JP2013227165A - ステンレス鋼精錬取鍋用煉瓦及びステンレス鋼精錬取鍋 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CaOを10質量%以上含有するMgO−CaOクリンカー又は前記クリンカーとマグネシアクリンカーとの混合物90〜99質量%、及び炭素材料1〜10質量%からなる配合物100質量部に対して、カルシウム−シリコン合金及びアルミニウム−マグネシウム合金をそれぞれ0.5質量部以上且つ合計3質量部以下、並びにZrB2及び/又は金属アルミニウムを0.5〜2質量部を添加したことを特徴とするステンレス鋼精錬取鍋用煉瓦とする。また、上記のステンレス鋼精錬取鍋用煉瓦が内張りされていることを特徴とするステンレス鋼精錬取鍋とする。
【選択図】なし
Description
ところが、MgO−CaO−C系煉瓦では、金属アルミニウムやアルミニウム合金を添加すると、酸化されたアルミニウムと煉瓦中のCaO成分との反応によってMgO−CaO−Al2O3系の低粘性の低融点物質が生成し、煉瓦の損耗が大きくなると共に耐スポーリング性も低下する。
本発明は、前記のような問題を解決するためになされたものであり、耐酸化性、耐食性及び耐スポーリング性に優れたステンレス鋼精錬取鍋用MgO−CaO−C系煉瓦及びステンレス鋼精錬取鍋を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記ステンレス鋼精錬取鍋用煉瓦が内張りされていることを特徴とするステンレス鋼精錬取鍋である。
MgO−CaOクリンカーは、ペリクレースの結晶粒界にCaOが分布しているものが耐食性に優れているため好ましい。これは、ペリクレースの周囲にCaOが存在するとスラグと反応し易くなり、低融点物質の生成によって損耗が大きくなることがあるためである。ここで、ペリクレースの結晶粒子の大きさは、煉瓦の耐食性の観点から、大きいほど有利である。ペリクレースの結晶粒子の大きさは、特に限定されないが、一般に100μm以上である。
MgO−CaOクリンカーは、製造方法によって焼結体と電融体とに分けられるが、ステンレス鋼精錬取鍋の使用条件等に応じてMgO−CaOクリンカーの種類を使い分けることが好ましい。例えば、電融体は、ペリクレースの結晶の発達によってペリクレースそのものは耐食性が良いものの、MgO−CaOクリンカーとしてはペリクレースの周囲がCaOとなるためスラグによる攻撃を受け易くなる。一般的に、MgO−CaO煉瓦を施工したステンレス鋼精錬取鍋は使用止め期間まで冷却することなく連続使用されるが、使用途中において羽口交換等のために一旦冷却を行なう場合がある。この冷却の際に、煉瓦の表面に付着して浸透したスラグによって、煉瓦の剥離が生じる場合がある。そのため、このような場合には、焼結体を用いることが適切である。
マグネシアクリンカーは、煉瓦の耐食性の観点から、SiO2がより少ないものが好ましい。マグネシアクリンカーにおけるSiO2の含有量は、特に限定されないが、一般に3質量%以下である。
微粉部に使用するマグネシアクリンカーの粒径は、特に限定されないが、一般に0.1mm以下である。
また、マグネシアクリンカーは、製造方法によって焼結体と電融体とに分けられるが、煉瓦の耐食性の観点から、結晶粒子の大きい電融体を使用することが好ましい。
また、黒鉛膨張を粉砕する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、バインダーを使用せずに黒鉛膨張を加圧成形して粉砕すればよい。これにより、比表面積が大きい緻密な黒鉛膨張の粉砕物を得ることができる。
特に、高純度化した膨張黒鉛の粉砕物を用いる場合、クリンカー及び炭素材料の配合物におけるその使用量は、カーボンに換算して、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。高純度化した膨張黒鉛の粉砕物の使用量が5質量%を超えると、嵩が高くなってプレス成形が難しくなり、充填性が低下する。その結果、気孔率が高くなるため、煉瓦の耐酸化性が十分に得られないことがある。そのため、炭素材料の使用量を5質量%よりも多くする場合は、他の黒鉛(例えば、天然黒鉛)と併用することが好ましい。
カルシウム−シリコン合金の使用量は、クリンカー及び炭素材料の配合物100質量部に対して0.5質量部以上、好ましくは0.5〜3質量部である。カルシウム−シリコン合金の使用量が0.5質量部未満であると、煉瓦の耐酸化性が低下してしまう。
アルミニウム−マグネシウム合金の使用量は、クリンカー及び炭素材料の配合物100質量部に対して0.5質量部以上、好ましくは0.5〜3質量部である。アルミニウム−マグネシウム合金の使用量が0.5質量部未満であると、煉瓦の耐酸化性が低下してしまう。
ZrB2及び/又は金属アルミニウムの使用量は、クリンカー及び炭素材料の配合物100質量部に対して0.5〜2質量部である。これらの使用量が0.5質量部未満であると、煉瓦の耐酸化性が低下してしまう。一方、これらの使用量が2質量部を超えると、煉瓦の耐食性が低下してしまう。
ZrB2(s)+5CO(g)→ZrO2(s)+B2O3(l)+5C(s)(1)
MgO(s)+C(s)→Mg(g)+CO(g) (2)
2Al(l,g)+3CO(g)→Al2O3(s)+3C(s) (3)
その結果、(2)式のMg(g)の分圧は上昇することになる。Mg(g)は、緻密保護層を通して拡散してきた酸素と反応してMgOとして凝縮し、緻密保護層の成長が持続されることになる。すなわち、マグネシウムは、煉瓦の表層においてスラグ中の酸化鉄と反応してMgFe2O4を形成する一方、煉瓦の内部では以下の反応(4)が起きる。
FeO+Mg(g)→Fe(s,l)+MgO(s) (4)
この反応により、MgO(s)が析出し、MgOの緻密保護層が持続的に成長することになる。このようにしてスラグとの反応による煉瓦の侵食が低減され、煉瓦の耐食性が向上する。
MgO−CaOクリンカーとしては、粒径が3〜5mmであり41質量%のMgO及び57質量%のCaOを含む焼結クリンカーと、粒径が0.1〜3mmであり41質量%のMgO及び57質量%のCaOを含む焼結クリンカーと、粒径が0.1〜3mmであり77質量%のMgO及び21質量%のCaOを含む焼結クリンカーとを混合したものを用いた。各焼結クリンカーにおいて、SiO2の含有量は1質量%以下であり、且つペリクレースの結晶粒子の大きさは100μmである。
マグネシアクリンカーとしては、97質量%以上のMgOを含み、SiO2の含有量が3質量%以下、粒径が0.1mm以下である電融マグネシアクリンカーを用いた。
カルシウム−シリコン合金としては、30質量%のCa及び55〜65質量%のSiを含み、粒径が0.15mm以下のものを用いた。
アルミニウム−マグネシウム合金としては、50質量%のAl及び50質量%のMgを含み、粒径が0.25mm以下のものを用いた。
ZrB2及び金属アルミニウムとしては、いずれも粒径が0.04mm以下のものを用いた。
上記の原料を用い、表1に示す配合割合にて原料を混練し、成形した後、250℃で加熱処理することによって不焼成煉瓦を作製した。得られた不焼成煉瓦について、下記の試験を行った。
(比較例7)
比較のために、上記の原料を用い、表1に示す配合割合にて原料を混練し、成形、乾燥後、約1600℃で焼成することによって煉瓦を作製した。この焼成煉瓦についても、下記の試験を行った。
耐食性試験は、誘導炉侵食試験により、塩基度(CaO/SiO2)1.2の精錬鍋スラグを用いて1700℃で4時間行った。この試験の結果は、比較例7を100とした場合の相対評価(耐食性指数)として表した。
<耐酸化性試験>
耐酸化性試験は、電気炉を用い、50mm角の試料を大気雰囲気中1500℃で3時間加熱し、断面の酸化層の厚みを計測した。この試験の結果は、比較例2を100とした場合の相対評価(耐酸化性指数)として表した。
<耐スポーリング性試験>
耐スポーリング性試験は、電気炉を用い、40×40×160mmの試料を還元雰囲気中1400℃で3時間加熱した後、曲げ強度(S)とヤング率(E)を共振法にて測定した。次に、ヤング率(E)を曲げ強度(S)で除した値(E/S2)を求め、比較例7を100とした場合の相対評価(耐スポーリング性指数)として表した。
上記の各試験の結果を表1に示す。
また、比較例1と比較例2とを比較するとわかるように、炭素材料として高純度化した膨張黒鉛の粉砕物と鱗片状黒鉛とを併用したものは、鱗片状黒鉛のみを用いた場合に比べて耐酸化性及び耐スポーリング性が向上する傾向が見られた。しかし、比較例3の結果からわかるように、高純度化した膨張黒鉛の粉砕物を併用しても、炭素材料の量が多くなると、耐食性や耐酸化性が低下する傾向が見られた。これは、煉瓦の気孔率が高くなったことに起因していると考えられる。
また、比較例2と比較例4とを比較するとわかるように、金属アルミニウムの添加量を多くすると、耐酸化性は向上する一方で耐食性が低下する傾向が見られた。これは、金属アルミニウムの添加量が多くなると、煉瓦中のCaOとの反応によってMgO−CaO−Al2O3系の低粘性の低融点物質が生成し、耐食性が低下するためであると考えられる。
さらに、比較例6の結果からわかるように、Ca−Si合金及び金属アルミニウムを添加しただけでは、耐食性、耐酸化性、耐スポーリング性の向上効果が十分でなかった。
一方、実施例1〜3の煉瓦は、クリンカー、炭素材料、Ca−Si合金、Al−Mg合金、並びにZrB2及び/又は金属アルミニウムを所定の割合で配合しているため、比較例1〜6の煉瓦に比べて耐食性、耐酸化性及び耐スポーリング性の全てが優れていた。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、耐酸化性、耐食性及び耐スポーリング性に優れたステンレス鋼精錬取鍋用煉瓦及びステンレス鋼精錬取鍋を提供することができる。
Claims (3)
- CaOを10質量%以上含有するMgO−CaOクリンカー又は前記クリンカーとマグネシアクリンカーとの混合物90〜99質量%、及び炭素材料1〜10質量%からなる配合物100質量部に対して、カルシウム−シリコン合金及びアルミニウム−マグネシウム合金をそれぞれ0.5質量部以上且つ合計3質量部以下、並びにZrB2及び/又は金属アルミニウムを0.5〜2質量部を添加したことを特徴とするステンレス鋼精錬取鍋用煉瓦。
- 前記炭素材料が、高純度化した膨張黒鉛の粉砕物と天然黒鉛との混合物であることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼精錬取鍋用煉瓦。
- 請求項1又は2に記載のステンレス鋼精錬取鍋用煉瓦が内張りされていることを特徴とするステンレス鋼精錬取鍋。
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