JP2013235621A - マイクロ波アシスト記録用磁気ヘッド及び磁気記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】マイクロ波アシスト記録において、1平方インチ当たり2テラビットを超える記録密度が実現可能な磁気記録装置を実現する。
【解決手段】高周波磁界創生層幅の狭小化に伴う高周波磁界強度の不足と高周波磁界強度勾配の劣化を補うため、主磁極5の幅と高周波磁界創生層2の幅と同程度にし、さらに、磁化反転に有効な高周波磁界成分の変化が最大となる位置と、ヘッド磁界が用いる高周波磁界(強度と周波数)における記録媒体の反転磁界強度となる位置とを一致させる。
【選択図】図11
【解決手段】高周波磁界創生層幅の狭小化に伴う高周波磁界強度の不足と高周波磁界強度勾配の劣化を補うため、主磁極5の幅と高周波磁界創生層2の幅と同程度にし、さらに、磁化反転に有効な高周波磁界成分の変化が最大となる位置と、ヘッド磁界が用いる高周波磁界(強度と周波数)における記録媒体の反転磁界強度となる位置とを一致させる。
【選択図】図11
Description
本発明は、磁気記録媒体に対して、高周波磁界(以下、マイクロ波と称する)を照射して磁気共鳴を励起し、記録媒体の磁化反転を誘導して、情報を記録する技術に関するものである。
磁気記録において記録密度を高めるためには記録ビットのサイズを低減することが必要であるが、微小な記録ビットを安定的に記録媒体に保持するためには異方性磁界の大きな(あるいは保磁力の大きな)磁性材料を用いて記録媒体を構成する必要がある。異方性磁界の大きな記録媒体に記録動作を行うためにはそれだけ強い記録磁界を用いて記録を行う必要があるが、将来的には記録ヘッドの記録磁界強度は不足すると言われている。そこで、マイクロ波アシスト記録や熱アシスト記録など、記録を行う時のみ一時的に媒体の異方性磁界を低減して記録を行う記録方式が検討されている。
マイクロ波アシスト記録では、強力なマイクロ波帯の高周波磁界をナノメートルオーダーの領域に照射して記録媒体を局所的に励起し、磁化反転磁界を低減して情報を記録する。磁気共鳴を利用するため、媒体異方性磁界に比例する周波数のマイクロ波を用いないと、大きな磁化反転磁界の低減効果は得られない。
特開平7−244801号公報には、高周波磁界により磁気記録媒体をジュール加熱あるいは磁気共鳴加熱し、媒体保磁力を局所的に低減することにより、情報を記録する技術が開示されている。また、米国特許第7,256,955号明細書には、垂直記録ヘッド駆動電流と高周波電流を重畳した磁界を記録媒体に印加して、高周波磁界を磁気記録媒体に誘導、記録媒体を局所的に磁気共鳴状態にし、磁化反転磁界を低減して情報を記録する技術が開示されている。
一方、2007年のTMRC(The Magnetic Recording Conference)国際会議の講演予稿、TMR2007−B7には、垂直磁気ヘッドの主磁極に隣接した磁気記録媒体近傍に、スピントルクによって高速回転する磁化回転体を配置してマイクロ波を発生させ、マイクロ波アシスト記録を行う技術が開示されている。また、J. Appl. Phys., 107, 123914 (2010)では、理論解析により、高周波アシスト磁化反転の特徴を議論しており、高周波磁界強度が強い領域で、アシスト効果が大きく、反転磁界の分散が小さくなることを示している。
TMR2007−B7
J. Appl. Phys., 107, 123914 (2010)
次世代の磁気記録方式に対して現状想定されている程度の記録密度(1平方インチあたり2Tビット程度)をマイクロ波アシスト記録で実現するためには、マイクロ波の照射領域の大きさはナノメートルオーダーになる。この程度の領域に強力なマイクロ波を照射するためには、上で説明した従来技術のいずれも性能的に不足である。
TMR2007−B7に開示された従来技術においては、高周波磁界創生層(FGL)の磁化を高速で回転せしめることによって発生する強力な高周波磁界をナノメートルオーダーの領域に照射して記録媒体を局所的に磁気共鳴状態にし、磁化反転磁界を低減して情報を記録することが可能である。記録磁化パタンが、FGLの形状によって形成されているため、FGLの幅を狭くすれば、トラック密度を高めることができると考えられている。しかし、トラック密度を高めるためFGL幅を小さくしていくと、FGL幅が30nmを切るあたりから、相応する狭トラックの記録磁化パタンが得られないことが判明した。
本発明は、マイクロ波アシスト記録において、線記録密度、トラック密度の向上により、1平方インチ当たり2テラビットを超える記録密度が実現可能な磁気記録装置を実現することを目的とする。
本発明においては、FGL幅の狭小化に伴う高周波磁界強度の不足と高周波磁界強度勾配の劣化を補うため、記録磁界勾配を利用する。具体的には、記録磁界を発生する主磁極の幅をFGL幅と同程度又はそれより狭くする。さらに、磁化反転に有効な高周波磁界成分(以下、有効高周波磁界成分と呼ぶ)の変化が最大となる位置に、磁化反転する、しないの境界条件が来るようにヘッド磁界を調整する。
本発明のヘッドを用いると、記録媒体の磁化反転条件近傍で有効高周波磁界成分が急峻に変化するので、シャープな磁化状態の境界が形成され、記録密度が1平方インチあたり2Tビットを超える磁気記録装置が実現できる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本明細書においては、当分野で通常用いる下記単位を用いた記載をする場合がある。この場合、下記の換算式を用いると簡単にSI単位系への変換が可能である。
・磁界(Oe):1[Oe]=1000/(4π)[A/m]
・磁化(emu/cc):1[emu/cc]=4π/10000[T]
・界面交換結合エネルギー(erg/cm2):1[erg/cm2]=0.001[J/m2]
・磁界(Oe):1[Oe]=1000/(4π)[A/m]
・磁化(emu/cc):1[emu/cc]=4π/10000[T]
・界面交換結合エネルギー(erg/cm2):1[erg/cm2]=0.001[J/m2]
以下、図面を用いて本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、具体構成の詳細説明に入る前に、本発明の原理について説明する。
図1は、高周波磁界創生層(FGL)から発生する磁界の一例を示したものである。FGLからの磁界は、FGL内部で磁化が一様で、磁化回転面に垂直な端面に磁化が発生するものとする。図1で、s,WFGL,h,tFGLは、それぞれ、スペーシング、FGLの幅、高さ、厚さである。
ここで、記録媒体上のP点(Xp<0)における磁界Hp(Hpx,Hpy,Hpz)を考える。FGL磁化が上を向いている場合、FGLの上面がN極で下面がS極となるため、Hpx<0となる。やや小さいが、Hpz>0も成り立つ。FGL磁化が回転してy方向を向くと、FGLの向こう側の面がS極で手前側の面がN極となるため、Hpy<0となる。さらにFGL磁化が回転して下を向くと、FGLの下面がN極で上面がS極となるため、Hpx>0となる。やや小さいが、Hpz>0も成り立つ。同様に、FGL磁化が−y方向ではHpy>0となり、一周する。この間、P点での磁界は、反時計回りに回転したことがわかる。
P点における媒体磁化が上向きである場合、この磁化の歳差運動は反時計回りであるため、FGLからの高周波磁界によって磁気共鳴が発生し、磁化が反転しやすくなると考えられる。そこで、FGLから発生する高周波磁界によるマイクロ波アシスト磁化反転の効果を検討するため、有効高周波磁界成分Hhf-effを求める。高周波磁界は、FGLの底面(上底面も含む)及び側面からの磁界を足し合わせることになる。底面からの磁界と側面からの磁界とは、トラックセンター上を除き、一般には直交しない。この点を考慮して、FGLから発生されるマイクロ波アシスト反転に有効な高周波磁界成分Hhf-effを求める必要がある。高周波磁界Hhfは、位相が互いに90度ずれている底面からの磁界Hbと側面からの磁界Hsとの合成磁界と考えられるので、次式(1)のように表される。
ここで、アシストに有効な磁界成分は媒体面内に平行であると近似し、x方向、y方向の単位ベクトルex,eyを用いると、Hb,Hsは次式(2)となる。
式(2)を式(1)に代入すると、次式(3)が得られる。
さらに、マイクロ波アシスト磁化反転に作用する反時計まわり成分のみを考慮し、exp(-iωt)項を無視すると、式(4)のようになる。
式(4)を用いると、記録媒体の任意の点における有効高周波磁界成分Hhf-effを求めることができる。そこで、図2に示すような主磁極5とFGL2とを配置することを想定し、FGLより創生される有効高周波磁界成分の特徴を考察する。図2の目盛りの数値の単位はnmである。
図3は、幅15.5nm、高さ15nm、厚さ14.5nmのFGL2より創生される有効高周波磁界成分の2次元分布を示したものである。FGLの主磁極側の一辺の直下でHhf-effが最大となり、その反対側の辺の直下でHhf-effがほぼ0となっている。FGLの厚さで大きな磁界勾配が得られることがわかる。ただし、クロストラック方向の磁界分布を見ると、半値幅がFGL幅より7nm大きな22nmとなっている。従来のように、トラック幅が50nmより広くて、FGLからの高周波磁界にて磁化反転パタンを形成する方法を用いると、隣接トラックの磁化反転エラーが避けられない。
図4は、クロストラック方向の有効高周波磁界成分Hhf-effの変化を示す図である。図には、厚さ15nmで、幅×高さの寸法が異なる7種類のFGLについての計算結果を示した。FGL幅が30nmより広い場合には、Hhf-effが中心で平坦となりクロストラック方向に大きな変化が見られない。これは、FGL中心部は、FGL短部からの磁界の影響がほとんどないためと考えられる。FGL幅が30nmより狭い場合には、平坦部がなくなり、値も小さくなっている。FGL幅が30nmより狭くなると、有効高周波磁界成分が小さくなるとともに勾配も緩やかになると推察されるため、相応する狭トラックの記録磁化パタンが得られないと推察される。
そこで、FGL幅が狭くても、相応する狭トラックの記録磁化パタンが得られる方法を検討するため、高周波磁化反転特有の性質を利用することにする。なお、以下では、1平方インチあたり2Tビットを超える記録密度を実現するため、トラック幅方向の幅が30nm未満であるFGLを用いることを前提として検討する。マイクロ波アシスト磁化反転の特徴を”J. Appl. Phys., 107, 123914 (2010)”に従い、図5を用いて説明する。記録層と共鳴層の2層構造を有し、共鳴層に垂直磁気異方性磁界Hk-resを有する記録媒体は、横軸に高周波磁界強度Hhf、縦軸に印加磁界Hextを取ると、大きく3つの領域に分類される。下式(5)で表される線LSより下側の領域は、非反転領域(領域A)である。ただし、回転有効磁界Hωは、アシスト記録周波数frec、ジャイロ磁気定数γを使って、式(6)のように表される。
また、線LSより上で、図中の線LUより下の領域は、不完全反転領域(領域B)である。線LSより上、かつ線LUより上の領域は完全反転領域(領域C)である。ここで三つの領域に接する点をλ点(Hhf-λ,Hext-λ)と定義すると、Hhf-λ,Hext-λは、それぞれ、次式で表される。
ここで、図5及び図6A、図6Bを参照して、記録媒体に印加される有効ヘッド磁界Hextと有効高周波磁界Hhf(有効ヘッド磁界、有効高周波磁界の表記は、正しくは、添え字に-effをつけて、Hext-eff、Hhf-ffと表記すべきであるが、図表、説明等が煩雑となるため、図5,6A,6B,7,8の説明においては簡単にHext,Hhfと記すことにする)の変化を考える。図5中の線CA及び線BAのように変化をする場合を考える。線CAの軌跡をたどる場合、完全反転領域Cから、非反転領域Aに至るため、反転する、反転しないがはっきりして、明瞭な反転境界が記録媒体に形成されることが期待される。一方、線BAの軌跡をたどる場合、不完全反転領域Bから、非反転領域Aに至るため、反転境界が不明瞭で、明瞭な反転境界が記録媒体に形成されない。したがって、実際の記録媒体への記録においては、有効ヘッド磁界Hextと有効高周波磁界Hhfが線CAの軌跡を辿るようにする必要がある。
図6Aは、記録媒体のある点Pの上方をx方向にヘッドが通過するときのHextとHhfとを示したものである。簡単のためにヘッド走行速度は1m/sとしたが他の速度でも磁界強度や以下で議論する磁界の軌跡に影響はない。FGLの主磁極側端が点Pの真上を通過する時間をt=0としている。有効高周波磁界Hhfは、ほぼt=0で最大値をとっており、FGLの主磁極と反対側端が通過するt=13nsで、いったん0となり、t=20nsで再び小さいピークをとった後、減少している。有効ヘッド磁界Hextについては、主磁極とFGLの距離GMP-FGLが0nm、4nm、10nmの三種類の構造について示してある(それぞれ、Hext:a、Hext:b、Hext:c)。図には、記録媒体共鳴層の磁気異方性磁界Hk-res=17.5kOe、アシスト周波数frec=25GHzの場合のλ点の有効ヘッド磁界Hext-λを点線で示してある。GMP-FGL=0の場合(Hext:a)、主磁極端とFGL端が接しており、Hhfが最大値を取った後に、HextがHext-λより小さくなる。GMP-FGL=4nmの場合(Hext:b)、Hhfが最大値を取るタイミングでHextがHext-λとなる。GMP-FGL=10nmの場合(Hext:c)、HextがHext-λより小さくなってからHhfが最大値を取っている。
そこで、三種類の構造のヘッドについて、Hhf(t)横軸、Hext(t)を縦軸とし、時間経過による軌跡を示したのが 図6Bである。 MP-FGL=0の場合(軌跡a)、有効高周波磁界Hhfが有効ヘッド磁界Hextより早く減少するため、いったん完全反転領域Cを通過するものの、λ点の左側で、反転−非反転の境界となる線LSを通過している。不完全反転領域Bを通って、非反転領域Aに至るため、反転境界が不明瞭で、明瞭な反転境界が記録媒体に形成されないと考えられる。GMP-FGL=4nmの場合(軌跡b)、HextがHext-λに達するタイミングで、Hhfが最大値に達しており、λ点の右側で、反転−非反転の境界となる線LSを通過している。完全反転領域Cから、非反転領域Aに至るため、明瞭な反転境界が記録媒体に形成されると期待される。GMP-FGL=10nmの場合(軌跡c)、HextがHext-λより小さくなった後、しばらくたってからHhfが最大値に達しており、λ点の左側で、反転−非反転の境界となる線LSを通過している。不完全反転領域Bから、非反転領域Aに至るため、反転境界が不明瞭で、明瞭な反転境界が記録媒体に形成されないか、最初から磁化反転できない。
以上より、主磁極からの磁界がHhf-λとなる位置近くに、Hhfが最大値となるFGL端を設置することで、λ点の右側を通って反転―非反転の境界となる線LSを通過させることができることがわかった。
λ点の位置は、記録媒体の共鳴層の異方性磁界Hk-resや記録周波数frecによって変わるため、実機の設計に当たっては、調整自由度の高い図5中に設定したHωと式(7)を使って導かれる、
となる周波数の前後1割程度の周波数でFGLの位置を設定しておき、書込み動作時に、STO駆動電流によって周波数を制御し、最適な書込み状態とするのがよい。1GHz上昇あたり約1.3nm、FGLの最適位置が主磁極から離れるので、これは、前後3nmに相当する。式(9)となるHext-λは、式(7)、(8)より、次式のようになる。
図7は、FGL幅15.5nm、主磁極幅14.5nmの図5における線LPaの条件で、中心(y=0nm)からクロストラック(y)方向にずれた位置(y=5nm,y=7nm)での、ダウントラック(x)方向の有効ヘッド磁界と有効高周波磁界との関係のプロファイルを示したものである。y=5nmでは、λ点を時計回りに安定反転領域Cから領域Aに入っており、良好な磁化反転が起こることが期待される。一方、y=7nmでは、不安定領域Bから領域Aに入っており、磁化反転がほとんど起こらないと考えられる。このことは、y=5nmと7nmの間に、シャープな磁化遷移が形成され、12nm(2×6nm)のトラックが形成可能であると考えられる。また、有効高周波磁界が最大となるタイミングでの主磁極からの磁界の大きさは、yの値によらずほぼ一定であることから、記録された磁化パタンが湾曲せず、真直ぐであることを示している。主磁極幅をFGL幅より1nm程度小さめにするのがよい。
図8は、FGL幅15.5nm、主磁極幅19.5nmの組み合わせにおける、中心(y=0nm)からクロストラック(y)方向にずれた位置(y=8nm)でのダウントラック(x)方向の有効ヘッド磁界と有効高周波磁界との関係の推移を示したものである。FGL端を主磁極からの磁界がHhf-λとなる位置に設置するため、GMP-FGL=7nmとした。この場合、y=8nmでλ点を通過しており、16nm(2×8nm)の記録トラックが形成されてしまうことがわかる。さらに、有効高周波磁界が最大となるタイミングでの主磁極からの磁界の大きさは、yが大きくなる(トラック中心から離れる)と後方に移動しており、記録された磁化パタンが湾曲することを示している。湾曲は、主磁極幅をFGL幅より若干小さめにした時に最小となる。
以上のように、峡トラック磁化パタンを形成して記録密度を高めるには、
1)主磁極幅をFGL幅より若干小さめにする、
2)FGL端を主磁極からの磁界がHhf-λとなる位置に設置する、
のが有効である。
1)主磁極幅をFGL幅より若干小さめにする、
2)FGL端を主磁極からの磁界がHhf-λとなる位置に設置する、
のが有効である。
ここで、これまでの考察を、計算機シミュレーションを用いて検証する。図9に、計算に用いたビットパタン記録媒体(BPM)モデルを示す。ここでは、膜厚4nmの共鳴層17と膜厚6nmの記録層18を仮定した。共鳴層17は異方性磁界Hkが17kOe、飽和磁化Msが500emu/ccであるとし、記録層は異方性磁界Hkが30kOe、飽和磁化Msが500emu/ccであるとした。共鳴層17と記録層18の間には1erg/cm2、記録層間には0.5erg/cm2の交換相互作用を導入した。一軸磁気異方性を有する磁性粒子が一斉回転モデルにしたがって反転するものと考え、その磁化の挙動を次のLLG(Landau-Lifschitz-Gilbert)方程式を用いて計算する。
ここで、γはジャイロ磁気定数(17.6[1/(kOe・ns)])、αはダンピング定数である。有効磁界Hは、磁気異方性磁界(=Hkcosθm:θmは磁化と磁化容易軸のなす角)、静磁界、外部磁界、交換結合磁界及び、高周波磁界の5成分の和で構成される。実際の記録ヘッドにおいては、外部磁界が記録磁極からの記録磁界に相当する。磁化容易軸をz軸、初期磁化方向を+Z方向とすれば、初期磁化方向と反対方向に磁界を印加すると、反転磁界において、磁化が+z方向から、−z方向に向かってz軸を軸とする回転運動をしながら反転する。
図10は、5%のHk分散を考慮し、共鳴層に最適な周波数である25GHzの高周波数に対する反転特性を示したものである。横軸に実効高周波磁界成分、縦軸に反転磁界をとっている。ラインMT999より右上の領域は、1000粒子中999個以上反転した領域、ラインLT01より左下の領域は、1000粒子中反転する粒子が1個以下の領域である。両ラインにはさまれた領域は、反転が確率的に発生する。図中、反転磁界が4kOe,高周波磁界が1kOeのところに、λ点に対応した確率的反転領域が狭い「くびれ」が生じている。
本発明は、磁化遷移がこのくびれ近くで形成される場合、シャープな磁化状態の境界形成が期待されることを利用する。Hk-resは、搭載されているマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドの発振周波数から式(9)を使っておおよその推定が可能である。
図11は、FGLとして、Bs=2.3T、寸法15.5nm×15nm×15nm、主磁極(MP)としてBs=2.3T、浮上面形状が14.5nm×30nmを仮定し、FGL−MP間隔を4nmの条件にて、有効高周波磁界強度とヘッド磁界の分布を求め、図10の結果を使って記録媒体の各位置での反転確率に展開したものである。図には、6.2Tbit/in2−BPM相当の記録ビット、記録後ビット、隣接ビット及び主磁極とFGLの位置関係を併せて示してある。
BPMでは、1)記録ビットが確実に反転すること、2)記録後ビットが反転しないこと、3)隣接ビットが反転しないこと、の3条件を満たす必要がある。図では、これらの3条件がほぼ満たされていることがわかる。FGL−MP間隔が4nmよりも短いと、反転領域がトラック幅方向に広がり隣接ビットが反転する確率が高くなった。FGL−MP間隔が4nmよりも長いと、反転領域が狭くなり、記録ビットが確実に反転できなくなった。主磁極がトラック幅方向に広い場合には、3条件をすべて満たすFGL−MP間隔が見つからなかった。
図12は、LLG方程式を用いて計算したBPMのマイクロ波アシストによる磁化反転の一例を示したものである。白が上向きの磁化状態、黒が下向きの磁化状態を示している。記録ビット(Recording bit)の初期値は白とし、6つの隣接ビットの初期値はランダムとした。図は、全てのビットが白の状態を初期値とした例である。媒体の分散と、初期値のランダムを変え、1000回計算を行ったところ、記録ビットが全て反転し、6つの隣接ビットは、初期磁化状態が維持された。
本明細書においては、実効ヘッド磁界、実効記録磁界HMP-effは、ヘッド磁界のx,y,z成分をそれぞれ、HMP-x,HMP-y,HMP-zとして、次式で与えられるものとする。
(実施例1)
本実施例では、上で説明したマイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドと磁気記録媒体を組み合わせて磁気記録装置を構成した例について説明する。
本実施例では、上で説明したマイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドと磁気記録媒体を組み合わせて磁気記録装置を構成した例について説明する。
図13及び図14は、本実施例の磁気記録装置の全体構成を示す模式図である。図13が上面図、図14はそのA−A’での断面図である。記録媒体101は回転軸受け104に固定され、モータ100により回転する。図14では3枚の磁気ディスク、6本の磁気ヘッドを搭載した例を用いて説明したが、磁気ディスクは1枚以上、磁気ヘッドは1本以上あれば良い。記録媒体101は、円盤状をしており、その両面に記録層を形成している。スライダ102は、回転する記録媒体面上を略半径方向移動し、リーディング側ないしトレーリング側先端部に磁気ヘッドを有する。サスペンション106は、アーム105を介してロータリアクチュエータ103に支持される。サスペンション106は、スライダ102を記録媒体101に所定の荷重で押しつけるあるいは引き離そうとする機能を有する。磁気ヘッドの各構成要素を駆動するための電流はICアンプ113から配線108を介して供給される。記録ヘッド部に供給される記録信号や再生ヘッド部から検出される再生信号の処理は、図14に示されたリードライト用のチャネルIC112により実行される。また、磁気記録装置全体の制御動作は、メモリ111に格納されたディスクコントロール用プログラムをプロセッサ110が実行することにより実現される。従って、本実施例の場合には、プロセッサ110とメモリ111とがいわゆるディスクコントローラを構成する。
(実施例2)
本実施例では、磁気ヘッドとその走行方向について説明する。
最初に、図15、図16を用いて磁気ヘッド走行方向と記録媒体との配置関係について説明する。磁気ヘッド部109は、サスペンション106に保持されたスライダ102に搭載され、記録媒体101に対して記録・再生動作を行う。
本実施例では、磁気ヘッドとその走行方向について説明する。
最初に、図15、図16を用いて磁気ヘッド走行方向と記録媒体との配置関係について説明する。磁気ヘッド部109は、サスペンション106に保持されたスライダ102に搭載され、記録媒体101に対して記録・再生動作を行う。
磁気ヘッドの磁気ヘッドスライダへの載置形態は2種類あり、1つは図15に示すトレーリング側への配置、もう1つが図16に示すリーディング側への配置である。ここで、トレーリング側、リーディング側は、記録媒体に対する磁気ヘッドスライダの相対的な移動方向によって決まり、記録媒体の回転方向が図15ないし図16に示した向き(図中の矢印の方向)とは逆であれば、図15がリーディング側への載置、図16がトレーリング側への載置となる。なお原理的には、スピンドルモータの極性を逆にして記録媒体を逆向きに回転させれば、トレーリング側とリーディング側の関係を逆にすることが可能であるが、回転数を正確に制御する必要上、スピンドルモータの極性を変えるのは非現実的である。
図17には、再生ヘッド部をリーディング側に配置し、記録ヘッド部をトレーリング側に配置したマイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドの構成例を示す。白抜きの矢印は、ヘッド走行方向を示す。図17に示される構成においては、対向磁極6がトレーリング側端部に形成され、主磁極5は対向磁極6よりはリーディング側に形成されている。主磁極5に対して対向磁極6と反対側には補助磁極206が配置されている。高周波磁界発生素子201は、主磁極5と対向磁極6の間に配置されている。第1の磁気シールド208と第2の磁気シールドを兼ねる補助磁極206との間に再生センサ207が配置されている。磁気記録媒体への情報の記録は、コイル205の励磁によって主磁極5から発生される記録磁界と、高周波磁界発生素子201から発生される高周波磁界を用いて行われる。
図18は、磁気ヘッドの別の構成例を示す模式図である。図18に示す磁気ヘッドにおいては、主磁極5の励磁用コイル205が上向きではなく、横向きに巻かれている。本構成の磁気ヘッドの場合、図17の構造に比べて励磁位置がより主磁極浮上面に近いので、より強い磁束を主磁極5から発生させることができる。
図19、図20には、記録ヘッド部をリーディング側に配置し、再生ヘッド部をトレーリング側に配置したマイクロ波アシスト記録用磁気ヘッドの構成例を示す。図19に示す構成の磁気ヘッドにおいては、主磁極5がリーディング側最端部に配置され、対向磁極6は主磁極5に対してトレーリング側に配置される。図19に示す構造の磁気ヘッドの場合、対向磁極6と再生センサ用シールドを共用しているが、分離しても構わない。励磁コイルの巻線方向は、図17と同様に上巻きであるが、図20に示すように横巻きにしても良い。
なお、図17〜20に示す構成の記録ヘッド部は、図15、図16のいずれの構造の磁気ヘッドスライダに実装することも可能である。図19、図20においては、対向磁極と補助磁極が兼用されている為、STO駆動電流が高周波磁界発生素子201に流れるようにする目的で、主磁極5との間に電気的絶縁膜209を形成している。
(実施例3)
本実施例では、磁気ヘッド及び記録媒体の構造・作製方法について説明する。
図21、図22に、磁気記録装置の記録ヘッド部及び記録媒体の構成例を示す。図21は記録ヘッド部及び媒体の断面模式図、図22は記録ヘッド部を浮上面から見た模式図である。
本実施例では、磁気ヘッド及び記録媒体の構造・作製方法について説明する。
図21、図22に、磁気記録装置の記録ヘッド部及び記録媒体の構成例を示す。図21は記録ヘッド部及び媒体の断面模式図、図22は記録ヘッド部を浮上面から見た模式図である。
記録ヘッド部には、主磁極5の浮上面側端部のトレーリング側に金属非磁性スピン散乱体11が形成され、金属非磁性スピン散乱体11と対向磁極6の間に高周波磁界発生素子(STO)201が形成されている。高周波磁界発生素子201は、高周波磁界創生層(FGL)2、金属非磁性スピン伝導層3、スピン注入層4を有している。また、対向磁極6の浮上面端部のリーディング側には、第2の金属非磁性スピン散乱体層12が形成されている。金属非磁性スピン散乱体層11は、スピン注入層4から高周波磁界創生層(FGL)2に流入するスピントルクの効果を打消す影響を及ぼす恐れのある主磁極5からFGL2に流入するスピンを散乱する作用がある。あるいは、FGL2側から主磁極5へのスピントルクの流出を防ぐ作用があるとも言える。したがって、金属非磁性スピン散乱体層11を用いると、必要なスピントルクを得るための電流を小さくすることができる。金属非磁性スピン散乱体層11としてRuを用いると、この効果は特に大きくなる。同様に、金属非磁性スピン散乱体層12は、スピン注入層4から対向磁極6へのスピンの流出を防ぐ作用がある。
記録媒体7は、非磁性基板19の上に、記録層18と共鳴層17を積層した構造を有する。共鳴層17を構成する磁性体は、高周波磁界発生素子201から発生される高周波磁界に共鳴する大きさの異方性磁界を有する。共鳴層17の下に形成された記録層18の磁性体は、共鳴層17より大きな異方性磁界を有し、高周波磁界発生素子201から発生される高周波磁界には共鳴しない。
また、主磁極5の幅と厚さ(ヘッド走行方向の長さ)は、記録磁界が大きく取れるよう大きめに設定することが可能であるが、図22には、主磁極5と対向磁極6間に形成された積層膜の構成を浮上面側から見た模式図を示した。本実施例の主磁極5と対向磁極6及び積層膜である高周波磁界発生素子201のトラック幅方向の関係は、主磁極5の幅、FGL2の幅、対向磁極6の幅の順に大きくなっている。FGL2の幅に対する主磁極5の幅は、0.5から1.5倍の範囲に入れば、FGL2の幅の80%程度の記録トラックが形成できる。さらに0.5から1.0倍の範囲であれば、トラック幅方向の遷移が急峻になり、隣接トラックへの影響が低減される。本実施例の浮上面での形状は、FGL2の幅15nm、厚さ13nmに対して、主磁極5は、トラック幅方向に幅14nmとヘッド走行方向に厚さ28nmとした。比較例として、主磁極5の幅が5nmから、30nmまで5nm毎に作製した。主磁極の幅がマイクロ波アシスト記録に与える影響については、実施例4で詳述する。
主磁極5とFGL2の距離G記録磁極−FGLは、用いる記録媒体の共鳴層17の磁気異方性磁界について式(8)を満たす位置を3D磁界解析ソフトを用いて求めた。上記主磁極5の形状では、最適値として7nmが算出されたため、比較例として、1nmから10nmの試料を作成した。G記録磁極−FGLが小さすぎると、有効磁界が強すぎて磁化反転領域が広がりすぎる懸念がある。G記録磁極−FGLが大きすぎると、有効磁界が弱すぎて磁化反転領域が形成されない懸念があるだけでなく、主磁極5と対向磁極6との距離が広がるため高周波磁界発生素子201が十分な周波数の高周波を発生できない可能性がある。主磁極5とFGL2の距離がマイクロ波アシスト記録に及ぼす影響については、実施例4で詳述する。
なお、本実施例の磁気記録装置において、磁気ヘッドスライダとサスペンションとの関係、記録ヘッド部と再生ヘッド部を含めた磁気ヘッド全体の構成は図19、磁気記録装置の全体構成としては図13、図14に示す構成とした。すなわち、磁気ヘッドの基本構成としては、対向磁極がトレーリング側最端部に配置され、主磁極が対向磁極よりもリーディング側に配置されているものを用いた。
次に、高周波磁界発生素子201について説明する。高周波磁界創生層(FGL)2には、厚さ13nmの(Co/Fe)n多層膜を用いた。金属非磁性スピン伝導層3としては、厚さ2nmのCuを用いた。金属非磁性スピン伝導層3と隣接する層との間に分極率の大きなCoFeB層を1nm程度挿入すると、スピンの選択性が高まり、同じ電流でもスピントルクが大きくなり、必要電流を小さくする効果がある。スピン注入層4には、Hk=15kOeで厚さ11nmの(Co/Ni)n多層膜を用いた。金属非磁性スピン散乱体12としては、厚さ3nmのPtを用いた。Pdを用いても同様な作用がある。
高周波磁界創生層(FGL)2に用いた(Co/Fe)n多層膜は、負の垂直磁気異方性を有する磁性体で、自発磁化を膜面内に拘束する性質がある。高周波磁界創生層(FGL)2は、磁化が面内で高速回転する必要があるが、磁化を面内に留める作用が弱いと磁化回転が不安定になり、安定で十分な高周波出力が得られない。従来は、幅や高さに対して厚さが薄かったため、形状磁気異方性によって、磁化を面内に拘束することが可能であった。しかし、狭いトラックを形成するため高周波磁界創生層(FGL)2の幅を小さくすると、もはや、形状磁気異方性が期待できなくなる。十分な高周波磁界強度を得るためには、厚さを薄くできないためである。幅(本実施例では15nm)、高さ(本実施例では15nm)、厚さがほぼ同程度であり、磁化を面内に拘束するには、負の垂直磁気異方性を導入する必要がある。
「負の垂直磁気異方性」は、垂直磁気異方性が負の状態を意味する。通常の垂直磁気記録媒体に用いられる「正の垂直磁気異方性」においては、例えば、六方晶のc軸方向に磁化が向きやすい性質を有する。これに対して、「負の垂直磁気異方性」では、c軸方向に磁化が向き難い性質を有するため、c軸方向に垂直な面内方向に磁化があると安定する。負の垂直磁気異方性材料としては、(Co/Fe)n多層膜のほか、六方晶CoIr合金、CoIrFe合金、α’−FeC、dhcpCoFe、NiAs型MnSb等が知られている。中でも、(Co/Fe)n多層膜は、飽和磁化が2.3テスラ以上あり、異方性磁界も−10kOe以上であるので、面内で磁化回転しながら高周波磁界を発生する高周波磁界創生層(FGL)2材料として打ってつけである。他の負の垂直磁気異方性材料を用いる場合には、CoFe合金と交換結合させて用いればよい。
ここで、高周波磁界発生素子(STO)201の動作について説明する。スピン注入層4側からFGL2側へSTO駆動電流を流すと、FGL2の電子のうち、スピン注入層4と同じスピンの方向を持つものの方がスピン注入層4へ流入しやすくなるため、スピン注入層4と逆方向のスピンは反射され、FGL2に残留してピントルク作用をもたらす。このスピントルクは、高周波磁界発生素子(STO)201に印加している磁界と逆向きに作用するため、磁界ベクトルに向かって反時計回りに回転を続けることになる。主磁極5の磁化が逆転した場合、スピン注入層4磁化が反転するので、STO駆動電流を一定にしておけば、自動的にFGL2の磁化の回転方向が反転し、記録媒体の磁化反転に有効な高周波磁界を主磁極5側に創生することが可能である。
図23,図24は、別の高周波磁界発生素子201の例を示す模式図である。図23は記録ヘッド部及び媒体の断面模式図、図24は記録ヘッド部を浮上面から見た模式図である。
FGL2には、厚さ13nmの(Co/Fe)n多層膜を用いた。金属非磁性スピン伝導層3としては、厚さ2nmのCuを用いた。金属非磁性スピン伝導層3と隣接する層との間に分極率の大きなCoFeB層を1nm程度挿入すると、スピンの選択性が高まり、同じ電流でもスピントルクが大きくなり、必要電流を小さくする効果がある。スピン注入層4には、Hk=12kOeで厚さ3nmの(Co/Ni)n多層膜を用いた。金属非磁性スピン散乱体12としては、厚さ3nmのPdを用いた。
この構造は、図21、図22に示した高周波磁界発生素子201と比べて、スピン注入層4の厚さが薄く、垂直磁気異方性磁界も小さい。さらに電流方向が逆になっている。このようにすることで、スピン注入層4の磁化をFGL2磁化と反平行に回転させることが可能となる。スピン注入層4の磁化が膜面垂直方向を向くことがないので、磁化の回転方向の切り替えがスムーズにいくことが期待される。また、スピン注入層4の磁化の創生する磁界は、薄くて磁化も小さいので、有効高周波磁界への影響はきわめて少ない。
記録媒体7には、パタン媒体を使用した。基板19上に、スパッタリングにより記録層18、共鳴層17を順に積層している。共鳴層17として磁気異方性磁界が1.4MA/m(17kOe)の厚さ4nmの(Co/Pt)人工格子層を用い、記録層18には磁気異方性磁界が2.4MA/m(30kOe)の厚さ6nmのFePt層を用いた。共鳴層17は、ヘッドの高周波磁界に共鳴して、媒体の磁化反転を誘導するもので、垂直磁気異方性磁界をHk-resとする。強磁性共鳴による吸収線幅の測定の結果、共鳴層17と記録層18のダンピング定数αは、それぞれ0.07と0.02であった。
連続膜を形成した後、トラック方向の長さが9nmでダウントラック方向が7nmの磁性体パタンをトラックピッチ12.5nm、ビットピッチ10.0nmで配置されるように、EBマスタリングによりマスクを形成した。また、同マスクには、トラック位置決めと、記録部パタンへの記録タイミングの同期を目的とするサーボ部が設けられている。パタン形成には、自己組織化やナノインプリント技術等を併用して用いてもよい。その後、連続膜をエッチングし、上記の磁性体パタンを形成した。パタン形成後、隙間にSiOを埋め、研磨により余分なSiOを取り除いた後、表面に保護膜、潤滑膜を形成して記録再生に用いた。エッチングの代わりに、イオン照射によりパタン境界部を非磁性化してもよい。この場合、SiOの埋め込み及び研磨が不要となるため、信頼性が向上する。
(実施例4)
実施例2,3,4に記載のヘッド、記録媒体をスピンスタンドにセットし、記録再生実験を行った。1パタン1ビットの記録を行うため、パタンに同期した記録信号を送る必要がある。ヘッド媒体相対速度20m/s、磁気スペーシング5nmで磁気記録を行い、さらにこれをシールド間隔18nm、実効再生幅12nmのGMRヘッドにより再生した。
実施例2,3,4に記載のヘッド、記録媒体をスピンスタンドにセットし、記録再生実験を行った。1パタン1ビットの記録を行うため、パタンに同期した記録信号を送る必要がある。ヘッド媒体相対速度20m/s、磁気スペーシング5nmで磁気記録を行い、さらにこれをシールド間隔18nm、実効再生幅12nmのGMRヘッドにより再生した。
図25は、FGL幅15nm、主磁極−FGL間距離5nm、高周波磁界の周波数25GHzで記録した時の、記録磁極幅に対する記録されたトラック幅を示したものである。ビットパタン媒体を用いているので、記録されるトラック幅はトラックピッチTpの整数倍となるように思われるが、実際には、隣接トラックのビットがある確率で反転する。本実施例では、測定対象トラックの両隣のトラックに予め10T(10ビット毎に極性が反転)パタンを記録しておき、2Tパタンを記録後、対象トラックと両隣トラックを再生した。記録トラック幅Wrecを、対象トラックの2T出力をPo、隣接トラックの2T出力をP-、P+として、次式のように求めた。
Wrecは、記録磁極幅の増加とともに緩やかに増加するが、FGL幅の1.5倍を超えると急速に増加した。また、記録磁極幅がFGL幅の4分の1より小さい場合には、対象トラックの2T出力が減少した。したがって、記録磁極幅(トラック幅方向の寸法)がFGL幅(トラック幅方向の寸法)の2分の1より大きく、1.5倍より小さくするのが好ましい。
図26は、FGL幅15nm、主磁極幅15nmで、主磁極−FGL間距離を変えた場合の記録トラック幅が最小になる(最適)周波数と、その最小値を示したものである。最適周波数は、主磁極−FGL間距離にほぼ比例して増加しているが、主磁極−FGL間距離が記録磁極幅の0.65倍を超えると全く記録が行えなくなった。高周波磁界強度が、λ点を超えなくなるためと考えられる。一方、主磁極−FGL間距離が記録磁極幅の0.25倍より小さい場合には、記録トラック幅が急速に大きくなった。最適周波数は、黒丸で示している。主磁極−FGL間距離が小さすぎると両者の影響が強すぎるためと考えられる。したがって、主磁極−FGL間距離は記録磁極幅の4分の1より大きく、0.65倍より小さくするのが好ましい。
図26には、最適λ点から求めた主磁極−FGL間距離も併せて示してある。±3nmずれても、記録トラック幅が小さい領域で動作させることができる。
FGL幅15nm、主磁極幅15nmで、主磁極−FGL間距離を7nmのヘッドを用い、25GHzが得られるSTO駆動電流により、記録再生パフォーマンスを調べた。線記録密度1250kFCIでの信号/ノイズ比を測定したところ、最大13.0dBが得られ、ダウントラック方向にも十分な書き込みが行われていることが分かった。1平方インチあたり5Tビットを超える記録密度の記録再生が十分達成可能である。
(実施例5)
実施例3,4に記載のヘッド、記録媒体を実施例1の磁気記録装置(2枚の2.5インチ磁気ディスクの各面に記録)に組み込んで性能評価を行ったところ、記録容量10Tバイト(1平方インチあたり5Tビット)で情報転送速度2Gbit/sの高周波回転磁界を利用した磁気記録再生装置が得られた。記録ヘッドと記録媒体の組み合わせは、本実施例に限るものではなく、本発明の記録ヘッドを他の記録媒体と組み合わせてもよい。シングルドライト(瓦書き)記録方式を併用すれば、さらに大容量の磁気記録再生装置が得られ、消費電力の低減ができる。
実施例3,4に記載のヘッド、記録媒体を実施例1の磁気記録装置(2枚の2.5インチ磁気ディスクの各面に記録)に組み込んで性能評価を行ったところ、記録容量10Tバイト(1平方インチあたり5Tビット)で情報転送速度2Gbit/sの高周波回転磁界を利用した磁気記録再生装置が得られた。記録ヘッドと記録媒体の組み合わせは、本実施例に限るものではなく、本発明の記録ヘッドを他の記録媒体と組み合わせてもよい。シングルドライト(瓦書き)記録方式を併用すれば、さらに大容量の磁気記録再生装置が得られ、消費電力の低減ができる。
以上では、典型的な例として、いくつかのFGL幅の場合について詳細に説明したが、上記結果はトラック幅方向の寸法が30nm未満のFGLを備える磁気ヘッドに対していずれも当てはまるものである。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
2 高周波磁界創生層(FGL)
3 金属非磁性スピン伝導層
4 スピン注入層
5 主磁極
6 対向磁極
7 記録媒体
11 金属非磁性スピン散乱体
12 金属非磁性スピン散乱体
17 共鳴層
18 記録層
19 基板
3 金属非磁性スピン伝導層
4 スピン注入層
5 主磁極
6 対向磁極
7 記録媒体
11 金属非磁性スピン散乱体
12 金属非磁性スピン散乱体
17 共鳴層
18 記録層
19 基板
Claims (15)
- 記録磁界を発生する記録磁極と、
前記記録磁極に近接して配置された高周波磁界発生素子とを備え、
前記高周波磁界発生素子は、スピン注入層と非磁性スピン伝導層と高周波磁界創生層を有し、
前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅は30nm未満であり、
浮上面で見たとき、前記記録磁極のトラック幅方向の幅が前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅の0.5から1.5倍の範囲であることを特徴とする磁気ヘッド。 - 請求項1に記載の磁気ヘッドにおいて、
前記記録磁極のトラック幅方向の幅が前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅の0.5から1.0倍の範囲であることを特徴とする磁気ヘッド。 - 請求項1に記載の磁気ヘッドにおいて、
前記記録磁極の端部と前記高周波磁界創生層の端部との距離が、前記記録磁極のトラック幅方向の幅の0.25から0.65倍の範囲であることを特徴とする磁気ヘッド。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気ヘッドにおいて、
前記高周波磁界発生素子は、負の垂直磁気異方性を有する磁性体を含むことを特徴とする磁気ヘッド。 - 磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体を駆動する媒体駆動部と、
前記磁気記録媒体に対して記録及び再生動作を行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体上の所望の位置に駆動するヘッド駆動部とを備え、
前記磁気記録媒体は、非磁性基板上に記録層と共鳴層を積層した構造を有し、
前記磁気ヘッドは、記録磁界を発生する記録磁極と、前記記録磁極に近接して配置された高周波磁界発生素子とを備え、前記高周波磁界発生素子は、スピン注入層と非磁性スピン伝導層と高周波磁界創生層を有し、
前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅は30nm未満であり、
浮上面で見たとき、前記記録磁極のトラック幅方向の幅が前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅の0.5から1.5倍の範囲であることを特徴とする磁気記録装置。 - 請求項5に記載の磁気記録装置において、
前記記録磁極のトラック幅方向の幅が前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅の0.5から1.0倍の範囲であることを特徴とする磁気記録装置。 - 請求項5に記載の磁気記録装置において、
前記記録磁極の端部と前記高周波磁界創生層の端部との距離が、前記記録磁極のトラック幅方向の幅の0.25から0.65倍の範囲であることを特徴とする磁気記録装置。 - 請求項5〜7のいずれか1項に記載の磁気記録装置において、
前記高周波磁界発生素子は、負の垂直磁気異方性を有する磁性体を含むことを特徴とする磁気記録装置。 - 請求項9又は10に記載の磁気ヘッドにおいて、
前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅は30nm未満であり、
浮上面で見たとき、前記記録磁極のトラック幅方向の幅が前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅の0.5から1.5倍の範囲であることを特徴とする磁気ヘッド。 - 請求項9又は10に記載の磁気ヘッドにおいて、
前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅は30nm未満であり、
前記記録磁極の端部と前記高周波磁界創生層の端部との距離が、前記記録磁極のトラック幅方向の幅の0.25から0.65倍の範囲であることを特徴とする磁気ヘッド。 - 磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体を駆動する媒体駆動部と、
前記磁気記録媒体に対して記録及び再生動作を行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体上の所望の位置に駆動するヘッド駆動部とを備え、
前記磁気記録媒体は、非磁性基板上に記録層と共鳴層を積層した構造を有し、
前記磁気ヘッドは、記録磁界を発生する記録磁極と、前記記録磁極に近接して配置された高周波磁界発生素子とを備え、前記高周波磁界発生素子は、スピン注入層と非磁性スピン伝導層と高周波磁界創生層を有し、
前記高周波磁界発生素子から発生される高周波磁界と共鳴する前記共鳴層の磁気異方性磁界をHk-resとするとき、前記記録磁界Hextの大きさが次式の関係を満たす位置の前後3nmの間に前記高周波磁界創生層の端部が設けられている
ことを特徴とする磁気記録装置。
- 請求項13に記載の磁気記録装置において、
前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅は30nm未満であり、
前記磁気ヘッドを浮上面から見たとき、前記記録磁極のトラック幅方向の幅が前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅の0.5から1.5倍の範囲であることを特徴とする磁気記録装置。 - 請求項13に記載の磁気記録装置において、
前記高周波磁界創生層のトラック幅方向の幅は30nm未満であり、
前記記録磁極の端部と前記高周波磁界創生層の端部との距離が、前記記録磁極のトラック幅方向の幅の0.25から0.65倍の範囲であることを特徴とする磁気記録装置。
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JP2012105625A JP2013235621A (ja) | 2012-05-07 | 2012-05-07 | マイクロ波アシスト記録用磁気ヘッド及び磁気記録装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019057338A (ja) * | 2017-09-19 | 2019-04-11 | 株式会社東芝 | 磁気ヘッド及び磁気記録再生装置 |
JP2021044028A (ja) * | 2019-09-06 | 2021-03-18 | 株式会社東芝 | 磁気ヘッド及び磁気記録装置 |
JP2021149979A (ja) * | 2020-03-17 | 2021-09-27 | 株式会社東芝 | 磁気ヘッド |
-
2012
- 2012-05-07 JP JP2012105625A patent/JP2013235621A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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