JP2013229243A - シート状接着剤およびこれを用いてなる電子デバイス - Google Patents

シート状接着剤およびこれを用いてなる電子デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】電子デバイスの固体封止部材として用いることができるシート状接着剤であって、周辺部等からのガス透過を抑制するガスバリア構造を前もって形成したシート状接着剤を提供する。
【解決手段】厚さ方向に切り込みを有する接着剤層および前記切り込みの少なくとも側面に形成されてなるガスバリア層を有するシート状接着剤。
【選択図】図1

Description

本発明は、シート状接着剤およびこれを用いてなる電子デバイスに関し、より詳しくは、主に有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子や太陽電池素子、液晶表示素子等の電子デバイスの封止に用いられるシート状接着剤と、これを用いて封止される電子デバイスに関するものである。
次世代の電子デバイスとして、いわゆるプリンテッド・エレクトロニクス技術を用いたデバイスや、軽い・曲げられる・割れにくいといった特徴を有するフレキシブルデバイスの開発が進められている。具体的には、有機EL素子、有機太陽電池素子、CIGS太陽電池素子、液晶表示素子、電子ペーパー素子などを挙げることができる。
これらの電子デバイスは、一般的に空気中の化学成分、例えば、酸素、水蒸気、窒素酸化物によって劣化することが知られており、これらの化学成分から遮断する、いわゆる封止構造を有する。
有機EL素子を例にとると、有機EL素子においては、発光層を構成する材料及び発光素子は、水分(水蒸気)と接して吸湿すると、その発光輝度は著しく損なわれる。そのため、有機EL素子内部の湿度を下げる必要があり、さらに外気から素子を遮断・保護するため、幾つかの封止手段が設けられている。例えば、ガラスキャップやSUS缶を、接着剤を使用して貼り合わせることで、気密空間を作り、その中に乾燥剤を入れて封止するケーシングタイプの方法が開示されている。
近年、基板上の有機発光素子の上(全面)に液状の接着剤で面接着して封止する密着タイプの封止方法(固体封止)が開示され、耐湿性に優れた薄型・軽量な有機EL素子として提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、密着タイプの封止方法(固体封止方法)においては、接着剤層のボイド混入、接着剤の濡れ広がり等の課題があり各種検討がなされている。
例えば、基板と封止基板とを液状の接着剤を介して貼合する際、接着剤が塗られる時、これが濡れ広がると、発光領域以外に配置された外部電極を汚染してしまう恐れがある。汚染が生じると、外部からの電気的導通を確保することが困難となり、有機EL素子を駆動できないといった重大な欠陥を招いてしまう場合がある。
このため、特許文献2においては、広がりを防止するために、外部電極領域の周りを少なくとも一重に囲うような防護壁を設けている。しかしながら、新たに部材を配置する必要があり、コストまた工程が複雑化する等の面において問題がある。
一方で、液状の接着剤の代わりにシート状の接着剤を用いて固体封止を行う方法も検討されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、このような電子デバイスの封止において、共通の課題は、封止した周辺部からの封止接着剤を通した水蒸気等のガス浸入である。
このような電子デバイスに一般的に用いられている、ガラス、金属、金属酸化物層を形成したガスバリア性フィルム等の封止部材は非常に低いガス透過率を有している。例えば、水蒸気透過率でいうと、少なくとも1×10−4g/m/日未満である。また、有機EL素子においては、1×10−5g/m/日未満の性能が必要であるとも言われている。
これに対して、一般に封止に用いられている接着剤の硬化後の水蒸気透過率は、接着剤100μmの厚さに対して、数10g/m/日である。電子デバイスの周囲側面に露出している接着剤層の断面積は、電子デバイス全体の表面積に占める割合は少ないとはいえ、封止接着剤を通した水蒸気浸入が、電子デバイス全体の水蒸気浸入の主要因になり得る。接着剤自体の水蒸気透過率を下げる、接着剤層の厚さを薄くする、接着剤に素子周囲の封止幅を広くする、といった検討もなされているが、水蒸気透過量の低減効果は1/10程度に留まるものである。
このような、電子デバイスの側面からのガス浸入を抑制する、もしくは、側面からのガス浸入の影響を低減する、いわゆる、サイド封止の検討もなされている。
特許文献4には、素子の周辺部を樹脂層で封止し、さらにこの樹脂層の外側表面にシリコンの酸化物、窒化物及び/又は酸化窒化物を主成分とするガスバリア膜を形成した有機電界発光素子が開示されている。また、このガスバリア膜は、プラズマCVD(化学気相成長)法、反応性真空蒸着法、スパッタ法のいずれかの方法にて作製されるとしている。
特許文献5には、透明基材上に透明陽極層、発光媒体層、陰極層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を形成し、その陰極層の端面から陰極層上を含む面を枠状にバリア性を有する無機化合物を成膜した後に封止を行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置が開示されている。この枠状の無機化合物を成膜する方法としては、蒸着マスクを用いた真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVDおよび、触媒化学蒸着法等を用いるとしている。また、特許文献6には、特許文献5に開示されている形態において、無機化合物の成膜を、素子全面を覆うように形成した例が開示されている。無機化合物膜の形成は、酸化珪素、酸窒化珪素、窒化珪素膜の何れかをCVDを用いた成膜により行うとしている。
特許文献7には、陽極層、有機発光媒体層、陰極層が形成された無機ガスバリア層を有する透明基板と薄層ガラスからなる封止板を接着剤により貼り合わせて第1の封止を行なった後、封止板の外周部を溶融させることにより第2の封止を行なった有機EL素子が開示されている。
特許文献8には、基板の中央部に素子を形成し、その素子の周囲を囲むように基板上に環状にリブを形成し、そのリブ表面にガスバリア層を形成した後に、液状接着剤と別の基板とで封止を行った形態の素子が開示されている。
特開2002−216950号公報 特開2004−311226号公報 特開2011−031472号公報 特開平11−144864号公報 特開2005−183147号公報 特開2005−339863号公報 特開2006−286242号公報 米国特許出願公開第2012/0024722号明細書
しかしながら、上記特許文献4のような製膜方法で素子周辺部に沿ってガスバリア膜を形成することは非常に困難であり、コスト的に見合わないものである。また、特許文献5や6に記載されるような、素子の表面に直接ガスバリア膜を形成する方法は、素子を水蒸気等から保護する手段としては有効であるが、素子の製造工程が一工程増加する点、ガスバリア性の高いガスバリア膜を形成するにはある程度の膜厚が必要であるため製膜に時間を要する点等で、製造コストが大幅に増加する懸念がある。特許文献7の有機EL素子の製造では、封止板外周部の溶融にはYAGレーザーを用いるとしているが、ガラス封止板を溶融するほどの熱を印加した場合、融着される側の無機ガスバリア層を有する透明基板にも熱ダメージを生じ、透明基板周囲部のガスバリア性が低下するため、有効な封止手段になるとは言い難い。特許文献8の素子は、構造が複雑であることから製造工程も複雑となると考えられ、製造コストが大幅に増加する懸念がある。
上述したように、現状では低コストで、かつ、十分なガスバリア性を有するサイド封止構成は見出されていない。次世代の電子デバイスに適用可能であり、デバイス周囲からのガス透過を有効に低減し、かつ、簡便な工程で封止を行うことができる封止構成や、それに用いる封止部材が求められている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、電子デバイスの固体封止部材として用いることができるシート状接着剤であって、周辺部等からのガス透過を抑制するガスバリア構造を前もって形成したシート状接着剤を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記シート状接着剤を用いてなる耐久性に優れる電子デバイスを提供するである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、接着剤層の厚さ方向に切り込みを形成し、さらにこの切り込み側面にガスバリア層を形成することによって、十分なガスバリア性を確保しつつサイド封止性に優れた封止部材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記諸目的は、厚さ方向に切り込みを有する接着剤層および前記切り込みの少なくとも側面に形成されてなるガスバリア層を有するシート状接着剤によって達成される。
本発明のシート状接着剤は、十分なガスバリア性を確保しつつサイド封止性に優れる。また、本発明のシート状接着剤を用いて封止される電子デバイスは、側面からのガス侵入が抑制されるため、耐久性に優れる。
図1は、本発明の好ましい一実施形態のシート状接着剤の概要を示す部分断面図である。 図2は、本発明の好ましい他の実施形態のシート状接着剤の概要を示す部分断面図である。 図3は、本発明のシート状接着剤の製造方法の好ましい一実施形態を示す図である。 図4は、本発明のシート状接着剤において、接着剤層の厚さ方向に形成される切り込みの形状(接着剤層厚さ方向における形状)の好ましい実施形態を示す断面図である。 図5は、本発明のシート状接着剤において、接着剤層の面内方向に形成される切り込みの形状(接着剤層面内方向における形状)の好ましい実施形態を示す図である。 図6Aは、本発明のシート状接着剤において、接着剤層の面内方向に形成される切り込みの形状(接着剤層面内方向における形状)の他の好ましい実施形態を示す図であり、図6Bは、図6AのB−B’線での拡大断面図である。 図7は、本発明のシート状接着剤の切り込みへのガスバリア層の形成の好ましい実施形態を説明するための断面図である。 図8は、本発明の好ましい一実施形態の電子デバイスの概要を示す部分断面図である。 図9は、本発明に係る有機EL素子の一実施形態を示す断面図である。 図10は、図9の有機EL素子に使用される本発明に係るガスバリア性基材の一実施形態を示す断面図である。 図11は、実施例における形成される切り込みの形状(接着剤層面内方向における形状)を示す図である。 図12は、実施例2で使用される真空紫外線照射装置の断面模式図である。
本発明の第一は、厚さ方向に切り込みを有する接着剤層および前記切り込みの少なくとも側面に形成されてなるガスバリア層を有するシート状接着剤に関する。本発明のシート状接着剤は、接着剤層の一部(特に接着剤層の周辺端部)に厚さ方向に切り込みを形成し、さらにこの切り込みによって形成された側面にガスバリア層を設けることを特徴とする。このような構成によって、サイド封止性を向上できる。ゆえに、本発明のシート状接着剤を用いて封止される電子デバイスは、十分なガスバリア性を確保しつつサイド封止性にも優れる。また、本発明のシート状接着剤は、簡便な工程で封止を行うことができ、かつ、デバイス周囲からのガス透過を有効に低減できる。このため、本発明のシート状接着剤は、次世代の電子デバイス(特に電子デバイスの固体封止)にも好適に適用可能であり、これにより、デバイス周囲からのガス透過を有効に低減し、かつ、簡便な工程で封止を行うことができる封止部材を提供することができる。したがって、本発明のシート状接着剤を用いて封止される電子デバイスは、面内方向および側面方向双方に対してガスバリア性に優れるため、劣化原因となるガス(例えば、酸素、水蒸気、窒素酸化物等)による侵入の影響を受けにくく、耐久性に優れる。
以下、本発明を実施するための好ましい形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(シート状接着剤)
図1及び図2は、本発明の好ましい実施形態のシート状接着剤の概要を示す部分断面図であり、本発明のシート状接着剤の周辺部のみを誇張して記載したものである。
本発明のシート状接着剤は、その機能としては接着剤層のみで発現するものである。封止工程における利便性を考慮すると、本発明のシート状接着剤1は、図1に示されるように、第一の剥離可能層6、接着剤層2及び第二の剥離可能層5がこの順で積層した積層構成(第一の剥離可能層6/接着剤層2/第二の剥離可能層5)となっていることが好ましい。または、図2に示されるように、本発明のシート状接着剤1は、ガスバリア性基材7、接着剤層2及び第二の剥離可能層5がこの順で積層した積層構成(ガスバリア性基材7/接着剤層2/第二の剥離可能層5)の構成であることもまた好ましい。本形態は、図1において、第一の剥離可能層6の代わりにガスバリア性基材7を使用したものであり、この場合には、既に接着剤層の片面にガスバリア性基材が形成されているため、例えば、電子デバイスを封止する際の製造工程が簡略化できるという利点がある。本形態を採用する場合のガスバリア性基材としては、以下に詳述する「ガスバリア性基材」が同様にしてあるいは適宜修飾されて適用できる。なお、以下、このような積層構成を「シート状接着剤積層体」と称する。
また、接着剤層2は、切り込み2が厚さ方向に形成される。ここで、切り込みは、厚さ方向において、接着剤層を貫通した状態で形成されることが好ましい。これにより、接着層の厚さの全方向にわたってサイド封止性を達成できる。また、図1や図2に示されるようなシート状接着剤積層体では、切り込み3が、第二の剥離可能層5及び接着剤層2は完全に、かつ第一の剥離可能層6の途中まで、または第二の剥離可能層5の暴露面から接着剤層2と第一の剥離可能層6との界面まで、厚さ方向に接着剤層2を貫通した状態で形成されることが特に好ましい。
上記切り込み3の側面には、少なくともガスバリア層4が形成される。好ましくは、切り込み3の側面に加えて、接着剤層2の側面にもガスバリア層4が形成される。これにより、さらにサイド封止性を向上できる。図1や図2に示されるように、接着剤層2の側面、ならびに第一及び第二の剥離可能層6,5の暴露面にガスバリア層4が形成されることがより好ましい。
シート状接着剤積層体を作製する方法は、特に制限されないが、例えば、接着剤層を押し出し法等によりシート状に成形した後、第一の剥離可能層(または、図2の場合には、ガスバリア性基材;以下、同様)及び第二の剥離可能層を接着剤層の両面にそれぞれ形成する方法が挙げられる。第一の剥離可能層及び第二の剥離可能層としては、例えば離型処理がなされた樹脂フィルムを貼り付けることにより形成することができる。または、接着剤層上にコーティングにより形成することもできる。
または、シート状接着剤積層体を作製する別の方法としては、樹脂フィルム基材を第一の剥離可能層として用い、この基材上に接着剤層をコーティングにより形成する方法が挙げられる。第二の剥離可能層は上述のように、樹脂フィルムを貼り付けることにより、もしくは、接着剤層上にコーティングする等により形成することができる。
本発明において、第一及び第二の剥離可能層は、同じものであってもあるいは異なるものであってもよいが、異なるものであることが好ましく、シート状接着剤積層体の、第一の剥離可能層と接着剤層との界面の接着力1と、接着剤層と第二の剥離可能層との界面の接着力2には差を設けることがより好ましい。例えば、接着力1が接着力2より大きい(接着力1>接着力2)構成とした場合の電子デバイスの封止方法の一例を挙げると次のようになりうる。まず、第二の剥離可能層を剥離して接着剤層の片方の面を露出させ、この面を、素子を形成した基板に仮接着させる。次に、第一の剥離可能層を剥離して、接着剤層の他方の面を露出させ、この面に封止基板(例えば、ガスバリア性基材;以下、同様)を仮接着させる。次に、接着剤の硬化処理を行う。なお、上記封止方法において、順番を逆にしてもよく、即ち、まず、第一の剥離可能層を剥離して接着剤層の片方の面を露出させ、この面を、素子を形成した基板に仮接着させた後、第二の剥離可能層を剥離して、接着剤層の他方の面を露出させ、この面に封止基板を仮接着させてもよいが、前者の方法が、剥離操作が容易であるため、好ましい。
本発明のシート状接着剤は厚さ方向に形成された切り込みを有するが、シート状接着剤積層体としてからシート状接着剤に当該切り込みを形成することが好ましい。これにより、接着力の低下を抑制・防止でき、被接着面(例えば、素子の基板や封止基板)と十分強固に接着できる。したがって、第一の剥離可能層及び第二の剥離可能層のいずれかを通してシート状接着剤に切り込みを形成することが好ましい。一つの例として、図3では、第二の剥離可能層5側から接着剤層2に切り込みを形成した後ガスバリア層を形成する方法について説明する。すなわち、まず、上述したように、切り込みが形成されていないシート状接着剤積層体を作製する(図3A)。次に、切り込み3を、少なくとも第二の剥離可能層5及び接着剤層2を厚さ方向に貫通した状態で形成する(図3B)。この際、例えば、切り込み3を面内方向で環状に形成すると、第二の剥離可能層は切り込みの内部と外部とで分断されることになる。第二の剥離可能層が複数に分断されていると、第二の剥離可能層を剥離する工程が煩雑になるため、この場合は、第二の剥離可能層を剥離する前に第二の剥離可能層の表面に剥離用接着シート(図示せず)を貼り付けることが好ましい。これにより、剥離用接着シートを剥離することにより、第二の剥離層全体を容易に剥離できる。ここで、接着剤層と第二の剥離可能層との界面の接着力2と、第二の剥離可能層と剥離用接着シートとの界面の接着力3と、の大小関係は特に制限されないが、接着剤層と第二の剥離可能層との界面の接着力2に対して、第二の剥離可能層と剥離用接着シートとの界面の接着力3が十分に大きいことが好ましい。これにより、複数に分断されている第二の剥離可能層を剥離用接着シートと一体として容易に剥離することができる。最後に、上記で形成された切り込み2の側面、ならびに必要であれば、接着剤層2の側面、第一の剥離可能層6の暴露面及び第二の剥離可能層5の暴露面に、ガスバリア層4を形成する(図3C)。
(接着剤層)
本発明のシート状接着剤は、切り込みのある接着剤層を有する。ここで、本発明に係る接着剤層に用いられる接着剤としては、シート状に成形して用いることが可能な接着剤であれば、どのような接着剤でも用いることができる。つまりは、シート状に成形した接着剤層に対して、本発明で規定された加工を施すことで、電子デバイス封止後のサイド封止効果は大きく向上できる。このように接着剤は、公知のものが封止対象によって適宜選択できる。例えば、有機EL素子のようにごく微量の水蒸気透過でも劣化が問題となる素子においては、接着剤自体の硬化後の水蒸気透過率が低い接着剤を選択することが好ましい。具体的には、100μm厚さあたりの接着剤層自体の硬化後の水蒸気透過率が、好ましくは100g/m/日以下、より好ましくは50g/m/日以下、さらにより好ましくは20g/m/日以下となるような接着剤を選択する。ここで、100μm厚さあたりの接着剤層自体の硬化後の水蒸気透過率の下限は、低いほど好ましいため、特に設定されない。
具体的な接着剤組成物としては、特開2001−105555号公報に記載されている、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と末端エポキシ化ポリブタジエンゴムとの混合組成物、特開2007−197517号公報に記載されている、水素添加された環状オレフィン系重合体とポリイソブチレン樹脂との混合組成物、特表2008−525554号公報に記載されている、特定組成のアクリレート含有ブロックコポリマーとエポキシおよび/またはノボラックおよび/またはフェノリック樹脂との混合組成物、特開2011−108790号公報に記載されている、エチレン・アクリル酸エステル共重合体とエチレン・グリシジル(メタ)アクリレート共重合体との混合組成物を挙げることができるが、これに限られるものではない。
本発明に用いられる接着剤としては、シート状接着剤積層体として市販されている接着剤も好ましく用いることができる。このようなシート状接着剤積層体は、三井・デュポンポリケミカル社や、3M社、味の素社、テサ社等から入手が可能である。特に、三井・デュポンポリケミカル株式会社製の「ニュクレル(登録商標)」(品番としては、AN4228C、N0903HC、N1525、AN4214C、AN4225C、AN42115C、N0908C、AN42012C、N410、N1035、N1050H、N1108C、H1110H、N1207C、N1214、AN4221C、N1560、N0200H、AN4213C、N035C)や、3M社の「3MTM Optically Clear Adhesive」(品番としては、8171、8172、8172P、8171CL、8172CL等)を好ましく用いることができる。
シート状接着剤の接着剤層の厚さとしては、封止する素子の構成(凹凸形状等)によって必要な厚さが異なる場合があるが、一般的には、1μm以上、100μm以下であることが好ましく、3μm以上、60μm以下であることがより好ましく、5μm以上、40μm以下であることがさらに好ましい。このような接着剤層の厚さであれば、素子の凹凸形状に接着剤層が十分追従でき、十分な接着性や封止性(面内方向及び側面方向双方の封止性、特にサイド封止性)を達成できる。
(切り込みの形成)
本発明に係る接着剤層は、厚さ方向に形成された切り込みを有するが、上述したように、シート状接着剤積層体を用意した後、接着剤層に切り込みを形成することが好ましい。
すなわち、例えば、図1に示されるように、シート状接着剤積層体1を第一の剥離可能層6/接着剤層2/第二の剥離可能層5の積層構成として、第二の剥離可能層5の側から接着剤層2に切り込み3を形成する場合、第二の剥離可能層5には厚さ方向に貫通した切り込み3が形成されるが、接着剤層にも厚さ方向に貫通するように(第二の剥離可能層5から第一の剥離可能層6の途中まで、あるいは第二の剥離可能層5から接着剤層と第一の剥離可能層6との界面まで)、切り込みが形成されることが好ましい。これは、接着剤層の厚み方向全体にわたって切り込みを形成し、当該切り込み側面に後述するガスバリア層を形成することで、接着剤層のサイド全体に対して十分な封止性(サイド封止性)を達成できるからである。また、接着剤層の面内方向のガス透過率を低減できるという点でも、接着剤層の全厚にわたって切り込みにより側面を形成し、この側面にガスバリア層を形成することが好ましい。
なお、上記のシート状接着剤積層体構成において、第一の剥離可能層6にも切り込みが形成されてよいが、第一の剥離可能層6では切り込みが貫通しないことが好ましい。これは、切り込み形成後のシート状接着剤積層体の取り扱いを容易にする(シート状接着剤積層体自体を複数に分断しない)ためである。
本発明において、切り込みの形成方法は特に制限されず、所望の切り込み形状に応じて適宜選択されうる。具体的には、金属やセラミック刃のカッターや、レーザーカッターなどの公知の方法で形成することができる。ただし、接着剤は熱により効果が進む場合があるため、切り込みの周辺にまで熱が加わるような切り込み形成方法は避けることが好ましい。これらの方法のうち、金属やセラミック刃のカッターによる切り込み形成方法は、非常に簡便な方法として好ましく適用できる。このようなカッターによる切り込み形成は、市販のカッティング・プロッタをそのまま用いて、あるいは、多少の改造を施して用いることが可能である。カッティング・プロッタは、例えばいわゆるCADデータからの出力で指定の切り込みを形成する機能を有しているため、電子デバイスの素子構成・形状に合わせた複雑な形状の切り込みであっても簡便に形成することができる。例えば、上記図4A、図4Bの切り込みを形成する場合には、カッティング・プロッタが好適に使用できる。なお、切り込みの深さは、刃先の形状や、刃の押し厚等で調整することができる。
同様に、市販のレーザーカッターでも上記のような複雑な形状の切り込み形成や、切り込み深さの調整は可能である。例えば、上記図4Fの切り込みを形成する場合には、レーザーカッターが好適に使用できる。なお、切り込みの深さは、レーザー照射条件(照射強度、条件等)等で調整することができる。
(切り込みの形状)
本発明において、接着剤層の厚さ方向に形成される切り込みの形状(断面)は、特に制限されず、いずれの形状をも採用できる。具体的には、切り込みの形状(断面)、三角形(図4A)、台形(図4B)、接着剤層の切り込みを入れる側から厚さ方向に幅が変化する階段形状(図4C)、略円形状(湾曲形状)(図4D)、上記図4Dにおいて、双方が開放している形態(図4E)、ならびに長方形や正方形(図4F)、図示はしないが厚さ方向の中間点に切り込みの幅が最も狭くなる形状などが挙げられる。切り込みで形成される接着剤層の側面は、滑らかである方が、その後に形成されるガスバリア層のガスバリア性が向上するため好ましい。上記点、サイド封止性など、製造しやすさ等を考慮すると、図4A、図4B、図4Fが好ましく、図4B、図4Fがより好ましい。
接着剤層に形成される切り込みの幅(面内方向の幅)には特に制限はない。例えば、切り込みが接着剤層の一方面のみで開口している(例えば、図4A、図4D)場合には、接着剤層に形成される切り込みの面内方向の幅(図4A中のW)は、0.1μm〜500μm、より好ましくは1μm〜300μmの範囲であることが好ましい。また、切り込みが接着剤層の両面で開口している(例えば、図4B、図4C、図4E、図4F)場合には、接着剤層に形成される切り込みの面内方向の幅のうち、より広い幅(図4B中のW)は、0.1μm〜500μm、より好ましくは1μm〜300μmの範囲であることが好ましい。一方、上記場合において、より狭い幅((図4B中のW)は、0.01μm〜300μm、より好ましくは0.05μm〜100μmの範囲であることが好ましい。このような大きさの切り込みであれば、ガスバリア層を切り込み側面に容易に形成でき、また、封止工程におけるガスバリア層の損傷の懸念が少なくなることで、十分なサイド封止を達成できる。
同様にして、本発明において、接着剤層の面内方向に形成される切り込みの形状(接着剤層面内方向における形状)もまた、特に制限されず、いずれの形状をも採用できる。例えば、切り込み3は、シート状接着剤1/接着剤層2面上に、図5Aや図5Bに示されるように連続的に、または図5Cに示されるように不連続に形成されてもよいが、連続的に形成されることが好ましい。また、切り込み3は、シート状接着剤1/接着剤層2上に、図5Aや図5Cに示されるように環状で、または図5Bに示されるように渦状に形成されてもよい。すなわち、切り込みは、環状または渦状で、連続的にまたは不連続に、接着剤層に形成されることが好ましく、環状または渦状で、連続的に接着剤層に形成されることがより好ましい。また、本発明のシート状接着剤を電子デバイスの封止に使用する場合には、環状または渦状の切り込みの内側に素子をおさめることが好ましい。このため、図5に示されるように、切り込みは、シート状接着剤の周辺部、特に周辺端部に沿って形成されることが好ましい。この場合の、切り込み(切り込みが多重に形成される場合には、最外周の切り込み)と接着剤層の外周部との間は、特に制限されないが、100μm〜5mmであることが好ましく、500μm〜2mmであることがより好ましい。このような間隔であれば、切り込みが接着剤層側面から露出することなく、良好なサイド封止性が確保できる。
また、切り込みが環状または渦状に形成される場合には、切り込みは、図5Aや図5Bに示されるように、シート端部からシートの面内中心点に向かって線分を引いた際に、この線分と切り込みが形成する線との交点が複数できるように形成されることが好ましい。上記の交点一つに対して切り込み側面のガスバリア層が2層形成されることになり、図5Aのように環状の切り込みを3重に形成した場合には、上記交点は3つとなるため、切り込み側面にはガスバリア層が計6層形成される。なお、ガスバリア層の形成方法によっては、図4に示されるように、接着剤層側面(シート状接着剤端部外周の側面)にもガスバリア層が形成されてもよい。
複数の切り込みが環状または渦状に形成される(シート端部からシートの面内中心点に向かって線分を引いた際に、この線分と切り込みが形成する線との交点が複数できるように形成される)場合の、各切り込みの間隔(図7中の「L」)は、特に制限されないが、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上であることがさらにより好ましい。このような間隔であれば、得られるシート状接着剤のサイド封止性を十分達成でき、切り込み側面にガスバリア層を容易に形成できる。ここで、各切り込みの間隔の上限は、特に制限されないが、素子全体に対する素子周囲の封止部の幅(いわゆる額縁幅)を狭くする観点から、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下であることがさらにより好ましい。なお、本明細書において、「各切り込みの間隔」は、切り込みの中心間の距離である。
また、切り込みは、接着剤層の周辺部に沿った切り込みに加えて、シート状接着剤の周辺部に沿っていない切り込みを別途設けることもできる。この態様では、図6に示されるように、切り込み3が接着剤層2の周辺部に沿って形成され、この切り込み3の内側に、別途切り込み3’が設けられる。また、切り込み3’の側面にガスバリア層4’が形成される。この形態のシート状接着剤は、例えば、図6Bに示されるような、素子10、ガスバリア性基板12、および素子10とガスバリア性基板12とを貫通して電極を取り出すためのスルーホール電極11を有する電子デバイスに好適に適用できる。すなわち、図6Bにおいて、素子10をシート状接着剤1で封止する際に、スルーホール電極11を、切り込み3の内側に別途形成された切り込み3’内に配置することにより、スルーホール電極11を切り込み3’で封止できる。これにより、電子デバイスでは、より十分なガスバリア性及びサイド封止性を達成できるため、耐久性をより向上できる。
(ガスバリア層)
本発明のシート状接着剤では、接着剤層2の厚み方向に形成された切り込み3の側面にガスバリア層4が形成されてなる。ここで、ガスバリア層4は、切り込み3の少なくとも側面に形成されればよい。例えば、図7に示されるように、切り込み3の側面および接着剤層2の側面にガスバリア層4が形成される例(図7A);切り込み3の側面にのみガスバリア層4が形成される例(図7B);切り込み内にガスバリア層が充填されて形成される例(図7C);切り込み内にガスバリア層が充填されかつ接着剤層2の側面にガスバリア層4が形成される例(図7D)などの形態が挙げられる。これらのうち、サイド封止性を考慮すると、図7A及び図7Cに記載されるように、接着剤層2の側面にガスバリア層4が形成される形態が好ましい。また、シート状接着剤の柔軟性を考慮すると、図7A及び図7Bのように、切り込み3の側面にのみガスバリア層4が形成される形態が好ましい。また、サイド封止性を考慮すると、切り込み3の側面全面にガスバリア層4が形成されることが好ましいが、切り込み側面の面積の50%以上(上限100%)にガスバリア層4が形成されれば本発明の効果は得られる。同様にして、接着剤層2の側面にガスバリア層4が形成される場合において、より良好なサイド封止性を考慮すると、接着剤層2の側面全面にガスバリア層4が形成されることが好ましいが、接着剤層2の側面の面積の50%以上(上限100%)にガスバリア層4が形成されれば本発明の効果は得られる。
本発明のシート状接着剤の切り込み側面に形成されるガスバリア層を構成する材料としては、特に制限はなく、公知のガスバリア層を構成する材料を好ましく用いることができる。好ましくは、ガスバリア層は金属または金属化合物を用いて形成され、ガスバリア層は金属または金属化合物からなることがより好ましい。
例えば、電子デバイスの封止において、ガスバリア層が電子デバイスの電極等と接せず、導電性を有していても問題ない場合や、ガスバリア層形成部が不透明であっても問題ない場合には、ガスバリア層として金属を用いることができる。ここで、金属のガスバリア層の形成方法もまた特に制限されず、公知の気相法、液相法を用いて形成することができる。
このうち、気相法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法を用いることができる。製膜速度が速い点から、真空蒸着法を用いることが好ましい。蒸着する金属はアルミニウムを好ましく用いることができる。ただし、これらの物理蒸着法においては、被蒸着面が蒸着源に対してできるだけ正対していることが好ましいため、切り込みは、切り込みを入れる側の幅が広く、厚さ方向で幅が狭くなる、つまりは、切り込みの側面が蒸着源から見えている状態となっていることが好ましい。
液相法としては、無電解メッキ法を好ましく用いることができる。無電解メッキ法によりガスバリア層を形成できる金属としては、例えば、金、銀、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、および、これらの合金を挙げることができる。この中でもニッケルを好ましく用いることができる。
金属のガスバリア層の厚さとしては、良好なガスバリア性やサイド封止性が得られ、かつ、シート状接着剤のフレキシブル性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、20nm以上、10μm以下であることが好ましく、50nm以上、5μm以下であることがより好ましい。このような範囲であれば、シート状接着剤は、良好なガスバリア性やサイド封止性が得られ、かつ、十分なフレキシブル性を発揮する。なお、図7Cや図7Dのように、切り込み内にガスバリア層が充填される場合には、ガスバリア層の厚さは切り込みの幅と同一となる。本明細書において、ガスバリア層の厚さは、下記方法によって測定される値である。即ち、シート状接着剤を集束イオンビームやミクロトーム等によって切断して、シート状接着剤の断面を得る。得られた断面について、10箇所について、透過型電子顕微鏡(TEM)にて、適当な倍率で観察して、ガスバリア層の厚みを測定し、これらの平均を求め、ガスバリア層の厚さとする。この際、TEMの倍率は、測定されるガスバリア層の厚さによって適宜選択でき、数10nmの厚さでは、通常、10万倍程度である。また、上記ガスバリア層の厚さは、好ましい厚さ分布が±10%以内である。
また、ガスバリア層は、金属化合物を用いて、接着剤層の切り込み側面に形成されてもよい。ここで、金属化合物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物、金属酸化炭化物、金属窒化炭化物等を挙げることができる。また、金属化合物を構成する金属としては、特に制限されないが、例えば、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウムなどが挙げられる。
金属化合物を用いてガスバリア層を形成する方法は、特に限定はなく、公知の方法を同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、原子層堆積法(ALD法)、コーティング法などを用いることができる。特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法もまた好ましく用いることができる。上記のALD法、コーティング法以外の製膜方法を適用する場合は、切り込みは、切り込みを入れる側の幅が広く、厚さ方向で幅が狭くなる、つまりは、切り込みの側面が蒸着源から見えている状態となっていることが好ましい。
また、特開2011−068042号公報、特開2011−068124号公報、特開2011−073417号公報、特開2011−104829号公報、特開2011−121298号公報、特開2011−143327号公報、特開2011−143550号公報、特開2011−143551号公報、特開2011−143577号公報、特開2011−146144号公報、特開2011−146226号公報、特開2011−156752号公報、特開2011−173057号公報、特開2011−183773号公報、特開2011−194319号公報、特開2011−194587号公報、特開2011−194765号公報、特開2011−194766号公報、特開2011−222212号公報、特開2011−238355号公報、特開2011−251460号公報、特開2011−256249号公報、特開2012−000546号公報、特開2012−000599号公報、特開2012−000828号公報、特開2012−006154号公報、特開2012−016854号公報に記載されているような、ポリシラザン層に真空紫外光を照射することで改質したガスバリア層を、切り込み側面に形成する方法もまた、好ましく用いることができる。
本発明のシート状接着剤の切り込み側面にガスバリア層として金属化合物を形成する場合、その形成方法としては、ALD法を用いることが特に好ましい。すなわち、ガスバリア層は、金属化合物を用いてALD法により形成されることが好ましい。
ここで、ALD法とは、原料となる複数のガスを交互に切り替えて基板上に導き、基板上で反応させつつ、ガスの切替え1サイクルにおいて、原子層を一層堆積させて製膜する方法である。ALD法によると、反応による製膜過程において、表面化学反応の自己停止機構が作用するため、一原子層レベルの均一な膜厚制御(レイヤーコントロール)が可能になり、高膜質かつ段差被覆性の高い膜(ガスバリア層)を形成することができる。また、ALD法によれば、膜厚を均一にでき、また、膜が形成されない部分(ピンホール)が存在せず、ナノまたはオングストロームオーダーでの膜厚のコントロールが可能であるなどの利点もある。上記したように、ALD法によると、製造条件によってガスバリア層の厚さを制御できる。このため、ガスバリア層をALD法によって測定する場合には、ガスバリア層の厚さは、ALD法における製造条件によって規定できる。
例えば、金属酸化物を製膜する場合には、まず、金属化合物のガスを導入し、化学吸着により基板上へ単原子層(ガス分子層)を形成させ、次いで、不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)を導入して余剰の金属化合物のガスを除去(パージ)する。次に、酸化性ガスを導入し、基板上の金属化合物の単原子層を酸化し、金属酸化物層を一原子層ずつ形成する。次いで、不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)を導入して余剰の酸化性ガスを除去することで1サイクルが終了する。このサイクルを繰り返すことで、金属酸化物は原子層一層ずつ堆積されて、所定の膜厚の金属酸化物層を得ることができる。
ALD法の特長として、基板表面の凹凸に依らず、陰影部分も含め完全な表面被覆、かつ緻密な薄膜形成が可能であるとされている。本発明のシート状接着剤の切り込み側面にも問題なく均一なガスバリア層が形成可能である。また、切り込みを形成したシート状接着剤を、適当なスペーサ等を用いるなどして切り込みを露出させた状態で多数枚を重ねた状態に配置することで、各シート状接着剤の切り込みに同時にガスバリア層を形成することが可能であり、生産性も良好である。
ALD法で形成可能な無機薄膜および使用可能な原料ガスは多岐にわたり、文献(M. Ritala : Appl. Surf. Sci. 112, 223 (1997))に記載のものなどが適用可能である。
本発明においては、上記したように、種々の材料を金属化合物として用いてガスバリア層を形成できるが、透明性とガスバリア性の観点から、ガスバリア層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどを含むことが好ましく、酸化アルミニウムを含むことがより好ましく、酸化アルミニウムから構成されることが特に好ましい。以下では、ALD法によって酸化アルミニウムから構成されるガスバリア層を形成する方法について詳述するが、本発明は、下記に限定されない。
酸化アルミニウムを形成するための原料金属化合物[アルミニウム(Al)化合物]としては、特に制限されず、ALD法に一般的に使用される公知のアルミニウム化合物が使用できる。例えば、アルミニウム(Al)の、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)等の、アルキルアルミニウム(Al(R);Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す);およびトリクロロアルミニウム(AlCl)等の、ハロゲン化アルミニウム(Al(R’);R’は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す)などを用いることができる。これらのうち、トリクロロアルミニウム(AlCl)、トリメチルアルミニウム(TMA)がより好ましい。
また、酸化性ガスに用いる化合物としては、特に制限されず、ALD法に一般的に使用される公知の酸化性ガスが使用できる。例えば、オゾン(O)、水(HO)(水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、濾過水などを含む)、過酸化水素(H)、メタノール(CHOH)、及びエタノール(COH)などを用いることができる。
ガスバリア層を形成する、ALD法における各ガスの導入量や導入時間は、所望のガスバリア層が形成できれば特に制限されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、特表2010−531930号公報に記載の方法等を好ましく用いることができる。
ガスバリア層の製膜温度は、特に制限されず、ALD法に一般的に使用されるのと同様の温度が適用できる。具体的には、ガスバリア層の製膜温度は、80℃〜350℃の範囲が好ましいが、シート状接着剤の耐熱性(変質)を考慮して、熱劣化を生じない温度範囲で製膜することが好ましい。具体的には、20℃〜120℃の範囲が好ましく、30℃〜100℃の範囲が好ましい。
金属化合物のガスバリア層の厚さは、良好なガスバリア性やサイド封止性が得られ、かつ、シート状接着剤のフレキシブル性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、1nm以上、1000nm以下であることが好ましく、5nm以上、500nm以下であることが好ましく、10nm以上、100nm以下であることが特に好ましい。このような範囲であれば、シート状接着剤は、良好なガスバリア性やサイド封止性が得られ、かつ、十分なフレキシブル性を発揮する。なお、ガスバリア層の厚さが1nm未満であると、ガスバリア性が不十分となる懸念がある。また、1000nmを超える場合には、製膜に時間がかかり過ぎるため、生産性やコスト面で懸念がある。なお、図7Cや図7Dのように、切り込み内にガスバリア層が充填される場合には、ガスバリア層の厚さは存在しない。
(保護層・その他の層)
本発明のシート状接着剤では、切り込み側面にガスバリア層が形成されればよいが、必要であれば、このガスバリア層の上に、他の層を設けてもよい。ここで、他の層とは、特に制限されないが、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、ポリシロキサンをベースにした有機無機複合樹脂等の保護層が挙げられる。
(電子デバイス)
上記したような本発明のシート状接着剤は、切り込み及び当該切り込みの側面にガスバリア層を有するため、ガスバリア性及びサイド封止性に優れる。ゆえに、本発明のシート状接着剤は、電子デバイスに好適に使用できる。
したがって、本発明の第二は、本発明のシート状接着剤を用いて封止される、電子デバイスに関する。このようにして本発明のシート状接着剤を用いて封止された電子デバイスは、十分なガスバリア性を確保しつつサイド封止性にも優れる。また、本発明のシート状接着剤は、簡便な工程で封止を行うことができ、かつ、デバイス周囲からのガス透過を有効に低減できる。このため、本発明のシート状接着剤は、次世代の電子デバイス(特に電子デバイスの固体封止)にも好適に適用可能であり、これにより、デバイス周囲からのガス透過を有効に低減し、かつ、簡便な工程で封止を行うことができる封止部材を提供することができる。したがって、本発明のシート状接着剤を用いて封止される電子デバイスは、面内方向および側面方向双方に対してガスバリア性に優れるため、劣化原因となるガス(例えば、酸素、水蒸気、窒素酸化物等)による侵入の影響を受けにくく、耐久性に優れる。
以下では、本発明の電子デバイスについて説明する。
本発明のシート状接着剤は、空気中の化学成分、例えば、酸素、水蒸気、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等によって性能が劣化する電子デバイスの封止に好ましく用いることができる。このような電子デバイスとしては、有機EL素子、有機太陽電池素子、CIGS太陽電池素子、液晶表示素子、電子ペーパー素子などが挙げられる。
本発明に係る電子デバイスは、本発明のシート状接着剤を従前の封止手段の代わりに固体封止に好適に使用できる。例えば、図8に示されるように、本発明に係る電子デバイス20は、ガスバリア性を有する第一の基材(第一のガスバリア性基材)26上に素子25を形成し、本発明のシート状接着剤21を用いて、ガスバリア性を有する第二の基材(第二のガスバリア性基材)27を接着して封止することで形成される。ガスバリア性を有する基材の少なくとも一方は透明であり、この面側に発光を行う、もしくは、この面側から受光を行うように構成できる。第一及び第二のガスバリア性を有する基材26,27は可撓性を有していてもよい。
(有機EL素子)
以下、具体的な電子デバイスの構成について、一例として、有機EL素子を図9を参照しながら説明する。
本発明に係る有機EL素子は、ガスバリア性基材上に、少なくとも第1電極、発光層を含む有機機能層及び第2電極を有する有機EL構造体(発光部ともいう)である。具体的な一例としては、図9に示されるように、ガスバリア性基材31上に順次、第1電極(陽極)32、正孔輸送層33、発光層34、電子輸送層35及び陰極バッファ層(電子注入層)36から構成される有機能層と、第2電極(陰極)37とを積層した構造を有する有機EL構造体30を、本発明のシート状接着剤38を介してガスバリア性基材39と接着し、封止された封止構造となっている。
更に、本発明に係る有機EL構造体の代表的な層構成例を以下に示す。
(1)ガスバリア性基材1/第1電極(陽極)/有機層(発光層)/第2電極(陰極)/シート状接着剤/ガスバリア性基材2;
(2)ガスバリア性基材1/第1電極(陽極)/有機層(発光層)/電子輸送層/第2電極(陰極)/シート状接着剤/ガスバリア性基材2;
(3)ガスバリア性基材1/第1電極(陽極)/正孔輸送層/有機層(発光層)/正孔阻止層/電子輸送層/第2電極(陰極)/シート状接着剤/ガスバリア性基材2;
(4)ガスバリア性基材1/第1電極(陽極)/正孔輸送層(正孔注入層)/有機層(発光層)/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファ層(電子注入層)/第2電極(陰極)/シート状接着剤/ガスバリア性基材2;
(5)ガスバリア性基材1/第1電極(陽極)/陽極バッファ層(正孔注入層)/正孔輸送層/有機層(発光層)/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファ層(電子注入層)/第2電極(陰極)/シート状接着剤/ガスバリア性基材2。
〔有機EL構造体〕
次いで、本発明に係る有機EL素子を構成している基材や各構成層について説明する(上述のシート状接着剤を除く)。
(ガスバリア性基材31,39)
本発明に係るガスバリア性基材31,39は、特に限定されず、公知と同様の構造を有する。本発明に係るガスバリア性基材31の一例を図10を参照しながら説明する。本発明に係るガスバリア性基材31は、基材41、上記基材41の一方の面に形成されたブリードアウト防止層43、ならびに上記基材41の他方の面上に順次形成された平滑層42、第一のガスバリア層44及び第二のガスバリア層(有機珪素化合物層)45から構成される。
ガスバリア性基材31,39としては、ガラス、可撓性を有する薄層ガラス、可撓性を有する薄層ガラスと樹脂フィルムの積層体、可撓性金属薄層と樹脂フィルムの積層体、ガスバリア層を形成した樹脂フィルム等が挙げられる。ガスバリア性基材31,39は少なくとも片方は透明であり、両方とも透明であっても良い。ここでは、ガスバリア層を形成した樹脂フィルム、いわゆるガスバリア性フィルムについて、詳細に説明する。
(ガスバリア性フィルム)
(基材)
基材は、特に限定されず、ガスバリア性フィルムに通常使用されるのと同様の基材が使用できるが、樹脂フィルムが好ましく使用される。
ここで、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(登録商標)(商品名、JSR株式会社製)或いはアペル(登録商標)(商品名、三井化学株式会社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。樹脂フィルムのガスバリア層を形成する面には、易接着層や平滑層を設けることが好ましい。または、例えば、ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、極低熱収PET Q83)等の、予め易接着加工された基材を使用することもできる。
ここで、上述したように、このような樹脂フィルムは、可撓性を有する薄層ガラス若しくは可撓性金属薄層(例えば、アルミニウム箔)と積層されても、またはガスバリア層が樹脂フィルムに形成されてもよい。
(平滑層)
本発明に係るガスバリア性フィルムは、平滑層を有してもよい。平滑層は突起等が存在する透明樹脂フィルム基材の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂フィルム基材に存在する突起により、透明のガスバリア層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性材料または熱硬化性材料を硬化させて形成され、従来と同様の材料が使用できる。
平滑層の形成に用いる感光性材料としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズを用いることができる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601:2001年で規定される表面粗さパラメータ[最大断面高さRt]が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。10nmよりも小さい場合には、後述のケイ素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合に、塗布性が損なわれる場合がある。また、30nmよりも大きい場合には、ケイ素化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。なお、最大断面高さRtの下限は、特に制限されず、0nmであるが、通常、0.5nm以上であればよい。この際、表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
または、平滑層の平滑性を、JIS B 0601:2001年で規定される表面粗さパラメータRaおよびRzで規定してもよく、この際の表面粗さRaは、0.5〜3nmであることが好ましく、表面粗さRzは、10〜25nmであることが好ましい。
表面粗さの測定には、市販のAFM(原子間力顕微鏡)、例えば、SII社製のAFM(原子間力顕微鏡)SPI3800N DFMを用いて測定することができる。好ましい測定条件としては、一回の測定範囲は80μm×80μmとし、測定箇所を変えて三回の測定を行って、それぞれの測定で得られたRaの値、および、10点平均粗さRzをそれぞれ平均したものを測定値とする条件を挙げることができる。
平滑層の厚さ(乾燥後の膜厚)としては、特に制限されないが、0.5〜10μmの範囲が好ましい。
(ガスバリア層44,45)
樹脂フィルム上に形成されるガスバリア層としては、無機物、有機物のガスバリア層又はその両者のハイブリッドガスバリア層が挙げられる。ガスバリア層を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、無機物としては、金属導体、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物、金属酸化炭化物、金属窒化炭化物などを用いることが出来る。更にガスバリア層の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。ガスバリア層の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ALD法、コーティング法などを用いることが出来る。特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものも好ましく用いることができる。
また、特開2011−068042号公報、特開2011−068124号公報、特開2011−073417号公報、特開2011−104829号公報、特開2011−121298号公報、特開2011−143327号公報、特開2011−143550号公報、特開2011−143551号公報、特開2011−143577号公報、特開2011−146144号公報、特開2011−146226号公報、特開2011−156752号公報、特開2011−173057号公報、特開2011−183773号公報、特開2011−194319号公報、特開2011−194587号公報、特開2011−194765号公報、特開2011−194766号公報、特開2011−222212号公報、特開2011−238355号公報、特開2011−251460号公報、特開2011−256249号公報、特開2012−000546号公報、特開2012−000599号公報、特開2012−000828号公報、特開2012−006154号公報、特開2012−016854号公報に記載されているような、ポリシラザン層に真空紫外光を照射することで改質したガスバリア層も好ましく用いることができる。
または、上記したような樹脂フィルム(基材)上に可撓性金属薄層(例えば、アルミニウム箔)を積層して、ガスバリア層を形成してもよい。
ガスバリア層を形成した樹脂フィルムの特性としては、水蒸気透過度が0.01g/m/day以下であることが好ましい。更には、酸素透過度10−3ml/m/day/MPa以下、水蒸気透過度10−5g/m/day以下の高ガスバリア性フィルムであることが好ましい。
(ブリードアウト防止層)
本発明に係るガスバリア性フィルムは、ブリードアウト防止層を設けることができる。ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができ、これらは特に制限されず、公知の化合物が同様にして使用できる。
本発明におけるブリードアウト防止層の厚さ(乾燥後の膜厚)としては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるバリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
(第1電極:陽極)
第1電極(陽極)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。この様な電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。又、IDIXO(In・ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。或いは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いることも可能である。この第1電極(陽極)より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、又第1電極(陽極)としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(正孔注入層:陽極バッファ層)
第1電極(陽極)と発光層又は正孔輸送層の間に、正孔注入層(陽極バッファ層)を存在させてもよい。正孔注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。陽極バッファ層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファ層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファ層、アモルファスカーボンバッファ層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファ層等が挙げられる。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることが出来る。正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、又導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては上記のものを使用することが出来るが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。又、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することが出来る。
又、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような所謂p型正孔輸送材料を用いることも出来る。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
または、例えば、正孔輸送層としては、スタルクヴイテック社製、商品名Baytron P等のPEDOT/PSS(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート)、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第2006/019270号公報等に記載のシアン化合物、などを用いることもできる。
(発光層)
発光層とは、青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を指す。発光層を積層する場合の積層順としては、特に制限はなく、又各発光層間に非発光性の中間層を有していてもよい。本発明においては、少なくとも1つの青色発光層が、全発光層中最も陽極に近い位置に設けられていることが好ましい。又、発光層を4層以上設ける場合には、陽極に近い順から、例えば青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層/緑色発光層、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層/緑色発光層/赤色発光層のように青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を順に積層することが、輝度安定性を高める上で好ましい。発光層を多層にすることで白色素子の作製が可能である。また、発光層は、電子輸送層の機能を兼ね備えることができる。
発光層の膜厚(乾燥後の膜厚)の総和は特に制限はないが、膜の均質性、発光に必要な電圧等を考慮し、通常2nm〜5μm、好ましくは2〜200nmの範囲で選ばれる。更に10〜50nmの範囲にあるのが好ましい。膜厚を50nm以下にすると電圧面のみならず、駆動電流に対する発光色の安定性が向上する効果があり好ましい。個々の発光層の膜厚(乾燥後の膜厚)は、好ましくは2〜100nmの範囲で選ばれ、2〜50nmの範囲にあるのが更に好ましい。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はないが、3色発光層中、青色発光層(複数層ある場合はその総和)が最も厚いことが好ましい。
発光層は発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある発光スペクトルの異なる少なくとも3層以上の層を含む。3層以上であれば、特に制限はない。4層より多い場合には、同一の発光スペクトルを有する層が複数層あってもよい。発光極大波長が430〜480nmにある層を青色発光層、510〜550nmにある層を緑色発光層、600〜640nmの範囲にある層を赤色発光層と言う。又、前記の極大波長を維持する範囲において、各発光層には複数の発光性化合物を混合してもよい。例えば、青色発光層に、極大波長430〜480nmの青発光性化合物と、同510〜550nmの緑発光性化合物を混合して用いてもよい。
発光層の材料として使用する有機発光材料は、(a)電荷の注入機能、すなわち、電界印加時に陽極或いは正孔注入層から正孔を注入することが出来、陰極或いは電子注入層から電子を注入することが出来る機能、(b)輸送機能、すなわち、注入された正孔及び電子を電界の力で移動させる機能、及び(c)発光機能、すなわち、電子と正孔の再結合の場を提供し、これらを発光に繋げる機能、の3つの機能を併せもつものであれば特に限定はない。例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物を用いることが出来る。上記の蛍光増白剤の具体例としては、ベンゾオキサゾール系では、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4’−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4’−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾオリル]スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス[5−α,α−ジメチルベンジル−2−ベンゾオキサゾリル]チオフェン、2,5−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル]−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4’−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾール、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾ−ル等が挙げられる。ベンゾチアゾール系では、2,2’−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等が挙げられ、ベンゾイミダゾール系では、2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等が挙げられる。更に、他の有用な化合物は、ケミストリー・オブ・シンセティック・ダイズ(1971),第628〜637頁及び第640頁に列挙されている。又、上記のスチリルベンゼン系化合物の具体例としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等が挙げられる。
更に、上述した蛍光増白剤及びスチリルベンゼン系化合物以外にも、例えば、12−フタロペリノン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン、ナフタルイミド誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系化合物、国際公開公報WO90/13148やAppl.Phys.Lett.,vol 58,18,P1982(1991)に記載されているような高分子化合物、芳香族ジメチリディン系化合物が挙げられる。芳香族ジメチリディン系化合物の具体例としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4’−フェニレンジメチリディン、2,5−キシリレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、4,4’−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、及びこれらの誘導体が挙げられる。又、上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
その他、上述した有機発光材料をホストとし、当該ホストに青色から緑色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系或いは前記ホストと同様の蛍光色素をドープした化合物も、有機発光材料として好適である。有機発光材料として前記の化合物を用いた場合には、青色から緑色の発光(発光色はドーパントの種類によって異なる)を高効率で得ることが出来る。前記化合物の材料であるホストの具体例としては、ジスチリルアリーレン骨格の有機発光材料(特に好ましくは、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル)が挙げられ、前記化合物の材料であるドーパントの具体例としては、ジフェニルアミノビニルアリレーン(特に好ましくは、例えば、N,N−ジフェニルアミノビフェニルベンゼンや4,4’−ビス[2−[4−(N,N−ジ−p−トリル)フェニル]ビニル]ビフェニル)が挙げられる。
発光層には、発光層の発光効率を高くするために公知のホスト化合物と公知のリン光性化合物(リン光発光性化合物とも言う)を含有することが好ましい。
ホスト化合物とは、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であり、且つ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。ホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することが出来る。又、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることが出来る。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用も出来る。
これらのホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、尚且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。公知のホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等に記載の化合物が挙げられる。
複数の発光層を有する場合、これら各層のホスト化合物の50質量%以上が同一の化合物であることが、有機層全体に渡って均質な膜性状を得やすいことから好ましく、更にはホスト化合物のリン光発光エネルギーが2.9eV以上であることが、ドーパントからのエネルギー移動を効率的に抑制し、高輝度を得る上で有利となることからより好ましい。リン光発光エネルギーとは、ホスト化合物を基板上に100nmの蒸着膜のフォトルミネッセンスを測定し、そのリン光発光の0−0バンドのピークエネルギーを言う。
ホスト化合物は、有機EL素子の経時での劣化(輝度低下、膜性状の劣化)、光源としての市場ニーズ等を考慮し、リン光発光エネルギーが2.9eV以上且つTgが90℃以上のものであることが好ましい。すなわち、輝度と耐久性の両方を満足するためには、リン光発光エネルギーが2.9eV以上且つTgが90℃以上のものであることが好ましい。Tgは、更に好ましくは100℃以上である。
リン光性化合物(リン光発光性化合物)とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物である。先に説明したホスト化合物と合わせ使用することで、より発光効率の高い有機EL素子とすることが出来る。
本発明に係るリン光性化合物は、リン光量子収率は好ましくは0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定出来る。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定出来るが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
リン光性化合物の発光は原理としては2種挙げられ、1つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光性化合物に移動させることでリン光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光性化合物上でキャリアの再結合が起こりリン光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、何れの場合においても、リン光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
リン光性化合物は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることが出来る。リン光性化合物としては、好ましくは元素の周期表で8族−10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明においては、リン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることが出来る。
本発明に係る有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した結果をCIE色度座標に当て嵌めた時の色で決定される。
本発明で言うところの白色素子とは、2°視野角正面輝度を上記方法により測定した際に、1000cd/m2でのCIE1931 表色系における色度がX=0.33±0.07、Y=0.33±0.07の領域内にあることを言う。
(電子輸送層)
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり広い意味で電子輸送層に含まれる。電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。電子注入層(陰極バッファ層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファ層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファ層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファ層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファ層等が挙げられる。上記バッファ層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
他に発光層側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることが出来、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来る。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。
又、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることが出来る。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることが出来る。又、ジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来るし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることが出来る。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
又、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることも出来る。その例としては、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。この様なn性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することが出来るため好ましい。
本発明に係わる有機EL素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。色変換フィルターを用いる場合においては、有機EL素子の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
(電子注入層:陰極バッファ層)
電子注入層形成工程で形成される電子注入層(陰極バッファ層)とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり広い意味で電子輸送層に含まれる。電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。電子注入層(陰極バッファ層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファ層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファ層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファ層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファ層等が挙げられる。
(第2電極:陰極)
第2電極(陰極)としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。この様な電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することが出来る。
尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の第1電極(陽極)又は第2電極(陰極)の何れか一方が、透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
又、第2電極として上記電極物質(金属)を1〜100nmの膜厚で作製した後に、第1電極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の第2電極(陰極)を作製することが出来、これを応用することで第1電極(陽極)と第2電極(陰極)の両方が透過性を有する素子を作製することが出来る。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
(シート状接着剤への切り込み形成)
シート状接着剤として、三井・デュポンポリケミカル社製のニュクレル(登録商標)AN4228Cを40μm厚のシートとしたものおよび20μm厚のシートとしたものを、それぞれ、使用した。これらは両面に剥離可能なフィルムを有している。また、剥離可能なフィルムの接着力は、片面に対してもう片面が弱い設定となっている。
これらの剥離可能なフィルム付のシート状接着剤の接着力の強い剥離可能なフィルム側から、市販のカッティング・プロッタを用いて、図11に記載されるような切り込みA〜Fを形成した。なお、シートおよび形成した切り込みの形状との組み合わせは、下記表1に示される通りであった。すなわち、図11Aでは、1重の環状の切り込みを;図11Bでは、2重の環状の切り込みを;図11Cでは、3重の環状の切り込みを;図11Dでは、6重の環状の切り込みを;図11Eでは、略3重の渦状の切り込みを;および図11Fでは、略3重の不連続の切り込みを、それぞれ、形成した。また、切り込みの深さは、切り込みを入れる側の剥離フィルムと接着剤層とを貫通し、反対側の剥離フィルムは貫通しない条件とした。具体的には、図4Bに示される切り込み形状とし、この際の接着剤層に形成される切り込みの面内方向の幅のうち、より広い幅(図4B中のW)は、約200μmであり、より狭い幅(図4B中のW)は、約50μmであった。また、図11中の、切り込み形状B〜Fの各切り込み間の間隔は、切り込み形状B、C及びFでは、間隔を1.5mmとし、切り込み形状D及びEでは、間隔を1mmとした。さらに、図11中の切り込み形状Fにおいて、切り込みは、1.5mmの間隔をあけて、不連続に接着剤層に形成した。
シート状接着剤のサイズは、後述するサイド封止性評価試料の大きさに合わせて30mm×30mmとした。封止性評価試料は中央位置に12mm×12mmのサイズで金属カルシウム蒸着層を設けるため、この周囲の9mm幅が接着剤のいわゆる「糊しろ」となる。シート状接着剤のこの「糊しろ」に相当する部分に、図11に示される切り込み形状A〜Fの切り込みをそれぞれ形成した。
(シート状接着剤の切り込み側面へのガスバリア層形成)
上記のようにして切り込みを形成したシート状接着剤について、以下のようにして、ALD法により切り込み側面、接着剤層側面および2枚の剥離可能なフィルムの暴露面に、ガスバリア層を形成した。
バッチ式の原子層堆積装置を用いて、下記表1に示すそれぞれのシート状接着剤の切り込みを形成した側面を含む全面に、酸化アルミニウム(Al)からなるガスバリア層を形成した。シート状接着剤を成膜チャンバー内に設置した。製膜時の基材の温度は、60℃となるように調整した。製膜に用いるガス、製膜サイクルは特表2010−531930号公報に記載の方法に従い、以下のようにした(1→4で1サイクル)。
Figure 2013229243
1サイクルで形成される酸化アルミニウムの厚さは約0.1nmであり、このサイクルを繰り返すことにより、表1に示すそれぞれの膜厚を形成した。
ガスバリア層を形成したそれぞれのシート状接着剤の切り込みを入れた側の面全面に、切り込みで分断された剥離性基材を一体として剥離できるように接着シートを貼り付け、シート状接着剤1〜12を得た。
《サイド封止性の評価》
このようにして得られたシート状接着剤1〜12について、下記方法に従って、サイド封止性を評価した。なお、本評価では、以下に示す装置および原材料を用いた。
(サイド封止性評価試料の作製装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン(ヤマト科学株式会社製、Yamato Humidic Chamber IG47M)
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(サイド封止性評価試料の作製)
真空蒸着装置(日本電子株式会社製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、30mm×30mm、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の表面の中央位置に、マスクを通して12mm×12mmのサイズで金属カルシウムを蒸着させた。この際、蒸着膜厚は、80nmとなるようにした。
その後、グローブボックス内(窒素雰囲気)に取り出し、作製した各シート状接着剤を用いて、もう1枚の同形状の無アルカリガラス板と接着し、これを硬化させて封止して、サイド封止性評価試料1〜12を得た。用いたシート状接着剤とその各種条件は表1に示す。
得られた試料を、恒温恒湿度オーブン(ヤマト科学株式会社製、Yamato Humidic Chamber IG47M)中で、85℃、90%RHの高温高湿下で500時間保存した。500時間保存後に、試料の金属カルシウムが腐食した状態をデジタルカメラで撮影してデジタル画像とし、その画像を解析することで、12mm×12mmの金属カルシウム蒸着面積に対する金属カルシウムが腐食した面積を%表示で算出した。結果を、下記表1に示す。
Figure 2013229243
表1に示される結果から、本発明のシート状接着剤3〜12は、切り込み(及びガスバリア層)のない比較シート状接着剤1,2に比べて、金属カルシウムの腐食が有意に抑えられ、非常に高いサイド封止性を有していることが分かる。また、切り込みを多重に形成した本発明のシート状接着剤5〜12は、切り込み側面に形成したガスバリア層を薄くしても、非常に高いサイド封止性が得られることも示される。
実施例2
<ガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスの作成>
《基材の作製》
熱可塑性樹脂基材(支持体)として、両面に易接着加工された厚さ125μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、極低熱収PET Q83)を用い、下記に示すように、片面にブリードアウト防止層を、反対面に平滑層を形成したものを基材(ア)とした。
〈ブリードアウト防止層の形成〉
上記熱可塑性樹脂基材の一方の面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を、乾燥後の膜厚が4.0μmになる条件で塗布した後、硬化条件として、照射エネルギー量1.0J/cmで、空気雰囲気下、高圧水銀ランプを使用し、乾燥条件80℃で、3分間の硬化処理を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
〈平滑層の形成〉
次いで、上記熱可塑性樹脂基材のブリードアウト防止層を形成した面とは反対側の面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を、乾燥後の膜厚が4.0μmになる条件で塗布した後、80℃で、3分間乾燥した後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプを使用し、硬化条件として、照射エネルギー量1.0J/cmで照射、硬化して、平滑層を形成した。
得られた平滑層のJIS B 0601:2001年で規定される方法に準拠して測定した表面粗さRaは、1nmであった。また、Rzは20nmであった。
表面粗さは、SII社製のAFM(原子間力顕微鏡)SPI3800N DFMを用いて測定した。一回の測定範囲は80μm×80μmとし、測定箇所を変えて三回の測定を行って、それぞれの測定で得られたRaの値、および、10点平均粗さRzをそれぞれ平均したものを測定値とした。
《ガスバリア性フィルムの作製》
(ポリシラザン層1の形成)
作成した基材の平滑層上に、下記ポリシラザン含有塗布液を、スピンコーターを用いて、乾燥後の膜厚が150nmとなる条件で塗布した。乾燥条件は、100℃で2分とした。
〈ポリシラザン含有塗布液の調製〉
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製NN120−20)と、アミン触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンを1質量%、パーヒドロポリシラザンを19質量%と含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製NAX120−20)とを4:1の比率で混合し、アミン触媒の含有量を塗布液の固形分に対して1質量%に調整した。さらに設定膜厚に応じてジブチルエーテルで適宜希釈することにより、塗布液を調製した。
(真空紫外線照射処理)
上記の様にしてポリシラザン層1塗膜を形成した後、下記の方法に従って、真空紫外線照射処理を施して、ガスバリア層1を形成した。この際、試料ステージの温度は80℃とし、装置内の酸素濃度が0.1%となるように窒素と酸素とを供給して調整した。また、照射エネルギーは5000mJ/cmとした。
〈真空紫外線照射条件・照射エネルギーの測定〉
真空紫外線照射は、図12に断面模式図で示した装置50を用いて行った。
図12において、51は装置チャンバーであり、図示しないガス供給口から内部に窒素と酸素とを適量供給し、図示しないガス排出口から排気することで、チャンバー内部から実質的に水蒸気を除去し、酸素濃度を所定の濃度に維持することができる。52は172nmの真空紫外線を照射する二重管構造を有するXeエキシマランプ、53は外部電極を兼ねるエキシマランプのホルダーである。54は試料ステージである。試料ステージ54は、図示しない移動手段により装置チャンバー51内を水平に所定の速度で往復移動することができる。また、試料ステージ54は図示しない加熱手段により、所定の温度に維持することができる。55はポリシラザン塗布層が形成された試料である。試料ステージが水平移動する際、試料の塗布層表面と、エキシマランプ管面との最短距離が3mmとなるように試料ステージの高さが調整されている。56は遮光板であり、Xeエキシマランプ52のエージング中に試料の塗布層に真空紫外光が照射されないようにしている。
真空紫外線照射工程で試料塗布層表面に照射されるエネルギーは、浜松ホトニクス社製の紫外線積算光量計:C8026/H8025 UV POWER METERを用い、172nmのセンサヘッドを用いて測定した。測定に際しては、Xeエキシマランプ管面とセンサヘッドの測定面との最短距離が、3mmとなるようにセンサヘッドを試料ステージ54中央に設置し、かつ、装置チャンバー51内の雰囲気が、真空紫外線照射工程と同一の酸素濃度となるように窒素と酸素とを供給し、試料ステージ54を0.5m/minの速度で移動させて測定を行った。測定に先立ち、Xeエキシマランプ52の照度を安定させるため、Xeエキシマランプ点灯後に10分間のエージング時間を設け、その後試料ステージを移動させて測定を開始した。
この測定で得られた照射エネルギーを元に、試料ステージの移動速度を調整することで所定の照射エネルギーとなるように調整した。尚、真空紫外線照射に際しては、照射エネルギー測定時と同様に、10分間のエージング後に行った。
(ポリシラザン層2の形成)
真空紫外線照射処理後のポリシラザン層1の上に、乾燥後の膜厚が300nmとした以外は、ポリシラザン層1と同様にして、ポリシラザン層2を形成した。
(真空紫外線照射処理)
ポリシラザン層1と同様にして行った。これにより、改質ポリシラザン層を、2層積層して形成したガスバリア性フィルムを得た。
《有機薄膜電子デバイスの作製》
作製したガスバリア性フィルムをガスバリア性基板とし、さらに、シート状接着剤を用い、有機薄膜電子デバイスである有機EL素子を作製した。シート状接着剤は実施例1と同様にして、有機EL素子形状に合わせて作製したもの(後述のように「糊しろ」の幅は6mmであり、この部分に切り込みを形成した)を用い、その詳細は表2に示した。すなわち、有機EL素子1では表1のシート状接着剤2を、有機EL素子2では表1のシート状接着剤4を、有機EL素子3では表1のシート状接着剤6を、有機EL素子4では表1のシート状接着剤12を、それぞれ使用した。
〔有機EL素子の作製〕
(第1電極層の形成)
上記で作製したガスバリア性フィルムのガスバリア層上に、厚さ150nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により製膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。なお、パターンは発光面積が50mm平方になるようなパターンとした。
(正孔輸送層の形成)
第1電極層が形成されたガスバリア性フィルムの第1電極層の上に、以下に示す正孔輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し正孔輸送層を形成した。正孔輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが50nmになるように塗布した。
正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、ガスバリア性フィルムの洗浄表面改質処理を、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用し行った。
〈塗布条件〉
塗布工程は大気中、25℃相対湿度50%の環境で行った。
〈正孔輸送層形成用塗布液の準備〉
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Baytron P AI 4083)を純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
〈乾燥および加熱処理条件〉
正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置を用い温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。
(発光層の形成)
引き続き、正孔輸送層まで形成したガスバリア性フィルムの正孔輸送層上に、以下に示す白色発光層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し発光層を形成した。白色発光層形成用塗布液は乾燥後の厚みが40nmになるように塗布した。
〈白色発光層形成用塗布液〉
ホスト材のH−Aを1.0gと、ドーパント材D−Aを100mg、ドーパント材D−Bを0.2mg、ドーパント材D−Cを0.2mg、100gのトルエンに溶解し白色発光層形成用塗布液として準備した。なお、上記ホスト材のH−A、ドーパント材D−A、ドーパント材D−B及びドーパント材D−Cは、それぞれ、下記構造を有する。
Figure 2013229243
〈塗布条件〉
塗布工程を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
〈乾燥および加熱処理条件〉
白色発光層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、温度130℃で加熱処理を行い、発光層を形成した。
(電子輸送層の形成)
引き続き、発光層まで形成したのち、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し電子輸送層を形成した。電子輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが30nmになるように塗布した。
〈塗布条件〉
塗布工程は窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
〈電子輸送層形成用塗布液〉
電子輸送層はE−Aを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し0.5質量%溶液とし電子輸送層形成用塗布液とした。
Figure 2013229243
〈乾燥および加熱処理条件〉
電子輸送層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で、温度200℃で加熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
(電子注入層の形成)
引き続き、形成された電子輸送層上に電子注入層を形成した。まず、基板を減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。あらかじめ、真空チャンバーにタンタル製蒸着ボートに用意しておいたフッ化セシウムを加熱し、厚さ3nmの電子注入層を形成した。
(第2電極の形成)
引き続き、形成された電子注入層の上に5×10−4Paの真空下にて第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、取り出し電極を有するように蒸着法にて、発光面積が50mm平方になるようにマスクパターン成膜し、厚さ100nmの第2電極を積層した。
(裁断)
第2電極まで形成したガスバリア性フィルムを、再び窒素雰囲気に移動し、規定の大きさに、紫外線レーザーを用いて裁断し、有機EL素子を作製した。
(電極リード接続)
作製した有機EL素子に、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製の異方性導電フィルムDP3232S9を用いて、フレキシブルプリント基板(ベースフィルム:ポリイミド12.5μm、圧延銅箔18μm、カバーレイ:ポリイミド12.5μm、表面処理NiAuメッキ)を接続した。
圧着条件:温度170℃(別途熱電対を用いて測定したACF温度140℃)、圧力2MPa、10秒で圧着を行った。
(封止)
封止に用いる接着剤シートは、有機EL素子のサイズに合わせ、表2に示す切り込み形状で実施例1と同様にして作製した。尚、表2中、「環状・1重」とは図11Aの切り込み形状を模したものであり、「環状・3重」とは図11Cの切り込み形状を模したものである。電極リード(フレキシブルプリント基板)を接続した有機EL素子に、各シート状接着剤を用いてガスバリア性基材を封止部材として接着し、有機EL素子1〜4を製作した。ガスバリア性基材としては、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚み1.5μm)ものを用いた。尚、発光部の端部から、接着封止部の端部までの最短距離(いわゆる接着封止の「糊しろ」の幅)は6mmとなるようにした。なお、上述した接着剤シートの切り込み形成は、上記の接着封止の「糊しろ」の幅に収まるように形成している。
《有機EL素子の評価》
上記作製した有機EL素子1〜4について、下記の方法に従って耐久性の評価を行った。
〔耐久性の評価〕
(加速劣化処理)
上記作製した各有機EL素子を、60℃、90%RHの環境下で1000時間の加速劣化処理を施した後、下記の素子劣化耐性(黒点発生、および、発光部周囲からのシュリンクによる発光面積減少の程度)に関する評価を行った。
(素子劣化耐性の評価)
加速劣化処理を施した各有機EL素子に対し、それぞれ1mA/cm2の電流を印加し、24時間連続発光させた後、その発光状態の画像解析により、設定した発光面積(50mm平方)に対して、実際に発光している面積の比率を%表示で求め、素子劣化耐性率とした。評価ランクは下記のようにし、◎、○であれば、実用上好ましい特性であると判定した。
◎:素子劣化耐性率が、90%以上である
○:素子劣化耐性率が、60%以上、90%未満である
△:素子劣化耐性率が、20%以上、60%未満である
×:素子劣化耐性率が、20%未満である
以上により得られた結果を、表2に示す。
Figure 2013229243
表2に記載の結果より明らかなように、本発明のシート状接着剤は、有機EL素子の封止用として用いることが可能な、非常に高いサイド封止性能を有することが分かる。
1,21:シート状接着剤、
2,22:接着剤層、
3,3’,23:切り込み、
4,4’,24:ガスバリア層、
5:第二の剥離可能層、
6:第一の剥離可能層、
7:ガスバリア性基材、
10:素子、
11:スルーホール電極、
12:ガスバリア性基板、
20:電子デバイス、
25:素子、
26:ガスバリア性を有する第一の基材(第一のガスバリア性基材)、
27:ガスバリア性を有する第二の基材(第二のガスバリア性基材)。

Claims (6)

  1. 厚さ方向に切り込みを有する接着剤層および前記切り込みの少なくとも側面に形成されてなるガスバリア層を有するシート状接着剤。
  2. 前記切り込みが、環状または渦状で、連続的にまたは不連続に、前記接着剤層に形成される、請求項1に記載のシート状接着剤。
  3. 前記切り込みが、環状または渦状で、連続的に前記接着剤層に形成される、請求項1または2に記載のシート状接着剤。
  4. 前記ガスバリア層が、金属または金属化合物からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状接着剤。
  5. 前記ガスバリア層が、金属化合物を用いてALD法により形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状接着剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート状接着剤を用いて封止される、電子デバイス。
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