図1は、本発明の一実施形態に係るバーンイン装置1の回路構成の一例を示す図である。バーンイン装置1には、被試験体となる半導体レーザLDを装着可能なレーザ検査部4が複数個設けられ、各レーザ検査部4にそれぞれ装着された複数の半導体レーザLDを同時にバーンイン試験およびエージング試験を行うことができるように構成されている。以下、本実施形態に係るバーンイン装置1には、レーザ検査部4が40個設けられているものとして説明する。
各レーザ検査部4は、装着された半導体レーザLDに駆動電流Idrを供給して発光させるとともに、該半導体レーザLDからの光出力、該半導体レーザLDに供給される駆動電流Idr、および該半導体レーザLDに印加される駆動電圧をそれぞれ検出可能に構成されている。
具体的には、各レーザ検査部4には、基準電圧信号Vrefに基づいて、装着された半導体レーザLDに駆動電流Idrを供給するLD駆動回路11と、駆動電流Idrが供給された半導体レーザLDから放射された光出力を検出する、たとえばPINフォトダイオードなどによって実現される受光素子12と、受光素子12で検出される光の量を減少させるための減光フィルタ13と、受光素子12から出力される光電流Iopを検出するPD電流検出回路14と、後述するMPU(Micro Processing Unit)20から出力される切換制御信号によって切換制御可能であり、装着された半導体レーザLDの駆動方式をAPC駆動およびACC駆動のいずれかに切り換えるための切換スイッチ15と、後述するMPU20から入力されるデータ信号Dに含まれる指定値に応じて、基準電圧信号VrefをLD駆動回路11に出力するDAC(Digital to Analog Converter)16とが設けられている。DAC16は、本発明の「基準信号出力部」に相当する。
すなわち、本実施形態に係るバーンイン装置1には、LD駆動回路11、受光素子12、減光フィルタ13、PD電流検出回路14、切換スイッチ15およびDAC16が、それぞれ40個ずつ設けられている。
各レーザ検査部4を構成するこれらの要素11〜16のうち、LD駆動回路11、PD電流検出回路14、切換スイッチ15およびDAC16は、バーンイン装置1の装置本体に着脱可能に設置されるバーンインボード3に搭載され、受光素子12および減光フィルタ13は、バーンイン装置1の装置本体に取り付けられている。なお、バーンイン装置1の装置本体には、図示しないが、装着された半導体レーザLDを保持するための機構部がレーザ検査部4ごとに設けられるとともに、電源および装置本体内の温度を調節するための温度コントローラが設けられている。
バーンインボード3には、各レーザ検査部4を構成する各要素11,14〜16以外に、受光素子12から出力される光電流Iopに応じた電圧信号(以下、「光出力信号」と称する)Vaが各PD電流検出回路14から入力され、MPU20から出力される選択制御信号に基づいて選択された1つの光出力信号Vaを、後段の第1のADC(Analog to Digital Converter)18aに出力する第1のセレクタ17aと、第1のセレクタ17aから入力された光出力信号Vaを、AD変換してMPU20へ出力する第1のADC18aと、半導体レーザLDに供給される駆動電流Idrに応じた電圧信号(以下、「駆動電流信号」と称する)Vbが各LD駆動回路11から入力され、MPU20から出力される選択制御信号に基づいて選択された1つの駆動電流信号Vbを、後段の第2のADC18bに出力する第2のセレクタ17bと、第2のセレクタ17bから入力された駆動電流信号Vbを、AD変換してMPU20へ出力する第2のADC18bと、半導体レーザLDに印加される駆動電圧を示す電圧信号(以下、「駆動電圧信号」と称する)Vcが各LD駆動回路11から入力され、MPU20から出力される選択制御信号に基づいて選択された1つの駆動電圧信号Vcを、後段の第3のADC18cに出力する第3のセレクタ17cと、第3のセレクタ17cから入力された駆動電圧信号を、AD変換してMPU20へ出力する第3のADC18cとが搭載されている。
さらに、バーンインボード3には、各種のプログラムおよびデータが格納されるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)19と、EEPROM19に格納されるプログラムに従って、バーンイン装置1における各部の動作を制御するMPU20と、図示しないインタフェースを介して、バーンイン装置1に接続された外部のPC(Personal Computer)2との間での通信を制御するイーサネット(登録商標)コントローラ(Ethernet Controller)21とが搭載されている。EEPROM19は、本発明の「電流補正データ記憶部」、「電圧補正データ記憶部」および「光出力補正データ記憶部」に相当する。
本実施形態に係るバーンイン装置1は、図1に示すように、レーザ検査部4ごとにDAC16を設けることで、各レーザ検査部4に装着された半導体レーザLDを、個別に発光させることができるように構成されている。
図2は、図1に示す回路構成において、1つのレーザ検査部4だけを採り上げて示したバーンイン装置1の回路構成を示す図である。図2に示すように、LD駆動回路11は、差動増幅器22を備える駆動電流調節回路11aと、駆動電流I−V変換回路11bと、駆動電圧検出回路11cとを備えて構成され、PD電流検出回路14は、光出力I−V変換回路14aを備えて構成されている。
駆動電流調節回路11aにおける差動増幅器22は、一方の入力端子に、DAC16から出力される基準電圧信号Vrefが入力され、他方の入力端子に、切換スイッチ15の出力端子から出力される信号が入力されるように設けられている。
駆動電流I−V変換回路11bは、駆動電流調節回路11aから駆動電流Idrが入力されると、入力された駆動電流Idrを電流電圧変換することによって駆動電流信号Vbを生成し、生成した駆動電流信号Vbを、第2のADC18bに出力するとともに、切換スイッチ15における他方の入力端子15bに出力する。駆動電圧検出回路11cは、半導体レーザLDに印加される駆動電圧を検出し、駆動電圧信号Vcを、第3のADC18cに出力する。
光出力I−V変換回路14aは、入力された光電流Iopを電流電圧変換することによって光出力信号Vaを生成し、生成した光出力信号Vaを、第1のADC18aに出力するとともに、切換スイッチ15における一方の入力端子15aに出力する。
ここで、バーンイン装置1を用いて、被検査半導体レーザLDのエージング試験およびバーンイン試験を行うときのバーンイン装置1における各部の動作について説明する。なお、各レーザ検査部4は同様に動作するので、1つのレーザ検査部4についてのみ説明する。
先ず、被検査半導体レーザLDをAPC駆動して試験を行う場合について説明する。MPU20は、被検査半導体レーザLDをAPC駆動させるために、一方の入力端子15aと出力端子15cとが電気的に接続されるように、切換スイッチ15に切換制御信号を出力する。さらに、MPU20は、DAC16に、被検査半導体レーザLDを所定の大きさの光出力で発光させるための指定値を含んだデータ信号Dを出力する。
DAC16は、データ信号Dが入力されると、そのデータ信号Dに含まれる指定値に応じた基準電圧信号Vrefを、差動増幅器22の一方の入力端子に出力する。これにより、駆動電流調節回路11aから駆動電流Idrが出力され、この駆動電流Idrが被検査半導体レーザLDに供給されることによって、被検査半導体レーザLDは発光する。
被検査半導体レーザLDから放射された光出力は、減光フィルタ13を介して受光素子12によって検出され、これにより、光出力に応じた光電流Iopが、受光素子12から光出力I−V変換回路14aに入力される。
そして、光電流Iopに応答して光出力I−V変換回路14aから出力される光出力信号Vaが、切換スイッチ15を介して、差動増幅器22の他方の入力端子に入力されると、差動増幅器22が光出力信号Vaを基準電圧信号Vrefと比較増幅し、光出力信号Vaが所定値になるように、駆動電流調節回路11aから出力される駆動電流Idrが調節される。
また、光電流Iopに応答して光出力I−V変換回路14aから出力される光出力信号Vaは、第1のADC18aに入力され、第1のADC18aは、光出力I−V変換回路14aから入力された光出力信号VaをAD変換して、MPU20に出力する。これにより、MPU20によって、被検査半導体レーザLDの光出力が測定される。
同様に、駆動電流I−V変換回路11bから出力される駆動電流信号Vbは、第2のADC18bに入力され、第2のADC18bは、駆動電流I−V変換回路11bから入力された駆動電流信号VbをAD変換して、MPU20に出力する。これにより、MPU20によって、被検査半導体レーザLDに供給される駆動電流Idrが測定される。
同様に、駆動電圧検出回路11cから出力される駆動電圧信号Vcは、第3のADC18cに入力され、第3のADC18cは、駆動電圧検出回路11cから入力された駆動電圧信号VcをAD変換して、MPU20に出力する。これにより、MPU20によって、各被検査半導体レーザLDに印加される駆動電圧が測定される。
次に、被検査半導体レーザLDをACC駆動して試験を行う場合について説明する。MPU20は、被検査半導体レーザLDをACC駆動させるために、他方の入力端子15bと出力端子15cとが電気的に接続されるように、切換スイッチ15に切換制御信号を出力する。さらに、MPU20は、DAC16に、被検査半導体レーザLDを所定の電流値の駆動電流Idrで発光させるための指定値を含んだデータ信号Dを出力する。
DAC16は、データ信号Dが入力されると、そのデータ信号Dに含まれる指定値に応じた基準電圧信号Vrefを、差動増幅器22の一方の入力端子に出力する。これにより、駆動電流調節回路11aから駆動電流Idrが出力され、この駆動電流Idrが被検査半導体レーザLDに供給されることによって、被検査半導体レーザLDは発光する。
そして、駆動電流I−V変換回路11bから出力される駆動電流信号Vbが、切換スイッチ15を介して、差動増幅器22の他方の入力端子に入力されると、差動増幅器22が駆動電流信号Vbを基準電圧信号Vrefと比較増幅し、駆動電流Idrの電流値が所定値になるように、駆動電流調節回路11aから出力される駆動電流Idrが調節される。
光電流Iopに応答して光出力I−V変換回路14aから出力される光出力信号Vaは、第1のADC18aに入力され、第1のADC18aは、光出力I−V変換回路14aから入力された光出力信号VaをAD変換して、MPU20に出力する。これにより、MPU20によって、被検査半導体レーザLDの光出力が測定される。
同様に、駆動電流I−V変換回路11bから出力される駆動電流信号Vbは、第2のADC18bに入力され、第2のADC18bは、駆動電流I−V変換回路11bから入力された駆動電流信号VbをAD変換して、MPU20に出力する。これにより、MPU20によって、被検査半導体レーザLDに供給される駆動電流Idrが測定される。
同様に、駆動電圧検出回路11cから出力される駆動電圧信号Vcは、第3のADC18cに入力され、第3のADC18cは、駆動電圧検出回路11cから入力された駆動電圧信号VcをAD変換して、MPU20に出力する。これにより、MPU20によって、被検査半導体レーザLDに印加される駆動電圧が測定される。
本実施形態に係るバーンイン装置1は、上記のようなエージング試験およびバーンイン試験が行われる前に、各受光素子12の受光感度のばらつきや各減光フィルタ13の減衰特性のばらつきによって生じる各レーザ検査部4の受光量の減衰率のばらつきを校正するための試験が実施されるとともに、バーンインボード3に設けられる各回路構成部品の部品特性のばらつきを校正するための試験が実施される。
各回路構成部品の部品特性のばらつきを校正するための試験は、バーンインボード3をバーンイン装置1の装置本体に設置する前に行われ、受光量の減衰率のばらつきを校正するための試験は、部品特性のばらつきを校正するための試験が行われたバーンインボード3を、バーンイン装置1の装置本体に設置することによって行われる。
先ず、各回路構成部品の部品特性のばらつきを校正するための試験について以下に説明する。この試験には、各レーザ検査部4に設けられる光出力I−V変換回路14aおよび第1のADC18aの部品特性のばらつきを校正するための第1の試験、各レーザ検査部4に設けられる駆動電流I−V変換回路11b、第2のADC18bおよびDAC16の部品特性のばらつきを校正するための第2の試験、各レーザ検査部4に設けられる駆動電圧検出回路11cおよび第3のADC18cの部品特性のばらつきを校正するための第3の試験、以上の3つの試験が含まれる。
図3は、第1の試験を実施するときの回路構成を示す図である。なお、図3では、今回の校正試験に関係しない各回路構成部品については、仮想線で示している。
図3に示すように、第1の試験を実施するにあたっては、図示しないインタフェースを介して、バーンインボード3にPC2が電気的に接続されている。さらに、校正対象のチャンネルCHi(ただし、iは1以上40以下の整数)における、受光素子12を接続するための一対の端子23に、定電流シンク動作可能な直流源31が、高精度電子負荷として電気的に接続される。この直流源31は、PC2によって制御可能に、PC2と電気的に接続されている。
第1の試験では、先ず、エージング試験およびバーンイン試験を実施する際に受光素子12から出力される光電流Iopの電流値の取り得る範囲内から選択された複数のポイント(電流値)で電流シンク動作が行われ、各ポイントについて、光出力I−V変換回路14aおよび第1のADC18aを介してMPU20によって測定される実測のAD変換値AD1と、外部接続された電流計31aによって測定される真の電流値Iとが取得される。
このようにして、チャンネルCHiに関して、複数のポイントで、AD変換値AD1と真の電流値Iとが取得されると、次は、PC2の制御部によって、エージング試験およびバーンイン試験を実施する際にMPU20によって測定される実測のAD変換値AD1を補正するための補正ゲインα1および補正オフセットβ1が、以下の算出方法によって算出される。
先ず、取得されたAD変換値AD1および真の電流値Iをポイントごとにプロットしたときの近似直線(式(1))を求め、傾きa1と切片b1とを導出する。
AD1=a1×I+b1 ・・・(1)
そして、光電流Iopの電流値Iに対する理想的なAD変換値AD01を与える下記の直線式(2)における傾きa01と切片b01とに基づいて、下記の式(3),(4)によって、補正ゲインα1および補正オフセットβ1を算出する。
AD01=a01×I+b01 ・・・(2)
α1=a01/a1 ・・・(3)
β1=b01−α1×b1 ・・・(4)
このようにして、チャンネルCHiに関する補正ゲインα1および補正オフセットβ1が算出されると、PC2の制御部は、これらの補正用データ(α1,β1)を、バーンインボード3のEEPROM19に書き込む。同様にして、このような第1の試験が全てのチャンネルCH1〜CH40について行われる。
図4は、第2の試験を実施するときの回路構成を示す図である。なお、図4では、今回の校正試験に関係しない各回路構成部品については、仮想線で示している。
図4に示すように、第2の試験を実施するにあたっては、前記同様、図示しないインタフェースを介して、バーンインボード3にPC2が電気的に接続されている。また、校正対象のチャンネルCHiにおける、半導体レーザLDを接続するための一対の端子24に電流計32が接続される。この電流計32で測定された電流値は、PC2によって取得される。さらに、MPU20は、他方の入力端子15bと出力端子15cとが電気的に接続されるように、切換スイッチ15に切換制御信号を出力する。
第2の試験では、先ず、DAC16から出力される基準電圧信号Vsを調整することによって、ACC駆動によってエージング試験およびバーンイン試験を実施する際に被検査半導体レーザLDに供給される駆動電流Idrの電流値の取り得る範囲内において選択された複数のポイント(電流値)でACC駆動させる。そして、各ポイントについて、駆動電流I−V変換回路11bおよび第2のADC18bを介してMPU20によって測定される実測のAD変換値AD2と、外部接続された電流計32によって測定される真の電流値Iとが取得される。
このようにして、チャンネルCHiに関して、複数のポイントで、AD変換値AD2と真の電流値Iとが取得されると、次は、PC2の制御部によって、エージング試験およびバーンイン試験を実施する際にMPU20によって測定される実測のAD変換値AD2を補正するための補正ゲインα2および補正オフセットβ2が、以下の算出方法によって算出される。
先ず、取得されたAD変換値AD2および真の電流値Iをポイントごとにプロットしたときの近似直線(式(5))を求め、傾きa2と切片b2とを導出する。
AD2=a2×I+b2 ・・・(5)
そして、電流計32で計測した電流値Iに対する理想的なAD変換値AD02を与える下記の直線式(6)における傾きa02と切片b02とに基づいて、下記の式(7),(8)によって、補正ゲインα2および補正オフセットβ2を算出する。
AD02=a02×I+b02 ・・・(6)
α2=a02/a2 ・・・(7)
β2=b02−α2×b2 ・・・(8)
このようにして、チャンネルCHiに関する補正ゲインα2および補正オフセットβ2が算出されると、PC2の制御部は、これらの補正用データ(α2,β2)を、バーンインボード3のEEPROM19に書き込む。同様にして、このような第2の試験が全てのチャンネルCH1〜CH40について行われる。
この第2の試験では、さらに、各ポイントにおいてMPU20からDAC16に出力されたデータ信号Dに含まれる基準電圧指定値DAxおよび外部接続された電流計32によって測定される真の電流値Iを、ポイントごとにプロットしたときの近似直線(式(9))を求め、傾きaxと切片bxとを導出する。
DAx=ax×I+bx ・・・(9)
このようにして、チャンネルCHiに関する傾きaxおよび切片bxが算出されると、PC2の制御部は、これらの補正用データ(ax,bx)を、バーンインボード3のEEPROM19に書き込む。同様にして、全てのチャンネルCH1〜CH40について補正用データ(ax,bx)が書き込まれる。
図5は、第3の試験を実施するときの回路構成を示す図である。なお、図5では、今回の校正試験に関係しない各回路構成部品については、仮想線で示している。
図5に示すように、第3の試験を実施するにあたっては、前記同様、図示しないインタフェースを介して、バーンインボード3にPC2が電気的に接続される。また、校正対象のチャンネルCHiにおける、半導体レーザLDを接続するための一対の端子24に、プログラマブル電圧電流源33が定電圧負荷として接続される。このプログラマブル電圧電流源33は、PC2によって制御可能に、PC2と電気的に接続されている。さらに、MPU20は、他方の入力端子15bと出力端子15cとが電気的に接続されるように、切換スイッチ15に切換制御信号を出力する。
第3の試験では、先ず、DAC16から出力される基準電圧信号Vsを調整することによって、エージング試験およびバーンイン試験を実施する際に被検査半導体レーザLDに印加される駆動電圧の取り得る範囲内において選択された複数のポイント(電圧値)でACC駆動させる。そして、各ポイントについて、駆動電圧検出回路11cおよび第3のADC18cを介してMPU20によって測定される実測のAD変換値AD3と、外部接続された電圧計33aによって測定される真の電圧値Vとが取得される。
このようにして、チャンネルCHiに関して、複数のポイントで、AD変換値AD3と真の電流値Vとが取得されると、次は、PC2の制御部によって、エージング試験およびバーンイン試験を実施する際にMPU20によって測定される実測のAD変換値AD3を補正するための補正ゲインα3および補正オフセットβ3が、以下の算出方法によって算出される。
先ず、取得されたAD変換値AD3および真の電圧値Vをポイントごとにプロットしたときの近似直線(式(10))を求め、傾きa3と切片b3とを導出する。
AD3=a3×V+b3 ・・・(10)
そして、電圧計33aで計測した電圧値Vに対する理想的なAD変換値AD03を与える下記の直線式(11)における傾きa03と切片b03とに基づいて、下記の式(12),(13)によって、補正ゲインα3および補正オフセットβ3を算出する。
AD03=a03×V+b03 ・・・(11)
α3=a03/a3 ・・・(12)
β3=b03−α3×b3 ・・・(13)
このようにして、チャンネルCHiに関する補正ゲインα3および補正オフセットβ3が算出されると、PC2の制御部は、これらの補正用データ(α3,β3)を、バーンインボード3のEEPROM19に書き込む。同様にして、このような第3の試験が全てのチャンネルCH1〜CH40について行われる。
以上のようにして、バーンイン装置1の装置本体に設置されるバーンインボード3は、装置本体に設置される前に、前記第1から第3の試験が行われ、各チャンネルCHiごとに、補正用データ(α1,β1),(α2,β2),(α3,β3),(ax,bx)が、EEPROM19に書き込まれる。
次に、上記各補正データがEEPROM19に書き込まれたバーンインボード3が設置されたバーンイン装置1において、受光素子12の受光感度のばらつきや減光フィルタ13の減衰特性のばらつきによって生じる各レーザ検査部4の受光量の減衰率を自動的に校正するための試験について以下に説明する。
先ず、電流−光出力特性、すなわち、駆動電流値と光出力値との関係が既知の半導体レーザである標準サンプル(以下、「校正用半導体レーザ」と称する)LDを40個用意し、各レーザ検査部4に装着する。以下では、校正用半導体レーザLDが装着されたレーザ検査部4を「チャンネルCH」と称し、40個の各チャンネルCHを、校正のための試験が行われる順に従って、1〜40の数字を付して示すこととする。また、各チャンネルCHに装着される校正用半導体レーザLDにも、対応する数字を付して示すこととする。
なお、これら40個の校正用半導体レーザLD1〜LD40は、実動条件と等しい光出力値Psa(たとえば、120mW)で駆動したときの基準駆動電流値Isa−1,Isa−2,Isa−3,・・・,Isa−40と、実動条件に近い第1の光出力値Psb(たとえば、100mW)で駆動したときの基準駆動電流値Isb−1,Isb−2,Isb−3,・・・,Isb−40と、実動条件に近い第2の光出力値Psc(たとえば、80mW)で駆動したときの基準駆動電流値Isc−1,Isc−2,Isc−3,・・・,Isc−40と、実動条件に近い第3の光出力値Psd(たとえば、60mW)で駆動したときの基準駆動電流値Isd−1,Isd−2,Isd−3,・・・,Isd−40とが、予め別の測定装置によって測定され、測定された各データ値は、バーンイン装置1に接続されているPC2に予め記憶されているものとする。
図6は、本実施形態に係るバーンイン装置1を用いた各レーザ検査部4の受光量の減衰率の校正手順を説明するためのタイミングチャートである。図6(a)は、最初に測定が行われるチャンネルCH1の校正用半導体レーザLD1に供給される駆動電流の時間変化を示すグラフG11を示し、図6(b)は、2番目に測定が行われるチャンネルCH2の校正用半導体レーザLD2に供給される駆動電流の時間変化を示すグラフG12を示し、図6(c)は、最後に校正が行われるチャンネルCH40の校正用半導体レーザLD40に供給される駆動電流の時間変化を示すグラフG13を示している。
図6において、縦軸は、各校正用半導体レーザLD1〜LD40に供給される駆動電流の電流値を示し、横軸は、時間の経過を示している。なお、図6では、チャンネルCH3〜CH39についての駆動電流の時間変化を示すグラフは省略して示している。
40個の校正用半導体レーザLD1〜LD40が各レーザ検査部4に装着されると、MPU20は、一方の入力端子15aと出力端子15cとが電気的に接続されるように、各チャンネルCH1〜CH40における切換スイッチ15に切換制御信号を出力する。さらに、MPU20は、第1〜第3のセレクタ17a〜17cから、チャンネルCH1における光出力信号Va、駆動電流信号Vbおよび駆動電圧信号Vcがそれぞれ出力されるように、第1〜第3のセレクタ17a〜17cに選択制御信号を出力する。そして、時刻T10において、チャンネルCH1の校正用半導体レーザLD1をAPC駆動させる。
具体的には、MPU20は、実動条件と等しい光出力値Psaとなるべき理論上の基準電圧指定値Dsa10を含むデータ信号DをチャンネルCH1のDAC16に出力して、チャンネルCH1の校正用半導体レーザLD1をAPC駆動させる。これにより、校正用半導体レーザLD1は、発光を開始する。
そして、MPU20は、校正用半導体レーザLD1の駆動開始から、予め定める時間t0(たとえば、10ミリ秒)経過後の時刻T11において、駆動電流調節回路11aから校正用半導体レーザLD1に供給される駆動電流Idrの電流値を測定して記録し、時刻T11後の時刻T12において、校正用半導体レーザLD1の駆動を停止させる。これにより、時刻T12後の時刻T13で、校正用半導体レーザLD1は発光を停止する。
このように、校正用半導体レーザLD1の1回の発光に対して、1度だけ駆動電流Idrの測定が行われる。なお、校正用半導体レーザLD1の発光開始から発光停止までの期間(T10〜T13)では、他の校正用半導体レーザLD2〜LD40は駆動されていない。
MPU20は、このようにして測定された駆動電流Idrの電流値(以下、「測定電流値」と称する)と、PC2に記憶されている基準駆動電流値Isa−1とを比較する。そして、比較の結果、測定電流値が、基準駆動電流値Isa−1に対して予め定める許容範囲(たとえば、0.05mA)以内に入っている場合には、そのときの基準電圧指定値Dsa10をPC2に通知して、チャンネルCH1に対する校正を終了する。
一方、測定電流値が、基準駆動電流値Isa−1に対して予め定める許容範囲以内に入っていない場合には、時間をあけて2回目の校正が実施される。図6(a)に示す例では、測定電流値が、基準駆動電流値Isa−1に対して予め定める許容範囲以内に入っていないため、後述するように、最後のチャンネルCH40に対する1回目の校正後に、チャンネルCH1に対する2回目の校正が実施される。
チャンネルCH1に対する1回目の校正後の時刻T13において、MPU20は、第1〜第3のセレクタ17a〜17cから、チャンネルCH2における光出力信号Va、駆動電流信号Vbおよび駆動電圧信号Vcがそれぞれ出力されるように、第1〜第3のセレクタ17a〜17cに選択制御信号を出力して、チャンネルCH2の校正用半導体レーザLD2をAPC駆動させる。
具体的には、MPU20は、実動条件と等しい光出力値Psaとなるべき理論上の基準電圧指定値Dsa20を含むデータ信号DをチャンネルCH2のDAC16に出力して、チャンネルCH2の校正用半導体レーザLD2をAPC駆動させる。これにより、校正用半導体レーザLD2は、発光を開始する。
そして、MPU20は、校正用半導体レーザLD2の駆動開始から、予め定める時間t0経過後の時刻T14において、駆動電流調節回路11aから校正用半導体レーザLD2に供給される駆動電流Idrの電流値を測定して記録し、時刻T14後の時刻T15において、校正用半導体レーザLD2の駆動を停止させる。これにより、時刻T15後の時刻T16で、校正用半導体レーザLD2は発光を停止する。
MPU20は、前記と同様に、測定電流値と、PC2に記憶されている基準駆動電流値Isa−2とを比較し、比較の結果、測定電流値が、基準駆動電流値Isa−2に対して前記予め定める許容範囲以内に入っている場合には、そのときの基準電圧指定値Dsa20をPC2に通知して、チャンネルCH2に対する校正を終了する。
一方、測定電流値が、基準駆動電流値Isa−2に対して予め定める許容範囲以内に入っていない場合には、時間をあけて2回目の校正が実施される。図6(b)に示す例では、測定電流値が、基準駆動電流値Isa−2に対して予め定める許容範囲以内に入っているため、チャンネルCH2に対する校正は1回で終了される。
同様にして、チャンネルCH3〜CH39に対する1回目の校正が終了すると、時刻T17において、MPU20は、第1〜第3のセレクタ17a〜17cから、チャンネルCH40における光出力信号Va、駆動電流信号Vbおよび駆動電圧信号Vcがそれぞれ出力されるように、第1〜第3のセレクタ17a〜17cに選択制御信号を出力して、チャンネルCH40の校正用半導体レーザLD40をAPC駆動させる。
具体的には、MPU20は、実動条件と等しい光出力値Psaとなるべき理論上の基準電圧指定値Dsa400を含むデータ信号DをチャンネルCH40のDAC16に出力して、チャンネルCH40の校正用半導体レーザLD40をAPC駆動させる。これにより、校正用半導体レーザLD40は、発光を開始する。
そして、MPU20は、校正用半導体レーザLD40の駆動開始から、予め定める時間t0経過後の時刻T18において、駆動電流調節回路11aから校正用半導体レーザLD40に供給される駆動電流Idrの電流値を測定して記録し、時刻T18後の時刻T19において、校正用半導体レーザLD40の駆動を停止させる。これにより、時刻T19後の時刻T20で、校正用半導体レーザLD40は発光を停止する。MPU20は、前記と同様に、測定電流値と、PC2に記憶されている基準駆動電流値Isa−40とを比較し、比較結果に応じた処理を実行する。
このようにして、チャンネルCH1〜CH40に対する1回目の校正が終了すると、チャンネルCH1に戻って、2回目の校正が実施される。すなわち、チャンネルCH40に対する1回目の校正が終了後の時刻T20において、MPU20は、第1〜第3のセレクタ17a〜17cから、チャンネルCH1における光出力信号Va、駆動電流信号Vbおよび駆動電圧信号Vcがそれぞれ出力されるように、第1〜第3のセレクタ17a〜17cに選択制御信号を出力して、チャンネルCH1の校正用半導体レーザLD1をAPC駆動させる。
具体的には、MPU20は、1回目の校正における駆動電流値が基準駆動電流値Isa−1よりも低かったことから、1回目の校正時に用いられた基準電圧指定値Dsa10よりも大きな基準電圧指定値Dsa11を含むデータ信号DをチャンネルCH1のDAC16に出力して、チャンネルCH1の校正用半導体レーザLD1をAPC駆動させる。これにより、校正用半導体レーザLD1は、再度発光を開始する。
そして、MPU20は、校正用半導体レーザLD1の駆動開始から、予め定める時間t0経過後の時刻T21において、駆動電流調節回路11aから校正用半導体レーザLD1に供給される駆動電流Idrの電流値を測定して記録し、時刻T21後の時刻T22において、校正用半導体レーザLD1の駆動を停止させる。これにより、時刻T22後の時刻T23で、校正用半導体レーザLD1は発光を停止する。
MPU20は、前記と同様に、測定電流値と、PC2に記憶されている基準駆動電流値Isa−1とを比較し、比較結果に応じた処理を実行する。図6(a)に示す例では、測定電流値が、基準駆動電流値Isa−1に対して予め定める許容範囲以内に入っているため、チャンネルCH1に対する校正は2回目で終了される。
チャンネルCH1に対する2回目の校正が終了すると、チャンネルCH2に対する校正は既に終了しているので、チャンネルCH2を飛ばして、未だ校正が終了していないチャンネルCHに対する2回目の校正が実施される。このようにして、実動条件と等しい光出力値Psaに関して、全てのチャンネルCH1〜CH40に対する校正が終了すると、第1〜第3の光出力値Psb〜Psdに関しても、同様に、全てのチャンネルCH1〜CH40に対する校正を行う。
以上のようにして、各光出力値Psa〜Psdに関して、全てのチャンネルCH1〜CH40に対する校正が終了すると、次は、PC2の制御部によって、各チャンネルCHごとに、補正ゲインGi(ただし、iは、1以上40以下の整数)および補正オフセットOiが、以下の算出方法によって算出される。
具体的には、校正用半導体レーザLDiが装着されているチャンネルCHiに関して、基準駆動電流値Isa−i,Isb−i,Isc−i,Isd−i、およびこれらの基準駆動電流値の駆動電流Idrを校正用半導体レーザLDiに供給するためにDAC16に与えられた基準電圧指定値Dsai,Dsbi,Dsci,Dsdiをそれぞれプロットしたときの近似直線(式(14))を求め、傾きa4と切片b4とを導出する。
Ds=a4×Is+b4 ・・・(14)
そして、基準駆動電流値Isa−i,Isb−i,Isc−i,Isd−iに対する理想的な基準電圧指定値Dsai0,Dsbi0,Dsci0,Dsdi0を与える下記の直線式(15)における傾きa04と切片b04とに基づいて、下記の式(16),(17)によって、補正ゲインα4および補正オフセットβ4を算出する。
Dsi0=a04×Is+b04 ・・・(15)
α4=a04/a4 ・・・(16)
β4=b04−α4×b4 ・・・(17)
このようにして、チャンネルCHiに関する補正ゲインα4および補正オフセットβ4が算出されると、PC2の制御部は、これらの補正用データ(α4,β4)を、バーンインボード3のEEPROM19に書き込む。同様にして、全てのチャンネルCH1〜CH40について、補正用データ(α4,β4)がEEPROM19に書き込まれる。
以上のようにして、バーンインボード3のEEPROM19には、補正用データ(α1,β1),(α2,β2),(α3,β3),(α4,β4),(ax,bx)が、チャンネルCHiごとに書き込まれる。
このようにしてEEPROM19に書き込まれたチャンネルCHiの補正用データ(α1,β1)は、エージング試験およびバーンイン試験を実施する際に、MPU20によって測定されるチャンネルCHiについての実測のAD変換値AD1を、下記の補正式(18)で補正するために用いられる。なお、補正式(18)において、ADr1は、補正後のAD変換値を示している。
ADr1=α1×AD1+β1 ・・・(18)
また、EEPROM19に書き込まれたチャンネルCHiの補正用データ(α2,β2)は、エージング試験およびバーンイン試験を実施する際に、MPU20によって測定されるチャンネルCHiについての実測のAD変換値AD2を、下記の補正式(19)で補正するために用いられる。なお、補正式(19)において、ADr2は、補正後のAD変換値を示している。
ADr2=α2×AD2+β2 ・・・(19)
また、EEPROM19に書き込まれたチャンネルCHiの補正用データ(α3,β3)は、エージング試験およびバーンイン試験を実施する際に、MPU20によって測定されるチャンネルCHiについての実測のAD変換値AD3を、下記の補正式(20)で補正するために用いられる。なお、補正式(20)において、ADr3は、補正後のAD変換値を示している。
ADr3=α3×AD3+β3 ・・・(20)
また、EEPROM19に書き込まれたチャンネルCHiの補正用データ(α4,β4)は、APC駆動によってエージング試験およびバーンイン試験を実施する際に、チャンネルCHiの被検査半導体レーザLDiを所定の光出力で駆動させるためにMPU20からチャンネルCHiのDAC16に与えられる基準電圧指定値(指定光出力DA分解能換算値)DAx1を、下記の補正式(21)で補正するために用いられる。なお、補正式(21)において、DAr1は、補正後の基準電圧指定値を示している。
DAr1=α4×DAx1+β4 ・・・(21)
また、EEPROM19に書き込まれたチャンネルCHiの補正用データ(ax,bx)は、ACC駆動によってエージング試験およびバーンイン試験を実施する際に、チャンネルCHiの被検査半導体レーザLDiに所定の電流値の駆動電流Idrを供給するためにMPU20からチャンネルCHiのDAC16に与えられる基準電圧指定値(指定電流DA分解能換算値)DAx2を、下記の補正式(22)で補正するために用いられる。なお、補正式(22)において、DAr2は、補正後の基準電圧指定値を示している。
DAr2=ax×DAx2+bx ・・・(22)
以上のように、本実施形態に係るバーンイン装置1は、チャンネルCH1〜CH40ごとにDAC16が設けられて構成されているので、MPU20は、各チャンネルCH1〜CH40の校正用半導体レーザLD1〜LD40を個別に発光させることができる。したがって、各レーザ検査部4の受光量の減衰率のばらつきを校正するための試験を実施する際に、校正用半導体レーザLD1〜LD40を個別に発光させることで、各校正用半導体レーザLD1〜LD40の駆動開始から駆動電流Idrの電流値の測定を開始するまでの時間t0を、全てのチャンネルCH1〜CH40において統一することができる。したがって、熱による影響を各チャンネルCH1〜CH40で均一化することができる。
また、受光量の減衰率のばらつきを校正するための試験では、校正用半導体レーザLDが駆動されるチャンネルCHが順次切り換えられ、各チャンネルCH1〜CH40において校正用半導体レーザLDを駆動する場合、1回の発光に対して1度だけ駆動電流Idrの電流値の測定を行い、測定を終了すると直ぐに、校正用半導体レーザLDの駆動が停止される。したがって、熱による影響を各チャンネルCH1〜CH40で高精度に均一化することができる。
また本実施形態に係るバーンイン装置1は、バーンインボード3上に補正用データが格納されるメモリであるEEPROM19が搭載されているので、上位のPCで補正用データを保存管理する必要をなくすことができる。また、装置本体に設置されるバーンインボード3の入れ換えが必要な場合であっても、上位のPCではデータの入れ換えが不要となる。
また、補正用データが格納されるEEPROM19は、バーンインボード3上に搭載されたイーサネットコントローラ21を介して、外部から書き換えることができる。これにより、バーンインボード3を装置本体に組付ける前に、校正用の機器を使用して補正用データをEEPROM19に格納することができ、また、バーンインボード3を装置本体に組付けた後でのみ校正可能な項目に関しては、MPU20が校正用プログラムを実行することによって算出された補正用データを、同じEEPROM19に格納することができる。これにより、バーンインボード3上に半固定抵抗器を設ける必要がなくなり、校正処理を自動化することによって、部品コストおよび作業コストを低減することができる。