例えば特許文献1(図示せず)には、自動車のサイドドアのドアアウタパネルの車両外側の位置にアウトサイドハンドルを設け、アウトサイドハンドルにグリップ部を車両幅方向に移動自在に設け、ドアアウタパネルの孔部を貫通して車両内側に向かうアーム部をグリップ部に設け、ドアアウタパネルの車両内側の空間内にベルクランクを車両前後方向に沿って配置したピンで軸支して車両幅方向に回動自在に設け、時計回りに回動した時にベルクランクの一方のレバー先端部がアーム部の車両外側の面に当接可能とし、反時計回りに回動した時にベルクランクの他方のストッパがアーム部の上端面に当接可能とし、ベルクランクの上部にカウンタウェイトを配設し、ベルクランクの他方にロッドの上端を連結し、ロッドの下端をサイドドアのラッチに連結し、ベルクランクのレバー先端部をアーム部の車両外側の面に当接させた状態で、グリップ部を車両内側に向けて引き込み、且つロッドをラッチの非解除方向(上向き)に付勢するスプリングをベルクランクに設けた構成のドアハンドル構造が記載されている。
上記ドアアウタパネルに車両外側から車両内側に向かう入力による加速度が作用した場合は、アウトサイドハンドルのグリップ部に車両外側に向かう引き出し方向の慣性力が作用するが、同時にカウンタウェイトにも車両外側に向かう慣性力が作用して、ベルクランクがラッチの非解除方向(時計回り)に回動して、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合が維持される。また、上記ドアアウタパネルに車両内側から車両外側に向かう入力による加速度が作用した場合は、アウトサイドハンドルのグリップ部は移動せず、カウンタウェイトに車両内側に向かう慣性力が作用して、ベルクランクが反時計回りに回動して、ベルクランクのストッパがグリップ部のアーム部の上面に当接し、それ以上のベルクランクの反時計回りの回動が阻止されて、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合が維持される。
図7〜図10は、従来の車両用ドアのラッチ構造の一形態を示すものである。図7は、自動車のサイドドア41のアウトサイドハンドル42を車両外側から見た図であり、図7の向かって右側が車両前側である。図8は、図7のC−C断面、すなわちアウトサイドハンドル42の後部位置で車両の前後方向に垂直な面にて縦に切断してドア41の内部を車両前方から見た図であり、アウトサイドハンドル42の未操作時(ドア閉じ時)の状態を示している。図9は、ドアラッチ装置43のラッチオープンレバー44と連結ロッド6との係合状態を車両上方から見た、図8の矢視D−D相当断面図である。図10は、図8に対応してアウトサイドハンドル42の操作時(ドア開き操作時)の状態を示したものである。
図7の例のアウトサイドハンドル42は、車両右側のフロントドア41に設けられたものであり、ドア41の金属製のドアアウタパネル8のベルトライン45の後部下側にアウトサイドハンドル42が配設されている。ベルトライン45の上側には窓ガラス46が不図示のドアサッシュ部に沿って配置される。アウトサイドハンドル42のハンドルレバー3は、ドアアウタパネル8の外面から車両内側に向けて形成された凹部9の高さ方向中央に水平に配置され、ハンドルレバー3の前端側のアーム部(図示せず)がドアアウタパネル8の車両内側において上下方向に沿いアーム部に略垂直な軸部で支持されて、軸部を中心にハンドルレバー3が車両外側に向けて引き出し可能となっている。
図8の如く、ハンドルレバー3の後端側の枠状のアーム部11がハンドルレバー3の車両内側の面からこの面に直交してドアアウタパネル8の車両内側に向けて突出し、アーム部11は、ハンドルレバー3の後端側に配置されたキャップ10の孔部10aを貫通しており、アーム部11の車両内側の端壁13の車両外側の面にベルクランク(略への字状のレバー)5の一端部(下端部)14が当接し、ベルクランク5は中間の車両の前後方向に沿った水平な軸部15で回動自在に支持され、不図示のばね部材によって図8で反時計回りに付勢され、ベルクランク5の他端部(上端部)16に、上下方向に延びた連結ロッド6の水平な上端部6bが連結され、連結ロッド6の下端部6aはラッチ装置43のラッチオープンレバー44に連結され、ラッチオープンレバー44は水平な軸部47を中心に上下方向回動(揺動)自在に支持されている。ラッチオープンレバー44で駆動されるラッチ装置43の不図示のラッチは、図8のドア41の閉じ状態で、車両ボディ側の不図示のストライカに係合している。図8で鎖線で示す符号48は、ベルクランク5の上部にカウンタウェイト(48)を設けた例を示している。
図9の如く、ラッチオープンレバー44は、上方視で略クランク状に屈曲した縦置き(板面が上下方向に沿った配置)の板部49と、板部49の車両外側W1の一端部に設けられたブロック部50と、ブロック部50に、上下に貫通して設けられた円形の孔部51と、板部49の車両内側W2の他端部に設けられた駆動片52と、板部49の長手方向中間部において車両前後方向の不図示の回動軸(図9では回動軸中心を符号54で示す)を係合させる軸受孔53とを備えている。ラッチオープンレバー44の一端側の孔部51に連結ロッド6の下端部6aがガタつきなく貫通係合している。
図8のドア41の閉止状態から図10の如く、操作者がハンドルレバー3を車両外側に引くことで、ベルクランク5がばね部材(図示せず)の付勢に抗して図10で時計回りに回動し、連結ロッド6が下向きに押されて、連結ロッド6の下端部に形成された折曲部6eがラッチ装置43のラッチオープンレバー44を下向きに押して回動させ、ラッチオープンレバー44の操作片52で駆動されて不図示のドア側のラッチと車両ボディ側の不図示のストライカとの係合が解除されて、ドア41を開くことが可能となる。
図1〜図5は、本発明に係る車両用ドアのラッチ構造の一実施形態を示すものである。すなわち、図1は、自動車のフロント又はリヤのサイドドア1の閉じ時の状態、図3は、同じくドア1のアウトサイドハンドル(アウタハンドル)2のハンドルレバー3を操作してドア側のラッチ装置7の不図示のラッチと不図示の車両ボディ側のストライカとの係合を解除した状態、図4は、車両の側面衝突時等において衝撃加速度による慣性力Fがラッチ構造の各部品に作用した際の状態をそれぞれ車両前方から見て示したものである。図2,図5は、ドア側のラッチ装置7のラッチオープンレバー4と、ハンドルレバー3側のベルクランク5に連結された連結ロッド6の下端部6aとの係合状態を車両上方から見て示したものである。
図1の如く、ドア1の閉じ状態において、アウトサイドハンドル2の合成樹脂製のハンドルレバー3は、ドア1の金属製のドアアウタパネル8の内向きの凹部9の高さ方向中央において車両前後方向に沿って横長に配置されている。ハンドルレバー3の後部は、凹部9の後部に固定したキャップ10に保持されている(図7参照)。そして、ハンドルレバー3の後部はドアアウタパネル8に接近する方向に不図示のばね部材で付勢されている。
ハンドルレバー3の裏面に直交するように該裏面から車両内側に向けて突出して設けられた枠状のアーム部11は、キャップ10に形成された孔部10a及びドアアウタパネル8に設けられた孔部を貫通してドアアウタパネル8の内面側に突出し、キャップ10の孔部10aに沿って車両幅方向にスライド自在(孔部10aに対して出没自在)に配置されている。ドアアウタパネル8の内面側において、アーム部11の車両内側の端部は、端壁13で連結されてアーム部11を枠形状(後述するベルクランク5の下端部14を受け入れる上下に開口した孔)を構成しており、端壁13の車両外側の面13aにベルクランク5の先端部(下端部)14が近接ないし接触している(本例では近接した状態を示している)。なお、図1のハンドルレバー3をドアアウタパネル8の車両外側から見た形態は図7におけると同じである。
ベルクランク5は、車両前方から見て正面視で略への字状に屈曲形成され、中間部を、車両前後方向に延びる軸中心を有する水平な軸部(第一の軸部)15で、アウトサイドハンドル2(キャップ10)の不図示の車両内側の突出部分に回動自在に支持され、不図示のばね部材で図1で反時計回り(ラッチを解除しない方向)に付勢されている。
ベルクランク5は、ハンドルレバー3を操作していないドア1の閉じ状態において、軸部15によって軸支される部分(ベルクランク5の概ね中央部分)に対し、一方(車両内側下方側部分)に先端が上記先端部14となる車両内側下方に延びた一方の辺部を有し、他方(車両内側上方側部分)に先端が連結ロッド6の連結部となる車両内側上方に延びた他方の辺部を有している。そして、他方の辺部の連結部では、連結ロッド6の上端部に形成された車両前方に向けて略直角に屈曲した軸部6bを回動自在に連結する基端部16を含むように形成されている。ベルクランク5の一方の辺部はさらに先端部側の外側面にキャップ10(詳細には、孔部10aの上縁部)に係合してベルクランク5の回動を規制するストッパ用の爪部17を有している。
連結ロッド6は、金属製の丸棒を屈曲形成した部品であって車両上下方向に長く延設されており、ベルクランク5の基端部16に形成された円孔16aに取り付けられる車両前後方向に延びる軸中心を有する水平な軸部6b(取り付けに関しては、例えばカラーを介して周方向回動自在に基端部16に係合させる)と、軸部6bから屈曲して下側に続く短い傾斜部6cと、短い傾斜部6cから屈曲してラッチオープンレバー4に向かって下向きに続く長い真直部6dと、連結ロッド6の下端部6aにおいて、長い真直部6dに続いてクランク状に短く車両の前後方向に折り曲げられてラッチオープンレバー4を押圧する押圧操作部6eと、押圧操作部6eに続き下側に延びてラッチオープンレバーに挿入される短い真直部(符号6aで代用)と、下側の真直部6aの下端に形成されたフック状のストッパ部6fとで構成されている。押圧操作部6eは、ドア側のラッチ装置7のラッチオープンレバー4の上面21aに当接してラッチオープンレバー4を下向きに押圧操作する部分であり、下端部6aの一部として車両の前後方向に沿うように屈曲形成されている。
ラッチ装置7は、ドアアウタパネル8の後端部の車両内側の位置に固定され、車両ボディ側の不図示のストライカ(例えばフロントサイドドア1の場合、ストライカは車両ボディのドア開口部において車両中央のBピラーの車両前側の壁部に取付固定される)に係合する不図示のラッチを有している。そして、ラッチは、連結ロッド6の押圧操作部6eによるラッチオープンレバー4の軸部(第二の軸部)12を中点とした下向きの回動(揺動)操作で駆動されてストライカとの係合が解除される。
ラッチオープンレバー4は、ラッチ装置7のケース19内において車両前後方向に延びる軸中心を有する水平な軸部(第二の軸部)12で上下方向に回動(揺動)自在に支持されて、ケース19から車両外側(ドアアウタパネル8側)に向けて突出している。そして、ラッチオープンレバー4の突出先端4aはドアアウタパネル8の車両内側の面に隙間を存して位置している。
図2の如く、ラッチオープンレバー4は、車両の前後方向に垂直な面を基本面とした板金部材であって、車両上下方向の板幅(車両前後方向の板厚)を有して車両幅(左右)方向Wに長く延設された板部20と、板部20の車両外側W1の端部に設けられたブロック部21と、このブロック部21に車両幅方向Wに長く形成され、且つ車両上下方向に貫通した上下の各開口を有する長孔22と、この長孔22に差し込まれた連結ロッド6の下端部6aを車両内側W2に向けて付勢するばね部材23と、ばね部材23の車両内側W2の先端部に設けられ、連結ロッド6の車両外側の円弧状の外周面6a1を受ける(外周面6a1を押圧する)上方視で円弧状のロッド受け部材24とを備えている。
ラッチオープンレバー4の板部20の車両内側W2の端部には略L字状の屈曲部20aが形成され、屈曲部20aの先端側(ラッチオープンレバー4の車両内側W2の先端部)に、ラッチ装置7(図1)のラッチを駆動するための操作片25が車両前方に向けて突設されている。図2に2点鎖線で軸中心12aを示すように、板部20の長手方向中間部に、軸中心12aが車両前後方向に延びる様に配置された水平な軸部12(図1)にて誘導可能に軸支されるための孔部27ないし切欠部が設けられている。
ラッチオープンレバー4の長孔22は、連結ロッド6の下端部6aが挿入配置される孔であって、車両幅方向で対向する様に配置された半円形の両端面22a,22bと、両端面22a,22bを結ぶ様に真直な車両前後方向に垂直な平行面に形成された対向する長い真直面22cとで構成されている。前後の真直面22cの間隔すなわち長孔22の短径は連結ロッド6の下端部6aの外径よりも若干大きく形成され、連結ロッド6を前後方向(径方向)のがたつきなく保持可能である。長孔22の左右の端面22a,22bの内径も同様に連結ロッド6の下端部6aの外径よりも若干大きく形成され、端面22a,22bへの連結ロッド6の下端部6aの食い込みが防止されている。長孔22の車両内側の端面22bとその近傍には、例えば連結ロッド6の下端部6aの食い込みを防ぐための切り割り22dが形成されている。
ラッチオープンレバー4の長孔22の車両外側の端面22a又は端面22aよりも車両外側の位置にばね部材23の一端部23aが例えばインサート成形や接着等で固定されている。そして、ばね部材23の他端部に、長孔22の短径よりも前後方向幅の短い平面視で円弧状のロッド受け部材24が例えばインサート成形や接着等で固定されている。ここで、連結ロッド6の下端部6aが長孔22の長手方向(車両幅方向)にスライド自在に長孔22に係合し、且つロッド受け部材24を介して連結ロッド6の下端部6aがばね部材23で車両内側W2に向けて付勢されている。そして、ドア1(図1)の閉じ状態で連結ロッド6の下端部6aは長孔22の車両内側の端面22bにばね部材23の付勢力で押し付けられている。
ばね部材23のばね力は、車両の衝突時等の慣性力で連結ロッド6の下端部6aがラッチオープンレバー4の長孔22に沿って車両外側W1に向けて自由に移動できるように、衝突時に連結ロッド6の下端部6aに発生する想定慣性力よりも弱く規定されている。ばね部材23は長孔22の内部空間において長孔22の長手方向に伸縮自在に収容されている。ばね部材23としては圧縮コイルばねや波形の板ばね等を適宜使用可能である。ばね部材23として引張コイルばねを用いる場合は、ラッチオープンレバー4において引張コイルばねを連結ロッド6の下端部6aよりも車両内側W2の位置に配設し、通常時(非衝突時)において長孔22の車両内側の端面22bに連結ロッド6の下端部6aが確実に当接できるようにする。
図1の如く、ドア1の閉じ状態で、ラッチオープンレバー4はラッチ装置7のケース19の側壁19aの不図示の孔部から車両外側に向けて斜め上向きに突出している。そして、ラッチオープンレバー4の長孔22の上部開口22eは上方のベルクランク5やハンドルレバー3のアーム部11の下側に対向して位置し、ベルクランク5に向けて開口している。長孔22の開口22eないし仮想中心線が上を向いている(ベルクランク5に向けて開口している)ので、連結ロッド6を上方から長孔22内に作業性良く容易に挿入することができる。また、長孔22の仮想中心線の方向と連結ロッド6の延設方向とが略一致しているので、連結ロッド6がベルクランク5との連結部6bを中点に衝突時の慣性力で揺動して下端部6aが長孔22に沿って車両外側に移動(揺動)する際に、長孔22の内周面22c(図2)と連結ロッド6の下端部6aの外周面との摺動摩擦抵抗が低く抑えられて、連結ロッド6の下端部6aが長孔22に沿ってスムーズに移動可能となる。さらに、長孔22の仮想中心線の方向に連結ロッド6とベルクランク5との連結部6bが配置され、連結部6bは車両前後方向に延びる軸部となって連結部6bを中心として連結ロッド6が揺動するので、車両の左右方向に沿った長孔22の仮想中心線の面と連結ロッド6の揺動面が略一致しているので、連結ロッド6が車両外側に移動(揺動)する際に、連結ロッド6の下端部6aが長孔22に沿ってスムーズに移動可能となる。
例えば、ラッチオープンレバー4のブロック部21に車両前後方向に貫通した長孔(車両前側と車両後側の各開口を有する長孔)(22)を形成し、連結ロッド(6)の下端部(6a)を略L字状に屈曲させてその屈曲した水平な下端部(6a)を長孔(22)に車両前側ないし車両後側から挿入することも可能であるが、その場合は、長孔(22)への連結ロッド(6)の下端部(6a)の挿入作業性が悪く、また、衝突時等の慣性力で連結ロッド(6)が長孔(22)に沿って車両外側に向けて移動する際に、長孔(22)の上側の内周面(22c)と連結ロッド(6)の水平な下端部(6a)の上側の外周面とが擦れて摺動摩擦抵抗が増して、長孔(22)に沿う連結ロッド(6)の軸部6bを中点とした揺動がスムーズに行われなくなる懸念がある。従って、長孔22の開口22eは上向きに配置することが好ましい。
図1に示すように、ベルクランク5の円孔16aは、ラッチオープンレバー4の長孔22よりも車両の左右方向で車両内側に配置されており、連結ロッド6は、上に向かうにつれて車両内側となる様に傾斜して配置され、ドアアウタパネル8と略平行に位置している。連結ロッド6の下端部の折れ曲がった押圧操作部6eは、ラッチオープンレバー4の長孔22の周縁部の上面21a(図2)と略平行であって車両の前後方向に沿って配置されている。つまり、押圧操作部6eは、長孔22の延びる方向(車両の左右方向)に直交して配置されている。そして、ハンドルレバー3を操作していないドア1の閉じ状態において、連結ロッド6とベルクランク5の車両内側の端部16との連結部分6bはベルクランク5の軸部15に対して車両内側の上方に位置し、ベルクランク5のアーム部11に係合する端部14はハンドルレバー3のアーム部11と共に軸部15及び連結部分6bの下方に位置している。なお、車両が側面外側から車両内側に向かう衝撃を受けた場合であって、ハンドルレバー3が引き出されてベルクランク5が回動した状態では、図4に示すように、連結部分6bはベルクランク5の軸部15に対して車両内側の下方に位置し、端部14は軸部15に対して車両外側に位置している。
以下、乗員等の操作者がハンドルレバー3を車両外側に引く通常の操作による動作を説明する。図1のドア1の閉じ状態から、図3の如く、乗員等の操作者がハンドルレバー3を車両外側に引くことで、ハンドルレバー3と一体に車両外側に移動したアーム部11の端壁13の車両外側の面13aが、ベルクランク5の先端部14を車両外側に向けて押して、ベルクランク5が軸部15を中点に矢印28の如く図3で時計回りに回動する。そして、ベルクランク5の車両内側の基端部16に車両前後方向に沿って配置した軸部6bが連結された連結ロッド6が下降して、連結ロッド6の下端部6aの上部に屈曲形成した押圧操作部6eがラッチオープンレバー4を下向きに押して車両前後方向に沿った軸部12を中点にラッチオープンレバー4を回動(揺動)させる。
この時、連結ロッド6の下端部6aは、ラッチオープンレバー4の長孔22内においてばね部材23で車両内側に向けて付勢されているので、乗員等の操作者がハンドルレバー3を車両外側に引く通常の操作では長孔22に沿って移動することなく、図1のドア1の閉じ時と同様に長孔22の車両内側の端部22bに当接する位置となり、ラッチオープンレバー4の軸部12と連結ロッド6の下端部6a(押圧操作部6e)との距離は間隔L1となる。この為、通常の操作による所定のストローク量である連結ロッド6の下降動作でラッチオープンレバー4が所定のストローク量(揺動角度量)で矢印29の如く下向きに大きく移動(回動ないし揺動)して、ラッチオープンレバー4が不図示のドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を確実に解除させ、操作者がドア1を開くことができる。連結ロッド6の屈曲した押圧操作部6eは、ラッチオープンレバー4の長孔22の上縁部(ブロック部21の上面21a)に当接して、ラッチオープンレバー4を押し下げると共に、長孔22内への連結ロッドの進入を阻止する。
また、操作によって回動したベルクランク5では、先端部14の外側面の爪部17がアウトサイドハンドル2のキャップ10の孔部10aの上縁に当接する。この当接によって、ベルクランク5の先端部14の抜け出しを防止して先端部14をアーム部11の孔部の内部に留まらせると共に、ベルクランク5のそれ以上の時計回り(矢印28方向)の回動及び連結ロッド6によるラッチオープンレバー4の必要以上の下向きの押圧を阻止する。連結ロッド6によって押し下げられたラッチオープンレバー4は、ラッチ装置7のケース19の側壁19aから車両外側に向けて斜め下向きに突出する。
次に、車両が側面外側から車両内側に向かう衝撃を受けた場合の動作を説明する。図1に示すドア1の閉じ状態で、車両が側面衝突等を受けて、例えばドアアウタパネル8が車両外側から車両内側に向かう衝撃を受けた場合に、図4の如く、ハンドルレバー3やベルクランク5や連結ロッド6に衝撃加速度の方向とは逆方向の慣性力Fが同時に作用する(慣性力Fの大きさは、例えば、ハンドルレバー3に作用する慣性力F1>連結ロッド6に作用する慣性力F3>ベルクランク5に作用する慣性力F2である)。そして、ハンドルレバー3が慣性力F1で車両外側に飛び出し(引き出され)、ベルクランク5が慣性力F2で例えば時計回り(矢印28方向)に回動し、これらのベルクランク5に作用する慣性力F2とハンドルレバー3に作用する慣性力F1との総和で連結ロッド6が矢印30の如く下向きすなわちラッチ解除方向に移動する。しかし、連結ロッド6が下向きに移動してラッチオープンレバー4を押し下げる前に、連結ロッド6に作用する慣性力F3で連結ロッド6の下端部6a(押圧操作部6e)が矢印36の如く慣性力F3の方向すなわち車両外側に向けて移動する。つまり、連結ロッド6の下端部6aがラッチオープンレバー4の長孔22に沿って車両外側方向にスライド移動する。この時、下端部6aは、ロッド受け部材24を押してばね部材23を圧縮し、下端部6aが長孔22の車両外側の端部22aに接近する様に移動する(図5参照)。
これにより、ラッチオープンレバー4の揺動中心である車両前後方向に沿った軸部12と連結ロッド6の下端部6aとの間の距離は間隔L2となり、図3の通常時のドア1の開き操作時におけるラッチオープンレバー4の軸部12と連結ロッド6の下端部6aとの間の距離である間隔L1よりも大きくなる(ラッチオープンレバー4のレバーの腕長さが長くなる)。その為、図4の衝突時における連結ロッド6の下降動作によるラッチオープンレバー4の矢印30方向の下向きの回動(揺動)ストローク量(揺動角度量)が、図3の通常時における連結ロッド6の下降動作(連結ロッド6の下降ストローク量は図4におけるとほぼ同じである)によるラッチオープンレバー4の矢印29方向の下向きの回動(揺動)ストローク量(揺動角度量)よりも小さくなる。すなわち、ラッチオープンレバー4の下向きの回動角度量が減少して、ラッチオープンレバー4の矢印30方向の下向きの回動ストローク量(回動角度量)が、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を解除するために必要な所定のストローク量(回動角度量)に達しないので、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合が解除されることがなく、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合が維持されて、ドア1が閉じた状態に保たれる。
この時、ラッチオープンレバー4は矢印30の方向(下向き)に回動し、図4に示すように、ラッチオープンレバー4はラッチ装置7のケース19の側壁19aから車両外側に向けて水平ないし若干斜め上向きに突出した状態となる。この状態でのラッチオープンレバー4の角度は、図1のドア1の閉じ時における斜め上向きのラッチオープンレバー4と図3の通常時のドア1の開き操作時における斜め下向きのラッチオープンレバー4との略中間の回動角度となっている。
更にこの状態を詳細に説明すると、図5の如く、連結ロッド6の下端部6aは、慣性力F3で車両外側W1に向けてラッチオープンレバー4の長孔22内を移動する。長孔22内に配置されたばね部材23は連結ロッド6の下端部6aで車両外側W1に向けて圧縮されて、連結ロッド6の下端部6a及びロッド受け部材24と共に長孔22の車両外側の端部22a側に位置する。つまり、連結ロッド6の下端部6aはばね部材23の付勢力に抗して車両外側W1に向けて長孔22内を移動する。なお、衝突時にラッチオープンレバー4にも車両外側W1に向かう慣性力が作用するが、ラッチオープンレバー4は車両幅(左右)方向Wに沿って延設されており、車両前後方向に沿った水平な軸部12(図4)によって回動(揺動)可能に軸支されて車両外側の突出先端4aが概略車両上下方向に移動(揺動)するものであるので、ハンドルレバー3やベルクランク5に比較して慣性力の影響をほとんど受けることがない。図5において軸部12の仮想軸中心を符号12aで示す。
図5において、例えば、圧縮時のばね部材23をラッチオープンレバー4の長孔22の車両外側の端部22aよりも車両外側のブロック部分21bの内部に収容するように、車両外側のブロック部分21bに長孔22の端部22aに続く水平方向の不図示の孔部等を設けることも可能である。これにより、連結ロッド6の下端部6aが長孔22の全長に渡って移動可能となり、ラッチオープンレバー4の軸部12から連結ロッド6の下端部6aまでの距離Lを増して、連結ロッド6の下降動作によって生じるラッチオープンレバー4の下向きの回動ストローク量(回動角度量)を減少させて、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合の解除を一層行いにくくすることができる。
更に、例えば図4の衝撃を受けた際における(図1の通常のドア閉じにおけるものでもよい)ラッチオープンレバー4の位置を、ラッチ装置7のケース19の側壁19aから水平よりも少し斜め下向きに突出した位置にすることで、正確にはこの時のラッチオープンレバー4の上面(長孔22の開口22eの上縁部)21aを車両外側に向かうにつれて漸次下側となるように傾斜させることで、ばね部材やラッチオープンレバー4を変更することなく、図4の衝撃を受けた際における押圧操作部6eとラッチオープンレバー4の上面21aとの摺動摩擦抵抗が低く抑えられて、連結ロッド6の下端部6aが長孔22に沿ってスムーズに移動可能となる。また、ラッチオープンレバー4と連結部6bとの配置関係から上面21aが車両外側へ行くほど連結ロッド6とベルクランク5との連結部6bから遠ざかることになるので、押圧操作部6eからラッチオープンレバー4の上面21aが遠ざかることになり、例えば鉛直方向(同位置)の連結ロッド6に対して、ラッチオープンレバー4の軸部12から連結ロッド6の下端部6aまでの距離Lを実質的に増加させるように連結ロッド6の下降動作によって生じるラッチオープンレバー4の下向きの回動ストローク量(回動角度量)を更に減少させて、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合の不意な解除を一層行いにくくすることができる。
また、図4において、ケース19から斜め下向きに突出した場合をラッチオープンレバー4がラッチ装置7のケース19から水平に突出した場合と比較すると、連結ロッド6が例えば鉛直方向に延びた同じ位置にてその下端部6aがラッチオープンレバー4の長孔22に貫通係合すると仮定すると、連結ロッド6の下端部6aは、ケース19から水平に突出したラッチオープンレバー4では長孔22の車両外側の端部22aよりも車両内側にずれた位置に貫通係合し、ケース19から斜め下向きに突出したラッチオープンレバー4では長孔22の車両外側の端部22aに係合することになる。つまり、ケース19から水平に突出したラッチオープンレバー4の軸部12から長孔22内の連結ロッド6の下端部6aの位置までの距離Lよりも、ケース19から斜め下向きに突出したラッチオープンレバー4の軸部12から長孔22内の連結ロッド6の下端部6aの位置までの距離Lが大きくなる。これにより、連結ロッド6の下向きの移動ストローク量が同じであれば、ケース19から水平に突出したラッチオープンレバー4の回動ストローク量が大きくなり、ケース19から斜め下向きに突出したラッチオープンレバー4の回動ストローク量が小さくなって、ケース19から水平に突出したラッチオープンレバー4に比べて、ケース19から斜め下向きに突出したラッチオープンレバー4の方が、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を解除させにくくなる。
以上のことから、図4の衝撃発生時におけるラッチオープンレバー4を水平や斜め上向きよりも斜め下向きに配置することで、正確には、ラッチオープンレバー4のブロック部21の上面(長孔22の開口22eの上縁部)21aを車両外側に向かうにつれて漸次下向きに傾斜させることで、連結ロッド6の下端側の折曲した押圧操作部6eを、衝撃時の慣性力F3でラッチオープンレバー4の下向きに傾斜した上面21aに沿って小さな摺動摩擦抵抗でスムーズに車両外側に向けて移動させることができる。また、例えば水平に突出したラッチオープンレバー4の長孔(長孔も水平である)22の車両内側の端部22bから車両外側の端部22aまで連結ロッド6の下端部6aをスライドさせるのに対し、斜め下向きに突出したラッチオープンレバー4の長孔(長孔も斜め下向きである)22の車両内側の端部22bから車両外側の端部22aまで連結ロッド6の下端部6aをスライドさせる方が、連結ロッド6の下端部6aの車両外側への水平移動距離が短くなる。さらに、連結ロッド6の下端部6aと長孔22の周縁部21aや内周面22cとの干渉が最小限に抑えられる。これらによって、長孔22に沿う連結ロッド6の下端部6aのスライド移動が確実に行われて、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合の不意な解除が確実に防止される。
また、例えば鉛直方向の連結ロッド6に対し、水平な長孔22の上縁部21aと斜め下向きの長孔22の上縁部21aとで比較すると、斜め下向きの長孔22の上縁部21aの方が、短時間で長孔22に沿った連結ロッド6の下端部6aの移動を完了するので、連結ロッド6がラッチオープンレバー4を押し下げるよりも速く、長孔22に沿った連結ロッド6の下端部6aの移動が完了し、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合の不意な解除が確実に防止される。
図1のドア1の閉じ時におけるラッチオープンレバー4をラッチ装置7のケース19の側壁19aから図1におけるよりも下向きに例えば水平に近い角度で突出させ、図3の通常時のドア1の開き操作時におけるラッチオープンレバー4をラッチ装置7のケース19の側壁19aから図3におけるよりもさらに斜め下向きに突出させることで、ラッチオープンレバー4の下向きの回動ストローク量は変化させずに、上記図4におけるラッチオープンレバー4の位置をラッチ装置7のケース19の側壁19aから水平よりも少し斜め下向きに突出した位置に規定することができる。
図6は、ラッチオープンレバー4のレバーの腕長さと、ラッチオープンレバー4の回転中心(軸部)12に対するラッチオープンレバー4の上下方向の揺動ストローク量の関係を示すものである。図6で、右端の符号θは、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を解除させるために必要なラッチオープンレバー4の所定の回動角度を示している。そして、中間の矢印31は図3における通常時のラッチオープンレバー4の下向きのストローク量(連結ロッド6のストローク量)を示し、中間の鎖線33は通常時の連結ロッド6の位置(長孔22内の位置であって、車両内側の端部22bに当接する位置)を示している。そして、左端の矢印32は、図4における衝撃時の慣性力F3で連結ロッド6が車両外側W1に向けて移動した際にドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を解除させるために必要となるラッチオープンレバー4の下向きのストローク量(連結ロッド6のストローク量)を示し、左端の鎖線34は、慣性力発生時の連結ロッド6の位置(長孔22内の位置であって、車両外側の端部22aに当接する位置)を示している。
梃子で喩えると、ラッチオープンレバー4の回転中心(軸部)12が支点に相当し、通常時の連結ロッド6の位置33や慣性力発生時の連結ロッド6の位置34が力点に相当し、ラッチオープンレバー4の回転中心12よりも図6で右側に位置する不図示のラッチ装置7(図4)のラッチが作用点に相当する。レバー比は、支点(ラッチオープンレバー4の回転中心12)から力点(連結ロッド6の位置33,34)までの距離と、支点(ラッチオープンレバー4の回転中心12)から作用点(ラッチ装置7のラッチ)までの距離との比率である。
支点(ラッチオープンレバー4の回転中心12)から作用点(ラッチ装置7のラッチ)までの距離は一定であるので、支点(ラッチオープンレバー4の回転中心12)から力点(連結ロッド6の位置33,34)までの距離(レバーの腕長さ)が増せば増す程、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を解除するために必要となる連結ロッド6の下降ストローク量、すなわちラッチオープンレバー4の下向きの回動ストローク量が多く必要となる(ストローク量31よりもストローク量32が大きくなる)。なお、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を解除するためのラッチオープンレバー4の回動角度θは一定である。ここで、連結ロッド6の下降ストローク量はベルクランク5の回動範囲で一定に規定されて限度がある。その限界ストローク量を利用して、通常時の連結ロッド6の位置33で連結ロッド6の限界ストローク量で下降させてラッチオープンレバー4をドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を解除させる所定のストローク量31よりも少し大きなストローク量で下向きに回動(揺動)させて、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合を解除させることができる。しかし、衝撃による慣性力発生時の連結ロッド6の位置34では、連結ロッド6を同じストローク量で下降させても、ストローク位置34とストローク位置33とにおける必要ストローク量のストローク差35だけストローク量が必要となり、上記限界ストローク量では足りないので、ドア側のラッチと車両ボディ側のストライカとの係合が解除されることがない。
なお、上記実施形態においては、自動車のフロントないしリヤのサイドドアに車両用ドアのラッチ構造を適用した例で説明したが、例えば自動車のバックドア等に上記車両用ドアのラッチ構造を適用することも可能である。