JP2013256591A - ポリ乳酸樹脂組成物、成形品の製造方法、及び成形品 - Google Patents

ポリ乳酸樹脂組成物、成形品の製造方法、及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的とするところは、ポリ乳酸、ポリカーボネート樹脂、及びエラストマーを含有しながら、耐久性の高い成形品を形成することができるポリ乳酸樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸を4質量%以上15質量%未満の割合で含有し、ポリカーボネート樹脂を含有し、更にNa含有量15ppm以下、K含有量15ppm以下、S含有量13ppm以下であるエラストマーを1質量%以上の割合で含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物、前記ポリ乳酸樹脂組成物を用いる成形品の製造方法、及び前記ポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品に関する。
近年、地球温暖化の要因として、大気中における炭酸ガス濃度の上昇が指摘され、地球規模での炭酸ガス排出規制の必要性が唱えられている。炭酸ガスが発生する原因としては、生物の呼吸、バクテリアによる腐敗・発酵なども挙げられるが、石油資源に由来する物質の燃焼により発生する炭酸ガスの量は多く、現状の大気中の炭酸ガスによる温度上昇現象は、人間による産業革命以後の石油資源を浪費した経済活動によってもたらされているといっても過言ではない。更に、石油資源は有限な資源であり、将来的に枯渇することが予測される。
一方、近年、カーボンニュートラルな材料として、成長過程で大気中の炭酸ガスを吸収、固定する植物資源の有効活用が注目されている。植物資源を得る際には植物の植生によって大気中の炭酸ガスが吸収され、この植物資源で石油資源を代替することが試みられている。
プラスチック材料の分野においても、従来の石油を基礎原料とする材料から、バイオマスを利用した材料への転換が試みられている。バイオマスを利用したプラスチック材料は、当初は生分解性プラスチックとして注目を集めていたが、最近ではカーボンニュートラルな植物系プラスチックとしての価値が見直されており、一部で実用化されている。代表的な植物系プラスチックの一種として、ポリ乳酸樹脂が挙げられる。ポリ乳酸樹脂組成物を射出成形することにより、電子機器用ホルダー、電子機器の内部シャーシ部品、電子機器用筐体、電子機器用内部部品などの、種々の成形品を得ることが期待される。
例えば特許文献1には、ポリ乳酸25〜45質量%、Siを含有するコアシェルゴム3〜12質量%、有機リン系難燃剤1〜15質量%、含フッ素滴下防止剤0.2〜3質量%、及びポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂15〜70.8質量%を含有するポリ乳酸樹脂組成物を使用することが、開示されている。
上記のようなポリ乳酸とポリカーボネート樹脂とを含有するポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品には、更なる耐久性の向上が望まれている。
しかし、ポリ乳酸が使用される場合、成形品の耐久性を向上することは難しかった。特にポリ乳酸とポリカーボネート樹脂とが併用される場合おいて、成形品の機械的強度を向上するためにコアシェルゴム等のエラストマーが使用されると、成形品の耐久性が更に低下しやすくなるという問題があった。このような問題は、ポリ乳酸の普及の妨げとなっている。
特開2011−168756号公報
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、ポリ乳酸、ポリカーボネート樹脂、及びエラストマーを含有しながら、耐久性の高い成形品を形成することができるポリ乳酸樹脂組成物、このポリ乳酸樹脂組成物から成形品を製造する方法、及びこのポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品を提供することを目的とする。
本発明の第一の形態に係るポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸を4質量%以上15質量%未満の割合で含有し、ポリカーボネート樹脂を含有し、Na含有量15ppm以下、K含有量15ppm以下、S含有量13ppm以下であるエラストマーを1質量%以上の割合で含有することを特徴とする。
本発明の第二の形態では、第一の形態において、前記エラストマーのpHが、6〜8の範囲である。
本発明の第三の形態では、第一又は第二の形態において、前記ポリカーボネート樹脂の、ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(300℃ 1.2kg)が、10〜25g/10分の範囲である。
本発明の第四の形態に係るポリ乳酸樹脂組成物は、第一乃至第三のいずれか一の形態において、難燃剤を更に含有する。
本発明の第五の形態に係るポリ乳酸樹脂組成物は、第一乃至第四のいずれか一の形態において、60℃95%RHの雰囲気下1000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である成形品が形成される。
本発明の第六の形態に係る成形品の製造方法では、第一乃至第五のいずれか一の形態に係るポリ乳酸樹脂組成物を成形する。
本発明の第七の形態に係る成形品は、第一乃至第五のいずれか一の形態に係るポリ乳酸樹脂組成物を成形することにより形成される。
本発明の第八の形態に係る成形品は、第七の形態において、60℃95%RHの雰囲気下1000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である。
本発明によれば、ポリ乳酸樹脂組成物がポリ乳酸、ポリカーボネート樹脂、及びエラストマーを含有するにもかかわらず、このポリ乳酸樹脂組成物を成形することで、耐久性の高い成形品を得ることができる。
本発明の一実施形態における電子機器用ホルダーの外観を示す斜視図である。
[ポリ乳酸樹脂組成物中の成分]
本実施形態によるポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸を4質量%以上15質量%未満の割合で含有し、ポリカーボネート樹脂を含有し、更に、Na含有量15ppm以下、K含有量15ppm以下、S含有量13ppm以下であるエラストマーを1質量%以上の割合で含有する。以下、本実施形態によるポリ乳酸樹脂組成物が含有し得る成分について更に詳しく説明する。
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸樹脂組成物が含有するポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)は7.0万以上であることが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性と成形品の耐久性が射出成形材料として更に適したものになる。このポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、4.0以下であることが好ましい。更に、ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸の含有量は、4質量%以上15質量%未満の範囲であり、好ましくは4〜12質量%の範囲、更に好ましくは4質量%以上10質量%未満の範囲、特に好ましくは4〜7質量%の範囲である。
このような条件を満たすことで、ポリ乳酸に適度な流動性が付与されてポリ乳酸樹脂組成物の良好な成形性が確保されると共に、成形時にポリ乳酸からガスが発生しにくくなる。これにより、成形品にヒケやムラなどが生じにくくなり、その外観が良好になる。更に、成形品が加熱されても白化などの外観不良が生じにくくなる。更に、金型成形時に金型汚れが生じにくくなり、このためポリ乳酸樹脂組成物の連続成形が可能となって成形品の量産性が向上する。更に、ポリ乳酸が使用されているにもかかわらず、成形品の耐久性が低下しにくくなる。尚、本発明は、耐久性向上の観点からポリ乳酸樹脂組成物が加水分解防止剤を含有することを、妨げるものではない。但し、たとえ加水分解防止剤が使用されなくても、前記のとおり成形品の耐久性が低下しにくくなる。このため加水分解防止剤を使用せず或いは使用量を抑制することにより製造コストを低減しつつ、良好な耐久性を有する成形品を得ることも可能となる。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、7.0万〜50万の範囲であれば更に好ましく、7.0万〜30万の範囲であれば更に好ましく、7.0万〜10万の範囲であれば特に好ましい。更に、ポリ乳酸の分散度(Mw/Mn)が、4以下であることが好ましく、3.5以下であれば更に好ましく、3.0以下であれば更に好ましく、2.5以下であれば更に好ましい。
ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、溶媒(移動相)としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定結果を、標準ポリスチレンを使用した検量線により換算して算出される。ポリ乳酸の重量平均分子量及び数平均分子量の測定にあたっては、ポリ乳酸0.036gをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)9mLに48時間以上かけて溶解させ、これにより得られる溶液をフィルターで濾過することで、測定用のサンプルが得られる。このサンプルを東ソー株式会社製の高速GPC装置(型番HLC−8220)で測定すると、その測定結果に基づいて、ポリ乳酸の重量平均分子量、数平均分子量が算出される。
ポリ乳酸としては、乳酸の単独重合体と、乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との共重合体とが挙げられる。ポリ乳酸は乳酸がポリマー化することで得られる。乳酸は、例えばトウモロコシなどの植物に由来するデンプンが発酵することで得られる。
乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、乳酸の二量体であるラクトン等が挙げられる。
乳酸と共重合可能な乳酸以外のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸は、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
ポリ乳酸は、L−乳酸の重合体であるポリ−L−乳酸と、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸との少なくとも一方を含んでいることが好ましい。特にポリ乳酸がステレオコンプレックス型ポリ乳酸のみからなり、或いはポリ−L−乳酸とステレオコンプレックス型ポリ乳酸のみからなる場合には、外観並びに耐水性、耐衝撃性等の特性が非常に優れた成形品が得られる。
ポリ乳酸は、実質的に、下記式[化1]で表されるL−乳酸単位及びD−乳酸単位からなる。
Figure 2013256591
ポリ−L−乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは99〜100モル%のL−乳酸単位から構成される。L−乳酸単位の割合が高いと、成形品の耐久性が更に向上する。L−乳酸以外の単位としては、D−乳酸単位、乳酸以外の単位が挙げられる。
ポリ乳酸は、乳酸以外の単位を含んでいてもよい。乳酸以外の単位としては、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位、及びこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ポリ乳酸は、公知の方法で製造される。例えば、L−またはD−ラクチドが金属重合触媒の存在下、加熱されて開環重合することで製造される。ポリ乳酸は、金属重合触媒を含有する低分子量のポリ乳酸が結晶化した後、減圧下または不活性ガス気流下で加熱されて固相重合することによっても製造される。さらに、有機溶媒の存在/非存在下で、乳酸が脱水縮合する直接重合法によっても、ポリ乳酸が製造される。
ポリ乳酸のメルトフローレート(190℃ 2.16kg)は1〜16g/10分の範囲であることが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性(流動性)が特に向上する。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリ乳酸樹脂組成物がポリカーボネート樹脂を含有することで、成形品の耐熱性及び耐衝撃性が向上する。
ポリ乳酸樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂の含有量は適宜設定されるが、ポリ乳酸樹脂組成物全体に対して20〜97質量%の範囲であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物がポリ乳酸及びポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する場合には、ポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜設定される。例えばポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類によっては、ポリカーボネート樹脂の含有量が80〜95質量%の範囲であることも好ましく、20〜80質量%の範囲であることも好ましい。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば二価フェノールとカーボネート前駆体とが反応することで得られる芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法などが挙げられる。
二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが、挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも成形品の靭性を向上させることができる点でビスフェノールAが特に好ましい。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステル、ハロホルメートなどが挙げられる。具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
二価フェノールとカーボネート前駆体から界面重合法によって芳香族ポリカーボネート樹脂が製造される際には、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止のための酸化防止剤などが使用されてもよい。
ポリカーボネート樹脂として、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにこの二官能性カルボン酸及び二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂などが用いられてもよい。また、2種以上のポリカーボネート樹脂が用いられてもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融張力が増加し、それにより押出成形、発泡成形、ブロー成形等における成形加工性が改善する。その結果、寸法精度により優れる成形品が得られる。分岐ポリカーボネート樹脂を得るために使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。その他の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、並びにトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、及びこれらの酸クロライド等が例示される。中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、及び1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位の割合は、二価フェノールから誘導される構成単位とこの多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、0.03〜1モル%、好ましくは0.07〜0.7モル%、特に好ましくは0.1〜0.4モル%である。また、この分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、この分岐構造の割合はH−NMR測定により算出されることが可能である。
一方、脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましく、その具体例としては、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールが好適であり、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。さらに、ポリオルガノシロキサン単位を共重合したポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
ポリカーボネート樹脂として、二価フェノール成分が異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等が2種以上用いられてもよい。さらに、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等が2種以上用いられてもよい。
ポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献及び特許公報などで良く知られている方法である。
ポリカーボネート樹脂として、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネートが用いられてもよい。使用済みの製品としては防音壁、ガラス窓、透光屋根材、自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。これらは多量の添加剤や他樹脂などを含むことがなく、目的の品質が安定して得られやすい。殊に自動車ヘッドランプレンズや光記録媒体などは、下記粘度平均分子量のより好ましい条件を満足するため、好ましい態様として挙げられる。尚、上記のバージン原料とは、その製造後に未だ市場において使用されていない原料である。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは1×104〜5×104、より好ましくは1.4×104〜3×104、更に好ましくは1.8×104〜2.5×104である。粘度平均分子量が1.8×104〜2.5×104の範囲においては、ポリ乳酸樹脂組成物が特に良好な流動性と成形品の耐衝撃性との両立に優れる。最も好適には、粘度平均分子量が1.9×104〜2.4×104の範囲である。尚、この粘度平均分子量はポリカーボネート樹脂全体が満足すればよく、分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂の混合物がこの範囲を満足してもよい。
粘度平均分子量の算出にあたっては、まず次式(a)にて算出される比粘度を、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解して調製される試料溶液についてのオストワルド粘度計による測定結果から求める。次に得られた比粘度から、次式(b)〜(d)を用いて粘度平均分子量Mを求める。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t …(a)
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度) …(b)
[η]=1.23×10-40.83 …(c)
c=0.7 …(d)
ポリカーボネート樹脂の、ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(300℃ 1.2kg)は、10〜25g/10分の範囲であることが好ましい。この場合、成形品の耐久性が更に向上する。このメルトフローレート(300℃ 1.2kg)は、更に10〜20g/10分の範囲であることが好ましい。
(カルボジイミド化合物)
ポリ乳酸樹脂組成物は、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物を含有することも好ましい。この場合、これらの化合物が、ポリ乳酸のカルボキシル基末端の一部または全部と反応して封鎖する働きを発揮し、これにより成形品の高温高湿環境下での耐久性が更に向上する。
ポリカルボジイミド化合物としては、例えばポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられる。モノカルボジイミド化合物としては、例えばN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
このようなカルボジイミド化合物としては、市販品が適宜使用され得る。カルボジイミド化合物の具体例としては、日清紡ケミカル株式会社製の商品名カルボジライトLA−1(ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド))、カルボジライトHMV−8CA,カルボジライトHMV−15CA等が挙げられる。
カルボジイミド化合物は、イソシアネート基を有しないことが好ましい。カルボジイミド化合物がイソシアネート基を有しないとは、カルボジイミド化合物中にイソシアネート基を有する化合物が混入していないことを意味する。すなわち、カルボジイミド化合物中には、イソシアネート基を有する化合物が混入していることがあるが、このようなイソシアネート基を有する化合物がポリ乳酸か樹脂組成物に含まれないことが好ましい。この場合、成形品の耐久性が更に向上する。これは、イソシアネート基の反応性が、カルボジイミド基と比べて高すぎるためであると考えられる。すなわち、イソシアネート基は成形品中で速やかに反応して消費されてしまい、このためポリ乳酸のカルボキシル基末端を封鎖する働きが速やかに失われてしまうものと考えられる。
イソシアネート基を有しないポリカルボジイミド化合物としては、日清紡ケミカル株式会社製の商品名カルボジライトHMV−15CAなどが、挙げられる。
カルボジイミド化合物が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中のカルボジイミド化合物の含有量は0.1〜5質量%の範囲内であることが好ましい。この含有量が0.1質量%以上であることで成形品の耐久性が更に向上し、5質量%以下であることで成形品の高い機械的強度が維持される。カルボジイミド化合物の含有量は更に3質量%以下であることが好ましい。カルボジイミド化合物の含有量が0.1〜1.0質量%の範囲であれば特に好ましく、0.1〜0.5質量%の範囲であれば更に好ましい。
カルボジイミド化合物が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物の調製時にポリ乳酸とカルボジイミド化合物のみが予め混合されることでマスターバッチが調製されると、カルボジイミド化合物が使用されることによる前記作用が特に効果的に発揮される。
(メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体)
ポリ乳酸樹脂組成物は、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体を含有することも好ましい。この場合、成形品の耐衝撃性等の機械的特性が更に改善される。
メタクリル酸アルキルとしては、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの重合モル比は40:60〜95:5の範囲であることが好ましい。メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体の重量平均分子量は100万〜500万の範囲であることが好ましい。この重量平均分子量は、溶媒(移動相)としてクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められる、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
このようなメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体の具体例としては、三菱レイヨン株式会社製の商品名メタブレンP530が挙げられる。
メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体が使用される場合、熱可塑性樹脂組成物中のメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体の含有量は0.5質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。この含有量が1.0質量%以上、3.0質量%以下であることで、成形品の耐衝撃性が特に向上する。その理由は、前記範囲において熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が充分に上昇し、これにより成形品の微細構造中に不定形な海島構造が形成され、これが成形品の耐衝撃性の向上をもたらすためと、考えられる。
(ポリブチレンアジペートテレフタレート)
ポリ乳酸樹脂組成物は、更にポリブチレンアジペートテレフタレートを含有することが好ましい。ポリブチレンアジペートテレフタレートは1,4−ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸の共重合体であり、その具体例としてはBASF社製の商品名エコフレックスが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物がポリブチレンアジペートテレフタレートを含有すると、ポリ乳酸樹脂組成物が成形される際に、ポリ乳酸とポリブチレンアジペートテレフタレートとが反応することでポリ乳酸がポリブチレンアジペートテレフタレートによって架橋される。これにより成形品中の組織が強固となり、その結果、成形品の耐久性や機械的特性が更に向上する。
ポリブチレンアジペートテレフタレートが使用される場合、そのポリ乳酸樹脂組成物中の含有量は0.1〜10質量%であることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物がポリブチレンアジペートテレフタレートを含有する場合には、更にポリ乳酸樹脂組成物が有機過酸化物を含有することが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物が成形される際に有機過酸化物からフリーラジカルが生成することで、ポリ乳酸とポリブチレンアジペートテレフタレートとのラジカル反応が促進され、成形品の耐久性や機械的特性が更に向上する。有機過酸化物としては、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂株式会社製の商品名パーヘキサ25B)が使用される。ポリ乳酸樹脂組成物中の有機過酸化物の含有量は特に制限されないが、例えば0.01〜1質量%が好ましい。
(エラストマー)
ポリ乳酸樹脂組成物がエラストマーを含有することで、成形品の耐衝撃性等の機械的特性が向上する。
更に、エラストマーのNa含有量が15ppm以下、K含有量が15ppm以下、S含有量が13ppm以下であり、このエラストマーの割合がポリ乳酸樹脂組成物全体に対して1質量%以上であるため、成形品の耐久性が向上し、また成形品の変色が抑制される。これは、エラストマーにおける原子番号が小さいNa及びKの含有量が少ないことで、ポリ乳酸及びポリカーボネート樹脂の加水分解が抑制され、更にエラストマーにおける硫黄成分の含有量が少ないことでポリカーボネート樹脂の変色が抑制されるためであると、考えられる。このエラストマーの、ポリ乳酸樹脂組成物中の割合は、特に2〜9質量%の範囲であることが好ましい。
尚、エラストマーのNa含有量、K含有量、及びS含有量は、蛍光X線分析により測定される。測定装置としては、例えばスペクトロ社製の蛍光X線分析装置(品番XEPOS)が用いられる。
また、このエラストマーのpHが6〜8の範囲であることが好ましい。この場合、ポリ乳酸の加水分解が更に抑制される。このため成形品の耐久性が更に向上する。
また、エラストマーは、エステル結合と反応する官能基を備えることが好ましい。この場合、成形品の外観が向上する。その理由は次の通りであると考えられる。ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸とが併用される場合、通常は両者間の流動性の差が大きいため、成形品中にポリ乳酸とポリカーボネート樹脂による海島構造が形成されやすくなる。この海島構造が、成形品にフローマークが発生する原因となる。しかし、前記のようにエラストマーがエステル結合と反応する官能基を備えると、ポリ乳酸が増粘し、それによってポリ乳酸とポリカーボネート樹脂との間の流動性の差が小さくなる。このためポリ乳酸とポリカーボネート樹脂との相溶性が向上し、これにより、成形品の外観が向上すると、考えられる。
また、このようなエラストマーが用いられると、ポリ乳酸樹脂組成物が難燃剤を含有する場合に、難燃剤の割合を低減しつつ、成形品に高い難燃性を付与することができる。これも、ポリ乳酸の加水分解が抑制されるためであると、考えられる。
エラストマーとして、コアシェルゴムが使用されることが好ましい。コアシェルゴムは多層構造の重合体であって、重合体で構成される最内層(コア層)と、コア層を覆い且つコア層とは異種の重合体から構成される1以上の層(シェル層)とを有する。コアシェルゴムとしては、例えばゴム状重合体の存在下で、スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体などの単量体が重合してなる樹脂が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物全体に対するコアシェルゴムの割合は、1質量%以上である。この割合は3質量%以上であれば更に好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物の流動性を向上してポリ乳酸樹脂組成物の成形性、加工性、取り扱い性等を向上する観点からは、コアシェルゴムの含有量は12質量%以下であることが好ましい。
コアシェルゴムについて、更に詳細に説明する。コアシェルゴムとしては、不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体が使用されることが好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体を得るために用いられる不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。ジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン等の、ガラス転移点が10℃以下のゴムが挙げられる。芳香族ビニルとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレン等の核置換スチレンが挙げられる。これら不飽和カルボン酸アルキルエステル、ジエン系ゴム、芳香族ビニルは、それぞれ1種または2種以上使用することができる。
この不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体の代表例として、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)が挙げられる。メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体は、ブタジエン・スチレン重合体で構成されるコア層と、メタクリル酸メチル重合体で構成されるシェル層とを備える多層構造重合体であることが好ましい。
ブタジエン・スチレン重合体の構造式を下記式[化2]に示す。この構造式の左側部分がブタジエンに由来するブタジエン単位であり、右側部分がスチレンに由来するスチレン単位である。
Figure 2013256591
シェル層を構成するメタクリル重合体の構造式を下記式[化3]に示す。
Figure 2013256591
不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体の製造法としては、例えば塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種方法が挙げられる、特に、乳化重合法が好適である。このようにして得られるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体は、前記ジエン系ゴム成分を50質量%以上含有していることが好ましい。
このようなメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体として、市販品が適宜使用されてもよい。
(植物由来PET)
ポリ乳酸樹脂組成物が、植物由来原料を含む原料から合成されたPET(植物由来PET)を含有することも好ましい。このような植物由来PETは、例えばテレフタル酸と、サトウキビなどの植物由来のエタノール(いわゆるバイオエタノール)から製造されたモノエチレングリコール(バイオモノエチレングリコール)を含むモノエチレングリコールとが、脱水縮合することで合成される。
このような植物由来PETが使用されることで、ポリ乳酸樹脂組成物及びその成形品における石油由来資源の使用量が削減され、このため石油由来資源の削減が可能となり、このことが環境問題の解決のために貢献する。
植物由来PETの原料における、モノエチレングリコール全体に対するバイオモノエチレングリコールの割合は特に制限されないが、1〜100質量%の範囲であることが好ましく、5〜100質量%の範囲であれば更に好ましい。尚、植物由来PETに関し、その原料におけるモノエチレングリコール全体に対するバイオモノエチレングリコールの割合は、ASTM D6866−11 METHOD Bにより測定される。
植物由来PETが使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中の植物由来PETの割合は特に制限されないが、1〜30質量%の範囲であることが好ましい。
(他の熱可塑性樹脂)
ポリ乳酸樹脂組成物中には、上記以外の種々の熱可塑性樹脂が含まれてもよい。例えばポリ乳酸樹脂組成物が、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、PMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、LDPE樹脂(低密度ポリエチレン樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(いわゆるPET−G樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂などの芳香族ポリエステル樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリカプロラクトン樹脂;ポリフッ化ビニリデン樹脂に代表される熱可塑性フッ素樹脂;ポリエチレン樹脂、エチレン−(α−オレフィン)共重合体樹脂などを含有してもよい。ポリ乳酸樹脂組成物中には前記のような樹脂が一種のみ含まれていてもよく、二種以上が含まれていてもよい。このような種々の熱可塑性樹脂により、成形品の耐衝撃性が更に向上し得る。これらの熱可塑性樹脂が使用される場合、その含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物に対して3〜12質量%の範囲であることが好ましい。
(酸化防止剤)
ポリ乳酸樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。この場合、成形品中のポリ乳酸の加水分解が更に抑制されることで、成形品の耐久性が更に向上する。酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸オクタデシル、及びビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)ジシクロペンタジエンからなる群から選択される少なくとも一種が使用されることが好ましい。
(充填材等)
ポリ乳酸樹脂組成物は充填材を含有してもよい。充填材としては、例えば、タルク、ワラストナイト、マイカ、クレー、モンモンリロナイト、スメクタイト、カオリン、ゼオライト(珪酸アルミニウム)、ゼオライトを酸処理及び加熱処理して得られる無水非晶質珪酸アルミニウムなどの無機充填材が挙げられる。特にタルク、ワラストナイトが好ましい。これらの充填剤のうち、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
タルクの平均粒径は、通常は0.1〜10μmの範囲内であることが好ましい。この平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000IIシリーズなど)などを用いるレーザー回折散乱法により測定される値である。
ポリ乳酸樹脂組成物中のタルクの含有量は特に制限されないが、1〜30質量%の範囲内であることが好ましい。この含有量が1質量%以上であれば成形品の引張り弾性率が向上し、この含有量が30質量%以下であればポリ乳酸樹脂組成物の混練時におけるスクリューへのタルクの食い込みが抑制されて、良好な加工性、成形性が維持される。このタルクの含有量は、好ましくは1〜15質量%の範囲であり、更に好ましくは3〜8質量%の範囲である。この含有量が8質量%以下であると、複雑な形状の成形品を得る場合であってもウエルドやフローマークの発生が充分に抑制され、この含有量が3質量%以上であるとタルクの添加の効果が特に発揮される。
ポリ乳酸樹脂組成物は着色剤として染料や顔料などを含有してもよい。染料としては、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、ジアミノスチルベン系蛍光染料などの、蛍光染料(蛍光増白剤を含む);ペリレン系染料;クマリン系染料;チオインジゴ系染料;アンスラキノン系染料;チオキサントン系染料;紺青等のフェロシアン化物;ペリノン系染料;キノリン系染料;キナクリドン系染料;ジオキサジン系染料;イソインドリノン系染料;フタロシアニン系染料などが挙げられる。蛍光染料のうちでは、耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、及びペリレン系蛍光染料が好適である。顔料としては、金属被膜または金属酸化物被膜を有する各種板状フィラーなどのメタリック顔料、カーボンなどが、使用可能である。
ポリ乳酸樹脂組成物中の着色剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であれば更に好ましい。更に、着色剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.00001質量部以上であれば好ましく、0.00005質量部以上であれば更に好ましく、0.5質量部以上であれば更に好ましい。
(難燃剤)
ポリ乳酸樹脂組成物は、更に難燃剤を含有することも好ましい。この場合、成形品の難燃性が向上する。難燃剤としては、Br系難燃剤、有機リン系難燃剤、酸化アンチモンが用いられることが好ましい。
本実施形態では、ポリ乳酸樹脂組成物が、Na含有量15ppm以下、K含有量15ppm以下、S含有量13ppm以下であるエラストマーを1質量%以上の割合で含有するため、難燃剤の使用量が少なくても、成形品に高い難燃性が付与される。特に有機リン系難燃剤が用いられる場合、この有機リン系難燃剤の好ましい割合は、ポリ乳酸樹脂組成物全量に対して、5〜10質量%の範囲である。
有機リン系難燃剤として、下記[化4]に示される環状ホスファゼン化合物が用いられることが好ましい。
Figure 2013256591
及びRはそれぞれ独立にアリール基又は末端に不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸エステル基であり、R及びRは同じであっても異なっていてもよい。nは、3〜25の整数である。
[化4]に示される環状ホスファゼン化合物として、適宜の市販品が使用されてもよく、例えば大塚化学株式会社製の品番SPB100、SPB100L、株式会社伏見製薬所製の商品名ラビトルFP−100などが使用されてもよい。
この[化4]に示される環状ホスファゼン化合物は、液状であることが特に好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物中での環状ホスファゼン化合物の分散性が向上し、成形品の難燃性が特に向上する。また、[化4]に示される環状ホスファゼン化合物の含有量を低減しつつ、成形品の難燃性を向上することもできる。特に液状の[化4]に示される環状ホスファゼン化合物として、大塚化学株式会社製の品番SPB100Lが使用されることが好ましい。
有機リン系難燃剤が、下記式[化5]で表されるリン酸エステル化合物を含有することも、好ましい。このリン酸エステル化合物が使用されると、成形品の高い耐衝撃性が維持されながら、この成形品の難燃性が大きく向上する。
Figure 2013256591
式[化5]中のnは、0〜5の整数を示す。この式[化5]に示されるリン酸エステル化合物は、異なるn数を有する化合物の混合物であってもよい。リン酸エステル化合物が前記のような混合物である場合、平均のn数は好ましくは0.5〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.95〜1.15、特に好ましくは1〜1.14の範囲である。
上記式[化5]中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、及びジヒドロキシジフェニルよりなる群より選ばれるジヒドロキシ化合物から水酸基が除去された二価の基を示す。Xは特にレゾルシノール、ビスフェノールA、又はジヒドロキシジフェニルから誘導される二価の基であることが好ましい。
上記式[化5]中のR、R、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素数6〜12のアリール基を表す。このR、R、R、及びRとしては、具体的にはフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどのヒドロキシ化合物から誘導される、一価の基が例示される。中でもR、R、R、及びRがフェニル基、又は2,6−ジメチルフェニル基であることが好ましい。
尚、このフェニル基はハロゲン原子を有する置換基を有してもよい。このフェニル基から誘導される基を有するホスフェート化合物の具体例としては、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェートなどが例示される。
一方、ハロゲン原子を有する置換基を有しないホスフェート化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリ(2,6−キシリル)ホスフェート等のモノホスフェート化合物;レゾルシノールビスジ(2,6−キシリル)ホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー;4,4−ジヒドロキシジフェニルビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー;ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするリン酸エステルオリゴマー等が、好適である。ここで主体とするとは、重合度の異なる他の成分を少量含んでよいことであり、より好適には上記式[化5]におけるn=1の成分が80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含有されることである。
リン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。この酸価の下限は実質的に0とすることも可能であり、実用上0.01mgKOH/g以上が好ましい。ポリ乳酸樹脂が式[化5]で示され酸価が0.2mgKOH/g以下であるリン酸エステル化合物を含有すると、ポリ乳酸樹脂組成物の熱安定性が特に高くなり、またポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性が向上して成形品の耐水性が高くなる。リン酸エステル化合物中のハーフエステルの含有量は1.1質量%以下がより好ましく、0.9質量%以下が更に好ましい。下限としては実用上0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合、またはハーフエステル含有量が1.5mgを超える場合には、成形時の熱安定性に劣るようになり、芳香族ポリカーボネートの分解に伴いポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性が低下する。
このようなリン酸エステル化合物の具体例としては、大八化学工業株式会社製、品番PX202が挙げられる。
有機リン系難燃剤は、[化5]で表されるリン酸エステル化合物として、特に下記構造式(1−1)に示す化合物(レゾルシノールジキシレニルホスフェート)と、下記構造式(1−2)に示す化合物(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))とのうち、少なくとも一方を含有することが好ましい。
Figure 2013256591
Figure 2013256591
特に有機燐化合物が構造式(1−1)に示す化合物を含有すると、成形品の難燃性が向上するだけでなく、成形品の耐熱性及び耐久性も向上する。
有機リン系難燃剤として、リン酸アンモニウムも挙げられる。リン酸アンモニウムの具体例としては、クラリアントジャパン株式会社製の品番AP422が挙げられる。このようなリン酸アンモニウムが使用される場合も、成形品の高い耐衝撃性が維持されながら、この成形品の難燃性が大きく向上する。
(含フッ素滴下防止剤)
ポリ乳酸樹脂組成物は、更に含フッ素滴下防止剤を含有することも好ましい。含フッ素滴下防止剤は、成形品の燃焼時の溶融滴下を防止して難燃性を更に向上させるために使用される。
ポリ乳酸樹脂組成物中の含フッ素滴下防止剤の含有量は、0.2〜3質量%の範囲であることが好ましく、0.2〜1質量%の範囲であれば更に好ましい。このような範囲において、成形品の高い機械的強度と高い難燃性とを両立させることができる。
含フッ素滴下防止剤として、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく使用される。フィブリル形成能を有するPTFEは極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示す。PTFEの、標準比重から求められる数平均分子量は、100万〜1000万の範囲が好ましく、200万〜900万の範囲であれば更に好ましい。このPTFEは、固体形状であっても、水性分散液形態であってもよい。分散性の向上と成形品の更なる難燃性及び機械的特性の向上を目的として、PTFEが他の樹脂と混合されることでPTFE混合物を構成していてもよい。フィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業株式会社製のポリフロンMPA FA500,F−201Lなどが挙げられる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業株式会社製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のテフロン(登録商標)30Jなどが代表として挙げられる。
混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン株式会社の「メタブレン A3800」(商品名)、GEスペシャリティーケミカルズ社製の「BLENDEX B449」(商品名)などが挙げられる。
混合形態のPTFEの場合、PTFE混合物100質量%中のPTFEの割合は1〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜55質量%である。PTFEの割合が前記範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。
PTFEの粒子径は小さいことが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物中でのPTFEの分散性が向上し、それにより成形品の耐久性及び難燃性が更に向上する。特にPTFEの平均粒径が20〜100μmの範囲であることが好ましい。このPTFEの平均粒径は、ASTM D4895により測定される値である。
(その他)
ポリ乳酸樹脂組成物は、本発明の目的に反せず、その効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、無機および有機系抗菌剤等の、公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、ポリ乳酸樹脂組成物の混練時に加えられても、成形時等に加えられてもよい。
[ポリ乳酸樹脂組成物及び成形品]
ポリ乳酸樹脂組成物は、上記のようなポリ乳酸樹脂組成物の原料が任意の方法で混合、混練されることによって調製される。前記混合、混練にあたっては、例えば、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール等が用いられるが、中でも二軸押出機による溶融混練が好ましい。
例えばポリ乳酸樹脂組成物の調製にあたって、ポリ乳酸樹脂組成物の原料をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、原料のうちの一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法が採用されてもよい。また、原料の一部を溶融混練機に供給した後、残りの原料を溶融押出機の途中から供給する方法が採用されてもよい。溶融混練に際しての加熱温度は、ポリ乳酸樹脂組成物の組成に応じて適宜設定されるが、200〜260℃の範囲であることが好ましい。
尚、原料中に液状の成分がある場合には、溶融押出機への液状の成分の供給の際に、いわゆる液注装置、液添装置等が使用されてもよい。
ポリ乳酸樹脂組成物が必要に応じてペレット状に成形されてもよい。例えば溶融押出機により押し出されたポリ乳酸樹脂組成物が直接切断されてペレット化され、或いはこのポリ乳酸樹脂組成物のストランドが形成された後、このストランドがペレタイザー等で切断されてペレット化されることで、ペレット状のポリ乳酸樹脂組成物が得られてもよい。
ポリ乳酸樹脂組成物の成形法としては、射出成形、回転成形、ブロー成形、真空成形などの適宜の成形方法が採用され得る。特に射出成形が好ましい。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射出成形などが採用されてもよい。
ポリ乳酸樹脂組成物の射出成形にあたっては、適宜の射出成形装置が使用され得る。特に、射出時の金型のキャビティ表面温度が制御されるためは、電気式のヒータを備える金型が用いられることが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物の射出時に、電気式のヒータによってキャビティ表面の温度が正確且つ速やかに調整される。
このようにして得られる成形品は、長期間の使用が想定される家電分野や建材、サニタリー分野など、広範囲の分野に使用され得る。
本実施形態による成形品は、ポリ乳酸、ポリカーボネート樹脂、及びエラストマーが使用されているにもかかわらず、耐久性が低下しにくくなる。特に、ポリ乳酸樹脂組成物が成形されることで、60℃95%RHの雰囲気下1000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である成形品が形成されることが好ましい。60℃95%RHの雰囲気下3000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である成形品が形成されることが、更に好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂から形成される成形品の、60℃95%RHの雰囲気下1000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上であることが好ましい。この成形品の、60℃95%RHの雰囲気下3000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上であることが、更に好ましい。引張強度の保持率とは、前記条件での曝露処理が施される前の成形品の引張強度に対する、前記条件での曝露処理が施された後の成形品の引張強度の比率である。引張強度はISO 179に従って測定される。
成形品の用途は特に制限されないが、車載用部品、電子部品、家電筐体等が挙げられる。特に難燃剤が使用される場合は、成形品は、電池パック用筐体、パソコン用筐体、複合機部品等として、好適である。
図1に、成形品1の一例として、電子機器用ホルダー2を示す。電子機器用ホルダー2は卓上等において携帯電話機等の電子機器を保持固定する機能を有し、或いは更に電子機器内のバッテリーを充電するための充電器としての機能を併せ持つ。この電子機器用ホルダー2には、電子機器が載置される領域(載置領域3)と、この載置領域3の外縁から突出する保持リブ4とが形成されている。載置領域3上に載置される電子機器が更に保持リブ4によって支えられることで、電子機器が電子機器用ホルダー2に保持固定される。このため、電子機器用ホルダー2は、電子機器の形状及び寸法と合致するように形成される。電子機器用ホルダー2はこのような構造には限られず、電子機器を保持可能な適宜の構造を有していればよいが、そのために電子機器の形状及び寸法と合致するように形成される。
成形品には、各種の表面処理が施されてもよい。表面処理としては、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、めっき(電気めっき、無電解めっき、溶融めっきなど)、塗装、コーティング、印刷などの、成形品の表面上に新たな層を形成する処理が挙げられる。表面処理の具体例としては、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、メタライジング(蒸着など)などが挙げられる。
[製造例1]
Lラクチド及びDラクチドの混合物を、金属重合触媒及びアルコールの存在下で、窒素雰囲気下、撹拌翼を備える反応機内で加熱することで反応させた後、反応機内を減圧して混合物中に残存するラクチドを除去した。更にこの混合物をチップ化することで、ポリ乳酸を調製した。このポリ乳酸の調製にあたり、LラクチドとDラクチドの配合比を変更することで、後述する組成を有するポリ乳酸D及びポリ乳酸Fを調製した。
[実施例及び比較例]
各実施例及び比較例について、下記表に示す成分を用い、樹脂成分については予め乾燥処理を施した上で、これらの成分をタンブラーで10分間混合した。得られた混合物を二軸押出機で、ダイス付近温度190℃、投入口付近温度200℃の条件で押し出してストランドを得た。
このストランドを速やかに冷却槽で冷却した後、カッターで切断して、長さ2〜4mmのペレット状の樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を、除湿乾燥機にて80℃で4時間加熱することにより乾燥処理を施した後、100トン射出成形機及びISO準拠試験片金型(カラープレート、60mm×60mm×2mm、2個取り)を用い、シリンダーの温度をヘッド付近で230℃、材料投入口付近で220℃に設定すると共に、金型温度を70℃に設定して射出成形し、成形品を得た。
[成形サイクル評価]
各実施例及び比較例につき、樹脂組成物の射出成形時に一点ゲートの金型を用い、成形品の寸法を60mm×60mm×2mmとした。この場合の金型への樹脂組成物の射出後、金型から成形品を変形が生じることなく取り出すことが可能となるまでに要した保持時間(冷却時間)を測定し、これを成形サイクルの指標とした。
[外観及び金型汚れの評価]
各実施例及び比較例につき、樹脂組成物の射出成形時に1点ゲートの金型を用い、成形品の寸法を60mm×60mm×2mmとした。各実施例及び比較例において100個のサンプルについて試験をおこなった。
このサンプルのシワ及びヒケの有無を確認し、シワ又はヒケが生じている成形品の数(不良数)を確認した。
更に、サンプル中央部でのウエルド及びフローマークの有無を確認し、ウエルド又はフローマークが認められたサンプル数(不良数)を確認した。
更に、サンプルを成形するごとに金型汚れの有無を確認し、金型汚れが認められた回数を確認した。
[発色性評価]
各実施例において、組成物の調製時にカーボンブラック(三菱化学株式会社製のカーボンブラックMA600B)を、下記表に示される原料成分の総量100質量部に対して1質量部の割合で配合した。
このカーボンブラックが配合された樹脂組成物を射出成形機で成形して90mm×150mm×3mmの寸法の成形品を得た。分光光度計(村上色彩技術研究所製)を用いて前記の成形品の表面のL値を測定した。
その結果L値が10以下の場合をA、11〜15の場合をB、16以下をCと評価した。
[耐衝撃性評価]
各実施例及び比較例で得られた成形品のノッチ付きのシャルピー衝撃値を、ISO 179に従って測定した。
[耐熱性評価]
各実施例及び比較例における成形品の荷重たわみ温度を、ISO 75−1及び75−2に従って測定した。測定荷重は0.45MPaとした。
[耐久性評価]
各実施例及び比較例で得られた成形品を60℃、95%RHの雰囲気下、1000時間曝露した後、この成形品の引張強度を、ISO 179に従って測定した。曝露処理が施される前の成形品の引張強度に対する、曝露処理が施された後の成形品の引張強度の比率(引張強度の保持率)を導出し、これを耐久性の指標とした。
[80℃処理後の外観]
成形品を80℃の雰囲気下に48時間曝露する処理を施した。処理前の成形品と処理後の成形品の外観を目視で観察して比較した。
その結果、外観に特に変化が認められない場合をA、処理後の成形品の表面に白化が生じた場合をBと評価した。
[難燃性]
成形品に対し、UL94に従った燃焼試験を実施することで、難燃性のクラスを評価した。下記表に試験に供した成形品の厚み、並びに難燃性のクラスを示す。
[評価結果]
以上の評価試験の結果を、各実施例及び比較例における配合組成と共に下記表に示す。
Figure 2013256591
Figure 2013256591
尚、上記結果によると、ポリカーボネート樹脂が使用される場合には、エラストマーAの割合が1質量%以上である場合に、外観の評価が特に良好になった。これは、エラストマーAがエステル結合と反応する官能基を有することで、ポリ乳酸とポリカーボネート樹脂との相溶性が向上したためであると、考えられる。
また、各実施例において、樹脂組成物を射出成形することにより、図1に示す外観形状を有する電子機器用ホルダーを形成した。これにより、外観が良好な電子機器用ホルダーが得られた。
尚、表に示される各成分の詳細は次の通りである。
・ポリ乳酸A:Nature Works LLC社製、商品名NatureWorks4032D、D−乳酸単位の割合1.9モル%、分散度4.0以下。
・ポリ乳酸B:製造例1で得られたポリ乳酸、D−乳酸単位の割合1.9モル%、重量平均分子量7.5万、数平均分子量3.1万、分散度2.4、ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(190℃ 2.16kg)5.0g/10分。
・ポリカーボネート樹脂A:ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(300℃ 1.2kg)15g/10分、ISO 306に規定される荷重たわみ温度128℃。
・ポリカーボネート樹脂B:ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(300℃ 1.2kg)22g/10分、ISO 306に規定される荷重たわみ温度128℃。
・カルボジイミド化合物A:イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、カルボジイミド当量248、カルボジイミド基:イソシアネート基のモル比15:2、日清紡ケミカル株式会社製 LA−1。
・カルボジイミド化合物B:イソシアネート基を有さないカルボジイミド化合物、カルボジイミド当量262、日清紡ケミカル株式会社製、HMV−15CA。
・エラストマーA:コアシェルゴム(MBS樹脂)、pH7.1、電気伝導度47mS/m、Na含有量15ppm、K含有量15ppm、S含有量13ppm。
・エラストマーB:コアシェルゴム(MBS樹脂)、pH6.0、電気伝導度7mS/m、Na含有量15ppm、K含有量15ppm、S含有量13ppm。
・エラストマーC:メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体、三菱レイヨン株式会社製の商品名メタブレンC223A、pH4.6、電気伝導度47mS/m、Na含有量95ppm、K含有量85ppm、S含有量1610ppm。
・PTFEA:ポリテトラフルオロエチレン、平均粒子径470μm、見掛密度470g/l、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、品番PTFE 6−J。
・PTFEB:ポリテトラフルオロエチレン、平均粒子径28μm、融点327℃。
上記ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出するにあたっては、まずポリ乳酸0.036gをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)9mLに48時間以上かけて溶解させ、これにより得られる溶液をフィルターで濾過することで、測定用のサンプルを調製した。このサンプルを東ソー株式会社製の高速GPC装置(型番HLC−8220)で、移動相としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いて測定した。その測定結果を標準ポリスチレンを使用した検量線により換算して、ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出した。

Claims (8)

  1. ポリ乳酸を4質量%以上15質量%未満の割合で含有し、ポリカーボネート樹脂を含有し、Na含有量15ppm以下、K含有量15ppm以下、S含有量13ppm以下であるエラストマーを1質量%以上の割合で含有することを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
  2. 前記エラストマーのpHが、6〜8の範囲である請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  3. 前記ポリカーボネート樹脂の、ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(300℃ 1.2kg)が、10〜25g/10分の範囲である請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  4. 難燃剤を更に含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  5. 60℃95%RHの雰囲気下1000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である成形品が形成される請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形する成形品の製造方法。
  7. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形することにより形成される成形品。
  8. 60℃95%RHの雰囲気下1000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である請求項7に記載の成形品。
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