JP2013231325A - 支持用バー材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い作業性を確保しつつ、経時変化に強い、腐食防止処理がなされたコンクリート埋設物の支持用バー材を提供する。
【解決手段】本発明のコンクリート埋設物20の支持用バー材10は、手により三次元方向に折り曲げ可能に形成され、コンクリート埋設物20に取り付けた状態で、コンクリート埋設物20から突出した両端側がコンクリート構築物の支骨をなす鉄筋30に固定されることによりコンクリート埋設物20を鉄筋30に支持させると共に、コンクリート構築物20を形成するために立設された型枠に対して突っ張り強度を有しており、軟質合成樹脂層12がその表面に形成されてなることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、コンクリート埋設物の支持用バー材に関する。
ケーブル配線用ボックス、給水湯管・ガス管などの流体管が接続される継ぎ手を収納する流体用ボックス、電線管又は流体管が接続されて型枠に固定される管端末固定具などのコンクリート埋設物を鉄筋コンクリート建築物の壁内に埋設するには、型枠内にコンクリートを打設する前に、コンクリート型枠を構成する鉄筋にコンクリート埋設物を支持させて、当該コンクリート埋設物をコンクリート型枠に押圧した状態で固定する必要がある。そのため、従来は、例えば、特許文献1のバー材が用いられている。
特許文献1では、図8(a)に示すとおり、バー材1をコンクリート埋設物4に固着し、当該バー材1を折り曲げると共に、その両端を鉄筋5に対して結束固定することによって、バー材1を介してコンクリート埋設物4を鉄筋5に支持している。このバー材1は、手で折り曲げ可能な番線と称される鉄線から成り、折り曲げて取り付けられた状態でコンクリート埋設物4を鉄筋5の型枠に押圧できる突張強度を有している。また、バー材1の外面には、螺旋溝2が全長に亘って(バイトを回転させることによる)切削加工によって形成されている。この螺旋溝2によって、鉄筋5とバー材1との間の滑り抵抗が大きくなり、鉄筋5に対するコンクリート埋設物4の位置ずれが防止される。そして、このバー材1を使用して実際に施工する場合には、鉄線からなるバー材1の腐食(酸化)を防止するために、図8(b)に示すように、バー材1の表面にオイル層3を形成する必要があった。このオイル層3は、バー材1の表面に多量のオイルを塗布することによって形成されている。
実開平6−6603号公報
しかしながら、特許文献1のバー材では、長期に亘ってコンクリート埋設物を保持する必要があるので、バー材表面全体が外気(コンクリート中に含まれる空気)に全く曝されないように、大量のオイルがその表面に塗布されている。そのため、作業者は、オイルにまみれたバー材を手で握って、コンクリート埋設物の固定作業をおこなわなければならず、種々の問題が生じている。つまり、バー材に設けられたオイル層によってバー材表面が滑りやすくなるので、作業時にバー材の折り曲げ処理に手間取るという問題があった。あるいは、作業者がバー材を手から滑らせて落下させ、特には、連結された埋設物(ボックス等)及び鋼製のバー材はそれなりの重量を有しているため、バー材及びボックスが凶器となって下方の作業者を直撃し負傷させる等の危険性が生じるという問題があった。さらに、オイルが作業者の手に付着することによる手の汚れやべたつきによって、作業の快適性が損なわれるという問題があった。また、経時によりオイル層がコンクリート中に染み出して一部が薄くなったり、或いは、作業中にオイル層が(手で触る等により)剥げたり、拭い取られたりした場合には、その部分が外気に曝されて、外気に曝された部分からバー材が腐食するという問題があった。さらに、バー材の表面に塗布されたオイルが潤滑油として機能し、バー材と鉄筋との間の摩擦抵抗が下がり、コンクリート埋設物の位置ずれを十分に防止できないといった問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高い作業性を確保しつつ、経時変化に強い、腐食防止処理がなされたコンクリート埋設物の支持用バー材を提供することにある。
請求項1に記載の支持用バー材は、手により三次元方向に折り曲げ可能に形成され、コンクリート埋設物に取り付けた状態で、コンクリート埋設物から突出した両端側がコンクリート構築物の支骨をなす鉄筋に固定されることによりコンクリート埋設物を鉄筋に支持させると共に、コンクリート構築物を形成するために立設された型枠に対して突っ張り強度を有する支持用バー材であって、軟質合成樹脂層がその表面に形成されてなることを特徴とする。
請求項2に記載の支持用バー材は、請求項1の支持用バー材において、当該支持用バー材が鉄筋に固定されたときに、鉄筋又は鉄筋に結束するための結束線が軟質合成樹脂層に食い込むように、軟質合成樹脂層が所定厚で形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の支持用バー材は、請求項2の支持用バー材において、軟質合成樹脂層は、配線系統等の種類を識別するために着色されてなることを特徴とする。
請求項4に記載の方法は、請求項1から3のいずれか一項に記載の支持用バー材によって、コンクリート埋設物を鉄筋に支持させる方法であって、支持用バー材をコンクリート埋設物に取り付けるステップと、コンクリート埋設物から突出した支持用バー材の両端側を鉄筋に巻き付けるステップと、鉄筋に巻き付けられた支持用バー材と鉄筋とを結束線で固定するステップと、を含み、鉄筋及び結束線が支持用バー材の軟質合成樹脂層に食い込んで、支持用バー材が鉄筋及び結束線に密着して当接することを特徴とする。
請求項1に係る発明は、従来の腐食防止用オイルを表面に塗布していたバー材に代替すべく、表面に軟質合成樹脂層を形成したコンクリート埋設物の支持用バー材を提供する。本発明の支持用バー材では、支持用バー材表面に軟質合成樹脂層を形成することによって、軟質合成樹脂層内部の(金属製)芯材が外気(又はコンクリート中の空気)に直接曝露される虞を軽減させ、より確実に支持用バー材の腐食(酸化)を防止することができる。このように、軟質合成樹脂層によって芯材表面が被覆されていることにより、支持用バー材にオイルをその表面に塗布する必要がないので、従来扱っていたオイル層を表面に有するバー材と比較して、支持用バー材の表面が滑りにくくなり、作業者は支持用バー材を手で容易に取り扱うことができる。また、作業者が支持用バー材を手で把持すると、軟質合成樹脂層が適度に(微視的又は巨視的に)撓んで、手指と支持用バー材表面とが密着するため、手に馴染み、支持用バー材が手指から滑ってすり抜けることが防止される。このため、作業者が支持用バー材の設置作業を行うときに、作業者が支持用バー材を滑らせて落下させる危険性を著しく軽減させることができる。したがって、本発明の支持用バー材は、コンクリート埋設物の固定作業の安全性を極めて向上させるものである。さらに、支持用バー材を触っても、従来のようにオイルにより作業者の手が汚れて、べたつくことがないので、本発明の支持用バー材は作業の快適性をも著しく改善する。
また、コンクリート埋設物、鉄筋又は結束線が接触する支持用バー材の表面層が軟質材料で形成されているため、これらの間により強い摩擦抵抗を発揮させることができる。すなわち、一般的に、固体表面は微視的領域では多数の凹凸からなり、特に一方の固体が軟質材である場合には、摩擦接触時に軟質材表面の凹凸がつぶれて弾性変形しやすい。このため、摩擦接触する物質の少なくとも一方が軟質である場合、微視的領域における2面間の真の接触面積が増加し、摩擦抵抗が増加する。なお、2面間の摩擦抵抗を表す摩擦係数が材料の硬度の減少とともに増加することは、Taberのジャンクション成長理論に基づいて理論付けされている。
例えば、本発明では、支持用バー材(軟質表面)と鉄筋(硬質表面)との間の高い摩擦力により、コンクリート埋設物を鉄筋に支持させる状態に支持用バー材を折り曲げる際に、支持用バー材を鉄筋に対して滑らせずに簡単に折り曲げることができる。また、本発明の支持用バー材を鉄筋に固定するときに、支持用バー材と鉄筋との間にこの摩擦力が働き(すなわち、オイル層によって摩擦力が低下することがないので)、支持用バー材と鉄筋とが互いに滑動することを防ぎ、鉄筋に対するコンクリート埋設物の位置ずれの発生を抑えることができる。これらの効果は、支持用バー材とコンクリート埋設物、及び、支持用バー材と結束線との関係でも同様に発揮されることは云うまでもない。さらに、支持用バー材表面の軟質合成樹脂層は、オイルを塗布していない硬質な金属外面と比較したとしても優位な滑り止め効効果を発揮する。すなわち、本発明の支持用バー材は、コンクリート埋設物の固定作業の容易性、迅速性、効率性及び確実性を著しく改善するものである。
さらに、本発明の支持用バー材は、従来のバー材よりも、経時による腐食防止効果の点でも優れている。すなわち、バー材に大量のオイルを塗ったとしても、経時によってオイルがコンクリート内に染み込んでバー材表面のオイル層が薄くなり、腐食防止効果が低下する虞がある。これに対して、本発明の支持用バー材では、表面に軟質合成樹脂層が形成されているので、コンクリート内に埋め込まれている限りは、軟質合成樹脂層が剥離する虞もほとんどなく、腐食防止効果を安定して発揮することができる。
したがって、本発明の支持用バー材は、従来のオイル層を有するバー材や硬質の金属外面のバー材と比較して、コンクリート埋設物を鉄筋に支持させる際の作業性を著しく改善するとともに、設置後の耐久性をも改善するものである。
請求項2に記載の支持用バー材は、請求項1の支持用バー材の効果に加えて、鉄筋又は結束線が当接する所定厚の軟質合成樹脂層の表面が凹んで、鉄筋又は結束線が軟質合成樹脂層に所定深さに食い込むことによって、より優れた滑り止め効果を発揮することができる。
請求項3に記載の支持用バー材は、請求項1又は2の支持用バー材の効果に加えて、軟質合成樹脂層が配線系統等の種類を識別するために着色されていることにより、コンクリート埋設物の用途を一目で識別することができ、当該コンクリート埋設物への配線作業における誤認を軽減させることができる。
請求項4に記載の方法によれば、請求項1から3のいずれかの支持用バー材の効果を発揮させつつ、当該支持用バー材によってコンクリート埋設物を鉄筋に支持させることができる。つまり、本発明の方法によれば、従来のオイル層を有するバー材や硬質の金属外面のバー材を使用する方法と比較して、コンクリート埋設物を鉄筋に支持させる際の作業性を著しく改善するとともに、設置後の耐久性をも改善することができる。
本発明の一実施形態における支持用バー材を用いて鉄筋がコンクリート埋設物を支持している状態の斜視図。 図1のコンクリート埋設物が壁内に埋め込まれている状態を示す図。 図1の支持用バー材を示し、(a)は斜視図、(b)は縦断面図。 図1の配線ボックスを示し、(a)は斜視図、(b)はA−A断面図。 図2の支持用バー材でコンクリート埋設物を鉄筋に支持させる工程を示し、(a)は支持用バー材をコンクリート埋設物内に挿通するステップ、(b)コンクリート埋設物内に挿通された支持用バー材を折り曲げるステップ、(c)コンクリート埋設物を支持用バー材を介して鉄筋に固定するステップを示す。 図5(c)において、(a)が軟質合成樹脂層と鉄筋との当接状態を示し、(b)が軟質合成樹脂層と結束線との当接状態を示す部分拡大概略図。 本発明の一実施形態における支持用バー材を別のコンクリート埋設物に取り付けた状態の斜視図。 先行技術におけるバー材を示し、(a)は、当該バー材を介して、コンクリート埋設物を鉄筋に支持させた状態の斜視図、(b)は設置時においてオイル層が設けられた当該バー材の縦断面図。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態としての支持用バー材10を用いて、コンクリート埋設物としての配線ボックス20を鉄筋30に固定させた状態を示している。コンクリート構築物の支骨をなすべく鉄筋30が格子状に組まれ、コンクリート構築物を形成するために立設された当該鉄筋30の型枠を基礎としてコンクリートが打設されることによってコンクリート壁が構築される。図1は、コンクリートを打設する前の状態であり、2本の支持用バー材10が配線ボックス20内に挿通されており、当該支持用バー材10の端部11が鉄筋30に巻き付いていると共に、結束線31によって支持用バー材10が鉄筋30に結束固定されている。
図2は、図1の状態で、支持用バー材10を介して配線ボックス20を支持する鉄筋30の型枠に対してコンクリートが打設され、壁面Wが形成された状態を示している。配線ボックス20の背面側に支持用バー材10が取り付けられ、且つ、配線ボックス20の開口22側が壁面W側に位置している。この支持用バー材10は、配線ボックス20が壁面W側に位置するように壁面W側に向かって折曲されており、この折り曲げられた状態で鉄筋30の型枠に対して配線ボックス20を押圧するのに十分な突っ張り強度を有して構成されている。
図3(a)及び(b)を参照して、支持用バー材10を説明する。図3(a)に示すとおり、支持用バー材10は短径の棒体であり、その表面には軟質合成樹脂層12が形成されている。さらに、支持用バー材10の略中央には、扁平状の係合片13が設けられている。そして、軟質合成樹脂層12が係合片13を含む支持用バー材10全体の外面を構成している。当該係合片13は、支持用バー材10の芯材14を軟質合成樹脂層12で被覆する前又は被覆した後に押圧加工によって扁平状に押潰されることにより形成される。後述するように、この係合片13は、配線ボックス20の挿通孔23内に嵌合されて回動防止手段として機能する。なお、係合片13は本発明に必須の構成要素ではなく、これを省略することも可能である。
図3(b)は支持用バー材10の縦断面図である。支持用バー材10は、その中心に鉄線からなる芯材14を備え、軟質合成樹脂層12が当該芯材14の外周に密着して被覆している。そして、支持用バー材10の芯材14は、その断面において直径d1を有し、他方、軟質合成樹脂層12は所定厚d2を有している。本実施形態では、支持用バー材10の直径d1が4mmであるのに対して、軟質合成樹脂層12の厚みd2が約0.4mmである。
この軟質合成樹脂層12の所定厚d2は、0.1mm以上であるのが好ましい。つまり、所定厚d2が0.1mm以上であると、軟質合成樹脂層12が鉄筋30又は結束線31の外面に当接したときに、その表面が巨視的に凹むように撓み変形し、鉄筋30又は結束線31に食い込むことにより、支持用バー材10の表面と鉄筋30等との間でより優れた滑り止め効果を発揮することができる。すなわち、軟質合成樹脂層12表面が鉄筋30又は結束線31の外面形状に合わせて変形し、当該軟質合成樹脂層12上に形成された凹部内に鉄筋30又は結束線31が嵌り込むため、支持用バー材10と鉄筋30又は結束線31との相対移動が抑えられる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、軟質合成樹脂層の表面が微視的に変形して滑り止め効果又は腐食防止効果が発揮される範囲であれば、本発明の技術範囲に包含されており、軟質合成樹脂層の厚みを任意に変更することができる。
また、支持用バー材10の芯材14は、番線と称される鉄線から成り、手で折り曲げ可能な硬度を有し、且つ、折り曲げられた状態で自身が取り付けられるコンクリート埋設物(一実施形態では配線ボックス20)を型枠に押圧できる突張強度を有している。しかしながら、支持用バー材10の芯材14の直径又は断面形状を任意に設定可能であると共に、芯材14の材質は任意に選択可能である。例えば、本実施形態で採用された鉄線の代わりに、亜鉛等で皮膜されたメッキ線等を採用することもできる。さらに、その表面を凹凸加工した芯材を用いることで、軟質合成樹脂層表面にも凹凸が転写され、さらなる滑り止め効果を期待することができる。
そして、軟質合成樹脂層12は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、シリコン、合成ゴム等の軟質の合成樹脂材料から形成される。しかしながら、本発明の軟質合成樹脂材料とは微視的又は巨視的に撓み変形する材料を指し、上述した特定の材料に限定するものではない。そして、当該支持用バー材10は、合成樹脂材料を芯材14に対して押出被覆することによって製造される。この押出被覆工程によって、軟質合成樹脂層12が芯材14に密着形成される。或いは、芯材14の周りに接着剤層を形成して、軟質合成樹脂層12と芯材14とを接着することによっても、支持用バー材10を製造可能である。そして、本実施形態では、軟質合成樹脂層12の表面は平滑であるが、エンボス加工等により、その表面に凹凸を形成してもよい。
さらに、本実施形態の支持用バー材10では、製造工程(押出被覆工程)中又はその後の工程で、軟質合成樹脂層12を着色することが可能である。この着色において、複数の色が配線系統の種類等に応じて使い分けられ、作業者が配線系統の種類等を即時に識別することが可能となる。なお、この「着色」とは、軟質合成樹脂層の表面が所定の色を有していることを意味し、例えば、透明な軟質合成樹脂層と彩色した芯材とを組み合わせたものをも含む概念である。また、本実施形態の支持用バー材10では、軟質合成樹脂層12が芯材14の外周全てを覆っているが、本発明は、軟質合成樹脂層が支持用バー材の外周の一部だけを覆う形態も含んでいる。すなわち、酸化防止、作業性改善等の本発明の主要な目的を達成可能であれば、実施形態に限定されることはない。
図4を参照して、本実施例に用いられている配線ボックス20の形態について説明する。図4(a)に示すとおり、この配線ボックス20は、前面に開口22を有すると共に背面が底壁21aによって閉塞されている矩形状の箱体である。そして、対向する1組の側壁21bには、挿通孔23がそれぞれ2つずつ(合計4つ)穿設されており、各挿通孔23は底壁21aの4隅近傍にそれぞれ位置している。各挿通孔23は、支持バー材10の径寸法に対応する直径を有する円形孔と、係合片13の幅寸法に対応する矩形孔とを組み合わせた形状を有する。
図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。図4(b)に示すとおり、一方の挿通孔23と、これに対向して位置する他方の挿通孔23との間には、対向する側壁間に延設されたバー材挿通部23bによって区画された長孔23aが延びており、一方の挿通孔23と長孔23aと他方の挿通孔23とは連通している。すなわち、各挿通孔23及び長孔23aは支持用バー材10を挿通可能に構成されている。そして、長孔23aの断面形状は、挿通孔23の円形孔の形状に対応しており、挿通孔23と長孔23a(バー材挿通部23b)との間には、段状の係合面23cが形成されている。支持用バー材10の係合片13が挿通孔23に嵌合されると共に係合片13と係合面23cとが係合することで、支持用バー材10はその周方向に回動不能に配線ボックス20に固定されうる。なお、この回動防止手段を備えた配線ボックス20は、特許文献(特開2008−263780号公報)に開示された技術的思想に基づいたものである。
次に、図5(a)〜(c)を参照して、支持用バー材10を用いて鉄筋30が配線ボックス20を支持した状態(図1の状態)に構築する方法について説明する。
最初に、図5(a)に示すとおり、配線ボックス20の(開口22の反対に位置する)底壁21aの4隅近傍に設けられた4つの挿通孔23のうちの1つ(上側の挿通孔23−1)に支持用バー材10の一端11aを挿通させる。そして、当該支持用バー材10の一端11aが下側の挿通孔23−2を通り抜けるまで、支持用バー材10の係合片13を上側の挿通孔23−1に嵌合させるように、支持用バー材10を配線ボックス20内に差し込み、支持用バー材10を(一方の縁辺側の)上下2つの挿通孔23−1、23−2に貫通させる。すなわち、支持用バー材10の一端11a及び他端11bが配線ボックス20の側壁から延び出るように支持用バー材10を配置する。このとき、支持用バー材10の係合片13が挿通孔23の端縁と係合面23cとに係合することにより、支持用バー材10はその周方向に回動しないように配線ボックス20を確実に支持可能である。
次に、図5(b)に示すように、支持用バー材10の配線ボックス20から延び出た部分(一端11a及び他端11b)を、鉄筋30の型枠側(すなわち配線ボックス20の背面側)に所定角度だけ手で折り曲げる。同様に、もう1本の支持用バー材10を他方の縁辺に設けられた挿通孔23に挿通させて固定及び折曲作業を行う。この支持用バー材10の折曲作業の際、支持用バー材10の軟質合成樹脂層12に挿通孔23の端縁又は縁部が食い込むことによって、支持用バー材10が配線ボックス20に対して滑動することを抑え、支持用バー材10を容易に折り曲げることができる。
そして、図5(c)に示すように、上述の配線ボックス20に固定された状態の支持用バー材10を鉄筋30に巻き付ける。このとき、支持用バー材10の端部11側を手で折り曲げることにより、鉄筋30に支持用バー材10を巻き付けて、支持用バー材10と鉄筋30とを結束線31で結束固定し、当該支持用バー材10を介して配線ボックス20を鉄筋30に支持させる。
図5(c)において、支持用バー材10の軟質合成樹脂層12と、鉄筋30及び結束線31との当接状態を示す部分拡大概略図を図6(a)及び(b)に示す。図6(a)及び(b)に示すとおり、支持用バー材10の軟質合成樹脂層12が所定厚d2(=0.4mm)で構成されており、鉄筋30及び結束線31が軟質合成樹脂層12の表面に食い込み、その表面を巨視的に撓み変形させている。この当接箇所において軟質合成樹脂層12の厚みがd3(約0.1〜0.3mm、当接の強さに依存する)となり、深さ(d2−d3)の凹部15が軟質合成樹脂層12表面に形成される。この凹部15の形状は鉄筋30及び結束線31の外面形状と合致しているため、支持用バー材10と鉄筋30及び結束線31とが嵌り合うように密着し、両者の相対移動が抑えられる。このように、鉄筋30及び結束線31が軟質合成樹脂層12表面に食い込んで密着することにより、微視的及び巨視的な接触面積が増加し、これらの間により高い摩擦抵抗が発生する。したがって、図6(a)及び(b)において、支持用バー材10は、固定位置からずれないようにしっかりと固定されている。
なお、本実施形態の支持用バー材10は、上記配線ボックス20以外のコンクリート埋設物に使用できることは言うまでもない。例えば、図7に示すとおり、方形状の取付板20Aに支持用バー材10を固着させ、当該取付板20Aを配線ボックス等のコンクリート埋設物に取り付けることによって、コンクリート埋設物を鉄筋30に支持させることが可能である。また、埋設物の埋設位置の近傍に鉄筋が存在しないときには、鉄筋の間に支持材を架設して、当該支持材に支持用バー材10を固定することにより、コンクリート埋設物を所定位置に支持させることができる。この支持材は鉄筋の型枠に組み込まれており、鉄筋と同等物とみなすことができる。すなわち、支持用バー材10を取着する支持材であれば、本発明の鉄筋に含まれることは言うまでもない。
以下、本発明の一実施形態の支持用バー材10の作用効果について説明する。
本実施形態の支持用バー材10では、その表面に軟質合成樹脂層12を形成することによって、内部の芯材14を外気(又はコンクリート中の酸素)に曝露させることなく、より確実にバー材の腐食を防止することができる。このように、軟質合成樹脂層12によって鉄線からなる芯材14が保護されているので、腐食防止のためにバー材にオイルを塗布する必要がない。従来のオイルを塗布したバー材において、例えば、高所での作業時に支持用バー材10が落下して、下方の人や物を損傷させる大事故が発生する虞があり、その安全性に問題があった。これに対して、本実施形態の支持用バー材10では、作業者が支持用バー材10を手で把持すると、軟質合成樹脂層12が適度に(微視的又は巨視的に)撓んで、手指と支持用バー材10の表面とが密着するため、手に馴染み、支持用バー材10が手指から滑ってすり抜けることが防止される。つまり、従来扱っていたオイル層を有するバー材又は(オイルが塗布されていない)硬質のバー材と比較して、支持用バー材10の表面に形成された軟質合成樹脂層12が滑り止めの効果を発揮するため、作業者は支持用バー材10を手で容易に取り扱うことができる。したがって、作業者が支持用バー材10で鉄筋30にコンクリート埋設物(配線ボックス20)を支持させるように図1の状態に配設するときに、作業者が支持用バー材10をしっかりと把持することができるため、支持用バー材10を手から滑らせて落下させる危険性を著しく軽減することができる。すなわち、本実施形態の支持用バー材10はコンクリート埋設物の固定作業の安全性を極めて向上させるものである。
また、配線ボックス20を鉄筋30に支持させるように支持用バー材10を折り曲げるときに、従来のようにオイル層によってバー材表面の摩擦抵抗が低下する虞ないので、支持用バー材10を(手又は配線ボックス、鉄筋、結束線に対して)滑らせずに簡単に折り曲げることができる。特に、図6に示すとおり、硬質の配線ボックス20、鉄筋30及び結束線31(以下、鉄筋30等)が所定厚d2(>0.1mm)の軟質合成樹脂層12に当接して、その表面を撓み変形させると共にその表面に所定深さ(d2−d3)で食い込んでいる。すなわち、軟質合成樹脂層12が、鉄筋30等を食い込ませるのに十分な所定厚d2(>0.1mm)を有しているので、支持用バー材10の鉄筋30等に対する密着性が良好になり、相互間の摩擦力が高まる。そして、軟質合成樹脂層12が当接する鉄筋30等に対して滑り止めとして機能する。つまり、支持用バー材10をしっかりと手で把持して折り曲げ、鉄筋30等に対して滑動させずに固定することがより一層簡単となり、支持用バー材10と鉄筋30等とをより確実に固定することができる。さらに、支持用バー材10を鉄筋30等に固定するときに、支持用バー材10と鉄筋30等との間に、この食い込みによる高い摩擦力が働き、支持用バー材10が鉄筋30等に対して滑動することを防ぎ、設置時又は設置後において、鉄筋30に対する配線ボックス20の位置ずれの発生を抑えることができる。すなわち、本発明の支持用バー材は、コンクリート埋設物の固定作業の容易性、迅速性(効率性)及び確実性を改善するものである。
さらに、従来のオイルによる被腹膜に替えて、軟質合成樹脂層12を採用したことにより、支持用バー材10を触っても、オイルにより作業者の手が汚れて、べたつくことがないので、コンクリート埋設物の固定作業の快適性をも著しく改善する。したがって、本実施形態の支持用バー材10は、従来(特許文献1)のオイル層を有するバー材と比較して、コンクリート埋設物(配線ボックス20)を鉄筋30に支持させる作業において、容易性、迅速性、効率性、安全性等の全ての面における作業性を著しく改善するものである。
そして、一実施形態の支持用バー材10は、従来のバー材よりも、経時による腐食防止効果の点でも優れている。すなわち、バー材に大量のオイルを塗ったとしても、経時によってオイルがコンクリート内に染み込む等の要因でバー材表面のオイル層が薄くなり、腐食防止効果が低下する虞がある。これに対して、支持用バー材10では、その芯材14外面に軟質合成樹脂層12が密着形成されているので、コンクリート内に埋め込まれている限りは、軟質合成樹脂層12が剥離する虞がほとんどなく、腐食防止効果を長期に亘って安定して発揮することができる。
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
10 支持用バー材
11 端部
12 軟質合成樹脂層
13 係合片
14 芯材
20 配線ボックス(コンクリート埋設物)
21a 底壁
21b 側壁
22 開口
23 挿通孔
30 鉄筋
31 結束線
d1 芯材の径
d2 軟質合成樹脂層の厚み

Claims (4)

  1. 手により三次元方向に折り曲げ可能に形成され、コンクリート埋設物に取り付けた状態で、前記コンクリート埋設物から突出した両端側がコンクリート構築物の支骨をなす鉄筋に固定されることにより前記コンクリート埋設物を前記鉄筋に支持させると共に、前記コンクリート構築物を形成するために立設された型枠に対して突っ張り強度を有する支持用バー材であって、軟質合成樹脂層がその表面に形成されてなることを特徴とするコンクリート埋設物の支持用バー材。
  2. 当該支持用バー材が前記鉄筋に固定されたときに、前記鉄筋又は前記鉄筋に結束するための結束線が前記軟質合成樹脂層に食い込むように、前記軟質合成樹脂層が所定厚で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート埋設物の支持用バー材。
  3. 前記軟質合成樹脂層は、配線系統等の種類を識別するために着色されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート埋設物の支持用バー材。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の支持用バー材によって、コンクリート埋設物を鉄筋に支持させる方法であって、
    前記支持用バー材を前記コンクリート埋設物に取り付けるステップと、
    前記コンクリート埋設物から突出した前記支持用バー材の両端側を前記鉄筋に巻き付けるステップと、
    前記鉄筋に巻き付けられた支持用バー材と前記鉄筋とを結束線で固定するステップと、を含み、
    前記鉄筋及び前記結束線が前記支持用バー材の軟質合成樹脂層に食い込んで、前記支持用バー材が前記鉄筋及び前記結束線に密着して当接することを特徴とする方法。
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