JP2013248854A - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形面の一部をガラス素材で形成した成形型を用いてプラスチックレンズを工業的規模で効率よく量産するにあたり、成形型を好適に温度制御して、成形精度を悪化させることなく、生産効率を高めることができるプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】可動型1と固定型2とを有し、固定型2がキャビティ3を形成するキャビティ形成部材として、成形面がガラス基材12aに形成されたインサート金型12を備える成形型を用いて所定形状のプラスチックレンズを成形するにあたり、可動型1の設定温度をTm、固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度をTs、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度をTsiとしたとき、Tm>Ts>Tsiなる関係が成り立つように、成形型50を温度制御する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、プラスチックレンズの製造方法に関する。
従来、眼鏡用のプラスチックレンズには、ポリカーボネート樹脂やメタクリル樹脂などの熱可塑性樹脂を用いた射出成形法によって製造されているものがあり、累進屈折力レンズのように複雑な光学面形状を有するプラスチックレンズであっても、成形型のキャビティ形状を転写させることで高精度な成形を可能としている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−272143号公報
ところで、射出成形法によってプラスチックレンズを高精度に成形するには、その転写性を高めるために、溶融樹脂を射出、充填する際の成形型の温度が高くなるように温度制御して、溶融樹脂の流動性が維持されるようにするのが有効である。
しかしながら、成形型の設定温度を高くすると、キャビティ内に充填された溶融樹脂が取り出しのために十分に固化するまでに冷却するのに必要な時間が長くなってしまい、生産効率が低下するという問題がある。
このため、成形精度を悪化させることなく、生産効率を高めるには、成形型の温度制御が重要となってくる。
一方、本出願人は、プラスチックレンズを成形する成形面の一部を熱伝導性の低いガラス基材に形成することを検討し、このような成形型を用いることで、転写性を低下させることなく、冷却に要する時間を短くして生産性を高めることができることを見出した。
しかしながら、一般に、成形型は、マルエージング鋼、ベリリウム銅合金などの熱伝導性の高い鋼材を用いて形成されており、そこに熱特性の異なるガラス基材を組み込むと、これらの熱特性の違いを考慮した温度制御が必要になってくる。本発明者らは、このことに着眼し、さらなる検討を重ねることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、成形面の一部をガラス基材に形成した成形型を用いてプラスチックレンズを工業的規模で効率よく量産するにあたり、成形型を好適に温度制御して、成形精度を悪化させることなく、生産効率を高めることができるプラスチックレンズの製造方法の提供を目的とする。
本発明に係るプラスチックレンズの製造方法は、可動型と固定型とを有し、前記可動型と前記固定型とのパーティング面には、所定形状のプラスチックレンズを成形するためのキャビティとともに、前記キャビティに接続される樹脂流路としてのランナが形成され、前記固定型が、前記キャビティを形成するキャビティ形成部材として、成形面がガラス基材に形成されたインサート金型を備える成形型を用いて所定形状のプラスチックレンズを成形するにあたり、前記可動型の設定温度をTm、前記固定型が備える前記インサート金型の周囲の設定温度をTs、前記固定型が備える前記インサート金型の設定温度をTsiとしたとき、Tm>Ts>Tsiなる関係が成り立つように、前記成形型を温度制御する方法としてある。
また、本発明に係るプラスチックレンズの製造方法は、可動型と固定型とを有し、前記可動型と前記固定型とのパーティング面には、所定形状のプラスチックレンズを成形するためのキャビティとともに、前記キャビティに接続される樹脂流路としてのランナが形成され、前記可動型と前記固定型のそれぞれが、前記キャビティを形成するキャビティ形成部材として、成形面がガラス基材に形成されたインサート金型を備える成形型を用いて所定形状のプラスチックレンズを成形するにあたり、前記可動型が備える前記インサート金型の周囲の設定温度をTm、前記可動型が備える前記インサート金型の設定温度をTmi、前記固定型が備える前記インサート金型の周囲の設定温度をTs、前記固定型が備える前記インサート金型の設定温度をTsiとしたとき、Tm≧Ts>Tmi≧Tsiなる関係が成り立つように、前記成形型を温度制御する方法とすることもできる。
本発明によれば、成形面の一部をガラス基材に形成した成形型を用いてプラスチックレンズを製造するにあたり、成形型を好適に温度制御して、成形精度を悪化させることなく、プラスチックレンズを効率よく製造することができる。
射出成形装置の一例を示す説明図である。 図1に示す射出成形装置が備える成形型の可動型の一例を示す説明図である。 図1に示す射出成形装置が備える成形型の固定型の一例を示す説明図である。 成形型の断面を示す説明図である。 成形型の断面を示す説明図である。 固定型が備えるインサート金型の成形面をガラス基材に形成した例について、図4におけるキャビティの周囲を拡大して示す要部拡大断面図である。 可動型と固定型のそれぞれが備えるインサート金型の成形面をガラス基材に形成した例について、図4におけるキャビティの周囲を拡大して示す要部拡大断面図である。 本発明に係るプラスチックレンズの製造方法の実施形態における各ステップを示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[射出成形装置]
図1は、射出成形装置の一例を示す説明図であり、本実施形態に係るプラスチックレンズの製造方法は、このような射出成形装置を好適に利用して実施することができる。
図1に示す射出成形装置は、パーティングラインPLで分割される一対の分割型としての可動型1と固定型2とを有する成形型50と、トグルリンク機構65によって成形型50の開閉及び型締めをする型締装置60と、ホッパー81から投入された原料樹脂を加熱シリンダ82で溶融、混練、計量してノズル85から射出する射出装置80とを備えている。
[射出装置]
図1に示す射出成形装置が備える射出装置80は、先端部にノズル85が形成された加熱シリンダ82を有している。この加熱シリンダ82の内部には、駆動部84によって回転及び進退移動が制御されたスクリューが配設されている。
また、加熱シリンダ82の基端側には、ペレット状の原料樹脂を加熱シリンダ82内に投入するためのホッパー81が接続されている。ホッパー81から加熱シリンダ82内に投入された原料樹脂は、加熱シリンダ82内で回転するスクリューによってせん断、粉砕されつつ、せん断熱と加熱シリンダ82が備えるヒーターからの加熱によって溶融、混練されながら、スクリューの先端とノズル85との間に形成されるシリンダ前室に送られて計量され、その後、射出成形に適した粘度に調整されて溶融状態にある所定量の原料樹脂がノズル85から射出される。
[型締装置]
図1に示す射出成形装置において、型締装置60は、所定の間隔で架台66に立設された固定ダイプレート61とリヤプレート62との間に複数のタイバー63を架設し、可動ダイプレート64が、タイバー63に案内されて移動可能となるように構成されている。そして、固定ダイプレート61と可動ダイプレート64との間には、成形型50が取り付けられており、リヤプレート62と可動ダイプレート64との間には、トグルリンク機構65が取り付けられている。
これにより、トグルリンク機構65を駆動させると、可動ダイプレート64がタイバー63に案内されて進退し、これに伴って、成形型50の開閉と型締めとがなされるようになっている。
ここで、トグルリンク機構65は、図示しないモータに接続されたボールねじ72の回転に伴って、螺着されたクロスヘッド73がボールねじ72に沿って移動するようになっている。そして、クロスヘッド73が可動ダイプレート64側に移動すると、連結リンク74によってトグルリンク71が直線状に伸びて、可動ダイプレート64が固定ダイプレート61に近づくように移動(前進)する。これとは反対に、クロスヘッド73がリヤプレート62側に移動すると、連結リンク74によってトグルリンク71が内方へ屈曲して、可動ダイプレート64が固定ダイプレート61から離れるように移動(後退)する。
[成形型]
図2は、可動型1の一例を示す説明図であり、図2(a)は、可動型1の平面図、図2(b)は、可動型1のパーティング面を示す正面図、図2(c)は、可動型1の側面図である。図3は、固定型2の一例を示す説明図であり、図2(a)は、固定型2の平面図、図3(b)は、固定型2のパーティング面を示す正面図、図3(c)は、固定型2の側面図である。図4は、可動型1については図2のA1−A1断面、固定型2については図3のA2−A2断面を示す型閉じした初期の状態における成形型50の断面図である。図5は、可動型1については図2のB1−B1断面、固定型2については図3のB2−B2断面を示す型閉じした初期の状態における成形型50の断面図である。図6及び図7は、図4におけるキャビティ3の周囲を拡大して示す要部拡大断面図である。
これらの図に示す例において、成形型50は、可動型1と固定型2とを有し、可動型1と固定型2のそれぞれのパーティング面には、所定形状のプラスチックレンズを成形するための四つキャビティ3とともに、ゲートGを介して各キャビティ3に接続された樹脂流路としてのランナ49が形成されるようになっている。そして、ランナ49に直角に接続されるスプルー48を形成するために、固定型2の型板10にはスプルーブッシュ472が取り付けられており、可動型1の型板6にはスプルーブッシュ471が取り付けられている。
可動型1の型本体4は、四つのインサートガイド部材5と、これらを保持する型板6,7とを有している。各インサートガイド部材5の内部には、キャビティ形成部材としてのインサート金型11が収納されており、インサート金型11には、成形しようとするプラスチックレンズの一方の面(図示する例では、凹面側の面)に対応する成形面が形成されている。
また、固定型2の型本体8は、四つのインサートガイド部材9と、型板10とを有しており、インサートガイド部材9は、型板10と型取付部材15とによって保持されている。各インサートガイド部材9の内部には、キャビティ形成部材としてのインサート金型12が収納されており、インサート金型12には、成形しようとするプラスチックレンズの他方の面(図示する例では、凸面側の面)に対応する成形面が形成されている。
このような可動型1と固定型2とを有する成形型50は、可動型1と固定型2との間に、可動型1側のインサート金型11と固定型2側のインサート金型12のそれぞれに形成された成形面を含むキャビティ3が形成されるようになっている。可動型1側のインサート金型11と固定型2側のインサート金型12は、それぞれのインサートガイド部材5,6の内部に、パーティングラインPLに対して直角方向へ摺動可能となるように収納されている。
本実施形態において、固定型2が備えるインサート金型12の成形面は、ガラス基材12aに形成されている。より具体的には、固定型2側のインサート金型12は、成形しようとするプラスチックレンズの他方の面に対応する成形面が、ガラス基材12aに形成され、当該ガラス基材12aをインサート本体12bに接合することによってインサート金型12が形成されている(図6参照)。
なお、固定型2側のインサート金型12の成形面以外の成形型50の各部材は、従来と同様に、マルエージング鋼、ベリリウム銅合金などの鋼材を用いて形成することができる。
固定型2側のインサート金型12の成形面を形成するガラス基材12aとしては、例えば、クラウン系、フリント系、バリウム系、リン酸塩系、フッ素含有系、フツリン酸系などの非晶質のガラス素材を用いることができる。これらのなかでも、熱伝導率が0.4〜1.3W/m・Kの非晶質のガラス素材を適宜選択して用いるのが、その断熱効果により、金型温度を低く設定して冷却時間の短縮を図る上で好ましい。
成型面を形成するガラス基材12aは、成形条件を考慮して、射出成形時の射出圧力や保持圧力に十分に耐えることができるように、3〜4mmの厚みで形成するのが好ましい。射出成形時はもとより、取扱い時の破損を防ぐなどの目的で、強化ガラス又はDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などにより表面処理を施すこともできる。
ガラス基材12aをインサート本体12bに接合するには、線膨張係数が低く、高温環境における安定性に優れた熱硬化性樹脂を接着剤として用いることができる。このような熱硬化性樹脂としては、硫黄を含有する熱硬化性モノマーを反応して得られる硫黄含有熱硬化性樹脂が好ましい。硫黄含有熱硬化性樹脂は、線膨張係数が低く、高温環境下にあっても安定性に優れるとともに、ガラス基材12aとの接着性(密着性)にも優れている。さらに、硬化前のモノマーの状態において、表面張力が低く接着対象面に液膜状に付着させることが可能であるため、ガラス基材12aとインサート本体12bとの間に形成される接着層を極めて薄い層とすることができる。
硫黄含有熱硬化性樹脂としては、チオウレタン樹脂及びエピチオ系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。ここで、チオウレタン樹脂とは、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応して得られる樹脂をいい、エピチオ系樹脂とは、エピチオ基を有する化合物を必須成分とするレンズ原料モノマーを反応して得られる樹脂をいう。ガラス基材との接着に極めて優れ、かつ、経済性に優れる点から、硫黄含有熱硬化性樹脂としては、チオウレタン樹脂を用いるのが特に好ましい。市販のチオウレタン樹脂としては、例えば、三井化学株式会社製のMRシリーズ、商品名「MR−6」、「MR−7」、「MR−8」、「MR−10」、「MR−20」、「MR−1746」などが好適に用いられる。
また、本実施形態において、可動型1側のスプルーブッシュ471の外周面には、温調流体循環溝471gが設けられている。この温調流体循環溝471gは、スプルーブッシュ471の外周に嵌合される環状部材471rによって液密に封止されている。温調流体循環溝471gには、図示しない温調流体供給装置から温調流体を供給するための配管P471inと、温調流体供給装置に温調流体を戻すための配管P471outが接続されている。これにより、所定の温度に設定された温調流体が温調流体循環溝471gを循環する温調回路によって、スプルーブッシュ471の温度を調整できるようになっている。
同様に、固定型2側のスプルーブッシュ472の外周面には、温調流体循環溝472gが設けられている。この温調流体循環溝472gは、スプルーブッシュ472の外周に嵌合される環状部材472rによって液密に封止されている。この温調流体循環溝472gにも、図示しない温調流体供給装置から温調流体を供給するための配管P472inと、温調流体供給装置に温調流体を戻すための配管P472outが接続されている。これにより、所定の温度に設定された温調流体が温調流体循環溝472gを循環する温調回路によって、スプルーブッシュ472の温度を調整できるようになっている。
図示する例において、可動型1側のスプルーブッシュ471に設けた温調流体循環溝471gに温調流体を循環させる配管P471in,P471outは、可動型1の型板6に設けられており、固定型2側のスプルーブッシュ472に設けた温調流体循環溝472gに温調流体を循環させる配管P472in,P472outは、固定型2の型板10に設けられている。また、特に図示しないが、可動型1側のスプルーブッシュ471の温度を調整する温調回路と、固定型2側のスプルーブッシュ472の温度を調整する温調回路は、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置に接続されて、可動型1側と固定型2側とで設定温度を異ならせることができるようにしてある。
また、可動型1側の各インサートガイド部材5の外周面には、温調流体循環溝5gが設けられている。この温調流体循環溝5gは、各インサートガイド部材5の外周に嵌合される環状部材5rによって液密に封止されている。温調流体循環溝5gには、図示しない温調流体供給装置から温調流体を供給するための配管P5inと、温調流体供給装置に温調流体を戻すための配管P5outが接続されている。これにより、所定の温度に設定された温調流体が温調流体循環溝5gを循環する温調回路によって、各インサートガイド部材5の温度を調整できるようになっている。
図示する例において、可動型1側の各インサートガイド部材5に設けた温調流体循環溝5gに温調流体を循環させる配管P5in,P5outは、可動型1の型板6に設けられている。特に図示しないが、温調流体循環溝5gには、同一の温調流体供給装置を用いて温調流体を循環させるようにして、各インサートガイド部材5の温度を同じ温度に調整できるようにしてある。
また、可動型1側の各インサート金型11の背面(成形面が形成された面とは反対側の面)側には、温調流体循環溝11gが環状に設けられている。この温調流体循環溝11gは、各インサート金型11の背面側に位置するバックインサート22によって液密に封止されている。温調流体循環溝11gには、図示しない温調流体供給装置から温調流体を供給するための配管P11inと、温調流体供給装置に温調流体を戻すための配管P11outが、受圧部材32と油圧シリンダ19との間に架設され、かつ、バックインサート22を貫通して設けられた配管105を介して接続されている。これにより、所定の温度に設定された温調流体が温調流体循環溝11gを循環する温調回路によって、各インサート金型11の温度を調整できるようになっている。
図示する例において、可動型1側の各インサート金型11に設けた温調流体循環溝11gに温調流体を循環させる配管P11in,P11outは、可動型1の第一部材16Aに設けられている。特に図示しないが、温調流体循環溝11gには、同一の温調流体供給装置を用いて温調流体を循環させるようにして、各インサート金型11の温度を同じ温度に調整できるようにしてある。
また、固定型2側の各インサートガイド部材9の外周面には、温調流体循環溝9gが設けられている。この温調流体循環溝9gは、各インサートガイド部材9の外周に嵌合される環状部材9rによって液密に封止されている。温調流体循環溝9gには、図示しない温調流体供給装置から温調流体を供給するための配管P9inと、温調流体供給装置に温調流体を戻すための配管P9outが接続されている。これにより、所定の温度に設定された温調流体が温調流体循環溝9gを循環する温調回路によって、各インサートガイド部材9の温度を調整できるようになっている。
図示する例において、固定型2側の各インサートガイド部材9に設けた温調流体循環溝9gに温調流体を循環させる配管P9in,P9outは、固定型2の型板10に設けられている。また、特に図示しないが、温調流体循環溝9gには、同一の温調流体供給装置を用いて温調流体を循環させるようにして、各インサートガイド部材9の温度を同じ温度に調整できるようにしてある。
また、固定型2側の各インサート金型12の背面(成形面が形成された面とは反対側の面)側には、温調流体循環溝12gが環状に設けられている。この温調流体循環溝12gは、各インサート金型12の背面側に位置する型取付部材15によって液密に封止されている。温調流体循環溝12gには、図示しない温調流体供給装置から温調流体を供給するための配管P12inと、温調流体供給装置に温調流体を戻すための配管P12outが接続されている。これにより、所定の温度に設定された温調流体が温調流体循環溝12gを循環する温調回路によって、各インサート金型12の温度を調整できるようになっている。
図示する例において、固定型2側の各インサート金型12に設けた温調流体循環溝12gに温調流体を循環させる配管P12in,P12outは、固定型2の型取付部材15に設けられている。また、特に図示しないが、温調流体循環溝12gには、同一の温調流体供給装置を用いて温調流体を循環させるようにして、各インサート金型12の温度を同じ温度に調整できるようにしてある。
特に図示しないが、本実施形態にあっては、可動型1側の各インサートガイド部材5の温度を調整する温調回路と、可動型1側の各インサート金型11の温度を調整する温調回路と、固定型2側の各インサートガイド部材9の温度を調整する温調回路と、固定型2側の各インサート金型12の温度を調整する温調回路についても、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置に接続している。これによって、成形型50の各部の温度を任意に制御することができるが、少なくとも可動型の上記各部の温度を調整する温調回路(可動型1側のスプルーブッシュ471の温度を調整する温調回路と、可動型1側の各インサートガイド部材5の温度を調整する温調回路と、可動型1側の各インサート金型11の温度を調整する温調回路)と、固定型2側の各インサート金型12の温度を調整する温調回路と、当該インサート金型12の周囲の温度を調整する温調回路(固定型2側のスプルーブッシュ472の温度を調整する温調回路と、固定型2側の各インサートガイド部材9の温度を調整する温調回路)とを、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置に接続して成形型50の温度制御するのが好ましい。
そして、本実施形態にあっては、可動型1の設定温度をTm、固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度をTs、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度をTsiとしたとき、Tm>Ts>Tsiなる関係が成り立つように、上記したような温調回路を循環させる温調流体の温度を調整して成形型50を温度制御するが、これらについては後述する。
また、本実施形態にあっては、固定型2側のインサート金型12と同様に、可動型1側のインサート金型11の成形面もガラス基材11aに形成することができる(図7参照)。インサート金型11の成形面をガラス基材11aに形成するにあたり、その具体的な態様は、固定型2側のインサート金型12の成形面をガラス基材12aに形成する場合と同様であるため重複する説明は省略するが、可動型1側のインサート金型11は、前述したような硫黄含有熱硬化性樹脂を接着剤として用いて、成形面が形成されたガラス基材11aをインサート本体11bに接合することによって形成することができる。
このような態様とする場合、可動型1が備えるインサート金型11の周囲の設定温度をTm、可動型1が備えるインサート金型11の設定温度をTmi、固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度をTs、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度をTsiとしたとき、Tm≧Ts>Tmi≧Tsiなる関係が成り立つように、上記したような温調回路を循環させる温調流体の温度を調整して成形型50を温度制御する。
これについても後述するが、この場合には、少なくとも可動型1側の各インサート金型11の温度を調整する温調回路と、当該インサート金型11の周囲の温度を調整する温調回路(可動型1側のスプルーブッシュ471の温度を調整する温調回路と、可動型1側の各インサートガイド部材5の温度を調整する温調回路)と、固定型2側の各インサート金型12の温度を調整する温調回路と、当該インサート金型12の周囲の温度を調整する温調回路(固定型2側のスプルーブッシュ472の温度を調整する温調回路と、固定型2側の各インサートガイド部材9の温度を調整する温調回路)とを、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置に接続して成形型50の温度制御するのが好ましい。
以上のような構成とされた成形型50は、可動型1の型本体4が、型取付部材16を介して可動ダイプレート64に固定されており、固定型2の型本体8が、型取付部材15を介して固定ダイプレート61に固定されている。これによって、型締装置60の固定ダイプレート61と可動ダイプレート64との間に、成形型50が取り付けられるようになっている。
また、可動型1側の型取付部材16には、インサート金型11のそれぞれに対応させて油圧シリンダ19が設けられており、ピストン20に連結されたピストンロッド21が、油圧シリンダ19の一端側に固定されたバックインサート22内を貫通している。そして、それぞれのピストンロッド21の先端に設けられたT字クランプ部材23が、インサート金型11の背面に形成されたT字溝24に係脱自在に係合されている。
これによって、成形型50を型開きした状態で、各油圧シリンダ19のピストンロッド21を前進させて、それぞれのピストンロッド21の先端に設けられたT字クランプ部材23をインサートガイド部材5から突出させることで、成形しようとするプラスチックレンズに応じてインサート金型11を交換できるようになっている。各油圧シリンダ19のピストンロッド21が後退すると、T字クランプ部材23に取り付けられたインサート金型11は、インサートガイド部材5の内部に収納される。
同様に、固定型2側の型取付部材15にも、インサート金型12のそれぞれに対応させて油圧シリンダ26が設けられており、ピストン27に連結されたピストンロッド28が、型取付部材15内を貫通している。そして、それぞれのピストンロッド28の先端に設けられたT字クランプ部材29が、インサート金型12の背面に形成されたT字溝30に係脱自在に係合されている。
これによって、成形型50を型開きした状態で、各油圧シリンダ26のピストンロッド28を前進させて、それぞれのピストンロッド28の先端に設けられたT字クランプ部材29をインサートガイド部材9から突出させることで、成形しようとするプラスチックレンズに応じてインサート金型12を交換することができるようになっている。各油圧シリンダ26のピストンロッド28が後退すると、T字クランプ部材29に取り付けられたインサート金型12は、インサートガイド部材9の内部に収納される。
また、可動型1の型本体4を可動ダイプレート64に固定するに際して、型本体4は、図3に示すように、第一部材16Aと、第二部材16Bとからなる型取付部材16にボルト17で取り付けられている。このとき、可動型1の型本体4と型取付部材16との間には、ボルト17の外周に挿入された複数の皿ばね17Aが介装されており、可動型1の型本体4と型取付部材16との間に隙間Sが形成されるようになっている。
この隙間Sは、成形型50が閉じられた後に可動ダイプレート64がさらに前進し、ガイドピン18でガイドされた型取付部材16が、皿ばね17Aの弾性力に抗して押圧されることにより閉じられるようになっている。これに伴って、図示する例では、型取付部材16に設けられた各油圧シリンダ19が、バックインサート22を介してインサート金型11を押圧するようになっている。これにより、型締めがなされる際のキャビティ3の容積を可変とし、キャビティ3内に射出充填された溶融樹脂をインサート金型11によって加圧圧縮できるようにしてある。
なお、ガイドピン18は、成形型50の開閉動作もガイドするように、固定型2側に突出して、固定型2に穿設された挿通孔に挿通されるようになっている。
また、可動型1側の型取付部材16に設けられた油圧シリンダ19の他端側には、受圧部材32が取り付けられている。そして、型取付部材16に形成された孔33から挿入されたエジェクトロッド34が受圧部材32を押圧すると、油圧シリンダ19、バックインサート22及びインサート金型11も押圧され、キャビティ3内で成形されたレンズが押し出されるようになっている。
これとともに、型取付部材16の中央には、成形型50の開閉方向と平行に進退可能にエジェクトピン35が配置されている。型取付部材16に形成された孔37から挿入されたエジェクトロッド38によって、エジェクトピン35に取り付けられた受圧部材36が押圧されると、エジェクトピン35が押し出される。
したがって、型開きに際しては、エジェクトロッド34,38を前進させることによって、成形品の取り出しがなされるようになっている。
なお、図4に示すように、受圧部材36には、エジェクトリターンピン41の外周に巻回されたばね42のばね力が図中左向きに作用している。また、特に図示しないが、受圧部材32にも、図中左向きのばね力が作用するように、同様の構造とされている。これにより、エジェクトロッド34,38が後退すると、受圧部材32,36も後退して待機位置に戻るようになっている。
また、成形型50は、図5に示すように、射出装置80のノズル85を閉塞するノズルシャット機構90を有している。ノズルシャット機構90は、スプルーブッシュ47によって形成されるスプルー48内に突出する遮断部材としてのノズルシャットピン91を有している。このノズルシャットピン91は、接続片92を介して油圧シリンダ93のピストンロッド94に接続されており、油圧シリンダ93は、シリンダ取付板95によって型取付部材15に固定されている。これにより、スプルーブッシュ47にノズル85が圧接した状態において、油圧シリンダ93を駆動させると、ノズルシャットピン91がスプルー48内に突出してノズル85を閉塞し、樹脂の逆流を阻止するようになっている。
[プラスチックレンズの製造方法]
以上のような射出成形装置を用いてプラスチックレンズを製造するには、例えば、図8のフローチャートに示す各ステップ(ST1〜ST10)を順に行うことができる。
ST1において、樹脂加圧条件の設定を行う。これは、予め、適正な圧力をキャビティ3内の樹脂に付加するために、成形しようとするプラスチックレンズの特性(レンズ形状及びレンズ度数など)に応じて、型締め力を調整するためのものである。
ST2において、計量を行う。射出装置80において、ホッパー81から投入されたペレット状の原料樹脂は、加熱シリンダ82内で回転するスクリューによって、せん断、粉砕されつつ、せん断熱と加熱シリンダ82が備えるヒーターからの加熱によって溶融、混練されながら、スクリューの先端とノズル85との間に形成されるシリンダ前室に送られて計量される。ここでは、キャビティ3、ランナ49及びスプルー48に充填されるのに必要な量の溶融樹脂を計量する。
なお、原料樹脂としては、この種のプラスチックレンズの成形に一般に使用されるポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。
ST3において、パーティングラインPLで型閉じする。具体的には、トグルリンク機構65を駆動して、クロスヘッド73を前進させると、トグルリンク71A,71Bが伸びて、可動ダイプレート64が固定ダイプレート61に向かって前進することによって、成形型50の型閉じを行う。このとき、可動型1の型本体4と型取付部材16との間に介装された皿ばね17Aが圧縮されない状態で隙間Sを保って、固定型2及び可動型1をパーティングラインPLで型閉じする。この状態では、隙間Sは最大開き量に設定されている。
ST4において、キャビティ容積の設定を行う。ST3で可動型1と固定型2とをパーティングラインPLで密着させた状態から、さらにクロスヘッド73を予め設定した位置(キャビティ容積設定位置)まで前進させる。これにより、トグルリンク71A,71Bが伸びて、可動ダイプレート64が固定ダイプレート61に向かって移動され、キャビティ拡大位置まで移動される。キャビティ拡大量は、クロスヘッド位置の設定により決定される。これにより、成形型50の隙間Sはキャビティ拡大分を残して縮小される。このとき、キャビティ3の容積(肉厚)は、成形されるレンズ容積(肉厚)、つまり、取出し成形品の肉厚より大きく拡大された状態にある。また、皿ばね17Aは圧縮されるため、その反力として、幾分かの型締め力が発生している。
ST5において、射出を行う。ST2で計量された溶融樹脂を射出ノズル85の通路を通じて成形型50に射出する。つまり、射出装置80の加熱シリンダ82内に導入して計量した溶融樹脂を射出する。すると、溶融樹脂が加熱シリンダ82の先端に形成されたノズル85から射出され、スプルー48、ランナ49、ゲートGを通じてキャビティ3内に充填されていく。溶融樹脂がキャビティ3に充填されるとき、射出速度は一定制御されている。
ST6において、樹脂を型内に封じ込める。T5で所定量の樹脂を射出した後、溶融樹脂の射出充填が完了する直前に、クロスヘッド73をさらに前進させる。そして、射出充填が完了した後には、直ちにノズルシャット機構90によってスプルー48内にノズルシャットピン91を突出させてノズル85を閉塞する。これにより、充填された溶融樹脂は、圧縮加圧された状態で成形型50内に封じ込められる。
ST7において、樹脂加圧を行う。ST6でクロスヘッド73の前進を開始し、クロスヘッド73が原点(ゼロ位置)まで前進して停止すると、トグルリンク71A,71Bは伸びきるため、成形型50内に封じ込められた溶融樹脂は圧縮加圧される。
ST8において、冷却を行う。これには、成形型50の各部(インサート金型、インサートガイド部材など)の温度が、成形するレンズ特性に応じて原料樹脂のガラス転移温度以下の設定された温度になるように、金型温度調節装置によって温調流体の温度制御を行う。圧縮加圧された状態のまま成形型50内に封じ込められた溶融樹脂を冷却すると、キャビティ3に射出充填された原料樹脂は、加圧圧縮された状態で冷却が進行していくにつれ、固化、収縮していき、所定の容積のプラスチックレンズが成形される。
ST9において、離型動作を行う。離型動作では、トグルリンク機構65のクロスヘッド73をリヤプレート62に向かって後退させて成形型50の型開きを行う。
ST10において、成形品エジェクト動作を行う。クロスヘッド73を最後まで後退させると、可動ダイプレート64と固定ダイプレート61との間隔は最大となり、成形型50はパーティングラインPLより分割されて開かれる。この型開きに際して、エジェクトロッド34,38を前進させて、成形されたプラスチックレンズの取り出しを行う。
以上のような手順でプラスチックレンズを製造するにあたり、本実施形態では、ST5で、キャビティ3内に溶融樹脂を射出、充填するに際し、前述したように、可動型1の設定温度をTm、固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度をTs、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度をTsiとしたときに、Tm>Ts>Tsiなる関係が成り立つように、前述したような温調回路を循環させる温調流体の温度を調整して成形型50を温度制御する。
具体的には、可動型1側のスプルーブッシュ471の温度を調整する温調回路と、可動型1側の各インサートガイド部材5の温度を調整する温調回路と、可動型1側の各インサート金型11の温度を調整する温調回路とを設定温度Tmに温調し、固定型2側のスプルーブッシュ472の温度を調整する温調回路と、固定型2側の各インサートガイド部材9の温度を調整する温調回路とを設定温度Tsに温調し、固定型2側の各インサート金型12の温度を調整する温調回路を設定温度Tsiに温調して、Tm>Ts>Tsiなる関係が成り立つように成形型50を温度制御する。
このようにすることで、成形面の一部をガラス基材12aに形成した成形型50を用いてプラスチックレンズを製造するにあたり、成形型50を好適に温度制御して、成形精度を悪化させることなく、プラスチックレンズを効率よく製造することができる。
すなわち、成形面の一部を熱伝導性の低いガラス基材12aに形成することで、キャビティ3内に溶融樹脂を射出、充填する際の成形型の温度を低く設定しても、当該成形面を流動する樹脂の粘度低下を抑止して転写性が低下しないようにしつつ、冷却工程に要する時間を短くして生産性を高めることができるが、多くの部材が熱伝導性の高い鋼材を用いて形成されている成形型50に、熱特性の異なるガラス基材12aを組み込むと、これらの熱特性の違いを考慮した温度制御が必要になる。このため、本実施形態にあっては、成形型50の温度をその部位ごとに温度制御できるようにし、かつ、熱伝導性の低いガラス基材12aに成形面が形成された固定型2が備えるインサート金型12の設定温度が最も低くなるように、上記したような関係が成り立つように成形型50を温度制御する。これにより、転写性を損なうことなく、冷却工程に要する時間を短くして生産性を高めることができるようにしている。
なお、転写性を損なうことなく、冷却工程に要する時間を短くする上で、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度Tsiは、可動型1の設定温度Tmよりも10〜50℃低い温度に設定するのが好ましい。固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度Tsは、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度Tsiよりも10〜50℃高い温度に設定するのが好ましい。
また、本実施形態では、前述したように、少なくとも可動型1の各部の温度を調整する温調回路と、固定型2側の各インサート金型12の温度を調整する温調回路と、当該インサート金型12の周囲の温度を調整する温調回路とを、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置に接続して成形型50を温度制御するのが好ましい。温調流体供給装置を共通に用いて、上記各温調回路に温調流体を供給するようにすると、温調流体供給装置のポンプ性能によっては、温調流体の十分な供給量が確保できず、温調流体が滞留するなどして熱交換効率が低下してしまうことがある。そうすると、成形型50の温度制御に支障を来してしまい、意図するような温度制御が阻害されてしまう。これに対して、同一の温度に温度制御する部位ごとに、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置から温調流体を供給することで、温調流体の供給量を確実に確保して、より安定した成形型50の温度制御が可能になる。
また、転写性を維持したまま冷却時間を短縮するにあたり、インサート金型12の成形面を形成するガラス基材12aは、前述したように、熱伝導率が0.4〜1.3W/m・Kのガラス素材を用いるのが好ましい。上記範囲を超えてしまうと、十分な断熱効果が得られにくくなってしまう傾向がある。一方、上記範囲に満たない場合には、断熱効果が必要以上に高くなり、冷却に要する時間が長くなってしまうため好ましくない。
また、眼鏡用のプラスチックレンズを製造する方法としては、仕上げ寸法よりも厚肉の半完成品の状態でレンズを成形しておき、このセミフィニッシュレンズと称される半完成品を後加工で最終形状に仕上げる方法がある。このようなセミフィニッシュレンズを射出成形法によって製造するに際しては、後加工が施される面の転写性の良否は問題にならない。本実施形態は、固定型2が備えるインサート金型12によって光学面が成形され、可動型1によって成形された面に後加工を施して最終形状に仕上げられるセミフィニッシュレンズを成形するのに好適である。
なお、成形対象とするプラスチックレンズは、セミフィニッシュレンズに限られず、射出成形によって二つの光学面が成形された、フィニッシュレンズと称されるプラスチックレンズを成形対象とすることができるのは言うまでもない。さらに、レンズの厚みや、光学面の具体的な形状についても特に限定されない。
また、本実施形態にあっては、前述したように、可動型1と固定型2のそれぞれが、ガラス基材11a,12aに成形面が形成されたインサート金型11,12をキャビティ形成部材として備える成形型50を用いて、所定形状のプラスチックレンズを成形することもできる。このようにすれば、可動型1側のインサート金型11と固定型2側のインサート金型12の両方の温度を低く設定しても、これらに形成された成形面を流動する樹脂の粘度低下を抑止して転写性が低下しないようにすることができるため、冷却工程に要する時間をより短くすることが可能になる。
このような態様とする場合、可動型1が備えるインサート金型11の周囲の設定温度をTm、可動型1が備えるインサート金型11の設定温度をTmi、固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度をTs、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度をTsiとしたとき、Tm≧Ts>Tmi≧Tsiなる関係が成り立つように、前述したような温調回路を循環させる温調流体の温度を調整して成形型50を温度制御する。
具体的には、可動型1側のスプルーブッシュ471の温度を調整する温調回路と、可動型1側の各インサートガイド部材5の温度を調整する温調回路とを設定温度Tmに温調し、可動型1側の各インサート金型11の温度を調整する温調回路を設定温度Tmiに温調し、固定型2側のスプルーブッシュ472の温度を調整する温調回路と、固定型2側の各インサートガイド部材9の温度を調整する温調回路とを設定温度Tsに温調し、固定型2側の各インサート金型12の温度を調整する温調回路を設定温度Tsiに温調して、Tm≧Ts>Tmi≧Tsiなる関係が成り立つように成形型50を温度制御する。
このような態様において、転写性を損なうことなく、冷却工程に要する時間を短くする上で、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度Tsiは、固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度Tsよりも10〜50℃低い温度に設定するのが好ましい。可動型1が備えるインサート金型11の設定温度Tmiは、可動型1が備えるインサート金型11の周囲の設定温度Tmよりも10〜50℃低い温度に設定するのが好ましい。
また、熱伝導性の低いガラス基材11a,12aに成形面が形成されたインサート金型11,12の設定温度が最も低くなっていれば、可動型1側のインサート金型11の設定温度Tmiと、固定型2側のインサート金型12の設定温度Tsiは同じであってもよい。同様に、可動型1側のインサート金型11の周囲の設定温度Tmと、固定型2側のインサート金型12の周囲の設定温度Tsも同じであってもよい。
また、このような態様において、成形型50の温度制御を安定して行うためには、少なくとも可動型1側の各インサート金型11の温度を調整する温調回路と、当該インサート金型11の周囲の温度を調整する温調回路と、固定型2側の各インサート金型12の温度を調整する温調回路と、当該インサート金型12の周囲の温度を調整する温調回路とを、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置に接続して成形型50を温度制御するのが好ましい。
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
[実施例1]
図1に示す射出成形装置において、固定型2が備えるインサート金型12の成形面を、クラウン系のガラス素材からなる熱伝導率が1.1W/m・Kのガラス基材12aに形成し、これをインサート本体12bに接合することによって当該インサート金型12を形成した。
このような射出成形装置により、原料樹脂にポリカーボネートを用いて、樹脂温度を260〜290℃に設定するとともに、可動型1の設定温度Tmを130℃、固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度Tsを125℃、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度Tsiを85℃として、冷却時間(前述したST8にかけた時間)を基準値とした場合と、基準値から−60S,−90S,−150Sと早くしていったそれぞれの場合とで、上記インサート金型12によって光学面が成形されるように、レンズ中心部の肉厚が10mm、レンズ周縁部の肉厚が11.5mm、直径77.0mmの球面形状の光学面を有するプラスチックレンズを成形した。
固定型2側のインサート金型12によって成形された光学面の平均度数を測定し、目標平均度数(+5.91)の公差内であるか否かで光学面転写性を評価するとともに、光学面の球面アスについても測定した。これらの測定結果が公差内にあるものを「○」、公差内にないものを「×」で示して、その結果を表1に示す。
[比較例1]
成形型50全体の設定温度を125℃とした以外は、実施例1と同じ成形条件で、同様のプラスチックレンズを成形した。
実施例1と同様の測定結果を表1に併せて示す。
[比較例2]
マルエージング鋼を用いて形成された固定型2側のインサート金型12に直接成形面を形成し、成形型50全体の設定温度を125℃とした以外は、実施例1と同じ成形条件で、同様のプラスチックレンズを成形した。
実施例1と同様の測定結果を表1に併せて示す。
Figure 2013248854
これらの結果からわかるよう、マルエージング鋼を用いて形成された固定型2側のインサート金型12に直接成形面を形成した場合(比較例2)には、冷却時間を基準値から60S短くするのが限界であった。また、固定型2が備えるインサート金型12の成形面をガラス基材12aに形成した場合には、比較例2と同様の温度制御では要求する品質は得られず(比較例1参照)、実施例1のように成形型50を温度制御することによって、転写性を損なうことなく、冷却工程に要する時間を基準値よりも150S短くできることが確認できた。
[実施例2]
図1に示す射出成形装置において、固定型2が備えるインサート金型12の成形面を、クラウン系のガラス素材からなる熱伝導率が1.1W/m・Kのガラス基材12aに形成し、これをインサート本体12bに接合することによって当該インサート金型12を形成した。
このような射出成形装置により、原料樹脂にポリカーボネートを用いて、樹脂温度を260〜290℃に設定するとともに、可動型1の設定温度Tmを130℃、固定型2が備えるインサート金型12の設定温度Tsiを85℃、固定型2が備えるインサート金型12の周囲の設定温度Tsを115℃として、冷却時間(前述したST8にかけた時間)を基準値とした場合と、基準値から−60S,−90S,−150Sと早くしていったそれぞれの場合とで、上記インサート金型12によって光学面が成形されるように、レンズ中心部の肉厚が9.5mm、レンズ周縁部の肉厚が12.0mm、直径77.0mmの累進面形状の光学面を有するプラスチックレンズを成形した。
固定型2側のインサート金型12によって成形された光学面の平均度数を測定し、目標平均度数(遠用部平均度数:+2.22、近用部平均度数:+4.72)の公差内であるか否かで光学面の転写性を評価した。これらの測定結果が公差内にあるものを「○」、公差内にないものを「×」で示して、その結果を表2に示す。
[比較例3]
マルエージング鋼を用いて形成された固定型2側のインサート金型12に直接成形面を形成し、成形型50全体の設定温度を125℃とした以外は、実施例2と同じ成形条件で、同様のプラスチックレンズを成形した。
実施例1と同様の測定結果を表2に併せて示す。
Figure 2013248854
これらの結果から、累進面形状の光学面を有するプラスチックレンズを成形する場合にあっても、マルエージング鋼を用いて形成された固定型2側のインサート金型12に直接成形面を形成した場合(比較例3)に対して、冷却工程に要する時間を150S短くしても、転写性を損なうことなく、要求される品質のプラスチックレンズを成形できることが確認できた。
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
本発明は、プラスチックレンズを射出成形法により製造するにあたり、転写性を低下させることなく、冷却に要する時間を短くして生産性を高めることができる技術として利用できる。
1 可動型
2 固定型
3 キャビティ
12 インサート金型
12a ガラス基材
49 ランナ
50 成形型


Claims (6)

  1. 可動型と固定型とを有し、前記可動型と前記固定型とのパーティング面には、所定形状のプラスチックレンズを成形するためのキャビティとともに、前記キャビティに接続される樹脂流路としてのランナが形成され、前記固定型が、前記キャビティを形成するキャビティ形成部材として、成形面がガラス基材に形成されたインサート金型を備える成形型を用いて所定形状のプラスチックレンズを成形するにあたり、
    前記可動型の設定温度をTm、前記固定型が備える前記インサート金型の周囲の設定温度をTs、前記固定型が備える前記インサート金型の設定温度をTsiとしたとき、Tm>Ts>Tsiなる関係が成り立つように、前記成形型を温度制御することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  2. 少なくとも前記可動型の温度を調整する温調回路と、前記固定型が備える前記インサート金型の温度を調整する温調回路と、前記固定型が備える前記インサート金型の周囲の温度を調整する温調回路とを、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置に接続して前記成形型を温度制御する請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  3. 前記固定型が備える前記インサート金型によって光学面が成形され、前記可動型によって成形された面に後加工を施して最終形状に仕上げられるセミフィニッシュレンズを成形する請求項1又は2に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  4. 可動型と固定型とを有し、前記可動型と前記固定型とのパーティング面には、所定形状のプラスチックレンズを成形するためのキャビティとともに、前記キャビティに接続される樹脂流路としてのランナが形成され、前記可動型と前記固定型のそれぞれが、前記キャビティを形成するキャビティ形成部材として、成形面がガラス基材に形成されたインサート金型を備える成形型を用いて所定形状のプラスチックレンズを成形するにあたり、
    前記可動型が備える前記インサート金型の周囲の設定温度をTm、前記可動型が備える前記インサート金型の設定温度をTmi、前記固定型が備える前記インサート金型の周囲の設定温度をTs、前記固定型が備える前記インサート金型の設定温度をTsiとしたとき、Tm≧Ts>Tmi≧Tsiなる関係が成り立つように、前記成形型を温度制御することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  5. 少なくとも前記可動型が備える前記インサート金型の温度を調整する温調回路と、前記可動型が備える前記インサート金型の周囲の温度を調整する温調回路と、前記固定型が備える前記インサート金型の温度を調整する温調回路と、前記固定型が備える前記インサート金型の周囲の温度を調整する温調回路とを、それぞれ独立して設けられた温調流体供給装置に接続して前記成形型を温度制御する請求項4に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  6. 熱伝導率0.4〜1.3W/m・Kの非晶質のガラス素材からなるガラス基材に前記成形面を形成する請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラスチックレンズの製造方法。


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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106626257A (zh) * 2016-12-30 2017-05-10 永平县建达鑫鑫合金铸造有限公司 基于提高冷却效率的浇注模具
CN108673827A (zh) * 2018-04-23 2018-10-19 歌尔股份有限公司 一种镜片模具
KR102235778B1 (ko) * 2020-05-19 2021-04-01 김영덕 보조온도조절부를 갖는 렌즈제조장치의 온도제어시스템

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