JP2013256686A - 真空チャンバー構成部品 - Google Patents

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【課題】付着した汚れを容易に除去できる真空チャンバー構成部品を提供する。
【解決手段】真空チャンバー構成部品20は,クロム水和オキシ酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜21bを表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下のステンレス鋼基材と,前記ステンレス鋼基材に前記不動態皮膜を介して形成され,電解Niメッキ皮膜,電解Snメッキ皮膜,電解Cuメッキ皮膜,電解Agメッキ皮膜,無電解Ni−Pメッキ皮膜,及び無電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つの金属メッキ皮膜22と,を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は,真空チャンバー構成部品に関し,特に金属メッキ皮膜を備える真空チャンバー構成部品に関する。
半導体デバイス等の製造工程においては,スパッタリング法や真空蒸着法等により,真空チャンバー内において基材に各種の薄膜が成膜される。この成膜処理中には,チャンバー内壁,防着板,真空部品等の真空チャンバー構成部品に不要な膜が付着してしまう。
真空チャンバー構成部品に付着した膜は,他の種類の膜を成膜する際に汚染源となるので,不要な膜が付着した構成部品は洗浄が必要となる。真空チャンバー構成部品の洗浄は,サンドブラストによる物理的洗浄や洗浄液を用いた化学的洗浄によって行われることが多い。このような洗浄作業は高額で洗浄完了までに時間がかかるため,真空チャンバー構成部品から汚れを除去する、より簡便な手法が検討されている。例えば,特開2005-101435号公報には,アルミニウムシートを接着剤で剥離可能に貼り合わせて成る防着板が開示されている。この防着板が汚染された場合には,汚れが付着した最表層のアルミニウムシートを剥離するだけで下層から汚染されていない別層のアルミニウムシートが現れるので,従来の洗浄処理を行うことなく防着板を再利用できる。
特開2005-101435号公報
しかしながら,アルミニウムシートを接着剤によって接着すると,その接着剤からアウトガスが発生するので,防着板自身が汚染源になってしまう。また,真空チャンバー構成部品は複雑な形状をしたものが多く,かかる複雑な形状を有する構成部品にアルミニウムシートを貼り付けることは困難である。このように,アルミニウムシートを貼り合わせる構造は,平面的な防着板以外への適用が難しい。
そこで、本発明は,付着した汚れを容易に除去できる真空チャンバー構成部品を提供することを目的の一つとする。本発明のその他の目的は,本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
本発明者は、表層に不動態皮膜が形成された基材の表面粗さを所定値以下にし,その不動態皮膜上に特定の金属メッキ皮膜を形成すると,当該金属メッキ皮膜が基材から剥離し易いことに着目した。そして,かかる金属メッキ皮膜を真空チャンバー構成部品に応用することにより,当該金属メッキ皮膜を剥離させるだけで真空チャンバー構成部品に付着した汚れを容易に除去できることを見いだした。本発明は,かかる知見に基づいてなされたものである。本発明の各実施形態について,以下で詳細に説明を行う。
本発明の一実施形態に係る真空チャンバー構成部品は,クロム水和オキシ酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下のステンレス鋼基材と,前記ステンレス鋼基材に前記不動態皮膜を介して形成され,電解Niメッキ皮膜,電解Snメッキ皮膜,電解Cuメッキ皮膜,電解Agメッキ皮膜,無電解Ni−Pメッキ皮膜,及び無電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つの金属メッキ皮膜と,を備える。
本発明の他の実施形態に係る真空チャンバー構成部品は,チタン酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下のチタン合金基材と,前記チタン合金基材に前記不動態皮膜を介して形成され,電解Niメッキ皮膜及び電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つの金属メッキ皮膜と,を備える。
本発明の他の実施形態に係る真空チャンバー構成部品は,基材と,前記基材上に形成された無電解Niメッキ皮膜であって,その表層にニッケル酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を備え,その硬度がビッカース硬さHvで900以上であり,且つ,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.6μm以下のNiメッキ皮膜と,前記Niメッキ皮膜に前記不動態皮膜を介して形成された電解Niメッキ皮膜と,を備える。
本発明の他の実施形態に係る真空チャンバー構成部品は,アルミニウム酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.3μm以下のアルミニウム合金基材と,前記アルミニウム合金基材に前記不動態皮膜を介して形成された電解Cuメッキ皮膜と,を備える。
本発明の様々な実施形態によれば、付着した汚れを容易に除去できる真空チャンバー構成部品が提供される。
本発明の一実施形態に係る真空チャンバー構成部品が用いられる真空装置の概略図 本発明の一実施形態に係る真空チャンバー構成部品の概略図
本発明の様々な実施形態について添付図面を参照して説明する。各実施形態において、類似の構成要素には類似の参照符号を付して説明を行い、その類似の構成要素についての詳細な説明は適宜省略する。
本発明は,各種真空装置に備えられる真空チャンバーに適用可能であり,例えば,基板に成膜するための各種成膜装置に備えられる真空チャンバーに適用され得る。本発明を適用可能な成膜装置には,各種物理蒸着法(PVD法)により基板に成膜する各種PVD装置,各種化学蒸着法(CVD法)により基板に成膜する各種CVD装置,及び各種エッチング法により基板表面を加工するエッチング装置が含まれる。本発明を適用可能なPVD装置には,一例として,スパッタリング法により基板に成膜する各種スパッタリング装置が含まれる。
図1は,本発明の一実施形態に係る真空チャンバー構成部品が用いられるスパッタリング装置の概略図を示す。図示の通り,本発明の一実施形態に係る真空装置10は,真空チャンバー11を備えており,この真空チャンバー11の内部に,基板13を固定するための基板固定治具12,ターゲット14を固定するためのターゲット設置部15を備えている。基板固定治具12及びターゲット設置部15は,基板13に均一な薄膜を形成するために,それぞれ回転可能に構成されてもよい。
真空チャンバー11の内部は,ガス管18a及びメインバルブ18bを通じて,圧力制御手段18と接続されている。圧力制御手段18は,真空ポンプを備えており,この真空ポンプにより,所定の到達圧力となるまで真空チャンバー11を真空排気する。成膜時には,ガス供給部19からガス管19a及びガス供給用バルブ19bを介して真空チャンバー11内にスパッタガスが供給され,また,電源部16からターゲット14に対して電圧が印可される。これにより,ターゲットから飛び出した原子がスパッタガスと反応し,この反応により生成された物質が基板13表面に到達する。この基板13表面に到達した物質が,基板13表面に堆積して,当該物質から成る薄膜が成膜される。
このターゲットから飛び出した原子及び当該原子とスパッタガスとの反応により生成される生成物(以下,「膜構成物質」という。)は,基板13のみならず,真空チャンバー11の内壁11aや,真空チャンバー11内に露出している各種真空部品に付着し得る。この膜構成物質が内壁11aへ到達することを防止するために,内壁11aを覆うように防着板17が設置される。このように,真空チャンバー11内で成膜処理を行うことにより,膜構成物質が真空チャンバー11に備えられた防着板17や各種真空部品に付着し,これらの表面に不要な膜が形成されてしまう。防着板17の形状や設置方法によっては,内壁11aにも不要な膜が形成され得る。
このような真空チャンバー11の構成部品に形成される不要な膜は,成膜処理に様々な不具合を引き起こし得る。例えば,真空チャンバー11の構成部品に付着した不要な膜とは別種の膜を当該真空チャンバー11内で成膜する際に汚染源になる。また,真空チャンバー11の構成部品に付着した膜が水分を吸着することにより,真空排気が長時間化することがある。さらに,真空チャンバー11の構成部品に付着した不要な膜が絶縁性の場合には,真空チャンバー11内に所望の電界を形成することを妨げることがある。
本発明は,上述のようにして汚れが付着した場合であっても,当該汚れを容易に除去できる真空チャンバー構成部品を提供する。図2は,本発明の一実施形態に係る真空チャンバー構成部品を概略的に示す図である。図示の通り,本発明の一実施形態に係る真空チャンバー構成部品20は,基材21と,当該基材21に形成された金属メッキ皮膜22とを備える。基材21は,基材本体21aと,基材本体21aの表層に形成された不動態皮膜21bと,を備える。金属メッキ皮膜22は,不動態皮膜21bを介して基材本体21aに設けられる。
真空チャンバー構成部品20は,真空チャンバー11内で真空雰囲気中に露出される任意の部品又は部材であり,例えば,真空チャンバー11の内壁11a,真空バルブ(不図示),真空計(不図示),及び各種真空部品を含む。図1に示した実施形態における内壁11a,基板固定治具12,ターゲット設置部15,防着板17,メインバルブ18b,ガス供給用バルブ19bは,いずれも真空チャンバー構成部品20の例である。また,ガス管18a及びガス管19aの端部は真空チャンバー11内に露出するので,ガス管18a及びガス管19aも真空チャンバー構成部品20に含まれ得る。
本発明が適用される真空チャンバー構成部品は図示されたものに限られず,例えば,基板固定治具12やターゲット設置部15を回転させるための回転機構,温度測定用の熱電対,ビューポートのシャッター,真空ポンプの回転部分,真空チャンバー11内に備えられる各種ボルト,ナット,バンド,及びフランジ等も本発明が適用される真空チャンバー構成部品に含まれる。本明細書で明示的に説明する以外にも,真空チャンバー11は,その用途に応じた様々な構成部品を備えることができ,かかる構成部品も本発明が適用される真空チャンバー構成部品に含まれ得る。
基材本体21a,不動態皮膜21b,金属メッキ皮膜22の材質は,完成した構成部品20において,金属メッキ皮膜22が基材21から剥離し易いように適宜定められる。例えば,一実施形態において,基材21aはステンレス鋼(SUS304)等のステンレス鋼を構成部品20の形状に形成したものである。図2には,板状の基材21が示されているが,基材21aは,構成部品20の種類に応じた任意の形状を取ることができる。例えば,構成部品20がボルトの場合には,ボルトの形状となる。基材21aがステンレス鋼から成る場合には,不動態皮膜21bは,クロム水和オキシ酸化物CrOx(OH)2-x・nH2Oを主体とする皮膜であり,金属メッキ皮膜22は,電解Niメッキ皮膜,電解Snメッキ皮膜,電解Cuメッキ皮膜,電解Agメッキ皮膜,無電解Niメッキ皮膜,及び無電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つのメッキ皮膜である。ステンレス鋼から成る基材21は,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下であり,クロム水和オキシ酸化物の不動態皮膜21bの膜厚は1nm以上である。また,金属メッキ皮膜22の膜厚は,いずれの種類のメッキを用いる場合でも,概ね50nmから1000μmである。金属メッキ皮膜22の膜厚は,剥離時の引っ張り応力に耐えるために,好ましくは20μmから100μmとされる。
他の実施形態において,基材21aは,チタン合金(TP340)等のチタン合金を構成部品20の形状に形成したものである。この場合,不動態皮膜21bは,チタン酸化物を主体とする膜厚1nm以上の皮膜であり,金属メッキ皮膜22は,電解Niメッキ皮膜及び電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つのメッキ皮膜である。チタン合金の基材21は,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下であり,チタン酸化物を主体とする不動態皮膜21bの膜厚は1nm以上である。
他の実施形態において,基材21aは,A2000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金を構成部品20の形状に形成したものである。この場合,不動態皮膜21bは,アルミニウム酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を主体とする膜厚1nm以上の皮膜であり,金属メッキ皮膜22は,電解Cuメッキ皮膜である。アルミニウム合金の基材21は,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.3μm以下であり,アルミニウム酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を主体とする不動態皮膜21bの膜厚は1nm以上である。
他の実施形態において,基材21aは,無電解Niメッキ可能な任意の材質から成る基材を構成部品20の形状に形成したものであり,例えば,ステンレス鋼,鉄鋼,Al,Al合金,Ti,Ti合金,Mg,Mg合金,Cu,Cu合金,ガラス,セラミクス,インコネル,及び黄銅等の各種合金材料から成る。この場合,基材21aの表面には,常法に従って、直接、または下地層を伴って間接的に無電解Niメッキ層(不図示)が形成される。この無電解Niメッキ皮膜は,硬度がビッカース硬さHvで900以上であり,且つ,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.6μm以下である。この無電解Niメッキ層の表層には,ニッケル酸化物を主体とするる膜厚1nm以上の不動態皮膜21bが形成される。この不動態皮膜21bの上に,金属メッキ皮膜22として,電解Niメッキ皮膜が形成される。
真空チャンバー構成部品20の作成方法について,ステンレス鋼の基材21を用いる場合を例に説明する。基材21の材料としてチタン合金等の他の材料を用いる場合にも,同様の方法で構成部品20を作成することができるので,ステンレス鋼の基材21を用いる場合を代表例として説明する。まず,真空チャンバー構成部品の材料として常用されているステンレス鋼基材を準備し,構成部品20の形状に加工する。準備したステンレス鋼基材の表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μmよりも粗い場合には,ラッピング研磨やブラスト加工により,当該ステンレス鋼の表面粗さを算術平均粗さRaで0.7μm以下となるように調整する。ステンレス鋼の表層には,通常,膜厚が1nm以上のクロム水和オキシ酸化物を主体とする不動態皮膜が形成されている。ステンレス鋼の表層にクロム水和オキシ酸化物を主体とする不動態皮膜が存在しない場合,又は,不動態皮膜21bの膜厚が1nmよりも薄い場合には,基材21を加熱することにより,基材21表層におけるステンレス鋼の酸化を促進し,基材21の表層に1nm以上のクロム水和オキシ酸化物を主体とする不動態皮膜21bを形成する。
次に,不動態皮膜21bの上に,電解Niメッキ皮膜,電解Snメッキ皮膜,電解Cuメッキ皮膜,電解Agメッキ皮膜,無電解Niメッキ皮膜,及び無電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つの金属メッキ皮膜22を形成する。この金属メッキ皮膜22は,常用されている公知のメッキ法を適宜用いて形成される。
金属メッキ皮膜22の種類及び膜厚は,基材12の材質,基材21の表面粗さ,不動態皮膜21bの形成状態,基材21表層に付与される剥離促進用の油膜や異物層の有無,及び/又は当該構成部品が使用される真空装置の条件(初期到達真空度,当該初期到達真空度への到達時間,プロセス中の真空度,原料ガスの種類,プロセス温度,プロセス中の圧力,及び印加電圧,汚染源として除去されるべき元素等)に応じて,適宜変更することができる。
金属メッキ皮膜22を形成する前に,基材21に対して,様々な前処理を行うことができる。例えば、金属メッキ皮膜22の形成前に,基材21の表面に油膜,ワックス,ロウ,又はグラファイトをスプレー塗布してもよく,基材21の表面に非晶質炭素膜の薄膜を形成してもよい。このような前処理を行うことにより,金属メッキ皮膜22が基材21からより一層剥離しやすくなる。スプレー塗布により形成された薄膜や非晶質炭素膜の薄膜は,メッキに必要な導電性を実質的に阻害しない程度の厚さに形成され,例えば,100nm以下の膜厚となるように形成される。基材へのメッキ皮膜の密着性を向上させるために常用されている水洗,湯浄,アルカリ脱脂,電解脱脂,アルコール洗浄,有機溶剤洗浄などの前処理は,金属メッキ皮膜22が基材21から剥がれにくくなる要因となり得るので,省略することが望ましい。
金属メッキ皮膜22を形成する前に,不動態皮膜21bが形成された基材21の表面の一部に平滑加工を行い,当該一部の表面粗さが他の部分よりも小さくなるようにしてもよい。例えば,図2に示されているように,基材21の表面の一部に鏡面加工を施して,鏡面部23を設けても良い。この鏡面部23は,金属メッキ皮膜22の剥がし易さを考慮して,基材21表面の任意の位置に設けることができる。例えば,基材21の縁部に沿って設けられる。このように,基材21の表面の一部に,他の部分よりも表面粗さが小さい部分を設けることにより,当該部分を起点として,金属メッキ皮膜22をより剥がし易くなる。
また,基材21の表面の一部分に粘着テープ等でマスキングを施した状態で金属メッキ皮膜22を形成することにより,当該一部分にメッキ皮膜が形成されないようにしてもよい。これにより,メッキ皮膜が形成されていない部分と形成されている部分とに段差が生じるので,この段差を起点として金属メッキ皮膜22をより容易に剥離させることができる。
以上のようにして形成された金属メッキ皮膜22は,作業者が指先で当該金属メッキ皮膜22の一部を摘まんで引っ張るだけで,基材21から容易に剥離させることができる。金属メッキ皮膜22を摘まむために,ケガキ,ピンセット,プライヤー,ペンチなどの工具を用いることもできる。また,金属メッキ皮膜22に超音波を印加し,又は,振動を加えることにより,金属メッキ皮膜22が基材21から一層剥がれ易くなるようにすることもできる。また,金属メッキ皮膜22を交互に高温と低温にすることによっても,金属メッキ皮膜22が基材21から剥がれ易くすることができる。これらの剥離方法の一部を他の剥離方法と併用して用いることもできる。
本発明の各実施形態においては,金属メッキ皮膜22を基材21に設けても,金属メッキ皮膜22自身が汚染源となることはない。また,金属メッキ皮膜22の一方の面は基材21の面に密着しているため,水分の吸着量が増加して真空排気を妨げたりすることがない。また,金属メッキ皮膜22は,シート状に基材21から剥離され基材21に残留しない。このため,単純な剥離作業を行うだけで,基材21から金属メッキ皮膜22を除去することができる。また,シート状に剥離された金属メッキ皮膜22に付着している各種物質を容易に回収することができる。特に,金,銀,白金,ロジウム等の貴金属が金属メッキ皮膜22に付着する場合には,金属メッキ皮膜22をSnメッキ皮膜など酸などの薬液に溶解しやすい皮膜とすることができる。Snメッキ皮膜は,酸に溶解し易いので,剥離されたSnメッキ皮膜を酸溶液に浸漬させることで,Snメッキ皮膜に付着した金等の貴金属を容易に分離回収することができる。
図2には,基材21の一方の面に金属メッキ皮膜22を形成する例を説明したが,金属メッキ皮膜22は,基材21のいずれの表面にも形成され得る。また,金属メッキ皮膜22の上に,本発明の範囲において,様々な皮膜が形成され得る。例えば,金属メッキ皮膜22の上には,Snメッキ皮膜を形成することで,表面に付着した貴金属を容易に回収できるようになる。また金属メッキ皮膜22の上に,Agメッキ皮膜,Cuメッキ皮膜,Auメッキ皮膜,又はRhメッキ皮膜を形成することにより,完成品表面の導電性を向上させることができる。また,金属メッキ皮膜22の上に,非晶質炭素膜や真空プロセスで形成するAuやITOなどの膜を形成しても良い。
実施例1−1〜実施例1−6
表層に1nm以上のクロム水和オキシ酸化物が形成され,表面粗さが算術平均粗さRaで0.08μmのステンレス鋼(SUS304)から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.5mmの板材を準備した。次に,この板材の表層を希釈した中性洗剤で洗浄した。この板材の表面に,日本化学産業株式会社製のスルファミン酸Niメッキ液を用いて,常法に従い,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られたクロム水和オキシ酸化物の不動態皮膜を備えるステンレス鋼基材上に電解Niメッキ皮膜が形成された試料を実施例1−1とした。本明細書に記載されている表面粗さ(算術平均粗さRa)の測定値は,キーエンス社製超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9510を用い,レンズ倍率を150倍,RUN MODEをカラー超深度,波長を408nm,最大出力を0.9mW,ピッチを0.1μmに設定して測定されたものである。
実施例1−1と同じステンレス鋼の板材を準備し,この板材の表面に,日本化学産業株式会社製のピロリン酸Cuメッキ液を用いて,常法に従い,膜厚が約25μmの電解Cuメッキを形成した。このようにして得られたクロム水和オキシ酸化物の不動態皮膜を備えるステンレス鋼基材上に電解Cuメッキ皮膜が形成された試料を実施例1−2とした。
実施例1−1と同じステンレス鋼の板材を準備し,この板材の表面に,石原薬品株式会社製のUTBSnメッキ液を用いて,常法に従い,膜厚が約25μmの電解Snメッキを形成した。このようにして得られたクロム水和オキシ酸化物の不動態皮膜を備えるステンレス鋼基材上に電解Snメッキ皮膜が形成された試料を実施例1−3とした。
実施例1−1と同じステンレス鋼の板材を準備し,この板材の表面に,大和化成株式会社製のダインシルバーメッキ液を用いて,常法に従い,膜厚が約25μmの電解Agメッキを形成した。このようにして得られたクロム水和オキシ酸化物の不動態皮膜を備えるステンレス鋼基材上に電解Agメッキ皮膜が形成された試料を実施例1−4とした。
実施例1−1と同じステンレス鋼の板材を準備し,この板材の表面に,メルテックス株式会社製のメルプレートNI−2280LF M1メッキ液,メルプレートNI−2280LF M2メッキ液を用いて,常法に従い,リン濃度が約12.8wt%で膜厚が約25μmの無電解Ni−Pメッキを形成した。このようにして得られたクロム水和オキシ酸化物の不動態皮膜を備えるステンレス鋼基材上に無電解Ni−Pメッキ皮膜が形成された試料を実施例1−5とした。
実施例1−1と同じステンレス鋼の板材を準備し,この板材の表面に,メルテックス株式会社製のメルプレートCuメッキ液を用いて,常法に従い,膜厚が約25μmの無電界Cuメッキを形成した。このようにして得られたクロム水和オキシ酸化物の不動態皮膜を備えるステンレス鋼基材上に無電界Cuメッキ皮膜が形成された試料を実施例1−6とした。
実施例2−1〜実施例2−6
実施例1−1と同じく,表層に1nm以上のクロム水和オキシ酸化物が形成されており,表面粗さが算術平均粗さRaで0.08μmのステンレス鋼(SUS304)から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.5mmの板材を準備した。そして,この板材にブラスト処理を行い,表面粗さを算術平均粗さRaで0.2μmとした。次に,この板材の表層を希釈した中性洗剤で洗浄した。そして,この板材の表面に,日本化学産業株式会社製のスルファミン酸Niメッキ液を用いて,常法に従い,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を実施例2−1とした。
実施例2−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.2μm)に,実施例1−2と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Cuメッキを形成し,実施例2−2の試料を得た。また,実施例2−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.2μm)に,実施例1−3と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Snメッキを形成し,実施例2−3の試料を得た。また,実施例2−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.2μm)に,実施例1−4と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Agメッキを形成し,実施例2−4の試料を得た。また,実施例2−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.2μm)に,実施例1−5と同様の方法で膜厚が約25μmの無電解Ni−Pメッキを形成し,実施例2−5の試料を得た。また,実施例2−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.2μm)に,実施例1−6と同様の方法で膜厚が約25μmの無電解Cuメッキを形成し,実施例2−6の試料を得た。
実施例3−1〜実施例3−6
実施例1−1と同じく,表層に1nm以上のクロム水和オキシ酸化物が形成されており,表面粗さが算術平均粗さRaで0.08μmのステンレス鋼(SUS304)から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.5mmの板材を準備した。そして,この板材にブラスト処理を行い,表面粗さを算術平均粗さRaで0.7μmとした。次に,この板材の表層を希釈した中性洗剤で洗浄した。そして,この板材の表面に,日本化学産業株式会社製のスルファミン酸Niメッキ液を用いて,常法に従い,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られたクロム水和オキシ酸化物の不動態皮膜を備えるステンレス鋼基材上に電解Niメッキ皮膜が形成された試料を実施例3−1とした。
実施例3−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.7μm)に,実施例1−2と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Cuメッキを形成し,実施例3−2の試料を得た。また,実施例3−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.7μm)に,実施例1−3と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Snメッキを形成し,実施例3−3の試料を得た。また,実施例3−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.7μm)に,実施例1−4と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Agメッキを形成し,実施例3−4の試料を得た。また,実施例3−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.7μm)に,実施例1−5と同様の方法で膜厚が約25μmの無電解Ni−Pメッキを形成し,実施例3−5の試料を得た。また,実施例3−1と同じくブラスト処理されたステンレス鋼の板材(Raは0.7μm)に,実施例1−6と同様の方法で膜厚が約25μmの無電解Cuメッキを形成し,実施例3−6の試料を得た。
以上のようにして作成された実施例1−1〜実施例1−6,実施例2−1〜実施例2−6,及び実施例3−1〜実施例3−6の各々の試料について,試験者の片方の掌の指で,ステンレス鋼基材の各金属メッキ皮膜が形成された面の縁部を基材本体から離れる方向(概ね図2に示す矢印の方向)に引っ張り,金属メッキ皮膜がステンレス鋼基材本体から剥離するか否かを確認した。その結果,実施例1−1〜実施例1−6,実施例2−1〜実施例2−6,及び実施例3−1〜実施例3−6の各試料について,金属メッキ皮膜をシート状に剥離することができた。本明細書において,シート状に剥離できた,とは,金属メッキ皮膜を剥がす工程で,当該皮膜が基材に皮膜の一部が残らずに,基材表面に形成されている金属メッキ皮膜がその皮膜としての一体性を保ったままシート状に剥離された状態を指す。図2は,金属メッキ皮膜22が基材21からシート状に剥離されている様子を概略的に示している。なお,実施例3−1〜実施例3−6の試料については,試料のステンレス鋼基材の端部(図2における鏡面部23の位置に相当する位置)に表面粗さがRa0.08μmの平滑化処理を行った部分を作成し,当該部分を指で摘まんで剥離させた。
このように,クロム水和オキシ酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.08μm,0.2μm,及び0.7μmのステンレス鋼基材の表面に,この不動態皮膜を介して,電解Niメッキ皮膜,電解Snメッキ皮膜,電解Cuメッキ皮膜,電解Agメッキ皮膜,無電解Ni−Pメッキ皮膜,及び無電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つの金属メッキ皮膜を作成した場合,当該金属メッキ皮膜は,当該ステンレス鋼基材から容易に剥離できることが確認された。基材の表面粗さが小さいほど金属メッキ皮膜は剥離しやすいと考えられるので,以上の実験結果から,表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下のステンレス鋼基材の表面に,不動態皮膜を介して上記金属メッキ皮膜を作成することにより,当該金属メッキ皮膜を基材から容易に剥離できることが確認できた。
実施例4−1〜実施例4−2
表層に1nm以上のチタン酸化物を主体とする不動態皮膜が形成されており,表面粗さが算術平均粗さRaで0.38μmのチタン合金(TP340)から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.5mmの板材を準備した。そして,この板材にブラスト処理を行い,表面粗さを算術平均粗さRaで0.28μmとした。次に,この板材の表層を希釈した中性洗剤で洗浄した。この板材の表面に,日本化学産業株式会社製のスルファミン酸Niメッキ液を用いて,常法に従い,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を実施例4−1とした。また,実施例4−1と同じチタン合金の板材(Raは0.28μm)に,実施例1−2と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Cuメッキを形成し,実施例4−2の試料を得た。
実施例5−1〜実施例5−2
実施例4−1と同じく,表層に1nm以上のチタン酸化物を主体とする不動態皮膜が形成されており,表面粗さが算術平均粗さRaで0.38μmのチタン合金(TP340)から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.5mmの板材を準備した。次に,この板材の表層を希釈した中性洗剤で洗浄した。そして,この板材の表面に,実施例1−1と同様の方法で,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を実施例5−1とした。また,実施例5−1と同じくブラスト処理されたチタン合金の板材(Raは0.38μm)に,実施例1−2と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Cuメッキを形成し,実施例5−2の試料を得た。
実施例6−1〜実施例6−2
実施例5−1と同じく,表層に1nm以上のチタン酸化物を主体とする不動態皮膜が形成されており,表面粗さが算術平均粗さRaで0.38μmのチタン合金(TP340)から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.5mmの板材を準備した。そして,この板材にブラスト処理を行い,表面粗さを算術平均粗さRaで0.7μmとした。次に,この板材の表層を希釈した中性洗剤で洗浄した。そして,この板材の表面に,実施例1−1と同様の方法で,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を実施例6−1とした。実施例6−1と同じくブラスト処理されたチタン合金の板材(Raは0.7μm)に,実施例1−2と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Cuメッキを形成し,実施例6−2の試料を得た。
以上のようにして作成された実施例4−1〜実施例4−2,実施例5−1〜実施例5−2,及び実施例6−1〜実施例6−2の各々の試料について,試験者の片方の掌の指で,チタン合金基材の各金属メッキ皮膜が形成された面の縁部を基材本体から離れる方向(概ね図2に示す矢印の方向)に引っ張り,金属メッキ皮膜がチタン合金基材本体から剥離するか否かを確認した。その結果,実施例4−1〜実施例4−2,実施例5−1〜実施例5−2,及び実施例6−1〜実施例6−2の各試料について,金属メッキ皮膜をシート状に剥離することができた。なお,実施例6−1〜実施例6−2の試料については,試料のステンレス鋼基材の端部(図2における鏡面部23の位置に相当する位置)に表面粗さがRa0.08μmの平滑化処理を行った部分を作成し,当該部分を指で摘まんで剥離させた。
このように,チタン酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.28μm,0.38μm,及び0.7μmのチタン合金基材の表面に,当該不動態皮膜を介して,電解Niメッキ皮膜及び電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つの金属メッキ皮膜を作成した場合,当該金属メッキ皮膜は,当該チタン合金基材から容易に剥離できることが確認された。基材の表面粗さが小さいほど金属メッキ皮膜は剥離しやすいと考えられるので,以上の実験結果から,表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下のチタン合金基材の表面に,不動態皮膜を介して上記金属メッキ皮膜を作成することにより,当該金属メッキ皮膜を基材から容易に剥離できることが確認できた。
実施例7−1
表層に1nm以上のアルミニウム酸化物及びアルミニウム水酸化物を主体とする不動態皮膜が形成されており,表面粗さが算術平均粗さRaで0.3μmのA2000系アルミニウム合金から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.6mmの板材を準備した。次に,この板材の表層を希釈した中性洗剤で洗浄した。この板材の表面に,実施例1−2と同様に,膜厚が約25μmの電解Cuメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を実施例7−1とした。
以上のようにして作成された実施例7−1の試料について,試験者の片方の掌の指で,アルミニウム合金基材の金属メッキ皮膜が形成された面の縁部を基材本体から離れる方向(概ね図2に示す矢印の方向)に引っ張り,金属メッキ皮膜がアルミニウム合金基材本体から剥離するか否かを確認した。その結果,実施例7−1の試料について,金属メッキ皮膜をシート状に剥離することができた。このように,アルミニウム酸化物及びアルミニウム水酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.3μmのアルミニウム合金基材の表面に,当該不動態皮膜を介して,電解Cuメッキ皮膜を作成した場合,当該電解Cuメッキ皮膜は,当該アルミニウム合金基材から容易に剥離できることが確認された。基材の表面粗さが小さいほど金属メッキ皮膜は剥離しやすいと考えられるので,以上の実験結果から,表面粗さが算術平均粗さRaで0.3μm以下のアルミニウム合金基材の表面に,不動態皮膜を介して当該電解Cuメッキ皮膜を作成することにより,当該電解Cuメッキ皮膜を基材から容易に剥離できることが確認できた。
実施例8−1〜実施例8−2 縦10cm、横4cm、厚み0.5mmのステンレス鋼(SUS304)の板材の表面に無電解Niメッキ皮膜を形成した基材を準備した。この基材(無電解ニッケルめっき皮膜)の表面粗さは,算術平均粗さRaで0.6μmであった。次に,この基材を,400℃で1時間加熱した。加熱後の基材の表層(無電解ニッケルめっき皮膜の表層)には,ニッケル酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜が形成されており,加熱後の基材表面の硬度は,ビッカース硬さHvで900であった。この加熱後の基材の表面に,実施例1−1と同様に,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を実施例8−1とした。
比較例1
縦10cm、横4cm、厚み0.5mmのステンレス鋼(SUS304)の板材の表面に無電解Niメッキ皮膜を形成した基材を準備した。この基材の表面粗さは,算術平均粗さRaで0.13μmであった。次に,この基材の表面に,実施例1−1と同様に,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を比較例1とした。
以上のようにして作成された実施例8−1及び比較例1の試料について,試験者の片方の掌の指で,基材の金属メッキ皮膜が形成された面の縁部を基材本体から離れる方向(概ね図2に示す矢印の方向)に引っ張り,電解Niメッキ皮膜が基材本体から剥離するか否かを確認した。その結果,実施例8−1の試料について,電解Niメッキ皮膜をシート状に剥離することができた。一方,比較例1の試料については,電解Niメッキ皮膜を剥がす際に,その一部が基材表面に残留し,シート状に剥がすことができなかった。このように,ニッケル酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.6μmの無電解Niメッキ皮膜を備えた基材の表面に,当該不動態皮膜を介して電解Niメッキ皮膜を作成した場合,当該電解Niメッキ皮膜は,当該基材から容易に剥離できることが確認された。基材の表面粗さが小さいほど金属メッキ皮膜は剥離しやすいと考えられるので,以上の実験結果から,表面粗さが算術平均粗さRaで0.6μm以下の無電解Niメッキ皮膜が設けられた基材の表面に不動態皮膜を介して電解Niメッキ皮膜を作成することにより,当該電解Niメッキ皮膜を,無電解Niメッキ皮膜が形成された基材から容易に剥離できることが確認できた。
比較例2−1〜比較例2−4
表面粗さが算術平均粗さRaで0.65μmの鉄(SPCC)から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.5mmの板材を準備した。そして,この板材の表面に,実施例1−1と同様の方法で,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を比較例2−1とした。また,比較例2−1と同じ鉄製の板材(Raは0.65μm)に,実施例1−2と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Cuメッキを形成し,比較例2−2の試料を得た。また,比較例2−1と同じ鉄製の板材(Raは0.65μm)に,実施例1−3と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Snメッキを形成し,比較例2−3の試料を得た。また,比較例2−1と同じ鉄製の板材(Raは0.65μm)に,実施例1−4と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Agメッキを形成し,比較例2−4の試料を得た。
比較例3−1〜比較例3−4
表面粗さが算術平均粗さRaで0.05μmの鉄(SPCC)から成る,縦10cm、横4cm、厚み0.5mmの板材を準備した。そして,この板材の表面に,実施例1−1と同様の方法で,膜厚が約25μmの電解Niメッキ皮膜を形成した。このようにして得られた試料を比較例3−1とした。また,比較例3−1と同じ鉄製の板材(Raは0.05μm)に,実施例1−2と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Cuメッキを形成し,比較例3−2の試料を得た。また,比較例3−1と同じ鉄製の板材(Raは0.65μm)に,実施例1−3と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Snメッキを形成し,比較例3−3の試料を得た。また,比較例3−1と同じ鉄製の板材(Raは0.65μm)に,実施例1−4と同様の方法で膜厚が約25μmの電解Agメッキを形成し,比較例3−4の試料を得た。
以上のようにして作成された比較例2−1〜比較例2−4及び比較例3−1〜比較例3−4の各試料について,試験者の片方の掌の指で,基材の金属メッキ皮膜が形成された面の縁部を基材本体から離れる方向(概ね図2に示す矢印の方向)に引っ張り,各金属メッキ皮膜が基材本体から剥離するか否かを確認した。その結果,比較例2−1〜比較例2−4及び比較例3−1〜比較例3−4の各試料について,電解Niメッキ皮膜を剥がす際に,その一部が基材表面に残留し,シート状に剥がすことができなかった。このように不動態皮膜が形成されにくい,鉄製の基材に金属メッキ皮膜を形成しても,シート状に剥離できないことが確認できた。
以下のように,本発明の一実施形態に従って防着板を作製し,作製した防着板を設置した真空チャンバーを用いて成膜処理を行い,成膜処理後の防着板から金属メッキ皮膜が剥離可能か否かを確認した。まず,直径φ110mm,厚さ1mm,算術平均粗さRa0.08μmの円板型ステンレス鋼(SUS304)の表面に,クロム水和オキシ酸化物を主体とする不動態皮膜を介して膜厚25μmの電解Niメッキ皮膜が形成された防着板の試験片を準備した。次に,この試験片を,高圧DCマイクロパルスプラズマCVD装置用の真空チャンバー内に配置した。また,前記円筒形のステンレス鋼よりなる防着板の対抗電極となる円柱形状のステンレス鋼(SUS304)のワーク(直径φ110mm、高さ300m)を準備し,当該ワークを,その円形の底部が前記防着板の試験片の一方の円形面と対抗する位置に配置した。このような配置において,ワーク側をアノード,防着板の試験片がカソードとなるように電圧を印可し,ワークに非晶質炭素膜を形成した。なお,真空チャンバーを3×10−4Paまで真空減圧するまでに要する時間は,通常の防着板の場合とほぼ同じであった。
次に、アルゴンガスプラズマを真空チャンバー内に導入し,ワークを約1分間クリーニングした。アルゴンガスプラズマでのクリーニングはアルゴンガス流量30SCCM,ガス圧2Pa,印加電圧−2kV、パルス周波数10kHz、パルス幅10μsの条件で行なった。クリーニング後,アルゴンガスを排気し,続いて,流量30SCCMのアセチレンを反応容器内のガス圧が2Paになるように真空チャンバー内に導入し,最大印加電圧−6kV,パルス周波数10kHz,パルス幅10μsの条件で当該ワークに非晶質炭素膜を30分間成膜した。次に,窒素ガスをリークガスとして用い,25分間かけて真空チャンバーを常圧(大気圧)に戻した。その後,真空チャンバーを開放し,真空チャンバーから防着板を取り出した。
次に,真空チャンバーから取り出した防着板のNiメッキ皮膜上に,非晶質炭素膜の成膜過程で拡散した炭素成分が付着していることが目視で確認した。次に,防着板の表面の縁部を指で摘まみ防着板表面から離れる方向に引っ張ったところ,防着板表面のNiメッキ皮膜を,当該Niメッキ皮膜に炭素成分が付着したままの状態でシート状に引き剥がすことができた。
次に,Niメッキ皮膜が剥離されてステンレス鋼が露出した防着板に電解Niメッキ皮膜を形成した。次に,防着板表面の縁部を指で摘まみ防着板表面から離れる方向に引っ張ったところ,防着板表面のNiメッキ皮膜をシート状に引き剥がすことができた。
10:真空装置
11:真空チャンバー
11a:内壁
12:基板固定治具
13:基板
14:ターゲット
15:ターゲット設置部
16:電源部
17:防着板
18:圧力制御手段
18a:ガス管
18b:メインバルブ
19:ガス供給部
19a:ガス管
19b:ガス供給用バルブ
20:真空チャンバー構成部品
21:基材
21a:基材本体
21b:不動態皮膜
22:金属メッキ皮膜
23:鏡面部

Claims (4)

  1. クロム水和オキシ酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下のステンレス鋼基材と,
    前記ステンレス鋼基材に前記不動態皮膜を介して形成され,電解Niメッキ皮膜,電解Snメッキ皮膜,電解Cuメッキ皮膜,電解Agメッキ皮膜,無電解Ni−Pメッキ皮膜,及び無電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つの金属メッキ皮膜と,
    を備える真空チャンバー構成部品。
  2. チタン酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.7μm以下のチタン合金基材と,
    前記チタン合金基材に前記不動態皮膜を介して形成され,電解Niメッキ皮膜及び電解Cuメッキ皮膜から成る群より選択される少なくとも1つの金属メッキ皮膜と,
    を備える真空チャンバー構成部品。
  3. 基材と,
    前記基材上に形成された無電解Niメッキ皮膜であって,その表層にニッケル酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を備え,その硬度がビッカース硬さHvで900以上であり,且つ,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.6μm以下のNiメッキ皮膜と,
    前記Niメッキ皮膜に前記不動態皮膜を介して形成された電解Niメッキ皮膜と,
    を備える真空チャンバー構成部品。
  4. アルミニウム酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を主体とする膜厚1nm以上の不動態皮膜を表層に備え,その表面粗さが算術平均粗さRaで0.3μm以下のアルミニウム合金基材と,
    前記アルミニウム合金基材に前記不動態皮膜を介して形成された電解Cuメッキ皮膜と,
    を備える真空チャンバー構成部品。
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