以下、発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。
[1.実施の形態]
[1−1.出納システムの構成]
図1において、出納システム1は、例えば金融機関の営業店において図示しない接客用カウンタの後方に設置され、金銭に関する入金や出金等の各種処理を総合的に実行するようになされている。
出納システム1は、紙幣を1枚単位で入出金する紙幣入出金機2、及び金種別の紙幣を所定枚数(例えば100枚)毎に施封して小束にした状態で収納し、また紙幣の小束を出金する施封小束支払機3を有している。
また出納システム1は、例えば金融機関の営業店、小売店や公共施設等に設置される現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine、図示せず)に着脱可能で、当該現金自動預払機で行われる取引用の紙幣を収納する補充回収カセットに紙幣を補充し、また補充回収カセットから紙幣を回収する紙幣補充回収機4も有している。
さらに出納システム1は、各金種の新券(新札)を出金する新券支払機5、金種別の一定枚数毎に棒状に重ねて包まれた硬貨(いわゆる棒金)を出金するための棒金支払機6、及び硬貨を1枚単位で入出金する硬貨入出金機7も有している。
さらに出納システム1は、紙幣入出金機2や施封小束支払機3、紙幣補充回収機4、新券支払機5、棒金支払機6及び硬貨入出金機7で行われる入金や出金等の処理内容を認証して所定の帳票等に印字し排出する認証プリンタ8、及び現金以外の小切手や定期預金証書等の有価証券を取り込んで入金処理する現金外ポスト9も有している。
さらに出納システム1は、入金や出金等の各種処理に関する種々の情報を表示するディスプレイ10、入金や出金等の各種処理に関する種々の情報や指示等を入力するためのキーボード11、及び出納システム1全体を統括制御する制御装置12も有している。
出納システム1は、これら各種装置の少なくとも一部については比較的自由に配置することができるものの、例えば、棒金支払機6、施封小束支払機3、紙幣補充回収機4、紙幣入出金機2、制御装置12及び硬貨入出金機7が、各々の正面を同一方向に向け互いに隣接するよう横一列に配置されている。
因みに以下の説明では、出納システム1における棒金支払機6、施封小束支払機3、紙幣補充回収機4、紙幣入出金機2、制御装置12及び硬貨入出金機7各々の正面が向く方向を前方向と定義し、その反対を後方向と定義して、さらに当該出納システム1の前側に対峙して見たときの左右方向及び上下方向をそれぞれ定義する。
また出納システム1は、例えば、紙幣補充回収機4の前上側に新券支払機5が組み込まれて一体化されていると共に、当該紙幣補充回収機4に認証プリンタ8が載置されている。
さらに出納システム1は、紙幣入出金機2にディスプレイ10が正面を前方向に向けて載置されると共に、当該ディスプレイ10の前にキーボード11が載置されている。さらに出納システム1は、硬貨入出金機7に現金外ポスト9が載置されている。
そして出納システム1では、右方向に沿って順次隣接させるようにして配置された施封小束支払機3、紙幣補充回収機4、及び紙幣入出金機2が、紙幣を左方向及び右方向に搬送する装置間搬送部(図示せず)によって接続されている。
これにより出納システム1は、施封小束支払機3、紙幣補充回収機4及び紙幣入出金機2の間で、施封や補充、回収等の各種処理に用いる紙幣を適宜、装置間搬送部を介して搬送して受け渡すことができるようになされている。
[1−2.施封小束支払機の内部構成]
図2に示すように、施封小束支払機3は、主として、制御部20、施封部21、装置間搬送部22、エレベータ部23、収納繰出部19(小束ハンド部24及び小束プッシャ部25)、小束金庫26(26a〜26d)、オーバーフロー庫27により構成されている。
エレベータ部23は、施封小束支払機3内の前端に設けられた上下方向に延在する昇降路28内を上下方向に移動できるようになされている。
またこの昇降路28の上端側に出金口29が設けられ、この昇降路28の下端側にオーバーフロー庫27が設けられ、さらに出金口29とオーバーフロー庫27の間の中央部分に小束シュート口30が設けられている。
さらにこの昇降路28の後方上側に施封部21が配置され、さらにこの施封部21より後方に装置間搬送部22が配置されている。
さらに昇降路28より後方下側に、施封部21及び装置間搬送部22と所定の間隔を空けるようにして、複数(例えば4個)の小束金庫26(26a〜26d)が前後方向に並んで配置されている。小束金庫26(26a〜26d)は、例えば金種毎に用意され、それぞれ指定された金種の紙幣小束を収納するようになされている。
さらに小束ハンド部24及び小束プッシャ部25からなる収納繰出部19は、施封部21及び装置間搬送部22と小束金庫26との間の通路31内を前後方向に移動できるようになされている。
この収納繰出部19は、小束ハンド部24が前、小束プッシャ部25が後ろとなる位置関係を維持しながら通路31内を移動するようになされている。
さらに空いたスペース(例えば装置間搬送部22の後方)に制御部20が配置されている。
この施封小束支払機3では、制御部20が上述の各部を制御して、紙幣小束の施封、紙幣小束の収納、紙幣小束の出金、紙幣小束が正常に施封されているか否かの判別等を行うようになされている。
実際上、紙幣小束を施封する場合、まず紙幣入出金機2(図2)から紙幣補充回収機4を経由して搬送されてきた紙幣が装置間搬送部22を介して所定枚数(例えば100枚)ずつ施封部21に送られる。施封部21は、送られてきた所定枚数の紙幣の束を紙幣小束Tとして紙帯で施封する。
図3に示すように、施封部21は、紙幣小束Tの長手方向の一端側寄り(すなわち紙幣を正面から見て左寄り)の所定箇所に、短手方向と平行に紙帯Sを巻回することで、紙幣小束Tを施封するようになされている。
具体的に紙幣小束Tは、官封券の場合、上下方向の厚さが約10mm、長手方向の長さが150mm〜160mm、左端から紙帯Sまでの長さが約30mm、紙帯Sの左右方向の幅が約20mmとなっている。
また紙幣小束Tを小束金庫26に収納する場合、まず、施封部21によって施封された紙幣小束Tが、当該施封部21の手前まで昇降路28内を昇ってきたエレベータ部23に渡される。
エレベータ部23は、紙幣小束Tを受け取ると、小束ハンド部24及び小束プッシャ部25の通路31の手前まで昇降路28内を降りていく。
エレベータ部23が通路31の手前までくると、エレベータ部23によって運ばれてきた紙幣小束Tが、通路31の前端に移動してきた小束ハンド部24に渡される。
小束ハンド部24は、エレベータ部23から受け取った紙幣小束Tを挟持したまま、通路31内を指定された金種に対応する小束金庫26(26a〜26d)の上まで移動する。
このとき、指定された金種に対応する小束金庫26の上には、小束プッシャ部25が位置していて、小束ハンド部24が指定された金種に対応する小束金庫26の上までくると、小束ハンド部24と小束プッシャ部25とが一体化する。このように小束ハンド部24と小束プッシャ部25とが一体化した状態を結合状態とも呼ぶ。
そして小束プッシャ部25が、小束ハンド部24に挟持された紙幣小束Tを下方の小束金庫26へと押し出す。
この結果、この紙幣小束Tが小束金庫26内の昇降ステージ(図示せず)上に積み重なるようにして収納される。
小束金庫26の昇降ステージは、バネ等の付勢部材により上方に付勢されていて、この昇降ステージと、小束金庫26の上端の入出口付近に設けられたストッパとで、昇降ステージ上に積み重ねられた紙幣小束Tを上下方向に挟み込んで保持するようになされている。
このようにして、施封小束支払機3は、施封された紙幣小束Tを収納するようになされている。
なお、指定された金種に対応する小束金庫26が例えば満杯の場合、エレベータ部23は、昇降路28の下端側に設けられたオーバーフロー庫27まで紙幣小束Tを運び、このオーバーフロー庫27に紙幣小束Tを収納するようになされている。
ところで、昇降路28の前側壁面28aの小束シュート口30近傍には、左右方向に延在する回転軸が設けられ、この回転軸に板状のシュート板32の一端部が枢支されている。
このシュート板32は、例えば、紙幣小束Tを小束金庫26に収納するときには、エレベータ部23の移動の妨げとならないよう、昇降路28の前側壁面28aと平行になる位置まで回転して保持されるようになされている。
一方でシュート板32は、小束シュート口30から紙幣小束Tを出金するときには、小束シュート口30へと続く下り坂となるように、水平面に対して30度〜45度程度の斜面となる位置まで回転して保持されるようになされている。
なお、このときシュート板32の他端側(坂の上となる側)が、少なくとも小束ハンド部24及び小束プッシャ部25の通路31より下方に位置するように、小束シュート口30やシュート板32の位置が決められている。
実際上、紙幣小束Tを小束シュート口30から出金する場合、まず、エレベータ部23が昇降路28内を、小束シュート口30より下方の所定位置まで降りていく。
シュート板32は、エレベータ部23の動きに連動する仕組みとなっていて、エレベータ部23が所定位置まで降りていくと、この動きに連動して、小束シュート口30へと続く下り坂となるように、水平面に対して30度〜45度程度の斜面となる位置まで回転する。
ここで、小束ハンド部24及び小束プッシャ部25が指定された金種の小束金庫26(26a〜26d)の上まで移動する。このとき小束プッシャ部25は、小束ハンド部24内と一体化する。
小束ハンド部24及び小束プッシャ部25が指定された金種に対応する小束金庫26の上までくると、小束プッシャ部25が、後述する押込プレートを下方まで伸ばして、下方の小束金庫26の昇降ステージ上に積み重ねられている紙幣小束Tを押し下げる。
小束金庫26は、小束プッシャ部25により紙幣小束Tが下方に押し下げられると、入出口付近に設けられたストッパが外れる仕組みになっている。
ストッパが外れると、昇降ステージ上に積み重ねられている紙幣小束Tは、昇降ステージと小束プッシャ部25の押込プレートとの間で保持されながら昇降ステージと共に上昇する。
そして昇降ステージ上に積み重ねられている紙幣小束Tのうち1番上の紙幣小束T(最上位紙幣小束Tt)が小束金庫26の入出口の外まで上昇すると、小束ハンド部24は、この最上位紙幣小束Ttを前方へスライドするよう移動させた後に挟持する。
そして小束ハンド部24は、小束金庫26から受け取った紙幣小束Tを挟持したまま、通路31内をエレベータ部23の昇降路28まで移動する。このとき、小束ハンド部24は、小束プッシャ部25から分離した分離状態となる。
小束ハンド部24は、昇降路28までくると、このとき挟持している紙幣小束Tを離す。すると、このときちょうど小束ハンド部24の下方に位置しているシュート板32の上に小束が落とされ、そのままこのシュート板32を下って小束シュート口30へと送られる。
このようにして、施封小束支払機3は、紙幣小束Tを小束シュート口30から出金するようになされている。
またこの施封小束支払機3では、紙幣小束Tを出金口29から出金できるようにもなされている。この場合、エレベータ部23は、小束ハンド部24及び小束プッシャ部25の通路31の手前に移動する。
このとき、紙幣小束Tを小束シュート口30から出金する場合と同様にして、小束ハンド部24が、指定された金種に対応する小束金庫26(26a〜26d)から受け取った紙幣小束Tを挟持したまま、通路31内をエレベータ部23の昇降路28まで移動する。
そして、この小束ハンド部24に挟持されて運ばれてきた紙幣小束Tが、通路31の手前に移動してきたエレベータ部23に渡される。
エレベータ部23は、紙幣小束Tを受け取ると、昇降路28内を上昇して、この紙幣小束Tを出金口29へと運ぶ。
このようにして、施封小束支払機3は、紙幣小束Tを出金口29から出金できるようになされている。
この場合も、出金しようとしている紙幣小束Tが、指定された金種の小束ではないと制御部20によって判別されると、この紙幣小束Tは、小束ハンド部24からエレベータ部23に渡され、エレベータ部23によりオーバーフロー庫27へと運ばれるようになされている。
さらにこの施封小束支払機3では、小束金庫26(26a〜26d)間で紙幣小束Tを移動させる金庫間移動も可能になされている。
この場合、紙幣小束Tを小束シュート口30又は出金口29から出金する場合と同様にして、小束ハンド部24が、指定された金種に対応する小束金庫26(26a〜26d)の紙幣小束Tを挟持する。
続いて小束ハンド部24は、紙幣小束Tの移動先となる小束金庫26(26a〜26d)の上までくると、小束プッシャ部25と一体化する。
小束プッシャ部25は、小束ハンド部24が挟持している紙幣小束Tを下方の小束金庫26へと押し出すことにより、金庫間移動を行う。
[1−3.収納繰出部の構成]
図4及び図5に示すように収納繰出部19は、互いに分離及び結合可能な小束ハンド部24と小束プッシャ部25とにより構成されている。
小束ハンド部24は、略コ字形状のハンド部筐体40を有している。このハンド部筐体40は、下端部の中央から後端までが紙幣小束Tのサイズに合わせて切り欠かれた切欠部42が形成されており、当該切欠部42に紙幣小束Tが収まるようになされている。
この切欠部42の上側には、紙幣小束Tの上面の長手方向の両端部近傍に当接するピッカ部44及び挟持部46が、紙幣小束Tの長手方向の長さよりも若干短い間隔を隔てて左右方向に対向して設けられている。
またハンド部筐体40には、図示せぬ駆動機構により回動軸48を中心に回動可能なL字形状のクランプアーム50が、ピッカ部44と挟持部46との間隔よりも若干長い間隔を隔てて左右方向に対向して設けられている。
さらにハンド部筐体40の内部には、切欠部42の上方に、小束プッシャ部25の一部分を収納できる小束プッシャ部収納領域52が設けられている。この小束プッシャ部収納領域52は、下方の切欠部42と繋がっている。
この小束ハンド部24は、小束金庫26(図2)の入出口の外まで上昇した紙幣小束Tを、ピッカ部44により前方へスライドさせて移動させる。
また小束ハンド部24は、切欠部42に紙幣小束Tを収めるようにして、ピッカ部44及び挟持部46とクランプアーム50との間に紙幣小束Tを挟み込むことで、紙幣小束Tをピッカ部44及び挟持部46とクランプアーム50とで挟持する。
一方小束プッシャ部25は、小束ハンド部24の小束プッシャ部収納領域52に一部分が収まるプッシャ部筐体54を有している。
このプッシャ部筐体54の下端部の後側には図示せぬ駆動機構により駆動され紙幣小束Tを押圧する押込プレート56が設けられている。
この小束プッシャ部25は、小束ハンド部24の後側から、小束プッシャ部収納領域52内に嵌脱自在に形成されている。
また、小束プッシャ部25が、紙幣小束Tを挟持している状態の小束ハンド部24と一体化すると、このとき小束ハンド部24に挟持されている紙幣小束Tの上方に押込プレート56が位置することになる。
この状態で小束プッシャ部25は、押込プレート56により紙幣小束Tの上面を押圧することができ、これにより、紙幣小束Tを下方に押し出すことができるようになされている。このとき、小束ハンド部24のクランプアーム50は、押込プレート56の妨げとならないように退避するようになされている。
また小束ハンド部24の挟持部46及びピッカ部44は、押込プレート56の左右方向の外側に位置することにより、小束金庫26から紙幣小束Tを繰り出す際、押込プレート56の妨げとならないように配置されている。
小束プッシャ部25から前方向に延びたアーム58の前端からは、結合状態において小束ハンド部24が最上位紙幣小束Ttを移動させる際に2段目の紙幣小束Tの前方向への移動を抑えるストッパ60が設けられている。以下では、上から2段目の紙幣小束Tを次段紙幣小束Tsとも呼ぶ。ストッパ60は図示せぬ駆動機構によって上下方向に移動可能に設けられている。
また小束プッシャ部25には、小束ハンド部24のピッカ部44に穿設されたカムプレート孔62に結合状態において遊挿するカムプレート64が前方向に向かって設けられている。
カムプレート64は、垂直方向に延びる板状でなり、後方から前方に向かって上端が前後方向に沿って直線状に延びると共に、前端部分には前方に向かって下方向に直線状に傾斜するよう先細りに形成された傾斜部66が設けられている。
[1−4.ピッカ部の構成]
図6、図7及び図8に示すようにピッカ部44は、当接部材70とスライドピッカアーム72とにより構成されている。なお図6の分解図及び図8においては、コイルスプリング90は図示せず省略する。
当接部材70は所定の厚みを有する金属板が板金加工された形状を有し、水平方向に延びる金属板である押当板74の左端が、上方向へ直角に曲げられ取付板76となっている。この当接部材70は、小束ハンド部24(図4及び図5)に対し固定されている。
取付板76の後端には、円筒形状でなる摺動ポスト78が、上下方向に所定の間隔を空けて右側に向かって突設している。当該摺動ポスト78の左端の根本には、平座金が取り付けられている。
スライドピッカアーム72は、所定の厚みを有する金属板が板金加工された形状を有し、垂直方向に延びるピッカ板80の左端が前方に向かって直角に曲がり、摺動板82となっている。
摺動板82には、当接部材70における摺動ポスト78の外径よりも僅かに大きい前後方向の幅を有する摺動溝84が上下方向に延びるよう穿設され、当該摺動溝84には摺動ポスト78が摺動可能に嵌り込んでいる。
これによりスライドピッカアーム72は、当接部材70に対し上下方向に移動可能に構成されている。
当接部材70に穿設された下側スプリング孔86と、スライドピッカアーム72に穿設された上側スプリング孔88とには、引張バネでなるコイルスプリング90の上端と下端とがそれぞれ掛止している。
このためスライドピッカアーム72は、当接部材70に対しコイルスプリング90により下方向へ付勢されている。
ピッカ板80のほぼ中央部分には、小束プッシャ部25に設けられたカムプレート64が挿脱可能なカムプレート孔62が穿設されている。
またピッカ板80の右端の上部は後方に向かって直角に折り曲げられ、背面視においてカムプレート孔62の上端付近を左右方向に横切るように、円筒形状でなるカムポスト92が突設している。
ピッカ板80におけるカムプレート孔62の下側は、小束金庫26から紙幣小束Tを取り出す際に最上位紙幣小束Ttの後側面に当接する板状の繰出部93となっている。また、ピッカ板80の下端は後方に向かって直角に曲げられ、板状の当接部94が形成されている。
図7(B)に示すように、ピッカ板80が後方に向かって曲がる部分である曲げ部96は、曲面形状であり、前側の面(紙幣小束Tを繰り出す際、最上位紙幣小束Ttの後側面と対向する面)の曲率半径Rが1mm〜2mm(本実施の形態においては1.6mm)となっている。
かかる構成において、小束ハンド部24と小束プッシャ部25とが結合した結合状態(図5)においては、図8に示すように、小束プッシャ部25に設けられたカムプレート64がカムプレート孔62に入り込んでいる。
このときカムプレート64は、コイルスプリング90による下方向への付勢力に逆らってスライドピッカアーム72を上側に持ち上げた状態となっている。また当接部材70の摺動ポスト78は、スライドピッカアーム72の摺動溝84のほぼ下端部に位置している。
この結合状態において、スライドピッカアーム72はコイルスプリング90により下方向へ付勢されているため、カムポスト92には、カムプレート64の上側面に押し付けられる力が発生する。
結合状態から、小束ハンド部24が小束プッシャ部25から分離する分離状態に移行する際、小束ハンド部24の当接部材70は、小束プッシャ部25のカムプレート64に対し前方へ移動していく。
このとき、図9に示すように、下方向に付勢されているカムポスト92がカムプレート64の傾斜部66の上側面に沿って徐々に下方向へ移動していく。このためスライドピッカアーム72は、当接部材70に対し徐々に下方向に移動する。
さらに小束ハンド部24が小束プッシャ部25から前方へ離間していくと、図10に示すように、カムポスト92はカムプレート64の傾斜部66から離れる。このときピッカ部44は、スライドピッカアーム72の下方への移動が止まるリミッタ状態となる。
[1−5.動作及び効果]
以上の構成において、小束金庫26から紙幣小束Tを取り出す際、施封小束支払機3は、小束ハンド部24を移動させ、図11に示すように、ピッカ部44のスライドピッカアーム72における繰出部93を最上位紙幣小束Ttの後側面に当接させる。
この状態において、小束プッシャ部25(図4)のストッパ60が次段紙幣小束Tsの前側面に当接することにより、当該次段紙幣小束Tsの前方への移動を抑止する。
続いて施封小束支払機3は、小束ハンド部24(すなわちスライドピッカアーム72)を前方へ移動させることにより、図12に示すように最上位紙幣小束Ttを前方へ押して移動させる。
このときカムポスト92(図9)がカムプレート64の傾斜部66を徐々に前方へ移動することにより、スライドピッカアーム72が最上位紙幣小束Ttの後側面に触れながら降下し、次段紙幣小束Tsに近づいていく。
施封小束支払機3は、次段紙幣小束Tsの上面から上方へ2mm程離間した位置に当接部94の下面が移動したところで小束ハンド部24を一旦停止させることにより、スライドピッカアーム72の下降を停止させる。この状態においてカムポスト92はカムプレート64の傾斜部66に当接している。
続いて施封小束支払機3は、再びスライドピッカアーム72を前方に移動させていく。このときカムポスト92はカムプレート64から外れ、スライドピッカアーム72がさらに下方へ移動し、図13に示すように当接部94の下面が次段紙幣小束Tsの上面に当接することにより、スライドピッカアーム72の下方向への移動が止まる。
実際上ピッカ部44は、施封小束支払機3において取り扱われる様々な状態の紙幣小束Tの厚みのばらつきを考慮し、リミッタ状態になる前に、次段紙幣小束Tsの上面に当接するように設計されている。
続いて施封小束支払機3は、次段紙幣小束Tsの上面に当接部94を当接させたままピッカ部44をさらに前方へ移動させることにより、最上位紙幣小束Ttを前方へ移動させる。
その後小束ハンド部24は、図14に示すように、次段紙幣小束Tsよりも紙幣小束Tの短手方向の長さの半分程が前方へ飛び出した状態において、挟持部46(図示せず)及びピッカ部44とクランプアーム50とで最上位紙幣小束Ttを挟持し前方向へ移動することにより、最上位紙幣小束Ttを小束金庫26から取り出す。
このように施封小束支払機3は、最上位紙幣小束Ttの厚みに対応させてスライドピッカアーム72を次段紙幣小束Tsの上面まで下降させ、最上位紙幣小束Ttの後側面の上端から下端に沿って連続的に繰出部93を当接させつつ押し出すようにした。
これにより小束ハンド部24は、小束金庫26から最上位紙幣小束Ttを押し出して分離する際において、最上位紙幣小束Ttに段差を発生させず、形状を崩さないようにすることができる。
ところで、金庫間移動を行う場合に小束金庫26から紙幣小束Tを取り出す際に、従来のように紙幣小束Tの形状が崩れてしまった場合、形状が崩れてしまった紙幣小束Tが、移動先の小束金庫26に収納されることとなる。
そのように形状が崩れた紙幣小束Tをその後小束金庫26から取り出そうとすると、小束金庫26内に当該紙幣小束Tが接触してしまい、上下移動する際の負荷が増加してしまうため、昇降ステージが当該紙幣小束Tを正常に押し上げられない可能性がある。
これに対し本実施の形態においては、紙幣小束Tの形状を保つことができるため、施封小束支払機3は、金庫間移動を安定して行うことができる。
また紙幣小束Tは、複数の紙幣が積層することにより構成されているため、当該紙幣小束Tの横側面は完全な平坦形状ではなく、ある程度凹凸形状となっている。
このため、仮に曲げ部96が曲面形状でなく、丸みのない角部形状であった場合、スライドピッカアーム72が最上位紙幣小束Ttの後側面に当接しながら下方向へ移動する際、当該角部形状の部分が、最上位紙幣小束Ttの後側面に引っ掛かってしまい、スライドピッカアーム72が正常に次段紙幣小束Tsに当接できない可能性がある。
これに対し、本実施の形態におけるスライドピッカアーム72には、曲面形状でなる曲げ部96を設けるようにした。
このためスライドピッカアーム72は、最上位紙幣小束Ttの後側面に引っ掛かることなく、当該後側面を下方向へ滑りながら移動することができる。
また曲げ部96が角部形状であった場合、仮に当該角部形状が最上位紙幣小束Ttの後側面に引っ掛からずに、当接部94が次段紙幣小束Tsの上面に当接できたとしても、その後ピッカ部44が前方に移動する際、角部形状が次段紙幣小束Tsの上面を擦ってしまい、傷つけてしまう恐れがある。
これに対し、本実施の形態におけるスライドピッカアーム72には、曲面形状でなる曲げ部96を設けるようにした。このためピッカ部44は、当接部94の前端を次段紙幣小束Tsの上面に引っ掛けることなく、前方に移動することができる。
またピッカ部44は、曲げ部96の曲率半径Rを2mm以下にするようにした。ここで、曲げ部96の曲率半径Rが大きければ、スライドピッカアーム72は最上位紙幣小束Ttの後側面に引っ掛かり難くはなる。
しかしながらその場合、ピッカ部44が前方へ移動する際、曲げ部96の形状に沿って最上位紙幣小束Ttの下側が徐々に後方へ位置ずれしてしまう可能性がある。
一方、曲げ部96の曲率半径Rを小さくすれば、最上位紙幣小束Ttの形状を崩れにくくすることはできるが、スライドピッカアーム72が最上位紙幣小束Ttの後側面に引っ掛かりやすくなってしまう。
このため本実施の形態においては、曲率半径Rを1mm以上であり且つ2mm以下とすることで、スライドピッカアーム72が最上位紙幣小束Ttの後側面に当接しつつ引っ掛からずに滑らかに次段紙幣小束Tsの上面まで達すると共に、スライドピッカアーム72が最上位紙幣小束Ttを前方に押す際、当該最上位紙幣小束Ttの形状を崩さないようにすることができる。
さらに本実施の形態においては、結合状態において、小束ハンド部24のピッカ部44におけるスライドピッカアーム72に設けられたカムプレート孔62に、小束プッシャ部25に設けられたカムプレート64を挿通させ、分離状態に移行するに連れてカムプレート64の傾斜部66にカムポスト92を沿わせることにより、スライドピッカアーム72を下降させるようにした。
このため施封小束支払機3は、別途スライドピッカアーム72を下降させる複雑な機構を設けることなく、小束金庫26から紙幣小束Tを取り出す際における、小束ハンド部24が小束プッシャ部25から分離する動作を利用して、スライドピッカアーム72を最上位紙幣小束Ttに沿って下降させることができる。
ところで、官封券はほぼ規定通りの一定の厚さであるが、市場を流通した流通紙幣の小束の厚さは、官封券よりも厚くなる傾向にある。本実施の形態におけるピッカ部44は、そのような流通紙幣の小束の厚みに対応し、スライドピッカアーム72の上下方向の長さ、当接部材70に対するスライドピッカアーム72の上下方向の移動量が設定されている。
また施封小束支払機3は、カムプレート64の傾斜部66の傾斜角度及び前後方向の長さを変更することにより、次段紙幣小束Tsから最上位紙幣小束Ttを分離させるタイミングや、スライドピッカアーム72の下降位置を調整することができる。
以上の構成によれば、ピッカ部44は、小束金庫26から紙幣小束Tを繰り出す際、最上位紙幣小束Ttの後側面に摺動しつつ、当該最上位紙幣小束Ttの厚みに対応して次段紙幣小束Tsの上面に当接するまで下降し、当該最上位紙幣小束Ttの後側面の上端から略下端に沿って当接して前方へ押すことにより、当該最上位紙幣小束Ttと次段紙幣小束Tsとを分離するスライドピッカアーム72を設けるようにした。
かくして施封小束支払機3は、積み重なった複数の紙幣小束Tから、形状を保ったまま紙幣小束Tを分離して繰り出すことができる。
[2.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、曲げ部96を曲面形状とする場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図15に示すスライドピッカアーム172のように、繰出部93及び当接部94それぞれに対し45度の角度を有する平面形状でなる曲げ部196としても良い。
この場合でもスライドピッカアームを下降させる際最上位紙幣小束Ttの後側面に引っ掛からないようにすることができるが、曲面形状の方が平面形状よりも繰出部93を下方まで形成することができ、最上位紙幣小束Ttの形状を崩さないようにすることができるため、曲面形状であることが望ましい。
また図16に示すスライドピッカアーム272のように、スライドピッカアーム72から、当接部94を省略しても良い。
また上述した実施の形態においては、金属板を板金加工で曲面形状に曲げることにより曲げ部96を形成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、成型部品により曲げ部を形成しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、小束プッシャ部25に設けられたカムプレート64の傾斜部66を利用して、小束プッシャ部25から小束ハンド部24が離間するに従い小束ハンド部24のスライドピッカアーム72を下降させるようにした。
本発明はこれに限らず、他の種々の方法により、スライドピッカアーム72を下降させるようにしても良い。
例えば、小束金庫26内に積層堆積した紙幣小束Tの後側面を撮影して得た画像から、最上位紙幣小束Ttと次段紙幣小束Tsとの境界位置を検出し、当該境界位置までスライドピッカアーム72の当接部94の下面を下降させるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、金融機関等において紙幣を取り扱う出納システム1の施封小束支払機3において、小束としての紙幣小束を小束金庫26から取り出す場合について述べた。
本発明はこれに限らず、例えば商品券、金券、小切手、チケット、入場券、カード、宝くじ、証書や証券等のような薄い紙状の媒体の小束を収納庫から取り出して分離する種々の装置に適用するようにしても良く、或いは現金自動預払機のような紙幣を扱う他の装置内において紙幣小束が収容された収容庫から紙幣小束を取り出し分離する場合に適用しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、分離部としてのスライドピッカアーム72によって、媒体分離装置としてのスライドピッカアーム72を構成する場合について述べた。
本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる分離部によって媒体分離装置を構成するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、小束ハンド部としての小束ハンド部24によって、媒体取扱装置としての施封小束支払機3を構成する場合について述べた。
本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる小束ハンド部によって媒体取扱装置を構成するようにしても良い。