JP2013242106A - Siを有する材料からコーティングされる冷蔵庫 - Google Patents

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Abstract

【課題】臭いおよび菌が部材に蓄積されにくい冷蔵庫を提供すること。
【解決手段】冷蔵庫の食品棚36の上面にはコーティング層100aが形成されており、食品棚36の下面にもコーティング層100bが形成されている。各コーティング層100a,100bは、それぞれSiを有する材料から薄膜として形成される。外部の臭い成分の分子および菌は、コーティング層100a、100bにより遮断されるため、樹脂材料から製造される食品棚36の内部に侵入できない。また、コーティング層100a,100bは親水性を有するため、簡単に掃除することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、Siを有する材料からコーティングされる冷蔵庫に関する。
冷蔵庫内には様々な種類の食品が保存されるため、臭いおよび菌が発生しやすい。さらに、冷蔵庫の使用年数が長くなればなるほど臭気および菌が蓄積して、それらの除去が難しくなる。冷蔵庫内に臭いおよび菌が蓄積すると、新たに収納した食品に臭いが移ったりするため、冷蔵庫としての利便性および信頼性が低下する。
そこで、冷蔵庫内の臭いおよびキャリブレーションの蓄積を防止するために、以下のような技術が提案されている。第1に、除菌と脱臭を行う除菌脱臭装置を冷蔵庫内に設置し、臭いおよび菌を分解する技術がある。第2に、冷蔵庫内の部材に機能性材料を練り込むことで、部材に臭いおよび菌が付着するのを防止する技術がある。第3に、冷蔵庫を構成する部材をガラス板などの臭いおよび菌の蓄積しにくい素材にする技術がある(特許文献1)。第4に、冷蔵庫内の部材に表面処理を施して、臭いおよび菌が蓄積しにくくする技術がある(特許文献2)。
特開2004−257616号公報 特開2003−343971号公報
第1の技術では、新たに庫内で発生した臭いおよび菌の除去には効果が見込めるが、既に蓄積されている臭いおよび菌の分解には向いていない。第2の技術では、機能性材料を部材に練り込むと強度が低下するため、機能性材料を練り込むことのできる部材に制限があり、最も食材に触れる可能性の高い棚に適用するのが難しい。冷蔵室の食品棚に機能性材料を練り込むとその強度が低下するため、食品棚を厚くする必要がある。
第3の技術では、食品棚をガラス板から形成するので臭いおよび菌が付着しにくいが、重くなるため、食品棚を出し入れして清掃する場合に使い勝手が悪い。さらに、食品棚以外の場所にも臭いおよび菌が付着し蓄積するが、それらの場所は平板ではなく比較的複雑な形状を有するため、ガラス板から形成するのは難しい。
第4の技術のうち特許文献2に記載の技術では、庫内灯の当たる領域にしか光触媒効果を得られないため、光の当たりにくい場所に臭いおよび菌が蓄積するのを防止することができない。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、臭いおよび菌が冷蔵庫内に蓄積するのを防止でき、樹脂部材の耐久性を向上できるようにした、Siを有する材料からコーティングされる冷蔵庫を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明に係る冷蔵庫は、食材を保存するための複数の貯蔵室が画成された冷蔵庫において、食材の保存場所に露出する領域に所定のコーティング層が設けられていることを特徴とする。
所定のコーティング層はSiを含む所定の材料から形成してもよい。
所定の材料は、パーヒドロポリシラザン、シロキサン系材料、シラン化合物のうち少なくともいずれか1つを含んでもよい。
所定のコーティング層は、部材同士の接合する領域に形成されてもよい。
所定のコーティング層は、食材の保存場所に露出する領域を有する樹脂材料であって成形加工される棚の表面に設けられて、棚の上面に設けられる所定のコーティング層の厚みは、棚の下面に設けられる所定のコーティング層の厚みよりも大きくなるように設定されてもよい。
本発明によれば、臭いなどが部材内に侵入したり蓄積されたりするのをコーティング層によって防止することができる。
冷蔵庫の正面図。 図1中の矢示II−II方向から見た断面図。 コーティング層を備えた棚の概略断面図。 臭い等の侵入を防止するメカニズムを説明するための説明図であって、図4(a)は樹脂材料の内部に臭い成分の分子が侵入する様子を示し、図4(b)はコーティング層により臭い成分の分子の侵入を防止する様子を示す。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、Siを有するコーティング材料からなるコーティング層を、冷蔵庫の樹脂部材の表面に形成する。
本発明に係る冷蔵庫の実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の冷蔵庫1の正面外形図である。図2は、図1に示す冷蔵庫1を矢示II−II方向から見た縦断面図である。図3は、コーティング層を備えた冷蔵室の棚の概略断面図である。図4は、樹脂などの高分子に臭い物質が付着する様子(a)と、無機物のコーティング層により臭い物質の付着を防止する様子(b)を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6から構成されている。なお、以下本明細書中では、製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5の総称として冷凍室60と呼ぶことがある。
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2a,2bを備え、製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを備えている。以下では、冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを単に扉2a,2b,3a,4a,5a,6aと称する。
また、冷蔵庫1は、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する図示しない扉センサ(不図示)と、扉開放状態と判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知する図示しないアラーム,冷蔵室2および野菜室6の温度設定と冷凍室60の温度設定を行うための温度設定器(不図示)等を備えている。
図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、発泡断熱材(例えば発泡ポリウレタン)を充填することで形成される断熱箱体10により、隔てられている。冷蔵庫1の断熱箱体10は、複数の真空断熱材25を実装している。
庫内は、断熱仕切壁28により冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが隔てられ、断熱仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6とが隔てられている。
扉2a,2b(図1参照)の庫内側には、複数の扉ポケット32が備えられている。また、冷蔵室2は、複数の棚36により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
図2に示すように、上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの室の前方に備えられた扉3a,4a,5a,6aと一体に、収納容器3b,4b,5b,6bがそれぞれ設けられている。扉4a,5a,6aの取手部(不図示)に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器4b,5b,6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aと一体に、図示しない収納容器(図2中(3b)で表示)が設けられ、扉3aの取手部(不図示)に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器3bが引き出せるようになっている。
図2に示すように、冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられており、冷却器7の上方に設けられた庫内送風機(送風機)9により冷却器7と熱交換して冷やされた空気(冷気、以下、冷却器7で冷やされてできた低温空気を冷気と称する)が冷蔵室送風ダクト11,上段冷凍室送風ダクト12,下段冷凍室送風ダクトである冷気ダクト13及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、冷蔵室2,上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3の各室へ送られる。各室への送風は、冷蔵室冷却ダンパ20と冷凍室冷却ダンパ50の開閉により制御される。
ちなみに、冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5の各送風ダクトは、冷蔵庫1の各室の背面側に設けられている。
部材と部材とが接続されたり、取り付けられたりする箇所Pには、樹脂材料からなるパッキン、Oリング、シール部材などが設けられる。本実施例では、パッキン、Oリング、シール部材などのように他の部材の表面に接触したりする箇所、および、部材と部材とが接触する箇所を総称して、接合面と呼ぶことがある。
なお、図2において、符号21は蒸発皿、符号22は除霜ヒータ、符号23は樋、符号24は圧縮機である。符号31は制御基板、符号34は冷凍室温度センサ、符号35は冷却器温度センサである。制御基板31は、各温度センサ34,35などからの信号と設定温度に基づいて、圧縮機24および各ダンパ20,50の作動を制御する。
冷気の流れの例を説明する。冷蔵室冷却ダンパ20が開状態、冷凍室冷却ダンパ50が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2に送られる。冷蔵室の冷却を終えた後に、冷蔵室背面右側下部に備えられた冷蔵室戻り口(不図示)から流入し、冷蔵室−野菜室連通ダクト(不図示)を介して、野菜室6背面右側上部に設けられた野菜室吹き出し口(不図示)から野菜室6に流入して野菜室を冷却する。野菜室を冷却した冷気は、断熱仕切壁29の下部前方に設けられた、野菜室戻り口6dから、野菜室戻りダクト18を介して、冷却器7の幅とほぼ等しい幅の野菜室戻り吐出口(不図示)から流入する。
一般に、周囲温度に対して低温の冷気は上方から下方に向かう下降流を形成するので、冷気は室の上方により多く供給することで、室内を良好に冷却できる。本実施形態の冷蔵庫では、冷凍室冷却ダンパを設けているが、これを庫内送風機の上方に設置することで、庫内送風機からの送風をスムーズに、冷凍温度帯室の上段に位置する製氷室3や上段冷凍室4に送風できるように配慮している。
図3および図4を参照して、SiO結合を有するコーティング層を備えることによる、臭いおよび菌の蓄積を防止するメカニズムについて説明する。図3は、コーティング層を備えた冷蔵室2の棚36の概略断面図を示す。図4は、臭い成分の分子200の侵入および蓄積(付着)がコーティング層100により遮断される様子を示す。
なお、一例として棚36を無機物でコーティングする場合を説明するが、冷蔵庫1内の他の部材、例えば、扉ポケット32の表面、冷気ダクト13の内部、ダンパ20,50の表面、収納容器3b、4b、5b、6bの表面、冷気の流通口2c,6dなども無機物でコーティングすることができる。
冷蔵庫1は、区分けされて外部と遮断された複数の貯蔵室内に、コーティング層で対処すべき臭気および菌の発生源が収容されており、かつ、冷気を循環させるための複雑な内部構造を有するという技術的特徴を備える。従って、本実施例では、複雑な内部構造の中を流通しうる臭い成分および菌に対処すべく、食材に直接接触しない箇所にもコーティング層を設けることができるようになっている。
本実施例では、例えば、棚36などの表面全体に無機物のコーティング層100a,100bを設ける。棚36の上面にはコーティング層100aが形成され、棚36の下面にもコーティング層100bが形成される。特に区別しない場合、コーティング層100と呼ぶことがある。
棚36の上面には食材が置かれるため、上面のコーティング層100aの厚さ寸法t1は、下面のコーティング層100bの厚さ寸法t2に比べて大きくしてもよい。上面のコーティング層100aは、食材との接触頻度が高いためである。なお、コーティング層は薄膜として形成するのが好ましい。従って、コーティング層の厚さ寸法は、例えば1μm以下に設定するのが望ましい。
棚36の下面にもコーティング層100bを設ける理由の一つは、棚36の下面側を補強して、棚36を変形しにくくするためである。例えば、棚36が上方に突出するようにして湾曲すると、上面のコーティング層100aが破損する可能性がある。そこで、本実施例では、コーティング対象の棚36の下面にもコーティング層100bを形成して、棚36の機械的強度を高めている。棚36の下面にコーティング層100bを設ける他の理由は、棚36の下側から立ち上る臭気および菌の侵入を防止するためである。図2に示すように、棚36は、冷蔵室2内に多段に配置されるため、食材の載らない下面であっても、さらにその下の棚36に置かれた食材からの臭気などが付着するおそれがある。本実施例では、このような冷蔵庫特有の技術的性質に鑑みて、食材の載らない方の面にもコーティング層100bを形成している。
図4(a)に示すように、Siを有する材料からなるコーティング層を樹脂材料300の表面に形成しない場合、臭いの分子200が樹脂材料300の内部に侵入して蓄積されてしまう。これに対し、図4(b)に示すように、Siを有する材料からなるコーティング層100で樹脂材料300の表面を覆えば、臭いの分子200の侵入は、コーティング層100の分子101により遮断される。
冷蔵庫1の部材として多く用いられる樹脂は、例えばポリプロピレン、ポリスチレンなどである。樹脂は有機物であり、様々な構造をとることができるため、臭い物質と容易に結合して、臭いが蓄積してしまう。また、有機物は無機物に比べて軟らかく密度が小さいという性質を有するため、加工が容易であり、軽量化しやすいという利点を有する。この反面、上述の通り、樹脂には臭いおよび菌が容易に侵入できるという欠点を持つ。
従って、臭いおよび菌が樹脂に侵入することを防ぐためには、樹脂の表面を無機物で覆うことで、臭いおよび菌の侵入を防止し、さらに樹脂表面での臭い成分との化学結合を防止することが有効である。
冷蔵庫における臭いおよび菌の発生ルートとして、以下の場合が考えられる。一つは、食品から出る臭いおよび菌が冷蔵庫内の冷気とともに庫内を浮遊して樹脂部材に付着する場合である。他の一つは、食品の汁または食べ物のかすが棚36および貯蔵室の壁面などに付着し、その付着した汚れから臭いおよび菌が樹脂部材に蓄積する場合である。
冷蔵庫1に保存された食品から出る臭いの対処方法について検討する。食品保存場所の樹脂部材を無機物で覆うことで、臭いおよび菌の蓄積を防止することができる。さらに、貯蔵室の密閉性を保つためのパッキン等を無機物でコーティングすることで、パッキン等の耐久性および硬さが向上するため、この結果、パッキン等の密閉性が向上する。パッキン等の密閉性が向上すると、ある貯蔵室内の食品から発生した臭いおよび菌が他の貯蔵室または冷気通路などに侵入して、そこに蓄積されるのを抑制することができる。
汚れが直接付着した場合の臭いおよび菌の蓄積に対する対処方法を検討する。ガラス系のSi結合を部材の表面に備えることで親水性が向上するため、防汚性が高まり、拭き取り作業も楽になる。従って、汚れが蓄積するのを防止できる。さらに、無機物のコーティング層の発揮するガスバリア性によって、臭気および菌が部材の内部に侵入したり、蓄積されたりするのを防止することができる。
さらに、本実施例では、Siを有する材料からなるコーティング材を、薄膜として部材に塗布することができる。従って、コーティングされた樹脂部材の曲げ加工、絞り加工が可能である。部材の強度が弱くなる箇所にコーティング層を設ければ、臭気等の侵入を阻止できるだけでなく補強することもでき、耐久性を高めることができる。また、圧力が変化する低圧貯蔵室を構成する部材などをSiを含む材料でコーティングすれば、強度を高めることができる。さらに低圧貯蔵室のシール部材およびパッキンをコーティングすることで、密閉性が高まるため、低圧貯蔵室に外部から臭いおよび菌が侵入したり、あるいは逆に外に漏れたりするのを防止できる。
さらに、無機物は有機物に比べて耐熱性に優れているため、温度変化の激しい部材または領域、例えば圧縮機24の設置箇所、冷却器7の付近の部材等をSiを含む材料でコーティングすれば、耐久性および強度を高めることができるとともに、臭いおよび菌が侵入して蓄積されるのを防止できる。
さらに、無機物は有機物に比べて熱伝導率が高いため、食材と接触する領域をSiを含む材料でコーティングすれば、その上に置かれた食材を効率的に冷却できる。これにより、冷蔵庫の性能が向上する。このように、本実施例では、Siを含む材料で所定の部材および所定の領域をコーティングすることで、臭いおよび菌の侵入と蓄積を防止するだけでなく、機械的強度の補強、密閉性能の向上、冷却効率の改善という複数の目的を一度に達成している。
さて、上述の通り、樹脂部材は臭いが染みつく性質を有するため、樹脂部材の代わりに部材の全体をガラス材料から形成することも考えられる。しかし、ガラス材料から製造すると、部材の重量が重くなり、成形も困難である。
これに対し樹脂部材は軽くて安価であり、加工もしやすいという利点があるので、部材の基本素材は樹脂材料である方が好ましい。そこで、本実施例では、樹脂の利点を生かしつつ、樹脂への臭いおよび菌の侵入と蓄積を防ぐために、樹脂部材の表面にSiを有する材料からなるコーティング層を設ける。
Siを含む材料からなるコーティング層を樹脂部材の表面に形成することで、樹脂表面にガラス層が形成されるため、臭いおよび菌の浸みこみを防止できる。そこで、以下、Siを有する材料からなるコーティング層を設ける方法(ガラスコートを形成する方法)を詳細に説明する。
コーティング層を樹脂部材の表面に設けるためのコーティング液は、例えば、Siを有するコーティング材料と、希釈溶剤と、触媒とを含んで構成される。Siを有するコーティング材料としては、例えば、パーヒドロポリシラザン、シロキサン系材料、シラン化合物などを挙げることができる。
コーティング液に含まれるコーティング材料は、触媒の作用により緻密なシリカ被膜に転化され、これにより樹脂表面にコーティング層が形成される。このコーティング層により、樹脂表面には、耐食性、耐摩耗性、防汚性、汚れ除去性、水に対する濡れ性、物理的バリア効果、平坦化効果、耐久性、帯電防止性、耐擦傷性などの複数の効果を一度に与えることができる。
また、シリカ被膜が形成されると、製品もしくは物品の表面は、該シリカ被膜による強い親水性を示す。コーティング液は、常温で乾燥すると、シリカからなる硬くて緻密な被膜を容易に形成する。このシリカ被膜の形成は、Siを有するコーティング材料、触媒などの種類により異なるが、約1〜2週間程度の期間をかけて形成される。このように、コーティング液は、塗布時においては溶液状態なので非常に塗布しやすい。コーティング液の塗布後は容易に被膜が形成され、この被膜が緻密で硬質な親水性の膜に転化することで、各種製品あるいは物品の表面に上記種々の特性を付与することができる。
樹脂上にSiを有する材料からなるコーティング層を形成するためには、有機物を侵食しないようプライマーを要する。プライマーは無機系の物質を用いる事が望ましいが、コーティング剤の中に混合させることでプライマーを不要とし、1層でコーティング層を形成する方法もある。また、Siを有する材料からなるコーティング層を薄膜として形成することで、樹脂部材の加工前にコーティング層を設けることも可能である。コーティング層は薄膜であるため、樹脂部材の曲げ加工、絞り加工などの各種成形工程に耐えることができる。冷蔵庫1は、図2で説明したように複雑な内部構造を備えており、その複雑な形状を実現するために樹脂材料が多用される。本実施例のコーティング方法によれば、十時材料の成形前にコーティング層を設けることもでき、冷蔵庫1に適した部材をより一層効率的に製造することができる。
冷蔵庫1において、上記のガラスコート(Siを有する材料からなるコーティング層)を形成することが有効な場所を検討する。まず、冷蔵室2は、冷蔵庫1の中でも最も食品の出し入れをする機会が多く、食品の汁がこぼれたり、様々な臭気を持つ食材を保存したりすることが多い。そこで、冷蔵室2の棚36や冷蔵室2の奥の冷気風路にガラスコーティングを施すことで、臭いの蓄積を防いだり、食品汁から発生する臭いおよび菌の蓄積を防いだりすることができる。
野菜室6は、野菜の泥および野菜くずが付着するため、菌および臭いが発生することが多い。更に、野菜室6は引き出し式の場合が多いため、外に取り出して清掃したり内側を拭き掃除したりすることが困難である。従って、野菜室6にガラスコートを施すことにより、野菜の泥および野菜くずの蓄積に伴う、臭いおよび菌の発生を抑制することが可能となる。
冷凍室60では、食品の水分が昇華するため、冷凍臭と呼ばれる独特の臭いが残ることがある。従って、冷凍室60内の容器、引き出し、トレイなどにガラスコートを施すことで、冷凍臭の発生を抑制できる。また、冷凍室60では、温度が低いため、化学反応による脱臭装置等を備えても効果が少ない。低温ゆえに反応速度が遅くなるためである。これに対し、ガラスコートは化学反応によって臭気等の蓄積を防止するものではなく、Siを有するコーティング材料は冷凍温度帯でも変質する物質ではないため、冷凍温度でも他の貯蔵室と同様の効果を得ることができる。
さらに、冷蔵庫内全体の臭いおよび菌の蓄積を防止するためには、冷蔵庫1の内箱樹脂にガラスコートを施すという方法がある。内箱にガラスコートを施すと、各貯蔵室2〜6の臭いおよび菌の侵入と蓄積を防止できるだけでなく、冷気通路での臭いおよび菌の蓄積を防止することが可能となる。また、内箱樹脂は一体型であるため、各貯蔵室2〜6の樹脂部材1つ1つにガラスコートを施すよりも、内箱全体にガラスコートを一度に施した方が低コストとなる。これにより、低コストで冷蔵庫1の信頼性および耐久性を向上することができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
1:冷蔵庫、2:冷蔵室、3:製氷室、4:上段冷凍室、5:下段冷凍室、6:野菜室、32:扉ポケット、36:棚、3b、4b、5b、6b:収納容器、7:冷却器、24:圧縮機、100a,100b:コーティング層、200:臭い成分の分子、300:樹脂材料

Claims (5)

  1. 食材を保存するための複数の貯蔵室が画成された冷蔵庫において、
    前記食材の保存場所に露出する領域に所定のコーティング層が設けられていることを特徴とする、
    冷蔵庫。
  2. 前記所定のコーティング層はSiを含む所定の材料から形成される、
    請求項1に記載の冷蔵庫。
  3. 前記所定の材料は、パーヒドロポリシラザン、シロキサン系材料、シラン化合物のうち少なくともいずれか1つを含む、
    請求項2に記載の冷蔵庫。
  4. 前記所定のコーティング層は、部材同士の接合する領域に形成される、
    請求項1〜3のいずれかに記載の冷蔵庫。
  5. 前記所定のコーティング層は、前記食材の保存場所に露出する領域を有する樹脂材料であって成形加工される棚の表面に設けられて、前記棚の上面に設けられる前記所定のコーティング層の厚みは、前記棚の下面に設けられる前記所定のコーティング層の厚みよりも大きくなるように設定される、
    請求項1〜3のいずれかに記載の冷蔵庫。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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