分離中に変性された標的タンパク質の認識が観察された。ここでも先と同様に、指数増殖期及び静止期において成長させた陰性対照株(MSSA,PBP2a陰性)及びMRSA株(CEB)を解析した。その結果、両条件において抗体が細菌表面上の標的を認識できることが分かった。ブドウ球菌表面上のプロテインAの存在は、抗体とPBP2aとの結合を阻止することができなかった。結果を図4に示す。
図4は、抗PBP2aモノクローナル抗体と培養し、フィコエリトリン(PE)で標識したMRSA(CEB)及びMSSA細菌のフローサイトメトリーの結果を示している。(1)にはMSSA細菌、(2)には静止期において成長させたMRSA、(3)には指数増殖期において成長させたMRSAを示す。MRSAの集団は、蛍光複合体によって標識された細胞の増加に対応して右にずれている。
4.抗PBP2aモノクローナル抗体によって与えられる防御の評価:
4.1.インビトロ防御能試験
最小阻止濃度(MIC)の決定
これらの試験は、閉鎖系における標的への抗体の直接結合能の評価を目的とする。治療目的のモノクローナル抗体の場合、陽性結果が重要である。というのも、陽性結果は、宿主の自然免疫系及び獲得免疫系との組合せ作用によって生じる補体活性化及びオプソニン化機序などの宿主の免疫系の助けなしで、抗体が標的を認識しかつ細菌増殖を阻止できることを意味するからである。CEB、COL及びイベリア型MRSA株を評価したところ、評価条件下で同じようなMIC値(約500μg)が観察された。これらのデータは、MRSA株の遺伝的背景が異なるにもかかわらず、成長を阻止するために必要な抗体の用量が同じであることを示している。これらの結果を図5に示す。
図5は、異なるMRSA株由来の10個の細菌の接種材料に対して抗PBP2a精製モノクローナル抗体及びバンコマイシンによって与えられるインビトロでの防御能試験(MIC−最小阻止濃度)を示している。濁りがないことは、試験条件下で細菌増殖がなかったことを示している。
1A:CEB MRSA(ブラジル流行クローン)+250μgの抗体;
2A:CEB MRSA+500μgの抗体;
3A:CEB MRSA+750μgの抗体;
4A及び6A:CEB MRSA株の陰性対照。
1B:COL MRSA+250μgの抗体;
2B:COL MRSA+500μgの抗体;
3B:COL MRSA+750μgの抗体;
4B及び6B:COL MRSA株の陰性対照。
1C:イベリア型MRSA(ヨーロッパ流行型クローン−EEC)+250μgの抗体;
2C:EEC MRSA+500μgの抗体;
3C:EEC MRSA+750μgの抗体;
4C及び6C:EEC MRSA株の陰性対照。
1D:CEB MRSA+150μgのバンコマイシン;
2D:CEB MRSA+300μgのバンコマイシン;
3D:CEB MRSA+500μgのバンコマイシン;
4D:CEB MRSA+750μgのバンコマイシン;
5D及び6D:陰性対照。
4.2.インビトロ防御能試験
4.2.1.CEB、イベリア型、WB79 CA及びCOL MRSA株に対する致死量及び亜致死量の決定:
これらの分析は、用いた2つのモデル、すなわち、亜致死量による腎臓感染の定量化と、動物の約50%を殺すことができる(LD50)より大きな細菌接種材料を全身感染させた後の生存試験とにおいて、インビトロでの防御能を評価するために必要であった。投与が容易で目減りしないことから、腹腔内経路を選択した。リード−ミュンヒ(Reed-Muench)法を適用し、各条件(細菌濃度を増加させた感染用量)につき2匹の動物を用いて分析を行ってLD50及び亜致死量を決定し、黄色ブドウ球菌の平均致死量が分かった時点で3つの異なる用量を試験した。この病原体の試験には、ゲノムの配列を決定した最初のMRSAクローンであるCOL MRSA株を基準株として用いる。しかし、これは、他のMRSAクローンと比べて、病原性がほとんどなく、動物を感染させるためにより高用量を必要としたので、防御能分析には用いなかった。
4.2.2.亜致死量で全身感染させた後の腎臓防御能分析
これらの分析は、感染後の腎臓感染の定量化モデルを用いて、抗体が全身感染後に生命維持に必要な器官(腎臓)における細菌の存在を減少させる能力を評価する。病原性がありかつ異なる遺伝的背景を持つMRSA株を用いて行った3つの独立した実験において、減少はlog3(1000倍)を超えた。これらの試験では、動物は以前に用量500μgの抗体を投与されていた。CA−MRSA株を用いた試験では、より低用量(250μg)の抗体によって与えられる防御能を評価した。細菌の減少が観察されたが、用量500μgで得られたものより少なかった。結果を図6A、図6B及び図6Cに示す。
図6Aは、抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物及び非処理動物に亜致死量のMRSA CEB株を全身感染させ、それぞれの動物の腎臓感染を定量化した結果を示している。横縞模様の棒グラフ:各非処理動物の腎臓から単離した細菌の濃度の対数。市松模様の棒グラフ:抗体で処理した各動物の腎臓から単離した細菌の量の対数。細菌の定量:対照:C1:2000個の細菌;C2:29,000個の細菌;C3:220,000個の細菌;C4:52,000個の細菌(75,750個の細菌の平均)。処理(感染防御)動物:P1:20個の細菌;P2、P3及びP4:10個の細菌(12.5個の細菌の平均)。非処理動物と比較して処理動物から回収した細菌の量の減少:6060倍。
図6Bは、抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物及び非処理動物に亜致死量のイベリア型MRSA株(ヨーロッパ流行型クローン)を全身感染させ、それぞれの動物の腎臓感染を定量化した結果を示している。横縞模様の棒グラフ:各非処理動物の腎臓から単離した細菌の濃度の対数。大きな市松模様の棒グラフ:抗体で処理した各動物の腎臓から単離した細菌の量の対数。小さな市松模様の棒グラフは、それぞれの得られた平均を示している。細菌の定量:対照:C1:210,000個の細菌;C2:44,000個の細菌;C3:300,000個の細菌;C4:290,000個の細菌(211,000個の細菌の平均)。処理(感染防御)動物:P1:80個の細菌;P2:200個の細菌;P3:10個の細菌;P4:60個の細菌(87.5個の細菌の平均)。非処理動物と比較して処理動物から回収した細菌の量の減少:2420倍。
図6Cは、抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物及び非処理動物に亜致死量のWB79 CA−MRSA株(ブラジル市中獲得型株)を全身感染させ、それぞれの動物の腎臓感染を定量化した結果を示している。最初の5つの棒グラフ(xx模様、横縞模様及び大きな市松模様のグラフ):各非処理動物の腎臓から単離した細菌の濃度の対数。最初の棒グラフ(xx模様):安楽死前に死亡した動物に対する推定。棒グラフ6、7、8、9(横縞模様及び市松模様):250μgの抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物の腎臓から単離した細菌の量の対数。棒グラフ10、11、12、13(三角形模様):500μgの抗体で処理した各動物の腎臓から単離した細菌の量の対数。市松模様の棒グラフ(5、9、13番目の棒グラフ)は、それぞれの得られた平均を示している。細菌の定量:対照:C1:650,000個の細菌;C2:26,000個の細菌;C3:17,000個の細菌;C4:500,000個の細菌(死亡した動物に対する推定)(231,000個の細菌の平均)。250μgの抗体で処理した動物:P1:0;P2:5,400個の細菌;P3:830個の細菌;P4:10個の細菌(1,560個の細菌の平均)。500μgの抗体で処理した動物:P1:80;P2:0;P3:210;P4:80個の細菌(92.5の平均),非処理動物と比較して250μgの抗体で処理した動物から回収した細菌の量の減少:149倍。500μgの抗体で処理した場合:2497倍。
4.2.3.生存試験
この種の試験において、動物のうち50%またはそれ以上を殺すことができる細菌負荷(LD50)で感染させた後に抗体によって動物に与えられる防御を評価した。腎臓感染の定量化分析で用いた3つの株に対する防御を評価した。3つの独立した実験において、抗MRSAモノクローナル抗体で処理した動物の(i)生存時間及び(ii)生存率の著しい減少が観察された。
CEB MRSA株を用いた分析では、感染動物の生存率が対照群(非処理)で10%しかなかったのに対して、処理動物で70%であった。イベリア型MRSA株を用いた分析でも同様の結果が得られ、対照群が100%死亡したのに対して、処理動物の防御は60%であった。CA MRSA株を用いた分析では、対照動物で70%であったのに対して、100%の防御が見られた。これらの結果を図7A、図7B及び図7Cに示す。
図7Aは、2.3×10個の細菌(CEB MRSA)(LD50)を腹腔内投与して感染させた後の処理(感染防御)動物及び非処理(対照)動物の生存曲線を示している。
図7Bは、4.2×10個の細菌(イベリア型MRSA)(〜LD50)を腹腔内投与して感染させた後の処理(感染防御)動物及び非処理(対照)動物の生存曲線を示している。
図7Cは、1.1×10個の細菌(WB79 CA−MRSA)(〜LD50)を腹腔内投与して感染させた後の処理(感染防御)動物及び非処理(対照)動物の生存曲線を示している。
4.2.4.モノクローナル抗体及びバンコマイシンによってそれぞれ与えられる防御能の比較試験
バンコマイシンは、重度のMRSA感染の治療のための第一選択抗菌薬であるので、前のものとは異なるモデルにおいて防御能の比較試験を行った。この試験では、動物を感染させ、感染のわずか4時間後に抗菌薬またはモノクローナル抗体の投与を開始した。3つの別個の群、すなわち、バンコマイシンで処理した群、モノクローナル抗体で処理した群及び抗菌薬+抗体の同時投与群を用いて試験を行った。バンコマイシンの投与量を、ヒトに感染させた場合(12時間毎に500mg)と同じように調製した。
その結果、感染から3日後に抗菌薬または抗体で処理した動物の腎臓に存在する細菌の量が約15倍減少したことが分かった。しかし、抗菌薬及び抗体で処理した群においては、4,617倍の減少が見られた。
これらの結果に基づき、本願出願人は、抗体1用量によって与えられる防御能がバンコマイシン5用量に相当し、感染動物の腎臓に観察される細菌負荷の減少にバンコマイシン及び抗体の同時投与が非常に効果的であったと結論することができる。単独及びバンコマイシンとの組合せによる抗MRSAモノクローナル抗体の感染防御作用をより良好に観察するために、感染用量を減らしてこの試験を繰り返した(図8を参照)。
より低い感染用量で第2の試験を行った後、その結果によって最初の結果を確認した。モノクローナル抗体処理によって与えられる防御能は89倍の減少をもたらし、これは5用量バンコマイシン処理により得られる防御能(35倍の減少)よりも高かった。しかし、最も顕著な減少の結果は、抗体+バンコマイシンで処理した群で見られ、450倍の減少であった。
図8Aは、6.0×10個の細菌(CEB MRSA)に感染させた後の、抗PBP2aモノクローナル抗体、バンコマイシン及び抗体+バンコマイシンの組合せで処理した動物、並びに非処理動物の腎臓における細菌の定量を示している。感染から4時間後に処理を開始した。バンコマイシンを12時間毎に投与した(5用量)。棒グラフ1、2、3、4、5(横縞模様):非処理動物(対照)から回収した細菌の濃度の対数。C1:7,000,000;C2:295,000;C3:380,000;C4:3,200,000(平均:2,718,750個の細菌)。棒グラフ6、7、8、9、10(市松模様):400μgの抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物から回収した細菌の濃度の対数。P1:4,200;P2:310,000;P3:330,000;P4:90,000(183,550個の細菌の平均)。棒グラフ11、12、13、14、15(水玉模様):バンコマイシンで処理した動物。P1:110,000;P2:58,000;P3:500,000;P4:21,000(172,250個の細菌の平均)。棒グラフ16、17、18、19、290(三角形模様):抗体(300μg)+バンコマイシンで処理した動物から回収した細菌の濃度の対数。P1:1,100;P2:700;P3:450;P4:90(585個の細菌の平均)。
図8Bは、7.0×10個の細菌(CEB MRSA)に感染させた後の、抗PBP2aモノクローナル抗体(棒グラフ7〜12)、バンコマイシン(棒グラフ13〜18)、抗体+バンコマイシンの組合せ(19〜24)で処理した動物及び非処理動物(棒グラフ1〜6)の腎臓における細菌の定量を示している。感染から4時間後に処理を開始した。バンコマイシンを12時間毎に投与した(5用量)。棒グラフ1〜6:非処理動物(対照)から回収した細菌の濃度の対数。C1:6,000;C2:1,000;C3:500;C4:118,000;C5:1,000(平均:25,220個の細菌)。棒グラフ7〜12:500μgの抗PBP2aモノクローナル抗体で処理した動物から回収した細菌の濃度の対数。MB1:450;MB2:200;MB3:100;MB4:20;MB5:0(284個の細菌の平均)。棒グラフ13〜18:バンコマイシンで処理した動物。VC1:100;VC2:700;VC3:0;VC4:0;VC5:2800(720個の細菌の平均)。棒グラフ19〜24:抗体(500μg)+バンコマイシンで処理した動物から回収した細菌の濃度の対数。MBV1:130;MBV2:20;MBV3:10;MBV4:80;MBV5:20(56個の細菌の平均)。
5.結合分析
モノクローナル抗体(クローン10及び38)の結合試験の結果:
尿素プロトコル結合:
クローン10:1.03/1.46(処理/非処理のDOの読み)=70.5%
クローン38:1.00/1.21=82.6%
チオシアン酸アンモニウムプロトコル結合:
クローン10(DO):
対照:1.12
チオシアン酸塩で処理したサンプル:
2M=0.046;1.5M=0,047;1M=0.107;0.75M=0.483;0.5M=0.602;0.375M=0.684
結合率:2.47
クローン38(DO):
対照:1.22
チオシアン酸塩で処理したサンプル:
2M=0.056;1.5M=0.062;1M=0.129;0.75M=0.648;0.5M=0.758;0.375M=0.793
結合率:4.40
両実験において、クローン10の結合率よりもクローン38の結合率の方が高かったことが分かる。さらに、2つのプロトコルを用いて約1.0のDOに達するためには、抗体クローン38の50倍超のクローン10が必要であることが分かった。
6.表面プラズモン共鳴法(SPR)(BIAcore)によるモノクローナル抗体(クローン10及び38)の結合定数及び解離定数の決定
SPR法によって得られた予備結果により抗体の結合が確認された。この場合もやはり、クローン10よりもクローン38の方が良好な結果を示した。表2のデータによれば、クローン38は、クローン10よりも450倍高い親和性を有することが分かる。
この親和性は、主として、クローン10よりも約100倍高い結合率に起因する。クローン38の親和性は非常に高いので、測定は器材の検知閾値に近いパラメータを示す。しかし、試験の計画及び実行を慎重にすることで、実験データはラングミュアのモデルによく合っていた。このことは、得られたデータが信頼できることを示している。
図9は、組換えPBP2a(抗原)とモノクローナル抗体クローン38(図9A)/クローン10(図9B)との相互作用を示している。煙のような線の曲線は、その右側の凡例に従う濃度のSPRデータを示している。全てのサンプルを2回解析した。各曲線に対するラングミュア1対1の理論モデルをで各曲線の下に黒で示す。縦軸は反応単位、横軸は時間を秒単位で示している。横軸に最も近い線は、各サンプルに対する基線(陰性対照)を表している。
表2
抗原(PBP2a)とモノクローナル抗体(クローン10及び38)との間の解離定数及び相互作用定数。
7.抗PBP2aモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の相補性決定領域(CDR)の同定
用いられる抗体を産生するクローン(クローン38)のハイブリドーマ細胞においてmRNA抽出手順を行った後、cDNAを得て、この材料を用いて異なる軽鎖及び重鎖対立遺伝子についてPCR反応を行った。得られた材料を、PCR反応で用いたのと同じプライマー配列(配列番号18ないし配列番号39によって画定される)を用いてシークエンシングを行った。3つの異なるシークエンシングにおいて軽鎖391及び重鎖310を同定した。カバット(Kabat)及びチョーティア(Chotia)のアルゴリズムを適用して、軽鎖及び重鎖のCDRの同定に至った。これらは、添付の特許請求の範囲の対象である。
軽鎖及び重鎖CDRの配列を以下に示す。
配列番号6−CDR1軽鎖アミノ酸。
RSSQSIGHSNGNTYLE
配列番号7−CDR2軽鎖アミノ酸。
KVSNRFS
配列番号8−CDR3軽鎖アミノ酸。
FQGSYVPLT
配列番号9−CDR1軽鎖DNA。
cgcagcagccagagcattggccatagcaacggcaacacctatctggaa
配列番号10−CDR2軽鎖DNA。
aaagtgagcaaccgctttagc
配列番号11−CDR3軽鎖DNA。
tttcagggcagctatgtgccgctgacc
配列番号12−CDR1重鎖アミノ酸。
GFSITSSSSCWH
配列番号13−CDR2重鎖アミノ酸。
RICYEGSISYSPSLKS
配列番号14−CDR3重鎖アミノ酸。
ENHDWFFDV
配列番号15−CDR1重鎖DNA。
ggctttagcattaccagcagcagcagctgctggcat
配列番号16−CDR2重鎖DNA。
cgcatttgctatgaaggcagcattagctatagcccgagcctgaaaagc
配列番号17−CDR3重鎖DNA。
gaaaaccatgattggttttttgatgtg
補完的データ
本発明をさらに発展させるために、他の分析を行った。そのほとんどを以下に実例を挙げて示す。
例3
CEB MRSA株を用い、例1の7.2で説明したのと同じプロトコルに従い、さらには黄色ブドウ球菌凝集体を脱凝集させかつ抗体に曝露されるPBP2aの量を増加させることを目標として各洗浄の間に渦撹拌の2つの15秒のパルスを加えて、第2の試験を行った。
標識物質FITC(フルオレセインイソチオシアネート)及びPE(フィコエリトリン)を試験し、対照サンプル(i.モノクローナル抗体との接触のない純粋細菌及び、ii.純粋細菌+標識物質FITCまたはPE)と、モノクローナル抗体で処理しかつPEまたはFITCで標識されたサンプルの解析を行った。FACScalibur装置の読みはリニアモードで行った。
図10は、FITCで標識された抗PBP2a抗体の存在下でのMRSAサンプルのフローサイトメトリーによる解析のグラフである。曲線(x)は標識されていないサンプルに対応し、曲線(y)は標識されたサンプルに対応する。
その結果、標識された集団の約22%が装置によって検出されることが分かり、抗PBP2a抗体は細菌表面上に存在する標的(PBP2a)を認識することが確認された(図10)。
例4
発明者はさらに、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌由来の抗PBP2aモノクローナル抗体によって与えられる、エンテロコッカスに対する防御を調べた。前述のように、この抗体は、エンテロコッカス属種株に存在するタンパク質(恐らく、ペプチド転移酵素であり、全てのエンテロコッカス株に存在し、βラクタム系抗菌薬に対する親和性が低く、分子量が約76kDa(237アミノ酸)であるPBP5)を認識する。この酵素は、以下に示す配列比較(ClustalW)によれば、MRSAのPBP2aに対する相同性を示す。
配列比較は、PBP5エンテロコッカス・フェカリス(Efas)及びエンテロコッカス・フェシウム(Efam)並びにMRSAのPBP2aにそれぞれ対応する配列について行った。マーキングした配列(太字−PBP5;下線−PBP2a)は、モノクローナル抗体を作製するために用いたPBP2a領域に対応している。イタリック体で示しているのは、酵素活性コアに対応するアミノ酸である。
このようにして、MRSAに関して既に行ったように、マウスモデル(Balb/Cマウス)におけるインビトロ防御能試験、致死量及びLD50の決定、及びインビボ試験(亜致死量での腎臓感染の定量化及び致死量での生存試験)をエンテロコッカス株を用いて行った。これらの結果を対応する報告に示す。
1.1.インビトロ防御能試験
この試験の目的は、VREエンテロコッカス株に対する抗体によって与えられるインビトロでの防御能の評価であった。
リシェ研究所(laboratorio Richet)のエンテロコッカス・フェカリスの臨床株(VRE)に対する精製モノクローナル抗体クローン38(90/DA5/CB5/AA3 hib77)のインビトロ防御能試験(MIC)。
条件:
サンプル:SelecSure MAB樹脂を用いたHPLCにより上清から精製し、透析し、凍結乾燥させた。
抗体定量化(ローリー法):3.5mg/mL
接種材料:VRE株
前接種材料:バンコマイシン(10mg/mL)を添加した20mLのLB培地にVRE1コロニーを接種、静止期(ON)に37℃で成長させ、160rpmで遠心分離
接種材料:20mLのLB培地に400mLの前接種材料、200mLの三角フラスコ、37℃、160rpm
7時間後のDO600nmの読み:0.7
定量化:5.5×10個の細菌/mL
試験条件:
接種材料:5.5×10個の細菌
抗体濃度:300、400、500、600及び700mgの抗体
培地:1mLのルリア培地
細胞培養プレート,24ウェル
陽性対照:ルリア培地+細菌接種材料
陰性対照:ルリア培地
培養:18時間、37℃
図11は、抗体によって与えられた防御の評価の結果を示している。図11では、
A.300mgの抗体
B.400mgの抗体
C.500mgの抗体
D.600mgの抗体
E.陰性対照
F.陽性対照
G.700mgの抗体
を有する。
1.2.腹腔内経路によるLD50及び致死量の決定−バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム
プロトコル:
メスの7週齢のBalb/C動物,平均体重20g
1日目−前接種材料:バンコマイシン(10mg/mL)を添加した10mLのLB培地にVRE株1コロニーを接種、50mLのファルコン(Falkow)チューブ、静止期(ON)に37℃で成長させ、160rpmで遠心分離
2日目−接種材料:50mLのLB培地/バンコマイシン(250mLの三角フラスコ)に1mLの前接種材料−4バイアル、37℃、160rpm、DO600nm=0.80まで成長させ、4,000rpmで10分間遠心分離し、1倍の無菌PBS中で再懸濁、OD1.2
定量化:2.1×10個の細菌/mL
A.60μL(1.5×10
B.300μL(6.5×10
C.900μL(300μL/用量まで減少)(1.5×10
D.4.5mL(300μL/用量まで減少)(6.5×10
E.9.0mL(1.2×10個の細菌)(300μL/用量まで減少)
F.45.0mL(6.5×10個の細菌)(300μL/用量まで減少)
分析の2日目から10日目に動物の観察を行った。
結果を図12に示す。致死量は1.2×10細菌であり、LD50は6.5×10細菌であると結論される。
7日目に生存している動物の腎臓感染の定量化:
A(1.5×10):細菌増殖なし
B(6.5×10):細菌増殖なし
C(1.5×10):3100個の細菌
D(6.5×10):2.8×10個の細菌
1.3.インビトロ防御能試験−生存試験−マウスモデルにおける腹腔内経路による全身感染の致死量
この試験の目的は、致死量のエンテロコッカス・フェシウム(VRE)株の全身感染に対する抗PBP2aモノクローナル抗体のインビトロでの防御能の有効性を評価することであった。
1.抗体(血清入り培地で培養した細胞培養液の上清から精製したもの)
−サンプルを精製(HPLC SelecSure MAB)し、透析し、凍結乾燥させ、再懸濁し、使用前にろ過した。
−定量化(ローリー法):1.0mg/mL
2.マウスモデル:メスの8週齢のBalb/C動物,体重23〜25g
3.プロトコル:
A群(6匹の動物):650mgの抗体(350mg+300mg)
B群(6匹の動物):対照(生理食塩水投与)
4.細菌接種材料の調製:
VRE株:
前接種材料,1日目,バンコマイシン(10mg/mL)を添加した10mLのBHI培地、静止期(ON)、37℃、160rpm
接種材料,3日目:バンコマイシンを添加した30mLのBHI培地に300mLの前接種材料を接種、DO600は1.31、4,000rpmで10分間遠心分離し、0.5倍の無菌PBS中で再懸濁し、OD=1.10に調整し、希釈し、プレーティングして定量化(2.0×10個の細菌/mL);接種材料:12mL,遠心して300mL中で再懸濁,IP経路(〜2.2×10個の細菌)
タイムスケジュール:
1日目:抗体(350mg)のIP接種
2日目:抗体(300mg)のIP接種、午後に全身感染(IP,250mLの細菌溶液−2.2×10個の細菌)
2日目から13日目:動物の観察。
結果を図13に示す。処理動物は2匹しか死亡しなかった(防御の66.6%)。2日目に全ての対照動物が死亡した。
1.4.インビトロでの防御能試験−マウスモデルにおける腹腔内経路によるバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウムの全身感染
目的は、エンテロコッカス・フェシウム(VRE)株の全身感染に対する腸球菌由来の抗PBP2a及びPBP5モノクローナル抗体のインビトロでの防御能の有効性を評価することであった。
試験:
1.抗体(血清入り培地で培養した細胞培養液の上清から精製したもの)
−サンプルを精製し(AffiPrep Protein A Biorad/HPLC SelecSure MAB)、透析し、凍結乾燥し、再懸濁した。
−定量化(ローリー法):1.5mg/mL
2.マウスモデル:メスの8週齢のBalb/C動物,体重19〜23g
3.プロトコル:
A群(4匹の動物):500μgの抗体(2ヶ月間,d01,d02)
B群(4匹の動物):非感染防御対照
4.細菌接種材料の調製:
イベリア型MRSA株:
前接種材料,10mLのLB培地、静止期(ON)、37℃、120rpm
接種材料:20mLのLB培地に200μLの前接種材料、DO600は0.80、4,000rpmで10分間遠心分離し、0.5倍の無菌PBS中で再懸濁し、OD=0.51に調整し、希釈し、プレーティングして定量化(2.4×10個の細菌/mL);接種材料:500μL,IP経路(2.4×10個の細菌)
タイムスケジュール:
1日目:腹腔内経路による250μgの抗体の接種
2日目:腹腔内経路による250μgの抗体の接種及び全身感染(腹腔内,500μLの細菌溶液)
6日目:安楽死、腎臓内の細菌の定量
上記の結果に基づき、以下のことを強調することができる。
インビトロ防御能試験−最小阻止濃度の決定:
合計700μgの抗体は、550,000個の細菌の成長を阻止することができる。これらの値は、MRSA株に対して得られたMIC(約500μgであった)よりも高い。
インビトロ防御能試験:
インビトロ防御能試験−マウスモデルにおける腹腔内経路による亜致死量のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム全身感染
動物に500μgのモノクローナル抗体を腹腔内経路(IP)により投与し、2.4×10個の細菌をIP経路により全身感染させた。4日後、安楽死させて腎臓を切除し、細菌を定量した。処理動物は平均87.5個の細菌/動物を示したが、対照(感染させたが処理していない動物)では平均211,000個の細菌/動物であった。
致死量投与後の生存試験
動物に650μgのモノクローナル抗体を投与し(IP経路)、全身感染させ(IP経路)、10日間にわたって毎日観察した。対照(非処理)動物は感染後2日目までに死亡した;処理動物(6)のうち2匹が2日目に死亡し、残りは試験終了まで生存し続けた。生存率は66.6%であった。
従って、ここでもやはり、MRSA抗PBPaモノクローナル抗体が腸球菌に対する交叉防御能を与えることが示されることが確認された。しかし、防御能を与えるために必要な用量は、同様の条件下でMRSAに対して用いた用量よりも高かった。これはおそらく、抗体が、発現されたPBP2aと同じ有効性をもってPBP5を認識する能力が低いためである。
従って、本明細書で説明した発明、すなわちPBP2a及び相同配列と特異的に結合することができる抗PBP2aモノクローナル抗体は、タンパク質または類似の物質(MRSA、MRSE及びエンテロコッカス属種、並びにPBP2aに相同なタンパク質を有する任意の他の病原体)を有する細菌による感染に有用である。
これらの感染が世界的な問題となり、既知の大規模流行MRSAクローンに対する分析が行われたら、本発明の産物は、そのような病原体による感染が起きているあらゆる場所において適用可能である。
発明者の最新の知識に照らして、本明細書で引用した文献を以下に示す。
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Claims (19)

  1. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)から産生されたPBP2aタンパク質に対して結合する単離されたモノクローナル抗体であって、
    配列番号6、7、8、12、13及び14からなる群から選択されたアミノ酸配列または該アミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有する対応するアミノ酸配列を含んでなる可変鎖領域を含むことを特徴とする単離されたモノクローナル抗体。
  2. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)から産生されたPBP2aタンパク質に対して結合する単離されたモノクローナル抗体であって、
    配列番号9、10、11、15、16及び17からなる群から選択されたアミノ酸配列または該アミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有する対応するアミノ酸配列を含んでなる可変鎖領域を含むことを特徴とする単離されたモノクローナル抗体。
  3. エンテロコッカス属種から産生されたPBP2aタンパク質に対して結合する単離されたモノクローナル抗体であって、
    配列番号6、7、8、12、13及び14からなる群から選択されたアミノ酸配列または該アミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有する対応するアミノ酸配列を含んでなる可変鎖領域を含むことを特徴とする単離されたモノクローナル抗体。
  4. エンテロコッカス属種から産生されたPBP2aタンパク質に対して結合する単離されたモノクローナル抗体であって、
    配列番号9、10、11、15、16及び17からなる群から選択されたアミノ酸配列または該アミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有する対応するアミノ酸配列を含んでなる可変鎖領域を含むことを特徴とする単離されたモノクローナル抗体。
  5. βラクタム系抗菌薬に対する耐性を診断するための方法であって、
    PBP2aまたはそれに相同なタンパク質を含んでいる疑いのある細菌サンプルに対して、請求項1または2のいずれかに定義された単離されたモノクローナル抗体を単独でまたは他の物質と共に加えるステップを含むことを特徴とする方法。
  6. PBP2aまたはそれに相同なタンパク質を持っている細菌による感染症を治療または予防するための医薬組成物であって、
    所定量の請求項1または2のいずれかに定義された単離されたモノクローナル抗体と、薬学的に許容されるビヒクル、担体または賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
  7. PBP2aまたはそれに相同なタンパク質を含んでいる細菌による感染症を治療または予防するための方法であって、
    所定量の請求項1または2のいずれかに定義された単離されたモノクローナル抗体を、ヒトまたは動物の対象に対して投与するステップを含むことを特徴とする方法。
  8. 請求項1に記載の抗体であって、
    配列GFSITSSSSCWH(配列番号12)または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR1領域を有する可変重鎖(CDR1 VH)を含むことを特徴とする抗体。
  9. 請求項1に記載の抗体であって、
    配列RICYEGSISYSPSLKS(配列番号13)または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR2領域を有する可変重鎖(CDR2 VH)を含むことを特徴とする抗体。
  10. 請求項1に記載の抗体であって、
    配列ENHDWFFDV(配列番号14)または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR3領域を有する可変重鎖(CDR3 VH)を含むことを特徴とする抗体。
  11. 請求項1に記載の抗体であって、
    配列RSSQSIGHSNGNTYLE(配列番号6)または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR1領域を有する可変軽鎖(CDR1 VL)を含むことを特徴とする抗体。
  12. 請求項1に記載の抗体であって、
    配列KVSNRFS(配列番号7)または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR2領域を有する可変軽鎖(CDR2 VL)を含むことを特徴とする抗体。
  13. 請求項1に記載の抗体であって、
    配列FQGSYVPLT(配列番号8)または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR3領域を有する可変軽鎖(CDR3 VL)を含むことを特徴とする抗体。
  14. 請求項2に記載の抗体であって、
    配列番号9に記載の配列または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR1領域を有する可変軽鎖を含むことを特徴とする抗体。
  15. 請求項2に記載の抗体であって、
    配列番号10に記載の配列または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR2領域を有する可変軽鎖を含むことを特徴とする抗体。
  16. 請求項2に記載の抗体であって、
    配列番号11に記載の配列または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR3領域を有する可変軽鎖を含むことを特徴とする抗体。
  17. 請求項2に記載の抗体であって、
    配列番号15に記載の配列または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR1領域を有する可変重鎖を含むことを特徴とする抗体。
  18. 請求項2に記載の抗体であって、
    配列番号16に記載の配列または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR2領域を有する可変重鎖を含むことを特徴とする抗体。
  19. 請求項2に記載の抗体であって、
    配列番号17に記載の配列または該配列に対応する変性の可能性のある核酸配列を含むCDR3領域を有する可変重鎖を含むことを特徴とする抗体。
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