JP2013226103A - ベーカリー製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】フルーツ等の比重の大きい具材を、特定量含有し、セルロースと特定比率で組合せ、生地に配合することで、具材が、製造時に偏らず、焼き上がり後に均一に分散し、さらに、クリスピー感、さっくり感、ふんわり感等の良好な食感を有するベーカリー製品を提供すること。
【解決手段】小麦粉、糖類、油脂を含む原料から得られるベーカリー製品において、短径が0.5mm以上であり、長径/短径比が1.0〜5.0であり、比重が1.0g/mL以上の具材を1質量%以上含み、さらにセルロースを0.1質量%以上含有するベーカリー製品。
【選択図】なし

Description

本発明は、小麦粉を主原料とするスポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、ホットケーキ、ドーナッツ、チーズケーキ等のベーカリー製品において、具材が、製造時に偏らず、焼き上がり後に均一に分散し、さらに、良好な食感を有するものに関する。特に、本発明は、フルーツ等の比重の大きい具材を多量に含有し、クリスピー感、さっくり感、ふんわり感等の食感が要求されるパウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ等に適している。
スポンジケーキ、シフォンケーキは、小麦粉、糖類、卵、油脂から得られるベーカリー製品の一種であり、その生地に、ドライフルーツ、フルーツを洋酒に漬け込んだもの、生のフルーツを配合し、焼成されたものが好まれている。
従来、具材を安定化させる方法としては、加工デンプン等の増粘剤を生地に配合することにより、生地の粘性を高め、焼成時に具材を沈降し難くする方法が慣用されている。
また、これらのベーカリー製品の食感改良については、以下の検討がなされてきた。
特許文献1には、小麦粉、発泡成分、水を必須成分とするドウ、又は穀物粉および水を必須成分とするドウに、水不溶性あるいは、水膨潤性のカルボキシメチルセルロースと微細セルロースを配合し、ドウの粘着性を改善し、大量生産の際に、生地が均一な重量、形状(具材ではない)で、食感が改良されたベーカリー製品が開示されている。
特許文献2には、微粒子セルロース系素材が混合された生地から得られたパンが、食物繊維を豊富に含有し、通常のパンと遜色のない食感を有することが開示されている。
特許文献3には、微粒子セルロース系素材が配合されたカステラにおいて、焼成後の体積減少が少なく、食感が優れ、長期保存安定性が高いものが得られることが開示されている。
特開平10−262541号公報 特開平5−95754号公報 特開平7−135888号公報
具材の安定化に関しては、タピオカα化澱粉等の加工デンプンを生地に配合することで、確かに、具材の沈降は防止できる。しかしながら、具材が均一に分散するためには、加工デンプンを多量に配合する必要があり、その結果、焼成後のケーキの食感が悪化し、ケーキ本来のクリスピー感、さっくり感、ふんわり感等の食感が損なわれる問題があった。
また、特許文献1〜3の文献では、特定のセルロース系素材を、生地に添加することにより、生地自体の均一性と食感を改良できるものである。しかし、これらの文献には、具材の配合及びその均一性を達成する手段については、全く記載がなかった。
従って、本発明は、フルーツ等の比重の大きい具材を、特定量含有し、セルロースと特定比率で組合せ、生地に配合することで、具材が、製造時に偏らず、焼き上がり後に均一に分散し、さらに、クリスピー感、さっくり感、ふんわり感等の良好な食感を有するベーカリー製品を提供することを目的とする。
本発明者らは、フルーツ等の比重の大きい具材を、特定量含有し、セルロースと特定比率で組合せ、生地に配合することで、具材が、製造時に偏らず、焼き上がり後に均一に分散し、さらに、クリスピー感、さっくり感、ふんわり感等の良好な食感を有するベーカリー製品が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)小麦粉、糖類、油脂を含む原料から得られるベーカリー製品において、短径が0.5mm以上であり、長径/短径比が1.0〜5.0であり、比重が1.0g/mL以上の具材を1質量%以上含み、さらにセルロースを0.1質量%以上含有するベーカリー製品。
(2)前記セルロースが、結晶セルロース複合体である(1)に記載のベーカリー製品。
(3)前記具材が、ドライフルーツ、糖液に漬け込まれたフルーツ、生フルーツから選ばれる少なくとも一種である(1)又は(2)に記載のベーカリー製品。
(4)さらに、加工デンプンを0.1質量%以上含有する、(1)〜(3)のいずれか1つに記載のベーカリー製品。
(5)パウンドケーキ、スポンジケーキ、及びシフォンケーキのいずれかである、(1)〜(4)のいずれか1つに記載のベーカリー製品。
本発明により、フルーツ等の比重の大きい具材を、特定量含有し、具材が、製造時に偏らず、焼き上がり後に均一に分散し、さらに、クリスピー感、さっくり感、ふんわり感等の良好な食感を有するベーカリー製品を提供できる。
本発明について、以下具体的に説明する。
<ベーカリー製品の原料>
本発明のベーカリー製品とは、小麦粉、糖類、油脂を含む原料に、水を添加し、混合、混練され、焼成、又は油ちょうされたもののことである。具体的には、パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、ホットケーキ、チーズケーキ、ドーナッツを指す。特に、具材が配合され、その均一性を保つ必要のあるものとして、パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、チーズケーキが、好ましい形態である。
<小麦粉>
ここで、小麦粉とは、小麦を挽いて作られた粉末のことである。小麦粉のなかでも、それに含まれるタンパク質の割合と形成されるグルテンの性質によって薄力粉、中力粉、強力粉、浮き粉、全粒粉、グラハム粉、セモリナ粉に分類され、いずれも本願でいう小麦粉に該当する。これらの中でも、本発明のベーカリー製品には、強力粉、中力粉、薄力粉が好ましい。
強力粉は、タンパク質の割合が12%以上のもので、中力粉は、タンパク質の割合が11.9〜8.6%のもので、薄力粉は、タンパク質の割合が8.5%以下のものである。特に、本願では、薄力粉を50質量%含むものを用いることが、加工特性、食感の点で好ましい。より好ましくは、70質量%以上であり、特に好ましくは、85質量%以上である。
本発明のベーカリー製品に配合する小麦粉の量としては、好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。小麦粉は多いほど、栄養価に優れるため好ましい。上限は、生産性(生地のまとまりやすさ)の観点で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
<糖類>
次に、本発明で用いる糖類とは、例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖(グルコース)、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、トレハルロース、ネオトレハロース、パラチノース、D−キシロース、澱粉加水分解物、デキストリン等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類をあげることができる。また、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等も添加してもよい。これらの糖類は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、ショ糖、グルコ−ス、糖アルコールが味の点で好ましい。これらの中でも、ショ糖、糖アルコール、またはそれらの組合せが好ましい。
本発明のベーカリー製品に配合する糖類の量としては、好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、特に好ましくは10質量%以上である。糖類は多いほど、甘味に優れるため好ましい。上限は、甘味と小麦粉との味のバランスの観点で、25質量%以下が好ましく、20量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
<油脂>
本発明で用いる油脂としては、バター、生クリーム等の乳脂肪分、植物油脂あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等の中から一種又は二種以上を併用することができる。植物油脂の例としては、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、パーム油、パーム核油及びヤシ油等を挙げることができる。これらの中でも、バター、生クリームが、風味の点で、好ましい。
本発明のベーカリー製品に配合する油脂の量としては、好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。油脂は多いほど、風味と栄養価が優れるため好ましい。上限は、生産性(生地のまとまり)の観点で、35質量%以下が好ましく、30量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
<卵>
本発明で用いる卵とは、食用卵として流通しているものを用いることができ、鳥卵を用いることが好ましい。鳥卵としては、鶏卵、ウズラ卵、アヒル卵、ダチョウ卵、ハト卵が挙げられ、これらを組合せて使用することもできる。特に、本発明では、加工性、味の点で鶏卵を用いることが好ましい。卵は、生卵をそのまま用いることも、乾燥された加工卵を用いることもできるが、加工性の点で生卵を用いることが好ましい。
本発明のベーカリー製品に配合する卵の量としては、好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。卵は多いほど、風味と栄養価が優れるため好ましい。上限は、生産性(生地のまとまり)の観点で、35質量%以下が好ましく、30量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
<オリゴ糖>
本発明のベーカリー製品には、コク味を付与する目的で、オリゴ糖を配合することが好ましい。糖類に加え、オリゴ糖を配合することで、上記の糖類の先味(食した直後の味)における甘味をまろやかにし、後味(嚥下直後の味)におけるコクを付与できる。オリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクチュロース、α−、β−、γ−シクロデキストリン等が挙げられる。これらの中でも、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖は、味質改善効果が高いため好ましい。
本発明のベーカリー製品に配合するオリゴ糖の量としては、好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。オリゴ糖は多いほど、味改善効果が優れるため好ましい。上限は、15質量%以下が好ましく、10量%以下がより好ましく、8質量%以下が特に好ましい。
<その他原材料>
本発明のベーカリー製品は、前記以外は、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、通常の食品と同様の構成をとることができる。例えば、水、タンパク質、増粘剤、調味料、香料、色素、乳化剤等より選択された添加材料を、所定の割合で混合したものが用いられる。
タンパク質としては、通常、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳或いは生クリームなどの乳由来のタンパク質、大豆タンパク質などを使用することができる。
増粘剤としては、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限度で添加することができる。例えば、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、タマリンドシードガム、タラガム、カードラン、ラムザンガム、ガティガム、グルコマンナン、カラヤガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、カラギナン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カードラン、グルコマンナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、各種化工・加工澱粉、CMC、MC、HPC、HPMC、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、乾燥こんにゃく加工品等を挙げることができる。
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸塩(ナトリウム、カルシウム)等を挙げることができる。
また、ビタミン、カルシウム、鉄、DHAの栄養剤等を併用することも可能である。
<具材>
本発明のベーカリー製品は、短径が0.5mm以上であり、長径/短径比が1.0〜5.0であり、比重1.0g/mL以上の具材を1質量%以上含むものである。本具材は、短径が0.5mm以上の大きいものである。
ここでいう短径とは、不定形の具材を用いた場合に、その一方の表面から、中心(重心)を経て、他方の表面に至る距離のうち、最も小さいもののことである。短径が大きいほど、食べ応え、風味が優れるものとなるため、好ましい。短径は、1mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましく、5mm以上が特に好ましく、10mm以上が最も好ましい。上限としては、30mm以下である。
長径とは、上記の計測方法において、最も大きいもののことであり、長径/短径比は、1.0〜5.0である。食べやすさの点で、1.0〜3.0が好ましく、1.0〜2.0がより好ましい。
具材の比重は、1.0g/mL以上であり、比重が大きいほど、食べ応えがあり、歯で噛み切る際のボリューム感が良好である。比重は、好ましくは、1.2g/mL以上であり、より好ましくは1.3g/mL以上であり、特に好ましくは1.5g/mL以上であり、最も好ましくは1.7g/mL以上である。具材の均一分布を保つためには、3.0g/mL以下が好ましい。
<具材の種類>
本発明で使用できる具材としては、植物性、動物性のいずれのものでもよい。
植物性の具材としては、果実、野菜、ナッツ、穀物等を、生でカットしたもの、及び/又は、それらを乾燥、浸漬等の加工を施したものを使用することができる。浸漬された果実、野菜とは、砂糖等の糖液に漬けたもの、塩水に漬けたもの、酢に漬けたもの等が該当し、水分を含んでいても、乾燥されたものであっても、いずれも使用することができる。これらの中で、果実を天日等で乾燥したもの、もしくは砂糖漬けにしたのち乾燥された、ドライフルーツを用いることが、加工性の点で好ましい。
動物性の具材としては、牛肉、豚肉、鶏肉、または、それらを干し肉、ハム、ソーセージ等に加工されたもの、魚肉、または、それらを魚節、カマボコ、ソーセージ等に加工されたもの、チーズ等の乳を発酵したものを用いることもできる。
<果実系の具材>
本発明のベーカリー製品には、果実系の具材を用いることが好ましい。果実を用いることで、味に優れるものが得られる。果実系の具材は、それらの中でも、ドライフルーツ、糖液に漬け込まれたフルーツ、生フルーツから選ばれる一種以上であることが、加工のしやすさの点で、好ましい。
<ドライフルーツ>
本発明のベーカリー製品に配合する具材は、ドライフルーツが、加工のしやすさ、食感、味の点で、好ましい。ドライフルーツとしては、例えば、レーズン(ブドウ)、フィグ(イチジク)、プルーン、干し柿(カキ)、アンズ(アプリコット)、プラム、ブルーベリー、クランベリー、カーラント(スグリ)、オレンジピール(オレンジの果皮) 、レモンピール(レモンの果皮)、メロン、リンゴ、マンゴー、パパイヤ、バナナ、パイナップル、ナツメ、ナツメヤシ、サンザシ、クコ等のドライフルーツのうち1種以上を用いることができる。
<具材の添加量>
本発明のベーカリー製品は、上述の具材を1質量%以上含む必要がある。具材を多量に配合することで、ベーカリー製品の食感、味が優れたものが得られる。好ましくは、3質量%以上であり、より好ましくは、5質量%以上であり、さらに好ましくは、10質量%以上であり、特に好ましくは、15質量%以上であり、最も好ましくは、20質量%以上である。具材を入れすぎると、生地とのバランスが崩れ、型崩れを生じ、食感が損なわれるため、上限としては、50質量%以下である。
<セルロース>
本発明のベーカリー製品は、さらにセルロースを0.1質量%以上含有する。
本発明において、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質の粉末である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
これらは、酸加水分解、酵素分解、アルカリ加水分解、爆砕処理等により、特定の重合度に加水分解し、必要に応じ、摩砕、粉砕等の機械的処理を経て、粉末化したものを用いることが好ましい。使用できるセルロースとしては、セルロースフロック(粉末セルロース)、結晶セルロースが挙げられる。上述の中でも、生地等との混合性において、結晶セルロースを使用することが好ましい。
また、結晶セルロースの中でも、結晶セルロースと水溶性ガムが複合化された結晶セルロース複合体を用いると、生地中のセルロースの分散性、具材の均一分散性、食感(クリスピー感、さっくり感、ふんわり感の向上)を改善できるため好ましい。さらに、結晶セルロース複合体でも、結晶セルロースと、水溶性ガムに加え、特定量の親水性物質が配合された易分散性結晶セルロース複合体を用いると、上述のセルロースの分散性、具材の均一分散性、食感(ざらつきの低減)が可能となるため好ましい。
<セルロースの添加量>
本発明のベーカリー製品は、セルロースを0.1質量%以上含む必要がある。ここでいうセルロース配合量は、セルロース単独の素材の場合は、その素材自体の重量より算出され、セルロース複合体を用いた場合は、複合体の重量から算出される(複合体中のセルロース含量ではない)。セルロースを多量に配合するほど、具材の均一性が優れる。好ましくは、0.3質量%以上であり、より好ましくは、0.5質量%以上であり、さらに好ましくは、1質量%以上であり、特に好ましくは、3質量%以上であり、最も好ましくは5質量%以上である。一方で、セルロースを配合しすぎると、ケーキに繊維的な、ぼそぼそとした食感が現れるため、上限は、10質量%以下が好ましい。
<セルロースの平均重合度>
本発明に用いるセルロースの平均重合度は、500以下であることが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、生地との混合工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
<セルロースの粒子形状(L/D)>
本発明で用いるセルロース中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、本発明のセルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
L/Dは、具材の分散安定化の点で20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、4以下が最も好ましい。下限は、具材との絡み合いによる分散安定化の点で、ある程度、大きいほど好ましい。1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が特に好ましい。
<セルロースの平均粒子径>
本発明で用いるセルロース(粉末セルロース、結晶セルロース、結晶セルロース複合体)は、それに含まれる粒子のメジアン径が小さい特徴がある。この粒子の大きさは、以下の方法で測定できる。まず、セルロースを、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離を経ずに、そのまま、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。このメジアン径が20μm以下であると、セルロース複合体の懸濁安定性がより容易に向上するため、好ましい。また、セルロースを含有する食品を食した際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りのものを提供することができる。より好ましくは15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては0.1μm以上である。
<結晶セルロース複合体>
本発明で用いる結晶セルロース複合体は、結晶セルロースと、水溶性ガムからなり、結晶セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、水溶性ガムで被覆されたものである。その組成としては、結晶セルロース20〜99質量%と、水溶性ガムを1〜80質量%から構成されるものである。好ましい範囲としては、結晶セルロース30〜95質量%と、水溶性ガムを5〜70質量%から構成されるものであり、水溶性ガムの種類に応じて、適宜調整されるものである。ここで、結晶セルロースは、99重量%以下であれば、結晶セルロース表面の水溶性ガムの被覆が充分であり、ベーカリー製品の製造工程において、生地の表面が荒れず、滑らかな生地が得られ、焼成後のベーカリー製品を食する際にも、ぼそぼそとせず、食感が優れたものが得られる。また、水溶性ガムが、80質量%以下であれば、生地を混練する際に、べたつきが出にくく、製造しやすい。
結晶セルロース複合体としては、結晶セルロース、水溶ガム以外に他の食品材料、例えばオリゴ糖類、糖アルコール、澱粉分解物、加工澱粉を含む澱粉類、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、乳化剤、増粘安定剤、色素等を所望に応じて配合することができる。これらの食品材料は複合体製造時に添加することもできるし、複合体製造後に添加することもできる。
結晶セルロースと複合化させる水溶性ガムとしては、難消化性デキストリン、カラヤガム、ポリデキストロース、サイリウムシードガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、キトサン、アラビアガム、ガッティガム、トラガントガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
上述の中でも、特に、カラヤガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、難消化性デキストリンは、結晶セルロースと複合化しやすいため好ましい。
さらに、カラヤガム、キサンタンガムは、結晶セルロース複合体として、ベーカリー製品に添加すると、食感が優れるため、より好ましい。
<カラヤガム>
カラヤガムとは、アオギリ科カラヤの木の樹液を精製したもののことである。市販のグレードとしては、色調、樹皮、異物の割合から、Hand−picked−selected(HPS)、Superior No.1、Superior No.2、Superior No.3、Shiftingsがある(株式会社幸書房2001年発行、国崎、佐野著「食品多糖類」88ページ、表4−4参照)。本発明で用いるカラヤガムは食品で使用できるグレードであれば制限なく使用できる。この中でも、本発明に用いるには、HPS、Superior No.1が好ましく、HPSが複合体の懸濁安定性の点で好ましい。特に、中央および北インドのSterculia urens由来のものが、複合体の懸濁安定性の点で好適である。
ここで、セルロースとカラヤガムとの質量比は、99/1〜80/20であることが好ましい。より好ましくは、94/6〜84/16であり、さらに好ましくは92/8〜86/14である。
<キサンタンガム>
キサンタンガムとは、トウモロコシなどの澱粉を細菌 Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られるガムであり、 グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなるものである。本発明で用いるキサンタンガムにはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれる。上記の構造を有し、食品で使用できるグレードであれば粘度に制限なく使用できる。
本発明のベーカリー製品に用いる場合は、セルロースとキサンタンガムの質量比は、99/1〜80/20が好ましい。より好ましくは99/1〜90/10であり、さらに好ましくは96/4〜92/8である。
<カルボキシメチルセルロースナトリウム>
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)とは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Naは、パルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酸(或いはそのナトリウム塩)でエーテル化して得られる。
特に、置換度と粘度が特定範囲に調製されたCMC−Naを用いることが、複合化の観点から好ましい。置換度とは、セルロース中の水酸基にカルボキシメチル基がエーテル結合した度合いのことであり、0.6〜2.0が好ましい。置換度が前記の範囲であれば、CMC−Naの分散性が十分であること、及び製造が容易であることから好ましい。より好ましくは、置換度は0.6〜1.3である。またCMC−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において、500mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。特に好ましくは、20mPa・s以下である。CMC−Naの粘度が低いほど、セルロース、親水性ガムとの複合化が促進されやすい。下限は特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
ここで、セルロースとCMC−Naとの質量比は、99/1〜80/20であることが好ましい。より好ましくは、94/6〜84/16であり、さらに好ましくは92/8〜86/14である。
<難消化性デキストリン>
結晶セルロース複合体の製造に用いられる難消化性デキストリンは、澱粉を加熱、酵素処理して得られるもので、食物繊維の平均分子量が500から3000程度、グルコース残基がα−1,4、α−1,6、β−1,2、β−1,3、β−1,6−グルコシド結合し、還元末端の一部はレボグルコサン(1,6−アンヒドログルコース)である、分岐構造の発達したデキストリンである。市販品としては、食品添加物公定書第8版に記載の規格に合致するものが使用できる。
水溶性ガムとして、難消化性デキストリンを用いる場合は、その組成としては、結晶セルロース30〜70質量%、難消化性デキストリンが30〜70質量%となるようにするのが好ましい。
<結晶セルロース複合体に配合される親水性物質>
本発明に用いるセルロース複合体は、水への分散性を高める目的で、セルロースと、水溶性多糖類以外に、親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクチュロース、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等、ビタミン類、コラーゲン、アズレン、キトサンが適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましく、デキストリンが最も好ましい。
セルロース複合体における親水性物質の配合量には制限はないが、好ましい範囲としては、5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。
<結晶セルロース複合体に配合されるその他添加剤>
本発明に用いるセルロース複合体に、陰イオン性多糖類を用いる場合には、複合化を進める目的で、二価のイオン性物質を配合してもよい。二価のイオン性物質は、水に溶解した際に、カルシウム、マグネシウム等の二価のイオンを生じるものであり、具体的には、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が例示される。この物質は、セルロースと、陰イオン性多糖類を複合化する前に添加されることが好ましい。二価のイオン性物質の添加量としては、セルロース複合体において、好ましくは0.5質量%以上である。より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。この物質は、配合量が高すぎると、セルロース組成物を添加された飲食品の味に影響するため、上限としては10質量%以下が好ましい。
<易分散性結晶セルロース複合体>
本発明のベーカリー製品には、結晶セルロース複合体のなかでも、易分散性のものを使用することが好ましい。易分散性結晶セルロース複合体を使用することで、生地の混練工程で、結晶セルロース複合体が、均一に分散するため、具材との結着性が増し、具材の均一安定性に寄与する。さらに、易分散性結晶セルロース複合体は、微粒子状に分散しやすいため、生地の混練工程で、粗大粒子が少なくなり、焼成後のベーカリー製品を食する際のざらつきが低減され、食感も優れる。
本発明の易分散性結晶セルロース複合体は、上述の結晶セルロース、水溶性ガムから得られる結晶セルロース複合体において、上述の親水性物質を50質量%以上配合されるものである。親水性物質が多くなることで、結晶セルロースの分散性が高くなるため、好ましい。より好ましくは、60質量%以上であり、さらに好ましくは、70質量%以上である。上限は95質量%以下である。
易分散性結晶セルロース複合体は、上述の結晶セルロース、水溶性ガム、親水性物質に加え、崩壊剤を含んでもよい。崩壊剤は、生地を混練する際に、結晶セルロースの分散性を高める作用を有し、上述の効果(具材との結着性、具材の均一安定性、ざらつきが低減)を促進するものである。特に、味付けの目的で、生地に、塩分及び/又は酸を添加する際には、崩壊剤の添加効果が大きい。崩壊剤の添加量としては、結晶セルロース複合体に対し、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。上限は、40質量%以下である。
<易分散性結晶セルロース複合体に配合される崩壊剤>
易分散性結晶セルロース複合体に配合される崩壊剤は、水膨潤性のものを使用することが好ましい。例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等のガラクトマンナン粒子、加工デンプン、部分アルファー化澱粉から選ばれる1種以上を使用することができる。分散効果の点で、加工デンプンを用いることが好ましい。
<セルロース複合体に使用する加工澱粉>
易分散性結晶セルロース複合体に用いられる加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、澱粉グルコール酸ナトリウム、澱粉リン酸エステルナトリウムが好ましい。これらは、アルファー化加工したもの、部分的にアルファー化加工したもの、アルファー化加工をしていないもののうち、いずれの形態のものでも使用できる。また、酸処理された澱粉、又は生澱粉をアルファー化したアルファー化澱粉も使用できる。上述の加工澱粉は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
特に飲食品に用いる場合には、厚生労働省令第151号にて定められた11種の加工澱粉(アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉)、並びに生澱粉をアルファー化したアルファー化澱粉が好ましい。
上述の中でも、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、リン酸架橋アルファー化澱粉、アルファー化澱粉がセルロース組成物の分散性の点でより好ましく、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋アルファー化澱粉がさらに好ましく、ヒドロキシプロピル化澱粉が最も好ましい。
<代表的なセルロース素材とその製法>
セルロースの製法には、特に制限はなく、本発明のベーカリー製品には、市販のセルロースを使用できる。例えば、(複合体ではない)結晶セルロースとしては、旭化成ケミカルズ(株)製の商品名「セオラスUF−F711(組成:結晶セルロース100質量%)」、商品名「セオラスUF−F702(組成:結晶セルロース100質量%)」、商品名「セオラスST−100(組成:結晶セルロース100質量%)」、商品名「セオラスST−02(組成:結晶セルロース100質量%)」、商品名「セオラスFD−101(組成:結晶セルロース100質量%)」、商品名「セオラスFD−301(組成:結晶セルロース100質量%)」、商品名「セオラスFD−F20(組成:結晶セルロース100質量%)」、FMC社製 商品名「アビセルPH−101、102(組成:結晶セルロース100質量%)」、 商品名「アビセルPH−301、302(組成:結晶セルロース100質量%)」、商品名「アビセルPH−200(組成:結晶セルロース100質量%)」、明台化工製 商品名「コンプレセルM101、102、301、302、200(組成:結晶セルロース100質量%)」等が使用できる。
次に、結晶セルロース複合体としては、旭化成ケミカルズ(株)製の商品名「セオラスファイバーDF−17(組成:結晶セルロース/難消化性デキストリン/ジェランガム=65/34.2/0.8質量%)」、商品名「セオラスRC−N81(組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=80/10/10質量%)」、商品名「セオラスRC−N30(組成:結晶セルロース/キサンタンガム/デキストリン=75/5/20質量%)」、商品名「セオラスSC−900(組成:結晶セルロース/キサンタンガム/カルボキシメチルセルロースナトリウム/デキストリン/食用油脂=73/2.8/5/19/0.2質量%)」、商品名「セオラスRC−591S(組成:結晶セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム=89/11質量%)」、商品名「セオラスCL−611S(組成:結晶セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム=85/15質量%)」が挙げられる。FMC社製「アビセルRC−591(組成:結晶セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム=89/11質量%)」、「アビセルBV−1518(組成:結晶セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム/塩化カルシウム/サッカロース=60/12/3/25質量%)」、明台化工製「セオセルNEO−C01、C11、C81、C91(組成:結晶セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム=80〜90/10〜20質量%)」等が好適に使用できる。
さらに、易分散性結晶セルロース複合体としては、旭化成ケミカルズ(株)製 商品名「セオラスDX−2(組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=36/4.5/59.5質量%)」が使用できる。
粉末セルロースとしては、日本製紙製「KCフロック(組成:セルロース=100質量%)」、JRS(レッテンマイヤー)製「VITACEL(ビタセル」(組成:セルロース=100質量%)」が好適に使用できる。
また、以下の文献に開示されるものも、使用できる。例えば、特公昭40−12174、特公昭47−15734、特開昭54−54169、特開昭54−55054、特開昭54−55763、特開昭54−138153、特開昭54−157875、特開平5−255538、特開平6−65417、特開平6−335365、特開平7−102113、特開平7−173332、特開平7−268129、特開平8−151481、特開平9−3243、特開平11−46722、特開平11−46723、特開平11−253114、特開平11−253115、特開平11−302448、特開2000−41627、特開2000−178377、特開2002−345410、特開2003−135030、特開2008−113572、特開2010−104324、特開2010−136645、特開2011−152087、特開2011−162700、特開2011−193880、特許国際公開パンフレットWO00/018502、WO04/11501、WO03/096976、WO05/096832、WO07/047895、WO07/041395、などが挙げられる。
上記のうち、本発明のベーカリー製品には、結晶セルロース複合体である旭化成ケミカルズ(株)製の商品名「セオラスファイバーDF−17」、商品名「セオラスRC−N81」、商品名「セオラスRC−N30」等を使用することが好ましく、より好ましくは、易分散性結晶セルロース複合体である商品名「セオラスDX−2」を用いることが、具材の均一分散性と食感の両立の点で好ましい。
<ベーカリー製品に使用する加工澱粉>
本発明のベーカリー製品には、上述の原材料に加え、加工澱粉を使用することができる。加工澱粉は、セルロースと併用することで、具材の均一安定化において、相乗効果が得られるため好ましい。セルロースと併用した場合の本発明のベーカリー製品への添加量は、0.1質量%以上が好ましい。より好ましくは、1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、特に好ましくは、2質量%以上である。加工澱粉は、配合しすぎると食感が損なわれるため、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
ここで、用いることができる加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、澱粉グルコール酸ナトリウム、澱粉リン酸エステルナトリウムが好ましい。これらは、アルファー化加工したもの、部分的にアルファー化加工したもの、アルファー化加工をしていないもののうち、いずれの形態のものでも使用できる。また、酸処理された澱粉、又は生澱粉をアルファー化したアルファー化澱粉も使用できる。上述の加工澱粉は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。上述の加工澱粉の中でも、アルファー加工したものが、セルロースとの相乗効果が高いため、好ましい。アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉、リン酸化澱粉、生澱粉のいずれかをアルファー化したものが、さらに好ましい。特に好ましくは、生澱粉をアルファー加工したアルファー化澱粉である。
加工澱粉の原料としては、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉(ワキシーコーンスターチ)、馬鈴薯澱粉、モチ種馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、もち米澱粉、さつまいも澱粉、さご澱粉、くず澱粉等が挙げられる。
これらの中でも、セルロースとの相乗効果の点からモチ種トウモロコシ澱粉(ワキシーコーンスターチ)、タピオカ澱粉が好ましく、より好ましくはタピオカ澱粉である。
<ベーカリー製品の製法>
本発明のベーカリー製品とは、小麦粉、糖類、油脂と、必要に応じ卵を含む原料に、水を添加し、混合、混練され、焼成、又は油ちょうされたもののことであり、従来公知の方法により調製される。上述の方法において、配合原材料の比率、添加される水分率、生地の混合・混練条件、焼成条件、最終的な形態に応じて、パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、ホットケーキ、チーズケーキ、ドーナッツのいずれも製造可能である。この中でも、特に、パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、チーズケーキは、その形態から、本発明の効果が大きくなるため好ましい。
<パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、チーズケーキ>
例えば、全卵をあらかじめホイップしてからケーキ生地を調製する共立て法、卵を卵白と卵黄に分け、卵白部分をホイップしメレンゲ状態にしてからケーキ生地を調製する別立て法、そして全ての原材料を一緒にまとめて混合し、ホイップしてケーキ生地を調製するオールインミックス法の3つの方法が知られている。本発明では大量生産可能な、オールインミックス法により調製するのが好ましい。
オールインミックス法では、小麦粉、全卵、糖質、油脂、水、乳化剤等の原材料を一緒にまとめて混合、ホイップして起泡させ焼成型に流し込んだ後、オーブンで焼成するといった加工方法により調製することができる。
本発明では、ホイップ工程は、かならずしも必須ではなく、最終的に要求される形態に応じて、公知技術を用いて、ホイップの程度、方法は、適宜調整することができる。
<セルロースの添加方法>
上述の製造方法において、セルロースは、焼成前の段階で添加される。特に、水が存在する段階で、他の原料とともに混合されると、セルロースの分散が促進されるため好ましい。また、卵や、水を添加する際に、予め、それらと混合し、分散された状態で添加してもよい。
<具材の添加方法>
上述の製造方法において、本発明の具材も、焼成前の段階で添加される。具材とセルロースの添加順序は、前後してもよいが、セルロースが生地に分散された後に添加されることが好ましい。
<スポンジケーキ、パウンドケーキ、シフォンケーキ>
本発明でいうスポンジケーキは、特に、上述の記載において、溶いた鶏卵の起泡性を利用し、オーブンで弾力に富んだ軽いスポンジ状に焼き上げるケーキ生地の形態をとるもののことである。特に、泡立て工程で、スポンジ生地の基本的な組成は、卵、砂糖、小麦粉であるが、ここでは、油脂を含んだバタースポンジも、本発明のスポンジケーキに含まれる。本発明のシフォンケーキは、本発明のスポンジケーキに含まれ、特に、ホイップ工程において、メレンゲを経たもののことをいう。
ここで、本発明のスポンジケーキと、パウンドケーキは、焼成前の生地の比重で区別できる。スポンジケーキの生地の比重は、0.3〜0.69g/mLが好ましい、より好ましくは、0.35〜0.6g/mLであり、さらに好ましくは、0.4〜0.55g/mLである。
本発明のパウンドケーキの生地の比重は、0.7〜1.0g/mLが好ましく、より好ましくは、0.75〜0.9g/mLであり、さらに好ましくは、0.75〜0.85g/mLである。
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
まず、パウンドケーキの試作方法、各種物性の評価方法を説明する。
<セルロース以外の原材料 ※セルロースは、実施例の項に記載>
1)薄力粉:日清製 商品名「日清フラワー薄力小麦粉」
2)上白糖:三井製糖製 商品名「スプーン印上白糖」
3)マルトオリゴ糖:日本食品化工製 商品名「フジオリゴ」
4)加工デンプン(タピオカα化デンプン):三和澱粉製 商品名「タピオカアルファー TP−2」
5)食塩:日本食塩製造製 商品名「クッキングソルト」
6)全卵:市販の鶏卵
7)バター(無塩):明治製 商品名「バター(食塩不使用)」
8)ドライフルーツミックス:小島屋製 商品名「ダイスカットドライフルーツ」
※キウイ・苺・パイナップル・パパイア・マンゴー・メロン・りんごをダイス状にカ ットし、砂糖液に漬け込み、乾燥されたもの。
※実測の短径=3mm〜10mm、長径/短径比=1〜3、比重(平均)1.4g/ mL
9)バニラエッセンス:明治屋製 商品名「バニラエッセンス」
<パウンドケーキの試作方法:全量500gで試作>
1)まず、表1の処方において、※印で記載した粉体類を予めポリ袋中で3分間混合し、 金属製のボウルに投入した。
2)次に、全卵を加え、プラスチック製のヘラで混ぜ、溶かし、10分間、室温で生地を 寝かせた。
ここに、溶かしバター、ドライフルーツ、バニラエッセンスを加えて、さらに10 分間、同様に混ぜた。ここで、実施例1〜10、比較例1〜3の焼成前の生地の比重 は、0.75〜0.85g/mLであった。
3)金属性のパウンド型に平らになるように400gを入れ、オーブンで、170℃で4 0分間焼成した。※断面形状は、約7cm角。
4)焼きあがったケーキは、約2cmの厚みにカットして、評価に用いた。
<具材の均一性>
1)無作為に12カットのケーキを選択し、断面に、存在する全具材の数を目視で計測し た。また、ケーキの底面から、上面の距離を計測し、中央から上部に存在する具材の 数を計測した。上記で計測した具材の数量より、以下の式で均一性を算出した。
具材の均一性(%)=((上部に存在する具材数)/(全具材数))×100
<食感評価>
22歳から、48歳の男女12名のパネラーにより、上記のケーキを実際に食し、以下の評価基準で官能評価を実施した。以下の各食感について、1〜4点(1点刻み)で点数をつけ、平均点を求めた。
1)クリスピー感: 前歯で、クラスト部分を噛む際のサクサクした食感
平均3点以上 : ◎ 非常に優れる
(セルロース、加工デンプン(増粘剤)無添加と遜色なし)
平均2点以上、3点未満: ○ 優れる
平均1点以上、2点未満: △ 劣る
平均1点未満 : × ほとんどなし(食感がモチモチしすぎている)
2)さっくり感: 前歯で、クラム部分の噛みきりやすさ
平均3点以上 : ◎ 非常に優れる
(セルロース、加工デンプン(増粘剤)無添加と遜色なし)
平均2点以上、3点未満: ○ 優れる
平均1点以上、2点未満: △ 劣る
平均1点未満 : × ほとんどなし(食感がモチモチしすぎている)
3)ふんわり感: 奥歯で、全体を噛む際の軽いふんわりした食感
平均3点以上 : ◎ 非常に優れる
(セルロース、加工デンプン(増粘剤)無添加と遜色なし)
平均2点以上、3点未満: ○ 優れる
平均1点以上、2点未満: △ 劣る
平均1点未満 : × ほとんどなし(食感がモチモチしすぎている)
4)ざらつき感: 飲み込む際の舌に感じる、ざらざらした感触
平均3点以上 : ◎ なし
平均2点以上、3点未満: ○ ほとんどなし
平均1点以上、2点未満: △ 少し感じる
平均1点未満 : × 感じる
[実施例1]
上記のパウンドケーキの試作方法において、1)の※印の粉体類を混合する際に、セルロースとして、易分散性結晶セルロース複合体である、旭化成ケミカルズ製 商品名「セオラスDX−2(組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=36/4.5/59.5質量%)」(セルロースの平均重合度200、セルロースの粒子L/D1.6、体積平均粒子径8.2μm)を、全仕込み量500gに対し、0.1質量%配合し、ケーキを試作した。得られたケーキについて、上記の評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、易分散性結晶セルロース複合体Aと記載した。
[実施例2]
実施例1の試作方法において、旭化成ケミカルズ製 商品名「セオラスDX−2(組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=36/4.5/59.5質量%)」の配合量を、0.3質量%に変更した以外は、同様にケーキを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、易分散性結晶セルロース複合体Aと記載した。
[実施例3]
実施例1の試作方法において、旭化成ケミカルズ製 商品名「セオラスDX−2(組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=36/4.5/59.5質量%)」の配合量を、0.5質量%に変更した以外は、同様にケーキを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、易分散性結晶セルロース複合体Aと記載した。
[実施例4]
実施例1の試作方法において、旭化成ケミカルズ製 商品名「セオラスDX−2(組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=36/4.5/59.5質量%)」の配合量を、1質量%に変更した以外は、同様にケーキを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、易分散性結晶セルロース複合体Aと記載した。
[実施例5]
<易分散性結晶セルロース複合体の調製>
高速攪拌機(プライミクス製 商品名TKホモミキサーMARKII)を用いて、25℃の水道水1500gを2000rpmで攪拌しながら、親水性物質としてデキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を250g加え、5分間攪拌した。その後、加工澱粉として、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を25g加えた後に、更に5分間攪拌した。続いて、セルロース複合体として、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30、組成:結晶セルロース/キサンタンガム/デキストリン=75/5/20(質量比)、貯蔵弾性率(G’):1.0Pa、体積平均粒子径8.6μm、コロイド状成分量65質量%)を225g加えて、12、000rpmで60分間攪拌し、分散液とした。
この分散液を、スプレードライヤー(東京理科製 商品名SD−1000型)を使用し、フィード速度10g/分で、入口温度160〜200℃、出口温度60〜80℃の範囲で乾燥させた。得られた乾燥物を、目開き500μmの篩を通過させ、セルロース組成物A(セルロースの平均重合度190、セルロースの粒子L/D1.8、体積平均粒子径9.6μm)を得た。
<ケーキの試作、評価>
実施例1の試作方法において、セルロースをセルロース組成物Aに変更し、その配合量を0.3質量%に変更した以外は、同様にケーキを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、易分散性結晶セルロース複合体Bと記載した。
[実施例6]
実施例1の試作方法において、セルロースを、結晶セルロース複合体である旭化成ケミカルズ製 商品名「セオラスRC−N81(組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=80/10/10質量%)」(セルロースの平均重合度200、セルロースの粒子L/D1.6、体積平均粒子径8.9μm)に変更し、その配合量を、0.5質量%に変更した以外は、同様にケーキを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、結晶セルロース(MCC)複合体と記載した。
[実施例7]
実施例1の試作方法において、セルロースを、結晶セルロース粉末である旭化成ケミカルズ製 商品名「セオラスUF−F711(組成:結晶セルロース=100質量%)」(セルロースの平均重合度220、セルロースの粒子L/D3.5、体積平均粒子径25μm)に変更し、その配合量を、3質量%に変更した以外は、同様にケーキを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、結晶セルロース(MCC)粉末と記載した。
[実施例8]
実施例1の試作方法において、セルロースを、粉末セルロースであるレッテンマイヤー製 商品名「ビタセル(組成:セルロース=100質量%)」(セルロースの平均重合度860、セルロースの粒子L/D5.2、体積平均粒子径70μm)に変更し、その配合量を、3質量%に変更した以外は、同様にケーキを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、粉末セルロースと記載した。
[実施例9]
実施例1の試作方法において、セルロースを、旭化成ケミカルズ製 商品名「セオラスDX−2(組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=36/4.5/59.5質量%)」の配合量を0.3質量%に変更し、さらに加工デンプンとして三和澱粉製 商品名「タピオカアルファーTP−2(タピオカα化澱粉100%)」を2質量%加えた以外は、同様にケーキを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、易分散性結晶セルロース複合体Aと記載した。
[実施例10]
実施例1の試作方法において、セルロースを、旭化成ケミカルズ製 商品名「セオラスUF−F711(組成:結晶セルロース=100質量%)」の配合量を2質量%に変更し、ケーキの試作方法において、セルロースは粉体類と同時に添加するのではなく、予め、卵と、セルロースを、家庭用ミキサー(SANYO製 商品名「PRO Big1200」)で3分間分散し、脱泡装置(シンキー製 商品名「あわとり練太郎AR−100型」)で脱泡し、上述のケーキの試作方法の卵の添加時に添加し、ケーキを試作した。得られたケーキについて同様に評価を行った。得られた結果を、表1に示す。なお、表1では、ここで用いたセルロースを、結晶セルロース(MCC)粉末と記載した。
[比較例1〜3]
従来のケーキと比較するために、比較例1では、セルロース、増粘剤(加工デンプン)を無添加のケーキを試作した。それに対し、比較例2、3では、セルロースを配合せず、増粘剤として加工澱粉を配合し、ケーキを試作した。
得られた結果を、表1に示す。
Figure 2013226103
比較例1は、食感が優れるものの、具材は沈降し、均一なものは得られなかった。それに対し、比較例2、3で、加工デンプンを配合、増量すると、具材の均一性は向上したが、それに反し、食感が悪化した(食感がモチモチしすぎ、本来のケーキの食感(比較例1参照)ではなくなった。)。
実施例1〜3は、ドライフルーツの配合量を10質量%に固定し、易分散性結晶セルロース複合体(MCC/カラヤガムの複合体で、親水性物質としてデキストリンを配合)の添加量を振って得られた結果である。表1の結果から、易分散性結晶セルロース複合体の添加量が増えると、具材の均一性が向上した。また、易分散性結晶セルロース複合体は、0.1質量%の添加でも、比較例1(セルロース、加工デンプン無添加)に対し、具材の均一性が向上した。食感については、実施例レベルに、具材の均一性が向上した比較例2、3(加工デンプン配合)と比較して、食感が良好なものが得られた。
実施例4は、具材を20質量%配合したものである、同じ易分散性結晶セルロース複合体(易分散性のMCC/カラヤガムの複合体で、親水性物質としてデキストリンを配合)を多量に添加することで、実施例1〜3と比較して、食感は若干低下するものの、具材の均一性が満足のいくものとなった。
実施例5は、具材を10質量%配合し、易分散性結晶セルロース複合体の種類を変更したもの(MCC/キサンタンガムの複合体、親水性物質としてデキストリンと、崩壊剤として加工デンプンを使用)である。その結果、同じセルロース添加量である実施例2に対し、食感は同等で、具材の均一性が向上した。
実施例6は、具材10質量%において、セルロースとして、易分散性ではない結晶セルロース複合体を使用したものである。その結果、易分散性のもの(実施例2、5)と比較して、同等の具材の均一性を達成するには、セルロース添加量を増やす必要があるものの、具材の均一性、食感として良好なものが得られた。また、同じのセルロース添加量である実施例3と比較すると、具材の均一性は劣るものの、食感は良好なものが得られた。
実施例7、8は、具材10質量%において、セルロースとして、結晶セルロース複合体ではなく、結晶セルロース粉末、粉末セルロースを使用したものである。その結果、結晶セルロース複合体を使用したものに対し、セルロース添加量を増やす必要があるものの、具材の均一性、食感として良好なものが得られた。結晶セルロースと、粉末セルロースでは、結晶セルロースのほうが、少量で効果が得られた。
実施例9は、具材10質量%において、実施例2と同様の易分散性結晶セルロース複合体を使用し、加工デンプンを2質量%併用したものである。セルロースと加工デンプンを併用することで、比較例2、3に対し、食感が良好で、具材が均一なものが得られた。
実施例10は、セルロースとして、結晶セルロース粉末を使用し、予め分散して添加したものである。複合体ではない結晶セルロースを使用しても、予め分散しておくことで、実施例7に対し、具材の均一性、食感が向上した。
本発明により、フルーツ等の比重の大きい具材を、特定量含有し、具材が、製造時に偏らず、焼き上がり後に均一に分散し、さらに、クリスピー感、さっくり感、ふんわり感等の良好な食感を有するベーカリー製品を提供できるため、有用である。

Claims (5)

  1. 小麦粉、糖類、油脂を含む原料から得られるベーカリー製品において、短径が0.5mm以上であり、長径/短径比が1.0〜5.0であり、比重が1.0g/mL以上の具材を1質量%以上含み、さらにセルロースを0.1質量%以上含有するベーカリー製品。
  2. 前記セルロースが、結晶セルロース複合体である請求項1に記載のベーカリー製品。
  3. 前記具材が、ドライフルーツ、糖液に漬け込まれたフルーツ、生フルーツから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載のベーカリー製品。
  4. さらに、加工デンプンを0.1質量%以上含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のベーカリー製品。
  5. パウンドケーキ、スポンジケーキ、及びシフォンケーキのいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のベーカリー製品。
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