JP2013241484A - ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料、偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料、偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外観むらが少ない偏光フィルムを得ることができるポリビニルアルコール樹脂フィルム材料を提供する。
【解決手段】本発明に係るポリビニルアルコール樹脂フィルム材料は、偏光フィルムを形成するためのポリビニルアルコール樹脂フィルムを得るために用いられる。本発明に係るポリビニルアルコール樹脂フィルム材料は、けん化度が92モル%以上であり、重合度が2000以上、3000以下であるポリビニルアルコールを含む。上記ポリビニルアルコールは、ポリスチレン換算分子量が1万以下である低分子量成分を含有する。上記ポリビニルアルコールに占める上記低分子量成分の割合が5%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、偏光フィルムを形成するためのポリビニルアルコール樹脂フィルムを得るために用いられるポリビニルアルコール樹脂フィルム材料に関する。また、本発明は、該ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料を用いた偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法に関する。
従来、液晶表示装置等では、ポリビニルアルコール(以下、PVAと記載することがある)樹脂フィルムにより形成された偏光フィルムが広く用いられている。
PVA樹脂フィルムを用いて偏光フィルムを製造する際には、例えばPVA樹脂フィルムを一軸延伸し、次に染色する。その後、ホウ素化合物などで固定処理を行う。または、PVA樹脂フィルムを染色した後に一軸延伸し、次にホウ素化合物などで固定処理を行う。また、延伸工程時に、固定処理を行う固定化工程が行われることもある。
下記の特許文献1には、PVA樹脂フィルムを用いた偏光フィルム及びその製造方法が開示されている。特許文献1では、フィルム幅が2m以上であり、幅方向に1cm離れた2点間のレターデーション差が5nm以下であり、かつ幅方向に1m離れた2点間のレターデーション差が50nm以下であるPVA樹脂フィルムが記載されている。
また、偏光フィルムでは、優れた偏光性能が強く求められている。特許文献1では、偏光性能と耐久性との観点から、PVAのけん化度が95モル%以上であることが好ましく、99.5モル%以上であることが最も好ましいことが記載されている。
下記の特許文献2には、支持フィルム上にPVAを塗布してPVA層を形成し、PVA層を支持フィルムとともに延伸し、染色して得られる偏光板及びその製造方法が記載されている。特許文献2では、けん化度が98.0〜99.9モル%であり、重合度が1700〜2600である完全けん化型のPVAを用いることが記載されている。上記PVAを水に溶解させた溶液を塗工し、乾燥することにより、上記PVA層が形成されている。
特許第3422759号公報 特開2000−338329号公報
特許文献1,2に記載のような従来のPVA樹脂フィルムでは、PVA樹脂フィルムに外観むらがあることがある。特に、特許文献1,2に記載のような従来のPVA樹脂フィルムを用いて偏光フィルムを得る際に、固定処理に用いるホウ素化合物溶液が泡立つことがある。このため、フィルム表面に気泡が付着し、気泡が付着した部分において固定化が十分に進行せず、固定化反応が不均一になることがある。また、例えば、偏光フィルムの内部まで架橋反応が十分に進行しないことがある。このため、偏光フィルムにおいて偏光異常が生じることがある。この結果として、得られる液晶表示装置において、色むら、にじみ、光抜け及びコントラストの低下などが生じるという問題がある。
本発明の目的は、外観むらが少ない偏光フィルムを得ることができるポリビニルアルコール樹脂フィルム材料、並びに該ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料を用いた偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法を提供することである。
本発明の広い局面によれば、偏光フィルムを形成するためのポリビニルアルコール樹脂フィルムを得るために用いられるポリビニルアルコール樹脂フィルム材料であって、けん化度が92モル%以上であり、重合度が2000以上、3000以下であるポリビニルアルコールを含み、前記ポリビニルアルコールは、ポリスチレン換算分子量が1万以下である低分子量成分を含有し、かつ前記ポリビニルアルコールに占める前記低分子量成分の割合が5%以下である、ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料が提供される。
前記ポリビニルアルコールの前記けん化度が98.5モル%以下であることが好ましい。
本発明に係るポリビニルアルコール樹脂フィルム材料のある特定の局面では、該ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料は、溶剤をさらに含む。
本発明に係るポリビニルアルコール樹脂フィルム材料のある特定の局面では、前記偏光フィルムが、ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にしたポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色、延伸及びホウ素化合物を用いて固定処理を行うことにより得られる偏光フィルムである。
本発明の広い局面によれば、上述したポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にしたポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色、延伸及びホウ素化合物を用いて固定処理を行うことにより得られる偏光フィルムが提供される。
本発明の広い局面によれば、上述したポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にして、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを得るフィルム化工程と、前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色する染色工程と、前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを延伸する延伸工程と、ホウ素化合物を用いて、固定処理を行う固定化工程とを備える、偏光フィルムの製造方法が提供される。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法のある特定の局面では、前記延伸工程後に、前記固定化工程を行う。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法のある特定の局面では、前記フィルム化工程において、支持部材上に、前記ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料を流涎し、乾燥することで、前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを得る。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法のある特定の局面では、前記染色工程において、前記支持部材上に前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを積層した状態で、前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色する。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法のある特定の局面では、前記染色工程前に、前記延伸工程を行う。
本発明に係るポリビニルアルコール樹脂フィルム材料は、けん化度が92モル%以上であり、重合度が2000以上、3000以下であるポリビニルアルコールを含み、上記ポリビニルアルコールは、ポリスチレン換算分子量が1万以下である低分子量成分を含有し、かつ上記ポリビニルアルコールに占める上記低分子量成分の割合が5%以下であるので、外観むらが少ない偏光フィルムを得ることができる。
本発明に係る偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法では、上述したポリビニルアルコール樹脂フィルム材料が用いられているので、外観むらが少ない偏光フィルムを得ることができる。
以下、本発明の詳細を説明する。
(ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料)
本発明に係るポリビニルアルコール(以下、PVAと記載することがある)樹脂フィルム材料は、PVA樹脂フィルムを得るために用いられる。該PVA樹脂フィルムは、偏光フィルムを形成するために用いられる。本発明に係るPVA樹脂フィルム材料は、けん化度が92モル%以上であり、JIS K6726に準拠して求められる重合度が2000以上、3000以下であるPVAを含む。上記PVAは、ポリスチレン換算分子量が1万以下である低分子量成分を含有し、かつ上記PVAに占める上記低分子量成分の割合が5%以下である。本発明に係るPVA樹脂フィルム材料は、けん化度が92モル%以上であり、重合度が2000以上、3000以下であり、上記低分子量成分を特定の割合で含有するPVAのみを含んでいてもよい。本発明に係るPVA樹脂フィルム材料は、けん化度が92モル%以上であり、重合度が2000以上、3000以下であり、上記低分子量成分を特定の割合で含有するPVAであってもよく、偏光フィルムを形成するためのPVAであってもよい。
けん化度が92モル%以上であり、重合度が2000以上、3000以下であり、上記低分子量成分を特定の割合で含有するPVAの使用によって、外観むらが少ないPVA樹脂フィルム及び偏光フィルムを得ることができる。けん化度が92モル%以上であり、重合度が2000以上、3000以下であり、上記低分子量成分を特定の割合で含有するPVAの使用によって、固定化工程において、ホウ素化合物溶液の泡立ちが抑えられ、フィルム表面に気泡が付着し難くなり、固定化反応が均一に進行する。この結果として、得られる液晶表示装置において、色むら、にじみ、光抜け及びコントラストの低下などが生じ難くなる。
本発明者は、偏光フィルムを形成するためのPVA樹脂フィルムを得るために用いられるPVA樹脂フィルム材料において、けん化度が92モル%以上であり、上記低分子量成分を特定の割合で含有するPVAを用いることで、外観むらが少ない偏光フィルムを得ることができることを見出した。
本発明に係るPVA樹脂フィルム材料では、上記偏光フィルムは、PVA樹脂フィルム材料をフィルム状にしたPVA樹脂フィルムを染色、延伸及びホウ素化合物を用いて固定処理を行うことにより得られる偏光フィルムであることが好ましい。
以下、本発明に係るPVA樹脂フィルム材料に用いられる各成分の詳細を説明する。
(ポリビニルアルコール(PVA))
上記PVAは、従来公知の方法に従って、ビニルエステルを重合してポリマーを得た後、ポリマーをけん化、すなわち加水分解することにより得られる。けん化には、一般に、アルカリ又は酸が用いられる。けん化には、アルカリを用いることが好ましい。上記PVAは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及び安息香酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエステルの重合方法は特に限定されない。この重合方法として、溶液重合法、塊状重合法及び懸濁重合法等が挙げられる。なかでも、溶液重合法が好ましい。溶液重合法では、PVAの重合度、及びPVAにおける低分子量成分の割合を好適な範囲に制御しやすい。また、PVAの重合度、及びPVAにおける低分子量成分の割合を好適な範囲に制御しやすいので、複数の重合槽を用い、重合が進むに従って連続的に前段の重合槽から後段の重合槽に移して製造を行う連続重合反応法を用いることが好ましい。
上記ビニルエステルを重合する際に用いる重合触媒としては、例えば、2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(Tianjin McEIT社製「TrigonoxEHP」)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−セチルペルオキシジカーボネート及びジ−s−ブチルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。上記重合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
けん化度を好適な範囲に制御しやすいので、上記ビニルエステルを重合して得られるポリマーは、ポリビニルエステルであることが好ましい。また、上記ビニルエステルを重合して得られるポリマーは、上記ビニルエステルと他のモノマーとの共重合体であってもよい。すなわち、上記PVAは、ビニルエステルと他のモノマーとの共重合体を用いて形成されていてもよい。上記他のモノマーすなわち共重合されるコモノマーとしては、例えば、オレフィン類、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド誘導体、N−ビニルアミド類、ビニルエーテル類、ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、アリル化合物、マレイン酸及びその塩、マレイン酸エステル、イタコン酸及びその塩、イタコン酸エステル、ビニルシリル化合物、並びに酢酸イソプロピニル等が挙げられる。上記他のモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン及びイソブテン等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記(メタ)アクリルアミド誘導体としては、アクリルアミド、n−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。上記N−ビニルアミド類としては、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。上記ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル及びn−ブチルビニルエーテル等が挙げられる。上記ニトリル類としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。上記ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等が挙げられる。上記アリル化合物としては、酢酸アリル及び塩化アリル等が挙げられる。上記ビニルシリル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記PVAと上記他のモノマーとを共重合し、変性PVAとする場合には、変性量は好ましくは15モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。すなわち、変性PVAにおけるビニルエステルに由来する構造単位と上記他のモノマーに由来する構造単位の合計100モル%中、上記ビニルエステルに由来する構造単位は好ましくは85モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、上記他のモノマーに由来する構造単位は好ましくは15モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。なお、本明細書において、ポリビニルアルコール(PVA)には、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)が含まれる。
偏光フィルムの外観むらを少なくするために、上記PVAのけん化度は、92モル%以上である。上記PVAのけん化度は、好ましくは93モル%以上、より好ましくは94モル%以上、好ましくは99.9モル%以下、より好ましくは98.5モル%以下、更に好ましくは98.5モル%未満、特に好ましくは98モル%未満である。また、上記PVAのけん化度が上記下限以上であると、偏光フィルムの貼り付け時に気泡が含まれるのを抑制できる。
上記けん化度は、JIS K6726に準拠して測定される。けん化度は、けん化によるビニルアルコール単位に変換される単位のうち、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示す。けん化度が上記下限以上であると、偏光フィルムの偏光性能がより一層高くなる。けん化度が上記上限以下であると、染色を短時間で行うことができ、偏光フィルムの生産性がより一層高くなる。偏光性能と偏光フィルムの生産性との双方をバランスよく高める観点からは、上記PVAのけん化度は92モル%以上、98.5モル%以下であることが特に好ましい。
上記けん化度の調整方法は特に限定されない。けん化度は、けん化条件、すなわち加水分解条件により適宜調整可能である。
偏光フィルムの外観むらを少なくするために、上記PVAの重合度は2000以上、3000以下である。上記PVAの重合度は、好ましくは2500以上、より好ましくは2600以上、更に好ましくは2700以上、好ましくは2900以下である。上記重合度が上記下限以上であると、偏光フィルムの強度がより一層高くなる。また、上記重合度が上記下限以上であると、染色工程時にPVA樹脂フィルムの溶解が抑えられ、PVA樹脂フィルムの厚みがより一層均一になり、固定化がより一層均一に行われ、偏光フィルムの光学特性がより一層良好になる。上記重合度が上記上限以下であると、固定化工程において部分的なゲル化が生じ難くなり、PVA樹脂フィルム材料の塗工性が高くなり、PVA樹脂フィルムの塗工時に気泡のかみこみが生じ難くなり、PVA樹脂フィルムの厚みが均一になりやすく、偏光フィルムの光学特性がより一層良好になる。なお、上記重合度は、JIS K6726に準拠して測定される。
PVA樹脂フィルムの耐湿性をより一層高める観点からは、上記PVAの上記重合度は、好ましくは2500以上、より好ましくは2700以上、3000以下である。重合度がこの範囲内であると、PVA樹脂フィルムが高湿度環境下に晒されても、PVA樹脂フィルムが変形しにくくなる。このため、湿度の高い環境での加工や使用に適したPVA樹脂フィルムを得ることが可能である。
偏光フィルムの外観むらを少なくするために、上記PVAは、ポリスチレン換算分子量が1万以下である低分子量成分を含有し、かつ上記PVAに占める上記低分子量成分の割合が5%以下である。上記低分子量成分の割合が多すぎると、固定化工程において、PVA中の低分子量成分が溶解し、溶解した低分子量成分が界面活性剤の役割を果たすことによって、ホウ素化合物溶液などが泡立ち、固定化が不均一になりやすい。このため、乾燥後に得られる偏光フィルムの外観むらが生じやすくなる。偏光フィルムの外観むらを少なくするために、上記PVA中で、上記低分子量成分の割合は少ないほどよい。
偏光フィルムの外観むらをより一層少なくする観点からは、上記PVAに占める上記低分子量成分の割合は、好ましくは4.5%以下、より好ましくは4.0%以下、更に好ましくは3.5%以下である。
上記PVAにおける上記低分子量成分の割合を少なくする方法としては、酢酸ビニルを重合する際に、重合率が低い段階で反応を終了させる方法、作製した酢酸ビニルを再沈殿等によって生成し低分子量成分を取り去る方法、及び、けん化後のPVAを再沈殿等によって生成し低分子量成分を取り去る方法などが挙げられる。
上記ポリスチレン換算分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での分子量を示す。上記PVAに占める、上記分子量が1万以下である低分子量成分の割合(%)は、上記PVAのGPCによるポリスチレン換算分子量の測定時に、RI検出器で検出されるピーク面積のうち、分子量が1万以下の領域に相当する面積の割合から算出される。なお、ピーク面積とは、測定の対象となる成分のピークとベースラインとの間の面積を意味する。
ポリスチレン換算分子量は、例えば、以下のようにして測定される。
ポリスチレン換算分子量を測定するために、分子量既知のポリスチレン標準試料のGPC測定を行う。ポリスチレン標準試料(昭和電工社製「Shodex Standard SM−105」、「Shodex Standard SH−75」)としては、重量平均分子量580、1,260、2,960、5,000、10,100、21,000、28,500、76,600、196,000、630,000、1,130,000、2,190,000、3,150,000、3,900,000の14試料を用いる。それぞれの標準試料ピークのピークトップが示す溶出時間に対して重量平均分子量をプロットし得られる近似直線を検量線として使用する。上記低分子量成分の割合を測定する方法としては、PVAを無水酢酸を用いてピリジン中で再酢化して得られたポリ酢酸ビニルを、テトラヒドロフランなどの有機溶剤に溶解させた有機溶剤溶液について、有機溶剤系のカラムを用いて上記低分子量成分の割合を測定する方法等が挙げられる。具体的には、得られた溶液をGPC装置により分析し、PVAから作製した酢酸ビニルのピーク面積を測定する。次いで、PVAから作製した酢酸ビニルの溶出時間と検量線及びPVAと酢酸ビニルの繰り返し分子量比とから、PVAのポリスチレン換算分子量が1万以下の領域に相当する面積を算出する。PVAのポリスチレン換算分子量が1万以下の領域に相当する面積を、ピーク面積全体で除算した値を百分率(%)で表すことにより、上記PVAに占める、上記ポリスチレン換算分子量が1万以下である低分子量成分の割合(%)を算出できる。例えば、Gel Permeation Chromatography(GPC)装置(日立ハイテク社製「RI:L2490、オートサンプラー:L−2200、ポンプ:L−2130、カラムオーブン:L−2350、カラム:GL−A120−SとGL−A100MX−Sの直列」)を用いて、ポリスチレン換算分子量を測定することができる。
上記PVA樹脂フィルムが溶剤を含む場合には、上記PVAと溶剤との合計100重量%中、上記PVAの含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは65重量%以下、より好ましくは55重量%以下である。PVAの含有量が上記下限以上であると、乾燥時間がより一層短くなり、より一層良好な品質のPVA樹脂フィルムが得られる。PVAの含有量が上記上限以下であると、PVA樹脂フィルム材料の流涎が容易になる。
(防腐剤)
PVAを用いてPVA樹脂フィルムを作製する際に、一般に、PVAを溶剤に溶解させる。従来、PVAと溶剤とを含む溶液中には、防腐剤は配合されていなかった。従来、防腐剤が腐食を抑えること自体は公知であるが、偏光フィルムを形成するためのPVA樹脂フィルムを得るための、PVAと溶剤とを含む溶液中には、防腐剤を配合することは一切行われていなかった。このため、仮に、従来のPVAと溶剤とを含む溶液が長期間保管されたり、高温条件や高湿条件などに晒されたりすると、溶液において腐食が生じるという問題があった。この結果、良好な偏光フィルムが得られなかったり、複数の偏光フィルムの品質にばらつきが生じたりしやすかった。
これに対して、PVAと防腐剤とを配合することで、PVA樹脂フィルム材料の腐食を効果的に抑制できる。さらに、良好かつ均質なPVA樹脂フィルム及び偏光フィルムを得ることができる。
上記防腐剤としては、イソチアゾロン化合物、グルタルアルデヒド及び第四級アンモニウム化合物等が挙げられる。これら以外の防腐剤を用いてもよい。上記防腐剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
腐食がより一層効果的に抑えられることから、上記防腐剤は、複素環を有する化合物であることが好ましい。腐食がより一層効果的に抑えられることから、上記複素環は、環内に、窒素原子及び硫黄原子を含むことが好ましい。
腐食がより一層効果的に抑えられることから、上記防腐剤は、イソチアゾロン化合物であることが好ましい。上記イソチアゾロン化合物としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−3−メチルイソチアゾール−3−オン、及び2−メチルイソチアゾール−3−オン等が挙げられる。上記第四級アンモニウム化合物としては、塩化ベンジルデシルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム及び塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
上記PVA樹脂フィルム材料において、上記PVA100重量部に対して、上記防腐剤の含有量は好ましくは0.03重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.3重量部以下である。PVAの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、PVA樹脂フィルム材料の腐食がより一層抑えられ、より一層良好かつ均質な偏光フィルムが得られる。
(溶剤)
上記PVA樹脂フィルム材料は、溶剤を含むことが好ましい。上記PVA樹脂フィルム材料が溶剤を含まない場合には、上記PVA樹脂フィルム材料は、溶剤が添加されて用いられることが好ましい。PVAと溶剤とを含む材料では、腐食がより一層生じやすいという問題がある。これに対して、PVA樹脂フィルム材料が防腐剤を含むことで、PVA樹脂フィルムが溶剤を含んでいても、腐食が効果的に抑えられる。
また、上記PVA樹脂フィルム材料が溶剤を含むことで、支持部材上にPVA樹脂フィルム材料を流涎させ、乾燥して、PVA樹脂フィルムを得ることができる。
上記溶剤は、PVAを溶解可能であることが好ましい。上記溶剤としては、水及び有機溶剤等が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びジグリセリン等が挙げられる。
上記PVAの溶解性に優れていることから、上記溶剤は、水、グリセリン又はジメチルスルホキシドを含むことが好ましい。上記溶剤は、水を含むことが好ましく、グリセリンを含むことが好ましく、ジメチルスルホキシドを含むことが好ましい。上記PVAの溶解性に優れていることから、上記溶剤は、水であるか、水とグリセリンとの混合溶剤であるか、又はジメチルスルホキシドであることが特に好ましい。
上記溶剤は、多価アルコールを含むことが好ましい。多価アルコールは、可塑剤としても作用し、PVA樹脂フィルム材料の延伸性を高める。上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン及びトリエチレングリコール等が挙げられる。PVA樹脂フィルム材料の延伸性をより一層高める観点からは、上記多価アルコールは、ジグリセリン、エチレングリコール又はグリセリンであることが好ましい。上記多価アルコールは、ジグリセリンを含むことが好ましく、エチレングリコールを含むことが好ましく、グリセリンを含むことが好ましい。
上記PVA樹脂フィルム材料が溶剤を含む場合には、上記PVAと溶剤との合計100重量%中、上記溶剤の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは45重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、更に好ましくは90重量%以下である。溶剤の含有量が上記下限以上であると、PVA樹脂フィルム材料の流涎が容易になる。溶剤の含有量が上記上限以下であると、乾燥時間がより一層短くなり、より一層良好な品質のPVA樹脂フィルムが得られる。
上記PVA樹脂フィルム材料において、上記PVA100重量部に対して、上記多価アルコールの含有量は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは25重量部以下である。上記多価アルコールの含有量が上記下限以上であると、染色性及び延伸性がより一層良好になる。上記多価アルコールの含有量が上記上限以下であると、PVA樹脂フィルムの柔軟性が適度になり、染色工程や延伸工程でのPVA樹脂フィルムの取扱い性がより一層高くなる。
(他の成分)
上記PVA樹脂フィルム材料は、界面活性剤を含むことが好ましい。該界面活性剤は、PVA樹脂フィルム材料に消泡効果を付与する。このため、界面活性剤の使用により、気泡の含有が抑えられた良好なPVA樹脂フィルムが得られる。上記界面活性剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記界面活性剤は特に限定されない。上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤が挙げられる。消泡効果をより一層効果的に得る観点からは、上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤であることが好ましい。上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であることが好ましく、カチオン性界面活性剤であることも好ましい。
(偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法)
本発明に係る偏光フィルムは、上述したポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にしたポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色、延伸及びホウ素化合物を用いて固定処理を行うことにより得られる。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、上述したポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にして、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを得るフィルム化工程と、上記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色する染色工程と、上記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを延伸する延伸工程と、ホウ素化合物を用いて、固定処理を行う固定化工程を備える。上記延伸工程は、上記染色工程前に行われてもよく、上記染色工程時に行われてもよく、上記染色工程後に行われてもよい。上記延伸工程は、上記染色工程前又は上記染色工程時に行われてもよく、上記染色工程時又は上記染色工程後に行われてもよい。
上記固定化工程では、ホウ素化合物を用いる。固定化工程は、染色工程後の延伸工程時に行ってもよく、染色工程かつ延伸工程後に行ってもよい。上記染色工程後に、上記固定化工程を行うことが好ましい。偏光フィルムを効率的に得る観点からは、上記延伸工程時に、上記固定化工程を行うことが好ましい。本発明に係るPVA樹脂フィルム材料の使用により、上記延伸工程時に上記固定化工程を行ったとしても、偏光フィルムの外観むらが少なくなる。
上記PVA樹脂フィルム材料を用いてPVA樹脂フィルムを得る際には、上記PVAを適宜の方法でフィルム状にする方法が用いられる。支持部材上に、PVAと溶剤とを含むPVA樹脂フィルム材料を流延し、乾燥する方法が好適に用いられる。
上記支持部材は支持フィルムであることが好ましい。上記支持部材は、PVA樹脂フィルム材料の流延時に、PVA樹脂フィルム材料を表面上に維持し、かつPVA樹脂フィルムを支持可能であることが好ましい。上記支持部材の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びアクリル樹脂等が挙げられる。上記ポリオレフィンとしては、エチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。
偏光フィルムに適した厚みにする観点からは、上記PVA樹脂フィルムの厚みは、延伸後の厚みで、好ましくは10μm以上、好ましくは200μm以下である。
支持部材上にPVA樹脂フィルムを流延した後の乾燥方法は、適宜の方法を用いることができ、特に限定されない。乾燥方法としては、自然乾燥する方法、及びPVAのガラス転移温度以下の温度での加熱乾燥する方法等が挙げられる。
上記PVA樹脂フィルムを染色するために、適宜の染料が用いられる。上記染料としては、ヨウ素−ヨウカリウム、ダイレクトブラック17,19,154、ダイレクトブラウン44,106,195,210,223、ダイレクトレッド2,23,28,31,37,39,79,81,210,242,247、ダイレクトブルー1,15,22,78,90,108,151,158,202,236,249,270、ダイレクトバイオレット9,12,51,98、ダイレクトグリーン1,85、ダイレクトイエロー8,12,44,86,87、並びにダイレクトオレンジ26,39,106,107等の二色性染料が挙げられる。上記染料は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記染色工程では、上記染料を含む溶液中にPVA樹脂フィルムを浸漬すればよい。PVA樹脂フィルム上に上記染料を含む溶液を塗工してもよい。
また、流延によりPVA樹脂フィルムを支持部材上に形成する方法では、支持部材からPVA樹脂フィルムを剥離して、PVA樹脂フィルムを染色してもよい。また、支持部材上に、PVA樹脂フィルムを積層した状態で、PVA樹脂フィルムを染色してもよい。支持部材上に、PVA樹脂フィルムを積層した状態で染色する場合には、染色工程前に延伸工程を行うことが好ましい。上記PVAのけん化度が92〜98.5モル%の範囲内である場合には、染色を速やかに行うことができ、偏光フィルムの生産効率を高めることができる。
上記延伸工程では、PVA樹脂フィルムを一軸延伸してもよく、一軸延伸以外の延伸を行ってもよい。PVA樹脂フィルムを一軸延伸することが好ましい。延伸方法としては、湿式延伸法及び乾熱延伸法等が挙げられる。上記染色工程時に上記延伸工程を行う場合には、上記染料を含む溶液中にPVA樹脂フィルムを浸漬した状態で延伸すればよい。
支持部材上にPVA樹脂フィルムを積層した状態で、上記PVA樹脂フィルムを延伸してもよく、支持部材からPVA樹脂フィルムを剥離した後、PVA樹脂フィルムを延伸してもよい。
上記染色工程前に上記延伸工程を行う場合には、支持部材上にPVA樹脂フィルムが積層された状態で、PVA樹脂フィルムを延伸することが好ましい。この場合には、PVA樹脂フィルムがより一層均一に延伸される。
上記染色工程後に上記延伸工程を行う場合などには、大気中でPVA樹脂フィルムを延伸してもよい。
延伸温度は特に限定されない。延伸温度は好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、好ましくは180℃以下、より好ましくは90℃以下である。PVA樹脂フィルムを単独で湿式延伸する場合には、延伸温度は好ましくは30℃以上、好ましくは90℃以下である。PVA樹脂フィルムを単独で乾熱延伸する場合は、延伸温度は好ましくは50℃以上、好ましくは180℃以下である。支持部材上にPVA樹脂フィルムを積層した状態で乾熱延伸する場合などには、支持部材の種類によるが、支持部材が延伸される温度以上、かつ、PVA樹脂フィルムの劣化や分解が起こらない温度以下に、延伸温度を設定することが好ましい。支持部材が湿式延伸に適用可能である場合には、湿式延伸してもよい。
延伸倍率は好ましくは4倍以上、より好ましくは5倍以上である。延伸倍率が上記下限以上であると、偏光フィルムの偏光性能がより一層高くなる。延伸倍率の上限は、均一に延伸可能であるように適宜設定される。延伸倍率は、好ましくは15倍以下、より好ましくは8倍以下である。
上記固定化工程では、PVA樹脂フィルムに染料を固定化する。上記固定化工程における固定処理は、従来公知の処理を採用可能である。ホウ素原子を含む溶液中に、PVA樹脂フィルムを浸漬することにより、固定処理を行うことができる。上記ホウ素原子を含む溶液は、例えば、ホウ酸又はホウ素化合物を含む。上記固定処理における温度は特に限定されない。上記固定処理における温度は、好ましくは30℃以上、好ましくは90℃以下である。
上記PVAのけん化度が92〜98.5モル%の範囲内である場合には、固定処理を速やかに行うことができ、偏光フィルムの生産効率を高めることができる。
上記のように、染色工程、延伸工程及び固定化工程を経た後、乾燥することが好ましい。この乾燥は、自然乾燥により行ってもよい。乾燥速度を高めるには、加熱乾燥することが望ましい。加熱乾燥する場合には、加熱温度は好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下である。
上記偏光フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、好ましくは200μm以下である。
本発明に係るPVA樹脂フィルム材料は、ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にしたポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色及び延伸することにより得られる偏光フィルムと、上記偏光フィルムに接着された保護フィルムとを備える保護フィルム付き偏光フィルムを得るために好適に用いられる。上記偏光フィルムは、液晶表示装置の偏光板などの様々な光学デバイスや表示デバイスに用いられる。上記偏光フィルムは、偏光フィルムの両面又は片面に保護フィルム(保護膜)を積層し、偏光板を得るために用いられることが好ましい。上記保護フィルム付き偏光フィルムは、偏光板であることが好ましい。
上記保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム、アクリルフィルム及びポリエステルフィルム等が挙げられる。なかでも、セルロースアシレートフィルムが好ましい。
上記セルロースアシレートフィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム及び酢酸・酪酸セルロース(CEB)フィルム等が挙げられる。なかでも、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが好ましい。
偏光板を得る際接着に用いられる接着剤としては、PVA接着剤及びウレタン接着剤等が挙げられる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
以下のPVAを用意した。
PVA1(けん化度98.5モル%、重合度2500、低分子量成分の割合3.5%、下記の合成例1で合成)
(合成例1)
温度計、攪拌機及び冷却管を備えた反応器内に、酢酸ビニルモノマー2000重量部及びメタノール200重量部を加え、窒素ガスを30分間吹き込んで窒素置換した後、反応器を60℃にて30分間加熱した。次いで、重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部を添加した後、60℃にて4時間反応させた。反応時間終了後、反応液を冷却した。冷却後に重合率を測定したところ、重合率は29%であった。次いで、減圧下で、残留する酢酸ビニルモノマーをメタノールとともに除去する操作を、メタノールを追加しながら行い、ポリ酢酸ビニル50重量%を含むメタノール溶液を得た。このメタノール溶液の一部を取り、酢酸ビニルに対して0.05mol%の水酸化ナトリウム量となるように水酸化ナトリウムのメタノール溶液を加え、40℃でけん化を行った。得られた固形分を粉砕し、メタノールによる洗浄を行った後、乾燥することによりPVA1を得た。
PVA2(けん化度94.0モル%、重合度3000、低分子量成分の割合2.5%、下記の合成例2で合成)
(合成例2)
酢酸ビニルモノマーの使用量を2500重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの使用量を0.3重量部、反応時間を3時間に変更してポリ酢酸ビニルを得て、次いでけん化の際のポリ酢酸ビニル濃度を40重量%、酢酸ビニルに対する水酸化ナトリウム量を0.03mol%に変更したこと以外は合成例1と同様にして、PVA2を得た。
PVA3(けん化度97.0モル%、重合度2700、低分子量成分の割合3.5%、下記の合成例3で合成)
(合成例3)
酢酸ビニルモノマーの使用量を2300重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの使用量を0.3重量部に変更してポリ酢酸ビニルを得て、次いでけん化の際のポリ酢酸ビニル濃度を40重量%に変更したこと以外は合成例1と同様にして、PVA3を得た。
PVA4(けん化度97.0モル%、重合度2700、低分子量成分の割合4.8%、下記の合成例4で合成)
(合成例4)
酢酸ビニルモノマーの使用量を3000重量部に変更してポリ酢酸ビニルを得て、次いでけん化の際のポリ酢酸ビニル濃度を40重量%に変更したこと以外は合成例1と同様にして、PVA4を得た。
以下のPVA5〜7、重合度、及び低分子量成分の割合については、重合温度及び反応時間を含む重合条件により制御した。けん化度については、加水分解条件により制御した。
PVA5(けん化度99.3モル%、重合度3300、低分子量成分の割合3.8%)
PVA6(けん化度93.0モル%、重合度1800、低分子量成分の割合5.2%)
PVA7(けん化度94.0モル%、重合度2500、低分子量成分の割合7.0%)
(実施例1)
PVA1(けん化度98.5モル%、重合度2500、低分子量成分の割合3.5%、合成例1で合成)100重量部と、グリセリン10重量部と、防腐剤であるイソチアゾロン化合物(三愛石油社製「サンアイバック IT−20P」)0.15重量部とを混合した混合物に水を添加し、95℃で90分加熱させ、混合物濃度が40重量%であるPVA樹脂フィルム材料(水溶液)を調製した。
得られたPVA樹脂フィルム材料を、支持部材であるポリプロピレンフィルム(厚み6μm)上に塗布し、乾燥させ、PVA樹脂フィルムを得た。
支持部材上にPVA樹脂フィルムが積層された積層物を、110℃に保った恒温槽中において延伸倍率5.5倍で、自由端一軸延伸した。次いで、延伸後の積層物をヨウ素0.4g/L及びヨウ化カリウム40g/Lの濃度でヨウ素及びヨウ化カリウムを含む水溶液中に、30℃の温度で120秒間(染色時間)浸漬し、染色した。次に、ホウ酸60g/L及びヨウ化カリウム30g/Lの濃度でホウ酸及びヨウ化カリウムを含む水溶液中に、支持部材上にPVA樹脂フィルムが積層された積層物を、60℃で2分間(ホウ酸処理時間)浸漬した。その後、水洗及び乾燥を行い、偏光フィルムを得た。
得られた偏光フィルムの厚みは20μmであった。この偏光フィルムに厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせ、偏光板を得た。
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
PVAの種類を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、PVA樹脂フィルム材料、偏光フィルム及び偏光板を得た。
(評価)
(1)低分子量成分の割合
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算分子量を測定して、RI検出器で検出されるピーク面積(GPCの測定結果)のうち、分子量が1万以下の領域に相当する面積の割合から、PVAに占める、ポリスチレン換算分子量が1万以下である低分子量成分の割合(%)を算出した。
ポリスチレン換算分子量を測定するために、分子量既知のポリスチレン標準試料のGPC測定を行った。ポリスチレン標準試料(昭和電工社製「Shodex Standard SM−105」、「Shodex Standard SH−75」)としては、重量平均分子量580、1,260、2,960、5,000、10,100、21,000、28,500、76,600、196,000、630,000、1,130,000、2,190,000、3,150,000、3,900,000の14試料を用いた。それぞれの標準試料ピークのピークトップが示す溶出時間に対して重量平均分子量をプロットし得られる近似直線を検量線として使用した。PVAを無水酢酸を用いてピリジン中で再酢化し、得られたポリ酢酸ビニルを精製した後にテトラヒドロフランに溶解させることにより、0.3重量%のポリ酢酸ビニルのテトラヒドロフラン溶液を調製した。得られたポリ酢酸ビニルのテトラヒドロフラン溶液をGPC装置により分析し、PVAから作製したポリ酢酸ビニルのピーク面積を測定した。次いで、PVAから作製したポリ酢酸ビニルの溶出時間と検量線及びPVAと酢酸ビニルの繰り返し分子量比とから、PVAのポリスチレン換算分子量が1万以下の領域に相当する面積を算出した。PVAのポリスチレン換算分子量が1万以下の領域に相当する面積を、ピーク面積全体で除算した値を百分率(%)で表すことにより、上記PVAに占める、上記ポリスチレン換算分子量が1万以下ある低分子量成分の割合(%)を算出した。
(2)外観むら
得られた偏光フィルムを目視で観察した。外観むらを下記の基準で判定した。
[外観むらの判定基準]
○:偏光フィルムに外観むらが全く見られない
△:偏光フィルムに外観むらが見られる
×:偏光フィルムに外観むらが見られるだけでなく、偏光フィルムの変形が見られる
(3)偏光度の測定
得られた偏光板の偏光度Pを、島津製作所社製の分光光度計UV−3101PC装置を用いて、クロス透過率及びパラレル透過率を測定して求めた。偏光度を下記の基準で判定した。なお、クロス透過率をYC、パラレル透過率をYPとしたとき、偏光度Pは下記式で表される。
偏光度P={(YP−YC)/(YP+YC)}1/2
[偏光度の判定基準]
○:偏光度が99以上
△:偏光度が90以上、99未満
×:偏光度が90未満
結果を下記の表1に示す。
Figure 2013241484

Claims (10)

  1. 偏光フィルムを形成するためのポリビニルアルコール樹脂フィルムを得るために用いられるポリビニルアルコール樹脂フィルム材料であって、
    けん化度が92モル%以上であり、重合度が2000以上、3000以下であるポリビニルアルコールを含み、
    前記ポリビニルアルコールは、ポリスチレン換算分子量が1万以下である低分子量成分を含有し、かつ前記ポリビニルアルコールに占める前記低分子量成分の割合が5%以下である、ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料。
  2. 前記ポリビニルアルコールの前記けん化度が98.5モル%以下である、請求項1に記載のポリビニルアルコール樹脂フィルム材料。
  3. 溶剤をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリビニルアルコール樹脂フィルム材料。
  4. 前記偏光フィルムが、ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にしたポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色、延伸及びホウ素化合物を用いて固定処理を行うことにより得られる偏光フィルムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール樹脂フィルム材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にしたポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色、延伸及びホウ素化合物を用いて固定処理を行うことにより得られる偏光フィルム。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール樹脂フィルム材料をフィルム状にして、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを得るフィルム化工程と、
    前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色する染色工程と、
    前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを延伸する延伸工程と、
    ホウ素化合物を用いて、固定処理を行う固定化工程とを備える、偏光フィルムの製造方法。
  7. 前記延伸工程後に、前記固定化工程を行う、請求項6に記載の偏光フィルムの製造方法。
  8. 前記フィルム化工程において、支持部材上に、前記ポリビニルアルコール樹脂フィルム材料を流涎し、乾燥することで、前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを得る、請求項6又は7に記載の偏光フィルムの製造方法。
  9. 前記染色工程において、前記支持部材上に前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを積層した状態で、前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムを染色する、請求項8に記載の偏光フィルムの製造方法。
  10. 前記染色工程前に、前記延伸工程を行う、請求項6〜9のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
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