JP2013226832A - ポリエステル系樹脂積層体、ならびに、該積層体を用いた袋および容器 - Google Patents

ポリエステル系樹脂積層体、ならびに、該積層体を用いた袋および容器 Download PDF

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Abstract

【課題】生分解性を有し、加工性に優れるとともに、ポリエステル系樹脂層と基材層との接着性が向上された積層体、該積層体を成形してなる袋や容器を提供する。
【解決手段】植物由来成分を含む基材層と、脂肪族ポリエステルを含む最外層と、基材層および最外層の間に存在する中間層と、を有する積層体であって、中間層には、最外層に含まれる脂肪族ポリエステルとは異なるポリエステルが含まれており、中間層に含まれるポリエステルにおいて、ジカルボン酸に由来する構造単位全体を100モル%とした場合、テレフタル酸に由来する構造単位の割合が20モル%以上30モル%以下である、積層体とし、当該積層体を用いて袋や容器を成形する。
【選択図】なし

Description

本発明は、袋や容器として好適に用いられるポリエステル系樹脂積層体に関する。
食品、飲料品や医薬品などの包装資材や積層紙で作られたカップ、トレー、カートンに代表される積層体の加工品は広く使用されている。このような加工品は、耐水性、耐薬品性、防水性、表面平滑性、光沢性、保香性、加工性等を向上させるため、紙単独で使用する場合よりも、紙の片面あるいは両面にプラスチックを積層して使用する場合が多い。紙に積層するプラスチックとしては、一般にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等が用いられており、プラスチック以外にアルミニウム箔を積層する場合もある。
ポリオレフィン等の汎用樹脂は燃焼の際の発熱量が高いことから、使用後に廃棄されたプラスチック製品を焼却処理すると、焼却炉を傷めるおそれがある。そのため、一般的にはプラスチック製品は埋め立てられているが、プラスチックは分解せずにそのままの形で残るため、埋立処理場の寿命短縮が問題視されている。また、ゴミとして自然環境中に散乱した場合においても分解性が極めて乏しいため、環境汚染や景観を損ねる原因となっている。
また、近年の環境問題に対する意識の高まりから、積層紙の中でも牛乳パックなどは回収するシステムが構築され、紙の再利用が進んでいるが、その他の積層紙についてはほとんど進まず焼却処理されているのが実情である。この回収は積層紙をアルカリ水溶液中に浸漬し、ポリオレフィンをはがすという非常に面倒で人手とコストを要する工程となるためである。
これらの事情を背景に、生分解性樹脂を積層紙に応用する試みがなされており、例えば特許文献1には、鎖長延長剤(カップリング剤)を用い高分子量化した生分解性の脂肪族ポリエステルの積層体が開示されている。更に、特許文献2では、カップリング剤を使用せずに加工中の樹脂圧を制御することにより積層体を得る方法が開示されている。特許文献3ではカップリング剤を使用せずに、添加剤配合と熱履歴前後の溶融粘度を制御することにより、ヒートシール性が高く、加工性に優れた積層体とその製法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている方法で樹脂を製造し、積層紙に適用する場合においては、基材と樹脂との間で実用的な接着強度を得るためには比較的高温で成形する必要があり、特に鎖長延長剤の作用にてウレタン結合が導入されている樹脂を用いると、ウレタン結合の熱分解により、発煙や発泡という現象を引き起こし、作業環境の悪化や、積層体への臭いの吸着等の問題が起こるという課題があった。同様に、例えば特許文献2に開示されている方法で積層体を得た場合においても、接着強度等の観点でいまだ満足の行く成形条件が見出されていなかった。
また、従来のポリオレフィン系の積層体は香気成分の吸着が問題となっており、逆に、香気成分に対して吸着性が少なく保香性に優れたポリエステル系の積層体では、ヒートシール性が不足するという問題があった。そのためこれらを両立する性能を持った積層紙の開発が待ち望まれていた。ここで、例えば特許文献3に開示されている方法により得られた積層体では、樹脂層同士のヒートシール強さが高く、生分解性に優れた積層体を得ることができたが、各種基材において、樹脂層と基材層との十分な接着強度(繊維剥離状態)を得るにはいまだ満足の行く成形条件が見出されていなかった。
これらを解決するものとして、出願人は特許文献4において、植物由来原料からなる基材層と、所定の融点を有する脂肪族ポリエステルを含むポリエステル層との間に、ポリエステル層の含有する脂肪族ポリエステルと異なる熱可塑性樹脂、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ウレタン系樹脂、およびポリエステル層に用いられたものと異なるポリエステル樹脂を含む中間層を設けた積層体を開示している。これによれば、生分解性の特性を維持しつつ、容器や包装材としての実用性や加工性に優れた積層体とすることができる。
特開平6−171050号公報 特開2006−272712号公報 特開2009−51210号公報 特開2012−30547号公報
しかしながら、接着層樹脂がポリエチレンイミン系樹脂では、水と接触して積層体の端面から水が浸入したとき、ポリエチレンイミン系樹脂が水に溶解もしくは膨潤して基材からポリエステル層が剥がれるという、耐水性の問題があった。また、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂では、それらが含有する溶剤や架橋剤等に由来する、臭気や安全性の懸念があった。
また、ポリエステル層に用いられたものと異なるポリエステル樹脂の場合は、耐水性、生分解性、安全性が良好であるが、基材層との接着性がいまだ十分ではなかった。
そこで本発明は、ポリエステル系樹脂層を有する積層体であって、生分解性を有し、加工性に優れるとともに、ポリエステル系樹脂層と基材層との接着性が向上された積層体、該積層体を成形してなる袋や容器を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、基材層と脂肪族ポリエステル層との間に、中間層を形成し、当該中間層において特定のポリエステルを含有させることで、基材層と脂肪族ポリエステル層との接着性が向上し、また、優れた加工性が得られ、かつ、良好な生分解性を発現することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、第1の本発明は、植物由来成分を含む基材層と、脂肪族ポリエステルを含む最外層と、前記基材層および前記最外層の間に存在する最外層とは異なる中間層とを有する積層体であって、該中間層がポリエステルを含有するものであり、該中間層内に含有されるポリエステルのジカルボン酸に由来する構造単位全体に対するテレフタル酸に由来する構造単位の割合が、20モル%以上30モル%以下であることを特徴とする積層体にある。
第1の本発明において、植物由来成分が植物由来成分を含む繊維または植物由来成分を含むフィルムであることが好ましい。
第1の本発明において、最外層に含まれる脂肪族ポリエステルが、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重合してなるものであることが好ましい。
第1の本発明において、中間層に含まれるポリエステルが、ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重合してなるものであることが好ましい。
第1の本発明に係る積層体は、厚さが300μm以下であることが好ましい。
第1の本発明に係る最外層に含まれる脂肪族ポリエステルにおいては、ジカルボン酸に由来する構造単位全体を100モル%とした場合、テレフタル酸に由来する構造単位が、好ましくは20モル%未満であるが、より好ましくは18モル%以下、さらに好ましくはテレフタル酸に由来する構造単位を実質的に含まない。
第2の本発明は、第1の本発明に係る積層体が少なくとも一部に使用された袋である。
第3の本発明は、第1の本発明に係る積層体が少なくとも一部に使用された液体用容器である。
本発明に係る積層体においては、中間層に、テレフタル酸に由来する構造単位を20モル%以上30モル%以下含有するポリエステルが含まれていることで、従来よりも基材層と最外層との間の接着性が向上している。また、本発明に係る積層体は、生分解性を有し、加工性にも優れたものである。すなわち、本発明によれば、生分解性を有し、加工性に優れるとともに、ポリエステル系樹脂層と基材層との接着性が向上された積層体、該積層体を成形してなる袋や容器を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において、「〜」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いることとする。また、本明細書において“mol”と“モル”とは同義であって、単に“ppm”と記載した場合は、“質量ppm”のことを示す。
本発明に係る積層体は、植物由来成分を含む基材層と、脂肪族ポリエステルを含む最外層と、基材層および最外層の間に存在する中間層と、を有する積層体であって、中間層には、最外層に含まれる脂肪族ポリエステルとは異なるポリエステルが含まれており、中間層に含まれるポリエステルにおいて、ジカルボン酸に由来する構造単位全体を100モル%とした場合、テレフタル酸に由来する構造単位が20モル%以上30モル%以下となることに特徴を有する。
(1)最外層
最外層は、脂肪族ポリエステルを含む層である。例えば、脂肪族ポリエステルを含有するとともに、脂肪族ポリエステル以外のその他樹脂を任意に含む樹脂組成物からなる層とすることができる。ここで、脂肪族ポリエステル以外のその他樹脂の含有比率についてもまた任意であるが、脂肪族ポリエステルを主成分とすることが好ましい。ここで主成分とは、脂肪族ポリエステルの含有比率が最大比率となるものである。また、より好ましくは脂肪族ポリエステルの含有比率が過半量であり、特にはポリエステル層を形成する樹脂組成物が、脂肪族ポリエステルのみからなるものが好ましい。
<脂肪族ポリエステル>
本発明における脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族単量体に由来する構造単位のモル比率が全ての単量体に由来する構造単位に対して最大比率となるものであり、例えば、脂肪族単量体に由来する構造単位以外に、部分的に芳香族単量体に由来する構造単位を有する脂肪族芳香族ポリエステルも使用することも可能である。より具体的には、脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステル、およびそれらの混合物が挙げられる。中でも、接着性、成形加工性が良好であるため、脂肪族ポリエステル比率が高いことが好ましく、脂肪族単量体に由来する構造単位が50モル%以上であることが好ましく、特には脂肪族ポリエステルのみからなることが好ましい。この場合、脂肪族ポリエステルとして複数種の脂肪族ポリエステルの混合物を使用することもできる。
本発明において好ましい脂肪族ポリエステルとしては、より具体的には、主たる構成成分が脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸であるものや、ポリ乳酸、ポリカプロラクタムのように脂肪族オキシカルボン酸が主たる構成成分であるものが例示される。好ましくは、主たる構成成分が脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重合してなるものである。
すなわち、本発明において最外層に含まれる脂肪族ポリエステルは、ジオール単位(ジオールまたはその誘導体から形成される構造単位)と、ジカルボン酸単位(ジカルボン酸またはその誘導体から形成される構造単位)とを構造単位とすることが好ましい。ここで、ジオール単位およびジカルボン酸単位については、それぞれ本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。また、ジオール単位およびジカルボン酸単位は、いずれも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
中でも、ジオール単位としては、下記式(I)で表されるジオールまたはその誘導体(以下適宜、ジオールおよびその誘導体を「ジオール成分」という。)から形成されるものが好ましく、ジカルボン酸単位としては下記式(II)で表されるジカルボン酸またはその誘導体(以下適宜、ジカルボン酸およびその誘導体を「ジカルボン酸成分」という。)から形成されるものが好ましい。
Figure 2013226832
上記式(I)において、Rは、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表す。また、上記式(II)において、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表し、nは0または1を表す。
式(I)において、Rは、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基であり、鎖状脂肪族炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。また、分岐鎖を有していても、有していなくてもよい。
の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、Rが鎖状脂肪族炭化水素基である場合、Rの炭素数は通常2以上、また、通常10以下、好ましくは6以下である。一方、Rが脂環式炭化水素基である場合、Rの炭素数は通常3以上、また、通常10以下、好ましくは8以下である。
式(I)で表されるジオールの誘導体の例としては、酢酸とのエステル化合物などが挙げられる。式(I)で表されるジオールおよびその誘導体の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好適に挙げられる。中でも、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。
式(II)において、Rは2価の脂肪族炭化水素基であり、鎖状脂肪族炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。また、分岐鎖を有していても、有していなくてもよい。
の炭素数も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常2以上、また、通常48以下である。但し、Rが鎖状脂肪族炭化水素基である場合、Rとしては、−(CH−で表される2価の鎖状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。なお、mは通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下の整数である。
また、Rが脂環式炭化水素基である場合、Rの炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上、また、通常10以下、好ましくは8以下である。
式(II)で表されるジカルボン酸の誘導体の例としては、上記式(II)のジカルボン酸の低級アルコールエステルや酸無水物などが挙げられる。中でも、炭素数1〜4の低級アルコールとのエステルもしくは酸無水物が好ましい。式(II)で表されるジカルボン酸およびその誘導体の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、へプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、マレイン酸、フマル酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素数が2以上48以下の鎖状あるいは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの誘導体、例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル等の低級アルコールとのエステル、無水コハク酸、無水アジピン酸等の酸無水物も挙げられる。中でも、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の炭素数12以下のジカルボン酸またはこれらの酸無水物、およびこれらの低級アルコールとのエステルが好ましく、特にはコハク酸等の炭素数4以下のジカルボン酸およびその酸無水物、またはこれらの混合物が好ましい。
上記式(II)で表されるジカルボン酸およびその誘導体は、原料が石油由来でも植物由来でもよい。COの排出量の削減に寄与できることから特には植物由来のものであることが好ましい。例えば、ジカルボン酸およびその誘導体の原料としては、植物原料から変換されたコハク酸またはこの酸無水物、および低級アルコールとのエステルが好ましい。
本発明の積層体において最外層に含まれる脂肪族ポリエステルは、ジカルボン酸に由来する構造単位全体を100モル%とした場合、テレフタル酸に由来する構造単位が、好ましくは20モル%未満であるが、より好ましくは18モル%以下、さらに好ましくはテレフタル酸に由来する構造単位を実質的に含まない、脂肪族ポリエステルあるいは脂肪族芳香族ポリエステルとする。これにより、得られる積層体の成形加工性や打ち抜き性を一層向上させることができる。
本発明に用いられる好適な脂肪族ポリエステルには、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記のジオール単位およびジカルボン酸単位以外の他の構造単位を含有させるようにしてもよい。
ジオール単位およびジカルボン酸単位以外の他の構造単位としては、例えば、脂肪族オキシカルボン酸単位が挙げられる。この脂肪族オキシカルボン酸単位としては、分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族オキシカルボン酸およびその誘導体(以下適宜、「脂肪族オキシカルボン酸成分」という。)により形成される構造単位であれば特に限定はなく、環状のものも、鎖状のものも使用できる。
脂肪族オキシカルボン酸成分としては、例えば、α,ω−ヒドロキシカルボン酸、α−ヒドロキシカルボン酸等が挙げられるが、これらのオキシカルボン酸のエステルやラクトン類、ラクチド、あるいはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であってもよい。
ラクトン類の具体例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトン等のラクトン;4−メチルカプロラクトン、2,2,4−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等のメチル化ラクトンなどが挙げられる。
オキシカルボン酸としては、例えば、下記式(III)で表される脂肪族オキシカルボン酸が挙げられる。
Figure 2013226832
上記式(III)において、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。
式(III)において、Rは2価の脂肪族炭化水素基であり、鎖状脂肪族炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。また、分岐鎖を有していても、有していなくてもよい。
上記式(III)で表される脂肪族オキシカルボン酸の中では、下記式(IV)で表される脂肪族オキシカルボン酸が好ましい。
Figure 2013226832
上記式(IV)において、Rは、水素原子または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐炭化水素基を表す。
中でも特に、下記式(V)で表される脂肪族オキシカルボン酸が、重合反応性向上効果が認められる点で好ましい。
Figure 2013226832
上記式(V)において、pは、0または1〜10の整数を表し、好ましくは0または1〜5の整数を表し、より好ましくは1〜3の整数を表す。
オキシカルボン酸、特に、脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、4−ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸等も挙げられる。また、更には、これらの低級アルキルエステル、分子内エステルなどの誘導体も挙げられる。
これらの化合物に光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。
これらの中で好ましいのは、乳酸またはグリコール酸であり、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸である。なお、乳酸の形態としては、30〜95質量%の水溶液が、容易に入手することができるので好ましく使用される。
これら脂肪族オキシカルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
脂肪族ポリエステルに脂肪族オキシカルボン酸単位を含有させる場合、その使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、脂肪族ジカルボン酸単位100質量部に対して、通常0.1質量部以上、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、また、通常100質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲の下限を下回ると柔軟性の付与や重合反応性の向上に対する添加効果が現れないおそれがあり、上限を上回ると本発明の積層体の製造時における臭気が問題になったり、結晶化温度の低温化により離ロール性が悪くなったりするおそれがある。
また、脂肪族ポリエステルには、3官能基以上を有する多官能成分単位として、3官能以上の脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位および脂肪族多価オキシカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の単位を存在させることも好ましい。これにより、脂肪族ポリエステルの溶融張力が向上し、積層体への加工性を向上させることができる。なお、多官能成分単位は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
多官能成分単位を形成する3官能の脂肪族オキシカルボン酸単位は、(i)カルボキシル基2個とヒドロキシル基1個とを同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基1個とヒドロキシル基2個とを同一分子中に有するタイプとに分かれるが、いずれのタイプも使用可能である。3官能の脂肪族オキシカルボン酸単位を与える化合物の具体例としては、(i)のタイプのリンゴ酸や(ii)のタイプのグリセリン酸が挙げられる。
同様に、多官能成分単位を形成する4官能の脂肪族オキシカルボン酸単位は、(i)カルボキシル基3個とヒドロキシル基1個とを同一分子中に共有するタイプと、(ii)カルボキシル基2個とヒドロキシル基2個とを同一分子中に共有するタイプと、(iii)ヒドロキシル基3個とカルボキシル基1個とを同一分子中に共有するタイプとに分かれるが、いずれのタイプも使用可能である。4官能の脂肪族オキシカルボン酸単位を与える化合物の具体例としては、(ii)のタイプのクエン酸や(iii)のタイプの酒石酸が挙げられる。
多官能成分単位を使用する場合、その使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、脂肪族ジカルボン酸単位100モルに対し、通常0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、また、通常5モル以下、好ましくは2.5モル以下、より好ましくは1モル以下用いるようにする。この範囲の下限を下回ると、本発明の積層体を押出ラミネートによって製造する場合、製造時における溶融膜のネックイン(押出機のT−ダイから出た溶融膜の幅が基材と接するまでの空間で狭くなる現象を言い、T−ダイ出口の溶融膜の幅と基材上にラミネートされたラミネート膜の幅との差で示す。)が大きくなったり、端部の膜厚と中心部の厚みの差が大きくなり、安定した製品が得られなかったりするという問題がある。また、上限を上回ると反応中にゲル化する可能性が増大したり、押出機のモーターへの負荷が著しく増加し、成形性が劣ったりする場合がある。
また、最外層に用いる脂肪族ポリエステル中には分岐構造を適度に導入し加工性を改善する目的として不飽和結合を含有させることもでき、不飽和結合には、二重結合の他、三重結合も包含される。このような不飽和結合を有する構造単位を与える化合物としては不飽和ジカルボン酸類や不飽和ジオール類等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の代表例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ−cis−フタル酸(ナディック酸)、ダイマー酸などが挙げられる。
一方、ポリマーの製造工程で生成する不飽和結合基も上記目的に有用である。不飽和結合基の生成メカニズムは明らかではないが、ポリマーの製造工程において、主鎖の熱分解による末端ビニル基の生成や多官能成分として加えているリンゴ酸等の脱水によるフマル酸あるいはマレイン酸等への変換反応による不飽和結合の生成が考えられる。
本発明の積層体に使用する脂肪族ポリエステル中に含まれる不飽和結合量は通常100μmol/g以下、好ましくは80μmol/g以下、より好ましくは60μmol/g以下、更に好ましくは30μmol/g以下、最も好ましくは20μmol/g以下である。また通常3μmol/g以上、より好ましくは5μmol/g以上である。不飽和結合の量が下限値以下であると、分岐を発生させる際に、効率よく分岐させることが困難で、溶融張力を高めることができなくなる。逆に、上限値を超えると著しいゲル化を引き起こし、積層体を製造することができなくなることがある。なお、脂肪族ポリエステル中に含まれる不飽和結合量は、H−NMRや13C−NMR等のNMR測定により算出される。
また、本発明の積層体に使用する脂肪族ポリエステル中のウレタン結合量は、0.9質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは、0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特には、脂肪族ポリエステルが実質的にウレタン結合を含まないことが好ましい。ウレタン結合量が多すぎると、ウレタン結合の熱分解により、発煙や発泡という現象を引き起こし、成形しにくくなる傾向がある。
<脂肪族ポリエステルの製造方法>
このような脂肪族ポリエステルの製造方法としては、ポリエステルの製造に関する公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。また、通常は、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行うことによって更に重合度を高めることができる。
脂肪族ポリエステルの製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分とジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合には、製造される脂肪族ポリエステルが目的とする組成を有するようにジオール成分およびジカルボン酸成分の使用量を設定する。通常は、ジオール成分とジカルボン酸成分とは実質的に等モル量である。但し、この際、ジオール成分の使用量は、エステル化反応中の留出があることから、通常は1〜20モル%過剰に用いられる。
本発明に好適な脂肪族ポリエステルに脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位等の必須成分以外の成分(任意成分)を含有させる場合、その脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位もそれぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モノマーやオリゴマー)を反応に供するようにする。このとき、上記の任意成分を反応系に導入する時期および方法に制限はなく、本発明に好適な脂肪族ポリエステルを製造できる限り任意である。
例えば脂肪族オキシカルボン酸を反応系に導入する時期および方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合反応以前であれば特に限定されず、例えば、(1)予め触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、(2)原料仕込み時触媒を系に導入すると同時に混合する方法、などが挙げられる。
多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むようにしてもよく、または、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むようにしてもよいが、他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込む方が工程の簡略化の点で好ましい。
脂肪族ポリエステルは、通常、触媒の存在下で製造される。触媒としては、公知のポリエステルの製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著しく損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物などが挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタンなどの有機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが好ましい。
また、本発明の目的を損なわない限り、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物等の他の触媒の併用を妨げない。なお、触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマー量に対して、通常0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、また、通常3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると触媒の効果が現れないおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなったり得られるポリマーが著しい着色を生じたり耐加水分解性が低下したりするおそれがある。
触媒の導入時期は、重縮合以前であれば特に限定されないが、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。原料仕込み時に乳酸やグリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸単位を形成するモノマーやオリゴマーと同時に導入するか、または脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特には、重合速度が大きくなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましい。
脂肪族ポリエステルを製造する際の温度、重合時間、圧力などの反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。但し、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応および/またはエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。更に、反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。また、反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
また、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル反応および/またはエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力が、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.03×10Pa以上、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下で行うことが望ましい。また、この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。更に、反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
脂肪族ポリエステルの製造時には、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。その量は、通常、脂肪族ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合やウレタン結合が通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。しかしながら、脂肪族ポリエステル樹脂を本発明の積層体に使用する場合には、ジイソシアネートやカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、その使用量は、脂肪族ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合が1モル%未満、好ましくは、0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合が、0.55モル%以下、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.12モル%以下、更に好ましくは0.05モル%以下である。脂肪族ポリエステル100質量部あたりに換算すると、0.9質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。カーボネート結合量やウレタン結合量は、H−NMRや13C−NMR等のNMR測定により算出される。ウレタン結合量の上限値を上回ると、積層体の製造時にウレタン結合の分解のため、ダイス出口からの溶融膜からの発煙や臭気が問題となる場合があり、また、溶融膜中に発泡による膜切れが起こって安定的に成形できないことがある。
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、または異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステルの製造は従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒にて反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオールとジカルボン酸(またはその無水物)とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以上のプレポリマーは、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステルを製造することができる。重量平均分子量(Mw)の測定方法は溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でのGPC測定法である。重量平均分子量は単分散ポリスチレンによる換算値である。
したがって、例えば鎖延長剤として上記のジイソシアネートを用いて、ポリエステル樹脂を更に高分子量化する場合には、ジオールとジカルボン酸からなる重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,000以上のプレポリマーが好ましい。重量平均分子量が20,000以下であると、高分子量化するためのジイソシアネートの使用量が多くなり耐熱性が低下する場合がある。ジイソシアネートに由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するウレタン結合を有するポリエステルが製造される。
鎖延長時の圧力は、通常、0.01MPa以上、1MPa以下、好ましくは、0.05MPa以上、0.5MPa以下、より好ましくは、0.07MPa以上、0.3MPa以下であるが、常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であり、上限が通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向があり、また高すぎると、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上であり、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下、最も好ましくは15分以下である。時間が短すぎる場合には、添加効果が発現しなくなる傾向があり、また、長すぎる場合には、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
また、その他の鎖延長剤として、オキサゾリン化合物、珪酸エステルなどを使用してもよい。
オキサゾリン化合物としては、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)等のビスオキサゾリンが例示される。また、オキサゾリン基含有ポリスチレン、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、オキサゾリン基含有スチレン−アクリル系ポリマー等のオキサゾリン基含有ポリマーが例示される。工業的に入手可能なオキサゾリン基含有ポリマーとしては、例えば、エポクロス(登録商標)Kシリーズ、WSシリーズ、RPS(日本触媒社製)が例示される。
珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等が例示される。
<最外層に含まれる脂肪族ポリエステルの性質>
最外層に含まれる脂肪族ポリエステルは以下の性質を有するものである。
脂肪族ポリエステルの融点(測定条件はDSCで25℃から200℃に10℃/minで昇温したときに測定)は、80℃以上180℃以下であることが好ましい。融点が低すぎる場合は紙カップおよび紙トレー等の用途において温かい飲食品を入れた時の耐熱性が不十分となり、積層した脂肪族ポリエステル組成物が剥離したり、溶融したりあるいは接合部が剥離したりするおそれがある。逆に、融点が高すぎると積層体をカップやサック、トレー、袋などへの2次加工する際にヒートシール温度を高く設定する必要があり、変色や形状不良等の不具合が生じることがある。より好ましくは融点が90℃以上150℃以下であり、特に好ましくは融点が100℃以上140℃以下である。このような融点のものを採用することにより、充分な耐熱性を有しながら同時に2次加工が容易な積層体を得ることが可能となる。
一方、脂肪族ポリエステルの結晶化温度(測定条件はDSCで200℃から−50℃に10℃/minで下降したときに測定)は、50℃以上100℃以下が好適である。下限値を下回ると積層体を押出成形する場合に冷却ロールへの貼りつきなどの問題が生じ、これを回避するために冷却ロールの温度を低温に設定する必要がある。更に製袋や、自動包装機、カップ製造機などの2次加工する際にも接着までに時間がかかる場合がある。また、98℃以上であると、ダイ出口から基材に接地するまでのエアギャップの間で溶融膜の固化が始まり、基材との接着力が弱くなる場合がある。ロール離型性を向上させるために、最外層樹脂に後述の核剤を添加して結晶化温度を向上させてもよい。
脂肪族ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以上、好ましくは30000以上、また、通常200000以下である。数平均分子量が上記範囲の下限を下回ると本発明の積層体の製造時における溶融膜特性に劣るおそれがあり、例えば、ネックインが大きくなるおそれがある。他方、上限を上回ると溶融粘度が高くなり、押出機のモーター負荷が高くなることから、積層体の製造が困難になるおそれがある。数平均分子量(Mn)の測定方法は溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でのGPC測定法である。数平均分子量は単分散ポリスチレンによる換算値である。
本発明に好適に使用される脂肪族ポリエステルのメルトフローレート(MFR;190℃、2.16Kg荷重)は、通常の下限は0.1g/10分以上、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上、更に好ましくは4g/10分以上である。また、20g/10分以下、好ましくは15g/10分以下である。メルトフローレートが上記範囲の下限を下回ると本発明の積層体製造時におけるモーター負荷が著しく増大し、加工機が停止することがあり、他方、上限を上回ると230℃以上高温成形時に、溶融膜の安定性が悪化する(ネックインの増大、サージングの発生)ことがある。
更に、ダイス出口から溶融した状態で出た脂肪族ポリエステルのメルトフローレート(MFR;190℃、2.16Kg荷重)は、通常の下限は6g/10分以上、好ましくは8g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上、更に好ましくは12g/10分以上である。また、35g/10分以下、好ましくは30g/10分以下である。メルトフローレートが上記範囲の下限を下回ると本発明の積層体製造時におけるモーター負荷が著しく増大し、加工機が停止することがあり、他方、上限を上回ると230℃以上高温成形時に、溶融膜の安定性が悪化する(ネックインの増大、サージングの発生)ことがある。
最外層において好適に用いられる市販の脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステルとしては、三菱化学社製GS Pla(登録商標)AZシリーズ、ADシリーズ、FZシリーズ、FDシリーズ、昭和高分子社製ビオノーレ(登録商標)、三井化学社製レイシア(登録商標)、NatureWorks LLC製 Ingeo(登録商標)、BASF社製エコフレックス(登録商標)、ノバモント社製マタービー(登録商標)、デュポン社製アペクサ等が挙げられる。ただし、後述の中間層とは異なるポリエステルを用いる。
<その他の樹脂>
最外層は上述の脂肪族ポリエステルを含んでなるが、脂肪族ポリエステル以外のその他の樹脂が含有されていてもよい。
その他の樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリブテン、などが挙げられる。更に、4−ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリアスパラギン酸等のポリアミノ酸樹脂、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリエーテル樹脂、セルロースおよびプルラン等の多糖類、ポリビニルアルコール樹脂等の生分解性樹脂が挙げられる。これらのその他の樹脂を使用する場合、1種類以上の樹脂を任意の組み合わせおよび比率で併用することができる。中でも、本発明の積層体の生分解速度が速くなり、また、分解後の崩形性が向上するという点において、生分解性樹脂を併用することが好ましい。
脂肪族ポリエステル以外の樹脂を併用する場合、最外層が含有する全樹脂成分100質量部に対し、脂肪族ポリエステルの割合が、通常50質量部以上、好ましくは70質量部以上となるようにする。脂肪族ポリエステルの量が増えれば、本発明の積層体の生分解速度が速くなり、また、分解後の崩形性が向上するからである。
本発明の積層体における最外層の樹脂成分は、分解性の観点からは、好ましくは、生分解性を有する樹脂のみからなることが好ましい。具体的には、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルのみからなるか、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルと、それ以外の生分解性樹脂との樹脂組成物からなることが好ましく、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルのみからなることがより好ましい。ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル以外の生分解性樹脂としては、ポリ乳酸や、脂肪族・芳香族ポリエステルが好ましい。
ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルと、それ以外の生分解性樹脂との樹脂組成物をポリエステル層に使用する場合、加工性の観点からは、ポリエステル層におけるジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルの配合量が、ポリエステル層に含まれる生分解性樹脂全量を100質量部として、65質量部以上であることが好ましく、より好ましくは70質量部以上、更には75質量部以上、特には90質量部以上であることが好ましい。例えば、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル70質量%と、ポリ乳酸または脂肪族芳香族ポリエステルであるエコフレックス(登録商標)を30質量%含有する樹脂組成物は、完全な生分解性樹脂組成物でありながらも、成形加工時のネックインが極めて小さく、加工性に優れた樹脂組成であるため、最外層に特に好ましい樹脂組成物である。
尚、本発明の積層体において、最外層や後述の中間層を構成する樹脂組成物の水分量は、樹脂組成物に対する質量比率で200ppm以上1500ppm以下であることが好ましい。水分量の下限について、より好ましくは300ppm以上、特に好ましくは400ppm以上である。また、水分量の上限について、より好ましくは1200ppm以下、特に好ましくは1000ppm以下である。最外層や中間層を構成する樹脂組成物の水分量をこのような範囲とすることで、ラミネート加工時のサージングの抑制、発泡現象の抑制、リロール性の悪化の抑制に有効であり、加工性を良好にすることができる。水分量を上述のような範囲にする方法は、公知の方法を使用することができる。たとえば、積層体の製造前に各樹脂を熱風乾燥機や、ホッパードライヤー等で、水分量が上述の範囲になるように乾燥させればよい。
さらに、本発明の積層体において、最外層や後述の中間層を構成する樹脂組成物のメルトフローレート(MFR;190℃、2.16Kg荷重)は、3g/10分以上20g/10分以下であることが好ましい。樹脂組成物のMFRの下限について、より好ましくは4g/10分以上、特に好ましくは5g/10分以上である。また、樹脂組成物のMFRの上限について、より好ましくは17g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下である。最外層や中間層を構成する樹脂組成物のMFRをこのような範囲とすることで、ラミネート加工時のサージングの抑制、離ロール性の悪化の抑制に有効であり、加工性を良好とすることができる。
さらに、本発明の積層体において、最外層は、後述する中間層に含まれるポリエステルを含まないことが好ましい。これにより、加工適性に一層優れた積層体とすることができる。
脂肪族ポリエステルに含まれる低分子量オリゴマーは、成形加工中にチルロールに付着するいわゆるロール汚れを生じさせる場合があり、また、成形後時間とともに成形体表面に滲出し、ヒートシール性や外観を悪化させることもある。特に、その低分子量オリゴマーの分子量が2000g/mol以下、特に1000g/mol以下で、且つその含有量が1000ppm以上、特に6000ppm以上であるとオリゴマー滲出によるヒートシール性と外観悪化傾向は顕著になる(なお、以下、「ppm」とは、質量を基準とした比率を表す。)。特に、低分子量オリゴマーが1,4−ブタンジオール単位(BG)とコハク酸(SA)に由来する構造単位から構成されている場合、またこれら構造単位が環状構造を形成する場合にヒートシール性と外観悪化傾向は更に顕著になる。ここで言う環状構造とは、例えば2個の1,4−ブタンジオール単位(BG)と2個のコハク酸(SA)単位とからなる構造を指す。より具体的には、脂肪族ポリエステルが、上述のような2個の1,4−ブタンジオール単位(BG)と2個のコハク酸(SA)単位とからなる環状の2量体オリゴマー(分子量:344g/mol)を3000ppm以上含有する場合において、特に顕著に現れる。質量比で該ポリエステルに対して下限は特に限定されないが、通常500ppm以上、好ましくは1000ppm以上であり、より好ましくは2500ppm以上、最も好ましくは3000ppm以上であり、上限が通常10000ppm以下、好ましくは8000ppm以下、より好ましくは6000ppm以下、特に好ましくは5500ppm以下、最も好ましくは5000ppm以下である。その含有量が少なすぎる場合には、低減のために設備や管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があるばかりでなく、チルロールからのラミネート品のリリース(離ロール性)が悪くなる傾向がある。一方、多すぎる場合には、成形加工中のロール汚れが顕著になることと、ヒートシール性が悪化したり、経過時間によりヒートシール性が変化することがある。
(2)中間層
中間層は、基材層と最外層との間に存在する層であり、少なくともポリエステルを含有し、最外層とは樹脂組成が異なる層であれば如何なる組成の層であっても構わない。また、中間層に含まれるポリエステルにおいて、ジカルボン酸に由来する構造単位全体を100モル%とした場合、テレフタル酸に由来する構造単位は20モル%以上30モル%以下である必要がある。中間層が含有するポリエステルは複数であっても構わず、複数のポリエステルを含有する場合、それぞれのポリエステルの繰り返し単位全部の合計に対して、テレフタル酸に由来する構造単位が20モル%以上30モル%以下であればよい。
例えば、中間層が含有するポリエステルと同種のポリエステルを最外層に含んでいても、当該樹脂と他のポリエステルとの配合比率が異なることによって、中間層が含有するポリエステルの全繰り返し構造単位に対して、テレフタル酸に由来する構造単位が20モル%以上30モル%以下含まれるように調整されているものであれば、中間層として使用できるが、最外層に含まれる脂肪族ポリエステルとは異なるポリエステルが含まれていることが好ましい。
中間層に含まれるポリエステルについては、上記の条件を満たすものであれば特に限定されるものではない。例えば、最外層に含まれるものとして例示した脂肪族ポリエステル(脂肪族芳香族ポリエステルを含む概念である。)を各種組み合わせて適用することができる。具体的には、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)或いはこれらの混合物等、テレフタル酸単位を含む脂肪族芳香族ポリエステルを用いることが好ましい。また、芳香族ポリエステル、特にテレフタル酸由来の構造単位を有する芳香族ポリエステルを混合してもよい。好ましくは、主たる構成成分がジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重合してなるものである。
中間層に含まれるポリエステルにおいて、ジカルボン酸に由来する構造単位全体を100モル%とした場合、テレフタル酸に由来する構造単位は20モル%以上30モル%以下となる。好ましくは22モル%以上28モル%以下である。当該構造単位が20モル%以上であることで、ポリエステル樹脂層と基材層との接着性を向上することが可能となり、30モル%以下であることで、積層体成形時の冷却ロールへの張り付きを防止し、積層体を打ち抜くような2次加工の際の打ち抜き性を高めることができる。
なお、中間層に含まれるポリエステルは、テレフタル酸に由来する構造単位が20モル%未満あるいは30モル%超となるポリエステルを各種混合して得られるものであってもよい。例えば、テレフタル酸に由来する構造単位を含まないポリエステルと、当該構造単位を含むポリエステルとを混合し、当該構造単位が全ジカルボン酸単位(100モル%)に対して20モル%以上30モル%以下の範囲内となるように調整することもできる。
中間層に含まれるポリエステルには、本発明の効果を著しく損なわない限り、最外層と同様のジオール成分を使用することができる。また、最外層と同様に脂肪族ジカルボン酸単位100質量部に対して、脂肪族オキシカルボン酸を0.1〜50質量部含有させることもできる。また、多官能成分単位を0.001〜5モル%含有させることもできる。
中間層に含まれるポリエステルは、最外層の脂肪族ポリエステルと同様の方法で製造できる。
<中間層に含まれるポリエステルの性質>
中間層に含まれるポリエステルは、以下の性質を有するものである。
ポリエステルの融点(測定条件はDSCで25℃から200℃に10℃/minで昇温したときに測定)は、50℃以上160℃以下であることが好ましい。融点が低すぎる場合は紙カップおよび紙トレー等の用途において温かい飲食品を入れた時に基材との接着性が不十分となり、積層した脂肪族ポリエステル組成物が剥離したり、溶融したりあるいは接合部が剥離したりすることがある。逆に、融点が高すぎると基材との接着性が低いか、場合によっては全く発現しないことがある。より好ましくは融点が60℃以上150℃以下であり、特に好ましくは融点が50℃以上140℃以下である。このような融点のものを採用することにより、充分な耐熱性を有しながら同時に2次加工が容易な積層体を得ることが可能となる。
一方、中間層に含まれるポリエステルの結晶化温度(測定条件はDSCで200℃から−50℃に10℃/minで下降したときに測定)は、20℃以上120℃以下が好適である。下限値を下回ると離ロール性が悪化する問題が生じることがあり、これを回避するために冷却ロールの温度を低温に設定する必要がある。また、上限値を超えると、基材との接着性が悪化する場合がある。
ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常8000以上、好ましくは30000以上、また、通常200000以下である。数平均分子量が上記範囲の下限を下回ると本発明の積層体の製造時における溶融膜特性に劣るおそれがあり、例えば、ネックインが大きくなるおそれがある。他方、上限を上回ると溶融粘度が高くなり、押出機のモーター負荷が高くなることから、積層体の製造が困難になるおそれがある。数平均分子量(Mn)の測定方法は溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でのGPC測定法である。数平均分子量は単分散ポリスチレンによる換算値である。
ポリエステルのメルトフローレート(MFR;190℃、2.16Kg荷重)は、通常の下限は0.1g/10分以上、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上、更に好ましくは5g/10分以上である。また、35g/10分以下、好ましくは20g/10分以下である。メルトフローレートが上記範囲の下限を下回ると本発明の積層体製造時におけるモーター負荷が著しく増大し、加工機が停止することがあり、他方、上限を上回ると、溶融膜の安定性が悪化する(ネックインの増大、サージングの発生)することがある。
中間層において特に好適に用いられる、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸由来の構造単位を有する、市販の脂肪族芳香族ポリエステルとしては、BASF社製エコフレックス(登録商標)、デュポン社製アペクサ(登録商標)等が挙げられる。
なお、中間層には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル以外のその他の樹脂が含まれていてもよい。その他樹脂の種類や量については、最外層に適用できるものとして説明した樹脂と同様の各種樹脂を、同様の量にて適用することができる。
(3)基材層
本発明に係る積層体は、各種用途に加工するために、植物由来成分を含む基材層を有している。植物由来成分としては、植物由来成分を含む繊維または植物由来成分を含むフィルムが好ましく、具体的には、紙、板紙、コットン不織布、レーヨン不織布、ポリ乳酸フィルム、硝酸セルロースフィルム、酢酸セルロースフィルム、再生セルロースフィルム、ポリグリコール酸フィルム等が挙げられる。中でも、得られる積層フィルムが全体として生分解性となり、環境に配慮した包材を形成することができる観点から、基材層は生分解性を有することが好ましく、植物由来の繊維またはフィルムであることが好ましい。具体的には、紙、板紙、パルプ不織布、コットン不織布、レーヨン不織布、再生セルロースフィルム等が挙げられ、特に紙、板紙、再生セルロースフィルムが好ましい。また、それ自体生分解性がない酢酸セルロース、再生セルロース等に、澱粉やキトサン等を配合して生崩壊性を持たせた複合フィルムを使用することもできる。
紙基材としては、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、模造紙、上質紙、中質紙、グラシン紙、パーチメント、アート紙、コート紙等の印刷・情報用紙、コップ原紙、ダンボール原紙等の加工原紙、ケント紙、マニラボール紙、コートボール紙等の板紙を挙げることができる。また、コットン不織布、レーヨン不織布等の不織布も紙基材に含まれる。これらの紙基体の坪量(日本工業規格 JIS P8124)は、紙質によっても異なるが、一般に10〜1000g/m、特に30〜700g/mの範囲にあることが好ましい。
基材層が紙基材である場合、基材層の密度が低いため、最外層と中間層との層間剥離強度、または中間層と基材層との層間剥離強度より基材の層内強度が低いことがある。また、基材層が板紙等の多層抄きの場合、基材層の層間剥離強度が低いことがある。これらの場合、基材層で内部破壊が起きる。これを防止するためには基材層の乾燥紙力を向上させることが好ましい。
紙基材において、乾燥紙力を向上させる方法としては、ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉等の乾燥紙力増強剤を内添する方法がある。乾燥紙力増強剤の添加量は、通常絶乾パルプに対して0.01〜0.3質量%である。ここで「内添」とは、抄紙前のパルプスラリーに添加剤を添加する方法を指す。また、抄紙前のパルプの叩解度を高めて濾水度(CSF)を450〜600ml程度にする方法がある。ここで、「CSF」とは、製紙業界で通常用いられるカナダ標準濾水度を指す。また、紙基材に配合する針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)の配合量を上げる方法がある。
また、紙基材が親水性であるため、本発明の積層体が水と接触した場合に、積層体の端面から水が浸入して基材層が膨潤して膨れや皺になったり、基材層内部で層破壊して剥がれたりすることがある。耐水性が要求される用途の場合、紙基材のサイズ度や湿潤紙力強度を向上させることが好ましい。
紙基材において、サイズ度を向上させる方法としては、アルキルケテンダイマー等の内添サイズ剤を内添する方法が挙げられる。内添サイズ剤の添加量は、通常絶乾パルプに対して0.1〜0.5質量%である。この場合、硫酸バンドを併用することも好ましい。
また、湿潤紙力強度を向上させる方法としては、ポリアミドポリアミン、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン変性物、ポリエチレンイミンエピクロロヒドリン変性物等の内添湿潤紙力増強剤を内添する方法が挙げられる。内添湿潤紙力増強剤の添加量は、通常絶乾パルプに対して0.1〜0.5質量%である。
紙、板紙には、通常添料と称する充填剤を配合する。本発明に使用する基材において、積層体の白色度と不透明度を向上させるために重質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム等を単独または併用して配合することが好ましい。また、これら添料の配合量は、紙基材に対して通常1〜30質量%である。
その他、必要に応じてタルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸塩、ベントナイト等の無機充填剤や、ポリスチレン粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子等の有機充填剤等を適宜選択して使用することができる。
特に積層体の不透明度を高くする場合は、基材層に黒鉛、カーボンブラックを内添したり、基材層表面に黒色印刷を施したりしても良い。
基材層として不織布を使用することもできる。具体的には、コットンリンターを原料とする水流交絡法不織布である旭化成社製ベンリーゼ(登録商標)、パルプを原料とするエアレイド法不織布である王子キノクロス社製キノクロス(登録商標)、レーヨンを原料とするスパンレース法不織布であるオーミケンシ社製ピロス(登録商標)、レーヨンを原料とする水流交絡法不織布であるクラレ社製クラフレックス(登録商標)、ポリ乳酸を原料とするスパンボンド法不織布であるユニチカ社製テラマック(登録商標)、シンワ社製ハイボン(登録商標)等が挙げられる。
基材層として植物由来成分を含むフィルムを使用することもできる。具体的には、酢酸セルロース系フィルムであるダイセル化学工業社製セルグリーンPC−A(登録商標)や日本触媒社製ルナーレZT(登録商標)、Innovia Films社製 NatureFlex NP、NPU、NK、NKR NEシリーズ等のセルロース系フィルム;澱粉と合成生分解性高分子のブレンドフィルムであるノバモント社製マタービー(登録商標)、キトサン、セルロース、デンプンのブレンドフィルムであるアイセロ化学社製ドロンCC(商品名)、ポリグリコール酸フィルムであるクラレ社製Kuredux(登録商標)等が挙げられる。
植物由来成分を含むフィルムには蒸着を施しても良い。蒸着を施すことにより、基材のバリア性が向上する効果が得られる。
例えば、金属蒸着膜を設ける場合は、フィルムとの密着性が高く、均一性に優れた被膜を施せる点から、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの蒸着法が好ましい。金属蒸着膜に使用される金属としては、金、銀、銅、アルミニウムまたはそれらに他の金属元素を含有する合金等が挙げられるが、溶融温度が低く、低コスト、基材へのダメージが少ないため、アルミニウムが特に好ましい。
また、無機酸化物膜を設ける場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等が好ましい。無機酸化物膜に使用される材料としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化錫、酸化マグネシウム、またはそれらの混合物等が挙げられる。金属蒸着セルロースフィルムの具体的な例としてはセルロース系フィルムであるInnovia Films社製 NatureFlex NKM、NM、NKMEシリーズ等がある。
蒸着法としては、上記の中でも、低コスト、基材へのダメージが少ないという点から真空蒸着法が好ましく、蒸着条件は、用いる材料の溶融温度又は蒸発温度に応じて適宜設定されるが、通常、真空度が10−3〜10−4Pa、温度1000〜1100℃の条件が好ましい。
蒸着層の好ましい膜厚は、バリアフィルムの用途や蒸着膜の膜組成等に応じて異なるが、通常1〜200nmの範囲が好ましい。この蒸着層が薄すぎると、ガスバリア性が発現せず、厚すぎるとクラックが発生しやすくなる。
また、フィルムを予めコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理などの表面処理を施してから、あるいはウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、澱粉系樹脂、ポリビニルアルコール等でアンカーコートを施してから、金属薄膜を形成することも好ましい。
(4)その他の層
本発明に係る積層体において、最外層や中間層以外にその他樹脂層を設けてもよい。特に、基材層上の中間層が設けられる面とは反対側の面に、その他樹脂層を設けるとよい。この場合においても、樹脂としては、上述の樹脂および/またはその他の樹脂を任意の組み合わせおよび比率で使用することができる。また、積層体の分解速度や分解後の崩形性の観点からは、積層体全体が含有する全樹脂成分に対する生分解性樹脂(特に脂肪族ポリエステル樹脂やポリ乳酸等)の割合が、50質量%以上、好ましくは70質量%以上となるようにその他の樹脂層を設けることが好ましい。当該その他樹脂層は、印刷層として機能させてもよい。すなわち、基材層上に広告や絵などの印刷等を施した印刷層を設け、2次加工時、当該印刷層と樹脂積層面とをヒートシール加工すると、ヒートシール強さを増加させることが可能で、コップ成型品の歩留等を向上させることができる。
<印刷層>
印刷層に用いるインキとしては、インキビヒクルを主成分とし、これに、必要に応じて、紫外線硬化性モノマー、オリゴマー、および光開始剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤を任意に添加し、さらに、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物としたものである。また、積層体のヒートシール強さを向上させるために、インキ組成物中に酢酸セルロース樹脂、ポリエステルポリオール等の樹脂および必要に応じてヘキサメチレンジイソシアネート等の架橋剤を添加しても良い。
該インキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式を使用し、文字、図形、記号、模様等を印刷することができる。印刷層の硬化膜厚は、通常0.1〜2.0μmである。
積層体の最外層は脂肪族ポリエステルを含むため、通常上記印刷適性を有するが、硬化後の印刷層と最外層との密着性を向上させる方法としては、インキビヒクルにウレタンアクリル系樹脂、アクリル系樹脂等を添加する方法;印刷直前にコロナ処理、低温プラズマ処理等で最外層を表面処理する方法;アクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等とイソシアネート化合物からなるポリウレタン等で最外層表面をアンカーコートする方法;最外層樹脂の主たる構成成分を脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステルとする方法;ラミネート直後の冷却速度を高くして、最外層の結晶性を低下させる方法等がある。
(5)積層体の製造方法
本発明に係る積層体は、少なくとも以上のような基材層と、最外層と、当該基材層及び最外層の間に設けられた中間層と、任意にその他の層と、を有してなるものである。以下、このような積層体を製造する方法について説明する。
本発明の積層体を得る方法は、中間層内に含まれるポリエステルのジカルボン酸に由来する構造単位全体に対するテレフタル酸に由来する構造単位が、20モル%以上30モル%以下となるようにするものであれば、通常行われている積層方法を特に限定されることなく適用することができる。例えば、(1)ある層に水溶性または水分散タイプの樹脂を塗り、湿った状態で他の層の張り合わせが行われ、その後乾燥、巻き取りが行われるウェットラミネーション方法、(2)樹脂を加熱して溶かしてある層に塗り、他の層を貼り合わせ、その後瞬間冷却することによって溶融樹脂を固めて接着するホットメルトラミネーション方法、(3)樹脂を溶融させ、Tダイなどのスリットダイからフィルム上に押出したものを基材に塗る押出コーティング方法、(4)樹脂を溶融させ、Tダイなどのスリットダイからフィルム上に押出したものをある層に塗り、サンド繰出し機と呼ばれるアンワインダーから別の層を供給して、同時に貼り合わせる方法である押出ラミネーション方法、(5)Tダイや丸ダイにて数種の樹脂を押出し、1工程で多層フィルムが製造できる共押出成形ラミネーション法、(6)有機溶剤に溶解させた樹脂をある層の表面に塗り、乾燥させて、他の層を積層するドライラミネーション法などの加工技術を用いることができる。
本発明の積層体の製造方法としては、上述した各種ポリエステルや必要に応じて添加される他の樹脂、滑剤、酸化防止剤、改質剤、核剤などの後述する所望の添加剤を配合した樹脂組成物を、ハンガーコートタイプTダイを有する押出機を用いて基材上に共押出積層する方法(押出コーティング法)が特に好ましい。押出コーティング法を用いる場合には、ポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂の溶融押出コーティング・ラミネート用に通常使用される溶融押出コーティング・ラミネート装置を用いることができる。
樹脂組成物の調製は、従来公知の混合/混練技術をすべて適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また混錬機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混錬機、一段型、二段型連続式混錬機、二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機等を使用できる。混練の方法としては、加熱溶融させたところに各種添加剤、充填剤、樹脂を添加して配合する方法などが挙げられる。また、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的でブレンド用オイル等を使用することもできる。
投入される原料樹脂の水含有量については、ポリエステルに対して質量比で下限が通常0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上であり、より好ましくは1ppm以上、最も好ましくは10ppm以上であり、上限が通常3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは800ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。水含有量が少なすぎる場合には、設備や管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があるばかりでなく、乾燥時間に多大な時間を要するため樹脂の着色やブツの生成等の劣化が引き起こされる傾向がある。一方、多すぎる場合には、成形加工中加水分解により分子量が低下し、適切な溶融粘度が得られず、サージング等を起こし、溶融膜が安定しないことがある。
基材層の水分含有量は、紙基材の場合、通常3〜10質量%であり、好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。紙基材の水分量がこれより多いと、積層体製造時に、紙基材の表面に加熱溶融した接着層および最外層(以下、「樹脂層」と称することがある)をラミネートする際、樹脂層の熱で基材層が加熱され、蒸発した水分が樹脂層に閉じ込められて気泡を形成することによって「ブリスター」を生じることがある。基材層の水分含有量が高い場合は、アーチドライヤー等の一般的な乾燥設備で水分量を低減させることが好ましい。一方、紙基材の水分量は好ましくは4質量%以上である。紙基材の水分量がこれより少ないと、ラミネート後に積層体の端面から吸湿して基材層が膨潤し、両表面の樹脂層の弾性率の違いによりカールを生じることがある。
また、植物由来樹脂フィルムの場合、基材層の水分含有量は特に限定されないが、質量比で下限が通常0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上であり、より好ましくは1ppm以上、最も好ましくは10ppm以上であり、上限が通常3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは800ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。水含有量が少なすぎる場合には、設備や管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があるばかりでなく、乾燥時間に多大な時間を要するため基材層の着色を引き起こす傾向がある。一方、水含有量が多すぎる場合には、成形加工中に加水分解によって樹脂層が着色することがある。
ポリエステル樹脂に含まれる水含有量(水分量)の測定方法としては、水分気化装置(三菱化学社製VA−100型)を用いて0.5gの試料を200℃で加熱溶融させて試料中の水を気化させた後、気化した全水分量を、微量水分測定装置(三菱化学社製CA−100型)を用いてカール・フィッシャー反応の原理に基づく電量滴定法により定量することにより試料中の水分量を決定する方法が挙げられる。基材層に含まれる水含有量を測定する場合は、例えば、105℃のオーブン内で2時間乾燥させ、乾燥前後の重量減少量を測定し、水分量を算出する方法が挙げられる。
中間層や最外層(以下まとめて「樹脂層」という場合がある)の加工温度は、樹脂の種類により異なるが、例えばジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル樹脂や脂肪族芳香族ポリエステル樹脂を用いる場合、溶融押出機内のシリンダーの入り口温度を100℃〜230℃、押出機のダイスの設定温度を230℃〜300℃、ダイス直下の樹脂温度を端部から中央部の各場所において測定し、各場所の温度をその平均の±10℃に制御することが好ましい。そのためにはダイスにセットしてあるヒートブロック温調を制御することが好ましい。なお、中央部とは積層体製品の巾に対して中心となる位置とし、端部とは基材の巾端から2cm中央部に寄った位置と定義した。
また、樹脂層の巾方向の厚みムラを抑制するために、ダイス温度の調整を行うことが好ましい。例えば、ダイス端部直下の樹脂温度が、ダイス中央部直下の樹脂温度に比べて、好ましくは5℃以上低い温度であり、より好ましくは10℃以上低い温度となるように、ダイス温度を設定するとよい。また、好ましくは20℃以下低い温度であり、より好ましくは15℃以下低い温度となるように、ダイス温度を設定するとよい。
この厚みムラは、ダイス各部の温度を制御することによって抑制できる。具体的な方法は以下に示すが、厚みを制御するために、リップ開度の調整を併用しても良い。
ダイスは、その大きさにもよるが、温調を制御するために複数個のヒートブロックを有している。ヒートブロックの温度調整は、各ヒートブロック部分から流れ出る溶融樹脂温度を測定し、設定温度との乖離状況とポリエステル層の厚み測定に基づいて実施する。
端部が中央部より厚い場合、中央部の樹脂温度を一定とし、端部の樹脂温度を低くするため、該当するヒートブロックの温度設定を低くして安定化を待つ。中央部と端部の間にも複数のヒートブロックがある場合、温度設定を傾斜的に設定するほうが好ましい。
なお、脂肪族ポリエステル樹脂やそれと他の樹脂との組成物の樹脂温度が中央部、端部において温度差がありすぎると樹脂の粘度が各部において異なり、ダイスより均一な厚みの溶融樹脂層として押出すことができず、接着強度にムラが生じる場合があるので、高品質なラミネート品とする観点から、上記温度調整を精密に行うことが好ましい。
押出機内で溶融混練された樹脂は、所定の厚みになるように、ダイスから、基材上に押出コーティングされる。ダイスとしてはハンガーコート型、共押出用ダイなどを使用することができる。その際、厚みが厚い場合はタッチロール、エアーナイフ、薄い場合には静電ピンニングを使い分けることにより均一な厚みとする。ダイリップの間隔は、通常0.2〜3.0mmとするが、成膜状況によりこれに限定されることはない。
溶融押出を行う場合、Tダイから押出されたフィルムがダイ出口の幅より狭くなるネックインと呼ばれる現象や、フィルムの両サイドが中央部より厚い耳(エッジビード)と呼ばれる部分が生じる場合がある。これらを改善するためにロッド棒やインナーディッケルをダイス内部に配置するのが好ましい。これにより溶融樹脂の流量を変更し、エッジビードを低減することができる。またリップの間隔を調整して成形品の厚み分布を良くする場合もある。
ロッド棒としては、断面形状が丸型、三角型、Y字型のものが使用されるが、特に旗付きロッド棒と称される形状のものが好ましく使用される。このような旗付きロッド棒を装着することによって、ダイス押出口に供給される樹脂膜の巾を減少させた状態でダイス押出口から押出すことにより、また、その結果として、押出直後の溶融樹脂膜について端部の蛇行(サージング)を防止し、安定したラミネート加工を行うことが可能となる。このような誘導板をダイス押出口部に設置することにより、溶融状態の樹脂膜層の側縁部を位置決めしつつ、溶融状態の樹脂膜において両側縁部の膜厚を膜中央部と等しい厚みに制御できる。
ダイス出口から溶融膜として出てきた樹脂層は、オゾン処理を経た後、ラミネート加工部系統において、所定のエアギャップを介して、ニップロールと冷却ロールとの間で基材と圧着されることが好ましい。
オゾン処理は樹脂層のうち中間層側に行うことが好ましい。中間層表面をオゾン処理することにより、中間層の表面が酸化され、カルボキシル基等の極性基を生じるとされる。中間層表面に極性基が存在すると、同じく極性を有する基材層との親和性が向上し、中間層と基材層の界面の接着強度が向上する効果がある。
また、基材層がフィルムの場合は、その表面にコロナ処理することもまた好ましい。フィルム表面をコロナ処理することにより、フィルム表面が酸化され、カルボキシル基等の極性基を生じるとされる。コロナ処理が窒素ガス下で行われる場合は、アミノ基等も生じるとされている。フィルムのコロナ処理と中間層のオゾン処理とを組み合わせると、樹脂層と基材層との親和性が向上し、中間層と基材層の界面の接着強度が向上する効果がある。
汎用樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE)ではエアギャップの間隔は例えば120mmと広く設定されており、そのエアギャップ中で空気中の酸素によりLDPEの酸化を促進させ、表面の濡れ性を向上させることにより接着性を高めることが公知の技術である。しかし、脂肪族ポリエステルを使用して積層体を製造する際には、溶融膜表面の酸化による接着力向上の効果は少ない。
本発明者が鋭意検討した結果、生分解性樹脂として脂肪族ポリエステルを使用する場合、エアギャップの間隔を狭くすることによって著しく接着力が向上することを見出した。エアギャップの上限値は120mm以下、好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下であり、その下限値は50mm以上、より好ましくは60mm以上である。上限値を上回ると樹脂温度が低下しすぎるため、基材との接着性を低下させるので好ましくなく、また、酸化が促進され酸化臭などの臭気の発生が問題となる。逆に、下限値を下回ると、オゾン発生装置などの溶融膜処理装置の設置が困難となり、また、冷却ロールとダイスが近くに位置するため、冷却ロールの温度管理が困難となることがある。
ダイス出口から押出された溶融膜と基材とを接着させるために圧力を付与するニップロールは、ゴム製、セラミック製などのロールであり、溶融樹脂の接着を防ぐ点からはシリコンゴム製のニップロールが好ましい。また、ニップロールの硬さは、用いる基材の種類によって任意に選択され、ニップ圧は所望の積層体の接着力を得るために任意に調整できる。本発明でのニップ圧の下限値は0.2MPa以上であり、好ましくは0.4MPa以上である。また、上限値は0.5MPa以下、好ましくは0.45MPa以下である。下限値を下回ると、接着力が弱く、積層体として実用的ではない。また上限値を上回るとニップロールが変形し、接触面積が広くなることで単位面積あたりの圧力が低下し、接着力が充分でないことがある。また溶融樹脂と基材と冷却ロールとの接触位置も接着力を左右するため極めて重要である。接触位置は溶融樹脂が基材に接触する前に冷却ロールに接触すると樹脂が冷却固化され、接着力が得られない。好ましくは溶融樹脂が基材と冷却ロールとに同時に接触するものとする。
冷却ロールの種類は目的の最外層の表面概観を得るために任意に選択することができる。例えば、鏡面仕上げの有無や、セミマットロール、マットロールなどがある。好ましくはセミマットロール、更にはマットロールなどが積層体の張り付きの程度が少ないため好ましく使用される。冷却ロールの温度は10℃以上35℃以下が好ましい。上限を超えて設定すると積層体が冷却ロールに張り付きやすく、成形速度の高速化が困難となる。また下限値を下回ると冷却ロールに水滴が付くことがあり、運転が困難となることがある。
積層体を製造する加工速度が高すぎると、樹脂層の樹脂をダイから押し出す際に、押出量が多いため、「ドローレゾナンス」と称する振動現象を起こし、ラミネート樹脂の端部が基材層の上で蛇行して成形不良を起こすことがある。上記のように選択された操業条件に厳密に制御することにより、加工速度は20m/分以上、更には180m/分という通常の商業的規模での製造が可能である。その結果、例えば、ヒートシール性に優れ、高速充填可能な食品包材を形成することができる。
(6)添加剤
本発明の積層体には、酸化防止剤、滑剤、末端封止剤、核剤などの各種添加剤を含有させることもできる。特に、樹脂層(特に、最外層)には、酸化防止剤および/または滑剤を含有させることが好ましい。
<酸化防止剤>
本発明の積層体に添加する酸化防止剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(別名:BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
ラクトン系酸化防止剤としては、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−t−ブチル−フラン−2−オンとキシレンの反応生成物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
酸化防止剤の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、最外層および中間層におけるポリエステルに対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常50000ppm以下、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは5000ppm以下、更に好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは800ppm以下である。この範囲の下限を下回ると酸化防止剤の効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、酸化防止剤のブリードアウト、ラミネート製造時のロール汚れが生じたりするおそれがある。
酸化防止剤を含有させる具体的な方法に制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、樹脂と酸化防止剤とを混合して、積層体の樹脂層に酸化防止剤を含有させるようにする。例えば、酸化防止剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。酸化防止剤を目的濃度となるように混合して希釈することができ、簡便なためである。
マスターバッチ中の酸化防止剤の含有量に制限はないが、通常は1質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。酸化防止剤の含有量が少なすぎると、製造費が高くなり、また含有量が多すぎると、樹脂と酸化防止剤の分散性が不良となるため、酸化防止剤の効果を最大限に引き出すことはできない。
マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されないが、通常は使用する樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが好ましい。
<滑剤>
滑剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。滑剤は、ラミネート製造時の吐出安定性、モーター負荷低減、結晶化温度の高温化、成形安定性向上等のために添加される。また、成形性を付与する以外に、ロール金型に接触する層に用いると、層に粘着やべたつきが生じるのを防止することができ、離ロール性の向上や、際立ったロール汚れを防止するのに役立つ。
その具体例としては、ポリエチレンワックス、パラフィン油、固形パラフィン等のパラフィン、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類、脂肪酸の金属塩類、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド類等、カルナウバワックス、モンタンワックス等のワックス類などが挙げられ、中でも脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩が特に好ましい。
上記脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、ジメチトール油アミド、ジメチルラウリン酸アミド、ジメチルステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、N−ブチル−N’−ステアリル尿素、N−プロピル−N’−ステアリル尿素、N−アリル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ステアリル尿素等が挙げられる。
脂肪酸金属塩としては、炭素数が12以上で30以下であるものが特に好ましい。また金属種としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜14族金属元素のカルボン酸塩が好ましい。特に好ましくは周期表の第3から第4周期のアルカリ金属類、アルカリ土類金属類、遷移金属類が特に好ましい。最も好ましくは第3から第4周期のアルカリ土類金属類が好適に選ばれる。上記の中でアルカリ金属類のカルボン酸塩は使用量にもよるが、樹脂を劣化させることがあり、製造中、あるいは成形後の耐加水分解性や機械物性等を悪化させることがある。脂肪酸の炭素数が上記の下限以下であると成形時に発煙やロール汚れ、ブリードアウトが問題となることがあり、上限以上であると成形時の熱分解等により、臭気が問題となることがある。
上記の脂肪酸金属塩の例としては、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸銀、ラウリン酸リチウム、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸銀、ミリスチン酸アルミニウム、パルチミン酸リチウム、パルチミン酸カリウム、パルチミン酸マグネシウム、パルチミン酸カルシウム、パルチミン酸亜鉛、パルチミン酸銅、パルチミン酸鉛、パルチミン酸タリウム、パルチミン酸コバルト、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸タリウム、オレイン酸銅、オレイン酸ニッケル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸タリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ベリリウム、イソステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸カルシウム、イソステアリン酸バリウム、イソステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸ニッケル、ベヘニン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸バリウム、ベヘニン酸アルミニウム、ベヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸ニッケル、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸ニッケル,モンタン酸リチウム、オクチル酸ナトリウム、オクチル酸リチウム、オクチル酸マグネシウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸バリウム、オクチル酸アルミニウム、オクチル酸タリウム、オクチル酸鉛、オクチル酸ニッケル、オクチル酸ベリリウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸バリウム、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸タリウム、12−ヒドロキシステアリン酸鉛、12−ヒドロキシステアリン酸ニッケル、12−ヒドロキシステアリン酸ベリリウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸リチウム、セバシン酸マグネシウム、セバシン酸カルシウム、セバシン酸バリウム、セバシン酸アルミニウム、セバシン酸タリウム、セバシン酸鉛、セバシン酸ニッケル、セバシン酸ベリリウム、ウンデシレン酸ナトリウム、ウンデシレン酸リチウム、ウンデシレン酸マグネシウム、ウンデシレン酸カルシウム、ウンデシレン酸バリウム、ウンデシレン酸アルミニウム、ウンデシレン酸タリウム、ウンデシレン酸鉛、ウンデシレン酸ニッケル、ウンデシレン酸ベリリウム、リシノール酸ナトリウム、リシノール酸リチウム、リシノール酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸アルミニウム、リシノール酸タリウム、リシノール酸鉛、リシノール酸ニッケル、リシノール酸ベリリウム等が挙げられる。上記の中でもステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛が好適に用いられる。
なお、滑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。更に滑剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、生分解性樹脂に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常50000ppm以下、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは5000ppm以下、更に好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは800ppm以下である。この範囲の下限を下回ると滑剤としての添加効果であるモーター負荷の低減や吐出安定性への寄与効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、滑剤のブリードアウトや発煙、臭気の発生やラミネート製造時のロール汚れが生じたりするおそれがある。
滑剤を含有させる具体的な方法に制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、脂肪族ポリエステルと滑剤とを混合して、積層体の最外層(ポリエステル層)に滑剤を含有させるようにする。滑剤を目的濃度となるように混合して希釈することができ、簡便なことから、滑剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。
マスターバッチ中の滑剤の含有量に制限はないが、通常は1質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。滑剤の含有量が少なすぎると、製造費が高まり、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、樹脂と滑剤の分散性が不良となるため、滑剤の効果を最大限に引き出すことはできない。マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されないが、通常は使用する樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが分散性の向上の観点から好ましい。
<末端封止剤>
末端封止剤は、特開平11−80522号公報に記載されているように、ポリエステルの炭素鎖の末端にあるカルボキシル基と反応する性質を有し、ポリエステルのカルボキシ末端と反応してこれを封止することにより、ポリエステルの耐加水分解性を向上することが知られている。本発明の積層体に用いる末端封止剤としては、ポリエステルの炭素鎖の末端にあるカルボキシル基(カルボキシ末端)を封止することが可能な化合物であれば任意のものを用いることができる。
本発明に使用する末端封止剤としては、ポリエステルの末端を封止するのみではなく、熱分解や加水分解などで生成する末端カルボン酸や乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封止することができるものが好ましい。更に、熱分解や加水分解などで生成する酸性低分子化合物中の水酸基末端も封止できる化合物であることが更に好ましい。
末端封止剤は、多官能のものであってもよく、単官能のものであってもよい。多官能の末端封止剤はポリエステルの主鎖が切断した際、溶融張力等の物性を維持できるという利点や、多官能の末端封止剤が分岐点となり溶融張力の向上が認められ、成形性(ネックインなど)が向上するという利点がある。また、単官能の末端封止剤は多官能タイプよりも分子量や立体障害が少ないため、速やかにポリエステルのカルボキシ末端と反応し、封止ができるという利点を有する。
このような末端封止剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシド化合物およびオキサゾリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
カルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であり、このようなカルボジイミド化合物は、例えば、触媒として有機リン系化合物または有機金属化合物を用いて、イソシアネート化合物を70℃以上の温度で、無溶媒または不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応させることにより合成することができる。
カルボジイミド化合物は単独で使用することもできるが、複数の化合物を混合して使用することもできる。
本発明においては、ポリカルボジイミド化合物を用いることが好ましく、その重合度は、下限が通常2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは30以下である。重合度が低いと、樹脂粒子製造時にカルボジイミド化合物が揮散し効果が低くなる傾向がある。一方、重合度が大きすぎると組成物中における分散性が不十分となり、効率よく末端封止効果が得られないことがある。
工業的に入手可能なポリカルボジイミドとしては、例えば、カルボジライト(登録商標)HMV−8CA(日清紡績社製)、カルボジライト(登録商標)LA−1(日清紡績社製)、スタバクゾールP(ラインケミー社製)、スタバクゾールP100(ラインケミー社製)などが例示できる。
イソシアネート化合物としては、例えば、シクロヘキシルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、2,6ージイソプロピルフェニルイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
エポキシド化合物としては、ブチルフェニルグリシジルエーテル、レゾルシングリシジルエーテル、ヒドロキノングリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはノボラック型エポキシ樹脂、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
オキサゾリン化合物としては、上記例示のビスオキサゾリン化合物やオキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。
この他、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物等のエポキシ化合物、オキサジン化合物なども、末端封止剤として挙げられる。これらの中でも、エポキシ化合物およびカルボジイミド化合物が好ましい。
上記末端封止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
本発明の積層体では、使用する用途に応じて適度にカルボキシル末端や酸性低分子化合物の封止を行えばよく、封止の程度はその用途に応じて任意である。具体的なカルボキシ末端や酸性低分子化合物の封止の程度としては、耐加水分解性を向上させる観点から、本発明の積層体に係る樹脂の酸価が、通常60μeq/g以下、好ましくは30μeq/g以下、より好ましくは20μeq/g以下である。ここで、樹脂の酸価は1価のアニオンであるカルボキシル基を測定対象としているので「eq」は「mol」を表す単位である。樹脂層の酸価は、本発明の積層体を適当な溶媒に溶解させた後、濃度既知の水酸化ナトリウムなどのアルカリ化合物溶液で滴定することにより測定したり、NMRにより測定したりすることができる。本明細書においては、樹脂の酸価(AV値)は以下の測定条件により測定されたものを言う。
樹脂試料をベンジルアルコールに加熱溶解させ、冷却後、エタノールを加えて試料溶液とする。これを0.01N水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液(10%メタノール含有)を用い電位差滴定による中和滴定を実施し、測定滴定値とする。
一方、試料が溶解されていないブランクサンプルを調製し、上記方法と同様に滴定を実施し、ブランク測定値とする。
上記滴定結果より、下記(VI)式を用いて酸価(AV値:μeq/g)を計算する。
Figure 2013226832
A:測定滴定値(mL)
B:ブランク測定値(mL)
F:0.01N水酸化ナトリウムのベンジルアルコール液の力価
W:試料質量(g)
なお、本明細書においては、測定装置としては、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製オートタイトレーターAUT−50)を用いた。
末端封止剤の使用量は、ポリエステル100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上、また、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。この範囲の下限を下回ると末端封止の効果が現れないおそれや成形性(溶融膜のネックイン、サージング等)の向上が認められないことがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎるおそれ、積層体製造時におけるモーター負荷の増加、ゲル化の発生、加工時の発煙および製品中からの臭気の発生のおそれがある。
また、上記の使用量の範囲内において、末端封止剤は、定量的にポリエステル末端を封止する量を加えればよいが、積層体製造時における熱分解で生じた末端基の封止と溶融張力向上効果や長期安定性とを発現するためには、ポリエステル末端に対して末端封止剤を過剰に存在させることが望ましい。なお、ここで末端封止剤を過剰に存在させるとは、基質樹脂(即ち、生分解性樹脂および適宜使用されるその他の樹脂)の酸価以上に末端封止剤を加えることをいう。
本発明の積層体に末端封止剤を含有させる具体的な方法に制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、樹脂と末端封止剤とを混合して、積層体の樹脂層に末端封止剤を含有させるようにする。例えば、末端封止剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。含有量が目的濃度となるように混合して希釈することができるためである。
マスターバッチ中の末端封止剤の含有量に制限はないが、通常は0.5質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。末端封止剤の含有量が少なすぎると、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、ゲル化が進行しやすくなる傾向がある。
マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されず、カルボジイミドを含有する市販マスターバッチでもよいが、使用するポリエステル樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが好ましい。
<核剤>
本発明の積層体には、積層体製造時の樹脂層に係る樹脂の結晶化温度を制御し、成形時の加工性改善するために核剤を含有させてもよい。核剤の添加により、結晶化温度の高温化や離ロール性の向上が期待できる。核剤は無機系核剤および有機系核剤のいずれをも使用することができ、単独でもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
無機系核剤の具体例としては、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などを挙げることができる。また、これらの無機系核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていてもよい。
一方、有機系核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、安息香酸アルミニウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩;p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩;ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等のカルボン酸アミド;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸等のポリマー;エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー);ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート等のリン化合物金属塩;2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム;ポリエチレンワックスなどを挙げることができる。特に好ましい核剤としてポリエチレンワックスが好適に用いられる。このポリエチレンワックスを使用すると、GS−Plaの結晶化を促進させることができ、離ロール性が向上するとともに、基材との接着性を阻害しないことが判明した。
核剤の平均粒径は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。通常50μm以下、好ましくは10μm以下であることが望ましい。また、2次凝集や取り扱い作業性の点から、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であるのが望ましい。平均粒径が上記範囲の上限を超える場合には、結晶化温度の高温化には効果がないことがある。また、核剤の平均粒径が上記範囲の下限未満となった場合には、製造費が高くなり、また取り扱いが困難となることがある。
核剤の好ましい配合量は、ポリエステル100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上、また、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1.2質量部以下である。この範囲の下限を下回ると結晶化温度の高温化への効果が現れないおそれや、成形時における離ロール性の悪化のおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎるおそれや、成形時のロール汚れが問題となる。
<その他の添加剤>
本発明の積層体には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、上記の酸化防止剤、滑剤、末端封止剤および核剤以外の添加剤を含有させるようにしてもよい。添加剤としては、例えば、耐光剤(光安定剤)、紫外線吸収剤、相溶化剤、帯電防止剤、充填剤、着色剤、ブロッキング防止剤、離型剤、防曇剤、可塑剤、難燃剤等が挙げられる。特に、耐光剤、相溶化剤、帯電防止剤、充填剤のいずれか1種類以上の使用剤を10ppm以上含むことが好ましい。
耐光剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。
耐光剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。特に異なる種類の耐光剤を組み合わせて用いるのが有効であり、更に、紫外線吸収剤と組み合わせて用いることが有効である。また、中でも、ヒンダードアミン系安定剤と紫外線吸収剤との組み合わせが有効である。
更に、耐光剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ポリエステルに対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。この範囲の下限を下回ると耐光剤の効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、耐光剤のブリードアウトやロール汚れ、成形加工時の発煙が生じたりするおそれがある。
耐光剤を含有させる具体的な方法に制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、脂肪族ポリエステルと耐光剤とを混合して、積層体の最外層に耐光剤を含有させるようにする。耐光剤を目的濃度となるように混合して希釈することができ、簡便なことから、耐光剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。
マスターバッチ中の耐光剤の含有量に制限はないが、通常は1質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。耐光剤の含有量が少なすぎると、製造費が高まることから、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、樹脂と耐光剤の分散性が不良となるため、耐光剤の効果を最大限に引き出すことはできない。
紫外線吸収剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール等のベンゾトリアゾール系;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等のトリアジン系挙げられる。
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。特に異なる種類の紫外線吸収剤を組み合わせて用いるのが有効である。
また、紫外線吸収剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると紫外線吸収剤の効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、紫外線吸収剤のブリードアウトや発煙、臭気の発生やラミネート製造時のロール汚れが生じたりするおそれがある。
紫外線吸収剤を含有させる具体的な方法も制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、脂肪族ポリエステルと紫外線吸収剤とを混合して、積層体の最外層に紫外線吸収剤を含有させるようにする。紫外線吸収剤を目的濃度となるように混合して希釈することができ、簡便なことから、紫外線吸収剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。
マスターバッチ中の紫外線吸収剤の含有量に制限はないが、通常は1質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。紫外線吸収剤の含有量が少なすぎると、製造費が高まることから、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、樹脂と紫外線吸収剤の分散性が不良となるため、紫外線吸収剤の効果を最大限に引き出すことはできない。
相溶化剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、樹脂の末端または主鎖に、エステル基、カルボン酸無水物、アミド基、エーテル基、シアノ基、不飽和炭化水素基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、芳香族炭化水素基などを導入したものが挙げられる。
相溶化剤としては、例えば、脂肪族ポリエステルと、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー等の芳香族系ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、SEBS(ポリスチレン−block−ポリ(エチレン−co−ブチレン)−block−ポリスチレン)、SEPS、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン13、ナイロン4、ナイロン4−6、ナイロン5−6、ナイロン12、ナイロン10−12、アラミド等のポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレングリコール、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等とのグラフト共重合体、ブロック共重合体、マルチブロック共重合体、ランダム共重合体なども挙げられる。
相溶化剤としては、上記の共重合体以外にも、ブレンドする異なる樹脂の構造の両方を同一分子中に含む化合物も挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、SEBS、SEPS、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン12、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレングリコールのポリマー分子の末端または側鎖に、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アルキル基、アルキレン基と反応可能な官能基を有するポリマーなども挙げられる。
相溶化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。特に、本発明の積層体において、樹脂層が2種以上の樹脂(即ち、ポリエステルおよび適宜使用されるその他の樹脂)から構成される場合には、相溶化剤の使用は特に好適である。また、積層体が2種以上の樹脂からそれぞれの層を形成する多層体の場合においてもこの相溶化剤が使用できる。
相溶化剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、また、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。この範囲の下限を下回ると相溶化剤の効果である接着力が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎることや、生分解性を悪化させることがある。相溶化剤も、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、樹脂と相溶化剤とを混合して、積層体の樹脂層に相溶化剤を含有させるようにする。
また、本発明の積層体を帯電防止性に優れたものとするために、上記した樹脂層に帯電防止効果が発現される帯電防止効果のある混合物を添加することも好ましい。該混合物としては、界面活性剤型のノニオン系、カチオン系、アニオン系が好適に選択される。帯電防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。ノニオン系に代表される帯電防止剤はグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸エステルアルキルジエタノールアミド類があり、中でもアルキルジエタノールアミン類が帯電防止効果の発現性の点から好ましい。カチオン系に代表される帯電防止剤はテトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などが選ばれる。また、アニオン系ではアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェートが挙げられ、中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩は基材樹脂との混練性、帯電防止効果の発現性の点から好ましい。
帯電防止剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1000ppm以上、好ましくは3000ppm以上、また、通常50000ppm以下、好ましくは20000ppm以下、より好ましくは10000ppm以下である。この範囲の下限を下回ると帯電防止剤の効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、帯電防止剤のブリードアウトや発煙、臭気の発生や積層体製造時のロール汚れが生じたりするおそれがある。帯電防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
帯電防止剤の配合量が少なすぎる場合は実質的な帯電防止性向上効果が認められず、多すぎる場合は帯電防止剤が積層体の表面にブリードアウトしてべたつきが発生したり、印刷適性が不良になったりすることがある。また成形中に発生する臭気や発煙も問題となることがある。好ましい帯電防止性能は、その積層体において表面固有抵抗が1×10〜5×1013Ω/□、より好ましくは1×10〜1×1012Ω/□の値を示すものである。表面固有抵抗は、抵抗率測定計を用い、JIS−K6911に準拠して測定する。
帯電防止剤を含有させる具体的な方法も制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、脂肪族ポリエステルと帯電防止剤とを混合して、積層体の最外層に帯電防止剤を含有させるようにする。脂肪族ポリエステルと帯電防止剤との混合順序、混合方法などには特に限定はないが、帯電防止剤含有率の高いマスターバッチ、例えば帯電防止剤の含有率が5〜20質量%のマスターバッチを調製し、これと脂肪族ポリエステルとを混合する方法が該混合物を均一に分散させやすいという点から好ましい。また、混合方法については、混練性等の観点から二軸押出機を使用することが好ましい。また、積層体の樹脂層に塗布型帯電防止剤を使用してもよい。
白色度を上げたり、不透明度を上げたり、耐熱性や剛性を高めたりする目的で充填剤を添加することができる。充填剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り従来公知の各種フィラーを任意に用いることができる。充填剤は、無機系フィラーと有機系フィラーとに大別される。これらは1種または2種以上の混合物として用いることもできる。
また、充填剤として、機能性添加剤を配合して組成物とし、積層体に添加することもできる。機能性添加剤としては、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤などが挙げられる。
無機系充填剤としては、雲母、タルク、酸化チタン、重質炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、ワラステナイト、焼成パーライト等の天然鉱物やその加工品;ガラス;カーボン;無水シリカ、シリカゲル、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸第二鉄等の炭酸塩;リン酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム等のその他塩類が挙げられる。無機系充填剤の含有量は、全組成物質量に対して、通常1〜80質量%であり、好ましくは3〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%である。
有機系充填剤としては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフ、籾殻、藁等の粉末などが挙げられる。また、これらを焼成して炭化物として添加してもよい。これらは1種または2種以上の混合物として使用することもできる。有機系充填剤の添加量は、全組成物質量に対して、通常0.01〜70質量%である。特にこの有機系充填剤系の充填剤は、ポリエステル組成物の生分解後に、その有機系充填剤が、土壌に残り、土壌改良剤、堆肥としての役割も果たすので、グリーンプラとしての役割を高める。
これらの中でも、積層体の不透明度を高めるためには、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を使用することが好ましい。また、積層体の耐熱性を高めるためには、雲母、タルク、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン等を使用することが好ましい。また、積層体の難燃性を高めるためには、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等を使用することが好ましい。また、ブロッキング防止効果を得るためには、無水シリカ、シリカゲル、酸化アルミニウム、生澱粉等を使用することが好ましい。
充填剤の中には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム(石灰石)、炭酸マグネシウム、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、籾殻、藁等のように、土壌改良剤の性質を持つものもあり、これらの無機系充填剤を特に多量に含むバイオマス由来のポリエステル組成物を、土壌に投棄すれば、生分解後の無機系充填剤は、残存して土壌改良剤としても機能するので、グリーンプラとしての有意性を高める。農業資材、土木資材のように、土壌中に投棄するような用途の場合には、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤のようなものを添加した積層体とすることは、本発明の積層体の有用性を高めることになる。
充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。また、充填剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ポリエステル100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、また、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。この範囲の下限を下回ると添加効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなったり、成形加工性を悪化させたりするおそれがある。これらの充填剤は、本発明の積層体製造時のどの工程において積層体の樹脂層に含有させるようにしてもよい。例えば、ポリエステル樹脂に均一に分散させるために、充填剤を高濃度で含むマスターバッチを使用することができる。マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されないが、通常は使用する樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが好ましい。
着色剤としては色材や蛍光増白剤が挙げられ、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。着色剤は染料系であっても顔料系であってもよい。色材の中で、染料系色材は発色性が良好であり、顔料系色材は耐光性が良好である特徴がある。染料系色材と顔料系色材とを併用することもできる。また、色材と蛍光増白剤とを併用することもできる。
例えば、積層体の黄色味を抑えて、より白色に近づける場合、ポリエステルに色材を添加する方法、蛍光増白剤を添加する方法、色材と蛍光増白剤を添加する方法のいずれでもよい。また、色材として耐光性の良い顔料系色材が好ましく用いられる。また、青色顔料とバイオレット顔料を組み合わせて用い、両者の配合比率を適宜調整して積層体の色相をコントロールすることができる。
染料系色材としては、C.I.Solvent Black 7(ニグロシン系)、C.I.Solvent Yellow 21(ピラゾール系)、C.I.Disperse Yellow 7(ジスアゾ系)、C.I.Solvent Orange 44(モノアゾ系)、C.I.Disperse Orange 13(ジスアゾ系)、C.I.Solvent Red 84(モノアゾ系)、C.I.Disperse Red 54(モノアゾ系)、C.I.Solvent Violet 14(アントラキノン系)、C.I.Disperse Violet 18(アントラキノン系)、C.I.Solvent Blue 25(フタロシアニン系)、C.I.Disperse Blue 56(アントラキノン系)等が挙げられる。
無機顔料系色材の具体例としては、バリウム黄(C.I.pigment Yellow 31)、黄鉛(C.I.pigment Yellow 34)亜鉛黄(C.I.pigment Yellow 36)等のクロム酸塩;紺青(C.I.pigment Blue 27)等のフェロシアン化物;カドミウムイエロー(C.I.pigment Yellow 42)、カドミウムレッド(C.I.pigment Red 108)等の硫化物;鉄黒(C.I.pigment Black 11)、べんがら(C.I.pigment Red 101)等の酸化物;群青(C.I.pigment Blue 29)等のケイ酸塩;またはチャンネルブラック、ローラーブラック、ディスク、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック(C.I.pigment Black 7)等を挙げることができる。
有機顔料系色材の具体例としては、C.I.pigmentBlack 1(縮合アニリン系)、C.I.pigment Yellow 12(モノアゾ系)、C.I.pigment Yellow 23(アントラキノン系)、C.I.pigment Yellow 109(イソインドリノン系)、C.I.pigment Yellow 138(キノフタロン系)、C.I.pigment Orange 5(モノアゾ系)、C.I.Vat Orange 3(ペリノン系)、C.I.pigment Red 1(モノアゾ系)、C.I.pigment Red 37(ピラゾロンアゾ系)、C.I.pigment Red 87(チオインジゴ系)、C.I.pigment Red 224(ペリレン系)、C.I.pigment Violet 19(キナクリドン系)、C.I.pigment Violet 3(アゾメチン系)、C.I.pigment Violet 37(ジオキサジン系)、C.I.pigment Blue 15(フタロシアニン系)、C.I.pigment Green 1(アゾメチン系)等が挙げられる。
蛍光増白剤としては、C.I.Fluorescent Brightening Agent 54(ピラゾリン系)、C.I.Fluorescent Brightening Agent 86(スチルベン系)、C.I.Fluorescent Brightening Agent 91(クマリン系)、C.I.Fluorescent Brightening Agent 135(ベンゾオキサゾール系)、C.I.Fluorescent Brightening Agent 351(ビフェニル系)等が挙げられる。
着色剤の添加量は、ポリエステル100質量部に対して通常0.01質量部以上好ましくは0.03部以上、また、通常5部以下、好ましくは1部以下である。これらの着色剤は、本発明の積層体製造時のどの工程において積層体の樹脂層に含有させるようにしてもよい。例えば、ポリエステル樹脂に均一に分散させるために、着色剤を高濃度で含むマスターバッチを使用することができる。マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されないが、通常は使用する樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが好ましい。
その他、離型剤、防曇剤、有機系難燃剤などを添加剤として用いてもよい。これらはいずれも、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、また、その使用量も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。更に、これらの添加剤はいずれも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
(7)積層体の物性
<厚み>
本発明に係る積層体は、全体の厚みが300μm以下であることが好ましい。より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。一方、積層体は全体の厚みが20μm以上であることが好ましい。より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは70μm以上である。
基材層は10μm以上、300μm以下であることが好ましい。特に、本発明の積層体を袋や容器に使用する場合、紙力と剛度が必要であることから、基材層の厚さの下限は30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。一方、2次加工時に折り曲げたとき、折り部外側が破壊されにくい観点から、基材層の厚さの上限は285μmがより好ましく、250μmがさらに好ましい。
樹脂層の厚みは押出条件、特には押出機のスクリュー径とスクリュー回転数で制御することができる。最外層は5μm以上、285μm以下であることが好ましい。中でもヒートシール性、基材の隠蔽性、機械強度の観点から、最外層の厚さの下限は10μm以上がより好ましい。一方、材料コストや押出条件の制約による製造スピードの観点から、最外層の厚さの上限は250μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。
中間層は5μm以上、285μm以下であることが好ましい。中でも基材層との接着性、機械強度の観点から、最外層の厚さの下限は10μm以上がより好ましい。一方、材料コストや押出条件の制約による製造スピードの観点から、最外層の厚さの上限は200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。このような厚みとすることで、強度と柔軟性を両立させることができる。また、基材層の両面に樹脂層をラミネートする場合は、樹脂の弾性率と樹脂層の厚さを調整することで、カールを抑制したり、逆に目的のカール局率を付与したりすることができる。
<接着強度>
本発明の積層体は基材と最外層との間に中間層が設けられているので、基材と最外層との接着強度が高く、紙繊維が樹脂層に付着するほど強固であり、最終製品とした場合に最外層が剥離することがない。本発明の積層体の接着強度は、好ましくは1.27(N/15mm)以上であり、より好ましくは1.47(N/15mm)以上、最も好ましくは1.57(N/15mm)以上である。また上限値に特に制限は無いが、好ましくは2.94(N/15mm)以下である。好ましい下限値を下回ると、とても弱い力で剥離が進行し、その剥離形式も界面剥離であって接着力が弱く、積層体として実用的ではない。なお、樹脂層と紙基材間の接着強度とは、JIS Z0237(「粘着テープ・粘着シート試験方法」)に準じて剥離角度180°、剥離速度300mm/分、試験片幅15mmで剥離した時の剥離強度(N/15mm)である。
<ヒートシール強さ>
本発明の積層体はヒートシール強さが高い特徴を有し、2次加工がしやすいので高速自動包装機や自動充填機への適性がある。本発明の積層体に係るポリエステル層同士のヒートシール強さは、JIS Z0238の規定に準拠するものであり、少なくとも6N/15mm以上であり、10N/15mm以上が好ましい。一方、その上限は、50N/15mm以下が好ましく、40N/15mm以下がさらに好ましい。下限値を下回ると、とても弱い力で剥離が進行し、その剥離形式も界面剥離であって接着性不良であり、破袋するなど包装資材として実用的ではない。また上限値を上回るにはシール圧力、シール時間、シール温度を通常より高く設定する必要があり、2次加工時の生産性を低下させることがある。
ポリエステル層とクラフト紙のヒートシール強さは少なくとも4N/15mm以上であるが、その上限としては10N/15mm以下が好ましい。下限値を下回ると、とても弱い力で剥離が進行し、その剥離形式も界面剥離であって接着性不良であり、破袋するなど包装資材として実用的ではない。さらに、クラフト紙などの基材表面にコロナ処理やアンカーコート剤の塗布等の煩雑な操作が必要となることがある。また上限値を上回る場合にはシール圧力、シール時間、シール温度を通常より高く設定する必要があり、2次加工時の生産性を低下させることがある。
なお、ここで言うヒートシール強さとは、設定温度150℃、シールバー幅5mm、シール圧力0.1MPa以上、シール時間0.5秒〜1.1秒の条件で、ヒートシール試験機で樹脂層(ポリエステル層)同士、または樹脂層(ポリエステル層)とクラフト紙とを接着させ、15mm幅の短冊形状の試験片を作製し、試験片のヒートシール部を中央にして180°に開き,つかみの間隔を50mm以上とし,試験片の両端を引張試験機のつかみに取り付け,引張り速度300mm/分でヒートシール部が破断するまで引張荷重を加え,その間の最大荷重(N/15mm)を測定した時の値である。
また、上述したように、2次加工において、ポリエステル層と基材とを直接ヒートシールするのではなく、間に印刷層等のその他の樹脂層を介在させることによって、ヒートシール強さを一層向上させることもできる。この場合のヒートシール強さは、7.0〜15.0N/15mm程度である。
本発明の積層体のヒートシール発現温度は110℃以上であればよく、特に上限値は設定されない。この温度以下であると、ヒートシール時間の延長やヒートシール圧力の高圧化を必要とし、更にシール強度が得られないこともある。
<保香性>
本発明の積層体は、最外層に脂肪族ポリエステルを含むため、これを袋等の包装材料にしたときに容器内の各種臭気成分を容器内に閉じ込める(保香性)を有する積層体とすることができる。ここで、臭気成分としては低分子量のテルペン類、アンモニア等の含窒素化合物等の悪臭原因物質が挙げられる。最外層が脂肪族ポリエステルを含む層であるとき保香性が高くなる原理は、一般的に溶解度パラメータで説明されることが知られているが、それだけでは完全ではなく、結晶性などを考慮する必要があり、完全に理解されているわけではない。
一般に、積層体では、多層構造とすることやガスバリア層を設定することにより、保香性を付与することがある。本発明の積層体においては、高い保香性を有することから、ガスバリア層を省略することができ、高い保香性と高い水蒸気透過性とを両立させることができるので好ましい。なお、低い水蒸気透過が必要な用途においては、樹脂層にタルク、カオリン、スメクタイト(有機化スメクタイトを含む)を配合して樹脂層自身にガスバリア性を付与しても良い。
<水蒸気透過性>
本発明の積層体の水蒸気透過性は構成によって異なるが、基材層が紙である積層体の場合、1000g/m/24hr以上4000g/m/24hr以下である。この積層体を包装材とした時にこの上限値を上回ると、被包装材からの水分量を著しく低下させることがある。また下限値を下回る場合には通常の成形条件では達成できず、延伸処理、樹脂層の肉厚化など工程を複雑化させることがある。なお、水蒸気透過性の測定値は、JIS Z0208に記載の透湿カップ法に準拠し、樹脂層20μmの積層体を温度40℃、湿度90%RHで測定した値である。
<生分解性>
本発明の積層体の生分解性は層構成によって異なるが、基材層が紙である積層体の場合、ある特定の条件下での土壌中において、樹脂層が分解することが好ましい。本発明において、生分解性の評価は、土壌埋没後一定時間後の積層体試料を目視観察することによって行い、試料が目視で元の形状を維持していないものを「生分解性有り」と判定する。なお、樹脂層が消失して基材層が残存している状態であっても生分解性を有するものとする。積層体の用途によるが、土壌埋没時間が2週間以上5か月以内に樹脂層が消失していることが好ましい。本発明の積層体をコンポスト可能な紙容器や袋とする場合は、土壌埋設3ヵ月後に樹脂層が完全に消失していることが好ましく、土壌埋設2ヵ月後に樹脂層が完全に消失していることがさらに好ましい。
本発明において、樹脂層の樹脂組成及び樹脂の結晶性、添加剤の種類およびその配合量、印刷(特にUVニス)の有無等により積層体に所望の生分解性を付与することができる。
(8)積層体の用途等
<2次加工>
本発明で得られた積層体は各種包装資材や製袋、カップ、トレー、カートン等に2次加工が可能である。各種の加工は、従来の紙、プラスチック積層紙の場合と同じ方法、すなわち、包装資材としては三方シール自動製袋機、センターシール自動製袋機、スタンディングパウチ自動製袋機などの自動製袋機やピロー型自動充填包装機、三方シール充填包装機、四方シール充填包装機などの自動充填包装機を用いて行うことができ、製袋としては平袋、角底袋、亀の甲底袋などの各種形状に加工することができる。更に紙カップ成形機、打抜機、サック貼機、製函機等の装置を用いて加工することもできる。これらの加工機において積層体の接着方法は公知の技術で採用されるが、一般的にヒートシール法、インパルスシール法、超音波シール法、高周波シール法、ホットエアシール法、フレームシール法などが採用される。
本発明の積層体のヒートシール温度は接着法により異なるが、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用し、100〜300g/m以上の紙基材を用いた場合、ヒートシール発現温度以上であればよく、特に上限値は設定されないが、通常は250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。下限値を下回ると接着強度が不足することがある。また上限値を上回るとシール部の近傍も加熱によって樹脂が溶け出し、樹脂層の膜厚が薄肉化し、シール強度が低下することがある。
本発明の積層体のヒートシール圧力は接着法により異なるが、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、0.05MPa以上、好ましくは0.1MPa以上であればよい。上限値は0.5MPa以下、好ましくは0.45MPa以下、より好ましくは0.4MPa以下である。下限値を下回ると接着強度が不足することがある。また上限値を上回るとシールの端部の膜厚が薄肉化し、シール強度が低下することがある。
本発明の積層体のヒートシール時間は接着法により異なるが、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、0.25秒以上、好ましくは0.5秒以上であればよい。上限値は3秒以下、好ましくは2秒以下、より好ましくは1.5秒以下である。下限値を下回ると接着強度が不足することがある。また上限値を上回るとシールの端部の膜厚が薄肉化し、シール強度が低下することがある。
<具体的な用途>
本発明にかかる積層体は、加工することによって、包装容器資材、農業・土木・水産用資材などに用いられる。
包装容器資材としては、例えば、ショッピングバッグ、各種製袋、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装材、フレキシブルディスク包装材、製版用材、包装用バンド、粘着テープ、テープ、ヤーン、コップ等の液体用容器、トレー、カートン、弁当箱、惣菜用容器、食品・菓子包装材、食品用ラップ材、化粧品・香粧品用ラップ材、おむつ、生理用ナプキン、医薬品用ラップ材、製薬用包装資材、肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬用包装資材など食品、電子、医療、薬品、化粧品等の各種包装材が挙げられる。
農業・土木・水産用資材としては、例えば、農業用・園芸用フィルム、農薬品用ラップフィルム、温室用フィルム、肥料用袋、育苗ポット、防水シート、土嚢用袋、建築用フィルム、雑草防止シート、テープやヤーンからなる植生ネットなどの農業・土木・水産分野で用いられる資材が挙げられる。その他、ゴミ袋、コンポストバッグとしても用途も挙げられ、広範囲における材料として好適に使用し得る。
特に、ポリエステル層の生分解性樹脂をジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルとすると、上述のように高い保香性、吸着性を有することから、清酒、ジュース類などの液体用容器、菓子類などの内装材、包装資材として好ましい。また、悪臭成分を外界に漏らさないことから、耐水性で臭気を漏らさないごみ袋などにも好適である。更に、高い水蒸気透過性も有することから、お弁当、おにぎり等の食品の包装資材にも好適に用いられる。本発明の積層体を用いることによって、温かい食品を包装した場合に発生する水蒸気を効果的に逃がし、中身の食品類のべたつきを防止して食感を保つことができる。
<紙リサイクル>
本発明の積層体において、基材層が紙からなる積層紙を回収する際には、アルカリ溶液に積層紙を浸漬することにより、樹脂層に含まれる脂肪族ポリエステルが紙よりも早く分解されるため、解繊した紙繊維を容易に回収することができる。ポリエチレンフィルムの場合は分解しないため、フィルムと紙繊維を分別する必要がありリサイクルが困難であったが、脂肪族ポリエステルを用いた本発明の構成の積層体とすることにより、低コストに容易に紙リサイクルを行うことが可能である。なお、この際、分解を促進するため、脂肪族ポリエステルの分解を促進する酵素を作用させてもよい。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」とは、特に断り書きのない限り「質量部」を表す。また、各実施例および比較例における積層体の物性は、下記手順で測定したものである。
(1)用いた樹脂の物性測定法や樹脂の種類
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K7210に基づき、メルトインデクサーを用いて190℃、荷重2.16kgにて測定した。単位はg/10分である。
<還元粘度(ηsp/c)>
ポリエステルを濃度0.5g/dLとなるようにフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に溶解し、溶液が30℃の恒温槽中で粘度管を落下する時間t(sec)を測定した。また溶媒のみの落下する時間t(sec)を測定し30℃での還元粘度ηsp/C(=(t−t)/t・C)を算出した(Cは溶液の濃度)。
H−NMR>
試料約30mgを外径5mmのNMR試料管にはかり取り、重クロロホルム0.75mLに加えて溶かした。これについて、Bruker社製AVANCE400核磁気共鳴装置を用い、室温でH−NMRスペクトルを測定した。化学シフトの基準は、テトラメチルシラン(TMS)を0.00ppmとした。各ポリマーの構成比を算出した。
<酸価>
試料0.5gを精秤し、ベンジルアルコール25mLが入った試験管に入れ、195℃の加熱浴で9分間加熱し、試料を溶解させた。試料が完全に溶解したことを確認し、氷水中で30秒〜40秒冷却した後、エチルアルコール2mLを加えた。試料溶液中にpH電極を入れ、攪拌しながら、0.01N水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液(10%メタノール含有)を用い、電位差滴定による中和滴定を行い、測定滴定値A(mL)を得た。ここで、測定装置として、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製オートタイトレーターAUT−50)を用いた。
一方、試料が溶解されていないブランクサンプルを調製し、上記方法と同様に滴定を実施し、ブランク測定値B(mL)を得た。
上記滴定結果より、前記式(VI)を用いてAV値(μeq/g)を計算した。
<使用樹脂>
実施例及び比較例にて使用した樹脂の詳細は表1の通りである(以下、商品名の「GS Pla」を省略して表記することがある)。
Figure 2013226832
尚、上記のポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)は、特開2001−026641号公報の実施例1に記載の方法により合成したものである。
<溶融膜の樹脂温度>
(2)溶融樹脂状態および加工時の離ロール性の評価法
成形時の吐出量にて、熱電対温度計で各場所(ダイスのヒートブロックごと)のポリエステル層に係る樹脂温度を測定した。
(3)積層体の評価法
<溶融膜の外観および安定性>
◎(優秀):溶融膜は透明または半透明であり、FE(フィッシュアイ)や異物、気泡がない正常な状態である。またレゾナンスも極めて少ない。
○(良好):溶融膜は透明または半透明であり、FE(フィッシュアイ)や異物、気泡が少しあるが、成形に問題ないレベルでレゾナンスも許容される範囲内である。
△(可):溶融膜はFE(フィッシュアイ)や異物が少ない状態であり、不透明感がある状態。またレゾナンスも悪い。
×(不可):溶融膜がFE(フィッシュアイ)や異物が多いもしくは、気泡が多く膜割れが多発し、運転できない状態である。
<発煙および臭気>
ダイス出口からの発煙の状態と臭気の官能試験を実施した。評価基準は下記の通りとした。
◎(優秀):発煙がほとんどなく、鼻や目につく刺激臭がない。
○(良好):発煙が多少あり、鼻や目につく刺激臭が多少あるが、作業上問題にならないレベル。
△(可):発煙が多少あり、鼻や目につく刺激臭があり、作業がやや困難。
×(不可):発煙が多く、鼻や目につく刺激臭があり、成形できない。
<離ロール性>
冷却ロール表面から積層体が離れる際のロールへの張り付き具合を観測した。評価基準は下記の通りとした。
◎(優秀):50m/min以上で成形した場合、積層体が冷却ロールから剥離音なく剥れ、積層体の最外層表面が綺麗である状態。
○(良好):50m/min以上で成形した場合、積層体の剥離音が大きく、積層体の最外層表面に曇りがある状態。
△(可):50m/min以下で成形した場合でも、積層体が冷却ロールから少し離れ難くなっており、積層体の最外層表面に糸引きが見られたり、基材とポリエステル層との接着が破壊されたり、冷却ロールから断続的に剥離して積層体に横筋が入ったりする状態。
×(不可):積層体が冷却ロールから剥がれず、基材が切断され、運転ができない状態。
(4)積層体の物性評価法
<基材/樹脂間の接着性>
樹脂層と紙基材間の接着強度を、剥離角度180°、剥離速度300mm/分、試験片幅15mmで剥離した時の剥離強度(N/15mm)で示し、また樹脂層と紙の剥離の様子を観察した。状態の評価基準は下記の通りとした。
繊維剥け:積層体全面にわたって紙の凝集破壊が観測され、界面剥離せず、樹脂層と基材層との接着強度が十分である状態。
一部繊維剥け:紙の凝集破壊が不均一に観測され、積層体の一部が界面で剥離する状態。
界面剥離:紙が凝集破壊せず、界面で剥離し、樹脂層と基材層との接着強度が弱い状態。
接着性不良:紙と樹脂との間に接着強度がほとんどない状態。
<厚みムラ>
得られた積層体の端部より30mm以内における平均厚みに対する中央部平均厚みの比(中央部最大厚み/端部最大厚み×100)を数値化して評価した。数値が100に近いほど厚みムラが少ない。それぞれの平均厚みの数値は5点の測定値を平均化した値である。
<打ち抜き性>
打ち抜き性は2穴パンチ(鑽孔能力:64g/mコピー用紙16枚)を使用し、打ち抜き試験を実施した。ラミ面にパンチの刃があたるように打ち抜きを実施し、測定回数を10回とした。打ち抜きの状態を総合的に判断する。
◎(優秀):押し切り刃により綺麗に切れる。
○(良好):押し切り刃により少し糸引きが出る程度である。
△(可):押し切り刃により糸引きが出ており、周囲から分離できていないものが10個中5個以下である。
×(不可):押し切り刃で周囲から分離できないものが10個中5個以上ある。
<生分解性>
得られた積層体の生分解性評価を実施した。評価方法はポリエチレン製の容器に20%の水分量を有する土を入れ、積層体を2号ダンベル形状に打ち抜いたサンプルを並べ、約1cmの高さの土をかぶせ、50℃90%RHの恒温恒湿機に保管し経時変化を確認した。状態の評価基準は下記の通りとした。
◎(優秀):土壌埋設後2ヶ月で樹脂層が完全に消失している状態。
○(良好):土壌埋設後2ヶ月で樹脂層がほぼ消失している状態。
△(可):土壌埋設後2ヶ月後経過で樹脂層の形状が残っている状態であるが3ヶ月後では樹脂層が消滅している状態。
×(不可):土壌埋設後3ヶ月経過後において樹脂層の形状が残っている状態。
(5)積層体の製造および評価結果
(実施例1)
2種2層の積層が可能なラミネート成型機(ダイス幅500mm、スクリュウ径Φ40mmの単軸押出機 2台、コンバインニングアダプター(2層2種)、3本ロール型のラミネータ部を有する)を使用し、基材としてカップ原紙(250g/m)を使用した。
中間層の樹脂として脂肪族芳香族ポリエステル(1)(エコフレックス:100質量部)を使用した。中間層の押出条件は、押出機シリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)230℃、C2(ダイス側温度)270℃、ダイス部樹脂温度(端250℃、中央部260℃、端250℃)に設定した。中間層内に含有されるポリエステルのジカルボン酸に由来する構造単位全体を100モル%としたとき、テレフタル酸に由来する構造単位(以下、「構造単位(1)と称する」の割合は23.2モル%であった。
最外層の樹脂として脂肪族ポリエステル(1)(FZ91PD:98質量部)と酸化防止剤マスターバッチ(以下、「酸化防止剤MB」と称する)(FZ81AN-MB:2質量部)とをドライブレンドして使用した。最外層の押出条件は、シリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)230℃、C2(ダイス側温度)270℃、ダイス部樹脂温度を両端250℃、中央部260℃に設定して溶融膜の温度および吐出状態が安定後、樹脂温度を測定した。ダイス両端の樹脂温度は225℃、中央部直下の樹脂温度は240℃であった。
樹脂層の溶融膜状態は透明で、異物、気泡はなく、押出機の吐出安定性も優れ、溶融膜のレゾナンスも少なかった。溶融膜の外観と安定性の評価は優秀(◎)であった。また、発煙が多少あり、鼻や目につく刺激臭があったので、発煙及び臭気の評価は可(△)であった。
基材としてカップ原紙(250g/m、ノンラミタイプ)を低速から繰り出し、平衡水分量のままで加工時の速度100m/分で運転し、これに繰り出し速度および押出機回転数、ダイス温度(両端部、中央部)を微調整しながら膜厚25μm(操作側:27μm、中央:24μm、駆動側:28μm)となるように樹脂の溶融膜(樹脂層)を積層することによって積層体を得た。樹脂層の厚み比率が中間層/最外層=2/8の比率になるように各押出機の吐出を調整した。エアギャップ(ダイス出口からフィルム膜が冷却ロールに接するまでの距離)を120mmとし、冷却ロールは、硬質クロムメッキ処理加工を施したセミマットロールを使用し、冷却温度を20℃、ラミネート直後のニップロール圧を0.4MPaに設定した。
ラミネート成形時は、加工速度100m/分で剥離音なく安定的に加工でき、冷却ロールからの離ロール性評価は優秀(◎)であった。
得られた積層体を23℃、50%RHの恒温室に2日間静置後、積層体の評価を行った。
樹脂と基材層(紙)との接着性の評価は、接着強度が1.64N/15mm、界面剥離がなく、紙層内部の凝集破壊が積層体の端から中央部まで均一に観測されたので、剥離状態は「繊維剥け」であり、接着性は高いレベルであった。
また、積層体の厚みムラは93%でムラが少なく良好であった。打ち抜き性は、押切り刃によって打ち抜かれた小片が周囲から分離できないものがあり、評価は可(△)であった。
生分解性は、土壌埋設後2ヶ月後の状態を見ると、ポリエステル層の最外層の形状がほぼ残っていたが、ポリエステル層の最外層の形状紙とポリエステル層が分離しており、これは中間層の分解が進行したものと考えられる。3ヶ月後の状態では、すべてのポリエステルが消失しており、生分解性を有することを確認した。生分解性速度の評価は可(△)であった。
層構成、溶融樹脂状態および加工時の離ロール性の評価、積層体の物性評価結果を表2に示す。
(実施例2)
実施例1において中間層の樹脂を脂肪族ポリエステル(1)(エコフレックス:100質量部)から、脂肪族ポリエステル(2)(PBST:100質量部)に変更した以外は実施例1と同様にしてラミネート成形を実施した。構造単位(1)の割合は25モル%であった。ダイス両端の樹脂温度は225℃、中央部直下の樹脂温度は240℃であった。
樹脂層の溶融膜の外観と安定性は実施例1と同様で、評価は優秀(◎)であった。
また、発煙はほとんどなく、鼻や目につく刺激臭もなく、発煙および臭気評価は◎であった。
ラミネート成形時の離ロール性は、実施例1と同様に優秀(◎)であった。
得られた積層体について実施例1と同様にして評価を行った。樹脂と基材層(紙)との接着性は、接着強度が1.37N/15mm、剥離状態が「繊維剥け」で、実施例1に比べ低下したが、許容レベルであった。
また、積層体の厚みムラは93%で、実施例1と同様にムラが少なく良好であった。
打ち抜き性は、実施例1と同様で、評価は可(△)であった。
生分解性は評価開始から2ヶ月後の状態を見るとポリエステル層がほぼ分解して紙が残った状態で、実施例1より生分解性が高く、評価は良好(○)であった。
層構成、溶融樹脂状態および加工時の離ロール性の評価、積層体の物性評価結果を表2に示す。
(比較例1)
実施例1において、中間層の樹脂を脂肪族芳香族ポリエステル(1)(エコフレックス:100質量部)から、脂肪族芳香族ポリエステル(1)(エコフレックス:50質量部)と脂肪族ポリエステル(1)(FZ91PD:50質量部)とのドライブレンド品に変更した以外は実施例1と同様にラミネート成形を実施した。構造単位(1)の割合は11.6モル%であった。ダイス両端の樹脂温度は225℃、中央部直下の樹脂温度は240℃であった。
樹脂層の溶融膜状態は透明で、異物、気泡はなく、押出機の吐出安定性も優れていたが、溶融膜のレゾナンスが少し悪かった。溶融膜の外観と安定性は、実施例1より若干低下するが、評価は良好(○)であった。
また、発煙及び臭気は実施例1と同様で、その評価は可(△)であった。
ラミネート成形時は、100m/分で成形した場合、冷却ロールから剥離音がしたため離ロール性が実施例1より劣り、その評価は良好(○)であった。
得られた積層体について実施例1と同様にして評価を行った。樹脂と基材層(紙)との接着性は、接着強度が0.3N/15mmで、力を加えなくても基材層から樹脂層が剥がれる状態であり、剥離状態は「接着性不良」であった。また、積層体の厚みムラは90%で、実施例1同様にムラが少なく良好であった。
打ち抜き性は、実施例1と同等で、評価は可(△)であった。
生分解性は、土壌埋設後2ヶ月後の状態を見ると、ポリエステル層の形状がほぼ残っていた。4ヶ月後の状態でも、ポリエステル層の形状が一部残っていた。生分解性は実施例1より劣り、その評価は不可(×)であった。
層構成、溶融樹脂状態および加工時の離ロール性の評価、積層体の物性評価結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1において、中間層の樹脂を脂肪族芳香族ポリエステル(1)(エコフレックス:100質量部)から、脂肪族芳香族ポリエステル(1)(エコフレックス:80質量部)と芳香族ポリエステル(1)(ノバデュラン5010:20質量部)とのドライブレンド品に変更した以外は実施例1と同様にラミネート成形を実施した。構造単位(1)の割合は38.6モル%であった。ダイス両端の樹脂温度は225℃、中央部直下の樹脂温度は240℃であった。
樹脂層の溶融膜状態は半透明で、異物、気泡は少ないが、溶融膜のレゾナンスは悪く、実施例1より劣っていた。溶融膜の外観と安定性の評価は可(△)であった。
また、発煙があり、鼻や目につく臭気はかなり多く不良であり、評価は不可(×)であった。
ラミネート成形は、加工速度が50m/分でも冷却ロールから不連続に剥離して離ロール性は著しく悪く、加工速度が10m/分で安定したので、連続生産性が悪く、離ロール性の評価は可(△)であった。
得られた積層体について実施例1と同様にして評価を行った。樹脂と基材層(紙)との接着性は、比較例1と同様で、接着強度が0.2N/15mmで、力を加えなくても基材層から樹脂層が剥がれる状態であり、剥離状態は「接着性不良」であった。また、積層体の厚みムラは85%で、実施例1よりムラが多く可レベルであった。
打ち抜き性は、実施例1と同等で、評価は可(△)であった。
生分解性は、比較例1と同様で、評価は不可(×)であった。
層構成、溶融樹脂状態および加工時の離ロール性の評価、積層体の物性評価結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1において最外層の樹脂を脂肪族芳香族ポリエステル(1)(エコフレックス:100質量部)から、中間層と同一の脂肪族芳香族ポリエステル(1)(エコフレックス:100質量部)に変更した以外は実施例1と同様にラミネート成形を実施した。ダイス両端の樹脂温度は225℃、中央部直下の樹脂温度は240℃であった。
樹脂層の溶融膜の外観と安定性は実施例1と同様であり、評価は優秀(◎)であった。
また、発煙があり、鼻や目につく臭気はかなり多く不良であり、発煙及び臭気の評価は不可(×)であった。
ラミネート成形時の離ロール性は著しく悪く、全く成型することができず、評価は不可(×)であった。
層構成、溶融樹脂状態および加工時の離ロール性の評価結果を表2に示す。
Figure 2013226832
以上の通り、中間層に、最外層に含まれる脂肪族ポリエステルとは異なるポリエステルを含ませ、かつ、中間層に含まれるポリエステルにおいて、ジカルボン酸に由来する構造単位全体を100モル%とした場合、テレフタル酸に由来する構造単位が20モル%以上30モル%以下となるように構成することで、生分解性を有し、加工性に優れるとともに、ポリエステル系樹脂層と基材層との接着性が向上された積層体とすることができた。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う積層体、袋および液体用容器もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

Claims (8)

  1. 植物由来成分を含む基材層と、脂肪族ポリエステルを含む最外層と、前記基材層および前記最外層の間に存在する最外層とは異なる中間層とを有する積層体であって、該中間層がポリエステルを含有するものであり、該中間層内に含有されるポリエステルのジカルボン酸に由来する構造単位全体に対するテレフタル酸に由来する構造単位の割合が、20モル%以上30モル%以下であることを特徴とする積層体。
  2. 前記植物由来成分が植物由来成分が植物由来成分を含む繊維または植物由来成分を含むフィルムである、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記最外層に含まれる前記脂肪族ポリエステルが、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重合してなるものである、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記中間層に含まれる前記ポリエステルが、ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重合してなるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 厚さが300μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記最外層に含まれる前記脂肪族ポリエステルにおいて、ジカルボン酸に由来する構造単位全体に対するテレフタル酸に由来する構造単位の割合が20モル%未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体が少なくとも一部に使用された袋。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体が少なくとも一部に使用された液体用容器。
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