JP5796861B2 - 耐食性に優れたdlc膜被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れたdlc膜被覆部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐食性に優れたDLC膜被覆部材とそれの製造方法に関する。特に、DLC膜の成膜機構に起因して発生する微細な貫通気孔が海水などの侵入径路となって基材を腐食し、DLC膜が有する高硬度、耐摩耗性、潤滑性などの諸機能が短期間のうちに消失する現象を防止するために有効な技術を提案する。
近年、炭化水素系ガスを成膜用材料として、炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜が実用化され、多くの産業分野において利用されている。この炭素と水素を主成分とする硬質の膜とは、アモルファスながらダイヤモンド構造(PS3構造)とグラファイト構造(SP2構造)とが混在したものであって、ダイヤモンドライクカーボン、所謂、DLC膜と呼ばれている。
このDLC膜は、硬質で優れた耐摩耗性を有することから、当初は切削工具類や摺動部材、回転部材の表面に施工されていたが、最近では、その他の産業分野における表面皮膜としても採用されている。
また、このDLC膜は、無気孔の状態に成膜されたものだと、酸やアルカリあるいはハロゲン化合物などに対して卓越した耐食性を発揮することから、半導体加工装置用部材の表面皮膜として有用であり、この分野において、耐食性の向上、あるいは酸や純水による洗浄時において良好な汚染物質除去作用を示す皮膜として利用されている(特許文献1〜7)。
さらに、このDLC膜としては、CとHからなる構造のものに、Fを結合させたCF基やCF基を付与することによって、皮膜に一段と高い潤滑性と親水性とを付与する技術(特許文献8〜15)も開示されている。これらの技術は、磁気ディスクや医療用器材の分野で利用されている。その他、DLC膜の優れた滑り特性は、樹脂形成用金型の表面処理技術として開発されている(特許文献16、17)。
一方、DLC膜を形成するための方法やその装置に関する研究も盛んに行われている。最近では、イオン化蒸着法やアークイオンプレーディング法、高周波・高電圧パルス重畳型成膜法、プラズマブースター法、プラズマCVD法などのDLC膜形成方法とそのための装置などが開発されている。これらの方法によって形成されるDLC膜は、硬質で耐摩耗性に優れたアモルファス状の皮膜になる点では共通している。しかし、複雑な形状を有する被処理体に対して均一に成膜できるか否かについては差があり、課題が残っていた。ただし、前記高周波・高電圧パルス重畳型のプラズマCVD方法は、膜厚の均等な被覆形成性能を有し、初期残留応力の小さいDLC膜の形成が可能である。
発明者らは、高周波・高電圧パルス重畳型プラズマCVD法(以下、「プラズマCVD法」と略記する)の適用により、従来型DLC皮膜の膜質や硬度、摩擦係数などの機械的特性の改良、適用範囲の拡大により、汎用的な工学分野への展開を進めてきた。その結果、上記プラズマCVD法の適用によって形成されたDLC膜は、残留応力が小さく、硬さこそ他の方法で得られるDLC膜に比較して低いものの、複雑形状の部材に対しても、均一なDLC膜を形成できる上で有効である。例えば、この技術は、半導体加工装置用部材への耐食、耐プラズマ・エロージョン性(特許文献18〜20)や溶射皮膜の開口気孔への充填(特許文献21、22)、ポンプインペラー、圧縮機翼などの防食、防汚対策(特許文献23〜26)などの付与を目的とした技術に応用できることを提案してきた。
前述したDLC膜に限らず、溶射法、PVD法、CVD法などで形成される皮膜については、それぞれの皮膜に発生する気孔の存在が共通の課題となっている。例えば、粒径10〜50μm程度の粉末をプラズマ熱源によって溶融しつつ、基材表面に吹き付けて堆積層を形成する溶射皮膜では、気孔が不可避に発生する。このことから、従来、成膜後に封孔処理を施すことが奨励されている。例えば、JIS H 9302セラミック溶射作業標準では、セラミック溶射皮膜を形成した後、その表面に、無機系あるいは有機高分子系の封孔剤を塗布したり噴霧したりして、気孔内部に充填する方法が記載されている。
さらに、溶射皮膜の気孔を封孔するための方法、および封孔剤ついては、次のような提案がある。即ち、特許文献28〜30には、耐食性を有するシリコーン、エチルシリケートなどの珪素化合物、合成樹脂などの有機高分子材料を用いて封孔する方法が開示されている。
また、特許文献31、32には、溶射皮膜を金属アルコキシドや金属酸化物粒子などの非金属化合物を含む電解液中に浸漬して電解し、電気泳動法の原理を利用して皮膜の表面や気孔中に溶質成分や酸化物粒子を充填し、その後、これを加熱焼成して封孔する方法が開示されている。
さらに、特許文献33には、溶射皮膜の表面に可視光線によって硬化する有機高分子剤を塗布し、気孔を封孔するとともに、自然光によって硬化させる技術が開示されている。
また、発明者らも、特許文献34において、溶射皮膜の表面を電子ビームまたはレーザビームなどの高エネルギーを照射した後、その表面に炭素と水素を主成分とするアモルファス状のDLC膜を被覆形成する方法を提案している。
さらに、溶射皮膜の表面に対して、電子ビームまたはレーザビームなどの高エネルギー照射を行って、表面近傍の溶射粒子を溶融させて気孔を熱的に消滅させる技術(特許文献35)の提案もある。
しかし、前述した各従来技術の場合、プラズマCVD法で形成されたDLC膜の貫通気孔の有効な封孔技術を提案するものではない。それは、DLC膜については、気孔の大きさが前記溶射皮膜のものに比較すると非常に小さいため、溶射皮膜の封孔処理に適用されている各種の無機質および有機質の封孔剤を用いても、微小な気孔内部への充填はできず、単に気孔の入口部を封孔剤によって蓋をするような状態になるだけである。また、DLC膜の気孔は、非常に小さく、皮膜自体が透明体に近い色調を有するため、拡大鏡や光学顕微鏡を用いても、その存在を容易に確認できないからである。また、DLC膜の使用環境は、気孔に起因する腐食障害の少ない場所が多く、貫通気孔があっても、その影響を受け難いか、容認できる程度と考えられているために、DLC膜の封孔処理技術が提案されてこなかったのが実情である。
以上説明したような背景の下で、発明者らは、先に特許文献36において、電気めっき法によってセラミック溶射皮膜の貫通気孔の内部に、亜鉛を析出させ、その析出亜鉛を成長させることによって気孔を充填封孔することで、多孔質溶射皮膜の貫通気孔に起因する腐食障害を防止する方法を提案した。
特開平9−313926号公報 特開2002−110655号公報 特開2003−133149号公報 特開2000−262989号公報 特開2000−70884号公報 特開2000−265945号公報 特開2003−209086号公報 特開平11−158361号公報 特開平11−330066号公報 特開平9−44841号公報 特開平10−68083号公報 特開平10−198953号公報 特開2000−96233号公報 特開2003−310744号公報 特開2003−217845号公報 特開2004−130775号公報 特開2004−315876号公報 特開2007−324353号公報 特開2006−89822号公報 特開2006−118053号公報 特開2007−321194号公報 特開2007−231781号公報 特開2007−327349号公報 特開2007−327350号公報 特開2007−231781号公報 特開2009−138674号公報 特開2008−144273号公報 特開昭54−32422号公報 特開昭57−70275号公報 特開昭64−62453号公報 特開昭62−260096号公報 特開平7−41927号公報 特開平5−106014号公報 特開平7−321194号公報 特開平10−306363号公報
従来、アークプレーティング法で炭素のみを使用して形成されたDLC膜は、水素を含まないか、たとえ含んでいたとしても非常に少ないのが特徴である。このようなDLC膜は、高硬度、耐摩耗性に優れる一方、成膜時に大きな残留応力を内蔵することになるため、膜厚を大きくすると、基材の密着力よりも残留応力の方が大きくなることが知られている。そのため、通常は1μm前後の膜厚に調整されており、例えば、3μm以上の膜厚にすると、DLC膜が剥離しやすくなり、本来の機能が発揮できなくなることがある。
一方、炭化水素系ガスを使って成膜したDLC膜は、主成分が炭素と水素であり、炭素のみを出発原料とするDLC膜に比較すると、軟質であると共に成膜時の残留応力を低く抑えることができるため、膜厚を大きくすることが可能である。そのため、前者の薄膜の利用分野(例えば、工具類、軸受など)を超越した部材(例えば、ポンプのインペラー、ガスタービンの圧縮翼など)への適用が可能となるなど、DLC膜の利用分野の拡大に大きく寄与した。
しかしながら、成膜原料の異なる前記DLC膜共通の課題としてなお、次のような改善すべき課題がある。即ち、主として炭素からなるDLC膜及び炭素と水素とからなるDLC膜とも、酸(有機酸、無機酸)アルカリ各種の塩類に対して化学的に安定しており、何れも、DLC膜自体は優れた耐食性を発揮する。その一方で、いずれのDLC膜とも、極めて小さな貫通気孔(皮膜の表面から基材まで繋がっている気孔で、液体や気体が通過できる気孔)が存在しているため、雰囲気中の腐食成分(ガス等)が貫通気孔部から皮膜内部に侵入して基材を腐食し、DLC膜を根底から剥離させる現象がある。
従って、従来のDLC膜は、それ自体は化学的に安定な状態に維持されていたとしても、基材の腐食を抑えることができないことがあるため、このDLC膜の利用範囲は現在でも限定されている。このため、従来のDLC膜は、この膜が有する高硬度で耐摩耗性や潤滑性に優れる他、化学的安定性などの特性を十分に発揮できていないのが実情である。
ところで、DLC膜に存在する微細な貫通気孔の存在は、この気孔が原因で基材の鋼鉄が赤さびを発生する場合においては、目視によって判断することが可能である。しかし、赤さびが発生しない基材、具体的には、Al及びその合金、Ti及びその合金の表面に形成されたDLC膜の場合には、DLC膜の剥離現象によってのみ判断する方法に頼っている。このため、成膜直後のDLC膜の貫通気孔の存在の有無について定量化するための評価試験方法の重要性が高まっているが、未だに開発されていない。
また、たとえ、DLC膜の貫通気孔を定量的に評価できる試験方法が開発されたとしても、貫通気孔に起因する腐食反応を完全に防止する技術の開発につながるものではない。例えば、溶射皮膜のように、粒径10〜50μmの粉末材料をプラズマや燃焼フレームなどの熱源によって溶融しつつ、基材の表面に吹き付けることによって形成されたものに対しては、貫通気孔が大きいため、無機質または有機質のシール剤や塗料などを皮膜の表面に塗布することによって対処できる(例えばJIS H9302)。しかし、DLC膜に存在する貫通気孔は、極めて微細なうえ、金属顕微鏡や電子顕微鏡で観察しても判別することができない程度である。しかも、前記シール剤や塗料をDLC膜の表面に塗布しても、気孔内部まで浸入させることができないことが実験的に確認されており、既存の封孔処理法では、DLC膜の微細な気孔の内部を完全に封孔する技術までは知られていない。
そこで、本発明の目的は、DLC膜被覆部材から皮膜の剥離が起らないようにして、部材の耐食性を向上させてなるDLC膜被覆部材とそれの有利な製造方法を提案することにある。
以下に、DLC膜の貫通気孔中に、電気めっき液から析出させた、少なくとも基材の少なくとも表面部分よりも電気化学的に卑で陰極防食作用を示す金属・合金、例えば、亜鉛などを浸入させて充填し該気孔を封孔することを目的として行なった研究の成果を説明する。以下、主に亜鉛の例で本発明の詳細を説明する。
本発明は、従来技術が抱えている前述の課題を解決するため、以下のような課題について検討した。
(1)本発明では、基材の表面に、炭化水素系のガスを用いたプラズマCVD法などによって、炭素と水素とからなる微細な貫通気孔を有する厚膜(50μm程度)でアモルファス状を呈するDLC膜を対象とする。
(2)上記DLC膜としては、成膜原料の炭化水素系ガス中の炭素と水素の割合を制御することによって、炭素:87at%〜60at%、水素:13at%〜40at%の組成とすると共に、マイクロビッカース硬さ(HV)を700〜2800の範囲に収まるような比較的軟質の膜が好適である。
(3)さらに、このDLC膜は、成膜時の内部残留応力を1GPa以下にすることによって、50μmにも達するような厚膜の形成を可能とした。
(4)上記DLC膜を形成する方法としては、少なくとも表面部分については電気伝導性を有する基材に対して電気めっき法を適用する。従って、その基材として、プラスチックスやセラミックスなどの非電気伝導性の材料を基材とする場合には、その表面に予め、電気めっき法や化学めっき法、PVD法、CVD法、溶射法などによって、金属系またはサーメット系の電気伝導性の皮膜を施工する。
(5)そして、基材表面に形成した、厚膜で微細な貫通気孔を有する前記DLC膜を亜鉛めっき液中に浸漬し、基材を陰極として直流を通電することで、DLC膜の微細な貫通気孔の内部に浸入しためっき液から、亜鉛を基材の表面を起点として析出させ、この状態を維持することによって、めっき液から析出する亜鉛を成長させ、最終的には、DLC膜に存在するすべての貫通気孔を、該めっき液から析出した亜鉛を充填することによって、封孔するのである。
即ち、本発明は、基材と、その表面に形成されたDLC膜とからなる部材において、そのDLC膜は、貫通気孔率が2.6×10 −5 〜15×10 −1 %、かつこの膜中に存在する貫通気孔の内部が、電気めっき液から析出した基材の少なくとも表面層よりは電気化学的に卑で陰極防食作用を示す金属・合金によって充填され封孔されていることを特徴とする耐食性に優れたDLC膜被覆部材である。
また、本発明は、反応容器内に、少なくとも表面層は電気伝導性を示す被処理基材を、該反応容器に対して相対的に負の電位となるように配設し、その容器内に炭化水素化合物ガスを導入すると共に、該基材には高周波電力と高電圧パルスを重畳印加して、該炭化水素化合物ガスプラズマを発生させることにより、上記被処理基材の表面に貫通気孔率が2.6×10 −5 〜15×10 −1 %の微細な貫通気孔を有するDLC膜を形成し、その後、このDLC膜を被覆した上記被処理基材を、該基材の少なくとも表面層よりは電気化学的に卑で陰極防食作用を示す金属・合金を含有するめっき液中に浸漬し、当該基材を陰極として直流を通電することで、DLC膜中に存在する貫通気孔内に、めっき液から析出した前記金属・合金を充填して封孔することを特徴とする耐食性に優れたDLC膜被覆部材の製造方法を提案する。
また、本発明においては、
(1)基材の少なくとも表面層よりは電気化学的に卑で陰極防食作用を示す前記金属・合金が亜鉛およびその合金であること、
(2)前記DLC膜は、炭素:87〜60at%と水素:13〜40at%からなり、かつ厚さが1〜50μmであること、
)前記DLC膜は、成膜初期の残留応力が1Gpa以下のプラズマCVD法によって形成された膜であること、
)前記基材は、電気伝導性を有する金属材料もしくは非金属材料のいずれか、または非電気伝導性基材の上に形成された電気伝導性を有する溶射皮膜、PVD皮膜およびCVD皮膜のうちから選ばれるいずれか1種以上の1層以上のアンダーコート層を有するものによって構成されていること、
が、より好ましい解決手段になると考えられる。
本発明の前記構成によれば、例えば、下記のような効果が期待できる。
(1)電気化学的手法(即ち、電気めっき法)によって、DLC膜中の貫通気孔内部に、基材の少なくとも表面部分よりは電気化学的に卑で陰極防食作用を示すめっき析出金属・合金(以下の説明は、「亜鉛」の例で述べる)を析出させてこれを充填することにより封孔することができるので、部材(基材)の耐食性を向上させることができる。
(2)めっき液から析出する前記金属・合金の成長は、該貫通気孔の孔内部のみにて起り、他のDLC膜部分には析出しないため、気孔部の形状に沿って成長するとともに、しかもその成長の起点は、基材の表面からに限定されるので、ほぼ完全な封孔処理が期待できる。
(3)本発明の方法は、炭素と水素を主成分とするDLC膜自体が有する耐摩耗性や耐食性、潤滑性などの基本特性は全く損なうことなく基材の耐食性等を向上させることができるDLC膜の利用分野の一層の拡大が期待される。
(4)基材表面にプラズマCVD法で被覆形成されたDLC膜、とくに厚膜のDLC膜中に存在する微細な貫通気孔の欠陥部の有無や、その存在割合を電気的手法によって、定量的に測定することが可能となり、DLC膜の耐食性を評価することができる。
本発明に適したDLC膜被膜形成のためのプラズマCVD装置の概略図である。 DLC膜の残留応力測定用試験片とその変位の模様を示す略線図である。 DLC膜の貫通気孔部に亜鉛を充填・封孔するための電気亜鉛めっきの略線図である。 DLC膜に存在する貫通気孔の存在形態と、その気孔内部へ亜鉛を電気めっき法によって、充填・封孔処理を施したDLC膜の断面模式図である。(a)は成膜直後のDLC膜の断面、(b)はDLC膜中の貫通気孔部に電気めっき法によって亜鉛を充填封孔状態とした状態の断面である。
図1は、本発明において重要な役割を担うアモルファス状の炭素と水素とからなる微小粒子の堆積層からなる気相析出蒸着膜、いわゆるDLC膜を形成するための気相析出蒸着膜形成装置、即ち、プラズマCVD装置を示ものである。このプラズマCVD装置は、接地された反応容器1と、この反応容器1内の所定に位置に配設される被処理基材2に接続される導体3と、この反応容器1内に成膜用の炭化水素ガスおよび有機系金属化合物のガスを導入する装置(図示せず)や反応容器1を真空引きする真空装置(図示せず)等を介して、高電圧パルスを印加するための高電圧パルス発生電源4等を備えてなるものである。そして、この装置には、また、被処理基材2の周囲に炭化水素系ガスプラズマを発生させるためのプラズマ発生用電源5が配設されている他、前記導体3および被処理基材2に高電圧パルスおよび高周波電圧の両方を同時に印加するために、高電圧パルス発生電源4およびプラズマ発生用電源5との間に重畳装置6が配設されている。なお、ガス導入装置および真空装置はそれぞれバルブ7aと7bを介して反応容器1に接続され、導体3は高電圧導入部9を介して重畳装置6に接続されている。
上記装置を用い、電気導伝性の被処理基材2の表面に、DLCの微粒子を吸着させてこれらの堆積層を形成するには、被処理基材2を反応容器1内の所定の位置に設置し、真空装置を稼動させて該反応容器1中の空気を排出して脱気したあと、ガス導入装置によって有機系ガスを該反応容器1内に導入する。次いで、プラズマ発生用電源5からの高周波電源を被処理基材2に印加する。そうすると、反応容器1は、アース線8によって電気的に中性状態にあるため、被処理基材2は相対的に負の電位を有することになる。このため、印加によって発生する有機系ガスのプラズマ(低温プラズマに属し温度200℃以下)中のプラズマイオンは負に帯電した被処理基材2のまわりに発生することになる。
この状態において、高電圧パルス発生電源4からの高電圧パルス(負の高電圧パルス)を被処理基材2に印加すると、有機系(炭化水素系)ガスプラズマ中のプラズマイオンの性質をもつDLCの微粒子が、該被処理基材2の表面に誘引吸着されることとなって付着堆積し、時間の経過にともなって膜状に成長して膜を形成する。即ち、反応容器1内では、最終的には炭素と水素とからなるDLCの微粒子が、被処理基材2のまわりに気相析出し、次第に基材表面に堆積してDLC膜を形成するものと考えられる。
発明者らは、前記プラズマCVD装置(方法)によって、基材上にアモルファス状の炭素・水素微粒子が堆積した状態の気相析出蒸着膜、即ち、DLC膜が形成されるプロセスは、以下の(a)〜(c)を経て形成されるものと考えている。
(a)導入された炭素水素系ガスのイオン化(ラジカルと呼ばれる活性な中性粒子も存在する)が起こり、
(b)炭化水素系ガスから変化したイオンおよびラジカルは、負の電圧が印加された被処理体の面に衝撃的に衝突し、
(c)衝突時のエネルギーによって、結合エネルギーの小さいC−H間が切断され、その後、活性化されたCとHが重合反応を繰り返して高分子化し、炭素と水素を主成分とするアモルファス状の炭素・水素固形物を、基材の表面に気相析出する。
上記装置では、高電圧パルス発生電源4の出力電圧を下記(a)〜(d)のように変化させることによって、被処理基材2に対して金属(Ti)等のイオン注入も可能である。特に基材やアンダーコートの表面に、Si、C、Taなどのイオンを注入しておくと、DLC膜の密着性が向上するので好適である。
(a)イオン注入を重点的に行なう場合:10〜40kV
(b)イオン注入と成膜形成の両方を行なう場合:5〜20kV
(c)皮膜形成のみを行なう場合:数百V〜数kV(金属Tiの微粒子を共析させる条件)
(d)スパッタリングなどで重点的に行なう場合:数百V〜数kV(DLC膜の表面をArイオンや研削する条件)
なお、前記高電圧パルス発生電源4では、パルス幅:lμsec〜10μsecで、1〜複数回のパルスを繰り返し発生させることができる。また、プラズマ発生用電源5の高周波電力の出力周波数は、数十kHzから数十GHzの範囲で変化させることができる。
この装置の反応容器1内に導入するDLC膜形成用の有機系ガスとしては、炭素と水素からなる炭化水素系ガスが好適である。例えば、次のようなものが用いることができる。
(イ)常温(18℃)で気相状態のもの;
CH、CHCH、C、CHCHCH、CHCHCHCH
(ロ)常温で液相状状態のもの;
CH、CCHCH、C(CH、CH(CHCH
なお、常温で気相状態の有機混合ガスはそのまま反応容器1内に導入できるが、液相状態のものについては、加熱してガス化させて上記反応容器1内に供給することによってDLC膜の形成が可能である。また、DLC膜を構成する炭素と水素の割合は、前記炭素水素系ガス成分の炭素と水素の割合を勘案することによって制御することができる。このため、成膜用の炭化水素ガスは、一種類だけでなく、必要に応じて2種類以上の混合ガスを使用することもできる。
(2)DLC膜の残留応力
気相状態の炭化水素ガスから析出するDLC微粒子の堆積層であるDLC膜の場合は、必然的に残留応力が発生する。こうした残留応力を内臓するDLC膜は、膜厚が大きくなればなるほどその残留応力も大きくなる。そして、最終的には、その残留応力が膜の密着強さよりも大きくなると、DLC膜が剥離するに至る。現在、DLC膜の被覆形成法として多くの種類の装置やプロセスが開発されているが、その適用条件の一つとして、DLC膜の残留応力によって決定され限界膜厚がある。
この点、本発明では、多くの水素(15〜40at%)を含有させることで、厚膜DLC頃がたとえ10μmを超えるような膜であったとしても、加熱処理を施すと、DLC膜と基材との熱膨張係数の差によって、膜に大きな熱応力が発生することになるので、この対策についての配慮が必要である。
そこで、本発明では、まず、基礎となるDLC膜(マトリックス)本体の初期残留応力(成膜時の残留応力)の許容値を、次に示すような方法によって求めた。DLC膜の残留応力の評価は、図3に示すように、試験片の一端を固定した短冊形の薄い石英基板(寸法:幅5mm×長さ500mm×厚さ0・5mm)の一方の面にDLC膜を形成し、成膜の前後の石英基板の変位量(∂)を測定することによって、膜の残留応力を求めるが、具体的には、下記Stoneyの式によって残留応力(σ)を計算した。
Figure 0005796861
E:基板のヤング率=76.2GPa
v:基板のポアソン比=0.14
b:基板の厚さ=0.5mm
l:DLC膜が形成された基板の長さ
δ:変位量
d:DLCの膜厚
表1は各種成膜プロセスによって形成されたDLC膜(水素15at%、炭素87at%)について、上記の方法によって初期残留応力値および熱処理後残留応力値を求めたものである。これらの結果から明らかなようにアークイオンプレーティング法、イオン化蒸着法などの方法で形成されたDLC膜の初期残留応力は13〜20GPaである。これに対し、本発明に係るプラズマCVD法で形成されたDLC膜の初期残留応力は0.3〜0.98GPaの範囲にある。つまり、本発明(プラズマCVD法に従う)に適合するDLC膜の初期残留応力は、1GPa以下の非常に小さい膜でなければならないことがわかる。
従って、水素を多量に含むプラズマCVD法によるDLC膜であれば、厚膜であっても、また、その後に熱処理するような場合でも、これらにも十分に順応することが可能であることがわかる。
なお、表1に示すとおり、DLC膜の最大形成厚みは、水素含有量15at%のDLC膜を形成した場合、プラズマCVD法では、成膜時間は長くなるものの、厚さ50μm程度の膜厚のものを得ることができたが、他の成膜方法では3μm厚さ以上の膜の形成は困難であった。さらに、表1に示す各DLC膜の表面硬さを測定したところ、プラズマCVD方法により形成したDLC膜は、マイクロビッカーズ硬さ(Hv)で1000程度と低いのに対し、他の方法で形成されたDLC膜の硬さは、測定していないが、約Hv=3000程度以上であり、硬いのが普通である。これらの結果から判ることは、プラズマCVD法に比べ、イオンプレーティング法やイオン化蒸着に従うDLC膜の場合、DLC膜の硬さは大きく、DLC膜の成膜時における初期残留応力値もまた大きくなると考えられる。
Figure 0005796861
なお、DLC膜の初期残留応力測定後の試験片を拡大鏡で観察したところ、アークイオンプレーティング法およびイオン蒸着法で形成された膜には、微細な剥離が多数発生しており、曲げ応力や耐熱性に乏しい傾向も確認された。一方、DLC膜の残留応力は、1Gpa程度以下にとどまっており、厚膜に適した皮膜であることが確認された。
(3)DLC膜の気孔率と耐食性
プラズマCVD法によって基材上に形成された前記DLC膜それ自体は、有機及び無機系の酸やアルカリ、海水、有機溶媒などにも反応せず、良好な耐食性を発揮するが、微細な多数の貫通気孔が存在することが判明した。
この貫通気孔は、成膜材料源の炭化水素系のガスが、プラズマ環境中で分解したりイオン化したりして、ラジカルと呼ばれる活性な中性粒子の生成を経て、固体微粒子となって基材の表面に堆積し皮膜を形成する際に、粒子間同士の結合が不完全な部分が相互に連通し合って発生したものと考えられる。このようにして生成した貫通気孔の大きさや数は、溶射皮膜などの貫通気孔に比較すると極めて小さく、その数量も少ないので、使用する環境条件によっては無視できる場合も少なくない。しかし、本発明では、DLC膜を腐食性の環境中で長期にわたって使用する場合をも考慮したとき、このような場合はたとえ微細で数も少ない貫通気孔であったとしてもその影響は少なくない。従って、このような場合でも貫通気孔の影響が出ないようにする必要がある。なお、前記DLC膜に存在する貫通気孔の大きさは、皮膜の断面を切断し、金属顕微鏡や電気顕微鏡で観察しても判別できない程度の大きさである。
そこで、本発明では、DLC膜の貫通気孔の有無とその存在割合を定量的に把握するため、(社)日本機械学会が、PVD法、CVD法などで形成された蒸着膜の貫通気孔などの欠陥を定量的に評価する手法として制定した「ドライコーティング膜の欠陥評価試験法、JSME S010(1996)」を利用した。
この評価方法は、基材をSUS304鋼(寸法:30mm×20mm×lmm)とし、その片面にDLC膜を形成(他面は絶縁塗料を塗布)した後、0.5Kmol/mSO+0.05Kmol/mKSCN水溶液中に浸漬し(液温30℃±1℃)対極として白金、照合電極として、Ag/AgC1 3.33Kmol/mを用いて、直流へ電流を流しつつ、試験片の電位を−0.45V〜+0.40Vの範囲まで掃引し、このときの電流値(icrit)を記録し、次式によって、ピンホール欠陥面積率(R)、即ち貫通気孔率を求めるのである。
Figure 0005796861
ここで、Fは実表面積(ピットの投影面積で通常1/2)
表2は、上記の方法によって求めたDLC膜の貫通気孔率(R値)である。この結果によると、DLC膜の貫通気孔率(R値)は、成膜用ガス種の影響を受けやすく、トルエン(CCH)やアセチレン(C)より、メタン(CH)を使用する方法が緻密な膜が得られる傾向がある。その一方でメタンガスによるDLC膜の形成速度は、前者に比較して遅く、同一の膜厚を得るには、多くの時間を必要とする傾向が認められた。
一方、長時間の成膜処理をして形成されたDLC膜の貫通気孔率(R値)は、薄膜に比較して緻密な膜質となっているものの、貫通気孔の存在を完全に消滅することはできず、何らかの対策が必要であることが判明した。
つまり、本発明において、充填封孔することが必要な貫通気孔の大きさとは、表2に示す結果から、電解研磨処理のような鏡面状態に研磨された基材上に形成された膜厚が1μm〜50μmの場合の前記R値は3×10−2〜2.6×10−5%程度の大きさのものが対象となる。本発明では、正に膜厚に応じたこのような大きさの貫通気孔を封孔することを目指すものである。
なお、前記電気化学的操作によるDLC膜の貫通気孔の評価方法(R値)は、試験液(電解液)が貫通気孔内に浸入することによって、電流値が測定された結果でもあることを考えると、試験液をめっき液に変更することにより、DLC膜の基材表面にめっき液から金属を析出させることも可能であるとの示唆を受けた現象でもあり、これが本発明を開発する動機ともなった。
Figure 0005796861
(備考)
(1)SUS304鋼基材は、
電解研磨処理(Ra 0.013〜0.014μm、
Rz 0.14〜0.16μm)を実施
一方、DLC膜の施工は、用途によって、機械研削後、パフ研磨したり、またブラスト加工処理後の基材表面に対して形成する場合も多い。そこで、SUS304鋼試験片を用いて、ブラスト処理後およびバフ研磨処理後の基材表面に、膜厚5μmのDLC膜を施工し、表面粗さの異なる基材表面に形成されたDLC膜の貫通気孔率を測定した。
Figure 0005796861
上掲の表3に示す結果から明らかなように、DLC膜の貫通気孔率(R)は、基材表面の粗さが大きいほど飛躍的に増加し、最大で1.5%に達した。このようなDLC膜を被覆した試験片の耐食性は極めて低く、JIS−Z2371規定の塩水噴霧試験方法に供しても、短時間で赤錆を発生した。しかし、本発明に係るDLC膜の気孔内部へのめっき液からの金属析出現象は、気孔が多いほど、また気孔が大きいほど、めっき液の浸入が容易であるため、気孔内部への析出・充填作用も好適に行えることが明らかである。
念のため、表3に示したDLC膜について、電気亜鉛めっき処理を行った。その結果、すべてのDLC膜の貫通気孔部の内部に、めっき液から析出した金属亜鉛の析出が認められた。前記の表2及び表3の結果から、DLC膜に存在する貫通気孔(R)は、表2の最小値2.6×10−5%から表3の最大値15×10−1%の範囲のものについて、電気めっき法による金属析出反応を利用して、気孔の充填処理が可能であることが確認された。
(4)貫通気孔を有するDLC膜への電気めっき処理
以下、貫通気孔を有するDLC膜に対し、前記導電性金属・合金を電気めっき処理、例えば、電気亜鉛めっき処理して、その貫通気孔を封孔する方法について説明する。この処理が可能となるDLC膜は、次に示す条件を有することが必要である。
(a)DLC膜を形成するため基材(少なくとも表面層)、およびめっき金属・合金が、電気伝導性を有すること。
(b)DLC膜に貫通気孔が存在し、その貫通気孔の内部に電気めっき液が浸入して気孔内部がめっき液によって充填できること。
(c)DLC膜自体は、電気抵抗値が大きく、非電気伝導性であること。
本発明は、このような条件を具えるDLC膜被覆部材を、基材の少なくとも表面層よりは電気化学的に卑で陰極防食作用を示す金属・合金のうちの代表的な例である亜鉛の電気めっき処理によって、貫通気孔内部にめっき液から析出する亜鉛を充填する。このことによって、DLC膜を「電気めっき析出亜鉛充填形DLC膜」に改質して、腐食原因となる貫通気孔の封孔と、亜鉛による基材との間で陰極防食作用を導いてDLC膜の改質を図るものである。少なくとも基材表面よりも電気化学的に卑で、陰極防食作用を示す金属・合金としては、例示した亜鉛の他、基材との関係においてカドミウムも使用できるが、本発明の場合、特に亜鉛およびその合金が有効である。
次に、好適実施形態として、前記DLC膜に対して電気亜鉛めっきして充填封孔する方法について具体的に説明する。
図3は電気伝導性の基材31の表面に形成された非電気伝導性のDLC膜32を亜鉛めっき液中に浸漬し、その基材31を陰極とすると共に、めっき金属(亜鉛)33を陽極として、直流を通電してめっきする方法である。例えば、めっき亜鉛の析出量は、基本的には通電電気量に略比例するが、本発明において、電流密度は、0.5A/dm〜10A/dm程度、好ましくは1A/dm〜5A/dm程度の直流電源を用い、温度20℃〜55℃程度の条件を採用することが好ましい。また。表4には、本発明において使用できる代表的な亜鉛めっき浴の組成例、表5は亜鉛合金めっき浴の組成例を示す。これらの合金めっき浴から析出する亜鉛合金は、何れも鉄鋼系基材より、電気化学的に碑であるため陰極防食作用を発揮する。
なお、めっき時間は、溶射皮膜の厚さ、気孔率によって大きく変化するが、その終点は気孔部の充填を目的とする場合には、上述したように、通電後、基材表面から析出しためっき亜鉛が、皮膜の貫通気孔内部を充填しつつ成長し、その先端が表面に露出した状態を外部から観察することによって判定する。つまり、この判定時期に相当する状態が貫通気孔部の充填封孔が完了した目安となる。
Figure 0005796861
Figure 0005796861
なお、酸性またはアルカリ性の電気亜鉛めっき液中に、DLC膜を浸漬しても、炭素と水素からなるDLC膜自体は、化学的に安定しており、めっき液中に溶出して変質することはない。しかも、DLC膜は非電気伝導性であるため、その表面に、めっき金属の亜鉛が析出することもなく、貫通気孔の内部のみに亜鉛が析出することとなる。
即ち、非電気伝導性のDLC膜の貫通気孔部のみに電気亜鉛めっき液が内部へ浸入し、そのめっき液の先端が電気伝導性の基材表面に接触することによって、下記に示すような電気めっき回路が形成され、陰極面(基材の表面)では、下記のような反応が起こり、亜鉛が析出する。
めっき液中の金属(Zn)イオン → 陰極面にて電子を放出して金属(Zn)として析出する。
Figure 0005796861
前述した電気亜鉛めっき処理においては、通電を続けていると、基材表面に析出した亜鉛が、基材表面側から次第にDLC膜の表面側に向かって順次に析出(成長)し続け、DLC膜の貫通気孔部のみを、めっき析出亜鉛によって充填し、結果的にこの孔を封孔することになる。従って、めっき処理終了後のDLC膜というのは、腐食性の液体(例えば、各種の酸・アルカリ・海水など)が浸入可能な貫通気孔の全部もしくはその大半が、析出亜鉛粒子によって完全に充填されて封孔されることになる。しかも、このような電気めっき析出亜鉛充填形DLC膜は、析出亜鉛自体も基材と電気化学的現象から結合しているため、DLC膜と基材との密着性向上にも効果を発揮することが期待できる。
さらに、電気めっき処理時間を延長すると、DLC膜に存在するすべての貫通気孔が完全に充填・封孔され、やがてDLC膜の表面に達して、その膜表面をも被覆するようになる。このような基材の表面側から貫通気孔内で次第に成長した金属(亜鉛)が、貫通気孔内のみに充填され、表面にまで達する現象は、閉気孔(DLC膜中に存在するかも知れないが確認する手段がない空隙)では、発生しないことが明らかである。またDLC膜に貫通気孔が存在しても、その皮膜断面を金属顕微鏡や電子顕微鏡で観察しても気孔の形態・分布の判別は、殆んど不可能である現状に対し、本発明に係る電気めっき金属の析出現象を適用することによって、貫通気孔の位置、分布、その割合などを評価する方法としても有効である。このようなDLC膜の評価試験に電気めっき法を適用する場合には、めっき析出金属を銅、金などの有色金属にすることによって、一層効果が得られることと考えられる。
なお、電気亜鉛めっき処理によって析出する亜鉛の量は、亜鉛の電気化学当量によって支配されることは周知の通りである。即ち、電気めっき析出亜鉛の析出量(析出速度)は、個々の金属固有の数値を有するものの通電量に比例し、また、同じ通電量であれば通電時間に比例するので、通電量と通電時間を制御することによって、皮膜内部の空隙部への充填量および皮膜表面に被覆形成される金属量を調整することができる。
なお、DLC膜に存在する貫通気孔は、一般に非常に微細であるため、めっき液の浸入が困難もしくは長時間を要することが考えられる。このため、電気めっき処理に当たっては、下記の点について留意し、貫通気孔の内部へのめっき液の浸入と、そのめっき液からの亜鉛析出を図ることが好ましい。
(a)めっき液の温度を許容する範囲内において、なるべく高くして、めっき液の表面張力を低下させて、貫通気孔部への浸入を容易にすること。
(b)めっき液中の亜鉛濃度を高くして、貫通気孔の内部に浸入しためっき液からの析出亜鉛のみによって、気孔を充填し封孔できるようにする。
(c)めっき液を攪拌したり、超音波振動を付加することによって、めっき液の貫通気孔部への浸入を容易にするとともに、気孔外部のめっき液との交換を促すようにすること。
(d)さらに好ましくは、DLC膜自体の表面を先行特許文献23〜26に記載されているように親水性を付与し、めっき液の気孔内部への浸入を容易にすることも良い。
(5)DLC膜が形成される基材
低残留応力のDLC膜を形成するための基材としては、炭素鋼、高・低合金鋼、ステンレス鋼、Al及びその合金、Ti及びその合金などの非鉄系金属・合金のほか、グラファイト、焼結炭素などが非金属の材料、あるいはプラスチック系の高分子材料、セラミックス材料などの電気伝導率の低い材料でもよいが、この場合、それらの表面に溶射法やPVD法、CVD法などによって金属皮膜やサーメット皮膜などの電気伝導性の皮膜を施すことが必要である。
(実施例1)
この実施例では、Al基材の表面に形成したDLC膜の水素含有量と基材の曲げ変形に対する抵抗およびその後のDLC膜の耐食性の変化について調査した。
(1)供試基材および試験片
供試基材は、Al(JIS−H4000規定の1085)とし、この基材から、寸法:幅15mm×長さ70mm×厚さ1.8mmの試験片を作製した。
(2)DLC膜の形成方法およびその性状
試験片の全面にわたって、DLC膜を1.5μmm厚さに形成した。このとき、DLC膜中の水素含有量を5at%〜50at%(残部は炭素)の範囲に制御したものを用いた。これらのDLC膜試験片に電気めっき法による貫通気孔内へのめっき析出亜鉛の充填による封孔処理を施こし、その耐食性の効果を無封孔処理のDLC膜と比較した。
(3)試験方法およびその条件
DLC膜を形成した試験片を、90°の曲げ変形を与え、曲げ部のDLC膜の外観状況を20倍の拡大鏡で観察した。JI
S−Z2371に規定された塩水噴霧試験に供し、合計300時間の試験を行ったが、途中100時間ごとに、試験片の外観を観察し、腐食およびDLC膜の剥離などの有無を調査した。
(4)試験結果
試験結果を表6に示した。この表に示す結果から明らかなように、DLC膜の水素含有量が少なく、炭素含有量の多い試験片(No.l〜4)では、皮膜の硬さが大きく(HV:3000以上)また成膜時の残留応力値も高くなっていることもあって、90°曲げ試験後の皮膜は剥離したり、基材から浮き上がる現象が見られた。このような剥離現象が認められるDLC膜に対しては、亜鉛めっきによる貫通気孔の封孔処理の効果は認められない。
しかし、No.5試験片のようにDLC膜の剥離が軽微な場合には、100時間程度の腐食試験に対しては、亜鉛めっき処理による防食効果が認められた。
これに対して、水素を13at%〜50at%(No.7〜16)含むDLC膜は、曲げ変形によっても剥離せず、また、100時間の塩水噴霧試験においても、Al基材の腐食に起因する白さびの発生も認められず、比較的良好な耐食性を示すことが観察された。しかし、塩水噴霧試験が200時間を越えると白さびの発生が認められ(No.8、10,12)300時間後には、供試したすべての試験片に、白さびの発生が確認された(No.14、16)。
一方、DLC膜の貫通気孔部に、電気めっき法によってめっき析出亜鉛を充填して封孔処理した試験片(No.5、7、9、11、13、15)は、300時間経過後でも、白さびの発生は見られず、長時間にわたって、優れた耐食性を発揮することが確認された。
Figure 0005796861
(実施例2)
この実施例では、膜厚の異なるDLC膜に対する電気亜鉛めっき処理による貫通気孔部へのめっき析出亜鉛の封孔効果について調査した。
(1)供試基材と皮膜
a.供試基材として、腐食作用によって赤さびの発生しやすいSS400鋼(寸 法:幅30mm×長さ50mm×厚さ3.2mm)を用いた。
b.DLC膜:図1に示したプラズマCVD装置を用いて、基材の全表面に対して、0.5μm、1.0μm、3.0μm、8.0μm、15μm、20μm、30μm、50μmの厚みに形成したDLC膜を準備した。
c.上記、厚さの異なるDLC膜試験片について、電気めっき法によって、貫通気孔内に、めっき液から析出した亜鉛を充填した。
また、比較例の試験片として、無処理のSS400鋼試験片および成膜状態のDLC膜(貫通気孔部をそのままの状態にしたもの)を同条件で腐食試験に供した。
(2)腐食試験方法
実施例1と同じ、JIS Z 2371に規定されている塩水噴霧試験方法によって、800時間の連続腐食試験を行い、試験後の各試験片の外観を目視にて、赤さびの発生の有無を調査した。
(3)試験結果
試験結果を表7に示した。この表に示す結果から明らかなように、長時間による塩水噴霧試験の結果、無処理のSS400鋼をはじめ、膜厚の小さいDLC膜では、多量の赤さびが発生していることが判明した。これらの赤さびは噴霧状態の塩水によって基材のSS400鋼が腐食され、その腐食生成物が、赤さび(Fe(OH)、α・β・γ−FeOOH)となって顕在化したものである。一方、無処理DLC膜では、膜厚を15μmにしても、赤さびの発生が認められ、貫通気孔部から浸入する塩水の作用を完全に防止できる様子がうかがえる。
これに対して、亜鉛めっき処理によって、貫通気孔の内部を充填・封孔状態にしたDLC膜では、膜厚が1.0μm程度であっても、充填亜鉛によって基材のSS400鋼が防食され、良好な耐食性を発揮することが確認された。
Figure 0005796861
(実施例3)
この実施例では、金属、焼結炭素およびプラスチックなどの基材表面に、各種の表面処理法によって、金属膜を形成した後、この金属膜上に形成したDLC膜に対して、本発明に係る亜鉛めっき法による貫通気孔の封孔処理を施したものの密着性を調査した。
(1)供試基材と表面処理法
a.供試基材として、SS400鋼(寸法:幅20mm×長さ30mm×厚さ1.8mm)焼結炭素(寸法:幅35mm×長さ50mm×厚さ5mm)プラスチックス(寸法:幅18mm×長さ50mm×厚さ2mm)を用い、それぞれの基材の表面に対して、所定の前処理を施した後、PVD法、CVD法、電気めっき法によって、金属膜を0.5〜1.5μmの厚さで形成された。
PVD法:Cr、Ta
CVD法:Cr
電気めっき法:Cr、Ni、Cu
b.DLC膜:実施例2と同じ方法によって、それぞれの基材上に形成された金属膜の表面にDLC膜を1μm、5μm、10μm、30μm、40μm、50μmの膜厚を形成した試験片を作成した。
c.前記、各試験片に対して、本発明に係る電気めっき法による貫通気孔の封孔処理を施したものを密着性調査用の皮膜とした。
(2)DLC膜の密着性試験方法
電気亜鉛めっき処理後のDLC膜の密着性は、ISO 2050規定のスクラッチ試験方法を適用し、スクラッチ庇からの膜の剥離の有無およびその形状の変化から密着性の良否を判定した。
(3)試験結果
試験結果を表8に示した。この表に示す結果から明らかなように、基材質が金属質(No.1〜)はもとより、非金属の焼結炭素(No.4、5)、有機高分子材料(No.)であっても、それらの基材表面にCr、Taなどの皮膜を形成すると、PVD法、CVD法などのプロセスの影響を受けず、密着性に優れたDLC膜を被覆するにとどまらず、これらのDLC膜の貫通気孔の内部に電気めっき法によって、めっき析出亜鉛を充填・封孔する処理を行っても、DLC膜は良好な密着性を維持していることが確認された。
一方、電気めっき法によって、Ni皮膜(No.)やCu皮膜(No.)を施工した基材面に形成したDLC膜の密着性は低く、本発明の用途には、適していないことが判明した。
Figure 0005796861
本発明の技術は、現行のDLC膜が利用されている分野を含む、下記の産業分野への利用が期待される。
a.機械産業では、工作機械、織機、ポンプブロワーなどの回転機械、プラスチック炭素などのフィルムシート、繊維などの製造機、装置類、カメラ、光学機器、印刷機械装置。
b.電(気)機産業では、テレビ、ラジオ、洗濯機、冷蔵庫、冷暖房機などの家電製品をはじめ、パソコン、コピーなどの事務用機器、通信、受信用機器。
c.半導体産業では、Si、硝子などの精密研磨および加工装置。
d.バイオ、生物化学、医・薬学分野において要求される無菌および培養部材、化学プラント、石油化学、石油精製プラントなどに使用されている各種部材
以上の各種機械、装置、部材に要求されている機械的、電気的、化学的性能に応える皮膜として特に耐食性能を重複する分野で好適に使用できる。
1 反応容器
2 静電チャック用基材
3 導体
4 高電圧パルス発生電源
5 プラズマ発生用電源
6 重畳装置
7a、7b バルブ
8 アース線
9 高電圧導入部
21 基材(石英)
22 DLC膜
31 基材の表面に導電性皮膜を被覆した基材
32 DLC膜
33 めっき金属
34 直流電源
41 基材
42 DLC膜
43 DLC膜に存在する貫通気孔
44 貫通気孔部に充填された亜鉛析出物

Claims (10)

  1. 基材と、その表面に形成されたDLC膜とからなる部材において、そのDLC膜は、貫通気孔率が2.6×10 −5 〜15×10 −1 %、かつこの膜中に存在する貫通気孔の内部が、電気めっき液から析出した基材の少なくとも表面層よりは電気化学的に卑で陰極防食作用を示す金属・合金によって充填され封孔されていることを特徴とする耐食性に優れたDLC膜被覆部材。
  2. 上記基材の少なくとも表面層よりも電気化学的に卑で、陰極防食作用を示す金属・合金が亜鉛およびその合金であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れたDLC膜被覆部材。
  3. 前記DLC膜は、炭素:87〜60at%と水素:13〜40at%からなり、かつ厚さが1〜50μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性に優れたDLC膜被覆部材。
  4. 前記DLC膜は、成膜初期の残留応力が1Gpa以下のプラズマCVD法によって形成された膜であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の耐食性に優れたDLC膜被覆部材。
  5. 前記基材は、電気伝導性を有する金属材料もしくは非金属材料のいずれか、または非電気伝導性基材の上に形成された電気伝導性を有する溶射皮膜、PVD皮膜およびCVD皮膜のうちから選ばれるいずれか1種以上の1層以上のアンダーコート層を有するものによって構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の耐食性に優れたDLC膜被覆部材。
  6. 前記DLC膜を形成するための反応容器内に、少なくとも表面層は電気伝導性を示す被処理基材を、該反応容器に対して相対的に負の電位となるように配設し、その容器内に炭化水素化合物ガスを導入すると共に、該基材には高周波電力と高電圧パルスを重畳印加して、該炭化水素化合物ガスプラズマを発生させることにより、上記被処理基材の表面に貫通気孔率が2.6×10 −5 〜15×10 −1 %の微細な貫通気孔を有するDLC膜を形成し、その後、このDLC膜を被覆した上記被処理基材を、該基材の少なくとも表面層よりは電気化学的に卑で陰極防食作用を示す金属・合金を含有するめっき液中に浸漬し、当該基材を陰極として直流を通電することで、DLC膜中に存在する貫通気孔内に、めっき液から析出した前記金属・合金を充填して封孔することを特徴とする耐食性に優れたDLC膜被覆部材の製造方法。
  7. 上記基材の少なくとも表面層よりも電気化学的に卑で、陰極防食作用を示す金属・合金は、亜鉛およびその合金であることを特徴とする請求項7に記載の耐食性に優れたDLC膜被覆部材の製造方法。
  8. 前記DLC膜は、炭素:87〜60at%と水素:13〜40at%からなり、かつ厚さが1〜50μmであることを特徴とする請求項またはに記載の耐食性に優れたDLC膜被覆部材の製造方法。
  9. 前記DLC膜は、成膜初期の残留応力が1Gpa以下のプラズマCVD法によって形成された膜であることを特徴とする請求項6〜のいずれか1に記載の耐食性に優れたDLC膜被覆部材の製造方法。
  10. 前記基材は、電気伝導性を有する金属材料もしくは非金属材料のいずれか、または非電気伝導性基材の上に形成された電気伝導性を有する溶射皮膜、めっき皮膜、PVD皮膜およびCVD皮膜のうちから選ばれるいずれか1種以上の1層以上のアンダーコート層を有するものによって構成されていることを特徴とする請求項のいずれか1に記載の耐食性に優れたDLC膜被覆部材の製造方法。
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