以下、本発明の透明レーザーマーキングシート、積層体、及びレーザーマーキング方法を実施するための形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える透明レーザーマーキングシート、積層体、及びレーザーマーキング方法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
[I]本発明の透明レーザーマーキングシートの構成:
本発明の透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)は、図1、図2に示されるように、基材シート2,20の少なくとも片面に、接着剤層3を設けてなる透明レーザーマーキングシートである。前記基材シート2は、ポリカーボネート樹脂、及びレーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる単層シートとして構成される。又は、前記基材シート20は、スキン層4とコア層5を有し、両最外層である前記スキン層4が、非結晶性ポリエステル樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物からなり、且つ、前記コア層5が、ポリカーボネート樹脂、及びレーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる多層シートとして構成される。さらに、前記接着剤層3は、ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤から形成されると共に、1〜20μmの厚さを有する層として構成される。
以下、接着剤層を説明した後、単層シート、多層シートを順に説明する。
[I−1]接着剤層:
本発明の接着剤層は、基材シートの少なくとも片面に層状になって形成される。さらに、ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤から形成されると共に、1〜20μmの厚さを有する層として構成される。このように構成されることにより、汎用性や成形加工性を向上させることができる。特に、UVオフセット印刷による印字等、又はUVシルク印刷による印字等がなされた、別のシートと一体化し易く、改竄防止、偽造防止等の効果を向上させることができる。
ここで、「接着剤層」を「基材シートの少なくとも片面に層状になって形成」するとは、基材シートの少なくとも片面であって、その片面の全面に層状に、接着材層が形成されることを意味する。このように構成されることにより、基材シートと、別のシートを確実に一体化できる。即ち、本発明の透明レーザーマーキングシートと、別のシートを一体化した後、剥離する等の不具合を生じ難くさせることができる。換言すれば、別のシートと密着化させることができ、別のシートとを複合的に組合せて、改竄防止、偽造防止等の効果を得ることができる。
特に、別のシートの表面が、UVオフセット印刷、又はUVシルク印刷による印刷が施されているものであっても、確実に一体化でき、剥離等の不具合を生じ難くさせることができる。そのため、改竄防止、偽造防止等の効果を得ることができる。
一方、基材シートの少なくとも片面に部分的に接着剤層を形成する場合には、UVオフセット印刷、又はUVシルク印刷による印刷が施されているシートとの一体化に不具合が生じる虞があるため、好ましくない。
又、接着剤層は、ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤から形成される。接着材層が、前述のような材料から形成されることにより、別のシート等との接着性を向上させることができる。又、透明性に優れた接着剤層を形成できるため、この透明レーザーマーキングシートに接着された別のシートに印刷された文字、画像等を明瞭に視認できる。
又、上記「ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤」は、加熱により接着性を発現、又は増大させる特性を有する接着剤であり、この接着剤を用いて基材シートに接着剤層を形成した際には、その接着剤層が透明になるものを使用している。このような「透明熱活性接着剤」として、例えば、ポリエステル樹脂からなるものを挙げることができる。
ここで、本発明の透明レーザーマーキングシートにおける接着剤層を形成する接着剤は、上記したように熱活性を有するものである。本発明においては、接着剤層を形成する接着剤として、非熱活性接着剤を使用した場合、非熱活性接着剤は、常温で接着性を示すため、打ち抜き加工等の加工作業性に劣るものとなり好ましくない。又、成形時の位置合せもし難く、成形時に接着剤層形成面にゴミがつき易く、成形加工性に劣る。さらに、非熱活性接着剤は、一般にガラス転移温度が比較的低いことから、耐熱性を高めることが難しい等の問題がある。
又、前述のように「接着剤層」を形成するのは、汎用性や成形加工性を向上させるためである。本発明における基材シートと、別のシートを一体化する際に、接着剤を塗布するものでは、作業効率が低減する。又、塗布する接着剤の量や厚み等が均一とならない場合もあり、最終製品のバラツキが生じる虞もある。さらに、本発明の透明レーザーマーキングシート、或いは積層体のように、データ等の印刷を、公的機関や信頼性の高い団体が行う場合に、接着剤を所望量、所望厚みに塗布するのは実質的に難しい。
又、本発明の透明レーザーマーキングシートにおける接着剤層は、1〜20μmの厚さを有する層として構成される。このような所望の厚さを備えることにより、接着剤層が過度に厚くならずに済み、電子パスポート、或いはプラスチックカードの一般的な規格に対応するものとなる。即ち、このような所望の接着剤層を備える透明レーザーマーキングシートを使用して、電子パスポート、或いはプラスチックカードを成形しやすくなる。さらに、接着剤層が所望の厚さであることによって、レーザーマーキングした際、或いは印字した際の、文字、図形、記号、又は情報等の鮮明性を確保できる。
一方、接着剤層の厚さが、1μm未満であると、別のシートと十分な接着を行うことができない。即ち、別のシートと接着させても引き剥がしが容易か、或いは剥離しやすいものとなってしまう。従って、改竄防止、偽造防止等の効果を得ることができない。又、接着剤層の厚さが、20μm超であると、接着剤層が過度に厚くなり過ぎてしまう。このように、接着剤層が過度に厚くなり過ぎても、それに見合う接着強度が得られ難い。さらに、このように接着剤層が厚すぎると、電子パスポート、或いはプラスチックカードを適用し難いものとなってしまう。即ち、電子パスポート、或いはプラスチックカードに要求される一般的な厚さの規格に対応し難くなるためである。従って、過度な厚みを有する接着層を形成すると、透明レーザーマーキングシートが汎用性に劣るものとなる。
さらに、上記接着剤層が過度に厚くなりすぎると、透明レーザーマーキングシートと別のシート等との一体化の際に不具合が生じやすい。例えば、透明レーザーマーキングシートと別のシート等とを、加熱して、或いは加熱及び加圧して、積層一体化した際に、接着剤層を形成する接着剤が、積層体の端面から固化した状態ではみ出すこともある。このはみ出した接着剤は、外観が損なわれるばかりでなく、除去する作業も必要になり、生産性に劣るようになる。又、接着剤層の厚さが過度に厚くなるため、別のシートに印刷した印字等のデータを、透明レーザーマーキングシート側から識別することが難しくなる。
さらに、「ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤」の、熱活性が発揮される温度が、60〜160℃のものを好適に使用できる。保管、取り扱いが容易であり、接着層に接着させる、別のシートにダメージを与える虞もない。一方、熱活性が発揮される温度が、60℃未満のものでは、保管、取り扱いが難しくなり支障が生じる虞がある。又、160℃を超えるものでは、接着時に必要とされる熱エネルギーが大きくなる分だけ、エネルギーロスが大きくなり、生産コストが増大する。さらに、基材シートを損傷したり、接着剤層に接着させる別のシート等にも損傷を与えやすくなる。
さらに、接着剤層の、全光線透過率が70%以上であることが好ましい。透明レーザーマーキングシートと、別のシート等を一体化して使用する際に、別のシート等に印字等した文字、図形、記号、又は情報等を、透明レーザーマーキングシート側から識別できるためである。なお、上記した「全光線透過率」の内容、測定方法等の詳細については、後述する。
さらに、前記透明熱活性接着剤のポリエステル樹脂は、数平均分子量が10000〜200000であり、ガラス転移温度が20〜100℃であることが好ましい。このような所望のポリエステル樹脂からなる接着剤層が形成されることにより、本発明の透明レーザーマーキングシートと、別のシートとを確実に接着させることができる。即ち、剥離等の不具合が生じ難く、改竄や偽造等を防止することができる。さらに、常温の状態、即ち、成形加工する際に所望温度で加熱する成形前の状態では、接着剤層の表面に、粘つきや粘着を生じさせることを抑制できるため、取り扱いが容易となり、成形加工しやすい。従って、電子パスポート用、プラスチックカード用等に、使用し易くなる。
一方、「透明熱活性接着剤のポリエステル樹脂」の数平均分子量が、10000未満である場合には、接着強さが劣ってしまう。そのため、剥離等の不具合が生じる虞がある。又、「透明熱活性接着剤のポリエステル樹脂」の数平均分子量が、200000超である場合には、使用に際し、溶剤に溶解し所望の粘度に調整するのに多量の溶剤が必要となる。そのため、作業面、環境面、及びコスト面等から好ましくない。
又、「透明熱活性接着剤のポリエステル樹脂」のガラス転移温度が、20℃未満である場合には、常温において、接着剤層に粘つきや粘着を生じる虞がある。このため、作業効率が低減する。又、「透明熱活性接着剤のポリエステル樹脂」のガラス転移温度が、100℃超である場合には、透明レーザーマーキングシートと別のシートとの、成形一体化の際に、不具合が生じる虞がある。
このような透明熱活性接着剤のポリエステル樹脂は、例えば、テレフタル酸とエチレングリコールから合成することができる。このようなポリエステル樹脂の中でも、親水性官能基を有するモノマーを共重合してなるポリエステル樹脂がより好ましい。さらに、前記透明熱活性接着剤のポリエステル樹脂が、親水性官能基を有するモノマーとの共重合体からなる水分散型ポリエステル樹脂であることも好ましい。このような所望のポリエステル樹脂を用いて接着剤層を形成することにより、別のシートとの強固な接着性を備える透明レーザーマーキングシートを成形できる。
ここで、上記した親水性官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、第四級アンモニウム塩基等を挙げることができる。さらに、親水性官能基を有するモノマーとしては、例えば、グリコール類、アクリル酸類等を挙げることができる。
又、前述の親水性官能基を有するモノマーの配合量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、親水性官能基含有量が、60質量%以下、好ましくは50質量%以下の量とすることが好ましい。このような量の親水性官能基を有するポリエステル樹脂は、水分散性と耐水性を合わせ有する。従って、水系化が容易となる。即ち、無溶剤化することができる。従って、VOC規制等をクリアすることができる。又、接着剤層に耐水性を付与することもできる。親水性官能基含有量が、余りにも多すぎると、耐水性に劣るようになる。
なお、前述のようなポリエステル樹脂を用いて接着剤層を形成する場合には、分散剤や乳化剤等を使用しなくても、容易に水に分散させ水分散液とすることができる。従って、接着剤層を形成しやすくなる。さらに、所望の厚みにコーティングし易くもなる。しかも、前述のようなポリエステル樹脂を用いて形成される接着剤層は、水に不溶、もしくは難溶である。又、耐水性にも優れている。そのため、湿分が高い作業環境においても、取り扱いが容易である。
このような接着剤層を形成する透明熱活性接着剤であるポリエステル樹脂としては、具体的には、バイロナールMD−1200(商品名、東洋紡績社製)、XJ−36(商品名、東亞合成社製)等を例示することができる。これらは、例示であって、これらに限定されるものではない。
さらに、前記透明熱活性接着剤は、水分散液、水溶液、又は有機溶剤溶液として使用に供することができる。接着剤層を形成する際に、前述のポリエステル樹脂を均質な状態にでき、接着剤層を均一な層に形成し易い。この中でも、環境的に好ましい使用態様は、水分散液として使用することである。
なお、前記ポリエステル樹脂は、界面活性剤を不使用、或いは使用したとしても少量とすることができ、密着性、加熱融着性、透明性等が損なわれることがない。さらに、分散液の安定性を確保でき、後述の基材シートへの接着剤層を形成する際に、層形成が容易に行え、接着剤層の厚みの制御も容易である。
さらに、透明熱活性接着剤のポリエステル樹脂が、水分散液、水溶液、又は有機溶剤溶液として使用される場合には、その共重合体の固形分濃度は、10〜40質量%の範囲とすることが好ましい。このようにすることで、基材シートへの均一な接着剤層の形成を容易に行うことができる。前記固形分濃度が10質量%未満であると、前記した厚さを有する層を形成するためには重ね塗りが必要となり、工数がかかる。逆に、固形分濃度が40重量%を超えると均一な厚さの層を形成することがしづらくなる。
なお、このような透明熱活性接着剤を、溶解させて使用する有機溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではなく、公知の炭化水素系溶剤をはじめとする有機溶剤を使用することができる。
前記した透明熱活性接着剤としてのポリエステル樹脂の水分散液、水溶液、又は有機溶剤溶液を調製するにあたっては、従来から採用されている各種の調製方法や手段を採用することができる。調製方法や手段に限定されるものではない。
さらに、接着剤層を形成するポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤には、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、必要に応じて、レベリング剤、着色剤、その他添加剤を含有させてもよい。
(接着剤層の形成方法)
本発明の透明レーザーマーキングシートにおける、基材シートの少なくとも片面に接着剤層を形成する方法としては、公知の形成方法を採用して形成することができる。例えば、水分散液、水溶液、又は溶剤溶液からなる塗工液を調製する。つぎに、調整した塗工液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法等の公知の層形成手段により、前記基材シートに層状に形成する。層形成後、乾燥し、接着剤層を形成する方法を挙げることができる。
なお、前記した乾燥する際の温度は、概ね60〜120℃が好ましい。このような温度条件とすることにより、基材シートに、透明熱活性接着剤からなる層を強固に形成することができる。一方、前記乾燥温度が60℃未満では、基材シートに、透明熱活性接着剤層を強固に形成することが難しく、乾燥に長時間を有し、生産効率が低下するようになる。一方、前記乾燥温度が120℃を超えると、基材シートにボイドやクラックを発生させる虞があるので好ましくない。
又、前記した乾燥に要する時間は、通常、数10秒〜数分で行うとよい。なお、この乾燥時間は、乾燥温度にも依存するが、前述のような所望の乾燥時間とすることにより、基材シートに、べたつきがなく、基材シートとの密着性に優れた強固な接着剤層を形成できる。一方、乾燥時間が短かすぎると、乾燥温度を必要以上に上げる必要がある。乾燥温度を必要以上に上げると、基材シートにボイドやクラックが発生することもあるので好ましくない。又、乾燥時間が長すぎると、生産コストが過大となる。さらに、基材シート、透明熱活性接着剤が加熱下に長時間曝されることになり、前記と同様に基材シートにボイドやクラックが発生することもある。又、乾燥時間を長くすることによる効果も期待し難い。従って、好ましくない。
例えば、図1に示されるような、透明レーザーマーキングシート1(1A)を挙げることができる。図1に示される透明レーザーマーキングシート1(1A)では、基材シートが後述する単層シート2として構成され、その片面に接着剤層3が形成されている。
又、例えば、図2に示されるような、透明レーザーマーキングシート1(1B)を挙げることができる。図2に示される透明レーザーマーキングシート1(1B)では、その基材シートが後述する多層シート20として構成されている。この多層シート20は、スキン層4とコア層5を有している。さらに、この多層シート20の、一方のスキン層4面に、接着剤層3が形成されている。
[I−2]基材シートの構成:
本発明の透明レーザーマーキングシートは、基材シートが、単層シート、又は多層シートから構成されている。さらに、多層シートは、スキン層とコア層を少なくとも備える3層シートとして構成されている。
(単層シート)
単層シートは、単層構造のシートとして構成されている。なお、この単層シートは、従来から知られているシート状物の成形方法等により製造することができる。ただし、溶融押出成形により単層シートが成形されることが好ましい。
(単層シートの材料)
基材シートとしての単層シートは、次の材料から形成されることが好ましい。
単層シートは、透明なポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂から形成されることが好ましい。ここで、上記ポリカーボネート樹脂は特に制限されないが、メルトボリュームレイトが4〜20cm3/10minのものを好適に使用できる。メルトボリュームレイトが4cm3/10min未満では、シートの屈曲性、強靱性、堅牢性等のタフネス性が向上するという点では意味はあるものの、溶融押出成形による成形加工性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。又、メルトボリュームレイトが20cm3/10minを超えると、シートのタフネス性に劣ることから、好ましくない。このように単層シートを、ポリカーボネート樹脂を含む透明樹脂層から形成することによって、レーザー光エネルギー照射によるレーザーマーキング部分が発泡する、いわゆる「膨れ」を抑制でき、しかもレーザー光エネルギー照射によるレーザーマーキング部分が食刻される、耐磨耗性を向上させることができる。
なお、基材シートが単層シートとして構成される場合には、高い透明性を有していることが重要である。具体的には、単層シートとして構成される場合には、ポリカーボネート樹脂の透明性を阻害しない樹脂、例えば、フィラー等を添加配合することについては特に制限はない。又、耐傷性、或いは耐熱性を向上させる目的で、汎用ポリカーボネート樹脂と特殊ポリカーボネート樹脂とのブレンド、又、ポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂とのブレンド等を採用することができる。
上記した特殊ポリカーボネート樹脂としては、例えば、主鎖がポリカーボネート樹脂からなり、側鎖にポリスチレン樹脂、又は変性アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂を有するグラフト重合体、具体的には、日油社製の製品名「モディパーCシリーズ」等を挙げることができる。この場合のブレンド比は、95/5〜60/40(質量比)が好適とされる。又、ポリアリレート樹脂とのブレンドの場合のブレンド比も、上記と同様の範囲とすることが好ましい。
(多層シート)
多層シートは、スキン層とコア層を有する複数層が積層されて形成される。即ち、本実施形態では、基材シートは、スキン層とコア層とからなる「少なくとも3層」構造の多層シートとして構成される。ただし、この「3層シート」とは、「少なくとも3層」を意味するものであり、3層構造に限定されるものではない。換言すれば、基材シート(多層シート)において、「3層シート」とは、説明の便宜上のものである。「3層シート」とは、「少なくとも3層以上からなるシート」を意味するものである。「3層」からなるシートに限定する趣旨ではない。つまり、3層以上の構成であれば、5層、或いは7層、さらには、それ以上の奇数層から形成されていても、多層シートに包含される。
ただし、多層シートが上述の「それ以上の奇数層」から構成される場合であっても、余りに層構成が多くなる場合には、多層シートを構成するスキン層とコア層の一層あたりの層厚が薄くなり過ぎてしまう。そのため、積層時の加熱プレス工程において、金型スティックが発生してしまう虞がある。従って、好ましくは5層、より好ましくは3層から構成される多層シートである。
即ち、本実施形態における多層シートが前述のように奇数層から構成されるのは、層構成が偶数層からなる多層シートであっても、スキン層、又はコア層が同種もしくは異種の2層以上からなる複数層の場合、それらの複数層をそれぞれ一層とするのである。結果として必ず奇数層からなる多層シートと同じ構成となる。具体的には、例えば、4層からなる透明レーザーマーキングシートでは、スキン層/コア層/コア層/スキン層のような層構成となる。奇数層から構成される多層シートと同様の構成となる。即ち、この場合、同種、又は異種の2層からなるコア層(コア層/コア層)を1層とする。
例えば、3層(いわゆる「3層シート」)から構成される多層シートを例にすると、スキン層/コア層/スキン層、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配される。そして、その2つのスキン層に挟まれるように、コア層が1層配されて多層シートが形成されることになる。又、5層から構成される多層シートの場合は、コア層とスキン層とが、スキン層/コア層/スキン層/コア層/スキン層、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配されることになる。このように、交互にスキン層とコア層を配置して、多層シートを形成してもよい。
ここで、前述のように、単層シートとして構成しても、十分なレーザー発色性を有する。ただし、より好ましいのは、前述のような多層構造を有する多層シートを形成することである。このように基材シートを、多層構造を有する多層シートとして構成することにより、単層シートよりもさらに、高出力でレーザー光エネルギーを照射し、レーザーマーキング部分の濃度を高めることができる。しかも、レーザーマーキング部分の発泡による、いわゆる「膨れ」が抑制でき、表面平滑性を維持できる。その上、レーザーマーキング部分の上層にスキン層が積層されているために、スキン層を配置しない場合と比較してレーザーマーキング部分の耐磨耗性がより向上する。
(多層シートのスキン層)
多層シートにおいて、スキン層を形成する場合、即ち「3層構造」としての多層シートを用いる場合には、そのスキン層は、3層シートの外側に配される両最外層として構成される。このスキン層は、多層シートにおけるコア層の両端面側(外側)から、挟み込むように配され、3層シートの両最外層である表層としての役割を担っている。
ここで、スキン層の厚さは、それぞれ同一であることが好ましい。電子パスポートやプラスチックカードでは、表と裏からレーザーマーキングすることが一般的である。そのため、積層体としての基材シートの、最表層と最裏層に配置され、積層されるスキン層の厚みが異なることで、レーザー光エネルギー照射によるコア層がマーキングの発泡による、いわゆる「膨れ」抑制効果、及びレーザーマーキング部分の耐磨耗性効果が異なる。従って、好ましくない。
又、例えば、スキン層/コア層/スキン層といった3層からなる多層シートとして基材シートが構成される場合であって、コア層の厚さが20%以上、80%未満である場合には、スキン層は両側で20%以上、80%未満となる。スキン層の片側における厚さが10%未満であると、レーザー光エネルギー照射によるコア層のレーザーマーキング部分が発泡する、いわゆる「膨れ」抑制、及びレーザー光エネルギー照射によるレーザーマーキング部分の耐磨耗性が向上する効果が十分でない。他方、スキン層が余りにも厚過ぎると、コア層の厚さが、必然的に薄くなり、レーザーマーキング性が劣るため好ましくない。
(多層シートのスキン層の材料)
ここで、スキン層を形成する材料は、非結晶性ポリエステル樹脂、特に共重合ポリエステル樹脂を調製してなる非結晶性の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物から形成される。
次に、スキン層を構成する非結晶性の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とする透明樹脂としてのポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位、及びエチレングリコール単位、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜20/10〜80モル%である共重合ポリエステル樹脂が使用される。この共重合ポリエステル樹脂に含まれる、エチレングリコール単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位との成分量を調製する理由は、共重合ポリエステル樹脂において、エチレングリコール単位の成分量が20モル%未満では、得られる樹脂が十分な非結晶性にならず、熱融着後の冷却工程で再結晶化が進み、熱融着性が劣る。又、90モル%を超えて得られる樹脂では十分な非結晶性にならず、熱融着後の冷却工程で再結晶化が進み、熱融着性が劣るようになる。従って、本実施形態のように、エチレングリコール単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位との成分量を調製して得られる樹脂は、十分な非結晶性になり、熱融着性の点で優れているため、望ましい樹脂といえる。
さらに、この共重合ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の約30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名「PETG」)が商業的に入手できる。
(多層シートのコア層)
多層シートのコア層は、その基材シートの中心に配される、いわゆる核層として構成される。即ち、基材シートが3層シートとしての多層シートとして構成される場合には、コア層は、両最外側に配された2つのスキン層に挟み込まれるように、3層シートの中核層として形成されている。
(多層シートのコア層の材料)
即ち、多層シートのコア層は、透明なポリカーボネート樹脂を主成分とする透明ポリカーボネート樹脂組成物から形成される。ただし、使用されるポリカーボネート樹脂は、特に制限はないが、メルトボリュームレイトが4〜20cm3/10minのものを好適に使用できる。メルトボリュームレイトが4cm3/10min未満では、シートの屈曲性、強靱性、堅牢性等のタフネス性が向上するという点では意味はあるものの、溶融押出成形による成形加工性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。又、メルトボリュームレイトが20cm3/10minを超えると、シートのタフネス性に劣ることから、好ましくない。このように多層シートのコア層を、ポリカーボネート樹脂を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物から形成することによって、レーザー光エネルギー照射によるレーザーマーキング部分が発泡する、いわゆる「膨れ」を抑制でき、しかもレーザー光エネルギー照射によるマーキング部分が食刻される、耐磨耗性を向上させることができる。
(多層シートのコア層の厚み)
ここで、多層シートのコア層の厚さとしては、全シート中に占める厚さの割合が、20%以上、80%未満になるよう形成されることが好ましい。コア層の厚み比率が20%以上となると、レーザー光エネルギー照射によるコア層のレーザーマーキング部分の厚み効果により下地白色層による未発色部とのコントラストが高まり、レーザーマーキング部分の視認性、鮮明性が向上する。他方、コア層の厚み比率が80%以上であると、スキン層が薄くなりすぎてしまう。このような多層シートから構成される基材シートを有する透明レーザーマーキングシートに、高出力でレーザー光エネルギーを照射した場合には、コア層に配合したレーザー光エネルギー吸収剤がレーザー光エネルギーを吸収して熱に変換し、高熱が発生してしまう。そのため、レーザー光エネルギー照射部における、いわゆる「膨れ」抑制効果に乏しくなり好ましくない。仮に、レーザー光エネルギーの出力を調整して、好ましいレーザー発色を得たとしても、スキン層の厚みが前述の所望範囲内であるものと比較して、レーザーマーキング部分が食刻される、耐磨耗性が十分でなく好ましくない。
又、コア層の厚み比率が80%以上であると、透明レーザーマーキングシートが積層される別のシート等との全体の厚さが規定されることから、相対的にスキン層も薄くなってしまう。この場合には、仮に、スキン層に滑剤が混合されていても、積層工程における加熱プレス工程において金型に貼りつくという金型スティックの問題が発生するので好ましくない。又、コア層の厚み比率が20%未満となると、積層工程において、スキン層が厚いため金型スティックの問題が発生しないが、レーザーマーキング性が劣ったり、耐熱性が乏しくなるためシートにソリが生じて好ましくない。又、レーザーマーキング性が劣るため好ましくない。より好ましい多層シートのコア層の厚さは、40%以上、75%未満である。
(基材シートの厚さ)
又、基材シートの厚さは、単層シートの場合には、50〜200μmであることが好ましい。単層シートの厚さが、50μm未満であると、レーザー光エネルギー吸収剤の配合量が少なくなり、レーザーマーキング性が不十分となり好ましくない。一方、単層シートの厚さが200μmを超えると、厚くなりすぎてしまい、取り扱い等が不便になる等、実用に供し難くなる。例えば、200μmを超えた単層シートと、これに積層するコア用多層シートとからなるレーザーマーキング多層シート(積層体)を用いて、電子パスポート用の多層シートを、積層成形した場合には、全最大厚さが800μmを超えてしまう。
又、基材シートがスキン層とコア層からなる多層シート(いわゆる3層シート)として構成される場合には、多層シートの全厚さは、50〜200μmからなることが好ましい。
このように単層シートを、基材シートとする場合には、或いは多層シートを基材シートとする場合には、基材シートにおける全体の厚さを所望の厚さとすることにより、透明レーザーマーキングシートの特性を引き出しやすくなる。さらに、多層シート全体の全厚さだけに限らず、多層シートを構成するスキン層、及びコア層の多層シートに占める厚さの割合も前述の所望の割合にすることにより、多層シート全体の厚さを所望範囲内にすることと相俟って、レーザーマーキング性を向上させやすくなる。
(レーザー光エネルギー吸収剤)
又、透明レーザーマーキングシートを構成する基材シートには、レーザー光エネルギー吸収剤が含まれる。このように構成することにより、レーザーマークした際のレーザー発色性に優れ、地肌部とレーザーマーキング部分とのコントラストが高くなり、鮮明な文字、図形、記号、又は情報が得られる。なお、「地肌部」とは、レーザーマーキングされていない部分をいい、以下でも同様である。
さらに、基材シートが単層シートとして構成される場合には、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂100質量部に対して、レーザー光エネルギー吸収剤を0.0005〜1質量部含有させることがより好ましい。又、基材シートが多層シートとして構成される場合には、そのコア層の、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、レーザー光エネルギー吸収剤を0.0005〜1質量部含有させることがより好ましい。このように、レーザー光エネルギー吸収剤を含有させることにより、レーザーマークした際のレーザー発色性に優れ、地肌部とレーザーマーキング部分とのコントラストが確実に高くなり、より鮮明な文字、図形、記号、又は情報が得られる。
一方、レーザー光エネルギー吸収剤の含有量が1質量部を超えると透明レーザーマーキングシートの透明性が低下する。さらに、レーザー光エネルギーを照射した際に、吸収エネルギー量が多くなりすぎ、樹脂を劣化させるようになる。その結果、十分なコントラストが得られない。さらに、レーザー光エネルギー吸収剤の含有量が1質量部を超えると、異常な発熱を生じる虞がある。異常な発熱が生じると、シートを構成する樹脂の分解、発泡が発生し、所望のレーザーマーキングができない。他方、レーザー光エネルギー吸収剤の含有量が0.0005質量部未満では、地肌部とレーザーマーキング部分との十分なコントラストが得られない。
さらに、上記したレーザー光エネルギー吸収剤としては、レーザー光エネルギーを吸収して、地肌部と異なる色彩、色調、明度に変化させることができるものであれば特に制限はない。具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。好ましいレーザー光エネルギー吸収剤は、カーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物から選択される少なくとも1種以上である。より好ましいレーザー光エネルギー吸収剤は、カーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物から選ばれる少なくとも1種、又は2種以上である。
ここで、レーザー光エネルギー吸収剤としてのカーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物の平均粒子径は、150nm未満であることが好ましい。より好ましくは100nm未満である。さらに、平均粒子径が10〜90nmで、ジブチルフタレート(DBT)吸油量が60〜170ml/100grのカーボンブラック、又はカーボンブラックと平均粒子径が150nm未満のチタンブラック、又は金属酸化物の併用が好ましい。レーザー光エネルギー吸収剤の平均粒子径が150nmを超えると透明レーザーマーキングシートの透明性が低下して好ましくない。又、透明レーザーマーキングシート表面に大きな凹凸が発生したりすることがあり好ましくない。さらにカーボンブラックの平均粒子径が10nm未満では、レーザー発色性が低下すると共に、微細すぎて取り扱いに難があり、好ましくない。又、DBT吸油量が60ml/100gr未満では分散性が悪く、170ml/100grを超えると隠蔽性に劣るため好ましくない。
又、レーザー光エネルギー吸収剤である金属酸化物における、酸化物を形成する金属としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、チタン、珪素、アンチモン、錫、鉛、銅、マンガン、コバルト、バナジウム、ビスマス、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、タングステン、パラジウム、銀、及び白金等が挙げられる。さらに、複合金属酸化物としては、ITO、ATO、及びAZO等が挙げられる。
さらに、レーザー光エネルギー吸収剤である金属硫化物としては、硫化亜鉛、及び硫化カドミニウム等が挙げられる。さらに金属窒化物としては、窒化チタン等を挙げることができる。又、金属蓚酸化物としては、蓚酸マグネシウム、及び蓚酸銅等を挙げることができる。さらに金属炭酸化物としては、塩基性炭酸銅等を挙げることができる。
又、レーザー光エネルギー吸収剤の添加量(配合量)は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂100質量部に対して、カーボンブラックの場合、0.0005〜1質量部添加(配合)することがさらに好ましい。最も好ましくは0.0008〜0.1質量部である。又、カーボンブラックと平均粒子径150nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物から選ばれた少なくとも1種とを併用する場合にはその混合物の添加量が0.0005〜1質量部添加されることがさらに好ましい。最も好ましくは0.0008〜0.5質量部である。
このように、レーザー光エネルギー吸収剤の添加量を所望量に調製するのは、透明レーザーマーキングシートは透明であることが好ましいからである。即ち、透明レーザーマーキングシートを電子パスポートに使用する場合、印刷を施した白色シート(印刷インレイシート)(以下、文字、図形等の印刷を施した白色シートの印刷を、適宜「印刷部」という)上に、オーバーレイとよばれる層を形成する、透明レーザーマーキングシートを積層する等して使用される。この場合に、印刷が施されていない部分のオーバーレイにレーザー光エネルギーを照射し、黒色発色させて、文字、図形、記号、又は情報をマーキングさせ、印刷部でのデザイン性とレーザーマーキングによる偽造防止効果を組合せて使用することが多い。
上記のように組合せて使用することで、その下地層が白色故に、印刷部の鮮明性、及びレーザーマーキング部分の黒/白コントラストにより鮮明な文字、図形、記号、又は情報を得ることができる。換言すれば、前述の印刷インレイシート上に積層されるオーバーレイの透明性が劣ると、印刷された画像、文字等が不鮮明となること、及びレーザーマーキング部分の黒/白コントラストが劣ること等から実用上問題となる。そのために平均粒子径の小さいカーボンブラックが好ましく用いられ、又カーボンブラックとチタンブラック、他の金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物から選ばれた少なくとも1種との混合物をレーザー光エネルギー吸収剤として用いる場合も、これら金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物の平均粒子径が少なくとも150nm未満、好ましくは100nm未満とするのである。
(滑剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤)
又、本実施形態では、透明レーザーマーキングシートを構成する基材シートに滑剤を含有させることが好ましい。透明レーザーマーキングシートが多層シートからなる場合には、スキン層に滑剤を含有させることが好ましい。滑剤を含有させることにより、成形加熱プレス時にプレス板への融着を防ぐことができる。
滑材としては、脂肪酸エステル系滑材、脂肪酸アマイド系滑材、及び脂肪酸金属塩系滑材等が挙げられ、それらから選ばれる少なくとも1種の滑剤が添加されることが好ましい。
上記した脂肪酸エステル系滑剤としては、ブチルステアレート、セチルパルミレート、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、モンタンワックス酸のエステル、ロウエステル、ジカルボン酸エステル、及び複合エステル等が挙げられる。又、脂肪酸アマイド系滑剤としては、ステアリン酸アマイド、及びエチレンビスステアリルアマイド等が挙げられる。さらに、脂肪酸金属塩系滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミウム、及びステアリン酸バリウム等が挙げられる。
さらに、本実施形態では、透明レーザーマーキングシートの基材シートが、単層シートとして構成される場合には、必要に応じて、酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種、及び、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種を含有させることも好ましい。又、透明レーザーマーキングシートの基材シートが、多層シートとして構成される場合にも、スキン層及びコア層の少なくとも1層に、必要に応じて、酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種、及び、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種を含有させることも好ましい。酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種を添加(配合)することは、成形加工時における分子量低下による物性低下、及び色相安定化に有効に作用する。ここで、この酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種としては、フェノール系酸化防止剤や亜燐酸エステル系着色防止剤が使用される。又、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種を添加(配合)することは、透明レーザーマーキングシートの保管時、及び最終製品である電子パスポート、プラスチックカードの実際の使用時における耐光劣化性の抑制に有効に作用する。このような紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、及び環状イミノエステル系紫外線吸収剤等を使用することができる。
上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を使用することができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−t−ブチル−4−メチル6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等を挙げることができる。
なお、これらの例示の中でも、とりわけ、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンが好適であり、特にn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独、又は2種以上を組合せて使用することができる。
又、着色防止剤としては、亜燐酸エステル系化合物を挙げることができ、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が例示される。
さらに、着色防止剤における他のホスファイト化合物としては、二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、及び2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト等を挙げることができる。
上記した着色防止剤の中でも、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトは、純度が極めて高く、耐加水分解性、耐揮散性に優れることから特に好ましい。亜燐酸エステル系着色防止剤は、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。又フェノール系酸化防止剤と併用してもよい。
前述の紫外線吸収剤である、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、及び環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、以下のものを具体的に例示できる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表される化合物を挙げることができる。
又、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、及び2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール等を挙げることができる。
さらに、環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m(2)−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、及び2,2’−4,4’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等を挙げることができる。
又、光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、及びポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサン等に代表されるヒンダードアミン系化合物も使用することができる。かかる光安定剤は前記紫外線吸収剤や場合によっては各種酸化防止剤との併用において、耐候性等の点においてより良好な性能を発揮する。
さらに好ましくは、透明レーザーマーキングシートを構成する基材シートが単層シートであれば、基剤シートが、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、滑剤0.01〜3質量部を含んでなる透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる。さらに透明レーザーマーキングシートを構成する基剤シートがポリカーボネート樹脂を主成分とする透明ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種を0.1〜5質量部含み、及び、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種を0.1〜5質量部含むことである。
さらに、透明レーザーマーキングシートを構成する基材シートが多層シート(いわゆる3層シート)であれば、透明レーザーマーキングシートを構成する基材シートにおける多層シートのスキン層が非結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする透明樹脂100質量部に対して、滑剤0.01〜3質量部含んでなる透明ポリカーボネート樹脂組成物からなり、さらに、多層シートのスキン層、及びコア層の少なくとも1層が、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種を0.1〜5質量部、及び、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種を0.1〜5質量部含有することである。
ここで、滑剤の添加量としては0.01〜3質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部である。滑剤の添加量が、0.01質量部未満では加熱プレス時にプレス板に融着してしまい、3質量部を超えると電子パスポートやプラスチックカードの多層積層加熱プレス時に層間熱融着性に問題が生じるため好ましくない。さらに、酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種の添加量が0.1質量部未満では、溶融押出成形する工程でのポリカーボネート樹脂の熱酸化反応、及びそれに起因する熱変色といった不具合が生じやすい。又、5質量部を超えると、これら添加剤のブリードといった不具合が生じやすいため好ましくない。さらに、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種の添加量が、0.1質量部未満では、その効果に乏しく耐光劣化、それに伴う変色といった不具合が生じやすい。さらに、5質量部を超えると、これら添加剤のブリードといった不具合が生じやすいため好ましくない。
なお、電子パスポートやプラスチックカード等の多層シートの融着性と隠蔽性、レーザーマーキング部分とのコントラストは、多層シートの実用化や生産性、市場のニーズ等に応え得るものであるか等極めて重要な要素となる。
(基材シートの成形方法)
本発明において、透明レーザーマーキングシートを構成する基材シートを得るには、例えば、単層シートの場合には、透明ポリカーボネート樹脂組成物を溶融押出成形する方法を採用することができる。又、多層シートの場合には、各層を構成する樹脂組成物を溶融押出成形する方法、各層を構成するものをフィルム状に形成し、これをラミネートする方法、2層を溶融押出して形成し、これに別途形成したフィルムをラミネートする方法等があるが、生産面、コストの面から溶融押出成形により積層一体化することが好ましい。
具体的には、多層シートの場合、各層を構成する樹脂組成物をそれぞれ配合し、或いは必要に応じてペレット状にして、Tダイを共有連結した3層Tダイ押出機の各ホッパーにそれぞれ投入する。そして、温度200〜300℃の範囲で溶融して3層Tダイ溶融押出成形する。成形後、冷却ロール等で冷却固化して、3層シートを形成することができる。なお、上記方法に限定されることなく、公知の方法により形成することができる。例えば、特開平10−71763号第(6)〜(7)頁の記載に従って得ることができる。
(全光線透過率)
さらに、基材シートの全光線透過率が70%以上であることが好ましく、より好ましいのは85%以上である。例えば、本発明の透明レーザーマーキングシートを、電子パスポートに使用する場合には、それらの用途では印刷を施すことが一般的である。そのため、本実施形態の透明レーザーマーキングシートの下部に、印刷インレイシートを積層する等して、最外層である透明レーザーマーキングシートの前記印刷インレイシートの印刷部にあたらない非印刷部にレーザー光エネルギーを照射し、黒色発色させて、文字、図形、記号、又は情報をマーキングさせ、印刷部でのデザイン性とレーザーマーキングによる偽造防止を組合せて使用することが多い。このように組合せることで、その下地層が白い故に、印刷部の鮮明性、及びレーザーマーキング部分の黒/地肌色コントラストにより鮮明な文字、図形、記号、又は情報を得ることができる。即ち、白色シート等を積層する場合には、この最外層の透明性を前述の所望範囲の全光線透過率にすることにより、これらの効果を最大限に発揮させられる。即ち、黒/白コントラストの鮮明性を際立たせることができる。換言すれば、この最外層の透明性は印刷部の鮮明性、及びレーザーマーキング部分の黒/白コントラストの鮮明性を確保する上で重要であり、全光線透過率が70%未満では黒/白コントラストが不十分となり十分なマーキング性が確保できない問題が生じることと、印刷は下地白色シート上に施すために、この印刷の視認性に問題を生じるため好ましくない。
ここで、「全光線透過率」とは、シート、フィルム、膜等に入射した光のうち、透過する光の割合を示す指標であり、入射した光がすべて透過する場合の全光線透過率は100%である。なお、本明細書中の、「全光線透過率」は、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠して測定した値を示したものであり、この全光線透過率の測定は、例えば、ヘイズメーター(日本電色工業社製、商品名「NDH 2000」)、分光光度計(マクベス社製、商品名「EYE7000」)等を用いて測定することができる。
例えば、図1に示されるように、これまで説明した、単層シートとしての基材シート2と、その基材シート2の片面に接着剤層3を設けてなる透明レーザーマーキングシート1(1A)を例示できる。
又、図2に示されるように、これまで説明した、スキン層4と、コア層5を有する、多層シートとしての基材シート20と、この基材シート20に接着剤層3を設けてなる透明レーザーマーキングシート1(1B)を例示できる。
[II]電子パスポート用レーザーマーキングシート:
次に、これまで説明した透明レーザマーキングシートを使用した、電子パスポート用レーザーマーキングシートについて説明する。ただし、これは一例であって限定されるものではない。
まず、電子パスポート用レーザーマーキングシートの第1の態様としては、図3に示される電子パスポート用レーザーマーキングシート100(100A)を挙げることができる。即ち、電子パスポート用レーザーマーキングシート100(100A)は、基材シートが単層シートとして構成される透明レーザーマーキングシート1(1A)/コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6/基材シートが単層シートとして構成される透明レーザーマーキングシート1(1A)の5層を積層する構成を有する電子パスポート用レーザーマーキングシートである。前記透明レーザーマーキングシート1(1A)は、これまで説明した通り、基材シート2の少なくとも片面に、接着剤層3を設けてなる透明レーザーマーキングシートである。即ち、前記基材シート2は、ポリカーボネート樹脂、及びレーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる単層シートとして構成される。さらに、接着剤層3は、ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤から形成されると共に、1〜20μmの厚さを有する層として構成される、透明レーザーマーキングシートである。綴じシート10については、後述する。
又、コア用多層シート6は、スキン層7とコア層8を有し、溶融押出成形により少なくとも3層のシートが積層されて形成されるシートである。このコア用多層シート6の両最外層である前記スキン層7が、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂からなる。さらに、前記コア用多層シート6のコア層8が、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂からなる。このスキン層7、及びコア層8の少なくとも1層には、前記共重合ポリエステル樹脂100質量部、及び/又は前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、染顔料の少なくとも1種以上を1質量部以上含有させている。さらに、前記コア用多層シート6の全厚さが50〜200μmからなると共に、前記コア層8の厚さの、前記コア用多層シート6の全厚さに対して占める厚み比率が20%以上、80%未満からなる。以上のように構成される電子パスポート用レーザーマーキングシートを挙げることができる。
又、電子パスポート用レーザーマーキングシートの応用例としては、図4に示される電子パスポート用レーザーマーキングシート100(100B)を挙げることができる。即ち、電子パスポート用レーザーマーキングシート100(100B)は、透明レーザーマーキングシート1(1B)/コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1B)の5層を積層する構成を有する電子パスポート用レーザーマーキングシートである。前記透明レーザーマーキングシート1(1B)は、これまで説明した通り、スキン層4とコア層5から構成される基材シート20の少なくとも片面に、接着剤層3を設けてなる透明レーザーマーキングシートである。さらに、前記基材シート20は、スキン層4とコア層5を有し、両最外層である前記スキン層4が、非結晶性ポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなり、且つ、前記コア層5が、ポリカーボネート樹脂、及びレーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる多層シートとして構成される。さらに、接着剤層3は、ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤から形成されると共に、1〜20μmの厚さを有する層として構成される、透明レーザーマーキングシートである。
さらに、コア用多層シート6は、上記と同様に、スキン層7とコア層8を有し、溶融押出成形により少なくとも3層のシートが積層されて形成されるシートである。このコア用多層シート6の両最外層である前記スキン層7が、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂からなる。さらに、前記コア用多層シート6のコア層8が、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂からなり、このスキン層、及びコア層の少なくとも1層には、前記共重合ポリエステル樹脂100質量部、及び/又は前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、染顔料の少なくとも1種以上を1質量部以上含有させている。さらに、前記多層シート6の全厚さが50〜200μmからなると共に、前記コア層8の厚さの、前記コア用多層シート6の全厚さに対して占める厚み比率が20%以上、80%未満からなる。以上のように構成される電子パスポート用レーザーマーキングシートを挙げることができる。なお、図4に示されるコア用多層シート6、綴じシート10は、図3と同様のシートを用いている。
(コア用多層シート)
ここで、コア用多層シート6は、スキン層7とコア層8とからなる少なくとも3層構造のシート(3層シート)として構成され、溶融押出成形により積層形成される。即ち、このコア用多層シート6も、透明レーザーマーキングシート1(1B)を構成する基材シート20と同様に、3層以上の構成からなれば、5層から構成されても、7層から構成されても、或いはそれ以上の奇数層から形成されていてもよく、スキン層7の間に、コア層8が挟まれるように配されていればよい。
一方、コア用多層シート6が、余りに多層構造からなる場合には、配されるスキン層7とコア層8との一層あたりの層厚が薄くなり過ぎてしまう。その場合には、本発明に係る透明レーザーマーキングシートとの加熱融着性が劣る問題が発生する。従って、5層、より好ましいのは3層から構成されるコア用多層シートである。
例えば、3層から構成されるコア用多層シートを例にすると、スキン層/コア層/スキン層のような層配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配される。そして、その2つのスキン層に挟まれるように、コア層が1層配されてコア用多層シートが形成されることになる。又、5層から構成されるコア用多層シートを例にすると、スキン層/コア層/スキン層/コア層/スキン層、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配される。且つ、交互にスキン層とコア層を配列して、コア用多層シートを形成してもよい。このように多層構造を有するコア用多層シートを形成することにより、十分な加熱融着性が確保できる。
(コア用多層シートの厚さ)
ここで、コア用多層シート6の全厚さ(総厚さ)は50〜200μmからなる共に、コア用多層シート6の全厚さに対して占める、前記コア用多層シート6のコア層8の厚さの割合が20%以上、80%未満からなることが好ましい。コア用多層シート6の全厚さが、50μm未満であると、必然的にコア用多層シート6のスキン層7が薄くなる。この場合には、多層シート積層工程における加熱融着時に最外層に積層される透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)と、コア用多層シート6間の加熱融着性が確保できない。又、コア用多層シート6の全厚さが、200μmを超えると、その200μmを超えたコア用多層シート6を用いて、電子パスポート用レーザーマーキングシートを成形した場合、全厚みが厚くなり過ぎ、使い勝手が劣る。
コア用多層シート6のスキン層7の厚さがあまりにも薄いと、多層シート積層工程における加熱融着時に、最外層に積層される透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)と、コア用多層シート6間の加熱融着性が確保できない。一方、コア用多層シート6のスキン層7が厚すぎると、後述するコア用多層シート6のコア層8の厚さが、必然的に薄くなってしまう。この場合には、コア用多層シート6上に印刷する場合の隠蔽性の確保ができない。さらには、コア用多層シート6のスキン層7に、着色剤を入れない場合には、最外層である透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)に、レーザー光エネルギー照射により黒色マーキングを行った場合のコントラストを確保してレーザーマーキング部分の視認性、鮮明性を確保することができないという問題が生じて好ましくない。
このように、コア用多層シート6全体の厚さを所望の厚さとすることにより、コア用多層シート6の特性といった局所的な特性を引き出しやすくなる。さらに、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、及びコア用多層シート6からなる電子パスポート用レーザーマーキングシートの特性を引き出しやすくなる。さらに、このコア用多層シート6全体の総厚さだけに限らず、コア用多層シート6を構成する、スキン層7、及びコア層8の、コア用多層シート6に占める厚さの割合も、夫々前述の所望の割合にすることにより、コア用多層シート6全体の厚さを所望範囲内にすることと相俟って、コントラスト性を向上させやすくなる等の効果をより発揮させるため好ましい。
(コア用多層シートにおけるスキン層)
さらに、コア用多層シート6におけるスキン層7の厚さは、それぞれ同一であることが好ましい。それぞれ異なる厚さのスキン層から、コア用多層シート6を構成すると、多層シート積層工程における加熱融着時に最外層透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)と、コア用多層シート6間の加熱融着性のバラツキの要因となり好ましくない。さらに、加熱プレス後の積層体に、ソリが発生することがあり好ましくない。
又、コア用多層シート6におけるスキン層7が余りにも薄いと熱融着性の低下が生じる。又、前述したとおり、コア用多層シート6におけるスキン層7の厚さが、余りにも厚すぎると、コア用多層シート6におけるコア層6の厚さが、必然的に薄くなってしまう。ここで、コア用多層シート6のコア層8のみに着色剤を配合すると、1台の押出機のみに着色剤入りの樹脂を投入するだけでよいので、コア用多層シート6の、スキン層7とコア層8に着色剤を配合した場合よりも、シート生産後のクリーンアップ時の着色剤の洗浄が極端にいえば半分の手間で済む。しかし、コア用多層シート6上に、一部分、又は全面印刷した場合の隠蔽性が不足する。又、コア用多層シート6の、スキン層7とコア層8に着色剤を配合すると、前述した隠蔽性の問題は生じない。しかし、例えば、2種の樹脂による3層シート溶融押出成形には2台の押出機を使用するが、この2台の押出機には着色剤入りの樹脂を投入することとなる。この場合には、2種3層溶融押出成形により成形されたシート生産後のクリーンアップ時の着色剤の洗浄に、多大の手間、時間を要し、生産性とコスト的な問題が生じやすい。従って、前述のような所望範囲内で、コア用多層シート6の全厚さ(総厚さ)を、及びコア用多層シート6の全厚さに対して占めるコア層8の厚さの割合を、選定することが好ましい。
ここで、コア用多層シート6におけるスキン層7を形成する材料としては、前述したポリエステル系樹脂組成物を挙げることができる。即ち、スキン層7は、共重合ポリエステル樹脂を調製した、実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる層として形成されることが好ましい。例えば、商業的に入手することができるポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の約30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名「PETG」)を挙げることができる。
(コア用多層シートにおけるコア層)
又、コア用多層シート6におけるコア層8は、3層シートの中心に配される、いわゆる核層として構成される。即ち、このコア層8は、両最外側に配された2つのスキン層7に挟み込まれるように、3層シートの中核層として形成されている。このコア層8の厚さとしては、全シート中に占める厚さの割合が、20%以上、80%未満になるよう形成されることが好ましい。より好ましい範囲は、40%以上75%未満である。コア層8の厚み比率が80%以上となると、コア用多層シート6の総厚みが50〜200μmと薄いため、相対的にスキン層も薄くなってしまい、多層シート積層工程における加熱融着時に最外層である透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、及び透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)と、コア用多層シート6間の加熱融着性のバラツキの要因となり好ましくない。又、コア層8の厚み比率が20%未満では、コア用多層シート6上に印刷する場合の隠蔽性が確保できない。さらには、最外層である透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)にレーザー光エネルギー照射により黒色マーキングを行った場合のコントラストを確保してレーザーマーキング部分の視認性、鮮明性を確保することができないという問題が生じて好ましくない。
コア用多層シート6におけるコア層8を構成する材料(素材)としては、上記と同様にポリカーボネート樹脂、特に透明なポリカーボネート樹脂が使用される。ただし、使用されるポリカーボネート樹脂は特に制限はないが、メルトボリュームレイトが4〜20cm3/10minのものを好適に使用できる。メルトボリュームレイトが4cm3/10min未満では、シートのタフネス性が向上するという点では意味はあるものの、成形加工性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。又メルトボリュームレイトが20cm3/10minを超えると、シートのタフネス性に劣るようになることから、好ましくない。
(コア用多層シートにおける着色剤)
コア用多層シート6のスキン層7、及びコア層8の少なくとも1層には、前記共重合ポリエステル樹脂100質量部、及び/又は前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、染料、顔料等の樹脂の着色剤の少なくとも1種以上を1質量部以上含有させていることが好ましい。この点で、接着剤層を設けてなる透明レーザーマーキングシート1(1B)を構成する基材シート20と異なる。このように着色系染料、顔料等の樹脂の着色剤を1質量部以上配合するのは、後述するように、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)と、着色多層シートとして機能するコア用多層シート6を、積層させた後、レーザー光エネルギーを照射してマーキングする場合に、コントラストが良好になるためである。さらに、コア用多層シート6上に印刷する場合の隠蔽性を確保するためである。
この着色系染料、顔料等の樹脂の着色剤としては、白色顔料として酸化チタン、酸化バリウム、酸化亜鉛、黄色顔料として酸化鉄、チタンイエロー、赤色顔料として、酸化鉄、青色顔料としてコバルトブルー群青等が挙げられる。ただし、コントラスト性を高めるため、薄い色付、淡彩色系となるものが好ましい。
上記した着色剤の中でも、より好ましいのはコントラスト性の際立つ、白色系染料、顔料等の樹脂の着色剤が添加されることである。
さらに、コア用多層シート6における、コア層8、及びスキン層7の少なくとも1層が、共重合ポリエステル樹脂、又はポリカーボネート樹脂100質量部に対して、酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種を0.1〜5質量部、及び、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種を0.1〜5質量部含有することも好ましい形態の一つである。酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種を添加(配合)させる場合には、成形加工時における分子量低下による物性低下、及び色相安定化に有効に作用する。又、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種を添加(配合)させる場合には、電子パスポート用レーザーマーキングシートの保管時、及び最終製品である電子パスポートの実際の使用時における耐光劣化性を抑制に有効に作用するから好ましい。即ち、このような構成にすることにより、適宜選択的に、酸化防止剤、及び着色防止剤の少なくとも1種、及び、紫外線吸収剤、及び光安定剤の少なくとも1種を所望量含有させることができる。加えて、適宜、含有させる領域を選択できるため、シート全体として相乗的に本発明の効果をより奏することができる。
なお、コア用多層シート6の滑材、酸化防止剤、及び着色防止剤等は、前述した透明レーザーマーキングシートに含有される滑材、酸化防止剤、及び着色防止剤と同じである。そのため、透明レーザーマーキングシートに係る説明を参照されたい。
(綴じシート)
電子パスポート用レーザーマーキングシートにおける綴じシート10は、(1)透明レーザーマーキングシートに、レーザーマーキングにより書き込んだ文字、図形、記号、又は情報、(2)前述のコア用多層シート6に印刷等により印刷した画像、文字等の情報、さらには(3)例えば、各種の情報等を、ICチップ等の記憶媒体に記憶させて配設したシート、いわゆるインレットシートに配設するICチップ等の記憶媒体に記憶させた各種の情報を、パスポートの表紙と他のビザシート等と一体に堅固に綴じるために、非常に重要な役割を担うシートである。そのため、堅固な加熱融着性、適度な柔軟性、加熱融着工程での耐熱性等が必要となる。例えば、この綴じシート10を(パスポートの)表紙等にミシン綴じをする場合には、ミシン部の引裂き、引張強度に優れ、且つ、この綴じ部の耐光、耐熱性を有することが要求される。さらには、繰り返し曲げに対する抵抗性、言い換えるとヒンジ特性に優れることが要求される。従って、このような目的に合致する綴じシート10としては、下記素材が好適に用いられる。
このような役割を果たす綴じシート10は、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマーから選ばれる少なくとも1種から形成されるシートとして構成されることが好ましい。又、綴じシート10が、ポリエステル樹脂、及び/又はポリアミド樹脂の織物、前記織物と熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマーから選ばれる少なくとも1種から形成されるシートからなるラミネートシートとして構成されることも好ましい。
(綴じシートの寸法)
又、綴じシート10は、前記したように電子パスポートに綴じやすくするために用いられる。従って、綴じ込みし易い形状、大きさ等であれば、とくに形状や、長さ寸法等は限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択することができる。
より好ましくは、綴じシート10が、その厚さが50〜500μm、好ましくは50〜250μmであるものである。綴じシート10の厚さが50μm未満では、ミシン綴じ部の強度が不足するため、電子パスポートから、個人の文字、図形、記号、又は情報等の個人情報がレーザーマーキングされた多層シートが剥がされる懸念がある。又、500μmを超えるとシートの剛性が大きくなりすぎ、不使用時においても電子パスポートが自然に開いた状態になるという問題がある。
(綴じシートの張り出し部)
さらに、図5に示されるように、綴じシート10の一端を、前記透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、及びコア用多層シート6から張り出すようにして、張り出し部11を形成することが好ましい。このように構成されることにより、より一層、この張り出し部を用いてミシン綴じ若しくは接着により、或いはミシン綴じ、及び接着により、電子パスポートに組み付けしやすくなる。
ここで、張り出し部の長さは、ミシン綴じ若しくは接着作業性と、或いはミシン綴じ、及び接着作業性と、ミシン綴じ部の強度、及び接着強度により決められることが好ましい。具体的には、張り出し部の長さが、5〜100mmであることが好ましく、より好ましくは5〜50mm、さらに好ましくは5〜20mmである。
綴じシート10に張り出し部を形成することにより電子パスポートに組み付けやすくなる。この張り出し部は、綴じシート10の長手方向の一端を透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、及びコア用多層シート6よりも長い張り出し部を用いて、ミシン綴じ、若しくは接着により、或いはミシン綴じ、及び接着により、電子パスポートに組み付けるためのものである。図中、12は、ミシン綴じ部である。
なお、綴じシート10の熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、又は熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる場合には、必要に応じて、張り出し部以外の部分の片面、或いは両面に、熱可塑性接着剤、又は熱硬化性接着剤が塗布されていても差し支えない。熱可塑性接着剤、又は熱硬化性接着剤が塗布される場合には、これら熱可塑性接着剤、又は熱硬化性接着剤の塗布厚みは0.1〜20μmであることが好ましい。このようにすることにより、接着強度を有することができ、成形時の不具合を抑制できる。一方、接着剤の塗布厚みが、0.1μm未満では十分な接着強度が発現できない。又、接着剤の塗布厚みが、20μmを超えると全体が厚くなりすぎたり、加熱プレス時にこれら接着剤がはみ出したりする問題が生じて好ましくない。
さらに、綴じシート10が織物の場合には、織物を構成する繊維の繊維径が40〜250μmのものが好ましい。メッシュオープニングのある場合は、繊維径が60〜300μmであることがより好ましい。前述のような所望寸法に成形することで、電子パスポート用レーザーマーキングシートを成形し易くなるだけでなく、製造し易いものとなる。なお、織物には目をつめて編みこんだ織物、開口部(メッシュオープニング)を有する織物のいずれも使用できる。
又、綴じシート10としては、フラットヤーンからなり、開口部を有する織物状シート(メッシュクロス、又は不織布)と、前記織物状シートの開口部を熱可塑性エラストマー、又は熱可塑性エラストマーの混合物で閉塞させた複合ヒンジシートが好適に使用することができる。ここで、前記織物状シートは、縦糸と横糸の複数本の糸から構成される2軸構造体、又は縦糸、横糸、及び斜糸の複数本の糸から構成される3軸構造体であって、前記縦糸、横糸、又は斜糸の複数本の糸のうち、少なくとも1種類の糸が、フラットな断面を有するフラットヤーンからなるものが好ましい。このような構造の綴じシートは、綴じ部の引き裂き強度、引張り強度に優れる。とくに、複合ヒンジシートがパスポート本体から引きちぎられることを未然に、且つ、確実に防止できる。加えて、柔軟性を失うことなく、繰り返しの曲げに対しても十分な強度を有し、実際の使用時における耐光劣化性等の経時安定性に優れる。
さらに、綴じシート10としては、熱可塑性樹脂からなるシートと、ヒンジシートとが、点接着又は線接着により接合されて連結されているコンビネーションシートを使用することもできる。前記シートを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート系樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とのポリマーアロイ、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性アクリルエラストマー、熱可塑性エチレン酢酸ビニル共重合エラストマー等が例示される。又、ヒンジシートとしては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂から選択される少なくとも1種からなる織物、編物、又は不織布と、前記した熱可塑性エラストマー、又は前記熱可塑性エラストマーを含む混合物から形成された複合ヒンジシートを挙げることができる。さらに、前記織物、編物、又は不織布としては、糸の断面が、円形、楕円形又は四角形の、縦糸と横糸の複数本の糸から構成される2軸構造体、又は縦糸と横糸及び斜糸の複数本の糸から構成される3軸構造体を挙げることができる。このコンビネーションシートによれば、成形性、加工性、及び汎用性を兼ね揃え、加熱融着性、柔軟性、強靭性、耐熱性、成形性、加工性といった熱可塑性樹脂からなるシートが有する特性と、耐引裂き性、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性、加熱融着性、加工性、寸法精度といったヒンジシートが有する特性を、合わせ有することができる。
ここで、図5は、本発明の透明レーザーマーキングシートの電子パスポートへの応用例の一実施形態を示す模式図である。具体的には、電子パスポートの表紙、又は裏表紙に綴じるための綴じシートの両面に、コア用多層シート、及び透明レーザーマーキングシートを積層一体化してなる電子パスポート用レーザーマーキングシートの断面を模式的に示した図である。
(コア用多層シート、及び電子パスポート用レーザーマーキングシートの製造方法)
本発明において、コア用多層シート6を得るには、透明レーザーマーキングシートを構成する多層シート20と同様に、例えば、各層を構成する樹脂組成物を溶融押出成形して積層する方法、各層を形成する樹脂組成物をフィルム状に成形し、これをラミネートする方法、2層を溶融押出して形成し、これに別途形成したフィルムをラミネートする方法等があるが、生産面、コスト面から溶融押出成形により積層一体化することが好ましい。
具体的には、各層の樹脂組成物をそれぞれ配合し、或いは必要に応じてペレット状にして、Tダイを共有連結した3層Tダイ押出機の各ホッパーにそれぞれ投入し、温度200〜300℃の範囲で溶融して3層Tダイ溶融押出成形し、冷却ロール等で冷却固化して、3層積層体を形成することができる。
上述のようにして得られた透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、コア用多層シート6を所定の寸法に切断した後、積層する。この積層に際しては、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)に設けた接着剤層3が、コア用多層シート6と接するように配置をする。このように配置をすることによって、透明レーザーマーキングシート(1A,1B)とコア用多層シート6を強固に一体化することができる。ここで所望時間、所望圧力で、所望温度で加熱融着等によって接合して、図3〜5に示すような一体化されたシートを得ることができる。
又、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、及びコア用多層シート6を、各々溶融共押出成形にて、2種3層シートを押出成形する。このようにして押出成形した後、ロール状に巻き取りしたロール状シートを所定温度に加熱した加熱ローラー間に通す。例えば、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、又はコア用多層シート6/ポリエステルエラストマー等のシート、又はポリエステルメッシュクロス/コア用多層シート6を通して、加熱、加圧ローラーにて加熱、加圧により長尺の積層体シートを製造した後、所定の寸法に裁断する方法等によって製造するとよい。なお、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)の接着剤層3は、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)における基材シート2,20を溶融押出成形後、その少なくとも片面に、ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤をコーティング(塗布)して、接着剤層3を形成する。その接着剤層3を形成した側に、コア用多層シート6が接するようにして、加熱、加圧して、成形するとよい。
さらに、前記透明レーザーマーキングシー1(1A,1B)、及びコア用多層シート6を所定の寸法に裁断した後、加熱プレス機により、前述と同様に例えば、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6/ポリエステルエラストマー等のシート、又はポリエステルメッシュクロス/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、又はコア用多層シート6/別のシート/コア用多層シート6の枚葉積層体シートを製造することもできる。この積層製造においても、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)に設けた接着剤層3が、コア用多層シート6と接するようにして、枚葉積層体シートを製造することが好ましい。
ここで、所望時間、所望圧力、所望温度は、特に限定されるものではなく、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)、コア用多層シート6、ポリエステルエラストマー等のシート、又はポリエステルメッシュクロス等の組成、種類等を考慮し、適宜選択することが好ましい。なお、一般的には、10秒間〜6分間程度、1〜20Mpa、120〜170℃を一例として挙げることができる。時間が10秒間未満では、確実な一体化した積層体を得られないことがあり、又6分間を超えるような時間としても、それに見合う効果が得られず、生産効率が劣るようになり、好ましくない。又、圧力が1Mpa未満では、積層不良が生じることがあり、20Mpaを超えると積層体の寸法精度に影響を及ぼすことがあり、好ましくない。さらに、温度が、120℃未満では、前記した圧力が低すぎる場合と同様に積層不良が生じることがあり、170℃を超えると、積層体が反ったり、縮んだりするほか、コア層に印刷した画像、文字等がヤケルことがあり、好ましくない。
(5層積層体)
前述のように、電子パスポート用レーザーマーキングシートは、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)からなる5層積層体として構成されることが好ましい。即ち、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6の積層体構成にすることで、少なくとも透明レーザーマーキングと、着色シート(白色系を含む)からなる2層積層構造となり、透明レーザーマーキング層と白色層からなる積層体に比べて、レーザーマーキングにおけるコントラスト比が、より一層向上し、文字、図形、記号、又は情報等の鮮明性が向上する。
又、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)の5層積層体構成にすることで、表面、及び/又は裏面のどちらからでもレーザーマーキングすることができる。又、これら5層積層体を加熱プレス成形により加熱融着一体化した場合に、得られる5層積層体シートは、ソリがほとんど発生しないものである。なお、各層の厚みは、前記で詳述したように、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)が50〜200μmであり、コア用多層シート6が50〜200μmであり、綴じシート10が50〜500μmであることが好ましい。
より好ましくは、透明レーザーマーキングシート/コア用多層シート/綴じシート/コア用多層シート/透明レーザーマーキングシートの5層積層体構成であって、透明レーザーマーキングシートを構成する基材シートが、前述した3層構造からなるものである。
上記5層積層体は、種々の方法で製造できる。例えば、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)を積層した後、加熱プレスにて熱融着(熱ラミネーション)させることで5層積層体を製造できる。
(5層積層体の印刷方法)
又、前述のような積層体に印刷を施したい場合には、コア用多層シート6の片面に、UVオフセット印刷、又はUVシルク印刷を施した後、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/印刷を施したコア用多層シート/綴じシート10/印刷を施したコア用多層シート/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)を積層した後、加熱プレスにて熱融着(熱ラミネーション)させる。又は、コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6を加熱プレスにて熱融着により積層した後、さらに、この加熱プレス積層体表面に、UVオフセット印刷、又はUVシルク印刷を施す。この印刷を施した積層体と透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)とを、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/(コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6)積層体/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)となるように積層して加熱プレスすることによっても製造できる。なお、積層して加熱プレスするにあたっては、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)の接着剤層形成面が、印刷を施したコア用多層シートの印刷を施した面とが接するように配置する。
ここで、本発明で使用することができる好ましいUVインキは、紫外線のエネルギーを与えることによって光化学反応を起こし硬化(乾燥)するインキ(紫外線硬化型インキ)である。本発明においては、UVインキであれば、UVインキを構成する光重合性樹脂、光重合開始剤、顔料及びその他の成分や組成に制限はない。公知のいずれも使用することができ、特に限定されるものではない。このようなUVインキは、硬化(乾燥)に要する時間が短く、又UVインキによる印刷は、耐薬品性、耐磨耗性に優れる。本発明においては、浸透硬化(乾燥)、加熱蒸発硬化(乾燥)、或いは酸化重合等の、他の硬化方法によるインキは好ましくない。
又、本発明におけるオフセット印刷とは、従来から知られている印刷方式である。具体的には、インキを版からブランケットを介して被印刷体(コア用多層シート)に印刷方式である。このオフセット印刷にあたってのブランケットの種類、湿し水の有無等については、特に限定されるものではない。
さらに、UVシルク印刷とは、上記したオフセット印刷と同様に従来から知られている印刷方式である。具体的には、版材に絹(シルク)の布を使い、絹目の間からインクをヘラで擦ることで適量押し出し、元版の空隙から被印刷体(コア用多層シート)インクを乗せる方式である。このシルク印刷についても、このシルク印刷分野で採用されている各種手法等を採用することができる。特に制限されるものではない。
前記UVシルク印刷によれば、立体感のある、実際のイメージに近く、微妙な色調の印刷ができ、又、オフセット印刷によれば、多色印刷が容易で、しかも有利なコストで印刷ができることから、凸版印刷、凹版印刷よりもUVシルク印刷、オフセット印刷が好ましい。
さらに、前記のようにして、コア用多層シート6の片面に、UVオフセット印刷、又はUVシルク印刷を施した後、その印刷面に接着剤の1種であるバーニッシュを薄く塗布し、必要に応じて乾燥後、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/バーニッシュを塗布した印刷を施したコア用多層シート/綴じシート10/バーニッシュを塗布した印刷を施したコア用多層シート/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)を積層して加熱プレスすることによっても製造できる。このように印刷面にバーニッシュを塗布しすることにより、さらに透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)の接着剤層との強固な接着を行うことが期待できる。
又、コア用多層シート6、綴じシート10の片面、又は両面に、予め、熱可塑性、又は熱硬化性接着剤を0.1〜20μmの厚みに塗布した後、前記と同様に、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)を積層した後、熱ラミネーション(熱融着)するか、透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)/コア用多層シート6/綴じシート10/コア用多層シート6/透明レーザーマーキングシート1(1A,1B)を積層した後、ドライラミネーション(加圧接着)してもよい。前記熱ラミネーション、又はドライラミネーションは、公知の装置、方法を採用することができる。
又、このような積層体シートに印刷を施す場合に、より好ましいのは、コア用多層シート6の片面に、UVオフセット印刷、又はUVシルク印刷を施した後、透明レーザーマーキングシート(1A,1B)/印刷を施したコア用多層シート/綴じシート10/印刷を施したコア用多層シート/透明レーザーマーキングシート(1A,1B)を積層した後、加熱プレスにて熱ラミネーションする。又は、コア用多層シート6の片面に、UVオフセット印刷、又はUVシルク印刷を施した後、その印刷面に接着剤の1種であるバーニッシュを薄く塗布、必要に応じて乾燥後に、透明レーザーマーキングシート(1A,1B)/バーニッシュを塗布した印刷を施したコア用多層シート/綴じシート10/バーニッシュを塗布した印刷を施したコア用多層シート/透明レーザーマーキングシート(1A,1B)を積層して熱ラミネーションすることによって、電子パスポート用レーザーマーキングシートを形成する。これによれば、成形し易い等の利便性が向上する。
なお、熱ラミネーションの場合、加熱プレス温度は、電子パスポート用レーザーマーキングシートを構成するシートの種類によっても異なるが、100〜170℃、好ましくは130〜160℃である。加熱プレス温度が100℃未満では接着不良が生じることがあり、170℃を超えると5層積層体シートのソリ、縮み、又はシートのはみ出し等の異常が生じて好ましくない。
さらに、前述のコア用多層シート6と綴じシート10間に、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂からなるシート等や他の接着性熱可塑性樹脂シートを挿入してなる電子パスポート用レーザーマーキングシートも好ましい。具体的には、透明レーザーマーキングシート(1A,1B)/コア用多層シート6/共重合ポリエステル樹脂からなるシートや他の接着性熱可塑性樹脂シート/綴じシート/共重合ポリエステル樹脂からなるシートや他の接着性熱可塑性樹脂シート/コア用多層シート/透明レーザーマーキングシート(1A,1B)の7層を積層してなるものである。前記共重合ポリエステル樹脂からなるシートや他の接着性熱可塑性樹脂シートは、厚さ50〜300μm、平均粗さ(Ra)0.1〜5μmのマット加工を施してある電子パスポート用レーザーマーキングシートも好ましい形態の一つである。
このように、所望の共重合ポリエステル樹脂からなるシート、他の接着性熱可塑性樹脂シートを、コア用多層シートと綴じシート間、及び綴じシートとコア用多層シート間に積層させることで、綴じシートと別のシートとが一体化し、電子パスポート用レーザーマーキングシートを、電子パスポートとして使用した場合にも、表紙、又は裏表紙とのミシン綴じクロスと積層体との剥離強度等を向上させることができるため好ましい形態の一つである。
具体的には、例えば、後述するように、綴じシートの張り出し部11を用いて電子パスポート表紙、又は裏表紙に、ミシン綴じ若しくは接着してなる、或いはミシン綴じ、及び接着して、電子パスポートを成形する場合には、綴じシートと多層シート間で人為的に剥離されると、この部分を剥がし、別のシートで再接着することにより偽造が行われるので問題が大きい。しかし、前述のような構成とすることで、綴じシートと別のシートがより一体化することにより人為的な剥離を防止することで、電子パスポートの偽造防止に有用になる。
さらに、前述した電子パスポート用レーザーマーキングシートであって、透明レーザーマーキングシート/コア用多層シート/インレットシート/コア用多層シート/前記透明レーザーマーキングシートの5層積層として構成されると共に、インレットシートは、少なくとも、前記綴じシートにICチップと、アンテナを配設する。又は前記綴じシートの上、及び/又は下に、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂を積層させると共に、ICチップと、アンテナを配設させたインレットシートとして構成される。なお、積層前の各シート厚さの総厚さよりも、積層後の積層シートの総厚さが薄く形成される電子パスポート用レーザーマーキングシートとして構成されることが好ましい。ICチップ、及びアンテナを配設させやすく、又、いわゆるICチップ内蔵型の電子パスポート用レーザーマーキングシートとして対応できる。
例えば、前述のような所望の構成からなる各シートであって、積層前の厚さが、50〜200μmからなる透明レーザーマーキングシートと、50〜200μmからなるコア用多層シートと、200〜400μmからなるインレットシートとからなり、積層後の、電子パスポート用レーザーマーキングシートの総厚さが透明レーザーマーキングシート、コア用多層シート、及びインレットシートの総厚さよりも薄く形成される電子パスポート用レーザーマーキングシートを一例として例示できる。
又、別の例として、前述のような所望の構成からなる各シートであって、積層前のシート厚さが、50〜200μmからなる前記透明レーザーマーキングシートと、50〜200μmからなコア用多層シートと、200〜400μmからなるインレットシートとして構成し、綴じシートの一端に、透明レーザーマーキングシート、及びコア用多層シートよりも5〜100mm長い張り出し部を備えさせる。その張り出し部を用いて(介して)、インレットシートが電子パスポートに、ミシン綴じ若しくは接着されてなる、或いはミシン綴じ、及び接着されて電子パスポートに組み付けられるように構成されるものを一例として例示できる。
ここで、前述のICチップ内蔵型(いわゆるICチップモデル)の電子パスポート用レーザーマーキングシートは、例えば、下記のようにして製造することができる。(1)先ず、透明レーザーマーキングシート、コア用多層シート、綴じシートの各シートを、前述した製造方法により製造する。(2)次に、綴じシートの上下に、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂からなる層を形成する。(3)このようにして得た、共重合ポリエステル樹脂層/綴じシート/共重合ポリエステル樹脂層を加熱プレスして、積層体を形成する。(4)さらに、加熱プレス後の積層体の上に、ICチップ、及びアンテナを配設する。
次に、(5)ICチップ、及びアンテナを被覆するように、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂からなる層を形成する。上記のように、ICチップ、及びアンテナを被覆するように、前述の共重合ポリエステル樹脂からなる層を形成すると、加熱プレス時の応力や熱等からICチップ、及びアンテナが損傷することを防ぐことができるため好ましい。
その後、(6)加熱プレスをして、インレットシートを成形する。(7)さらに、そのインレットシートと、前述の透明レーザーマーキングシート、及びコア用多層シートを使用して、透明レーザーマーキングシート/コア用多層シート/インレットシート/コア用多層シート/透明レーザーマーキングシートの5層積層体を形成することで、前述のICチップ内蔵型(いわゆるICチップモデル)の電子パスポート用レーザーマーキングシートを成形できる。ただし、前述の製造方法は、一例であって特にこれに限定されるものではない。
なお、ICチップ内蔵型(いわゆるICチップモデル)の電子パスポート用レーザーマーキングシートの製造にあたって、ICチップ、及びアンテナを被覆するように、層形成をした、「テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂」の代わりに、例えば、接着性シートを使用することも好ましい。その後の、インレットシートを成形する加熱プレス工程を省略できるだけでなく、過度の加熱プレス時に負荷されやすい応力や熱等から、ICチップ、及びアンテナが損傷することを低減できる。このような接着性シートとしては、例えば、厚さが約30μm程度のポリエステル系接着シート(例えば、東亜合成社製、商品名「アロンメルトPES−111EEシート」)等を挙げることができるが、このようなものに限定されるものではない。
又、前述のように、インレットシートに、ICチップ、及びアンテナを被覆するように、「テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、且つ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂」、或いは前記したような接着性シートを使用する場合にも、インレットシートの厚みは、全体として前述の所望範囲内であることが望ましい。
又、本実施形態における透明レーザーマーキングシートは、電子パスポートに好適に用いることができる。
例えば、電子パスポートに用いる場合には、本実施形態における透明レーザーマーキングシートを2枚用意し、その間に透明レーザーマーキングシートを綴じやすくするための、綴じシートを配置し、必要に応じてミシン綴じ部等を形成すると共に、さらに表紙、本実施形態を用いた積層体、ビザシート、ICチップ等を配置し、電子パスポートを作成してもよい。ただし、これは一例であって、必ずしもこのような構成に限られない。
さらに、本実施形態における透明レーザーマーキングシートは、プラスチックカード用に好適に用いることができる。
ここで、本発明の透明レーザーマーキングシートを応用することができるプラスチックカードとしては、例えば、プリペイドカード、メンバーズカード、IDカード、テレフォンカード、定期券、キャッシュカード等を挙げることができる。ただし、これに限定されるものではない。
例えば、ポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤層を形成させてなる透明レーザーマーキングシートを、プラスチックカードを形成するプラスチック情報媒体シートの、片面、若しくは両面に接合する。この接合に際しては、透明レーザーマーキングシートに設けた接着剤層が、プラスチック情報媒体シートに接するようにして加熱積層一体化する。この際、透明レーザーマーキングシートに設けられたポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤は、プラスチックカードを形成するプラスチック情報媒体シートを軟化させたり、変形させたりすることがなく、強固に接着することができる。前記したようなプラスチックカードは、カードケース、或いはバッグ等から頻繁に出し入れして使用されるものであり、又、データ読み取り用のマシンに通される。
上記したポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤層を形成させてなる透明レーザーマーキングシートは、プラスチック情報媒体シートと強固に接合一体化されているので、剥がれるおそれがない。又、透明レーザーマーキングシートは、高い透明性を有しているので、プラスチック情報媒体シートに印刷された印刷情報の視認性にすぐれ、さらにレーザーマークにより文字、図形、記号、又は情報等を鮮明にマーキングすることができる。
(マット加工)
又、透明レーザーマーキングシート、コア用多層シート、及び別のシートの少なくとも1つのシートの表面には、平均粗さ(Ra)0.1〜5μmのマット加工が施されていることが好ましい。このように、前記した各シートの表面に、適宜選択的に、マット加工を形成する理由は、例えば、本実施形態のシートの構成が、本実施形態の透明レーザーマーキングシート/別のシートにて加熱プレス成形した場合、本実施形態の透明レーザーマーキングシートと別のシートの間の空気が抜けやすくなるからであり、別のシートも同様である。他方、積層工程に搬送する場合に、これらのシートがマット加工していないと、吸引、吸着して搬送して、これらのシートを位置合わせして積層した後、空気を注入してシートを脱着する際、脱着困難であったり、脱着できても積層位置がずれたりする等の問題が生じやすい傾向がある。
又、マット加工の平均粗さ(Ra)が5μmを超えると、本実施形態の透明レーザーマーキングシート/別のシートの熱融着性が低下しやすくなる傾向がある。さらに、適宜選択可能とすることにより、シート全体として、調整しやすくなるから好ましい。さらに、表面の平均粗さ(Ra)が0.1μm未満では前述したようにシート搬送時、積層時に、シートが搬送機に貼りつくという問題等が発生し易い傾向がある。
又、前述した電子パスポート用レーザーマーキングシートを用いると共に、透明レーザーマーキングシート/コア用多層シート/綴じシート/コア用多層シート/透明レーザーマーキングシートの5層積層シート、又は透明レーザーマーキングシート/コア用多層シート/インレットシート/コア用多層シート/透明レーザーマーキングシートの5層積層シート、又は透明レーザーマーキングシート/コア用多層シート/別のシート/綴じシート/別のシート/コア用多層シート/透明レーザーマーキングシートの7層積層シート、の綴じシートの張り出し部を用いて電子パスポート表紙、又は裏表紙に、ミシン綴じ若しくは接着してなる、或いはミシン綴じ、及び接着してなる電子パスポートとなるように成形することが好ましい。このように構成することにより、電子パスポートを成形し易くなるため好ましい。
[III]レーザーマーキング方法:
本実施形態における透明レーザーマーキングシートは、レーザー光エネルギーを照射して発色させるものであるが、レーザー光エネルギーとしては、He−Neレーザー、Arレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー、YAGレーザー、Nd・YVO4レーザー等の固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザー等が挙げられる。これらのうち、YAGレーザー、Nd・YVO4レーザーが好ましい。
本実施形態のレーザーマーキング方法において、レーザー光エネルギーとしては、レーザービームは、シングルモードでもマルチモードでもよい。又、ビーム径が20〜40μmのように絞ったもののほか、ビーム径が80〜100μmのごとく広いものについても用いることができる。ただし、シングルモードで、ビーム径が20〜40μmの方が、レーザーマーキングによる印字等と下地のコントラストを3以上とし、コントラストが良好な印字品質を得る点で好ましい。
このように本実施形態の透明レーザーマーキングシートに、レーザー光エネルギーを照射すると、基材シート(単層シート、又は多層シートのコア層)に含まれるレーザー光エネルギー吸収剤が、レーザー光エネルギーを吸収して発色する。ただし、この透明レーザーマーキングシートは、耐熱性の高いポリカーボネート樹脂が主成分であるから、高出力のレーザー光エネルギーを照射することが可能である。そのため、容易、且つ、より鮮明に文字、図形、記号、又は情報等をマーキングすることができる。
さらに、基材シートが、前記したような多層シートとして構成されることにより、単層シートではさらなる高出力のレーザー光エネルギーの照射によって、“発泡”が生じ、この発泡によって、シート表面の「膨れ」現象が発生する条件においても、多層シートのスキン層の作用により「膨れ」現象が抑制される。そのため、さらに鮮明に文字、図形、記号、又は情報等をマーキングすることができる。このスキン層の作用はこれだけにとどまらない。単層シートの場合は、外部との摩擦によりレーザーマーキング部分が直接削られていく。これに対して、スキン層を付与することにより、スキン層が削られてもレーザーマーキング部分は削られない。このため、レーザーマーキング部分の耐磨耗性はより優れたものとなる。
さらに、ポリカーボネート樹脂からなるシートは、耐熱性が高い故に、その多層シートでは加熱融着温度を200〜230℃という高温にする必要がある。加熱プレス工程の生産性にも問題が生じる。それにも増して、通常、電子パスポートのプラスチックデータシートでは、インレイシートといわれる中間層上に種々の印刷を施すことが一般的である。インレイシートに印刷を施してから多層積層加熱プレスを行う工程において、加熱融着温度を200〜230℃という高温にした場合、印刷が“ヤケル”ことが多々ある。従って、この場合、印刷した文字、画像が変退色を生じることがあり好ましくない。
この問題に対して、基材シートが、前述の単層シートから構成される透明レーザーマーキングシート、又は基材シートが、前述の多層シートから構成される透明レーザーマーキングシートの下地層であるコア用多層シートに、スキン層/コア層(着色)/スキン層からなる着色3層シートを積層する。これにより、スキン層のガラス転移温度が約80℃とコア層のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度より約60〜70℃低い。そのため、加熱融着温度を150〜170℃と約50〜60℃程度下げることができる。そのため、コア用多層シートに印刷した文字、画像が変退色を抑制することができる効果を有する。従って、本実施形態の透明レーザーマーキングシートは、レーザーマーキングによる印字等の鮮明性に優れ、その表層、又は表層のコア層にレーザー光エネルギー照射により黒色発色をさせて文字、図形、記号、又は情報をマーキングさせるが、その下地層が白い故に黒/白コントラストにより鮮明な文字、図形、記号、又は情報をマーキングすることができる。
より好ましいのは、前述の透明レーザーマーキングシートに、レーザーマーキングする方法であって、透明レーザーマーキングシート側(接着剤層形成面の反対側)から、レーザー光エネルギーを照射して印字することである。このように透明レーザーマーキングシートの基材シート側から、所望のレーザー光エネルギーを照射することにより、容易、且つ、鮮明に文字、図形、記号、又は情報等をマーキングすることができる。従って、本実施形態の透明レーザーマーキングシートは、レーザーマーキング性、加熱融着性に優れ、さらにレーザーマーキング部分の耐磨耗性にも優れたものである。
さらに好ましくは、これまで説明してきた透明レーザーマーキングシートにレーザーマークするレーザーマーキング方法であって、前記透明レーザーマーキングシートと、UVオフセット印刷、又はUVシルク印刷を施した印刷シートとを一体化した後、前記接着剤層が形成されていない面に向けて、レーザー光エネルギーを照射して、文字、図形、記号、又は情報をレーザーマークすることが好ましい。接着剤層が形成されていない側から、レーザー光エネルギーを照射することにより、文字、図形、記号、又は情報をマーキングすることができ、マーキングされた文字、図形、記号、又は情報は、地肌部とレーザーマーキング部分とのコントラストが高く、鮮明なレーザーマーキングが得られ、改竄防止、偽造防止等にも優れたものとなる。
前記したポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤を、予め基材シートの少なくとも片面に形成しておくことにより、現場で基材シートに、透明熱活性接着剤の所定量を所定厚さに形成する作業が不要となる。従って、汎用性が高く、成形加工がし易いものである。上記した基材シートの少なくとも片面に形成されたポリエステル樹脂からなる透明熱活性接着剤は、レーザー光エネルギーを照射することにより、文字、図形、記号、又は情報をマーキングする際のレーザーマーキング性に、不利な影響を全く及ぼさない。即ち、レーザーマーキングされた文字、図形、記号、又は情報のコントラストや鮮明度を低下させることがない。しかも、レーザー光エネルギーを照射しても、接着剤層の接着性が劣るようになったり、変色したりすることがない。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない又、実施例および比較例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
[1]透明レーザーマーキングシートの透明性:
実施例1〜5、及び比較例1〜6で使用した透明レーザーマーキングシートについて、シートの全光線透過率を、分光光度計(マクベス社製、商品名「EYE7000」)を用いて測定した。評価としては、以下のような基準によって評価した。
《評価基準》
◎:全光線透過率80%以上、全光線透過率が極めて良い。
○:全光線透過率60%以上80%未満、全光線透過率が良い。
×:全光線透過率60%未満、全光線透過率が悪い。
[2]透明熱活性接着剤と基材シートとの密着性:
実施例1〜5、及び比較例1〜4で使用した透明レーザーマーキングシートについて、透明熱活性接着剤と基材シートとの密着性をJIS K 5600に準拠して碁盤目試験(25マス)を行い観察し、以下のような基準によって評価した。
《評価基準》
◎:全く剥離なし、密着性が極めて良い。
○:5箇所以内のごく小さい剥離のみ、密着性が良い。
△:10箇所程度の小さい剥離、密着性が普通。
×:10〜20箇所以上の小さい剥離、密着性が悪い。
××:全面剥離、密着性が極めて悪い。
[3]加熱融着性:
実施例1〜5、及び比較例1〜6で使用した透明レーザーマーキングシートについて、透明レーザーマーキングシートA1、A2、又はA3と印刷多層シートB間の加熱融着性を、以下のような基準によって評価した。
《評価基準》
◎:剥離がなく、加熱融着性に優れる、加熱融着性が極めて良い。
○:ごく一部剥離が生じるが、破壊モードは材料破壊、加熱融着性が良い。
△:かなりの強い力で、剥離、加熱融着性が普通。
×:小さい力で全面剥離、加熱融着性が悪い。
[4]レーザーマーキング性:
実施例1〜5、及び比較例1〜6で得た透明レーザーマーキング多層シートに、Nd・YVO4レーザー(レーザーテクノロジー社製、商品名「LT−100SA」、及び、ロフィンシナール社製、商品名「RSM10E」)を使用して、レーザーマーキング性を評価した。具体的には、レーザーマーキング性は、400mm/秒のレーザー光エネルギー照射速度にてマーキングを行い、画像の鮮明性とレーザーマーキング部分の表面状態、を以下のような基準によって評価した。
《評価基準》
○:鮮明性に優れ、レーザー光エネルギー照射部の「膨れ」等異常なし、レーザーマーキング性が極めて良い。
△:鮮明性は良好であるが、レーザー光エネルギー照射部にわずかな「膨れ」発生、レーザーマーキング性が普通。
×:鮮明性は良好であるが、レーザー光エネルギー照射部に「膨れ」発生、レーザーマーキング性が悪い。
(製造例1)基材シートA1(単層シート):
ポリカーボネート樹脂(出光興産社製、商品名「タフロンFN2500A」、メルトボリュームレイト=8cm3/10min)100質量部を用い、レーザー光エネルギーを吸収するエネルギー吸収剤としてカーボンブラック(三菱化学社製 #10、平均粒子径75nm、DBP吸油量86ml/100gr)を0.0015質量部配合すると共に、フェノール系酸化防止剤として、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1076」)を0.1質量部、及び紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「チヌビン327」)を、0.2質量部配合して、Tダイ押出法により単層の厚さ100μmの基材シートA1(単層シート)を得た。
(製造例2)基材シートA2(多層シート):
スキン層として、非結晶性ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名「イースターGN071」、EG/CHDM(エチレングリコール単位/1,4−シクロヘキサンジメタノール単位、以下同じ)=70/30モル%)100質量部に、滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.1質量部配合した。コア層としてポリカーボネート樹脂(出光興産社製、商品名「タフロンFN2500A」、メルトボリュームレイト=8cm3/10min)を100質量部用い、レーザー光エネルギーを吸収するエネルギー吸収剤としてカーボンブラック(三菱化学社製#10、平均粒子径75nm、DBP吸油量86ml/100gr)を0.0015質量部配合すると共に、フェノール系酸化防止剤として、(n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「イルガノックス1076」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.1質量部、及び紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「チヌビン327」)を0.2質量部配合して、Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層の透明レーザーマーキング多層シートA2を得た。さらに、シートの総厚さは100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとすると共に、層の構成をスキン層(16μm)/コア層(68μm)/スキン層(16μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を68%にした基材シートA2(多層シート)を得た。
(製造例3)コア用多層シート:
スキン層として非結晶性ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名「イースターGN071」、EG/CHDM=70/30モル%)100質量部に、滑剤としてステアリン酸カルシウム0.1質量部、酸化チタン15質量部を配合、コア層としてポリカーボネート樹脂(出光興産製、商品名「タフロンFN2500A」、メルトボリュームレイト=8cm3/10min)100質量部に、フェノール系酸化防止剤として、(n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1076」)を0.1質量部、及び紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「チヌビン327」)0.2質量部、及び酸化チタン15質量部を配合して、Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層多層シートを得た。シートの総厚さを300μmにすると共に、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとした。又、層の構成をスキン層(40μm)/コア層(220μm)/スキン層(40μm)の構成にすると共に、コア層の厚さを比率73%にした。さらに、両面の平均表面粗さ(Ra)については、0.5〜1.8μm、になるようマット加工が施されたコア用多層シートを得た。このコア用多層シートの片面に、UVオフセット印刷により印刷を施した。
(実施例1)
製造例1で得た基材シートA1(単層シート)を使用した。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、水分散ポリエステル系樹脂(東洋紡績社製、商品名「バイロナールMD−1200」(固形分濃度34質量%、ブチルセロソルブ11質量%、数平均分子量15000、ガラス転移温度67℃)を用意した。基材シートA1の片面に、前述の透明熱活性接着剤を、オートマチックフィルムアプリケータ((株)安田精機製作所社製)を用いて塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布した。つぎに透明レーザーマーキングシートの透明熱活性接着剤層を形成した面と、コア用多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、透明レーザーマーキングシート/UVオフセット印刷を施したコア用多層シート/UVオフセット印刷を施したコア用多層シート/透明レーザーマーキングシートの構成となるように積層した。積層後、2枚のクロムメッキ板で挟み、真空プレス機(日精樹脂工業社製)を用いて、予熱温度100℃で2分間予熱した。予熱後、加熱温度160℃、面圧30Kg/cm2にて、2分間保持した(以下、「加熱融着工程」という)。その後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。この透明レーザーマーキング多層シートを用いて、前記加熱融着性を評価した。又、離型剤を使用しなかったほかは、上記と同様にして透明レーザーマーキング多層シートを得た。この透明レーザーマーキング多層シートを用いて、前記レーザーマーキング性を評価した。
以下、実施例2〜4、比較例1〜6についても、実施例1と同様にして、レーザーマーキング性を評価した。
(実施例2)
製造例1で得た基材シートA1(単層シート)を使用した。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、ポリエステル系樹脂(東亜合成社製、XJ−36(固形分濃度25質量%、シクロヘキサノン溶媒)を用意し、オートマチックフィルムアプリケータで、単層基材シートA1の片面に塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布し、UVオフセット印刷を施したコア用多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様の加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(実施例3)
製造例2で得た基材シートA2(多層シート)を使用した(この基材シートA2の厚さは100μmである)。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、実施例1で使用したものと同じ水分散ポリエステル系樹脂を用意した。オートマチックフィルムアプリケータで、基材シートA2(多層シート)の片面に塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造した印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布し、UVオフセット印刷を施したコア用多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様の加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(実施例4)
製造例1で得た基材シートA1(単層シート)を使用した。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、水分散ポリエステル系樹脂(固形分濃度20質量%、エチルセロソルブ/ブチルセロソルブ混合溶媒(質量比1/1)、数平均分子量 5000、ガラス転移温度80℃)を用意した。実施例1と同様にしてオートマチックフィルムアプリケータで、基材シートA1の片面に塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布し、UVオフセット印刷を施したコア用多層シートの印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様にして加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(実施例5)
製造例1で得た基材シートA1(単層シート)を使用した。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、水分散ポリエステル系樹脂(固形分濃度20質量%、エチルセロソルブ/ブチルセロソルブ混合溶媒=1/1(質量比)、数平均分子量 25000、ガラス転移温度80℃)を用意した。実施例1と同様にしてオートマチックフィルムアプリケータで、基材シートA1の片面に塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布し、UVオフセット印刷を施したコア用多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様にして加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(比較例1)
製造例1で得た基材シートA1(単層シート)を使用した。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、塩化ビニル─酢酸ビニル共重合体(日信化学工業社製、商品名「ソルバインCN」(固形分濃度20質量%、エチルセロソルブ/ブチルセロソルブ/ジオキサン混合溶媒=1/1/2(質量比)、塩化ビニル/酢酸ビニル含有量=89/11(質量比)、重合度=750))を用意した。実施例1と同様にしてオートマチックフィルムアプリケータで、基材シートA1の片面に塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布し、UVオフセット印刷を施したコア用多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様にして加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(比較例2)
製造例1で得た基材シートA1(単層シート)を使用した。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、アクリル系樹脂エマルジョン(新中村化学社製、商品名「ニューコートMT−1177B」、固形分濃度45質量%、エチルセロソルブ/ブチルセロソルブ混合溶媒=1/1(質量比))を用意した。実施例1と同様にしてオートマチックフィルムアプリケータで、単層基材シートA1の片面に塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布し、UVオフセット印刷を施したコア用多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様にして加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(比較例3)
製造例1で得た基材シートA1(単層シート)を使用した。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、塩化ビニルーアクリル共重合体エマルジョン(日信化学工業社製、商品名「ビニブラン690」、塩化ビニル/アクリル含有量比=80/20(質量比)、固形分濃度=54質量%)を、エチルセロソルブ/ブチルセロソルブ混合溶媒(質量比=1/1)にて希釈して固形分濃度20質量%とした。実施例1と同様にしてオートマチックフィルムアプリケータで、基材シートA1の片面に塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布し、UVオフセット印刷を施したコア用多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様にして加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(比較例4)
製造例2で得た基材シートA2(多層シート)を使用した。又、接着剤層に使用する透明熱活性接着剤として、比較例1で使用したものと同じものを用意した。実施例1と同様にしてオートマチックフィルムアプリケータで、基材シートA2の片面に塗工、乾燥して、乾燥塗膜厚みが6〜8μmの透明熱活性接着剤層を形成した透明レーザーマーキングシートを得た。この透明レーザーマーキングシート、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施した多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布し、UVオフセット印刷を施したコア用多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様にして加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(比較例5)
製造例1で得た基材シートA1(単層シート)を使用した。この基材シート(接着剤層未形成の透明レーザーマーキングシート)、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施した多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布した。つぎに接着剤層未形成の透明レーザーマーキングシートと、多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様にして加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(比較例6)
製造例2で得た基材シートA2(多層シート)を使用した。この基材シート(接着剤層未形成の透明レーザーマーキングシート)、及び製造例3で製造したUVオフセット印刷を施したコア用多層シートの一端にそれぞれ離型剤を塗布した。つぎに、接着剤層未形成の透明レーザーマーキングシートと、多層シートのUVオフセット印刷面が接するようにして、実施例1と同じ構成となるように積層した。積層後、同様にして加熱融着工程後、室温まで冷却し、透明レーザーマーキング多層シートを得た。
(考察)
表1、2に示すように、実施例1〜3、及び5で得た透明レーザーマーキングシートは、基材シートに透明熱活性接着剤が強固に形成され、碁盤目試験において全く剥離がないものであった。又、透明性も良好で視認性にすぐれ、さらに加熱融着性は、材料破壊を超えるものであった。又、レーザー光エネルギーを照射しても「膨れ」等の異常がなく、しかも鮮明にマーキングできるものであった。さらに電子パスポート用、プラスチックカード用として実用に供するものであった。又、実施例4は、透明性、密着性に優れるが、加熱融着性、レーザーマーキング性が実施例1〜3、及び5に比べるとやや劣るが、比較例1〜6に対しては優れるものであった。
又、比較例1〜4で得た塩化ビニル共重合体系やアクリル樹脂系の透明熱活性接着剤を形成して透明レーザーマーキングシートは、透明性、密着性は良いが、僅かな力で全面剥離し加熱融着性に劣るものであった。さらに、レーザー光エネルギーを照射すると照射部に「膨れ」が発生し、実用に供することができないものであった。さらに、比較例5〜6で得た透明レーザーマーキングシートのように、透明熱活性接着剤を使用することなく、シート同士の樹脂の融着自体によるものは、加熱融着性、レーザーマーキング性に劣るものであった。