本発明は、扉や壁面など板状体に組み付ける錠前の鍵穴から雨水や塵埃が侵入したり、不正な道具を挿入して悪戯されたりしないように鍵穴を隠蔽して保護する錠前の保護キャップに関する。
例えば交通信号機の制御盤を収納する電気制御ボックスの扉に使用される錠前は、鍵穴を扉の外側板面から外部に臨ませて扉に組み付けるが、その鍵穴から雨水や塵埃が侵入したり不正な道具を挿入して悪戯されたりしないように、錠前の正面に保護キャップを装着して鍵穴を隠蔽している。
従来、この種の保護キャップの中には、扉の外側板面から突出した錠前の正面側上部に鍵操作穴を鍵穴に連通させて固定する固定プレート(キャップベース)と、固定プレートにヒンジ機構を介して回転可能に連結して鍵操作穴を開閉する可動プレート(キャップカバー)とで構成し、可動プレートは、開く方向に常時ばね付勢する一方、閉時は固定プレートに重ね合わせた閉位置に掛け止めて保持し、開時、外部操作部材を用いて固定プレートとの掛け止めを解除すると、ばね付勢力により開方向に跳ね上がるように自動的に回転して鍵穴を開放する回転跳ね上げ式のものが多い(特許文献1参照)。
ところが、従来、回転跳ね上げ式の保護キャップでは、可動プレートを回転可能に固定プレートに連結するためにヒンジ機構を備えることが必要になることから、それだけ構造的に複雑になり、意匠的にもスッキリしないという課題があった。しかも、回転跳ね上げ式保護キャップでは、可動プレートを開けるとき、固定プレートとの掛け止めを解除すると、いきなり、手前側の操作者に向かって回転しながら可動プレートが飛び出すために、可動プレートが手等にぶつかって危ないという課題があった。
そこで、本発明が解決せんとする課題は、開けるときにキャップカバーが手前側に飛び出さず安全で、構造的にも意匠的にも従来にない斬新でシンプルな錠前の保護キャップを提供することにある。
この課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、板状体の外側板面dから外部に臨ませた錠前に、その鍵穴13に鍵操作穴16を連通させて固定するキャップベース15と、該キャップベース15に連結して前記鍵操作穴16を開閉するキャップカバー20とからなる錠前の保護キャップCにおいて、前記キャップカバー20は、前記キャップベース15に被せて前記鍵操作穴16を塞いだ閉位置と、該鍵操作穴16を開放して前記鍵穴13を外部に臨ませる開位置の間をスライド自在に前記キャップベース15に連結してなることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の錠前の保護キャップCにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記キャップカバー20は、開位置に向けて常時ばね付勢する一方、閉時は前記キャップベース15に掛け止めて閉位置に位置決め保持し、開時は該キャップベース15に設けた差込穴27に外部操作部材の先端を差し込んで前記キャップベース15に対する掛け止めを解除すると、ばね付勢力により自動的に開位置にスライドしてなることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の錠前の保護キャップCにおいて、たとえば以下に示す実施の形態のとおり、前記キャップベース15および前記キャップカバー20は、該キャップカバー20がスライドするとき、前記鍵操作穴16の周りで互いに接触する摺接面18a・41aを備え、それら摺接面18a・41aを、前記キャップカバー20が閉位置にスライドすると、互いに圧接する傾きのテーパ面で形成してなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3に記載の錠前の保護キャップCにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記キャップベース15には、前記キャップカバー20との間から浸入する水を受けて前記鍵操作穴16の高さ方向上部から外部へと流し落とす溝状樋部21を凹設してなることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項2、3又は4に記載の錠前の保護キャップCにおいて、たとえば以下に示す実施の形態のとおり、前記差込穴27は、前記キャップベース15を前記板状体の外側板面14上に設置した状態において、前記外部操作部材の差込方向入口側に向かうに従い次第に前記外側板面dから離れる方向に傾斜して外周部に穿設してなることを特徴とする。
従って、請求項1に記載の発明では、キャップカバーを、キャップベースに被せて鍵操作穴を塞いだ閉位置と、鍵操作穴を開放して錠前の鍵穴を外部に臨ませる開位置の間をスライド自在にキャップベースに連結したスライド式であるため、回転式に必要なヒンジ機構が不要となり、それだけ構造的にも意匠的にも従来にない斬新でシンプルな錠前の保護キャップを得ることができる。しかも、請求項1に記載の発明では、キャップカバーを、閉位置と開位置との間を扉など板状体の外側板面に沿って直線的にスライドさせて開閉する構造であるため、従来の回転跳ね上げ式のようにキャップカバーが回転しながら手前側の操作者に向かって飛び出して手等にぶつかるような危険はなく安全で、簡単な操作でキャップカバーを開閉することができる。
請求項2に記載の発明では、通常の非施解錠時には、キャップカバーをキャップベースに被せて鍵操作穴を塞ぐことにより、鍵穴から雨水や塵埃が侵入したり不正な道具を挿入して悪戯されたりしないように鍵穴を隠して保護している。この閉時は、キャップカバーをキャップベースに掛け止めて閉位置に位置決め保持し、錠前を解錠する開時は、差込穴に外部操作部材の先端を差し込んでキャップベースに対する掛け止めを解除すると、ばね付勢力により自動的に開位置までスライドし、そうすれば、簡単にキャップカバーが開いて鍵穴を外部に臨ませることができる。
請求項3に記載の発明では、保護キャップは、キャップカバーを閉位置までスライドさせて完全にキャップベースに被せると、互いに接触するキャップカバーの摺接面とキャップベースの摺接面とが互いに圧接する傾きのテーパ面で形成されているため、鍵操作穴の周りで互いの摺接面が固く重なり合った食い込み状態で密着し、これにより、キャップベースとキャップカバーを、たとえ間にガタがあってもこれを吸収して連結し、その結果、鍵操作穴を液密に塞いで防水効果を上げることができる。
請求項4に記載の発明では、たとえキャップベースとキャップカバーの間に水が染み込んで浸入することがあっても、キャップベースには、鍵操作穴の周りに溝状樋部を設けるため、浸入した水は、樋部で受けて鍵操作穴の高さ方向上部から排水路を通して外部へと流し落として排水したり、樋部に留まっても自然乾燥させたりすることにより防水効果を上げることができる。
請求項5に記載の発明では、キャップベースが扉等の板状体の外側板面上に設置された状態で錠前に固着し、差込穴の入口が板状体の外側板面に近接するため、外部操作部材を手で持って先端を差込穴に差し込み、キャップカバーの掛け止めを解除する操作をするとき、板状体の外側板面が手に当たって解除操作の障害になりそうな状況にある。しかし、本発明の保護キャップは、差込穴を、キャップベースを板状体の外側板面上に設置した状態において、操作部材の差込方向入口側に向かうに従い次第に外側板面から離れる方向に傾斜してキャップベースに穿設する構成であるため、外部操作部材の先端を差込穴に差し込んだとき、外部操作部材の持ち手側が板状体の外側板面から遠ざかるので、従来のように板面が手にぶつかって解除操作の障害になるようなことがなく、それだけ解錠操作を手間なく簡単にすることができる。
本発明の一例である保護キャップを扉のラッチ錠装置に組み付けて使用し、キャップカバーを被せた掛け止め状態で示す縦断面図である。
(A)は扉のラッチ錠装置に組み付けた保護キャップを、キャップカバーを被せた掛け止め状態で示す正面図、(B)は側面図である。
扉のラッチ錠装置に組み付けた保護キャップを、キャップカバーを被せた掛け止め状態で示す斜視図である。
保護キャップの分解斜視図である。
保護キャップを図4と向きを違えて示す分解斜視図である。
(A)は保護キャップのキャップベースを示す斜視図、(B)はそのキャップベースを向きを違えて示す斜視図である。
(A)は図1に示す保護キャップの下部の拡大縦断面図、(B)は図11に示す保護キャップの下部の拡大縦断面図、(C)は図12に示す保護キャップの下部の拡大縦断面図である。
(A)は保護キャップをキャップカバーの開いた掛け止め解除状態で示す正面図、(B)はキャップカバーを被せた掛け止め状態で示す正面図である。
(A)は保護キャップをキャップカバーの開いた掛け止め解除状態で示す側面図、(B)はキャップカバーを被せた掛け止め状態で示す側面図である。
(A)は保護キャップをキャップカバーの開いた掛け止め解除状態で示す斜視面図、(B)はキャップカバーを被せた掛け止め状態で示す斜視図である。
扉のラッチ錠装置に組み付けた保護キャップをキャップカバーの掛け止め解除途中の状態で示す縦断面図である。
扉のラッチ錠装置に組み付けた保護キャップをキャップカバーの開いた掛け止め解除状態で示す縦断面図である。
扉のラッチ錠装置に組み付けた保護キャップをキャップカバーの開いた掛け止め解除状態で示す斜視図である。
(A)は扉のラッチ錠装置に組み付けた保護キャップをキャップカバーの開いた掛け止め解除状態で示す正面図、(B)は側面図である。
本発明の他例の保護キャップを示す分解斜視図である。
他例の保護キャップを示し、(A)はキャップカバーの開いた掛け止め解除状態で示す正面図、(B)はキャップカバーを被せた掛け止め状態で示す正面図である。
(A)は他例の保護キャップをキャップカバーを被せた掛け止め状態で示す縦断面図、(B)はキャップカバーの掛け止め解除途中の状態で示す縦断面図、(C)はキャップカバーの開いた掛け止め解除状態で示す縦断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1、図2および図3に本発明の一例である保護キャップを扉のラッチ錠装置に組み付けて使用する状態を示し、図4および図5に保護キャップの構成部品を示す。図示例の保護キャップCは、交通信号機の電気制御ボックス正面の開口部10を開閉する扉Dに取り付けるラッチ錠装置Rに組み付けて使用する。ラッチ錠装置Rは、ラッチボルトを出没自在に組み込んだ錠ケース11の正面11aに錠前のシリンダ錠12を固定し、そのシリンダ錠12の正面から鍵穴13を外部に臨ませた構造になっている。
保護キャップCは、いずれも亜鉛ダイカスト製の、キャップベース15とキャップカバー20とからなる。キャップベース15は、図4、図5および図6に示すように、図中左右の幅方向に横長な略矩形厚板状をなし、中央の厚さ方向裏面側にシリンダ錠12のシリンダ形状に合わせて円形凹状の嵌付段部14を設け、その嵌付段部14から表面17側に貫通する鍵操作穴16を同軸線上に穿設している。さらに、表面17には、鍵操作穴16の開口周縁に一段厚肉な半楕円状の凸板部18を形成し、幅方向両側には、図中上下の高さ方向に長い一対の係合凸部19・19を設けて両側部を段状に形成し、高さ方向上部には、幅方向に沿って樋部21を設けると共に、樋部21を間に挟んだ両端に高さ方向に深く穿設した一対のばね収納穴22・22のばね突出口22aが開いている。
嵌付段部14には、底面14aにおいて、鍵操作穴16の図中上側に、凸板部18へ貫通する一対の細径なピン取付穴23・23を穿設し、下側に同じく貫通するガイド穴25を穿設している。凸板部18は、正面の凸板面18aを、表面17に対して傾けてテーパになった摺接面で形成している。即ち、摺接面18aは、キャップカバー20が閉位置にスライドすると、キャップカバー20の摺接面41aと互いに圧接する傾きのテーパ面で形成する。樋部21は、表面17側の鍵操作穴16と裏面側の嵌付段部14のそれぞれ入口開口の真上に防水壁21a・21bを立設して溝形に形成し、さらに裏面側の防水壁21bの両端を切り欠いて、鍵操作穴16の高さ方向上部側からばね突出口22aの裏面側を経て外部へと至る排水路wを形成してなる。排水路wは、防水壁21a・21b間の溝底を山形に成形して底面21cをテーパ面で形成し、浸水した水が傾斜に沿って流れ落ちやすくしている。
ガイド穴25は、図1および図7に示すように、厚さ方向裏面側の第1穴部25aより表面17側の第2穴部25bを一段細径に穿設し、第2穴部25bに表面17側に開口するピン挿通口26を有する穴形状になっている。更に、キャップベース15には、ガイド穴25の第1穴部25aと奥側を連通させた外部操作部材50の差込穴27を穿設している。図示例において、外部操作部材50は、先端に細軸部50aを有したシリンダ錠12に専用の施解除キーである。従って、差込穴27は、施解除キー50の細軸部50aに合わせて、それを抜き差し可能な細い穴径の隠し穴で形成する。しかも、差込穴27は、キャップベース15を扉Dの外側板面d上に設置した状態において、施解錠キー50の図中矢示する差込方向入口27a側に向かうに従い次第に外側板面dから離れる方向に傾斜して穿設してなる。
キャップベース15は、ガイド穴25にロックピン35を組み込む。ロックピン35は、磁性体の金属からなり、細径な軸部35aに対し頭部35bを一段太径に形成してなる。ロックピン35は、ガイド穴25内へ第1穴部25aから挿入し、その第1穴部25aの入口を、嵌付段部14にビス止めする中蓋36で塞いで組み込む。そして、軸部35aをピン挿通口26から出没自在にガイド穴25内に遊嵌してなる。中蓋36は、図1、図4および図5に示すように、嵌付段部14に合わせて環板状をなし、鍵操作穴16に合わせて円形の透穴37を設けると共に外周縁に一対の切欠き穴38・38を設けてなる。そして、キャップベース15は、短軸状のストッパピン40・40を切欠き穴38・38からピン取付穴23・23に貫挿し、図8(A)に示すように、それぞれ先端40a・40aを摺接面18aから突出させた状態で嵌着している。ばね収納穴22・22には、上半分をばね突出口22aから突出させて長尺な圧縮コイルばねの付勢ばね45・45を挿設する。そして、厚さ方向裏面側には、板状の防水ゴムパッキン44を接着する。防水ゴムパッキン44は、キャップベース15の裏面側の外形状に合わせ、高さ方向上部に樋部21に対応させて肩部44aを形成し、中央には嵌付段部14と同様にシリンダ形状に合わせて円形の透穴44bを設けてなる。
一方、キャップカバー20は、図1、図4および図5に示すとおり、キャップベース15に被せられるように、図中下部と裏側の背面部を開放した幅方向に横長の略矩形な平箱キャップ状につくり、表側の正面板部39の内面39aに、キャップベース15の凸板部18と対応し、内面39aより一段凹んだ凹状部41を形成している。凹状部41は、凹板面41aを、内面39aに対して傾けてテーパになった摺接面で形成している。即ち、摺接面41aは、キャップカバー20が閉位置にスライドすると、キャップベース15の摺接面18aと互いに圧接する傾きのテーパ面で形成している。摺接面41aには、ストッパピン40・40と対応し、高さ方向に一対のガイド溝55・55を平行に凹設し、ガイド溝55・55間の下側に、ガイド穴25のピン挿通口26と対応する位置に掛け止め穴60を穿設してなる。掛け止め穴60は、入口にピン挿入口60aをあけた有底の小穴で、その穴底に磁石Mを嵌着してなる。図示例の磁石Mは、永久磁石である。また、キャップカバー20には、後述するとおり、それをキャップベース15に被せたとき、差込穴27の入口27aが外部に臨むように、その入口27aと対応する位置に半円凹形状の切欠き穴27bが設けられている。
更に、キャップカバー20の両側部42・42には、向い合う内側面と内面39aとの間の角縁に、キャップベース15の係合凸部19・19に対応させて係合溝43・43を凹設する。上カバー部49には、内端面にキャップベース15のばね突出口22a・22aと対応する一対のばね押え穴49a・49aが凹設されている。
そこで、キャップカバー20は、係合溝43・43にキャップベース15の係合凸部19・19を係合し、ガイド溝55・55にストッパピン40・40を係合する一方、ばね突出口22・22から突出した付勢ばね45・45の上端コイル部45aを、ばね押え穴49a・49aに嵌め込み、上カバー部49で付勢ばね45・45を押えながらキャップベース15に被せる。すると、保護キャップCは、キャップカバー20がキャップベース15に被さり鍵操作穴16を塞いだ閉位置と、鍵操作穴16を開放する開位置との間をスライド自在に係合する一方、開位置に向けてばね付勢力が働き、図8(A)・図9(A)・図10(A)に示すように、ガイド溝55・55の下側溝壁55aをストッパピン40・40に押し当てて、キャップカバー20を開いた開位置に位置決め保持して組み立てられる。
従って、保護キャップCは、開位置に保持したキャップカバー20を付勢ばね45・45に抗して閉位置までスライドさせて完全にキャップベース15に被せると、図1および図7に示すように、磁石Mでロックピン35を吸着して軸部35aをピン挿通口26から掛け止め穴60に係合し、これにより、キャップカバー20をキャップベース15に掛け止めて自動的にロックする構造になっている。しかも、保護キャップCは、図8(B)・図9(B)・図10(B)に示すように、キャップカバー20を閉位置までスライドさせて完全にキャップベース15に被せると、鍵操作穴16の周りで互いにテーパ面のキャップカバー20の摺接面41aとキャップベース15の摺接面18aとが圧接した状態で重なり合ってキャップカバー20がキャップベース15に隙間なく液密に連結される防水構造になっている。
そこで、今度、保護キャップCは、キャップカバー20をキャップベース15から開けるときは、図7(B)に示すように、外部操作部材として、専用の施解錠キー50を用い、その細軸部50aを切欠き穴27bを通して入口27aから差込穴27に差し込んで頭部35bに係止し、図7(C)に示すように、ロックピン35を磁石Mに抗してガイド穴25に押し込んで軸部35aを掛け止め穴60から外し、キャップベース15に対するキャップカバー20の掛け止めを解除する。すると、キャップカバー20が付勢ばね45・45の付勢力により開方向へ自動的にスライドし、図8(A)・図9(A)・図10(A)に示すように、ガイド溝55・55の下側溝壁55aがストッパピン40・40に押し当たる開位置まで開いて鍵操作穴16を開放する構造になっている。
さて、上述した構成の保護キャップCは、図1、図2および図3に示すように、扉Dに取り付けるラッチ錠装置Rのシリンダ錠12に組み付けて使用する。ラッチ錠装置Rは、鍵穴13を外部に臨ませたシリンダ錠12の正面側上部を扉Dの呼込み穴70に通して外側板面dから突出させ、錠ケース11の正面11aを内側板面にねじ止めして扉Dに固着する。そこで、使用時に、保護キャップCは、シリンダ錠12の正面側上部をキャップベース15の嵌付段部14に嵌め込み、鍵穴13に鍵操作穴16を連通させた状態で、キャップベース15をシリンダ錠12上にねじ止めして扉Dの外側板面d上に設置する。そして、通常の非施解錠時には、キャップカバー20をキャップベース15に被せて鍵操作穴16を塞ぐことにより、鍵穴13から雨水や塵埃が侵入したり不正な道具を挿入して悪戯したりしないように鍵穴13を隠して保護している。
保護キャップCは、このようにキャップベース20に被せたキャップカバー20が閉位置にあると、図1および図7(A)に示すように、磁石Mでロックピン35を吸着し、その軸部35aを掛け止め穴60に係合させてキャップカバー20の開閉を自動的にロックすることができる。しかも、保護キャップCは、キャップカバー20を閉位置までスライドさせて完全にキャップベース20に被せると、互いに接触するキャップカバー20の摺接面41aとキャップベース15の摺接面18aとが互いに圧接する傾きのテーパ面で形成されているため、鍵操作穴16の周りで互いの摺接面41a・18aが固く重なり合った食い込み状態で密着し、これにより、キャップベース15とキャップカバー20を、たとえ間にガタがあってもこれを吸収して連結し、その結果、鍵操作穴16を液密に塞いで防水効果を上げることができる。
保護キャップCは、そのようにキャップベース15とキャップカバー20とを鍵操作穴16の周りで液密に密着させて防水するが、それでも、毛細管現象などによっては、キャップベース15とキャップカバー20の間に水が染み込んで浸入することが考えられる。しかし、図示例の保護キャップCでは、キャップベース15の鍵操作穴16の周りに溝状樋部21を設けるため、浸入した水は、樋部21で受けて鍵操作穴16の高さ方向上部から排水路を通して外部へと流し落として排水したり、樋部21に留まっても自然乾燥させたりすることにより防水効果を上げることができる。
一方、電気制御ボックスの扉Dを開けるために、ラッチ錠装置Rのシリンダ錠12を解錠するとき、キャップカバー20を開ける。キャップカバー20を開けるときには、図7(B)および図11に示すように、施解錠キー50を用い、施解錠キー50の摘み50bを手で摘んで細軸部50aを、切欠き穴27bを通して入口27aから差込穴27に差し込んで頭部35bに係止させ、ロックピン35を磁石Mに抗してガイド穴25内に押し込み、図7(C)に示すように、軸部35aを掛け止め穴60から外してキャップカバー20の掛け止めロック状態を解除する。すると、保護キャップCは、図12、図13および図14に示すように、キャップカバー20が付勢ばね45・45の付勢力により開方向へ自動的にスライドし、図8(A)に示すように、ガイド溝55・55の下側溝壁55aがストッパピン40・40に当たる開位置まで開いて鍵操作穴16を開放し、鍵穴13を外部に臨ませる。そして、そのまま同じ専用施解錠キー50を使い、鍵操作穴16から鍵穴13に差し込んでシリンダ錠12を解錠する。
従って、図示例の保護キャップCは、専用施解錠キー50の保持者が施解錠操作のためにキャップカバー20を開けるときに、そのまま専用施解錠キー50を使用し、細軸部50aを差込穴27に差し込む操作をするだけでキャップカバー20の掛け止めロック状態が解除され、キャップカバー20を簡単にスライドさせて開けることができる。一方、専用の施解錠キー50を保持しない者がロック状態で被せたキャップカバー20を不正に開けようとしても、到底、簡単には開けることはできない。仮に、差込穴27に気付いて、扉Dの周辺で、操作部材として細いピンや軸などを手に入れ、斯かる操作部材を代用して、それを差込穴27に差し込んで解除操作しない限り、キャップカバー20を開けることはできない。そのような代用品があるという限定的な条件下で、しかも面倒で時間のかかる不正行為をしない限り、キャップカバー20は開けられないので、それだけ錠前に対する悪戯を効果的に防止することができる。
図示例の保護キャップCは、図1および図7に示すように、キャップベース15が扉Dの外側板面d上に設置された状態で錠前のシリンダ錠12に固着し、差込穴27の入口27aが扉Dの外側板面dに近接しているため、外部操作部材の施解錠キー50の摘み50bを手で摘んで細軸部50aを差込穴27に差し込み、キャップカバー20の掛け止めロック状態を解除する操作をするとき、扉Dの外側板面dが手に当たって解除操作の障害になりそうな状況にある。しかし、保護キャップCは、差込穴27を、キャップベース15を扉Dの外側板面d上に設置した状態において、外部操作部材の施解錠キー50の図中矢示する差込方向入口27a側に向かうに従い次第に扉Dの外側板面dから離れる方向に傾斜してキャップベース15に穿設する構成であるため、施解錠キー50の細軸部50aを差込穴27に差し込んだとき、施解錠キー50の摘み部50b、つまり持ち手側が扉Dの外側板面dから遠ざかるので、従来のように扉Dが手にぶつかって解除操作の障害になるようなことがなく、それだけ解錠操作を手間なく簡単にすることができる。
ところで、上述した図示実施の形態において、キャップカバー20を開位置に向けて付勢する付勢ばね45・45が圧縮コイルばねであったが、本発明では、付勢ばね45・45は圧縮コイルばねに限らず、例えば以下に示す他の実施形態のとおり、ねじりコイルばねを用いてキャップカバー20を開位置に向けて付勢する構成にすることもできる。尚、他の実施形態において、上記実施形態における構成と同じ構成は、同一の符号を付して以下に説明する。
図示他例の保護キャップC´は、図15に示すように、キャップベース15の高さ方向上部に溝状樋部21を設けるが、その表側防水壁21aの内壁面の両端に、上記圧縮コイルばねのばね収納穴22・22に代え、一対のねじりコイルばね65・66のばね掛け軸75・76を突設する。
そこで、保護キャップC´は、図16(A)に示すように、第1のばね掛け軸75を、第1のねじりコイルばね65のコイル部65aに係合し、短いばね一端65bを樋部21の溝底面の片側に掛け止める一方、長いばね他端65cをキャップカバー20の上カバー部49の内端面に掛け止める。第2のねじりコイルばね66は、コイル部66aに第2のばね掛け軸76を係合し、短いばね一端66bを樋部21の溝底面の他側に掛け止める一方、長いばね他端66cを同じ上カバー部49の内端面に掛け止める。それから、上カバー部49で第1および第2のねじりコイルばね65・66を押え込みながら、キャップカバー20をキャップベース15に被せると、保護キャップC´は、キャップカバー20が鍵操作穴16を塞いだ閉位置と、鍵操作穴16を開放する開位置の間をスライド自在にキャップベース15と係合する一方、常時開位置に向けて働くばね付勢力により、ガイド溝55・55の下側溝壁55aをストッパピン40・40に押し当てて、キャップカバー20を開位置に位置決め保持した状態で組み立てられる。
従って、保護キャップC´は、図16(B)に示すように、キャップカバー20をねじりコイルばねの付勢ばね65・66に抗して閉位置までスライドさせて完全にキャップベース15に被せると、図17(A)に示すように、磁石Mでロックピン35を吸着して軸部35aを掛け止め穴60に係合し、これにより、キャップカバー20をキャップベース15に掛け止めて自動的にロックする。一方、キャップカバー20をキャップベース15から開けるときは、図17(B)に示すように、外部操作部材の施解錠キー50を用い、その細軸部50aを差込穴27内に差し込んで頭部35bに係止し、図17(C)に示すように、ロックピン35を磁石Mに抗してガイド穴25に押し込んで軸部35aを掛け止め穴60から外し、キャップベース15に対するキャップカバー20の掛け止めを解除する。すると、キャップカバー20がねじりコイルばねの付勢ばね65・66の付勢力により開方向へ自動的にスライドし、図16(A)に示すように、ガイド溝55・55の下側溝壁55aがストッパピン40・40に押し当たる開位置まで開いて鍵操作穴16を開放する。そして、前述したと同様に、シリンダ錠12の鍵穴13を外部に臨ませ、そのまま同じ専用施解錠キー50を使い、鍵操作穴16から鍵穴13に差し込んでシリンダ錠12を解錠することができる。
ところで、上述した図示実施の形態において、外部操作部材は、先端に細軸部50aを形成した錠前のシリンダ錠12に専用の施解錠キー50であったが、本発明では、それに限らず、例えばシリンダ錠のような錠前に専用の施解錠キーとは別に、一部に細軸部を形成したキャップカバー20のロック解除に専用の差込治具を備え、それら施解錠キーと差込治具をキーホルダでまとめて保持する一方、差込穴は、差込治具の細軸部を抜き差し可能な穴形状に形成する構成にすることもできる。
なお、以上の図示実施の形態において、錠前を固着する板状体は、扉Dであったが、それに限らず、錠前が固着される側が壁面や扉枠であれば、それら板状体も含まれる。
C・C´ 保護キャップ
D 扉(板状体)
M 磁石
d 外側板面
12 シリンダ錠(錠前)
13 鍵穴
15 キャップベース
16 鍵操作穴
18a・41a 摺接面
20 キャップカバー
21 樋部
27 差込穴
35 ロックピン
45 圧縮コイルばね(付勢ばね)
65・66 ねじりコイルばね(付勢ばね)
50 専用施解錠キー(外部操作部材)
50a 細軸部
この課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、板状体の外側板面dから外部に臨ませた錠前に、その鍵穴13に鍵操作穴16を連通させて固定するキャップベース15と、該キャップベース15に連結して前記鍵操作穴16を開閉するキャップカバー20とからなる錠前の保護キャップCにおいて、前記キャップカバー20は、前記キャップベース15に被せて前記鍵操作穴16を塞いだ閉位置と、該鍵操作穴16を開放して前記鍵穴13を外部に臨ませる開位置の間をスライド自在に前記キャップベース15に連結し、前記キャップベース15および前記キャップカバー20は、該キャップカバー20がスライドするとき、前記鍵操作穴16の周りで互いに接触する摺接面18a・41aを備え、それら摺接面18a・41aを、前記キャップカバー20が閉位置にスライドすると、互いに圧接する傾きのテーパ面で形成してなることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の錠前の保護キャップCにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記キャップベース15には、前記キャップカバー20との間から浸入する水を受けて前記鍵操作穴16の高さ方向上部から外部へと流し落とす溝状樋部21を凹設してなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の錠前の保護キャップCにおいて、たとえば以下に示す実施の形態のとおり、前記差込穴27は、前記キャップベース15を前記板状体の外側板面14上に設置した状態において、前記外部操作部材の差込方向入口側に向かうに従い次第に前記外側板面dから離れる方向に傾斜して外周部に穿設してなることを特徴とする。
従って、請求項1に記載の発明では、キャップカバーを、キャップベースに被せて鍵操作穴を塞いだ閉位置と、鍵操作穴を開放して錠前の鍵穴を外部に臨ませる開位置の間をスライド自在にキャップベースに連結したスライド式であるため、回転式に必要なヒンジ機構が不要となり、それだけ構造的にも意匠的にも従来にない斬新でシンプルな錠前の保護キャップを得ることができる。しかも、請求項1に記載の発明では、キャップカバーを、閉位置と開位置との間を扉など板状体の外側板面に沿って直線的にスライドさせて開閉する構造であるため、従来の回転跳ね上げ式のようにキャップカバーが回転しながら手前側の操作者に向かって飛び出して手等にぶつかるような危険はなく安全で、簡単な操作でキャップカバーを開閉することができる。更に、請求項1に記載の発明によれば、保護キャップは、キャップカバーを閉位置までスライドさせて完全にキャップベースに被せると、互いに接触するキャップカバーの摺接面とキャップベースの摺接面とが互いに圧接する傾きのテーパ面で形成されているため、鍵操作穴の周りで互いの摺接面が固く重なり合った食い込み状態で密着し、これにより、キャップベースとキャップカバーを、たとえ間にガタがあってもこれを吸収して連結し、その結果、鍵操作穴を液密に塞いで防水効果を上げることができる。
請求項3に記載の発明では、たとえキャップベースとキャップカバーの間に水が染み込んで浸入することがあっても、キャップベースには、鍵操作穴の周りに溝状樋部を設けるため、浸入した水は、樋部で受けて鍵操作穴の高さ方向上部から排水路を通して外部へと流し落として排水したり、樋部に留まっても自然乾燥させたりすることにより防水効果を上げることができる。
請求項4に記載の発明では、キャップベースが扉等の板状体の外側板面上に設置された状態で錠前に固着し、差込穴の入口が板状体の外側板面に近接するため、外部操作部材を手で持って先端を差込穴に差し込み、キャップカバーの掛け止めを解除する操作をするとき、板状体の外側板面が手に当たって解除操作の障害になりそうな状況にある。しかし、本発明の保護キャップは、差込穴を、キャップベースを板状体の外側板面上に設置した状態において、操作部材の差込方向入口側に向かうに従い次第に外側板面から離れる方向に傾斜してキャップベースに穿設する構成であるため、外部操作部材の先端を差込穴に差し込んだとき、外部操作部材の持ち手側が板状体の外側板面から遠ざかるので、従来のように板面が手にぶつかって解除操作の障害になるようなことがなく、それだけ解錠操作を手間なく簡単にすることができる。
この課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、板状体の外側板面dから外部に臨ませた錠前に、その鍵穴13に、表面側に開口した鍵操作穴16を連通させて固定するキャップベース15と、該キャップベース15に連結して前記鍵操作穴16を開閉するキャップカバー20とからなる錠前の保護キャップCにおいて、前記キャップベース15には、前記キャップカバー20との間から浸入する水を受ける樋部21を高さ方向上部に幅方向に沿って設け、前記キャップカバー20は、その樋部21の上に上カバー部49を載せた状態で、前記キャップベース15を嵌め込むことにより表面側に被せて前記鍵操作穴16を塞いだ閉位置と、該鍵操作穴16を開放して前記鍵穴13を外部に臨ませる開位置の間をスライド自在に前記キャップベース15に連結し、前記キャップベース15および前記キャップカバー20は、該キャップカバー20がスライドするとき、前記鍵操作穴16の周りで互いに接触する摺接面18a・41aを備え、それら摺接面18a・41aを、前記キャップカバー20が閉位置にスライドすると、互いに圧接する傾きのテーパ面で形成すると共に、前記樋部21は、前記キャップベース15の表面側と裏面側にそれぞれ防水壁21a・21bを立設して溝形に形成し、浸入した水を受けると、幅方向両端から裏面側を経て外部へ流れ落す排水路wを形成してなることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の錠前の保護キャップCにおいて、たとえば以下に示す実施の形態のとおり、前記差込穴27は、前記キャップベース15を前記板状体の外側板面14上に設置した状態において、前記外部操作部材の差込方向入口側に向かうに従い次第に前記外側板面dから離れる方向に傾斜して外周部に穿設してなることを特徴とする。
従って、請求項1に記載の発明では、キャップカバーを、キャップベースに被せて鍵操作穴を塞いだ閉位置と、鍵操作穴を開放して錠前の鍵穴を外部に臨ませる開位置の間をスライド自在にキャップベースに連結したスライド式であるため、回転式に必要なヒンジ機構が不要となり、それだけ構造的にも意匠的にも従来にない斬新でシンプルな錠前の保護キャップを得ることができる。しかも、請求項1に記載の発明では、キャップカバーを、閉位置と開位置との間を扉など板状体の外側板面に沿って直線的にスライドさせて開閉する構造であるため、従来の回転跳ね上げ式のようにキャップカバーが回転しながら手前側の操作者に向かって飛び出して手等にぶつかるような危険はなく安全で、簡単な操作でキャップカバーを開閉することができる。更に、請求項1に記載の発明によれば、保護キャップは、キャップカバーを閉位置までスライドさせて完全にキャップベースに被せると、互いに接触するキャップカバーの摺接面とキャップベースの摺接面とが互いに圧接する傾きのテーパ面で形成されているため、鍵操作穴の周りで互いの摺接面が固く重なり合った食い込み状態で密着し、これにより、キャップベースとキャップカバーを、たとえ間にガタがあってもこれを吸収して連結し、その結果、鍵操作穴を液密に塞いで防水効果を上げることができる。また、たとえキャップベースとキャップカバーの間に水が染み込んで浸入することがあっても、キャップベースには、鍵操作穴の周りに溝状樋部を設けるため、浸入した水は、樋部で受けて鍵操作穴の高さ方向上部から排水路を通して外部へと流し落として排水したり、樋部に留まっても自然乾燥させたりすることにより防水効果を上げることができる。
請求項3に記載の発明では、キャップベースが扉等の板状体の外側板面上に設置された状態で錠前に固着し、差込穴の入口が板状体の外側板面に近接するため、外部操作部材を手で持って先端を差込穴に差し込み、キャップカバーの掛け止めを解除する操作をするとき、板状体の外側板面が手に当たって解除操作の障害になりそうな状況にある。しかし、本発明の保護キャップは、差込穴を、キャップベースを板状体の外側板面上に設置した状態において、操作部材の差込方向入口側に向かうに従い次第に外側板面から離れる方向に傾斜してキャップベースに穿設する構成であるため、外部操作部材の先端を差込穴に差し込んだとき、外部操作部材の持ち手側が板状体の外側板面から遠ざかるので、従来のように板面が手にぶつかって解除操作の障害になるようなことがなく、それだけ解錠操作を手間なく簡単にすることができる。