JP2013238748A - 静電荷像現像用トナー及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性及び耐熱保管性に優れた静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、当該シェル層が結着樹脂を含有し、当該結着樹脂が中空を有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【選択図】なし

Description

本発明は静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関し、更に詳しくは、電子写真方式の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
近年、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)の分野では、市場からの要求に応じて、高画質化に対応できるトナーが求められている。高画質化に対応するトナーとしては、従来に比べて粒径が小さくかつ粒径分布がシャープなトナーが求められている。トナーが小粒径化し粒径分布がシャープになると個々のトナー粒子の現像挙動が揃うことにより、微小ドットの再現性が著しく向上する。しかしながら、従来の粉砕法によるトナー製造方法では、トナーの微粒化には限界があり、またトナーの粒径分布をシャープにすることは容易ではなかった。
これに対して、トナー粒子の形状や粒径分布を任意に制御可能な製造方法として、乳化凝集法が提案されている。この方法は、樹脂微粒子の乳化分散液に着色剤粒子分散液や必要に応じてワックス分散液を混合し、攪拌しながら、凝集剤添加、pH制御等により、それぞれの粒子を凝集させ、さらに加熱することによって、粒子を凝集、融着させてトナー粒子を得るものである。
また、省エネルギーの観点から、少ないエネルギーで定着できる低温定着トナーの開発が進められている。トナーの定着温度を下げるためには、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げることが必要である。しかしながら、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げるため、結着樹脂のガラス転移点や分子量を下げるとトナーの耐熱保管性が劣る、あるいはホットオフセットという現象が発生するなど新たな問題が生じる。
低温定着性と耐熱保管性を両立させるためにトナーをコア・シェル構造に制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、低温定着性に優れたコア粒子表面にガラス転移点や軟化点が高く耐熱性に優れた樹脂粒子からなるシェル層を形成することにより、低温定着性と耐熱保管性を両立させる技術が提案されている。特に乳化凝集法によるトナーの製造においては、このような形状制御や機能向上が容易に行えるという利点がある。しかし、近年プロダクションプリント領域においては、複写機、プリンターの高速化及び対応紙種の拡大が進み、前記のコア・シェル構造のトナーでは更なる低温定着化と耐熱保管性の両立は困難になってきている。
トナーの耐熱保管性を改善する目的で、コア・シェル構造を有するトナーにおいて、シェル層に中空を有する粒子を含有させる技術が提案されている(特許文献2参照)。この技術によれば、中空シリカなどの中空を有する粒子をシェル層に含有させることによって、中空構造内の気体によるトナー外部からの熱に対して遮断効果のために、トナーの耐熱保管性が向上するものと考えられる。しかし、シェル層に、中空シリカなどの無機粒子を含有させると、耐熱保管性は向上するが、シリカなどの粒子を含有させることによって、そのフィラー効果のために定着性能が損なわれてしまうという問題があった。
このように低温定着性と耐熱保管性を両立させるという点において、いまだ十分といえるものではなかった。
特開2005−221933号公報 特開2011−158769号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温定着性及び耐熱保管性に優れた静電荷像現像用トナー及び当該静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、コア・シェル構造を有するトナー粒子において、シェル層を構成する結着樹脂が中空を有するトナー粒子とすることにより、上記課題が解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、当該シェル層が結着樹脂を含有し、当該結着樹脂が中空を有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
2.前記シェル層に占める中空比率が、50〜80体積%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
3.前記シェル層に含有される結着樹脂が、架橋性モノマーを重合して得られた樹脂であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
4.第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
コア粒子の水系分散液に、架橋性モノマーと重合開始剤と溶媒を含有する混合溶液を添加し、当該コア粒子表面で架橋性モノマーを重合させてシェル層を形成した後、当該溶媒を除去することによって、中空を有するシェル層を形成することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
本発明の上記手段により、低温定着性と耐熱保管性に優れた静電荷像現像用トナー及び当該静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明においては、コア・シェル構造を有するトナー粒子からなる静電荷像現像用トナーにおいて、シェル層を構成する樹脂が中空を有する樹脂とすることによって、中空に含有される空気の断熱効果により、耐熱保管性が向上するものと考えられる。また、シェル層が中空を有する樹脂を含有することによって、コア樹脂の溶出が容易となり、低温定着性が向上する。また、シェル層の樹脂量を少なくすることができ、そのため、加熱定着時にシェル層の結着樹脂の溶融のために奪われる熱量が少なくなり、低温定着性を損なうこと無く、耐熱保管性が向上したものと考えられる。また、更にシェル層の結着樹脂を架橋性樹脂とすることによって、シェル層の機械的強度を高くすることができるので、少ない樹脂量でもシェル層としてのコア粒子の保護効果を維持できたものと考えられる。
シェル化の工程とシェル層に中空(気泡)ができる過程を説明する模式図
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、当該シェル層が結着樹脂を含有し、当該結着樹脂が中空を有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様として、前記シェル層に占める中空比率が、50〜80体積%の範囲内であることが中空による断熱効果が良好に得られ耐熱保管性が向上することから好ましい。
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、前記シェル層に含有される結着樹脂が、架橋性モノマーを重合して得られた樹脂であることが、耐熱保管性が向上するので好ましい。
また、コア粒子の水系分散液に、架橋性モノマーと重合開始剤と溶媒を含有する混合溶液を添加し、当該コア粒子表面で架橋性モノマーを重合させてシェル層を形成した後、当該溶媒を除去することによって、中空を有するシェル層を形成する製造方法であることが、低温定着性と耐熱保管性が良好な静電荷像現像用トナーが得られることから好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明を行う。なお、本願において、「〜」は、その前後の数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
〔トナー〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有するトナーであって、当該シェル層が結着樹脂を含有し、当該結着樹脂が中空を有することを特徴としている。
本発明において、中空を有するとは、シェル層の樹脂の内部に空になっている空洞(空孔)が多数存在する、すなわち樹脂が内部に微細な空孔を多数有する多孔質体であることを意味する。この中空は独立気泡として存在し、この中空内に存在する空気の断熱効果により、外部の熱がコア粒子に伝達するのを遮断し、耐熱保管性が向上するものと考えられる。本発明においては、後述する測定法に基づく直径が20nm以上の空洞を中空と定義する。
本発明においては、シェル層に占める中空の比率は、50〜80体積%であることが好ましく、60〜70体積%であることが更に好ましい。中空の比率が前記範囲のとき、十分な断熱効果が確実に得られるので良好な耐熱保管性が得られる。また、シェル層の樹脂量が適度なことから低温定着性も十分に確保される。さらに、シェル層によるコア粒子の保護効果も十分に得られており、コア粒子中の低軟化点成分の浸みだしの発生を抑えて耐熱保管性の低下を防いでいることも考えられる。
〔中空比率の測定法〕
中空比率の測定は、トナーを硬化性樹脂に埋設しウルトラミクロトームにより、設定厚100nmの超薄切片を作製し、その切片を用いて、透過型電子顕微鏡「2000FX(日本電子(株)製)」にて、ランダムに選んだ中空を有するトナーの観察を行い、シェル層中の直径20nm以上の中空の占める比率を算出する。
すなわち、トナー粒子を、透過型電子顕微鏡写真を用いて50000倍にて撮影し、スキャナーにて取り込んだ画像を、画像解析装置「ルーゼックスAP(ニレコ社製)」にてシェル層中の水平方向フェレ径20nm以上の中空について、その水平方向フェレ径を中空の直径として中空1個の体積を求める。このようにして求めた水平方向フェレ径20nm以上の中空の体積を全て合計し、トナー粒子1個中の中空の総体積を求める。また、中空を含むトナー粒子のシェル層の体積は、トナー粒子をこの体積と同一の体積の球体とみて、シェル層の膜厚とトナー粒子の水平方向フェレ径(直径)から算出し、シェル層中の中空比率を算出する。水平方向フェレ径とは、中空又はトナー粒子の画像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。また、1個のトナー粒子のシェル層の膜厚は、周方向ほぼ等間隔に測定した8点の平均値を用いる。この測定をトナー粒子100個について行い、その平均値をシェル層の中空比率とする。
〔シェル層〕
本発明に係るトナー粒子を構成するシェル層は、結着樹脂を含有し、当該結着樹脂は、架橋性モノマーを重合して得られた架橋樹脂を含有することが好ましい。
(架橋性モノマー)
架橋性モノマーとしては、重合性反応基、特に重合性2重結合を2個以上(特に、2〜4個)有する多官能性モノマーが例示でき、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、及びテトラエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用できる。
(単官能性モノマー)
また、架橋性モノマーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、重合性反応基を1個有する単官能性モノマーと併用してもよい。かかる単官能性モノマーとしては、例えば、芳香族ビニル系モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、モノオレフィン系モノマー、ハロゲン化オレフィン系モノマー、及びジオレフィン系モノマー等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用できる。
(芳香族ビニル系モノマー)
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、及びその誘導体が挙げられる。これらの芳香族系ビニルモノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
((メタ)アクリル酸エステル系モノマー)
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
これらの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(ビニルエステル系モノマー)
ビニルエステル系単量体の具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等が挙げられる。
(ビニルエーテル系モノマー)
上記ビニルエーテル系単量体の具体例としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、及びビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
(モノオレフィン系モノマー)
上記モノオレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、及びペンテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
(ハロゲン化オレフィン系モノマー)
上記ハロゲン化オレフィン系単量体としては、例えば、塩化ビニル、及び塩化ビニリデンを挙げることができる。
(ジオレフィン系モノマー)
ジオレフィン類である、ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等も単官能性単量体に含めることができる。
そして、上記架橋性モノマーとその他の単官能性モノマーとの好適な組合せとしては、単官能性モノマーとして、スチレン単独、アクリル酸エステル単独、メタクリル酸エステル単独、スチレンとアクリル酸エステル、スチレンとメタクリル酸エステル、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステル、又はスチレンとアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルと、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼンの組み合わせが挙げられる。
上記単官能性モノマーを併用する場合、架橋性モノマー、即ち、重合性官能基を2個以上有する多官能性単量体の含有割合は、単官能性モノマーと架橋性モノマーとの合計量に対して、架橋性モノマーが10質量%以上、特に30質量%以上であるのが好ましい。
これらモノマーを重合させて得られるシェルは、上記少なくとも1種の架橋性モノマー10〜100質量%、特に30〜100質量%及び上記少なくとも1種の単官能性モノマー90〜0質量%、特に70〜0質量%からなる重合体又は共重合体から構成される。
上記架橋性モノマーの使用量又は架橋性モノマーと上記単官能性モノマーとの混合物の使用量は、目的とする中空高分子微粒子の粒子径、シェルの厚さ等に応じて適宜選択できるが、一般には、前記溶媒1質量部に対して0.1〜2質量部、特に0.5〜1質量部とするのが好ましい。
(中空を有するシェル層の形成法)
本発明に係るシェル層に含有される結着樹脂中に中空を導入する方法としては、結着樹脂中に気泡状態で中空を導入できる方法であれば任意の方法が採用できる。具体的には、架橋性モノマーと必要に応じて単官能性モノマー、重合開始剤とを有機溶媒に溶解し、このシェル層形成用混合溶液をコア粒子が分散された水系媒体中添加して重合を行う。
中空を有するシェル層の形成方法について、図1を用いて説明する。図1(a)では、水系媒体1にコア粒子2が分散されている。このコア粒子2が分散された水系媒体中に、攪拌しながら架橋性モノマー、必要に応じて単官能性モノマー、重合開始剤及び溶媒から構成されたシェル層形成用混合溶液3を添加する。ここでは、疎水性相互作用により、コア粒子2の表面を覆う形でシェル層形成用混合溶液3の層が形成されて(図1(b))、水系媒体中にコア粒子を内包したシェル層形成用混合溶液3の液滴が分散された分散液が形成される。
次いで、重合を行い、コア粒子表面のシェル層架橋樹脂層4が形成される。有機溶媒5は、形成されたシェル層の結着樹脂に非相溶であるため、シェル層中で相分離し液滴として存在する(図1(c))。次いで、濾過、乾燥を行い、有機溶媒を除去することによって、シェル層中4に中空6を有するコア・シェル構造のトナー粒子(図1(d))を作製することができる。
なお、本発明では、前述したように、形成されるトナーのシェルの中空比率は50〜80体積%とすることが好ましく、60〜70体積%とすることがより好ましい。このように、シェルの中空比率を制御する方法としては、例えば、前述のシェル層形成用混合溶液の有機溶媒の含有量により制御が可能である。すなわち、混合溶液中のモノマーに対する有機溶媒の添加量を相対的に少なくすることで中空比率の低いシェルを形成することが可能であり、モノマーに対する有機溶媒の添加量を相対的に多くすることで中空比率の高いシェルを形成することが可能である。
ここで、水系媒体中に上記シェル層形成用混合溶液を分散する方法としては、特に限定されるものでは無く、機械的せん断力による分散方法等の公知の方法が種々採用できる。例えば、高速回転するロータを備えた市販の分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」等が代表的な装置として挙げられる。その他にも超音波分散機や、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリン及び圧力式のホモジナイザー等が挙げられる。
分散の際の温度条件は、使用開始剤の分解に影響する温度以下であれば限定されるものではないが、通常は、室温付近以下、特に0〜30℃程度であるのが好ましい。
またこの他に、転相乳化法を採用することもできる。すなわち、上記シェル層形成用混合溶液に機械的剪断力を加えながら、コア粒子が分散された水系媒体を徐々に添加することによって、コア粒子を内包する上記混合溶液の液滴が水系媒体中に分散された分散液を作製することもできる。
なお、本発明において、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、及びテトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
(シェル層の膜厚)
シェル層の膜厚は、100〜300nmの範囲内が好ましく、200〜300nmが更に好ましい。シェル層がこの範囲内であると、低温定着性と耐熱保管性を両立させることができる。
(重合開始剤)
本発明で使用できる重合開始剤は、上記分散液中で、架橋性モノマー又は架橋性モノマーと上記単官能性モノマーとの混合物の重合を開始させるものであり、油溶性の重合開始剤が広く使用できる。例えば、ラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、及び過酸化ラウロイル等の過酸化物等の単量体に可溶なものが挙げられる。また、紫外線等の光により重合開始する光重合開始剤を用いてもよい。このような光重合開始剤としては、油溶性であれば、特に制限されるものではなく、従来から使用されているものが挙げられる。
上記重合開始剤の使用量は、架橋性モノマー1質量部又は架橋性モノマーと単官能性モノマーとの混合物1質量部に対して、0.005〜0.1質量部、特に0.01〜0.05質量部とするのが好ましい。
(溶媒)
本発明で使用する溶媒は、上記架橋性モノマー又は架橋性モノマーと単官能性モノマーとの混合物、及び重合開始剤を溶解するが、少なくとも1種の架橋性モノマーから得られる重合体若しくは共重合体又は少なくとも1種の架橋性モノマーと少なくとも1種の単官能性モノマーとの共重合体に対する相溶性が低く、これら重合体又は共重合体の相分離を促進し、且つ、架橋性モノマーの重合被膜又は架橋性モノマーと単官能性モノマーとの混合物の重合皮膜の形成を妨げないものであれば、各種の有機溶媒が使用できる。
上記溶媒としては、例えば、炭素数8〜18、特に炭素数12〜18の飽和炭化水素類、芳香族炭化水素類、及び脂肪酸エステル類等が例示できる。特に好ましい溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、及びヘキサデカンが挙げられる。
〔コア粒子〕
本発明のトナーを構成するコア粒子は、少なくとも結着樹脂を含有するものであって、着色剤を含有したものであっても、着色剤を含有しないものであってもよい。
コア粒子を構成する結着樹脂としては、従来電子写真用トナーの結着樹脂として用いられる樹脂を含んでもよく、このような樹脂としては、公知の種々の樹脂を用いることができる。例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂ポリウレタン樹脂、及び尿素樹脂などを用いることができる。またこれらの樹脂を2種以上混合しても良い。
本発明のトナーを構成するコア粒子は、粉砕法や懸濁重合法によって作製することもできるが、コア・シェル構造とするためには、乳化凝集法によって作製することが好ましい。コア粒子を構成する結着樹脂を得るための重合性モノマーとしては、公知の種々の重合性モノマーが使用できる。重合性モノマーとしては、前述の単官能性モノマーが使用できる。また重合性モノマーとして、多官能性の架橋性モノマーを用いることによって、架橋構造の結着樹脂を用いることもできる。
本発明のトナーを構成するコア粒子に用いられる結着樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、及びスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が好ましい。
(スチレン−アクリル樹脂)
コア粒子を構成するスチレン−アクリル樹脂としては、低分子量のスチレン−アクリル樹脂が好ましく、重量平均分子量(Mw)が、20,000〜40,000の範囲内のものが好ましい。重量平均分子量が、上記範囲内であると優れた低温定着性が得られるので好ましい。
スチレン−アクリル樹脂を形成するために用いられる重合性モノマーとしては、上記に挙げた芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを挙げることができる。上記の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、それぞれ1種単独で、又はそれぞれ2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合性モノマーとして、上記の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共に、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、及び酢酸ビニルなどや、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N−ビニルピロリドン、及びブタジエンなどを用いることもできる。
また、重合性モノマーとして、上記の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共に、多官能ビニル系モノマーを用いることもできる。多官能ビニル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキしレングリコールなどのジアクリレート;ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、及びトリメチロールプロパンなどの三級以上のアルコールのジメタクリレート及びトリメタクリレートなどが挙げられる。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸モノマー(誘導体)及び多価アルコールモノマー(誘導体)を原料として適宜の触媒の存在下で重縮合反応によって製造されたものである。
多価カルボン酸モノマー誘導体としては、多価カルボン酸モノマーのアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができ、多価アルコールモノマー誘導体としては、多価アルコールモノマーのエステル化合物及びヒドロキシカルボン酸を用いることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、及びピレンテトラカルボン酸などの2価以上のカルボン酸などを挙げることができる。
多価アルコールモノマーとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、及びテトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
上記の多価カルボン酸モノマーと多価アルコールモノマーの比率は、多価アルコールモノマーのヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。
ポリエステル樹脂を合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。
(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂)
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とは、スチレン−アクリル系樹脂セグメントとポリエステル樹脂セグメントが両反応性モノマーを介して共重合した樹脂をいう。ここで、両反応性モノマーとは、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と、重合性不飽和基とを有するモノマーである。
スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための両反応性モノマーとしては、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有するモノマーであればよく、具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などを用いることができる。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の3つが挙げられる。
(A−1)ポリエステルセグメントをあらかじめ重合しておき、当該ポリエステルセグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーを反応させることにより、スチレン−アクリル重合セグメントを形成する方法。
(A−2)スチレン−アクリル重合体セグメントをあらかじめ重合しておき、当該スチレン−アクリル重合体セグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを反応させることにより、ポリエステルセグメントを形成する方法。
(A−3)ポリエステルセグメント及びスチレン−アクリル重合体セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性モノマーを反応させることにより、両者を結合させる方法。
本発明においては、上記いずれの方法を用いても良い。
(コア樹脂のガラス転移点)
(ガラス転移点の測定法)
コア粒子を構成する結着樹脂(コア樹脂)のガラス転移点は、低温定着性の観点から40〜60℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移点がこの範囲内であると耐熱保管性と低温定着性の両方を満足することができるので好ましい。
コア樹脂のガラス転移点は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)によって測定された値である。
(コア樹脂の軟化点)
同じく低温定着の観点から、コア樹脂の軟化点は90〜120℃の範囲内であることが好ましい。コア樹脂の軟化点が、この範囲内であると低温定着性が良好となるので好ましい。
また、コア樹脂の軟化点は、以下のように測定されるものである。
まず、20℃±1℃、50%±5%RHの環境下において、コア樹脂1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃±5℃、50%±20%RH環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、コア樹脂の軟化点とされる。
(コア樹脂の重量平均分子量)
コア粒子を構成する結着樹脂の重量平均分子量は、10,000〜40,000の範囲内が好ましい。この範囲内であると、低温定着性が良好なトナーを得ることができるので好ましい。
(重量平均分子量の測定方法)
GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)による樹脂の分子量の測定方法としては、濃度1mg/mlになるように測定試料をテトラヒドロフランに溶解させる。溶解条件としては、室温にて超音波分散機を用いて5分間行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、GPCへ10μl試料溶解液を注入する。GPCの測定条件の具体例を下記に示す。
装置:HLC−8220(東ソー製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.2ml/min
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
〔着色剤〕
コア粒子が着色剤を含有したものとして構成される場合の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、及び顔料などを任意に使用することができる。
カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、及びランプブラックなどを用いることができる。
磁性体としては鉄、ニッケル、及びコバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、及びマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などを用いることができる。
また、顔料としてはC.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同7、同15、同16、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同123、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同208、同209、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー3、同9、同14、同17、同35、同36、同65、同74、同83、同93、同94、同98、同110、同111、同138、同139、同153、同155、同180、同181、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、同60、及び中心金属が亜鉛、チタン、又はマグネシウムなどであるフタロシアニン顔料などを用いることができ、これらの混合物も用いることができる。染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同3、同14、同17、同18、同22、同23、同49、同51、同52、同58、同63、同87、同111、同122、同127、同128、同131、同145、同146、同149、同150、同151、同152、同153、同154、同155、同156、同157、同158、同176、同179、ピラゾロトリアゾールアゾ染料、ピラゾロトリアゾールアゾメチン染料、ピラゾロンアゾ染料、ピラゾロンアゾメチン染料、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、及び同95などを用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
着色剤の体積平均粒子径は種類により異なるが、おおむね10〜200nm程度であることが好ましい。
コア粒子が着色剤を含有したものとして構成される場合のトナーにおける着色剤の含有割合は、結着樹脂に対して1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量%である。
〔ワックス〕
ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びパラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、及びクエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ワックスとしては、トナーの低温定着性及び離型性を確実に得る観点から、その融点が50〜95℃であるものを用いることが好ましい。
ワックスの含有割合は、結着樹脂全量に対して2〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜18質量%、さらに好ましくは4〜15質量%である。
〔荷電制御剤〕
また、本発明に係るトナー粒子中に、荷電制御剤を含有させる場合は、荷電制御剤としては、公知の種々のものを使用することができる。
荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができる公知の種々の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、及びサリチル酸金属塩あるいはその金属錯体などが挙げられる。
トナー粒子中に荷電制御剤を含有させる方法としては、上記に示したオフセット防止剤を含有させる方法と同様の方法を挙げることができる。
荷電制御剤の含有割合は、結着樹脂全量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
〔トナーの製造方法〕
本発明のトナーの製造方法は、コア粒子の水系分散液に、架橋性モノマーと重合開始剤と溶媒からなる混合溶液を添加し、当該コア粒子表面で架橋性モノマーを重合させてシェル層を形成した後、当該溶媒を除去することによって、中空を有するシェル層を形成することを特徴とする。
本発明においては、コア粒子の表面に均一にシェル層を形成させることができることから、水系媒体に分散された結着樹脂微粒子と着色剤微粒子などを凝集、融着させてコア粒子を形成し、当該コア粒子表面で架橋性モノマーを重合させてシェル樹脂微粒子を形成し、融着させることによりトナー粒子が得られる乳化重合凝集法によって製造することが好ましい。
本発明のトナーを乳化重合凝集法によって製造する場合の、着色剤を含有するトナーの製造例を具体的に示すと、
(1)水系媒体中において、結着樹脂によるコア粒子用結着樹脂微粒子を重合により形成して当該結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製するコア粒子用結着樹脂重合工程、
(2)水系媒体中に、着色剤による着色剤微粒子が分散されてなる分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程、
(3)水系媒体中でコア粒子用結着樹脂微粒子及び着色剤微粒子を凝集させてコア粒子を形成するコア粒子形成工程、
(4)コア粒子が分散されてなる水系媒体中に、架橋性モノマーと重合開始剤と溶媒からなる混合溶液を添加し、当該コア粒子表面で架橋性モノマーを重合させてシェル層を形成した後、当該溶媒を除去して、コア粒子の表面にシェル層を形成させてコア・シェル構造を有するトナー母体粒子を形成するシェル化工程、
(5)熱エネルギーにより熟成させて、トナー母体粒子の形状を調整する熟成工程、
(6)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤などを除去する洗浄工程、
(7)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程、
から構成され、必要に応じて、
(8)乾燥処理されたトナー粒子母体に外添剤を添加する外添剤添加工程
を加えることができる。
(1)コア粒子用結着樹脂重合工程
このコア用結着樹脂重合工程においては、結着樹脂に係るコア用樹脂微粒子が形成されて、これがコア粒子形成工程に供される。
具体的には、結着樹脂に係る樹脂微粒子は、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、結着樹脂を形成するための重合性モノマーに必要に応じてワックスや荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解あるいは分散させたモノマー溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このような結着樹脂重合工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
このコア粒子の結着樹脂重合工程において形成させる結着樹脂微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した第1樹脂微粒子の分散液に、重合開始剤と重合性モノマーとを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する方法を採用することができる。本発明においては、第1段重合を高分子量ポリエステルとしているので、通常の重縮合反応にてポリエステル樹脂を合成し、これを微粒子化して、水系媒体中で微粒子分散液として、これにスチレン−アクリル系モノマーを加えて、第2段重合、必要に応じて、第3段重合を行う。ポリエステル樹脂を微粒子分散液とする方法としては、機械的方法により粉砕し、界面活性剤を用いて水系媒体中で分散する方法、及び転相乳化法が挙げられるが、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
結着樹脂重合工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば下記の界面活性剤を使用することができる。
〔界面活性剤〕
水系媒体中には、分散させた微粒子の凝集を防ぐために、分散安定剤が添加されていることが好ましい。
分散安定剤としては、公知の種々のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などの界面活性剤を使用することができる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、及びヘキサデイシルトリメチルアンオニウムブロマイドなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、及びモノデカノイルショ糖などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げることができる。
以上の界面活性剤は、所望に応じて、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のトナー粒子中には、結着樹脂及び着色剤の他に、必要に応じてワックスや荷電制御剤、磁性粉などの内添剤が含有されていてもよく、このような内添剤は、例えば、この結着樹脂重合工程において、あらかじめ、結着樹脂を形成するためのモノマー溶液に溶解又は分散させておくことによってトナー粒子中に導入することができる。
また、このような内添剤は、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、コア粒子形成工程において樹脂微粒子及び着色剤微粒子と共に当該内添剤微粒子を凝集させることにより、トナー粒子中に導入することもできるが、結着樹脂重合工程においてあらかじめ導入しておく方法を採用することが好ましい。
〔重合開始剤〕
結着樹脂重合工程において使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチルなどの過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、及びポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。
〔連鎖移動剤〕
結着樹脂重合工程においては、結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、及びメルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、上記の混合工程において樹脂材料と共に混合させておくことが好ましい。
この結着樹脂重合工程において得られる結着樹脂微粒子の平均粒子径は、体積基準のメディアン径で例えば50〜500nmの範囲にあることが好ましい。
なお、体積基準のメディアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
(2)着色剤微粒子分散液調製工程
着色剤微粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
使用される界面活性剤としては、例えば上述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。
この着色剤微粒子分散液調製工程において調製される着色剤微粒子分散液中の着色剤微粒子の分散径は、体積基準のメディアン径で10〜300nmとされることが好ましい。
この着色剤微粒子分散液中の着色剤微粒子の体積基準のメディアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800(大塚電子社製)」で測定されるものである。
この着色剤微粒子分散液調製工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述のシェル樹脂微粒子分散液調製工程において使用することのできる界面活性剤として挙げたものと同じものを使用することができる。
(3)コア粒子形成工程
このコア粒子形成工程においては、必要に応じて、結着樹脂微粒子及び着色剤微粒子と共に、オフセット防止剤や荷電制御剤などのその他のトナー構成成分の微粒子を凝集させることもできる。
結着樹脂微粒子及び着色剤微粒子を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、結着樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、これら混合物の融解ピーク温度以下の温度に加熱することによって、結着樹脂微粒子及び着色剤微粒子などの微粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進め、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法である。
この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかに結着樹脂に係る樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、これら混合物の融解ピーク温度以下の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分間以内であることが好ましく、10分間以内であることがより好ましい。また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、コア粒子の成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上することができる。
〔凝集剤〕
このコア粒子形成工程において使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、及びリチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、及び銅などの二価の金属塩;鉄、及びアルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、及び硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
コア粒子形成工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述のシェル樹脂微粒子分散液調製工程において使用することのできる界面活性剤として挙げたものと同じものを使用することができる。
このコア粒子形成工程において得られるコア粒子の粒径は、例えば体積基準のメディアン径(D50)が2〜9μmであることが好ましく、より好ましくは4〜7μmである。
コア粒子の体積基準のメディアン径は、「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)によって測定されるものである。
(4)シェル化工程
このシェル化工程においては、コア粒子の分散液中にシェル層の結着樹脂を構成する架橋性モノマーと重合開始剤と溶媒からなる混合溶液を添加して重合し、コア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面にシェル層を被覆させてトナー母体粒子を形成する。
具体的には、コア粒子の分散液はコア粒子形成工程における温度を維持した状態でシェル層の結着樹脂を構成する架橋性モノマーと重合開始剤と溶媒からなる混合溶液を添加し、加熱撹拌を継続しながら数時間かけてゆっくりとシェル樹脂微粒子をコア粒子の表面で重合、融着させることによってコア粒子の表面に厚さ100〜300nmのシェル層を被覆させてトナー母体粒子を形成する。加熱撹拌時間は、1〜7時間が好ましく、3〜5時間が特に好ましい。
ここで形成されたシェル層の架橋樹脂層中には、相分離した有機溶媒が微細な液滴として存在する。
(5)熟成工程
上記のコア粒子形成工程及びシェル化工程における加熱温度の制御によりある程度トナーにおけるトナー粒子の形状の均一化を図ることができるが、さらなる形状の均一化を図るために、熟成工程を経る。
この熟成工程は、加熱温度と時間の制御を行うことにより、粒径が一定で分布が狭く形成したトナー母体粒子表面が平滑だが均一な形状を有するものとなるよう制御する。具体的には、コア粒子形成工程及びシェル化工程において加熱温度を低めにして樹脂微粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、この熟成工程においても加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてトナー母体粒子を所望の平均円形度となる、すなわち表面が均一な形状のものとなるよう制御する。
(6)洗浄工程、(7)乾燥工程
洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。すなわち、上記熟成工程にて所望の平均円形度まで熟成した後、例えば遠心分離器などの公知の方法により、固液分離し洗浄を行い、減圧乾燥にて有機溶媒を除去し、さらにフラッシュジェットドライヤー、及び流動層乾燥装置など公知の乾燥装置にて水分及び微量の有機溶媒を除去する。乾燥温度は、トナーが融着しない範囲であれば良い。
(8)外添剤添加工程
この外添剤添加工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に必要に応じて外添剤を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。
乾燥工程までの工程を経て作製されたトナー母体粒子は、そのままトナー粒子として使用することが可能であるが、トナーとしての帯電性能や流動性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、その表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することが好ましい。
外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
無機微粒子としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、及び酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、及びステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいはチタン酸ストロンチウム、及びチタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。
これら無機微粒子は、耐熱保管性及び環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、又はシリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
これらの外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、及びコーヒーミルなどの機械式の混合装置が挙げられる。
〔トナー〕
本発明の「トナー」は、コア粒子の表面にシェル層が形成されてなる「トナー母体粒子」よりなる。「トナー母体粒子」は、そのままでも「トナー」として使用することができるが、通常この「トナー母体粒子」に、外添剤を添加したものを「トナー粒子」という。「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
〔トナー粒子の平均粒径〕
本発明に係るトナー粒子の平均粒径は、例えば体積基準のメディアン径(D50)で3〜10μmであることが好ましい。この粒径は、例えば後述する乳化重合凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
体積基準のメディアン径が上記の範囲にあることにより、例えば1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することができる。
トナー粒子の体積基準のメディアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を調製し、このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにして頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメディアン径とされる。
〔トナー粒子の平均円形度〕
本発明のトナーは、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、転写効率の向上の観点から、下記式(T)で示される円形度の算術平均値が0.850〜0.990であることが好ましい。
式(T):円形度=粒子投影像と同等の投影面積を有する真円の周囲長/粒子投影像の周囲長
ここで、トナー粒子の平均円形度は「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定される値である。
具体的には、トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。
〔現像剤〕
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、及びマグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、又は鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。
〔画像形成装置〕
本発明のトナーは、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができ、このような画像形成方法が行われる画像形成装置としては、例えば静電潜像担持体である感光体と、トナーと同極性のコロナ放電によって当該感光体の表面に一様な電位を与える帯電手段と、一様に帯電された感光体の表面上に画像データに基づいて像露光を行うことにより静電潜像を形成させる露光手段と、トナーを感光体の表面に搬送して前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を必要に応じて中間転写体を介して転写材に転写する転写手段と、転写材上のトナー像を定着させる定着手段を有するものを用いることができる。このような構成を有する画像形成装置の中でも、複数の感光体に係る画像形成ユニットが中間転写体に沿って設けられた構成のカラー画像形成装置、特に、感光体が中間転写体上に直列配置させたタンデム型カラー画像形成装置に好適に用いることができる。
また、本発明のトナーは、定着温度(定着部材の表面温度)が100〜200℃とされる比較的低温のものにおいて好適に用いることができる。
さらに、本発明のトナーは、静電潜像担持体の線速が100〜500mm/secとされる高速機に好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。
コア用結着樹脂の作製例
(1)コア用樹脂微粒子〔A1〕分散液の調製
(1−1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にあらかじめアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤溶液に重合開始剤「過硫酸カリウム:KPS」9.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた後、
溶液(1)
スチレン 540質量部
n−ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n−オクチルメルカプタン 17質量部
からなる溶液(1)を3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することで重合(第1段重合)を行い「樹脂微粒子(a1)」の分散液を調製した。
(1−2)第2段重合:中間層の形成
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、
溶液(2)
スチレン 94質量部
n−ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
からなる溶液(2)に、離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し、85℃に加温して溶解させて単量体溶液(2)を調製した。一方、アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温し、この界面活性剤溶液に「樹脂微粒子(a1)」の分散液を、樹脂微粒子(a1)の固形分換算で28質量部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記単量体溶液(2)を4時間混合・分散させ、平均粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製し、この分散液に重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、この系を90℃において2時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第2段重合)を行って「樹脂微粒子(a11)」の分散液を調製した。
(1−3)第3段重合:外層の形成
上記の「樹脂微粒子(a11)」の分散液に、重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、80℃の温度条件下において、
溶液(3)
スチレン 230質量部
n−ブチルアクリレート 100質量部
n−オクチルメルカプタン 5.2質量部
からなる溶液(3)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後、28℃まで冷却し、アニオン性界面活性剤溶液中にコア用樹脂微粒子〔A1〕が分散した「コア用樹脂微粒子〔A1〕分散液」を調製した。
(2)コア用樹脂微粒子〔A2〕分散液の調製
(2−1)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の合成
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した容量10リットルの四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 117質量部
フマル酸 82質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、
アクリル酸 10質量部
スチレン 30質量部
ブチルアクリレート 7質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔1〕を得た。
(2−2)スチレン−アクリル変成ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製
得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔1〕100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメディアン径(D50)が250nmであるコア用樹脂微粒子〔A2〕が分散された「コア用樹脂微粒子〔A2〕分散液」を作製した。
(3)着色剤微粒子〔B〕の分散液の調製例
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子〔B〕が分散されてなる「着色剤微粒子〔B〕の分散液」を調製した。この分散液における着色剤微粒子〔B〕の体積平均粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
(4)トナーの製造例
(トナー作製例1(トナー〔1〕の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管を取り付けた反応容器に、「コア用樹脂微粒子〔A1〕分散液」を固形分換算で288質量部、イオン交換水2000質量部を投入し、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10(25℃)に調整した。
その後、「着色剤微粒子〔B〕分散液」を固形分換算で40質量部投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にてコア粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径(D50)が6.0μmになった時点で、以下の混合液を30分かけて滴下し、80℃にて1時間にわたって加熱・撹拌を継続することで重合を行い、コア・シェル構造のトナー粒子〔1〕が得られた。
(混合液)コア粒子(結着樹脂+着色剤)100質量部に対する質量部数
・ジビニルベンゼン 5.0質量部
・アゾビスイソブチロニトリル 0.5質量部
・トルエン 5.0質量部
得られたトナー粒子〔1〕を遠心分離機で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成し、これを遠心分離機を用いて濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後減圧乾燥にて有機溶媒を除去した後、「振動流動層装置」(中央化工機社製)に移し、水分量が0.5質量%、トルエン濃度10ppm以下になるまで乾燥した。
乾燥させたトナー粒子〔1〕に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより、トナー〔1〕を作製した。
下記の方法、手順により、作製したトナー〔1〕の透過型電子顕微鏡写真撮影を行い、撮影画像を解析したところ、シェル層に中空が存在することが確認され、中空比率は65体積%であった。
(中空比率の測定)
トナー〔1〕を、透過型電子顕微鏡写真を用いて50000倍にて撮影し、スキャナーにて取り込んだ画像を、画像解析装置「ルーゼックスAP(ニレコ社製)」にてシェル層中の水平方向フェレ径20nm以上の中空について、その水平方向フェレ径を中空の直径として中空1個の体積を求めた。このようにして求めた水平方向フェレ径20nm以上の中空の体積を全て合計し、トナー粒子1個中の中空の総体積を求めた。また、中空を含むトナー粒子のシェル層の体積は、シェル層の膜厚とトナー粒子の水平方向フェレ径(直径)から算出し、シェル層中の中空比率を算出した。また、1個のトナー粒子のシェル層の膜厚は、周方向ほぼ等間隔に測定した8点の平均値を用いた。この測定をトナー粒子100個について行い、その平均値をシェル層の中空比率とした。
〔トナーの作製例2〜9〕
トナーの作製例1の作製において、コア用樹脂とシェル層の構成を表1のように変更した以外は同様にして、トナー〔2〕〜〔9〕を作製した。ここでトナー〔9〕は比較用のトナーである。なお、トナー〔9〕の作製で用いるシェル層形成用混合液は溶媒を含有していないもので、架橋性モノマーと重合開始剤からなる混合溶液である。
トナー〔1〕〜〔9〕を作製する際に使用したコア用樹脂、シェル層形成に用いた材料、シェル層の中空比率を下記表1に示す。トナー〔2〕〜〔9〕のシェル層の中空比率は、トナー〔1〕と同様、前述の方法で透過型電子顕微鏡写真撮影を行い、撮影画像を解析して求めたものである。
Figure 2013238748
〔現像剤の製造例〕
(1)キャリアの作製
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成させることにより、体積基準のメディアン径が50μmであるキャリアを得た。
キャリアの体積基準のメディアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定した。
(2)トナーとキャリアの混合
トナー〔1〕〜トナー〔9〕の各々に対して、上記のキャリアをトナー濃度が6%となるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社)によって回転速度45rpmで30分間混合することにより、現像剤〔1〕〜現像剤〔9〕を製造した。
〔評価方法〕
以上の現像剤を用いて、下記評価を実施した。
(1)低温定着性
市販のカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)において、定着装置を、定着上ベルトの表面温度を140〜170℃の範囲で、定着下ローラの表面温度を120〜150℃の範囲で変更することができるように改造したものを用い、評価紙「NPi上質紙128g/m」(日本製紙製)上に、定着速度300mm/secで、トナー付着量11.3g/mのベタ画像を定着させる定着実験を、コールドオフセットによる定着不良が観察されるまで、設定される定着温度(定着上ベルトの表面温度)を170℃、165℃・・・と5℃刻みで減少させるよう変更しながら繰り返し行った。
なお、定着下ローラは、常に定着上ベルトの表面温度より20℃低い表面温度に設定した。そして、コールドオフセットによる定着不良が観察されない定着実験の最低の定着温度を定着下限温度として評価した。この定着下限温度が低ければ低い程、低温定着性に優れることを意味し、160℃以下のものを合格とし、その中でも155℃以下のものを好ましいものと判断した。
(2)耐熱保管性
トナー0.5gを内径21mmの10mlガラス瓶に取り、蓋を閉めて、タップデンサー「KYT−2000」(セイシン企業製)を用いて室温で600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物が解砕しないよう注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調節し、10秒間振動を加えた後、篩上に残存した残存トナー量を測定し、下記式(1)により残存トナー量の比率であるトナー凝集率を算出した。なお、20%以下であれば実用上問題なく、合格と判断される。結果を表2に示す。
式(1):トナー凝集率(%)={残存トナー量(g)/0.5(g)}×100
Figure 2013238748
以上の結果から明らかなように、中空比率の値が50〜80体積%の範囲内にある本発明のトナー〔1〕〜〔8〕は、低温定着性と耐熱保管性の両方が優れた結果であった。また、比較用トナー〔9〕は耐熱保管性は優れているが、低温定着性は満足できるものではなかった。
1 水系媒体
2 コア粒子
3 シェル層形成用溶液
4 シェル層架橋樹脂
5 溶媒
6 中空
7 コア・シェル構造トナー粒子

Claims (4)

  1. 少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、当該シェル層が結着樹脂を含有し、当該結着樹脂が中空を有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  2. 前記シェル層に占める中空比率が、50〜80体積%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 前記シェル層に含有される結着樹脂が、架橋性モノマーを重合して得られた樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    コア粒子の水系分散液に、架橋性モノマーと重合開始剤と溶媒とを含有する混合溶液を添加し、当該コア粒子表面で架橋性モノマーを重合させてシェル層を形成した後、当該溶媒を除去することによって、中空を有するシェル層を形成することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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