JP2013226585A - 溶接構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アーク溶接後に耐食性を高めるために塗装が施される低炭素鋼からなる溶接構造体を、アーク溶接部の電着塗装後の耐食性および疲労強度を向上しながら、製造する。
【解決手段】溶接構造体を構成する低炭素鋼からなる複数の部品をアーク溶接により接合し、少なくともアーク溶接部にショットブラスト処理による塑性歪を与えた後に、化成処理および電着塗装を行うことにより、低炭素鋼からなる溶接構造体を製造する。
【選択図】図2

Description

本発明は、溶接構造体の製造方法に関し、例えば、耐食性の向上のために溶接後に電着塗装を施される低炭素鋼からなる溶接構造体である部品の製造、特に自動車のシャシー部品の製造に際して、溶接部の電着塗装後の耐食性および疲労強度を高めることができる溶接構造体の製造方法に関する。
低炭素鋼の溶接施工に用いられるガスシールドメタルアーク溶接法(以下、「アーク溶接法」と略記する)は、一般的には、CO単独のシールドガス中、あるいはArに20体積%程度のCOを混合したシールドガス中で溶接を行う消耗電極式のアーク溶接法(MAG溶接)であり、自動車,建築鋼材,電気機器等の製造分野で幅広く用いられる。
自動車の部品のように、低炭素鋼を素材とし、かつ耐食性が要求される溶接構造体である部品は、溶接による組立の後に化成処理および電着塗装が施される。しかし、電着塗装を施しても長期間の使用中には溶接部を起点として腐食が発生する。
電着塗装後の腐食は、溶接ビードおよび溶接ビードの止端部を起点として発生し、溶接ビードおよび止端部の周囲の熱影響部の広い範囲にわたって深く進行する。特に、使用中に溶接部が繰り返し応力を受ける溶接構造物の場合には、この腐食による肉厚減少が溶接構造物の早期の破壊原因になるおそれがある。例えば、エンジンクレードル,アクスルビーム,ロアアーム,アッパーアーム等の自動車のシャシー部品は、高い疲労強度信頼性を要求されるため、肉厚減少は重大かつ致命的な問題になる。このため、これまでこれらのシャシー部品は、使用中の腐食による肉厚減少代を見込んで厚めに設計されてきた。
近年、引張強度1500MPa級の熱間プレス材をはじめとする高張力鋼板を適用することによってシャシー部品の薄肉化による軽量化を図ることが検討されている。しかし、鋼板を高強度化してもアーク溶接継手の疲労強度は殆ど上昇しないため、シャシー部品を薄肉化すると溶接部の疲労強度が低下する。このように、溶接部の高い疲労強度信頼性を要求される部品では、高張力鋼板の適用による薄肉化を図ることが難しく、アーク溶接部における電着塗装後の耐食性および疲労強度の不足は、自動車のシャシー部品の軽量化を阻害する大きな要因となっていた。
これまでにも、耐食性の改善手段として亜鉛めっき鋼板の適用が検討されており、一部の部品では実際に適用されており、これにより、亜鉛めっきの犠牲防食作用によってアーク溶接時に熱の影響を受けていない母材部では、腐食の進展を効果的に抑制することが可能である。
しかし、アーク溶接部では熱の影響により亜鉛が減少しているため、亜鉛めっき鋼板を用いるだけではアーク溶接部の腐食抑制効果は必ずしも充分ではない。また、単に亜鉛めっき鋼板を用いると、ブローホール,ピットといった溶接欠陥が増加し、溶接継手の疲労強度信頼性がむしろ低下することすらある。
特許文献1には、シールドガスが不活性ガスを主体とし、酸化性ガスとしてCOおよびOの一方または双方を含み、酸化性ガス量が−0.5X+0.5≦Y≦−0.5X+2(ただし、XはCO量(体積%(≧0))であり、YはO量(体積%(≧0))を満足し、パルス電流を用いることにより、シールドガスの酸化性ガスを減らし、酸素とSi,Mnの化合物であるスラグの発生を抑制することによって塗装欠陥を低減し、アーク溶接部およびその近傍の電着塗装後の耐食性を向上する方法が開示されている。
特許文献2には、母材と溶接ワイヤの合計Si量が0.04〜0.2質量%となり、かつ、母材と溶接ワイヤの合計Mn量が0.5質量%以上となる溶接ワイヤを用いることにより耐食性低下の原因となる溶接欠陥を防止して、アーク溶接部およびその近傍の電着塗装後の耐食性を向上する方法が開示されている。この方法も、特許文献1により開示された方法と同様に、電着塗装後の耐食性の低下の原因となるスラグの発生を抑制するという技術思想に基づくものであり、溶接ワイヤ中のSi,Mn側を減らすことにより、スラグの発生を抑制する。
さらに、特許文献3には、アーク溶接部及びその近傍を塗装前に、pHが2以下,液温が30〜90℃の非酸化性酸を用い、処理時間tが10〜180秒の範囲内で、かつ{1800/(T−30×pH)}−30≦t≦{1800/(T−30×pH)}+30の関係を満足するようにスプレー処理または浸漬処理を施すことにより、アーク溶接部およびその近傍の塗装後耐食性を高める方法が開示されている。符号Tは処理液の温度(℃)であり、pHは処理液のpHである。
特開平8−33982号公報 特開平8−33997号公報 特開平9−20994号公報
特許文献1により開示された方法には、O,CO等の酸化性ガスが少ないとアークが集中せず、ビードの蛇行や溶け込み不良による溶接不良が発生し易いという課題がある。また、酸化性ガスを減らしただけではアーク溶接部の疲労強度信頼性を向上する効果は殆どない。
特許文献2により開示された方法には、脱酸元素が少ないと、溶接金属の酸素が脱酸されず、酸素と溶接金属中の炭素が結び付きCOガスのブローホールが発生するという課題がある。このため、高い疲労強度信頼性が必要とされるシャシー部品への適用は困難である。加えて、高張力鋼板では母材がSi,Mnを多量に含有するため、母材のSi,Mnの影響でスラグが発生し、塗装後耐食性が低下するのみならず、アーク溶接部の疲労強度を向上する効果は殆ど認められない。
さらに、特許文献3により開示される非酸化性酸での処理では、スラグは必ずしも充分には除去できない。加えて、鋼板の重ね面に非酸化性酸が残存すると重ね面に錆が発生し易くなる。また、1200MPa級以上の超高張力鋼板への適用では、鋼板のシャー切断端面に微細な遅れ破壊が発生し、疲労亀裂の起点となるとともに、アーク溶接部の疲労特性を向上する効果は殆ど認められない。
以上のように、構造体を構成する低炭素鋼からなる複数の部品をアーク溶接により接合して製造される溶接構造体におけるアーク溶接部の電着塗装後の耐食性および疲労特性を効果的に改善する有効な技術は、現在まで確立されていないのが実情である。
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、アーク溶接後に耐食性を高めるために塗装が施される低炭素鋼からなる溶接構造体を、アーク溶接部の電着塗装後の耐食性および疲労強度を向上しながら、製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、自動車のシャシー部品を例にとって、アーク溶接部の電着塗装後の耐食性と疲労特性をいずれも向上させる方法を鋭意検討した結果、アーク溶接部に、化成処理および電着塗装前に、特定の条件でショットブラスト処理により塑性歪を加えれば、アーク溶接部の電着塗装後の耐食性を向上でき、さらに疲労強度も飛躍的に向上できるという新規な知見を得て、本発明を完成した。
本発明は、以下に列記の通りである。
(1)溶接構造体を構成する低炭素鋼からなる複数の部品をアーク溶接により接合し、少なくともアーク溶接部、例えばアーク溶接部及びその近傍に、ショットブラスト処理による塑性歪を与えた後に、化成処理および電着塗装を行うことを特徴とする低炭素鋼からなる溶接構造体の製造方法。
(2)前記ショットブラスト処理の条件がアルメンストリップAでのアークハイト0.05〜0.25mmであることを特徴とする(1)項に記載された溶接構造体の製造方法。
(3)前記ショットブラスト処理に用いられるショット材は、平均直径0.1〜0.7mmの球状材であることを特徴とする(1)項または(2)項に記載された溶接構造体の製造方法。
(4)前記ショットブラスト処理に用いられるショット材は、セラミック製の球状材であることを特徴とする(1)項から(3)項までのいずれか1項に記載された溶接構造体の製造方法。
(5)前記低炭素鋼からなる複数の部品は、合金化溶融亜鉛めっき層もしくは鉄亜鉛固溶層で表面が覆われた熱間プレス鋼板からなり、かつ、前記ショットブラスト処理後にも該合金化溶融亜鉛めっき層もしくは鉄亜鉛固溶層が残存することを特徴とする(1)項から(4)項までのいずれか1項に記載された溶接構造体の製造方法。
(6)前記ショットブラスト処理された後における溶接ビード止端部のビードの長さ方向に直行する方向への残留応力が300〜680MPaの圧縮応力であることを特徴とする(1)項から(5)項までのいずれか1項に記載された溶接構造体の製造方法。
(7)前記溶接構造体は、自動車のサブフレーム,アクスルビーム,ロアアームまたはアッパーアームであることを特徴とする(1)項から(6)項までのいずれか1項に記載された溶接構造体の製造方法。
本発明における「アーク溶接部」には、溶接ビードおよび熱影響部が含まれる。また、本発明における「ショットブラスト処理」はこのアーク溶接部に行われるが、アーク溶接部のみに限定されるものではなく、必要に応じてアーク溶接部以外の母材部(例えばアーク溶接部の近傍や、疲労亀裂の発生が想定される部位等)にもショットブラスト処理を行ってもよい。
本発明により、アーク溶接後に耐食性を高めるために塗装が施される低炭素鋼からなる溶接構造体を、アーク溶接部の電着塗装後の耐食性および疲労強度を向上しながら、製造することができるようになる。
図1(a)および図1(b)は、アーク溶接部の化成処理皮膜の生成状況を示す顕微鏡写真であり、図1(a)は微細な歪を付与せずに化成処理を行って得られた化成処理皮膜を示し、図1(b)は微細な歪を付与した後に化成処理を行って得られた化成処理皮膜を示す。 図2は、アルメンストリップAを示す説明図である。 図3は、アークハイトを示す説明図である。 図4(a)〜図4(f)は、本発明に係るリアアクスルビームの製造方法を簡略化して示す説明図である。 図5は、ショットブラスト処理および塗装を行われたリアアクスルビームにおける、中間ビームとアームとのアーク溶接部を示す説明図である。 図6は、マルチリンク式サスペンションのリアサブフレームの一例を示す説明図である。 図7(a)はMAG溶接ビード止端部のショットブラスト処理前を示す断面SEM写真であり、図7(b)はMAG溶接ビード止端部のショットブラスト処理後を示す断面SEM写真であり、図7(c)はアーク溶接部から5mm離れた母材側のショットブラスト処理前を示す断面SEM写真であり、さらに、図7(d)はアーク溶接部から5mm離れた母材側のショットブラスト処理後を示す断面SEM写真である。 図8(a)は、ショットブラスト処理されたアーク溶接部の塗装後の外観例を示す写真であり、図8(b)はアーク溶接部の断面例を示す写真である。 図9は、ロアアームの一例を示す説明図である。 図10(a)はMAG溶接ビード止端部のショットブラスト処理前を示す断面SEM写真であり、図10(b)はMAG溶接ビード止端部のショットブラスト処理後を示す断面SEM写真であり、図10(c)はアーク溶接部近傍の母材のショットブラスト処理前を示す断面SEM写真であり、さらに、図10(d)はアーク溶接部近傍の母材のショットブラスト処理後を示す断面SEM写真である。 図11(a)〜図11(h)は、ショットブラスト処理を行わない場合の溶接ビードの外観と、ショットブラスト処理を行った場合の溶接ビードの外観を示す写真であり、図11(a)は供試験JSH440のショットブラスト処理を行わない場合(試料A)を示し、図11(b)はマークJSH440のショットブラスト処理を行った場合(試料E,I〜K)を示し、図11(c)はマークJAC440のショットブラスト処理を行わない場合(試料B)を示し、図11(d)はマークJAC440のショットブラスト処理を行った場合(試料F,L〜O)を示し、図11(e)はマークSQのショットブラスト処理を行わない場合(試料C)を示し、図11(f)はマークSQ(試料G,P)のショットブラスト処理を行った場合を示し、図11(g)はマークSQZのショットブラスト処理を行わない場合(試料D)を示し、さらに、図11(h)はマークSQZのショットブラスト処理を行った場合(試料H,Q)を示す。 図12(a)は試料A(供試材JSH440,未ショットブラスト処理)のJASO360サイクル後の電着塗膜を示す写真であり、図12(b)は試料A(供試材JSH440,未ショットブラスト処理)のJASO360サイクル後の電着塗膜を除去した状態を示す写真であり、図12(c)は試料E(供試材JSH440,ショットブラスト処理)のJASO360サイクル後の電着塗膜を示す写真であり、図12(d)は試料E(供試材JSH440,ショットブラスト処理)のJASO360サイクル後の電着塗膜を除去した状態を示す写真である。 図13は、ショットブラスト装置によるショットブラスト処理の様子を示す説明図である。 図14は、試料E(本発明例)および試料C(比較例)の疲労強度の結果を示すグラフである。 図15(a)は疲労亀裂位置を示す写真であり、図15(b)は残留応力測定位置を示す写真である。
以下、本発明を、添付図面を参照しながら説明する。以降の説明では、特に断りがない限り、化学組成に関する「%」は「質量%」を意味する。
1.本発明に係る溶接構造体の製造方法の概要
本発明は、広義には、低炭素鋼からなる溶接構造体の製造方法であり、具体的には、溶接構造体を構成する低炭素鋼からなる複数の部品をアーク溶接により接合し、少なくともアーク溶接部(例えば、アーク溶接部及びその近傍)にショットブラスト処理による塑性歪を与えた後に、化成処理および電着塗装を行うことにより、アーク溶接部の電着塗装後の耐食性および疲労特性が著しく改善された低炭素鋼からなる溶接構造体を製造できるというものである。
低炭素鋼の化学成分としては、C:0.001〜0.35%,Si:2.5%以下,Mn:0.1〜3.5%,P:0.12%以下,S:0.02%以下を含有するとともに、任意添加元素としてCr,Mo,Ti,Nb,Mo等を微量含有し、残部がFeおよび不純物であることが例示される。引張強度は、270〜1900MPaであることが例示される。
アーク溶接を行うと、アーク溶接部およびその周辺には金属酸化物であるスラグや、金属微粒子のヒュームが付着する。これらの付着物は塗装欠陥の原因になるため、これらの付着物を除去することにより電着塗装後の耐食性が改善されるが、これだけでは必ずしも十分な耐食性が得られないことが判明した。
本発明者らは鋭意検討した結果、少なくともアーク溶接部の低炭素鋼の表面に微細な歪を付与することにより、電着塗装前に形成される化成処理皮膜の生成が促進されて化成処理皮膜の密着性が著しく向上し、これにより、電着塗膜の密着性も向上し、結果的に著しく耐食性が向上することを知見した。
図1(a)および図1(b)は、アーク溶接部の化成処理皮膜の生成状況を示す顕微鏡写真であり、図1(a)は微細な歪を付与せずに化成処理を行って得られた化成処理皮膜を示し、図1(b)は微細な歪を付与した後に化成処理を行って得られた化成処理皮膜を示す。
図1(a)および図1(b)に示すように、アーク溶接部の近傍の低炭素鋼の表面に微細な歪を付与してから化成処理を行うと、微細な歪を付与しない場合に比較して、化成処理皮膜がより緻密に生成することが分かる。
本発明は、この知見に基づくものであり、少なくともアーク溶接部に付着するスラグおよびヒュームを除去しながら表面に歪を付与する方法として、ショットブラスト処理を用いる。
2.ショットブラスト処理,アーク溶接
ショットブラスト処理は、細かい砂や、鋼製,鋳鉄製等の粒子を金属材の表面に吹き付けて表面を仕上げる加工法である。これまでにも実施されてきた、金属ブラシ,タガネ,グラインダー等によるスラグの除去に比較すると、ショットブラストは、スラグ,ヒュームの除去に効果的であるだけでなく、アーク溶接部の近傍の低炭素鋼の表面に歪を付与できる。
また、ショットブラスト処理により圧縮の残留応力を付与することができるので、アーク溶接部の耐食性を改善できるだけでなく、疲労強度をも著しく向上できる。
アーク溶接は、消耗電極式のアーク溶接方法として、シールドガスに炭酸ガスを用いる炭酸ガスアーク溶接法と、アルゴン,約20%の炭酸ガスおよび必要に応じて6体積%未満の酸素を用いるMAG溶接法が挙げられる。本発明におけるアーク溶接法として、好ましくはビード形状が滑らかなMAG溶接法であり、さらに好適には、パルス電流で溶接するパルスマグ溶接法,もしくはCMT(Cold Metal transfer)溶接法である。これらの溶接法によれば、スパッタの発生が少なく、ビードの外観が改善されるからである。
アーク溶接のワイヤは、特に制限されないが、例えば、JIS YGW 11,12,13,14,15,16,17に規定されるワイヤを使用することが好ましい。
図2は、アルメンストリップAを示す説明図であり、図3は、アークハイトを示す説明図である。
図2に示すアルメンストリップAは、JIS G 3311(みがき特殊鋼帯)SK−85からなり、焼入れ、焼戻し後の硬度はHRC(ロックウェル)46〜50である。ショットブラスト処理の条件は、部品にショットブラスト処理を行う場合と同じ条件でアルメンストリップAにショットブラスト処理を行い、ショットブラスト処理後のアルメンストリップAのアークハイトにより規定する。
「アークハイト」とは、ショットブラスト処理(ショットピーニング)の加工状況を表す指標として広く用いられるものであり、図3に示すように、アルメンストリップの片面を投射面としてショットブラスト処理することにより生じる湾曲量(一定の弧長に対するキャンバ)を意味する。アルメンストリップAだけでなく、アルメンストリップN,アルメンストリップCを用い、それぞれのアルメンストリップN,Cでのアークハイトを、アルメンストリップAでのアークハイトに換算して使用してもよい。
アークハイトが0.05mm未満では、スラグが充分には除去できず一部残存するとともに疲労強度の向上も不十分になるおそれがある。一方、アークハイトが0.25mm超では、部品の変形が大きくなり、部品の寸法精度の低下が問題となるおそれがある。このため、アークハイトは0.05mm以上0.25mm以下であることが好ましい。溶接構造体を構成する低炭素鋼からなる部品である母材のめっきの有無,溶接方法,ワイヤの種類等を勘案して、アークハイトを0.05mm以上0.25mm以下の範囲でショットブラスト処理の条件を適宜調整すればよい。
ショット材は、硬質なショット材の場合、球状の平均直径0.1mm以上0.7mm以下のショット材を用いることが好ましい。硬質なショット材を用いる場合、鋭利な突起を有するグリッド状のショットでは、部品の表面に傷を付け、この傷は電着塗装時の膜厚不均一の原因になって電着塗装後の耐食性を低下させる。特に、亜鉛系めっき鋼板への適用では、表面処理された皮膜を破壊し、アーク溶接部の近傍の犠牲防食性を劣化させる。
これに対して、ショット材が球状である場合、ショット材が衝突した衝突部は浅いディンプル状となるために、適切なショットブラスト処理によりめっき層の化成処理皮膜の生成および密着性をいずれも向上できる。このため、球状のショット材を用いることが好ましい。
ショット材の寸法は、平均直径:0.1mm未満の場合、ショット材のエネルギーが小さく、耐食性の向上効果を得るために処理時間が長時間化し能率的でない。一方、平均直径0.7mmを越えると、溶接ビードの止端部にショット材が衝突せず、止端部の耐食性が十分には向上しない。このため、ショット材の平均直径は0.1mm以上0.7mm以下であることが好ましい。ショット材の寸法は、より好適には平均直径0.2〜0.4mmである。なお、平均直径とは、ショット材の寸法の分布の平均値を意味する。
ショット材の材質は、コストの観点では安価なスチール製でもよいが、対象物によっては材質を規定することが好ましい。自動車のシャシー部品のアーク溶接部では、これまでショットブラスト処理がなされていなかった。この理由の1つとして、ショットブラスト処理することによりむしろ錆が発生するおそれがあったためである。つまり、重ねの隙間を有する部品にショットブラスト処理を行うとショット材がショットブラスト処理後にも隙間に残存し、残存したショット材が腐食し、これにより、母材も腐食するおそれがあるためである。このため、ショット材が溶接部の重ね面に残存することが避けられない構造を有する部品の場合には、非金属製、例えばセラミック球からなるショット材を用いることが好ましい。セラミック球からなるショット材は、部品の重ね面に残存しても錆の発生の起点にならないためである。また、セラミック球の材質としてはジルコンがより好適である。ジルコンは硬質で靭性が高く、ショット時に粉砕され難く球状を維持するためである。
3.被ショットブラスト処理材
本発明により溶接構造体を構成する低炭素鋼からなる複数の部品としては、熱間圧延または冷間圧延された非めっきの低炭素鋼板からなる成形体が挙げられる。より好適には、犠牲防食作用を付与できる合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる成形体と、鉄亜鉛固溶相で覆われた熱間プレス用鋼板からなる成形体が挙げられる。特に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる成形体は、従来ショットブラスト処理はなされていない。これは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき密着性が低く、ショットブラスト処理を行うとめっき被膜が剥がれ易いとされているためである。
しかし、本発明のようにショットブラスト処理後も合金化溶融亜鉛めっき層が残存するようにショットブラスト処理を行うことにより合金化溶融亜鉛めっき層が有する犠牲防食性を活用することができる。加えて、適切なショットブラスト処理を行うことにより合金化溶融亜鉛めっき層が塑性歪を受け、化成処理皮膜の生成と密着性が向上し、耐食性が向上する。
また、鉄亜鉛固溶層を有する熱間プレス鋼板は、犠牲防食作用を有する皮膜の融点が高いため、アーク溶接部の近傍まで犠牲防食を有する層を残存させることができる。これにより、アーク溶接部の極近傍まで犠牲防食作用も得られるため、アーク溶接後にショットブラスト処理を行う対象材として好適である。
また、別の観点では、本工程によるショットブラスト処理された後の溶接ビード止端部のビードの長さ方向に直行する方向の残留応力が、圧縮で300MPa以上680MPa以下である。より好適には、圧縮で400MPa以上600MPa以下である。アーク溶接部の圧縮残留応力が300MPa未満では歪の付与と疲労強度を向上させるには十分ではなく、圧縮残留応力が680MPaを超える残留応力を付与するとアーク溶接による変形の増加,ショット時間の増加につながるためである。
また、本発明における低炭素鋼からなる溶接構造体としては、例えば、自動車のサブフレーム,アクスルビーム,ロアアーム,アッパーアーム等が例示される。これらの部品には、アーク溶接部及びその近傍の電着塗装後の耐食性と疲労特性とが特に要求され、これらの特性を向上させることにより、低炭素鋼からなる成形体の薄肉化,軽量化が可能になるという大きな効果を得られる。
次に、本発明により製造される溶接構造体の具体例を説明する。
4.リアアクスルビーム
図4(a)〜図4(f)は、本発明に係るリアアクスルビーム1の製造方法を簡略化して示す説明図である。
図4(f)に示すように、トーションビーム式サスペンションのリアアクスルビーム1の主要部品は、2本のアーム2と、これらのアーム2,2同士を連結する中間ビーム3とである。
図4(a)に示すように、本例では、中間ビーム3には元管4として板厚2.6mmの電縫管(C:0.20%,Si:0.19%,Mn:1.30%,P:0.01%,S:0.002%,Cr:0.19%,Ti:0.02%,B:0.002%,残部Feおよび不純物)を用い、図4(b)に示すようにこの元管4を液封成形し、その後に図4(c)に示すように焼入れ処理(熱処理)をする。
元管4の上記の化学組成は一例であり、中間ビーム3は、板厚2.3〜3.6mmの非めっきの鋼管の元管を液封成形し、その後、必要に応じて焼入れもしくは残留応力除去の熱処理を行うことにより製造すればよい。
熱処理後の材料強度は、材質と熱処理により、780MPa級(ビッカース硬さHv240〜280)〜1500MPa級(ビッカース硬さHv420〜460)となる。あるいは、液封成形ではなくプレス成形加工により製造してもよい。
一方、アーム2は、板厚3.6mmの非めっきの780MPa(C:0.1%,Si:0.18%,Mn:1.23%,P:0.023%,S:0.013%,Nb:0.036%,残部Feおよび不純物)の鋼板を曲げ加工してプラズマ溶接で鋼管状に加工したものを用いる。
なお、材質,板厚は、この例に限定されず、板厚2.9〜4.0mmの440〜1500MPa級の鋼板材であり、電縫鋼管の曲げ加工、曲げ加工後の焼入れ、あるいは鋼板を曲げ加工しプラズマ溶接等で鋼管状に加工するか、あるいはプレス成形で製造してもよい。
このような工程で製造された、中間ビーム3とアーム2は、図4(d)に示すように、T字に突き合されてMAG溶接で組立てられる。また、ショックタワー等他の部品も同時にMAG溶接で組み付けられる。
これらのMAG溶接(アーク溶接)が終わった後に、図4(e)に示すようにショットブラスト処理を行う。ショットブラスト処理は、一例として、平均直径約0.3mmの球状のスチールショット材を用い、アーク溶接部より、約50〜200mm離れた位置から0.5MPaのエアー圧力でスチールショット材をアーク溶接部およびその近傍に打ち付ける。
ショット材の材質としては、スチールショット材だけでなくセラミック系のショット材でも問題はない。また、ショット材の平均直径は0.1〜0.7mm程度であれば問題はない。
ショットブラスト処理の条件は、アークハイト0.10〜0.25mmとなるように照射時間が設定されている。これにより、アーク溶接部のビード止端部のスラグ,ヒューム等の付着物が除去され、塑性ひずみが付与されるとともに、ビード止端部の熱影響部においてビードと直行方向へ450〜620MPaの圧縮の残留応力が付与される。これにより、アーク溶接部の耐食性が向上するとともに疲労特性が大幅に改善される。
なお、リアアクスルビーム1では、疲労強度が重要となるため、ショットブラスト処理をアーク溶接部だけでなく母材にも適用してもよい。つまり、疲労強度の向上を目的に、必要に応じてアーク溶接部から離れた母材部にもショットブラスト処理を行ってもよい。例えば、中間ビーム3の両側の形状変化部も、繰り返し捩じりを受けることにより疲労亀裂の発生起点となり易いため、この部位にもショットブラスト処理を行なってもよい。
また、中間ビーム3の熱処理後のショットブラスト処理を省略し、アーク溶接後に中間ビーム3およびアーク溶接部のショットブラスト処理時に同時に行うようにしてもよい。これにより、ショットブラスト処理の工程数を削減できる。
ショットブラスト処理されたリアアクスルビーム1は、ショット材の球を除去し、脱脂および化成処理の後、図4(f)に示すように電着塗装を行う。
図5は、ショットブラスト処理および電着塗装を行われたリアアクスルビームにおける、中間ビームとアームとのアーク溶接部を示す説明図である。
図5に示すように、本発明により塗装が良好なアーク溶接部を有するリアアクスルビーム1が製造される。
5.リアサブフレーム
図6は、マルチリンク式サスペンションのリアサブフレーム5の一例を示す説明図である。図6に示すように、マルチリンク式サスペンションのリアサブフレーム5での実施の形態を示す。
材料として、590MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量50g/m)を用い、板厚は1.8〜3.2mmである。この説明では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いる実施例を示すが、非めっき鋼板でもよく、材料強度も590MPa級には限定されない。
これらの鋼板をプレス成形で部品を成形する。成形されたそれぞれの部品はアーク溶接(Ar+20%COのMAG溶接)により組み立てられる。
アーク溶接での組立て後、ショットブラスト処理を行う。リアサブフレーム5は、図6に示すように複雑な形状を有し、すみ肉溶接形状が多いため、ショットブラスト処理の球が部品の重ね面の隙間に残存することがある。ショット材の材質がスチールであると、鋼板間の隙間に残存したショット材から錆が発生することがある。よって、重ね面に残存しても錆が発生しないセラミック系のショット球を用いることが好ましい。例えば、平均直径0.3mmの球状のジルコンショットを用いることが例示される。
ショットブラスト処理は、一例としてアーク溶接部から約50〜200mm離れた位置から0.35MPaのエアー圧力で行う。アークハイト0.05〜0.15mmとなるようにショットブラスト処理の条件を設定する。
図7(a)はMAG溶接ビード止端部のショットブラスト前を示す断面SEM写真であり、図7(b)はMAG溶接ビード止端部のショットブラスト後を示す断面SEM写真であり、図7(c)はアーク溶接部から5mm離れた母材側のショットブラスト前を示す断面SEM写真であり、さらに、図7(d)はアーク溶接部から5mm離れた母材側のショットブラスト後を示す断面SEM写真である。
図7(a)〜図7(d)に示すように、本発明での適切なショットブラスト処理の条件の選択により、スラグ,ヒュームのみを除去し、合金化溶融亜鉛めっき層に微小な塑性歪を加えることで化成処理性が高い素地を形成することができる。
図8(a)は、ショットブラスト処理されたアーク溶接部の塗装後の外観例を示す写真であり、図8(b)はアーク溶接部の断面例を示す写真である。
図8(a)および図8(b)に示すように、ショットブラスト処理されたリアサブフレーム5は、ショット材の球を除去し、脱脂,化成処理の後に電着塗装を行うことにより、製造される。これにより、図8(a)に示すように、アーク溶接部とその近傍に塗装が均一で耐食性が高く、また圧縮残留応力の付与により、疲労耐久性の高いアーク溶接部が得られる。また、鋼板同士の重ね面には、図8(b)のように除去し切れないジルコンショット球が残存することがあるが、錆発生の起点とはならなかった。
6.ロアアーム
図9は、ロアアーム6の一例を示す説明図である。
板厚2.0mm,2.3mmの2種の、合金化溶融亜鉛めっき(めっき付着量45〜55g/m)が施された熱間プレス用鋼板(C:0.21%,Si:0.22%,Mn:1.2%,P:0.01%,S:0.005%,Cr:0.19%,Ti:0.02%,B:0.002%,残部Feおよび不純物)を用いる。なお、この例ではロアアームに合金化溶融亜鉛めっきが施された熱間プレス鋼板を用いたが、非めっきでもよい。
熱間プレス用鋼板を900℃で4分間ガス炉に装入して加熱した後、水冷された金型で焼入れと同時に成形することにより、鉄亜鉛固溶相を表面に有する引張強度1500MPa級(ビッカース硬さHv440〜490)の熱間プレス部品を製造する。
熱間プレス部品は、重ね合わされたモナカ構造とし、重ねた端部を、アーク溶接(Ar+20%COのMAG溶接)を用いてすみ肉溶接を行う。
MAG溶接後にショットブラスト処理を行う。ショットブラスト処理は、平均直径0.3mmの球状のジルコンショット用いる。
アーク溶接部から約50〜200mm離れた位置から0.35MPaの圧力でジルコンショットを打ち付ける。ショットブラスト処理の条件はアークハイト0.10〜0.25mmとなるように設定する。
図10(a)はMAG溶接ビード止端部のショットブラスト前を示す断面SEM写真であり、図10(b)はMAG溶接ビード止端部のショットブラスト後を示す断面SEM写真であり、図10(c)はアーク溶接部の近傍の母材のショットブラスト前を示す断面SEM写真であり、さらに、図10(d)はアーク溶接部の近傍の母材のショットブラスト後を示す断面SEM写真である。
図10(a)〜図10(d)に示すように、犠牲防食作用を有する鉄亜鉛固溶相を母材側に残したまま、ヒューム,スラグを除去し、さらに、表面に微細な塑性歪層を形成することにより効果的に耐食性を上げることができる。
また、圧縮の残留応力をアーク溶接部の周辺に加えることで疲労特性も飛躍的に改善する。ロアアームは、重要保安部品であり、疲労耐久性が重要である。このため、アーク溶接部およびその近傍以外の部位にもショットブラスト処理を行うことにより圧縮残留応力を付与し、部品の疲労強度特性を改善することが好ましい。
ショットブラスト処理されたロアアーム6は、ショット材を取り除き、脱脂,化成処理の後、電着塗装を行うことで製造される。
本発明を、実施例を参照しながら、より具体的に説明する。
供試材として、
440MPa級鋼板(マーク:JSH440、C:0.11%,Si:0.07%,Mn:1.1%,P:0.02%,S:0.004%,残部Feおよび不純物),
440MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板(マークJAC440、C:0.11%,Si:0.06%,Mn:1.1%,P:0.015%,S:0.004%,残部Feおよび不純物),
1500MPa級熱間プレス用鋼板(マークSQ、C:0.21%,Si:0.19%,Mn:1.30%,P:0.01%,S:0.002%,Cr:0.19%,Ti:0.02%,B:0.002%,残部Feおよび不純物),および
1500MPa級亜鉛めっき熱間プレス鋼板(マークSQZ、C:0.20%,Si:0.22%,Mn:1.28%,P:0.01%,S:0.002%,Cr:0.20%,Ti:0.02%,B:0.002%,残部Feおよび不純物)
を用いた。試験片である試料A〜Qの形状はいずれも2.0mm×150mm×75mmである。
これらの試料A〜Qを消耗電極式アーク溶接でビードオンプレート溶接を行った。溶接は、フローニアス社製の溶接電源TPS500MVを用い、電流96A,電圧19.8V,溶接速度50cm/min,パルスモード,シールドガスAr+20%CO,流量20l/min,溶接ワイヤ 日鐵住金溶接工業製 YM24T 直径1.2mmとした。
アーク溶接後の試料E〜Qをショットブラスト処理した。表1に示すように、ショット材として、サイズ,形状が異なるスチールショット(厚地鉄工製),ジルコンショット等を用いた。
ショットブラスト装置は、厚地鉄工BA−1を用いた。ショット材の照射距離50〜200mm,エアー圧力0.3〜0.5MPaとし、照射時間を調整することで、ショットブラスト処理の条件を調整した。ショットブラスト処理の条件は、アルメンストリップAを用いてアークハイトで評価した。
図11(a)〜図11(h)は、ショットブラスト処理を行わない場合の溶接ビードの外観と、ショットブラスト処理を行った場合の溶接ビードの外観を示す写真であり、図11(a)は供試材JSH440のショットブラスト処理を行わない場合(試料A)を示し、図11(b)はマークJSH440のショットブラスト処理を行った場合(試料E,I〜K)を示し、図11(c)はマークJAC440のショットブラスト処理を行わない場合(試料B)を示し、図11(d)はマークJAC440のショットブラスト処理を行った場合(試料F,L〜O)を示し、図11(e)はマークSQのショットブラスト処理を行わない場合(試料C)を示し、図11(f)はマークSQ(試料G,P)のショットブラスト処理を行った場合を示し、図11(g)はマークSQZのショットブラスト処理を行わない場合(試料D)を示し、さらに、図11(h)はマークSQZのショットブラスト処理を行った場合(試料H,Q)を示す。
図11(a)〜図11(h)に示すように、適切な条件でショットブラスト処理を行うことでアーク溶接部を良好に改質できるとともに、表面に微細な塑性歪を付与することで化成処理性を向上できる素地ができる。
その後、各種試験片に市販の自動車用塗装薬液を用いて、脱脂処理→表面調整処理→リン酸亜鉛処理→電着塗装処理を順次施した。脱脂処理には日本パーカ製ファインクリーナー4480を用い、表面調整には日本パーカ製プレパレンZTを用いた。
リン酸亜鉛処理薬液は日本パーカ製PBL−3080を用いた。電着塗装薬液はカチオン系の日本ペイント製 パワーニックス−150 グレーを用いた。電着塗装の狙い膜厚は20μmとした。
電着塗装後の試料A〜Qを、乾湿繰り返し複合腐食試験(JASO試験)を360サイクル(120日)に供試した。
360サイクル後、電着塗膜を剥離・除去し、腐食生成物を除去した後に溶接部を5区画し、それぞれの最大板厚減を求め、上位3点平均値を各試験片の最大腐食深さとした。評価は各条件n=2で実施し,その平均値を算出した。
これらの結果を表1にまとめて示すとともに、試料A,Eの外観を図12(a)〜図12(d)に写真で示す。
図12(a)は試料A(供試材JSH440,未ショットブラスト処理)のJASO360サイクル後の電着塗膜を示す写真であり、図12(b)は試料A(供試材JSH440,未ショットブラスト処理)のJASO360サイクル後の電着塗膜を除去した状態を示す写真であり、図12(c)は試料E(供試材JSH440,ショットブラスト処理)のJASO360サイクル後の電着塗膜を示す写真であり、図12(d)は試料E(供試材JSH440,ショットブラスト処理)のJASO360サイクル後の電着塗膜を除去した状態を示す写真である。
表1,図12(a)および図12(b)に示すように、適切なショットブラスト処理を行った本発明例では、ショットブラスト処理により電着塗装後の平均腐食深さは0.4mm以下になった。一方、比較例では0.7mm以上の深い腐食が認められた。
供試材として、
板厚2.0mmの440MPa級熱延鋼板(マーク:JSH440、C:0.11%,Si:0.07%,Mn:1.1%,P:0.02%,S:0.004%,残部Feおよび不純物),および
板厚2.0mmの1500MPa級熱間プレス用鋼板(マーク:SQ、C:0.21%,Si:0.19%,Mn:1.30%,P:0.01%,S:0.002%,Cr:0.19%,Ti:0.02%,B:0.002%,残部Feおよび不純物)を用いた。
それぞれの供試材からなる試料A〜Fを消耗電極式アーク溶接で重ねすみ肉溶接を行った。溶接は、ダイデン製DP500を用い、電流:135A,電圧:23V,溶接速度:50cm/min,シールドガス:Ar+20%CO,20l/min,前進角30°,狙い角45°,ワイヤ 日鐵住金溶接工業製 YM24T 直径1.2mmとした。
アーク溶接後の試料A〜Fをショットブラスト処理した。ショットブラスト処理には、平均直径0.3mmのスチールショット(厚地鉄工製)を用いた。
図13は、ショットブラスト装置によるショットブラスト処理の様子を示す説明図である。
図13に示すように、ショットブラスト装置7は、厚地鉄工BA−1を用いた。ショット材8の、試料A〜Fへの照射距離200mm,エアー圧力0.3〜0.5MPaとし、照射時間を調整することにより、ショットブラスト処理の条件を調整した。ショットブラスト処理の条件はアルメンストリップAを用いてアークハイトで評価した。
それぞれの試料A〜Fでの、1500MPa級熱間プレス鋼板のアーク溶接でショットブラスト処理を実施した本発明例である試料B,D〜Fと、ショットブラスト処理を実施していない比較例である試料A,Cとについて、疲労強度を調査した。疲労試験は、応力比0曲げモードで実施した。
試料E(本発明例)および試料C(比較例)の疲労強度の結果を図14にグラフで示す。
図14にグラフで示すように、本発明のショットブラスト処理を行うことで、比較例のショットなしに比べ疲労特性を大幅に向上することが可能であった。
疲労亀裂発生位置(図15(a)参照)であるビード止端部近傍の母材側での残留応力を、X線で調査した。X線の残留応力の調査条件を以下に示す。
X線応力測定法:sinψ法(走査法:並傾法(ψ一定(PSPC)法))
・X線応力測定装置:(株)リガクPSPC−RSF
・特性X線:CrKα
・測定回折面:α−Fe211
・入射スリット:シングルコリメータ○ 平均直径0.5[mm]
・入射角(ψ):0,15.9,22.8,28.3,33.2,37.8,42.2,46.5,50.8[deg]
・揺動:±5[deg]
・回折角決定法:半価幅法
・応力定数(K):−318[MPa/deg]
1[deg]:=1[°]=π/180[rad]
図15(a)は疲労亀裂位置を示す写真であり、図15(b)は残留応力位置を示す写真である。また、X線による調査結果,疲労評価結果を含めて、結果を表2にまとめて示す。
表2に示すように、本発明例である試料B,D〜Fは、いずれも、比較例である試料A,Cよりも疲労強度の大幅な向上が認められた。なお、溶接部の塗装後耐食性についても実施例1と同様に本発明例が優れていることが確認された。
1 リアアクスルビーム
2 アーム
3 中間ビーム
4 元管
5 マルチリンク式サスペンションのリアサブフレーム
6 ロアアーム
7 ショットブラスト装置
8 ショット材
A〜F 試料

Claims (7)

  1. 溶接構造体を構成する低炭素鋼からなる複数の部品をアーク溶接により接合し、少なくともアーク溶接部にショットブラスト処理による塑性歪を与えた後に、化成処理および電着塗装を行うことを特徴とする低炭素鋼からなる溶接構造体の製造方法。
  2. 前記ショットブラスト処理の条件がアルメンストリップAでのアークハイト0.05〜0.25mmであることを特徴とする請求項1に記載された溶接構造体の製造方法。
  3. 前記ショットブラスト処理に用いられるショット材は、平均直径0.1〜0.7mmの球状材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された溶接構造体の製造方法。
  4. 前記ショットブラスト処理に用いられるショット材は、セラミック製の球状材であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された溶接構造体の製造方法。
  5. 前記低炭素鋼からなる複数の部品は、合金化溶融亜鉛めっき層もしくは鉄亜鉛固溶層で表面が覆われた熱間プレス鋼板からなり、かつ、前記ショットブラスト処理後にも該合金化溶融亜鉛めっき層もしくは鉄亜鉛固溶層が残存することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された溶接構造体の製造方法。
  6. 前記ショットブラスト処理された後における溶接ビード止端部のビードの長さ方向に直行する方向への残留応力が300〜680MPaの圧縮応力であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された溶接構造体の製造方法。
  7. 前記溶接構造体は、自動車のサブフレーム,アクスルビーム,ロアアームまたはアッパーアームであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された溶接構造体の製造方法。
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